IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本碍子株式会社の特許一覧 ▶ エヌジーケイ・キルンテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-熱処理炉 図1
  • 特開-熱処理炉 図2
  • 特開-熱処理炉 図3
  • 特開-熱処理炉 図4
  • 特開-熱処理炉 図5
  • 特開-熱処理炉 図6
  • 特開-熱処理炉 図7
  • 特開-熱処理炉 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180169
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】熱処理炉
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/40 20060101AFI20221129BHJP
   F27D 7/06 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
F27B9/40
F27D7/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087119
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591076109
【氏名又は名称】エヌジーケイ・キルンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 実
(72)【発明者】
【氏名】岩田 晃和
【テーマコード(参考)】
4K050
4K063
【Fターム(参考)】
4K050AA02
4K050BA16
4K050CA13
4K050CC08
4K050CC09
4K050CG04
4K050EA08
4K063AA05
4K063AA15
4K063BA12
4K063CA03
4K063DA13
4K063DA15
4K063DA24
4K063DA28
4K063DA34
(57)【要約】
【課題】被処理物の周囲に雰囲気ガスを効率よく供給する。
【解決手段】熱処理炉は、被処理物を熱処理する熱処理部と、熱処理部内に配置され、熱処理部の一端から他端まで被処理物を搬送する搬送装置と、熱処理部内に配置され、熱処理部内の温度を調整するヒータと、熱処理部内に雰囲気ガスを給気する給気口を有する給気流路と、給気流路に設けられ、給気口から給気する雰囲気ガスの給気量を調整する調整弁と、被処理物が熱処理部の一端から他端まで搬送されるまでの間に給気口からの給気量が周期的に変化するように調整弁を制御する制御装置と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を熱処理する熱処理部と、
前記熱処理部内に配置され、前記熱処理部の一端から他端まで前記被処理物を搬送する搬送装置と、
前記熱処理部内に配置され、前記熱処理部内の温度を調整するヒータと、
前記熱処理部内に雰囲気ガスを給気する給気口を有する給気流路と、
前記給気流路に設けられ、前記給気口から給気する前記雰囲気ガスの給気量を調整する調整弁と、
前記被処理物が前記熱処理部の一端から他端まで搬送されるまでの間に前記給気口からの給気量が周期的に変化するように前記調整弁を制御する制御装置と、
を備える、熱処理炉。
【請求項2】
前記被処理物の搬送方向に対して直交する直交面に沿って配置された複数の前記給気口を備える給気装置を複数備えており、
前記複数の給気装置は、前記搬送方向に間隔を空けて配置されており、
前記給気口からの給気量は、第1の給気量と、前記第1の給気量より少ない第2の給気量を交互に繰り返して切り替えられ、
前記制御装置は、前記給気装置毎に、当該給気装置の前記複数の給気口からの給気量が同時に変化するように前記調整弁を制御する、請求項1に記載の熱処理炉。
【請求項3】
前記被処理物の搬送方向に対して直交する直交面に沿って配置された複数の前記給気口を備える給気装置を複数備えており、
前記複数の給気装置は、前記搬送方向に間隔を空けて配置されており、
前記給気口からの給気量は、第1の給気量と、前記第1の給気量より少ない第2の給気量を交互に繰り返して切り替えられ、
前記制御装置は、前記給気装置毎に、当該給気装置の前記複数の給気口のうちの1の給気口からの給気量が前記第1の給気量であるとき、前記1の給気口と隣接する給気口からの給気量は前記第2の給気量となり、前記隣接する給気口からの給気量が前記第1の給気量であるとき、前記1の給気口からの給気量は前記第2の給気量となるように、前記調整弁を制御する、請求項1に記載の熱処理炉。
【請求項4】
前記被処理物の搬送方向に対して直交する直交面に沿って配置された複数の前記給気口を備える給気装置を複数備えており、
前記複数の給気装置は、前記搬送方向に間隔を空けて配置されており、
前記搬送方向に沿って見たときに、前記給気口は、隣接する給気装置の給気口とは異なる位置に設置されており、
前記給気口からの給気量は、第1の給気量と、前記第1の給気量より少ない第2の給気量を交互に繰り返して切り替えられ、
前記制御装置は、前記給気装置毎に、当該給気装置の前記複数の給気口からの給気量が同時に変化するように調整弁を制御しており、
前記制御装置は、前記複数の給気装置のうちの1の給気装置の複数の給気口からの給気量が前記第1の給気量であるとき、前記1の給気装置と隣接する給気装置の複数の給気口からの給気量は前記第2の給気量となり、前記隣接する給気装置の複数の給気口からの給気量が前記第1の給気量であるとき、前記1の給気装置の複数の給気口からの給気量は前記第2の給気量となるように、前記調整弁を制御する、請求項1に記載の熱処理炉。
【請求項5】
前記給気装置の複数の給気口は、同一の調整弁によって給気量が調整されている、請求項2又は4に記載の熱処理炉。
【請求項6】
前記制御装置は、1の被処理物が前記給気口が設置される前記直交面を通過する間に、当該給気口から前記第1の給気量で少なくとも1回給気するように前記調整弁を制御する、請求項2~5のいずれか一項に記載の熱処理炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、被処理物(例えば、リチウム正極材等)を熱処理する熱処理炉に関する。
【背景技術】
【0002】
