(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180215
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】発電装置
(51)【国際特許分類】
G21H 1/00 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
G21H1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087195
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】518320580
【氏名又は名称】kafu365株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 淑
(57)【要約】
【課題】炭酸ガス、放射能、放射能被曝汚染物などの排出がなく、環境破壊のおそれのない発電装置を提供する。
【解決手段】細孔内部に吸着された水蒸気を自然界の放射線によりラジカル化する多孔質物質と、水和性の無機質固化剤と、電導性を有する添加剤と、を含んで構成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細孔内部に吸着された水蒸気を自然界の放射線によりラジカル化する多孔質物質と、水和性の無機質固化剤と、電導性を有する添加剤と、を含んで構成された発電装置。
【請求項2】
前記多孔質物質は、原子骨格に不対電子を持たない構造の不定形炭素に属する炭素類、又は、二酸化ケイ素(Si02)からなる骨格を基本としたゼオライトである請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記無機質固化剤は、前記多孔質物質の粒子相互を固着・固化している請求項1又は2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記無機質固化剤にセメントバチルス(エトリンガイト)の結晶を形成させ、それらの結晶水を電導性の改質に供する請求項1~3の何れかに記載の発電装置。
【請求項5】
前記無機質固化剤にイオン化傾向が異なる二種類の金属片を接触させてラジカルで生じた電荷を分極して取り出す請求項1~4の何れかに記載の発電装置。
【請求項6】
電導性物質、放射性物質、半導体セラミック、起泡剤、空気連行材(繊維)、酸類、塩類の何れか一以上を、前記添加剤として前記無機質固化剤と混合する請求項1~5の何れかに記載の発電装置。
【請求項7】
前記ラジカル化を促進するために、半導体セラミック、又は、放射性物質を発電励起装置として装着する請求項1~6の何れかに記載の発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宇宙線(宇宙から到達する放射線)を利用して電気エネルギーを得るための発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気エネルギーは、人類の生活に不可欠であるところ、火力や原子力に依存した発電装置では、炭酸ガスや放射能の発生が問題になるだけでなく、放射能被曝汚染物などの副産物の排出が問題となる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、炭酸ガス、放射能、放射能被曝汚染物などの排出がなく、環境破壊のおそれのない発電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明に係る発電装置は、細孔内部に吸着された水蒸気を自然界の放射線によりラジカル化する多孔質物質と、水和性の無機質固化剤と、電導性を有する添加剤と、を含んで構成されている。
【0006】
細多孔質物質は液体、気体および水蒸気を吸着する性質があり、細孔の内部では吸着された大気内の水蒸気が充満しており、これが宇宙から到達した放射線の照射によりラジカル反応を生じてイオンを生成している。そこで、本発明では、この電荷を分極して電力として取り出すことで前記課題を解決するものである。
