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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180170
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】カルバメートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 269/04 20060101AFI20221129BHJP
   C07C 271/44 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C07C269/04
C07C271/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087121
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(72)【発明者】
【氏名】植松 翼
(72)【発明者】
【氏名】中岡 弘一
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC56
4H006BB17
4H006BC10
4H006BD10
4H006RA20
4H006RA54
4H006RB04
(57)【要約】
【課題】尿素結合を有する副生物の生成を抑制しながら、効率的にカルバメートを製造する方法を提供する。
【解決手段】カルバメートの製造方法は、アミン化合物とフェノール性水酸基を有する化合物とを反応させて、アミン化合物のフェノール塩を得る工程(X)と、炭酸ジエステルと前記アミン化合物のフェノール塩とを反応させて、カルバメートを得る工程(Y)と、をこの順に含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミン化合物とフェノール性水酸基を有する化合物とを反応させて、アミン化合物のフェノール塩を得る工程(X)と、
炭酸ジエステルと前記アミン化合物のフェノール塩とを反応させて、カルバメートを得る工程(Y)と、
をこの順に含む、カルバメートの製造方法。
【請求項2】
前記アミン化合物が下記一般式(I)で示される化合物を含む、請求項1に記載のカルバメートの製造方法。
【化1】
(一般式(I)中、n11は1以上の整数である。R11はn11価の有機基である。)
【請求項3】
前記一般式(I)において、n11が2又は3である、請求項2に記載のカルバメートの製造方法。
【請求項4】
前記炭酸ジエステルが下記一般式(II)で示される化合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のカルバメートの製造方法。
【化2】
(一般式(II)中、R21及びR22はそれぞれ独立に、ヒドロキシ化合物から1つのヒドロキシ基を除いた残基である。)
【請求項5】
前記フェノール性水酸基を有する化合物が下記一般式(III)で示される化合物を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のカルバメートの製造方法。
【化3】
(一般式(III)中、R31は、芳香環に直接結合したヒドロキシ基を1つ以上有する芳香族化合物から、1つの前記ヒドロキシ基を除いた残基である。)
【請求項6】
前記工程(X)において、反応温度が0℃以上120℃以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のカルバメートの製造方法。
【請求項7】
前記工程(X)において、前記フェノール性水酸基を有する化合物の使用量が、前記アミン化合物が有するアミノ基のモル量に対して、1倍モル等量以上5倍モル等量以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のカルバメートの製造方法。
【請求項8】
前記工程(X)において、前記フェノール性水酸基を有する化合物の使用量が、前記アミン化合物が有するアミノ基のモル量に対して、1倍モル等量以上2倍モル等量以下である、請求項1~7のいずれか一項に記載のカルバメートの製造方法。
【請求項9】
前記工程(Y)において、前記炭酸ジエステルを含む反応器に、該反応器内の温度を確認しながら、0.5時間以上5時間以下で前記アミン化合物のフェノール塩を全量滴下する速度で、前記アミン化合物のフェノール塩を連続的に供給することで反応を行う、請求項1~8のいずれか一項に記載のカルバメートの製造方法。
【請求項10】
前記工程(Y)において、反応温度が30℃以上120℃以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載のカルバメートの製造方法。
【請求項11】
前記工程(Y)において、反応温度が60℃以上90℃以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載のカルバメートの製造方法。
【請求項12】
前記工程(Y)において、前記炭酸ジエステルの使用量が、前記アミン化合物のフェノール塩が有するアミノ基のモル量に対して、1倍モル等量以上10倍モル等量以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載のカルバメートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルバメートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イソシアネートは、ポリウレタンフォーム、塗料、接着剤、レンズ等の製造原料として広く用いられている。イソシアネートの主な製造方法はアミン化合物とホスゲンを反応させる方法(ホスゲン法)であり、世界で取引される多くのイソシアネートはホスゲン法で製造している。しかし、ホスゲン法には問題点が多い。
【0003】
ホスゲン法の問題点としては、第1に、原料としてホスゲンを大量に使用することである。ホスゲンは極めて毒性が高く、従業者への暴露を防ぐためにその取扱いには特別の注意を要し、廃棄物を除害するための特別の装置も必要である。
第2に、ホスゲン法においては、腐食性の高い塩化水素が大量に副生する。そのため、該塩化水素を除害するためのプロセスが必要となる。その上、製造されたイソシアネートには多くの場合、加水分解性塩素が含有されることになり、ホスゲン法で製造されたイソシアネートを使用した場合に、ポリウレタン製品の耐候性、耐熱性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0004】
このような背景から、ホスゲンを使用しないイソシアネート化合物の製造方法が望まれている。ホスゲンを使用しないイソシアネート化合物の製造方法の一つとして、アミンと炭酸ジエステルからカルバメートを合成し、得られたカルバメートを熱分解する方法が提案されている。カルバメートの熱分解によってイソシアネートとヒドロキシ化合物が得られることは古くから知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【0005】
アミンと炭酸ジエステルからカルバメートを得る反応では、以下の反応式(1)に示される主反応の他に、生じたカルバメートと残存する原料のアミンが反応し、尿素結合を生成し、以下の反応式(2)で示される副反応が生じる。そのため、高効率にカルバメートを製造するためにはこの副反応を抑制することが必要である。
【0006】
【化1】
【0007】
なお、上記反応式(1)及び(2)中、R、R’及びR’’はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基である。
【0008】
また、アルキルジアミン等のポリアミンを原料としてポリカルバメートの合成を志向する場合には、分子内や分子間で尿素結合を形成する副反応が生じるため(例えば、以下の反応式(3)及び(4)等)、反応の選択性の制御は必須である。
【0009】
【化2】
【0010】
なお、上記反応式(3)及び(4)中、Rは二価の有機基である。R’及びR’’はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基である。
【0011】
上記のような副反応を抑制しながら高効率にカルバメートを得る方法の例としては、例えば、特許文献1には、ナトリウムメトキシドを触媒として用い、カルバメート化後に水を添加してナトリウムメトキシドを分解することで高純度のカルバメートを得る方法が提案されている。特許文献2では、アルキルアリールカーボネートをカルボン酸存在下で反応させることでカルバメートを得る方法が提案されている。
【0012】
また、特許文献3では芳香族ヒドロキシ化合物を溶媒に用い、炭酸ジアリールを使用することでジアミンのカルバメート体を高選択的に得る方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2015-137255号公報
【特許文献2】特開2011-201795号公報
【特許文献3】特開2013-107909号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Berchte der Deutechen Chemischen Gesellschaft,第3巻,653~658頁,1870年.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、特許文献1及び2に記載の方法では、カルバメートの製造後に、該カルバメートを熱分解してイソシアネートを得ることを考えると、混入によりイソシアネートの変性を招くような触媒成分は、微量成分でも使用することは望ましくない。
また、特許文献3に記載の方法では、適用範囲はジアミンのみであり、分子間反応の頻度が多く、より尿素成分の生成を抑制する必要があるトリアミン以上のポリアミンへは適用されていない。また、副反応抑制のために、特許文献3の実施例では50℃で反応を行っているが、炭酸ジアリールの融点が高いため、炭酸ジアリールの濃度はできるだけ低く抑える必要があり、それに伴ってアミン化合物の仕込み濃度が制限され、高濃度条件では実施できないという課題がある。
このように、炭酸ジエステルとアミン化合物を原料として、カルバメートを製造する方法は、解決すべき課題が多く、高効率なカルバメートの製造方法が求められている。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、尿素結合を有する副生物の生成を抑制しながら、効率的にカルバメートを製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) アミン化合物とフェノール性水酸基を有する化合物とを反応させて、アミン化合物のフェノール塩を得る工程(X)と、
炭酸ジエステルと前記アミン化合物のフェノール塩とを反応させて、カルバメートを得る工程(Y)と、
をこの順に含む、カルバメートの製造方法。
(2) 前記アミン化合物が下記一般式(I)で示される化合物を含む、(1)に記載のカルバメートの製造方法。
【0018】
【化3】
【0019】
(一般式(I)中、n11は1以上の整数である。R11はn11価の有機基である。)
【0020】
(3) 前記一般式(I)において、n11が2又は3である、(1)又は(2)に記載のカルバメートの製造方法。
(4) 前記炭酸ジエステルが下記一般式(II)で示される化合物を含む、(1)~(3)のいずれか一つに記載のカルバメートの製造方法。
【0021】
【化4】
【0022】
(一般式(II)中、R21及びR22はそれぞれ独立に、ヒドロキシ化合物から1つのヒドロキシ基を除いた残基である。)
【0023】
(5) 前記フェノール性水酸基を有する化合物が下記一般式(III)で示される化合物を含む、(1)~(4)のいずれか一つに記載のカルバメートの製造方法。
【0024】
【化5】
【0025】
(一般式(III)中、R31は、芳香環に直接結合したヒドロキシ基を1つ以上有する芳香族化合物から、1つの前記ヒドロキシ基を除いた残基である。)
【0026】
(6) 前記工程(X)において、反応温度が0℃以上120℃以下である、(1)~(5)のいずれか一つに記載のカルバメートの製造方法。
(7) 前記工程(X)において、前記フェノール性水酸基を有する化合物の使用量が、前記アミン化合物が有するアミノ基のモル量に対して、1倍モル等量以上5倍モル等量以下である、(1)~(6)のいずれか一つに記載のカルバメートの製造方法。
(8) 前記工程(X)において、前記フェノール性水酸基を有する化合物の使用量が、前記アミン化合物が有するアミノ基のモル量に対して、1倍モル等量以上2倍モル等量以下である、(1)~(7)のいずれか一つに記載のカルバメートの製造方法。
