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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180228
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】塩化鉄(II)の高純度化方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 49/10 20060101AFI20221129BHJP
   B01D 9/02 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C01G49/10
B01D9/02 601B
B01D9/02 602B
B01D9/02 604
B01D9/02 611A
B01D9/02 625A
B01D9/02 625E
B01D9/02 621
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087215
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000233734
【氏名又は名称】株式会社アステック入江
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾脇 凌之介
(72)【発明者】
【氏名】樋口 和
【テーマコード(参考)】
4G048
【Fターム(参考)】
4G048AA06
4G048AB02
4G048AB08
4G048AC08
4G048AE01
4G048AE06
(57)【要約】
【課題】塩化鉄(II)の純度を高くすることができ、かつ回収率に優れる塩化鉄(II)の高純度化方法を提供する。
【解決手段】塩化鉄(II)を含む溶液と塩酸と混合し、混合液を得る工程(A)と、
前記混合液を冷却し、塩化鉄(II)4水和物の結晶を得る工程(B)とを含み、
前記混合液中のFeClに対するHClのモル比であるHCl/FeClが1.0以上であり、
前記工程(B)の冷却を冷却速度0.01℃/分~1℃/分で行う、
塩化鉄(II)の高純度化方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化鉄(II)を含む溶液と塩酸と混合し、混合液を得る工程(A)と、
前記混合液を冷却し、塩化鉄(II)4水和物の結晶を得る工程(B)とを含み、
前記混合液中のFeClに対するHClのモル比であるHCl/FeClが1.0以上であり、
前記工程(B)の冷却を冷却速度0.01℃/分~1℃/分で行う、
塩化鉄(II)の高純度化方法。
【請求項2】
前記混合液中のFeClに対するHClのモル比であるHCl/FeClが1.0以上3.0以下である、請求項1に記載の塩化鉄(II)の高純度化方法。
【請求項3】
前記工程(B)の冷却を冷却速度0.01℃/分~0.1℃/分で行う、請求項1又は2に記載の塩化鉄(II)の高純度化方法。
【請求項4】
前記工程(A)で用いられる前記塩化鉄(II)を含む溶液が、エッチング廃液に由来する溶液である、請求項1~3のいずれか1項に記載の塩化鉄(II)の高純度化方法。
【請求項5】
前記工程(B)の後に、固液分離工程を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の塩化鉄(II)の高純度化方法。
【請求項6】
前記工程(A)の前に、前記工程(A)で用いられる塩化鉄(II)を含む溶液を55℃以上95℃以下に加温する工程を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の塩化鉄(II)の高純度化方法。
【請求項7】
前記工程(A)で用いられる塩化鉄(II)を含む溶液は、塩化鉄(II)を30質量%以上49質量%未満含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の塩化鉄(II)の高純度化方法。
【請求項8】
前記工程(B)の冷却を行う前の前記混合液の温度が50℃以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載の塩化鉄(II)の高純度化方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化鉄(II)の高純度化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板やIC、LSI用のリードフレームなどは、塩化鉄(III)を含むエッチング液で部分的に腐食処理することにより製造されている。
エッチング処理によって、エッチング液に含まれる塩化鉄(III)が還元されて塩化鉄(II)になり、塩化鉄(III)の濃度が低下してエッチング効率が悪くなるので、定期的にエッチング液の交換が行われている。
