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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180196
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】吸音部材
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20221129BHJP
   G10K 11/172 20060101ALI20221129BHJP
   E01F 8/00 20060101ALI20221129BHJP
   E04B 1/86 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
G10K11/16 110
G10K11/172
E01F8/00
E04B1/86 X
E04B1/86 M
E04B1/86 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087159
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】517182918
【氏名又は名称】ピクシーダストテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002815
【氏名又は名称】IPTech弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田中 豊
【テーマコード(参考)】
2D001
2E001
5D061
【Fターム(参考)】
2D001AA01
2D001BA01
2D001BB01
2D001CA01
2D001CB01
2D001CC01
2E001DF04
2E001FA03
2E001FA30
2E001GA42
2E001HB01
2E001HD11
2E001HE01
5D061AA04
5D061AA06
5D061AA11
5D061AA12
5D061AA16
5D061AA23
5D061AA25
5D061CC04
(57)【要約】
【課題】 穿孔板の孔を介して通気可能な空洞を用いた吸音部材の吸音性能を向上させる
【解決手段】 吸音部材は、複数の貫通孔を有する穿孔板301と、穿孔板301の面に略平行な面を有し、穿孔板301に対する位置が固定された補強板302とを有する。さらに吸音部材は、穿孔板301の面に対して補強板302とは逆側に位置する空洞部であって、穿孔板301に存在する複数の貫通孔を介して空洞部の内部と外部との間で通気可能な空洞部を有する。
【選択図】 図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔を有する穿孔板と、
前記穿孔板の面に略平行な面を有する板状部材であって、前記穿孔板に対する位置が固定された前記板状部材と、
前記穿孔板の面に対して前記板状部材とは逆側に位置する空洞部であって、前記穿孔板に存在する複数の貫通孔を介して前記空洞部の内部と外部との間で通気可能な前記空洞部と、
を有する吸音部材。
【請求項2】
前記空洞部は、第1空洞部と第2空洞部とを有し、
前記穿孔板の面の第1領域に存在する複数の貫通孔を介して前記第1空洞部の内部と外部との間で通気可能であり、
前記穿孔板の面の前記第1領域と隣り合う第2領域に存在する複数の貫通孔を介して前記第2空洞部の内部と外部との間で通気可能である、
請求項1に記載の吸音部材。
【請求項3】
前記第1空洞部と前記第2空洞部とは、互いに共振特性が異なる共振器として機能する、請求項2に記載の吸音部材。
【請求項4】
前記穿孔板の面の前記第1領域に存在する貫通孔の数及び孔径の少なくとも何れかは、前記穿孔板の面の前記第2領域に存在する貫通孔の数及び孔径と異なる、請求項2又は請求項3に記載の吸音部材。
【請求項5】
前記第1空洞部と前記第2空洞部とは、前記穿孔板の面の法線方向と非平行に延在する部分を有する、請求項2から請求項4の何れか1項に記載の吸音部材。
【請求項6】
前記板状部材は、前記穿孔板の面に垂直な方向に通気可能である、請求項1から請求項5の何れか1項に記載の吸音部材。
【請求項7】
前記板状部材は前記穿孔板に接するように固定されている、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の吸音部材。
【請求項8】
前記板状部材は、前記板状部材と前記穿孔板との間に間隙が存在するように固定されている、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の吸音部材。
【請求項9】
前記穿孔板の板厚は前記複数の貫通孔の孔径より小さい、請求項1から請求項8の何れか1項に記載の吸音部材。
【請求項10】
前記板状部材の板厚は前記穿孔板の板厚より大きい、請求項1から請求項9の何れか1項に記載の吸音部材。
【請求項11】
前記板状部材は、多孔質材、パンチングメタル、又はエキスパンドメタルである、請求項1から請求項10の何れか1項に記載の吸音部材。
【請求項12】
前記複数の貫通孔の孔径は2mm以下である、請求項1から請求項11の何れか1項に記載の吸音部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸音により音を低減させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道、高速道路、工事現場などにおいて発生する騒音を抑制することは、重要な社会課題の1つである。特許文献1には、道路や線路上を走行する車両による騒音を抑制するために、吸音材を用いた防音パネルを騒音源の脇に設置することが開示されている。一方、特に低周波数帯の騒音について、より効果的に消音することが求められている。
