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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180113
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】炭素材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/135 20210101AFI20221129BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20221129BHJP
   C25F 3/02 20060101ALI20221129BHJP
   C25B 1/50 20210101ALI20221129BHJP
【FI】
C25B1/135
B82Y40/00
C25F3/02 B
C25B1/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087035
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】特許業務法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】松井 良彦
(72)【発明者】
【氏名】桂 涼
(72)【発明者】
【氏名】間崎 耕司
(72)【発明者】
【氏名】大林 和良
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA09
4K021BA02
4K021BA18
4K021BB03
4K021BC08
(57)【要約】
【課題】炭素源を含む電解液を電気分解して炭素材料を製造する方法において、電極に炭素材料を継続的に生成する。
【解決手段】炭素材料の製造方法は、析出工程と、除去工程とを備える。析出工程では、炭素源と共析元素源を含む電解液11中で陽極12と陰極13の間に電圧を印加することで、陰極に炭素源に由来する炭素材料20と共析元素源に由来する共析元素21とを析出させる。除去工程では、陰極に析出した共析元素にエネルギを印加し、炭素材料と共析元素を含んだ析出物から共析元素を除去する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素源と共析元素源を含む電解液(11)中で陽極(12)と陰極(13)の間に電圧を印加することで、前記陰極に前記炭素源に由来する炭素材料(20)と前記共析元素源に由来する共析元素(21)とを析出させる析出工程と、
前記陰極に析出した前記共析元素にエネルギを印加し、前記炭素材料と前記共析元素を含んだ析出物から前記共析元素を除去する除去工程と、
を備える炭素材料の製造方法。
【請求項2】
前記除去工程では、前記エネルギとして電磁界エネルギもしくは電磁波エネルギを用いる請求項1に記載の炭素材料の製造方法。
【請求項3】
前記析出工程で前記陽極と前記陰極の間に印加される電圧を正電圧としたとき、
前記除去工程では、前記エネルギとして、前記正電圧と電流の流れが逆向きの逆電圧を前記陽極と前記陰極の間に印加する請求項1に記載の炭素材料の製造方法。
【請求項4】
前記共析元素は金属である請求項1ないし3のいずれか1つに記載の炭素材料の製造方法。
【請求項5】
前記金属は、遷移金属および希土類金属の少なくともいずれかである請求項4に記載の炭素材料の製造方法。
【請求項6】
前記金属は、Cu、Ni、Pt、Pd、Rh、Fe、Co、Ti、Ruの少なくともいずれかである請求項5に記載の炭素材料の製造方法。
【請求項7】
前記炭素源および前記共析元素源は、有機金属化合物に由来している請求項1ないし6のいずれか1つに記載の炭素材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、炭素源を含んだ電解液を電気分解することで、陰極に炭素材料を形成する炭素材料の製造方法が提案されている。特許文献1の方法では、陰極に設けられた触媒金属を核として炭素材料が成長するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-23408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の製造方法では、生成した炭素材料によって触媒金属が覆われると、炭素材料の成長が停止する。このため、陰極上に炭素材料を継続的に生成することができない。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、炭素源を含む電解液を電気分解して炭素材料を製造する方法において、電極に炭素材料を継続的に生成することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、析出工程と、除去工程とを備える。析出工程では、炭素源と共析元素源を含む電解液(11)中で陽極(12)と陰極(13)の間に電圧を印加することで、陰極に炭素源に由来する炭素材料(20)と共析元素源に由来する共析元素(21)とを析出させる。除去工程では、陰極に析出した共析元素にエネルギを印加し、炭素材料と共析元素を含んだ析出物から共析元素を除去する。