熱処理炉(例えば、ローラーハースキルン等)を用いて、被処理物を熱処理することがある。例えば、特許文献1の熱処理炉は、被処理物を熱処理する熱処理部と、熱処理部内に配置され、複数の被処理物を搬送する搬送装置と、熱処理部内に配置され、熱処理部内の温度を調整するヒータを備えている。被処理物は、搬送装置によって熱処理炉内を搬送され、その間に被処理物は熱処理される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-103331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような熱処理炉では、被処理物が熱処理部内で熱処理されることにより、被処理物から反応ガスが発生することがある。被処理物を適切に熱処理するためには、被処理物から発生した反応ガスを掃気して、被処理物の周囲に雰囲気ガスを供給する必要がある。熱処理部内に雰囲気ガスを多量に給気すれば、被処理物の周囲から反応ガスが掃気され、被処理物の周囲に雰囲気ガスを供給することができる。しかしながら、熱処理部内に多量の雰囲気ガスを給気すると、給気された雰囲気ガスを所望の熱処理温度まで加熱するために多量のエネルギーが必要となるという問題があった。
【0005】
本明細書は、被処理物の周囲に雰囲気ガスを効率よく供給する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示する熱処理炉は、被処理物を熱処理する熱処理部と、熱処理部内に配置され、熱処理部の一端から他端まで被処理物を搬送する搬送装置と、熱処理部内に配置され、熱処理部内の温度を調整するヒータと、熱処理部内に雰囲気ガスを給気する給気口を有する給気流路と、給気流路に設けられ、給気口から給気する雰囲気ガスの給気量を調整する調整弁と、被処理物が熱処理部の一端から他端まで搬送されるまでの間に給気口からの給気量が周期的に変化するように調整弁を制御する制御装置と、を備える。
【0007】
上記の熱処理炉では、給気口からの給気量が周期的に変化することによって、熱処理部に給気される雰囲気ガスの流速が変化する。これにより、熱処理部内への雰囲気ガスの給気量を増加させることなく、熱処理炉内に給気される雰囲気ガスの流速が大きくなる時間帯を作ることができる。このため、被処理物の周囲のガスを給気された雰囲気ガスに入れ替え易くすることができる。さらに、給気される雰囲気ガスの流速が変化するため、熱処理部内の雰囲気ガスが攪拌し易くなり、熱処理部内の温度分布を均一にし易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例1に係る熱処理炉の概略構成を示す図であり、被処理物の搬送方向に平行な平面で熱処理炉を切断したときの縦断面図。
図2図1のII-II線における断面図。
図3】実施例に係る熱処理炉の制御系の構成を示すブロック図。
図4】実施例1において、被処理物の間に配置される給気口から供給される雰囲気ガスの流量及び流速の変化を示す図であり、(a)は流量の変化を示しており、(b)は流速の変化を示している。
図5】実施例2に係る熱処理炉の概略構成を示す図であり、被処理物の搬送方向に直交する平面で熱処理炉を切断したときの縦断面図。
図6】実施例3において、給気口から供給される雰囲気ガスの流量及び流速の変化を示す図であり、(a)は複数の給気口から供給される雰囲気ガスの流量の合計の変化を示しており、(b)は被処理物の間に配置される給気口から供給される雰囲気ガスの流速の変化を示している。
図7】実施例5において、給気口から供給される雰囲気ガスの流量及び流速の変化を示す図であり、(a)は各給気口から供給される雰囲気ガスの流量の変化を示しており、(b)は群1群及び第2群の給気装置から供給される雰囲気ガスの流量の合計の変化を示しており、(c)は(b)の給気装置の各給気口から供給される雰囲気ガスの流速を示している。
図8】実施例6に係る熱処理炉の概略構成を示す図であり、被処理物の搬送方向に直交する平面で熱処理炉を切断したときの縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0010】
本明細書に開示する熱処理炉は、被処理物の搬送方向に対して直交する直交面に沿って配置された複数の給気口を備える給気装置を複数備えていてもよい。複数の給気装置は、搬送方向に間隔を空けて配置されていてもよい。給気口からの給気量は、第1の給気量と、第1の給気量より少ない第2の給気量を交互に繰り返して切り替えられてもよい。制御装置は、給気装置毎に、当該給気装置の複数の給気口からの給気量が同時に変化するように調整弁を制御してもよい。このような構成によると、同じ給気装置に設けられる複数の給気口の給気量を同時に制御するため、複数の給気口の給気量を容易に制御することができる。
【0011】
本明細書に開示する熱処理炉は、被処理物の搬送方向に対して直交する直交面に沿って配置された複数の給気口を備える給気装置を複数備えていてもよい。複数の給気装置は、搬送方向に間隔を空けて配置されていてもよい。給気口からの給気量は、第1の給気量と、第1の給気量より少ない第2の給気量を交互に繰り返して切り替えられてもよい。制御装置は、給気装置毎に、当該給気装置の複数の給気口のうちの1の給気口からの給気量が第1の給気量であるとき、1の給気口と隣接する給気口からの給気量は第2の給気量となり、隣接する給気口からの給気量が第1の給気量であるとき、1の給気口からの給気量は第2の給気量となるように、調整弁を制御してもよい。このような構成によると、同じ給気装置に設けられる複数の給気口(すなわち、搬送方向に対して直交する直交面に沿って配置された複数の給気口)において、ある給気口で第1給気量から第2給気量に切り替えられると、その給気口と隣接する給気口では第2給気量から第1給気量に切替られる。このため、給気装置から雰囲気ガスが供給される直交面において、熱処理部内へ供給される雰囲気ガスの給気量の変化を低減しつつ、各給気口からの流速を大きくした状態を実現することができる。
【0012】
