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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180187
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】バッテリ収容装置及び電動車両
(51)【国際特許分類】
   B62J 43/28 20200101AFI20221129BHJP
   B62J 43/16 20200101ALI20221129BHJP
   H01M 50/244 20210101ALI20221129BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20221129BHJP
   B62J 27/00 20200101ALN20221129BHJP
【FI】
B62J43/28
B62J43/16
H01M50/244 Z
H01M50/249
B62J27/00
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087145
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 剛士
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA12
5H040AS05
5H040AY03
5H040CC12
(57)【要約】
【課題】バッテリの脱着作業を容易化できるバッテリ収容装置を提供する。
【解決手段】押さえ部材31は、支持軸38が設けられた基部を有し、支持軸38を中心として閉位置と開位置との間で動かすことが可能である。操作レバー41は、支持軸38から離れた位置にある連結軸49を介して押さえ部材31と連結しており、固定位置と解除位置との間で連結軸49を中心として押さえ部材31に対して相対的に動かすことが可能であり、操作入力部41aと係合部42とを有している。連結軸49と操作入力部41aとの距離L1は連結軸49と係合部42との距離L2よりも大きい。被係合部51は、押さえ部材31が閉位置にあり且つ操作レバー41が固定位置にあるときに操作レバー41の係合部42と係合する。
【選択図】図6A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのバッテリを挿入可能なバッテリ収容部と、
支持軸が設けられた基部を有し、前記支持軸を中心として閉位置と開位置との間で動かすことが可能であり、前記閉位置に配置されるとき前記バッテリ収容部からの取り出し方向への前記少なくとも1つバッテリの移動を制限し、前記開位置に配置されるとき前記取り出し方向への前記少なくとも1つのバッテリの移動を許容する押さえ部材と、
前記支持軸から離れた位置にある連結軸を介して前記押さえ部材と連結しており、固定位置と解除位置との間で前記連結軸を中心として前記押さえ部材に対して相対的に動かすことが可能であり、作業者の操作力を受ける操作入力部と、係合部とを有し、前記連結軸と前記操作入力部との距離が前記連結軸と前記係合部との距離よりも大きい操作レバーと、
前記押さえ部材が前記閉位置にあり且つ前記操作レバーが前記固定位置にあるときに前記操作レバーの前記係合部と係合する被係合部と
を有しているバッテリ収容装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つのバッテリが前記バッテリ収容部に配置され且つ前記押さえ部材が閉位置にある状態において、前記操作レバーが前記固定位置にあるときの前記連結軸は、前記操作レバーが解除位置にあるときの前記連結軸よりも、前記バッテリ収容部に向かって下がっている
請求項1に記載されるバッテリ収容装置。
【請求項3】
前記バッテリ収容部には、前記少なくとも1つのバッテリとして、複数のバッテリが挿入可能であり、
前記押さえ部材は前記閉位置において前記複数のバッテリの前記取り出し方向への移動を制限する
請求項1に記載されるバッテリ収容装置。
【請求項4】
前記押さえ部材が閉位置にあり且つ前記操作レバーが前記固定位置にあるとき、前記押さえ部材が前記支持軸から延びている方向と、前記操作レバーが前記連結軸から延びている方向は反対である
請求項1に記載されるバッテリ収容装置。
【請求項5】
前記押さえ部材が前記閉位置にあるとき、前記押さえ部材は前記支持軸から第1の方向に延びており、
前記少なくとも1つのバッテリは前記第1の方向に向いている第1の面と、前記第1の方向の反対方向である第2の方向に向いている第2の面とを有し、
前記支持軸は前記少なくとも1つのバッテリの前記第2の面より前記第2の方向に位置し、
前記連結軸は前記少なくとも1つのバッテリの前記第1の面より前記第1の方向に位置している
請求項1に記載されるバッテリ収容装置。
【請求項6】
前記押さえ部材が前記閉位置にあるとき、前記押さえ部材は前記支持軸から第1の方向に延びており、
前記バッテリ収容部には、前記少なくとも1つのバッテリとして、第1バッテリと、前記第1バッテリに対して第1の方向に配置される第2バッテリとが挿入可能であり、
前記第2バッテリは前記第1の方向に向いている第3の面を有し、
前記押さえ部材が前記閉位置にあるとき、前記連結軸は前記支持軸から前記第1の方向に離れており、前記第3の面より前記第2の方向に位置している
請求項1に記載されるバッテリ収容装置。
【請求項7】
前記押さえ部材が前記閉位置にあるとき、前記押さえ部材は前記支持軸から第1の方向に延びており、
前記バッテリ収容部には、前記少なくとも1つのバッテリとして、第1バッテリと、前記第1バッテリに対して第1の方向に配置される第2バッテリとが挿入可能であり、
前記第1バッテリと前記第2バッテリのそれぞれは、前記バッテリ収容部からの前記バッテリの取り外し方向での端部を有し、
前記押さえ部材が前記閉位置にあるとき、前記連結軸は前記支持軸から前記第1の方向に離れており、且つ前記第2バッテリの前記端部よりも、前記第1の方向とは反対方向である第2の方向に位置している
請求項1に記載されるバッテリ収容装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つのバッテリは、前記バッテリ収容部からの前記バッテリの取外方向での端部を有し、
前記連結軸は前記少なくとも1つのバッテリの前記端部よりも前記バッテリの挿入方向に位置してよい
請求項1に記載されるバッテリ収容装置。
【請求項9】
前記操作レバーには、前記操作レバーを前記固定位置から前記解除位置に向けて付勢する弾性部材が設けられている
請求項1に記載されるバッテリ収容装置。
【請求項10】
前記操作レバーに引っかかり前記操作レバーの前記固定位置から前記解除位置への移動を規制するストッパ部材が、前記押さえ部材に取り付けられている
請求項9に記載されるバッテリ収容装置。
【請求項11】
前記ストッパ部材は、前記固定位置にある前記操作レバーの前記解除位置に向けた移動を規制する干渉位置と、前記固定位置にある前記操作レバーの前記解除位置に向けた移動を許容する非干渉位置との間で動くことができ、
前記操作レバーは係合部を有し、
前記係合部は、前記固定位置から前記解除位置に向けて前記操作レバーが移動する過程で前記ストッパ部材に引っかかり、前記干渉位置から前記非干渉位置に向けた前記ストッパ部材の移動を制限する
請求項10に記載されるバッテリ収容装置。
【請求項12】
前記操作レバーは前記ストッパ部材にあたる被ストッパ部を有し、
前記ストッパ部材は前記被ストッパ部にあたる干渉部を有し、
前記押さえ部材が前記閉位置あるとき、前記操作レバーが前記固定位置から前記解除位置に向けて移動するときの前記被ストッパ部の初期の移動方向は、前記ストッパ部材が前記干渉位置から前記非干渉位置に向けて移動するときの前記ストッパ部の初期の移動方向と実質的に直交している
請求項1に記載されるバッテリ収容装置。
【請求項13】
前記押さえ部材は、前記少なくとも1つのバッテリにあたり、前記バッテリ収容部への挿入方向に前記少なくとも1つのバッテリを付勢する接触部を有し、
前記押さえ部材は、前記閉位置にあるとき、前記支持軸から第1の方向に延びており、
前記接触部は、前記第1の方向における前記少なくとも1つのバッテリの中心よりも前記支持軸寄りに位置している
請求項1に記載されるバッテリ収容装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つのバッテリは充電インレットが設けられている面を有し、
前記押さえ部材と前記操作レバーは、前記少なくとも1つのバッテリの前記面を覆っており、
前記押さえ部材と前記操作レバーは、前記充電インレットを露出させる形状を有している
請求項1に記載されるバッテリ収容装置。
【請求項15】
前記バッテリ収容部の後方又は前方に形成されている荷物収納部をさらに有し、
前記バッテリ収容部の内部と前記荷物収納部の内部は繋がっている
請求項1に記載されるバッテリ収容装置。
【請求項16】
請求項1に記載する収容装置と、
前記少なくとも1つのバッテリと
前記少なくとも1つのバッテリからの電力で駆動する電動モータを有するパワーユニットと
