(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180053
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】マットレス
(51)【国際特許分類】
A47C 27/06 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
A47C27/06
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086956
(22)【出願日】2021-05-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】500560129
【氏名又は名称】株式会社ニトリホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】久世 庄吾
(72)【発明者】
【氏名】今井 康一
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊道
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AB08
(57)【要約】
【課題】ポケットコイルの配列の比較的高い維持安定性を確保しつつ、特定方向におけるマットレスの適度な変形を可能とする。
【解決手段】複数のポケットコイルを有するマットレスであって、コイルスプリングと、第2方向のポケット空間の列ごとに一体化された形態であり、各列のポケット空間を形成する第1布と、列ごとの第1布のうちの、第1方向で隣り合う第1布の間を接着する第1接着部と、複数の列に係る複数のコイルスプリングの上側又は下側で、第1方向及び第2方向により形成される平面内に延在する第2布と、複数の列に係る複数の第1布と第2布とを接着する第2接着部と、を備え、第2布は、第1布よりも伸縮性が高い、マットレスが開示される。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に対して垂直な平面内で直交する第1方向及び第2方向に沿って配置された複数のポケットコイルを有するマットレスであって、
個々のポケットコイルを形成し、個々のポケット空間に収容されるコイルスプリングと、
前記第2方向のポケット空間の列ごとに一体化された形態であり、各列のポケット空間を形成する第1布と、
前記列ごとの前記第1布のうちの、前記第1方向で隣り合う前記第1布の間を接着する第1接着部と、
前記複数の列に係る複数のコイルスプリングの上側又は下側で、前記第1方向及び前記第2方向により形成される平面内に延在する第2布と、
複数の列に係る複数の前記第1布と前記第2布とを接着する第2接着部と、を備え、
前記第2布は、前記第1布よりも伸縮性が高い、マットレス。
【請求項2】
前記第1布は、不織布であり、
前記第2布は、ポリエステルを含む、請求項1に記載のマットレス。
【請求項3】
前記第2布は、伸び率が10%以上である、請求項1又は2に記載のマットレス。
【請求項4】
一の列に係る前記第1布は、一枚で形成され、
一枚の前記第1布は、前記一の列に係るポケット空間のそれぞれを前記第1方向に仕切る第1溶着部と、前記一の列に係るポケット空間のそれぞれの前記第1方向一方側の側部に、端部同士を接合する第2溶着部とを有する、請求項1~3のうちのいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項5】
前記複数のポケットコイルは、前記第1方向に配列される数が、前記第2方向に配列される数よりも多く、
水平状態から起き上がり可能なベッドに配置され、前記ベッドが水平状態から起き上がると、前記第1方向の両端部同士が近づく方向に変形する、請求項1~4のうちのいずれか1項に記載のマットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マットレスに関する。
【背景技術】
【0002】