【0007】
以下に、電荷の生成を継続させ、電力を効率良く取り出せる発電装置を完成せしめために必要な事項を列記する。
【0008】
(1)細多孔質物質として、各種の炭素類、ゼオライト類、および珪藻土類があげられ、これらは少なからず前記ラジカル反応に関与しているが、原子骨格に不対電子を持つゼオライトならびに珪藻土には電導性があるから、反応で生じた電荷を熱に変換する。そのために細孔内に電荷を長時間蓄電することが出来ないから、長期間にわたり継続的に電荷を分極して取り出すことが難しい。
【0009】
一方、木炭と竹炭は原子骨格に不対電子がない炭素同素体の無定形炭素であり、絶縁性物質なのでラジカル反応で生成したイオン(電荷)を熱変換しない。つまり、細孔内に電荷を長時間蓄電することが出来るから、長期間にわたり継続的に電荷を分極して取り出すことが出来る。
【0010】
上記理由から、本発明で用いる細多孔質物質は、好適には、木炭と竹炭であるが、ゼオライトも短期間の発電装置として限定的に用いることが出来る。
【0011】
(2)多孔質物質の細孔内で生じるラジカル反応で得られるイオン量(電荷)を増大させるため、多孔質物質の粒子を相互に結合し、固化させることで相互粒子の蓄積イオンを収束して増大せしめるために、本発明では、固化剤を用い、固化物を形成させる。
【0012】
ここで、有機質の固化剤は電気絶縁性であるので、本発明では、無機質の水和性物質を固化剤として用いる。
【0013】
(3)また、固化物中の細多孔質物質に発生する電荷を収束し、電極へ導くために、本発明では、固化剤に電導性を付加する。上記電導性付与の方法として、セメントバチルスの結晶水を利用するのが好適である。また、さらなる導電性付与の方法として、固化剤に電導性物質を添加・混合して電導性固化物を形成させるのも好適である。
【0014】
(4)電荷を分極して電力として取り出すために、イオン化傾向が異なる二種類の金属片を前記固化物に接触させて用いるのが好適である。
【0015】
(5)更に、前記固化物中の細多孔質に生じるラジカル反応を促進するために、水蒸気塊の流通を改善するのが好ましい。そこで、本発明では、好適には、固形物形成時に起泡剤または空気連行用繊維などを併用し、大気中の水蒸気塊の透過孔を設け、ラジカル反応を促進する。
【0016】
(6)また、細多孔質物質の孔内で生じるラジカル反応を励起し、電力を増加させるために、半導体セラミック、又は放射性物質を前記固化物に接触または近接させるのが好適である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の発電装置は、特殊な資材を必要とせず、構造が簡単であり、比較的安価に製造できる。また、発電のために燃料を必要としないから、排気汚染、廃棄物汚染物などを放出しないので環境破壊を生じない。また更に、化学的および物理的消耗がなく、放射線をエネルギーとして発電効果が継続的になされるので経済的な電力が得られる。
【0018】
本発電装置は小型化することができ、積層的に接続して電気的な出力を得られるので、小型電気装置から大型電気設備に至る迄の用途に適応できる。また、本装置は暗闇、空中、水中、地中に関係なく発電でき、電力が得られるので社会貢献の大きい、貴重な装置である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】球形の放射性物質を、金属板の間に配置し、接着剤で固定した実施例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、記載中の数量は、断りが無い限り全て重量を(部)である。実施例の発電装置は、マクロ細孔を多数備えた多孔質物質(以下、単に、多孔質物質と称する)、水和性の無機質固化剤(以下、単に固化剤と称する)、添加剤(電導性物質、放射性物質、半導体セラミック、起泡剤、空気連行材(繊維)、酸類、塩類などの添加物を固化剤など)、分極用金属(電極)、および発電励起装置(半導体セラミック並びに放射性物質)からなる5つの要素で構成されている。
