(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180050
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】ロックボルト打設装置およびロックボルトの打設方法
(51)【国際特許分類】
E21D 20/00 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
E21D20/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086953
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】594149398
【氏名又は名称】古河ロックドリル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】能代 泰範
(57)【要約】
【課題】打設するロックボルトの長さと同程度の全長であってもロックボルトを打設可能なロックボルト打設装置を提供する。
【解決手段】ロックボルト打設装置200は、長手方向でマガジン6とガイドシェル2とが並列に且つ側方からの投影視で重なるように配置され、さらに、ブーム17の先端に対してガイドシェル2とマガジン6が回動機構を介して連結される。ガイドシェル2上の打設機本体14には副打設部として後部ボルトクランプ5が付設されている。後部ボルトクランプ5は、回動機構の駆動で打設軸線上に位置した副打設姿勢において、ロックボルトBをその側方から打設軸線上に保持可能であり、さらに、ロックボルトBを把持しつつ打設機本体14と共に前方にフィードされることでロックボルトBの先端側の途中部分までを穿孔穴に沿って打設可能に構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロックボルト打設台車のブーム先端に装備されてロックボルトを穿孔穴に打設するロックボルト打設装置であって、
前記ロックボルトが格納されるマガジンと、
前記マガジンの長手方向に沿って並列に且つ前記長手方向とは直交する方向での投影視で前記マガジンに重なる範囲内に配置されたガイドシェルと、
前記マガジンおよび前記ガイドシェルを個別に選択して前記ブームの先端部分に対して回動させる回動機構と、
前記ガイドシェルに搭載されて前記ガイドシェルの長手方向に沿って前後にフィード移動可能に設けられるとともに前記マガジンに格納された前記ロックボルトを前記穿孔穴に沿った打設軸線上で前記ロックボルトの後端から押圧しつつ打設可能な打設機本体と、
少なくとも前記打設機本体に付設される副打設部と、
を備え、
前記回動機構は、前記打設機本体の軸線を前記穿孔穴に沿った打設軸線上に位置させる主打設姿勢と、前記副打設部を前記打設軸線上に位置させる副打設姿勢と、に位置させるように前記ガイドシェルを回動可能に構成され、
前記副打設部は、前記副打設姿勢において、前記ロックボルトをその側方から前記打設軸線上に保持可能なボルトクランプ機構を有し、前記ボルトクランプ機構で前記ロックボルトを把持しつつ前記打設機本体と共に前方にフィードされることで前記ロックボルトの先端側の途中部分までを前記穿孔穴に沿って打設可能に構成されている、
ことを特徴とするロックボルト打設装置。
【請求項2】
前記回動機構は、
前記ブーム先端に前記長手方向に沿って設けられるとともに自身内部に回動軸を支持する支持ハウジングと、
前記マガジンを前記支持ハウジングの回動軸の軸回りに回動可能に連結するマウントと、
前記ガイドシェルを前記支持ハウジングの回動軸の軸回りに回動可能に連結するスイングブラケットと、
前記マガジンを選択する個別選択手段であって、自身のロッドの伸縮に応じて前記支持ハウジングと前記マウントとの固定およびその解除が選択可能に装備されるマガジン用のロックシリンダと、
前記ガイドシェルを選択する個別選択手段あって、自身のロッドの伸縮に応じて前記支持ハウジングと前記スイングブラケットとの固定およびその解除が選択可能に装備されるガイドシェル用のロックシリンダと、
自身のロッドの伸縮に応じて前記二つの個別選択手段で選択されている状態の前記マガジンまたは前記ガイドシェルを前記支持ハウジングの回動軸の軸回りで回動駆動させるスイングシリンダと、
を含んで構成されている請求項1に記載のロックボルト打設装置。
【請求項3】
前記副打設部は、
