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特開2022-180263ロックボルト構造体及び地山補強構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180263
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】ロックボルト構造体及び地山補強構造
(51)【国際特許分類】
   E21D 20/00 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
E21D20/00 M
E21D20/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087280
(22)【出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】橋本 泰男
(72)【発明者】
【氏名】田中 祐介
(72)【発明者】
【氏名】井本 厚
(57)【要約】
【課題】亀裂の多い地山でも長尺に亘ってロックボルト構造体を確実に地山に定着させることができる。
【解決手段】前端が閉塞され、後端に注水口を有する被螺着部が設けられている鋼管膨張型ロックボルト2と、内部に軸方向に沿って注水導入空間が設けられている定着材定着用の中空ロックボルト3と、軸方向に連通し、前部に螺着部が形成されているジョイントスリーブ4とを備え、ジョイントスリーブ4の螺着部と鋼管膨張型ロックボルト2の被螺着部とが螺着されると共に、中空ロックボルト3の前部とジョイントスリーブ4の後部とが固定され、螺着部と被螺着部との螺着の螺入方向への押圧によって外部と液密に封止する環状シール材42がジョイントスリーブ4に設置されているロックボルト構造体。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端が閉塞され、後端に注水口を有する被螺着部が設けられている鋼管膨張型ロックボルトと、
内部に軸方向に沿って注水導入空間が設けられている定着材定着用の中空ロックボルトと、
軸方向に連通し、前部に螺着部が形成されているジョイントスリーブとを備え、
前記ジョイントスリーブの前記螺着部と前記鋼管膨張型ロックボルトの前記被螺着部とが螺着されると共に、前記中空ロックボルトの前部と前記ジョイントスリーブの後部とが固定され、
前記螺着部と前記被螺着部との螺着の螺入方向への押圧によって外部と液密に封止する環状シール材が前記ジョイントスリーブに設置されていることを特徴とするロックボルト構造体。
【請求項2】
前記鋼管膨張型ロックボルトの前記被螺着部が雄ねじ部、前記ジョイントスリーブの前記螺着部が雌ねじ部であり、
前記雌ねじ部の根元に前記雄ねじ部の後端部で押圧される前記環状シール材が設けられていることを特徴とする請求項1記載のロックボルト構造体。
【請求項3】
前記鋼管膨張型ロックボルトの前記被螺着部が雌ねじ部、前記ジョイントスリーブの前記螺着部が雄ねじ部であり、
前記雄ねじ部の根元に前記雌ねじ部の後端部で押圧される前記環状シール材が設けられていることを特徴とする請求項1記載のロックボルト構造体。
【請求項4】
前記ジョイントスリーブの前記螺着部の後側に注水管の前部が着脱自在に接続可能な接続部が内設され、
地山の穿孔の孔壁と前記中空ロックボルトの外表面及び前記ジョイントスリーブの外表面との間に定着材を注入可能な吐出孔が、前記ジョイントスリーブの前記接続部よりも後側の周壁、若しくは前記中空ロックボルトの周壁に形成されていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載のロックボルト構造体。
【請求項5】
前記中空ロックボルトの前部と前記ジョイントスリーブの後部との螺着の螺入方向への押圧によって外部と液密に封止する別の環状シール材が前記ジョイントスリーブに取り付けられていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載のロックボルト構造体。
【請求項6】
螺着される全ての螺着機構が左ねじ機構であることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のロックボルト構造体。
【請求項7】
前記中空ロックボルトがロープねじであることを特徴とする請求項1~6の何れかに記載のロックボルト構造体。
【請求項8】
請求項1~7の何れかに記載のロックボルト構造体を備える地山補強構造であって、
地山の穿孔の奥側から順に前記鋼管膨張型ロックボルト、前記ジョイントスリーブ、前記中空ロックボルトが配置され、
前記鋼管膨張型ロックボルトが膨張状態で前記穿孔の孔壁に摩擦定着され、
前記穿孔の孔壁と、前記中空ロックボルトの外表面及び前記ジョイントスリーブの外表面との間に、定着材が充填されて固化されていることを特徴とする地山補強構造。
【請求項9】
前端が閉塞され、後端に注水口を有する被螺着部が設けられている鋼管膨張型ロックボルトと、内部に軸方向に沿って注水導入空間が設けられている定着材定着用の中空ロックボルトとを連結するジョイントスリーブであって、
軸方向に連通し、前部に形成された螺着部が前記鋼管膨張型ロックボルトの前記被螺着部に螺着可能であり、
後部に前記中空ロックボルトの前部が固定可能であり、
