(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180077
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】自律移動装置
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20221129BHJP
【FI】
G05D1/02 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086986
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】504373093
【氏名又は名称】日立チャネルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柴田 亨
(72)【発明者】
【氏名】玉本 淳一
(72)【発明者】
【氏名】杉山 雄亮
【テーマコード(参考)】
5H301
【Fターム(参考)】
5H301AA02
5H301AA10
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301FF07
5H301FF11
5H301GG08
5H301GG09
5H301GG12
5H301GG17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】状態が変化するランドマークを正しく認識し、正しく自己位置を推定する自律移動装置を提供する。
【解決手段】自律移動装置はランドマークを撮影する天井カメラと周囲状況を取得する環境センサと自己の位置情報を検出する内部センサと自己位置推定装置とを有し、自己位置推定装置はランドマークの情報を検出するランドマーク検出処理部とランドマークの情報及び環境地図データを記憶する記憶部と検出したランドマークの情報と記憶したランドマークの情報とに基づいてランドマークの状態を判別すると共に、ランドマークの情報の検出精度に応じて重み付けされたランドマークの位置情報を演算するランドマーク状態判別部と内部センサによる位置情報と環境センサが取得した進行方向の周囲状況と記憶部が記憶した環境地図データとランドマーク状態判別部が演算した重み付けされたランドマークの位置情報とに基づいた自己位置推定部とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自己位置推定装置によって推定された自己位置に基づいて、自律的に移動する自律移動装置であって、
天井に設置されるランドマークを撮影する天井カメラと、進行方向の周囲状況を取得する環境センサと、自己の位置情報を検出する内部センサと、を有し、
自己位置を推定する前記自己位置推定装置は、
前記天井カメラが検出した情報に基づいて、ランドマークの情報を検出するランドマーク検出処理部と、
前記ランドマークの情報及び環境地図データを記憶する記憶部と、
前記ランドマーク検出処理部が検出した前記ランドマークの情報と、前記記憶部が記憶した前記ランドマークの情報と、に基づいて、ランドマークの状態を判別すると共に、前記ランドマークの情報の検出精度に応じて、重み付けされたランドマークの位置情報を演算するランドマーク状態判別部と、
前記内部センサが検出した位置情報と、前記環境センサが取得した進行方向の周囲状況と、前記記憶部が記憶した環境地図データと、前記ランドマーク状態判別部が演算した重み付けされたランドマークの位置情報と、に基づいて、自己位置を推定する自己位置推定部と、
を有することを特徴とする自律移動装置。
【請求項2】
請求項1に記載する自律移動装置であって、
前記ランドマークが、前記天井に設置される照明であることを特徴とする自律移動装置。
【請求項3】
請求項2に記載する自律移動装置であって、
前記自己位置推定装置が、自律移動装置の内部に搭載されることを特徴とする自律移動装置。
【請求項4】
請求項2に記載する自律移動装置であって、
前記自己位置推定装置が、自律移動装置の外部に搭載されることを特徴とする自律移動装置。
【請求項5】
請求項2に記載する自律移動装置であって、
前記自己位置推定装置は、前記ランドマーク状態判別部によって検出されたランドマークの状態に基づいて、前記ランドマークの状態に異常が検出された場合には、異常が検出されたランドマークの情報を、ユーザへ報知するランドマーク状態報知部を有することを特徴とする自律移動装置。
【請求項6】
請求項2に記載する自律移動装置であって、
前記自己位置推定部は、
前記ランドマーク状態判別部が演算した重み付けされた照明情報に基づいて、自己位置を推定する第1自己位置推定部と、
前記内部センサが検出した位置情報と、前記記憶部が記憶した環境地図データと、前記環境センサが検出した進行方向の周囲状況と、に基づいて、自己位置を推定する第2自己位置推定部と、