前記打設機本体の側部から前記マガジン側に張り出すように前記打設機本体に配置され且つ前記回動機構による回動動作によって前記ガイドシェル上の前記打設機本体と共に回動されて前記副打設姿勢に位置されるとともに前記副打設姿勢において前記ロックボルトの後側での前記ロックボルトの把持およびその開放が可能に設けられた後部ボルトクランプと、
前記ガイドシェルよりも前側に配置されて且つ自身用の回動機構による回動動作によって回動されて前記打設軸線上に位置する前側副打設姿勢と前記打設軸線上から退避した前側退避姿勢とに位置可能に構成されるとともに、前記前側副打設姿勢において前記ロックボルトの前側での前記ロックボルトの把持およびその開放が可能に設けられた前部ボルトクランプと、
を前記ボルトクランプ機構として備えており、
前記副打設姿勢にあっては、前記前部ボルトクランプが前記前側副打設姿勢とされるとともに、前記後部ボルトクランプで前記ロックボルトの後側を前記ロックボルトの側方から把持しつつ前記打設機本体の前記フィード移動により前記ロックボルトの先端側の途中部分までを前記穿孔穴に沿って打設可能に構成され、
前記主打設姿勢にあっては、前記前部ボルトクランプが前記退避姿勢とされるとともに、前記打設機本体での前方へのフィード移動により前記途中部分まで打設された前記ロックボルトのその余の後端側部分を前記ロックボルトの後端から押圧しつつ前記穿孔穴に沿って打設可能に構成されている請求項1または2に記載のロックボルト打設装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のロックボルト打設装置を用い、
一のロックボルトを穿孔穴に沿って二段階の工程で打設するロックボルトの打設方法であって、
前記副打設姿勢とした状態で、前記副打設部によって前記ロックボルトの先端側の途中部分までを前記ロックボルトの側方から前記ボルトクランプで把持しつつ前記穿孔穴に沿って打設する先送り工程と、
前記先送り工程の後に、前記主打設姿勢とした状態で、前記打設機本体によって前記ロックボルトのその余の部分を前記ロックボルトの後端から押圧しつつ前記穿孔穴に沿って打設する後送り工程と、
を含むことを特徴とするロックボルトの打設方法。
【請求項5】
前記先送り工程は、少なくとも、前記ロックボルトの先端側での前記マガジンの長手方向とは直交する方向での投影視で前記マガジンに重なる前記打設機本体の軸方向での長さ分以上の長さを前記穿孔穴に沿って打設する請求項4に記載のロックボルトの打設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル施工、鉱山坑道掘削及び補強土作業におけるロックボルト打設作業を行うロックボルト打設装置およびロックボルトの打設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル施工、鉱山坑道掘削及び補強土作業において、トンネル、坑道壁面、切土補強等を目的としてロックボルトの打設が行われている(例えば特許文献1参照)。ロックボルトの打設では、厚い軟弱地盤層に対しては、より安定化を図るために、長いロックボルトを使用して深く打設することがある。
【0003】
通常、ロックボルト打設装置には、ドリフタ等の打設機にロックボルトが装填され、ロックボルトの後端部を打設機で穿孔孔に沿って押し込むことでロックボルトを打設する。
そのため、従来、ロックボルト打設装置の全長は、おおよそ、"ロックボルト長+打設機長〔打設機本体+ロッド+ホースリール(≒1.5m~2m)〕"の長さとなり、例えば、6mのロックボルトを打設する場合には、全長が8m程のロックボルト打設装置で施工されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、トンネル掘削断面を上・下半に分割し、上部半断面を先進して掘削するベンチカット工法では、ロックボルト打設装置の全長を上部半断面内に収まる長さとし、ベンチに干渉しないサイズにする必要がある。
【0006】