本明細書に開示する熱処理炉は、被処理物の搬送方向に対して直交する直交面に沿って配置された複数の給気口を備える給気装置を複数備えていてもよい。複数の給気装置は、搬送方向に間隔を空けて配置されていてもよい。搬送方向に沿って見たときに、給気口は、隣接する給気装置の給気口とは異なる位置に設置されていてもよい。給気口からの給気量は、第1の給気量と、第1の給気量より少ない第2の給気量を交互に繰り返して切り替えられてもよい。制御装置は、給気装置毎に、当該給気装置の複数の給気口からの給気量が同時に変化するように調整弁を制御してもよい。制御装置は、複数の給気装置のうちの1の給気装置の複数の給気口からの給気量が第1の給気量であるとき、1の給気装置と隣接する給気装置の複数の給気口からの給気量は第2の給気量となり、隣接する給気装置の複数の給気口からの給気量が第1の給気量であるとき、1の給気装置の複数の給気口からの給気量は第2の給気量となるように、調整弁を制御してもよい。このような構成によると、ある給気装置が第1給気量から第2給気量に切り替えられると、その給気装置と隣接する給気装置では第2給気量から第1給気量に切替られる。このため、熱処理部内への雰囲気ガスの給気量の変化が低減され、各給気装置からの流速を大きくした状態を実現することができる。
【0013】
本明細書に開示する熱処理炉では、給気装置の複数の給気口は、同一の調整弁によって給気量が調整されていてもよい。このような構成によると、調整弁の数を低減できる。また、同じ給気装置が備える各給気口からの給気量を同一にすることができ、熱処理部内への雰囲気ガスの給気がより調整し易くなる。
【0014】
本明細書に開示する熱処理炉では、制御装置は、1の被処理物が給気口が設置される直交面を通過する間に、当該給気口から第1の給気量で少なくとも1回給気するように調整弁を制御してもよい。このような構成によると、被処理物の周囲により確実に雰囲気ガスを供給できる。
【実施例0015】
(実施例1)
図面を参照して、本実施例に係る熱処理炉10について説明する。図1図3に示すように、熱処理炉10は、熱処理部12と、搬送装置30と、複数の給気装置40と、制御装置60を備えている。熱処理炉10は、搬送装置30によって被処理物2が熱処理部12内を搬送される間に、被処理物2を熱処理する。
【0016】
被処理物2としては、例えば、リチウムイオン電池の正極材や負極材等が挙げられる。熱処理炉10を用いてリチウムイオン電池の正極材や負極材を熱処理する場合には、これらを箱状の匣鉢に収容して炉内を搬送することができる。本実施例の熱処理炉10では、搬送ローラ32(後述)上に、複数の匣鉢を上下方向に重ねると共に、上下方向に重ねた匣鉢を搬送方向と直交する方向(図2では、Y方向)に複数並んだ状態で載置して搬送することができる。図2に示すように、本実施例では、匣鉢は、上下方向に4つ重ねられると共に、搬送方向と直交するY方向に4つ並んだ状態で搬送ローラ32上に載置される。以下、本実施例においては、熱処理する物質と、その熱処理する物質を収容した匣鉢を合わせた全体を「被処理物2」という。また、以下の明細書において、被処理物2を区別する必要があるときは被処理物2a、2bのように添字のアルファベットを用いて記載し、区別する必要のないときは単に被処理物2と記載する場合がある。また、他の構成要素についても同一構成のものについて区別する必要がないときは、上記と同様に添字のアルファベットを省略して単に数字で記載することがある。図2に示すように、本実施例では、搬送方向と直交する方向に並んだ4列の被処理物2を、+Y方向側から-Y方向側に向かって順に、被処理物2a~2dと称することがある。
【0017】
熱処理部12は、略直方形の箱型の空間であり、天井壁14と、底壁16と、側壁18a~18dによって囲まれている。天井壁14は、底壁16に対して平行に(すなわち、XY平面と平行に)配置されている。図2に示すように、側壁18a、18bは、搬送方向に対して平行、かつ、天井壁14及び底壁16に対して垂直に(すなわち、XZ平面と平行に)配置されている。図1に示すように、側壁18cは、搬送経路の入口端に配置されており、搬送方向に対して垂直に(すなわち、YZ平面と平行に)配置されている。側壁18dは、搬送経路の出口端に配置されており、側壁18cに対して平行に(すなわち、YZ平面と平行に)配置されている。側壁18cには、開口20aが形成されており、側壁18dには、冷却部13へと続く開口20bが形成されている。被処理物2は、搬送装置30によって開口20aから熱処理炉10内に搬送され、開口20bから冷却部13へ搬送される。すなわち、開口20aは搬入口として用いられ、開口20bは熱処理部から冷却部13への搬出口として用いられる。
【0018】
また、熱処理部12は、内部に隔壁22が配置されている。熱処理部12は、隔壁22によって複数の空間24に分割されている。各空間24は、隔壁22によって隣接する空間24と遮断されることによって、隣接する空間24と異なる雰囲気温度を維持することができる。各空間24には、複数のヒータ26a、26bと、複数の搬送ローラ32(後述)が配置されている。ヒータ26aは、搬送ローラ32の上方の位置に搬送方向に所定の間隔で配置され、ヒータ26bは、搬送ローラ32の下方の位置に搬送方向に所定の間隔で配置されている。ヒータ26a、26bが発熱することで、各空間24内が加熱される。
【0019】
搬送装置30は、複数の搬送ローラ32と、駆動装置34を備えている。搬送装置30は、開口20aから熱処理部12内に被処理物2を搬送し、各空間24内において被処理物2を搬送する。そして、搬送装置30は、開口20bから被処理物2を熱処理部12外に搬送する。被処理物2は、搬送ローラ32によって搬送される。
【0020】
搬送ローラ32は円筒状であり、その軸線は搬送方向と直交する方向に(すなわち、Y方向に)伸びている。複数の搬送ローラ32は、全てが概ね同じ直径を有しており、搬送方向に一定のピッチで等間隔に配置されている。搬送ローラ32は、その軸線回りに回転可能に支持されており、駆動装置34の駆動力が伝達されることによって回転する。
【0021】
駆動装置34は、搬送ローラ32を駆動する駆動装置(例えば、モータ)である。駆動装置34は、動力伝達機構を介して、搬送ローラ32に接続されている。駆動装置34の駆動力が動力伝達機構を介して搬送ローラ32に伝達されると、搬送ローラ32は回転するようになっている。動力伝達機構としては、公知のものを用いることができ、例えば、スプロケットとチェーンによる機構が用いられている。駆動装置34は、搬送ローラ32が略同一の速度で回転するように、搬送ローラ32のそれぞれを駆動する。駆動装置34は、制御装置60によって制御されている。
【0022】
