(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180146
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】分散測定装置及び分散測定方法
(51)【国際特許分類】
G01J 3/453 20060101AFI20221129BHJP
G01J 11/00 20060101ALI20221129BHJP
H01S 3/00 20060101ALI20221129BHJP
H01S 3/10 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
G01J3/453
G01J11/00
H01S3/00 G
H01S3/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087082
(22)【出願日】2021-05-24
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度 国立研究開発法人 科学技術振興機構、研究成果展開事業、研究成果最適展開支援プログラム「超短パルスレーザー応用の先進化が可能で顕微光学系に実装可能な波形制御装置の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 向陽
(72)【発明者】
【氏名】高橋 永斉
(72)【発明者】
【氏名】井上 卓
【テーマコード(参考)】
2G020
2G065
5F172
【Fターム(参考)】
2G020AA03
2G020CB05
2G020CB23
2G020CB55
2G020CC29
2G020CD24
2G020CD35
2G065AA12
2G065AA13
2G065AB09
2G065AB16
2G065BA09
2G065BB02
2G065BC13
2G065BC35
2G065DA05
5F172AE03
5F172AF06
5F172EE13
5F172NN22
5F172NP02
5F172NP18
5F172NR02
(57)【要約】
【課題】測定対象の波長分散量を精度良く測定することができる装置及び方法を提供する。
【解決手段】分散測定装置1Aは、パルス形成部3、光検出部4、及び演算部5bを備える。パルス形成部3は、波長ごとの所定の位相ずれを光パルスPaに与える位相パターンを提示するSLMを有し、光パルスPaから、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる光パルスPb
1,Pb
2を含む光パルス列Pbを形成する。光検出部4は、光パルス列Pbの時間波形を検出する。演算部5bは、光検出部4と電気的に接続されている。光学部品7は、パルス形成部3と光検出部4との間の光路上に配置される。演算部5bは、時間波形の特徴量に基づいて光学部品7の波長分散量を推定する。SLMの位相パターンは、光学部品7が有する群遅延分散とは逆符号の群遅延分散を光パルスPaに与えるためのパターンを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正又は負の群遅延分散を有する測定対象の波長分散量を測定する装置であって、
第1光パルスを出力する光源と、
波長ごとの所定の位相ずれを前記第1光パルスに与えて変調光を生成するための位相パターンを提示する空間光変調器を有し、前記第1光パルスから、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の第2光パルスを含む前記変調光である光パルス列を形成するパルス形成部と、
前記光パルス列の時間波形を検出する光検出部と、
前記光検出部と電気的に接続された演算部と、を備え、
前記測定対象は、前記光源と前記パルス形成部との間の光路上、又は前記パルス形成部と前記光検出部との間の光路上に配置され、
前記演算部は、前記時間波形の特徴量に基づいて前記測定対象の波長分散量を推定し、
前記位相パターンは、前記測定対象が有する群遅延分散とは逆符号の群遅延分散を前記第1光パルスに与えるためのパターンを含む、分散測定装置。
【請求項2】
前記光検出部は、前記光パルス列を受け、前記光パルス列の相互相関又は自己相関を含む相関光を出力する相関光学系を有し、前記光パルス列の時間波形に代えて前記相関光の時間波形を検出し、
前記演算部は、前記相関光の時間波形の特徴量に基づいて前記測定対象の波長分散量を推定する、請求項1に記載の分散測定装置。
【請求項3】
前記位相パターンによって前記第1光パルスに与えられる群遅延分散の絶対値が、前記測定対象の群遅延分散の絶対値の予測される範囲内である、請求項1又は2に記載の分散測定装置。
【請求項4】
前記位相パターンによって前記第1光パルスに与えられる群遅延分散の絶対値は、前記測定対象の設計上の群遅延分散の絶対値と等しい、請求項1又は2に記載の分散測定装置。
【請求項5】
前記測定対象は、前記パルス形成部と前記光検出部との間の光路上に配置される、請求項1~4のいずれか1項に記載の分散測定装置。
【請求項6】
前記位相パターンによって前記第1光パルスに与えられるスペクトル位相の波長特性は、前記第1光パルスの中心波長に関して対称であり、且つ、前記中心波長から離れるに従ってスペクトル位相が増大したのち減少する特性を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の分散測定装置。
【請求項7】
前記位相パターンによって前記第1光パルスに与えられるスペクトル位相の波長特性は、前記第1光パルスの中心波長に関して対称であり、且つ、前記中心波長から離れるに従ってスペクトル位相が減少したのち増大する特性を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の分散測定装置。
【請求項8】
正の群遅延分散を前記第1光パルスに与えるための第1の前記位相パターンと、負の群遅延分散を前記第1光パルスに与えるための第2の前記位相パターンとを記憶し、前記第1の位相パターン及び前記第2の位相パターンを空間光変調器へ選択的に出力する制御部を更に備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の分散測定装置。
【請求項9】
正又は負の群遅延分散を有する測定対象の波長分散量を測定する方法であって、
第1光パルスを出力する出力ステップと、
波長ごとの所定の位相ずれを前記第1光パルスに与えて変調光を生成するための位相パターンを提示する空間光変調器を用いて、前記第1光パルスから、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の第2光パルスを含む前記変調光である光パルス列を形成するパルス形成ステップと、
前記光パルス列の時間波形を検出する検出ステップと、
前記測定対象の波長分散量を推定する演算ステップと、を含み、
前記パルス形成ステップにおいて、前記測定対象を透過した前記第1光パルスから前記光パルス列を形成するか、又は前記検出ステップにおいて、前記測定対象を透過した前記光パルス列の時間波形を検出し、
前記演算ステップでは、前記時間波形の特徴量に基づいて前記測定対象の波長分散量を推定し、
前記位相パターンは、前記測定対象が有する群遅延分散とは逆符号の群遅延分散を前記第1光パルスに与えるためのパターンを含む、分散測定方法。
【請求項10】
前記検出ステップでは、前記光パルス列の相互相関又は自己相関を含む相関光を生成し、前記光パルス列の時間波形に代えて前記相関光の時間波形を検出し、
前記演算ステップでは、前記相関光の時間波形の特徴量に基づいて前記測定対象の波長分散量を推定する、請求項9に記載の分散測定方法。
【請求項11】
前記位相パターンによって前記第1光パルスに与えられる群遅延分散の絶対値が、前記測定対象の群遅延分散の絶対値の予測される範囲内である、請求項9又は10に記載の分散測定方法。
【請求項12】
前記位相パターンによって前記第1光パルスに与えられる群遅延分散の絶対値は、前記測定対象の設計上の群遅延分散の絶対値と等しい、請求項9又は10に記載の分散測定方法。
【請求項13】
前記位相パターンによって前記第1光パルスに与えられるスペクトル位相の波長特性は、前記第1光パルスの中心波長に関して対称であり、且つ、前記中心波長から離れるに従ってスペクトル位相が増大したのち減少する特性を有する、請求項9~12のいずれか1項に記載の分散測定方法。
【請求項14】
前記位相パターンによって前記第1光パルスに与えられるスペクトル位相の波長特性は、前記第1光パルスの中心波長に関して対称であり、且つ、前記中心波長から離れるに従ってスペクトル位相が減少したのち増大する特性を有する、請求項9~12のいずれか1項に記載の分散測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散測定装置及び分散測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、パルスレーザ光源の波長分散量を測定可能な分散測定装置及び分散測定方法が記載されている。これらの装置及び方法では、パルスレーザ光源から出力された被測定光パルスから、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の光パルスを含む光パルス列が形成され、光パルス列が相関光学系に入射し、相関光学系から、光パルス列の相互相関又は自己相関を含む相関光が出力され、相関光の時間波形が検出され、検出された相関光の時間波形の特徴量からパルスレーザ光源の波長分散量が推定される。また、光学部品等の測定対象を光学系に挿入することによって、上記相関光の時間波形から測定対象の波長分散量を測定することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測定対象の波長分散量を測定するとき、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の光パルスを測定対象に透過させる。そして、測定対象を透過したのちの複数の光パルスの時間波形(例えばピーク間隔)に基づいて、測定対象の波長分散量を推定することができる。しかしながら、光パルスが測定対象を透過する際には、測定対象が有する波長分散によって、光パルスのパルス幅が次第に拡がるとともに光パルスのピーク強度が次第に低下する。測定対象において光パルスのパルス幅が拡がるほど、光パルスのピーク間隔の検出精度が低下する。また、測定対象において光パルスのピーク強度が低下するほど、光パルスの時間波形の検出精度が低下し、光検出器の検出閾値を下回ると光パルスを検出できないおそれがある。したがって、測定対象の波長分散量を精度良く測定することができないおそれがある。
【0005】
本発明の一側面は、測定対象の波長分散量を精度良く測定することができる分散測定装置及び分散測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一側面に係る分散測定装置は、正又は負の群遅延分散を有する測定対象の波長分散量を測定する装置であって、光源と、パルス形成部と、光検出部と、演算部と、を備える。光源は、第1光パルスを出力する。パルス形成部は、波長ごとの所定の位相ずれを第1光パルスに与えて変調光を生成するための位相パターンを提示する空間光変調器を有し、第1光パルスから、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の第2光パルスを含む変調光である光パルス列を形成する。光検出部は、光パルス列の時間波形を検出する。演算部は、光検出部と電気的に接続されている。測定対象は、光源とパルス形成部との間の光路上、又はパルス形成部と光検出部との間の光路上に配置される。演算部は、時間波形の特徴量に基づいて測定対象の波長分散量を推定する。位相パターンは、測定対象が有する群遅延分散とは逆符号の群遅延分散を第1光パルスに与えるためのパターンを含む。
【0007】