前記螺着部と前記被螺着部との螺着の螺入方向への押圧によって外部と液密に封止する環状シール材が設置されていることを特徴とするジョイントスリーブ。
【請求項10】
前端が閉塞され、後端に注水口を有する被螺着部が設けられている鋼管膨張型ロックボルトに螺着される注水構造体であって、
定着材定着用の中空ロックボルトと、
前記中空ロックボルトの内部に軸方向に沿って挿入される注水管と、
軸方向に連通し、前部に前記被螺着部と螺着される螺着部が形成され、後部に前記中空ロックボルトの前部が固定されているジョイントスリーブとを備え、
前記ジョイントスリーブの前記螺着部の後側に内設された接続部に前記注水管の前部が着脱自在に接続され、
地山の穿孔の孔壁と前記中空ロックボルトの外表面及び前記ジョイントスリーブの外表面との間に定着材を注入可能な吐出孔が、前記ジョイントスリーブの前記接続部よりも後側の周壁、若しくは前記中空ロックボルトの周壁に形成されていると共に、
前記螺着部と前記被螺着部との螺着の螺入方向への押圧によって外部と液密に封止する環状シール材が前記ジョイントスリーブに設置されていることを特徴とする注水構造体。
【請求項11】
前端が閉塞され、後端に注水口を有する被螺着部が設けられている鋼管膨張型ロックボルトを非膨張状態で地山の穿孔に挿入する第1工程と、
軸方向に連通し、前部に螺着部が形成され、内部に軸方向に沿って注水導入空間が設けられている定着材定着用の中空ロックボルトの前部が後部に固定されているジョイントスリーブを用い、前記ジョイントスリーブの前記螺着部を前記鋼管膨張型ロックボルトの前記被螺着部に螺着し、前記ジョイントスリーブに設置されている環状シール材を螺入方向に押圧して前記環状シール材で外部と液密に封止すると共に、前記鋼管膨張型ロックボルトを前記穿孔の孔奥に移動する第2工程と、
前記注水導入空間と前記注水口を用いて前記鋼管膨張型ロックボルトの内部に加圧注水し、前記鋼管膨張型ロックボルトを膨張させて前記穿孔の孔壁に摩擦定着する第3工程と、
前記中空ロックボルトの外表面及び前記ジョイントスリーブの外表面と前記穿孔の孔壁との間に定着材を注入して充填し、前記定着材を固化させる第4工程を備えることを特徴とするロックボルト構造体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穿孔内に注入される定着材で中空ロックボルトが定着されるロックボルト構造体及びこのロックボルト構造体を備える地山補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、穿孔内に注入される定着材で中空ロックボルトが定着される地山補強構造が知られている。例えば特許文献1には、先端に削孔ビットを取り付けた中空ロックボルトを回転させて地山に穿孔すると共に、中空ロックボルトを継ぎ足して所定深さまで穿孔し、穿孔終了後に穿孔内の中空ロックボルトの中空部を介して中空ロックボルトと穿孔壁面との間にグラウトを注入し、グラウトを固化して中空ロックボルトを固着する構造が開示されている(特許文献1の段落[0002]、[0018]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-97260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、中空ロックボルトを継ぎ足して地山の深層まで長尺に打設し、定着材を注入して定着を行う場合、地山の深層まで定着材を注入するために流動性の高い定着材を用いる必要がある。しかしながら、亀裂の多い地山の場合には、その流動性の高さによって亀裂に定着材が流れ出ていってしまい、定着材が固化する前に逸走して中空ロックボルトと穿孔壁面との間から定着材が無くなってしまうという問題を生ずる。他方で、固練りモルタルのような流動性の低い定着材を用いると、穿孔奥まで定着材を注入することができなくなり、深層に位置する中空ロックボルトの地山への定着が難しくなるという別の問題を生ずる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、亀裂の多い地山でも長尺に亘って確実に地山に定着させることができるロックボルト構造体及びこのロックボルト構造体を備える地山補強構造を提供することを目的とする。なお、以下、本発明の説明をする便宜上、ロックボルトが穿孔に設置されたときにその穿孔の奥側に配置される側を「前」「先」として、「前端」「前部」「先端」等の呼称を、穿孔の口元側に配置される側を「後」として「後部」「後端」「後側」等の呼称を用いて、表現することがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロックボルト構造体は、前端が閉塞され、後端に注水口を有する被螺着部が設けられている鋼管膨張型ロックボルトと、内部に軸方向に沿って注水導入空間が設けられている定着材定着用の中空ロックボルトと、軸方向に連通し、前部に螺着部が形成されているジョイントスリーブとを備え、前記ジョイントスリーブの前記螺着部と前記鋼管膨張型ロックボルトの前記被螺着部とが螺着されると共に、前記中空ロックボルトの前部と前記ジョイントスリーブの後部とが固定され、前記螺着部と前記被螺着部との螺着の螺入方向への押圧によって外部と液密に封止する環状シール材が前記ジョイントスリーブに設置されていることを特徴とする。