前記第1自己位置推定部と前記第2自己位置推定部とによって推定された自己位置を使用し、最終的な自己位置を推定し、推定した自己位置を、出力する自己位置合成部と、
を有することを特徴とする自律移動装置。
【請求項7】
請求項1に記載する自律移動装置であって、
前記重み付けされたランドマークの位置情報は、前記天井カメラが撮影した画像の中心からのベクトルの大きさに基づいて設定されることを特徴とする自律移動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井を向いた天井カメラがランドマークを検出し、ランドマークの情報に基づいて自己位置を推定する自律移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボットなどの自律移動装置に外界センサや内界センサを設置し、これら外界センサや内界センサを使用し、自己位置を推定し、目的地まで自律的に移動する自律移動装置が開発されている。
【0003】
特に、自律移動装置の周囲が、人などに囲まれた場合であっても、安定的にランドマークを検出することができるように、天井を向いた天井カメラなどの外界センサを使用し、自己位置を推定する自律移動装置が提案されている。
【0004】
こうした技術分野における背景技術において、例えば、特開2005-242409号公報(特許文献1)や特開平6-4127号公報(特許文献2)がある。
【0005】
特許文献1には、移動環境に設置された標識(ランドマーク)を検出する標識検出手段と、周囲に存在する物体までの距離情報を取得する距離計測手段と、移動環境の地図情報を記憶する地図記憶手段と、取得された距離情報と記憶された地図情報とを照合して自己位置を推定する自己位置演算手段と、目的地までの移動経路を生成する経路生成手段と、を有する自律移動ロボットシステム(自律移動装置)が記載されている(要約参照)。そして、特許文献1には、標識検出手段によって検出される標識が、移動環境の天井に設置されていることが記載されている(0041参照)。
【0006】
また、特許文献2には、走行台車に設置されたTVカメラによって、走行経路(移動環境)の上方の天井を、蛍光灯(ランドマーク)を含めて撮影し、撮影画像における蛍光灯の位置を、画像処理装置で演算(検出)し、撮影画像における蛍光灯の位置、蛍光灯の絶対位置に基づき、走行台車の位置を演算装置によって演算する屋内移動体(自律移動装置)が記載されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-242409号公報
【特許文献2】特開平6-4127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1や特許文献2には、移動環境の天井に設置されるランドマーク(標識や蛍光灯)を検出し、自己位置を推定する自律移動装置が記載されている。
【0009】
しかし、特許文献1や特許文献2には、設置された標識が、標識の経年劣化や周囲の照明環境の変化によって、検出することができないような状況や、設置された照明が、照明切れなどの原因によって、検出することができないような状況については、記載されていない。
【0010】
そこで、本発明は、状態が変化するランドマークを正しく認識し、正しく自己位置を推定する自律移動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するため、本発明の、自己位置推定装置によって推定された自己位置に基づいて、自律的に移動する自律移動装置は、天井に設置されるランドマークを撮影する天井カメラと、進行方向の周囲状況を取得する環境センサと、自己の位置情報を検出する内部センサと、を有する。
【0012】
そして、自己位置を推定する前記自己位置推定装置は、天井カメラが検出した情報に基づいて、ランドマークの情報を検出するランドマーク検出処理部と、ランドマークの情報及び環境地図データを記憶する記憶部と、ランドマーク検出処理部が検出したランドマークの情報と、記憶部が記憶したランドマークの情報と、に基づいて、ランドマークの状態を判別すると共に、ランドマークの情報の検出精度に応じて、重み付けされたランドマークの位置情報を演算するランドマーク状態判別部と、内部センサが検出した位置情報と、環境センサが取得した進行方向の周囲状況と、記憶部が記憶した環境地図データと、ランドマーク状態判別部が演算した重み付けされたランドマークの位置情報と、に基づいて、自己位置を推定する自己位置推定部と、を有する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、状態が変化するランドマークを正しく認識し、正しく自己位置を推定する自律移動装置を提供することができる。
