IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サンデン株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180136
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】車両熱管理システム
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20221129BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20221129BHJP
   H01M 10/663 20140101ALI20221129BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20221129BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20221129BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20221129BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20221129BHJP
   B60R 16/04 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
B60H1/22 651A
H01M10/613
H01M10/663
H01M10/6568
H01M10/6556
H01M10/625
H01M10/615
B60R16/04 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087068
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 宣伯
(72)【発明者】
【氏名】高沢 修
(72)【発明者】
【氏名】宮腰 竜
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 渉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正亮
【テーマコード(参考)】
3L211
5H031
【Fターム(参考)】
3L211BA34
3L211CA18
3L211CA19
3L211DA26
3L211DA27
3L211DA28
5H031AA09
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】車両熱管理システムにおいて、熱のロスを抑えながら、異なる温度帯の熱媒体による温調を可能にする。
【解決手段】冷媒回路と、冷媒回路に設けられる冷媒熱媒体熱交換器にて冷媒と熱交換した熱媒体が循環する熱媒体回路とを有する車両熱管理システムであって、冷媒回路は、少なくとも3つの熱交換器のうち2つ以上を選択して、選択した熱交換器の一部を凝縮器、他部を蒸発器とし、冷媒熱媒体熱交換器は、選択した熱交換器の一つを第1冷媒熱媒体熱交換器、他の一つを第2冷媒熱媒体熱交換器とし、熱媒体回路は、第2冷媒熱媒体熱交換器で熱交換した熱媒体が第1冷媒熱媒体熱交換器に流れる回路状態と、第1冷媒熱媒体熱交換器で熱交換した熱媒体が流れる流路と第2冷媒熱媒体熱交換器で熱交換した熱媒体が流れる流路が互いに独立した回路になる回路状態とを切り替え可能な切替手段を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮、凝縮、膨張、蒸発させる冷媒回路と、
前記冷媒回路に設けられる冷媒熱媒体熱交換器にて冷媒と熱交換した熱媒体が循環する熱媒体回路とを有する車両熱管理システムであって、
前記冷媒回路は、少なくとも3つの熱交換器のうち2つ以上を選択して、選択した前記熱交換器の一部を凝縮器、他部を蒸発器とし、
前記冷媒熱媒体熱交換器は、選択した前記熱交換器の一つを第1冷媒熱媒体熱交換器、他の一つを第2冷媒熱媒体熱交換器とし、
前記熱媒体回路は、
前記第2冷媒熱媒体熱交換器を経由した熱媒体が前記第1冷媒熱媒体熱交換器に流れる回路状態と、前記第1冷媒熱媒体熱交換器を経由した熱媒体の流路と前記第2冷媒熱媒体熱交換器を経由した熱媒体の流路が互いに独立した回路になる回路状態とを切り替え可能な切替手段を備えることを特徴とする車両熱管理システム。
【請求項2】
前記冷媒熱媒体熱交換器は、
3つの前記熱交換器を選択した場合の他の一つを第3冷媒熱媒体熱交換器とし、
前記第3冷媒熱媒体熱交換器を経由する熱媒体の流路は、第1冷媒熱媒体熱交換器又は前記第2冷媒熱媒体熱交換器を経由する熱媒体の流路とは独立した回路になることを特徴とする請求項1記載の車両熱管理システム。
【請求項3】
前記第1冷媒熱媒体熱交換器を経由する熱媒体は、車室内空調用熱交換器を流れることを特徴とする請求項1又は2記載の車両熱管理システム。
【請求項4】
前記熱媒体回路は、
前記冷媒熱媒体熱交換器の入口側又は出口側に、補助加熱装置が設けられることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項記載の車両熱管理システム。
【請求項5】
前記熱媒体回路は、
前記切替手段の出口側に熱媒体を貯留する貯留部を備えることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項記載の車両熱管理システム。
【請求項6】
前記冷媒回路における前記熱交換器の選択は、前記熱交換器のいずれかを迂回するバイパス冷媒流路の開閉によってなされることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項記載の車両熱管理システム。
【請求項7】
前記第1冷媒熱媒体熱交換器は、凝縮器であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項記載の車両熱管理システム。
【請求項8】
前記第3冷媒熱媒体熱交換器は、蒸発器であることを特徴とする請求項2記載の車両熱管理システム。
【請求項9】
前記冷媒回路は、
選択した前記熱交換器の一つを蒸発器として車室内空調用熱交換器とすることを特徴とする請求項1記載の車両熱管理システム。
【請求項10】
前記切替手段を第1切替手段として、
前記第1切替手段から出た熱媒体を温調対象物用熱交換器に流すか外部熱交換器に流すかを切り替える第2切替手段を備えることを特徴とする請求項2記載の車両熱管理システム。
【請求項11】
前記第2切替手段に連動して切り替えられる第3切替手段を備え、
前記第3切替手段は、
前記第2切替手段が前記温調対象物用熱交換器に流した熱媒体を前記第2冷媒熱媒体熱交換器に流すか前記第3冷媒熱媒体熱交換器に流すかを切り替え、前記第2切替手段が前記外部熱交換器に流した熱媒体を前記第3冷媒熱媒体熱交換器に流すか前記第2冷媒熱媒体熱交換器に流すか切り替えることを特徴とする請求項10記載の車両用熱管理システム。
【請求項12】
前記第3冷媒熱媒体熱交換器で熱交換した熱媒体が流れる車室内空調用熱交換器を備え、
前記車室内空調用熱交換器から出た熱媒体を前記第3冷媒熱媒体熱交換器に流すか前記第2切替手段に入れるかを切り替える第4切替手段を備え、
前記第2切替手段は、前記第4切替手段から出た熱媒体を前記温調対象物用熱交換器に流すか前記外部熱交換器に流すかを切り替える手段を兼ねることを特徴とする請求項11記載の車両用熱管理システム。
【請求項13】
前記第3切替手段は、前記外部熱交換器から出た熱媒体を前記第2冷媒熱媒体熱交換器に流すか前記第4切替手段に入れるかを切り替える手段を兼ねることを特徴とする請求項12記載の車両用熱管理システム。