これによれば、地山の深層まで長尺にロックボルト構造体を打設して定着する場合、穿孔の奥側では鋼管膨張型ロックボルトの膨張状態の摩擦定着で定着させることができ、流動性の高い定着材を用いて地山の深層、穿孔の奥側まで注入する必要が無くなる。即ち、亀裂の多い地山に長尺に亘ってロックボルト構造体を定着させる場合にも、流動性の高い定着材が固化する前に亀裂から逸走して無くなってしまうような問題を生ずることが無く、摩擦定着と定着材の定着の双方により、長尺に亘ってロックボルト構造体を確実に地山に定着させることができる。また、地山の穿孔の奥側では鋼管膨張型ロックボルトの膨張状態の摩擦定着で定着させることができることから、固練りモルタルのような流動性の低い定着材を用いることも可能であり、使用可能な定着材の多様性を高めることができる。また、中空ロックボルトの注水導入空間と鋼管膨張型ロックボルトの注水口を用いて鋼管膨張型ロックボルトの内部に加圧注水を行って膨張状態にする際に、ジョイントスリーブの環状シール材の液密封止により、ジョイントスリーブの螺着部と鋼管膨張型ロックボルトの被螺着部との間の隙間から注水された水が漏れることを確実に防止することができ、鋼管膨張型ロックボルトの内部への加圧注水、鋼管膨張型ロックボルトの膨張変形の確実性を高めることができる。
【0007】
本発明のロックボルト構造体は、前記鋼管膨張型ロックボルトの前記被螺着部が雄ねじ部、前記ジョイントスリーブの前記螺着部が雌ねじ部であり、前記雌ねじ部の根元に前記雄ねじ部の後端部で押圧される前記環状シール材が設けられていることを特徴とする。
これによれば、鋼管膨張型ロックボルトとジョイントスリーブを高い強度と安定性でねじ結合することができる。また、ジョイントスリーブの雌ねじ部の根元の環状シール材を鋼管膨張型ロックボルトの雄ねじ部の後端部で押圧し、環状シール材の液密封止を確実に行うことができる。また、ジョイントスリーブの雌ねじ部の根元に環状シール材を配置させた状態で輸送、現場搬入される為、環状シール材の破損が防止される。
【0008】
本発明のロックボルト構造体は、前記鋼管膨張型ロックボルトの前記被螺着部が雌ねじ部、前記ジョイントスリーブの前記螺着部が雄ねじ部であり、前記雄ねじ部の根元に前記雌ねじ部の後端部で押圧される前記環状シール材が設けられていることを特徴とする。
これによれば、鋼管膨張型ロックボルトとジョイントスリーブを高い強度と安定性でねじ結合することができる。また、ジョイントスリーブの雄ねじ部の根元の環状シール材を鋼管膨張型ロックボルトの雌ねじ部の後端部で押圧し、環状シール材の液密封止を確実に行うことができる。また、ジョイントスリーブの雄ねじ部の根元に環状シール材を配置させておく構成によって、鋼管膨張型ロックボルトと中空ロックボルトとの接続作業時に、環状シール材の脱落やズレを目視確認することが出来、施工の確実性を高めることが出来る。
【0009】
本発明のロックボルト構造体は、前記ジョイントスリーブの前記螺着部の後側に注水管の前部が着脱自在に接続可能な接続部が内設され、地山の穿孔の孔壁と前記中空ロックボルトの外表面及び前記ジョイントスリーブの外表面との間に定着材を注入可能な吐出孔が、前記ジョイントスリーブの前記接続部よりも後側の周壁、若しくは前記中空ロックボルトの周壁に形成されていることを特徴とする。
これによれば、ジョイントスリーブの螺着部の後側まで注水管を導入して接続することが可能となり、注水管による鋼管膨張型ロックボルトの内部への加圧注水、鋼管膨張型ロックボルトの膨張変形の確実性をより一層高めることができる。また、地山の穿孔の孔壁と外表面との間に定着材を注入可能な吐出孔をジョイントスリーブ若しくは穿孔の口元側に配置される中空ロックボルトに形成することにより、穿孔の奥側への定着材の逸走を抑制することができる。また、ジョイントスリーブの周壁に定着材を注入可能な吐出孔を形成する場合には、鋼管膨張型ロックボルトのすぐ後まで定着材をより確実に充填することが可能となる。
【0010】
本発明のロックボルト構造体は、前記中空ロックボルトの前部と前記ジョイントスリーブの後部との螺着の螺入方向への押圧によって外部と液密に封止する別の環状シール材が前記ジョイントスリーブに取り付けられていることを特徴とする。
これによれば、鋼管膨張型ロックボルトとジョイントスリーブとの間の隙間を環状シール材で液密に封止し、中空ロックボルトとジョイントスリーブとの間の隙間を別の環状シール材で液密に封止することが可能となり、中空ロックボルトの注水導入空間自体を鋼管膨張型ロックボルトの内部に加圧注水を行う注水路として使用することができる。また、注水管を用いずに加圧注水を行うことが可能になることから、注水管の挿入及び撤去作業を無くし、施工工程を効率化することができる。
【0011】
本発明のロックボルト構造体は、螺着される全ての螺着機構が左ねじ機構であることを特徴とする。
これによれば、穿孔口元の外に出ている中空ロックボルトを左ねじの締付方向に回転するだけで、環状シール材等の液密封止を確実に行うことができる。即ち、中空ロックボルトの元が削孔ロッドである場合、削孔機械は左回転が正転のため左ねじの中空ロックボルトとなるが、これに合わせるように全ての螺着機構を左ねじ機構とすれば、中空ロックボルトを左ねじの締付方向に回転することによって鋼管膨張型ロックボルトとジョイントスリーブの螺着を緩ませることなく一層締め付けて環状シール材等が螺入方向に押圧されるので、高い液密性の封止状態を簡単に得ることができる。
【0012】
本発明のロックボルト構造体は、前記中空ロックボルトがロープねじであることを特徴とする。