を有している電動車両。
【請求項17】
前記少なくとも1つのバッテリ、前記バッテリ収容部、前記押さえ部材、及び前記操作レバーを露出させる露出位置と、これらを覆う非露出位置との間で移動可能なカバーを有し、
前記押さえ部材が前記開位置にあるとき、又は前記操作レバーが前記解除位置にあるとき、前記露出位置から前記非露出位置への前記カバーの移動が前記押さえ部材又は前記操作レバーによって規制される
請求項16に記載される電動車両。
【請求項18】
前記カバーはシートである
請求項17に記載される電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリ収容装置と電動車両とに関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータを駆動源とする自動二輪車の開発が進められている。特許文献1には、複数のバッテリが脱着可能な自動二輪車が開示されている。この車両によると、バッテリの全容量を確保しつつ、各バッテリを軽量化し、バッテリの脱着作業を容易化できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/068753号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の車両では、バッテリケースはシートの下方に配置されている。バッテリケースに収容されているバッテリはシートの下面に設けられている発条によって下方に押されている。これにより、車両の走行時にバッテリの上下動を低減できる。発条によってバッテリを押さえる力を増すと、作業者が蓋(特許文献1においてシート)を閉じるのに要する力が大きくなり、バッテリの脱着作業時の負荷が大きくなる。
【0005】
本開示は、バッテリの脱着作業を容易化できるバッテリ収容装置及び電動車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示で提案するバッテリ収容装置の一例は、少なくとも1つのバッテリを挿入可能なバッテリ収容部と、押さえ部材と、操作レバーと、被係合部とを有する。前記押さえ部材は、支持軸が設けられた基部を有し、前記支持軸を中心として閉位置と開位置との間で動かすことが可能であり、前記閉位置に配置されるとき前記バッテリ収容部からの取り出し方向への前記少なくとも1つバッテリの移動を制限し、前記開位置に配置されるとき前記取り出し方向への前記少なくとも1つのバッテリの移動を許容する。前記操作レバーは、前記支持軸から離れた位置にある連結軸を介して前記押さえ部材と連結しており、固定位置と解除位置との間で前記連結軸を中心として前記押さえ部材に対して相対的に動かすことが可能であり、作業者の操作力を受ける操作入力部と、係合部とを有している。前記連結軸と前記操作入力部との距離は前記連結軸と前記係合部との距離よりも大きい。前記被係合部は、前記押さえ部材が前記閉位置にあり且つ前記操作レバーが前記固定位置にあるときに前記操作レバーの前記係合部と係合する。
【0007】
(2)(1)のバッテリ収容装置において、前記少なくとも1つのバッテリが前記バッテリ収容部に配置され且つ前記押さえ部材が閉位置にある状態において、前記操作レバーが前記固定位置にあるときの前記連結軸は、前記操作レバーが解除位置にあるときの前記連結軸よりも、前記バッテリ収容部に向かって下がってよい。
【0008】
(3)(1)又は(2)のバッテリ収容装置において、前記バッテリ収容部には、前記少なくとも1つのバッテリとして、複数のバッテリが挿入可能であり、前記押さえ部材は前記閉位置において前記複数のバッテリの前記取り出し方向への移動を制限してよい。これによると、操作レバーを操作すると複数のバッテリの動きを制限できる。
【0009】
(4)(1)乃至(3)のバッテリ収容装置において、前記押さえ部材が閉位置にあり且つ前記操作レバーが前記固定位置にあるとき、前記押さえ部材が前記支持軸から延びている方向と、前記操作レバーが前記連結軸から延びている方向は反対であってよい。押さえ部材と操作レバーの配置及び利用に要するスペースを小さくできる。
【0010】
(5)(1)乃至(4)のバッテリ収容装置において、前記押さえ部材が前記閉位置にあるとき、前記押さえ部材は前記支持軸から第1の方向に延びている。前記少なくとも1つのバッテリは前記第1の方向に向いている第1の面と、前記第1の方向の反対方向である第2の方向に向いている第2の面とを有し、前記支持軸は前記少なくとも1つのバッテリの前記第2の面より前記第2の方向に位置し、前記連結軸は前記少なくとも1つのバッテリの前記第1の面より前記第1の方向に位置してよい。この構造によると、バッテリに作用する力を十分に確保することが可能となる。
【0011】
(6)(1)乃至(5)のバッテリ収容装置において、前記押さえ部材が前記閉位置にあるとき、前記押さえ部材は前記支持軸から第1の方向に延びている。前記バッテリ収容部には、前記少なくとも1つのバッテリとして、第1バッテリと、前記第1バッテリに対して第1の方向に配置される第2バッテリとが挿入可能である。前記第2バッテリは前記第1の方向に向いている第3の面を有してよい。前記押さえ部材が前記閉位置にあるとき、前記連結軸は前記支持軸から前記第1の方向に離れており、前記第3の面より前記第2の方向に位置してよい。この構造によると、第2バッテリに対して第1の方向に十分なスペースを確保することが容易となる。
【0012】
(7)(1)乃至(6)のバッテリ収容装置において、前記押さえ部材が前記閉位置にあるとき、前記押さえ部材は前記支持軸から第1の方向に延びてよい。前記バッテリ収容部には、前記少なくとも1つのバッテリとして、第1バッテリと、前記第1バッテリに対して第1の方向に配置される第2バッテリとが挿入可能であってよい。前記第1バッテリと前記第2バッテリのそれぞれは、前記バッテリ収容部からの前記バッテリの取り外し方向での端部を有してよい。前記押さえ部材が前記閉位置にあるとき、前記連結軸は前記支持軸から前記第1の方向に離れており、且つ前記第2バッテリの前記端部よりも、前記第1の方向とは反対方向である第2の方向に位置してよい。操作レバーの連結軸の位置を、第2バッテリの挿入方向において第2バッテリに近づけることが可能となる。その結果、操作レバー及び押さえ部材の位置を維持したまま、バッテリのサイズを増すことができる。
【0013】
(8)(1)乃至(7)のバッテリ収容装置において、前記少なくとも1つのバッテリは、前記バッテリ収容部からの前記バッテリの取外方向での端部を有してよい。前記連結軸は前記少なくとも1つのバッテリの前記端部よりも前記バッテリの挿入方向に位置してよい。これによると、操作レバーの位置をバッテリの挿入方向においてバッテリに近づけることができる。その結果、バッテリ、押さえ部材、及び操作レバーを含む全体のサイズを低減できる。
【0014】
(9)(1)乃至(8)のバッテリ収容装置において、前記操作レバーには、前記操作レバーを前記固定位置から前記解除位置に向けて付勢する弾性部材が設けられてよい。この構造によると、操作レバーを解除位置に戻す作業を容易化できる。
【0015】
(10)(9)のバッテリ収容装置において、前記操作レバーに引っかかり前記操作レバーの前記固定位置から前記解除位置への移動を規制するストッパ部材が、前記押さえ部材に取り付けられてよい。この構造によると、使用者が意図しないタイミングで、操作レバーが、弾性部材の弾性力を受けて開位置に移動することを抑えることができる。
【0016】
(11)(10)のバッテリ収容装置において、前記ストッパ部材は、前記固定位置にある前記操作レバーの前記解除位置に向けた移動を規制する干渉位置と、前記固定位置にある前記操作レバーの前記解除位置に向けた移動を許容する非干渉位置との間で動くことができる。前記操作レバーは係合部を有してよい。前記係合部は、前記固定位置から前記解除位置に向けて前記操作レバーが移動する過程で前記ストッパ部材に係合し、前記干渉位置から前記非干渉位置に向けた前記ストッパ部材の移動を制限してよい。これによると、作業者がストッパ部材を干渉位置から非干渉位置に移動させようとすると、操作レバーの係合部がストッパ部材に係合する。そのため、作業者は、操作レバーの係合部とストッパ部材との係合を解消し、その後に、ストッパ部材を非干渉位置まで移動し、操作レバーを解除位置に向けて移動することとなる。その結果、操作レバーの急な動きを押さえることができる。
【0017】
(12)(10)のバッテリ収容装置において、前記操作レバーは前記ストッパ部材にあたる被ストッパ部を有してよい。前記ストッパ部材は前記被ストッパ部にあたる干渉部61aを有してよい。前記押さえ部材が前記閉位置あるとき、前記操作レバーが前記固定位置から前記解除位置に向けて移動するときの前記被ストッパ部の初期の移動方向は、前記ストッパ部材が前記干渉位置から前記非干渉位置に向けて移動するときの前記干渉部の初期の移動方向と実質的に直交してよい。この構造によると、例えば、電動車両の走行時に生じる振動に起因して、操作レバーが固定位置から解除位置に向けて移動してしまうことを、効果的に抑えることができる。
【0018】