【請求項14】
前記第4切替手段は、前記第3切替手段から出た熱媒体を前記第3冷媒熱媒体熱交換器に流すか前記第2切替手段に入れるかを切り替える手段を兼ねることを特徴とする請求項13記載の車両用熱管理システム。
【請求項15】
前記温調対象物用熱交換器から出た熱媒体を他の温調対象物用熱交換器に流すか否か切り替える第5切替手段を備えることを特徴とする請求項10~14のいずれか1項記載の車両用熱管理システム。
【請求項16】
前記第3冷媒熱媒体熱交換器で熱交換した熱媒体を前記車室内空調用熱交換器に流すか前記第2切替手段に流すかを切り替える第6切替手段を備えることを特徴とする請求項12~14のいずれか1項記載の車両熱管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプによる車両熱管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプによる車両の熱管理システムは、ヒートポンプにおける凝縮器の放熱と蒸発器の吸熱を利用して、熱媒体回路(水回路)の温調を行っている。下記特許文献1に示した従来技術は、圧縮機、凝縮器、蒸発器、膨張手段などを備える冷媒回路と、凝縮器を介して冷媒と熱交換する熱媒体が流れる放熱器回路と、蒸発器を介して冷媒と熱交換する熱媒体が流れる要素回路とを備えている。そして、放熱器回路には、車両の移動によって外部空気によって冷却される放熱器(ラジエータ)が設けられ、要素回路には、車室内の空気と熱交換する空調用熱交換器が設けられている。
【0003】
この従来技術によると、熱媒体が循環する放熱器回路と要素回路は、それぞれ独立した熱媒体回路を構成することで、車室内の熱を吸熱して車室外に放熱する空調を行い、放熱器回路と要素回路を直列に繋いで単一の回路を構成することで、放熱器回路の温水と要素回路の冷水を混合した熱媒体による温調を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2012-505796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両熱管理システムにおいて、例えば、室内の空調とバッテリーの暖機を同時に行うような場合には、室内空調では暖房吹き出し温度で60℃程度が必要になり、バッテリーの暖機はバッテリー許容上限温度35℃以下で暖機を行う必要があるので、同時に行う温調で異なる温度帯の熱媒体が必要になる。これを前述した従来技術で対応しようとすると、所定温度の熱媒体の熱を一部外部に放出しながら異なる温度帯を得ることになるので、熱のロスが大きくなる問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような問題に対処することを課題としている。すなわち、車両熱管理システムにおいて、熱のロスを抑えながら、異なる温度帯の熱媒体による温調を可能にすること、異なる温度帯の熱媒体が流れる熱媒体回路に切替手段を設けて、車両熱管理システムの各種運転モードを実現すること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために、本発明は、以下の構成を具備するものである。
冷媒を圧縮、凝縮、膨張、蒸発させる冷媒回路と、前記冷媒回路に設けられる冷媒熱媒体熱交換器にて冷媒と熱交換した熱媒体が循環する熱媒体回路とを有する車両熱管理システムであって、前記冷媒回路は、少なくとも3つの熱交換器のうち2つ以上を選択して、選択した前記熱交換器の一部を凝縮器、他部を蒸発器とし、前記冷媒熱媒体熱交換器は、選択した前記熱交換器の一つを第1冷媒熱媒体熱交換器、他の一つを第2冷媒熱媒体熱交換器とし、前記熱媒体回路は、前記第2冷媒熱媒体熱交換器で熱交換した熱媒体が前記第1冷媒熱媒体熱交換器に流れる回路状態と、前記第1冷媒熱媒体熱交換器で熱交換した熱媒体が流れる流路と前記第2冷媒熱媒体熱交換器で熱交換した熱媒体が流れる流路が互いに独立した回路になる回路状態とを切り替え可能な切替手段を備えることを特徴とする車両熱管理システム。
【発明の効果】
【0008】
このような特徴を備えた本発明の車両熱管理システムは、熱のロスを抑えながら、異なる温度帯の熱媒体による温調を可能にすることができる。異なる温度帯の熱媒体が流れる熱媒体回路に適宜選択的に切り替えて、車両熱管理システムの各種運転モードを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る車両熱管理システムにおける冷媒回路を示した説明図。
図2】本発明の実施形態に係る車両熱管理システムの構成例を示した説明図。
図3】第1,第2,第3,第4切替手段(切替弁V1,V2,V3,V4)の切り替え状態を示した説明図((a)が第1の回路状態であり、(b)が第2の回路状態)。
図4】車両熱管理システムのシステム構成例を示した説明図。
図5】運転モード(1)の説明図。
図6】運転モード(2)の説明図。
図7】運転モード(3)の説明図。
図8】運転モード(4)の説明図。
図9】運転モード(5)の説明図。
図10】運転モード(6)の説明図。
図11】運転モード(7)の説明図。
図12】運転モード(8)の説明図。
図13】運転モード(9)の説明図。
図14】運転モード(10)の説明図。
図15】運転モード(11)の説明図。
図16】運転モード(12)の説明図。
図17】運転モード(13)の説明図。
図18】本発明の他の実施形態に係る車両用熱管理システムの説明図。
図19】補助加熱装置の配置例を示した説明図。
図20】補助加熱装置の他の配置例を示した説明図。
図21】補助加熱装置の他の配置例を示した説明図。
図22】補助加熱装置の他の配置例を示した説明図。
図23】補助加熱装置の他の配置例を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。なお、本明細書で、冷媒とは、ヒートポンプ(圧縮・凝縮・膨張・蒸発)における状態変化を伴う冷媒回路の循環媒体であり、熱媒体とは、このような状態変化を伴わないで熱交換によって吸放熱を行う媒体(水などを含む)である。
【0011】
[冷媒回路]
本発明の実施形態に係る車両熱管理システムは、図1に示すように、吸熱放熱源となる冷媒回路1を備えている。冷媒回路1は、循環する冷媒を圧縮、凝縮、膨張、蒸発させる回路であって、冷媒を圧縮する圧縮機10と、圧縮機10から出た冷媒を凝縮、膨張、蒸発させて圧縮機10に戻す冷媒循環流路2を備えている。
【0012】
冷媒回路1の冷媒循環流路2は、少なくとも3つの熱交換器を有している。図示の例では、圧縮機10の下流に設けられる第1冷媒熱媒体熱交換部11と、その下流に設けられる第2冷媒熱媒体熱交換器12と、圧縮機10の上流側に設けられる第3冷媒熱媒体熱交換器13が、3つの熱交換器になるが、冷媒回路1は、必要に応じて、さらに4つ以上の熱交換器を備えることができる。
【0013】
そして、冷媒回路1は、少なくとも3つの熱交換器のうち2つ以上を選択して、選択した熱交換器の一部を凝縮器、他部を蒸発器として機能させる。この際、選択されない熱交換器は、冷媒が流れない熱交換器になる。
【0014】
図1に示した例では、開閉弁31V,32Vを開閉してバイパス冷媒流路3(31,32)を選択的に開閉することで、熱交換器の選択を行い、圧縮機10下流側における圧縮機10に近い熱交換器を凝縮器として機能させ、圧縮機10下流側における圧縮機10から遠い熱交換器を蒸発器として機能させることができる。
【0015】
図1において、冷媒回路1の冷媒循環流路2は、圧縮機10の出口に一端が接続され第1冷媒熱媒体熱交換部11の入口に他端が接続される冷媒流路20と、第1冷媒熱媒体熱交換部11の出口に一端が接続され第2冷媒熱媒体熱交換部12の入口に他端が接続される冷媒流路21と、第2冷媒熱媒体熱交換部12の出口に一端が接続され第3冷媒熱媒体熱交換部13の入口に他端が接続される冷媒流路22と、第3冷媒熱媒体熱交換部の出口に一端が接続され圧縮機10の入口に他端が接続される冷媒流路23とを備えている。