本発明の一側面に係る分散測定方法は、正又は負の群遅延分散を有する測定対象の波長分散量を測定する方法であって、出力ステップと、パルス形成ステップと、検出ステップと、演算ステップと、を含む。出力ステップでは、第1光パルスを出力する。パルス形成ステップでは、波長ごとの所定の位相ずれを第1光パルスに与えて変調光を生成するための位相パターンを提示する空間光変調器を用いて、第1光パルスから、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる複数の第2光パルスを含む変調光である光パルス列を形成する。検出ステップでは、光パルス列の時間波形を検出する。演算ステップでは、測定対象の波長分散量を推定する。パルス形成ステップにおいて、測定対象を透過した第1光パルスから光パルス列を形成するか、又は検出ステップにおいて、測定対象を透過した光パルス列の時間波形を検出する。演算ステップでは、時間波形の特徴量に基づいて測定対象の波長分散量を推定する。位相パターンは、測定対象が有する群遅延分散とは逆符号の群遅延分散を第1光パルスに与えるためのパターンを含む。
【0008】
これらの装置及び方法では、パルス形成部(パルス形成ステップ)において、測定対象が有する群遅延分散とは逆符号の群遅延分散が第1光パルスに与えられる。これにより、測定対象に入射する複数の第2光パルスのピーク強度が一旦低下し且つパルス幅が一旦拡がるが、これらの第2光パルスが測定対象に入射した後、測定対象から出射するまでの間に、測定対象が有する群遅延分散によって各第2光パルスのピーク強度が高まり、且つ各第2光パルスのパルス幅が小さくなる。このように、上記の装置及び方法によれば、測定対象から出射された第2光パルスのパルス幅が小さくなるので、複数の第2光パルスのピーク間隔の検出精度の低下を抑制することができる。また、測定対象から出射された複数の第2光パルスのピーク強度が高まるので、光パルス列の時間波形の検出精度の低下を抑制することができる。したがって、測定対象の波長分散量を精度良く測定することができる。
【0009】
上記装置において、光検出部は、光パルス列を受け、光パルス列の相互相関又は自己相関を含む相関光を出力する相関光学系を有し、光パルス列の時間波形に代えて相関光の時間波形を検出してもよい。そして、演算部は、相関光の時間波形の特徴量に基づいて測定対象の波長分散量を推定してもよい。同様に、上記方法において、検出ステップでは、光パルス列の相互相関又は自己相関を含む相関光を生成し、光パルス列の時間波形に代えて相関光の時間波形を検出してもよい。そして、演算ステップでは、相関光の時間波形の特徴量に基づいて測定対象の波長分散量を推定してもよい。これらの装置及び方法によれば、例えば複数の第2光パルスがフェムト秒オーダーの超短パルスであるような場合であっても光パルス列の時間波形を測定できる。故に、超短パルスを用いて測定対象の波長分散量を更に精度良く測定することができる。
【0010】
上記の装置及び方法において、位相パターンによって第1光パルスに与えられる群遅延分散の絶対値は、測定対象の群遅延分散の絶対値の予測される範囲内であってもよい。この場合、位相パターンによって第1光パルスに与えられる群遅延分散の絶対値を、測定対象の群遅延分散の絶対値に近づけることができる。従って、測定対象において第2光パルスのパルス幅をより小さくすることができ、複数の第2光パルスのピーク間隔の検出精度の低下を更に抑制することができる。また、測定対象において複数の第2光パルスのピーク強度をより高めることができ、光パルス列の時間波形の検出精度の低下を更に抑制することができる。
【0011】
上記の装置及び方法において、位相パターンによって第1光パルスに与えられる群遅延分散の絶対値は、測定対象の設計上の群遅延分散の絶対値と等しくてもよい。この場合もまた、位相パターンによって第1光パルスに与えられる群遅延分散の絶対値を、測定対象の群遅延分散の絶対値に近づけることができる。従って、測定対象において第2光パルスのパルス幅をより小さくすることができ、複数の第2光パルスのピーク間隔の検出精度の低下を更に抑制することができる。また、測定対象において複数の第2光パルスのピーク強度をより高めることができ、光パルス列の時間波形の検出精度の低下を更に抑制することができる。
【0012】
上記装置において、測定対象は、パルス形成部と光検出部との間の光路上に配置されてもよい。また、上記方法の検出ステップにおいて、測定対象を透過した光パルス列の時間波形を検出してもよい。上記の装置及び方法によれば、例えばこのように、測定対象を光路上の任意の位置に配置できる。したがって、装置の空間的な設計の自由度が高く、装置の小型化、並びに、測定対象の取り付け易さ及び取り出し易さといった利便性の向上へ向けた装置設計が可能となる。
【0013】
上記の装置及び方法において、位相パターンによって第1光パルスに与えられるスペクトル位相の波長特性は、第1光パルスの中心波長に関して対称であり、且つ、中心波長から離れるに従ってスペクトル位相が増大したのち減少する特性を有してもよい。例えばこのような位相パターンを空間光変調器に提示することによって、第1光パルスに負の群遅延分散を好適に与えることができる。
【0014】
上記の装置及び方法において、位相パターンによって第1光パルスに与えられるスペクトル位相の波長特性は、第1光パルスの中心波長に関して対称であり、且つ、中心波長から離れるに従ってスペクトル位相が減少したのち増大する特性を有してもよい。例えばこのような位相パターンを空間光変調器に提示することによって、第1光パルスに正の群遅延分散を好適に与えることができる。
【0015】
上記装置は、正の群遅延分散を第1光パルスに与えるための第1の位相パターンと、負の群遅延分散を第1光パルスに与えるための第2の位相パターンとを記憶し、第1の位相パターン及び第2の位相パターンを空間光変調器へ選択的に出力する制御部を更に備えてもよい。この場合、測定対象が正の群遅延分散を有する場合と、測定対象が負の群遅延分散を有する場合とで、位相パターンを容易に切り替えることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面に係る分散測定装置及び分散測定方法によれば、測定対象の波長分散量を精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態に係る分散測定装置の構成を概略的に示す図である。
【
図4】帯域制御したマルチパルスの例を示す図である。(a)は、スペクトログラムである。(b)は、光パルス列の時間波形を表している。(c)は、2つの光パルスを合成したスペクトルを表している。
【
図5】比較例として、帯域制御されていないマルチパルスの例を示す図である。(a)は、スペクトログラムである。(b)は、光パルス列の時間波形を表している。(c)は、2つの光パルスを合成したスペクトルを表している。
【
図6】位相パターンによって光パルスに与えられるスペクトル波形であって、光パルスに負の群遅延分散を与える場合のスペクトル波形を示す図である。
【
図7】位相パターンによって光パルスに与えられるスペクトル波形であって、光パルスに正の群遅延分散を与える場合のスペクトル波形を示す図である。
【
図8】光パルス列が有する群遅延分散と、光パルスの時間波形におけるピーク強度及びパルス幅との関係の例を示すグラフである。
【
図9】一実施形態のパルス形成部から出力されるパルス列の時間波形の例を示すグラフである。
【
図10】比較例として、空間光変調器において光パルスに群遅延分散を与えない場合にパルス形成部から出力されるパルス列の時間波形の例を示すグラフである。
【
図11】光学部品を透過した後のパルス列の時間波形の例を示すグラフである。
【
図13】相関光学系の構成例として、光パルス列の自己相関を含む相関光を生成するための相関光学系を概略的に示す図である。
【
図14】相関光学系の別の構成例として、光パルス列の相互相関を含む相関光を生成するための相関光学系を概略的に示す図である。
【
図15】相関光学系の更に別の構成例として、光パルス列の相互相関を含む相関光を生成するための相関光学系を概略的に示す図である。
【
図16】一実施形態において、光学部品を配置しない状態で相関光学系から出力される相関光の時間波形の例を示すグラフである。
【
図17】比較例として、空間光変調器において光パルスに群遅延分散を与えない場合に、光学部品を配置しない状態で相関光学系から出力される相関光の時間波形の例を示すグラフである。
【
図18】一実施形態において光学部品を配置した場合の相関光の時間波形の例を示すグラフである。
【
図19】制御装置のハードウェアの構成例を概略的に示す図である。
【
図20】分散測定方法を示すフローチャートである。
【
図21】(a)単パルス状の光パルスのスペクトル波形の例を示す図である。(b)光パルスの時間強度波形を示す図である。
【
図22】(a)空間光変調器において矩形波状の位相スペクトル変調を与えたときのパルス形成部からの出力光のスペクトル波形を示す図である。(b)該出力光の時間強度波形を示す図である。
【
図23】空間光変調器の変調パターンを演算する変調パターン算出装置の構成を示す図である。
【
図24】位相スペクトル設計部及び強度スペクトル設計部の内部構成を示すブロック図である。
【
図25】反復フーリエ変換法による位相スペクトルの計算手順を示す図である。
【
図26】位相スペクトル設計部における位相スペクトル関数の計算手順を示す図である。
【
図27】強度スペクトル設計部におけるスペクトル強度の計算手順を示す図である。
【
図28】ターゲット生成部におけるターゲットスペクトログラムの生成手順の一例を示す図である。
【
図29】強度スペクトル関数を算出する手順の一例を示す図である。
【
図30】(a)スペクトログラムを示す図である。(b)スペクトログラムが変化したターゲットスペクトログラムを示す図である。
【
図31】光学部品に入射する前の光パルスの時間波形と、光学部品を透過した光パルスの時間波形とを示す図である。
【
図32】光学部品が配置されない場合の相関光の時間波形と、光学部品が配置された場合の相関光の時間波形とを示す図である。
【
図33】光学部品が有する群遅延分散と、相関光のパルス幅との関係の一例を示すグラフである。
【
図34】光学部品が有する群遅延分散と、相関光のピーク強度との関係の一例を示すグラフである。
【
図35】光学部品に入射する光パルスが群遅延分散を有さない場合における、光学部品が有する群遅延分散と、相関光のピーク間隔の変化量との関係の一例を示す図である。
【
図36】光学部品が有する群遅延分散の絶対値と、光学部品が有する群遅延分散に対する相関光のピーク間隔の変化率との関係を示すグラフである。
【
図37】光学部品が有する群遅延分散と、相関光のピーク間隔の変化量との関係がシフトする様子を示す図である。
【
図38】第1変形例に係る分散測定装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明による分散測定装置及び分散測定方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る分散測定装置1Aの構成を概略的に示す図である。この分散測定装置1Aは、測定対象である光学部品7の波長分散量を測定する装置であって、パルスレーザ光源2(光源)、パルス形成部3、光検出部4、及び制御装置5を備える。パルス形成部3の光入力端3aは、空間的に又は光ファイバ等の光導波路を介して、パルスレーザ光源2と光学的に結合されている。光学部品7は、パルス形成部3と光検出部4との間の光路上に配置される。光学部品7の光入力端7aは、空間的に又は光ファイバ等の光導波路を介して、パルス形成部3の光出力端3bと光学的に結合されている。光検出部4の光入力端4aは、空間的に又は光ファイバ等の光導波路を介して、光学部品7の光出力端7bと光学的に結合されている。光検出部4は、相関器であって、相関光学系40と、検出器400と、を備えている。相関光学系40の光入力端は、光検出部4の光入力端4aを構成する。相関光学系40の光出力端40bは、空間的に又は光ファイバ等の光導波路を介して、検出器400と光学的に結合されている。制御装置5は、パルス形成部3及び検出器400と電気的に接続されている。制御装置5は、制御部5a、演算部5b、入力部5c、及び出力部5dを有する。
【0020】
パルスレーザ光源2は、コヒーレントな光パルスPa(第1光パルス)を出力する。パルスレーザ光源2は、例えばフェムト秒レーザであり、一実施例ではLD直接励起型Yb:YAGパルスレーザといった固体レーザ光源である。光パルスPaの時間波形は例えばガウス関数状である。光パルスPaの半値全幅(FWHM)は、例えば10fs~10000fsの範囲内であり、一例では100fsである。この光パルスPaは、或る程度の帯域幅を有する光パルスであって、連続する複数の波長成分を含む。一実施例では、光パルスPaの帯域幅は10nmであり、光パルスPaの中心波長は1030nmである。
【0021】