【0014】
なお、上記した以外の課題、構成及び効果については、下記する実施例の説明によって、明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1に記載する自律移動装置1の構成と自律移動装置1における処理の流れとを説明する説明図である。
【
図2】実施例1に記載する自己位置推定部1005の処理の流れを説明する説明図である。
【
図3】実施例1に記載する自律移動装置1の照明情報に基づく自己位置の推定方法を説明する説明図である。
【
図4】実施例1に記載する自律移動装置1の照明状態の判別方法を説明する説明図である。
【
図5】実施例1に記載する自律移動装置1の制御に関するユーザインターフェースを説明する説明図である。
【
図6】実施例1に記載する自律移動装置1の照明状態の判別結果の報知方法を説明する説明図である。
【
図7】実施例1に記載する自律移動装置1のオフライン時における照明情報の編集に関するユーザインターフェースを説明する説明図である。
【
図8】実施例2に記載する自律移動装置1の構成を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施例を、図面を使用し、説明する。なお、実質的に、同一又は類似の構成や機能を有する部分については、同一の符号を、異なる図面間で共通して使用し、説明が重複する場合には、重複する説明を省略する場合がある。
【0017】
また、図面において、各構成や各機能を有する部分についての位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などと異なる場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面において示す位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【実施例0018】
先ず、実施例1に記載する自律移動装置1の構成と自律移動装置1における処理の流れとを説明する。
【0019】
図1は、実施例1に記載する自律移動装置1の構成と自律移動装置1における処理の流れとを説明する説明図である。
【0020】
実施例1に記載する自律移動装置1は、天井を向いた天井カメラ101と、天井高さ測定手段102と、環境センサ103と、車輪104a(前輪)及び車輪104b(後輪)と、ロータリエンコーダ105a及びロータリエンコーダ105bと、を有す。
【0021】
天井カメラ101は、自律移動装置1の上方(上部)の天井の画像を撮影し、天井に設置されるランドマーク(実施例1では、照明、例えば、蛍光灯など)を撮影(検出)する。なお、天井カメラ101は、より広範囲を撮影するため、複数個が設置されてもよい。
【0022】
天井高さ測定手段102は、天井カメラ101から、天井カメラ101で撮影されるランドマークが設置される天井までの距離(天井高さ)(例えば、天井カメラ101から天井までの距離(自律移動装置1から天井までの距離))を測定(検出)する。例えば、天井高さ測定手段102は、レーザ距離計などである。
【0023】
なお、天井カメラ101に、撮影した視差情報を処理し、対象物までの距離を検出するステレオカメラや、奥行きの情報を検出する深度センサを有するDepthカメラなどを使用し、天井カメラ101が天井高さ測定手段102の機能を有してもよい。
【0024】
なお、天井カメラ101や天井高さ測定手段102が検出した情報は、後述するランドマーク検出処理部1001によって、ランドマークの位置(例えば、照明位置)及びランドマークの形状(例えば、照明形状)であるランドマークの情報(例えば、照明情報)として、検出される。
【0025】
つまり、例えば、照明位置は、天井カメラ101が撮影した天井の画像や、天井高さ測定手段102が検出した天井までの距離によって、検出される。
【0026】
環境センサ(外界(外部)センサ)103は、自律移動装置1の前方(前部)に設置され、進行方向の周囲状況(例えば、進行方向のポイントクラウド(点群)や画像)を取得(検出)する。なお、環境センサ103は、より広範囲を検出するため、複数個が設置されてもよい。
【0027】
環境センサ103は、例えば、パルス状に照射されるレーザ照射光に対する散乱光を測定し、遠距離にある対象物までの距離などを検出するLiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)、ステレオカメラ、Depthカメラなどである。
【0028】
ロータリエンコーダ105aは、車輪104aの回転角度(回転量)を測定し、位置情報を出力(検出)し、車輪104aに接続する。つまり、自律移動装置1の状態(自己の位置情報)を検出(取得)する内界(内部)センサである。なお、ロータリエンコーダ105aは、慣性計測装置であってもよい。