給気装置40は、被処理物2の搬送方向に対して直交する直交面に沿って配置されている。図1に示すように、熱処理部12には、複数の給気装置40が設置されており、複数の給気装置40は、被処理物2の搬送方向(X方向)に間隔を空けて配置されている。図2に示すように、給気装置40は、ガス供給源42と、給気流路44と、複数の調整弁46a~46eを備えている。
【0023】
給気流路44は、調整弁46を介してガス供給源42から雰囲気ガスを熱処理部12の空間24内に供給する。具体的には、給気流路44は、一端がガス供給源42に接続され、他端側には複数に分岐した分岐流路45a~45eが設けられている。本実施例では、給気流路44は、5つの分岐流路45a~45eに分岐している。各分岐流路45a~45eには、調整弁46a~46eが設置されており、調整弁46a~46eより他端側は、底壁16内に配置されている。各分岐流路45a~45eの他端には、空間24に連通する給気口48a~48eが設けられている。ガス供給源42内の雰囲気ガスは、給気流路44を通って各分岐流路45a~45eに分岐され、各給気口48a~48eから空間24内に供給される。
【0024】
各給気口48a~48eは、被処理物2が搬送ローラ32上に載置されたときに、搬送方向と直交するY方向に並んだ被処理物2の間、又は、側壁18a、18bと被処理物2との間の位置するように設けられている。具体的には、給気口48aは、側壁18aと被処理物2aが載置される位置との間に配置され、給気口48bは、被処理物2aが載置される位置と被処理物2bが載置される位置との間に配置され、給気口48cは、被処理物2bが載置される位置と被処理物2cが載置される位置との間に配置され、給気口48dは、被処理物2cが載置される位置と被処理物2dが載置される位置との間に配置され、給気口48eは、被処理物2dが載置される位置と側壁18bとの間に配置される。このように各給気口48a~48eを配置することによって、被処理物2が熱処理部12内を搬送されるときに、各給気口48a~48eから供給される雰囲気ガスが、搬送方向と直交する方向に並んだ被処理物2の間や、側壁18a、18bと被処理物2との間に吹き込まれる。
【0025】
被処理物2(具体的には、匣鉢内に収容される物質)は、熱処理中に加熱されることにより、ガス(以下、反応ガスともいう)を発生することがある。被処理物2から発生した反応ガスが被処理物2の付近に留まると、被処理物2をガス供給源42から供給される雰囲気ガスに接触させることができなくなる。このため、被処理物2をガス供給源42から供給される雰囲気ガス下におくためには、被処理物2から発生する反応ガスを掃気する必要がある。各給気口48a~48eから、搬送方向と直交するY方向に並んだ被処理物2の間や、側壁18a、18bと被処理物2との間に雰囲気ガスを吹き込むことによって、供給される雰囲気ガスが被処理物2の側面(特に、搬送ローラ32上に並んで載置される被処理物2の間の側面)の近傍を通過し、被処理物2から発生する反応ガスが掃気され易くなる。なお、天井壁14には、図示しない排気口が複数設けられ、各空間24から雰囲気ガス(反応ガスを含む)が排気されるようになっている。
【0026】
調整弁46a~46eは、各分岐流路45a~45eに設置されている。調整弁46a~46eは、制御装置60に接続されており、制御装置60によって開度が調整される。調整弁46a~46eの開度が調整されることで、各給気口48a~48eから供給される雰囲気ガスの流量が調整される。
【0027】
上述したように、各給気口48a~48eは、搬送方向と直交するY方向に並んだ被処理物2の間や、側壁18a、18bと被処理物2との間に雰囲気ガスを吹き込むように配置されている。生産性を向上させるため、搬送方向と直交するY方向に並んだ被処理物2の間の幅は狭くされており、図2に示すように、側壁18a、18bと被処理物2との間の幅より狭い。このため、搬送方向と直交する方向に並んだ被処理物2の間に雰囲気ガスを吹き込むように配置される給気口48b~48dからの雰囲気ガスの流量は、側壁18a、18bと被処理物2との間に雰囲気ガスを吹き込むように配置される給気口48a、48eからの雰囲気ガスの流量より大きくなるように、各調整弁46a~46eが調整される。本実施例では、給気口48b~48dからの雰囲気ガスの流量が、給気口48a、48eからの雰囲気ガスの流量の略2倍となるように、各調整弁46a~46eが調整される。
【0028】
制御装置60は、例えば、CPU、ROM、RAMを備えたコンピュータによって構成されている。図3に示すように、制御装置60は、ヒータ26a、26bと、駆動装置34と、調整弁46a~46eに接続されており、ヒータ26a、26bと、駆動装置34と、調整弁46a~46eを制御している。すなわち、制御装置60は、ヒータ26a、26bを制御することにより、各空間24の雰囲気温度を制御している。制御装置60は、駆動装置34を制御することにより、熱処理部12内を搬送される被処理物2の搬送速度を制御している。制御装置60は、調整弁46a~46eを制御することにより、各給気口48a~48eから供給される雰囲気ガスの流量を制御している。
【0029】
制御装置60による調整弁46a~46eの制御について、さらに詳細に説明する。制御装置60は、被処理物2が熱処理部12内を搬送される間、各調整弁46a~46eの開度を周期的に変化させる。詳細には、第1の時間の間、各給気口48a~48eから供給される雰囲気ガスの流量が第1の給気量となるように各調整弁46a~46eを調整する第1の状態と、第2の時間の間、各給気口48a~48eから供給される雰囲気ガスの流量が第2の給気量となるように各調整弁46a~46eを調整する第2の状態が繰り返される。
【0030】
図4(a)に示すように、本実施例では、各調整弁46a~46eが開かれた状態と閉じられた状態が繰り返される。図4(a)は、給気口48b、48c、48dから供給される雰囲気ガスの流量の変化を示している。なお、給気口48a、48eから供給される雰囲気ガスの流量の変化については、図示を省略している。図4(a)では、時間0~t1、時間t1~t2、時間t2~t3、時間t3~t4は、同じ長さとなっている。グラフAで示すように、本実施例では、時間t1までの間は、各調整弁46b、48c、46dは閉じられ、各給気口48b、48c、48dから供給される雰囲気ガスの流量は0となっている。時間t1になると、各調整弁46b、46c、46dが開かれ、各給気口48b,48c,48dから供給される雰囲気ガスの流量は2Qとなる。この状態が時間t2まで維持され、時間t2になると、各調整弁46b、46c、46dは再び閉じられ、各給気口48b、48c、48dから供給される雰囲気ガスの流量は0となる。そして、時間t3になると、各調整弁46b,46c,46dが開かれ、各給気口48b、48c、48dから供給される雰囲気ガスの流量は2Qとなる。このように、調整弁46b,46c,46dは、各給気口48b、48c、48dから供給される雰囲気ガスの流量が、2Qとなる状態(第1の状態)と、0となる状態(第2の状態)を繰り返すように制御される。