(9) 前記工程(Y)において、前記炭酸ジエステルを含む反応器に、該反応器内の温度を確認しながら、0.5時間以上5時間以下で前記アミン化合物のフェノール塩を全量滴下する速度で、前記アミン化合物のフェノール塩を連続的に供給することで反応を行う、(1)~(8)のいずれか一つに記載のカルバメートの製造方法。
(10) 前記工程(Y)において、反応温度が30℃以上120℃以下である、(1)~(9)のいずれか一つに記載のカルバメートの製造方法。
(11) 前記工程(Y)において、反応温度が60℃以上90℃以下である、(1)~(10)のいずれか一つに記載のカルバメートの製造方法。
(12) 前記工程(Y)において、前記炭酸ジエステルの使用量が、前記アミン化合物のフェノール塩が有するアミノ基のモル量に対して、1倍モル等量以上10倍モル等量以下である、(1)~(11)のいずれか一つに記載のカルバメートの製造方法。
【発明の効果】
【0027】
上記態様の製造方法によれば、尿素結合を有する副生物の生成を抑制しながら、効率的にカルバメートを製造する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施例71におけるアミン化合物のフェノール塩の製造装置の概略構成図である。
図2】実施例71におけるカルバメートの製造装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0030】
<カルバメートの製造方法>
本実施形態のカルバメートの製造方法(以下、単に「本実施形態の製造方法」と称する場合がある)は、以下の工程(X)と、工程(Y)と、をこの順に含む。
アミン化合物とフェノール性水酸基を有する化合物(以下、「フェノール性水酸基含有化合物」と称する場合がある)とを反応させて、アミン化合物のフェノール塩を得る工程(X);
炭酸ジエステルと前記アミン化合物のフェノール塩とを反応させて、カルバメートを得る工程(Y)。
【0031】
従来のカルバメートの製造方法では、上記反応式(2)~(4)で示される副反応が起こり、尿素結合を有する化合物が副生される。
これに対して、本実施形態の製造方法では、発明者らは、驚くべきことに、アミン化合物を、フェノール性水酸基含有化合物と中和させ、アミン化合物のフェノール塩とした後に、炭酸ジエステルと反応させることで、上記副反応を抑制し、カルバメートを生成する反応の選択性を向上させることを見出した。
【0032】
上記効果を奏する理由は明白ではないが、以下の反応式(5)及び(6)に示すように、アミノ基がフェノール性水酸基と塩を作ることで、求核性が抑制され、カルバメート化に比べ、活性化エネルギーの高い反応である尿素結合を作る副反応の進行が抑制され、カルバメートの選択率が高くなったことが考えられる。
なお、予めフェノール性水酸基含有化合物及びアミン化合物を混合することなく、単にフェノール性水酸基含有化合物を溶媒として、アミン化合物と炭酸ジエステルを混合し反応する場合も同様の効果が期待されるが、アミン化合物のフェノール塩の形成が不十分であること、及び、中和熱の発生により局所的に高温となることにより、副生物の生成が起こることが、発明者らの検討より明らかとなった。
【0033】
【化6】
【0034】
(反応式(5)中、n11は1以上の整数である。R11はn11価の有機基である。R31は、芳香環に直接結合したヒドロキシ基を1つ以上有する芳香族化合物から、1つの前記ヒドロキシ基を除いた残基である。
反応式(6)中、n11は1以上の整数である。R11はn11価の有機基である。R31は、芳香環に直接結合したヒドロキシ基を1つ以上有する芳香族化合物から、1つの前記ヒドロキシ基を除いた残基である。R21及びR22はそれぞれ独立に、ヒドロキシ化合物から1つのヒドロキシ基を除いた残基である。)
【0035】
すなわち、本実施形態の製造方法は、上記構成を有することで、尿素結合を有する副生物の生成を抑制しながら、効率的にカルバメートを製造することができる。
【0036】
次いで、本実施形態の製造方法の各工程について以下に詳細を説明する。
【0037】
[工程(X)]
工程(X)では、以下の反応式(5)に示すように、アミン化合物(以下の一般式(I)で示される化合物である;以降、「アミン化合物(I)」と称する場合がある)とフェノール性水酸基含有化合物(以下の一般式(III)で示される化合物である;以降、「フェノール性水酸基含有化合物(III)」と称する場合がある)とを反応させて、アミン化合物のフェノール塩(以下の一般式(V)で示される化合物である;以降、「アミン化合物のフェノール塩(V)」と称する場合がある)を得る。工程(X)における反応は、公知の中和反応である。
【0038】
【化7】
【0039】
(反応式(5)中、n11は1以上の整数である。R11はn11価の有機基である。R31は、芳香環に直接結合したヒドロキシ基を1つ以上有する芳香族化合物から、1つの前記ヒドロキシ基を除いた残基である。)
【0040】
工程(X)において、フェノール性水酸基含有化合物の使用量は、使用するアミン化合物及びフェノール性水酸基含有化合物の種類に応じて適宜設定することができるが、得られるアミン化合物のフェノール塩の溶解性を保つ観点から、アミン化合物が有するアミノ基のモル量に対して、1倍モル等量以上5倍モル等量以下であることが好ましく、最終的に得られるカルバメートの生成量を高めるために、アミン化合物及び炭酸ジエステル以外の化合物の使用量を抑制する観点から、1倍モル等量以上2倍モル等量以下であることがより好ましく、1倍モル等量以上1.5倍モル等量以下であることがさらに好ましい。
【0041】
工程(X)において、使用するフェノール性水酸基含有化合物は、1種類であってもよく、2種以上のフェノール性水酸基含有化合物の混合物であってもよい。
【0042】
工程(X)において、アミン化合物及びフェノール性水酸基含有化合物の、反応器への導入時の状態は、固体及び液体のどちらでも構わないが、中和反応を速やかに行うために、少なくとも一方が融点以上の温度下にて液体の状態で導入されることが好ましい。
【0043】
工程(X)において、いずれの反応温度であっても、従来法における上記反応式(2)~(4)で示される副反応を抑制しながらアミン化合物及びフェノール性水酸基含有化合物の中和反応を行うことができるが、0℃以上120℃以下であることが好ましく、20℃以上80℃以下であることがより好ましい。反応温度が上記上限値以上であることで、反応速度をより高めることができ、一方で、上記下限値以下であることで、発生する中和熱の制御をより容易に行うことができる。
反応温度を一定に保つために、反応器は、公知の冷却装置や加熱装置が設置されていてもよい。
【0044】
工程(X)において、反応圧力は、使用するアミン化合物及びフェノール性水酸基含有化合物の種類や、反応温度に応じて、適宜設定することができ、減圧、常圧、及び加圧下のいずれであってもよいが、通常、20Pa以上1×10Pa以下で行われる。
【0045】
工程(X)において、反応時間についても、原料の使用量や反応時間に応じて、適宜設定することができるが、通常、0.001時間以上50時間以下であり、0.01時間以上20時間以下であることが好ましく、0.1時間以上10時間以下であることがより好ましい。
【0046】
工程(X)において、製造効率の低下を防ぐために、アミン化合物及びフェノール性水酸基含有化合物以外に、反応溶媒を使用しないことが好ましいが、副生物の抑制を目的として反応溶媒を使用することも可能である。反応溶媒を用いる場合には、比較的融点の低い(-150℃以上50℃以下程度)フェノール性水酸基含有化合物、アミン化合物及び生成物であるアミン化合物のフェノール塩に不活性な化合物、並びに、それらの混合物を溶媒として用いることが好ましい。
【0047】
工程(X)における反応器としては、公知の槽型反応器が使用できる。反応器及びラインの材質は、原料や生成物に悪影響を及ぼさなければ、公知のどのようなものであってもよいが、SUS304、SUS316、SUS316L等のステンレス鋼が安価であり、好ましく使用できる。
【0048】
工程(X)で得られたアミン化合物のフェノール塩は、そのまま続く工程(Y)に用いてもよく、精製した後に続く工程(Y)に用いてもよい。アミン化合物のフェノール塩の精製方法としては、後述する「その他の工程」に記載の方法と同じものが例示される。
【0049】
アミン化合物のフェノール塩は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)等、公知の手法で構造を確認できる。
【0050】
[工程(Y)]
工程(Y)では、以下の反応式(6)に示すように、炭酸ジエステル(以下の一般式(II)で示される化合物である;以降、「炭酸ジエステル(II)」と称する場合がある)とアミン化合物のフェノール塩(V)とを反応させて、カルバメート(以下の一般式(IV)で示される化合物である;以降、「カルバメート(IV)」と称する場合がある)を得る。なお、アミン化合物のフェノール塩及び炭酸ジエステルからカルバメートを得る反応は、公知の置換反応である。
また、このとき、以下の反応式(6)に示すように、副生成物として、n11個の、下記一般式(III)で示される化合物(フェノール性水酸基含有化合物(III))と、n11個の、下記一般式(VI)で示される化合物(以下、「水酸基含有化合物(VI)」と称する場合がある)と、が生じる。
【0051】
【化8】
【0052】
(反応式(6)中、n11は1以上の整数である。R11はn11価の有機基である。R31は、芳香環に直接結合したヒドロキシ基を1つ以上有する芳香族化合物から、1つの前記ヒドロキシ基を除いた残基である。R21及びR22はそれぞれ独立に、ヒドロキシ化合物から1つのヒドロキシ基を除いた残基である。)
【0053】
工程(Y)において、炭酸ジエステルの使用量は、使用するアミン化合物のフェノール塩及び炭酸ジエステルの種類に応じて適宜設定することができるが、得られたカルバメートの精製を煩雑にしないために、アミン化合物のフェノール塩が有するアミノ基のモル量に対して、1倍モル等量以上10倍モル等量以下であることが好ましく、1倍モル等量以上2倍モル等量以下であることがより好ましい。
【0054】
工程(Y)において、使用する炭酸ジエステルは、1種類であってもよく、2種以上の炭酸ジエステルの混合物であってもよい。
【0055】
工程(Y)において、アミン化合物のフェノール塩は、液体の状態で、反応器に供給されることが好ましい。アミン化合物のフェノール塩及び炭酸ジエステルを液体状態で取り扱うために、工程(X)で使用されたものと同一の又は異なるフェノール性水酸基含有化合物を溶媒として用いてもよい。中でも、得られるカルバメートの精製が煩雑になることを防ぐために、工程(X)で使用されたものと同一のフェノール性水酸基含有化合物を溶媒として用いることが好ましい。或いは、槽型反応器に仕込んだ炭酸ジエステルを加熱し、アミン化合物のフェノール塩を槽型反応器へ滴下することで行うことができる。
【0056】
工程(Y)において、反応熱の発生により反応温度の制御が困難になることを防ぐために、反応器内の温度を確認しながら、炭酸ジエステルを含む反応器に、アミン化合物のフェノール塩を連続的に供給することで反応を行うことが好ましい。アミン化合物のフェノール塩の供給速度は、特に限定されないが、工程(Y)における反応時間の短縮及び反応温度の制御を両立する観点から、0.5時間以上5時間以下でアミン化合物のフェノール塩を全量滴下する速度であることが好ましい。
【0057】
工程(Y)において、アミン化合物のフェノール塩及び炭酸ジエステルの混合を良好に行う観点から、反応器に導入された炭酸ジエステルは、アミン化合物のフェノール塩を供給する前に、反応温度になるまで加熱されていることが好ましい。
【0058】
工程(Y)において、いずれの反応温度であっても、従来法における上記反応式(2)~(4)で示される副反応を抑制しながら、アミン化合物のフェノール塩及び炭酸ジエステルからカルバメートを得る反応を行うことができるが、30℃以上120℃以下であることが好ましく、60℃以上90℃以下であることがより好ましい。反応温度が上記上限値以上であることで、反応速度をより向上することができ、且つ、原料及び生成物の溶解性をより高めることができ、一方で、上記下限値以下であることで、副反応の促進をより効果的に抑制することができる。
反応温度を一定に保つために、反応器は、公知の冷却装置や加熱装置が設置されていてもよい。
【0059】
工程(Y)において、反応圧力は、使用するアミン化合物のフェノール塩及び炭酸ジエステルの種類や、反応温度に応じて、適宜設定することができ、減圧、常圧、及び加圧下のいずれであってもよいが、通常、20Pa以上1×10Pa以下で行われる。
【0060】
工程(X)において、反応時間についても、原料の使用量や反応時間に応じて、適宜設定することができるが、通常、0.001時間以上20時間以下であり、0.01時間以上10時間以下であることが好ましく、0.1時間以上10時間以下であることがより好ましい。