これによれば、穿孔内に中空ロックボルトをスムーズに挿入することができると共に、中空ロックボルトへの定着材の付着性を高めることができ、中空ロックボルトやロックボルト構造体の定着材による穿孔孔壁への定着力を高めることができる。
【0013】
本発明の地山補強構造は、本発明のロックボルト構造体を備える地山補強構造であって、地山の穿孔の奥側から順に前記鋼管膨張型ロックボルト、前記ジョイントスリーブ、前記中空ロックボルトが配置され、前記鋼管膨張型ロックボルトが膨張状態で前記穿孔の孔壁に摩擦定着され、前記穿孔の孔壁と、前記中空ロックボルトの外表面及び前記ジョイントスリーブの外表面との間に、定着材が充填されて固化されていることを特徴とする。
これによれば、穿孔の奥側における膨張状態の鋼管膨張型ロックボルトの摩擦定着と、穿孔の口元側における穿孔の孔壁と中空ロックボルトの外表面及びジョイントスリーブの外表面との間における定着材の定着の双方により、長尺に亘ってロックボルト構造体を確実に地山に定着させ、地山を補強することができる。
【0014】
本発明のジョイントスリーブは、前端が閉塞され、後端に注水口を有する被螺着部が設けられている鋼管膨張型ロックボルトと、内部に軸方向に沿って注水導入空間が設けられている定着材定着用の中空ロックボルトとを連結するジョイントスリーブであって、軸方向に連通し、前部に形成された螺着部が前記鋼管膨張型ロックボルトの前記被螺着部に螺着可能であり、後部に前記中空ロックボルトの前部が固定可能であり、前記螺着部と前記被螺着部との螺着の螺入方向への押圧によって外部と液密に封止する環状シール材が設置されていることを特徴とする。
これによれば、鋼管膨張型ロックボルトと中空ロックボルトとジョイントスリーブで構成されるロックボルト構造体を地山の深層まで長尺に打設して定着する場合、ジョイントスリーブによる連結で穿孔の奥側では鋼管膨張型ロックボルトの膨張状態の摩擦定着で定着させることができ、流動性の高い定着材を用いて地山の深層、穿孔の奥側まで注入する必要が無くなる。即ち、亀裂の多い地山に長尺に亘ってロックボルト構造体を定着させる場合にも、流動性の高い定着材が固化する前に亀裂から逸走して無くなってしまうような問題を生ずることが無く、摩擦定着と定着材の定着の双方により、長尺に亘ってロックボルト構造体を確実に地山に定着させることができる。また、地山の穿孔の奥側では鋼管膨張型ロックボルトの膨張状態の摩擦定着で定着させることができることから、固練りモルタルのような流動性の低い定着材を用いることも可能であり、使用可能な定着材の多様性を高めることができる。また、中空ロックボルトの注水導入空間と鋼管膨張型ロックボルトの注水口を用いて鋼管膨張型ロックボルトの内部に加圧注水を行って膨張状態にする際に、ジョイントスリーブの環状シール材の液密封止により、ジョイントスリーブの螺着部と鋼管膨張型ロックボルトの被螺着部との間の隙間から注水された水が漏れることを確実に防止することができ、鋼管膨張型ロックボルトの内部への加圧注水、鋼管膨張型ロックボルトの膨張変形の確実性を高めることができる。
【0015】
本発明の注水構造体は、前端が閉塞され、後端に注水口を有する被螺着部が設けられている鋼管膨張型ロックボルトに螺着される注水構造体であって、定着材定着用の中空ロックボルトと、前記中空ロックボルトの内部に軸方向に沿って挿入される注水管と、軸方向に連通し、前部に前記被螺着部と螺着される螺着部が形成され、後部に前記中空ロックボルトの前部が固定されているジョイントスリーブとを備え、前記ジョイントスリーブの前記螺着部の後側に内設された接続部に前記注水管の前部が着脱自在に接続され、地山の穿孔の孔壁と前記中空ロックボルトの外表面及び前記ジョイントスリーブの外表面との間に定着材を注入可能な吐出孔が、前記ジョイントスリーブの前記接続部よりも後側の周壁、若しくは前記中空ロックボルトの周壁に形成されていると共に、前記螺着部と前記被螺着部との螺着の螺入方向への押圧によって外部と液密に封止する環状シール材が前記ジョイントスリーブに設置されていることを特徴とする。
これによれば、鋼管膨張型ロックボルトと中空ロックボルトとジョイントスリーブで構成されるロックボルト構造体を地山の深層まで長尺に打設して定着する場合、ジョイントスリーブによる連結で穿孔の奥側では鋼管膨張型ロックボルトの膨張状態の摩擦定着で定着させることができ、流動性の高い定着材を用いて地山の深層、穿孔の奥側まで注入する必要が無くなる。即ち、亀裂の多い地山に長尺に亘ってロックボルト構造体を定着させる場合にも、流動性の高い定着材が固化する前に亀裂から逸走して無くなってしまうような問題を生ずることが無く、摩擦定着と定着材の定着の双方により、長尺に亘ってロックボルト構造体を確実に地山に定着させることができる。また、地山の穿孔の奥側では鋼管膨張型ロックボルトの膨張状態の摩擦定着で定着させることができることから、固練りモルタルのような流動性の低い定着材を用いることも可能であり、使用可能な定着材の多様性を高めることができる。また、中空ロックボルトの注水導入空間と鋼管膨張型ロックボルトの注水口を用いて鋼管膨張型ロックボルトの内部に加圧注水を行って膨張状態にする際に、ジョイントスリーブの環状シール材の液密封止により、ジョイントスリーブの螺着部と鋼管膨張型ロックボルトの被螺着部との間の隙間から注水された水が漏れることを確実に防止することができ、鋼管膨張型ロックボルトの内部への加圧注水、鋼管膨張型ロックボルトの膨張変形の確実性を高めることができる。また、地山の穿孔の孔壁と外表面との間に定着材を注入可能な吐出孔をジョイントスリーブ若しくは穿孔の口元側に配置される中空ロックボルトに形成することにより、穿孔の奥側への定着材の逸走を抑制することができる。また、ジョイントスリーブに注水管の前部が接続された状態の注水構造体を用いることにより、鋼管膨張型ロックボルトを膨張させる際の加圧注水作業を容易化することができる。
