(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180054
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】磁気記録再生装置、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G11B 33/14 20060101AFI20221129BHJP
G11B 33/12 20060101ALI20221129BHJP
G11B 25/04 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
G11B33/14 501P
G11B33/12 313T
G11B25/04 101F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086957
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水谷 晶代
(72)【発明者】
【氏名】園田 幸司
(72)【発明者】
【氏名】岡本 真
(72)【発明者】
【氏名】木土 拓磨
(57)【要約】 (修正有)
【課題】筐体内に不可逆性吸着部材を組み入れ磁気記録再生装置内の汚染ガスを吸着する。
【解決手段】磁気記録再生装置10用の筐体101は、金属製のケース12と、ケースを封止するための金属製のトップカバー14を有する。ケースには、磁気記録媒体及び磁気ヘッド等の部品が収容されている。筐体の内部から外気へ通じる呼吸孔として、トップカバーに、呼吸フィルター用の第1開孔110及び不活性ガス等を注入可能な第2開孔111を設ける。第1開孔は、トップカバーの内表面101aに設けられた第1の開口と、トップカバーの外表面101bに設けられた第2の開口とを結んでいる。第1の開口の近傍には、装置内の湿度調整を行うために使用される呼吸フィルター100が配置される。呼吸フィルター100には、トップカバーの外側から第1開孔を通してピン型不可逆性吸着部材2-1が取り付けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録再生装置用の密封された筐体内に不可逆性吸着部材を備えた磁気記録再生装置。
【請求項2】
前記不可逆性吸着部材は、ピン型、シート型、または袋型に加工されている請求項1に記載の磁気記録再生装置。
【請求項3】
前記筐体は、トップカバー及び、前記トップカバーを覆う外カバーを含み、前記不可逆性吸着部材は、前記トップカバー、または前記外カバーに設けられている請求項1または2に記載の磁気記録再生装置。
【請求項4】
前記トップカバーは、呼吸フィルターが装着される第1開孔と、前記第1開孔とは異なる第2開孔とを含み、前記不可逆性吸着部材は、前記第1開孔または前記第2開孔のうち一方の開孔に取り付けられる請求項3に記載の磁気記録再生装置。
【請求項5】
筐体内に、磁気記録再生装置の部品を取り付け、
前記磁気記録再生装置に関する試験を行い、
前記試験の終了後に、不可逆性吸着部材を前記筐体に取り付け、
前記筐体を封止する磁気記録再生装置の製造方法。
【請求項6】
筐体内に、磁気記録再生装置の部品と、密閉された不可逆性吸着部材とを取り付け、
前記磁気記録再生装置に関する試験を行い、
前記試験の終了後に、前記密閉された不可逆性吸着部材を開放し、
前記筐体を封止する磁気記録再生装置の製造方法。
【請求項7】
前記不可逆性吸着部材は、ピン型、シート型、または袋型に加工されている請求項5または6に記載の磁気記録再生装置の製造方法。
【請求項8】
前記筐体は、トップカバー及び、前記トップカバーを覆う外カバーを含み、前記不可逆性吸着部材は、前記トップカバー、または、前記外カバーに設けられている請求項6または7に記載の磁気記録再生装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気記録再生装置、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、密封型ハードディスク装置(HDD)における汚染ガスを吸着する吸着剤には、多くの有機物を吸着させるための活性炭や、湿度を調整するためのシリカゲル等の多孔質体を使用している。これらの多孔質体はいずれも可逆性である。例えば、活性炭においては、ガスの濃度や温度によって吸着脱離現象が起こり、シリカゲルにおいても、湿度や温度により吸着する水分量が変化する。可逆性の多孔質体は再生可能であり、多量の有機ガスや水分を除去する場合には有効である。
【0003】
しかし、HDD内には、わずか1%以下でも存在すると不良を起こす可能性のある汚染ガスがある。例えば、酸素は、ヘッドの磁性部分を酸化して特性劣化を起こし、シロキサンは、ヘッドと媒体の隙間に微粒子を発生してクラッシュの原因となることがある。ところが、従来の密封型HDDに使用されている活性炭等の吸着剤では酸素やシロキサンを吸着させる能力は低く、これらを除去するためには特殊な吸着剤を追加することが必要となる。さらに、これらの吸着剤は可逆性であるため、一度吸着しても後に脱離する可能性がある。そのため、酸素やシロキサンなどの除去には、吸着したガスを脱離しない、不可逆性の吸着剤を使用することが望まれる。このような不可逆性吸着部材は、空気に触れると数時間でその吸着性能が劣化するため、封止する直前にHDD内に組み込む必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0066308号明細書
【特許文献2】米国特許第8760797号明細書
【特許文献3】米国特許第10424336号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態は、筐体内に不可逆性吸着部材を組み入れることにより、磁気記録再生装置内の汚染ガスを吸着することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態によれば、磁気記録再生装置用の密封された筐体内に不可逆性吸着部材を備えた磁気記録再生装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る磁気記録再生装置の構造の一例を表す概略的な断面図である。
【
図3】ピン型不可逆性吸着部材の構成を表す概略図である。
【
図4】第2実施形態に係る磁気記録再生装置の製造方法の一例を表すフロー図である。
【
図5】第1実施形態に係る磁気記録再生装置の構造の他の一例の部分的な拡大図である。
【
図6】第1の実施形態に係る磁気記録再生装置の分解斜視図である。
【
図7】第1実施形態に係る磁気記録再生装置の構造の他の一例を表す概略的な断面図である。
【
図9】第1実施形態に係る磁気記録再生装置の構造の他の一例の部分的な拡大図である。
【
図10】第1実施形態に係る磁気記録再生装置の構造の他の一例を表す概略的な断面図である。
【
図12】シート型不可逆性吸着部材の一例を模式的に表す断面図である。
【
図13】シート型不可逆性吸着部材の他の例を模式的に表す断面図である。
【
図14】第1実施形態に係る磁気記録再生装置の構造の他の一例の部分的な拡大図である。
【
図15】第1実施形態に係る磁気記録再生装置の構造の他の一例を表す概略的な断面図である。
【
図17】密閉されたピン型不可逆性吸着部材の構成を表す断面図である。
【
図18】第3実施形態に係る磁気記録再生装置の製造方法の一例を表すフロー図である。
【
図19】第1実施形態に係る磁気記録再生装置の構造の他の一例の部分的な拡大図である。
【
図20】密閉された不可逆性吸着部材の他の例が適用された磁気記録再生装置の部分的な図である。
【
図21】密閉されたシート型不可逆性吸着部材の構成を表す断面図である。
【
図22】密閉された不可逆性吸着部材のさらに他の例が適用された磁気記録再生装置の部分的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態は、以下の第1ないし第3の実施形態を含む。
第1実施形態に係る磁気記録再生装置は、磁気記録再生装置用の密閉された筐体内に不可逆性吸着部材を備えている。
第1実施形態に係る磁気記録再生装置によれば、密閉された筐体内に不可逆性吸着部材を組み入れることにより、磁気記録再生装置内の酸素やシロキサン等の汚染ガスを十分に吸着することができる。
【0009】
第2実施形態に係る磁気記録再生装置の製造方法は、第1実施形態に係る磁気記録再生装置を得るための方法の一例であって、筐体内に、磁気記録再生装置の部品を取り付け、磁気記録再生装置について試験を行い、試験済みの磁気記録再生装置の筐体内に不可逆性吸着部材を取り付け、続いて筐体を封止することを含む。
第2実施形態に係る磁気記録再生装置の製造方法によれば、筐体内に不可逆性吸着部材を取り付け、続いて筐体を封止することにより、製造時に不可逆性吸着部材が空気にさらされる時間をなるべく少なくして可逆性吸着部材の吸着性能の低下を抑制し、筐体内の酸素やシロキサン等の汚染ガスを、不可逆性吸着部材に十分吸着することが可能となる。