【0007】
これにより、析出工程で陰極が炭素材料で覆われたとしても、電解液に含まれる炭素源は、陰極に析出した共析元素に接触することができる。このため、陰極における炭素材料の析出を継続的に行うことができる。
【0008】
また、陰極の共析元素にエネルギを印加する除去工程を行うことで、炭素材料と共析元素を含んだ析出物から共析元素を除去することができ、炭素材料のみを得ることができる。
【0009】
なお、上記各構成要素の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態の炭素材料製造装置の構成を示す図である。
図2】第1実施形態の析出工程における炭素材料製造装置を示す図である。
図3】第1実施形態の除去工程における炭素材料製造装置を示す図である。
図4】第2実施形態の析出工程における炭素材料製造装置を示す図である。
図5】第3実施形態の析出工程における炭素材料製造装置を示す図である。
図6】第4実施形態の析出工程における炭素材料製造装置を示す図である。
図7】第5実施形態の除去工程における炭素材料製造装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しながら本発明を実施するための複数の形態を説明する。各形態において先行する形態で説明した事項に対応する部分には同一の参照符号を付して重複する説明を省略する場合がある。各形態において構成の一部のみを説明している場合は、構成の他の部分については先行して説明した他の形態を適用することができる。各実施形態で具体的に組合せが可能であることを明示している部分同士の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、明示してなくとも実施形態同士を部分的に組み合せることも可能である。
【0012】
(第1実施形態)
図1に示すように、炭素材料製造装置1は、電解槽10、電解液11、陽極12、陰極13、電源14を備えている。本実施形態の炭素材料製造装置1は、炭素源を含む電解液11を電気分解することによって陰極13上に炭素材料を析出させ、炭素材料を製造する。陰極13に析出する炭素材料は、アモルファスカーボン、グラフェン、カーボンナノチューブ、カーボンナノワイヤ等である。炭素材料は、必ずしも炭素原子のみから構成されている必要はなく、例えば官能基や金属原子を含んでいてもよい。
【0013】
電解槽10の内部には、電解液11が収容されている。電解液としては、電解質水溶液やイオン液体等を用いることができる。本実施形態の電解液11には、予め炭素源および共析元素源が含まれている。炭素源および共析元素源は、予め電解液11に含まれていてもよく、後から電解液11に加えるようにしてもよい。
【0014】
電解液11に含まれる炭素源は、陰極13に析出する炭素材料の原料となる。炭素源は、炭素原子を含む炭素含有物質であり、メチル基、エチル基あるいはカルボキシル基の少なくとも何れかを含む有機物を用いることが望ましい。
【0015】
炭素含有物質としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコール、エチルニトリル、メチルニトリル等の脂肪族ニトリル、ギ酸、酢酸等のカルボン酸等を用いることができる。あるいは、炭素含有物質としてメタン、CO2、CO等のガスを用いてもよい。これらのガスは、例えばバブリングによって電解液11に溶解させることができる。炭素源として、1種類の炭素含有物質を用いてもよく、複数種類の炭素含有物質を用いてもよい。
【0016】
電解液11に含まれる共析元素源は、陰極13に析出する共析元素の原料となる。共析元素は、陰極13で炭素材料と同時に析出する元素である。共析元素は、陰極13上に直接析出し、さらに陰極13上に析出した炭素材料上にも析出する。共析元素は、炭素析出反応の触媒としての機能と、導電材料としての機能を有している。
【0017】