【0021】
本発明で使用する多孔質物質は、細孔内部に吸着された水蒸気の塊を自然界の放射線によりラジカル化する機能を備えているものである。ここでラジカル化とは、一分子の水蒸気(H2O)の一個の塊は放射線(γ線)により、水素(H)+と水酸基(OH)-のラジカルを形成するが、これらのラジカル同士が瞬時に重合し、二個の水素原子(2H)+2と過酸化水酸(H2O2)-2に付随するイオンを生成することが知られている。
【0022】
ここで、本発明に用いる多孔質物質は、原子骨格に不対電子を持たない構造の不定形炭素に属する炭素類(以下、単に炭と称する)であり、細孔を有し、吸着性を備えた物質であって、不対電子が無いので絶縁性であり、前記イオンを熱変換できないので、蓄電状態に保てる。
【0023】
蓄電可能な炭素は、木炭、竹炭、ヤシガラ炭などであり、これらの群中の1種類または、2種類以上の混合物であり、細孔が多く、非表面積が大きいものが望ましいが、品質、形状については限定的ではない。
【0024】
他の多孔質物質として、酸化ケイ素(Si02)からなる骨格を基本としたゼオライトもラジカル反応に係ることができる。ここでいうゼオライトとは結晶性アルミノケイ酸塩(一般式:Mn+
x/nAlxSiYО2x+2Yx・zH2О)である。
【0025】
しかし、ゼオライトは骨格にアルミニウム(Al)を含むので半導体的な性質を示し、完全な絶縁性物質ではないので蓄電状態を長期間保つことができない。つまり、経時的に生成したイオン(電荷)を消失するので、一定の電力を継続的に取り出すことが難しい。
【0026】
多孔質物質の炭に生成され、蓄電されたイオンを大きな電荷として取り出すためには炭粒子の個々に生成されたイオンを収束して取り出す。そのために炭粒子の個々を、固化剤を用いて結合・固化することを提案できる。
【0027】
しかし、絶縁性の材質による固化剤は、電導性の観点からイオンを収束する用途には供せない。つまり、有機質の固化剤は使用できないので、無機質の水和性物質を固化剤として用いる。具体的には各種セメント、石膏、石灰および炭酸カルシウム(オートクレーブ装置で水和可能)などを、固化剤として用い、実際には、これらの群中の1種類または、2種類以上の混合物の形態で用いる。
【0028】
本発明で用いる炭の粒子の大きさは、直径が0.01~10mm範囲の粒子が望ましく、更には0.1~5.0mmの範囲の粒子が好ましい。この範囲を超えた大きさの粒子は固化剤と混合した時に均一組成を形成することが困難となる。
【0029】
固化剤100重量部に対する炭の混合割合は限定的ではないが5~150重量部の範囲が望ましく、更には50~100重量部の範囲が好ましい。前記の範囲を逸脱すると、発電効率および強度が低下するおそれがある。
【0030】
本実施例で用いるゼオライトの粒子の大きさは、直径が0.01~10mm範囲の粒子が望ましく、更には0.1~5.0mmの範囲の粒子が好ましい。この範囲を超えた大きさの粒子は固化剤と混合した時に均一組成を形成することが困難となる。
【0031】
固化剤100重量部に対するゼオライトの混合割合は限定的ではないが10~250重量部の範囲が望ましく、更には50~200重量部の範囲が好ましい。前記の範囲を逸脱すると、発電効率および強度が低下するおそれがある。なお、前記の炭とゼオライトは任意の重量比率で組み合わせて使うことが出来る。
【0032】
また、前記固化剤は、ポルトランドセメント、アルミナセメント、石膏、石灰および炭酸カルシウム(オートクレーブ装置で水和可能)などの水和性物質であり、これらの群中の1種類または、2種類以上の混合物の形態で用いる。さらに、固化剤に各種薬剤を混合・併用してバチルス、エトリンガイトなどの結晶を生成させ、その結晶水を電導性改善に利用することができる。前記固化物中の粒子個々に生じたイオンを収束して取出すために、電導性物質(各種金属および炭素含有物など)、酸、塩類などを添加剤して用いる。
【0033】