しかし、厚い軟弱地盤層になるほどロックボルト長はより長くなり、これに伴い、ロックボルト打設装置の全長もより長いものを要する。そのため、ロックボルト打設装置がベンチに干渉してしまい、施工が困難となる場合がある。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、打設するロックボルトの長さと同程度の全長であってもロックボルトを打設可能なロックボルト打設装置およびこれを用いたロックボルトの打設方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るロックボルト打設装置は、ロックボルト打設台車のブーム先端に装備されてロックボルトを穿孔穴に打設するロックボルト打設装置であって、前記ロックボルトが格納されるマガジンと、前記マガジンの長手方向に沿って並列に且つ前記長手方向とは直交する方向での投影視で前記マガジンに重なる範囲内に配置されたガイドシェルと、前記マガジンおよび前記ガイドシェルを個別に選択して前記ブームの先端部分に対して回動させる回動機構と、前記ガイドシェルに搭載されて前記ガイドシェルの長手方向に沿って前後にフィード移動可能に設けられるとともに前記マガジンに格納された前記ロックボルトを前記穿孔穴に沿った打設軸線上で前記ロックボルトの後端から押圧しつつ打設可能な打設機本体と、少なくとも前記打設機本体に付設される副打設部と、を備え、前記回動機構は、前記打設機本体の軸線を前記穿孔穴に沿った打設軸線上に位置させる主打設姿勢と、前記副打設部を前記打設軸線上に位置させる副打設姿勢と、に位置させるように前記ガイドシェルを回動可能に構成され、前記副打設部は、前記副打設姿勢において、前記ロックボルトをその側方から前記打設軸線上に保持可能なボルトクランプ機構を有し、前記ボルトクランプ機構で前記ロックボルトを把持しつつ前記打設機本体と共に前方にフィードされることで前記ロックボルトの先端側の途中部分までを前記穿孔穴に沿って打設可能に構成されている、ことを特徴とする。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るロックボルトの打設方法は、本発明の一態様に係るロックボルト打設装置を用い、一のロックボルトを穿孔穴に沿って二段階で打設するロックボルトの打設方法であって、前記副打設姿勢とした状態で、前記副打設部によって前記ロックボルトの先端側の途中部分までを前記ロックボルトの側方から前記ボルトクランプで把持しつつ前記穿孔穴に沿って打設する先送り工程と、前記先送り工程の後に、前記主打設姿勢とした状態で、前記打設機本体によって前記ロックボルトのその余の部分を前記ロックボルトの後端から押圧しつつ前記穿孔穴に沿って打設する後送り工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様に係るロックボルト打設装置によれば、ガイドシェルが回動機構を介してブーム先端に設けられ、回動機構は、ガイドシェルを主打設姿勢と副打設姿勢とに回動させることができる。そして、打設機本体には副打設部が付設され、副打設部は、副打設姿勢において、ボルトクランプでロックボルトをその側方から打設軸線上に把持しつつ打設機本体と共に前方にフィードされることでロックボルトの先端側の途中部分までを穿孔穴に沿って打設できる。
【0011】
つまり、本発明によれば、いわば二段階打設機構を備えることで、副打設姿勢において、ロックボルトと打設機本体とを通常の直列配置ではなく、並列に重なる並列配置の状態でロックボルトの先端側の途中部分までを穿孔穴に沿って打設できる。よって、本発明によれば、先端側の途中部分までを穿孔穴に押し込んだロックボルトの後方に空きスペースを確保できる。
これにより、本発明によれば、回動機構の回動作動により、打設機本体を主打設姿勢に回動させた後に、ロックボルト後方の空きスペースに打設機本体を位置させて、途中部分まで打設されたロックボルトのその余の後端側部分を打設機の打設軸線上でのフィード移動によりロックボルト後端から押圧しつつ穿孔穴に沿って打設できる。
【0012】
そして、本発明の一態様に係るロックボルトの打設方法によれば、本発明の一態様に係るロックボルト打設装置を用い、副打設姿勢にて、第一段の先送り工程で軸方向前方に向けて押し込んだロックボルト後方の空いたスペースに対して、打設機本体を打設軸性上に回動させた主打設姿勢にて、第二段の後送り工程で軸方向に更に前進させる、「二段階順送」によってロックボルトの打設を完了できる。
よって、本発明の一態様に係るロックボルトの打設方法によれば、二段階順送による打設工程によって一のロックボルトを穿孔穴に押し込むことで、ロックボルトの長さと同程度の全長を有するロックボルト打設装置での施工が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