【0003】
特許文献1~2には、塩化第一鉄溶液と塩酸とを混合し、塩化第一鉄を析出させる、塩化第一鉄の精製方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-241629号公報
【特許文献2】特開昭55-23005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
エッチング処理後の廃液であるエッチング廃液は銅成分、ニッケル成分を多量に含んでいる。そこで鉄粉を加えることでイオン化傾向の差により銅粉、ニッケル粉を液中から取り出す還元処理がなされている。還元後の塩化鉄(II)は酸化処理され、塩化鉄(III)となり、エッチング液として再びリサイクルされるが、プロセス上、余剰に塩化鉄(II)を含む溶液が生成され、廃棄されているのが現状である。
【0006】
廃棄される塩化鉄(II)を含む溶液を再利用することができれば、資源の有効利用の観点、及び廃棄物の減少による環境負荷の低減の観点から望ましい。
しかしながら、還元処理工程において銅成分、ニッケル成分が除去されても完全に除去されるわけではなく、また、鉄粉を加えても還元されない成分も種々液中には含まれる。塩化鉄(II)を含む溶液中の不純物成分としては、典型元素であるカルシウムや亜鉛、遷移元素である銅、ニッケル、マンガン、コバルト等が挙げられる。これらの不純物が含まれる結果、塩化鉄(II)の純度が低いため、様々な用途(例えば、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの正極材料や顔料の原料など)に再利用することが難しいという問題があった。
【0007】
本発明の課題は、塩化鉄(II)の純度を高くすることができ、かつ回収率に優れる塩化鉄(II)の高純度化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は下記手段により達成することができる。
〔1〕
塩化鉄(II)を含む溶液と塩酸と混合し、混合液を得る工程(A)と、
前記混合液を冷却し、塩化鉄(II)4水和物の結晶を得る工程(B)とを含み、
前記混合液中のFeClに対するHClのモル比であるHCl/FeClが1.0以上であり、
前記工程(B)の冷却を冷却速度0.01℃/分~1℃/分で行う、
塩化鉄(II)の高純度化方法。
〔2〕
前記混合液中のFeClに対するHClのモル比であるHCl/FeClが1.0以上3.0以下である、〔1〕に記載の塩化鉄(II)の高純度化方法。
〔3〕
前記工程(B)の冷却を冷却速度0.01℃/分~0.1℃/分で行う、〔1〕又は〔2〕に記載の塩化鉄(II)の高純度化方法。
〔4〕
前記工程(A)で用いられる前記塩化鉄(II)を含む溶液が、エッチング廃液に由来する溶液である、〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の塩化鉄(II)の高純度化方法。
〔5〕
前記工程(B)の後に、固液分離工程を含む、〔1〕~〔4〕のいずれか1つに記載の塩化鉄(II)の高純度化方法。
〔6〕
前記工程(A)の前に、前記工程(A)で用いられる塩化鉄(II)を含む溶液を55℃以上95℃以下に加温する工程を含む、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の塩化鉄(II)の高純度化方法。
〔7〕
前記工程(A)で用いられる塩化鉄(II)を含む溶液は、塩化鉄(II)を30質量%以上49質量%未満含有する、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の塩化鉄(II)の高純度化方法。
〔8〕
前記工程(B)の冷却を行う前の前記混合液の温度が50℃以上である、〔1〕~〔7〕のいずれか1つに記載の塩化鉄(II)の高純度化方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、塩化鉄(II)の純度を高くすることができ、かつ回収率に優れる塩化鉄(II)の高純度化方法を提供することにある。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の塩化鉄(II)の高純度化方法は、
塩化鉄(II)を含む溶液と塩酸と混合し、混合液を得る工程(A)と、
前記混合液を冷却し、塩化鉄(II)4水和物の結晶を得る工程(B)とを含み、
前記混合液中のFeClに対するHClのモル比であるHCl/FeClが1.0以上であり、
前記工程(B)の冷却を冷却速度0.01℃/分~1℃/分で行う、
塩化鉄(II)の高純度化方法である。
【0011】
[工程(A)]
工程(A)は、塩化鉄(II)を含む溶液と塩酸と混合し、混合液を得る工程である。