【0029】
ロータリエンコーダ105bは、車輪104bの回転角度(回転量)を測定し、位置情報を出力(検出)し、車輪104bに接続する。つまり、自律移動装置1の状態(自己の位置情報)を検出(取得)する内界(内部)センサである。なお、ロータリエンコーダ105bは、慣性計測装置であってもよい。
【0030】
また、自律移動装置1は、自己位置を推定する自己位置推定装置1000と、制御部1006と、自己位置推定装置1000と外部(ユーザ)との間を通信する通信手段と、を有する。
【0031】
制御部1006は、自己位置推定装置1000(後述する自己位置推定部1005)によって推定された自己位置に基づいて、制御量を決定し、車輪104a及び車輪104bを制御し、自律移動装置1の自律的な移動(走行)を制御する。
【0032】
つまり、自己位置推定装置1000は、天井カメラ101、天井高さ測定手段102、環境センサ103、ロータリエンコーダ105a及びロータリエンコーダ105bが検出した情報に基づいて、自己位置を推定する。
【0033】
なお、実施例1では、自律移動装置1に自己位置推定装置1000が設置され、自己位置推定装置1000と、天井カメラ101、天井高さ測定手段102、環境センサ103、ロータリエンコーダ105a及びロータリエンコーダ105bとは、直接、ケーブルなどの配線によって接続され、情報は、自己位置推定装置1000と、天井カメラ101、天井高さ測定手段102、環境センサ103、ロータリエンコーダ105a及びロータリエンコーダ105bとの間で、直接、通信される。
【0034】
そして、自己位置推定装置1000は、ランドマーク検出処理部1001と、記憶部1002と、ランドマーク状態判別部1003と、ランドマーク状態報知部1004(通信手段)と、自己位置推定部1005と、を有する。
【0035】
ランドマーク検出処理部1001は、天井カメラ101や天井高さ測定手段102が検出した情報(天井カメラ101によって撮像されたランドマークと天井高さ測定手段102によって測定された天井までの距離)に基づいて、ランドマークの位置及びランドマークの形状(ランドマークの情報:なお、ランドマークの情報は、特徴量として、検出精度の向上のため、ランドマークの色情報を有する場合もある。)を検出(抽出)する。
【0036】
記憶部1002は、自律移動装置1が自律的に移動する移動環境の地図データである環境地図データ(移動環境地図:地図座標系)及び事前に設定されるランドマークの位置及びランドマークの形状であるランドマークの情報(なお、ランドマークの情報は、ランドマークの色情報を有する場合もある。)を記憶(記録、格納)する。
【0037】
なお、記憶部1002が記憶するランドマークの情報は、ランドマークが照明の場合には、照明情報であり、例えば、照明ONの状態及び/又は照明OFFの状態であってもよく、特に、照明ONの状態及び照明OFFの状態であることが好ましい。
【0038】
なお、実施例1では、記憶部1002には、事前に、ランドマークの情報及び環境地図データが記憶される。しかし、自律移動装置1が移動しながら、記憶部1002にランドマークの情報及び環境地図データを記憶する、SLAM(Simultaneous Localization and Mapping)のように、記憶部1002を動作させてもよい。
【0039】
ランドマーク状態判別部1003は、ロータリエンコーダ105a及びロータリエンコーダ105bが出力した位置情報と、ランドマーク検出処理部1001が検出したランドマークの情報(ランドマークの位置及びランドマークの形状)と、記憶部1002が記憶したランドマークの情報(ランドマークの位置及びランドマークの形状)と、に基づいて、ランドマークの状態を判別する。
【0040】
なお、「ランドマークの状態を判別する」とは、ランドマークの状態を検出(検知)し、例えば、設置された照明が、照明切れなどの原因によって、検出することができないような状況か否かを検出する。
【0041】
つまり、ランドマーク状態判別部1003は、ロータリエンコーダ105a及びロータリエンコーダ105bが出力した位置情報に基づいて特定された位置において、ランドマーク検出処理部1001が検出したランドマークの情報と、記憶部1002が記憶したランドマークの情報と、を照合し、ランドマークが正しく機能している状態か否かを検出する。
【0042】
そして、ランドマーク検出処理部1001が検出したランドマークの情報と、記憶部1002が記憶したランドマークの情報と、を照合する場合、ランドマーク検出処理部1001が検出したランドマークの情報と、記憶部1002が記憶したランドマークの情報と、が、ロータリエンコーダ105a及びロータリエンコーダ105bが出力した位置情報に基づいて特定された位置において対応付けられ、参照比較される。