【0016】
また、冷媒回路1は減圧部14を備えている。減圧部14は、圧縮機10で圧縮された高圧の冷媒を所定の圧力まで減圧させるものであり、図1の例では、第1冷媒熱媒体熱交換部11と第2冷媒熱媒体熱交換部12の間の冷媒流路21に第1の減圧部14Aが設けられ、第2冷媒熱媒体熱交換部12と第3冷媒熱媒体熱交換部13との間の冷媒流路22に第2の減圧部14Bが設けられている。第1の減圧部14Aと第2の減圧部14Bは個別に調整可能であり、全開状態から全閉状態までを任意に調整することで所定圧までの減圧状態に調整することができる。
【0017】
図1の冷媒回路1において、冷媒循環流路2に設けたバイパス冷媒流路3は、第2冷媒熱媒体熱交換部12と第3冷媒熱媒体熱交換部13のいずれかを選択的に迂回可能に設けられている。図示の例では、バイパス冷媒流路3は、第2冷媒熱媒体熱交換部12を迂回可能なバイパス冷媒流路31と、第3冷媒熱媒体熱交換部13を迂回可能なバイパス冷媒流路32を備えている。
【0018】
バイパス冷媒流路31は、分岐部31Aが冷媒流路21に設けられ、合流部31Bが冷媒流路22に設けられており、分岐部31Aは、第1の減圧部14Aの上流側に設けられ、合流部31Bは第2の減圧部14Bの上流側に設けられている。
【0019】
バイパス冷媒流路32は、分岐部32Aが冷媒流路22に設けられ、合流部32Bが冷媒流路23に設けられており、分岐部32Aは、バイパス冷媒流路31の合流部31Bの上流側に設けられている。これにより、バイパス冷媒流路31の合流部31Bは、バイパス冷媒流路32の分岐部32Aと第3冷媒熱媒体熱交換部13との間に設けられている。
【0020】
また、バイパス冷媒流路32の分岐部32Aは、第2の減圧部14Bとバイパス冷媒流路31の合流部31Bより上流側に設けられ、バイパス冷媒流路32の分岐部32Aとバイパス冷媒流路31の合流部31Bとの間には、逆流防止手段(例えば逆止弁)15が設けられている。
【0021】
このような冷媒回路1は、バイパス冷媒流路3の選択や減圧部14の制御により、第1冷媒熱媒体熱交換部11、第2冷媒熱媒体熱交換部12、第3冷媒熱媒体熱交換部13のうち選択された熱媒交換器から、それぞれから所定温度帯の熱媒体を生成することができる。そして、後述する熱媒体回路の切り替えと組み合わせることで、各種の熱管理運転モードを実行することができる。
【0022】
また、冷媒回路1は、バイパス冷媒流路3を含めた冷媒循環流路2を図示一点破線で示したユニットU内に収めることができ、コンパクトにユニット化した冷媒回路1により、冷媒流路20~23やバイパス冷媒流路3のメンテナンスが容易になる。
【0023】
[熱媒体回路]
本実施形態の車両熱管理システムは、前述した冷媒回路1に設けられる冷媒熱媒体熱交換器(図示の例では、第1冷媒熱媒体熱交換器11、第2冷媒熱媒体熱交換器12、第3冷媒熱媒体熱交換器13)にて冷媒と熱交換した熱媒体が循環する熱媒体回路(例えば、水回路)を備える。
【0024】
そして、本実施形態に係る車両熱管理システムは、冷媒回路1が備える少なくとも3つの熱交換器のうち2つ以上選択された熱交換器において、冷媒と熱媒体が熱交換することにより、各種温度帯の熱媒体が生成され、この熱媒体が熱媒体回路を循環することで、各種温調対象に対する熱管理を行うことができる。
【0025】
図2によって、具体的な熱媒体回路の構成例を説明する。図2に示した熱媒体回路100は、第1冷媒熱媒体熱交換器11を経由する熱媒体流路101と、第2冷媒熱媒体熱交換器12を経由する熱媒体流路102と、第3冷媒熱媒体熱交換器13を経由する熱媒体流路103を備えている。
【0026】
熱媒体流路101には、第1冷媒熱媒体熱交換器11に熱媒体を送り込む循環ポンプP1が設けられ、熱媒体流路102には、第2冷媒熱媒体熱交換器12に熱媒体を送り込む循環ポンプP2が設けられ、熱媒体流路103には、第3冷媒熱媒体熱交換器13に熱媒体を送り込む循環ポンプP3が設けられている。
【0027】
熱媒体流路101,102,103は、冷媒熱媒体熱交換器(第1冷媒熱媒体熱交換器11,第2冷媒熱媒体熱交換器12,第3冷媒熱媒体熱交換器13)の入口側又は出口側に、必要に応じて、補助加熱装置4を設けることができる。図2においては、熱媒体流路102において第2冷媒熱媒体熱交換器12の出口側に補助加熱装置4を設ける例を示している。
【0028】
そして、熱媒体回路100を構成する熱媒体流路101,102,103は、それぞれ異なる温調対象の熱交換器に熱媒体を流すことができるように回路構成がなされている。
【0029】
図2に示す例では、熱媒体流路101は、室内空調装置50のヒーターコア(車室内空調用熱交換器)51に熱媒体を流すことができ、熱媒体流路102は、バッテリーなどの温調対象物用熱交換器60(61,62,63)に熱媒体を流すことができ、熱媒体流路103は、室内空調装置50のクーラーコア(車室内空調用熱交換器)52に熱媒体を流すことができる。図示の温調対象物用熱交換器60,61,62,63は、例えば、バッテリー、インバーター、モーター、パワーコントロールユニットなどに設けられる。
【0030】
また、熱媒体回路100を構成する熱媒体流路101,102,103は、いずれも外気と熱交換する外部熱交換器(ラジエーター)5を経由できるようになっていて、必要に応じて、熱媒体の熱を外部に放出するか、或いは外気の熱を熱媒体に吸熱できるようになっている。
【0031】
また、熱媒体回路100は、熱媒体を所定の流量で流すため、或いは蓄熱のために、熱媒体を貯留する貯留部(タンク)6を備えている。図示の例では、熱媒体流路102の下流側の位置、或いは、ヒーターコア51の下流側の位置に、貯留部6が配置されている。貯留部6は、後述する切替手段を設ける際には、各種運転モードで最も頻繁に使用される切替手段の出口側に設けることが好ましい。
【0032】
[熱媒体回路の切替手段]
熱媒体回路100は、前述した熱媒体流路101,102,103を流れる熱媒体を所望の用途或いは所望の温度帯で利用するために、熱媒体が流れる流路を切り替える切替手段を備えている。図2に示した例では、切替手段は、切替弁(三方弁)V11,V12,V21,V22,V31,V32,V41,V42,V5,V6によって構成され、接続される流路の2つの出口を選択的に開閉して流路の切り替えを行う。
【0033】
切替弁V11は、第1冷媒熱媒体熱交換器11を経由する熱媒体流路101を独立した回路にするか、他の流路に合流させるかを切り替え可能にしている。図2の例では、熱媒体流路101を独立した回路にすると、第1冷媒熱媒体熱交換器11にて熱交換された熱媒体は、常にヒーターコア51に流れ、流路110を流れて切替弁V11に入り、切替弁V11から出て流路111を流れて第1冷媒熱媒体熱交換器11に戻る。一方、熱媒体流路101を他の流路に合流させる場合には、切替弁V11を出た熱媒体は、流路112を流れて一旦貯留部6に貯められる。
【0034】
切替弁V12は、第2冷媒熱媒体熱交換器12を経由する熱媒体流路102を独立した回路にするか、熱媒体流路102を熱媒体流路101に連結して、第1冷媒熱媒体熱交換器11と第2冷媒熱媒体熱交換器12を直列にするかが切り替え可能になっている。図2の例では、熱媒体流路102を独立した回路にすると、熱媒体流路102から切替弁V12に入った熱媒体は、流路112を流れて貯留部6に貯められる。一方、熱媒体流路102を熱媒体流路101に連結する場合には、切替弁V12を出た熱媒体は流路111を流れて第1冷媒熱媒体熱交換器11に入る。
【0035】
