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特開2022-180206歯間清掃具及び歯間清掃具の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180206
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】歯間清掃具及び歯間清掃具の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 15/04 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
A61C15/04 501
A61C15/04 503
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087174
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】592111894
【氏名又は名称】ヤマトエスロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167092
【弁理士】
【氏名又は名称】鷹津 俊一
(72)【発明者】
【氏名】川浪 明日翔
(57)【要約】      (修正有)
【課題】テープ状デンタルフロスのテープ長手方向と交差する方向に往復動することによって清掃することができるエッジ清掃領域を増やして清掃効果の高い歯間清掃具及びその歯間清掃具の製造方法を提供する。また、清掃具全体としての強度を確保しつつ、より狭い歯間に挿入することができるような、強度と使い易さとを同時に実現することができる歯間清掃具及びその歯間清掃具の製造方法を提供する。
【解決手段】複数枚のテープ状デンタルフロス12と、各テープ状デンタルフロス12を保持する保持部材13とを備え、保持部材13が把持されてテープ状デンタルフロス12が歯間に誘導され、テープ状デンタルフロス12が歯間の汚れを清掃することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のテープ状デンタルフロスと、
前記各テープ状デンタルフロスを保持する保持部材とを備え、
前記保持部材が把持されて前記テープ状デンタルフロスが歯間に誘導され、
前記テープ状デンタルフロスが前記歯間の汚れを清掃する
ことを特徴とする歯間清掃具。
【請求項2】
第1の前記テープ状デンタルフロス及び前記第1のテープ状デンタルフロスと隣り合う第2の前記テープ状デンタルフロスの一方又は両方は、少なくとも、相手方の前記テープ状デンタルフロスと対向する側の面がポリテトラフルオロエチレンの層に形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の歯間清掃具。
【請求項3】
少なくとも、前記第1のテープ状デンタルフロスと前記第2のテープ状デンタルフロスとが重なり合うように前記保持部材に保持される
ことを特徴とする請求項2に記載の歯間清掃具。
【請求項4】
少なくとも、前記第1のテープ状デンタルフロスと前記第2のテープ状デンタルフロスとは、長手方向におけるそれぞれの一方端側同士と他方端側同士とが、いずれも互いに平行に位置するように前記保持部材に保持される
ことを特徴とする請求項2に記載の歯間清掃具。
【請求項5】
隣り合った前記テープ状デンタルフロス同士の間に繊維状体が挟まれる
ことを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の歯間清掃具。
【請求項6】
少なくとも一部の前記繊維状体は、その繊維軸方向が、前記一部の繊維状体を挟んでいる前記テープ状デンタルフロスの長手方向と一致するように配置される
ことを特徴とする請求項5に記載の歯間清掃具。
【請求項7】
前記隣り合ったテープ状デンタルフロスのうち、一の前記テープ状デンタルフロス及び他の前記テープ状デンタルフロスはポリテトラフルオロエチレンにより形成される
ことを特徴とする請求項5または6に記載の歯間清掃具。
【請求項8】
二箇所で折り返すことによってループ状に形成されるテープ状デンタルフロスと、二重の前記テープ状デンタルフロスを重ね合わせて支持する第1の支持部材と、前記第1の支持部材と間隔を隔てて配置されるとともに、前記二重のテープ状デンタルフロスを重ね合わせて支持する第2の支持部材とを備え、
前記各支持部材同士の間で支持される前記二重のテープ状デンタルフロスのそれぞれの中央部が歯間に誘導されて、前記各中央部が前記歯間の汚れを清掃する
ことを特徴とする歯間清掃具。
【請求項9】
前記テープ状デンタルフロスは、少なくとも、前記ループ状の内側の面がポリテトラフルオロエチレンの層に形成される
ことを特徴とする請求項8に記載の歯間清掃具。
【請求項10】
テープ状デンタルフロスと前記テープ状デンタルフロスを保持する保持部材とを備えた歯間清掃具を製造するための歯間清掃具の製造方法であって、
複数枚の前記テープ状デンタルフロスを用意する準備工程を含み、
前記複数枚のテープ状デンタルフロスを前記保持部材に保持する位置に配置する配置ステップと、前記複数枚のテープ状デンタルフロスに、前記保持部材を形成する合成樹脂材料をインサート成形するインサート成形ステップとを有する清掃具成形工程を含む
ことを特徴とする歯間清掃具の製造方法。
【請求項11】
前記配置ステップにおいて、少なくとも、第1の前記テープ状デンタルフロスと、前記第1のテープ状デンタルフロスと隣り合う第2の前記テープ状デンタルフロスとはお互いに重なり合うように配置される、または、前記第1及び前記第2のテープ状デンタルフロスは、長手方向におけるそれぞれの一方端側同士と他方端側同士とが、何れも互いに平行に位置するように配置される
ことを特徴とする請求項10に記載の歯間清掃具の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は歯間清掃具及び歯間清掃具の製造方法に関し、詳細には保持部材が把持されてテープ状デンタルフロスが歯間に誘導され、このテープ状デンタルフロスが歯間の汚れを清掃する歯間清掃具及び歯間清掃具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯間に挿入して前記歯間の汚れを清掃するための清掃具であり、テープ状に形成されたデンタルフロスがある(特許文献1)。このようにテープ状に形成されたデンタルフロスを「テープ状デンタルフロス」と呼ぶ。テープ状デンタルフロスには、テープの裏表に刷掃面が形成されているとともに、テープの横断面の長手方向における一端のエッジ及び他端のエッジがそれぞれテープ長手方向に延びるように形成されている。これにより、使用者はテープ状デンタルフロスを歯間に挿入してテープ長手方向に往復動させることによってテープの刷掃面により歯間を清掃することができ、かつ、歯の表面上においてテープ状デンタルフロスをテープ長手方向と交差する方向に往復動させることによって何れかのエッジにより歯間を清掃することができる。
【0003】
このようにして、テープ状デンタルフロスはテープの刷掃面を有することによって、ロープ状に形成されたデンタルフロスよりも清掃のための有効面積を広くすることができる。そのため、テープ状デンタルフロスはより高い清掃効果を得ることができる。
【0004】
また、テープの横断面が偏平なため、ロープ状に形成されたデンタルフロスに比べて、同じ横断面の面積を確保しつつもテープを薄く形成することができる。そのため、テープ状デンタルフロスは、ロープ状に形成されたデンタルフロスと同等の強度を得て且つより狭い歯間であっても奥まで進入することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-150102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来は、使用者が一枚のテープ状デンタルフロスの両端をそれぞれ両手で把持して歯間を清掃する。または、一枚のテープ状デンタルフロスと、この一枚のテープ状デンタルフロスを保持する保持部材とを備えた歯間清掃具を用いて歯間を清掃することが考えられる。例えば、一枚のテープ状デンタルフロス2をいわゆるY型ホルダーと呼ばれる保持部材3によって保持した状態の歯間清掃具1を図19(a)に示し、一枚のテープ状デンタルフロス102をいわゆるF型ホルダーと呼ばれる保持部材103によって保持した状態の歯間清掃具101を図19(b)に示す。
【0007】