【0003】
非特許文献1には、180度方向に2度折り返したS字形の空洞を有する導波管と多数の孔を有する穿孔板とを組み合わせた吸音構造体において、導波管と穿孔板の幾何学パラメータを調整することで、低周波を含む広帯域での吸音特性を向上させることが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-115572号公報
【非特許文献1】Wu, F., Xiao, Y., Yu, Di., Zhao, H., Wang, Y., & Wen, J. (2019). Low-frequency sound absorption of hybrid absorber based on micro-perforated panel and coiled-up channels. Applied Physics Letters, 114(15). https://doi.org/10.1063/1.5090355
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載の吸音構造体のように、穿孔板の孔を介して通気可能な空洞を用いた吸音部材において、穿孔板の設計上又は製造上の制限により吸音性能が低下する場合が考えられる。例えば、穿孔板が薄いと強度が不足する一方、穿孔板が厚いと小さい孔を形成するのが難しいため、所望の吸音性能を実現するために必要な小ささの孔を穿孔板に設けるのが難しい場合がある。
【0006】
本開示の技術は、穿孔板の孔を介して通気可能な空洞を用いた吸音部材の吸音性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る吸音部材は、複数の貫通孔を有する穿孔板と、前記穿孔板の面に略平行な面を有する板状部材であって、前記穿孔板に対する位置が固定された板状部材と、前記穿孔板の面に対して前記板状部材とは逆側に位置する空洞部であって、前記複数の貫通孔を介して前記空洞部の内部と外部との間で通気可能な空洞部と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】吸音ユニットの概観を示す斜視図である。
図2】吸音ユニットの構造を示す断面図である。
図3】穿孔板と補強版の構成例を示す図である。
図4】穿孔板と補強版の構成例を示す図である。
図5】穿孔板と補強版の構成例を示す図である。
図6】吸音ユニットの機能を説明する図である。
図7】吸音ユニットの使用方法を示す図である。
図8】設計装置の構成例を示す図である。
図9】設計装置による吸音ユニットの設計処理を示す図である。
図10】吸音ユニットの変形例の概観を示す斜視図である。
図11】吸音ユニットの変形例の構造を示す断面図である。
図12】補強版の固定方法の変形例を示す斜視図である。
図13】補強版の固定方法の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態の例について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0010】
(1)吸音ユニットの構成
(1-1)吸音ユニットの基本構成
吸音ユニット10の構成について説明する。吸音ユニット10は、吸音ユニット10に向かって進む音波のエネルギーを他のエネルギーに転換して反射音及び透過音の音圧を低減する吸音効果を有する、特定の吸音構造を備える部材である。図1は、実施形態に係る吸音ユニットの概観を示す斜視図である。図2は、実施形態に係る吸音ユニットの構造を示す断面図である。
【0011】
以下の説明において、「D方向」は、吸音ユニット10の厚み方向である。吸音ユニット10は、主にD方向に進む音波を吸音する。「H方向」は、D方向と垂直な方向であり、吸音ユニット10の高さ方向である。吸音ユニット10は、H方向に延在する空洞(以下「導波管」という。)を複数有し、各導波管は穿孔板と組み合わされることで共振器として機能する。「W方向」は、「D方向」および「H方向」に直交する方向であり、吸音ユニット10の幅方向である。
【0012】
図1に示すように、吸音ユニット10は、導波管11、導波管12、及び導波管13の3つの導波管と、穿孔板11a、穿孔板12a、及び穿孔板13aの3つの穿孔板を備える。導波管11、導波管12、及び導波管13は、それぞれ吸音ユニット10の高さ方向(H方向)に延在し、吸音ユニット10の厚み方向(D方向)に積層されている。図2に示すように、導波管11は、側壁11bと、側壁12bと、閉口端11cとにより構成され、導波管11における閉口端11cと逆の端部には、穿孔板11aが設けられる。導波管12は、側壁12bと、側壁13bと、閉口端12cとにより構成され、導波管12における閉口端12cと逆の端部には、穿孔板12aが設けられる。導波管13は、側壁13bと、側壁14bと、閉口端13cとにより構成され、導波管13における閉口端13cと逆の端部には、穿孔板13aが設けられる。
【0013】
導波管11と導波管12とは側壁12bを介して隣接しており、導波管12と導波管13とは側壁13bを介して隣接している。すなわち、側壁12bと側壁13bは、吸音ユニット10の内部を複数の導波管に分割する。導波管11、導波管12、及び導波管13はそれぞれ、HD断面における輪郭が略台形(言い換えるとI字型)である。
【0014】