切替弁V11と切替弁V12は、図3に示すように、連動して切り替えられる一体の切替弁V1(第1切替手段)で構成することができる。この切替弁V1によると、図3(a)に示すように、流路110を流路111に繋げ且つ熱媒体流路102を流路112に繋げる第1の回路状態と、図3(b)に示すように、流路110を流路112に繋げ且つ熱媒体流路102を流路111に繋げる第2の回路状態とを切り替えることができる。
【0036】
この切替弁V1は、第2冷媒熱媒体熱交換器12を経由した熱媒体が第1冷媒熱媒体熱交換器11に流れる回路状態(すなわち、熱媒体流路102と熱媒体流路101が連結する回路状態)と、第1冷媒熱媒体熱交換器11を経由した熱媒体が流れる熱媒体流路101と第2冷媒熱媒体熱交換器12を経由した熱媒体が流れる熱媒体流路102が互いに独立した回路になる回路状態とを切り替え可能にしている。
【0037】
切替弁V1を設けることで、熱媒体流路101,102を連結させて、放熱先を各所に分散させる運転モードと、熱媒体流路101,102をそれぞれ独立させて、異なる温度帯の熱媒体を各所に送る運転モードを切り替えることができる。
【0038】
切替弁V21は、貯留部6を出て流路120を流れる熱媒体を、流路121を介して温調対象物用熱交換器60に流すか、流路122を介して外部熱交換器5に流すかを切り替え可能にしている。また、切替弁V22は、流路123から切替弁V22に入る熱媒体を、温調対象物用熱交換器60に流すか、流路122を介して外部熱交換器5に流すかを切り替え可能にしている。
【0039】
切替弁V21と切替弁V22は、図3に示すように、連動して切り替えられる一体の切替弁V2(第2切替手段)で構成することができる。この切替弁V2によると、図3(a)に示すように、流路123を流路121に繋げ且つ流路120を流路122に繋げる第1の回路状態と、図3(b)に示すように、流路123を流路122に繋げ且つ流路120を流路121に繋げる第2の回路状態とが切り替え可能になる。
【0040】
この切替弁V2は、切替弁V1(第1切替手段)から出た熱媒体を温調対象物用熱交換器60に流すか外部熱交換器5に流すかを切り替える。また、切替弁V2は、後述する切替弁V4から出た熱媒体を温調対象物用熱交換器60に流すか外部熱交換器5に流すかを切り替える。
【0041】
このような切替弁V2を設けることで、切替弁V1から出た熱媒体の熱を直接温調対象物用熱交換器60に流して温調対象物を温調するか、外部熱交換器5に流して放熱するかの切り替えが可能になる。
【0042】
切替弁V31は、温調対象物用熱交換器60を出て流路130を流れる熱媒体を、流路131に流すか、流路132に流すかを切り替え可能にしている。また、切替弁V32は、外部熱交換器5を出て流路133から切替弁V32に入る熱媒体を、流路131に流すか、流路132に流すかを切り替え可能にしている。
【0043】
この切替弁V31と切替弁V32は、図3に示すように、連動して切り替えられる一体の切替弁V3(第3切替手段)で構成することができる。この切替弁V3によると、図3(a)に示すように、流路130を流路131に繋げ且つ流路133を流路132に繋げる第1の回路状態と、図3(b)に示すように、流路130を流路132に繋げ且つ流路133を流路131に繋げる第2の回路状態とが切り替え可能になる。
【0044】
ここで、切替弁V3は、切替弁V2(第2切替手段)と連動して切り替えられる。すなわち、切替弁V2が前述した第1の回路状態(図3(a)参照)のときには、切替弁V3は前述した第2の回路状態(図3(b)参照)になり、切替弁V2が前述した第2の回路状態(図3(b)参照)のときには、切替弁V3は前述した第1の回路状態(図3(a)参照)になる。
【0045】
そして、切替弁V2が温調対象物熱交換器60に向けて流した熱媒体は、切替弁V3により、流路131及び切替弁V5(第5切替手段)を介して第2冷媒熱媒体熱交換器12に流れるか、流路132及び後述する切替弁V4を介して第3冷媒熱媒体熱交換器13に流れるか切り替えれる。また、切替弁V2が外部熱交換器5に向けて流した熱媒体は、切替弁V3により、流路132及び後述する切替弁V4を介して第3冷媒熱媒体熱交換器13に流れるか、流路131及び切替弁V5(第5切替手段)を介して第2冷媒熱媒体熱交換器12に流れるか切り替えられる。
【0046】
切替弁V41は、流路132を流れる熱媒体を、流路141に流すか、流路142に流すかを切り替え可能にしている。また、切替弁V42は、クーラーコア52を出て流路140から切替弁V42に入る熱媒体を、流路141に流すか、流路142に流すかを切り替え可能にしている。
【0047】
この切替弁V41と切替弁V42は、図3に示すように、連動して切り替えられる一体の切替弁V4(第4切替手段)で構成することができる。この切替弁V4によると、図3(a)に示すように、流路140を流路141に繋げ且つ流路132を流路142に繋げる第1の回路状態と、図3(b)に示すように、流路140を流路142に繋げ且つ流路132を流路141に繋げる第2の回路状態とが切り替え可能になる。
【0048】
ここで、切替弁V4は、クーラーコア52(車室内空調用熱交換器)から出た熱媒体を第3冷媒熱媒体熱交換器13に流すか切替弁V2(第2切替手段)に入れるかを切り替える。そして、前述したように、切替弁V2(第2切替手段)は、切替弁V4(第4切替手段)から出た熱媒体を温調対象物用熱交換器60に流すか外部熱交換器5に流すかを切り替える手段を兼ねる。
【0049】
また、切替弁V3(第3切替手段)は、外部熱交換器5から出た熱媒体を第2冷媒熱媒体熱交換器12に流すか切替弁V4(第4切替手段)に入れるかを切り替える手段を兼ねる。切替弁V4(第4切替手段)は、切替弁V3(第3切替手段)から出た熱媒体を第3冷媒熱媒体熱交換器13に流すか切替弁V2(第2切替手段)に入れるかを切り替える手段を兼ねる。
【0050】
切替弁V5(第5切替手段)は、温調対象物用熱交換器60又は外部熱交換器5から出て切替弁V3及び流路131を介した熱媒体を、他の温調対象物用熱交換器61,62,63に流すか否か切り替えるものである。熱媒体を他の温調対象物用熱交換器61,62,63に流す場合には、流路131を流れる熱媒体は、流路150を流れ、温調対象物用熱交換器61,62,63を経由して、合流部150Aにて熱媒体流路102に合流する。熱媒体を他の温調対象物用熱交換器61,62,63に流さない場合には、流路131を流れる熱媒体は流路150を経由することなく直接熱媒体流路102に流れる。
【0051】
ここで切替弁V2,V3,V4,V5は、流路120を流れる熱媒体(貯留部6から出た熱媒体)を、切替弁V2を介して切替弁V3に流し、切替弁V3を介して切替弁V5に流し、切替弁V5を介して第2冷媒熱媒体熱交換器12に流しており、また、流路123を流れる熱媒体を、切替弁V2を介して切替弁V3に流し、切替弁V3を介して切替弁V4に流し、切替弁V4を介して切替弁V2に流している。
【0052】
切替弁V6(第6切替手段)は、第3冷媒熱媒体熱交換器13で熱交換した熱媒体を熱媒体流路103からクーラーコア(車室内空調用熱交換器)52に流すか、流路123を介して切替弁V2(第2切替手段)に流すかを切り替えるものである。熱媒体流路103を流れる熱媒体は、切替弁V6の一つの切り替えで、流路160を流れてクーアーコア52に向かい、他の切り替えでは、流路161を流れて、合流部161Aにて流路123に合流する。
【0053】
[運転モード(制御部)]