これらの場合、一枚のテープ状デンタルフロス2,102が有するテープ長手方向のエッジは2本であるため、このテープ状デンタルフロス2,102をテープ長手方向と交差する方向に往復動することによってエッジが歯の表面に当接して清掃する領域は二箇所に過ぎない(以下、エッジが歯の表面に当接する領域を「エッジ清掃領域」という。)。例えば、図20に一枚のテープ状デンタルフロス2,102を用いて歯の表面を清掃する状態を示す。エッジ清掃領域は図の左右の二箇所のみであり、このテープ状デンタルフロス2,102を図の矢印向きに進めるとき、右側の一のエッジ清掃領域だけが歯の表面の汚れを刷掃する。また、一枚のテープ状デンタルフロス2,102によって得られる清掃具全体としての強度を確保するためには、一定以上の厚さを有する必要があり、その分、挿入する歯間が広くなければならない。
【0008】
そこで本発明は、このような問題に鑑み、テープ長手方向と交差する方向に往復動することによって清掃することができるエッジ清掃領域を増やして清掃効果の高い歯間清掃具及び歯間清掃具の製造方法の提供を目的とする。また、清掃具全体としての強度を確保しつつ、より狭い歯間に挿入することができるような、強度と使い易さとを同時に実現することができる歯間清掃具及び歯間清掃具の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は複数枚のテープ状デンタルフロスと、前記各テープ状デンタルフロスを保持する保持部材とを備え、前記保持部材が把持されて前記テープ状デンタルフロスが歯間に誘導され、前記テープ状デンタルフロスが前記歯間の汚れを清掃することを特徴とする歯間清掃具を提供するものである。
【0010】
すなわち、本発明の歯間清掃具は複数枚のテープ状デンタルフロスを備えることにより、各テープ状デンタルフロスがテープ長方向の2本のエッジを有するため、歯間清掃具全体としては4本以上のエッジを有する。このように、テープ状デンタルフロスの枚数を増やす分、歯間清掃具をテープ長手方向と交差する方向に往復動することによって清掃することができるエッジ清掃領域を増やすことができる。そのため、より高い清掃効果を得ることができる。
【0011】
また、本発明の歯間清掃具は複数枚のテープ状デンタルフロスを備えることにより、各テープ状デンタルフロスの厚さを低減するときでも、それらのテープ状デンタルフロスが複数集まることによって歯間清掃具全体として十分な強度を確保することができる。しかも、各テープ状デンタルフロスが薄いため、狭い歯間に挿入時には一枚一枚のテープ状デンタルフロスが面方向にずれることによって、各テープ状デンタルフロスは容易に歯間に進入することができる。それらのため、強度と使い易さとを同時に得ることができる。
【0012】
(2)また、第1の前記テープ状デンタルフロス及び前記第1のテープ状デンタルフロスと隣り合う第2の前記テープ状デンタルフロスの一方又は両方は、少なくとも、相手方の前記テープ状デンタルフロスと対向する側の面がポリテトラフルオロエチレンの層に形成されてもよい。
【0013】
ここで、第1及び第2のテープ状デンタルフロスのエッジを含む、これらのエッジの近傍領域をそれぞれ第1のエッジ清掃領域と第2のエッジ清掃領域と呼ぶことにする。そして、使用時に、第1及び第2のテープ状デンタルフロスはお互いが対向する面において滑って互いの位置が面方向にずれる。そのため、本発明の歯間清掃具が、例えば歯の表面に近い順に第1のテープ状デンタルフロスと第2のテープ状デンタルフロスとが隣り合うように保持していることにより、使用時に第1のテープ状デンタルフロス上を滑る第2のテープ状デンタルフロスが先行して歯間清掃具の進行方向に進む。こうして、歯の表面において第2のエッジ清掃領域が先行し、第1のエッジ清掃領域が遅行する。
【0014】
このとき、隣り合う第1のテープ状デンタルフロスと第2のテープ状デンタルフロスの一方又は両方の、少なくとも内側の面がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の層に形成されており、このポリテトラフルオロエチレンの層に形成される面が相手方の前記テープ状デンタルフロスと対向する。ポリテトラフルオロエチレンは摩擦係数が他の材質に比べて低いことが知られている。そのため、本発明の歯間清掃具の使用時において第1及び第2のテープ状デンタルフロス同士は容易に滑って互いの位置が面方向にずれる。そのため、歯の表面において第2のエッジ清掃領域が確実に先行することができ、第1及び第2の二つのエッジ清掃領域が異なる位置及びタイミングで歯の表面に作用することができる。こうして、歯間清掃具全体としてより高い清掃効果を得ることができる。
【0015】
また、第1及び第2のテープ状デンタルフロス同士が容易に滑って互いの位置が面方向にずれることが可能なため、これらのテープ状デンタルフロスは、お互いにずれないままに歯間に進入することがない。すなわち、一方のテープ状デンタルフロスが確実に先行して歯間に進入し、また、他方のテープ状デンタルフロスが確実に遅行して歯間に進入する。そのため、それぞれが薄く形成されている各テープ状デンタルフロスを順に歯間の隙間に挿入することができる。このように本発明の歯間清掃具は容易に歯間に挿入することができる。
【0016】
(3)また、少なくとも、前記第1のテープ状デンタルフロスと前記第2のテープ状デンタルフロスとが重なり合うように前記保持部材に保持されてもよい。
【0017】
すなわち、第1のテープ状デンタルフロスと第2のテープ状デンタルフロスとが重なり合うように保持されていることにより、使用時、第1及び第2のテープ状デンタルフロス同士が互いに若干捩れることを考え合わせても、第1及び第2のテープ状デンタルフロスは略同一の方向に進行する。例えば、第1のテープ状デンタルフロスのエッジが歯の表面と略同一の方向に進行するときは、第2のテープ状デンタルフロスのエッジも同じように歯の表面と略同一の方向に進行する。そのため、第1のエッジ清掃領域において良好な清掃効果を得られるように歯間清掃具を保持して清掃を行うことにより、第2のエッジ清掃領域においても同様に良好な清掃効果を得ることができる。こうして、本発明の歯間清掃具全体としてより高い清掃効果を得ることができる。
【0018】
また、第1のテープ状デンタルフロスのエッジ及び第2のテープ状デンタルフロスのエッジが略同じ方向に進むため、一方のテープ状デンタルフロスを歯間の隙間に対して最も進入し易い角度において歯間清掃具を保持して挿入することにより、他方のテープ状デンタルフロスも同じ隙間に対して比較的容易に進入することができる。こうして、本発明の歯間清掃具は狭い歯間にも挿入することができる。
【0019】
(4)また、少なくとも、前記第1のテープ状デンタルフロスと前記第2のテープ状デンタルフロスとは、長手方向におけるそれぞれの一方端側同士と他方端側同士とが、いずれも互いに平行に位置するように前記保持部材に保持されてもよい。
【0020】
すなわち、第1のテープ状デンタルフロスの一方端側と第2のテープ状デンタルフロスの一方端側とが互いに平行に位置し、かつ、第1のテープ状デンタルフロスの他方端側と第2のテープ状デンタルフロスの他方端側とが互いに平行に位置するため、使用時、第1及び第2のテープ状デンタルフロス同士が互いに若干捩れることを考え合わせても、第1及び第2のテープ状デンタルフロスは略同一の方向に進行する。例えば、第1のテープ状デンタルフロスのエッジが歯の表面と略同一の方向に進行するときは、第2のテープ状デンタルフロスのエッジも同じように歯の表面と略同一の方向に進行する。そのため、第1のエッジ清掃領域において良好な清掃効果を得られるように歯間清掃具を保持して清掃を行うことにより、第2のエッジ清掃領域においても同様に良好な清掃効果を得ることができる。こうして、本発明の歯間清掃具全体としてより高い清掃効果を得ることができる。
【0021】
また、第1のテープ状デンタルフロスのエッジ及び第2のテープ状デンタルフロスのエッジが略同じ方向に進むため、一方のテープ状デンタルフロスを歯間の隙間に対して最も進入し易い角度において歯間清掃具を保持して挿入することにより、他方のテープ状デンタルフロスも同じ隙間に対して比較的容易に進入することができる。こうして、本発明の歯間清掃具は狭い歯間にも挿入することができる。
【0022】
(5)また、隣り合った前記テープ状デンタルフロス同士の間に繊維状体が挟まれてもよい。
【0023】
すなわち、繊維状体が挟まれているため、内側に繊維状体が位置する部分では、この繊維状体の形状に倣ってテープ状デンタルフロスが厚さ方向に膨らみ出るように変形する。こうして、本発明の歯間清掃具はテープ状デンタルフロスの外側の面に生じた凸状部が歯の表面に当たることにより、エッジ清掃領域以外にも、この凸状部が効果的に歯の汚れを刷掃することができる。よって、高い清掃効果を奏することができる。
【0024】
(6)また、少なくとも一部の前記繊維状体は、その繊維軸方向が、前記一部の繊維状体を挟んでいる前記テープ状デンタルフロスの長手方向と一致するように配置されてもよい。