【0016】
本発明のロックボルト構造体の施工方法は、前端が閉塞され、後端に注水口を有する被螺着部が設けられている鋼管膨張型ロックボルトを非膨張状態で地山の穿孔に挿入する第1工程と、軸方向に連通し、前部に螺着部が形成され、内部に軸方向に沿って注水導入空間が設けられている定着材定着用の中空ロックボルトの前部が後部に固定されているジョイントスリーブを用い、前記ジョイントスリーブの前記螺着部を前記鋼管膨張型ロックボルトの前記被螺着部に螺着し、前記ジョイントスリーブに設置されている環状シール材を螺入方向に押圧して前記環状シール材で外部と液密に封止すると共に、前記鋼管膨張型ロックボルトを前記穿孔の孔奥に移動する第2工程と、前記注水導入空間と前記注水口を用いて前記鋼管膨張型ロックボルトの内部に加圧注水し、前記鋼管膨張型ロックボルトを膨張させて前記穿孔の孔壁に摩擦定着する第3工程と、前記中空ロックボルトの外表面及び前記ジョイントスリーブの外表面と前記穿孔の孔壁との間に定着材を注入して充填し、前記定着材を固化させる第4工程を備えることを特徴とする。
これによれば、鋼管膨張型ロックボルトと中空ロックボルトとジョイントスリーブで構成されるロックボルト構造体を地山の深層まで長尺に打設して定着する場合、ジョイントスリーブによる連結で穿孔の奥側では鋼管膨張型ロックボルトの膨張状態の摩擦定着で定着させることができ、流動性の高い定着材を用いて地山の深層、穿孔の奥側まで注入する必要が無くなる。即ち、亀裂の多い地山に長尺に亘ってロックボルト構造体を定着させる場合にも、流動性の高い定着材が固化する前に亀裂から逸走して無くなってしまうような問題を生ずることが無く、摩擦定着と定着材の定着の双方により、長尺に亘ってロックボルト構造体を確実に地山に定着させることができる。また、地山の穿孔の奥側では鋼管膨張型ロックボルトの膨張状態の摩擦定着で定着させることができることから、固練りモルタルのような流動性の低い定着材を用いることも可能であり、使用可能な定着材の多様性を高めることができる。また、中空ロックボルトの注水導入空間と鋼管膨張型ロックボルトの注水口を用いて鋼管膨張型ロックボルトの内部に加圧注水を行って膨張状態にする際に、ジョイントスリーブの環状シール材の液密封止により、ジョイントスリーブの螺着部と鋼管膨張型ロックボルトの被螺着部との間の隙間から注水された水が漏れることを確実に防止することができ、鋼管膨張型ロックボルトの内部への加圧注水、鋼管膨張型ロックボルトの膨張変形の確実性を高めることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ロックボルト構造体を亀裂の多い地山でも長尺に亘って確実に地山に定着させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による第1実施形態のロックボルト構造体と注水管の分解斜視図。
図2】第1実施形態のロックボルト構造体と接続される注水管を示す部分縦断面図。
図3】第1実施形態のロックボルト構造体におけるジョイントスリーブの断面斜視図。
図4】(a)は第1実施形態のロックボルト構造体に注水管が接続された状態の正面図、(b)はその縦断面図。
図5】(a)は第1実施形態のロックボルト構造体の膨張状態の正面図、(b)はその縦断面図。
図6】(a)は第1実施形態におけるジョイントスリーブに中空ロックボルトと注水管が接続された注水構造体と鋼管膨張型ロックボルトの螺着を説明する断面説明図、(b)は同図(a)の注水構造体から鋼管膨張型ロックボルトの内部への加圧注水を説明する断面説明図、(c)は注水管が抜き去られて膨張状態となっている第1実施形態のロックボルト構造体の断面説明図。
図7】(a)~(d)は第1実施形態のロックボルト構造体の施工工程を説明する工程説明図。
図8】第1実施形態のロックボルト構造体が打設されたトンネルの横断説明図。
図9】本発明による第2実施形態のロックボルト構造体と注水管の分解斜視図。
図10】第2実施形態のロックボルト構造体におけるジョイントスリーブの断面斜視図。
図11】(a)は第2実施形態におけるジョイントスリーブに中空ロックボルトと注水管が接続された注水構造体と鋼管膨張型ロックボルトの螺着を説明する断面説明図、(b)は同図(a)の注水構造体から鋼管膨張型ロックボルトの内部への加圧注水を説明する断面説明図、(c)は注水管が抜き去られて膨張状態となっている第2実施形態のロックボルト構造体の断面説明図。
図12】本発明による第3実施形態のロックボルト構造体と注水管の分解斜視図。
図13】第3実施形態のロックボルト構造体におけるジョイントスリーブの断面斜視図。
図14】(a)は第3実施形態における中空ロックボルトが接続されたジョイントスリーブと鋼管膨張型ロックボルトの螺着を説明する断面説明図、(b)は第3実施形態における鋼管膨張型ロックボルトの内部への加圧注水を説明する断面説明図、(c)は膨張状態の第3実施形態のロックボルト構造体の断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態のロックボルト構造体〕