固化物に帯電したイオンを分極して取出すために、Li(リチュウム)、K(カリウム)、Ca(カルシウム)、Na(ナトリウム)、Mg(マグネシウム)、Al(アルミニウム)、Zn(アエン)、Fe(鉄)、Ni(ニッケル)、Sn(スズ)、Pb(鉛)、Cu(銅)、Ag(銀)、Pt(プラチナ)、Au(金)の群から選ばれたイオン化傾向の異なる性質の金属2種類を電極として固化物に接触させて用いる。なお、前記電極の配置位置は任意であり、限定的ではない。
【0034】
前記ラジカル反応を促進し、生成電荷量を増大させるために、半導体セラミック、又は放射性物質を発電励起装置として固化物に接触ないし近接させて用いることができるが、取付ける位置は限定的ではない。
【0035】
半導体セラミックとは、異なる金属酸化の層(例えば、MnO2,NiO,CoO,CuOなどを含んだ還移金属層、アルミナ層、ケイ酸塩層)を内蔵したセラミックのことをいう。また、前記発電励起装置の取り付けを省略するために、磁力、放射線を内蔵する物質を粒子化し、固化剤に混合・併用して用いてもよい。
【0036】
前記放射性物質は、トリウム、ストロンチュウム、ウラニウムなどを含有する放射性鉱物であり、人体に無害なレベルのもので、具体的にはモナサイトを内蔵したセラミック(放射性セラミックボール)があげられる。前記発電励起装置は、半導体セラミックと放射性物質を組み合わせて構成する。
【0037】
以下に実施例に係る発電装置の作成手順について説明するが、手順は順不同であって限定的ではない。
【0038】
最初に、固化物を形成させるための任意の形状の型枠を準備する。次に、所要量の多孔質物質、固化剤、添加剤、および水を容器に入れ、ミキサーで混合・攪拌する。
【0039】
続いて、混練物を前記型枠に充填し、24時間以上放置し、固化させる。その後、固化物を脱型し、電極取付けと励起促進装置を取り付けに必要な部分および、水蒸気塊の供給用部分を残し、電気的絶縁性のある保護材で固化物を被覆・保護する。最後に、電極ならびに励起装置を固化物に装着する。
図1は、一例として発電励起装置(放射性セラミックボール)を装着した本装置の断面である。
【0040】
完成した発電装置は、多孔質物質の細孔内で生じるラジカル反応に起因して永続的に発電し、負荷で消費された電力を速やかに回復する性質があった。本装置の発電効果は、空中、地上、地下、水中において安定的に得られた。また、本発電装置は軽量で小型化でき、装置同士を直列および並列に接続できる。
【0041】
<実施例1>
枠がプラスチック製であって底板がアルミニウム製でできた100×100×10mmの型枠1Aを準備した。そして、底板の中心部には直径5mmの球形放射性物質25個を2cmおきに、正方形に配列して取付けてから、粒子径平均3mmの竹炭、セメント、石膏、添加剤および水とでなる組成物を流し込み、48時間後に固化物上面に10×10×0.5mmの銅板を電極として接触させて上記生成の固化物1Aの出力電圧を測定した。なお、負荷抵抗1kΩに電流を流し、負荷抵抗の両端電圧及び負荷抵抗の電流を、ダイワ製測定器D-771で計測した。その計測結果は、表1の通りである。
【0042】
<実施例2>
発電励起装置(球形放射性物質)を使用しないことを除けば、実施例1と同じである。すなわち、枠がプラスチック製であって底板がアルミニウム製でできた100×100×10mmの型枠2Aを準備した。そして、実施例1と同一組成物を流し込み、生成固化物2Aの出力電圧を実施例1と同様な方法で測定し、発電励起装置の効果を試した。固化物2Aの組成と電圧および電流の測定値を表1に示す。
【0043】
<実施例3>
球形放射性物質25個を使用する実施例1の場合と同一の型枠1Aに、粒子径平均3mmのゼオライト、セメント、石膏、添加剤および水とでなる組成物を流し込み、生成固化物1Bの出力電圧を実施例1と同様な方法で測定した。固化物1Bの組成と測定値を表1に示す。
【0044】
<実施例4>
球形放射性物質を使用しない実施例2の場合と同一の型枠2Aに、実施例3と同一組成物を流し込み、生成固化物2Bの出力電圧を実施例1と同様な方法で発電励起装置の効果を試した。固化物2Bの組成と測定値を表1に示す。