(13)(1)乃至(12)のバッテリ収容装置において、前記押さえ部材は、前記少なくとも1つのバッテリにあたり、前記バッテリ収容部への挿入方向に前記少なくとも1つのバッテリを付勢する接触部を有してよい。前記押さえ部材は、前記閉位置にあるとき、前記支持軸から第1の方向に延びてよい。前記接触部は、前記第1の方向における前記少なくとも1つのバッテリの中心よりも前記支持軸寄りに位置してよい。この構造によると、接触部と支持軸との距離が小さくなるので、レバー比を増すことができる。
【0019】
(14)(1)乃至(13)のバッテリ収容装置において、前記少なくとも1つのバッテリは充電インレットが設けられている面を有してよい。前記押さえ部材と前記操作レバーは、前記少なくとも1つのバッテリの前記面を覆ってよい。前記押さえ部材と前記操作レバーは、前記充電インレットを露出させる形状を有してよい。この構造によると、押さえ部材によってバッテリの位置変化を制限したまま、バッテリを充電することが可能となる。
【0020】
(15)(1)乃至(14)のバッテリ収容装置において、前記バッテリ収容部の後方又は前方に形成されている荷物収納部をさらに有してよい。前記バッテリ収容部の内部と前記荷物収納部の内部は繋がっていてよい。この構造によると、バッテリ収容部にバッテリを配置していない状態では、バッテリ収容部と荷物収納部とに大きな荷物を収納できる。
【0021】
(16)本開示で提案する電動車両は、前記少なくとも1つのバッテリと、前記少なくとも1つのバッテリからの電力で駆動する電動モータとを有している。
【0022】
(17)(16)の電動車両は、前記少なくとも1つのバッテリ、前記バッテリ収容部、前記押さえ部材、及び前記操作レバーを露出させる露出位置と、これらを覆う非露出位置との間で移動可能なカバーを有してよい。前記押さえ部材が前記開位置にあるとき、又は前記操作レバーが前記解除位置にあるとき、前記露出位置から前記非露出位置への前記カバーの移動が前記押さえ部材又は前記操作レバーによって規制されてよい。この構造によると、操作レバーが固定位置にない状態ではカバーが開いているので、そのような状態で運転者が電動二輪車を走行させることを抑えることができる。なお、カバーとは、車両の外装カバーや、運転者が座るシートであってよい。
【0023】
(18)(17)の電動車両において、前記カバーはシートであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本開示で提案する電動車両の例として、電動二輪車を示す左側面図である。
図2図1で示す電動二輪車に搭載されるバッテリ収容装置の斜視図である。
図3】バッテリ及びバッテリロック機構の平面図である。
図4】バッテリロック機構の斜視図である。
図5図3で示すV-V線で得られるバッテリロック機構の断面図である。
図6A】バッテリとバッテリロック機構の側面図である。この図において、押さえ部材は閉位置に配置され、操作レバーは固定位置に配置されている。
図6B】バッテリとバッテリロック機構の側面図である。この図において、押さえ部材は閉位置に配置され、操作レバーは解除位置に配置されている。
図6C】バッテリとバッテリロック機構の側面図である。この図において、押さえ部材は開位置に配置され、操作レバーは解除位置に配置されている。
図7】バッテリロック機構がシートの閉じ方向への移動を規制している様子を示す図である。
図8A】ストッパ部材が干渉位置にある様子を示す断面図である。
図8B】ストッパ部材が非干渉位置にある様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下において、本開示で提案するバッテリ収容装置及び電動車両の例を説明する。本明細書では、それらの例として、電動二輪車1(図1参照)及びバッテリ収容装置S(図”参照)を説明する。図1において、Fr及びBcが示す方向をそれぞれ前方及び後方と称し、Up及びDwが示す方向をそれぞれ上方及び下方と称する。図3に示すR及びLが示す方向をそれぞれ右方及び左方と称する。本開示で提案する電動車両は、電動二輪車に限られず、ATV(All Terrain Vehicle)或いはROV(Recreational Off-Highway Vehicle)と称される電動三輪車や電動四輪車などであってもよい。
【0026】
[電動二輪車の概要]
図1で示すように、電動二輪車1は、ハンドルバー2と、ハンドルバー2を支持しているステアリングシャフト(不図示)と、ステアリングシャフトと一体的に回転するフロントフォーク3と、フロントフォーク3によって支持されている前輪4とを有している。
【0027】
図1で示すように、電動二輪車1は、シート5と、シート5の下方に配置されるバッテリ70A・70Bを有している。電動二輪車1は複数のバッテリ70A・70Bを有してよい。図2で示すように、バッテリ70A・70Bの数は、例えば2つであってよい。2つのバッテリ70A・70Bは前後方向において並んで配置されてよい。図で示す例とは異なり、バッテリの数は1つでもよいし、2つより多くてもよい。さらに他の例として、2つのバッテリ70A・70Bは左右方向において並んでいてもよい。
【0028】
図1で示すように、電動二輪車1はバッテリ70A・70Bから受ける電力によって駆動するパワーユニット6を有している。パワーユニット6は、バッテリ70A・70Bから受ける直流を交流に変換するインバーター(不図示)と、インバーターから受ける電力で駆動する電動モータ(不図示)とを有している。
【0029】
図1で示すように、後輪7はパワーユニット6の後部によって支持されている。シート5とハンドルバー2との間にフットボード8を有している。電動二輪車1は、所謂スクータータイプの車両である。本開示で提案する電動車両は、スクータータイプの二輪車に限られない。
【0030】
電動二輪車1はバッテリ収容装置S(図2参照)を有している。バッテリ収容装置Sはシート5の下方に配置されている。バッテリ収容装置Sは、図2で示すように、ケース20を有している。ケース20は、バッテリ70A・70Bを挿入可能なバッテリ収容部21を有している。また、ケース20は、バッテリ収容部21の後方に、ヘルメットなどの荷物を収納できる荷物収納部29を有してよい。
【0031】
[バッテリ収容部]
バッテリ収容部21は、複数のバッテリ70A・70Bが挿入できるように構成されてよい。図で示す例において、バッテリ収容部21は、前後方向で並んでいる2つの収容部21A・21Bを有している。そして、2つバッテリ70A・70Bが収容部21A・21Bにそれぞれ挿入可能である。各収容部21A・21Bは、例えば、上方に開いた箱状であり、バッテリ70A・70Bは収容部21A・21Bの上側から挿入可能である。バッテリ収容部21及び荷物収納部29はシート5で覆われており、シート5を開けることで、バッテリ70A・70Bの収容部21A・21Bへの挿入又は取り外しが許容される。各収容部21A・21Bの内部にバッテリ70A・70Bと電気的に接続するための端子が設けられている。
【0032】
バッテリ70A・70Bは、その上端と下端との間に端子74(図1参照)を有してよい。具体的には、端子74はバッテリ70A・70Bの側面に設けられてよい。バッテリ収容部21の内側には端子74に接続するための端子が設けられる。バッテリ70A・70Bの電力はこの端子を通して電動モータに供給される。端子74の位置がバッテリ70A・70Bの下端から上方に離れているので、例えば水が溜まっている場所を走行する場合に、端子74にその水がかかることを避けることができる。端子74の位置は、ここで説明する例に限られず、例えばバッテリ70A・70Bの下面に設けられてもよい。
【0033】
2つのバッテリ70A・70Bは、相互に独立して、収容部21A・21Bから取り外したり、収容部21A・21Bに挿入することが可能である。すなわち、一方のバッテリ70A(又は70B)だけを、収容部21A(又は21B)から取り外したり、収容部21A(又は21B)に取り付けることが可能である。2つのバッテリ70A・70Bは同じ構造であってよい。この場合、図2において後側に配置されているバッテリ70Bを前側の収容部21Aに挿入し、前側に配置されているバッテリ70Aを後側の収容部21Bに挿入することができる。
【0034】
パワーユニット6は、バッテリ収容装置Sに1つのバッテリ70A(又は70B)だけしか搭載されていない状態で、駆動できるように構成されてよい。これによると、例えば一方のバッテリ70A(又は70B)を電動二輪車1から取り外し、外部電源によって充電しているときに、他方のバッテリ70B(又は70A)だけを電動二輪車1に搭載し、電動二輪車1を走行させることが可能となる。これとは異なり、パワーユニット6の駆動には、2つのバッテリ70A・70Bが必要とされてもよい。
【0035】
図2で示すように、収容部21A・21Bは、実質的に、バッテリ70A・70Bの全体が収容できるように構成されてよい。すなわち、収容部21A・21Bの深さはバッテリ70A・70Bの高さに対応していてよい。これとは異なり、収容部21A・21Bはバッテリ70A・70Bの下部だけを収容でき、バッテリ70A・70Bの上部は収容部21A・21Bから露出していてもよい。さらに他の例として、収容部21A・21Bは箱状でなくてもよい。例えば、収容部21A・21Bはバッテリ70A・70Bを支持しているものの、バッテリ70A・70Bの外面の大部分が露出するように、構成されていてもよい。