【0010】
第3実施形態に係る磁気記録再生装置の製造方法は、第1実施形態に係る磁気記録再生装置を得るための方法の一例であって、筐体内に、磁気記録再生装置の部品と、密閉された不活性な不可逆性吸着部材を取り付け、磁気記録再生装置に関する試験を行い、試験済みの磁気記録再生装置の筐体内の密閉された不可逆性吸着部材を開放して活性化し、続いて筐体を封止することを含む。
第3実施形態に係る磁気記録再生装置の製造方法によれば、試験前の筐体内に不活性な不可逆性吸着部材を取り付け、試験後に活性化させて、続いて筐体を封止することにより、製造時に不可逆性吸着部材が空気にさらされる時間をなるべく少なくして、可逆性吸着部材の吸着性能の低下を抑制し、筐体内の酸素やシロキサン等の汚染ガスを、不可逆性吸着部材に十分吸着することが可能となる。
【0011】
実施形態に使用される不可逆性吸着部材は、不可逆性吸着剤を加工したもので、磁気記録再生装置内に装着しやすい形状が使用される。
不可逆性吸着部材の形状として、ピン型、シート型および袋型などがあげられる。
以下、図面を参照し、種々の形状の不可逆性吸着部材を適用した例を示し、実施形態を具体的に説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更であって容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0012】
実施例1
図1に、第1実施形態に係る磁気記録再生装置の構造の一例を表す概略的な断面図を示す。
図2は、
図1の部分的な拡大図を示す。
磁気記録再生装置10は、不可逆性吸着部材としてピン型不可逆性吸着部材2-1を使用し、呼吸フィルター100に取り付けた例を示す。
【0013】
図示するように、磁気記録再生装置10用の筐体101は、例えば金属製のケース12と、ケース12を封止するための例えば金属製のトップカバー14を有する。ケース12には、図示しない磁気記録媒体、及び磁気ヘッド等の部品が収容されている。筐体101の内部から外気へ通じる呼吸孔として、例えばトップカバー14に、呼吸フィルター用の第1開孔110、及び不活性ガス等を注入可能な第2開孔111を設けることができる。第1開孔110は、トップカバー14の内表面101aに設けられた第1の開口110aと、トップカバー14の外表面101bに設けられた第2の開口110bとを結んでいる。第1の開口110aの近傍には、装置内の湿度調整を行うために使用される呼吸フィルター100が配置される。呼吸フィルター100には、トップカバー14の外側から第1開孔110を通してピン型不可逆性吸着部材2-1が取り付けられている。また、第2開孔111の内表面101a側の開口には、塵埃等の侵入を防止するために通気性メンブレンフィルター131が設けられている。
【0014】
図2に示すように、呼吸フィルター100には、底部105bと側壁部105aと底部105bに対向する開口部に設けられた通気性部材105cとを有する例えば樹脂製のケース105が設けられる。ケース105内には、例えば活性炭及びシリカゲルを含む第1吸着層107を収容することができる。通気性部材105cとしては、例えば通気性メンブレンフィルターを設けることができる。底部105bは第1の開口110a側に面して配置可能であり、第1の開口110aと連通可能な開孔108を有する。開孔108の少なくとも一部は通気性を有する。ここでは例えば開孔108の端部に通気性部材108a例えば通気性メンブレンフィルターが設けられている。
ピン型不可逆性吸着部材2-1は、トップカバー14の開孔110及び呼吸フィルター100の開孔108内に挿入され、ピン型不可逆性吸着部材2-1の頭頂部2-1aは、トップカバー14の第2の開口110b周囲の領域101cに支持されている。このため、頭頂部2-1aの直径は、第2の開口110bの孔径よりも大きくなっている。
【0015】
図3は、ピン型不可逆性吸着部材の構成を表す概略図を示す。
図3に示すように、ピン型不可逆性吸着部材2-1は、ピン型のケース140と、ケース140内に設けられた、例えば酸素、シロキサン、及び水蒸気等の汚染ガスを不可逆的に吸着し得る不可逆性吸着剤147とを有する。ピン型のケース140は、中央部に開口を有する円板状の頭頂部2-1aと、両端に開口を有し、一方の開口が頭頂部2-1aの中央部の開口と連通するように設けられた円筒形の収容部2-1bとを含む。また、頭頂部2-1a側に設けられた一方の開口には例えば通気性メンブレンフィルター等の通気性部材142、一方の開口と対向する他方の開口には例えば通気性メンブレンフィルター等の通気性部材143が各々設けられている。不可逆性吸着剤147は例えば粒状であり、収容部2-1b内に収容されている。
【0016】
磁気記録再生装置10内では、呼吸フィルター100の通気性部材105cと開孔108端部108aを介して筐体101の内部とピン型不可逆性吸着部材2-1との間の流路が確保されており、筐体101内の汚染ガスを十分に吸着することができる。
また、
図1に示すように、トップカバー14上は、ケース12に溶着された外カバー120で覆われている。外カバー120は、例えばアルミニウムなどの金属シートからなり、トップカバー14の第1開孔110及び第2開孔111に対向する位置に、各々、筐体101の内部から外気へ通じる呼吸孔として、第3開孔112及び第4開孔113を有する。ピン型不可逆性吸着部材2-1を第3開孔112を通してトップカバー14上に設置するために、第3開孔112の孔径は、頭頂部2-1aの大きさよりも大きくなっている。第3開孔112及び第4開孔113上は、各々シール123、124により塞がれている。シール123、124としてはアルミニウム等の金属シートを用いた封止材を用いることができる。
【0017】
実施形態に使用可能な不可逆性吸着剤は、例えば、酸素やシロキサン等の汚染ガスを不可逆的に吸着する材料である。不可逆性吸着剤として、粒状、シート状、あるいは繊維状等の種々の形状に加工したものを使用することが可能である。このような不可逆性吸着剤の例として、例えば、エージレス(三菱ガス化学社製)等の脱酸素剤、及びモレキュラーシーブ等の吸湿剤をあげることができる。
不可逆性吸着剤147は空気に触れるとすぐに酸素の吸着を開始し、数時間で飽和してしまうため、ピン型不可逆性吸着部材2-1は、HDDに設置するまでは低湿度無酸素雰囲気中に保管され、HDDを封止する直前に取り出して使用することができる。
【0018】
頭頂部2-1aは、例えば5~15mmの直径を有し、収容部2-1bは、例えば1~12mmの直径と、5~15mmの深さを有することができる。
第1開孔110及び第2の開口110bは、頭頂部2-1aの直径より小さく、収容部2-1bの直径以上の大きさを有し、例えば4~13mmの孔径を有することができる。
呼吸フィルター100の開孔108は、頭頂部2-1aの直径より小さく、収容部2-1bの直径以上の大きさを有し、例えば4~13mmの孔径を有し、例えば6~16mmの深さを有することができる。
外カバー120の第3開孔112は、頭頂部2-1aの直径よりも十分に大きい孔径を有し、例えば6~16mmの孔径を有することができる。
【0019】
第1実施形態に係る磁気記録再生装置10では、筐体に設けられた第1開孔110、第3開孔112を介して、筐体101の外側から呼吸フィルター100に取り付けることが可能なピン型不可逆性吸着部材2-1を使用することにより、筐体101のケース12にトップカバー14、外カバー120を取り付けた後に、ピン型不可逆性吸着部材2-1の取り付けを行うことができる。これにより、磁気記録再生装置10の筐体101が封止される直前まで、ピン型不可逆性吸着部材2-1を空気から遮断して保持することが可能となるので、磁気記録再生装置の製造時にピン型不可逆性吸着部材2-1が空気に触れる時間をできるだけ短くして、その吸着機能が低下するリスクを最小限にすることができる。このような第1実施形態に係る磁気記録再生装置10では、不可逆性吸着部材による汚染ガスの除去が十分に行なわれるため、ヘッドクラッシュ等の不良が発生しにくくなる。また、リペアなどを行う際は、呼吸フィルター100は加熱や真空乾燥などで再生できるため、そのまま使用できるが、不可逆性吸着部材2-1は再生不可のため、交換が必要となる。これに対し、第1実施形態に係る磁気記録再生装置10では、トップカバー及び外カバーを取り外すことなくシール123をはがして不可逆性吸着部材2-1を新品に取り換えることができる。
【0020】
図4に、第2実施形態に係る磁気記録再生装置の製造方法の一例を表すフロー図を示す。
磁気記録再生装置10は、以下のように製造することができる。
図1に示すように、まず、ケース12に磁気記録媒体、及び磁気ヘッド等の磁気記録再生装置のための部品、トップカバー14、及び外カバー120を取り付けることにより、磁気記録再生装置の部分を組み立てる(ST1)。
次に、磁気記録再生装置の動作確認、及び性能検査などの各種試験を行う(ST2)。