帯状の不織布からなるシートによって連続して形成された多数のポケットコイルを有する連鎖体を、短手方向に往復する態様で蛇行状に配置する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来の構成のように、複数のポケットコイルを、不織布のような伸縮性の低い布で連続的に形成する場合、伸縮性が低いが故に、複数のポケットコイル間の水平面内での距離が変化し難い。このように、複数のポケットコイル間の距離が水平面内で変化し難い構成は、ポケットコイルの配列の維持安定性が高い点(すなわち外部からの多様な力を受けた場合でも複数のポケットコイルの配列が乱れ難い点)で有利である反面、マットレスの適度な変形(例えば水平状態から起き上がり可能なベッドで使用される際の変形)が実現され難いという不都合を生じやすい。
【0005】
そこで、本開示は、ポケットコイルの配列の比較的高い維持安定性を確保しつつ、特定方向におけるマットレスの適度な変形を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの側面では、上下方向に対して垂直な平面内で直交する第1方向及び第2方向に沿って配置された複数のポケットコイルを有するマットレスであって、
個々のポケットコイルを形成し、個々のポケット空間に収容されるコイルスプリングと、
前記第2方向のポケット空間の列ごとに一体化された形態であり、各列のポケット空間を形成する第1布と、
前記列ごとの前記第1布のうちの、前記第1方向で隣り合う前記第1布の間を接着する第1接着部と、
前記複数の列に係る複数のコイルスプリングの上側又は下側で、前記第1方向及び前記第2方向により形成される平面内に延在する第2布と、
複数の列に係る複数の前記第1布と前記第2布とを接着する第2接着部と、を備え、
前記第2布は、前記第1布よりも伸縮性が高い、マットレスが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ポケットコイルの配列の比較的高い維持安定性を確保しつつ、特定方向におけるマットレスの適度な変形が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】マットレスの断面構造の説明図であり、マットレスの断面構造の概略図である。
【
図3】スプリングコイル層におけるコイルスプリングの配列態様を上面視で模式的に示す図である。
【
図4】コイルスプリングのそれぞれが収容されるポケット空間を形成する不織布の説明図である。
【
図5】一の列の複数のコイルスプリングに対してのそれぞれが収容されるポケット空間を形成する不織布の平面図である。
【
図6】不織布からポケット空間を形成する方法の説明図である。
【
図7】一の列の複数のポケット空間のうちの、3つのポケット空間を抜き出してX方向に視た側面図である。
【
図8】一の列の複数のポケット空間のうちの、3つのポケット空間を抜き出してY方向に視た側面図である。
【
図9】
図7のラインA―Aに沿った概略的な断面図である。
【
図10】本実施例によるマットレスの変形しやすさの説明図である。
【
図12】比較例によるマットレスの変形しやすさの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。本明細書において、不織布のような布に関する一枚とは、製品状態での一枚であり、層間が一体化されている限り多層構造も含む概念である。
【0010】
図1は、マットレス20の使用状態を示す斜視図である。
図1には、右手座標系でX,Y,Z軸が定義されている。以下の説明において、上下方向(Z方向)は、マットレス20の使用状態を基準とする。マットレス20は、寝具であり、ベッドフレーム7上に載置されて使用される。また、マットレス20は、上下を変更可能となりうるが、マットレス20の上側及び下側については、特に言及しない限り、
図1に示す状態を基準とする。なお、上下変更可能でないマットレス20の場合、ユーザに上側が明確になるよう、ロゴ等がマットレス20の側部に付されてよい。
【0011】
本実施例によるマットレス20は、後述するように、長手方向の両端部同士が近づく方向に変形しやすいため、水平状態から起き上がり可能なベッドに配置されるのが好適である。本実施例によるマットレス20は、ベッドが水平状態から起き上がっても、長手方向の両端部同士が近づく方向に変形しやすいため、ベッドに対するマットレス20のズレ等が生じがたいためである。
【0012】
図2は、マットレス20の断面構造の説明図であり、マットレス20の断面構造の概略図である。