【0045】
<実施例5>
球形放射性物質25個を使用する実施例1の場合と同一の型枠1Aに粒子径平均3mmの木炭、セメント、石膏、添加剤および水とでなる組成物を流し込み、生成固化物1Cの出力電圧を実施例1と同様な方法で測定した。固化物1Cの組成と測定値を表1に示す。
【0046】
<実施例6>
球形放射性物質を使用しない実施例2の場合と同一の型枠2Aに実施例5と同一組成物を流し込み、生成固化物2Cの出力電圧を実施例1と同様な方法で発電励起装置の効果を試した。固化物2Cの組成と測定値を表1に示す。
【0047】
<実施例7>
球形放射性物質25個を使用する実施例1の場合と同一の型枠1Aに粒子径平均3mmの木炭とゼオライトの混合物、セメント、石膏、添加剤および水とでなる組成物を流し込み、生成固化物1Dの出力電圧を実施例1と同様な方法で測定した。固化物1Dの組成と測定値を表1に示す。
【0048】
<実施例8>
球形放射性物質を使用しない実施例2の場合と同一の型枠2Dに実施例7と同一組成物を流し込み、生成固化物2Dの出力電圧を実施例1と同様な方法で発電励起装置の効果を試した。固化物2Dの組成と測定値を表1に示す。
【0049】
【0050】
前記実施例から、多孔質物質にセメント、石膏、重炭酸ナトリウムおよび木酢液からなる組成の固化物は全て1.0V以上の電圧が得られることが判明した。また前記実施例から、発電励起装置を装着すると出力電圧および電流が増加することが判明した。
【0051】
なお、実施例で用いた放射性物質からなる発電励起装置は、直径5mmの球形の粒子であり、その成分はモナサイト鉱石を含有するセラミック(美濃顔料(株)、製品名イオミックス)である。
【0052】
<実施例9>
枠がプラスチック製であって底板がアルミニウム製でできた100×100×10mmの型枠1Aを準備し、発電励起装置として底板の中心部には直径3mmの球形半導体セラミック25個を2cmきに、正方形に配列して取付けてから、粒子径平均3mmの竹炭、セメント、石膏、添加剤および水とでなる組成物をこの型枠3Aに流し込み、48時間後に生成固化物上面に10×10×0.5mmの銅板を電極として接触させて出力電圧を前記と同一テスターを用いて測定した。
【0053】
生成固化物3Aの組成と電圧測定値を表2に示す。なお、半導体セラミックスは金属酸化の層(MnO2,NiO,CoO,CuOなどを含んだ還移金属とアルミナ及びケイ酸塩)を内蔵するセラミックを用いた。
【0054】
【0055】
実施例1~9の結果から、半導体セラミックおよび放射性物質の発電励起装置は有効に作動することが判明した。前記実施例で生成した固化物の経過時間毎の発生電圧を測定した。測定値を表3に示す。
【0056】
【0057】
<比較例>
実施例1と同一型枠に多孔質物質、セメントおよび水からなる組成物を流し込み、生成した固化物の発生電圧を実施例1と同一方法で測定したが何れの固化物についても電圧を検知するには至らなかった。固化物の組成と電圧測定値を表4に示す。
【0058】
【0059】
なお、表4において、比較例1,3,5,7の組成は、表1の実施例1,3,5,7から、リン酸アルミニウム、木酢液、重炭酸ナトリウムを除いた組成とほぼ同一である。
【0060】
<実施例10>
100×100×10mmの型枠に固化物1Aと同一組成物を充填し、固化物4Aを作成し、72時間後に、この固形物の上面にイオン化傾向の低い銅板を接触させ、さらにテスターの陽極の検針棒を結合した状態で、底面にはイオン化傾向が銅より高いアルミニウム並びに鉄を接触させ、陰極の検針棒を相互の金属と交互に接触させて発生電圧を測定した結果を表5に示す。但し、本実験では発電励起装置は使用しなかった。
【0061】
なお、本実験において、検針棒を反転させて接触させた際の電圧がマイナス表示されたことから、発生するのは直流電圧であることが判明した。
【0062】
【0063】
<実施例11>