本発明の実施形態に係る車両熱管理システムは、図4に示すように、前述した冷媒回路1と熱媒体回路100を制御して、各種の運転モードを実行する制御部(熱管理ECU)300を備えている。制御部300は、空調操作信号や車両が備える他のECUからの信号が入力され、その入力信号に応じて、冷媒回路1における圧縮機10、減圧部14(14A,14B)、バイパス冷媒流路3(31,32)の開閉弁31V,32V等を制御すると共に、熱媒体回路100の切替手段(切替弁V1~V6)、補助加熱装置6、室内空調装置50等を制御することで、以下に示す各種運転モードを実行する。
【0054】
以下の図で、冷媒回路1と熱媒体回路100における不使用の流路等を破線で示し、切替弁と開閉弁の開方向を白塗りで示し、閉方向を黒塗りで示す。
【0055】
図5に示した運転モード(1)は、室内空調装置50を冷房運転しながらバッテリーの冷却を行う運転モードである。この運転モード(1)では、冷媒回路1は、開閉弁31V,32Vを共に閉にして、バイパス冷媒流路31,32を共に閉止する。また、冷媒回路1は、減圧部14A,14Bの減圧量が適宜調整され、減圧部14Aは略全開にして、減圧部14Bにて所望の減圧を行う。この冷媒回路1では、第1冷媒熱媒体熱交換器11と第2冷媒熱媒体熱交換器12が凝縮器(放熱側)として機能し、第3冷媒熱媒体熱交換器13が蒸発器(吸熱側)として機能する。
【0056】
熱媒体回路100は、第3冷媒熱媒体熱交換器13を経由する熱媒体流路103を流れる熱媒体が、第3冷媒熱媒体熱交換器13の吸熱で冷水となり、切替弁V6を介して室内空調装置50のクーラーコア52に入ることで室内冷房を行う。クーラーコア52を出た熱媒体は、切替弁V4を経由して切替弁V2に入り、流路121を流れて温調対象物用熱交換器60にてバッテリーを冷却する。温調対象物用熱交換器60を出た熱媒体は、切替弁V3、切替弁V4を経由して、熱媒体流路103に戻る。
【0057】
この際、吸熱側の熱媒体流路103を流れる熱媒体(冷水)は、独立した循環回路を形成しており、クーラーコア52と温調対象物用熱交換器60にて熱交換した熱が効率的に第3冷媒熱媒体熱交換器13にて吸熱される。
【0058】
また、この運転モード(1)では、放熱側の熱媒体流路101を流れる熱媒体は、室内空調装置50のヒーターコア51、切替弁V1、貯留部6、切替弁V2、外部熱交換器5、切替弁V3、切替弁V5、温調対象物用熱交換器63,61,62を経由して、第2冷媒熱媒体熱交換器12を経由する熱媒体流路102に流れ、切替弁V1を介して熱媒体流路101に戻る。
【0059】
このように運転モード(1)では、第1冷媒熱媒体熱交換器11と第2冷媒熱媒体熱交換器12が放熱側になり、放熱側の熱媒体流路101,102が連結されることで、放熱先が、貯留部6での蓄熱、外部熱交換器5での外気放出、温調対象物用熱交換器63,61,62での温調などに分散される。これによって、冷房とバッテリー冷却を積極的に行ったことによる吸熱を各所で分散して放熱することで効率的な熱利用を行うことができる。
【0060】
図6に示した運転モード(2)は、運転モード(1)におけるバッテリーの冷却を止めて、室内空調装置50を冷房運転させる運転モードである。この運転モード(2)では、冷媒回路1は、運転モード(1)と同じであり、熱媒体回路100は、熱媒体流路103を流れる熱媒体が、切替弁V6を経由してクーラーコア52に入り、クーラーコア52を出た熱媒体が切替弁V4を経由して直接熱媒体流路103に戻る。熱媒体回路100における熱媒体流路101,102を流れる熱媒体は、運転モード(1)と同様である。
【0061】
図7に示した運転モード(3)は、運転モード(1)における室内空調装置50の冷房運転を止めて、バッテリーの冷却を積極的に行う運転モードである。この運転モード(3)では、冷媒回路1は、運転モード(1)と同じであり、熱媒体回路100は、吸熱側の熱媒体流路103を流れる熱媒体が、切替弁V6、切替弁V2を経由して、バッテリー用の温調対象物用熱交換器60に流れ、温調対象物用熱交換器60を出た熱媒体は、切替弁V3、切替弁V4を経由して熱媒体流路103に戻る。この際、切替弁V6の切り替えで、熱媒体が流路160を流れるのを止めることで、クーラーコア52を通過する熱媒体の流れを止めている。熱媒体回路100における放熱側の熱媒体流路101,102を流れる熱媒体は、運転モード(1)と同様である。
【0062】
図8に示した運転モード(4)は、除湿冷房(放熱温調)を行う運転モードであり、運転モード(1)と同様に、室内空調装置50を冷房運転させながらバッテリーの冷却を行い、放熱側の熱媒体流路101を流れる熱媒体を独立して室内空調装置50のヒーターコア51に流すことで除湿を行う。
【0063】
この運転モード(4)では、冷媒回路1は、運転モード(1)と同様にバイパス冷媒流路31,32を共に閉止しているが、減圧部14A,14Bの減圧を減圧部14Aと減圧部14Bとで段階的に行っている。熱媒体回路100は、熱媒体流路101,102,103がそれぞれ独立した回路になっている。
【0064】
運転モード(4)では、放熱側の熱媒体流路101を流れる熱媒体は、第1冷媒熱媒体熱交換器11の放熱で温水となりヒーターコア51に入り、単独でヒーターコア51での空調温調を行う。また、放熱側の熱媒体流路102を流れる熱媒体は、第2冷媒熱媒体熱交換器12の放熱で熱媒体流路101を流れる熱媒体より低い温度帯の温水となり、切替弁V1、貯留部6、切替弁V2、外部熱交換器5、切替弁V3、切替弁V5、温調対象物用熱交換器63,61,62を経由して、熱媒体流路102に戻る。また、吸熱側の熱媒体流路103を流れる熱媒体は、運転モード(1)と同様に、クーラーコア52とバッテリー用の温調対象物用熱交換器60を経由する循環流路を形成している。
【0065】
この運転モード(4)では、吸熱側で冷房除湿とバッテリー冷却を行いながら、放熱側では、独立した熱媒体流路101を流れる高温の熱媒体で目標吹出温度への空調を行い、独立した熱媒体流路102を流れる低温の熱媒体で各所の温調を行うことができる。
【0066】
図9に示した運転モード(5)は、除湿暖房(吸熱温調)を行う運転モードである。この運転モード(5)では、冷媒回路1は、バイパス冷媒流路31,32を共に開にして、圧縮機10から第1冷媒熱媒体熱交換器11、バイパス冷媒流路31、第3冷媒熱媒体熱交換器13を経由して圧縮機10に戻る(第2冷媒熱媒体熱交換器12を迂回する)第1系統の冷媒回路と、圧縮機10から第1冷媒熱媒体熱交換器11、第2冷媒熱媒体熱交換器12、バイパス冷媒流路32を経由して圧縮機10に戻る(第3冷媒熱媒体熱交換器13を迂回する)第2系統の冷媒回路を構成している。
【0067】
この冷媒回路1では、第1冷媒熱媒体熱交換器11は、凝縮器(放熱側)として機能し、第2冷媒熱媒体熱交換器12は、第2系統の冷媒回路での蒸発器(吸熱側)として機能し、第3冷媒熱媒体熱交換器13は、第1系統の冷媒回路での蒸発器(吸熱側)として機能する。
【0068】
運転モード(5)の熱媒体回路100は、熱媒体流路101,102,103がそれぞれ独立した回路を構成している。すなわち、放熱側の熱媒体流路101を流れる熱媒体は、単独でヒーターコア51に入り、ヒーターコア51を出た熱媒体は、切替弁V1を経由して熱媒体流路101に戻る。
【0069】
また、一方の吸熱側の熱媒体流路102を流れる熱媒体は、切替弁V1、貯留部6、切替弁V2、外部熱交換器5、切替弁V3、切替弁V5、温調対象物用熱交換器63,61,62を経由して、熱媒体流路102に戻り、他方の吸熱側の熱媒体流路103を流れる熱媒体は、切替弁V6、クーラーコア52、切替弁V4を経由して熱媒体流路103に戻る。
【0070】
このような運転モード(5)は、放熱側の熱媒体流路101を流れる熱媒体を限定してヒーターコア51に流すことで暖房運転を行い、吸熱側が第2冷媒熱媒体熱交換器12を経由する熱媒体流路102と第3冷媒熱媒体熱交換器13を経由する熱媒体流路103に分散されることで、暖房運転に必要な熱を各所から吸熱する。また、吸熱側の熱媒体流路103を流れる熱媒体を独立してクーラーコア51に流すことで、車室内の除湿を効果的に行っている。
