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特開2022-180227塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物、塗膜、及び塗り床の形成方法
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  • 特開-塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物、塗膜、及び塗り床の形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180227
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物、塗膜、及び塗り床の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 163/00 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
C09D163/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087214
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000232542
【氏名又は名称】日本特殊塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 裕司
(72)【発明者】
【氏名】朝比奈 正幸
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038DB061
4J038DB262
4J038JB02
4J038KA03
4J038NA11
4J038NA19
4J038PA18
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】硬度が高く、耐衝撃性が良好であり、透明性及び耐候性に優れた塗膜を与える二液反応硬化型塗料組成物等を提供すること。
【解決手段】脂環式エポキシ基を有する化合物(A)と、前記化合物(A)とは異なるエポキシ化合物(B)とを含む主剤液(I)、及び芳香族基を含まないアミン系硬化剤(C)を含む硬化剤液(II)を含有する塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物、上記二液反応硬化型塗料組成物を用いた塗膜、並びに、上記二液反応硬化型塗料組成物を用いた塗り床材の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式エポキシ基を有する化合物(A)と、前記化合物(A)とは異なるエポキシ化合物(B)とを含む主剤液(I)、及び芳香族基を含まないアミン系硬化剤(C)を含む硬化剤液(II)を含有する塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物。
【請求項2】
前記化合物(A)と前記化合物(B)の含有量の質量比(化合物(A)の質量/化合物(B)の質量)が、5/95~25/75である請求項1に記載の塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物。
【請求項3】
前記塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物を硬化してなる乾燥膜厚2mmの塗膜のJIS K7375に規定される可視光透過率が75%以上である、請求項1又は2に記載の塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物。
【請求項4】
前記塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物を硬化してなる乾燥膜厚2mmの塗膜に対して、JIS K5600-7-7に準拠して、波長300~400nmの光強度が60W/mの条件でキセノンウェザーメーター試験を300時間行った場合、当該試験後の塗膜のJIS K7375に規定される可視光透過率が75%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物。
【請求項5】
前記塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物を硬化してなるJIS K 6251に規定されるダンベル状1号形の試験片の伸び率が20%以上で、かつJIS K 6911に規定される圧縮強度が60N/mm以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物。
【請求項6】
更に、着色物を含有する請求項1~5のいずれか1項に記載の塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物を用いて形成された塗膜。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物を用いて塗膜を形成する工程を含む塗り床の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗り床材に用いる二液反応硬化型塗料組成物、塗膜、及び塗り床の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