【0036】
さらに他の例として、収容部21A・21Bは、それらの上側ではなく、左側(又は右側)からバッテリ70A・70Bを挿入できるように構成されていてもよい。この場合、電動二輪車1の外装カバー11(図1参照)にバッテリ70A・70Bを露出させる蓋が設けられてもよい。この場合、後述するバッテリロック機構M(図2参照)は、バッテリ70A・70Bの左側(又は右側)に配置され、外装カバー11に設けられている蓋によって覆われてよい。
【0037】
[荷物収納部]
荷物収納部29も上方に開口した箱状である。シート5を開けることで、荷物収納部29に荷物を入れたり、取り出したりできる。バッテリ収容部21の内部と荷物収納部29の内部は繋がっていてよい。すなわち、バッテリ収容部21の内部と荷物収納部29の内部とに、相互に連通したスペースが形成されてよい。図で示す例では、後側の収容部21Bの内部が荷物収納部29の内部に繋がっている。すなわち、後側の収容部21Bと荷物収納部29との間に、これらを区画する壁が形成されていない。この構造によれば、例えば、後側の収容部21Bにバッテリ70Bを配置していない状態では、収容部21Bと荷物収納部29とに大きな荷物を収納できる。
【0038】
荷物収納部29とバッテリ収容部21(すなわち、収容部21A・21B)は一体的に形成されていてよい。これとは異なり、荷物収納部29とバッテリ収容部21は別個に形成されていてよい。そして、荷物収納部29とバッテリ収容部21は、螺子などの固定具によって相互に固定されたり、荷物収納部29とバッテリ収容部21のそれぞれが車体フレームに固定されていてよい。さらに他の例では、ケース20は荷物収納部29を有していなくてもよい。
【0039】
[バッテリロック機構の要素]
電動二輪車1はバッテリロック機構M(図2参照)を有している。図4で示すように、バッテリロック機構Mは、収容部21A・21Bに収容されているバッテリ70A・70Bの上方への動きを制限する押さえ部材31を有している。また、バッテリロック機構Mは、押さえ部材31に連結されている、作業者が操作するための操作レバー41を有している。また、バッテリロック機構Mは、操作レバー41と係合させるための被係合部51を有している。被係合部51は、支持部材50に形成されてよい。後述するように、支持部材50は、例えば、ケース20や車体フレームに取り付けられる。
【0040】
[押さえ部材]
押さえ部材31の基部には、支持軸38(図6参照)が設けられている。押さえ部材31は、支持軸38を中心として閉位置(図6A及び図6B)と開位置(図6C)との間で動かすことが可能である。支持軸38は、その中心線が左右方向に沿うように設けられている。押さえ部材31は閉位置にあるとき、バッテリ70A・70Bの上側に位置し、バッテリ70A・70Bの上方への動き(収容部21A・21Bからの取り出し方向への動き)を制限する。一方、押さえ部材31は、開位置にあるとき、バッテリ70A・70Bの上方への動きを許容する。押さえ部材31は、閉位置(図6A)にあるとき支持軸38から後側に向かって延びており、開位置(図6C)にあるとき支持軸38から上方に延びている。
【0041】
上述したように、バッテリ収容部21には複数のバッテリ70A・70Bが収容可能である。押さえ部材31は、閉位置(図6A)にあるときに、複数のバッテリ70A・70Bの上側に位置し、これらのバッテリ70A・70Bの上方への動きを制限する。この構造によると、複数のバッテリ70A・70Bの動きを少ない操作で制限できる。バッテリ収容部21に収容されるバッテリの数は、2つより多くてもよい。この場合、押さえ部材31は全てのバッテリを覆うサイズを有してよい。
【0042】
支持軸38は、押さえ部材31の基部(図で示す例において、前端)に形成された被支持穴に嵌められて、押さえ部材31を支持している。支持軸38は支持部材39(図4参照)によって支持されている。支持部材39は、例えば、ケース20に取り付けられる。具体的には、支持部材39は、バッテリ収容部21の前側に取り付けられる。こうすることによって、電動二輪車1の組立工程において、ケース20とバッテリロック機構Mとを1つの部品として扱うことができるので、組立作業を容易化できる。これとは異なり、支持部材39は、車体フレーム(不図示)に取り付けられてもよい。押さえ部材31は、その基部に形成されている被支持穴からの支持軸38の抜けを防止する抜け止め部材37(図4参照)を有してよい。
【0043】
押さえ部材31の支持構造は、図で示す例に限られない。例えば、支持軸38は押さえ部材31と一体的に形成されてもよい。この場合、支持軸38は、押さえ部材31の基部から右方及び左方に突出する凸部であってよい。支持部材39は、この支持軸(凸部)の回転を許容しながら、これを保持するように構成されてよい。
【0044】
押さえ部材31は、その下側に、バッテリ70A・70Bの上面に当たる接触部32(図2及び図5参照)を有している。押さえ部材31が閉位置にあるとき、接触部32はバッテリ70A・70Bを下方(収容部21A・21Bへの挿入方向)に付勢する。押さえ部材31は、接触部32を下方に押す弾性部材33を有してよい。弾性部材33は、例えばコイルスプリングである。押さえ部材31は、各バッテリ70A・70Bについて2つの接触部32を有してよい。これとは異なり、各バッテリ70A・70Bについて設けられる接触部32の数は1つでもよいし、2つより多くてもよい。また、他の例として、接触部32自体がゴムなどの弾性部材で形成されてよい。この場合、押さえ部材31は弾性部材33であるコイルスプリングを有していなくてもよい。
【0045】
図4及び図5で示すように、押さえ部材31は、その前部に、前押さえ部31Aを有している。また、押さえ部材31は、その後部に、後押さえ部31Bを有している。押さえ部材31が閉位置にあるとき、前押さえ部31Aは前側のバッテリ70Aの上方に位置し、後押さえ部31Bは後側のバッテリ70Bの上方に位置している。押さえ部31A・31Bのそれぞれに、バッテリ70A・70Bを下方に押すための接触部32が設けられている。
【0046】
図5で示すように、前側のバッテリ70Aに設けられている接触部32は、前後方向におけるバッテリ70Aの中心Pvaより前方に位置している。同様に、後側のバッテリ70Bに設けられている接触部32は、前後方向におけるバッテリ70Bの中心Pvbより前方に位置している。つまり、各接触部32は、バッテリ70A・70Bの中心Pva・Pvbに対して支持軸38寄りに位置している。これによると、接触部32と支持軸38との距離が小さくなるので、レバー比を増すことができる。
【0047】
図4で示すように、押さえ部材31は、前押さえ部31Aの左部と右部とから後方に延び、後押さえ部31Bの左部と右部とにそれぞれ接続する左右の延伸部31cを有してよい。そして、押さえ部材31は、前押さえ部31A、後押さえ部31B、及び左右の延伸部31cの内側に、開口を有してよい。この開口を通してバッテリ70Aの上面が部分的に露出してよい。バッテリ70A・70Bの上面には、後述する充電インレット73が設けられてよい。充電インレット73は上述した開口を通して上側に露出してよい。
【0048】
押さえ部材31の形状は、図で示す例に限られない。押さえ部材31は、例えば、上述した開口を有していなくてもよい。つまり、押さえ部材31は、平面視において、バッテリ70A・70Bの上面を覆う板状の部材であってもよい。
【0049】
[操作レバー]
操作レバー41は、支持軸38(図6参照)から離れた位置にある連結軸49(図4参照)を介して、押さえ部材31と連結している。図で示す例では、操作レバー41は、押さえ部材31の後部にある後押さえ部31Bに連結している。連結軸49は、その中心線が左右方向に沿うように設けられている。操作レバー41は、連結軸49を中心として、固定位置(図6A)と、解除位置(図6B及び図6C)との間で、押さえ部材31に対して相対的に動くことが可能である。
【0050】
図4で示すように、操作レバー41は、操作入力部41aと、係合部42とを有している。操作レバー41は、例えば、操作レバー41の左右方向における中央部に操作入力部41aを有する。また、操作レバー41は、その後部の右側と左側のそれぞれに被連結部41dと係合部42とを有する。被連結部41dは連結軸49が設けられている部分である。係合部42は、ケース20や車体フレームに設けられている被係合部51に係合する部分である。
【0051】
図4で示すように、被連結部41dは後押さえ部31Bの側方に位置し、連結軸49を介して後押さえ部31Bに連結されている。連結軸49は例えばボルトであるが、押さえ部材31と一体的に形成される凸部であったり、操作レバー41と一体的に形成される凸部であってもよい。
【0052】