本発明による第1実施形態のロックボルト構造体1は、図1図6に示すように、内部への加圧注水によって膨張する鋼管膨張型ロックボルト2と、定着材定着用の中空ロックボルト3と、鋼管膨張型ロックボルト2と中空ロックボルト3を連結するジョイントスリーブ4とから構成される。
【0020】
鋼管膨張型ロックボルト2は、素材鋼管を全長にわたって外側から押し潰して丸めることによって形成された基体21が断面視略C字状に折り畳まれた非膨張状態から内部への加圧注水によって略円筒状の膨張状態になるものであり(図5参照)、基体21の前端部と後端部には、それぞれ基体21の膨らみを規制する前端スリーブ22と後端スリーブ23が外周に嵌め込まれて固定されている。
【0021】
前端スリーブ22の前端付近の内周側には鋼管膨張型ロックボルト2の前端を閉塞する溶接部24が設けられている。溶接部24は、鋼管膨張型ロックボルト2の基体21の内部の空間を閉塞し、且つ基体21と前端スリーブ22を固定するように、前端スリーブ22の内周で肉盛り溶接されている。なお、図示例においては鋼管膨張型ロックボルト2の基体21の内部の空間を閉塞するために溶接を用いたが、溶接部24に換えて加圧注水に耐え得るキャップで閉塞しておいても構わない。この場合、キャップは、鋼管膨張型ロックボルト2を加圧注水で膨張状態にした後に、更に水圧を増した加圧注水を行うことで解放される強度で固定されたキャップとしても良好であり、これにより、鋼管膨張型ロックボルト2の膨張後における水圧を増した加圧注水でキャップを解放し、地山100の穿孔101が横向きなど上向きや斜め上向きでない場合にも穿孔101の方向に拘わらずに、鋼管膨張型ロックボルト2の内部の水抜きが可能となる。
【0022】
後端スリーブ23の後側には被螺着部に相当する中空の雄ねじ部25が配置されて後端スリーブ23に固定されており、鋼管膨張型ロックボルト2の後端に雄ねじ部25が設けられる構成となっている。被螺着部の注水口に相当する雄ねじ部25の中空部251は、鋼管膨張型ロックボルト2の基体21の内部と連通し、中空部251を介して鋼管膨張型ロックボルト2の基体21の内部に加圧注水することが可能となっている。また、雄ねじ部25は締付方向が左回りの左ねじ機構を構成するようになっている。
【0023】
定着材10で定着される中空ロックボルト3は、周壁31にロープ雄ねじ部32が形成されたロープねじ式の中空ロックボルト3であり、ロープ雄ねじ部32は締付方向が左回りの左ねじ機構を構成するようになっている。中空ロックボルト3には、内部に軸方向に沿って注水導入空間に相当する中空部33が設けられており、第1実施形態における中空部33で構成される注水導入空間には、中空ロックボルトの軸方向に沿って注水管5が挿入可能になっている。尚、中空ロックボルト3の周壁31には、必要に応じて、地山100の穿孔101の孔壁102と、中空ロックボルト3の外表面やジョイントスリーブ4の外表面との間に、定着材10を注入可能な吐出孔を形成しても良好である。
【0024】
ジョイントスリーブ4は、軸方向に連通して構成される略筒状であり、前部には螺着部に相当する雌ねじ部41が形成されている。雌ねじ部41は鋼管膨張型ロックボルト2の後端の被螺着部に相当する雄ねじ部25に螺合可能になっており、左ねじ機構を構成している。また、ジョイントスリーブ4には、ジョイントスリーブ4の螺着部と鋼管膨張型ロックボルト2の被螺着部との螺着の螺入方向への押圧によって外部と液密に封止する環状シール材42が設置されており、第1実施形態では、ジョイントスリーブ4の雌ねじ部41の根元に、螺入された鋼管膨張型ロックボルト2の雄ねじ部25の後端部で押圧される環状シール材42が内装されて設けられている。環状シール材42には、螺入される鋼管膨張型ロックボルト2の雄ねじ部25の後端面が押圧されるように当接し、この当接による液密封止で加圧注水時に雄ねじ部25と雌ねじ部41との螺合部分から外部に漏水することが防止される。
【0025】
ジョイントスリーブ4の後部には、中空ロックボルト3のロープ雄ねじ部32と螺合可能なロープ雌ねじ部43が形成されており、ロープ雌ねじ部43は左ねじ機構を構成している。本例では、中空ロックボルト3の前部或いは前端部のロープ雄ねじ部32がジョイントスリーブ4の後部のロープ雌ねじ部43に螺着されることで、中空ロックボルト3の前部或いは前端部がジョイントスリーブ4の後部に固定される。
【0026】
ジョイントスリーブ4の螺着部に相当する雌ねじ部41の後側には、注水管5の前部が着脱自在に接続可能な接続部が内設されており、第1実施形態では、ロープ雌ねじ部43よりも小径の接続部に相当する雌ねじ部44が形成され、雌ねじ部44は環状シール材42のすぐ後ろに位置して設けられている。そして、第1実施形態で用いられる注水管5の前部或いは前端部には雄ねじ部51が形成されており、中空ロックボルト3の中空部33に挿入された注水管5の雄ねじ51部が雌ねじ部44に螺着可能になっている。雌ねじ部44に螺着された注水管5の前端面は環状シール材42に押圧されるように当接し、この当接による液密封止で加圧注水時に雄ねじ部51と雌ねじ部44との螺合部分から外部に漏水することが防止される。尚、注水管5の雄ねじ部51と接続部に相当する雌ねじ部44も左ねじ機構を構成しており、ロックボルト構造体1で螺着される全ての螺着機構は左ねじ機構になっている。
【0027】