工程(A)で用いられる塩化鉄(II)を含む溶液は、塩化鉄(II)を含む水溶液であることが好ましく、エッチング廃液に由来する溶液であることがより好ましい。エッチング廃液に由来する溶液とは、エッチング廃液又はエッチング廃液に対して何らかの処理(例えば酸化処理や還元処理)を行った後の溶液である。エッチング廃液に由来する溶液は通常は鉄以外の金属などの不純物を含有しており、本発明の方法を適用した際に本発明の効果が顕著に現れる。
工程(A)で用いられる塩化鉄(II)を含む溶液は、鉄以外の金属を含むものであることが好ましく、カルシウム、亜鉛、マンガン、コバルト、銅、ニッケルの少なくとも1種を含むものであることがより好ましく、カルシウム及びマンガンの少なくとも1種を含むことが更に好ましい。
工程(A)で用いられる塩化鉄(II)を含む溶液は、例えば、塩化鉄(II)を10~50質量%、カルシウムを100~3000ppm、マンガンを100~3000ppm含むものであってもよい。「ppm」は「parts per million」の略であり、質量基準(「質量ppm」)である。
【0012】
工程(A)で用いられる塩化鉄(II)を含む溶液は、塩化鉄(II)を30質量%以上49質量%未満含有することが好ましく、30質量%以上45質量%以下含有することがより好ましく、30質量%以上40質量%以下含有することが更に好ましく、30質量%以上40質量%未満含有することが特に好ましい。
【0013】
工程(A)で用いられる塩化鉄(II)を含む溶液の塩化鉄(II)の含有率が30質量%以上であると、工程(B)で得られる結晶について、下記式で定義される回収率が高くなり好ましい。
回収率(%)=100×[得られた結晶の質量(g)/{用いた塩化鉄(II)水溶液の質量(g)+用いた塩酸の質量(g)}]
【0014】
工程(A)で用いられる塩化鉄(II)を含む溶液の塩化鉄(II)の含有率が49質量%未満であると、工程(B)で得られる結晶の塩化鉄(II)の純度が高くなり好ましい。
【0015】
工程(A)で、塩化鉄(II)を含む溶液と塩酸と混合して得られた混合液の温度(工程(B)の冷却を行う前の混合液の温度)は特に限定されないが、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。混合液の温度が上記範囲になるように、塩化鉄(II)を含む溶液をあらかじめ加温させておくことが好ましい。これは、工程(B)で得られる結晶の純度を高くするためには、工程(B)で混合液を徐冷して、結晶をゆっくり析出させることが重要であるためである。また、工程(B)の冷却を行う前の混合液の温度は例えば75℃未満とすることができる。
加温手段は特に限定されず、公知の加温手段を用いることができる。
例えば、塩化鉄(II)を含む溶液を55℃以上95℃以下に加温することが好ましく、75℃以上95℃以下に加温することがより好ましく、80℃以上90℃以下に加温することが更に好ましい。
【0016】
工程(A)で用いられる塩酸の濃度は、30質量%以上であることが好ましい。
【0017】
工程(A)で得られる混合液中のFeClに対するHClのモル比(HCl/FeCl)は1.0以上であり、1.0以上3.0以下であることが好ましい。
【0018】
[工程(B)]
工程(B)は、工程(A)で得られた混合液を冷却し、塩化鉄(II)4水和物の結晶を得る工程である。
【0019】
工程(B)を行うことで、通常は、塩化鉄(II)4水和物の結晶と残液とのスラリーが得られる。塩化鉄(II)を結晶化させることで、不純物を残液側に追い出すことができ、塩化鉄(II)の純度を高くすることができる。
【0020】
工程(B)の冷却は、混合液の温度が5℃~30℃になるまで行うことが好ましく、10℃~20℃になるまで行うことがより好ましい。冷却は公知の手段を用いて行うことができる。
【0021】
工程(B)の冷却を冷却速度0.01℃/分~1℃/分で行うことが好ましく、冷却速度0.01℃/分~0.1℃/分で行うことがより好ましい。
工程(B)の冷却速度を上記範囲にすることで、得られる結晶中に不純物として存在する遷移元素(例えば、マンガン、コバルト、ニッケル等)の量を低減させることができ、塩化鉄(II)の純度を高くすることができるため好ましい。
【0022】
[その他の工程]
本発明の塩化鉄(II)の高純度化方法は、前述の工程(A)と工程(B)に加え、更にその他の工程を含むことができる。
その他の工程は特に限定されないが、本発明の塩化鉄(II)の高純度化方法は、工程(B)の後に固液分離工程を含むことが好ましい。
固液分離工程は、工程(B)を経て得られた結晶と残液を分離する工程である。固液分離は公知の手段(例えば、遠心分離機や濾過機)を用いて行うことができる。
【0023】