図3は、スプリングコイル層223におけるコイルスプリング223aの配列態様を上面視で模式的に示す図である。
図3には、
図1と同様のX方向(第1方向の一例)とY方向(第2方向の一例)が定義されており、ここでは、マットレス20の長手方向がX方向に対応する。
【0013】
図2に示す例では、マットレス20は、キルティング部21(以下、区別のため、「上側キルティング部21」とも称する)と、詰め物部22と、キルティング部23(以下、区別のため、「下側キルティング部23」とも称する)とからなる。
【0014】
上側キルティング部21は、上側から、表面生地211と、人工綿212と、ソフトウレタン213と、不織布214とからなる。なお、上側キルティング部21の構成は、これに限られず、他の材料が追加されてもよいし、一部の材料が省略されてもよい。
【0015】
表面生地211は、例えば抗菌・防臭・防ダニ機能を有するニット生地であってよい。表面生地211は、好ましくは、密度が180g/m2以上である。表面生地211は、例えば厚みが1mmであってよい。
【0016】
人工綿212は、例えば密度が約70g/m2であってよい。また、人工綿212は、例えば厚みが5mmであってよい。
【0017】
ソフトウレタン213は、例えば密度がD21であってよい。また、ソフトウレタン213は、例えば厚みが5mmであってよい。
【0018】
不織布214は、例えば密度が約40g/m2であってよい。また、不織布214は、例えば厚みが0.25mmであってよい。
【0019】
詰め物部22は、上側から、高伸縮生地220と、ソフトウレタン221と、伸縮性生地222(第2布の一例)と、スプリングコイル層223と、伸縮性生地224(第2布の一例)と、ソフトウレタン225と、高伸縮生地226とからなる。
【0020】
高伸縮生地220は、ポリエステルを含む生地であってよい。また、高伸縮生地220は、例えば厚みが0.25mmであってよい。
【0021】
ソフトウレタン221は、例えば密度がD28であってよい。また、ソフトウレタン221は、例えば厚みが15mmであってよい。ソフトウレタン221は、上側が凹凸状に形成されてもよい。これにより、体圧分散値が向上する。
【0022】
伸縮性生地222は、例えばポリエステルを含む生地であってよく、ポリエステル100%の生地であってもよい。また、伸縮性生地222は、例えば厚みが0.25mmであってよい。伸縮性生地222は、不織布214等の不織布よりも伸縮性が有意に高く、好ましくは、伸び率が10%以上であり、より好ましくは、30%以上であり、最も好ましくは、50%以上である。伸び率は、例えば、JIS L 1096(ストリップ法)に準拠する方法による測定に基づいて評価されてよい。
【0023】
スプリングコイル層223は、ポケットコイルをそれぞれ形成する複数のコイルスプリング223aが平行配列形態で配列される。コイルスプリング223aの各列は、マットレス20の短手方向(Y方向)に延在し、マットレス20の長手方向(X方向)で互いに接する。各列におけるコイルスプリング223aの数は、同じであってよい。本実施例では、一例として、
図3に示すように、短手方向(Y方向)で6つのコイルスプリング223aからなる各列は、長手方向(X方向)において合計12列で並ぶ。このように、本実施例では、複数のポケットコイルは、X方向に配列される数(12つ)が、Y方向に配列される数(6つ)よりも多い。なお、これらの具体的な数は、一例であり、マットレス20のサイズ等に応じて多様である。
【0024】
スプリングコイル層223を形成するコイルスプリング223aは、線径(鋼線径)が1.8mmであり、コイル径が62mmである。また、スプリングコイル層223を形成するコイルスプリング223aは、巻き数が5巻であり、コイル高さが自由長で170mmであり、ポケット時は130mmである。各コイルスプリング223aは、例えば提灯型であってよい。
【0025】
伸縮性生地224は、例えばポリエステルを含む生地であってよく、ポリエステル100%の生地であってもよい。また、伸縮性生地224は、例えば厚みが0.25mmであってよい。伸縮性生地224は、不織布214等の不織布よりも伸縮性が有意に高く、好ましくは、伸び率が10%以上であり、より好ましくは、30%以上であり、最も好ましくは、50%以上である。伸び率は、例えば、JIS L 1096(ストリップ法)に準拠する方法による測定に基づいて評価されてよい。