【0021】
その後、筐体101内の空気を排気した後、第4開孔113を介して第2開孔111から例えばヘリウムなどの不活性ガスを導入して内圧を調整すると共に、外カバー120の第3開孔112から、トップカバー14の第1開孔110及び呼吸フィルター100の開孔108に、ピン型不可逆性吸着部材2-1の円筒形の収容部2-1bを挿入することにより、筐体101にピン型不可逆性吸着部材2-1を取り付ける(ST3)。
続いて、外カバー120の第3開孔112及び第4開孔113を、例えばアルミニウムなどからなる金属製シール123、124で閉塞することにより、筐体101内を封止し(ST4)、磁気記録再生装置10を得る。
【0022】
このように、第2実施形態に係る磁気記録再生装置の製造方法では、磁気記録再生装置10に、筐体の外から呼吸孔としての開孔を介して筐体内の呼吸フィルターに取り付け可能なピン型不可逆性吸着部材2-1を用いることにより、磁気記録再生装置の各種試験が完了した後に、筐体にピン型不可逆性吸着部材2-1を取り付けることができる。
このため、筐体が封止される直前まで、ピン型不可逆性吸着部材を空気から遮断して保持して、ピン型不可逆性吸着部材2-1が空気に触れる時間をできるだけ短くすることが可能となる。これにより、第2実施形態係る磁気記録再生装置の製造方法では、使用するピン型不可逆性吸着部材の吸着性能が低下しにくく、封止後の磁気記録再生装置内で酸素やシロキサン等の汚染ガスを十分に吸着することができる。
【0023】
図5に、第1実施形態に係る磁気記録再生装置の構造の他の一例の部分的な拡大図を示す。
磁気記録再生装置10’は、不可逆性吸着部材としてピン型不可逆性吸着部材を使用し、呼吸フィルターに取り付けた他の例を示す。
図示するように、この磁気記録再生装置10’には、段差を持つ第3開孔112-1を有する外カバー120-1が設けられる。第3開孔112-1は、例えば2段階の孔径を有し、トップカバー14側の第1開口112-1aの孔径よりも外気側の第2開口112-1bの孔径の方が大きくなっており、第1開口112-1aの周囲の領域120-1aが第1開口112-1aの中心に向かって延出した形状となり、段差を持つ孔となる。また、磁気記録再生装置10’では、ピン型不可逆性吸着部材2-1は、外カバー120-1の第3開孔112-1、トップカバー14の第1開孔110、及び呼吸フィルター100の開孔108内に挿入され、ピン型不可逆性吸着部材2-1の頭頂部2-1aが、外カバー120-1の第3開孔112-1の第1開口112-1a周囲の領域120-1aに支持されるように、取り付けられている。例えば外カバー120-1の第3開孔112-1の第1開口112-1aは頭頂部2-1aの直径よりも小さく、例えば3~14mmの孔径を有することができる。また、第2開口112-1bは、頭頂部2-1aの直径よりも十分に大きい孔径を有し、例えば5~16mmの孔径を有することができる。
【0024】
このように、磁気記録再生装置10’は、外カバー120-1の第3開孔112-1が段差のある形状を有し、及びピン型不可逆性吸着部材2-1の頭頂部2-1aを支持する領域が外カバー120-1にある。磁気記録再生装置10’の他の構成は、磁気記録再生装置10の構成と同様である。
第1実施形態に係る磁気記録再生装置10’では、筐体に設けられた第1開孔110、第3開孔112を介して、呼吸フィルター100に取り付けることが可能なピン型不可逆性吸着部材2-1を使用することにより、筐体101のケース12にトップカバー14、外カバー120を取り付けた後、ピン型不可逆性吸着部材2-1の取り付けを行うことができる。これにより、磁気記録再生装置10’の筐体101を封止する直前まで、ピン型不可逆性吸着部材2-1を空気から遮断して保持することが可能となるので、磁気記録再生装置の製造時にピン型不可逆性吸着部材2-1が空気に触れる時間をできるだけ短くして、その吸着機能が低下するリスクを最小限にすることができる。このようにして、第1実施形態に係る磁気記録再生装置10’内では、不可逆性吸着部材による汚染ガスの除去が十分に行なわれるため、ヘッドクラッシュ等の不良が発生しにくくなる。
【0025】
また、磁気記録再生装置10’は、段差のない第3開孔112を持つ外カバー120の代わりに、2段階の孔径を有する第3開孔112-1を有する外カバー120-1を使用すること、ピン型不可逆性吸着部材2-1は、その頭頂部2-1aが、トップカバー14の第2の開口110b周囲の領域101cに支持される代わりに、第3開孔112-1の第1開口112-1aの周囲の領域120-1aに支持されるように取り付けること以外は、磁気記録再生装置10と同様にして製造することが可能である。
実施例1の磁気記録再生装置をハードディスクドライブ(HDD)に適用した例について詳細に説明する。
【0026】
図6は、トップカバーを外して示す第1の実施形態に係る磁気記録再生装置の分解斜視図である。
磁気記録再生装置10としてのHDDは、偏平なほぼ矩形状の筐体101を備えている。この筐体101は、上面の開口した矩形箱状のケース12と、トップカバー14と、を有している。ケース12は、トップカバー14と隙間を置いて対向する矩形状の底壁12aと、底壁の周縁に沿って立設された側壁12bとを有し、例えば、アルミニウムにより一体に成形されている。トップカバー14は、例えば、ステンレスにより矩形板状に形成されている。トップカバー14は、複数のねじ13によりケース12の側壁12b上にねじ止めされ、ケース12の上部開口を閉塞する。
【0027】
筐体101内には、ディスク状の磁気記録媒体として複数枚の磁気ディスク18、および磁気ディスク18を支持および回転させるスピンドルモータ19が設けられている。スピンドルモータ19は、底壁12a上に配設されている。各磁気ディスク18は、例えば、直径88.9mm(3.5インチ)に形成され、その上面または下面に磁気記録層を有している。各磁気ディスク18は、スピンドルモータ19の図示しないハブに互いに同軸的に嵌合されているとともにクランプばね20によりクランプされ、ハブに固定されている。これにより、各磁気ディスク18は、ケース12の底壁12aと平行に位置した状態に支持されている。各磁気ディスク18は、スピンドルモータ19により所定の回転数で回転される。
【0028】
なお、ここでは、例えば7枚の磁気ディスク18が筐体101内に配置されているが、磁気ディスク18の枚数はこれに限られない。
筐体101内には、磁気ディスク18に対して情報の記録、再生を行なう複数の磁気ヘッド17、および、これらの磁気ヘッド17を磁気ディスク18に対して移動自在に支持したアクチュエータアッセンブリ22が設けられている。また、筐体101内には、アクチュエータアッセンブリ22を回動および位置決めするボイスコイルモータ(VCM)24、磁気ヘッド17が磁気ディスク18の最外周に移動した際、磁気ヘッド17を磁気ディスク18から離間したアンロード位置に保持するランプロード機構25、および変換コネクタ等の電子部品が実装された基板ユニット(FPCユニット)21が設けられている。
【0029】
ケース12の底壁12aの外面には、プリント回路基板27がねじ止めされている。プリント回路基板27は、スピンドルモータ19の動作を制御するとともに、基板ユニット21を介して、VCM24および磁気ヘッド17の動作を制御する制御部を構成している。
アクチュエータアッセンブリ22は、アクチュエータブロック29と、アクチュエータブロック29から同一方向に延出する複数本、例えば、8本のアーム30と、各アーム30の延出端に取付けられた複数のヘッドジンバルアッセンブリ(HGA)32と、を有している。アクチュエータブロック29は、底壁12aに立設された支持シャフト(枢軸)26に、ユニット軸受を介して、回動自在に支持されている。各HGA32は、アーム30から延出するサスペンション(ロードビーム)と、ロードビームおよびアーム30上に配置された図示しないフレクシャ(配線部材)と、フレクシャのジンバル部に搭載された磁気ヘッド17と、を有している。
アクチュエータアッセンブリ22は、アクチュエータブロック29からアーム30と反対の方向に延出した図示しない支持フレームと、この支持フレームに取付けられたボイスコイルと、を更に備えている。ボイスコイルは、底壁12aに設置された一対のヨーク38間に位置し、これらのヨーク38、および何れかのヨーク38に固定された磁石とともにVCM24を構成している。
【0030】
FPCユニット21は、フレキシブルプリント回路基板により形成された本体21aを有し、この本体21aはケース12の底壁12aに固定されている。本体21a上には変換コネクタ等の電子部品が実装されている。変換コネクタは、底壁12aを貫通して、プリント回路基板27に接続されている。FPCユニット21は本体21aから延出した中継フレキシブルプリント回路基板(以下、中継FPCと称する)21bを有している。中継FPC21bの延出端部は、アクチュエータブロック29の側面(設置面)に取付けられている。中継FPC21bの延出端部は、前述したフレクシャを介して磁気ヘッド17に電気的に接続されている。