【0061】
工程(Y)において、工程(Y)における反応時間の短縮、反応温度を低くする等の目的で、触媒を使用してもよい。一般的に、芳香族アミン化合物は脂肪族アミンに比べて反応性が低いので、アミン化合物として芳香族アミン化合物を使用する場合には、触媒の使用が有効な場合がある。触媒としては、例えば、スズ、鉛、銅、チタン等の有機金属化合物及び無機金属化合物;アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコラート等の塩基性触媒等を使用することができる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコラートとして具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム若しくはバリウムの、メチラート、エチラート、又はブチラート等が挙げられる。
【0062】
工程(Y)において、製造効率の低下を防ぐために、アミン化合物のフェノール塩及び炭酸ジエステル以外に、反応溶媒を使用しないことが好ましいが、副生物の抑制を目的として反応溶媒を使用することも可能である。反応溶媒を用いる場合には、比較的融点の低い(-150℃以上100℃以下程度)フェノール性水酸基含有化合物、アミン化合物のフェノール塩、炭酸ジエステル及び生成物であるカルバメートに不活性な化合物、並びに、それらの混合物を溶媒として用いることが好ましい。
【0063】
工程(Y)における反応器としては、公知の槽型反応器、塔型反応器、蒸留塔等が使用できる。反応器及びラインの材質は、原料や生成物に悪影響を及ぼさなければ、公知のどのようなものであってもよいが、SUS304、SUS316、SUS316L等のステンレス鋼が安価であり、好ましく使用できる。
フェノール塩を形成していないアミン化合物及び炭酸ジエステルの混触に起因する副反応の抑制という観点から、工程(X)における反応器と工程(Y)における反応器とは、互いに異なる、すなわち、工程(X)及び工程(Y)は異なる反応系で行われることが好ましい。
【0064】
[その他の工程]
本実施形態の製造方法は、工程(Y)の後に、カルバメート(IV)を精製する工程(以下、「精製工程」と称する場合がある)を更に含んでもよい。
【0065】
精製工程では、公知の手法によって、必要に応じて後処理を行い、カルバメート(IV)を取り出す。具体的には、適宜必要に応じて、ろ過、洗浄、抽出、pH調整、脱水、濃縮等の後処理操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて行い、濃縮、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等により、カルバメート(IV)を粗精製する。
【0066】
また、上記粗精製されたカルバメート(IV)の純度を高めるために、適宜必要に応じて、結晶化、再沈殿、カラムクロマトグラフィー、抽出、溶媒による結晶の撹拌洗浄等の操作をいずれか単独で、又は2種以上組み合わせて、さらに1回以上行うことが好ましい。
【0067】
本実施形態の製造方法において、工程(Y)の後、精製工程を行わずに、得られたカルバメート(IV)をイソシアネートの製造等に用いてもよいが、イソシアネートの収率を向上させる観点から、カルバメート(IV)の精製工程を行うことが好ましい。
【0068】
カルバメート(IV)は、例えば、核磁気共鳴(NMR)分光法、質量分析法(MS)、赤外分光法(IR)等、公知の手法で構造を確認できる。
【0069】
次いで、本実施形態の製造方法に用いられる各種原料及び生成されるカルバメートについて以下に詳細を説明する。
【0070】
[アミン化合物]
アミン化合物としては、アミノ基を1つ以上有する化合物であればよいが、下記一般式(I)で示される化合物(アミン化合物(I))を含むことが好ましい。
【0071】
【化9】
【0072】
(一般式(I)中、n11は1以上の整数である。R11はn11価の有機基である。)
【0073】
(R11
一般式(II)中、R11はn11価の有機基であり、炭素数3以上85以下の有機基が好ましく、炭素数3以上30以下の有機基がより好ましい。
【0074】
11における有機基としては、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、又は、脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基とが結合してなる基である。具体的なR11としては、例えば、環式炭化水素基、非環式炭化水素基、非環式炭化水素基と1種以上の環式基とが結合した基、及び、これらの基が特定の非金属原子と共有結合している基等が挙げられる。前記環式基としては、例えば、環式炭化水素基、ヘテロ環基、ヘテロ環式スピロ基、ヘテロ架橋環基等が挙げられる。前記環式炭化水素基としては、例えば、単環式炭化水素基、縮合多環式炭化水素基、架橋環式炭化水素基、スピロ炭化水素基、環集合炭化水素基、側鎖のある環式炭化水素基等が挙げられる。前記非金属原子としては、例えば、炭素、酸素、窒素、硫黄、ケイ素等が挙げられる。
【0075】
なお、「特定の非金属原子と共有結合している」とは、例えば、上記例示した基が、下記式(I)-1a~(I)-1pで表される基と共有結合している状態である。
【0076】
【化10】
【0077】
中でも、R11における有機基としては、環式炭化水素基、非環式炭化水素基、若しくは、非環式炭化水素基と1種以上の環式基とが結合した基、又は、これらの基が式(I)-1a、式(I)-1b、式(I)-1c、式(I)-1e、又は、式(I)-1jで表される基と共有結合している基であることが好ましい。
【0078】
(n11)
n11は1以上の整数であり、1以上10以下の整数であることが好ましく、2又は3であることがより好ましい。
【0079】
一般式(I)において、n11が1である単官能アミン化合物としては、例えば、炭素数1以上30以下の脂肪族アミン化合物、炭素数6以上30以下の脂環族アミン化合物、炭素数6以上30以下の芳香族基を含有するアミン化合物等が挙げられる。
【0080】
一般式(I)において、n11が2である2官能のジアミン化合物としては、例えば、炭素数4以上30以下の脂肪族ジアミン、炭素数8以上30以下の脂環族ジアミン、炭素数8以上30以下の芳香族基を含有するジアミン等が挙げられる。
【0081】
炭素数4以上30以下の脂肪族ジアミンとして具体的には、1,4-テトラメチレンジアミン、1,5-ペンタメチレンジアミン、1,4-ジアミノ-2-メチルブタン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,6-ジアミノ-2,5-ジメチルヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジアミン、リジンメチルエステルジアミン、リジンエチルエステルジアミン等が挙げられる。
【0082】
炭素数8以上30以下の脂環族ジアミンとして具体的には、イソホロンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、水添テトラメチルキシリレンジアミン、ノルボルネンジアミン等が挙げられる。
【0083】
炭素数8以上30以下の芳香族基を含有するジアミンとして具体的には、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、2,6-トリレンジアミン、キシリレンジアミン、テトラメチルキシリレンジアミン、ナフタレンジアミン等が挙げられる。
【0084】
なお、これらジアミンに構造異性体や立体異性体が存在する場合は、その構造異性体や立体異性体も上記例示に含まれる。
【0085】
一般式(I)において、n11が3である3官能のアミンとしては、例えば、炭素数3以上30以下の脂肪族トリアミン、炭素数8以上30以下の芳香族基を含有するトリアミン等が挙げられる。
【0086】
炭素数3以上30以下の脂肪族トリアミンとして具体的には、1,8-ジアミン-4-アミノメチルオクタン、1,3,6-トリアミンヘキサン、1,8-ジアミノ-4-(アミノメチル)-2,4,7-トリメチルオクタン、1,5-ジアミノ-3-(アミノメチル)ペンタン、1,6,11-トリアミノデカン、1,4,7-トリアミノヘプタン、1,2,2-トリアミノブタン、1,2,6-トリアミノヘキサン、1-アミノ-2,2-ビス(アミノメチル)ブタン、1,3,5-トリアミノシクロヘキサン、1,7-ジアミノ-4-(3-アミノプロピル)ヘプタン、1,3-ジアミノ-2-(アミノメチル)-2-メチルプロパン、2-アミノエチル-2,5-ジアミノペンタノエート、2-アミノエチル-2,6-ジアミノヘキサノエート、ビス(2-アミノエチル)-2-アミノブタンジオエート、ビス(2-アミノエチル)-2-アミノペンタンジオエート、トリス(2-アミノエチル)ヘキサン-1,3,6-トリカルボキシレート等が挙げられる。
【0087】
炭素数8以上30以下の芳香族基を含有するトリアミンとして具体的には、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,3,5-トリアミノ-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-アミノプロパン-2-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(1-アミノプロパン-2-イル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-アミノメチル)-2-メチルベンゼン等が挙げられる。
【0088】
なお、これらトリアミンに構造異性体や立体異性体が存在する場合は、その構造異性体や立体異性体も上記例示に含まれる。
【0089】
[フェノール性水酸基を有する化合物]
フェノール性水酸基を有する化合物としては、フェノール性水酸基を1つ以上有する化合物であればよいが、下記一般式(III)で示される化合物(フェノール性水酸基含有化合物(III))を含むことが好ましい。
【0090】
【化11】
【0091】
(R31
一般式(III)中、R31は、芳香環に直接結合したヒドロキシ基を1つ以上有する芳香族化合物から、1つの前記ヒドロキシ基を除いた残基である。中でも、R31としては、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0092】
このようなR31としては、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ジメチルフェニル基、メチルエチルフェニル基、メチルプロピルフェニル基、メチルブチルフェニル基、メチルペンチルフェニル基、ジエチルフェニル基、エチルプロピルフェニル基、エチルブチルフェニル基、ジプロピルフェニル基、トリメチルフェニル基、トリエチルフェニル基、ナフチル基、クロロフェニル基、ニトロフェニル基、ブロモフェニル基、フルオロフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基等が挙げられる。
【0093】
好ましいフェノール性水酸基含有化合物(III)としては、例えば、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、4-エチルフェノール、4-プロピルフェノール、2-イソプロピルフェノール、2,6-ジメチルフェノール、2-メトキシフェノール、3-tert-ブチルフェノール、4-ブチルフェノール、2-sec-ブチルフェノール、4-アミルフェノール、4-ヘキシルフェノール、4-ヘプチルフェノール、2-クロロフェノール、3-クロロフェノール、4-クロロフェノール、2-ブロモフェノール、3-ブロモフェノール、2-フルオロフェノール、3-フルオロフェノール、4-フルオロフェノール、2-ニトロフェノール、2-ヒドロキシベンゾトリフルオリド、4-ヒドロキシベンゾトリフルオリド等が挙げられる。なお、これらフェノール性水酸基含有化合物に構造異性体や立体異性体が存在する場合は、その構造異性体や立体異性体も上記例示に含まれる。
【0094】
[炭酸ジエステル]
炭酸ジエステルとしては、下記一般式(II)で示される化合物(以下、「炭酸ジエステル(II)」と称する場合がある)を含むことが好ましい。
【0095】
【化12】
【0096】
(R21及びR22
一般式(II)中、R21及びR22はそれぞれ独立に、ヒドロキシ化合物から1つのヒドロキシ基を除いた残基である。
【0097】
中でも、R21及びR22はそれぞれ独立に、炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基、炭素数3以上20以下の脂環式炭化水素基、又は、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基であることが好ましい。