【0031】
なお、上述したように、給気口48a、48eから供給される雰囲気ガスの流量は、給気口48b~48dから供給される雰囲気ガスの流量の半分である。このため、調整弁46a、46eの開度は、第1の状態において給気口48a、48eから供給される雰囲気ガスの流量がQとなるように制御される。調整弁46a、46eは、給気口48a、48eから供給される雰囲気ガスの流量が、給気口48b~48dから供給される雰囲気ガスの流量と同様のタイミングで、第1の状態(Qとなる状態)と、第2の状態(0となる状態)を繰り返すように制御される。
【0032】
また、制御装置60は、被処理物2が、同一の給気装置40が備える(同一の直交面に配置される)給気口48a~48eが配置される位置を通過する間に、少なくとも1回は第1の状態(各給気口48a~48eから雰囲気ガスを吹き出している状態)となるように、第1の状態の長さ(時間)及び第2の状態の長さ(時間)を制御する。これにより、給気装置40は、被処理物2が給気装置40が配置される直交面を通過する間に、少なくとも1回は被処理物2の側面の近傍に雰囲気ガスを吹き付けることができる。
【0033】
例えば、制御装置60が、被処理物2が熱処理部12内を搬送される間、各調整弁46a~46eの開度を変化させない場合(以下、比較例の場合ともいう)、各給気口48a~48eから供給される雰囲気ガスの流量は、常に一定となる。図4(a)で示す例では、グラフBで示すように、各給気口48b~48dから供給される雰囲気ガスの流量はQとなり、図示は省略するが、給気口48a、48eから供給される雰囲気ガスの流量は0.5Qとなる。この場合、各給気口48a~48eから同時に供給される雰囲気ガスの流量の合計は、4Q(=0.5Q+Q+Q+Q+0.5Q)となる。
【0034】
一方、本実施例では、各給気口48a~48eから雰囲気ガスを供給する第1の状態では、各給気口48a~48eから同時に供給される雰囲気ガスの流量に合計は、8Q(=Q+2Q+2Q+2Q+Q)となる(グラフA参照)。このため、第1の状態(例えば、時間t1~t2の間)では給気口48a~48eから合計8Qの雰囲気ガスを供給し、第2の状態(例えば、時間t2~t3の間)では雰囲気ガスを供給しない。制御装置60は、第1の状態と第2の状態を交互に繰り返すように各調整弁46a~46eの開度を制御しているため、被処理物2が熱処理部12内を搬送される間に各給気口48a~48eから雰囲気ガスが供給される時間は、比較例の場合の半分となる。このため、第1状態において各給気口48a~48eから同時に供給される雰囲気ガスの流量を比較例の場合の倍にしても、熱処理中に熱処理部12内に供給される雰囲気ガスの供給量を比較例の場合と同量にすることができる。
【0035】
本実施例では、第1の状態において、各給気口48a~48eから供給される雰囲気ガスの流量が、比較例の場合の2倍であるため、第1の状態の各給気口48a~48eから供給される雰囲気ガスの流速も比較例の場合の倍にすることができる。図4(b)は、給気口48b~48dから供給される雰囲気ガスの流速の変化を示している。なお、図示は省略するが、給気口48a、48eは、図4(b)で示すグラフの半分の流速となる。図4(b)に示すように、グラフCで示す本実施例の給気口48b~48dの流速は、第1の状態(例えば、時間t1~t2の間)は2Vであり、第2の状態(例えば、時間t2~t3の間)では0であり、これらを繰り返す。一方、グラフDで示す比較例の場合の流速は、常にVとなる。すなわち、比較例の場合の流速は、本実施例の第1の状態のときの流速2Vの半分となる。これは、比較例の場合の流量が、本実施例の第1の状態のときの流量2Qの半分のQであるためである。
【0036】
このように、本実施例では、制御装置60が、被処理物2が熱処理部12内を搬送される間、各調整弁46a~46eの開度を周期的に変化させることにより、熱処理中に熱処理部12内に供給される雰囲気ガスの供給量を増加させることなく、各給気口48a~48eから供給される雰囲気ガスの流速を大きくすることができる。これにより、被処理物2の側面の近傍を通過する雰囲気ガスの速度が大きくなり、被処理物2から発生する反応ガスをより掃気し易くすることができる。また、各給気口48a~48eから供給される雰囲気ガスの流速が周期的に変化するため、熱処理部12の空間24内の雰囲気ガスが攪拌され易くなる。このため、空間24内の温度分布を均一にし易くすることができる。
【0037】
なお、本実施例では、第1の状態において各給気口48a~48eから雰囲気ガスを供給し、第2の状態において各給気口48a~48eからの雰囲気ガスの供給を停止したが、このような構成に限定されない。例えば、第1状態と第2の状態のいずれの場合にも各給気口48a~48eから雰囲気ガスを供給してもよい。すなわち、制御装置60は、第2の状態における各給気口48a~48eからの雰囲気ガスの供給量が、第1の状態における各給気口48a~48eからの雰囲気ガスの供給量と異なる量となるように、各調整弁46a~46eの開度を制御してもよい。
【0038】
また、本実施例では、被処理物2は、上下方向に4つ重ねられると共に、搬送方向と直交する方向に4つ並んだ状態で搬送ローラ32上に載置されていたが、このような構成に限定されない。搬送ローラ32上に被処理物2を載置する際に、搬送方向と直交する方向に並べる被処理物2の数は限定されるものではなく、4つより多くてもよいし、4つより少なくてもよい。この場合、分岐流路45が、搬送方向と直交する方向に並べる被処理物2の数に合わせて設けられ、各分岐流路45の他端の各給気口48が、搬送方向と直交する方向に並んだ被処理物2の間の位置、及び、側壁18a、18bと被処理物2との間の位置するように配置されればよい。また、搬送ローラ32上に被処理物2を載置する際に、上下方向に重ねる被処理物2の数も限定されるものではなく、4つより多くてもよいし、4つより少なくてもよい。
【0039】
(実施例2)