塗り床を形成する場合、塗料組成物を現場で塗装するため、常温硬化が必要なことが多く、また硬度や耐衝撃性等の要求される物性を満足するために、エポキシ化合物-アミン系硬化剤の二液反応硬化型塗料組成物が広く使用されている。
例えば、特許文献1には、エポキシ樹脂とポリアミンおよび水を成分とする水系塗剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-201775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の塗料をはじめ、従来のエポキシ化合物-アミン系硬化剤の二液反応硬化型塗料組成物は、太陽光等の光によって黄色に変色しやすいという性質があり、クリヤー塗料として使用するのは難しかった。また、増粘剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤等の塗料に配合する添加剤の中には、配合すると透明性が失われるものが多い。したがって、従来のエポキシ化合物-アミン系硬化剤の二液反応硬化型塗料組成物を用いて形成された塗り床材は、塗料中に着色のための顔料を含ませることにより、着色塗り床材とし、透明性の低さや変色が目立たないような処理を必要としていた。そのため、オフィスや商業施設の床など、高い意匠性が求められる場面においては従来のエポキシ化合物-アミン系硬化剤の二液反応硬化型塗料組成物は使用できなかった。
【0005】
本発明の課題は、硬度が高く、耐衝撃性が良好であり、透明性及び耐候性に優れた塗膜を与える二液反応硬化型塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らが鋭意検討したところ、脂環式エポキシ化合物を使用する以下の構成により、上記課題を解決できることを見出した。また、意外なことに、本来塗膜の硬度とトレードオフの関係にある塗膜の割れにくさ(耐衝撃性)についても良好となることを見出した。
【0007】
<1>
脂環式エポキシ基を有する化合物(A)と、前記化合物(A)とは異なるエポキシ化合物(B)とを含む主剤液(I)、及び芳香族基を含まないアミン系硬化剤(C)を含む硬化剤液(II)を含有する塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物。
<2>
前記化合物(A)と前記化合物(B)の含有量の質量比(化合物(A)の質量/化合物(B)の質量)が、5/95~25/75である<1>に記載の塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物。
<3>
前記塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物を硬化してなる乾燥膜厚2mmの塗膜のJIS K7375に規定される可視光透過率が75%以上である、<1>又は<2>に記載の塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物。
<4>
前記塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物を硬化してなる乾燥膜厚2mmの塗膜に対して、JIS K5600-7-7に準拠して、波長300~400nmの光強度が60W/mの条件でキセノンウェザーメーター試験を300時間行った場合、当該試験後の塗膜のJIS K7375に規定される可視光透過率が75%以上である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物。
<5>
前記塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物を硬化してなるJIS K 6251に規定されるダンベル状1号形の試験片の伸び率が20%以上で、かつJIS K 6911に規定される圧縮強度が60N/mm以上である、<1>~<4>のいずれか1項に記載の塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物。
<6>
更に、着色物を含有する<1>~<5>のいずれか1項に記載の塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物。
<7>
<1>~<6>のいずれか1項に記載の塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物を用いて形成された塗膜。
<8>
<1>~<6>のいずれか1項に記載の塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物を用いて塗膜を形成する工程を含む塗り床の形成方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、硬度が高く、耐衝撃性が良好であり、透明性及び耐候性に優れた塗膜を与える二液反応硬化型塗料組成物、上記二液反応硬化型塗料組成物を用いた塗膜、及び塗り床の形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】塗り床材に用いる二液反応硬化型塗料組成物の使用例の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、脂環式エポキシ基を有する化合物(A)と、上記化合物(A)とは異なるエポキシ化合物(B)とを含む主剤液(I)、及び芳香族基を含まないアミン系硬化剤(C)を含む硬化剤液(II)を含有する塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物(以下、本発明の塗料組成物ともいう)に関する。