上述したように、本発明によれば、例えばベンチカット工法が行われる工事であっても、打設するロックボルトの長さと同程度のスペースが長手方向にあればロックボルトを打設できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一態様に係るロックボルト打設装置の一実施形態の説明図である。
【
図2】本発明の一態様に係るロックボルト打設装置の一実施形態の要部を分離して示す説明図である。
【
図3】本実施形態のロックボルト打設装置による施工手順(工程1)の説明図である。
【
図4】本実施形態のロックボルト打設装置による施工手順(工程2)の説明図である。
【
図5】本実施形態のロックボルト打設装置による施工手順(工程3)の説明図である。
【
図6】本実施形態のロックボルト打設装置による施工手順(工程4)の説明図である。
【
図7】本実施形態のロックボルト打設装置による施工手順(工程5)の説明図である。
【
図8】本実施形態のロックボルト打設装置による施工手順(工程6)の説明図である。
【
図9】本実施形態のロックボルト打設装置による施工手順(工程7)の説明図である。
【
図10】本実施形態のロックボルト打設装置による施工手順(工程8)の説明図である。
【
図11】本実施形態のロックボルト打設装置による施工手順(工程9)の説明図である。
【
図12】本実施形態のロックボルト打設装置による施工手順(工程10)の説明図である。
【
図13】従来のロックボルト打設装置(a)と本発明の一態様に係るロックボルト打設装置の一実施形態(b)との比較説明図である。
【
図14】本発明の一態様に係るロックボルト打設装置を装備したロックボルト打設台車の一実施形態と、従来のロックボルト打設機を装備したロックボルト打設台車と、の打設施工状態を示す模式図((a)、(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0016】
図1および
図2に示すように、本実施形態のロックボルト打設装置200は、マガジン6とガイドシェル2を長手方向で重なるように並列に配置し、ロックボルト打設装置200の全長Lを、打設するロックボルトBの長さと同程度の全長としている。
【0017】
詳しくは、本実施形態のロックボルト打設装置200は、ロックボルト打設台車(
図14での符号100参照)のブーム17の先端に、円筒状の支持ハウジング17hが設けられている。そして、支持ハウジング17hに同軸に内嵌する回動軸17jが打設軸線CLと並行して支持され、この回動軸17jにスイングブラケット8の基部が同軸に回動可能に設けられている。
【0018】
スイングブラケット8には、ガイドシェル2及び定着材注入装置15が搭載されている。ガイドシェル2は、マガジン6の長手方向に沿って並列に且つ長手方向とは直交する方向での投影視でマガジン6に重なる範囲内に配置されている。ガイドシェル2には、ガイドシェル2の後端近傍にホースリール11が搭載され、また、ガイドシェル2に沿ってスライド移動可能に打設機本体14が搭載されている。
【0019】
打設機本体14は、通常のドリフタ同様に、ガイドシェル2の長手方向に沿って前後にフィード移動可能に設けられるとともに、マガジン6に格納されたロックボルトBを穿孔穴に沿った打設軸線CL上でロックボルトBの後端から押圧しつつ打設可能になっている。
【0020】
また、ブーム17の先端には、スイングブラケット8の回動軸17jと基端部が同軸に支持されて、スイングシリンダ13の伸縮により、回動軸17jの軸まわりで回動可能なマウント7が設けられている。マウント7の先端部に打設軸線CLと並行にマガジン6が装着されている。
【0021】
マガジン6には、複数本のロックボルトBが周方向に離隔して装填可能な構造となっている。マガジン6は、その中心部が回動軸17jと並行な回動支持ハウジング7hと同軸に支持され、マガジン回転用のアクチュエータ12の駆動に応じてその中心軸まわりに回転自在になっている。
【0022】
マガジン6およびマウント7は、スイングシリンダ13の伸縮により、ブーム17の先端に回動軸17jを介して回動軸17jの軸回りに回動可能に連結されている。マウント7の基端部には、回動軸17jの軸方向に沿って自身のロッドを伸縮可能にロックシリンダ18が個別選択手段として付設されており、ロックシリンダ18のロッドの伸縮に応じて、ブーム17の支持ハウジング17hとマウント7との固定およびその解除が選択可能になっている。
【0023】