【0098】
21及びR22における炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基としては、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。中でも、R21及びR22における炭素数1以上20以下の脂肪族炭化水素基としては、アルキル基であることが好ましい。
21及びR22における直鎖状のアルキル基の炭素数は1以上5以下であることが好ましく、1以上4以下であることがより好ましく、1又は2であることがさらに好ましい。
このようなR21及びR22における直鎖状のアルキル基として具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。
21及びR22における分岐鎖状のアルキル基の炭素数は3以上10以下であることが好ましく、3以上5以下であることがより好ましい。
このようなR21及びR22における分岐鎖状のアルキル基として具体的には、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジエチルプロピル基、2,2-ジメチルブチル基等が挙げられる。
【0099】
21及びR22における炭素数3以上20以下の脂環式炭化水素基としては、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の脂環式炭化水素基として具体的にはシクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。多環式の脂環式炭化水素基として具体的にはアダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等が挙げられる。
【0100】
21及びR22における炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基としては、炭素数6以上12以下の芳香族炭化水素基が好ましい。このような芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ブチルフェニル基、ペンチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、ジメチルフェニル基、メチルエチルフェニル基、メチルプロピルフェニル基、メチルブチルフェニル基、メチルペンチルフェニル基、ジエチルフェニル基、エチルプロピルフェニル基、エチルブチルフェニル基、ジプロピルフェニル基、トリメチルフェニル基、トリエチルフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0101】
中でも、R21及びR22としては、それぞれ独立に、炭素数6以上20以下の芳香族炭化水素基であることが好ましく、炭素数6以上12以下の芳香族炭化水素基であることがより好ましく、炭素数6以上8以下の芳香族炭化水素基であることがさらに好ましく、フェニル基又はメチルフェニル基であることが特に好ましい。
【0102】
中でも、炭酸ジエステル(II)としては、R21及びR22がそれぞれ独立に、炭素数6以上8以下の芳香族炭化水素基である炭酸ジアリールであることが好ましい。好ましい炭酸ジアリールとしては、例えば、炭酸ジフェニル、炭酸ビス(2-メチルフェニル)、炭酸ビス(ジエチルフェニル)、炭酸ビス(メチルエチルフェニル)等が挙げられるが、中でも、炭酸ジフェニルがより好ましい。なお、これら炭酸ジエステルに構造異性体や立体異性体が存在する場合は、その構造異性体や立体異性体も上記例示に含まれる。
【0103】
炭酸ジエステル(II)は、金属原子を含有していてもよい。炭酸ジエステルの総質量に対する金属原子の含有量は、0.001質量ppm以上10質量%以下であることが好ましく、0.001質量ppm以上5質量%以下であることがより好ましく、0.002質量ppm以上3質量%以下であることがさらに好ましい。
【0104】
上記金属原子は、金属イオンとして存在していてもよく、金属原子単体として存在していてもよい。金属原子としては、2価乃至4価の原子価をとりうる金属原子が好ましく、中でも、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、銅、及びチタンからなる群より選ばれる1種以上の金属がより好ましい。
【0105】
炭酸ジエステル(II)の製造方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、国際公開第2009/139061号(参考文献1)に記載されている、スズ-酸素-炭素結合を有する有機スズ化合物と二酸化炭素を反応させて炭酸ジエステルを製造し、該炭酸ジエステルと芳香族ヒドロキシ化合物とから炭酸ジアリールを製造する方法等が挙げられる。
【0106】
[カルバメート]
カルバメートは、下記一般式(IV)で示される化合物(以下、「カルバメート(IV)」と称する場合がある)である。
【0107】
【化13】
【0108】
(一般式(IV)中、R11、R21、及びn11はそれぞれ、上記R11、R21、及びn11と同じである。)
【0109】
一般式(IV)中、R11はアミン化合物(I)に由来する基であり、アミン化合物(I)からアミノ基を除いた残基である。
【0110】
一般式(IV)中、R21は炭酸ジエステル(II)に由来する基であり、-COO-R22を除いた残基である。
【0111】
一般式(IV)中、n11はアミン化合物(I)のアミノ基の価数と同じ数であり、1以上の整数である。
【0112】
一般式(IV)において、n11が1である単官能カルバメート化合物としては、例えば、炭素数1以上30以下の脂肪族カルバメート化合物、炭素数6以上30以下の脂環族カルバメート化合物、炭素数6以上30以下の芳香族基を含有するカルバメート化合物等が挙げられる。
【0113】
一般式(IV)において、n11が2である2官能のカルバメートとしては、例えば、R11が2価の脂肪族炭化水素基である炭素数4以上60以下のジカルバメート、R11が2価の脂環式炭化水素基である炭素数8以上60以下のジカルバメート、R11が2価の芳香族炭化水素基である炭素数8以上60以下のジカルバメート等が挙げられる。
【0114】
11が2価の脂肪族炭化水素基である炭素数4以上60以下のジカルバメートとしては、具体的には、1,4-テトラメチレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、1,5-ペンタメチレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、1,4-ジ(カルバミン酸メチルエステル)-2-メチルブタン、1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、1,6-ジ(カルバミン酸メチルエステル)-2,5-ジメチルヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、リジンメチルエステルジ(カルバミン酸メチルエステル)、リジンエチルエステルジ(カルバミン酸メチルエステル)、1,4-テトラメチレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、1,5-ペンタメチレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、1,4-ジ(カルバミン酸エチルエステル)-2-メチルブタン、1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、1,6-ジ(カルバミン酸エチルエステル)-2,5-ジメチルヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、リジンメチルエステルジ(カルバミン酸エチルエステル)、リジンエチルエステルジ(カルバミン酸エチルエステル)、1,4-テトラメチレンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、1,5-ペンタメチレンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、1,4-ジ(カルバミン酸ブチルエステル)-2-メチルブタン、1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、1,6-ジ(カルバミン酸ブチルエステル)-2,5-ジメチルヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、リジンメチルエステルジ(カルバミン酸ブチルエステル)、リジンエチルエステルジ(カルバミン酸ブチルエステル)、1,4-テトラメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、1,5-ペンタメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、1,4-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)-2-メチルブタン、1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、1,6-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)-2,5-ジメチルヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、リジンメチルエステルジ(カルバミン酸フェニルエステル)、リジンエチルエステルジ(カルバミン酸フェニルエステル)、1,4-テトラメチレンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、1,5-ペンタメチレンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、1,4-ジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)-2-メチルブタン、1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、1,6-ジ(カルバミン酸ジメチルフェニルエステル)-2,5-ジメチルヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、リジンメチルエステルジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、リジンエチルエステルジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、1,4-テトラメチレンジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)、1,5-ペンタメチレンジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)、1,4-ジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)-2-メチルブタン、1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)、1,6-ジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)-2,5-ジメチルヘキサン、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)、リジンメチルエステルジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)、リジンエチルエステルジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)等が挙げられる。
中でも炭素数8以上35以下の脂肪族ジカルバメートが好ましい。
【0115】