【0031】
本実施形態によれば、HDDは、筐体101内に設けられた湿度調整のための呼吸フィルター100と、呼吸フィルター100に取り付けられ、酸素やシロキサン等の汚染ガスを吸着するピン型不可逆性吸着部材2-1とをさらに備えている。呼吸フィルター100は、筐体101の内面に固定されている。ピン型不可逆性吸着部材2-1は、筐体101の外面から挿入して呼吸フィルター100に取り付けられている。トップカバー14上には、筐体101を封止する図示しない外カバーをさらに設けることができる。また、トップカバー14及び外カバーには、呼吸フィルター100のための呼吸孔として図示しない第1開孔、及び第1開孔とは異なる第2開孔を設けることが可能であり、ピン型不可逆性吸着部材2-1の取り付けに使用し得る。
【0032】
実施例2
図7に、第1実施形態に係る磁気記録再生装置の構造の他の一例を表す概略的な断面図を示す。
図8は、
図7の部分的な拡大図を示す。
磁気記録再生装置10-1は、不可逆性吸着部材としてピン型不可逆性吸着部材2-1を使用し、第2開孔111-1に取り付けた例を示す。
【0033】
図示するように、磁気記録再生装置10-1用の筐体101-1は、例えば金属製のケース12と、ケース12を封止するための例えば金属製のトップカバー14-1を有する。ケース12には、図示しない磁気記録媒体、及び磁気ヘッド等の部品が収容されている。筐体101-1の内部から外気へ通じる呼吸孔として、例えばトップカバー14-1に、呼吸フィルター用の第1開孔110-1、及び不活性ガス等を注入可能な第2開孔111-1を設けることができる。第2開孔111-1は、トップカバー14-1の内表面101aに設けられた第1の開口111-1aと、トップカバー14-1の外表面101bに設けられた第2の開口111-1bとを結んでいる。第1開孔110-1の筐体101-1の内部側には、装置内の湿度調整を行うために使用され、ケース105-1内に収容された例えば活性炭及びシリカゲルを含む第1吸着層107を有する呼吸フィルター100-1が設けられている。ケース105-1は、底部105-1bと側壁部105-1aと底部105-1bに対向する開口部を有する例えば樹脂製の本体と、開口部に設けられた通気性部材としての通気性メンブレンフィルター105-1cとを有する。また、第2開孔111-1には、トップカバー14-1の外側から第2開孔111-1を通してピン型不可逆性吸着部材2-1が取り付けられている。
【0034】
ピン型不可逆性吸着部材2-1は、
図3と同様の構成を有する。ピン型不可逆性吸着部材2-1の頭頂部2-1aは、第2の開口111-1b周囲の領域101dに支持されている。このため、頭頂部2-1aの直径は、第2の開口111-1bの孔径よりも大きくなっている。また、円筒形の収容部2-1bは、第2開孔111-1に挿入され、トップカバー14-1の内表面101aから突出している。開口111-1aの周囲には、突出した円筒形の収容部2-1bを取り囲む例えば樹脂製の側壁132が設けられ、側壁132の筐体101-1内部側の端面には、塵埃等の侵入を防止するために例えば通気性メンブレンフィルター131-1が設けられている。
【0035】
磁気記録再生装置10-1内では、通気性メンブレンフィルター131-1を介して筐体101の内部とピン型不可逆性吸着部材2-1との間の流路が確保されており、筐体101内の汚染ガスを十分に吸着することができる。
また、
図7に示すように、トップカバー14-1上は、ケース12に溶着された外カバー120-2で覆われている。外カバー120-2は、例えばアルミニウムなどの金属シートからなり、トップカバー14-1の第1開孔110-1及び第2開孔111-1に対向する位置に、各々、第3開孔112-2及び第4開孔113-1を有する。ピン型不可逆性吸着部材2-1を第4開孔113-1を通してトップカバー14上に設置するために、第4開孔113-1の孔径は、頭頂部2-1aの大きさよりも大きくなっている。第3開孔112-2及び第4開孔113-1上は、各々シール123、124により塞がれている。
【0036】
第2開孔111-1は、頭頂部2-1aの直径より小さく、収容部2-1bの直径以上の大きさを有し、例えば2~13mmの孔径を有することができる。
外カバー120の第4開孔113-1は、頭頂部2-1aの直径よりも十分に大きい孔径を有し、例えば6~16mmの孔径を有することができる。
このように、磁気記録再生装置10-1では、第2開孔111-1にピン型不可逆性吸着部材2-1が取り付けられ、及び第2開孔111-1の開口111-1aの周囲にピン型不可逆性吸着部材2-1を取り囲む例えば樹脂製の側壁132、及び側壁132の端面に通気性メンブレンフィルター131-1がさらに設けられたトップカバー14-1を使用する。磁気記録再生装置10-1の他の構成は磁気記録再生装置10と同様である。
【0037】
第1実施形態に係る磁気記録再生装置10-1では、第4開孔113-1を介して筐体101-1の外側から第2開孔111-1に取り付けることが可能なピン型不可逆性吸着部材2-1を使用することにより、筐体101-1のケース12にトップカバー14-1、外カバー120-2を取り付けた後に、ピン型不可逆性吸着部材2-1の取り付けを行うことができる。これにより、磁気記録再生装置10-1の筐体101-1が封止される直前まで、ピン型不可逆性吸着部材2-1を空気から遮断して保持することが可能となるので、磁気記録再生装置の製造時にピン型不可逆性吸着部材2-1が空気に触れる時間をできるだけ短くして、その吸着機能が低下するリスクを最小限にすることができる。このような第1実施形態に係る磁気記録再生装置10-1では、不可逆性吸着部材による汚染ガスの除去が十分に行なわれるため、ヘッドクラッシュ等の不良が発生しにくくなる。また、第1実施形態に係る磁気記録再生装置10-1を用いると、リペアなどを行う際にトップカバー及び外カバーを取り外すことなく不可逆性吸着部材2-1を新品に取り換えることができる。
【0038】
また、実施例2の磁気記録再生装置10-1は、第2実施形態に係る磁気記録再生装置の製造方法の他の一例を適用して、実施例1の磁気記録再生装置10と同様に、製造することが可能である。但し、実施例2では、ケース底部105bに開孔108を有する呼吸フィルター100の代わりに、ケース105-1の底部に開孔を持たない呼吸フィルター100-1を使用する。また、実施例2では、トップカバー14の代わりに、第2開孔111-1の開口111-1aの周囲にピン型不可逆性吸着部材2-1を取り囲む例えば樹脂製の側壁132、及び側壁132の端面に通気性メンブレンフィルター131-1がさらに設けられたトップカバー14-1を使用する。さらに、実施例2では、筐体101の外から呼吸フィルター100にピン型不可逆性吸着部材2-1を取り付ける代わりに、筐体101-1の外から第2開孔111-1にピン型不可逆性吸着部材2-1を取り付ける。
【0039】
第2実施形態に係る磁気記録再生装置の製造方法の他の一例によれば、磁気記録再生装置10-1に、筐体の外から呼吸孔としての開孔に取り付け可能なピン型不可逆性吸着部材2-1を用いることにより、磁気記録再生装置の各種試験が完了した後に、筐体にピン型不可逆性吸着部材2-1を取り付けることができる。このため、筐体が封止される直前まで、ピン型不可逆性吸着部材を空気から遮断して保持して、ピン型不可逆性吸着部材2-1が空気に触れる時間をできるだけ短くすることが可能となる。これにより、第2実施形態係る磁気記録再生装置の製造方法では、使用するピン型不可逆性吸着部材の吸着性能が低下しにくく、封止後の磁気記録再生装置内で酸素やシロキサン等の汚染ガスを十分に吸着することができる。
図9に、第1実施形態に係る磁気記録再生装置の構造の他の一例の部分的な拡大図を示す。
磁気記録再生装置10-1’は、不可逆性吸着部材としてピン型不可逆性吸着部材を使用し、第2開孔111-1に取り付けた他の例を示す。
【0040】
図示するように、この磁気記録再生装置10-1’には、段差のない第4開孔113-1を有する外カバー120-2の代わりに、段差を持つ第4開孔113-2を有する外カバー120-3が設けられる。第4開孔113-2は、例えば2段階の孔径を有し、トップカバー14側の第1開口113-2aの孔径よりも外気側の第2開口113-2bの孔径の方が大きくなっており、第1開口113-2aの周囲の領域120-3aが第1開口113-2aの中心に向かって延出した形状となり、段差を持つ孔となる。また、磁気記録再生装置10-1’では、ピン型不可逆性吸着部材2-1は、外カバー120-3の第4開孔113-2、及びトップカバー14-1の開孔111-1に挿入され、ピン型不可逆性吸着部材2-1の頭頂部2-1aが、外カバー120-3の第4開孔113-2の第1開口113-2a周囲の領域120-3aに支持されるように、取り付けられている。例えば外カバー120-3の第4開孔113-2の第1開口113-2aは頭頂部2-1aの直径よりも小さく、例えば2~13mmの孔径を有することができる。また、第2開口113-2bは、頭頂部2-1aの直径よりも十分に大きい孔径を有し、例えば6~16mmの孔径を有することができる。