【0043】
そして、この場合、ランドマーク検出処理部1001が検出したランドマークの情報と、記憶部1002が記憶したランドマークの情報と、が、ロータリエンコーダ105a及びロータリエンコーダ105bが出力した位置情報に基づいて、ランドマークの検出状態(ランドマークの情報の検出精度)に応じて、ランドマークの情報に重み付けする(重み付けされたランドマークの情報を演算する)。
【0044】
つまり、ランドマーク状態判別部1003は、ランドマーク検出処理部1001が検出したランドマークの情報と、記憶部1002が記憶したランドマークの情報と、に基づいて、ランドマークの状態を判別すると共に、ランドマークの情報の検出精度に応じて、重み付けされたランドマークの位置情報を演算する。
【0045】
ランドマーク状態報知部1004は、ランドマーク状態判別部1003によって検出されたランドマークの状態に基づいて、ランドマークの状態に異常が検出された場合には、異常が検出されたランドマークの情報を、ユーザへ報知する。
【0046】
このように、異常が検出されたランドマークの情報を、即座に、ユーザへ報知することによって、自律移動装置1の移動環境(走行路:走行環境:移動経路)に存在するランドマーク(例えば、照明)も同時に点検することができる。
【0047】
自己位置推定部1005は、ロータリエンコーダ105a及びロータリエンコーダ105bが出力した位置情報と、環境センサ103が検出した進行方向の周囲状況と、記憶部1002が記憶した環境地図データと、ランドマーク状態判別部1003が演算した重み付けされたランドマークの位置情報と、に基づいて、自己位置を推定する。
【0048】
つまり、自己位置推定部1005は、ロータリエンコーダ105a及びロータリエンコーダ105bが出力した位置情報に基づいて、オドメトリによって、第1状態の自己位置を推定し、記憶部1002が記憶した環境地図データと、環境センサ103が検出した進行方向の周囲状況と、が対応付けられ、第2状態の自己位置を推定し、ランドマーク状態判別部1003が演算した重み付けされたランドマークの位置情報に基づいて、第3の自己位置を推定し、これら第1の自己位置、第2の自己位置、第3の自己位置に基づいて、最終的な自己位置を推定(カルマンフィルタ処理)する。
【0049】
次に、実施例1に記載する自己位置推定部1005の処理の流れを説明する。
【0050】
図2は、実施例1に記載する自己位置推定部1005の処理の流れを説明する説明図である。
【0051】
自己位置推定部1005は、照明情報に基づく自己位置推定部(第1自己位置推定部)201と、環境センサ103に基づく自己位置推定部(第2自己位置推定部)202と、自己位置合成部203と、自己位置推定部201と自己位置推定部202とによって推定された自己位置を使用し、最終的な自己位置を推定する自己位置合成部203と、を有する。
【0052】
自己位置推定部201は、ランドマーク状態判別部1003が演算した重み付けされた照明情報(位置情報)に基づいて、自己位置を推定する。
【0053】
自己位置推定部202は、ロータリエンコーダ105a及びロータリエンコーダ105bが出力した位置情報と、記憶部1002が記憶した環境地図データと、環境センサ103が検出した進行方向の周囲状況と、に基づいて、自己位置を推定する。
【0054】
自己位置合成部203は、自己位置推定部201と自己位置推定部202とによって推定された自己位置を使用し、最終的な自己位置を推定し、推定した自己位置を、制御部1006に出力する。
【0055】
なお、ランドマーク状態判別部1003が演算した重み付けされた照明情報(位置情報)は、ロータリエンコーダ105a及びロータリエンコーダ105bが出力した位置情報と、ランドマーク検出処理部1001が検出した照明情報(位置情報)と、記憶部1002が記憶する照明情報(位置情報)と、に基づいて、演算される。
【0056】
なお、自己位置推定部201と自己位置推定部202との間で、ロータリエンコーダ105a及びロータリエンコーダ105bが出力した位置情報に基づいて特定された位置を共有する。
【0057】
そして、自己位置推定部201と自己位置推定部202とでは、それぞれ自己位置を推定する場合、検出精度を考慮した分散(重みの逆数)が出力される。
【0058】
例えば、自己位置合成部203が推定する自己位置推定値rは、自己位置推定部201の自己位置推定値をr1、分散をσ^2_1とし、自己位置推定部202の自己位置推定値をr2、分散をσ^2_2とすると、
r=(1-(σ^2_2/(σ^2_1+σ^2_2)))r1+(σ^2_2/(σ^2_1+σ^2_2))r2
という重み付き平均によって、演算される。
【0059】