上記の実施例1では、各分岐流路45a~45eに調整弁46a~46eが設置されていたが、このような構成に限定されない。例えば、図5に示すように、同一の給気装置140、240(被処理物2の搬送方向に対して直交する同一の直交面に沿って配置される給気装置140、240)が備える給気口148、248は、同一の調整弁146、246によって給気量が調整されてもよい。なお、本実施例では、給気装置140、240の構成が、実施例1の給気装置40の構成と相違しており、その他の構成は略一致している。そこで、実施例1の熱処理炉10と同一の構成については、その説明を省略する。また、本実施例では、被処理物2が、上下方向に2つ重ねられると共に、搬送方向と直交する方向に6つ並んだ状態で搬送ローラ32上に載置された場合を例にして、給気装置40の構成について説明する。
【0040】
図5に示すように、本実施例の熱処理炉110には、被処理物2の搬送方向に対して直交する同一の直交面に沿って、2つの給気装置140、240が設置されている。また、図示は省略するが、上記の実施例1と同様に本実施例においても、熱処理部12には、複数の給気装置140、240が設置されており、複数の給気装置140、240は、被処理物2の搬送方向(X方向)に間隔を空けて配置されている。
【0041】
給気装置140は、ガス供給源42(図示省略)と、給気流路144と、2つの調整弁146a、146bを備えている。給気流路144は、調整弁146a、146bを介してガス供給源42から雰囲気ガスを熱処理部12の空間24内に供給する。給気流路144は、両端が熱処理部12外に配置され、その間の部分が側壁18a、18bを貫通して空間24内に配置されている。具体的には、給気流路144は、側壁18a、18bの底壁16の近傍を貫通し、搬送ローラ32と略平行に底壁16の内壁に沿って空間24内に配置されている。
【0042】
給気流路144の空間24内に配置される部分の上面には、複数の給気口148a~148gが設けられている。給気流路144内の雰囲気ガスは、各給気口148a~148gから上方に向かって吹き出される。各給気口148a~148gは、被処理物2が搬送ローラ32上に載置されたときに、搬送方向と直交する方向に並んだ被処理物2の間、又は、側壁18a、18bと被処理物2との間の位置するように設けられている。本実施例では、被処理物2が、搬送方向と直交する方向に6つ並んだ状態で搬送ローラ32上に載置されているため、給気流路144には、7つの給気口148a~148gが設けられている。被処理物2が熱処理部12内を搬送されるときに、各給気口148a~148gから供給される雰囲気ガスは、搬送方向と直交する方向に並んだ被処理物2の間と、側壁18a、18bと被処理物2との間に吹き込まれる。
【0043】
調整弁146a、146bは、給気流路144の熱処理部12外に配置されている部分に設置されている。具体的には、調整弁146aは、給気流路144の+Y方向側で熱処理部12外に配置されている部分に設置され、調整弁146bは、給気流路144の-Y方向側で熱処理部12外に配置されている部分に設置されている。給気流路144の両端のそれぞれは、調整弁146a、146bを介してガス供給源42(図示省略)に接続されている。すなわち、ガス供給源42から供給される雰囲気ガスは、給気流路144の両端のそれぞれに供給されるようになっている。各給気口148a~148gの開口面積は、各給気口148a~148gから略同一流量の雰囲気ガスが供給されるように調整されている。なお、本実施例においても、給気口148a,148gと比較して給気口148b~148fから供給される雰囲気ガスの流量が多くなるように、給気口148a,148gと比較して給気口148b~148fの開口面積が大きくされていてもよい。調整弁146a、146bは、制御装置60によって開度が同時に変化するように制御されている。本実施例においても、制御装置60は、被処理物2が熱処理部12内を搬送される間、調整弁146a、146bの開度を周期的に変化させる。具体的には、調整弁146a、146bは、各給気口148a~148gから供給される雰囲気ガスの流量が、第1の状態(雰囲気ガスが供給される状態)と、第2の状態(雰囲気ガスが供給される状態)を繰り返すように制御される。
【0044】
給気装置240は、ガス供給源42(図示省略)と、給気流路244と、2つの調整弁246a、246bを備えている。給気流路244は、調整弁146a、146bを介してガス供給源42から雰囲気ガスを熱処理部12の空間24内に供給する。給気流路244は、側壁18a、18bの天井壁14の近傍を貫通し、搬送ローラ32と略平行に天井壁14の内壁に沿って空間24内に配置されている。給気流路244の両端は、熱処理部12外に配置され、熱処理部12外に配置されている部分には、調整弁246a、246bが設置されている。給気流路244の空間24内に配置される部分の下面には、複数(本実施例では、7つ)の給気口248a~248gが設けられている。給気流路244内の雰囲気ガスは、各給気口248a~248gから下方に向かって吹き出される。各給気口248a~248gは、被処理物2が搬送ローラ32上に載置されたときに、搬送方向と直交する方向に並んだ被処理物2の間、又は、側壁18a、18bと被処理物2との間の位置するように設けられている。調整弁246a、246bの開度は、調整弁146a、146bの開度と同時に変化するように制御されている。したがって、被処理物2が熱処理部12内を搬送される間、給気装置140の調整弁146a、146bの開度と、給気装置240の調整弁246a、246bの開度は、同時に変化する。
【0045】
本実施例においても、第1の状態において、比較例の場合(調整弁146a、146b及び調整弁246a、246bの開度を変化させない場合)より各給気口148a~148g及び各給気口248a~248gから供給される雰囲気ガスの流量を増加させることができ、これにより、各給気口148a~148g及び各給気口248a~248gから供給される雰囲気ガスの流速を大きくすることができる。このため、被処理物2から発生する反応ガスを掃気し易くすることができる。また、本実施例では、雰囲気ガスが、熱処理部12を搬送方向に沿って見たときに、給気流路144、244の左右から供給される。このため、同一の給気装置140、240から供給される雰囲気ガスの左右(Y方向)のバランスが悪化することを防止することができ、雰囲気ガスを熱処理部12内に均等に供給することができる。