【0011】
以下、本発明の塗料組成物について説明する。以下の実施形態における各構成及びそれらの組み合わせは例であり、本発明は実施形態によって限定されることはない。
本明細書において、「~」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0012】
本発明の塗料組成物は、脂環式エポキシ基を有する化合物(A)と、上記化合物(A)とは異なるエポキシ化合物(B)とを含む主剤液(I)と、芳香族基を含まないアミン系硬化剤(C)を含む硬化剤液(II)とを含む組成物である。
本発明の塗料組成物を使用する際には、主剤液(I)と硬化剤液(II)とを混合して硬化させることでエポキシ樹脂塗膜を形成することができる。主剤液(I)と硬化剤液(II)とを混合することにより、上記化合物(A)や化合物(B)といったエポキシ基含有化合物と、芳香族基を含まないアミン系硬化剤(C)との反応が開始され、硬化乾燥することでエポキシ樹脂塗膜が形成される。
【0013】
〔主剤液(I)〕
本発明の塗料組成物は、脂環式エポキシ基を有する化合物(A)と、上記化合物(A)とは異なるエポキシ化合物(B)とを含む主剤液(I)を含有する。
【0014】
<脂環式エポキシ基を有する化合物(A)>
脂環式エポキシ基を有する化合物(A)は、1分子中に脂環式エポキシ基を少なくとも1つ有する化合物であり、脂環式エポキシ基を1つのみ有するものであってもよいし、脂環式エポキシ基を2つ以上有するものであってもよい。また、化合物(A)は脂環式エポキシ基に加えて、更に非脂環式エポキシ基を有していてもよい。
【0015】
化合物(A)としては、例えば下記一般式(1)~(3)のいずれかで表される化合物を挙げることができる。
【0016】
【化1】
【0017】
一般式(1)中、Rは置換基を表す。nは0~8の整数を表す。nが2以上の整数を表す場合、複数のRは同じであっても異なっていてもよい。Zはシクロヘキサン環又はノルボルナン環を表す。
【0018】
【化2】
【0019】
一般式(2)中、mは2~4の整数を表す。Zはシクロヘキサン環又はノルボルナン環を表す。複数のZは同じであっても異なっていてもよい。Lはm価の連結基を表す。Rは置換基を表す。nは0~4の整数を表す。複数のRは同じであっても異なっていてもよい。
【0020】
【化3】
【0021】
一般式(3)中、Z及びZはそれぞれ独立にシクロヘキサン環又はノルボルナン環を表す。jは0~2の整数を表す。jが2を表す場合、複数のZは同じであっても異なっていてもよい。R~Rはそれぞれ独立に置換基を表す。n及びnはそれぞれ独立には0~4の整数を表す。nは0~2の整数を表す。R~Rは複数存在する場合、複数のR~Rはそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0022】
一般式(1)中のRが表す置換基としては特に限定されないが、アルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。
【0023】
一般式(1)中のnは0~8の整数を表し、1~4の整数を表すことがより好ましい。
【0024】
一般式(1)中のZはシクロヘキサン環又はノルボルナン環を表し、シクロヘキサン環を表すことが好ましい。
【0025】
一般式(2)中のRが表す置換基としては特に限定されないが、アルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数2~8のアルキル基が更に好ましい。
【0026】
一般式(2)中のnは0~4の整数を表し、0~2の整数を表すことがより好ましい。
【0027】
一般式(2)中のZはシクロヘキサン環又はノルボルナン環を表し、シクロヘキサン環を表すことが好ましい。
【0028】
一般式(2)中のmは2~4の整数を表し、2又は3を表すことが好ましい。
【0029】
Lが表すm価の連結基としては特に限定されないが、アルキレン基、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合、スルホニル基、又はこれらを2種以上組み合わせてなる基が挙げられる。
【0030】
一般式(3)中、jは0~2の整数を表し、0又は1を表すことが好ましい。
【0031】
一般式(3)中、R~Rがそれぞれ独立に表す置換基としては特に限定されないが、アルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。
【0032】
一般式(3)中、n及びnはそれぞれ独立には0~4の整数を表し、0~2の整数を表すことが好ましい。nは0~2の整数を表し、0又は1を表すことが好ましい。
【0033】
以下に化合物(A)の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0034】
【化4】
【0035】
上記の化合物(A)は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
主剤液(I)中、化合物(A)の配合量は特に限定されないが、例えば5~25質量%であることが好ましい。
【0036】
<エポキシ化合物(B)>
エポキシ化合物(B)は、上記化合物(A)とは異なるエポキシ化合物である。すなわち、エポキシ化合物(B)は脂環式エポキシ基を有さないエポキシ化合物である。