穿孔板11a、穿孔板12a、及び穿孔板13aは、HD断面における形状が直線状であり、HD断面においてこれらの穿孔板の表面(貫通孔が存在する面)とD方向とがなす角は0度より大きく90度より小さい。したがって、導波管11、導波管12、及び導波管13は、それぞれ穿孔板11a、穿孔板12a、及び穿孔板13aから各穿孔板の法線方向と非平行に延在する。
【0015】
なお、吸音ユニット10は、全体が一体となって構成されていてもよいし、複数の部材を組み合わせることで構成されていてもよい。例えば、導波管と穿孔板とを有する共振器を複数組み合わせることで吸音ユニット10が構成されてもよいし、穿孔板部材と導波管部材とを組み合わせることで吸音ユニット10が構成されてもよい。また、穿孔板と導波管とが一体となって構成されていてもよい。すなわち、吸音ユニット10は、複数の貫通孔を有する穿孔面と、それぞれ穿孔面の異なる領域に接する複数の導波管とを有していればよい。各導波管の内部と外部との間は、穿孔面の当該導波管に接する領域に存在する複数の貫通孔を介して通気可能である。
【0016】
穿孔板11a、穿孔板12a、及び穿孔板13aに入射する音波は、それぞれ導波管11、導波管12、及び導波管13の内部に伝達し、閉口端11c、閉口端12c及び閉口端13cで反射する。穿孔板11a、穿孔板12a、及び穿孔板13aは、それぞれが音響インピーダンスの整合部材として機能し、導波管11、導波管12、及び導波管13は、互いに共振特性が異なる共振器として機能する。そのため、吸音ユニット10によれば、単一の導波管を有する吸音材と比較して、広い周波数帯域において吸音効果を得ることができる。本実施形態における吸音ユニット10の吸音特性は、例えば、周波数ごとの吸音率、又は音響インピーダンスにより表される。なお、各導波管が吸音する音波の周波数帯域が互いに重ならないように吸音ユニット10が設計されていてもよいし、各導波管が吸音する音波の周波数帯域の一部が重なるように吸音ユニット10が設計されていてもよい。
【0017】
導波管11の長さL11は、閉口端11cの中心から穿孔板11aの中心までの距離で表される。導波管12の長さL12は、閉口端12cの中心から穿孔板12aの中心までの距離で表される。導波管13の長さL13は、閉口端13cの中心から穿孔板13aの中心までの距離で表される。導波管12の長さは導波管11の長さより長く、導波管13の長さは導波管12の長さより長い。このように各導波管の長さを異ならせることで、各導波管の共振特性を異ならせることができる。また、各導波管のD方向の厚みは、当該導波管のH方向の長さよりも短い。このような構成により、導波管のH方向の長さを長くすることで低周波数帯域の吸音率を向上させつつ、吸音ユニット10のD方向の厚みを薄くすることができる。
【0018】
(1-2)穿孔板の構成
穿孔板の構成について説明する。穿孔板11a、穿孔板12a、及び穿孔板13aは、それぞれ複数の貫通孔を有する板状部材である。なお、穿孔板11a、穿孔板12a、及び穿孔板13aは、別個の部材であってもよいし、1枚の穿孔板部材におけるそれぞれ異なる領域であってもよい。穿孔板11a、穿孔板12a、及び穿孔板13aを一体として構成することで、穿孔板の製造工程を簡易にすることができ、製造コストを低減できる。穿孔板は、例えば、樹脂、金属、シリコン、ゴム、ポリマー、及び不織布の少なくとも1つを素材として含み得る。
【0019】
各導波管の共振特性は、当該導波管の形状と、当該導波管に組み合わされる穿孔板の形状パラメータ(以下「孔パラメータ」という)に依存する。孔パラメータには、例えば、以下が含まれる。
・穿孔板の面積(孔が形成される表面の面積)
・穿孔板の厚さ(表面に直交する方向の寸法)
・孔の大きさ(例えば孔が円形である場合の直径)
・穿孔板の表面に占める孔の面積の割合(以下「孔の占有率」という)
・孔の形状
・孔の数
・孔どうしの間隔
【0020】
穿孔板の孔パラメータを変更することで、吸音ユニット10の音響インピーダンスを調整することができる。また、穿孔板は、熱粘性抵抗によってQ値を低くする効果もある。具体的なパラメータ例として、例えば、吸音ユニット10のH方向、D方向及びW方向の長さがそれぞれ3cm~10cmであり、穿孔板の厚さが0.5mm~3mmである場合に、穿孔板に存在する孔の径を0.3mm~2mmに設定する。そして、穿孔板における孔の数などその他のパラメータを適切に設定することで、人の会話に含まれる音の主成分である400Hz~1500Hzの音を効率的に吸音する(音圧を低減する)ことができる。この場合、吸音ユニット10による400Hz以上1500Hz以下の音の平均吸音率は、吸音ユニット10による他の周波数帯(400Hzより低い周波数帯及び1500Hzより高い周波数帯)の音の平均吸音率よりも高くなる。また、導波管の形状及び孔パラメータの少なくとも何れかを調整することで、吸音ユニット10の吸音特性を変化させることができる。例えば、1000Hz以上4000Hz以下の音の平均吸音率が、その他の周波数帯の音の平均吸音率よりも高くなるように、吸音ユニット10を設計することもできる。また例えば、もできるし、200Hz以上2500Hz以下の音を効率的に吸音するように吸音ユニット10を設計することもできる。
【0021】
吸音ユニット10が有する複数の穿孔板の孔パラメータは互いに異なっていてもよい。例えば、穿孔板11aの孔パラメータは導波管11に要求される吸音特性に応じて最適化されてもよい。穿孔板12aの孔パラメータは導波管12に要求される吸音特性に応じて最適化されてもよい。穿孔板13aの孔パラメータは導波管13に要求される吸音特性に応じて最適化されてもよい。これにより、吸音ユニット10は、広い周波数帯域において高い吸音率を達成できる。ただしこれに限らず、吸音ユニット10が有する複数の穿孔板の孔パラメータは共通であってもよい。これにより、穿孔板の仕様を標準化できるため、穿孔板の製造コストを低減することができる。