【0026】
ソフトウレタン225は、例えば密度がD28であってよい。また、ソフトウレタン225は、例えば厚みが15mmであってよい。
【0027】
高伸縮生地226は、ポリエステルを含む生地であってよい。また、高伸縮生地226は、例えば厚みが0.25mmであってよい。高伸縮生地226は、高伸縮生地220とともに、1つの袋状の形態であってもよい。すなわち、高伸縮生地220及び高伸縮生地226は、内部にソフトウレタン221からソフトウレタン225を包む袋体の表面を形成してもよい。なお、高伸縮生地220及び高伸縮生地226は、上述した伸縮性生地222と同じ特性であってもよい。
【0028】
下側キルティング部23は、上側から、不織布231と、ソフトウレタン232と、人工綿233と、表面生地234とからなる。なお、下側キルティング部23の構成は、これに限られず、他の材料が追加されてもよいし、一部の材料が省略されてもよい。
【0029】
不織布231は、例えば密度が約40g/m2であってよい。また、不織布231は、例えば厚みが0.25mmであってよい。
【0030】
ソフトウレタン232は、例えば密度がD21であってよい。また、ソフトウレタン232は、例えば厚みが5mmであってよい。
【0031】
人工綿233は、例えば密度が約140g/m2であってよい。また、人工綿233は、例えば厚みが5mmであってよい。
【0032】
表面生地234は、例えば抗菌・防臭・防ダニ機能を有するニット生地であってよい。表面生地234は、好ましくは、密度が180g/m2以上である。表面生地234は、例えば厚みが1mmであってよい。
【0033】
なお、
図2では、特定の構成のマットレス20が示されているが、スプリングコイル層223を有し、かつ、スプリングコイル層223が後述する構成を有する限り、任意である。
【0034】
次に、
図4以降を参照して、スプリングコイル層223の詳細を説明する。
【0035】
図4は、コイルスプリング223aのそれぞれが収容されるポケット空間S1を形成する不織布250(第1布の一例)の説明図である。不織布250は、
図4に示すように、ロール状に巻回された形態を取ることができ、
図5は、一の列の複数のコイルスプリング223a(
図3では、6つのコイルスプリング223a)に対して、それぞれが収容されるポケット空間S1を形成する不織布250の平面図である。
図5には、ポケット空間S1を形成する前の展開状態の不織布250が示されている。
図5において、一点鎖線L1は、不織布250のX方向の中心線を表し、上下端のハッチング部は、後述する溶着部258に対応する。
図6は、不織布250からポケット空間S1を形成する方法の説明図である。
図7は、一の列の複数のポケット空間S1のうちの、3つのポケット空間S1を抜き出してX方向に視た側面図である。
図7では、説明用に、不織布250により形成されるポケット空間S1内のコイルスプリング223aを透視で模式的に示している。
図7(以下の
図8及び
図9も同様)では、各溶着部256、258や接着剤80から84がハッチングで模式的に示されている。
図8は、X方向で隣り合う3つの列のポケット空間S1を抜き出してY方向に視た側面図である。
図8でも、説明用に、不織布250により形成されるポケット空間S1内のコイルスプリング223aを透視で模式的に示している。
図7及び
図8には、ポケット空間S1の上側と下側の伸縮性生地222、224も併せて示されている。
図9は、
図7のラインA―Aに沿った概略的な断面図である。
【0036】
各列のコイルスプリング組立体(溶着部256、258により一体化された不織布250とコイルスプリング223aからなる組立体)を形成する際、
図6に模式的に示すように、一の列を構成するすべてのコイルスプリング223aは、一枚の不織布250の表面に対して、コイル中心軸が垂直となる向きでセットされる。このように不織布250及び複数のコイルスプリング223aがセットされた状態から、不織布250のX方向両端部同士を重ね合わせる態様で不織布250を折り返すことで、複数のコイルスプリング223aが不織布250により包み込まれる。
【0037】