【0025】
すなわち、繊維状体の繊維軸方向がテープ状デンタルフロスの長手方向と一致することにより、その繊維状体はテープ状デンタルフロスの外側の面に浮き出て、テープ状デンタルフロスの長手方向に延在する凸状部を形成する。そのため、歯間清掃具をテープ長手方向と交差する方向に往復動することによって、この凸状部は歯間清掃具の往復動方向と交差する方向に形成されていることになり、歯の表面の汚れにより効果的に力を加えて刷掃することができる。よって、高い清掃効果を奏することができる。
【0026】
(7)また、前記隣り合ったテープ状デンタルフロスのうち、一の前記テープ状デンタルフロス及び他の前記テープ状デンタルフロスはポリテトラフルオロエチレンにより形成されてもよい。
【0027】
すなわち、一のテープ状デンタルフロス及び他のテープ状デンタルフロスがポリテトラフルオロエチレンによって形成されているため、このポリテトラフルオロエチレンの摩擦係数が低いことにより、前記の外側の面は歯間における歯の表面と接するときにこの歯の表面との間において滑り易い。その結果、本発明の歯間清掃具による清掃効果が減殺されかねない。
【0028】
そこで、特に、隣り合ったテープ状デンタルフロス同士の間に繊維状体が挟まれている場合に前記テープ状デンタルフロスの外側の面に凸状部が生じるのであって、これらテープ状デンタルフロスがポリテトラフルオロエチレンにより形成されているにもかかわらず、本発明の歯間清掃具は高い清掃効果を奏することができる。
【0029】
(8)本発明は二箇所で折り返すことによってループ状に形成されるテープ状デンタルフロスと、二重の前記テープ状デンタルフロスを重ね合わせて支持する第1の支持部材と、前記第1の支持部材と間隔を隔てて配置されるとともに、前記二重のテープ状デンタルフロスを重ね合わせて支持する第2の支持部材とを備え、前記各支持部材同士の間で支持される前記二重のテープ状デンタルフロスのそれぞれの中央部が歯間に誘導されて、前記各中央部が前記歯間の汚れを清掃することを特徴とする歯間清掃具を提供するものである。
【0030】
すなわち、本発明の歯間清掃具は、第1の支持部材と第2の支持部材との間で支持される二重のテープ状デンタルフロスのそれぞれの中央部が歯間の汚れを清掃するため、使用者は、前記各中央部の外側をそれぞれ一方の手の手指と他方の手の手指とによって把持することができる。このとき、一方の手と他方の手とによってそれぞれ自在な位置で把持することができるため、口腔内の様々な部位の歯と歯との間の歯間を清掃することができ、一箇所の歯間について様々な場所を清掃することができ、また、様々な角度にテープ状デンタルフロスを当てて清掃することができる。
【0031】
こうして、本発明の歯間清掃具は口腔内の清掃し難い部位などを容易に清掃することができ、高い清掃効果を得ることができる。
【0032】
(9)また、前記テープ状デンタルフロスは、少なくとも、前記ループ状の内側の面がポリテトラフルオロエチレンの層に形成されてもよい。
【0033】
すなわち、本発明の歯間清掃具は使用時において、二重に重なったテープ状デンタルフロス同士は容易に滑って互いの位置が面方向にずれる。そのため、歯の表面において一方のテープ状デンタルフロスが確実に先行することができ、双方のテープ状デンタルフロスが異なる位置及びタイミングで歯の表面に作用することができる。こうして、歯間清掃具全体として高い清掃効果を得ることができる。
【0034】
また、それぞれが薄く形成されている前記双方のテープ状デンタルフロスを順に歯間の隙間に挿入することができる。こうして、本発明の歯間清掃具は歯間清掃具全体として容易に歯間に挿入することができる。
【0035】
(10)本発明はテープ状デンタルフロスと前記テープ状デンタルフロスを保持する保持部材とを備えた歯間清掃具を製造するための歯間清掃具の製造方法であって、複数枚の前記テープ状デンタルフロスを用意する準備工程を含み、前記複数枚のテープ状デンタルフロスを前記保持部材に保持する位置に配置する配置ステップと、前記複数枚のテープ状デンタルフロスに、前記保持部材を形成する合成樹脂材料をインサート成形するインサート成形ステップとを有する清掃具成形工程を含むことを特徴とする歯間清掃具の製造方法を提供するものである。
【0036】
すなわち、本発明の歯間清掃具の製造方法は、保持部材をインサート成形するインサート成形ステップを含むため、例えば予め成形した保持部材を用意して、その保持部材とテープ状デンタルフロスとを組み立てるような製造方法と比べて工数を少なくことができる。これにより、複数枚の前記テープ状デンタルフロスを備えることによって高い清掃効果を得ることができる歯間清掃具を容易に製造することができる。
【0037】
(11)また、前記配置ステップにおいて、少なくとも、第1の前記テープ状デンタルフロスと、前記第1のテープ状デンタルフロスと隣り合う第2の前記テープ状デンタルフロスとはお互いに重なり合うように配置される、または、前記第1及び前記第2のテープ状デンタルフロスは、長手方向におけるそれぞれの一方端側同士と他方端側同士とが、何れも互いに平行に位置するように配置されてもよい。
【0038】
すなわち、複数枚のテープ状デンタルフロスに保持部材を形成する合成樹脂材料をインサート成形する上で、第1及び第2のテープ状デンタルフロス同士を重なり合う又は平行に位置するように配置することによって、例えば第1及び第2のテープ状デンタルフロスのそれぞれの延長面同士が交差する場合に比べてそれぞれのテープ状デンタルフロスを供給する各供給装置、インサート成形のための金型等の配置が容易である。これにより、複数枚の前記テープ状デンタルフロスを備えることによって高い清掃効果を得ることができる歯間清掃具を容易に製造することができる。
【発明の効果】
【0039】
このように本発明では、テープ長手方向と交差する方向に往復動することによって清掃することができるエッジ清掃領域を増やして清掃効果の高い歯間清掃具を提供する。また、こうした清掃効果の高い歯間清掃具を容易に製造することができる歯間清掃具の製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の第1の実施形態に係る歯間清掃具の斜視図を表わす。
図2図1の歯間清掃具のA-A線断面図を表わす。
図3図1の歯間清掃具を用いて歯間における歯の表面に付着した汚れを清掃する状態の説明図を表わす。
図4図1の歯間清掃具に用いるテープ状デンタルフロスの層構造を説明する説明図を表わす。
図5】本発明の第1の実施形態の変形例に係る歯間清掃具の斜視図を表わす。
図6】本発明の第1の実施形態に係る歯間清掃具の製造方法を示すフロー図を表わす。
図7】本発明の第2の実施形態に係る歯間清掃具の斜視図を表わす。
図8図7の歯間清掃具のB-B線断面図を表わす。
図9図7の歯間清掃具を用いて歯間における歯の表面に付着した汚れを清掃する状態の説明図を表わす。
図10】本発明の第2の実施形態の変形例に係る歯間清掃具の斜視図を表わす。
図11】本発明の第3の実施形態に係る歯間清掃具の斜視図を表わす。
図12図11の歯間清掃具を用いて歯間における歯の表面に付着した汚れを清掃する状態の説明図を表わす。
図13】本発明の第4の実施形態に係る歯間清掃具の斜視図を表わす。
図14】本発明の第5の実施形態に係る歯間清掃具を用いて歯間における歯の表面に付着した汚れを清掃する状態の説明図を表わす。
図15】本発明の第6の実施形態に係る歯間清掃具の斜視図を表わす。
図16】第15の歯間清掃具のテープ状デンタルフロス及び保持部左脚部を左向きに視たときの図を表わす。
図17】四枚のテープ状デンタルフロスを備えた、本発明の歯間清掃具を用いて歯間における歯の表面に付着した汚れを清掃する状態の説明図を表わす。
図18】上向きに開いたV字状を描くように配置された二枚のテープ状デンタルフロスを備える、本発明の歯間清掃具についてこれらのテープ状デンタルフロス及び保持部左脚部を左向きに視たときの図を表わす。
図19】(a)一枚のテープ状デンタルフロスを備える歯間清掃具の例を表わす。(b)一枚のテープ状デンタルフロスを備える、図19(a)とは異なる形態の歯間清掃具の例を表わす。
図20】一枚のテープ状デンタルフロスを備える歯間清掃具の例を説明図によって表わす。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態を、図1図6を用いて説明する。図1において11は歯間清掃具であって、使用者の歯間Cにテープ状デンタルフロス12を挿入して歯間Cを清掃することができる。
【0042】