このように、磁気記録再生装置10-1’は、外カバー120-3の第4開孔113-2が段差のある形状を有し、及びピン型不可逆性吸着部材2-1の頭頂部2-1aを支持する領域が外カバー120-3にある。磁気記録再生装置10-1’の他の構成は、磁気記録再生装置10-1と同様である。
【0041】
第1実施形態に係る磁気記録再生装置10-1’では、筐体101-1の外側から第4開孔113-2を介して、第2開孔111-1に取り付けることが可能なピン型不可逆性吸着部材2-1を使用することにより、筐体101-1のケース12にトップカバー14-1、外カバー120-3を取り付けた後、ピン型不可逆性吸着部材2-1の取り付けを行うことができる。これにより、磁気記録再生装置10-1’の筐体101-1を封止する直前まで、ピン型不可逆性吸着部材2-1を空気から遮断して保持することが可能となるので、磁気記録再生装置の製造時にピン型不可逆性吸着部材2-1が空気に触れる時間をできるだけ短くして、その吸着機能が低下するリスクを最小限にすることができる。このようにして、第1実施形態に係る磁気記録再生装置10-1’内では、不可逆性吸着部材による汚染ガスの除去が十分に行なわれるため、ヘッドクラッシュ等の不良が発生しにくくなる。また、リペアなどを行う際トップカバー及び外カバーを取り外すことなく不可逆性吸着部材2-1を新品に取り換えることができる。
【0042】
また、磁気記録再生装置10-1’は、段差のない第4開孔113-1を持つ外カバー120-2の代わりに、2段階の孔径を有する第4開孔113-2を有する外カバー120-3を使用すること、ピン型不可逆性吸着部材2-1は、その頭頂部2-1aが、トップカバー14の第2の開口111-1b周囲の領域101dに支持される代わりに、第4開孔113-2の第1開口113-2aの周囲の領域120-3aに支持されるように取り付けること以外は、磁気記録再生装置10-1と同様にして製造することが可能である。
実施例3
図10に、第1実施形態に係る磁気記録再生装置の構造の他の一例を表す概略的な断面図を示す。
図11は、
図10の部分的な拡大図を示す。
磁気記録再生装置10-2は、不可逆性吸着部材としてシート型不可逆性吸着部材2-2を使用し、第2開孔111-1に取り付けた例を示す。
【0043】
図示するように、磁気記録再生装置10-2用の筐体101は、例えば金属製のケース12と、ケース12を封止するための例えば金属製のトップカバー14を有する。ケース12には、図示しない磁気記録媒体、及び磁気ヘッド等の部品が収容されている。筐体101の内部から外気へ通じる呼吸孔として、例えばトップカバー14に、呼吸フィルター用の第1開孔110-1、及び不活性ガス等を注入可能な第2開孔111-1を設けることができる。第2開孔111-1は、トップカバー14の内表面101aに設けられた第1の開口111-1aと、トップカバー14の外表面101bに設けられた第2の開口111-1bとを結んでいる。第1開孔110-1の筐体101-1の内部側には、装置内の湿度調整を行うために使用され、ケース105-1内に収容された例えば活性炭及びシリカゲルを含む第1吸着層107を有する呼吸フィルター100-1が設けられている。ケース105-1は、底部105-1bと側壁部105-1aと底部105-1bに対向する開口部を有する例えば樹脂製の本体と、開口部に設けられた通気性部材としての通気性メンブレンフィルター105-1cとを有する。また、第2開孔111-1には、トップカバー14の外側から第2開孔111-1の周囲の領域101dにシート型不可逆性吸着部材2-2が設けられている。
【0044】
図12は、シート型不可逆性吸着部材の一例を模式的に表す断面図である。
シート型不可逆性吸着部材2-2として、例えば
図12に示すように、繊維状に加工した不可逆性吸着剤107-1を織り込んだ織布シート145-3を使用することができる。シート型不可逆性吸着部材2-2の周縁部2-2aは、第2の開口111-1b周囲の領域101dに支持されている。このため、シート型不可逆性吸着部材2-2の直径は、第2の開口111-1bの孔径よりも大きくなっている。また、第2開孔111-1の内表面101a側の第1の開口111-1aには、塵埃等の侵入を防止するために例えば通気性メンブレンフィルター131-2が設けられている。
【0045】
磁気記録再生装置10-1内では、通気性メンブレンフィルター131-2を介して筐体101の内部とピン型不可逆性吸着部材2-2のとの間の流路が確保されており、筐体101内の汚染ガスを十分に吸着することができる。
また、
図10に示すように、トップカバー14上は、ケース12に溶着された外カバー120-2で覆われている。外カバー120-2は、例えばアルミニウムなどの金属シートからなり、トップカバー14の第1開孔110-1及び第2開孔111-1に対向する位置に、各々、第3開孔112-2及び第4開孔113-1を有する。シート型不可逆性吸着部材2-2を第4開孔113-1を通してトップカバー14上に設置するために、第4開孔113-1の孔径は、シート型不可逆性吸着部材2-2の大きさよりも大きくなっている。第3開孔112-2及び第4開孔113-1上は、各々シール123、124により塞がれている。なお、第2開孔111-1は、シート型不可逆性吸着部材2-2の大きさより小さく、例えば2~10mmの孔径を有することができる。また、外カバー120の第4開孔113-1は、シート型不可逆性吸着部材2-2の大きさよりも十分に大きい孔径を有し、例えば4~12mmの孔径を有することができる。
【0046】
このように、磁気記録再生装置10-2は、第2開孔111-1にシート型不可逆性吸着部材2-2が取り付けられている。磁気記録再生装置10-2の他の構成は、磁気記録再生装置10と同様である。
第1実施形態に係る磁気記録再生装置10-2では、第4開孔113-1を介して筐体101-1の外側から第2開孔111-1に取り付けることが可能なシート型不可逆性吸着部材2-2を使用することにより、筐体101のケース12にトップカバー14、外カバー120-2を取り付けた後に、シート型不可逆性吸着部材2-2の取り付けを行うことができる。これにより、磁気記録再生装置10-2の筐体101が封止される直前まで、シート型不可逆性吸着部材2-2を空気から遮断して保持することが可能となるので、磁気記録再生装置の製造時にシート型不可逆性吸着部材2-2が空気に触れる時間をできるだけ短くして、その吸着機能が低下するリスクを最小限にすることができる。このような第1実施形態に係る磁気記録再生装置10-2では、不可逆性吸着部材による汚染ガスの除去が十分に行なわれるため、ヘッドクラッシュ等の不良が発生しにくくなる。また、リペアなどを行う際にトップカバー及び外カバーを取り外すことなくシール124をはがすだけで不可逆性吸着部材2-2を新品に取り換えることができる。
【0047】
また、磁気記録再生装置10-2は、第2実施形態に係る磁気記録再生装置の製造方法の他の一例として、実施例1の磁気記録再生装置10と同様に製造することが可能である。但し、磁気記録再生装置10-2では、ケース底部105bに開孔108を有する呼吸フィルター100の代わりに、ケース105-1の底部に開孔を持たない呼吸フィルター100-1を使用する。また、磁気記録再生装置10-2では、筐体101の外から呼吸フィルター100にピン型不可逆性吸着部材2-1を取り付ける代わりに、筐体101の外から第2開孔111-1にシート型不可逆性吸着部材2-2を取り付ける。
【0048】
第2実施形態に係る磁気記録再生装置の製造方法の他の一例によれば、磁気記録再生装置10-2に、筐体の外から第2開孔111-1に取り付け可能なシート型不可逆性吸着部材2-2を用いることにより、磁気記録再生装置の各種試験が完了した後に、筐体にシート型不可逆性吸着部材2-2を取り付けることができる。このため、筐体が封止される前まで、シート型不可逆性吸着部材2-2を空気から遮断して保持し、空気に触れる時間をできるだけ短くすることが可能となる。これにより、第2実施形態係る磁気記録再生装置の製造方法では、使用するピン型不可逆性吸着部材の吸着性能が低下しにくく、封止後の磁気記録再生装置内で酸素やシロキサン等の汚染ガスを十分に吸着することができる。
【0049】
図14に、第1実施形態に係る磁気記録再生装置の構造の他の一例の部分的な拡大図を示す。
磁気記録再生装置10-2’は、不可逆性吸着部材としてシート型不可逆性吸着部材を使用し、第2開孔111-1に取り付けた他の例を示す。