【0022】
(1-3)補強板の構成
本実施形態において、吸音ユニット10の穿孔板には、穿孔板を補強する板状の部材である補強板が固定される。以下では、穿孔板と補強板の構成例を説明する。なお、以下の構成例の説明においては、穿孔板11a、穿孔板12a、及び穿孔板13aが、1枚の穿孔板301として構成されるものとする。ただし、以下で説明する構成例における穿孔板が、複数の穿孔板に分かれていてもよい。以下の説明において、「X方向」は穿孔板の横方向であり、「Y方向」は穿孔板の縦方向であり、「Z方向」は穿孔板の法線方向(すなわち厚み方向)である。
【0023】
(1-3―1)補強板の第1構成例
補強板の第1構成例について説明する。図3(a)は、吸音ユニット10が有する穿孔板301をZ方向から見た様子を表す図である。図3(b)は、穿孔板301に固定された補強板302をZ方向から見た様子を表す図である。図3(c)は、図3(b)に示すAA断面における穿孔板301及び補強板302の断面図である。図3(d)は、図3(c)に示す穿孔板301及び補強板302の一部分である領域310の拡大図である。穿孔板301を備える吸音ユニット10においては、穿孔板301の-Z方向側に導波管が配置される。
【0024】
図3(a)から図3(d)に示すように、補強板302は、穿孔板301の面に略平行な面を有し、穿孔板301の外面(Z方向側の面)に接するように貼り付けられて固定される。補強板302は多孔質材であり、例えば、金属、樹脂、若しくはセラミックなどの素材で構成された焼結板、又は、アルミ、ポリエステル、又はポリプロピレンなどの素材で構成された不織布、又は、グラスウールである。補強板302には多数の微細孔が存在するため、空気がZ方向に補強板302を通過可能である。そして、穿孔板301にも多数の貫通孔が存在するため、吸音ユニット10の導波管の内部と、吸音ユニット10の外側(補強板302に対してZ方向側の空間)とは通気可能である。なお、補強板302が有する微細孔の大きさは、穿孔板301が有する貫通孔の大きさより小さい。
【0025】
このような構成によれば、穿孔板301及び補強板302に通気性を持たせることで吸音ユニット10の吸音性能を維持しつつ、穿孔板301の外面に補強板302を貼り付けることで吸音ユニット10の強度を向上させることができる。例えば、吸音ユニット10を屋外に設置して使用する場合に、飛び石などの物体が穿孔板301に衝突して穿孔板301が損傷する虞を低減することができる。また、穿孔板301に要求される強度の基準が低くなるため、穿孔板301を薄くすることができる。そのため、穿孔板301の製造過程において径の小さい貫通孔を形成しやすくなり、穿孔板301の孔パラメータの設計自由度が向上するとともに、穿孔板301の製造コストを低減することができる。例えば、設計上又は製造上の制限により、穿孔板301の板厚を複数の貫通孔の孔径より小さくしなければならない場合があり得る。このような場合であっても、吸音ユニット10の強度を十分に保ちつつ、穿孔板301の貫通孔の径を2mm以下にしたり0.3mm以下にしたりできる。なお、補強板302の板厚を穿孔板301の板厚より大きくすることで、より強度を向上させることができる。
【0026】
また、補強板302自体が多孔質材であることにより吸音性能を有するため、穿孔板301に多孔質材を貼り付けることで、吸音ユニット10の吸音性能をさらに向上させることができる。なお、本構成例では穿孔板301に多孔質の補強板302を貼り付けるものとしたが、これに限らず、吸音ユニット10の穿孔板301を補強板302に置き換えてもよい。すなわち、吸音ユニット10の導波管の内部と外部との間が、穿孔板301を介さずに補強板302を介して通気可能であってもよい。このような構成によれば、吸音ユニット10の構成の複雑性が低下するため、吸音ユニット10の製造コストを低減することができる。
【0027】
なお、穿孔板301の部分ごとに、その部分に貼り付けられる補強板302の素材、厚み、及び密度の少なくとも何れかが異なっていてもよい。例えば、穿孔板301のある領域における孔パラメータに応じて、その領域に貼り付けられる補強板302の構成が決まってもよい。また、補強板302はZ方向から見て穿孔板301の全面を覆っていてもよいし、穿孔板301の一部分を覆っていてもよい。
【0028】
(1-3―2)補強板の第2構成例
補強板の第2構成例について説明する。図4(a)は、穿孔板301に固定された補強板402をZ方向から見た様子を表す図である。図4(b)は、図4(a)に示すAA断面における穿孔板301及び補強板402の断面図である。図4(c)は、図4(b)に示す穿孔板301及び補強板402の一部分である領域410の拡大図である。穿孔板301を備える吸音ユニット10においては、穿孔板301の-Z方向側に導波管が配置される。
【0029】
図4(a)から図4(c)に示すように、補強板402は、穿孔板301の面に略平行な面を有し、穿孔板301の外面(Z方向側の面)に接するように貼り付けられて固定される。補強板402は、穿孔板301の貫通孔よりも孔径が大きい複数の孔420を有する板状部材であり、例えば、金属で構成されたパンチングメタル、又は樹脂で構成されたパンチング板である。補強板402には複数の孔420が存在するため、空気がZ方向に補強板402を通過可能である。そして、穿孔板301にも多数の貫通孔が存在するため、吸音ユニット10の導波管の内部と、吸音ユニット10の外側(補強板402に対してZ方向側の空間)とは通気可能である。
【0030】