一方、スイングブラケット8には、回動軸17jの軸方向に沿って自身のロッドを伸縮可能にロックシリンダ19が個別選択手段として付設されており、ロックシリンダ19のロッドの伸縮に応じて、ブーム17の支持ハウジング17hとスイングブラケット8との固定およびその解除が選択可能になっている。つまり、ロックシリンダ19のロッドの伸縮に応じて、ブーム17に対するガイドシェル2の固定およびその解除が選択可能になる。
【0024】
本実施形態では、スイングシリンダ13と、上記二つのロックシリンダ18およびロックシリンダ19による個別選択手段とを含む構成により、スイングシリンダ13の伸縮に応じた回動軸17jの軸まわりで、ガイドシェル2およびマガジン6を個別に選択してブーム17の先端部分に対して回動させる回動機構が設けられている。
【0025】
ここで、上記ガイドシェル2の軸方向後方には、ガイドシェル2の後部側のボルトクランプ機構として、打設機本体14の側部に張り出して後部ボルトクランプ5が設けられている。
後部ボルトクランプ5は、打設機本体14を前後動させるキャリッジ20に取り付けられており、上記回動機構の駆動により、打設軸線CL上の位置に打設機本体14と一体で回動可能に且つ打設機本体14と一体でガイドシェル2上をスライド移動可能に設けられる。
【0026】
特に、本実施形態では、上記回動機構は、打設機本体14の軸線を打設軸線CL上に位置させる主打設姿勢と、副打設部を打設軸線CL上に位置させる副打設姿勢と、に位置させるようにガイドシェル2を回動可能に構成される。
【0027】
そして、後部ボルトクランプ5は、この副打設姿勢において、ロックボルトBをその側部から把持およびその開放が可能に打設機本体14の側部からマガジン6側に張り出して設けられる後部での副打設部(ボルトクランプ機構)とされている。本実施形態では、後部ボルトクランプ5は、打設機本体14と共に前方にフィードされることでロックボルトBの先端側の途中部分までを穿孔穴に沿って打設可能に構成されている。
【0028】
さらに、上記スイングブラケット8には、ガイドシェル2よりも前部側のボルトクランプ機構として、ガイドシェル2およびマガジン6の前端よりも軸方向前方の位置に、前部ボルトクランプ4が搭載されている。前部ボルトクランプ4は、回動軸17jの先端側に同軸に配置された前部ボルトクランプ回動用のアクチュエータ9の駆動により、ピン3を軸としてその軸まわりに単独で回動可能となっている。
【0029】
前部ボルトクランプ4は、アクチュエータ9の駆動により、打設軸線CL上に位置する前側副打設姿勢と、打設軸線CLから退避した退避姿勢とに回動可能に設けられる。そして、前部ボルトクランプ4は、前側副打設姿勢において、ロックボルトBをその側部から把持およびその開放が可能にマガジン6の側に張り出して設けられる前部での副打設部(ボルトクランプ機構)とされている。
【0030】
次に、上記ロックボルト打設装置200を用いたロックボルト打設工程について、
図3~
図12を適宜参照しつつ説明する。
ロックボルトの打設に際して、まず、坑内周壁面のロックボルト挿入孔(「穿孔穴」ともいう)にロックボルト打設装置200の打設軸線CLが同軸となる位置に合わせて、ロックボルト打設装置200先端のフートパット21で固定する。
【0031】
次いで、
図3に示すように、ブーム17とガイドシェル2とをロックシリンダ19(
図2参照)で相互に連結して固定する。この状態においては、定着材注入装置15が打設軸線CL上に位置するように配置されているので、定着材注入装置15を作動させて定着材注入チューブ16を前部ボルトクランプ4の注入口側から前後進させて定着材をロックボルト挿入孔に注入する(工程1)。
【0032】
次いで、
図4に示すように、前部ボルトクランプ回動用のアクチュエータ9を駆動して前部ボルトクランプ4をボルトクランプ側に回動させて前側副打設姿勢にする。さらに、スイングシリンダ13を伸ばして、把持部が開口している後部ボルトクランプ5の把持・解放位置の軸線(副打設姿勢での打設軸線CL)と同軸上となる位置までマガジン6を回動させる。
【0033】
把持・解放位置までマガジン6を回動させたら、後部ボルトクランプ5の開閉シリンダを把持方向に駆動してロックボルトBを打設軸線CL上で掴む(工程2)。また、前部ボルトクランプ4を開いて前部ではロックボルトBを把持しない開放状態とする。
【0034】
次いで、
図5に示すように、打設機本体14の前方へのフィード移動により、マガジン6の後ホルダ6r手前の位置まで打設機本体14に付設された後部ボルトクランプ5を前進させてロックボルトBを打設軸線CL上で軸方向前方に向けて送り出す先送り工程を実行する(工程3)。