化合物(B)としては特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、変性エポキシ化合物などが挙げられる。
化合物(B)としては、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、グリシジルエーテル型エポキシ化合物、又は変性エポキシ化合物が好ましく、ビスフェノールA型エポキシ化合物がより好ましい。
【0037】
化合物(B)の分子量は370~470、樹脂のエポキシ等量としては、180~340g/eqであることが好ましく、180~270g/eqがより好ましい。
【0038】
化合物(B)としては、市販品を用いることもできる。化合物(B)が樹脂である場合、例えば、DIC株式会社製のEPICRON850、860等を挙げることができる。
【0039】
上記の化合物(B)は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
主剤液(I)中、化合物(B)の配合量は特に限定されないが、例えば75~95質量%であることが好ましい。
【0040】
<化合物(A)と化合物(B)の含有量比>
脂環式エポキシ基を有する化合物(A)と、ビスフェノールA型エポキシ化合物(B)の含有量の質量比(化合物(A)の質量/化合物(B)の質量)は、5/95~25/75であることが好ましい。化合物(A)の含有量を、化合物(A)と化合物(B)の総量に対して5質量%以上とすることによって、透明性や耐候性に優れるといった本発明の効果を十分に発揮することができる。また、25質量%以下とすることによって、塗膜硬化時に十分に塗膜を硬化させることができる。
(化合物(A)の質量/化合物(B)の質量)は、5/95~25/75であることが好ましい。
【0041】
<溶剤>
主剤液(I)は溶剤を含有してもよい。
溶剤としては水又は有機溶剤を挙げることができる。
主剤液(I)中の溶剤の配合量は特に限定されないが、例えば、主剤液(I)の総量に対して、0~5質量%の範囲で使用することもできる。
【0042】
<添加剤>
主剤液(I)は上記した以外のその他の成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で含有してもよい。その他の成分としては特に限定されないが、例えば、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、可塑剤、触媒、表面調整剤、着色物等が挙げられる。
【0043】
消泡剤としては、例えば、アクリル系化合物、シリコン系化合物、ビニルエーテル系化合物、フッ素変性シリコン系化合物、ブタジエン系化合物、オレフィンポリマー系化合物が挙げられる。
【0044】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物等が挙げられる。
【0045】
ベンゾトリアゾール系化合物としては、2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert.-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert.-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-tert.-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール及び2-(2-ヒドロキシ-4-オクチロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0046】
ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物としては、2,4-ビス(2-ヒドロキシ-4-ブチロキシフェニル)-6-(2,4-ビス-ブチロキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4[(2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン及び2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチロキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0047】
紫外線吸収剤の市販品としては、例えばBASF社製の、TINUVIN-PS、TINUVIN99-2、TINUVIN109、TINUVIN328、TINUVIN384-2、TINUVIN900、TINUVIN928、TINUVIN1130(以上、ベンゾトリアゾール系)、TINUVIN400、TINUVIN405、TINUVIN460、TINUVIN477、TINUVIN479(以上、ヒドロキシフェニルトリアジン系)等が挙げられる。
【0048】
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。
【0049】
着色物としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、フタロシアニン、アゾ系顔料、酸化鉄、赤土、黄土、緑土、孔雀石、胡粉、黒鉛、紺青、亜鉛華、コバルト青、エメラルド緑、ビリジャン、アルカリブルー、リゾールレッド、カーミン6B、キナクリドンレッド、イソインドリンエロー、コバルトグリーン、アントラキノンレッド等が挙げられる。
【0050】
主剤液(I)が添加剤を含有する場合、添加剤の配合量は特に限定されないが、主剤液(I)の総量に対して、0.5質量%以下であることが好ましい。