つまり、自己位置推定部201が推定する自己位置推定値は、ランドマーク状態判別部1003が演算した重み付けされた照明情報(位置情報)に基づいて演算される。
【0060】
次に、実施例1に記載する自律移動装置1の照明情報に基づく自己位置の推定方法を説明する。
【0061】
図3は、実施例1に記載する自律移動装置1の照明情報に基づく自己位置の推定方法を説明する説明図である。
【0062】
自律移動装置1は、天井カメラ101を使用し、天井の画像304を撮影し、ランドマークとして、照明301、照明302、照明303を検出する。
【0063】
この時、それぞれの照明301、照明302、照明303の位置は、ロータリエンコーダ105a及びロータリエンコーダ105bが出力した位置情報に基づいて、記憶部1002が記憶したランドマークの情報(照明301、照明302、照明303の位置)と対応付けられる。
【0064】
つまり、記憶部1002が記憶した環境地図データにおける照明301、照明302、照明303の照明位置(L1’、L2’、L3’)と天井カメラ101が検出した照明301、照明302、照明303の照明位置(L1、L2、L3)とが対応付けられる。
【0065】
なお、天井カメラ101が検出した照明位置(L1、L2、L3)は、天井カメラ101が撮影した天井の画像304における照明301、照明302、照明303の位置と、天井高さ測定手段102が検出した天井までの距離と、によって検出される。
【0066】
この時、自己位置推定部201の自己位置推定値r1は、記憶部1002が記憶した照明位置L1’、L2’、L3’と天井カメラ101が検出した照明位置L1、L2、L3とによって、冗長な(変数よりも方程式が多い状態の)連立方程式として表現される。
【0067】
そして、それぞれの照明301、照明302、照明303には、ランドマーク状態判別部1003によって、検出状態に応じて重み付けされ、冗長な連立方程式を解法する際には、この重みを使用した、重み付き最小二乗法によって、自己位置推定部201の自己位置推定値r1が演算される。
【0068】
また、自己位置推定部201の分散も、それぞれの照明301、照明302、照明303に付けられた重みによって、重み付き最小二乗法の誤差分散として、演算される。
【0069】
このように、実施例1では、ランドマーク状態判別部1003によって、天井カメラ101が検出した、それぞれの照明に、検出状態に応じて重み付けする。これにより、設置された照明が、照明切れなどの原因によって、検出することができないような状況であっても、自己位置の推定結果を悪化させることがない。
【0070】
なお、ランドマークとして、照明を使用することにより、自律移動装置1の移動環境の天井にあらかじめ標識を設置する必要がない。
【0071】
そして、実施例1によれば、複数のランドマーク(照明)を扱うことができる。
【0072】
次に、実施例1に記載する自律移動装置1の照明状態の判別方法を説明する。
【0073】
図4は、実施例1に記載する自律移動装置1の照明状態の判別方法を説明する説明図である。
【0074】
図4は、天井カメラ101によって、画像405を撮影し、ランドマークとして、照明401、照明402、照明403、照明404を検出する。また、
図4では、画像405の中心線を点線で示し、画像405の中心からの、照明401、照明402、照明403、照明404のベクトルを矢印で示す。
【0075】
実施例1では、ランドマークの情報として、照明情報(例えば、正常な状態として、全ての照明が、照明ON状態)が記憶部1002に記憶される。
【0076】
図4では、画像405において、照明401、照明402、照明404が、記憶部1002に正常な状態として記憶される照明ON状態の照明情報と一致している状態であり、照明403が、照明切れなどの原因によって、記憶部1002に記憶される照明情報として記憶される照明情報と一致していない状態(検出することができない状態)である。つまり、照明403は、照明OFF状態である。
【0077】
このように周囲の照明(照明401、照明402、照明404)の照明状態と、異なる照明状態の照明(照明403)が検出された場合に、ランドマーク状態判別部1003は、この照明(照明403)に異常があると判別し、ランドマーク状態報知部1004を介して、異常が検出された照明情報(照明状態)を、ユーザへ報知する。
【0078】
なお、記憶部1002が照明ON状態及び照明OFF状態を記憶している場合には、照明401、照明402、照明404が照明ON状態と検出され、照明403が照明OFF状態と検出される。
【0079】
そして、照明403が、周囲の照明401、照明402、照明404の照明状態と、異なる照明状態である(異常がある)と判別し、ランドマーク状態報知部1004を介して、異常が検出された照明情報(照明状態)を、ユーザへ報知する。