歯間清掃具11は、図1の斜視図が示すように二枚のテープ状デンタルフロス12a,12bと、各テープ状デンタルフロス12a,12bを保持する保持部材13とを備える。保持部材13は柄部13aを有する。柄部13aが使用者の手指によって把持されて各テープ状デンタルフロス12a,12bが歯間Cに誘導され、各テープ状デンタルフロス12a,12bが歯間Cの汚れを清掃する。
【0043】
図1の左上の向きを示す矢印Lは歯間清掃具11の左方を示す。矢印Rは、矢印Lの逆向きである歯間清掃具11の右方を示す。次に、図1の左下の向きを示す矢印Fは歯間清掃具11の前方を示す。矢印Bは、矢印Fの逆向きである歯間清掃具11の後方を示す。さらに、矢印Uの向きが歯間清掃具11の上方を示し、矢印Dの向きが歯間清掃具11の下方を示す。
【0044】
二枚のテープ状デンタルフロス12a,12bは、図の手前に見える前側テープ状デンタルフロス12aと、前側テープ状デンタルフロス12aの後側に隣り合って配置される後側テープ状デンタルフロス12bとから成る。前後の各テープ状デンタルフロス12a,12bはそれぞれの左端側であるフロス左端側14a,14bが、保持部材13の左側の脚部である保持部材左脚部13bによって保持される。また、それぞれの右端側であるフロス右端側15a,15bが、保持部材13の右側の脚部である保持部材右脚部13cによって保持される。フロス左端側14a,14b及びフロス右端側15a,15bは、保持部材13を形成する合成樹脂材料をインサート成形することによって、それぞれ保持部材左脚部13b及び保持部材右脚部13cによって保持される。
【0045】
このとき、前側テープ状デンタルフロス12aのフロス左端側である前フロス左端側14aと、同じく後側テープ状デンタルフロス12bのフロス左端側である後フロス左端側14bとが重なり合うように保持部材左脚部13bに保持される。また、前側テープ状デンタルフロス12aのフロス右端側である前フロス右端側15aと、同じく後側テープ状デンタルフロス12bのフロス右端側である後フロス右端側15bとが重なり合うように保持部材右脚部13cに保持される。これによって前後のテープ状デンタルフロス12a,12bは前後方向に重なり合うように保持部材13に保持される。
【0046】
図2は、図1に指示されているA-A線断面図を表わす。保持部材左脚部13bは、矩形状の境界面13dにおいて、お互いに重なり合った状態の前後のフロス左端側14a,14bを固定する。保持部材右脚部13cにおいても同様に境界面13dにおいてお互いに重なり合った状態の前後のフロス右端側15a,15bが固定される。これらにより、前後の各テープ状デンタルフロス12a,12bは重なり合って保持部材左脚部13b及び保持部材右脚部13cに保持されている。
【0047】
また、前後の各テープ状デンタルフロス12a,12bは、それぞれ図の下側のエッジである先端エッジ16a,16bを有し、同じように図の上側のエッジである後端エッジ17a,17bを有する。それぞれ、前側テープ状デンタルフロス12aの前側先端エッジ16a及び前側後端エッジ17a、ならびに、後側テープ状デンタルフロス12bの後側先端エッジ16b及び後側後端エッジ17bとよぶ。各先端エッジ16a,16bは保持部材13の先端側に位置し、各後端エッジ17a,17bは保持部材13の基端側に位置する。これにより、各テープ状デンタルフロス12a,12bは2本のエッジを有する。また、歯間清掃具11は全体で4本のエッジを有する。
【0048】
このように、テープ状デンタルフロス12の枚数を増やす分、歯間清掃具11をテープ長手方向と交差する方向に往復動することによって清掃することができるエッジ16a,16b,17a,17bを増やすことができ、これに伴い、以下で述べるエッジ清掃領域を増やすことができる。そのため、より高い清掃効果を得ることができる。
【0049】
また、歯間清掃具11は2枚のテープ状デンタルフロス12a,12bを備えることにより、各テープ状デンタルフロス12a,12bの厚さを低減するときでも、それらのテープ状デンタルフロス12a,12bが複数集まることによって歯間清掃具11全体として十分な強度を確保することができる。しかも、各テープ状デンタルフロス12a,12bが薄いため、狭い歯間Cに挿入時には一枚一枚のテープ状デンタルフロス12a,12bが面方向にずれることによって、各テープ状デンタルフロス12a,12bは容易に歯間Cに進入することができる。それらのため、強度と使い易さとを同時に得ることができる。
【0050】
図3は、歯間清掃具11を用いて歯間Cにおける歯の表面Tfに付着された汚れSを清掃する状態の説明図を示す。使用者は保持部材13を操作して前後の各テープ状デンタルフロス12a,12bを、それぞれの先端エッジ16a,16bが先になるように歯間Cに挿入する。このとき使用者は、歯間Cを構成する二本の歯のうち、表面Tfを有する側の歯を清掃するため、各テープ状デンタルフロス12a,12bをこの歯に当てようとする。図の矢印Pは歯間清掃具11が歯間Cの奥に向けて進む向きを示す。ここで、各テープ状デンタルフロス12a,12bの先端エッジ16a,16bを含む、各先端エッジ16a,16bの近傍領域を先端エッジ清掃領域18a,18bと呼ぶ。前側テープ状デンタルフロス12aの先端エッジ清掃領域を前側先端エッジ清掃領域18aといい、後側テープ状デンタルフロス12bの先端エッジ清掃領域を後側先端エッジ清掃領域18bという。各先端エッジ清掃領域18a,18bは汚れSを下向きに押し出して清掃する。また、各後端エッジ17a,17bの同様の近傍領域をそれぞれ前側後端エッジ清掃領域及び後側後端エッジ清掃領域とよぶ。
【0051】
このとき、前後の各テープ状デンタルフロス12a,12bはお互いが対向する面において滑って互いの位置が面方向にずれる。そのため、歯間清掃具11が、表面Tfに近い順に前側テープ状デンタルフロス12aと後側テープ状デンタルフロス12bとが隣り合うようにこれらを保持していることにより、前側テープ状デンタルフロス12a上を滑る後側テープ状デンタルフロス12bは先行して進行方向Pに進む。こうして、表面Tfにおいて後側先端エッジ清掃領域18bが先行し、前側先端エッジ清掃領域18aが遅行する。そして、図の通り上側の汚れSaを前側先端エッジ清掃領域18aが清掃し、上側のSaよりも下方に位置する下側の汚れSbを後側先端エッジ清掃領域18bが清掃するようにして二箇所の汚れSa,Sbを同時に清掃することができる。このようなメカニズムにより、発明者は、図20が示すように一枚のテープ状デンタルフロス2,102を備えた歯間清掃具1,101によって汚れSを清掃する場合に下側の汚れSbしか清掃できないことと対比して、本発明の歯間清掃具11が特に高い清掃効果を得られることを見出した。
【0052】
また、前フロス左端側14aと後フロス左端側14bとが隣り合い、前フロス右端側15aと後フロス右端側15bとが隣り合う。そのため、使用時、テープ状デンタルフロス12a,12b同士が互いに若干捩れることを考え合わせても、前側先端エッジ16aが表面Tfと略同一の方向である進行方向Pに進行するとともに、後側先端エッジ16bも同じように表面Tfと略同一の方向である進行方向Pに進行する。そのため、前側先端エッジ清掃領域18aにおいて良好な清掃効果を得られるように歯間清掃具11を保持して清掃を行うことにより、後側先端エッジ清掃領域18bにおいても同様に良好な清掃効果を得ることができる。こうして、歯間清掃具11全体としてより高い清掃効果を得ることができる。
【0053】
さらに、前後の各先端エッジ16a,16bが略同じ方向に進むため、一方のテープ状デンタルフロス12a,12bを歯間Cの隙間に対して最も進入し易い角度において歯間清掃具11を保持して挿入することにより、他方のテープ状デンタルフロス12a,12bも同じ隙間に対して比較的容易に進入することができる。こうして、歯間清掃具11は狭い歯間Cにも挿入することができる。
【0054】
なお、歯間清掃具11を逆の向きに進めて、各テープ状デンタルフロス12a,12bを図の矢印Pと反対の向きに動かすときでも、各後端エッジ清掃領域によって同様に汚れSを上向きにかき出して清掃し、上述と同様の清掃効果を得ることができる。
【0055】
また、この明細書において前側テープ状デンタルフロス12a及び後側テープ状デンタルフロス12bのうちの一方を第1のテープ状デンタルフロスとよぶことがあり、また、他方を第2のテープ状デンタルフロスとよぶことがある。さらに、前側エッジ清掃領域及び後側エッジ清掃領域のうちの一方を第1のエッジ清掃領域と、また、他方を第2のエッジ清掃領域とそれぞれよぶことがある。
【0056】