図3及び図4で示すように、操作レバー41は、操作入力部41aの左部と右部とから後方にそれぞれ延びている左右の延伸部41bを有してよい。延伸部41bは被連結部41d及び係合部42に接続している。操作レバー41は、操作入力部41aと、左右の延伸部41bと、左右の被連結部41dと、左右の係合部42の内側に、開口を有している。この開口を通してバッテリ70Aの上面が部分的に露出している。図で示す例では、バッテリ70Aの上面に設けられている充電インレット73が、この開口を通して上側に露出している。
【0053】
操作レバー41の形状は、図で示す例に限られない。例えば、操作レバー41は、上述した開口を有していなくてもよい。つまり、操作レバー41は、平面視において、バッテリ70A・70Bの上面を覆う板状の部材であってもよい。
【0054】
図4で示すように、押さえ部材31が閉位置にあり且つ操作レバー41が固定位置にあるとき、押さえ部材31が支持軸38から延びている方向と、操作レバー41が連結軸49から延びている方向は反対である。図で示す例では、押さえ部材31は支持軸38から後方に延びている。一方、操作レバー41は連結軸49から前方に延びている。押さえ部材31と操作レバー41のこの配置によると、バッテリロック機構Mの前後方向でのサイズを低減できる。操作レバー41は固定位置にあるとき、押さえ部材31に重なっている。操作レバー41は解除位置にあるとき、押さえ部材31から上方に離れている。操作レバー41の前端41cの位置は押さえ部材31の前端31dよりも後方である。
【0055】
図6Aで示すように、押さえ部材31が閉位置にあり且つ操作レバー41が固定位置にあるとき、係合部42と被係合部51は相互に係合する。操作入力部41aと連結軸49との距離L1は、係合部42と連結軸49との距離L2よりも大きい。
【0056】
距離L1は、操作入力部41aにおいて連結軸49から最も離れている部分(図で示す例において、操作入力部41aの上面の前端)と、連結軸49の中心との距離である。また、距離L2は、係合部42において被係合部51と接触する部分と、連結軸49の中心との距離である。
【0057】
押さえ部材31、操作レバー41、及び被係合部51を有する上述した構造によると、次のようなバッテリの装着作業が可能となる。すなわち、作業者は、押さえ部材31を開位置(図6C)に配置した状態で、バッテリ70A(及び/又は70B)をバッテリ収容部21に挿入する。そして、作業者は、押さえ部材31を閉位置(図6B)まで動かす。作業者は、操作レバー41の係合部42を被係合部51に係合させて、操作レバー41の操作入力部41aを押し下げ、操作レバー41を解除位置(図6B)から固定位置(図6A)まで動かす。これによって、バッテリ70A・70Bの上方への動きが規制される。
【0058】
このような装着作業を可能とする構造によると、作業者がバッテリ70A・70Bを収容部21A・21Bに装着するのに要する力を低減できる。その結果、バッテリ70A・70Bの脱着作業を容易化できる。また、バッテリロック機構Mの前後方向でのサイズを低減できる。
【0059】
図で示す例において、操作入力部41aは、操作レバー41の左右方向における中央部である。また、操作入力部41aは、押さえ部材31が閉位置にあり且つ操作レバー41が固定位置にある状態(図6A)で、上方に向いた面を有している。しかしながら、操作入力部41aは、係合部42と連結軸49との距離L2(図6A参照)よりも大きな距離を、連結軸49と操作入力部41aとの間に有する部分であればよく、その形状や位置は、図で示した例に限定されない。
【0060】
また、操作レバー41は、押さえ部材31の後部(後押さえ部31B)の上側を覆い、及び/又は、押さえ部材31の前部(前押さえ部31A)の上側を覆う板状の部材であってもよい。この場合、操作レバー41の前部が操作入力部41aとして機能してよい。また、操作レバー41は、作業者が握るための持ち手を、操作入力部41aとして有してもよい。
【0061】
また、押さえ部材31と操作レバー41の配置も、図で示す例に限られない。例えば、図で示す例とは反対に、押さえ部材31は支持軸38から前方に延び、操作レバー41は連結軸49から後方に延びてもよい。さらに他の例として、押さえ部材31は支持軸38から後方に延び、操作レバー41は連結軸49から下方に延びてもよい。この構造では、操作レバー41は、固定位置にあるとき、後側のバッテリ70Bの後側に配置されてよい。
【0062】
上述したように、被係合部51は支持部材50に取り付けられている。支持部材50は例えば、ケース20に取り付けられる(図2参照)。この構造によると、被係合部51、バッテリロック機構M、及びバッテリ収容部21が相互に連結される。そのため、電動二輪車1の組立工程において、これらを1つの部品として取り扱うことが可能となり、組立作業を容易化できる。図で示す例では、支持部材50はケース20の右壁部と左壁部(言い換えれば、バッテリ収容部21の側壁部21(左壁部及び右壁部))の内面に取り付けられている。被係合部51は支持部材50からケース20の右壁部と左壁部とに向かって突出している。
【0063】
図で示す例とは異なり、支持部材50は車体フレームに取り付けられてもよい。さらに他の例では、被係合部51が直接的にケース20に取り付けられたり、車体フレームに直接的に取り付けられてもよい。
【0064】
[係合部と被係合部]
図6Aで示すように、係合部42は鉤形状である。被係合部51は、バッテリ収容部21の側壁21aに向かって支持部材50から突出する凸部である。係合部42は下部42aと前部42bとを有している。前部42bは、押さえ部材31が閉位置にあり且つ操作レバー41が固定位置にある状態で、被係合部51の前側に位置する。下部42aは、同状態において、前部42bから後方に延びており、被係合部51の下側に位置する。操作レバー41が解除位置(図6B)から固定位置(図6A)に移動すると、係合部42は連結軸49を中心として回転し、下部42aは被係合部51の前側から下側に移動する。これによって、係合部42と被係合部51との係合が確立する。
【0065】
図6Bで示すように、操作レバー41が解除位置にあるとき、押さえ部材31がバッテリ70A・70Bから受ける反力(弾性部材33の弾性力)によって、連結軸49の位置はバッテリ70A・70Bから上方に離れている。図6Aで示すように、操作レバー41が固定位置に向かって移動すると、すなわち、係合部42が連結軸49を中心にして回転すると、操作レバー41は、バッテリ70A・70Bからの反力(弾性部材33の弾性力)に抗して、連結軸49と押さえ部材31とを押し下げる。すなわち、操作レバー41が固定位置(図6A)にあるときの連結軸49の位置は、操作レバー41が解除位置(図6B)にあるときの連結軸49の位置より下がる。その結果、押さえ部材31はバッテリ70A・70Bを下方に押し、バッテリ70A・70Bの取り外し方向(上方)への移動を制限する。
【0066】
図6Aで示すように、係合部42はその内縁に接触面42cを有している。接触面42cは操作レバー41が解除位置にあるとき被係合部51に接触する面である。操作レバー41が解除位置(図6B)から固定位置(図6A)に移動する過程で、接触面42cの位置は下がる。言い換えれば、このような接触面42cの位置変化がなされるように、係合部42の形状、及び被係合部51の位置及び形状が設定されている。
【0067】
図6Aで示すように、被係合部51は左右方向に沿った中心線C1を有する円柱状であってよい。被係合部51は中心線C1を中心として回転可能であってよい。こうすることで、係合部42が被係合部51に係合する過程、すなわち被係合部51が係合部42の内面(接触面42c)に沿って移動する過程で、被係合部51と係合部42との間の摩擦によって、係合部42の動きが阻害されることを抑えることができる。
【0068】
被係合部51と係合部42の構造は、操作レバー41の移動に伴って連結軸49を押し下げる形状であれば、図で示す例に限られない。例えば、係合部42と被係合部51の形状は、図で示す例とは反対であってもよい。すなわち、被係合部51が前方に開口している鉤状であってよい。一方、操作レバー41の係合部42は、バッテリ収容部21の側壁に向かって左右方向において突出する凸部(例えば、円柱)であってよい。この構造によると、操作レバー41の移動に伴って、凸部である係合部42は鉤状である被係合部51の内側に入り込み、係合部42と被係合部51との係合が確立することとなる。
【0069】
図4で示されるように、操作レバー41の全体(操作入力部41a、延伸部41b、及び係合部42)が一体的に形成されている。操作レバー41の全体が、例えば樹脂で成形されている。これとは異なり、操作入力部41aの連結軸49を中心とした動きに伴って、係合部42も連結軸49を中心として動くことができる構造であれば、操作入力部41a、延伸部41b、及び係合部42は、別個に成形されて、螺子などの固定具によって相互に固定されていてよい。例えば、操作入力部41aと延伸部41bが一体的に形成され、係合部42はそれらとは別個に成形されてもよい。そして、係合部42は螺子などの固定具によって操作入力部41aと延伸部41bとに取り付けられてよい。
【0070】