セメントバチルスの電導性を調べるために、セメントに硫酸化合物(硫酸カルシウム/石膏)を加え、炭酸ガスの雰囲気中で水和させ、バチルスを生成させて、単なるセメント水和物との電気導通性(電導性)を比較した。内径30mm、長さが50mmの塩ビパイプを2個準備し、そのうちの1個にはセメントと水による組成物を充填し、他の1個にはセメント、硫酸カルシウム、重炭酸ソーダ、無水塩化コバルトおよび水からなる組成物を充填し、円筒形の固形物(イ)、(ロ)を調整した。そして固形物を25℃の室内に10日間放置し、乾燥させた後にテスターで抵抗値を測定した。固化物(イ)、(ロ)の組成と測定抵抗値(mΩ)を表6に示す。この結果から、セメントバチルス化により結晶水が増加されているものと推測できる。
【0064】
【0065】
<実施例12>
ラジカル反応を継続させるための水蒸気塊を固化物に供給する通気孔を確保するために、固化剤に麻の繊維(直径:0.08mm、長さ:1.5mm)を添加・混合して用いたときの出力電圧経過時変化を測定した。固化物の組成を表7に、測定結果を表8示す。
【0066】
【0067】
【0068】
実施例12の結果、固化物に水蒸気塊の通気孔を設けると発電作用が効率的、かつ、長期的に安定して続行される傾向があり、繊維質を併用することが有用であることが判明した。従って、化学的または物理的な通気候孔を固化物に設けることで発電効率は上昇する。
【0069】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明について、本発明者の見解は、以下の通りである。
【0070】
<放射線>
自然界での放射線は宇宙線および地上の放射性物質に含まれており、アルファ(α)線、ベータ(β)線およびガンマ(γ)線として知られている。α線とβ線は透過性が低くα線は紙で、β線は薄い金属板でいずれもが遮蔽できる。しかしγ線は鉛板か厚い鉄板でしか遮蔽できない程透過性が高い。
【0071】
そしてγ線は空気中の水蒸気分子(H2O)を水素原子(H)と水酸基(OH)に解離する性質(ラジカル反応性)を持っている。この実例として、過去に起きた福島原発事故を挙げることができる。つまり、津波で原子炉が壊れ、大気中に暴露された強力な放射線のラジカル反応で生じた多量の水素が爆発したという実例がある。
【0072】
<宇宙線と細多孔質物質>
地上の物質は常時、宇宙線(磁力線、赤外線、紫外線などを放射線と呼称する)を浴びており、殆どの物質はこれを熱エネルギーに変換する作用に関わっている。炭ならびに、ゼオライトのように細孔で構成された多孔質物質(以下、細多孔質物質と呼称する)も例外ではないが、結晶原子に不純物を含まない炭素は原子構造中に不対電子が存在していないので半導体の性質が無く、絶縁性である。ゼオライトは原子構造が上記炭素と異なっていて、骨格構造内にSiO或いはAlO結合からなる環状構造が含まれていて、細孔内部がNaイオンに帯電しているのでイオン交換能を持っている。つまり、上記炭素とゼオライトは電導性においてことなり、前者は絶縁性であり後者は半導体である。
【0073】
<ラジカル反応>
放射線化学反応過程において、放射線(自然界の放射線も含む)が大気中の水蒸気塊(H2O)を解離し、水素(H)と水酸基(OH)を生成するので、この反応をラジカル反応と呼称し、その生成物をラジカルと呼称している。さらに、ラジカルの水素は電子(-e)を帯びていて有機結合を切断する作用が強く、ラジカルの水酸基(OH)は強い(+e)を帯びていて酸化力が強いことなどが知られている。
【0074】
<細多孔質物質と発電装置>
前述の論理を組合せた結果、細多孔質物質は液体、気体および水蒸気の吸着性に優れているから、大気中の水蒸気を吸着した状態で放射線を作用させれば、細孔内でイオン発生(電子発生)が生じる。つまり、結晶原子に不純物を含まない炭素は絶縁性なので電子を層内に蓄積でき、ゼオライトは半導体なので電子を層内に蓄積する性能が低い。従って、以後は上記炭素が蓄積した電子に限定して述べる。炭素の層内に蓄積された電子を分極して取り出す装置を作成すれば、宇宙からの放射線と大気中の水蒸気という無限のエネルギー供給を受けて発電を永続的に続けさせることができ、これを発電装置と呼称できる。