パルス形成部3は、光パルスPaから、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる光パルスPb1,Pb2(複数の第2光パルス)を含む光パルス列Pbを形成する。光パルス列Pbは、光パルスPaを構成するスペクトルを複数の波長帯域に分け、それぞれの波長帯域を用いて生成したシングルパルス群である。なお、複数の波長帯域の境界では、互いに重なり合う部分があってもよい。以下の説明では、光パルス列Pbを「帯域制御したマルチパルス」と称することがある。
【0022】
図2は、パルス形成部3の構成例を示す図である。このパルス形成部3は、回折格子12、レンズ13、空間光変調器(SLM)14、レンズ15、及び回折格子16を有する。回折格子12は、本実施形態における分光素子であり、パルスレーザ光源2と光学的に結合されている。SLM14は、レンズ13を介して回折格子12と光学的に結合されている。回折格子12は、光パルスPaに含まれる複数の波長成分を、波長毎に空間的に分離する。なお、分光素子として、回折格子12に代えてプリズム等の他の光学部品を用いてもよい。光パルスPaは、回折格子12に対して斜めに入射し、複数の波長成分に分光される。この複数の波長成分を含む光P1は、レンズ13によって各波長成分毎に集光され、SLM14の変調面に結像される。レンズ13は、光透過部材からなる凸レンズであってもよく、凹状の光反射面を有する凹面鏡であってもよい。
【0023】
SLM14は、光パルスPaを光パルス列Pb(変調光)に変換するために、波長ごとの所定の位相ずれを光パルスPaに与える。具体的には、SLM14は、位相ずれを光パルスPaに与えて光パルス列Pbを生成するために、制御部5a(
図1を参照)から制御信号を受ける。SLM14は、制御部5aから出力された制御信号を受けることにより位相パターンを提示する。SLM14は、提示された位相パターンを用いて光P1の位相変調と強度変調とを同時に行う。このように、SLM14は、回折格子12から出力された複数の波長成分の位相を相互にずらす。なお、SLM14は、位相変調のみ、または強度変調のみを行ってもよい。SLM14は、例えば位相変調型である。一実施例では、SLM14はLCOS(Liquid crystal on silicon)型である。なお、図面には透過型のSLM14が示されているが、SLM14は反射型であってもよい。
【0024】
図3は、SLM14の変調面17を示す図である。
図3に示すように、変調面17には、複数の変調領域17aが或る方向Aに沿って並んでおり、各変調領域17aは方向Aと交差する方向Bに延びている。方向Aは、回折格子12による分光方向である。この変調面17はフーリエ変換面として働き、複数の変調領域17aのそれぞれには、分光後の対応する各波長成分が入射する。SLM14は、各変調領域17aにおいて、入射した各波長成分の位相及び強度を他の波長成分から独立して変調する。なお、本実施形態のSLM14が位相変調型であるので、強度変調は、変調面17に提示される位相パターン(位相画像)によって実現される。
【0025】
SLM14によって変調された変調光P2の各波長成分は、レンズ15によって回折格子16上の一点に集められる。このときのレンズ15は、変調光P2を集光する集光光学系として機能する。レンズ15は、光透過部材からなる凸レンズであってもよく、凹状の光反射面を有する凹面鏡であってもよい。また、回折格子16は合波光学系として機能し、変調後の各波長成分を合波する。すなわち、これらのレンズ15及び回折格子16により、変調光P2の複数の波長成分は互いに集光・合波されて、帯域制御したマルチパルス(光パルス列Pb)となる。
【0026】
図4は、帯域制御したマルチパルスの例を示す図である。この例では、光パルスPb
1及び光パルスPb
2からなる光パルス列Pbが示されている。
図4(a)は、スペクトログラムであって、横軸に時間、縦軸に波長を示しており、光強度を色の濃淡で表している。
図4(b)は、光パルス列Pbの時間波形を表している。各光パルスPb
1,Pb
2の時間波形は例えばガウス関数状である。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、光パルスPb
1,Pb
2のピーク同士は時間的に互いに離れており、光パルスPb
1,Pb
2の伝搬タイミングは互いにずれている。言い換えると、一の光パルスPb
2に対して別の光パルスPb
1が時間遅れを有しており、光パルスPb
1,Pb
2は、互いに時間差を有している。光パルスPb
1及び光パルスPb
2の中心波長は互いに異なる。光パルスPb
1の中心波長は、例えば1560nmであり、光パルスPb
2の中心波長は、例えば1540nmである。光パルスPb
1,Pb
2の時間間隔(ピーク間隔)は、例えば10fs~10000fsの範囲内であり、一例では2000fsである。また、光パルスPb
1,Pb
2のFWHMは、例えば、10fs~5000fsの範囲内であり、一例では300fsである。
【0027】
図4(c)は、2つの光パルスPb
1,Pb
2を合成したスペクトルを表している。
図4(c)に示すように2つの光パルスPb
1,Pb
2を合成したスペクトルは単一のピークを有するが、
図4(a)を参照すると2つの光パルスPb
1,Pb
2の中心波長は互いにずれている。
図4(c)に示す単一のピークは、ほぼ光パルスPaのスペクトルに相当する。隣り合う光パルスPb
1,Pb
2のピーク波長間隔は、光パルスPaのスペクトル帯域幅によって定まり、概ね半値全幅の2倍の範囲内である。一例では、光パルスPaのスペクトル帯域幅である半値全幅(FWHM)が10nmの場合、ピーク波長間隔は10nmである。具体例として、光パルスPaの中心波長が800nmである場合、光パルスPb
1及び光パルスPb
2のピーク波長はそれぞれ805nm、及び795nmであることができる。
【0028】
図5は、比較例として、帯域制御されていないマルチパルスの例を示す図である。この例では、2つの光パルスPd
1,Pd
2からなる光パルス列Pdが示されている。
図5(a)は、
図4(a)と同様に、スペクトログラムであって、横軸に時間、縦軸に波長を示しており、光強度を色の濃淡で表している。
図5(b)は、光パルス列Pdの時間波形を表している。
図5(c)は、2つの光パルスPd
1,Pd
2を合成したスペクトルを表している。
図5(a)~(c)に示すように、2つの光パルスPd
1,Pd
2のピーク同士は時間的に互いに離れているが、2つの光パルスPd
1,Pd
2の中心波長は互いに一致している。本実施形態のパルス形成部3は、このような光パルス列Pdを生成するものではなく、
図4に示されたような、中心波長が互いに異なる光パルス列Pbを生成するものである。
【0029】
再び
図1を参照する。光学部品7は、パルス形成部3から出力された光パルス列Pbを受ける。光学部品7は、正又は負の群遅延分散(Group Delay Dispersion:GDD)を有する。本実施形態において、測定対象である光学部品7の群遅延分散の大きさは測定前において不明だが、光学部品7が有する群遅延分散の符号は測定前において明らかであるものとする。群遅延分散の符号は、単位長さ当たりの群遅延分散である群速度分散(Group Velocity Dispersion)の符号と一致する。光学部品7を透過した光パルス列Pbは、光出力端7bから出力される。
【0030】
光学部品7は、例えば、光学ファイバあるいは光導波路等の導光部材である。光学ファイバとしては、例えば、シングルモードファイバ、マルチモードファイバ、希土類添加ファイバ、フォトニック結晶ファイバ、分散シフトファイバ、又はダブルクラッドファイバが挙げられる。光導波路としては、例えば、SiN又はInPなどの半導体微小導波路が挙げられる。或いは、光学部品7は、例えば半導体又は誘電体光学結晶であってもよい。その場合、光学部品7は、ダイヤモンド、SiO2、LiNbO3、LiTaO3,PLZT、Si、Ge、フラーレン、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、GaN、GaAs、磁性体、有機材料、又は高分子材料等であってもよい。
【0031】
SLM14の変調面17に提示される位相パターンは、光パルス列Pbを生成するための位相パターンに、光学部品7が有する群遅延分散とは逆符号の群遅延分散を光パルスPaに与える(すなわち、光パルス列Pbを、光学部品7が有する群遅延分散とは逆符号の群遅延分散を有するものとする)ための位相パターンが重畳されたものである。具体的には、光学部品7が正の群遅延分散を有する場合、位相パターンは、負の群遅延分散を光パルスPaに与える。また、光学部品7が負の群遅延分散を有する場合、位相パターンは、正の群遅延分散を光パルスPaに与える。
【0032】
図6及び
図7は、位相パターンによって光パルスPaに与えられるスペクトル波形(スペクトル位相G11及びスペクトル強度G12)の例を示す。
図6及び
図7において、横軸は波長(nm)を示し、左の縦軸はスペクトル強度の値(任意単位)を示し、右の縦軸はスペクトル位相の値(rad)を示す。
図6に示されるスペクトル波形は、光パルスPaに負の群遅延分散を与える場合を示す。
図7に示されるスペクトル波形は、光パルスPaに正の群遅延分散を与える場合を示す。
【0033】
図6に示されるスペクトル波形において、スペクトル位相G11の波長特性は、光パルスPaの中心波長に関して対称であり、且つ、その中心波長から離れるに従ってスペクトル位相が滑らかに増大したのち減少する特性を有する。スペクトル位相G11の傾きは、中心波長において不連続であり、他の波長において連続している。図示例では、スペクトル位相G11の中心波長は800nmであり、783nm付近及び817nm付近においてスペクトル位相G11は極大値を取る。例えばこのような位相パターンを変調面17に提示することによって、光パルスPaを光パルス列Pbに変換すると同時に、光パルスPaに負の群遅延分散を好適に与えることができる。
【0034】
また、
図7に示されるスペクトル波形において、スペクトル位相G11の波長特性は、光パルスPaの中心波長に関して対称であり、且つ、その中心波長から離れるに従ってスペクトル位相が滑らかに減少したのち増大する特性を有する。スペクトル位相G11の傾きは、中心波長において不連続であり、他の波長において連続している。図示例では、スペクトル位相G11の中心波長は800nmであり、783nm付近及び817nm付近においてスペクトル位相G11が極小値を取る。例えばこのような位相パターンを変調面17に提示することによって、光パルスPaを光パルス列Pbに変換すると同時に、光パルスPaに正の群遅延分散を好適に与えることができる。
【0035】
制御部5aは、正の群遅延分散を光パルスPaに与えるための第1の位相パターンと、負の群遅延分散を光パルスPaに与えるための第2の位相パターンとを記憶し、第1の位相パターン及び第2の位相パターンをSLM14へ選択的に出力してもよい。その場合、制御部5aは、入力部5cを介して、光学部品7の群遅延分散の符号に関する情報を取得してもよい。
【0036】
位相パターンによって光パルスPaに与えられる群遅延分散の絶対値は、光学部品7が有する群遅延分散の絶対値に近いことが望ましい。例えば、位相パターンによって光パルスPaに与えられる群遅延分散の絶対値は、光学部品7が有する群遅延分散の絶対値の予測される範囲内(例えば許容誤差内)であってもよい。或いは、位相パターンによって光パルスPaに与えられる群遅延分散の絶対値は、光学部品7の設計上の群遅延分散の絶対値と等しくてもよい。
【0037】
ここで、群遅延分散に起因する光パルス列Pbの時間波形の変化について説明する。
図8は、光パルス列Pbが有する群遅延分散と、光パルスPb
1,Pb
2の時間波形におけるピーク強度及びパルス幅との関係の例を示すグラフである。
図8において、左の縦軸は光パルスPb
1,Pb
2のピーク強度(任意単位)を示し、右の縦軸は光パルスPb
1,Pb
2のパルス幅(単位:fs)を示す。横軸は光パルス列Pbが有する群遅延分散(単位:fs
2)を示す。また、図中の白丸のプロットD11は光パルスPb
1,Pb
2のピーク強度を示し、図中の黒四角形のプロットD12は光パルスPb
1,Pb
2のパルス幅を示す。なお、本実施形態の説明において、「光パルスのピーク強度」及び「光パルスのパルス幅」は、特に説明がない場合には、時間領域における光パルスのピーク強度及びパルス幅を意味する。
【0038】
図8に示されるように、光パルスPb
1,Pb