11が2価の脂環式炭化水素基である炭素数8以上60以下のジカルバメートとしては、具体的には、イソホロンジ(カルバミン酸メチルエステル)、1,3-ビス((カルバミン酸メチルエステル)メチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジ(カルバミン酸メチルエステル)、水添テトラメチルキシリレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、ノルボルネンジ(カルバミン酸メチルエステル)、イソホロンジ(カルバミン酸エチルエステル)、1,3-ビス((カルバミン酸エチルエステル)メチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジ(カルバミン酸エチルエステル)、水添テトラメチルキシリレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、ノルボルネンジ(カルバミン酸エチルエステル)、イソホロンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、1,3-ビス((カルバミン酸ブチルエステル)メチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、水添テトラメチルキシリレンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、ノルボルネンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、イソホロンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、1,3-ビス((カルバミン酸フェニルエステル)メチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、水添テトラメチルキシリレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、ノルボルネンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、イソホロンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、1,3-ビス((カルバミン酸メチルフェニルエステル)メチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、水添テトラメチルキシリレンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、ノルボルネンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、イソホロンジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)、1,3-ビス((カルバミン酸ブチルフェニルエステル)メチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)、水添テトラメチルキシリレンジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)、ノルボルネンジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)等が挙げられる。
中でも、炭素数12以上35以下の脂環族ジカルバメートが好ましい。
【0116】
11が2価の芳香族炭化水素基である炭素数8以上60以下のジカルバメートとしては、4,4’-ジフェニルメタンジ(カルバミン酸メチルエステル)、2,6-トリレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、キシリレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、テトラメチルキシリレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、ナフタレンジ(カルバミン酸メチルエステル)、4,4’-ジフェニルメタンジ(カルバミン酸エチルエステル)、2,6-トリレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、キシリレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、テトラメチルキシリレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、ナフタレンジ(カルバミン酸エチルエステル)、4,4’-ジフェニルメタンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、2,6-トリレンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、キシリレンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、テトラメチルキシリレンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、ナフタレンジ(カルバミン酸ブチルエステル)、4,4’-ジフェニルメタンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、2,6-トリレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、キシリレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、テトラメチルキシリレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、ナフタレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、4,4’-ジフェニルメタンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、2,6-トリレンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、キシリレンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、テトラメチルキシリレンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、ナフタレンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、4,4’-ジフェニルメタンジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)、2,6-トリレンジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)、キシリレンジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)、テトラメチルキシリレンジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)、ナフタレンジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)等が挙げられる。
中でも炭素数12以上28以下の芳香族基を有するジカルバメートが好ましい。
【0117】
中でも、好ましいジカルバメートとしては、例えば、1,4-テトラメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、1,5-ペンタメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、リジンメチルエステルジ(カルバミン酸フェニルエステル)、リジンエチルエステルジ(カルバミン酸フェニルエステル)、1,4-テトラメチレンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、1,5-ペンタメチレンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、リジンメチルエステルジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、リジンエチルエステルジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、イソホロンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、1,3-ビス((カルバミン酸フェニルエステル)メチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、イソホロンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、1,3-ビス((カルバミン酸メチルフェニルエステル)メチル)-シクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、4,4’-ジフェニルメタンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、2,6-トリレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、キシリレンジ(カルバミン酸フェニルエステル)、4,4’-ジフェニルメタンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、2,6-トリレンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)、キシリレンジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)等が挙げられる。
【0118】
なお、これらジカルバメートに構造異性体や立体異性体が存在する場合は、その構造異性体や立体異性体も上記例示に含まれる。
【0119】
一般式(IV)において、n11が3である3官能のカルバメートとしては、例えば、R11が3価の脂肪族炭化水素基である炭素数4以上75以下の脂肪族トリカルバメート、R11が3価の芳香族炭化水素基である炭素数8以上75以下のトリカルバメート等が挙げられる。
【0120】
11が3価の脂肪族炭化水素基である炭素数4以上75以下の脂肪族トリカルバメートとしては、具体的には、1,8-ジ(カルバミン酸メチルエステル)4-(カルバミン酸メチルエステル)メチルオクタン、1,3,6-トリ(カルバミン酸メチルエステル)ヘキサン、1,8-ジ(カルバミン酸メチルエステル)-4-((カルバミン酸メチルエステル)メチル)-2,4,7-トリメチルオクタン、1,5-ジ(カルバミン酸メチルエステル)-3-((カルバミン酸メチルエステル)メチル)ペンタン、1,6,11-トリ(カルバミン酸メチルエステル)デカン、1,4,7-トリ(カルバミン酸メチルエステル)ヘプタン、1,2,2-トリ(カルバミン酸メチルエステル)ブタン、1,2,6-トリ(カルバミン酸メチルエステル)ヘキサン、1-(カルバミン酸メチルエステル)-2,2-ビス((カルバミン酸メチルエステル)メチル)ブタン、1,3,5-トリ(カルバミン酸メチルエステル)シクロヘキサン、1,7-ジ(カルバミン酸メチルエステル)-4-(3-(カルバミン酸メチルエステル)プロピル)ヘプタン、1,3-ジ(カルバミン酸メチルエステル)-2-((カルバミン酸メチルエステル)メチル)-2-メチルプロパン、2-(カルバミン酸メチルエステル)エチル-2,5-ジ(カルバミン酸エステルメチルエステル)ペンタノエート、2-(カルバミン酸メチルエステル)エチル-2,6-ジ(カルバミン酸メチルエステル)ヘキサノエート、ビス(2-(カルバミン酸メチルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸メチルエステル)ブタンジオエート、ビス(2-(カルバミン酸メチルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸メチルエステル)ペンタンジオエート、トリス(2-(カルバミン酸メチルエステル)エチル)ヘキサン-1,3,6-トリカルボキシレート、1,8-ジ(カルバミン酸ブチルエステル)4-(カルバミン酸ブチルエステル)メチルオクタン、1,3,6-トリ(カルバミン酸ブチルエステル)ヘキサン、1,8-ジ(カルバミン酸ブチルエステル)-4-((カルバミン酸ブチルエステル)メチル)-2,4,7-トリメチルオクタン、1,5-ジ(カルバミン酸ブチルエステル)-3-((カルバミン酸ブチルエステル)メチル)ペンタン、1,6,11-トリ(カルバミン酸ブチルエステル)デカン、1,4,7-トリ(カルバミン酸ブチルエステル)ヘプタン、1,2,2-トリ(カルバミン酸ブチルエステル)ブタン、1,2,6-トリ(カルバミン酸ブチルエステル)ヘキサン、1-(カルバミン酸ブチルエステル)-2,2-ビス((カルバミン酸ブチルエステル)メチル)ブタン、1,3,5-トリ(カルバミン酸ブチルエステル)シクロヘキサン、1,7-ジ(カルバミン酸ブチルエステル)-4-(3-(カルバミン酸ブチルエステル)プロピル)ヘプタン、1,3-ジ(カルバミン酸ブチルエステル)-2-((カルバミン酸ブチルエステル)メチル)-2-メチルプロパン、2-(カルバミン酸ブチルエステル)エチル-2,5-ジ(カルバミン酸エステルメチルエステル)ペンタノエート、2-(カルバミン酸ブチルエステル)エチル-2,6