【0035】
次いで、ブーム17とマガジン6とをロックシリンダ18(
図2参照)で相互に連結して固定する。その後、前部ボルトクランプ4の開閉シリンダを把持方向に駆動して、前部ボルトクランプ4を閉じてロックボルトBを打設軸線CL上で側方から固定した後に、後部ボルトクランプ5を開いて後部でのロックボルトBの把持を開放する。
【0036】
さらに、
図6に示すように、スイングシリンダ13を縮めて打設機本体14をマガジン6に対してその反対の側に離した後に、打設機本体14の後方へのフィード移動により、ガイドシェル2の後端まで打設機本体14を後進させる。このとき、前部ボルトクランプ4はロックボルトBを打設軸線CL上で掴んだ位置に保持されている(工程4)。
【0037】
次いで、
図7に示すように、スイングシリンダ13を伸ばして打設軸線CL上でのロックボルトBの後端位置に対して、打設機本体14先端のロッド10中心が一致する位置まで打設機本体14を回動させる(工程5)。次いで、ブーム17とガイドシェル2とをロックシリンダ19(
図2参照)で相互に連結して固定する。
【0038】
さらに、スイングシリンダ13を縮めてマガジン6を打設軸線CL上の打設機本体14から反対の側に離し、その後に、
図8に示すように、前部ボルトクランプ4を開いて把持状態を開放し、打設機本体14を前方へのフィード移動により、打設機本体14のロッド10の先端部分が前部ボルトクランプ4の手前に位置するまで、ガイドシェル2に沿って前進させてロックボルトBを打設軸線CLでの軸方向前方に向けて送り出す後送り工程を実行する(工程6)。
【0039】
次いで、アクチュエータ9(
図2参照)の駆動により、
図9に示すように、前部ボルトクランプ4をロックボルトBの後端部のロックプレート等を回避する退避姿勢の位置まで回動させる。その後に、打設機本体14を前方へのフィード移動により更に前進させ、ロックボルトBの後端が坑内周壁面に達するまで打設軸線CLでの軸方向前方に向けて押し込むことでロックボルトBの打設が完了する(工程7)。
【0040】
次いで、
図10に示すように、打設機本体14を後方へのフィード移動によりガイドシェル2後端まで後退させる(工程8)。次いで、
図11に示すように、スイングシリンダ13を伸ばして、マガジン6を後部ボルトクランプ5側に回動させる。また、前部ボルトクランプ回動用のアクチュエータ9(
図2参照)を駆動して、前部ボルトクランプ4をマガジン6の手前の位置まで回動させる(工程9)。
【0041】
次いで、
図12に示すように、ブーム17とマガジン6とをロックシリンダ18(
図2参照)で相互に連結して固定する。次いで、スイングシリンダ13を縮めてマガジン6を打設機本体14の側から離隔させる。その後、マガジン回転用のアクチュエータ12でマガジン6を回転させて、次のロックボルトBを受け渡し位置にセットする。
【0042】
前部ボルトクランプ回動用のアクチュエータ9を駆動して、次のロックボルト挿入孔の打設軸線CLに対し、前部ボルトクランプ4の案内部を、定着材注入装置15の注入口に対向するように回転させる(工程10)。
以上の工程により、ロックボルトBの長さと同程度の全長のロックボルト打設装置200でのロックボルトBの打設が可能となる。
【0043】
次に、本実施形態のロックボルト打設装置200およびこれを用いたロックボルトBの打設方法の作用効果について説明する。
ここで、上述のように、ロックボルトの打設では、厚い軟弱地盤層に対しては、地盤の一層の安定化を図るために、長いロックボルトを使用して深く打設することがある。
【0044】
その際、
図13(a)に示すように、従来のロックボルト打設装置200Pでは、必要な長さのロックボルトBをドリフタ等の打設機1Pに打設軸線上にて装填し、ロックボルトBの後端部を打設機1Pで穿孔穴に沿って一段階の押し込み工程によって押し込むことでロックボルトBを打設している。
そのため、従来のロックボルト打設装置200Pの全長Lpは、同図に示すように、おおよそ、"ロックボルト長La+打設機長Lb〔打設機本体+シャンクロッド+ホースリール長(≒1.5m~2m)〕"の長さが必要となり、例えば、6mのロックボルトBを打設する場合には、全長Lpが8m程のロックボルト打設装置200Pで施工されることになる。
【0045】
特に、トンネル掘削断面を上・下半に分割し、上部半断面を先進して掘削するベンチカット工法では、