2のピーク強度及びパルス幅は、群遅延分散に依存する。すなわち、群遅延分散がゼロである場合において光パルスPb
1,Pb
2のピーク強度は最大となり、パルス幅は最小となる。そして、群遅延分散の絶対値が大きくなるほど、光パルスPb
1,Pb
2のピーク強度は小さくなり、パルス幅は大きくなる。
【0039】
本実施形態においては、まずSLM14において光パルスPaに正又は負の群遅延分散が与えられる。正の群遅延分散が光パルスPaに与えれられた場合、光パルス列Pbが正の群遅延分散を有することとなり、
図8に示す矢印B11の方向に光パルスPb
1,Pb
2のピーク強度が変化するとともに、矢印B12の方向に光パルスPb
1,Pb
2のパルス幅が変化する。また、負の群遅延分散が光パルスPaに与えれられた場合、光パルス列Pbが負の群遅延分散を有することとなり、
図8に示す矢印B21の方向に光パルスPb
1,Pb
2のピーク強度が変化するとともに、矢印B22の方向に光パルスPb
1,Pb
2のパルス幅が変化する。従って、いずれの場合においても、光パルスPb
1,Pb
2のピーク強度が低下するとともにパルス幅が拡大することとなる。
【0040】
なお、SLM14において群遅延分散を光パルスPaに与えるとき、スペクトル領域における光パルスPb1,Pb2の強度が維持されつつ、時間領域における光パルスPb1,Pb2のピーク強度が低減される。
【0041】
次いで、光パルス列Pbが光学部品7を透過すると、光パルス列Pbには、SLM14において光パルスPaに与えられた群遅延分散とは逆符号の群遅延分散が光学部品7によって与えられる。光学部品7において負の群遅延分散が光パルス列Pbに与えれられた場合、
図8に示す矢印B31の方向に光パルスPb
1,Pb
2のピーク強度が変化するとともに、矢印B32の方向に光パルスPb
1,Pb
2のパルス幅が変化する。また、光学部品7において正の群遅延分散が光パルス列Pbに与えれられた場合、
図8に示す矢印B41の方向に光パルスPb
1,Pb
2のピーク強度が変化するとともに、矢印B42の方向に光パルスPb
1,Pb
2のパルス幅が変化する。従って、いずれの場合においても光パルスPb
1,Pb
2のピーク強度が高くなり、パルス幅が縮小することとなる。
【0042】
SLM14において光パルスPaに与えられる群遅延分散の絶対値が、光学部品7において光パルス列Pbに与えられる群遅延分散の絶対値に近いほど、光学部品7を透過した後の光パルス列Pbの群遅延分散はゼロに近づく。そして、SLM14において光パルスPaに与えられる群遅延分散の絶対値が、光学部品7において光パルス列Pbに与えられる群遅延分散の絶対値と等しい場合、光学部品7を透過した後の光パルス列Pbの群遅延分散はゼロとなるので、光パルスPb1,Pb2のピーク強度は最大となり、パルス幅は最小となる。
【0043】
図9は、本実施形態のパルス形成部3から出力される光パルス列Pbの時間波形の例を示すグラフである。
図10は、比較例として、SLM14において光パルスPaに群遅延分散を与えない場合にパルス形成部3から出力される光パルス列Pbの時間波形の例を示すグラフである。
図9及び
図10に示されるように、SLM14において光パルスPaに群遅延分散を与えない場合と比較して、SLM14において光パルスPaに群遅延分散を与える場合には、光パルスPb
1,Pb
2のピーク強度が低くなり、パルス幅が拡大することがわかる。
【0044】
図11は、光学部品7を透過した後の光パルス列Pbの時間波形の例(曲線G21)を示すグラフである。なお、
図11には、
図9に示された光パルス列Pbの時間波形(曲線G22)が併せて示されている。
図11に示されるように、光学部品7を透過する前と比較して、光学部品7を透過した後には、光パルスPb
1,Pb
2のピーク強度が高くなり、パルス幅が縮小することがわかる。
【0045】
図1に示す相関光学系40は、光学部品7を透過した光パルス列Pbを受け、光パルス列Pbの相互相関又は自己相関である相関光Pcを出力する。
図12は、相関光学系40の構成例を示す図である。相関光学系40は、レンズ41、光学素子42及びレンズ43を含んで構成され得る。レンズ41は、パルス形成部3(
図1を参照)と光学素子42との間の光路上に設けられ、パルス形成部3から出力された光パルス列Pbを光学素子42に集光する。光学素子42は、例えば二次高調波(SHG)を発生する非線形光学結晶、及び蛍光体の少なくとも一方を含む発光体である。非線形光学結晶としては、例えばKTP(KTiOPO
4)結晶、LBO(LiB
3O
5)結晶、BBO(β-BaB
2O
4)結晶等が挙げられる。蛍光体としては、例えばクマリン、スチルベン、ローダミン等が挙げられる。光学素子42は、光パルス列Pbを入力し、光パルス列Pbの相互相関又は自己相関を含む相関光Pcを生成する。レンズ43は、光学素子42から出力された相関光Pcを平行化または集光する。なお、相関光Pcは、光パルス列Pbの時間波形をより精度良く検出するために生成される光である。
【0046】
ここで、相関光学系40の構成例について詳細に説明する。
図13は、相関光学系40の構成例として、光パルス列Pbの自己相関を含む相関光Pcを生成するための相関光学系40Aを概略的に示す図である。この相関光学系40Aは、光パルス列Pbを二分岐する光分岐部品として、ビームスプリッタ44を有する。ビームスプリッタ44は、
図1に示されたパルス形成部3と光学的に結合されており、パルス形成部3から入力した光パルス列Pbの一部を透過し、残部を反射する。ビームスプリッタ44の分岐比は例えば1:1である。ビームスプリッタ44により分岐された一方の光パルス列Pbaは、複数のミラー45を含む光路40cを通ってレンズ41に達する。ビームスプリッタ44により分岐された他方の光パルス列Pbbは、複数のミラー46を含む光路40dを通ってレンズ41に達する。光路40cの光学長と光路40dの光学長とは互いに異なる。従って、複数のミラー45及び複数のミラー46は、ビームスプリッタ44において分岐された一方の光パルス列Pbaと、他方の光パルス列Pbbとに対して時間差を与える遅延光学系を構成する。更に、複数のミラー46の少なくとも一部は移動ステージ47上に搭載されており、光路40dの光学長は可変となっている。故に、この構成では、光パルス列Pbaと光パルス列Pbbとの時間差を可変とすることができる。
【0047】
この例では、光学素子42は非線形光学結晶を含む。レンズ41は、光パルス列Pba,Pbbのそれぞれを光学素子42に向けて集光するとともに、光学素子42において光パルス列Pba,Pbbの光軸を所定の角度でもって互いに交差させる。これにより、非線形光学結晶である光学素子42では、光パルス列Pba,Pbbの交点を起点として二次高調波が生じる。この二次高調波は、相関光Pcであって、光パルス列Pbの自己相関を含む。この相関光Pcはレンズ43にて平行化または集光された後、検出器400に入力される。
【0048】
図14は、相関光学系40の別の構成例として、光パルス列Pbの相互相関を含む相関光Pcを生成するための相関光学系40Bを概略的に示す図である。この相関光学系40Bでは、光パルス列Pbが光路40eを通ってレンズ41に達すると共に、シングルパルスである参照光パルスPrが光路40fを通ってレンズ41に達する。光路40fは、複数のミラー48を含み、U字状に屈曲している。更に、複数のミラー48の少なくとも一部は移動ステージ49上に搭載されており、光路40fの光学長は可変となっている。故に、この構成では、光パルス列Pbと参照光パルスPrとの時間差(レンズ41に到達するタイミング差)を可変とすることができる。
【0049】
この例においても、光学素子42は非線形光学結晶を含む。レンズ41は、光パルス列Pb及び参照光パルスPrを光学素子42に向けて集光するとともに、光学素子42において光パルス列Pbの光軸と参照光パルスPrの光軸とを所定の角度でもって互いに交差させる。これにより、非線形光学結晶である光学素子42では、光パルス列Pb及び参照光パルスPrの交点を起点として二次高調波が生じる。この二次高調波は、相関光Pcであって、光パルス列Pbの相互相関を含む。この相関光Pcはレンズ43にて平行化または集光された後、検出器400に入力される。
【0050】
図15は、相関光学系40の更に別の構成例として、光パルス列Pbの相互相関を含む相関光Pcを生成するための相関光学系40Cを概略的に示す図である。この例において、パルス形成部3のSLM14は、第1の偏光方向に変調作用を有する偏光依存型の空間光変調器である。これに対し、パルス形成部3に入力される光パルスPaの偏向面は、SLM14が変調作用を有する偏光方向に対して傾斜しており、光パルスPaは、第1の偏光方向の偏光成分(図中の矢印Dp
1)と、第1の偏光方向に対して直交する第2の偏光方向の偏光成分(図中の記号Dp
2)とを含む。また、光パルスPaの偏波は、上記の偏波(傾斜した直線偏光)に限られず、楕円偏光でも良い。
【0051】
光パルスPaのうち第1の偏光方向の偏光成分は、SLM14において変調され、光パルス列Pbとしてパルス形成部3から出力される。一方、光パルスPaのうち第2の偏光方向の偏光成分は、SLM14において変調されずに、そのままパルス形成部3から出力される。この変調されなかった偏光成分は、シングルパルスである参照光パルスPrとして、光パルス列Pbと同軸でもって相関光学系40に提供される。相関光学系40は、光パルス列Pbと参照光パルスPrとから、光パルス列Pbの相互相関を含む相関光Pcを生成する。この構成例では、SLM14において光パルス列Pbに遅延を与え、且つその遅延時間を可変とすることにより(図中の矢印E)、光パルス列Pbと参照光パルスPrとの時間差(レンズ41に到達するタイミング差)を可変とすることができ、相関光学系40において光パルス列Pbの相互相関を含む相関光Pcを好適に生成することができる。
【0052】
図13~
図15に示されるように、相関光学系40は、光パルス列Pbを、光パルス列Pb自身又は他のパルス列と空間的及び時間的に重ね合わせる光学系である。具体的には、一方のパルス列を時間的に掃引することで、光パルス列Pbの時間波形形状に準じた相関波形が検出される。ここで、一般に、パルスの掃引は、駆動ステージ等で空間的に光路長を変化させることで実施されるので、ステージの移動量が相関波形の時間遅延量に対応する。このとき、ステージ移動量に対する時間遅延量が非常に小さい。したがって、相関光学系40を採用することにより、検出器400(後述する)においてフェムト秒オーダーに達する高い時間分解スケールでパルス形状が観察されるので、光パルス列Pbの時間波形の特徴量がより精度良く測定される。
【0053】
光学部品7の波長分散がゼロではない場合、相関光Pcに含まれる複数の光パルスの時間波形の特徴量(ピーク強度、半値全幅、ピーク時間間隔)が、光学部品7の波長分散量がゼロである場合と比較して大きく変化する。そして、その変化量は、光学部品7の波長分散量に依存する。従って、相関光Pcの時間波形の特徴量の変化を観察することにより、光学部品7の波長分散量を精度良く且つ容易に知ることができる。但し、上記の観察において、パルスレーザ光源2の既知の波長分散量を用いて光学部品7の波長分散量を補正してもよい。
【0054】
また、前述したように、本実施形態では、SLM14において光パルスPaに正又は負の群遅延分散が与えられる。
図16は、本実施形態において、光学部品7を配置しない状態で相関光学系40から出力される相関光Pcの時間波形の例を示すグラフである。
図17は、比較例として、SLM14において光パルスPaに群遅延分散を与えない場合に、光学部品7を配置しない状態で相関光学系40から出力される相関光Pcの時間波形の例を示すグラフである。
図16及び
図17に示されるように、SLM14において光パルスPaに群遅延分散を与えない場合と比較して、SLM14において光パルスPaに群遅延分散を与える場合には、光学部品7を配置しない状態での相関光Pcのピーク強度が低くなり、パルス幅が拡大する。
【0055】
図18は、本実施形態において光学部品7を配置した場合の相関光Pcの時間波形の例(曲線G31)を示すグラフである。なお、
図18には、
図16に示された相関光Pcの時間波形(曲線G32)が併せて示されている。
図18に示されるように、光学部品7が配置されない場合と比較して、光学部品7が配置される場合には、相関光Pcのピーク強度が高くなり、パルス幅が縮小することがわかる。
【0056】
再び