そして、不織布250のX方向両端部同士が溶着されることで、溶着部258が形成される。すなわち、一の列に係る不織布250は、一の列に係るポケット空間S1のそれぞれのX方向一方側の側部に、端部同士を接合する溶着部258(第2溶着部の一例)を有する。また、Y方向で隣り合う各コイルスプリング223aに係るポケット空間S1を仕切る態様で、溶着部256(第1溶着部の一例)が形成される。
図6に示す例では、溶着部256は、不織布250における溶着部256として溶着される箇所が、256-1から256-3で示されている。この場合、対の箇所256-1同士が溶着されることで、一の溶着部256が形成され、対の箇所256-2同士が溶着されることで、他の一の溶着部256が形成され、対の箇所256-3同士が溶着されることで、更なる他の一の溶着部256が形成される。
【0038】
このようにして形成される各列のコイルスプリング組立体(溶着部256、258により一体化された不織布250とコイルスプリング223aからなる組立体)は、
図8に示すように、X方向側部同士が接着剤80(第1接着部の一例)により接合される。また、各列のコイルスプリング組立体は、
図7及び
図8に示すように、XY平面内に延在する上側の伸縮性生地222に接着剤82(第2接着部の一例)により接合されるとともに、XY平面内に延在する下側の伸縮性生地224に接着剤84(第2接着部の一例)により接合される。なお、伸縮性生地222は、一のマットレス20におけるすべてのコイルスプリング223aに対して共通であり、各列のポケット空間S1を形成する不織布250に接着(固着)される。このような伸縮性生地222を設けることで、各ポケット空間S1の間に、マットレス20の表面に対して垂直な方向の局所的な荷重(外部荷重)が付加された場合でも、局所的な沈み込み(各ポケット空間S1の間へのめり込み)を防止できる。これは、伸縮性生地224についても同様である。
【0039】
本実施例によれば、このように各列に対して1枚の不織布250を利用して、各列のポケット空間S1を形成するので、ポケット空間S1ごとに、不織布250を裁断して形成する必要がなく、生産性が大幅に向上する。
【0040】
次に、
図10から
図12を参照して、本実施例のマットレス20の効果を、比較例と対比して示す。
【0041】
図10は、本実施例によるマットレス20の変形しやすさの説明図であり、前出の
図8と同様、X方向で隣り合う6つの列のポケット空間S1を抜き出してY方向に視た側面図である。
図10では、X方向で隣り合う6つの列のポケット空間S1のうちの、X方向の中心位置を中心として、X方向両側を下側に向ける方向(X方向両側が近づく方向)に曲げたときの状態が模式的に示されている。なお、
図10は、あくまで曲げやすさの原理の説明図であり、実際にこのような曲げ変形が実現されることを意味するものでない。
【0042】
図11及び
図12は、比較例によるマットレス20’の説明図であり、
図11は、比較例によるマットレス20’の構成を概略的に示す図であり、X方向で隣り合う3つの列のポケット空間S1を抜き出してY方向に視た側面図である。
図12は、比較例によるマットレス20’の変形しやすさの説明図であり、X方向で隣り合う6つの列のポケット空間S1を抜き出してY方向に視た側面図である。
図12では、前出の本実施例に係る
図10と同様、X方向で隣り合う6つの列のポケット空間S1のうちの、X方向の中心位置を中心として、X方向両側を下側に向ける方向(X方向両側が近づく方向)に曲げたときの状態が模式的に示されている。
【0043】
比較例によるマットレス20’は、本実施例によるマットレス20に対して、X方向とY方向の関係が反転している点が異なる。すなわち、本実施例によるマットレス20は、Y方向の列に対して1枚の不織布250を利用して、各列のポケット空間S1を形成するに対して、比較例によるマットレス20’は、X方向の列に対して1枚の不織布250’を利用して、各列のポケット空間S1を形成する。
【0044】
また、比較例によるマットレス20’は、本実施例によるマットレス20に対して、伸縮性生地222及び伸縮性生地224が、不織布222’及び不織布224’で置換された点が異なる。
【0045】
このような比較例によるマットレス20’の場合、
図12に模式的に示すように、マットレス20’を長手方向の両端部同士が近づく方向に変形させようとする力は、X方向の各ポケット空間S1同士が不織布250’により一体化されているが故に、不織布250’に、不織布250’をX方向に伸長させる方向に作用する(