各テープ状デンタルフロス12a,12bは、延展性の高い合成樹脂によって形成される。延展性が高いことにより各テープ状デンタルフロス12a,12bを薄く形成することができ、使用者は容易に歯間Cに挿入することができる。また、各テープ状デンタルフロス12a,12bが、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)によって形成される。あるいは、各テープ状デンタルフロス12a,12bは、ポリテトラフルオロエチレンのような一種の合成樹脂層から成る単層の層構成を有するだけでなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレンの層と、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等のポリテトラフルオロエチレン以外の合成樹脂の層とから成る二層の層構成を有してもよい。この場合、好ましくは、図4が示すように、前側テープ状デンタルフロス12a及び後側テープ状デンタルフロス12bが、それぞれ相手方のテープ状デンタルフロスと対向する側の層である内側層Ia,Ibがポリテトラフルオロエチレンの層に形成され、そして、反対側の層である外側層Oa,Obが上で述べたような各種のエラストマーの層に形成される。
【0057】
こうしたポリテトラフルオロエチレンは摩擦係数が他の材質に比べて低いことが知られている。そのため、材料にポリテトラフルオロエチレンを採用した場合、歯間清掃具11の使用時においてテープ状デンタルフロス12a,12b同士は容易に滑って互いの位置が面方向にずれる。そのため、歯の表面Tfにおいて後側先端エッジ清掃領域18bが確実に先行することができ、各先端エッジ清掃領域18a,18bが異なる位置及びタイミングで表面Tfに作用することができる。こうして、歯間清掃具11全体としてより高い清掃効果を得ることができる。また、上で述べたように内側層Ia,Ibだけがポリテトラフルオロエチレンの層に形成される場合も同様の効果を得ることができる。図が示すように、Ia及びOaがそれぞれ前側テープデンタルフロス12aの内側層及び外側層を指し、Ib及びObがそれぞれ後側テープデンタルフロス12bの内側層及び外側層を指す。
【0058】
また、各テープ状デンタルフロス12a,12b同士が容易に滑って互いの位置が面方向にずれるため、これらのテープ状デンタルフロス12a,12bは、お互いにずれないままに歯間Cに進入することがない。すなわち、後側テープ状デンタルフロス12bが確実に先行して歯間Cに進入し、また、前側テープ状デンタルフロス12aが確実に遅行して歯間Cに進入する。そのため、それぞれが薄く形成されている各テープ状デンタルフロス12a,12bを順に歯間Cの隙間に挿入することができる。このように歯間清掃具11は容易に歯間Cに挿入することができる。
【0059】
保持部材13は、ポリプロピレン(PP)、飽和ポリエステル(PET)等の必要な剛性を有する合成樹脂によって形成される。
【0060】
[変形例]
図5は本実施形態の変形例を示す。図5の斜視図が示すように、歯間清掃具111は二枚のテープ状デンタルフロス112と、各テープ状デンタルフロス112a,112bを保持する保持部材113とを備える。保持部材113は柄部113aを有する。
【0061】
図5の左下の向きを示す矢印Lは歯間清掃具111の左方を示す。矢印Rは、矢印Lの逆向きである歯間清掃具111の右方を示す。次に、図5の右下の向きを示す矢印Fは歯間清掃具111の前方を示す。矢印Bは、矢印Fの逆向きである歯間清掃具111の後方を示す。さらに、矢印Uの向きが歯間清掃具111の上方を示し、矢印Dの向きが歯間清掃具111の下方を示す。
【0062】
二枚のテープ状デンタルフロス112a,112bは、図の手前に見える前側テープ状デンタルフロス112aと、前側テープ状デンタルフロス112aの後側に隣り合って配置される後側テープ状デンタルフロス112bとから成る。前後の各テープ状デンタルフロス112a,112bはそれぞれの左端側であるフロス左端側が、保持部材113の左側の脚部である保持部材左脚部113bによって保持される。また、それぞれの右端側であるフロス右端側が、保持部材113の右側の脚部である保持部材右脚部113cによって保持される。フロス左端側及びフロス右端側は、保持部材113を形成する合成樹脂材料をインサート成形することによって、それぞれ保持部材左脚部113b及び保持部材右脚部113cによって保持される。また、前後のテープ状デンタルフロス112a,112bは前後方向に重なり合うように保持部材113に保持される。
【0063】
その他の構成は、上述した、他の第1の実施形態の例における構成と共通する。
【0064】
[製造方法]
図6に歯間清掃具11,111の製造方法である歯間清掃具の製造方法S1000のフロー図を示す。歯間清掃具の製造方法S1000は、テープ状デンタルフロス12,112を用意する準備工程S1100と、用意したテープ状デンタルフロス12,112を用いて歯間清掃具11,111を成形する清掃具成形工程S1200とを含む。
【0065】
準備工程S1100において、歯間清掃具11,111の製造者はテープ状デンタルフロス12,112を自ら製造して用意してもよく、また、他所で製造されたものを搬入して用意してもよい。テープ状デンタルフロス12,112は巻芯に巻き取られた状態で用意され、かつ、2巻の巻き取られた状態のものが用意される。
【0066】
清掃具成形工程S1200は、巻き取られた状態で用意されたテープ状デンタルフロス12,112を保持部材13,113に保持する位置に配置する配置ステップS1210と、配置されたテープ状デンタルフロス12,112に対して保持部材13,113を形成する合成樹脂材料をインサート成形するインサート成形ステップS1220とを含む。
【0067】
配置ステップS1210において、製造者は巻き取られた状態のテープ状デンタルフロス12,112を直線状に巻き出す。このとき、2巻の巻き取られた状態のテープ状デンタルフロス12,112から、前側テープ状デンタルフロス12a,112aと、後側テープ状デンタルフロス12b,112bとがそれぞれ巻き出される。そして、前後の各テープ状デンタルフロス12a,12b,112a,112bはお互いに重なり合うように配置される。その上で合成樹脂材料をインサート成形することにより、前後の各テープ状デンタルフロス12a,12b,112a,112bはそれぞれが前後に重なり合った状態で保持部材左脚部13b,113b及び保持部材右脚部13c,113cに保持される。
【0068】
このように、歯間清掃具の製造方法S1000は、保持部材13,113をインサート成形するインサート成形ステップS1220を含むため、例えば予め成形した保持部材を用意して、その保持部材とテープ状デンタルフロスとを組み立てるような製造方法と比べて工数を少なくことができる。これにより、前後のテープ状デンタルフロス12a,12b,112a,112bを備えることによって高い清掃効果を得ることができる歯間清掃具11,111を容易に製造することができる。
【0069】
また、前後の各テープ状デンタルフロス12a,12b,112a,112bに保持部材13,113を形成する合成樹脂材料をインサート成形する上で、テープ状デンタルフロス12a,12b,112a,112b同士を重なり合うように配置することによって、例えばこれらが交差する場合に比べてそれぞれのテープ状デンタルフロス12a,12b,112a,112bを供給する各供給装置、インサート成形のための金型等の配置が容易である。これにより、前後のテープ状デンタルフロス12a,12b,112a,112bを備えることによって高い清掃効果を得ることができる歯間清掃具を容易に製造することができる。
【0070】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態を、図7図10を用いて説明する。歯間清掃具21は、図7の斜視図が示すように二枚のテープ状デンタルフロス22と、各テープ状デンタルフロス22a,22bを保持する保持部材23とを備える。保持部材23は柄部23aを有する。柄部23aが使用者の手指によって把持されて各テープ状デンタルフロス22a,22bが歯間Cに誘導され、各テープ状デンタルフロス22a,22bが歯間Cの汚れを清掃する。図8は、図7に指示されているB-B線断面図を表わす。
【0071】
二枚のテープ状デンタルフロス22a,22bは、図の手前に見える前側テープ状デンタルフロス22aと、前側テープ状デンタルフロス22aの後側に隣り合って配置される後側テープ状デンタルフロス22bとから成る。前後の各テープ状デンタルフロス22a,22bはそれぞれの左端側であるフロス左端側24a,24bが、保持部材23の左側の脚部である保持部材左脚部23bによって保持される。また、図示されていない、それぞれの右端側であるフロス右端側25a,25bが、保持部材23の右側の脚部である保持部材右脚部23cによって保持される。フロス左端側24a,24b及びフロス右端側25a,25bは、保持部材23を形成する合成樹脂材料をインサート成形することによって、それぞれ保持部材左脚部23b及び保持部材右脚部23cによって保持される。