図1を参照する。検出器400は、相関光学系40から出力された相関光Pcを受ける。検出器400は、光検出部4の検出閾値以上のピーク強度を有する光パルス列Pbから形成された相関光Pcの時間波形を検出する。検出器400は、例えばフォトダイオードなどの光検出器(フォトディテクタ)を含んで構成されている。検出器400は、相関光Pcの強度を電気信号に変換することにより、相関光Pcの時間波形を検出する。検出結果である電気信号は、演算部5bに提供される。なお、本実施形態において、検出閾値とは、相関光学系40及び検出器400の特性に基づいて決定される値であり、検出閾値以上のピーク強度を有する光パルス列Pbが相関光学系40に入射することにより、検出器400が光パルス列Pbの時間波形を精度良く検出することができる。
【0057】
演算部5bは、検出器400と電気的に接続されている。演算部5bは、検出器400から提供された時間波形の特徴量に基づいて、光学部品7の波長分散量を推定する。上述したように、本発明者の知見によれば、光パルス列Pbの相互相関又は自己相関を含む相関光Pcを生成した場合、その相関光Pcの時間波形における種々の特徴量(例えばピーク間隔、ピーク強度、パルス幅など)は、測定対象の波長分散量と顕著な相関を有する。従って、演算部5bは、相関光Pcの時間波形の特徴量を評価することによって、測定対象である光学部品7の波長分散量を精度良く推定することができる。
【0058】
入力部5cは、分散測定装置1Aのユーザからの入力を受け付ける。入力部5cは、光学部品7の群遅延分散の符号に関する情報を取得する。光学部品7の群遅延分散の符号に関する情報とは、光学部品7の群遅延分散が正であるという情報、あるいは光学部品7の群遅延分散が負であるという情報である。
【0059】
出力部5dは、演算部5bにおける波長分散量の推定結果を出力する。出力部5dは、例えば波長分散量の推定結果を表示する表示装置である。
【0060】
図19は、制御装置5のハードウェアの構成例を概略的に示す図である。
図19に示すように、この制御装置5は、物理的には、プロセッサ(CPU)51、ROM52及びRAM53等の主記憶装置、キーボード、マウス及びタッチスクリーン等の入力デバイス54、ディスプレイ(タッチスクリーン含む)等の出力デバイス55、他の装置との間でデータの送受信を行うためのネットワークカード等の通信モジュール56、ハードディスク等の補助記憶装置57などを含む、通常のコンピュータとして構成され得る。
【0061】
コンピュータのプロセッサ51は、波長分散量算出プログラムによって、上記の演算部5bの機能を実現することができる。言い換えると、波長分散量算出プログラムは、コンピュータのプロセッサ51を、演算部5bとして動作させる。波長分散量算出プログラムは、例えば補助記憶装置57といった、コンピュータの内部または外部の記憶装置(記憶媒体)に記憶される。記憶装置は、非一時的記録媒体であってもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスク、CD、DVD等の記録媒体、ROM等の記録媒体、半導体メモリ、クラウドサーバ等が例示される。ディスプレイ(タッチスクリーン含む)等の出力デバイス55は、出力部5dとして動作する。
【0062】
補助記憶装置57は、光学部品7の波長分散量がゼロであると仮定して理論的に予め算出された(又は予め測定された)相関光Pcの時間波形の特徴量を記憶している。この特徴量と、検出器400により検出された相関光Pcの時間波形の特徴量とを比較すれば、光学部品7の波長分散量に起因して相関光Pcの特徴量がどの程度変化したかがわかる。従って、演算部5bは、補助記憶装置57に記憶された特徴量と、検出器400により検出された相関光Pcの時間波形の特徴量とを比較して、光学部品7の波長分散量を推定することができる。
【0063】
図20は、以上の構成を備える分散測定装置1Aを用いた分散測定方法を示すフローチャートである。まず、出力ステップS101において、パルスレーザ光源2が光パルスPaを出力する。
【0064】
次に、パルス形成ステップS102において、パルス形成部3が、光パルスPaを受け、光パルス列Pbを生成する。具体的には、パルス形成部3が、パルスレーザ光源2から出力された光パルスPaから、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる光パルスPb1,Pb2を含む変調光である光パルス列Pbを形成する。例えば、光パルスPaに含まれる複数の波長成分を波長毎に空間的に分離し、SLM14を用いて複数の波長成分の位相を相互にずらした後、複数の波長成分を集光する。これにより、光パルス列Pbを容易に生成することができる。加えて、パルス形成ステップS102では、SLM14に提示された位相パターンが、正又は負の群遅延分散を光パルスPaに与える。
【0065】
続いて、検出ステップS103において、相関光Pcの時間波形を検出する。具体的には、パルス形成部3から出力された光パルス列Pbが光学部品7を透過した後に、相関光学系40が、光学部品7から出力された光パルス列Pbを受け、光パルス列Pbの相互相関又は自己相関である相関光Pcを出力する。そして、検出器400が、相関光Pcの時間波形を検出する。一例としては、相関光学系40において、非線形光学結晶及び蛍光体の少なくとも一方を含む光学素子42を用いることによって、光パルス列Pbの相互相関又は自己相関を含む相関光Pcが生成される。
【0066】
例えば、
図13に示したように光パルス列Pbを二分岐し、分岐された一方の光パルス列Pbbを、他方の光パルス列Pbaに対して時間遅延させ、時間遅延した一方の光パルス列Pbbと、他方の光パルス列Pbaとから、光パルス列Pbの自己相関を含む相関光Pcを生成する。また、例えば、
図14に示したように光パルス列Pb及び参照光パルスPrを入射し、参照光パルスPrを、光パルス列Pbに対して時間遅延させ、時間遅延した参照光パルスPrと光パルス列Pbとから、光パルス列Pbの相互相関を含む相関光Pcを生成する。また、例えば、
図15に示したように光パルスPaのうち第1の偏光方向の偏光成分のみをSLM14において変調することにより光パルス列Pbを生成し、第2の偏光方向の偏光成分を参照光パルスPrとし、SLM14において、光パルス列Pbを、参照光パルスPrに対して時間遅延させ、時間遅延した光パルス列Pbと参照光パルスPrとから、光パルス列Pbの相互相関を含む相関光Pcを生成する。
【0067】
続いて、演算ステップS104において、演算部5bが、相関光Pcの時間波形の特徴量に基づいて、光学部品7の波長分散量を推定する。具体的には、まず、演算部5bは、光学部品7の波長分散がゼロであると仮定して理論的に予め算出された(又は予め測定された)相関光Pcの時間波形の特徴量を取得する。次に、演算部5bは、検出ステップS103において検出された相関光Pcの時間波形の特徴量を取得する。ここで、特徴量とは、例えば相関光Pcに含まれる複数の光パルスのピーク強度、半値全幅、及びピーク時間間隔のうち少なくとも一つである。続いて、演算部5bは、取得した2つの時間波形の特徴量同士を比較して、光学部品7の波長分散量を推定する。
【0068】
ここで、
図2に示されたパルス形成部3のSLM14における、帯域制御したマルチパルスを生成するための位相変調について詳細に説明する。レンズ15よりも前の領域(スペクトル領域)と、回折格子16よりも後ろの領域(時間領域)とは、互いにフーリエ変換の関係にあり、スペクトル領域における位相変調は、時間領域における時間強度波形に影響する。従って、パルス形成部3からの出力光は、SLM14の変調パターンに応じた、光パルスPaとは異なる様々な時間強度波形を有することができる。
図21(a)は、一例として、単パルス状の光パルスPaのスペクトル波形(スペクトル強度G41及びスペクトル位相G42)を示し、
図21(b)は、該光パルスPaの時間強度波形を示す。また、
図22(a)は、一例として、SLM14において矩形波状の位相スペクトル変調を与えたときのパルス形成部3からの出力光のスペクトル波形(スペクトル強度G51及びスペクトル位相G52)を示し、
図22(b)は、該出力光の時間強度波形を示す。
図21(a)及び
図22(a)において、横軸は波長(nm)を示し、左の縦軸は強度スペクトルの強度値(任意単位)を示し、右の縦軸は位相スペクトルの位相値(rad)を示す。また、
図21(b)及び
図22(b)において、横軸は時間(フェムト秒)を表し、縦軸は光強度(任意単位)を表す。この例では、三角状の位相スペクトルを出力光に与えることにより、光パルスPaのシングルパルスが、ダブルパルスに変換されている。なお、
図22に示されるスペクトル及び波形は一つの例であって、様々な位相スペクトル及び強度スペクトルの組み合わせにより、パルス形成部3からの出力光の時間強度波形を様々な形状に整形することができる。
【0069】
図23は、SLM14の変調パターンを演算する変調パターン算出装置20の構成を示す図である。変調パターン算出装置20は、例えば、パーソナルコンピュータ;スマートフォン、タブレット端末などのスマートデバイス;あるいはクラウドサーバなどのプロセッサを有するコンピュータである。なお、
図1に示された演算部5bが変調パターン算出装置20を兼ねてもよい。変調パターン算出装置20は、SLM14と電気的に接続され、パルス形成部3の出力光の時間強度波形を所望の波形に近づけるための位相変調パターンを算出し、該位相変調パターンを含む制御信号をSLM14に提供する。変調パターンは、SLM14を制御するためのデータであり、複素振幅分布の強度あるいは位相分布の強度のテーブルを含むデータである。変調パターンは、例えば、計算機合成ホログラム(Computer-Generated Holograms(CGH))である。
【0070】
本変形例の変調パターン算出装置20は、所望の波形を得る為の位相スペクトルを出力光に与える位相変調用の位相パターンと、所望の波形を得る為の強度スペクトルを出力光に与える強度変調用の位相パターンとを含む位相パターンを制御部5aに記憶させる。そのために、変調パターン算出装置20は、
図23に示すように、任意波形入力部21と、位相スペクトル設計部22と、強度スペクトル設計部23と、変調パターン生成部24とを有する。すなわち、変調パターン算出装置20に設けられたコンピュータのプロセッサは、任意波形入力部21の機能と、位相スペクトル設計部22の機能と、強度スペクトル設計部23の機能と、変調パターン生成部24の機能とを実現する。それぞれの機能は、同じプロセッサにより実現されてもよいし、異なるプロセッサにより実現されてもよい。
【0071】
コンピュータのプロセッサは、変調パターン算出プログラムによって、上記の各機能を実現することができる。故に、変調パターン算出プログラムは、コンピュータのプロセッサを、変調パターン算出装置20における任意波形入力部21、位相スペクトル設計部22、強度スペクトル設計部23、及び変調パターン生成部24として動作させる。変調パターン算出プログラムは、コンピュータの内部または外部の記憶装置(記憶媒体)に記憶される。記憶装置は、非一時的記録媒体であってもよい。記録媒体としては、フレキシブルディスク、CD、DVD等の記録媒体、ROM等の記録媒体、半導体メモリ、クラウドサーバ等が例示される。
【0072】
任意波形入力部21は、操作者からの所望の時間強度波形の入力を受け付ける。操作者は、所望の時間強度波形に関する情報(例えばピーク間隔、パルス幅、パルス数など)を任意波形入力部21に入力する。所望の時間強度波形に関する情報は、任意波形入力部21から位相スペクトル設計部22及び強度スペクトル設計部23に与えられる。位相スペクトル設計部22は、与えられた所望の時間強度波形の実現に適した、パルス形成部3の出力光の位相スペクトルを算出する。強度スペクトル設計部23は、与えられた所望の時間強度波形の実現に適した、パルス形成部3の出力光の強度スペクトルを算出する。変調パターン生成部24は、位相スペクトル設計部22において求められた位相スペクトルと、強度スペクトル設計部23において求められた強度スペクトルとをパルス形成部3の出力光に与えるための位相変調パターン(例えば、計算機合成ホログラム)を算出する。そして、算出された位相変調パターンを含む制御信号SCが、SLM14に提供される。SLM14は、制御信号SCに基づいて制御される。
【0073】
図24は、位相スペクトル設計部22及び強度スペクトル設計部23の内部構成を示すブロック図である。