図14(a)に示すように、トンネルTにおいて、ロックボルト打設装置200の全長Lを切羽Kの上部半断面内に収まる長さとし、ベンチBeに干渉しないサイズにする必要がある。
【0046】
しかし、厚い軟弱地盤層になるほどロックボルト長はより長くなる。よって、これに伴い、従来のロックボルト打設装置200Pにあっては、
図14(b)に示すように、ロックボルトBよりも全長Lpが長いロックボルト打設装置200Pを要する。
【0047】
そのため、従来のロックボルト打設装置200Pでは、ロックボルト打設装置200PがベンチBeに干渉してしまい、ベンチカット工法での施工が困難となる場合がある。なお、同図(b)では、ロックボルト打設装置200Pの後端部分がベンチBeに干渉してしまうイメージを示している。
【0048】
これに対し、本実施形態のロックボルト打設装置200では、
図13(b)に再掲するように、ロックボルトBの長手方向でマガジン6と打設機1とが並列に、且つ、長手方向とは直交する方向での投影視で重なるように配置される。
【0049】
さらに、本実施形態のロックボルト打設装置200は、ブーム17に対してガイドシェル2とマガジン6が回動可能に連結されるとともに、前後のボルトクランプ4、5が副打設部として装備される。特に、ガイドシェル2上の打設機本体14には副打設部として後部ボルトクランプ5が付設される。
【0050】
そして、後部ボルトクランプ5は、回動機構の駆動で打設軸線CL上に位置した副打設姿勢において、ロックボルトBをその側方から打設軸線CL上に保持可能であり、ロックボルトBを把持しつつ打設機本体14と共に前方にフィードされることでロックボルトBの先端側の途中部分までを穿孔穴に沿って打設できる。
【0051】
これにより、本実施形態のロックボルト打設装置200によれば、ロックボルトBの長手方向で並列に重なる打設機1の軸方向での長さLbの分を、回動可能に連結されたガイドシェル2とマガジン6、並びに、前後のボルトクランプ4、5を、上述した所定の順序で順次に動かすことで、ロックボルトBを二段階で順送できる。
【0052】
すなわち、本実施形態のロックボルト打設装置200は、ロックボルトBと打設機1とが、
図13(a)に示すような直列配置ではなく、ロックボルトの長手方向に沿って並列配置され且つ投影視で重なるように配置されているので、上述した、二段階順送での先送り工程(主に工程1~工程3)で、軸方向前方に向けて押し込んだロックボルトBの後ろ側の空いたスペースに打設機1を回動させた後に、二段階順送の後送り工程(主に工程4~工程7)で、軸方向に更に打設機1を前進させることによってロックボルトBの打設を完了できるのである。
【0053】
よって、本実施形態のロックボルト打設装置200およびこれを用いたロックボルトの打設方法によれば、一のロックボルトBを二段階順送による一連の打設工程によって押し込むことで、ロックボルトBの長さと同程度の全長を有するロックボルト打設装置200での施工が可能となる。特に、本実施形態のロックボルト打設装置200では、「二段階順送」が可能な簡素な構造のフィード機構の採用によって、装置の重量および製造コストを低減する上で有利である。
【0054】
以上説明したように、本実施形態のロックボルト打設装置200およびこれを用いたロックボルトの打設方法によれば、上記二段階順送による一連の打設工程によってロックボルトを二段階の工程で押し込むことで、ロックボルト長さと同程度の全長を有するロックボルト打設装置での施工が可能となる。
なお、本発明に係るロックボルト打設装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
1 打設機
2 ガイドシェル
3 ピン
4 前部ボルトクランプ(副打設部:ボルトクランプ機構)
5 後部ボルトクランプ(副打設部:ボルトクランプ機構)
6 マガジン
7 マウント
8 スイングブラケット
9 (前部ボルトクランプ回動用の)アクチュエータ
10 ロッド
11 ホースリール
12 (マガジン回転用の)アクチュエータ
13 スイングシリンダ
14 打設機本体
15 定着材注入装置
16 定着材注入チューブ
17 ブーム
18 ロックシリンダ(個別選択手段)
19 ロックシリンダ(個別選択手段)
20 キャリッジ
21 フートパット
100 ロックボルト打設台車
200 ロックボルト打設装置
B ロックボルト
K 切羽
T トンネル
CL 打設軸線