-ジ(カルバミン酸ブチルエステル)ヘキサノエート、ビス(2-(カルバミン酸ブチルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸ブチルエステル)ブタンジオエート、ビス(2-(カルバミン酸ブチルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸ブチルエステル)ペンタンジオエート、トリス(2-(カルバミン酸ブチルエステル)エチル)ヘキサン-1,3,6-トリカルボキシレート、1,8-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)4-(カルバミン酸フェニルエステル)メチルオクタン、1,3,6-トリ(カルバミン酸フェニルエステル)ヘキサン、1,8-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)-4-((カルバミン酸フェニルエステル)メチル)-2,4,7-トリメチルオクタン、1,5-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)-3-((カルバミン酸フェニルエステル)メチル)ペンタン、1,6,11-トリ(カルバミン酸フェニルエステル)デカン、1,4,7-トリ(カルバミン酸フェニルエステル)ヘプタン、1,2,2-トリ(カルバミン酸フェニルエステル)ブタン、1,2,6-トリ(カルバミン酸フェニルエステル)ヘキサン、1-(カルバミン酸フェニルエステル)-2,2-ビス((カルバミン酸フェニルエステル)メチル)ブタン、1,3,5-トリ(カルバミン酸フェニルエステル)シクロヘキサン、1,7-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)-4-(3-(カルバミン酸フェニルエステル)プロピル)ヘプタン、1,3-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)-2-((カルバミン酸フェニルエステル)メチル)-2-メチルプロパン、2-(カルバミン酸フェニルエステル)エチル-2,5-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)ペンタノエート、2-(カルバミン酸フェニルエステル)エチル-2,6-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)ヘキサノエート、ビス(2-(カルバミン酸フェニルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸フェニルエステル)ブタンジオエート、ビス(2-(カルバミン酸フェニルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸フェニルエステル)ペンタンジオエート、トリス(2-(カルバミン酸フェニルエステル)エチル)ヘキサン-1,3,6-トリカルボキシレート、1,8-ジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)4-(カルバミン酸メチルフェニルエステル)メチルオクタン、1,3,6-トリ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)ヘキサン、1,8-ジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)-4-((カルバミン酸メチルフェニルエステル)メチル)-2,4,7-トリメチルオクタン、1,5-ジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)-3-((カルバミン酸メチルフェニルエステル)メチル)ペンタン、1,6,11-トリ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)デカン、1,4,7-トリ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)ヘプタン、1,2,2-トリ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)ブタン、1,2,6-トリ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)ヘキサン、1-(カルバミン酸メチルフェニルエステル)-2,2-ビス((カルバミン酸メチルフェニルエステル)メチル)ブタン、1,3,5-トリ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)シクロヘキサン、1,7-ジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)-4-(3-(カルバミン酸メチルフェニルエステル)プロピル)ヘプタン、1,3-ジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)-2-((カルバミン酸メチルフェニルエステル)メチル)-2-メチルプロパン、2-(カルバミン酸メチルフェニルエステル)エチル-2,5-ジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)ペンタノエート、2-(カルバミン酸メチルフェニルエステル)エチル-2,6-ジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)ヘキサノエート、ビス(2-(カルバミン酸メチルフェニルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸メチルフェニルエステル)ブタンジオエート、ビス(2-(カルバミン酸メチルフェニルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸メチルフェニルエステル)ペンタンジオエート、トリス(2-(カルバミン酸メチルフェニルエステル)エチル)ヘキサン-1,3,6-トリカルボキシレート、1,8-ジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)4-(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)メチルオクタン、1,3,6-トリ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)ヘキサン、1,8-ジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)-4-((カルバミン酸ブチルフェニルエステル)メチル)-2,4,7-トリメチルオクタン、1,5-ジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)-3-((カルバミン酸ブチルフェニルエステル)メチル)ペンタン、1,6,11-トリ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)デカン、1,4,7-トリ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)ヘプタン、1,2,2-トリ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)ブタン、1,2,6-トリ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)ヘキサン、1-(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)-2,2-ビス((カルバミン酸ブチルフェニルエステル)メチル)ブタン、1,3,5-トリ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)シクロヘキサン、1,7-ジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)-4-(3-(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)プロピル)ヘプタン、1,3-ジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)-2-((カルバミン酸ブチルフェニルエステル)メチル)-2-メチルプロパン、2-(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)エチル-2,5-ジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)ペンタノエート、2-(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)エチル-2,6-ジ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)ヘキサノエート、ビス(2-(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)ブタンジオエート、ビス(2-(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)ペンタンジオエート、トリス(2-(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)エチル)ヘキサン-1,3,6-トリカルボキシレート等が挙げられる。
中でも、炭素数15以上45以下の脂肪族トリカルバメートが好ましい。
【0121】
11が3価の芳香族炭化水素基である炭素数8以上75以下のトリカルバメートとしては、具体的には、1,3,5-トリ(カルバミン酸メチルエステル)ベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸メチルエステル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸メチルエステル)プロパン-2-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸メチルエステル)プロパン-2-イル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸メチルエステル)メチル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸エチルエステル)ベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸エチルエステル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸エチルエステル)プロパン-2-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸エチルエステル)プロパン-2-イル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸エチルエステル)メチル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸ブチルエステル)ベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸ブチルエステル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸ブチルエステル)プロパン-2-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸ブチルエステル)プロパン-2-イル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸ブチルエステル)メチル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸フェニルエステル)ベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸フェニルエステル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸フェニルエステル)プロパン-2-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸フェニルエステル)プロパン-2-イル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸フェニルエステル)メチル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)ベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸メチルフェニルエステル)プロパン-2-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸メチルフェニルエステル)プロパン-2-イル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸メチルフェニルエステル)メチル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)ベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)プロパン-2-イル)ベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)プロパン-2-イル)-2-メチルベンゼン、1,3,5-トリス(1-(カルバミン酸ブチルフェニルエステル)メチル)-2-メチルベンゼン等が挙げられる。