図12の矢印R902参照)。しかしながら、不織布250’は、不織布であるが故に伸縮性が比較的低く、X方向に伸長し難い。この結果、マットレス20’を長手方向の両端部同士が近づく方向に変形させ難くなる。
【0046】
また、比較例によるマットレス20’の場合、不織布222’に各ポケット空間S1を形成する各不織布250’が接合されているが故に、
図12に模式的に示すように、マットレス20’を長手方向の両端部同士が近づく方向に変形させようとする力は、不織布222’をX方向に伸長させる方向に作用する(
図12の矢印R902参照)。しかしながら、不織布222’は、不織布であるが故に伸縮性が比較的低く、X方向に伸長し難い。この結果、マットレス20’を長手方向の両端部同士が近づく方向に変形させ難くなる。
【0047】
これに対して、本実施例によるマットレス20は、長手方向の両端部同士が近づく方向に変形しやすい。
【0048】
具体的には、本実施例によるマットレス20の場合、X方向の各ポケット空間S1同士が不織布250により一体化されておらず、接着剤80により接合されているだけである。X方向で隣り合うポケット空間S1は、X方向の隙間が広がりやすい。従って、本実施例によれば、マットレス20を長手方向の両端部同士が近づく方向に変形させ易くなる。
【0049】
また、本実施例によるマットレス20の場合、伸縮性生地222に各ポケット空間S1を形成する各不織布250が接合されているが故に、
図10に模式的に示すように、マットレス20を長手方向の両端部同士が近づく方向に変形させようとする力は、伸縮性生地222をX方向に伸長させる方向に作用する(
図10の矢印R900参照)。伸縮性生地222は、不織布222’よりも伸縮性が高く、X方向に伸長し易い。従って、本実施例によれば、マットレス20を長手方向の両端部同士が近づく方向に変形させ易くなる。
【0050】
他方、本実施例によるマットレス20では、X方向の各ポケット空間S1同士が接着剤80や伸縮性生地222、伸縮性生地224により連結されているので、X方向の隙間が過度に広がることがない。すなわち、ポケットコイルの配列の比較的高い維持安定性を確保できる。
【0051】
このようにして、ポケットコイルの配列の比較的高い維持安定性を確保しつつ、特定方向(本実施例では、マットレス20を長手方向の両端部同士が近づく方向)におけるマットレス20の適度な変形が可能となる。
【0052】
なお、
図4以降では、Y方向に並ぶポケット空間S1の列ごとに一枚の不織布250を利用しているが、X方向に並ぶポケット空間S1の列ごとに一枚の不織布250を利用してもよい。なお、かかる構成は、
図4以降の説明において、X方向及びY方向を、Y方向及びX方向とそれぞれ読み替えた構成である。この場合も実質的に同じ効果が得られる。すなわち、マットレス20を短手方向の両端部同士が近づく方向に変形させ易くなる。なお、マットレス20は、X方向及びY方向の長さが同じであってもよい(すなわち短手方向及び長手方向が実質的に存在しない平面視で正方形の形態であってもよい)。
【0053】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0054】
例えば、上述した実施例では、マットレス20は、上下で実質的に対称な構成を有するが、これに限られない。例えば、上側が固定されるマットレスの場合、スプリングコイル層223の下側に延在する伸縮性生地224は、不織布で構成されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
7 ベッドフレーム
20 マットレス
21 上側キルティング部
22 詰め物部
23 下側キルティング部
80 接着剤
81 接着剤
82 接着剤
83 接着剤
84 接着剤
211 表面生地
212 人工綿
213 ソフトウレタン
214 不織布
220 高伸縮生地
221 ソフトウレタン
222 伸縮性生地
223 スプリングコイル層
223a コイルスプリング
224 伸縮性生地
225 ソフトウレタン
226 高伸縮生地
231 不織布
232 ソフトウレタン
233 人工綿
234 表面生地
250 不織布
256 溶着部
258 溶着部
S1 ポケット空間