本実施形態の共析元素は金属であり、共析元素源として金属イオンを用いている。金属イオンは、例えば金属塩を電解液に溶解させることで得ることができる。
【0018】
共析元素を構成する金属は、例えば遷移金属および希土類金属の少なくともいずれかを用いることができる。具体的には、共析元素として、炭素析出反応の触媒としての機能を有する金属であるCu、Ni、Pt、Pd、Rh、Fe、Co、Ti、Ruを用いることができる。また、水素原子を含む炭素源による炭素材料の析出を促進させるために、共析元素として水素吸引力が高い金属(例えばCu、Ni、Pt、Pd)を用いることが望ましい。本実施形態では、共析元素としてCuを用いており、共析元素源としてCu2+を用いている。
【0019】
陽極12および陰極13は、電解槽10の内部において、電解液11に浸漬するように設けられている。本実施形態では、陽極12および陰極13は板状であり、板面が鉛直方向に沿って配置されている。
【0020】
陽極12は、任意の電極材料を用いることができ、本実施形態ではカーボン電極を用いている。陰極13は、炭素析出反応の触媒としての機能を有する導電材料が用いられる。陰極13としては、例えば金属材料を用いることができ、本実施形態ではNiを用いている。
【0021】
電源14は、陽極12および陰極13の間に所定の電圧を印加する。本実施形態の電源14は直流電源である。本実施形態の電源14は、陽極12および陰極13の間に流れる電流の向きを変更することができる。具体的には、陽極12に電源14の正極が接続され、陰極13に電源14の負極が接続された状態と、陽極12に電源14の負極が接続され、陰極13に電源14の正極が接続された状態を切り替えることができる。
【0022】
陽極12に電源14の正極が接続され、陰極13に電源14の負極が接続された状態で、陽極12と陰極13の間に印加される電圧を正電圧とする。陽極12に電源14の負極が接続され、陰極13に電源14の正極が接続された状態で、陽極12と陰極13の間に印加される電圧を逆電圧とする。正電圧は、任意の波形(例えば正弦波、パルス波、三角波など)、任意の周波数、任意の電圧値(波高値)とすることができる。電圧値は、例えば数V~数10kVとすることができる。逆電圧は、共析元素の酸化還元電位よりも高い電圧であればよい。
【0023】
次に、上記構成の炭素材料製造装置1を用いた炭素材料の製造方法を図2図3を用いて説明する。本実施形態の炭素材料の製造方法は、陰極13に炭素材料および共析元素を析出させる析出工程と、陰極13における炭素材料と共析元素を含む析出物から共析元素を除去する除去工程を備えている。析出工程と除去工程では、陰極13と電源14の間に流れる電流が逆向きになる。
【0024】
まず、析出工程を図2を用いて説明する。図2に示すように、析出工程では、電源14によって陽極12と陰極13の間に正電圧を印加する。陽極12と陰極13の間に正電圧を印加することで、電解液11中の炭素源の電気分解が行われる。図2に示す例では、炭素源がメチルラジカルCH3 +となって、陰極13に炭素材料20が析出する。
【0025】
陰極13では、炭素材料20とともに共析元素21が析出する。本実施形態では、共析元素21としてCuが析出する。共析元素21は、陰極13上に直接析出することに加え、陰極13で析出した炭素材料20上にも析出する。このため、陰極13が炭素材料20で覆われても、電解液11中の炭素源が共析元素21に接触することができる。
【0026】
上述したように、共析元素21は、炭素析出反応の触媒としての機能と、導電材料としての機能を有していることから、陰極13に析出した共析元素21上に炭素材料20が析出することができる。このため、陰極13では、共析元素21を起点として炭素材料20が継続的に析出することとなる。
【0027】
次に、除去工程を図3を用いて説明する。図3に示すように、除去工程では、電源14によって陽極12と陰極13の間に逆電圧を印加する。陽極12と陰極13の間に逆電圧が印加されると、陰極13の共析元素21にエネルギが印加される。これにより、陰極13に析出していた共析元素21がイオン化し、電解液11に溶解する。この結果、炭素材料20と共析元素21を含む析出物から共析元素21が除去され、陰極13には炭素材料20のみが残ることとなる。
【0028】
陰極13に残った炭素材料20は、機械的方法を用いて陰極13から剥離することができる。また、除去工程において、陰極13を構成する金属材料の一部が電解液11に溶解した場合には、陰極13から炭素材料20を容易に剥離することができる。
【0029】