操作レバー41には、操作レバー41を固定位置(図6A)から解除位置(図6B図6C)に向けて付勢するための弾性部材が設けられてもよい。この弾性部材を利用すると、操作レバー41を解除位置に戻す作業を容易化できる。弾性部材としては、ばね48(図6B参照)が利用されてよい。ばね48は、例えばねじりコイルばねであり、連結軸49はばね48の内側に嵌められる。
【0071】
押さえ部材31の前部(図で示す例において前押さえ部31A)に、後述するストッパ部材61(図4参照)が設けられている。操作レバー41の固定位置(図6A)から解除位置(図6B)への移動は、ストッパ部材61によって規制されてよい。
【0072】
[シートの動きの規制]
図7で示すように、ケース20及びバッテリロック機構Mの上方にシート5が配置されている。シート5は、その最前部に、被支持部5aを有している。被支持部5aは軸部5eによって支持され、シート5は軸部5eから後側に向かって配置されている。シート5はこの軸部5eを中心にして閉位置(図1、非露出位置)と開位置(露出位置)との間で上下に動くことができる。押さえ部材31が閉位置にあり、操作レバー41が解除位置にあるとき、操作レバー41は連結軸49から斜め前方且つ上方に延びている。この状態で、シート5を開位置から閉位置に移動させようとすると、図7で示すように、操作レバー41がシート5の閉位置への移動を規制する。これによって、操作レバー41が固定位置にない状態で、運転者が電動二輪車1を走行することを、抑えることができる。
【0073】
図7で示すように、シート5は、クッション部5bと、クッション部5bの下側に固定されているシートボトム5cとを有している。シートボトム5cには被ストッパ部5dが形成されてよい。被ストッパ部5dは、例えば、下方に突出する凸部であってよい。シート5を開位置から閉位置に移動させようとすると、操作レバー41の前端が被ストッパ部5dにあたる。被ストッパ部5dは、シートボトム5cの下面から突出し、シートボトム5cの強度を増すためのリブ5fの1つであってよい。
【0074】
このように、操作レバー41の前端がシート5の動きを規制しているとき、操作レバー41は、シート5の軸部5eから被ストッパ部5dまで延びている直線L3に対して交差する方向で延びていてよい。言い換えると、操作レバー41が解除位置にあるとき、操作レバー41の延伸方向は、直線L3に対して概ね垂直であってよい。これによって、シート5の移動を強固に規制できる。
【0075】
シート5の移動を規制する構造は、図で示す例に限られない。例えば、シート5の移動は、開位置にある押さえ部材31によって規制されてもよい。この場合、シート5は、その後端に軸部5eを有し、軸部5eを中心としてシート開位置とシート閉位置との間で動くことができてよい。この場合、開位置(図6C)にある押さえ部材31の延伸方向は、シート5の軸部5eから被ストッパ部5dまで延びている直線に対して交差していてよい。
【0076】
なお、バッテリロック機構Mとバッテリ70A・70Bを覆う部材は、シート5でなく、専用のカバーであってもよい。例えば、バッテリ70A・70Bを取り出し、挿入を可能とする開口が左側(又は右側)の外装カバー11(図1)に形成されてもよい。この場合、この開口を開閉するための専用カバーが設けられてよい。そして、押さえ部材31が閉位置にあり、操作レバー41が解除位置にあるとき、操作レバー41はカバーの閉位置への移動を規制してよい。
【0077】
[バッテリロック機構とバッテリとの相対位置]
図6Aで示すように、支持軸38は前側のバッテリ70Aの前面70aよりも前方に位置している。連結軸49は同バッテリ70Aの後面70bよりも後方に位置している。これにより、レバー比を確保でき、押さえ部材31からバッテリ70Aに作用する力を確保できる。
【0078】
図6Aで示すように、押さえ部材31が閉位置にあるとき、連結軸49は後側のバッテリ70Bの後面70bよりも前方に位置している。より詳細には、連結軸49の中心C2が後側のバッテリ70Bの後面70bよりも前方に位置している。連結軸49のこの配置によると、後側のバッテリ70Bより後方に、大きなスペース(図で示す例において荷物収納部29)を確保し易くなる。
【0079】
バッテリ収容部21に収容可能なバッテリの数が2つより多い場合、連結軸49は最後部に位置しているバッテリの後面70bよりも前方に位置しているとよい。
【0080】
図6Aで示すように、連結軸49の中心C2は前後方向におけるバッテリ70Bの中心Pvbよりも前方且つバッテリ70Bの前面70aより後方に位置してよい。こうすることによって、押さえ部材31から後側のバッテリ70Bに作用する力を確保しつつ、後側のバッテリ70Bの後方に大きなスペース(図で示す例において荷物収納部29)を確保し易くなる。
【0081】
連結軸49の中心C2は、後側のバッテリ70Bの最上部(図で示す例において、持ち手71)より前方に位置してよい。また、連結軸49の中心C2は、後側のバッテリ70Bの上端71aよりも下方に位置してよい。連結軸49のこの配置によると、連結軸49及び後押さえ部31Bの位置を下げることができる。その結果、シート5の位置を適切に保ちながら、上下方向においてバッテリ70A・70Bのサイズを十分に確保できる。また、バッテリ70Bの後側に大きなスペースを確保し易くなる。
【0082】
図で示す例では、バッテリ70A・70Bは、それらの最上部に、作業者が握るための持ち手71(図2参照)を有している。持ち手71はバッテリ70A・70Bの本体70e(図6A参照)の上面から上方に突出している。本体70eはバッテリセルを収容している部分である。連結軸49の中心C2は持ち手71の前方に位置してよい。連結軸49の中心C2は持ち手71の上端71a(上面)よりも下方に位置してよい。
【0083】
上述したように、連結軸49は操作レバー41を後押さえ部31Bに連結している。図6Aで示すように、押さえ部材31の後面31eは、後側のバッテリ70Bの後面70bよりも前方に位置している。より詳細には、後面31eは、バッテリ70Bの最上部(持ち手71)よりも前方に位置している。また、後面31eは、バッテリ70Bの上端71a(持ち手71の上面)よりも下方に位置している。図で示す例とは異なり、後面31eの一部はバッテリ70Bの上端71a(持ち手71の上面)よりも上方に位置してもよい。
【0084】
図6Aで示すように、被係合部51は連結軸49より下方に位置している。被係合部51のこの配置によると、連結軸49と被係合部51との距離(係合部42の長さ)を適切に保ちつつ、被係合部51を含むバッテリロック機構Mの前後方向でのサイズを低減できる。
【0085】
図で示す例では、被係合部51も後側のバッテリ70Bの後面70bよりも前方に位置している。より詳細には、被係合部51は前後方向におけるバッテリ70Bの中心Pvbよりも前方に位置している。被係合部51を支持している支持部材50も後側のバッテリ70Bの後面70bよりも前方に位置している。
【0086】
後押さえ部31B、操作レバー41の被連結部41d、及び連結軸49の位置はバッテリ70Bの本体70eの上面よりも高い。また、図3で示すように、後押さえ部31Bの左右方向での幅はバッテリ70Bの左右方向での幅よりも小さい。すなわち、押さえ部31Bの右端31bはバッテリ70Bの右側面70fよりも、左右方向における中心Cv3寄りに位置している。同様に、押さえ部31Bの左端はバッテリ70Bの左側面よりも、左右方向における中心Cv3寄りに位置している。連結軸49、後押さえ部31B、及び被連結部41dのこのような配置及びサイズによって、例えば、連結軸49等がバッテリ70Bの本体70eの側面(例えば、右側面70f)に沿って配置される構造に比して、バッテリ70A・70Bの左右方向でのサイズを十分に確保することが容易となる。
【0087】
図で示す例では、操作レバー41の被連結部41dの幅も、バッテリ70Bの左右方向での幅よりも小さくてよい。すなわち、右側の被連結部41dはバッテリ70Bの右側面70fよりも、左右方向における中心Cv3寄りに位置してよい。同様に、左側の被連結部41dはバッテリ70Bの左側面よりも、左右方向における中心Cv3寄りに位置してよい。
【0088】
なお、2つより多くのバッテリが前後方向に並んでいる場合(例えば、3つのバッテリが前後方向に並んでいる場合)、連結軸49と後側のバッテリ70Bとの上述した位置関係は、連結軸49と最後部に位置するバッテリ(例えば、3つ目のバッテリ)との位置関係に適用されてよい。同様に、後押さえ部31Bと後側のバッテリ70Bとの上述した位置関係も、最後部に位置するバッテリ(例えば、3つ目のバッテリ)に適用されてよい
【0089】
連結軸49及び押さえ部材31のサイズは、図で示す例に限られない。例えば、連結軸49は後側のバッテリ70Bの後部の上方に位置してもよい。すなわち、連結軸49は前後方向におけるバッテリ70Bの中心Pvbよりも後方に位置してもよい。
【0090】
[充電インレット]
バッテリ70A・70Bは、その上面に、充電インレット73(図2参照)を有している。充電インレット73には、外部の電源装置から延びている充電ケーブルを接続できる。バッテリ70A・70Bは、バッテリ収容部21に収容されている状態で、外部の電源装置から受ける電力によって充電できる。