【0080】
次に、ランドマーク状態判別部1003において、それぞれの照明の検出状態に応じて重み付けする、それぞれの照明に対する重み付け方法を説明する。
【0081】
一般的に、天井カメラ101に使用されるレンズは歪みを有し、レンズの歪みは、レンズの中心から離れるほど大きくなる。特に、広角レンズなどを使用した場合には、その歪みが顕著となる。
【0082】
レンズの歪みを補正したとしても、画像405には補正しきれなかった歪みが存在する。このため、実施例1では、画像405の中心から、照明401、照明402、照明403、照明404の中心に向かったベクトルの大きさによって、それぞれの照明に対して、重み付け(0.0~1.0を積算)する。
【0083】
つまり、画像405の中心からのベクトルの大きさが、小さいほど重みが大きくなるように重み付けする。このように、重み付けされた照明情報(位置情報)は、天井カメラ101が撮影した画像405の中心からのベクトルの大きさに基づいて設定される。
【0084】
また、照明ON状態と照明OFF状態とによっても、天井カメラ101の検出精度が異なる場合がある。基本的に、照明ON状態は、照明OFF状態よりも、輝度が高く、特徴的であるため、照明ON状態は、照明OFF状態よりも、重みが大きくなるように重み付けする。
【0085】
また、天井高さ測定手段102が検出した天井までの距離(照明までの距離)についても、天井に設置された照明までの距離が、大きいほど、天井高さ測定手段102の検出精度が悪化する場合がある。このため、天井の高い位置に設置された照明ほど重みが小さくなるように重み付けする。
【0086】
また、上記した以外の要因においても、例えば、窓際の照明は外乱を受ける恐れがあり、天井カメラ101の検出精度が低下する場合がある。こうした場合にも、ランドマーク状態判別部1003において、それぞれの照明の検出状態(要因)に応じて重み付けすることが好ましい。
【0087】
つまり、ランドマーク状態判別部1003における重み付けは、自律移動装置1の移動環境に応じて、設定することが好ましい。また、この重み付けは、例えば、検出精度の分散に基づいて、設定してもよい。
【0088】
このように、実施例1では、ランドマーク状態判別部1003によって、照明状態に応じて、照明情報を扱うことができる。これにより、自己位置の推定結果を悪化させることがない。
【0089】
なお、実施例1では、検出する照明が、蛍光灯のような長方形型であるが、長方形型に限定されず、ダウンライトのような丸型であってもよい。
【0090】
次に、実施例1に記載する自律移動装置1の制御に関するユーザインターフェースを説明する。
【0091】
図5は、実施例1に記載する自律移動装置1の制御に関するユーザインターフェースを説明する説明図である。
【0092】
実施例1では、自律移動装置1の制御のため、ユーザのスマホ、タブレット、PCなどの画面(インターフェース)501に、現在の自律移動装置1の位置、記憶部1002が記憶した照明情報に基づく照明503、記憶部1002が記憶した環境地図データに基づく環境データ地
図502が表示される。
【0093】
なお、実施例1では、環境データ地
図502は、実線で表示され、照明503は、点線の四角で表示され、自律移動装置1は、塗りつぶしの四角で表示されるが、これに限定されず、ユーザが見やすいように、適宜、変更することができる。
【0094】
次に、実施例1に記載する自律移動装置1の照明状態の判別結果の報知方法を説明する。
【0095】
図6は、実施例1に記載する自律移動装置1の照明状態の判別結果の報知方法を説明する説明図である。
【0096】
実施例1では、照明に異常があると判別された場合、異常が検出された照明情報を、ユーザへ報知する。
【0097】
これにより、異常が検出された照明604が、画面501で点滅する。ユーザが、点滅し、異常が検出された照明604に対して、クリックなどの動作を実行することによって、画面501に、異常状態の内容が表示された画面605がポップアップ表示される。
【0098】
ポップアップ表示され、異常状態の内容が表示された画面605には、例えば、「状態異常検知:不点灯エラー」のような異常状態(異常が検出された照明情報(照明状態))の内容と、例えば、
図4のような天井カメラ101が撮影した画像と、が表示される。
【0099】
このように、ランドマーク状態判別部1003によって、照明に異常が検出された場合には、直ちに、異常状態の内容が、ランドマーク状態報知部1004を介して、ユーザへ報知される。これにより、自律移動装置1の移動環境における照明を、点検することができる。
【0100】
次に、実施例1に記載する自律移動装置1のオフライン時における照明情報の編集に関するユーザインターフェースを説明する。
【0101】