【0071】
図10に示した運転モード(6)は、外気吸熱を行って、室内空調装置50を暖房運転しながら、バッテリーの加熱(暖機)を行う運転モードである。この運転モード(6)の冷媒回路1は、バイパス冷媒流路31,32を何れも閉にして、運転モード(4)と同様に、第1冷媒熱媒体熱交換器11と第2冷媒熱媒体熱交換器12を凝縮器(放熱側)とし、第3冷媒熱媒体熱交換器13を蒸発器(吸熱側)とし、減圧部14A,14Bの減圧量を調整して、第1冷媒熱媒体熱交換器11と第2冷媒熱媒体熱交換器12とで段階的な放熱を行っている。
【0072】
運転モード(6)における熱媒体回路100は、熱媒体流路101,102,103がそれぞれ独立した回路を構成し、放熱側の熱媒体流路101を流れる高温の熱媒体は、独立してヒーターコア51に入り、ヒーターコア51を出た熱媒体は、切替弁V1を経由して熱媒体流路101に戻る。
【0073】
また、放熱側の熱媒体流路102を流れる比較的低温の熱媒体は、切替弁V1、貯留部6、切替弁V2、バッテリー用の温調対象物用熱交換器60、切替弁V3、切替弁V5を経由して、熱媒体流路102に戻る。また、吸熱側の熱媒体流路103を流れる熱媒体は、外気吸熱を行うために、切替弁V6、切替弁V2、外部熱交換器5、切替弁V3、切替弁V4を経由して熱媒体流路103に戻る。
【0074】
この際、熱媒体回路100は、切替弁V6によって流路160に熱媒体が流れるのを止めることで、クーラーコア52を通る熱媒体の流れを止めている。また、切替弁V5によって流路150に熱媒体が流れるのを止めている。
【0075】
このような運転モード(6)は、放熱側の熱媒体流路101を流れる高温の温水をヒーターコア51に流して、室内空調装置50の暖房運転を行い、もう一つの放熱側の熱媒体流路102を流れる比較的低温の温水を温調対象物用熱交換器60に流してバッテリーの加熱を行っている。これによると、冷媒回路1により異なる温度帯の熱媒体を生成することで、熱効率よく所望の温度で暖房とバッテリー加熱を行うことができる。
【0076】
図11に示した運転モード(7)は、外気吸熱を行って、室内空調装置50を暖房運転しながら、バッテリー等の温調対象物の蓄廃熱を行う運転モードである。この運転モード(7)の冷媒回路1は、バイパス冷媒流路31を開、バイパス冷媒流路32を閉にし、減圧部14Aを閉止することで、圧縮機10から第1冷媒熱媒体熱交換器11、バイパス冷媒流路31、第3冷媒熱媒体熱交換器13を経由して圧縮機10に戻る(第2冷媒熱媒体熱交換器12を迂回した)回路が構成されている。
【0077】
この冷媒回路1は、第1冷媒熱媒体熱交換器11が凝縮器(放熱側)になり、第3冷媒熱媒体熱交換器13が蒸発器(吸熱側)になり、第2冷媒熱媒体熱交換器12は冷媒回路1から外れた状態になる。
【0078】
運転モード(7)における熱媒体回路100は、熱媒体流路101,102,103がそれぞれ独立した回路を構成しており、放熱側の熱媒体流路101を流れる熱媒体は、独立してヒーターコア51に入り、ヒーターコア51を出た熱媒体は、切替弁V1を経由して熱媒体流路101に戻る。
【0079】
また、熱媒体流路102を流れる熱媒体は、切替弁V1、貯留部6、切替弁V2、バッテリー用の温調対象物用熱交換器60、切替弁V3、切替弁V5、その他の温調対象用熱交換器63,61,62を経由して、熱媒体流路102に戻る。この際、第2冷媒熱媒体熱交換器12は冷媒回路1の構成から外れているので、そこでの熱交換は行われない。そして、吸熱側の熱媒体流路103を流れる熱媒体は、外気吸熱を行うために、切替弁V6、切替弁V2、外部熱交換器5、切替弁V3、切替弁V4を経由して熱媒体流路103に戻る。
【0080】
このような運転モード(7)によると、外気吸熱によって室内空調装置50の暖房運転を行いながら、温調対象物用熱交換器60,61,62,63を流れる熱媒体を冷媒回路1から切り離した回路にし、その回路に蓄熱用又は廃熱用の貯留部6を設けている。これによると、バッテリー等の温調対象物の熱を効率的に蓄廃熱することができる。
【0081】
図12に示した運転モード(8)は、外気吸熱を行って、室内空調装置50を暖房運転しながら、バッテリー等の温調対象物の蓄熱を利用する運転モードである。この運転モード(8)の冷媒回路1は、バイパス冷媒流路31,32を開にして、運転モード(5)と同様に、第2冷媒熱媒体熱交換器12を迂回する第1系統の冷媒回路と第3冷媒熱媒体熱交換器13を迂回する第2系統の冷媒回路を構成している。
【0082】
運転モード(7)における熱媒体回路100は、熱媒体流路101,102,103がそれぞれ独立した回路を構成しており、放熱側の熱媒体流路101を流れる熱媒体は、独立してヒーターコア51に入り、ヒーターコア51を出た熱媒体は、切替弁V1を経由して熱媒体流路101に戻る。また、吸熱側の熱媒体流路103を流れる熱媒体は、外気吸熱を行うために、切替弁V6、切替弁V2、外部熱交換器5、切替弁V3、切替弁V4を経由して熱媒体流路103に戻る。
【0083】
そして、吸熱側の熱媒体流路102を流れる熱媒体は、切替弁V1、貯留部6、切替弁V2、バッテリー用の温調対象物用熱交換器60、切替弁V3、切替弁V5、その他の温調対象用熱交換器63,61,62を経由して、熱媒体流路102に戻る。ここで、吸熱側の第2冷媒熱媒体熱交換器12は、前述した運転モード(6)において貯留部6やバッテリー等の温調対象物に蓄熱された熱を吸熱することで、外気吸熱と合わせて、暖房に必要な熱を調達している。
【0084】
図13に示した運転モード(9)は、蓄熱利用によって室内空調装置50を暖房運転させる運転モードである。この運転モード(9)の冷媒回路1は、バイパス冷媒流路31を閉、バイパス冷媒流路32を開、減圧部14B閉にすることで、第3冷媒熱媒体熱交換器13を迂回する冷媒回路を構成している。この際、第3冷媒熱媒体熱交換器13は冷媒回路1から外れており、第3冷媒熱媒体熱交換器13を経由する熱媒体流路103とクーラーコア52に熱媒体を流す流路は不使用状態になっている。
【0085】
運転モード(9)の熱媒体回路100は、熱媒体流路101と熱媒体流路102が独立の回路になっており、放熱側の熱媒体流路101を流れる熱媒体は、独立してヒーターコア51に入り、ヒーターコア51を出た熱媒体は、切替弁V1を経由して熱媒体流路101に戻る。
【0086】
吸熱側の熱媒体流路102を流れる熱媒体は、運転モード(8)と同様に、切替弁V1、貯留部6、切替弁V2、バッテリー用の温調対象物用熱交換器60、切替弁V3、切替弁V5、その他の温調対象用熱交換器63,61,62を経由して、熱媒体流路102に戻る。ここでは、冷媒回路1は、吸熱側の熱媒体流路102において、運転モード(6)において貯留部6やバッテリー等の温調対象物に蓄熱された熱を吸熱して暖房運転を行っている。
【0087】
図14に示した運転モード(10)は、蓄熱利用によって停車中の除霜暖房を行う運転モードである。この運転モード(10)の冷媒回路1は、運転モード(4)などと同様に、バイパス冷媒流路31,32を共に閉にして、第1冷媒熱媒体熱交換器11と第2冷媒熱媒体熱交換器12を凝縮器(放熱側)として機能させ、第3冷媒熱媒体熱交換器13を蒸発器(吸熱側)として機能させている。
【0088】
運転モード(10)における熱媒体回路100は、熱媒体流路101,102,103がそれぞれ独立した回路を構成しており、放熱側の熱媒体流路101を流れる熱媒体は、ヒーターコア51に入り、ヒーターコア51を出た熱媒体は、切替弁V1を経由して熱媒体流路101に戻る。放熱側の熱媒体流路102を流れる熱媒体は、切替弁V1、貯留部6、切替弁V2、外部熱交換器5、切替弁V3、切替弁V5を経由して熱媒体流路102に戻る。吸熱側の熱媒体流路103を流れる熱媒体は、切替弁5、切替弁V2、バッテリー用の温調対象物用熱交換器60、切替弁V3、切替弁V4を経由して熱媒体流路103に戻る。