図示するように、この磁気記録再生装置10-2’には、段差のない第4開孔113-1を有する外カバー120-2の代わりに、段差を持つ第4開孔113-2を有する外カバー120-3が設けられる。第4開孔113-2は、例えば2段階の孔径を有し、トップカバー14側の第1開口113-2aの孔径よりも外気側の第2開口113-2bの孔径の方が大きくなっており、第1開口113-2aの周囲の領域120-3aが第1開口113-2aの中心に向かって延出した形状となり、段差を持つ孔となる。また、磁気記録再生装置10-2’では、シート型不可逆性吸着部材2-2は、外カバー120-3の第4開孔113-2、及びトップカバー14の開孔111-1に挿入され、シート型不可逆性吸着部材2-2の周縁部2-2aが、外カバー120-3の第4開孔113-2の第1開口113-2a周囲の領域120-3aに支持されるように、取り付けられている。例えば外カバー120-3の第4開孔113-2の第1開口113-2aはシート型不可逆性吸着部材2-2の大きさよりも小さく、例えば2~10mmの孔径を有することができる。また、第2開口113-2bは、シート型不可逆性吸着部材2-2の大きさよりも十分に大きい孔径を有し、例えば4~12mmの孔径を有することができる。
【0050】
このように、磁気記録再生装置10-2’は、外カバー120-3の第4開孔113-2が段差のある形状を有し、及びシート型不可逆性吸着部材2-2を支持する領域120-3aが外カバー120-3にある。磁気記録再生装置10-2’の他の構成は、磁気記録再生装置10-2と同様である。
第1実施形態に係る磁気記録再生装置10-2’では、筐体101の外側から第4開孔113-2に取り付けることが可能なシート型不可逆性吸着部材2-2を使用することにより、筐体101のケース12にトップカバー14、外カバー120-3を取り付けた後、シート型不可逆性吸着部材2-2の取り付けを行うことができる。これにより、磁気記録再生装置10-2’の筐体101を封止する直前まで、シート型不可逆性吸着部材2-2を空気から遮断して保持することが可能となるので、磁気記録再生装置の製造時にシート型不可逆性吸着部材2-2が空気に触れる時間をできるだけ短くして、その吸着機能が低下するリスクを最小限にすることができる。このようにして、第1実施形態に係る磁気記録再生装置10-2’内では、不可逆性吸着部材による汚染ガスの除去が十分に行なわれるため、ヘッドクラッシュ等の不良が発生しにくくなる。また、リペアなどを行う際にトップカバー及び外カバーを取り外すことなくシール124をはがすだけで不可逆性吸着部材2-2’を新品に取り換えることができる。
【0051】
また、磁気記録再生装置10-2’は、段差のない第4開孔113-1を持つ外カバー120-2の代わりに、2段階の孔径を有する第4開孔113-2を有する外カバー120-3を使用すること、シート型不可逆性吸着部材2-2は、トップカバー14の第2の開口111-1b周囲の領域101dに支持される代わりに、第4開孔113-2の第1開口113-2aの周囲の領域120-3aに支持されるように取り付けること以外は、磁気記録再生装置10-2と同様にして、第2実施形態に係る磁気記録媒体の製造方法を適用して製造することが可能である。
【0052】
図12のシート型不可逆性吸着部材2-2は、
図11に示す磁気記録再生装置10-2及び
図14に示す磁気記録再生装置10-2’に使用可能なシート型不可逆性吸着部材の一例であり、他のシート型不可逆性吸着部材も使用可能である。
図13は、シート型不可逆性吸着部材の他の例を模式的に表す断面図である。
図13に示すように、例えば通気性メンブレンフィルター等からなる2枚の通気性シート145-1、145-2の間に、シート状に加工した不可逆性吸着剤107-2を配置して積層した積層シート2-2’等を使用することも可能である。
実施例4
図15に、第1実施形態に係る磁気記録再生装置の構造の他の一例を表す概略的な断面図を示す。
図16は、
図15の部分的な拡大図を示す。
磁気記録再生装置10-3は、不可逆性吸着部材として吸着剤が密閉されたピン型不可逆性吸着部材2-3を使用し、第2開孔111-1に取り付けた例を示す。
【0053】
図示するように、磁気記録再生装置10-3用の筐体101-1は、例えば金属製のケース12と、ケース12を封止するための例えば金属製のトップカバー14-1を有する。ケース12には、図示しない磁気記録媒体、及び磁気ヘッド等の部品が収容されている。筐体101-1の内部から外気へ通じる呼吸孔として、例えばトップカバー14-1に、呼吸フィルター用の第1開孔110-1、及び不活性ガス等を注入可能な第2開孔111-1を設けることができる。第2開孔111-1は、トップカバー14-1の内表面101aに設けられた第1の開口111-1aと、トップカバー14-1の外表面101bに設けられた第2の開口111-1bとを結んでいる。第1開孔110-1の筐体101-1の内部側には、装置内の湿度調整を行うために使用され、ケース105-1内に収容された例えば活性炭及びシリカゲルを含む第1吸着層107を有する呼吸フィルター100-1が設けられている。ケース105-1は、底部105-1bと側壁部105-1aと底部105-1bに対向する開口部を有する樹脂製の本体と、開口部に設けられた通気性部材としての通気性メンブレンフィルター105-1cとを有する。また、第2開孔111-1には、トップカバー14-1の外側から第2開孔111-1を通してピン型不可逆性吸着部材2-3が取り付けられている。
【0054】
図17は、密閉されたピン型不可逆性吸着部材の構成を表す概略図である。
図17に示すように、ピン型不可逆性吸着部材2-3は、例えばモールド樹脂やポリアセタール樹脂などを用いて形成されたピン型のケース144と、ケース144内に設けられた、例えば酸素、シロキサン、及び水蒸気等の汚染ガスを不可逆的に吸着し得る不可逆性吸着剤147とを有する。ピン型のケース144は、円板状の頭頂部2-3aと、頭頂部2-3aの一方の面の中央部から垂直に延びる円筒形の収容部2-3bとを含み、外気に対し密閉されている。また、円筒形の収容部2-3b内の頭頂部2-3a側には頭頂部2-3aと距離を置いて例えば通気性メンブレンフィルター等の通気性部材145が設けられ、円筒形の収容部2-3b内の頭頂部2-3aと対向する端部2-3c側には端部2-3cと距離を置いて例えば通気性メンブレンフィルター等の通気性部材146が各々設けられている。不可逆性吸着剤147は例えば粒状であり、収容部2-1b内の通気性部材145と通気性部材146との間に収容されており、空気から遮断して密閉して保持されている。
【0055】
ピン型不可逆性吸着部材2-3の頭頂部2-3aは、第2の開口111-1b周囲の領域101dに支持されている。このため、頭頂部2-3aの直径は、第2の開口111-1bの孔径よりも大きくなっている。また、円筒形の収容部2-3bは、第2開孔111-1に挿入され、トップカバー14-1の内表面101aに突出している。開口111-1aの周囲には、突出した円筒形の収容部2-3bを取り囲む例えば樹脂製の側壁132が設けられている。側壁132の筐体101-1内部側の端面には、塵埃等の侵入を防止するための例えば通気性メンブレンフィルター131-1が円筒形の収容部2-3bの端部と距離を置いて設けられている。側壁132を介してメンブレンフィルター131-1を設けることにより、針状部材150でピン型不可逆性吸着部材2-3を貫通させた際にメンブレンフィルター131-1が破損することを防止することができる。
【0056】
磁気記録再生装置10-3は、例えば針状部材150を用い、矢印の方向に示すように頭頂部2-3aの中央部付近から端部2-3cの中央部付近にかけて貫通することにより、ピン型不可逆性吸着部材2-3の密閉された収容部2-3bを開放し、空気から遮断して不活性な状態で保持されている不可逆性吸着剤147を活性化することができる。通気性部材145、146が設けられていることにより、ピン型不可逆性吸着部材2-3が貫通された場合に不可逆性吸着剤147が出てしまうことを防いでいる。その後、開孔113-1は、シール124により閉塞することができる。これにより、端部2-3c側のメンブレンフィルター146を介して筐体101-1の内部とピン型不可逆性吸着部材2-3内部との間の流路が確保され、筐体101-1内の汚染ガスを十分に吸着することができる。
【0057】
また、
図15に示すように、トップカバー14-1上は、ケース12に溶着された外カバー120-2で覆われている。外カバー120-2は、例えばアルミニウムなどの金属シートからなり、トップカバー14-1の第1開孔110-1及び第2開孔111-1に対向する位置に、各々、第3開孔112-2及び第4開孔113-1を有する。ピン型不可逆性吸着部材2-1を第4開孔113-1を通してトップカバー14-1上に設置するために、第4開孔113-1の孔径は、頭頂部2-1aの大きさよりも大きくなっている。第3開孔112-2及び第4開孔113-1上は、各々シール123、124により塞がれている。
第2開孔111-1は、頭頂部2-1aの直径より小さく、収容部2-1bの直径以上の大きさを有し、例えば2~13mmの孔径を有することができる。
【0058】
外カバー120の第4開孔113-1は、頭頂部2-1aの直径よりも十分に大きい孔径を有し、例えば6~16mmの孔径を有することができる。