以上説明した本実施形態によれば、電解液11に炭素源に加えて共析元素源が含まれている。このため、析出工程で陽極12と陰極13の間に正電圧を印加することで、陰極13に炭素材料20と同時に共析元素21を析出させることができる。これにより、電解液11に含まれる炭素源は、陰極13に析出した共析元素21に接触することができ、陰極13における炭素材料20の析出を継続的に行うことができる。
【0030】
また、本実施形態では、析出工程の後で陽極12と陰極13の間に逆電圧を印加する除去工程を行っている。これにより、除去工程では陰極13の析出物から共析元素21を除去することができ、炭素材料20のみを得ることができる。
【0031】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0032】
図4に示すように、本第2実施形態では、電解液11に共析元素源が予め含まれておらず、陽極12に共析元素21を構成する金属材料が含まれている。図4に示す例では、陽極12にCuが含まれている。
【0033】
本第2実施形態の析出工程では、陽極12の金属材料がイオン化して電解液11に溶解し、共析元素源となる。図4に示す例では、陽極12のCuがCu2+となって電解液11に溶解する。
【0034】
陰極13では、炭素材料20とともに、陽極12から溶解した共析元素源に由来する共析元素21が析出する。これにより、陰極13が炭素材料20で覆われても、電解液11中の炭素源が共析元素21に接触することができ、共析元素21上に炭素材料20が析出することができる。このため、陰極13では、共析元素21を起点として炭素材料20が継続的に析出することとなる。
【0035】
以上説明した本第2実施形態では、共析元素21を構成する金属材料が含まれた陽極12を用いており、陽極12から溶解した金属イオンを共析元素源として用いている。これにより、予め電解液11に共析元素源を含めることなく、陰極13における炭素材料20の析出を継続的に行うことができる。
【0036】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0037】
本第3実施形態では、電解液11に含まれる炭素源と共析元素源として金属有機化合物を用いている。金属有機化合物に含まれる有機物が炭素源となり、金属有機化合物に含まれる金属元素が共析元素源となる。図5に示す例では、電解液11に金属有機化合物として酢酸銅イオン(Cu(CH3COO)+)が含まれている。
【0038】
本第3実施形態の析出工程では、金属有機化合物が電気分解される。陰極13では、金属有機化合物に含まれる有機物に由来する炭素材料20が析出するとともに、金属有機化合物に含まれる金属元素に由来する共析元素21が陰極13に析出する。これにより、陰極13が炭素材料20で覆われても、電解液11中の炭素源が共析元素21に接触することができ、共析元素21上に炭素材料20が析出することができる。このため、陰極13では、共析元素21を起点として炭素材料20が継続的に析出することとなる。
【0039】
以上説明した本第3実施形態では、炭素源と共析元素源として金属有機化合物を用いている。このような構成によっても、陰極13における炭素材料20の析出を継続的に行うことができる。
【0040】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0041】
本第4実施形態では、上記第3実施形態と同様、電解液11に含まれる炭素源と共析元素源として金属有機化合物を用いている。本第4実施形態では、電解液11には有機金属化合物を構成する有機物のみが含まれており、陽極12に金属有機化合物を構成する金属元素が含まれている。つまり、本第4実施形態では、金属有機化合物を構成する金属元素を陽極12から供給している。図6に示す例では、陽極12にCuが含まれており、電解液に酢酸が含まれている。
【0042】
本第4実施形態の析出工程では、陽極12の金属材料がイオン化して電解液11に溶解し、電解液11に含まれる有機物と結合して金属有機化合物となる。
【0043】
析出工程では、金属有機化合物が電気分解される。陰極13では、金属有機化合物に含まれる有機物に由来する炭素材料20が析出するとともに、金属有機化合物に含まれる金属元素に由来する共析元素21が陰極13に析出する。これにより、陰極13では、共析元素21を起点として炭素材料20が継続的に析出することとなる。
【0044】
以上説明した本第4実施形態では、陽極12に金属有機化合物を構成する金属元素が含まれている。このような構成によっても、上記第3実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0045】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0046】