【0046】
なお、本実施例では、2つの給気装置140、240が設置されていたが、このような構成に限定されない。2つの給気装置140、240のうちのいずれか1つのみが設置されていてもよい。
【0047】
(実施例3)
上記の実施例1及び2では、同一の給気装置40、140、240に設けられる複数の給気口48、148、248から供給される雰囲気ガスの流量は同時に変化していたが、このような構成に限定されない。例えば、制御装置60は、同一の給気装置40に設けられる複数の給気口48から供給される雰囲気ガスの流量が、異なるタイミングで変化するように各調整弁46を制御してもよい。
【0048】
図2に示す熱処理炉10を例にして説明する。本実施例では、給気口48a~48eを、給気口48a、48c、48eの群(以下、第1群ともいう)と、給気口48b、48dの群(以下、第2群ともいう)に分類する。制御装置60は、第1群に分類される給気口48a、48c、48eから供給される雰囲気ガスの流量が同一の流量となり、かつ、同時に変化し、第2群に分類される給気口48b、48dから供給される雰囲気ガスの流量が同一の流量となり、かつ、同時に変化するように、調整弁46a~46eを制御する。また、制御装置60は、第1群に分類される給気口48a、48c、48eから供給される雰囲気ガスの流量と、第2群に分類される給気口48b、48dから供給される雰囲気ガスの流量は、異なる流量となるように、調整弁46a~46eを制御する。
【0049】
具体的には、第1群に分類される給気口48a、48c、48eから供給される雰囲気ガスの流量は、実施例1の給気口48a、48c、48eから供給される雰囲気ガスの流量と同様に変化する。すなわち、第1の状態と第2の状態とを交互に繰り返し、第1の状態において、給気口48a、48eから供給される雰囲気ガスの流量はQとなり、給気口48cから供給される雰囲気ガスの流量は2Qとなる。このため、第1の状態において、第1群に分類される給気口48a、48c、48eから供給される雰囲気ガスの流量の合計は、4Q(=Q+2Q+Q)となり、図6(a)のグラフEで示すように変化する。
【0050】
第2群に分類される給気口48b、48dから供給される雰囲気ガスの流量も、第1の状態と第2の状態と交互に繰り返すように変化するが、第1の状態になるタイミングと第2の状態になるタイミングが、第1群に分類される給気口48a、48c、48eから供給される雰囲気ガスの流量とは異なる。具体的には、第2群に分類される給気口48b、48dから供給される雰囲気ガスの流量は、第1群に分類される給気口48a、48c、48eから供給される雰囲気ガスの流量が第1の状態となるときに第2の状態となり、第1群に分類される給気口48a、48c、48eから供給される雰囲気ガスの流量が第2の状態となるときに第1の状態となる。第1の状態において給気口48b、48dから供給される雰囲気ガスの流量は2Qであるため、第1の状態において、第2群に分類される給気口48b、48dから供給される雰囲気ガスの流量の合計は、4Q(=2Q+2Q)となり、図6(a)のグラフFで示すように変化する。
【0051】
したがって、本実施例では、図6(a)のグラフE、Fで示すように、第1の状態において給気口48a~48eから同時に供給される雰囲気ガスの流量の合計は、略一定(4Q)となる。上記の実施例1で説明したように、比較例の場合(調整弁146a、146b及び調整弁246a、246bの開度を変化させない場合)、各給気口48a~48eから同時に供給される雰囲気ガスの流量の合計は、4Q(=0.5Q+Q+Q+Q+0.5Q)である。このため、本実施例においても、熱処理中に熱処理部12内に供給される雰囲気ガスの供給量は増加しない。
【0052】
一方、第1の状態においては、各給気口48a~48eから供給される雰囲気ガスの流量は、比較例の場合の倍であるため、第1群に分類される給気口48a、48c、48eから供給される雰囲気ガスの流速(図6(b)のグラフH参照)も、第2群に分類される給気口48b、48dから供給される雰囲気ガスの流速(図6(b)のグラフI参照)も、比較例の場合の流速V(図6(b)のグラフJ参照)の倍である2Vとなる。このため、本実施例においても、熱処理中に熱処理部12内に供給される雰囲気ガスの供給量を増加させることなく、各給気口48a~48eから供給される雰囲気ガスの流速を大きくすることができる。
【0053】
また、本実施例では、第1の状態において第1群に分類される給気口48a、48c、48eと、第2群に分類される給気口48b、48dのいずれかから雰囲気ガスが供給され、給気装置40が備える給気口48a~48eのいずれからも雰囲気ガスが供給されない状態となることはほとんどない。熱処理部12の空間24内に供給される雰囲気ガスが停止すると、隣接する空間24との間で雰囲気ガスが移動し易くなる。本実施例では、給気口48a~48ebのいずれかから常に雰囲気ガスが供給されるため、隣接する空間24との間で雰囲気ガスを移動し難くすることができる。
【0054】
(実施例4)
上記の実施例3では、同一の給気装置40に設けられる複数の給気口48から供給される雰囲気ガスの流量が、異なるタイミングで変化するように各調整弁46が制御されていたが、このような構成に限定されない。例えば、制御装置60は、被処理物2の搬送方向(X方向)に間隔を空けて隣接して配置される給気装置40において、供給される雰囲気ガスの流量が、異なるタイミングで変化するように各調整弁46が制御してもよい。
【0055】
図1を参照して説明する。図1は、実施例1の熱処理炉10を示しているが、本実施例では、実施例2の熱処理炉110が備える給気装置140、240であっても同様に制御可能であり、また、給気装置140、240でのいずれか1つのみであっても同様に制御可能である。以下では、実施例1の熱処理炉10が備える給気装置40を例にして説明する。
【0056】