図24に示されるように、位相スペクトル設計部22及び強度スペクトル設計部23は、フーリエ変換部25、関数置換部26、波形関数修正部27、逆フーリエ変換部28、及びターゲット生成部29を有する。ターゲット生成部29は、フーリエ変換部29a及びスペクトログラム修正部29bを含む。これらの各構成要素の機能については、後に詳述する。
【0074】
ここで、所望の時間強度波形は時間領域の関数として表され、位相スペクトルは周波数領域の関数として表される。従って、所望の時間強度波形に対応する位相スペクトルは、例えば、所望の時間強度波形に基づく反復フーリエ変換によって得られる。
図25は、反復フーリエ変換法による位相スペクトルの計算手順を示す図である。まず、周波数ωの関数である初期の強度スペクトル関数A
0(ω)及び位相スペクトル関数Ψ
0(ω)を用意する(図中の処理番号(1))。一例では、これらの強度スペクトル関数A
0(ω)及び位相スペクトル関数Ψ
0(ω)はそれぞれ入力光のスペクトル強度及びスペクトル位相を表す。次に、強度スペクトル関数A
0(ω)及び位相スペクトル関数Ψ
n(ω)を含む周波数領域の波形関数(a)を用意する(図中の処理番号(2))。
【数1】
添え字nは、第n回目のフーリエ変換処理後を表す。最初(第1回目)のフーリエ変換処理の前においては、位相スペクトル関数Ψ
n(ω)として上述した初期の位相スペクトル関数Ψ
0(ω)が用いられる。iは虚数である。
【0075】
続いて、上記関数(a)に対して周波数領域から時間領域へのフーリエ変換を行う(図中の矢印A1)。これにより、時間強度波形関数b
n(t)及び時間位相波形関数Θ
n(t)を含む周波数領域の波形関数(b)が得られる(図中の処理番号(3))。
【数2】
続いて、上記関数(b)に含まれる時間強度波形関数b
n(t)を、所望の波形に基づく時間強度波形関数Target
0(t)に置き換える(図中の処理番号(4)、(5))。
【数3】
【数4】
続いて、上記関数(d)に対して時間領域から周波数領域への逆フーリエ変換を行う(図中の矢印A2)。これにより、強度スペクトル関数B
n(ω)及び位相スペクトル関数Ψ
n(ω)を含む周波数領域の波形関数(e)が得られる(図中の処理番号(6))。
【数5】
【0076】
続いて、上記関数(e)に含まれる強度スペクトル関数B
n(ω)を拘束するため、初期の強度スペクトル関数A
0(ω)に置き換える(図中の処理番号(7))。
【数6】
以降、上記の処理(2)~(7)を複数回繰り返し行うことにより、波形関数中の位相スペクトル関数Ψ
n(ω)が表す位相スペクトル形状を、所望の時間強度波形に対応する位相スペクトル形状に近づけることができる。最終的に得られる位相スペクトル関数Ψ
IFTA(ω)が、所望の時間強度波形を得るための変調パターンの基になる。
【0077】
しかしながら、上述したような反復フーリエ法では、時間強度波形を制御することはできるが、時間強度波形を構成する周波数成分(帯域波長)を制御することはできないという問題がある。そこで、本実施形態の変調パターン算出装置20は、以下に説明する算出方法を用いて、変調パターンの基になる位相スペクトル関数及び強度スペクトル関数を算出する。
図26は、位相スペクトル設計部22における位相スペクトル関数の計算手順を示す図である。まず、周波数ωの関数である初期の強度スペクトル関数A
0(ω)及び位相スペクトル関数Φ
0(ω)を用意する(図中の処理番号(1))。一例では、これらの強度スペクトル関数A
0(ω)及び位相スペクトル関数Φ
0(ω)はそれぞれ入力光のスペクトル強度及びスペクトル位相を表す。次に、強度スペクトル関数A
0(ω)及び位相スペクトル関数Φ
0(ω)を含む周波数領域の第1波形関数(g)を用意する(処理番号(2-a))。但し、iは虚数である。
【数7】
【0078】
続いて、位相スペクトル設計部22のフーリエ変換部25は、上記関数(g)に対して周波数領域から時間領域へのフーリエ変換を行う(図中の矢印A3)。これにより、時間強度波形関数a
0(t)及び時間位相波形関数φ
0(t)を含む時間領域の第2波形関数(h)が得られる(フーリエ変換ステップ、処理番号(3))。
【数8】
【0079】
続いて、位相スペクトル設計部22の関数置換部26は、次の数式(i)に示されるように、時間強度波形関数b
0(t)に、任意波形入力部21において入力された所望の波形に基づく時間強度波形関数Target
0(t)を代入する(処理番号(4-a))。
【数9】
【0080】
続いて、位相スペクトル設計部22の関数置換部26は、次の数式(j)に示されるように、時間強度波形関数a
0(t)を時間強度波形関数b
0(t)で置き換える。すなわち、上記関数(h)に含まれる時間強度波形関数a
0(t)を、所望の波形に基づく時間強度波形関数Target
0(t)に置き換える(関数置換ステップ、処理番号(5))。
【数10】
【0081】
続いて、位相スペクトル設計部22の波形関数修正部27は、置き換え後の第2波形関数(j)のスペクトログラムが、所望の波長帯域に従って予め生成されたターゲットスペクトログラムに近づくように第2波形関数を修正する。まず、置き換え後の第2波形関数(j)に対して時間-周波数変換を施すことにより、第2波形関数(j)をスペクトログラムSG0,k(ω,t)に変換する(図中の処理番号(5-a))。添え字kは、第k回目の変換処理を表す。
【0082】
ここで、時間-周波数変換とは、時間波形のような複合信号に対して、周波数フィルタ処理または数値演算処理(窓関数をずらしながら乗算して、各々の時間に対してスペクトルを導出する処理)を施し、時間、周波数、信号成分の強さ(スペクトル強度)からなる3次元情報に変換することをいう。また、本実施形態では、その変換結果(時間、周波数、スペクトル強度)を「スペクトログラム」と定義する。
【0083】
時間-周波数変換としては、例えば、短時間フーリエ変換(Short-Time Fourier Transform;STFT)やウェーブレット変換(ハールウェーブレット変換、ガボールウェーブレット変換、メキシカンハットウェーブレット変換、モルレーウェーブレット変換)などがある。
【0084】
また、所望の波長帯域に従って予め生成されたターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)をターゲット生成部29から読み出す。このターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)は、目標とする時間波形(時間強度波形とそれを構成する周波数成分)と概ね同値であり、処理番号(5-b)のターゲットスペクトログラム関数において生成される。
【0085】
次に、位相スペクトル設計部22の波形関数修正部27は、スペクトログラムSG0,k(ω,t)とターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)とのパターンマッチングを行い、類似度(どの程度一致しているか)を調べる。本実施形態では、類似度を表す指標として、評価値を算出する。そして、続く処理番号(5-c)では、得られた評価値が、所定の終了条件を満たすか否かの判定を行う。条件を満たせば処理番号(6)へ進み、満たさなければ処理番号(5-d)へ進む。処理番号(5-d)では、第2波形関数に含まれる時間位相波形関数φ0(t)を任意の時間位相波形関数φ0,k(t)に変更する。時間位相波形関数を変更した後の第2波形関数は、STFTなどの時間-周波数変換により再びスペクトログラムに変換される。以降、上述した処理番号(5-a)~(5-d)が繰り返し行われる。こうして、スペクトログラムSG0,k(ω,t)がターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)に次第に近づくように、第2波形関数が修正される(波形関数修正ステップ)。
【0086】
その後、位相スペクトル設計部22の逆フーリエ変換部28は、修正後の第2波形関数に対して逆フーリエ変換を行い(図中の矢印A4)、周波数領域の第3波形関数(k)を生成する(逆フーリエ変換ステップ、処理番号(6))。
【数11】
この第3波形関数(k)に含まれる位相スペクトル関数Φ
0,k(ω)が、最終的に得られる所望の位相スペクトル関数Φ
TWC-TFD(ω)となる。この位相スペクトル関数Φ
TWC-TFD(ω)が、変調パターン生成部24に提供される。
【0087】
図27は、強度スペクトル設計部23におけるスペクトル強度の計算手順を示す図である。なお、処理番号(1)から処理番号(5-c)までは、上述した位相スペクトル設計部22におけるスペクトル位相の計算手順と同様なので説明を省略する。強度スペクトル設計部23の波形関数修正部27は、スペクトログラムSG
0,k(ω,t)とターゲットスペクトログラムTargetSG
0(ω,t)との類似度を示す評価値が所定の終了条件を満たさない場合、第2波形関数に含まれる時間位相波形関数φ
0(t)は初期値で拘束しつつ、時間強度波形関数b
0(t)を任意の時間強度波形関数b
0,k(t)に変更する(処理番号(5-e))。時間強度波形関数を変更した後の第2波形関数は、STFTなどの時間-周波数変換により再びスペクトログラムに変換される。以降、処理番号(5-a)~(5-c)が繰り返し行われる。こうして、スペクトログラムSG
0,k(ω,t)がターゲットスペクトログラムTargetSG
0(ω,t)に次第に近づくように、第2波形関数が修正される(波形関数修正ステップ)。
【0088】
その後、強度スペクトル設計部23の逆フーリエ変換部28は、修正後の第2波形関数に対して逆フーリエ変換を行い(図中の矢印A4)、周波数領域の第3波形関数(m)を生成する(逆フーリエ変換ステップ、処理番号(6))。
【数12】
【0089】
続いて、処理番号(7-b)では、強度スペクトル設計部23のフィルタ処理部が、第3波形関数(m)に含まれる強度スペクトル関数B
0,k(ω)に対し、入力光の強度スペクトルに基づくフィルタ処理を行う(フィルタ処理ステップ)。具体的には、強度スペクトル関数B
0,k(ω)に係数αを乗じた強度スペクトルのうち、入力光の強度スペクトルに基づいて定められる各波長毎のカットオフ強度を超える部分をカットする。全ての波長域において、強度スペクトル関数αB
0,k(ω)が入力光のスペクトル強度を超えないようにするためである。一例では、波長毎のカットオフ強度は、入力光の強度スペクトル(本実施形態では初期の強度スペクトル関数A
0(ω))と一致するように設定される。その場合、次の数式(n)に示されるように、強度スペクトル関数αB
0,k(ω)が強度スペクトル関数A
0(ω)よりも大きい周波数では、強度スペクトル関数A
TWC-TFD(ω)の値として強度スペクトル関数A
0(ω)の値が取り入れられる。また、強度スペクトル関数αB
0,k(ω)が強度スペクトル関数A
0(ω)以下である周波数では、強度スペクトル関数A
TWC-TFD(ω)の値として強度スペクトル関数αB
0,k(ω)の値が取り入れられる(図中の処理番号(7-b))。
【数13】
この強度スペクトル関数A
TWC-TFD(ω)が、最終的に得られる所望のスペクトル強度として変調パターン生成部24に提供される。
【0090】
変調パターン生成部24は、位相スペクトル設計部22において算出された位相スペクトル関数ΦTWC-TFD(ω)により示されるスペクトル位相と、強度スペクトル設計部23において算出された強度スペクトル関数ATWC-TFD(ω)により示されるスペクトル強度とを出力光に与えるための位相変調パターン(例えば、計算機合成ホログラム)を算出する(データ生成ステップ)。
【0091】
ここで、
図28は、ターゲット生成部29におけるターゲットスペクトログラムTargetSG
0(ω,t)の生成手順の一例を示す図である。ターゲットスペクトログラムTargetSG
0(ω,t)は、目標とする時間波形(時間強度波形とそれを構成する周波数成分(波長帯域成分))を示すので、ターゲットスペクトログラムの作成は、周波数成分(波長帯域成分)を制御するために極めて重要な工程である。
図28に示されるように、ターゲット生成部29は、まずスペクトル波形(初期の強度スペクトル関数A
0(ω)及び初期の位相スペクトル関数Φ
0(ω))、並びに所望の時間強度波形関数Target
0(t)を入力する。また、所望の周波数(波長)帯域情報を含む時間関数p
0(t)を入力する(処理番号(1))。
【0092】
次に、ターゲット生成部29は、例えば
図25に示された反復フーリエ変換法を用いて、時間強度波形関数Target
0(t)を実現するための位相スペクトル関数Φ
IFTA(ω)を算出する(処理番号(2))。