また、本発明の塩化鉄(II)の高純度化方法は、工程(A)の前に、工程(A)で用いられる塩化鉄(II)を含む溶液を加温する工程を含むことができる。
工程(A)で、塩化鉄(II)を含む溶液と塩酸と混合して得られた混合液の温度(工程(B)の冷却を行う前の混合液の温度)が50℃以上になるように、塩化鉄(II)を含む溶液を加温することが好ましく、60℃以上になるように、塩化鉄(II)を含む溶液を加温することがより好ましい。また、工程(B)の冷却を行う前の混合液の温度を例えば75℃未満になるように加温することができる。
例えば、塩化鉄(II)を含む溶液を75℃以上95℃以下に加温することが好ましく、80℃以上90℃以下に加温することがより好ましい。
【実施例0024】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0025】
実施例及び比較例で使用した塩化鉄(II)水溶液A~Fは、下記表1に示す成分を表1に示す含有量で含む塩化鉄(II)水溶液である。
【0026】
【表1】
【0027】
(実施例1)
80℃に加温された塩化鉄(II)水溶液A100gと35質量%塩酸50gをビーカーに入れ、60℃の混合液とした(HCl/FeClモル比1.50)。混合液をプログラム冷却装置(水槽中の温度をプログラム制御できる装置)に入れ、0.05℃/分の速度で20℃に達するまで冷却を行った。冷却後、得られたスラリーを遠心分離機にかけて結晶(塩化鉄(II)4水和物の結晶)を回収した。得られた結晶中の各成分の含有率、カルシウム及びマンガンの除去率、並びに回収率を表3に示す。カルシウム及びマンガンの除去率が高いと、相対的に塩化鉄(II)の純度が高くなるため、高純度化の効果が優れる。
【0028】
回収率(%)=100×[得られた結晶の質量(g)/{用いた塩化鉄(II)水溶液の質量(g)+用いた塩酸の質量(g)}]
【0029】
除去率(%)=100×[(用いた塩化鉄(II)水溶液中の不純物量(ppm)-結晶溶解後の不純物量(ppm)(※))/用いた塩化鉄(II)水溶液中の不純物量(ppm)]
※用いた塩化鉄(II)水溶液のFe濃度になるよう結晶を溶解、希釈させた際の不純物量
【0030】
(実施例2)
80℃に加温された塩化鉄(II)水溶液A100gと35質量%塩酸99gをビーカーに入れ、52℃の混合液とした(HCl/FeClモル比3.00)。混合液をプログラム冷却装置に入れ、0.01℃/分の速度で20℃に達するまで冷却を行った。冷却後、得られたスラリーを遠心分離機にかけて結晶(塩化鉄(II)4水和物の結晶)を回収した。得られた結晶中の各成分の含有率、カルシウム及びマンガンの除去率、並びに回収率を表3に示す。
【0031】
(実施例3)
55℃に加温された塩化鉄(II)水溶液B100gと35質量%塩酸38gをビーカーに入れ、62℃の混合液とした(HCl/FeClモル比1.50)。混合液をプログラム冷却装置に入れ、0.05℃/分の速度で20℃に達するまで冷却を行った。冷却後、得られたスラリーを遠心分離機にかけて結晶(塩化鉄(II)4水和物の結晶)を回収した。得られた結晶中の各成分の含有率、カルシウム及びマンガンの除去率、並びに回収率を表3に示す。
【0032】
(実施例4)
80℃に加温された塩化鉄(II)水溶液B100gと35質量%塩酸74gをビーカーに入れ、51℃の混合液とした(HCl/FeClモル比3.00)。混合液をプログラム冷却装置に入れ、0.01℃/分の速度で20℃に達するまで冷却を行った。冷却後、得られたスラリーを遠心分離機にかけて結晶(塩化鉄(II)4水和物の結晶)を回収した。得られた結晶中の各成分の含有率、カルシウム及びマンガンの除去率、並びに回収率を表3に示す。
【0033】
(実施例5)
95℃に加温された塩化鉄(II)水溶液C100gと35%塩酸110gをビーカーに入れ、54℃の混合液とした(HCl/FeClモル比3.00)。混合液をプログラム冷却装置に入れ、0.1℃/分の速度で20℃に達するまで冷却を行った。冷却後、得られたスラリーを遠心分離機にかけて結晶(塩化鉄(II)4水和物の結晶)を回収した。得られた結晶中の各成分の含有率、カルシウム及びマンガンの除去率、並びに回収率を表3に示す。
【0034】
(実施例6)
90℃に加温された塩化鉄(II)水溶液C100gと35質量%塩酸37gをビーカーに入れ、70℃の混合液とした(HCl/FeClモル比1.00)。混合液をプログラム冷却装置に入れ、0.01℃/分の速度で20℃に達するまで冷却を行った。冷却後、得られたスラリーを遠心分離機にかけて結晶(塩化鉄(II)4水和物の結晶)を回収した。得られた結晶中の各成分の含有率、カルシウム及びマンガンの除去率、並びに回収率を表3に示す。
【0035】
(実施例7)