中でも、炭素数12以上35以下の芳香族を有するトリカルバメートが好ましい。
【0122】
中でも、好ましいトリカルバメートとしては、例えば、1,8-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)4-(カルバミン酸フェニルエステル)メチルオクタン、1,8-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)-4-((カルバミン酸フェニルエステル)メチル)-2,4,7-トリメチルオクタン、1,3-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)-2-((カルバミン酸フェニルエステル)メチル)-2-メチルプロパン、2-(カルバミン酸フェニルエステル)エチル-2,5-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)ペンタノエート、2-(カルバミン酸フェニルエステル)エチル-2,6-ジ(カルバミン酸フェニルエステル)ヘキサノエート、ビス(2-(カルバミン酸フェニルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸フェニルエステル)ブタンジオエート、ビス(2-(カルバミン酸フェニルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸フェニルエステル)ペンタンジオエート、1,8-ジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)4-(カルバミン酸メチルフェニルエステル)メチルオクタン、1,8-ジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)-4-((カルバミン酸メチルフェニルエステル)メチル)-2,4,7-トリメチルオクタン、1,3-ジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)-2-((カルバミン酸メチルフェニルエステル)メチル)-2-メチルプロパン、2-(カルバミン酸メチルフェニルエステル)エチル-2,5-ジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)ペンタノエート、2-(カルバミン酸メチルフェニルエステル)エチル-2,6-ジ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)ヘキサノエート、ビス(2-(カルバミン酸メチルフェニルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸メチルフェニルエステル)ブタンジオエート、ビス(2-(カルバミン酸メチルフェニルエステル)エチル)-2-(カルバミン酸メチルフェニルエステル)ペンタンジオエート、1,3,5-トリ(カルバミン酸フェニルエステル)ベンゼン、1,3,5-トリ(カルバミン酸メチルフェニルエステル)ベンゼン等が挙げられる。
【0123】
なお、これらトリカルバメートに構造異性体や立体異性体が存在する場合は、その構造異性体や立体異性体も上記例示に含まれる。
【実施例0124】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0125】
<分析方法>
1.核磁気共鳴(NMR)分析
装置としては、日本国、日本電子(株)社製、JNM-A400 FT-NMRシステムを用いた。
【0126】
(1)H及び13C-NMRの分析サンプルの調製
サンプル溶液を約0.3g秤量し、重クロロホルム(米国、アルドリッチ社製、99.8質量%)約0.7g、及び、内部標準物質としてジメチルジフェニルシラン(日本国、東京化成工業社製、97質量%)0.05gを加えて均一に混合した。得られた混合溶液をNMR分析サンプルとした。
(2)定量分析
各標準物質について分析を実施し、作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施した。定量結果から、尿素結合を含む副生物の収率を算出した。
【0127】
2.高速液体クロマトグラフィー
以下に示す測定装置及び条件にて、高速液体クロマトグラフィーを実施した。
【0128】
(測定装置及び条件)
装置:日本国、島津社製、LC-10ATシステム
カラム:日本国、GLサイエンス社製、Inertsil-ODSカラムを2本直列に接続
展開溶媒:0.1w/v%リン酸水溶液(A液)及びアセトニトリル(B液)の混合液を容量比でA液:B液=60:40で流し、50分かけて容量比でA液:B液=10:90となるように割合を変化させた。
溶媒流量:2mL/分
カラム温度:35℃
検出器:RI(屈折率計)
【0129】
(1)液体クロマトグラフィーの分析サンプルの調製
サンプルを約0.1g秤量し、酢酸(日本国、和光純薬工業社製、脱水)約1gを加えて均一に混合した。得られた混合溶液を、高速液体クロマトグラフィーのサンプルとした。
【0130】
(2)定量分析
オートサンプラーを用いた絶対検量線法により、各測定目的の物質について作成した検量線を基に、分析サンプル溶液の定量分析を実施した。定量結果から、目的物であるカルバメートの収率を算出した。
【0131】
<カルバメートの製造>
[実施例1]
1.工程(X):ヘキサメチレンジアミンのフェノール塩の製造
ヘキサメチレンジアミン34.9g(0.30モル)、及び、ヘキサメチレンジアミンが有するアミノ基のモル量に対して、等モル量(1倍モル等量)のフェノール56.5g(0.60モル)を内容積が300mLのフラスコに入れ、内部を窒素雰囲気とした。該フラスコを50℃に加熱したウォーターバスに浸漬し、常圧下で、攪拌しながら内容物の加熱を行った。30分間加熱後、均一なヘキサメチレンジアミンのフェノール塩を含む溶液が得られた。
【0132】
2.工程(Y):N,N’-ヘキサンジイル-ビス-カルバミン酸ジフェニルエステル(1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル))の製造
ヘキサメチレンジアミンのフェノール塩が有するアミノ基のモル量に対して、1.5倍モル等量の炭酸ジフェニル192.8g(0.9モル)、及び、炭酸ジフェニルに対して0.3倍質量等量のフェノール57.8g(0.61モル)を内容積が500mLのフラスコに入れ、内部を窒素雰囲気とした。炭酸ジフェニルを加えた当該フラスコを70℃に加熱したオイルバスに浸漬し、攪拌しながら内容物の加熱を行った。30分後、内容物の融解を確認した。工程(X)で得られたヘキサメチレンジアミンのフェノール塩を含む溶液を、内容積が300mLの滴下漏斗に入れ、当該フラスコに接続し、リボンヒーターで当該滴下漏斗を50℃に加熱し、保温した。滴下漏斗のコックを開け、ヘキサメチレンジアミンのフェノール塩を含む溶液全量を常圧下で1時間半かけて滴下した。滴下後、常圧下で、更に2時間加熱した。その後、溶液を採取し、高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、ヘキサメチレンジアミンに対して、N,N’-ヘキサンジイル-ビス-カルバミン酸ジフェニルエステル(1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル))が収率99質量%であった。また、採取した溶液をNMR分析したところ、尿素結合を有する副生物の収率は1質量%であった。
【0133】
[比較例1]
ヘキサメチレンジアミン34.9g(0.30モル)をフェノール塩とせずに、内容積が300mLの滴下漏斗に入れ、リボンヒーターで50℃に加熱し、保温した。ヘキサメチレンジアミンが有するアミノ基のモル量に対して、1.5倍モル等量の炭酸ジフェニル192.8g(0.9モル)、炭酸ジフェニルに対して0.3倍質量等量のフェノール57.8g(0.61モル)、及び、実施例1の工程(X)にてアミン化合物のフェノール塩を製造する際に用いた量と等モル量(1倍モル等量)のフェノール56.5g(0.60モル)を内容積が500mLのフラスコに入れ、フラスコに当該滴下漏斗を接続し、内部を窒素雰囲気とした。当該フラスコを70℃に加熱したオイルバスに浸漬し、攪拌しながら内容物の加熱を行った。30分後、内容物の融解を確認した。
当該滴下漏斗のコックを開け、当該ヘキサメチレンジアミン全量を常圧下で、1時間半かけて滴下した。滴下後、常圧下で、更に2時間加熱した。その後、溶液を採取し、高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、ヘキサメチレンジアミンに対して、N,N’-ヘキサンジイル-ビス-カルバミン酸ジフェニルエステル(1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル))が収率90質量%であった。また、採取した溶液をNMR分析したところ、尿素結合を有する副生物の収率は10質量%であった。
【0134】
実施例1及び比較例1の比較から、実施例1では、アミン化合物のフェノール塩とした後、アミン化合物のフェノール塩と炭酸ジフェニルの反応を行うことで、尿素結合を有する副生物の生成が抑制されて、目的物の収率が向上した。これに対して、比較例1では、アミン化合物のフェノール塩とせずにアミン化合物と炭酸ジフェニルの反応を行うと、尿素結合を有する副生物の生成が起こり、目的物の収率が低下することが確かめられた。
【0135】
[比較例2]
1.工程(A):ヘキサメチレンジアミン溶液の製造
ヘキサメチレンジアミン34.9g(0.30モル)及びアセトニトリル56.5g(1.38モル)を内容積が300mLのフラスコに入れ、内部を窒素雰囲気とした。該フラスコを50℃に加熱したウォーターバスに浸漬し、攪拌しながら内容物の加熱を行った。30分加熱後、均一なヘキサメチレンジアミン溶液が得られた。
【0136】
2.工程(B):N,N’-ヘキサンジイル-ビス-カルバミン酸ジフェニルエステル(1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル))の製造
ヘキサメチレンジアミンが有するアミノ基のモル量に対して、1.5倍モル等量の炭酸ジフェニル192.8g(0.9モル)、炭酸ジフェニルに対して0.3倍質量等量のアセトニトリル57.8g(1.41モル)を内容積が500mLのフラスコに入れ、内部を窒素雰囲気とした。当該フラスコを70℃に加熱したオイルバスに浸漬し、攪拌しながら内容物の加熱を行った。30分後、内容物の融解を確認した。工程(A)で得られたヘキサメチレンジアミン溶液を、内容積が300mLの滴下漏斗に入れ、当該フラスコに接続し、リボンヒーターで滴下漏斗を50℃に加熱し、保温した。滴下漏斗のコックを開け、当該ヘキサメチレンジアミン溶液の全量を常圧下で、1時間半かけて滴下した。滴下後、常圧下で、更に2時間加熱した。その後、溶液を採取し、高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、原料のヘキサメチレンジアミンに対して、N,N’-ヘキサンジイル-ビス-カルバミン酸ジフェニルエステル(1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル))が収率86質量%であった。また、採取した溶液をNMR分析したところ、尿素結合を有する副生物の収率は14質量%であった。
【0137】
実施例1及び比較例2の比較から、実施例1では、アミン化合物のフェノール塩とした後、アミン化合物のフェノール塩と炭酸ジフェニルの反応を行うことで、尿素結合を有する副生物の生成が抑制されて、目的物の収率が向上した。これに対して、比較例2では、アミン化合物のフェノール塩とせずに、フェノール性水酸基を有さない化合物を用いてアミン化合物を希釈したものと炭酸ジフェニルの反応を行うと、尿素結合を有する副生物の生成が起こり、目的物の収率が低下することが確かめられた。
【0138】
[実施例2~20]