このように、磁気記録再生装置10-3では、第2開孔111-1に密閉されたピン型不可逆性吸着部材2-3が取り付けられ、及び第2開孔111-1の開口111-1aの周囲にピン型不可逆性吸着部材2-3を取り囲む例えば樹脂製の側壁132、及び側壁132の端面に通気性メンブレンフィルター131-1がさらに設けられたトップカバー14-1を使用する。磁気記録再生装置10-3の他の構成は磁気記録再生装置10と同様である。
【0059】
第1実施形態に係る磁気記録再生装置10-3では、第4開孔113-1を介して筐体101-1の外側から第2開孔111-1に取り付けることが可能なピン型不可逆性吸着部材2-3を使用することにより、筐体101のケース12にトップカバー14、外カバー120-2を取り付けた後に、ピン型不可逆性吸着部材2-3の取り付けを行うことができる。また、不可逆性吸着剤147が不活性な状態でピン型不可逆性吸着部材2-3を用いることにより、筐体101-1が封止される直前に針状部材150を用いて頭頂部2-3aと端部2-3cを貫通するだけで、不可逆性吸着剤147を活性化することができるので、磁気記録再生装置の製造時にピン型不可逆性吸着部材2-3の不可逆性吸着剤147が空気に触れる時間をできるだけ短くして、その吸着機能が低下するリスクを最小限にすることができる。このような第1実施形態に係る磁気記録再生装置10-3では、不可逆性吸着部材による汚染ガスの除去が十分に行なわれるため、ヘッドクラッシュ等の不良が発生しにくくなる。また、リペアなどを行う際にトップカバー及び外カバーを取り外すことなく不可逆性吸着部材2-3を新品に取り換えることができる。
【0060】
図18に、第3実施形態に係る磁気記録再生装置の製造方法の一例を表すフロー図を示す。
磁気記録再生装置10-3は、以下のように製造することができる。
図16に示すように、まず、ケース12に図示しない磁気記録媒体、及び磁気ヘッド等の磁気記録再生装置のための部品、トップカバー14-1、及び外カバー120-2を取り付ける。その後、外カバー120-2の第4開孔113-1から、トップカバー14-1の第2開孔111-1に、ピン型不可逆性吸着部材2-3の円筒形の収容部2-3bを挿入することにより、筐体101-1にピン型不可逆性吸着部材2-3を取り付け、磁気記録再生装置の部分を組み立てる(ST11)。
次に、磁気記録再生装置の各種試験を行う(ST12)。
【0061】
試験後、筐体101-1内の空気を排気した後、第3開孔112-2を介して第1開孔110-1から例えばヘリウムなどの不活性ガスを導入して内圧を調整すると共に、
図16に示すように、針状部材150を、矢印の方向に頭頂部2-3aの中央部付近から端部2-3cの中央部付近にかけて貫通して、頭頂部2-3aと端部2-3cを開孔させることにより、密閉されたピン型不可逆性吸着部材2-3を開放し(ST13)、空気から遮断して不活性な状態で保持されている不可逆性吸着剤147を活性化する。
続いて、
図15に示すように外カバー120-2の第3開孔112-2及び第4開孔113-1を、例えばアルミニウムなどからなる金属製シール123、124を用いて閉塞することにより、筐体101-1内を封止し(ST14)、磁気記録再生装置10-3を得る。
【0062】
第3実施形態に係る磁気記録再生装置の製造方法の他の一例によれば、磁気記録再生装置10-3に、筐体の外から呼吸孔としての開孔に取り付け可能なピン型不可逆性吸着部材2-3を用いることにより、筐体101のケース12にトップカバー14、外カバー120-2を取り付けた後に、ピン型不可逆性吸着部材2-3の取り付けを行うことができる。また、不可逆性吸着剤147が不活性な状態でピン型不可逆性吸着部材2-3を取り付けることが可能であり、取り付け後に試験を行っても吸着性能が低下することが無く、試験後の筐体101-1が封止される直前に針状部材150を用いて頭頂部2-3aと端部2-3cを貫通するだけで、不可逆性吸着剤147を活性化することができる。このように、第3実施形態に係る磁気記録再生装置の製造方法によれば、筐体が封止される直前まで、ピン型不可逆性吸着部材2-3を空気から遮断して保持して、ピン型不可逆性吸着部材2-3が空気に触れる時間をできるだけ短くすることが可能となり、これにより、使用するピン型不可逆性吸着部材2-3の吸着性能が低下しにくく、封止後の磁気記録再生装置10-3内で酸素やシロキサン等の汚染ガスを十分に吸着することができる。
【0063】
図19に、第1実施形態に係る磁気記録再生装置の構造の他の一例の部分的な拡大図を示す。
磁気記録再生装置10-3’は、不可逆性吸着部材として図ピン型不可逆性吸着部材を使用し、第2開孔111-1に取り付けた他の例を示す。
図示するように、この磁気記録再生装置10-3’には、段差のない第4開孔113-1を有する外カバー120-2の代わりに、段差を持つ第4開孔113-2を有する外カバー120-3が設けられる。第4開孔113-2は、例えば2段階の孔径を有し、トップカバー14側の第1開口113-2aの孔径よりも外気側の第2開口113-2bの孔径の方が大きくなっており、第1開口113-2aの周囲の領域120-3aが第1開口113-2aの中心に向かって延出した形状となり、段差を持つ孔となる。また、磁気記録再生装置10-3’では、ピン型不可逆性吸着部材2-3は、外カバー120-3の第4開孔113-2、及びトップカバー14-1の第2開孔111-1に挿入され、ピン型不可逆性吸着部材2-3の頭頂部2-3aが、外カバー120-3の第4開孔113-2の第1開口113-2a周囲の領域120-3aに支持されるように、取り付けられている。例えば外カバー120-3の第4開孔113-2の第1開口113-2aは頭頂部2-3aの直径よりも小さく、例えば2~13mmの孔径を有することができる。また、第2開口113-2bは、頭頂部2-1aの直径よりも十分に大きい孔径を有し、例えば6~16mmの孔径を有することができる。
【0064】
このように、磁気記録再生装置10-3’は、外カバー120-3の第4開孔113-2が段差のある形状を有し、及びピン型不可逆性吸着部材2-3の頭頂部2-3aを支持する領域が外カバー120-3にある。磁気記録再生装置10-3’の他の構成は、磁気記録再生装置10-3と同様である。
第1実施形態に係る磁気記録再生装置10-3’では、筐体101-1の外側から第4開孔113-2を介して、第2開孔111-1に取り付けることが可能なピン型不可逆性吸着部材2-3を使用することにより、筐体101-1のケース12にトップカバー14-1、外カバー120-3を取り付けた後、ピン型不可逆性吸着部材2-3’の取り付けを行うことができる。また、不可逆性吸着剤147が不活性な状態のピン型不可逆性吸着部材2-3を用いることにより、筐体101-1が封止される直前に針状部材150を用いて頭頂部2-3aと端部2-3cを貫通するだけで、不可逆性吸着剤147を活性化することができるので、磁気記録再生装置の製造時にピン型不可逆性吸着部材2-3の不可逆性吸着剤147が空気に触れる時間をできるだけ短くして、その吸着機能が低下するリスクを最小限にすることができる。このように、第1実施形態に係る磁気記録再生装置10-3’では、不可逆性吸着部材による汚染ガスの除去が十分に行なわれるため、ヘッドクラッシュ等の不良が発生しにくくなる。また、リペアなどを行う際にトップカバー及び外カバーを取り外すことなく不可逆性吸着部材2-3を新品に取り換えることができる。
【0065】
また、磁気記録再生装置10-3’は、段差のない第4開孔113-1を持つ外カバー120-2の代わりに、2段階の孔径を有する第4開孔113-2を有する外カバー120-3を使用すること、ピン型不可逆性吸着部材2-3’は、その頭頂部2-1aが、トップカバー14の第2の開口111-1b周囲の領域101dに支持される代わりに、外カバー120-3に設けられた第4開孔113-2の第1開口113-2aの周囲の領域120-3aに支持されるように取り付けること以外は、磁気記録再生装置10-3と同様にして製造することが可能である。
実施例5
図20は、密閉された不可逆性吸着部材の他の例が適用された磁気記録再生装置10-4の部分的な図である。
図21は、密閉された袋型不可逆性吸着部材の構成を表す断面図である。
【0066】
図示するように、密閉された袋型不可逆性吸着部材2-4は、不可逆性吸着剤107-2を、例えばアルミ蒸着シートの袋や、三菱ガス化学社製PTS袋などのような気密性の袋状ケース145-4に封入した構成を有し、密閉されたピン型不可逆性吸着部材2-3の代わりに、
図15に記載の磁気記録再生装置に適用することが可能である。また、このとき、樹脂製の側壁132の代わりに、樹脂製の側壁132の高さよりも低い高さを有し、第2開孔111-1との距離が近い側壁133を使用することができる。また、側壁133の筐体101-1内部側の端面には、塵埃等の侵入を防止するための例えば通気性メンブレンフィルター134を第2開孔111-1と十分距離を置いて設けることができる。側壁133を介してメンブレンフィルター134を設けることにより、針状部材150で袋型不可逆性吸着部材2-4を貫通させた際にメンブレンフィルター134が破損することを防止することができる。