80℃に加温された塩化鉄(II)水溶液A100gと35質量%塩酸50gをビーカーに入れ、62℃の混合液とした(HCl/FeClモル比1.50)。混合液をプログラム冷却装置に入れ、1℃/分の速度で20℃に達するまで冷却を行った。冷却後、得られたスラリーを遠心分離機にかけて結晶(塩化鉄(II)4水和物の結晶)を回収した。得られた結晶中の各成分の含有率、カルシウム及びマンガンの除去率、並びに回収率を表3に示す。
【0036】
(実施例8)
80℃に加温された塩化鉄(II)水溶液F100gと35質量%塩酸50gをビーカーに入れ、60℃の混合液とした(HCl/FeClモル比1.50)。混合液をプログラム冷却装置(水槽中の温度をプログラム制御できる装置)に入れ、0.05℃/分の速度で20℃に達するまで冷却を行った。冷却後、得られたスラリーを遠心分離機にかけて結晶(塩化鉄(II)4水和物の結晶)を回収した。得られた結晶中の各成分の含有率、カルシウム及びマンガンの除去率、並びに回収率を表3に示す。
【0037】
(比較例1)
80℃に加温された塩化鉄(II)水溶液A100gと35質量%塩酸50gをビーカーに入れ、62℃の混合液とした(HCl/FeClモル比1.50)。混合液を恒温槽に入れ、3℃/分の速度で20℃に達するまで冷却を行った。冷却後、得られたスラリーを遠心分離機にかけて結晶(塩化鉄(II)4水和物の結晶)を回収した。得られた結晶中の各成分の含有率、カルシウム及びマンガンの除去率、並びに回収率を表3に示す。
【0038】
(比較例2)
80℃に加温された塩化鉄(II)水溶液A100gと35質量%塩酸20gをビーカーに入れ、71℃の混合液とした(HCl/FeClモル比0.20)。混合液をプログラム冷却装置に入れ、0.05℃/分の速度で20℃に達するまで冷却を行った。冷却後、得られたスラリーを遠心分離機にかけて結晶(塩化鉄(II)4水和物の結晶)を回収した。得られた結晶中の各成分の含有率、カルシウム及びマンガンの除去率、並びに回収率を表3に示す。
【0039】
(比較例3)
90℃に加温された塩化鉄(II)水溶液D100gと35質量%塩酸50gをビーカーに入れ、69℃の混合液とした(HCl/FeClモル比0.21)。混合液を恒温槽に入れ、3℃/分の速度で20℃に達するまで冷却を行った。冷却後、得られたスラリーを遠心分離機にかけて結晶(塩化鉄(II)4水和物の結晶)を回収した。得られた結晶中の各成分の含有率、カルシウム及びマンガンの除去率、並びに回収率を表3に示す。
【0040】
(比較例4)
50℃に加温された塩化鉄(II)水溶液E100gと35質量%塩酸15gをビーカーに入れ、45℃の混合液とした(HCl/FeClモル比0.90)。混合液を恒温槽に入れ、3℃/分の速度で20℃に達するまで冷却を行った。しかしながら結晶は得られなかった。
【0041】
(比較例5)
50℃に加温された塩化鉄(II)水溶液E100gと35質量%塩酸65gをビーカーに入れ、40℃の混合液とした(HCl/FeClモル比4.00)。混合液を恒温槽に入れ、3℃/分の速度で20℃に達するまで冷却を行った。冷却後、得られたスラリーを遠心分離機にかけて結晶(塩化鉄(II)4水和物の結晶)を回収した。得られた結晶中の各成分の含有率、カルシウム及びマンガンの除去率、並びに回収率を表3に示す。
【0042】
(比較例6)
80℃に加温された塩化鉄(II)水溶液A100gと35質量%塩酸50gをビーカーに入れ、62℃の混合液とした(HCl/FeClモル比1.50)。混合液をプログラム冷却装置に入れ、0.005℃/分の速度で20℃に達するまで冷却を行った。冷却後、得られたスラリーを遠心分離機にかけて結晶(塩化鉄(II)4水和物の結晶)を回収した。得られた結晶中の各成分の含有率、カルシウム及びマンガンの除去率、並びに回収率を表3に示す。
【0043】
実施例1~8、比較例1~6のHCl/FeClモル比と冷却速度を下記表2にまとめた。
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
実施例1~8は、回収率が高く、かつカルシウムとマンガンの除去率が高いため、塩化鉄(II)の高純度化の効果が高かった。比較例1は結晶中のマンガンの除去率が低く、塩化鉄(II)の純度が低かった。比較例2は結晶中のカルシウムの除去率が低く、塩化鉄(II)の純度が低かった。比較例3は結晶中のカルシウムとマンガンの除去率が低く、塩化鉄(II)の純度が低かった。比較例5は結晶中のカルシウムとマンガンの除去率が高いが、これは使用した塩化鉄(II)水溶液中のカルシウムとマンガンの含有率が低かったためである。比較例5の回収率は低く、残液量も多くなるため実用に適したものではなかった。また、比較例6は冷却速度を実施例よりも遅くしたものであるが、回収率や、カルシウムとマンガンの除去率については実施例の結果以上の効果が得られないものであり、冷却に時間がかかってしまうため非効率的であった。