【0051】
〔硬化剤液(II)〕
本発明の塗料組成物は、硬化剤(C)を含む硬化剤液(II)を含む。
【0052】
<アミン系硬化剤(C)>
硬化剤液(II)は芳香族基を含まないアミン系硬化剤(C)を含む。芳香族基を含まないアミン系硬化剤(C)を用いることによって、本発明の塗料組成物によって形成される塗膜の常温硬化が可能となる。
【0053】
芳香族基を含まないアミン系硬化剤(C)としては、耐候性の観点から、脂肪族系アミン、ポリエーテルアミン、脂環式アミン、又はこれらの変性物であることがより好ましい。
脂肪族系アミンとしては、メチレンジアミン、エチレンジアミン、1,2-ジアミノプロパン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンテトラミン、テトラ(アミノメチル)メタン、テトラキス(2-アミノエチルアミノメチル)メタン、1,3-ビス(2’-アミノエチルアミノ)プロパン、トリエチレン-ビス(トリメチレン)ヘキサミン、ビス(3-アミノエチル)アミン、ビスヘキサメチレントリアミン[HN(CHNH(CHNH]などが挙げられる。
ポリエーテルアミンとしては、エチルトリス(アミノポリプロピルオキシメチル)メタン、ポリオキシアルキレンジアミンなどが挙げられる。
脂環式アミンとしては、例えば、1,4-シクロヘキサンジアミン、4,4’-メチレンビスシクロヘキシルアミン、4,4’-イソプロピリデンビスシクロヘキシルアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン,シクロアリファティックジアミン、ノルボルナジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン(MDA)などが挙げられる。
変性アミンとしては、例えば、上記アミンのエポキシ付加物、マンニッヒ反応物、ミカエル反応物、チオ尿素反応物などが挙げられる。
【0054】
芳香族基を含まないアミン系硬化剤(C)の市販品としては、例えば(株)T&K TOKA製のフジキュアー8191B、フジキュアー8172C、フジキュアーFDX-821-F、大都産業(株)製のダイトクラールD677、築野食品工業社製のTSY-005、エボニック社製のVESTAMIN PACM等が挙げられる。
【0055】
芳香族基を含まないアミン系硬化剤(C)は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
硬化剤液(II)中、芳香族基を含まないアミン系硬化剤(C)の配合量は特に限定されないが、例えば70~100質量%であることが好ましい。
【0056】
<溶剤>
硬化剤液(II)は溶剤を含有してもよい。
溶剤としては水又は有機溶剤を挙げることができる。
硬化剤液(II)中の溶剤の配合量は特に限定されないが、例えば、硬化剤液(II)の総量に対して、0~10質量%であることが好ましく、0~5質量%であることがより好ましい。
【0057】
<添加剤>
硬化剤液(II)は上記した以外のその他の成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で含有してもよい。その他の成分としては特に限定されないが、例えば、消泡剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、可塑剤、触媒、表面調整剤、防滑骨材等が挙げられ、具体的には、主剤液(I)に記載のその他の成分が挙げられる。
【0058】
硬化剤液(II)が添加剤を含有する場合、添加剤の配合量は特に限定されないが、硬化剤液(II)の総量に対して、5質量%以下であることが好ましい。
【0059】
上述のように、本発明の塗料組成物は、主剤液(I)と硬化剤液(II)とを混合することにより反応が開始され、硬化乾燥し、エポキシ樹脂塗膜が形成される。
本発明の塗料組成物において、塗膜硬化が円滑に進行し、良好な硬化物性が得られることから、主剤液(I)中のエポキシ基含有化合物のエポキシ基1当量に対して、硬化剤(C)中の活性水素基を0.7~1.5当量とすることが好ましく、0.8~1.0当量とすることがより好ましい。主剤液(I)中のエポキシ基含有化合物とは、上記化合物(A)、化合物(B)、及び、その他のエポキシ基含有化合物を含む場合においては、その他のエポキシ基含有化合物のことを表す。
なお、本発明の塗料組成物の粘度を調整するため、主剤液(I)と硬化剤液(II)とを混合した後に、さらに溶媒を加えてもよい。
【0060】
本発明の塗料組成物において、主剤液(I)と硬化剤液(II)の含有量比(質量比)は特に限定されないが、主剤液(I)/硬化剤液(II)が2/1~5/1の範囲で用いることが好ましい。
【0061】
本発明の塗料組成物は、従来公知の混合方法によって調製することができる。例えば、ディゾルバー、アトライター等の混合機が使用できる。
【0062】
<塗膜>
本発明は、上述の塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物を用いて形成された塗膜にも関する。
塗膜の形成方法は特に限定されず、例えば、ローラー塗装、刷毛塗りの他、塗布組成物を流し込み、ヘラ、コテ等で表面を均一にする方法(流し塗り)などの一般的な方法を用いることができる。
塗膜の形成温度としては、10~30℃であることが好ましい。
【0063】
塗膜の厚みとしては、特に限定されないが、乾燥膜厚において0.1~3mmの塗膜を形成できることが好ましく、1~3mmの塗膜を形成できることがより好ましい。