【0067】
磁気記録再生装置10-4は、磁気記録再生装置10-3と同様に、針状部材150を用いて、矢印の方向に示すように袋型不可逆性吸着部材2-4の一面の中央部付近から他方の面の中央部付近にかけて貫通することにより、袋型不可逆性吸着部材2-4の密閉を開放し、空気から遮断して不活性な状態で保持されている不可逆性吸着剤を活性化することができる。その後、第4開孔113-1は、磁気記録再生装置10-3と同様にしてシール124により閉塞することができる。これにより、筐体101-1の内部と袋型不可逆性吸着部材2-4内部との間の流路が確保され、筐体101-1内の汚染ガスを十分に吸着することができる。
【0068】
第1実施形態に係る磁気記録再生装置10-4では、磁気記録再生装置10-3と同様に、第4開孔113-1を介して筐体101-1の外側から第2開孔111-1に取り付けることが可能な袋型不可逆性吸着部材2-4を使用することにより、筐体101のケース12にトップカバー14、外カバー120-2を取り付けた後に、袋型不可逆性吸着部材2-4の取り付けを行うことができる。また、不可逆性吸着剤が不活性な状態で袋型不可逆性吸着部材2-4を取り付けることが可能であり、筐体101-1が封止される直前に針状部材150を用いて袋型不可逆性吸着部材2-4を貫通するだけで、不可逆性吸着剤を活性化することができるので、磁気記録再生装置の製造時に袋型不可逆性吸着部材2-4の不可逆性吸着剤が空気に触れる時間をできるだけ短くして、その吸着機能が低下するリスクを最小限にすることができる。このような第1実施形態に係る磁気記録再生装置10-4では、不可逆性吸着部材による汚染ガスの除去が十分に行なわれるため、ヘッドクラッシュ等の不良が発生しにくくなる。また、リペアなどを行う際にトップカバー及び外カバーを取り外すことなく不可逆性吸着部材2-4を新品に取り換えることができる。
また、磁気記録再生装置10-4は、第3実施形態に係る磁気記録再生装置の製造方法を適用して、
図18のフロー図に示すような磁気記録再生装置10-3と同様にして製造することができる。
【0069】
第3実施形態に係る磁気記録再生装置の製造方法の他の一例を用いると、磁気記録再生装置10-4に、筐体の外から呼吸孔としての開孔に取り付け可能な袋型不可逆性吸着部材2-4を用いることにより、筐体101-1のケース12にトップカバー14-1、外カバー120-2を取り付けた後に、袋型不可逆性吸着部材2-4の取り付けを行うことができる。また、不可逆性吸着剤が不活性な状態で袋型不可逆性吸着部材2-4を取り付けることが可能であり、取り付け後に試験を行っても吸着性能が低下することが無く、試験後の筐体101-1が封止される直前に針状部材150を用いて袋型不可逆性吸着部材2-4を貫通するだけで、不可逆性吸着剤を活性化することができる。このように、第3実施形態に係る磁気記録再生装置の製造方法によれば、筐体が封止される直前まで、袋型不可逆性吸着部材2-4を空気から遮断して保持して、袋型不可逆性吸着部材2-4が空気に触れる時間をできるだけ短くすることが可能となり、これにより、使用する袋型不可逆性吸着部材2-4の吸着性能が低下しにくく、封止後の磁気記録再生装置10-4内で酸素やシロキサン等の汚染ガスを十分に吸着することができる。
【0070】
図22は、密閉された不可逆性吸着部材のさらに他の例が適用された磁気記録再生装置10-4’の部分的な図である。
図示するように、この磁気記録再生装置10-4’には、段差のない第4開孔113-1を有する外カバー120-2の代わりに、段差を持つ第4開孔113-2を有する外カバー120-3が設けられる。第4開孔113-2は、例えば2段階の孔径を有し、トップカバー14-1側の第1開口113-2aの孔径よりも外気側の第2開口113-2bの孔径の方が大きくなっており、第1開口113-2aの周囲の領域120-3aが第1開口113-2aの中心に向かって延出した形状となり、段差を持つ孔となる。また、磁気記録再生装置10-4’では、袋型不可逆性吸着部材2-4は、外カバー120-3の第4開孔113-2に挿入され、袋型不可逆性吸着部材2-4の周縁部2-4aが、外カバー120-3に設けられた第4開孔113-2の第1開口113-2a周囲の領域120-3aに支持されるように取り付けられている。例えば外カバー120-3に設けられた第4開孔113-2の第1開口113-2aは袋型不可逆性吸着部材2-4の大きさ例えば4~15mmよりも小さく、例えば3~14mmの孔径を有することができる。また、第2開口113-2bは、袋型不可逆性吸着部材2-2の大きさよりも十分に大きい孔径を有し、例えば5~16mmの孔径を有することができる。
このように、磁気記録再生装置10-4’は、外カバー120-3の第4開孔113-2が段差のある形状を有し、及び袋型不可逆性吸着部材2-4を支持する領域120-3aが外カバー120-3にある。磁気記録再生装置10-4’の他の構成は、磁気記録再生装置10-4と同様である。
【0071】
第1実施形態に係る磁気記録再生装置10-4’では、第4開孔113-1を介して筐体101-1の外側から第2開孔111-1に取り付けることが可能な袋型不可逆性吸着部材2-4を使用することにより、筐体101のケース12にトップカバー14、外カバー120-3を取り付けた後に、袋型不可逆性吸着部材2-4の取り付けを行うことができる。また、第1実施形態に係る磁気記録再生装置10-4’では、不可逆性吸着剤が不活性な状態で袋型不可逆性吸着部材2-4を取り付けることが可能であり、筐体101-1が封止される直前に針状部材150を用いて袋型不可逆性吸着部材2-4を貫通するだけで、不可逆性吸着剤を活性化することができるので、磁気記録再生装置10-4’の製造時に袋型不可逆性吸着部材2-4の不可逆性吸着剤が空気に触れる時間をできるだけ短くして、その吸着機能が低下するリスクを最小限にすることができる。このような第1実施形態に係る磁気記録再生装置10-4’では、不可逆性吸着部材による汚染ガスの除去が十分に行なわれるため、ヘッドクラッシュ等の不良が発生しにくくなる。また、リペアなどを行う際にトップカバー及び外カバーを取り外すことなく不可逆性吸着部材2-4を新品に取り換えることができる。
【0072】
また、磁気記録再生装置10-4’は、
図18のフロー図に示すような第3実施形態に係る磁気記録再生装置の製造方法を適用して、磁気記録再生装置10-4と同様にして製造することができる。
第3実施形態に係る磁気記録再生装置の製造方法の他の一例を用いると、磁気記録再生装置10-4’に、筐体の外から呼吸孔としての開孔に取り付け可能な袋型不可逆性吸着部材2-4を用いることにより、筐体101-1のケース12にトップカバー14-1、外カバー120-2を取り付けた後に、袋型不可逆性吸着部材2-4の取り付けを行うことができる。また、不可逆性吸着剤が不活性な状態で袋型不可逆性吸着部材2-4を取り付けることが可能であり、取り付け後に試験を行っても吸着性能が低下することが無く、試験後の筐体101-1が封止される直前に針状部材150を用いて袋型不可逆性吸着部材2-4を貫通するだけで、不可逆性吸着剤活性化することができる。このように、第3実施形態に係る磁気記録再生装置の製造方法によれば、筐体が封止される直前まで、袋型不可逆性吸着部材2-4を空気から遮断して保持して、袋型不可逆性吸着部材2-4が空気に触れる時間をできるだけ短くすることが可能となり、これにより、使用する袋型不可逆性吸着部材2-4の吸着性能が低下しにくく、封止後の磁気記録再生装置10-4’内で酸素やシロキサン等の汚染ガスを十分に吸着することができる。
【0073】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0074】
2-1…ピン型不可逆性吸着部材、2-1a…頭頂部、2-1b…円筒形の収容部、2-2…シート型不可逆性吸着部材、2-2a、2-2a’…周縁部、2-3…密閉されたピン型不可逆性吸着部材、2-3a…頭頂部、2-3b…端部、2-4…密閉されたシート型不可逆性吸着部材、2-4a…周縁部、10、10’、10-1、10-1’、10-2、10-2’、10-3、10-3’、10-4、10-4’…磁気記録再生装置、12…ケース、14、14-1…トップカバー、17…磁気ヘッド、18…磁気ディスク、100、100-1…呼吸フィルター、101、101-1…筐体、105、105-1…ケース、105a…側壁部、105b…底部、105c…通気性部材、107…吸着層、107-1…繊維状不可逆性吸着剤、107-2…シート状不可逆性吸着剤、108…開孔、108a…端部、110、110-1…第1開孔、111、111-1…第2開孔、112、112-1、112-2…第3開孔、113、113-1、113-2…第4開孔、120、120-1、120-2…外カバー、123、124…シール