【0089】
このような運転モード(10)によると、バッテリーに蓄熱された熱を第3冷媒熱媒体熱交換器13にて吸熱して冷媒回路1を動作させており、第2冷媒熱媒体熱交換器12にて放出された熱と貯留部6に蓄熱された熱によって加熱された熱媒体を外部熱交換器5に流すことで、外部熱交換器5の除霜を行っている。
【0090】
図15に示した運転モード(11)は、蓄熱利用によって走行中の除霜暖房を行う運転モードである。この運転モード(11)は、切替弁V5の切り替え状態以外は運転モード(10)と同じである。この運転モード(11)では、運転中に発生する温調対象物(インバーター、モーター、パワーコントロールユニットなど)の熱と第2冷媒熱媒体熱交換器12の放熱と貯留部6の蓄熱を、外部熱交換器5の除霜に利用している。
【0091】
図16に示した運転モード(12)は、補助加熱装置4の熱を吸熱して冷媒回路を動作することで、室内空調装置50を暖房運転しながらバッテリーの加熱を行っている。この運転モード(12)は、切替弁V5の切り替え以外は運転モード(9)と同様である。
【0092】
運転モード(12)における熱媒体回路100は、熱媒体流路101と熱媒体流路102が独立の回路になっており、放熱側の熱媒体流路101を流れる熱媒体は、ヒーターコア51に入り、ヒーターコア51を出た熱媒体は、切替弁V1を経由して熱媒体流路101に戻る。
【0093】
また、吸熱側の熱媒体流路102を流れる熱媒体は、補助加熱装置4にて加熱され、切替弁V1、貯留部6、切替弁V2、温調対象物用熱交換器60、切替弁V3、切替弁V5を経由して熱媒体流路102に戻る。この際、補助加熱装置4にて付加された熱が第2冷媒熱媒体熱交換器12にて冷媒に吸熱され、また、温調対象物用熱交換器60では、補助加熱装置4にて付加された熱と貯留部6に蓄積された熱でバッテリーが加熱される。
【0094】
この際、バッテリー加熱に利用される熱媒体の温度は、補助加熱装置4の発熱量で適宜調整することができるので、独立した放熱側の熱媒体流路101を流れる熱媒体の温度とは異なる温度帯に調整することができ、適正な温度で暖房運転を行いながらバッテリー加熱が可能になる。
【0095】
図17に示した運転モード(13)は、補助加熱装置4の熱を付加しながら、車室内の熱と温調対象物の廃熱・蓄熱を吸熱する冷媒回路の動作で室内空調装置50の暖房運転を行っている。
【0096】
この運転モード(13)の冷媒回路1は、運転モード(8)と同様であり、バイパス冷媒流路31,32を共に開にして、第2冷媒熱媒体熱交換器12を迂回する第1系統の冷媒回路と、第3冷媒熱媒体熱交換器13を迂回する第2系統の冷媒回路を構成している。
【0097】
運転モード(13)における熱媒体回路100は、熱媒体流路101,102,103がそれぞれ独立した回路になっており、放熱側の熱媒体流路101を流れる熱媒体は、ヒーターコア51に入り、ヒーターコア51を出た熱媒体は、切替弁V1を経由して熱媒体流路101に戻る。
【0098】
吸熱側の熱媒体流路102を流れる熱媒体は、補助加熱装置4で加熱され、切替弁V1、貯留部6、切替弁V2、温調対象物用熱交換器60、切替弁V3、切替弁V5、温調対象物用熱交換器63,61,62を経由して熱媒体流路102に戻る。また、吸熱側の熱媒体流路103を流れる熱媒体は、切替弁V5、クーラーコア52、切替弁V4を経由して熱媒体流路103に戻る。
【0099】
運転モード(13)では、第1系統の蒸発器として機能する第3冷媒熱媒体熱交換器13において、クーラーコア52を介して回収された車室内の熱が冷媒に吸熱され、第2系統の冷媒回路で蒸発器として機能する第2冷媒熱媒体熱交換器12において、補助加熱装置4で付加された熱や貯留部6の蓄熱、バッテリー等の温調対象物の蓄廃熱が冷媒に吸熱される。
【0100】
[冷媒によるダイレクト空調]
図18は、本発明の他の実施形態に係る車両用熱管理システムの構成例を示している。前述した実施形態との違いは、複数の熱交換器を備える冷媒回路1において、選択した熱交換器の一つを蒸発器として車室内空調用熱交換器としている。すなわち、図示の例では、冷媒流路22A,22BをユニットUから引き出すことで、第3冷媒熱媒体熱交換器13をユニットUの外に出して、室内空調装置50のクーラーコアとしている。
【0101】
図示の状態は、室内空調装置50に冷房運転をしながらバッテリーの冷却を行う運転モードを示している。ここでは、冷媒回路1は、バイパス冷媒流路31とバイパス冷媒流路32を共に閉にして、ユニットU内の第1冷媒熱媒体熱交換器11を凝縮器(放熱側)にし、ユニットU内の第2冷媒熱媒体熱交換器12を蒸発器(吸熱側)にし、ユニット外の室内空調装置50に設けた第3冷媒熱媒体熱交換器13を蒸発器(吸熱側)にしている。
【0102】
この実施形態では、熱媒体回路100は、第1冷媒熱媒体熱交換器11を経由する熱媒体流路101と第2冷媒熱媒体熱交換器12を経由する熱媒体流路102がそれぞれ独立した回路になる回路状態と、第2冷媒熱媒体熱交換器を経由した熱媒体が第1冷媒熱媒体熱交換器101に流れる回路状態とを切り替える切替手段として、切替弁V01と切替弁V02が設けられている。また、第2冷媒熱媒体熱交換器12を流れる熱媒体がバッテリー用の温調対象物用熱交換器60を流れるか否かを切り替える切替弁V03が設けられている。
【0103】
図示の例では、放熱側の熱媒体流路101を流れる熱媒体は、ヒーターコア51に入り、ヒーターコア51から流路200を流れて切替弁V01に入り、流路201にて、外部熱交換器5、温調対象物用熱交換器62、貯留部6を経由して、切替弁V02に入り、流路203から切替弁V01を介して、流路202を経て熱媒体流路101に戻る独立回路を循環している。
【0104】
また、吸熱側の熱媒体流路102を流れる熱媒体は、切替弁V02に入り、流路204を流れて切替弁V03に入り、流路205にてバッテリー用の温調対象物用熱交換器60を経由して熱媒体流路102に戻る独立回路を循環している。
【0105】
この実施形態における図示の回路状態によると、室内空調装置50による冷房運転は、第3冷媒熱媒体熱交換器13による冷媒への直接吸熱と、放熱側の熱媒体流路101を流れる熱媒体による温調によって行っている。また、バッテリーの冷却は、吸熱側の熱媒体流路102を流れる熱媒体の独立回路で行っている。この際、熱媒体流路102の吸熱を行う第2冷媒熱媒体熱交換器12は、減圧部14Aの段階的な減圧で吸熱量が抑えられており、冷房での吸熱を有効に確保しつつ、適度の吸熱でバッテリーの冷却を熱効率良く行っている。
【0106】
図18に示した実施形態においても、切替弁V01,V02,V03を適宜切り替えることで、熱媒体を適宜の温度帯にして、暖房運転やバッテリーの加熱(暖機)など運転モードを熱効率よく実行することができる。
【0107】
[補助加熱装置の配置]
前述したように、熱媒体回路100に設けられる補助加熱装置4は、第1,第2,第3冷媒熱媒体熱交換器11,12,13の入口側又は出口側に設けることが好ましく、補助加熱装置4の配置を適宜設定することで、前述した各運転モードにおいて所望の機能を発揮させることができる。
【0108】
先ず、前述した実施形態に示すように、第2冷媒熱媒体熱交換器12の出口側又は入口側に補助加熱装置4を設けた場合には、図16に示した運転モード(12)において、補助加熱装置4の熱を吸熱して冷媒回路1を動作させ、低温環境下での暖房を行うことができる。
【0109】