ジョイントスリーブ4のロープ雌ねじ部43と接続部に相当する雌ねじ部44との間にはねじ溝のない穴部45が設けられ、穴部45はロープ雌ねじ部43よりも小径で且つ雌ねじ部44よりも大径の円柱形の空間になっている。また、ジョイントスリーブ4の接続部に相当する雌ねじ部44よりも後側の周壁46には、穴部45とジョイントスリーブ4の外部とを連通するように吐出孔47が設けられている。この吐出孔47は、地山100の穿孔101の孔壁102と、中空ロックボルト3の外表面やジョイントスリーブ4の外表面との間に、定着材10を注入可能に形成されている。
【0028】
第1実施形態のロックボルト構造体1が地山100に打設される前の段階では、鋼管膨張型ロックボルト2を有しない状態で、中空ロックボルト3と、ジョイントスリーブ4と、注水管5が一体化された注水構造体を構成しておくと好適である(図6(a)、(b)、図7(b)参照)。この注水構造体では、ロープ雌ねじ部43へのロープ雄ねじ部32の螺着によりジョイントスリーブ4の後部に中空ロックボルト3の前部が固定されていると共に、中空ロックボルト3の内部に軸方向に沿って挿入された注水管5の雄ねじ部51がジョイントスリーブ4の接続部に相当する雌ねじ部44に着脱自在に螺合して接続され、注水管5の前端面が環状シール材42に押圧されるように当接する。
【0029】
そして、第1実施形態のロックボルト構造体1を地山100に打設して地山補強構造を構築する際には、例えば図7に示すように、地山100に斜め上向き等の所要方向に形成した穿孔101に、非膨張状態の鋼管膨張型ロックボルト2を挿入する(図7(a)参照)。そして、中空ロックボルト3と、ジョイントスリーブ4と、注水管5が一体化された注水構造体を用い、この注水構造体のジョイントスリーブ4の螺着部に相当する雌ねじ部41を鋼管膨張型ロックボルト2の被螺着部に相当する雄ねじ部25に螺着して、鋼管膨張型ロックボルト2を穿孔101の孔奥に移動する(図7(b)、図6(a)、(b)参照)。
【0030】
この際、ジョイントスリーブ4の雌ねじ部41を鋼管膨張型ロックボルト2の雄ねじ部25に螺入することにより、ジョイントスリーブ4の環状シール材42が鋼管膨張型ロックボルト2の雄ねじ部25の後端面に螺入方向に押圧され、雄ねじ部25と雌ねじ部41との螺合部分から外部に水漏れしないように液密で封止される。この封止状態で、注水管5と、雄ねじ部25の注水口に相当する中空部251と、鋼管膨張型ロックボルト2の内部とが連通される。
【0031】
その後、注水構造体の注水導入空間に挿入された注水管5から加圧注水を行い、雄ねじ部25の注水口に相当する中空部251を介して鋼管膨張型ロックボルト2の内部に水Wを加圧注水することにより、鋼管膨張型ロックボルト2を径方向に膨張させ、基体21を略円筒状の膨張状態にして鋼管膨張型ロックボルト2を穿孔101の孔壁102に摩擦定着する。鋼管膨張型ロックボルト2を膨張させて摩擦定着を完了した後には、注水管5の雄ねじ部51とジョイントスリーブ4の雌ねじ部44との螺合を外して注水管5を取り外し、注水管5を中空ロックボルト3の内部から抜き去る(図7(c)、図6(b)、(c)、図5参照)。なお、取り外した注水管5は再利用する。
【0032】
そして、中空ロックボルト3の後端からモルタル、ウレタン或いはシリカレジン等の定着材10を注入し、中空ロックボルト3の内部を定着材10の流路として利用して、ジョイントスリーブ4の吐出孔47或いは中空ロックボルト3の先端近傍の吐出孔を介して、中空ロックボルト3の外表面及びジョイントスリーブ4の外表面と穿孔101の孔壁102との間に定着材10を注入して充填し、定着材10を固化させて地山補強構造が構築される(図7(d)、図6(c)参照)。中空ロックボルト3の後端部には、定着材10の注入前或いは注入後にワッシャー103やナット104が取り付けられる。
【0033】
このように構築された地山補強構造では、地山100の穿孔101の奥側から順に鋼管膨張型ロックボルト2、ジョイントスリーブ4、中空ロックボルト3が配置され、穿孔101の奥側の鋼管膨張型ロックボルト2が膨張状態で穿孔101の孔壁102に摩擦定着されると共に、穿孔101の口元側では、穿孔101の孔壁102と中空ロックボルト3の外表面及びジョイントスリーブ4の外表面との間に充填されて固化された定着材10で中空ロックボルト3及びジョイントスリーブ4が定着される。
【0034】
図8はトンネルTの地山100に、複数のロックボルト構造体1を放射状に打設して構築した地山補強構造の例である。この地山補強構造の例では、放射状に打設された各ロックボルト構造体1において、膨張状態の鋼管膨張型ロックボルト2が膨張状態で穿孔孔壁に摩擦定着され、中空ロックボルト3及びジョイントスリーブ4が固化された定着材10で定着されている。
【0035】
第1実施形態によれば、地山100の深層まで長尺にロックボルト構造体1を打設して定着する場合、穿孔101の奥側では鋼管膨張型ロックボルト2の膨張状態の摩擦定着で定着させることができ、流動性の高い定着材を用いて地山100の深層、穿孔101の奥側まで注入する必要が無くなる。即ち、亀裂の多い地山100に長尺に亘ってロックボルト構造体を定着させる場合にも、流動性の高い定着材が固化する前に亀裂から逸走して無くなってしまうような問題を生ずることが無く、摩擦定着と定着材の定着の双方により、長尺に亘ってロックボルト構造体1を確実に地山100に定着させることができる。そして、穿孔101の奥側における膨張状態の鋼管膨張型ロックボルト2の摩擦定着と、穿孔101の口元側における穿孔101の孔壁102と中空ロックボルト3の外表面及びジョイントスリーブ4の外表面との間における定着材10の定着の双方により、長尺に亘ってロックボルト構造体1を確実に地山100に定着させ、地山100を補強することができる。