【0093】
続いて、ターゲット生成部29は、先に得られた位相スペクトル関数Φ
IFTA(ω)を利用した反復フーリエ変換法により、時間強度波形関数Target
0(t)を実現するための強度スペクトル関数A
IFTA(ω)を算出する(処理番号(3))。ここで、
図29は、強度スペクトル関数A
IFTA(ω)を算出する手順の一例を示す図である。
【0094】
まず、初期の強度スペクトル関数A
k=0(ω)及び位相スペクトル関数Ψ
0(ω)を用意する(図中の処理番号(1))。次に、強度スペクトル関数A
k(ω)及び位相スペクトル関数Ψ
0(ω)を含む周波数領域の波形関数(o)を用意する(図中の処理番号(2))。
【数14】
添え字kは、第k回目のフーリエ変換処理後を表す。最初(第1回目)のフーリエ変換処理の前においては、強度スペクトル関数A
k(ω)として上記の初期強度スペクトル関数A
k=0(ω)が用いられる。iは虚数である。
【0095】
続いて、上記関数(o)に対して周波数領域から時間領域へのフーリエ変換を行う(図中の矢印A5)。これにより、時間強度波形関数b
k(t)を含む周波数領域の波形関数(p)が得られる(図中の処理番号(3))。
【数15】
【0096】
続いて、上記関数(p)に含まれる時間強度波形関数b
k(t)を、所望の波形に基づく時間強度波形関数Target
0(t)に置き換える(図中の処理番号(4)、(5))。
【数16】
【数17】
【0097】
続いて、上記関数(r)に対して時間領域から周波数領域への逆フーリエ変換を行う(図中の矢印A6)。これにより、強度スペクトル関数C
k(ω)及び位相スペクトル関数Ψ
k(ω)を含む周波数領域の波形関数(s)が得られる(図中の処理番号(6))。
【数18】
続いて、上記関数(s)に含まれる位相スペクトル関数Ψ
k(ω)を拘束するため、初期の位相スペクトル関数Ψ
0(ω)に置き換える(図中の処理番号(7-a))。
【数19】
【0098】
また、逆フーリエ変換後の周波数領域における強度スペクトル関数C
k(ω)に対し、入力光の強度スペクトルに基づくフィルタ処理を行う。具体的には、強度スペクトル関数C
k(ω)により表される強度スペクトルのうち、入力光の強度スペクトルに基づいて定められる各波長毎のカットオフ強度を超える部分をカットする。一例では、波長毎のカットオフ強度は、入力光の強度スペクトル(例えば初期の強度スペクトル関数A
k=0(ω))と一致するように設定される。その場合、次の数式(u)に示されるように、強度スペクトル関数C
k(ω)が強度スペクトル関数A
k=0(ω)よりも大きい周波数では、強度スペクトル関数A
k(ω)の値として強度スペクトル関数A
k=0(ω)の値が取り入れられる。また、強度スペクトル関数C
k(ω)が強度スペクトル関数A
k=0(ω)以下である周波数では、強度スペクトル関数A
k(ω)の値として強度スペクトル関数C
k(ω)の値が取り入れられる(図中の処理番号(7-b))。
【数20】
上記関数(s)に含まれる強度スペクトル関数C
k(ω)を、上記数式(u)によるフィルタ処理後の強度スペクトル関数A
k(ω)に置き換える。
【0099】
以降、上記の処理(2)~(7-b)を繰り返し行うことにより、波形関数中の強度スペクトル関数Ak(ω)が表す強度スペクトル形状を、所望の時間強度波形に対応する強度スペクトル形状に近づけることができる。最終的に、強度スペクトル関数AIFTA(ω)が得られる。
【0100】
再び
図28を参照する。以上に説明した処理番号(2)、(3)における位相スペクトル関数Φ
IFTA(ω)及び強度スペクトル関数A
IFTA(ω)の算出によって、これらの関数を含む周波数領域の第3波形関数(v)が得られる(処理番号(4))。
【数21】
ターゲット生成部29のフーリエ変換部29aは、上の波形関数(v)をフーリエ変換する。これにより、時間領域の第4波形関数(w)が得られる(処理番号(5))。
【数22】
【0101】
ターゲット生成部29のスペクトログラム修正部29bは、時間-周波数変換により第4波形関数(w)をスペクトログラムSGIFTA(ω,t)に変換する(処理番号(6))。そして、処理番号(7)では、所望の周波数(波長)帯域情報を含む時間関数p0(t)を基にスペクトログラムSGIFTA(ω,t)を修正することにより、ターゲットスペクトログラムTargetSG0(ω,t)を生成する。例えば、2次元データにより構成されるスペクトログラムSGIFTA(ω,t)に現れる特徴的パターンを部分的に切り出し、時間関数p0(t)を基に当該部分の周波数成分の操作を行う。以下、その具体例について詳細に説明する。
【0102】
例えば、所望の時間強度波形関数Target
0(t)として時間間隔が2ピコ秒であるトリプルパルスを設定した場合について考える。このとき、スペクトログラムSG
IFTA(ω,t)は、
図30(a)に示されるような結果となる。なお、
図30(a)において横軸は時間(単位:フェムト秒)を示し、縦軸は波長(単位:nm)を示す。また、スペクトログラムの値は、図の明暗によって示されており、明るいほどスペクトログラムの値が大きい。このスペクトログラムSG
IFTA(ω,t)において、トリプルパルスは2ピコ秒間隔で時間軸上に分かれたドメインD
1、D
2、及びD
3として現れる。ドメインD
1、D
2、及びD
3の中心(ピーク)波長は800nmである。
【0103】
仮に出力光の時間強度波形のみを制御したい(単にトリプルパルスを得たい)場合には、これらのドメインD
1、D
2、及びD
3を操作する必要はない。しかし、各パルスの周波数(波長)帯域を制御したい場合には、これらのドメインD
1、D
2、及びD
3の操作が必要となる。すなわち、
図30(b)に示されるように、波長軸(縦軸)に沿った方向に各ドメインD
1、D
2、及びD
3を互いに独立して移動させることは、それぞれのパルスの構成周波数(波長帯域)を変更することを意味する。このような各パルスの構成周波数(波長帯域)の変更は、時間関数p
0(t)を基に行われる。
【0104】
例えば、ドメインD
2のピーク波長を800nmで据え置き、ドメインD
1及びD
3のピーク波長がそれぞれ-2nm、+2nmだけ平行移動するように時間関数p
0(t)を記述するとき、スペクトログラムSG
IFTA(ω,t)は、
図30(b)に示されるターゲットスペクトログラムTargetSG
0(ω,t)に変化する。例えばスペクトログラムにこのような処理を施すことによって、時間強度波形の形状を変えずに、各パルスの構成周波数(波長帯域)が任意に制御されたターゲットスペクトログラムを作成することができる。
【0105】
以上に説明した本実施形態の分散測定装置1A及び分散測定方法によって得られる効果について説明する。
【0106】
光学部品7の波長分散量を測定するとき、互いに時間差を有し中心波長が互いに異なる光パルスPb
1,Pb
2を光学部品7に透過させる。そして、光パルスPb
1,Pb
2から得られる相関光Pcの時間波形(例えばピーク間隔)に基づいて、光学部品7の波長分散量を推定することができる。しかしながら、従来の分散測定装置において、光パルスPb
1,Pb
2が光学部品7を透過する際には、光学部品7が有する波長分散によって、光パルスPb
1,Pb
2のパルス幅が次第に拡がるとともに光パルスPb
1,Pb
2のピーク強度が次第に低下する。
図31は、そのような現象の一例を示すグラフであって、光学部品7に入射する前の光パルスPb
1,Pb
2の時間波形(グラフG61)と、光学部品7を透過した光パルスPb
1,Pb
2の時間波形(グラフG62)とを示す。また、
図32は、光学部品7が配置されない場合の相関光Pcの時間波形(グラフG71)と、光学部品7が配置された場合の相関光Pcの時間波形(グラフG72)とを示す。このように、光学部品7において光パルスPb
1,Pb
2のパルス幅が拡がるほど、光パルスPb
1,Pb
2のピーク間隔(又は相関光Pcに含まれる複数の光パルスのピーク間隔)の検出精度が低下する。また、光学部品7において光パルスPb
1,Pb
2のピーク強度が低下するほど、光パルスPb
1,Pb
2の時間波形(又は相関光Pcに含まれる複数の光パルスの時間波形)の検出精度が低下する。したがって、光学部品7の波長分散量を精度良く測定することができないおそれがある。
【0107】
本実施形態の分散測定装置1A及び分散測定方法では、パルス形成部3(パルス形成ステップS102)において、光学部品7が有する群遅延分散とは逆符号の群遅延分散が光パルスPaに与えられる。これにより、光学部品7に入射する光パルスPb1,Pb2のピーク強度が一旦低下し且つパルス幅が一旦拡がるが、これらの光パルスPb1,Pb2が光学部品7に入射した後、光学部品7から出射するまでの間に、光学部品7が有する群遅延分散によって各光パルスPb1,Pb2のピーク強度が高まり、且つ各光パルスPb1,Pb2のパルス幅が小さくなる。このように、本実施形態によれば、光学部品7から出射された光パルスPb1,Pb2のパルス幅が小さくなるので、光パルスPb1,Pb2のピーク間隔(本実施形態では相関光Pcに含まれる複数の光パルスのピーク間隔)の検出精度の低下を抑制することができる。また、光学部品7から出射された光パルスPb1,Pb2のピーク強度が高まるので、光パルス列Pbの時間波形(本実施形態では相関光Pcの時間波形)の検出精度の低下を抑制することができる。したがって、光学部品7の波長分散量を精度良く測定することができる。
【0108】
本実施形態の分散測定装置1A及び分散測定方法による効果について具体的に説明する。
図33は、光学部品7が有する群遅延分散と、相関光Pcのパルス幅との関係の一例を示すグラフである。
図33において、黒四角形のプロットD21は、-20000fs
2の群遅延分散を光パルスPaに与えた場合を示す。白丸のプロットD22は、光パルスPaに群遅延分散を与えない場合を示す。プロットD22を参照すると、光パルスPaに群遅延分散を与えない場合、相関光Pcのパルス幅は、光学部品7の群遅延分散がゼロであるときに最小となり、光学部品7の群遅延分散の絶対値が大きくなるほど拡大する。これに対し、プロットD21を参照すると、-20000fs
2の群遅延分散を光パルスPaに与えた場合、この関係は20000fs
2だけシフトする。すなわち、-20000fs
2の群遅延分散を光パルスPaに与えた場合、相関光Pcのパルス幅は、光学部品7の群遅延分散が20000fs
2であるときに最小となり、光学部品7の群遅延分散が20000fs
2から離れるほど拡大する。そして、光学部品7の群遅延分散が10000fs
2より大きい範囲において、相関光Pcのパルス幅は、光パルスPaに群遅延分散を与えない場合よりも小さくなる。言い換えると、-A(fs
2)の群遅延分散を光パルスPaに与えた場合、光学部品7の群遅延分散がA/2より大きい範囲において、相関光Pcのパルス幅は、光パルスPaに群遅延分散を与えない場合よりも小さくなる。従って、光学部品7の群遅延分散がA/2より大きい場合に、相関光Pcのパルス幅を小さくして、相関光Pcのピーク間隔の検出精度の低下を抑制することができる。
【0109】
また、
図34は、光学部品7が有する群遅延分散と、相関光Pcのピーク強度との関係の一例を示すグラフである。
図34において、黒四角形のプロットD31は、-20000fs
2の群遅延分散を光パルスPaに与えた場合を示す。白丸のプロットD32は、光パルスPaに群遅延分散を与えない場合を示す。プロットD32を参照すると、光パルスPaに群遅延分散を与えない場合、相関光Pcのピーク強度は、光学部品7の群遅延分散がゼロであるときに最大となり、光学部品7の群遅延分散の絶対値が大きくなるほど低下する。これに対し、プロットD31を参照すると、-20000fs
2の群遅延分散を光パルスPaに与えた場合、この関係は20000fs
2だけシフトする。すなわち、-20000fs
2の群遅延分散を光パルスPaに与えた場合、相関光Pcのピーク強度は、光学部品7の群遅延分散が20000fs
2であるときに最大となり、光学部品7の群遅延分散が20000fs
2から離れるほど低下する。そして、光学部品7の群遅延分散が10000fs
2より大きい範囲において、相関光Pcのピーク強度は、光パルスPaに群遅延分散を与えない場合よりも大きくなる。言い換えると、-A(fs
2)の群遅延分散を光パルスPaに与えた場合、光学部品7の群遅延分散がA/2より大きい範囲において、相関光Pcのピーク強度は、光パルスPaに群遅延分散を与えない場合よりも大きくなる。従って、光学部品7の群遅延分散がA/2より大きい場合に、相関光Pcのピーク強度を高め、相関光Pcの時間波形の検出精度の低下を抑制することができる。