【0064】
<塗り床材、及び塗り床の形成方法>
本発明は、上述の塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物を用いて塗膜を形成する方法を含む塗り床の形成方法にも関する。
本発明の形成方法により得られる塗り床は、本発明の塗料組成物を用いて形成された塗膜一層のみであってもよく、複数の層からなる積層体であってもよい。
【0065】
本発明の形成方法により得られる塗り床は、例えば、意匠層と上記塗膜からなる積層体であることが好ましい。本発明の塗料組成物を用いて形成される塗膜は透明性や耐候性に優れるため、図1に示すように、コンクリート素地等の床素地1上に意匠層2を設け、さらに本発明の塗料組成物を用いて形成された塗膜3を塗設することにより、意匠層の美観を損ねることなく、硬度や耐衝撃性に優れた塗り床4とすることが可能となる。
【0066】
床素地の材質としては、コンクリート、モルタル、木材、天然石、加工石、樹脂系床材等、種々の素地に対して使用することができる。
意匠層としては、合成紙、紙、PETフィルム等の意匠性シートや、各種塗り床材形成用樹脂と着色剤を含む意匠層形成用組成物から形成する着色塗膜等が挙げられる。着色剤としては、塗料業界において一般的に使用される着色顔料や体質顔料等が挙げられ、例えば、カオリン、タルク、クレー、マイカ等が好ましく用いられる。意匠層形成用組成物としては、例えば、本発明の塗料組成物に着色剤を添加した組成物を用いることが好ましい。
【0067】
本発明の塗料組成物を用いて形成された塗膜を有する塗り床材は、透明性が高く、耐候性が良好となり、美観に優れることから、工場や倉庫の床材としての用途だけではなく、商業施設やオフィス、半屋外施設の床材としても使用できる。
【実施例0068】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。
【0069】
下記表1に示す成分を混合して塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物を調製した。表中の比は質量比である。
【0070】
YDH184は、Aditya Birla Chemicals社製の脂環式二官能エポキシ化合物である。
エピクロン860は、DIC株式会社製のビスフェノールA型エポキシ化合物である。
RD 105は、o-Cresyl glycidyl ether(Aditya Biria Chemicals社)である。
RD 130は、Ethlene Glycol Diglycidyl Ether(Aditya Biria Chemicals社)である。
o-Cresyl glycidyl etherは、芳香族含有エポキシ化合物である。
【0071】
〔評価〕
上記のようにして得られた実施例1~2、及び比較例1~5の塗料組成物を用いて、下記の評価を行った。
【0072】
<硬度>
縁付きのプラスチック上に各実施例及び比較例の塗料組成物を乾燥膜厚4mmとなるように塗装した。23℃、72時間乾燥し、硬度評価用の試験片を作成した。
得られた試験片について、温度23℃、相対湿度50%条件下で、D型硬度計を用い、JIS6253に準拠して塗膜の硬度を測定した。
【0073】
<透明性>
塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物を硬化してなる乾燥膜厚2mmの塗膜のJIS K7375に規定される可視光透過率を測定した。
【0074】
<耐候性>
塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物を硬化してなる乾燥膜厚2mmの塗膜に対して、JIS K5600-7-7に準拠して、波長300~400nmの光強度が60W/mの条件でキセノンウェザーメーター試験を300時間行い、当該試験後の塗膜のJIS K7375に規定される可視光透過率を測定した。
【0075】
<伸び率>
塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物について、JIS K 6251に規定されるダンベル状1号形の試験片の伸び率を測定した。
【0076】
<圧縮強度>
塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物について、JIS K 6911に規定される圧縮強度を測定した。なお、試験片の形状は、長さ及び幅13±0.3mm、厚み25±0.3mmの直方体型とした。
【0077】
結果を下記表1に示した。
【0078】

【表1】
【0079】
表1に示したように、実施例1及び2は、硬度、伸び率、圧縮強度、透明性、及び耐候性のすべてにおいて優れていた。
なお、耐衝撃性に関しては、塗膜伸び率と圧縮強度の数値を、塗膜の割れ易さ(割れにくさ)として評価した。
比較例1は、化合物(A)を用いておらず、伸び率が小さく、耐衝撃性に劣るものである。
比較例2及び3は、硬化剤(C)を用いておらず、耐候性に劣っていた。
比較例4及び5は、化合物(A)を用いておらず、伸び率及び圧縮強度が小さく、耐衝撃性に劣るものである。
以上より、本発明の塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物を用いて形成された塗膜は、硬度が高く、耐衝撃性が良好であり、透明性や耐候性に優れていることが分かった。
【符号の説明】
【0080】
1 床素地
2 意匠層
3 塗り床材用二液反応硬化型塗料組成物から形成された塗膜
4 塗り床
図1