このような構成によれば、穿孔板301及び補強板402に通気性を持たせることで吸音ユニット10の吸音性能を維持しつつ、穿孔板301の外面に補強板402を貼り付けることで吸音ユニット10の強度を向上させることができる。また、穿孔板301に要求される強度の基準が低くなるため、穿孔板301を薄くすることができ、穿孔板301の孔パラメータの設計自由度が向上するとともに、穿孔板301の製造コストを低減することができる。なお、補強板402の板厚を穿孔板301の板厚より大きくすることで、より強度を向上させることができる。
【0031】
なお、本構成例では穿孔板301に補強板402を貼り付けるものとしたが、これに限らず、吸音ユニット10の穿孔板301を補強板402に置き換えてもよい。すなわち、吸音ユニット10の導波管の内部と外部との間が、穿孔板301を介さずに補強板402を介して通気可能であってもよい。このような構成によれば、吸音ユニット10の構成の複雑性が低下するため、吸音ユニット10の製造コストを低減することができる。
【0032】
なお、穿孔板301の部分ごとに、その部分に貼り付けられる補強板402の素材、厚み、孔420の大きさ、及び孔420の形状の少なくとも何れかが異なっていてもよい。例えば、穿孔板301のある領域における孔パラメータに応じて、その領域に貼り付けられる補強板402の構成が決まってもよい。また、補強板402はZ方向から見て穿孔板301の全面を覆っていてもよいし、穿孔板301の一部分を覆っていてもよい。
【0033】
(1-3―3)補強板の第3構成例
補強板の第3構成例について説明する。図5(a)は、穿孔板301に固定された補強板502をZ方向から見た様子を表す図である。図5(b)は、図5(a)に示すAA断面における穿孔板301及び補強板502の断面図である。図5(c)は、図5(b)に示す穿孔板301及び補強板502の一部分である領域510の拡大図である。穿孔板301を備える吸音ユニット10においては、穿孔板301の-Z方向側に導波管が配置される。
【0034】
図5(a)から図5(c)に示すように、補強板502は、穿孔板301の面に略平行な面を有し、穿孔板301の外面(Z方向側の面)に接するように貼り付けられて固定される。補強板502は、穿孔板301の貫通孔よりも大きい網の目を有する板状部材であり、例えば、金属で構成されたエキスパンドメタル、金網、又は樹脂で構成されたメッシュ板である。補強板502には複数の網目520が存在するため、空気がZ方向に補強板502を通過可能である。そして、穿孔板301にも多数の貫通孔が存在するため、吸音ユニット10の導波管の内部と、吸音ユニット10の外側(補強板502に対してZ方向側の空間)とは通気可能である。
【0035】
このような構成によれば、穿孔板301及び補強板502に通気性を持たせることで吸音ユニット10の吸音性能を維持しつつ、穿孔板301の外面に補強板502を貼り付けることで吸音ユニット10の強度を向上させることができる。また、穿孔板301に要求される強度の基準が低くなるため、穿孔板301を薄くすることができ、穿孔板301の孔パラメータの設計自由度が向上するとともに、穿孔板301の製造コストを低減することができる。なお、補強板502の板厚を穿孔板301の板厚より大きくすることで、より強度を向上させることができる。
【0036】
なお、本構成例では穿孔板301に補強板502を貼り付けるものとしたが、これに限らず、吸音ユニット10の穿孔板301を補強板502に置き換えてもよい。すなわち、吸音ユニット10の導波管の内部と外部との間が、穿孔板301を介さずに補強板502を介して通気可能であってもよい。このような構成によれば、吸音ユニット10の構成の複雑性が低下するため、吸音ユニット10の製造コストを低減することができる。
【0037】
なお、穿孔板301の部分ごとに、その部分に貼り付けられる補強板502の素材、厚み、網目520の大きさ、及び網目520の形状の少なくとも何れかが異なっていてもよい。例えば、穿孔板301のある領域における孔パラメータに応じて、その領域に貼り付けられる補強板502の構成が決まってもよい。また、補強板502はZ方向から見て穿孔板301の全面を覆っていてもよいし、穿孔板301の一部分を覆っていてもよい。
【0038】
以上で補強板の構成例の説明を終わる。ただし、吸音ユニットが備える補強板の構成は上記の例に限定されない。また、上述した複数の構成例を組み合わせることで補強板を構成してもよい。
【0039】
(2)吸音ユニットの使用方法
吸音ユニットの使用方法について説明する。図6は、実施形態に係る吸音ユニットの機能を説明する図である。図7は、実施形態に係る吸音ユニットの使用方法を示す図である。
【0040】
図6に示すように、吸音ユニット10は、吸音すべき音を発する騒音源NSに対してD方向に離れた位置に設置される。吸音ユニット10に含まれる各導波管は、騒音源NSからD方向に進行する音波のうち、当該導波管の形状(例えば長さ)と穿孔板の孔パラメータとに応じた周波数の成分を吸収する。これにより、騒音源NSから吸音ユニット10よりもD方向側の位置に到達する音波の音圧は、吸音ユニット10が設置されていない場合と比較して、大きく低減される。
【0041】
図7に示すように、複数の吸音ユニット10を組み合わせて設置することで、騒音源NSから発される音の音圧をより低減することができる。複数の吸音ユニット10は、騒音源NSから人間HMaがいる方向へ進行する音波を遮る吸音壁1を構成するように、組み合わせて設置される。吸音壁1は遮音効果を有するため、吸音壁1を設置することにより、騒音源NSから発された音波の音圧は吸音壁1を通過する際に大きく低減され、騒音源NSから見て吸音壁1より奥に居る人間HMaが感じる騒音を小さくすることができる。