【0091】
図5で示すように、充電インレット73は、バッテリ70A・70Bの本体70eの後部の上面に位置している。より具体的には、充電インレット73は、本体70eの上面において、持ち手71より後方に位置している。
【0092】
充電インレット73は、充電ケーブルを右側又は左側から接続できるように配置されている。例えば、図3で示すように、充電インレット73は左側に向くように配置される。より詳細には、充電インレット73は、斜め左方且つ後方に向くように配置される。充電インレット73は、バッテリ70A・70Bの右部に位置している。充電インレット73に接続されている充電ケーブルは、充電インレット73から斜め左方且つ後方に延びることとなる。
【0093】
押さえ部材31と操作レバー41はバッテリ70A・70Bの上側を部分的に覆うとともに、充電インレット73を露出させる形状を有している。例えば、図3で示すように、押さえ部材31を閉位置に配置し且つ操作レバー41を固定位置に配置している状態で、これらを平面視したときに、充電インレット73が上側に露出する。この構造によれば、押さえ部材31によってバッテリ70A・70Bの位置変化を制限したまま、バッテリ70A・70Bを充電することが可能である。
【0094】
上述したように、押さえ部材31は、前押さえ部31A、後押さえ部31B、及び左右の延伸部31cの内側に開口を有している。また、操作レバー41は、後方に開いたU字形状であり、操作入力部41aと、左右の延伸部41bと、左右の被連結部41dと、左右の係合部42の内側に、開口を有している。図3で示すように、前側のバッテリ70Aの充電インレット73は、平面視において、押さえ部材31の開口と操作レバー41の開口の内側に位置し、上方に露出している。後側のバッテリ70Bの充電インレット73は、後押さえ部31Bの後面31eより後方に位置している。したがって、後側のバッテリ70Bの充電インレット73は、操作レバー41及び押さえ部材31によって覆われていない。
【0095】
なお、図で示す例とは異なり、バッテリ70A・70Bの平面視において、前側のバッテリ70Aの充電インレット73は押さえ部材31及び/又は操作レバー41によって覆われていてもよい。この場合、充電インレット73は、充電インレット73への充電ケーブルの接続方向において露出していてよい。この構造においても、押さえ部材31によってバッテリ70Aの位置変化を制限したまま、バッテリ70Aを充電することが可能である。
【0096】
[ストッパ部材]
図4で示すように、バッテリロック機構Mはストッパ部材61を有してよい。ストッパ部材61は押さえ部材31によって支持されている。ストッパ部材61は、操作レバー41に引っかかり、固定位置から解除位置への操作レバー41の移動を規制する。これによると、操作レバー41に設けられた弾性部材、すなわち、ばね48(図6B参照)の弾性力によって操作レバー41が固定位置から解除位置に戻ることを抑えることができる。
【0097】
図で示す例では、ストッパ部材61は、前押さえ部31Aにおいて支持されている。図5で示すように、ストッパ部材61は操作レバー41の前端に引っかかっている。操作レバー41は、その前端に、前方に突出する被ストッパ部41eを有している。ストッパ部材61は、その後部に、干渉部61aを有している。操作レバー41が固定位置にあるときに、干渉部61aは被ストッパ部41eの上方に位置し、解除位置に向けた操作レバー41の移動を規制する。
【0098】
ストッパ部材61は、その下部に設けられている支持軸69を中心として、干渉位置(図5)と非干渉位置(図8B)との間で移動可能である。ストッパ部材61が干渉位置にあるとき、干渉部61aは被ストッパ部41eの上側に位置し、固定位置にある操作レバー41の解除位置に向けた移動を規制する(図5参照)。ストッパ部材61が非干渉位置にあるとき、固定位置にある操作レバー41の解除位置に向けた移動が許容される(図8B参照)。
【0099】
ストッパ部材61には、ストッパ部材61を非干渉位置から干渉位置に向けて付勢する弾性部材が設けられている。弾性部材としては、ばね68(図5参照)が利用されてよい。ばね68は例えばねじりコイルばねであり、支持軸69はばね68の内側に嵌められてよい。
【0100】
図5で示すように、支持軸69は干渉部61aの下方に位置している。より詳細には、支持軸69を通る鉛直方向の直線は干渉部61aの下端(被ストッパ部41eとの接点)と交差する。そのため、ストッパ部材61が干渉位置から非干渉位置に向けて移動するとき、干渉部61aの初期の移動方向は前方である。一方、操作レバー41が固定位置にあるとき、操作レバー41は連結軸49から前方に延びている。そのため、操作レバー41が固定位置から解除位置に向けて移動するとき、被ストッパ部41eの初期の移動方向は上方である。つまり、操作レバー41が固定位置(図6A)から解除位置(図6B)に向けて移動するときの被ストッパ部41eの初期の移動方向(上方)は、ストッパ部材61が干渉位置(図6)から非干渉位置(図8B)に向けて移動するときの干渉部61aの初期の移動方向(上方)と実質的に直交している。この構造によると、例えば、電動二輪車1の走行時に生じる振動(例えば、上下方向の振動)に起因して、操作レバー41が固定位置から解除位置に向けて移動してしまうことを効果的に抑えることができる。
【0101】
図8Aで示すように、干渉部61aは、後方且つ下方に斜めに延びている被押圧面61bを有している。操作レバー41が解除位置から固定位置に向けて移動する過程で、被ストッパ部41eの先端は被押圧面61bに当たる。そして、被ストッパ部41eは、被押圧面61bを斜め前方且つ下方に押す。したがって、作業者が操作レバー41を解除位置から固定位置に向けて移動させると、被ストッパ部41eが被押圧面61bにあたり、ストッパ部材61を干渉位置から非干渉位置に移動させる。つまり、作業者は、ストッパ部材61を操作することなく、操作レバー41を解除位置から固定位置に向けて移動させることができる。
【0102】
操作レバー41は、ばね48(図6B参照)の作用によって、固定位置(図6A)から解除位置(図6B)に向けて付勢されている。図5で示すように、被ストッパ部41eは係合部41fを有している。係合部41fは、例えば、被ストッパ部41eの前端から上方に突出する凸部である。係合部41fは干渉位置(図5)から非干渉位置(図8B)にストッパ部材61が移動するときに干渉部61aに係合し、ストッパ部材61の動きを規制する。
【0103】
詳細には、押さえ部材31が閉位置にあり且つ操作レバー41が固定位置にあるときに、作業者が干渉位置(図5)から非干渉位置(図8B)に向けてストッパ部材61を移動させると、操作レバー41はばね48の弾性力によって解除位置(図6B)に向けて移動しようとする。被ストッパ部41eはばね48の弾性力によって干渉部61aの下縁に向けて付勢されている。非干渉位置(図8B)に向けてストッパ部材61を移動させると、干渉部61aの下縁が被ストッパ部41eの係合部41fに引っかかる。このことによって、干渉位置(図5)から非干渉位置(図8B)に向けたストッパ部材61の動きが規制される。
【0104】
作業者は、押さえ部材31を閉位置から開位置に移動するために、例えば、次のような操作を行うことが求められる。まず、作業者は、固定位置(図6A)にある操作レバー41を上側から押さえ、解除位置に向けた操作レバー41の動きを規制する。その状態で、作業者は、ストッパ部材61の上部に形成されている被操作部61cを前方に押し、ストッパ部材61を干渉位置(図5)から非干渉位置(図8B)に向けて移動する。そうした後に、作業者が操作レバー41の押さえを解除すると、操作レバー41はばね48の弾性力によって固定位置(図6A)から解除位置(図6B)に向けて移動する。そして、作業者は押さえ部材31を持ち上げて、開位置(図6C)に向けて押さえ部材31を動かす。このように、作業者は一時的に操作レバー41の動きを制限することで、ストッパ部材61を干渉位置から非干渉位置に移動できる。こうすることで、ばね48の弾性力に起因する操作レバー41の急な動きを、抑えることができる。
【0105】
[まとめ]
(1)以上説明したように、バッテリ収容装置Sは、バッテリ70A・70Bを挿入可能なバッテリ収容部21と、押さえ部材31と、操作レバー41と、被係合部51とを有している。押さえ部材31は、支持軸38が設けられた基部を有し、支持軸38を中心として閉位置と開位置との間で動かすことが可能であり、閉位置に配置されるときバッテリ収容部21からの取り出し方向へのバッテリ70A・70Bの移動を制限し、開位置に配置されるとき取り出し方向へのバッテリ70A・70Bの移動を許容する。操作レバー41は、支持軸38から離れた位置にある連結軸49を介して押さえ部材31と連結しており、固定位置と解除位置との間で連結軸49を中心として押さえ部材31に対して相対的に動かすことが可能であり、作業者の操作力を受ける操作入力部41aと、係合部42とを有している。連結軸49と操作入力部41aとの距離L1は連結軸49と係合部42との距離L2よりも大きい。被係合部51は、押さえ部材31が閉位置にあり且つ操作レバー41が固定位置にあるときに操作レバー41の係合部42と係合する。