【0072】
このとき、前側テープ状デンタルフロス22aのフロス左端側である前フロス左端側24aと、同じく後側テープ状デンタルフロス22bのフロス左端側である後フロス左端側24bとが互いに平行に位置するように保持部材左脚部23bに保持される。また、前側テープ状デンタルフロス22aのフロス右端側である前フロス右端側25aと、同じく後側テープ状デンタルフロス22bのフロス右端側である後フロス右端側25bとが互いに平行に位置するように保持部材右脚部23cに保持される。これによって前後のテープ状デンタルフロス22a,22bは前後方向に隣り合い且つ互いに平行に位置するように保持部材13に保持される。
【0073】
保持部材左脚部23bは、二箇所の矩形状の境界面23dにおいて前後それぞれのフロス左端側24a,24bを固定する。このとき、前フロス左端側24aと固着する境界面23dと後フロス左端側24bと固着する境界面23dとが前後方向においてテープ間隔Gを空けて形成されている。保持部材右脚部23cにおいても同様に二箇所の境界面23dにおいて前後のフロス右端側25a,25bが固定される。これらにより、前後の各テープ状デンタルフロス22a,22bはテープ間隔Gを空けて保持部材左脚部23b及び保持部材右脚部23cに保持されている。
【0074】
図9は、第1の実施形態における図3と同様に、歯間清掃具21を用いて歯間Cにおける歯の表面Tfに付着された汚れSを清掃する状態の説明図を示す。
【0075】
その他の構成は、第1の実施形態と共通する。
【0076】
[変形例]
図10は本実施形態の変形例を示す。図10の斜視図が示すように、歯間清掃具121は二枚のテープ状デンタルフロス122と、各テープ状デンタルフロス122a,122bを保持する保持部材123とを備える。保持部材123は柄部123aを有する。
【0077】
二枚のテープ状デンタルフロス122は、図の手前に見える前側テープ状デンタルフロス122aと、前側テープ状デンタルフロス122aの後側に隣り合って配置される後側テープ状デンタルフロス122bとから成る。これらの前後のテープ状デンタルフロス122a,122bは前後方向に互いに平行に位置するように保持部材123に保持される。前後の各テープ状デンタルフロス122a,122bはそれぞれの左端側であるフロス左端側が、保持部材123の左側の脚部である保持部材左脚部123bによって保持される。また、それぞれの右端側であるフロス右端側が、保持部材123の右側の脚部である保持部材右脚部123cによって保持される。
【0078】
その他の構成は、上述した、他の第2の実施形態の例における構成と共通する。
【0079】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態を図11及び図12を用いて説明する。図11において31は歯間清掃具であって、使用者の歯間Cにテープ状デンタルフロス32を挿入して歯間Cを清掃することができる。
【0080】
歯間清掃具31は、図11の斜視図が示すように二枚のテープ状デンタルフロス32a,32bと、各テープ状デンタルフロス32a,32b同士の間に挟まれる複数本の繊維状体39と、各テープ状デンタルフロス32a,32bと各繊維状体39とを保持する保持部材33とを備える。
【0081】
二枚のテープ状デンタルフロス32a,32bは、図の手前に見える前側テープ状デンタルフロス32aと、前側テープ状デンタルフロス32aの後側に隣り合って配置される後側テープ状デンタルフロス32bとから成る。前後の各テープ状デンタルフロス32a,32bは重なり合って保持部材左脚部33b及び保持部材右脚部33cに保持されている。
【0082】
このとき、前後の各テープ状デンタルフロス32a,32bは、繊維軸方向と各テープ状デンタルフロス32a,32bの長手方向とが一致する数本の繊維状体39を挟んでいる。よって、各繊維状体39は左右方向に配置されている。図12が歯間清掃具31を用いて歯間Cにおける歯の表面Tfに付着された汚れSを清掃する状態を示すが、この図において各繊維状体39の断面が表わされている。各繊維状体39として、ポリエチレン、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維が用いられる。また、各繊維状体39は横断面が円形を表わすように形成されている。
【0083】
前後の各テープ状デンタルフロス32a,32bは、挟んでいる各繊維状体39が浮き出ることによって、それぞれ前後方向に凹凸するように波打っている。その結果、前側テープ状デンタルフロス32aは各繊維状体39を挟む位置において変形し、前側面に表出する凸状の前側凸状部40aが形成される。また、後側テープ状デンタルフロス32bは各繊維状体39を挟む位置において変形し、後側面に表出する凸状の後側凸状部40bが形成される。前後の各凸状部40a,40bは、図11に示される前側凸状部40aのような左右方向の筋状に形成される。なお、前後のテープ状デンタルフロス32a,32bは左右の保持部材脚部33b,33cによって左右に引っ張られた状態で保持されるためにこの張力によりお互いに密着する。そのために各繊維状体39は浮き出ることができる。
【0084】
図12の矢印Pは歯間清掃具31が歯間Cの奥に向けて進む向きを示す。歯間清掃具31が進むにつれ、前後の各テープ状デンタルフロス32a,32bはお互いが対向する面において滑って互いの位置が面方向にずれる。そのため、歯間清掃具31が、表面Tfに近い順に前側テープ状デンタルフロス32aと後側テープ状デンタルフロス32bとが隣り合うようにこれらを保持していることにより、前側テープ状デンタルフロス32a上を滑る後側テープ状デンタルフロス32bは先行して進行方向Pに進む。こうして、表面Tfにおいて後側先端エッジ清掃領域38bが先行し、前側先端エッジ清掃領域38aが遅行する。そして、図の通り上側の汚れSaを前側先端エッジ清掃領域38aが清掃し、上側のSaよりも下方に位置する下側の汚れSbを後側先端エッジ清掃領域38bが清掃するようにして二箇所の汚れSa,Sbを同時に清掃することができる。
【0085】
しかも、前後の各テープ状デンタルフロス32a,32bはそれぞれ前後の各凸状部40a,40bを有するため、上記の上下の汚れSa,Sb以外の、上側の汚れSaよりもさらに上方に位置する複数箇所の汚れである最上側の汚れScを同時に清掃することができる。図では前側テープ状デンタルフロス32aの各前側凸状部40aが各最上側の汚れScを清掃する状態が表わされている。
【0086】
このとき、後側テープ状デンタルフロス32bが前側テープ状デンタルフロス32aよりも先行して進行方向Pに進むとともに、各繊維状体39は、後側テープ状デンタルフロス32bに追従するように、後側テープ状デンタルフロス32bよりも遅れて進行する。また、各繊維状体39は、相対的に前側テープ状デンタルフロス32aよりも先に進んで進行する。その結果、後側テープ状デンタルフロス32b、各繊維状体39、前側テープ状デンタルフロス32aの順に速く進行方向Pに進む。そして、各前側凸状部40aはその時の各繊維状体39の位置において前向きに表出し、また、各後側凸状部40bはその時の各繊維状体39の位置において後ろ向きに表出する。すなわち、前後の各凸状部40a,40bは、時々の各繊維状体39の位置に従って各テープ状デンタルフロス32a,32b上の位置を変化させる。
【0087】
なお、図示した表面Tf以外に、例えば各テープ状デンタルフロス32a,32bの後側に隣り合う歯が迫っているとき、各後側凸状部40bは、この後側に隣り合う歯の表面における汚れを清掃することができる。また、歯間清掃具31を逆の向きに進めて、各テープ状デンタルフロス32a,32bを図の矢印Pと反対の向きに動かすときでも、各後端エッジ清掃領域及び前後の各凸状部40a,40bによって同様に汚れSを上向きにかき出して清掃し、上述と同様の清掃効果を得ることができる。
【0088】
各テープ状デンタルフロス32a,32bは、延展性の高い合成樹脂によって形成される。延展性が高いことにより各テープ状デンタルフロス32a,32bを薄く形成することができ、使用者は容易に歯間Cに挿入することができる。また、各テープ状デンタルフロス32a,32bが、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)によって形成される。各テープ状デンタルフロス32a,32bを薄く形成することにより、各繊維状体39は容易に浮き出てて、確実に前後の各凸状部40a,40bを形作ることができる。
【0089】
その他の構成は、第1の実施形態と共通する。