【0042】
また、吸音壁1は吸音効果を有するため、吸音壁1を設置することにより、従来の部材で構成された壁(例えばコンクリート壁)を同じ位置に設置した場合と比較して、壁で反射した音の大きさが小さくなる。そのため、騒音源NSから発された音波の音圧は、吸音壁1で反射される際に大きく低減され、騒音源NSに対して吸音壁1とは反対側にいる人間HMbが感じる騒音を小さくすることができる。また、吸音壁1を設置した場合、従来の部材で構成された壁を同じ位置に設置した場合と比較して、回折により壁の奥に回り込む音の大きさも小さくなる。この効果により、壁の奥にいる人間HMaが感じる騒音をより小さくすることができる。
【0043】
(3)吸音ユニットの設計方法
(3-1)設計装置の構成
吸音ユニット10を設計するための処理を実行する設計装置の構成について説明する。図8は、設計装置の構成例を示す図である。図8に示すように、設計装置210は、記憶装置211と、プロセッサ212と、入出力インタフェース213と、通信インタフェース214とを備える。
【0044】
記憶装置211は、プログラム及びデータを記憶するように構成される。記憶装置211は、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び、ストレージ(例えば、フラッシュメモリ又はハードディスク)の組合せである。プログラムは、例えば、OS(Operating System)のプログラムと、情報処理を実行するアプリケーション(例えば、ウェブブラウザ)のプログラムを含む。データは、例えば、情報処理において参照されるデータ及びデータベースと、情報処理を実行することによって得られるデータ(つまり、情報処理の実行結果)を含む。記憶装置211により記憶されるプログラム及びデータは、ネットワークを介して提供されてもよいし、コンピュータにより読み取り可能な記録媒体に記録して提供されてもよい。
【0045】
プロセッサ212は、記憶装置211に記憶されたプログラムを実行してデータを処理することによって、設計装置210の機能を実現する。なお、設計装置210の機能の少なくとも一部が、専用のハードウェア(例えばASIC(application specific integrated circuit)又はFPGA(field-programmable gate array))により実現されてもよい。
【0046】
入出力インタフェース213は、設計装置210に接続される入力デバイスに対するユーザ操作に応じた入力を受け付ける機能と、設計装置210に接続される出力デバイスに情報を出力する機能を有する。入力デバイスは、例えば、キーボード、ポインティングデバイス、タッチパネル、又は、それらの組合せである。出力デバイスは、例えば、画像を表示するディスプレイ又は音声を出力するスピーカである。通信インタフェース214は、設計装置210と外部装置(例えばサーバ)との間の通信を制御する。
【0047】
(3-2)設計処理
吸音ユニット10を設計するための処理について説明する。図9は、設計装置による吸音ユニットの設計処理を示す図である。
【0048】
図9に示す処理は、設計装置210のプロセッサ212が記憶装置211に記憶されたプログラムを実行することで実現される。ただし、図9に示す処理の少なくとも一部が専用のハードウェアにより実現されてもよい。図9に示す処理は、吸音ユニット10の設計を開始するためのユーザによる指示が設計装置210に入力されたことに応じて開始される。ただし、図9に示す処理の開始条件はこれに限定されない。
【0049】
S100において、設計装置210は、吸音ユニット10の設計パラメータとして設定可能な固定値を取得する。例えば、プロセッサ212は、ユーザの入力を受け付けることで、もしくは固定値が格納されたファイルを読み込むことで、固定値を取得する。吸音ユニット10の設計パラメータは、例えば以下の少なくとも1つを含む。
・吸音ユニット10のサイズ(H方向、D方向、及びW方向の寸法)
・導波管の数
・導波管の長さ(H方向の寸法)
・導波管の厚み(D方向の寸法)
・導波管の形状
・吸音ユニット10に含まれる側壁の形状
・穿孔板の孔パラメータ
・補強板の特性(例えば、厚み、形状、素材など)
【0050】
一例として、以降の説明では、S100において吸音ユニットのD方向及びW方向の寸法、導波管の数、及び側壁の形状が固定値として取得されるものとする。そして、補強板の特性、穿孔板の孔パラメータ、導波管のサイズ、及び導波管の形状が変数として扱われるものとする。
【0051】
S101において、設計装置210は、変数として扱われる設計パラメータの定義域(変数のとり得る範囲)を取得する。例えば、プロセッサ212は、ユーザの入力を受け付けることで、もしくは変数の定義域が格納されたファイルを読み込むことで、変数の定義域を取得する。
【0052】
S102において、設計装置210は、吸音ユニット10の解析モデルを構築する。具体的には、プロセッサ212は、S100で取得した固定値と、S101で取得した定義域から選択された変数の値とを、吸音ユニット10の解析モデルの設計パラメータとして用いる。
【0053】
S103において、設計装置210は、解析モデルの吸音特性を評価する。具体的には、プロセッサ212は、S102において構築した解析モデルを用いた音響シミュレーションにより吸音特性を解析することで、解析モデルの吸音特性の評価値を取得する。例えば、設計装置210は、複数の周波数帯それぞれにおける平均吸音率または平均反射率を取得する。なお、吸音特性の評価方法はこれに限定されない。例えば、設計装置210は、複数の周波数帯それぞれにおける平均透過率を取得してもよい。