【0075】
<発電装置の必要条件>
発電装置を完成するために考慮すべきことには以下の事項があり、資材の選定が伴う。
【0076】
(1)ラジカル反応に最適な細多孔質物質の選定。
原子構造中に不対電子が存在していない炭素が望ましいことは前述したが、更に詳しくは、炭素の同素体には(A)ダイヤモンド、(B)グラファイト、(C)ロンズデーライト(六方晶ダイヤモンド)、(D、E、F)フラーレン、(G)無定形炭素(木炭、竹炭、コークス、石炭、泥炭、煤)があるが、電導性、吸着性の観点からGに属する木炭および竹炭を単体或いは複合して用いることが望ましい。
【0077】
(2)ラジカル反応で生じたイオン(電子)を収束する方法。
前述の炭に生じた電子を収束し、大容量の電子に収束するために、前記炭の粒子の相互を結合・固化し、個々の生成電子を収束させる必要がある。すると、電導性を持つ固化剤で相互の炭粒子を結合・固化することになるから、有機物は絶縁性物質なので固化剤に適用できない。無機物で固化性を備えた物質はセメント、石膏および石灰などの水和性の固化剤であるが、これらは乾燥して水分を失うと電導性を消失するので当初の目的を達成できない。そこで、水和性固化剤に電導性物質(例えば、金属粉、黒鉛粉などの電導性物質粉)を混合・併用する方法も考えられるが炭粒子に電導性物質を接触させるとゼオライト同様に電子を蓄積する能力が低下し、電子を収束する性能が低下するので、この方法は適用できない。
【0078】
そこで、電導性が高く、通電時に発熱し難い物質として、セメント硬化物中に多量の結晶水を生成させ、電子の収束を図る手段に想到した。セメント硬化物中に多量の結晶水を生成させるには、セメントバチルスを生成させる。すると、セメント固化物が内蔵する結晶水の2~3倍の結晶水を内蔵したセメントバチルスが得られる。バチルスの内蔵する結晶水の量はバチルス生成過程の条件によって異なるが、少なくともセメント単体の固化物より電導性は改善される。
【0079】
そこで、セメントバチルスを確実に生成させる方法として、セメントに硫酸カルシウムを加え、これが固化時に炭酸ガス雰囲気を保てばよいので、重炭酸ソーダ(重曹)を追加し、さらに酸性物質(木酢液)を追加し、セメントの急激な凝固を回避する。この方法で得られたセメントバチルスは炭粒子の相互を良好に固結・固化せしめ、収束電子を効率良く導通させる。
【0080】
(3)ラジカルで生じた電子を分極する方法。
次に、収束した電子をセメント固化物(セメントバチルス体)から分極する方法として、イオン化傾向が異なる金属片を電極として用いる。固化物の一端に、傾向が高い金属(例えば、アルミニウム)板を、そして他の端に低い金属(例えば、銅)板を接続する。すると、高い傾向の金属電極にマイナス電子、他方の金属電極にはプラス電子が得られる。
【0081】
(4)ラジカル反応を励起する方法。
固化物に設置した電極(金属板)に半導体セラミックおよび放射性物質の何れかを近接或いは接触させた時、または上記セラミックスおよび放射性物質を前記固化物に混合した時、その何れの場合にも前記発電量は増加するので導体セラミックおよび放射性物質は発電効果を励起する作用がある。ここで、半導体セラミックは異なる金属酸化の層(例えば、MnO2,NiO,CoO,CuOなどを含んだ還移金属とアルミナ及びケイ酸塩)を内蔵するセラミックであり、放射性物質は、トリウム、ストロンチュウム、ウラニウムなどを含有する放射性鉱物であり、具体的にはモナサイトがあげられる。
【0082】
(5)結論
前記事項を要約すれば、宇宙線を水蒸気に作用させ、電力として変換して取り出せばエネルギーとして利用可能であり、木炭、セメント、石膏、重曹、木酢液、イオン化傾向が異なる二種類の金属板を準備すれば発電装置が得られ、補足的に半導体セラミックおよび放射性物質を装着すれば発電量を増加させることが出来る。電流を安定的に発生させるための要は、細孔内で生じるラジカル反応に依存するから、細孔内に多くの水蒸気(塊)を永続的に供給すれば、発電は継続し、電力は増加する。