ここで第2冷媒熱媒体熱交換器12の出口側に補助加熱装置4を設けた場合には、図16に示すように、補助加熱装置4で加熱された熱媒体は、切替弁V1を介して貯留部6に入り、貯留部6から切替弁V2、温調対象物用熱交換器60、切替弁V3、切替弁V5を経由して熱媒体流路102に戻る循環流路を流れる。この循環流路では、温調対象物熱交換器60においてバッテリーやモーターなどの廃熱を吸熱することができるので、COP(Coefficient Of Performance;成績係数)が1を超えるヒートポンプを実現でき、合わせて、温調対象物熱交換器60を介してバッテリーの温調を補助加熱装置4にて調整した適温で行うことができる。
【0110】
この際、第2冷媒熱媒体熱交換器12の入口側に補助加熱装置4を設けた場合には、前述したように、補助加熱装置4にて加熱された熱媒体が循環流路を流れることは同様であるが、補助加熱装置4で加熱した熱媒体が直接第2冷媒熱媒体熱交換器12に入ることになるので、冷媒回路1の低圧側の吸熱量を補助加熱装置4で直接調整することができ、暖房時の温調を熱効率良く行うことができる。
【0111】
図19は、第2冷媒熱媒体熱交換器12の出口側又は入口側に補助加熱装置4を設けた場合の他の運転例を示している。図19に示す例は、図11に示した運転モード(7)における蓄熱回収暖房中に、外部熱交換器5の除霜を行う例である。
【0112】
ここでは、切替弁V2の切り替えで、補助加熱装置4で加熱された熱媒体は、切替弁V1を介して貯留部6に入り、貯留部6から切替弁V2、外部熱交換器5、切替弁V3、切替弁V5を経由して熱媒体流路102に戻る循環流路を流れる。この循環流路を流れる熱媒体で、蓄熱回収暖房中に外部熱交換器5の除霜を行うことができる。この際の補助加熱装置4の配置は、第2冷媒熱媒体熱交換器12の出口側であっても入口側であっても同様の機能が得られる。
【0113】
図20は、補助加熱装置4を第3冷媒熱媒体熱交換器13の出口側に設けた運転例である。ここでは、図11に示した運転モード(7)において、切替弁V2と切替弁V3を切り替えることで、第3冷媒熱媒体熱交換器13を出て補助加熱装置4にて加熱された熱媒体は、第6切替弁V6、第2切替弁V2、温調対象物用熱交換器60、第3切替弁V3、第4切替弁V4を経由して、熱媒体流路103に戻る循環流路を流れる。
【0114】
補助加熱装置4にて加熱され前述した循環流路を流れる熱媒体の熱は、第3冷媒熱媒体熱交換器13にて低圧側の冷媒回路1に吸熱され、高圧側の第1冷媒熱媒体熱交換器11にて熱媒体流路101を流れる熱媒体に放熱されて、ヒーターコア51での暖房に供される。これにより、低温環境下であっても、補助加熱装置4により供給される熱を冷媒回路1が吸熱して暖房運転を行うことができる。この際、前述した循環流路には、温調対象物用熱交換器60が設けられているので、バッテリーなどの温調を合わせて行うことができる。
【0115】
この運転例では、補助加熱装置4を第3冷媒熱媒体熱交換器13の出口側に設けた場合には、温調対象物用熱交換器60を介したバッテリーなどの温調を補助加熱装置4の温度調整で直接行うことができる。また、補助加熱装置4を第3冷媒熱媒体熱交換器13の入口側に設けた場合には、冷媒回路1の低圧側の吸熱を補助加熱装置4にて直接調節することができる。
【0116】
図21は、補助加熱装置4を第3冷媒熱媒体熱交換器13の出口側に設けた他の運転例である。この例は、図13に示した運転モード(9)において、蓄熱回収暖房中に、補助加熱装置4の熱を利用して外部熱交換器5の着霜時の除霜を行うものである。
【0117】
この例では、冷媒回路1とは別に、補助加熱装置4にて加熱された熱媒体を、切替弁V6、切替弁V2、外部熱交換器5、切替弁V3、切替弁V4経由で循環させて、外部熱交換器5の除霜を行っている。この際の補助加熱装置4の配置は、第3冷媒熱媒体熱交換器13の出口側であっても入口側であっても同様の機能が得られる。
【0118】
図22は、補助加熱装置4を第1冷媒熱媒体熱交換器11の出口側に設けた運転例を示している。この場合、補助加熱装置4で加熱された熱媒体を短い流路で直接ヒーターコア51に流して、少ない熱損失で暖房を行うことができ、また、補助加熱装置4によって暖房の温度調整を行うことができる。
【0119】
この運転例では、圧縮機10や膨張弁14B(或いは膨張弁14A)、循環ポンプP3などが故障した場合に、図示のように、循環ポンプP1、補助加熱装置4、ヒーターコア51、切替弁V1、循環ポンプP1の独立した循環流路を形成して、暖房運転を行うことができる。また、切替弁V1~V6を適宜切り替えて熱媒体回路100の流路を直列に繋ぐことで、前述したように冷媒回路1の故障が生じた場合であっても、補助加熱装置4による暖房運転と温調対象物用熱交換器60などを介したバッテリーなどの温調を両立させることができる。
【0120】
図22においては、冷媒回路1が故障の場合を示しているが、冷媒回路1が運転できる場合には、補助加熱装置4を第1冷媒熱媒体熱交換器11の入口側に設けるより、補助加熱装置4を第1冷媒熱媒体熱交換器11の出口側に設けた方が、冷媒回路1に補助加熱装置4を加える運転時のCOP(成績係数)を高めることができる。しかしながら、冷媒回路1に補助加熱装置4を加える運転時においては、補助加熱装置4を第1冷媒熱媒体熱交換器11の入口側に設けることで、補助加熱装置4の作動で起動後に直ぐ熱媒体温度を上げて冷媒回路1の高圧側温度を上げることができるので、冷媒回路1の立ち上がり性能を高めることができる。
【0121】
図23には、前述したように冷媒回路1が故障した場合で、補助加熱装置4を第3冷媒熱媒体熱交換器13の出口側に設けた運転例を示している。この運転例でも、補助加熱装置4で加熱された熱媒体をクーラーコア52(ヒーターコアとして利用)に流して、暖房運転を行うことができ、図示のように、クーラーコア52を出た熱媒体を温調対象物用熱交換器60,61,62,63に流して、バッテリー温調などを合わせて行うことができる。
【0122】
この際、例えば、ヒーターコアとして利用するクーラーコア52に入れる熱媒体の温度を50℃に設定して暖房を行い、バッテリー用の温調対象物用熱交換器60に入れる熱媒体の温度が上限温度の35℃以下になるように外部熱交換器5での放熱を行う。これによって、暖房とバッテリー温調を適温で行うことが可能になる。このような運転例では、補助加熱装置4を第3冷媒熱媒体熱交換器13の入口側に設けても同様の機能を得ることができる。
【0123】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0124】
1:冷媒回路,2:冷媒循環流路,3(31,32):バイパス冷媒流路,
4:補助加熱装置,5:外部熱交換器,6:貯留部,10:圧縮機,
11:第1冷媒熱媒体熱交換器,12:第2冷媒熱媒体熱交換器,
13:第3冷媒熱媒体熱交換器,14,14A,14B:減圧部,
15:逆流防止手段,20,21,22,23:冷媒流路,
31A,32A:分岐部,31B,32B:合流部,
31V,32V:開閉弁,50:室内空調装置,
51:ヒーターコア,52:クーラーコア,
60,61,62,63:温調対象物用熱交換器,
100:熱媒体回路,101,102,103:熱媒体流路,
110,111,112,120,121,122,123,
130,131,132,133,140,141,142,
150,160,161,200,201,202,203,
204,205:流路,150A,160A,161A:合流部,
300:制御部,
V1,V2,V3,V4,V5,V6,V11,V12,V21,V22,V31,V32,V41,V42,V01,V02,V03:切替弁,
U:ユニット,P1,P2,P3:循環ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23