【0106】
(2)バッテリ70A・70Bがバッテリ収容部21に配置され、且つ押さえ部材31が閉位置にある状態において、操作レバー41が固定位置にあるときの連結軸49は、操作レバー41が解除位置にあるときの連結軸49よりも、バッテリ収容部21に向かって下がっている。
【0107】
(3)バッテリ収容部21には複数のバッテリ70A・70Bが挿入可能であり、押さえ部材31は閉位置において複数のバッテリ70A・70Bの取り出し方向への移動を制限してよい。これによると、操作レバー41を操作すると複数のバッテリ70A・70Bの動きを制限できる。
【0108】
(4)押さえ部材31が閉位置にあり且つ操作レバー41が固定位置にあるとき、押さえ部材31が支持軸38から延びている方向と、操作レバー41が連結軸49から延びている方向は反対である。押さえ部材31と操作レバー41の配置及び利用に要するスペースを小さくできる。
【0109】
(5)押さえ部材31が閉位置にあるとき、押さえ部材31は支持軸38から後方に延びている。バッテリ70Aは後方に向いている後面70bと、前方に向いている前面70aとを有している。支持軸38はバッテリ70Aの前面70aよりも前方に位置し、連結軸49はバッテリ70Aの後面70bよりも後方に位置している。この構造によると、バッテリ70Aに作用する力を十分に確保することが可能となる。
【0110】
(6)押さえ部材31が閉位置にあるとき、押さえ部材31は支持軸38から後方に延びている。バッテリ収容部21には、前側のバッテリ70Aと後側のバッテリ70Bとが挿入可能である。後側のバッテリ70Bは後方に向いている後面70bを有している。押さえ部材31が閉位置にあるとき、連結軸49は支持軸38から後方に離れており、後面70bより前方に位置している。この構造によると、後側のバッテリ70Bの後方に十分なスペースを確保することが容易となる。
【0111】
(7)押さえ部材31が閉位置にあるとき、押さえ部材31は支持軸38から後方に延びてよい。バッテリ収容部21には、前側のバッテリ70Aと後側のバッテリ70Bとが挿入可能であってよい。各バッテリ70A・70Bは、バッテリ収容部21からのバッテリ70A・70Bの取り外し方向での端部(上端71a)を有してよい。押さえ部材31が閉位置にあるとき、連結軸49は支持軸38から後方に離れており、且つ後側のバッテリ70Bの上端71aよりも前方に位置してよい。これによると、連結軸49の位置を、後側のバッテリ70Bの挿入方向において後側のバッテリ70Bに近づけることが可能となる。その結果、操作レバー41及び押さえ部材31の位置を維持したまま、バッテリ70Bのサイズを増すことができる。
【0112】
(8)連結軸49は後側のバッテリ70Bの上端71aよりも下方に位置している。これによると、操作レバー41の位置をバッテリの挿入方向においてバッテリに近づけることができる。その結果、バッテリ、押さえ部材31、及び操作レバー41を含む全体のサイズを低減できる。
【0113】
(9)操作レバー41には、操作レバー41を固定位置から解除位置に向けて付勢するばね48が設けられている。この構造によると、操作レバー41を解除位置に戻す作業を容易化できる。
【0114】
(10)操作レバー41に引っかかり、操作レバー41の固定位置から解除位置への移動を規制するストッパ部材61が、押さえ部材31に取り付けられている。この構造によると、使用者が意図しないタイミングで、操作レバー41が、ばね48の弾性力を受けて開位置に移動することを抑えることができる。
【0115】
(11)ストッパ部材61は、固定位置にある操作レバー41の解除位置に向けた移動を規制する干渉位置と、固定位置にある操作レバー41の解除位置に向けた移動を許容する非干渉位置との間で動くことができる。操作レバー41は係合部41fを有している。係合部41fは、固定位置から解除位置に向けて操作レバー41が移動する過程でストッパ部材61に係合し、干渉位置から非干渉位置に向けたストッパ部材61の移動を制限している。これによると、作業者がストッパ部材61を干渉位置から非干渉位置に移動させようとすると、操作レバー41の係合部41fがストッパ部材61に係合する。そのため、作業者は、操作レバー41の係合部41fとストッパ部材61との係合を解消し、その後に、ストッパ部材61を非干渉位置まで移動し、操作レバー41を解除位置に向けて移動することとなる。その結果、操作レバー41の急な動きを押さえることができる。
【0116】
(12)操作レバー41はストッパ部材61にあたる被ストッパ部41eを有している。ストッパ部材61は被ストッパ部41eにあたる干渉部61aを有している。押さえ部材31が閉位置あるとき、操作レバー41が固定位置から解除位置に向けて移動するときの被ストッパ部41eの初期の移動方向は、ストッパ部材61が干渉位置から非干渉位置に向けて移動するときの干渉部61aの初期の移動方向と実質的に直交している。この構造によると、例えば、電動二輪車1の走行時に生じる振動に起因して、操作レバー41が固定位置から解除位置に向けて移動してしまうことを、効果的に抑えることができる。
【0117】
(13)押さえ部材31は、バッテリ70A・70Bにあたり、バッテリ収容部21への挿入方向にバッテリ70A・70Bを付勢する接触部32を有している。押さえ部材31は、閉位置にあるとき、支持軸38から後方に延びてよい。接触部32は、前後方向におけるバッテリ70A・70Bの中心よりも支持軸38寄りに位置してよい。この構造によると、接触部32と支持軸38との距離が小さくなるので、レバー比を増すことができる。
【0118】
(14)バッテリ70Aは充電インレット73が設けられている上面を有している。押さえ部材31と操作レバー41は、バッテリ70Aの上面を覆っている。押さえ部材31と操作レバー41は、充電インレット73を露出させる形状を有している。この構造によると、押さえ部材31によってバッテリ70Aの位置変化を制限したまま、バッテリ70Aを充電することが可能となる。
【0119】
(15)バッテリ収容部21の後方には荷物収納部29が形成されている。バッテリ収容部21の内部と荷物収納部29の内部は繋がっている。この構造によると、バッテリ収容部21にバッテリ70Bを配置していない状態では、バッテリ収容部21と荷物収納部29とに大きな荷物を収納できる。
【0120】
(16)電動二輪車1は、バッテリ70A・70Bと、バッテリ70A・70Bからの電力で駆動する電動モータを有するパワーユニット6と、を有している。
【0121】
(17)シート5は、バッテリ70A・70B、バッテリ収容部21、押さえ部材31、及び操作レバー41を露出させる露出位置と、これらを覆う非露出位置との間で移動可能である。押さえ部材31が開位置にあるとき、又は操作レバー41が解除位置にあるとき、露出位置から非露出位置へのシート5の移動が操作レバー41によって規制される。この構造によると、操作レバー41が固定位置にない状態ではシート5が開いているので、そのような状態で運転者が電動二輪車1を走行させることを抑えることができる。なお、シート5ではなく、外装カバー11に設けられている蓋によって、バッテリ70A・70B等は覆われてよい。
【0122】
[変形例]
本開示で提案するバッテリ収容装置及び電動車両は、上述したバッテリ収容装置S及び電動二輪車1に限られず、種々の変更がなされてよい。
【0123】
例えば、バッテリ収容部には、複数のバッテリが左右方向に並んでいてよい。
【0124】
また、他の例として、操作レバー41にストッパ部材61は設けられていなくてもよい。この場合、係合部42は、ばね48の弾性力に反して被係合部51に係合するよう形成されてよい。
【符号の説明】
【0125】
1:電動二輪車、2:ハンドルバー、3:フロントフォーク、4:前輪、5:シート、5a:被支持部、5b:クッション部、5c:シートボトム、5d:被ストッパ部、5e:軸部、5f:リブ、6:パワーユニット、7:後輪、8:フットボード、11:外装カバー、20:ケース、21:バッテリ収容部、21A・21B:収容部、21a :側壁、29:荷物収納部、31:押さえ部材、31A:前押さえ部、31B:後押さえ部、31b:右端、31c:延伸部、31d:前端、31e:後面、32:接触部、33:弾性部材、37:抜け止め部材、38:支持軸、39:支持部材、41:操作レバー、41a:操作入力部、41b:延伸部、41c:前端、41d:被連結部、41e:被ストッパ部、41f:係合部、42:係合部、42a:下部、42b:前部、42c:接触面、42c:内面、48:ばね、49:連結軸、50:支持部材、51:被係合部、61:ストッパ部材、61a:干渉部、61b:被押圧面、61c:被操作部、68:ばね、69:支持軸、70A・70B :バッテリ、70a:前面、70b:後面、70e:本体、70f:右側面、71:持ち手、71a:上端、73:充電インレット、74:端子、C1:中心線、M:バッテリロック機構。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8A
図8B