本第5実施形態では、上記各実施形態の陽極12、陰極13、電源14をそれぞれ第1電極12、第2電極13、第1電源14としている。
【0047】
図7に示すように、本第5実施形態の炭素材料製造装置1には、第3電極15と第2電源16が設けられている。第3電極15は板状であり、板面が電解槽10の底面に沿って配置されている。
【0048】
第2電源16は、負極が第1電極12に接続され、正極が第3電極15に接続されている。第2電源16は、第1電極12と第3電極15の間に電圧を印加する。
【0049】
本第5実施形態の析出工程では、第1電源14によって、第1電極12に第1電源14の正極が接続され、第2電極13に第1電源14の負極が接続された状態で、第1電極12と第2電極13の間に正電圧を印加する。これにより、第2電極13では、炭素材料20と共析元素21が析出する。
【0050】
第2電極13に析出した炭素材料20と共析元素21は、第2電極13から剥離することがある。第2電極13から剥離した炭素材料20と共析元素21は、電解槽10の底面に設けられた第3電極15の上に堆積する。
【0051】
本第5実施形態の除去工程では、第1電源14によって、第1電極12に第1電源14の負極が接続され、第2電極13に第1電源14の正極が接続された状態で、第1電極12と第2電極13の間に逆電圧を印加する。これにより、第2電極13の炭素材料20と共析元素21を含む析出物から共析元素21が除去される。
【0052】
さらに、本第5実施形態の除去工程では、第1電極12に第2電源16の負極が接続され、第3電極15に第2電源16の正極が接続された状態で、第2電源16によって第1電極12と第3電極15の間に電圧を印加する。これにより、第3電極15上の堆積物から共析元素21が除去され、炭素材料20のみが残ることとなる。なお、除去工程において、第1電源14による電圧の印加と第2電源16による電圧の印加は、同時に行ってもよく、異なるタイミングで行ってもよい。
【0053】
以上説明した本第5実施形態では、電解槽10の底面に第3電極15を設け、除去工程で第2電源16によって第2電極13と第3電極15の間に電圧を印加している。これにより、第2電極13に析出した炭素材料20と共析元素21が剥離した場合であっても、電解槽10の底面に堆積した炭素材料20と共析元素21から共析元素21を除去し、炭素材料20のみを得ることができる。
【0054】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
【0055】
例えば、上記各実施形態では、除去工程において、陽極12と陰極13の間に逆電圧を印加して陰極13の析出物から共析元素21を除去するようにしたが、逆電圧とは異なる種類のエネルギの印加によって陰極13の析出物から共析元素21を除去するようにしてもよい。逆電圧とは異なる種類のエネルギとしては、光エネルギ、磁界エネルギ、電界エネルギ等の電磁界エネルギもしくは電磁波エネルギを挙げることができる。
【0056】
光エネルギを用いて共析元素21(例えばCu)を除去する場合には、Cuのプラズマ周波数もしくはd-spバンド遷移周波数の光を陰極13近傍に照射し、Cuを共振させればよい。磁界エネルギを用いて共析元素21を除去する場合には、高周波磁界を陰極13近傍に印加すればよい。電界エネルギを用いて共析元素21を除去する場合には、陽極12と陰極13の間あるいは陽極12と陰極13を2つに分割した部分に高周波の電界を印加すればよい。
【0057】
また、上記各実施形態では、陰極13で炭素材料20とともに析出する共析物21として金属を用いた例について説明したが、共析物21としてHやOH等の無機官能基を用いてもよい。HやOH等の無機官能基は炭素材料20に結合し、新たに炭素原料20が析出する際の起点となることができる。HやOH等の無機官能基は、H2O等の無機物から供給するようにしてもよく、HやOH等の無機官能基を含む有機物から供給するようにしてもよい。
【0058】
また、上記各実施形態では、直流電源からなる電源14を用いて析出工程および除去工程を行ったが、交流電源を用いて析出工程および除去工程を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0059】
11 電解液
12 陽極
13 陰極
20 炭素材料
21 共析元素
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7