【0110】
なお、光学部品7が有する群遅延分散の大きさは、光学部品7の群遅延分散の変化に対する相関光Pcのピーク間隔の変化率にも影響する。
図35の白丸のプロットD41は、光学部品7に入射する光パルスPb
1,Pb
2が群遅延分散を有さない(光パルスPb
1,Pb
2の群遅延分散がゼロである)場合における、光学部品7が有する群遅延分散と、相関光Pcのピーク間隔の変化量との関係の一例を示す。
図35において、縦軸は相関光Pcのピーク間隔の変化量(単位:fs)を示し、横軸は光学部品7が有する群遅延分散(単位:fs
2)を示す。また、
図36は、光学部品7が有する群遅延分散の絶対値と、光学部品7が有する群遅延分散に対する相関光Pcのピーク間隔の変化率との関係を示すグラフである。
図35及び
図36に示されるように、光学部品7の群遅延分散がゼロに近いほど、光学部品7の群遅延分散の変化に対する相関光Pcのピーク間隔の変化率は大きくなり、光学部品7の群遅延分散の絶対値が大きいほど、光学部品7の群遅延分散の変化に対する相関光Pcのピーク間隔の変化率は小さくなる。言い換えると、光学部品7の群遅延分散がゼロに近いほど波長分散量の測定感度が高くなり、光学部品7の群遅延分散の絶対値が大きいほど波長分散量の測定感度が低くなる。
【0111】
これに対し、例えば-20000fs
2の群遅延分散を光パルスPaに与えると、
図37の黒四角形のプロットD42に示されるように、光学部品7が有する群遅延分散と、相関光Pcのピーク間隔の変化量との関係は、20000fs
2だけシフトする。すなわち、-20000fs
2の群遅延分散を光パルスPaに与えた場合、光学部品7の群遅延分散の変化に対する相関光Pcのピーク間隔の変化率は、光学部品7の群遅延分散が20000fs
2であるときに最大となり、光学部品7の群遅延分散が20000fs
2から離れるほど低下する。従って、光学部品7の群遅延分散が20000fs
2に近いほど、波長分散量の測定感度が高くなる。言い換えると、光パルスPaに与える群遅延分散の絶対値を、光学部品7が有する群遅延分散の絶対値に近づけるほど、波長分散量の測定感度を高くすることができる。
【0112】
本実施形態のように、光検出部4は、光パルス列Pbを受け、光パルス列Pbの相互相関又は自己相関を含む相関光Pcを出力する相関光学系40を有し、光パルス列Pbの時間波形に代えて相関光Pcの時間波形を検出してもよい。そして、演算部5bは、相関光Pcの時間波形の特徴量に基づいて光学部品7の波長分散量を推定してもよい。同様に、検出ステップS103では、光パルス列Pbの相互相関又は自己相関を含む相関光Pcを生成し、光パルス列Pbの時間波形に代えて相関光Pcの時間波形を検出してもよい。そして、演算ステップS104では、相関光Pcの時間波形の特徴量に基づいて光学部品7の波長分散量を推定してもよい。この場合、例えば光パルスPb1,Pb2がフェムト秒オーダーの超短パルスであるような場合であっても光パルス列Pbの時間波形を測定できる。故に、超短パルスを用いて光学部品7の波長分散量を更に精度良く測定することができる。
【0113】
前述したように、位相パターンによって光パルスPaに与えられる群遅延分散の絶対値は、光学部品7の群遅延分散の絶対値の予測される範囲内であってもよい。この場合、位相パターンによって光パルスPaに与えられる群遅延分散の絶対値を、光学部品7の群遅延分散の絶対値に近づけることができる。従って、光学部品7において光パルスPb1,Pb2のパルス幅をより小さくすることができ、光パルスPb1,Pb2のピーク間隔(本実施形態では相関光Pcに含まれる複数の光パルスのピーク間隔)の検出精度の低下を更に抑制することができる。また、光学部品7において光パルスPb1,Pb2のピーク強度をより高めることができ、光パルス列Pbの時間波形(本実施形態では相関光Pcの時間波形)の検出精度の低下を更に抑制することができる。
【0114】
本実施形態のように、位相パターンによって光パルスPaに与えられる群遅延分散の絶対値は、光学部品7の設計上の群遅延分散の絶対値と等しくてもよい。この場合もまた、位相パターンによって光パルスPaに与えられる群遅延分散の絶対値を、光学部品7の群遅延分散の絶対値に近づけることができる。従って、光学部品7において光パルスPb1,Pb2のパルス幅をより小さくすることができ、光パルスPb1,Pb2のピーク間隔(本実施形態では相関光Pcに含まれる複数の光パルスのピーク間隔)の検出精度の低下を更に抑制することができる。また、光学部品7において光パルスPb1,Pb2のピーク強度をより高めることができ、光パルス列Pbの時間波形(本実施形態では相関光Pcの時間波形)の検出精度の低下を更に抑制することができる。
【0115】
本実施形態のように、光学部品7は、パルス形成部3と光検出部4との間の光路上に配置されてもよい。また、検出ステップS103において、光学部品7を透過した光パルス列Pbの時間波形(本実施形態では相関光Pcの時間波形)を検出してもよい。本実施形態によれば、例えばこのように、測定対象である光学部品7を光路上の任意の位置に配置できる。したがって、装置の空間的な設計の自由度が高く、装置の小型化、並びに、光学部品7の取り付け易さ及び取り出し易さといった利便性の向上へ向けた装置設計が可能となる。
【0116】
本実施形態のように、分散測定装置1Aは、正の群遅延分散を光パルスPaに与えるための第1の位相パターンと、負の群遅延分散を光パルスPaに与えるための第2の位相パターンとを記憶し、第1の位相パターン及び第2の位相パターンをSLM14へ選択的に出力する制御部5aを備えてもよい。この場合、光学部品7が正の群遅延分散を有する場合と、光学部品7が負の群遅延分散を有する場合とで、位相パターンを容易に切り替えることができる。
【0117】
(第1変形例)
本発明者の知見によれば、光パルス列Pbの時間波形における種々の特徴量(例えば光パルスPb1,Pb2のパルス間隔、ピーク強度、パルス幅など)もまた、光学部品7の波長分散量と顕著な相関を有する。従って、相関光Pcに代えて光パルス列Pbの時間波形を評価することでも、光学部品7の波長分散量を推定することができる。
【0118】
図38は、上記実施形態の第1変形例に係る分散測定装置1Bの構成を示す図である。本変形例の分散測定装置1Bは、上記実施形態の光検出部4に代えて光検出部4Aを備える点において上記実施形態と相違し、他の点において上記実施形態と一致する。光検出部4Aは、検出器400を有しているが、上記実施形態の相関光学系40を有していない。現在、ナノ秒オーダーの時間幅を有する光パルスの時間波形を直接検出できる検出器が既に存在する。従って、このような検出器を用いることにより、光検出部4Aは、相関光学系40を有していなくても光パルス列Pbの時間波形を精度良く検出することができる。但し、例えば光パルス列Pbの時間幅がフェムト秒オーダーである場合など、検出器400の応答速度が十分ではない場合には、上記実施形態のように相関光学系40を用いてもよい。
【0119】
本変形例のように光検出部4Aが相関光学系40を有しない場合、
図20に示された検出ステップS103において、光検出部4Aは、相関光Pcに代えて光パルス列Pbの時間波形を検出する。具体的には、検出器400は、光学部品7を透過した光パルス列Pbを受け、光パルス列Pbの時間波形を検出する。検出器400は、光パルス列Pbの強度を電気信号に変換することにより、光パルス列Pbの時間波形を検出する。当該電気信号は、演算部5bに提供される。
【0120】
本変形例では、
図20に示された演算ステップS104において、演算部5bは、光パルス列Pbの時間波形から光学部品7の波長分散量を推定する。具体的には、演算部5bは、まず、光学部品7の波長分散量がゼロであると仮定して理論的に予め算出された(又は予め測定された)光パルス列Pbの時間波形の特徴量を取得する。この特徴量は、補助記憶装置57(
図19を参照)に予め記憶されてもよい。また、演算部5bは、検出ステップS103において検出された光パルス列Pbの時間波形の特徴量を取得する。この特徴量は、例えば、光パルスPb
1,Pb
2のピーク強度、半値全幅、及びピーク時間間隔のうち少なくとも一つである。続いて、演算部5bは、光学部品7の波長分散量がゼロであると仮定して理論的に予め算出された(又は予め測定された)光パルス列Pbの時間波形の特徴量と、検出ステップS103において検出された光パルス列Pbの時間波形の特徴量とを比較して、光学部品7の波長分散量を推定する。
【0121】
本変形例では、上記実施形態と同様に、光学部品7から出射された光パルスPb1,Pb2のパルス幅が小さくなるので、光パルスPb1,Pb2のピーク間隔の検出精度の低下を抑制することができる。また、光学部品7から出射された光パルスPb1,Pb2のピーク強度が高まるので、光パルス列Pbの時間波形の検出精度の低下を抑制することができる。したがって、光学部品7の波長分散量を精度良く測定することができる。
【0122】
(第2変形例)
図39は、上記実施形態の第2変形例に係る分散測定装置1Cの構成を示す図である。本変形例では、測定対象である光学部品7が、パルス形成部3と光検出部4との間の光路上ではなく、パルスレーザ光源2とパルス形成部3との間の光路上に配置される点において上記実施形態と相違し、他の点において上記実施形態と一致する。本変形例では、パルスレーザ光源2から出力された光パルスPaは、光学部品7を透過したのちにパルス形成部3に入射する。
【0123】
本変形例では、光パルスPaが光学部品7を透過した後に、パルス形成ステップS102においてパルス形成部3が光パルスPaから光パルス列Pbを形成する。その際、光パルスPaに対し、光学部品7が有する群遅延分散とは逆符号の群遅延分散が与えられる。そして、検出ステップS103において、相関光学系40によって光パルス列Pbから相関光Pcが生成され、検出器400によって相関光Pcの時間波形が検出される。或いは、第1変形例のように、相関光学系40が設けられず、検出器400によって光パルス列Pbの時間波形が検出されてもよい。演算部5bは、相関光Pc又は光パルス列Pbの時間波形から、光学部品7の波長分散量を推定する。
【0124】
本変形例のように、測定対象である光学部品7は、パルスレーザ光源2とパルス形成部3との間の光路上に配置されてもよい。この場合であっても、上記実施形態と同様に、光学部品7から出射された光パルスPb1,Pb2のパルス幅が小さくなるので、光パルスPb1,Pb2のピーク間隔(又は相関光Pcに含まれる複数の光パルスのピーク間隔)の検出精度の低下を抑制することができる。また、光学部品7から出射された光パルスPb1,Pb2のピーク強度が高まるので、光パルス列Pbの時間波形(又は相関光Pcの時間波形)の検出精度の低下を抑制することができる。したがって、光学部品7の波長分散量を精度良く測定することができる。
【符号の説明】
【0125】
1A,1B…分散測定装置,2…パルスレーザ光源,3…パルス形成部,3a…光入力端,3b…光出力端,4,4A…光検出部,4a…光入力端,5…制御装置,5a…制御部,5b…演算部,5c…入力部,5d…出力部,7…光学部品,7a…光入力端,7b…光出力端,12…回折格子,13…レンズ,14…空間光変調器(SLM),15…レンズ,16…回折格子,17…変調面,17a…変調領域,20…変調パターン算出装置,21…任意波形入力部,22…位相スペクトル設計部,23…強度スペクトル設計部,24…変調パターン生成部,25…フーリエ変換部,26…関数置換部,27…波形関数修正部,28…逆フーリエ変換部,29…ターゲット生成部,29a…フーリエ変換部,29b…スペクトログラム修正部,40,40A,40B,40C…相関光学系,40b…光出力端,40c~40f…光路,41…レンズ,42…光学素子,43…レンズ,44…ビームスプリッタ,45,46…ミラー,47,49…移動ステージ,48…ミラー,51…プロセッサ(CPU),52…ROM,53…RAM,54…入力デバイス,55…出力デバイス,56…通信モジュール,57…補助記憶装置,400…検出器,A,B…方向,P1…光,P2…変調光,Pa…光パルス(第1光パルス),Pb,Pba,Pbb…光パルス列,Pb1,Pb2…光パルス(第2光パルス),Pc…相関光,Pd…光パルス列,Pd1,Pd2…光パルス,Pr…参照光パルス,S101…出力ステップ,S102…パルス形成ステップ,S103…検出ステップ,S104…演算ステップ,SC…制御信号。