【0054】
S104において、設計装置210は、探索状態の判定を実行する。具体的には、プロセッサ212は、各変数について、S101において取得した定義域が探索済みであるか(つまり、定義域から選択可能な全ての数値を用いた解析モデルの構築および吸音特性の評価が終了したか)否かを判定する。
【0055】
S104において探索終了と判定されなかった場合、S102に戻り、設計装置210は、S101で取得した定義域から新たな変数の値を選択し、解析モデルの構築と吸音特性の評価を再度実行する。一方、S104において探索終了と判定された場合、S105へ進む。
【0056】
S105において設計装置210は、変数の最適値を抽出する。具体的には、プロセッサ212は、繰り返し実行されたS103における吸音特性の評価において最も高い評価値を示した解析モデルに対応する設計パラメータの数値を、最適値として抽出する。例えば、400Hz~1000Hzが吸音対象の周波数帯として指定されている場合、400Hz~1000Hzの平均吸音率が最も高い解析モデルの設計パラメータの数値が最適値として抽出される。こうして抽出された最適値を用いて吸音ユニット10を設計することで、400Hz~1000Hzにおける吸音特性が優れた吸音ユニット10を製造することができる。吸音対象の周波数帯は、ユーザ入力に応じて指定されてもよい。
【0057】
S105の後に、図9の処理フローは終了する。なお、図9の処理フローにおいて、S100とS101の処理は逆の順序で行われてもよいし、並行して行われてもよい。また、設計装置210は、S105における変数の最適値の抽出に代えて、もしくはS105の処理に加えて、解析モデルの評価結果を示す情報の出力を行ってもよい。例えば、設計装置210は、S102で構築した複数の解析モデルそれぞれの吸音特性を示す情報を出力してもよいし、S105で抽出された最適値に対応する解析モデルの吸音特性を示す情報を出力してもよい。設計装置210により出力される情報は、吸音特性を示す数値であってもよいし、表示装置へ出力される画像であってもよい。
【0058】
(4)変形例
(4-1)吸音ユニットの構成の変形例
吸音ユニットの構成の変形例について説明する。上述した本実施形態の説明における吸音ユニット10は、以下で説明する変形例の吸音ユニットに置き換えることができる。図10は、吸音ユニットの変形例の概観を示す斜視図である。図11は、吸音ユニットの変形例の構造を示す断面図である。
【0059】
図10に示すように、吸音ユニット20は、導波管21、導波管22、及び導波管23の3つの導波管と、穿孔板21a、穿孔板22a、及び穿孔板23aの3つの穿孔板を備える。導波管21、導波管22、及び導波管23は、幅方向(W方向)及び厚み方向(D方向)に積層されている。図11に示すように、導波管21は、側壁21bと、側壁27bと、閉口端21cとにより構成され、導波管21における閉口端21cと逆の端部には、穿孔板21aが設けられる。導波管22は、側壁21bと、側壁22bと、側壁24bと、側壁25bと、閉口端22cとにより構成され、導波管22における閉口端22cと逆の端部には、穿孔板22aが設けられる。導波管23は、側壁22bと、側壁23bと、側壁25bと、側壁26bと、閉口端23cとにより構成され、導波管23における閉口端23cと逆の端部には、穿孔板23aが設けられる。
【0060】
導波管21と導波管22とは側壁21b及び側壁24bを介して隣接しており、導波管22と導波管23とは側壁22b及び側壁25bを介して隣接している。すなわち、側壁21b、側壁22b、側壁24b、及び側壁25bは、吸音ユニット20の内部を複数の導波管に分割する。導波管21は、HD断面における輪郭が略矩形(言い換えるとI字型)である。導波管22と導波管23はそれぞれ、HD断面における輪郭が1回屈曲した形(言い換えるとL字型)である。
【0061】
穿孔板21a、穿孔板22a、及び穿孔板23aは、HW平面と略平行に配置される。導波管21は、穿孔板21aから穿孔板の法線方向(D方向)と略平行に延在する。導波管22は、穿孔板22aからD方向と略平行に延在する部分と、D方向と略垂直に延在する部分を有する。導波管23は、穿孔板23aからD方向と略平行に延在する部分と、D方向と略垂直に延在する部分を有する。
【0062】
穿孔板21a、穿孔板22a、及び穿孔板23aに入射する音波は、それぞれ導波管21、導波管22、及び導波管23の内部に伝達し、閉口端21c、閉口端22c及び閉口端23cで反射する。穿孔板21a、穿孔板22a、及び穿孔板23aは、それぞれが音響インピーダンスの整合部材として機能し、導波管21、導波管22、及び導波管23は、互いに共振特性が異なる共振器として機能する。そのため、吸音ユニット20によれば、単一の導波管を有する吸音材と比較して、広い周波数帯域において吸音効果を得ることができる。なお、各導波管が吸音する音波の周波数帯域が互いに重ならないように吸音ユニット20が設計されていてもよいし、各導波管が吸音する音波の周波数帯域の一部が重なるように吸音ユニット20が設計されていてもよい。
【0063】
導波管21の長さは、閉口端21cの中心から穿孔板21aの中心までの距離L21で表される。導波管12の長さは、穿孔板22aの中心から導波管22が屈曲する部分の中心までの距離L22aと、閉口端22cの中心から導波管22が屈曲する部分の中心までの距離L22bとの和で表される。導波管23の長さは、穿孔板23aの中心から導波管23が屈曲する部分の中心までの距離L23aと、閉口端23cの中心から導波管23が屈曲する部分の中心までの距離L23bとの和で表される。導波管22の長さは導波管21の長さより長く、導波管23の長さは導波管22の長さより長い。このように各導波管の長さを異ならせることで、各導波管の共振特性を異ならせることができる。また、導波管22と導波管23が屈曲した形状であることにより、導波管22と導波管23のD方向の厚みは、それぞれ導波管22と導波管23の長さよりも短い。このような構成により、導波管の長さを長くすることで低周波数帯域の吸音率を向上させつつ、吸音ユニット20のD方向の厚みを薄くすることができる。