【0090】
以上の構成により、繊維状体39が挟まれているため、内側に繊維状体39が位置する部分では、繊維状体39の形状に倣ってテープ状デンタルフロス32が厚さ方向に膨らみ出るように変形する。こうして、歯間清掃具31はテープ状デンタルフロス32の外側の面に生じた凸状部40a,40bが歯の表面Tfに当たることにより、エッジ清掃領域以外にも、この凸状部40a,40bが効果的に歯の汚れを刷掃することができる。よって、高い清掃効果を奏することができる。
【0091】
また、繊維状体39の繊維軸方向がテープ状デンタルフロス32の長手方向と一致することにより、繊維状体39はテープ状デンタルフロス32の外側の面に浮き出て、テープ状デンタルフロス32の長手方向に延在する凸状部40a,40bを形成する。そのため、歯間清掃具31をテープ長手方向と交差する方向に往復動することによって、この凸状部40a、40bは歯間清掃具41の往復動方向と交差する方向に形成されていることになり、歯の表面Tfの汚れにより効果的に力を加えて刷掃することができる。よって、高い清掃効果を奏することができる。
【0092】
ところで、前側テープ状デンタルフロス32a及び後側テープ状デンタルフロス32bがポリテトラフルオロエチレンによって形成されているため、このポリテトラフルオロエチレンの摩擦係数が低いことにより、外側の面は歯間Cにおける歯の表面Tfと接するときにこの表面Tfとの間において滑り易い。その結果、歯間清掃具31による清掃効果が減殺されかねない。
【0093】
そこで、特に、隣り合ったテープ状デンタルフロス32a,32b同士の間に繊維状体39が挟まれている場合にテープ状デンタルフロス32a,32bの外側の面に凸状部40a,40bが生じるのであって、テープ状デンタルフロス32a,32bがポリテトラフルオロエチレンにより形成されているにもかかわらず、歯間清掃具31は高い清掃効果を奏することができる。
【0094】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態を図13を用いて説明する。図13において41は歯間清掃具であって、使用者の歯間Cにテープ状デンタルフロス42を挿入して歯間Cを清掃することができる。
【0095】
歯間清掃具41は、図13の斜視図が示すように、左端42cと右端42dにおいて折り返すことによってループ状に形成されたテープ状デンタルフロス42と、二重のテープ状デンタルフロス42を重ね合わせて支持する支持部材43b,43cとを備える。このループ状のテープ状デンタルフロス42のうち、図の手前側に見える部分を前側テープ状デンタルフロス42aとよび、前側テープ状デンタルフロス42aの後側に重なり合う部分を後側テープ状デンタルフロス42bとよぶ。
【0096】
また、歯間清掃具41は、前後の各テープ状デンタルフロス42a,42bの左端42c寄りに配置される左支持部材43bと、左支持部材43bと間隔を隔てるとともに同じく右端42d寄りに配置される右支持部材43cとの二個の支持部材43b,43cを備える。すなわち、歯間清掃具41は、前側テープ状デンタルフロス42aのうち、左端42c寄りの中間部分である前側テープ状デンタルフロス左中間部42e、および、後側テープ状デンタルフロス42bのうち、左端42c寄りの中間部分である後側テープ状デンタルフロス左中間部42fを固定して保持する左支持部材43bを備える。また、歯間清掃具41は、前側テープ状デンタルフロス42aのうち、右端42d寄りの中間部分である前側テープ状デンタルフロス右中間部42g、および、後側テープ状デンタルフロス42bのうち、右端42d寄りの中間部分である後側テープ状デンタルフロス右中間部42hを固定して保持する右支持部材43cを備える。各支持部材43b,43cの材質として、ポリスチレン(PS)、飽和ポリエステル(PET)、ポリエチレン(PE)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)、ポリプロピレン(PP)等が用いられる。
【0097】
このとき、左支持部材43bは前後の各テープ状デンタルフロス左中間部42e,42fを締め付けることによって互いに重なり合うように支持する。また、右支持部材43cは前後の各テープ状デンタルフロス右中間部42g,42hを締め付けることによって互いに重なり合うように支持する。これによって、テープ状デンタルフロス42は、前後のテープ状デンタルフロス42a,42bが前後方向に重なり合うように左右の各支持部材43b,43cに支持される。そして、各テープ状デンタルフロス42a,42bは各テープ状デンタルフロス左中間部42e,42fの左隣りにリング状に折り返す左リング状部42iと、各テープ状デンタルフロス右中間部42g,42hの右隣りにリング状に折り返す右リング状部42jを有する。
【0098】
使用者は、一方の手の手指を左リング状部42iに挿入し、他方の手の手指を右リング状部42jに挿入して歯間清掃具41を持つ。また、一方の手の手指によって左支持部材43bを把持し、他方の手の手指によって右支持部材43cを把持して歯間清掃具41を持つ。これらにより、使用者は、左右方向において各テープ状デンタルフロス左中間部42e,42fと各テープ状デンタルフロス右中間部42g,42hとの間にそれぞれ延在する、前側テープ状デンタルフロス42aの前側テープ状デンタルフロス中央部42mと後側テープ状デンタルフロス42bの後側テープ状デンタルフロス中央部42nとを歯間Cに挿入するとともに前後のテープ状デンタルフロス中央部42m,42nを上下左右に動かして汚れSを清掃する。そのときに前後の各テープ状デンタルフロス中央部42m,42nが汚れSを清掃する状態は、第1の実施形態の図3において前後の各テープ状デンタルフロス12a,12bが汚れSを清掃する状態と同様である。
【0099】
特に手指を左右のリング状部42i,42jに挿入して歯間清掃具41を持つとき、使用者は左右の手指を左右向きに広げることによって各テープ状デンタルフロス42a,42bに長手方向の張りを加えることができ、より効果的に汚れSを清掃することができる。
【0100】
テープ状デンタルフロス42は、延展性の高い合成樹脂によって形成される。また、テープ状デンタルフロス42が、好ましくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)によって形成される。あるいは、前後の各テープ状デンタルフロス42a,42bは、ポリテトラフルオロエチレンのような一種の合成樹脂層から成る単層の層構成を有するだけでなく、例えば、前後の各テープ状デンタルフロス42a,42bがポリテトラフルオロエチレンの層と、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー等のポリテトラフルオロエチレン以外の合成樹脂の層とから成る二層の層構成を有してもよい。この場合、好ましくは、第1の実施形態の図4が示すように、前側テープ状デンタルフロス42a及び後側テープ状デンタルフロス42bが、それぞれ相手方のテープ状デンタルフロスと対向する側の層である内側層Ia,Ibがポリテトラフルオロエチレンの層に形成され、そして、反対側の層である外側層Oa,Obが上で述べたような各種のエラストマーの層に形成される。
【0101】
その他の構成は、第1の実施形態と共通する。
【0102】
以上の構成により、歯間清掃具41は、左右の支持部材43b,43cの間で支持される前後二重のテープ状デンタルフロス42a,42bのそれぞれの中央部である前後のテープ状デンタルフロス中央部42m,42nが歯間Cの汚れSを清掃するため、使用者は、各テープ状デンタルフロス中央部42m,42nの外側をそれぞれ一方の手の手指と他方の手の手指とによって把持することができる。このとき、一方の手と他方の手とによってそれぞれ上下左右前後の自在な位置で把持することができるため、口腔内の様々な部位の歯と歯との間の歯間Cを清掃することができ、一箇所の歯間Cについて様々な場所を清掃することができ、また、様々な角度にテープ状デンタルフロス42a,42bを当てて清掃することができる。
【0103】
こうして、歯間清掃具41は口腔内の清掃し難い部位などを容易に清掃することができ、高い清掃効果を得ることができる。
【0104】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態を図14を用いて説明する。図において51は歯間清掃具であって、使用者の歯間Cにテープ状デンタルフロス52を挿入して歯間Cを清掃する。図14は、歯間清掃具51を用いて歯間Cにおける歯の表面Tfに付着された汚れSを清掃する状態の説明図である。
【0105】