【手続補正書】
【提出日】2021-12-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に対して垂直な平面内で直交する第1方向及び第2方向に沿って配置された複数のポケットコイルを有するマットレスであって、
個々のポケットコイルを形成し、個々のポケット空間に収容されるコイルスプリングと、
前記第2方向のポケット空間の列ごとに一体化された形態であり、各列のポケット空間を形成する第1布と、
前記列ごとの前記第1布のうちの、前記第1方向で隣り合う前記第1布の間を接着する第1接着部と、
前記複数の列に係る複数のコイルスプリングの上側又は下側で、前記第1方向及び前記第2方向により形成される平面内に延在する第2布と、
複数の列に係る複数の前記第1布と前記第2布とを接着する第2接着部と、を備え、
前記第1布は、前記複数のポケットコイルのすべてに対して設けられ、
前記第2布は、前記第1布よりも伸縮性が高い、マットレス。
【請求項2】
前記第1布は、不織布であり、
前記第2布は、ポリエステルを含む、請求項1に記載のマットレス。
【請求項3】
前記第2布は、伸び率が10%以上である、請求項1又は2に記載のマットレス。
【請求項4】
一の列に係る前記第1布は、一枚で形成され、
一枚の前記第1布は、前記一の列に係るポケット空間のそれぞれを前記第1方向に仕切る第1溶着部と、前記一の列に係るポケット空間のそれぞれの前記第1方向一方側の側部に、端部同士を接合する第2溶着部とを有する、請求項1~3のうちのいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項5】
前記複数のポケットコイルは、前記第1方向に配列される数が、前記第2方向に配列される数よりも多く、
水平状態から起き上がり可能なベッドに配置され、前記ベッドが水平状態から起き上がると、前記第1方向の両端部同士が近づく方向に変形する、請求項1~4のうちのいずれか1項に記載のマットレス。
【手続補正書】
【提出日】2022-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に対して垂直な平面内で直交する第1方向及び第2方向に沿って配置された複数のポケットコイルを有し、水平状態から起き上がり可能なベッド用マットレスであって、
個々のポケットコイルを形成し、個々のポケット空間に収容されるコイルスプリングと、
前記第2方向のポケット空間の列ごとに一体化された形態であり、各列のポケット空間を形成する第1布と、
前記列ごとの前記第1布のうちの、前記第1方向で隣り合う前記第1布の間を接着する第1接着部と、
前記複数の前記列に係る複数のコイルスプリングの上側又は下側で、前記第1方向及び前記第2方向により形成される平面内に延在する第2布と、
前記複数の前記列に係る複数の前記第1布と前記第2布とを接着する第2接着部と、を備え、
前記第1布は、前記複数のポケットコイルのすべてに対して設けられ、
前記第2布は、前記第1布よりも伸縮性が高く、
前記第1接着部は、前記第1方向及び前記第2方向に直交する第3方向における前記第1布のうちの一部にのみ設けられ、前記第3方向における前記第1接着部が設けられていない範囲において、前記第1方向で隣り合う前記第1布の間の前記第1方向の隙間は、前記第1方向の両端部同士が近づく方向での前記マットレスの変形に応じて変化する、マットレス。
【請求項2】
前記第1布は、不織布であり、
前記第2布は、ポリエステルを含む、請求項1に記載のマットレス。
【請求項3】
前記第2布は、伸び率が10%以上である、請求項1又は2に記載のマットレス。
【請求項4】
一の前記列に係る前記第1布は、一枚で形成され、
一枚の前記第1布は、前記一の前記列に係るポケット空間のそれぞれを前記第1方向に仕切る第1溶着部と、前記一の前記列に係るポケット空間のそれぞれの前記第1方向の一方側の側部に、端部同士を接合する第2溶着部とを有する、請求項1~3のうちのいずれか1項に記載のマットレス。
【請求項5】
前記複数のポケットコイルは、前記第1方向に配列される数が、前記第2方向に配列される数よりも多く、
水平状態から起き上がり可能なベッドに配置され、前記ベッドが水平状態から起き上がると、前記第1方向の両端部同士が近づく方向に変形する、請求項1~4のうちのいずれか1項に記載のマットレス。