使用するアミン化合物の種類を表1~表3に示すとおりにした以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、カルバメートを得た。なお、実施例10、11、及び20については、使用するアミン化合物の融点が高いことから、工程(X)における反応温度を50℃から70℃に変更し、且つ、フェノールの使用量を1倍モル等量から2倍モル等量に増やして行った。
実施例1~20において得られたカルバメートの種類及び収率、並びに、尿素結合を有する副生物の収率を表1~表3に示す。
【0139】
【表1】
【0140】
【表2】
【0141】
【表3】
【0142】
表1~表3に示すように、アミノ化合物(I)の種類に限らず、実施例1~20では、いずれも目的のカルバメートの収率が92質量%以上と良好であり、且つ、尿素結合を有する副生物の収率が3質量%以下と少なかった。
【0143】
[実施例21~40]
使用するアミン化合物及び炭酸ジエステルの種類を表4~表6に記載のとおりとした以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、カルバメートを得た。なお、実施例30、31、及び40については、使用するアミン化合物の融点が高いことから、工程(X)における反応温度を50℃から70℃に変更し、且つ、フェノールの使用量を1倍モル等量から2倍モル等量に増やして行った。
実施例21~40において得られたカルバメートの種類及び収率、並びに、尿素結合を有する副生物の収率を表4~表6に示す。
【0144】
【表4】
【0145】
【表5】
【0146】
【表6】
【0147】
表4~表6に示すように、アミノ化合物(I)及び炭酸ジエステル(II)の種類に限らず、実施例21~40では、いずれも目的のカルバメートの収率が92質量%以上と良好であり、且つ、尿素結合を有する副生物の収率が3質量%以下と少なかった。
【0148】
[実施例41~65]
使用するフェノール性水酸基含有化合物の種類を表7~表9に記載のとおりとした以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、カルバメートを得た。
実施例41~65において得られたN,N’-ヘキサンジイル-ビス-カルバミン酸ジフェニルエステル(1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル))の収率、及び、尿素結合を有する副生物の収率を表7~表9に示す。
【0149】
【表7】
【0150】
【表8】
【0151】
【表9】
【0152】
表7~表9に示すように、フェノール性水酸基含有化合物の種類に限らず、実施例41~65では、いずれも目的のカルバメートの収率が96質量%以上と良好であり、且つ、尿素結合を有する副生物の収率が1質量%以下と少なかった。
【0153】
[実施例66]
1.工程(X):ヘキサメチレンジアミンのフェノール塩の製造
ヘキサメチレンジアミン34.9g(0.30モル)、及び、ヘキサメチレンジアミンが有するアミノ基のモル量に対して、等モル量(1倍モル等量)のフェノール56.5g(0.60モル)を内容積が300mLのフラスコに入れ、内部を窒素雰囲気とした。該フラスコを70℃に加熱したウォーターバスに浸漬し、常圧下で、攪拌しながら内容物の加熱を行った。30分間加熱後、均一なヘキサメチレンジアミンのフェノール塩を含む溶液が得られた。
【0154】
2.工程(Y):N,N’-ヘキサンジイル-ビス-カルバミン酸ジフェニルエステル(1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル))の製造
ヘキサメチレンジアミンのフェノール塩が有するアミノ基のモル量に対して、1.5倍モル等量の炭酸ジフェニル192.8g(0.9モル)、及び、炭酸ジフェニルに対して0.3倍質量等量のフェノール57.8g(0.61モル)を内容積が500mLのフラスコに入れ、内部を窒素雰囲気とした。炭酸ジフェニルを加えた当該フラスコを90℃に加熱したオイルバスに浸漬し、攪拌しながら内容物の加熱を行った。30分後、内容物の融解を確認した。工程(X)で得られたヘキサメチレンジアミンのフェノール塩を含む溶液を、内容積が300mLの滴下漏斗に入れ、当該フラスコに接続し、リボンヒーターで当該滴下漏斗を70℃に加熱し、保温した。滴下漏斗のコックを開け、ヘキサメチレンジアミンのフェノール塩を含む溶液全量を常圧下で1時間半かけて滴下した。滴下後、常圧下で、更に1時間加熱した。その後、溶液を採取し、高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、ヘキサメチレンジアミンに対して、N,N’-ヘキサンジイル-ビス-カルバミン酸ジフェニルエステル(1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル))が収率96質量%であった。また、採取した溶液をNMR分析したところ、尿素結合を有する副生物の収率は3質量%であった。
【0155】
[実施例67]
1.工程(X):ヘキサメチレンジアミンのフェノール塩の製造
ヘキサメチレンジアミン34.9g(0.30モル)、及び、ヘキサメチレンジアミンが有するアミノ基のモル量に対して、等モル量(1倍モル等量)のフェノール56.5g(0.60モル)を内容積が300mLのフラスコに入れ、内部を窒素雰囲気とした。該フラスコを90℃に加熱したウォーターバスに浸漬し、常圧下で、攪拌しながら内容物の加熱を行った。30分間加熱後、均一なヘキサメチレンジアミンのフェノール塩を含む溶液が得られた。
【0156】
2.工程(Y):N,N’-ヘキサンジイル-ビス-カルバミン酸ジフェニルエステル(1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル))の製造
ヘキサメチレンジアミンのフェノール塩が有するアミノ基のモル量に対して、1.5倍モル等量の炭酸ジフェニル192.8g(0.9モル)、及び、炭酸ジフェニルに対して0.3倍質量等量のフェノール57.8g(0.61モル)を内容積が500mLのフラスコに入れ、内部を窒素雰囲気とした。炭酸ジフェニルを加えた当該フラスコを130℃に加熱したオイルバスに浸漬し、攪拌しながら内容物の加熱を行った。30分後、内容物の融解を確認した。工程(X)で得られたヘキサメチレンジアミンのフェノール塩を含む溶液を、内容積が300mLの滴下漏斗に入れ、当該フラスコに接続し、リボンヒーターで当該滴下漏斗を90℃に加熱し、保温した。滴下漏斗のコックを開け、ヘキサメチレンジアミンのフェノール塩を含む溶液全量を常圧下で1時間半かけて滴下した。滴下後、常圧下で、更に1時間加熱した。その後、溶液を採取し、高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、ヘキサメチレンジアミンに対して、N,N’-ヘキサンジイル-ビス-カルバミン酸ジフェニルエステル(1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル))が収率62質量%であった。また、採取した溶液をNMR分析したところ、尿素結合を有する副生物の収率は31質量%であった。
【0157】
[比較例3]
ヘキサメチレンジアミン34.9g(0.30モル)をフェノール塩とせずに、内容積が300mLの滴下漏斗に入れ、リボンヒーターで90℃に加熱し、保温した。ヘキサメチレンジアミンが有するアミノ基のモル量に対して、1.5倍モル等量の炭酸ジフェニル192.8g(0.9モル)、炭酸ジフェニルに対して0.3倍質量等量のフェノール57.8g(0.61モル)、及び、実施例67の工程(X)にてアミン化合物のフェノール塩を製造する際に用いた量と等モル量(1倍モル等量)のフェノール56.5g(0.60モル)を内容積が500mLのフラスコに入れ、フラスコに当該滴下漏斗を接続し、内部を窒素雰囲気とした。当該フラスコを130℃に加熱したオイルバスに浸漬し、攪拌しながら内容物の加熱を行った。30分後、内容物の融解を確認した。
当該滴下漏斗のコックを開け、当該ヘキサメチレンジアミン全量を常圧下で、1時間半かけて滴下した。滴下後、常圧下で、更に1時間加熱した。その後、溶液を採取し、高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、ヘキサメチレンジアミンに対して、N,N’-ヘキサンジイル-ビス-カルバミン酸ジフェニルエステル(1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル))が収率51質量%であった。また、採取した溶液をNMR分析したところ、尿素結合を有する副生物の収率は35質量%であった。
【0158】
実施例67及び比較例3の比較から、実施例67では、アミン化合物のフェノール塩とした後、アミン化合物のフェノール塩と炭酸ジフェニルの反応を行うことで、尿素結合を有する副生物の生成が抑制されて、目的物の収率が向上した。これに対して、比較例3では、アミン化合物のフェノール塩とせずにアミン化合物と炭酸ジフェニルの反応を行うと、尿素結合を有する副生物の生成が起こり、目的物の収率が低下することが確かめられた。
【0159】
【表10】
【0160】
[実施例68~70]
工程(X)で得られたヘキサメチレンジアミンのフェノール塩を含む溶液を、工程(Y)で滴下漏斗から滴下する時間(滴下時間)を表11に示すとおりとした以外は、実施例1に記載の方法と同様の方法を用いて、カルバメートを得た。
実施例68~70において得られたN,N’-ヘキサンジイル-ビス-カルバミン酸ジフェニルエステル(1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル))の収率、及び、尿素結合を有する副生物の収率を表11に示す。
【0161】
【表11】
【0162】
表11に示すように、滴下時間が長くなるほど、カルバメートの収率がより向上し、且つ、副生物の収率がより低下する傾向がみられた。
【0163】
[実施例71]
1.工程(X):ヘキサメチレンジアミンのフェノール塩の製造
図1に示す装置を使用して反応を行った。ライン13を閉止した状態で、ヘキサメチレンジアミン23.24kg(0.20キロモル)を貯槽101よりライン11を経て、バッフル付きSUS製反応器103に供給した。次いで、フェノール37.7kg(0.40キロモル)を貯槽102よりライン12を経て上記SUS製反応器に供給した。液温を70℃に保ちながら、常圧下で攪拌した。30分後、均一なヘキサメチレンジアミンのフェノール塩を含む溶液が得られ、ライン13を経て貯槽104へ供給した。
【0164】
2.工程(Y):N,N’-ヘキサンジイル-ビス-カルバミン酸ジフェニルエステル(1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル))の製造
図2に示す装置を使用して反応を行った。ライン24を閉止した状態で、炭酸ジフェニル128.5kg(0.60キロモル)を貯槽201よりライン22を経て、バッフル付きSUS製反応器203に供給した。次いで、フェノール38.6kg(0.41キロモル)を貯槽202よりライン23を経て上記SUS製反応器に供給した。反応器203のジャケット温度を90℃とし、1時間攪拌することで内容物を均一な溶液とした。ジャケット温度を60℃に設定し、内溶液を65℃まで降温した。工程(X)で得られたアミン化合物のフェノール塩を含む溶液を貯槽104で加温し、50℃とした後、ライン21を経て40.6kg/時間の流速で反応器203へ常圧下で供給した。この際、ジャケット温度を調節し、液温が70℃以上にならないよう制御した。常圧下で2時間加熱した後、ライン24を経て貯槽204へ反応液を供給した。反応液を採取し、高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、ヘキサメチレンジアミンに対して、N,N’-ヘキサンジイル-ビス-カルバミン酸ジフェニルエステル(1,6-ヘキサメチレンジ(カルバミン酸フェニルエステル))が収率98質量%であった。また、採取した溶液をNMR分析したところ、尿素結合を有する副生物の収率は1質量%であった。
【0165】
以上のことから、実機スケールにおいても、アミン化合物のフェノール塩とした後、アミン化合物のフェノール塩と炭酸ジフェニルの反応を行うことで、尿素結合を有する副生物の生成が抑制されて、目的物の収率が向上することが確かめられた。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本実施形態の製造方法によれば、尿素結合を有する副生物の生成を抑制しながら、効率的にカルバメートを製造することができる。
【符号の説明】
【0167】
101,102,104,201,202,204…貯槽
103,203…攪拌槽(反応器)
11,12,13,21,22,23,24…ライン
図1
図2