歯間清掃具51は、図が示すように、三枚のテープ状デンタルフロス52a,52b,52kと、図示しないものの各テープ状デンタルフロス52a,52b,52kを保持する保持部材53とを備える。そのため、歯間清掃具51は全体で6本のエッジを有する。
【0106】
使用者は保持部材53を操作して各テープ状デンタルフロス52a,52b,52kを歯間Cに挿入する。図の矢印Pは歯間清掃具51が歯間Cの奥に向けて進む向きを示す。このとき、各テープ状デンタルフロス52a,52b,52kはお互いが対向する面において滑って互いの位置が面方向にずれる。そして、歯間清掃具51は、表面Tfに近い順に前側テープ状デンタルフロス52aと中間テープ状デンタルフロス52kと後側テープ状デンタルフロス52bとが隣り合うように保持されることにより、前側テープ状デンタルフロス52a上を滑る中間テープ状デンタルフロス52kが先行して進行方向Pに進む。また、中間テープ状デンタルフロス52k上を滑る後側テープ状デンタルフロス52bがさらに先行して進行方向Pに進む。
【0107】
こうして、表面Tfにおいて後側先端エッジ清掃領域58bが最も先行し、中間テープ状デンタルフロス52kの先端エッジ清掃領域である中間先端エッジ清掃領域58kがそれに次ぎ、さらに、前側先端エッジ清掃領域58aがそれに次ぐ。これにより、最上側の汚れSaを前側先端エッジ清掃領域58aが清掃し、中間の汚れSkを中間先端エッジ清掃領域58kが清掃し、さらに、最下側の汚れSbを後側エッジ清掃領域58bが清掃するようにして三箇所の汚れSa,Sb,Skを同時に清掃することができる。
【0108】
その他の構成は、第1の実施形態と共通する。
【0109】
なお、第5の実施形態に関して、前側テープ状デンタルフロス52a及び中間テープ状デンタルフロス52kのうちの一方を第1のテープ状デンタルフロスとよぶことがあり、また、他方を第2のテープ状デンタルフロスとよぶことがある。あるいは、中間テープ状デンタルフロス52k及び後側テープ状デンタルフロス52bのうちの一方を第1のテープ状デンタルフロスとよぶことがあり、また、他方を第2のテープ状デンタルフロスとよぶことがある。さらに、前側エッジ清掃領域及び中間エッジ清掃領域のうちの一方を第1のエッジ清掃領域と、また、他方を第2のエッジ清掃領域とそれぞれよぶことがある。あるいは、中間エッジ清掃領域及び後側エッジ清掃領域のうちの一方を第1のエッジ清掃領域と、また、他方を第2のエッジ清掃領域とそれぞれよぶことがある。
【0110】
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態を、図15及び図16を用いて説明する。図15において61は歯間清掃具であって、使用者の歯間Cにテープ状デンタルフロス62を挿入して歯間Cを清掃することができる。
【0111】
歯間清掃具61は、図15の斜視図が示すように三枚のテープ状デンタルフロス62a,62b,62lと、各テープ状デンタルフロス62a,62b,62lを保持する保持部材63とを備える。保持部材63の柄部63aが使用者の手指によって把持されて各テープ状デンタルフロス62a,62b,62lが歯間Cに誘導され、各テープ状デンタルフロス62a,62b,62lが歯間Cの汚れを清掃する。そして、歯間清掃具61は全体で6本のエッジを有する。
【0112】
三枚のテープ状デンタルフロス62a,62b,62lは、図の手前に見える第3テープ状デンタルフロス62lと、その後側に配置される第1テープ状デンタルフロス62aと、さらにその後側に配置される第2テープ状デンタルフロス62bとから成る。図16は、三枚のテープ状デンタルフロス62a,62b,62lとこれらを保持する保持部左脚部63bとを左向きに視たときの図を表わす。
【0113】
図16が示すように、第1及び第2テープ状デンタルフロス62a,62bは前後方向に隣り合い且つ互いに平行に位置するように保持部材63に保持される。その一方で第3テープ状デンタルフロス62lは上側ほど前方に位置するように傾いて配置され、左右方向視において、第1テープ状デンタルフロス62aと一緒に上向きに開いたV字状を描くような姿勢で保持されている。
【0114】
その他の構成は、第2の実施形態と共通する。
【0115】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0116】
例えば、テープ状デンタルフロスは単層又は二層の層構成だけでなく、全体として延展性を維持することができれば三層以上の層構成を有していてもよい。
【0117】
また、延展性の高い材料の例としてポリテトラフルオロエチレン及び各種類のエラストマーを挙げたが、人体に害が無ければ、他の延展性を有する材料を採用してもよい。
【0118】
第3の実施形態として複数本の繊維状体の全部が左右方向に配置されている例を挙げたが、テープ状デンタルフロスによって挟むことができ、かつ、テープ状デンタルフロス同士が滑ってずれる上で差し支えがなければ、一部の繊維状体が斜行する、蛇行するなどのような左右方向以外の形態で配置されていてもよい。
【0119】
また、第3の実施形態として円形断面の繊維状体の例を挙げたが、テープ状デンタルフロスによって挟むことができ、かつ、テープ状デンタルフロス同士が滑ってずれる上で差し支えがなければ、一部又は全部の繊維状体の断面が角形などの円形以外の形状であってもよい。
【0120】
第5の実施形態として三枚のテープ状デンタルフロスを用いた歯間清掃具の例を挙げたが、これらのテープ状デンタルフロスを歯間に挿入する上で差し支えがなければ、歯間清掃具は四枚以上の枚数のテープ状デンタルフロスを備えていてもよい。例として、他の実施形態における図3などの図と同様に、四枚のテープ状デンタルフロスを備えた歯間清掃具を用いて歯間における歯の表面に付着された汚れを清掃する状態を図17に示す。このとき、歯間清掃具は全体で8本のエッジを有する。
【0121】
第6の実施形態として一部のテープ状デンタルフロスが傾いて配置された歯間清掃具の例を挙げたが、これらのテープ状デンタルフロスの配置はこれまでに挙げた配置に限らない。例として、上向きに開いたV字状を描くように配置された二枚のテープ状デンタルフロスを備える歯間清掃具について、これらのテープ状デンタルフロスとこれらを保持する保持部左脚部とを左向きに視たときの図を図18に示す。
【0122】
第1及び第2の実施形態のそれぞれの変形例として、いわゆるF型の歯間清掃具の例を挙げたが、これらのF型の変形例は第1又は第2の実施形態についてのみ適用するのでなく、Y型の保持部材を備える他の実施形態に適用してもよい。
【0123】
隣り合うテープ状デンタルフロス同士の配置について、第1の実施形態のようにお互いに重なり合うように保持される場合の例と、第2の実施形態のように重なり合わないもののお互いに平行に位置するように保持される場合の例とを挙げたが、これらのテープ状デンタルフロスは、他の実施形態においてもお互いに重なり合うように保持されてもよく、また、重なり合わないもののお互いに平行に位置するように保持されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、使用者の歯間の汚れを清掃するための、テープ状デンタルフロスを用いた歯間清掃具に利用できる。
【符号の説明】
【0125】
11,21,31,41,51,61 歯間清掃具
12,22,32,42,52,62 テープ状デンタルフロス
12a,22a,32a,42a,52a 前側テープ状デンタルフロス
12b,22b,32b,42b,52b 後側テープ状デンタルフロス
13,23,33,53,63 保持部材
13b,23b,33b,53b,63b 保持部材左脚部
13c,23c,33c,53c,63c 保持部材右脚部
14a,24a 前フロス左端側
14b,24b 後フロス左端側
15a,25a 前フロス右端側
15b,25b 後フロス右端側
16a,26a 前側先端エッジ
16b,26b 後側先端エッジ
17a,27a 前側後端エッジ
17b,27b 後側後端エッジ
18a,28a,38a,58a 前側先端エッジ清掃領域
18b,28b,38b,58b 後側先端エッジ清掃領域
39 繊維状体
40a 前側凸状部
40b 後側凸状部
43b 左支持部材
43c 右支持部材
52k 中間テープ状デンタルフロス
58k 中間先端エッジ清掃領域
62a 第1テープ状デンタルフロス
62b 第2テープ状デンタルフロス
62l 第3テープ状デンタルフロス

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図12
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図15
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図20