熱処理部12には、複数の給気装置40が、被処理物2の搬送方向(X方向)に間隔を空けて配置されている。本実施例では、隣接する給気装置40が異なる群に分類されるように、複数の給気装置40を2つの群に分類する。例えば、最も搬送方向の上流に配置される給気装置40aは、第1群に分類し、給気装置40aに隣接して配置される給気装置40bは、第2群に分類し、給気装置40bに隣接して配置される給気装置40cは、第1群に分類する。このように、熱処理部12に配置される複数の給気装置40を第1群と第2群に分類する。また、各空間24内に2つ以上の給気装置40を設置し、各空間24内には、第1群に分類される給気装置40と第2群に分類される給気装置40の両方が配置されるようにする。制御装置60は、第1群に分類される給気装置40の給気口48から供給される雰囲気ガスの流量と、第2群に分類される給気装置40の給気口48から供給される雰囲気ガスの流量が、異なるタイミングで変化するように、調整弁46を制御する。なお、本実施例では、制御装置60は、第1群に分類される給気装置40の給気口48から供給される雰囲気ガスの流量は、上記の実施例3の第1群に分類される給気口48a、48c、48eから供給される雰囲気ガスの流量と同様に変化し、第2群に分類される給気装置40の給気口48から供給される雰囲気ガスの流量は、第2群に分類される給気口48b、48dから供給される雰囲気ガスの流量と同様に変化するように、各調整弁46を制御する。
【0057】
本実施例においても、第1群に分類される1つの給気装置40の各給気口48から供給される雰囲気ガスの流量の合計も、第2群に分類される1つの給気装置40の各給気口48から供給される雰囲気ガスの流量の合計も、比較例の場合(調整弁146a、146b及び調整弁246a、246bの開度を変化させない場合)と同量となる。一方で、各給気口48から供給される雰囲気ガスの流速は、比較例の場合の倍になる。このため、熱処理中に熱処理部12内に供給される雰囲気ガスの供給量を増加させることなく、各給気口48から供給される雰囲気ガスの流速を大きくすることができる。また、本実施例においても、複数の給気装置40のいずれかから常に雰囲気ガスが供給されるため、隣接する空間24との間で雰囲気ガスを移動し難くすることができる。
【0058】
(実施例5)
上記の実施例1~4では、第1の状態と第2の状態は、同じ長さ(時間)であったが、このような構成に限定されない。例えば、雰囲気ガスを供給する第1の状態の長さは、雰囲気ガスの供給を停止する(又は、雰囲気ガスの供給量が第1の状態より少ない)第2の状態より短くてもよいし、第2の状態より長くてもよい。
【0059】
図7(a)~図7(c)は、第1の状態の長さが第2の状態より短い場合における雰囲気ガスの流量又は流速の変化を示している。図7(a)は、各給気口48、148、248から供給される雰囲気ガスの流量の変化を示している。第1の状態となる時間t5~t6の長さは、第2の状態となる時間t6~t7の長さより短く設定されている。また、図7(b)は、複数の給気口48、148、248又は複数の給気装置40、140、240を2つの群に分類して雰囲気ガスを供給する場合の各群の雰囲気ガスの流量の合計の変化を示し、図7(c)は、図7(b)の場合の各給気口48、148、248から供給される雰囲気ガスの流速を示している。図7(a)~図7(c)に示すように、本実施例においても、熱処理中に熱処理部12内に供給される雰囲気ガスの供給量を増加させることなく、各給気口48から供給される雰囲気ガスの流速を大きくすることができる。
【0060】
また、本実施例では、熱処理中に雰囲気ガスが供給される時間の合計が短くなる。このため、熱処理中に熱処理部12内に供給される雰囲気ガスの供給量を低減することができ、供給された雰囲気ガスを雰囲気温度に昇温するために必要がエネルギーを低減することができる。なお、熱処理中に熱処理部12内に供給される雰囲気ガスの供給量を増加させない範囲で、第1状態において各給気口48、148、248から供給される雰囲気ガスの流量を増加させてもよい。この場合には、各給気口48、148、248から供給される雰囲気ガスの流速をより大きくすることができる。
【0061】
(実施例6)
上記の実施例1~5では、雰囲気ガスを上下方向に供給するように給気口48、148、248が設置されていたが、このような構成に限定されない。例えば、図8に示すように、被処理物2の側方から雰囲気ガスを供給する給気装置340が設けられていてもよい。この場合にも、給気装置340の給気口は、被処理物2が搬送ローラ32上に載置されたときに、上下方向に並んだ被処理物2の間に位置するように設けられる。なお、本実施例では、被処理物2の上下方向(図8では下方のみ)から雰囲気ガスを供給する給気装置40と、被処理物2の側方から雰囲気ガスを供給する給気装置340の両方が設置されているが、このような構成に限定されない。被処理物2の上下方向から雰囲気ガスを供給する給気装置40、140、240、340を設置せずに、被処理物2の側方から雰囲気ガスを供給する給気装置340のみが設置されていてもよい。
【0062】
なお、上記の実施例1~6では、全ての給気口48、148、248について雰囲気ガスの給気量が周期的に変化していたが、このような構成に限定されない。複数の給気口48、148、248から選択された給気口48、148、248のみについて、雰囲気ガスの給気量が周期的に変化するように制御されていてもよい。例えば、被処理物2から反応ガスが発生しやすい位置に設置される給気口48、148、248のみについて、雰囲気ガスの給気量が周期的に変化するように制御されていてもよい。また、熱処理部に供給される雰囲気ガスの最大流速が搬入口から搬出口に向かって変化するように構成してもよい。例えば、搬入口から設定された中間位置まで徐々に最大流速が大きくなり、中間位置から搬出口まで最大流速が小さくなるように、各給気装置の雰囲気ガスを供給する時間と、雰囲気ガスの供給しない時間の比を調整するようにしてもよい。
【0063】
また、上記の実施例では、搬送方向に間隔を空けて配置された複数の給気装置のそれぞれにおいて給気口の位置が同一の位置となるように構成されていたが、このような構成に限られず、給気口の位置及び数が搬送方向の位置に応じて変化するようにしてもよい。
【0064】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0065】
2:被処理物
10、110、210:熱処理炉
12:熱処理部
14:天井壁
16:底壁
18:側壁
20:開口
22:隔壁
24:空間
26:ヒータ
30:搬送装置
32:搬送ローラ
34:駆動装置
40、140、240、340:給気装置
42:ガス供給源
44、144、244:給気流路
45:分岐流路
46、146、246:調整弁
48、148、248:給気口
60:制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8