図7は、実施例1に記載する自律移動装置1のオフライン時における照明情報の編集に関するユーザインターフェースを説明する説明図である。
【0102】
実施例1では、自律移動装置1が移動していないオフライン時には、ユーザは、画面501に、記憶部1002が記憶した照明情報に基づく照明503、記憶部1002が記憶した環境地図データに基づく環境データ地
図502を表示される。
【0103】
これにより、ユーザは、照明503に関する照明情報を編集する。編集したい照明701に対して、クリックなどの動作を実行することによって、画面501に、照明情報を編集するための画面702がポップアップ表示される。
【0104】
ポップアップ表示され、照明情報を編集するための画面702には、例えば、「照明情報:位置:・・・、形状:・・・、色:・・・」のような照明情報が表示される。
【0105】
このように、ユーザは、記憶部1002が記憶した照明情報を編集する。これにより、照明の付け替えなどによる照明情報の変更などがあった場合には、直ちに、照明情報の変更を反映することができ、自律移動装置1の移動環境において、自己位置の推定結果を悪化させることがない。
【0106】
このように、自律移動装置1は、自己位置推定装置1000によって推定された自己位置に基づいて、自律的に移動し、以下の構成を有する。
(1)天井に設置されるランドマークを撮影する天井カメラ101。
(2)天井カメラ101から天井までの距離を測定する天井高さ測定手段102。
(3)進行方向の周囲状況を取得する環境センサ103。
(4)自己の位置情報を検出する内部センサ(105)。
【0107】
そして、自己位置を推定する自己位置推定装置1000は、以下の構成を有する。
(1)天井カメラ101や天井高さ測定手段102が検出した情報に基づいて、ランドマークの情報を検出するランドマーク検出処理部1001。
(2)ランドマークの情報及び環境地図データを記憶する記憶部1002。
(3)ランドマーク検出処理部1001が検出したランドマークの情報と、記憶部1002が記憶したランドマークの情報と、に基づいて、ランドマークの状態を判別すると共に、ランドマークの情報の検出精度に応じて、重み付けされたランドマークの位置情報を演算するランドマーク状態判別部1003。
(4)内部センサ(105)が検出した位置情報と、環境センサ103が取得した進行方向の周囲状況と、記憶部1002が記憶した環境地図データと、ランドマーク状態判別部1003が演算した重み付けされたランドマークの位置情報と、に基づいて、自己位置を推定する自己位置推定部1005。
【0108】
そして、自律移動装置1は、設置された標識が、標識の経年劣化や周囲の照明環境の変化によって、検出することができないような状況や、設置された照明が、照明切れなどの原因によって、検出することができないような状況であっても、自己位置の推定結果を悪化させることがなく、状態が変化するランドマークを正しく認識し、正しく自己位置を推定することができる。
【0109】
また、ランドマークの情報によって自己位置を推定する自律移動装置1は、照明切れなどの原因によって、事前に設定されるランドマークの情報が使用できず、ランドマークの状態が変化する場合であっても、自己位置の推定精度の悪化を抑制することができる。
実施例1に記載する自律移動装置1は、自己位置推定装置1000が自律移動装置1の内部に設置されるが、実施例2に記載する自律移動装置1は、自己位置推定装置1000が自律移動装置1の外部に設置される。
つまり、実施例2では、自己位置推定装置1000が、自律移動装置1に搭載されず、自律移動装置1の自己位置を推定する外部制御用のコントローラ(PC)などに搭載される。
そして、自己位置推定装置1000は、天井カメラ101、天井高さ測定手段102、環境センサ103、ロータリエンコーダ105a及びロータリエンコーダ105bの検出結果が、無線通信手段801a及び無線通信手段801bを介して、通信される。
これにより、自律移動装置1の内部において、自己位置を推定する必要がなく、自律移動装置1に設置されるPCの処理能力を小さくすることができ、自律移動双装置1の省電力化や小型化が達成される。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために、具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を有するものに限定されるものではない。
また、ある実施例の構成の一部を、他の実施例の構成の一部に置換することもできる。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を追加することもできる。また、各実施例の構成の一部について、それを削除し、他の構成の一部を追加し、他の構成の一部と置換することもできる。