【0064】
なお、図10及び図11に示す例では、吸音ユニット20が、屈曲しない形状の導波管21と、それぞれ90度に1回屈曲した形状の導波管22及び導波管23を有するものとした。ただし、吸音ユニットが有する導波管の形状はこれに限定されない。例えば、吸音ユニットが2回以上屈曲した形状(2か所以上の位置で屈曲した形状)の導波管を有していてもよい。また例えば、吸音ユニットが有する導波管が90度以外の角度(例えば45度など)で屈曲してもよい。また例えば、導波管が曲線状に延在する部分を有していてもよい。
【0065】
上述の説明において、吸音ユニットが互いに長さの異なる3つの導波管を有する例を示した。ただし、吸音ユニットが有する導波管の数はこれに限定されず、例えば吸音ユニットが2つの導波管を有していてもよいし、4つ以上の導波管を有していてもよい。また、吸音ユニットが長さの等しい複数の導波管を有していてもよい。
【0066】
上述の説明において、吸音ユニットの外形が直方体又は角錐台であり、吸音ユニットの1つの面に穿孔面が設けられており、吸音ユニットの内部が側壁により複数の空洞部に分割されている例を示した。ただし、吸音ユニットの形状は他の多面体や球体であってもよい。また、穿孔面は、吸音ユニットの1つの面のうち一部にのみ設けられていてもよいし、吸音ユニットの複数の面に設けられていてもよい。また、吸音ユニットの内部に、空洞以外の構造が含まれていてもよい。
【0067】
(4-2)その他の変形例
【0068】
吸音ユニットに設けられる穿孔板は、着脱可能に構成されてもよい。すなわち、吸音ユニットは、複数の導波管を備える立体部材と、その立体部材に取り付け可能な穿孔板とにより構成されていてもよい。これにより、穿孔板が消耗して吸音ユニットの吸音特性が劣化した場合でも、容易に穿孔板を交換して吸音ユニットの吸音特性を向上させることができる。また、穿孔板を孔パラメータが異なる別の穿孔板に交換することで、吸音ユニットの吸音特性を任意に調整することができる。
【0069】
吸音ユニットに設けられる穿孔板、閉口端、及び側壁の少なくとも何れかは、可動に構成されてもよい。また、穿孔板と導波管の閉口端との間に新たな部材が追加されてもよい。これにより、導波管の延在方向の長さや導波管の形状の調整が容易になり、吸音ユニットの吸音特性を任意に調整することができる。
【0070】
吸音ユニットは、射出成型、押出成形、3Dプリンタによる積層造形、及び切削加工のいずれかの方法もしくはそれらを組み合わせた方法を用いて製造されてもよい。ただし、吸音ユニットの製造方法は上記の例に限定されない。
【0071】
吸音壁は、互いに構造(例えば穿孔板の構造又は導波管の構造)が異なる複数種別の吸音ユニットを組み合わせることで構成されてもよい。複数種別の吸音ユニットを用いて吸音壁を構成することで、吸音壁に多様な吸音特性を持たせることができる。また、本実施形態における吸音ユニットと従来の遮音部材などを組み合わせて吸音壁を構成してもよい。
【0072】
上述の説明では、吸音ユニットの穿孔板に補強板が貼り付けられることで固定されるものとした。ただし、補強板の固定方法は貼り付けに限定されない。図12は、補強板の固定方法の変形例を示す斜視図である。図13は、補強板の固定方法の変形例を示す側面図である。図12及び図13に示すように、補強板502は、固定具1201により、補強板502と穿孔板との間に間隙が存在するように固定される。このような構成によれば、補強板502に飛び石などの物体が衝突した場合に吸音ユニット20に伝わる振動が小さくなり、吸音ユニット20が損傷する虞を低減することができる。
【0073】
なお、図12及び図13の例において、吸音ユニット20を吸音ユニット10などの他の構成に置き換えたり、補強板502を補強板302又は補強板402などの他の構成に置き換えたりしても、同様の効果を得ることができる。また、補強板の固定方法は、吸音ユニットに対して補強板を直接固定する方法に限定されず、穿孔板と補強板との位置関係が大きく変動しない態様で補強板が固定されればよい。言い換えると、穿孔板に対する補強板の位置が固定されればよい。例えば、複数の吸音ユニットで構成された吸音壁の前(吸音壁に対して-D方向側の位置)に、補強板を有する防護壁(例えば、多孔質材もしくはパンチングメタルのパネル、又は金網)が設置されてもよい。防護壁は、地面や壁などに固定されてもよいし、地面に置かれた土台に固定されてもよい。
【0074】
上述の説明では、穿孔板と補強板が平板形状であるものとしたが、穿孔板と補強板の形状はこれに限定されない。例えば、穿孔板と補強板との少なくとも一方が曲面を有する形状であってもよい。
【0075】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。また、上記の実施形態及び変形例を組合せてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1 :吸音壁
10 :吸音ユニット
20 :吸音ユニット
210 :設計装置
301 :穿孔板
302 :補強板
402 :補強板
502 :補強板


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13