【0036】
また、地山100の穿孔101の奥側では鋼管膨張型ロックボルト2の膨張状態の摩擦定着で定着させることができることから、固練りモルタルのような流動性の低い定着材を用いることも可能であり、使用可能な定着材10の多様性を高めることができる。また、中空ロックボルト3の注水導入空間と鋼管膨張型ロックボルト2の注水口を用いて鋼管膨張型ロックボルト2の内部に加圧注水を行って膨張状態にする際に、ジョイントスリーブ4の環状シール材42の液密封止により、ジョイントスリーブ1の螺着部と鋼管膨張型ロックボルト2の被螺着部との間の隙間から注水された水が漏れることを確実に防止することができ、鋼管膨張型ロックボルト2の内部への加圧注水、鋼管膨張型ロックボルト2の膨張変形の確実性を高めることができる。
【0037】
また、鋼管膨張型ロックボルト2の被螺着部を雄ねじ部25、ジョイントスリーブ4の螺着部を雌ねじ部41とすることにより、鋼管膨張型ロックボルト2とジョイントスリーブ4を高い強度と安定性でねじ結合することができる。また、ジョイントスリーブ4の雌ねじ部41の根元の環状シール材42を鋼管膨張型ロックボルト2の雄ねじ部25の後端部で押圧し、環状シール材42の液密封止を確実に行うことができる。
【0038】
また、ジョイントスリーブ4の螺着部の後側に注水管5の前部が着脱自在に接続可能な接続部に相当する雌ねじ部44を内設することにより、ジョイントスリーブ4の螺着部の後側まで注水管5を導入して接続することが可能となり、注水管5による鋼管膨張型ロックボルト2の内部への加圧注水、鋼管膨張型ロックボルト2の膨張変形の確実性をより一層高めることができる。また、地山100の穿孔101の孔壁102と外表面との間に定着材10を注入可能な吐出孔47等をジョイントスリーブ4若しくは穿孔101の口元側に配置される中空ロックボルト3に形成することにより、穿孔101の奥側への定着材10の逸走を抑制することができる。特に、ジョイントスリーブ4の周壁46に定着材10を注入可能な吐出孔47を形成する場合には、鋼管膨張型ロックボルト2のすぐ後まで定着材10をより確実に充填することが可能となる。
【0039】
また、注水管5に対する螺着機構を含むロックボルト構造体1における全ての螺着機構を左ねじ機構とすることにより、穿孔口元の外に出ている中空ロックボルト3を左ねじの締付方向に回転するだけで、環状シール材42の液密封止を確実に行うことができる。即ち、中空ロックボルト3の元が削孔ロッドである場合、削孔機械は左回転が正転のため左ねじの中空ロックボルト3となるが、これに合わせるように全ての螺着機構を左ねじ機構とすれば、中空ロックボルト3を左ねじの締付方向に回転することによって鋼管膨張型ロックボルト2とジョイントスリーブ4の螺着を緩ませることなく一層締め付けて環状シール材42が螺入方向に押圧されるので、高い液密性の封止状態を簡単に得ることができる。
【0040】
また、中空ロックボルト3をロープねじとすることにより、穿孔101内に中空ロックボルト3をスムーズに挿入することができると共に、中空ロックボルト3への定着材10の付着性を高めることができ、中空ロックボルト3やロックボルト構造体1の定着材10による穿孔孔壁102への定着力を高めることができる。また、ジョイントスリーブ4に注水管5の前部が接続された状態の注水構造体を用いることにより、鋼管膨張型ロックボルト3を膨張させる際の加圧注水作業を容易化することができる。
【0041】
〔第2実施形態のロックボルト構造体〕
本発明による第2実施形態のロックボルト構造体1aは、図9図11に示すように、内部への加圧注水によって膨張する鋼管膨張型ロックボルト2aと、第1実施形態と同一の定着材定着用の中空ロックボルト3と、鋼管膨張型ロックボルト2aと中空ロックボルト3を連結するジョイントスリーブ4aとから構成される。尚、中空ロックボルト3の周壁31には、必要に応じて、第1実施形態の変形例と同様に定着材10を注入可能な吐出孔を形成してもよい。
【0042】
鋼管膨張型ロックボルト2aは、第1実施形態と同一の基体21、前端スリーブ22、後端スリーブ23、溶接部24で構成されると共に、後端スリーブ23の後側に被螺着部に相当する中空の雌ねじ部26aが配置されて後端スリーブ23に固定されており、鋼管膨張型ロックボルト2aの後端に雌ねじ部26aが設けられる構成となっている。尚、第1実施形態の変形例と同様に、溶接部24に換えて加圧注水に耐え得るキャップで鋼管膨張型ロックボルト2aの前端を閉塞してもよい。被螺着部の注水口に相当する雌ねじ部26aの注水穴261aは、鋼管膨張型ロックボルト2aの基体21の内部と連通し、注水穴261aを介して鋼管膨張型ロックボルト2の基体21の内部に加圧注水することが可能となっている。また、雌ねじ部26aは締付方向が左回りの左ねじ機構を構成するようになっている。
【0043】
ジョイントスリーブ4aは、軸方向に連通して構成される略筒状であり、前部には螺着部に相当する雄ねじ部48aが形成され、雄ねじ部48aの内部は軸方向に連通する中空部481aになっている。雄ねじ部48aは鋼管膨張型ロックボルト2aの後端の被螺着部に相当する雌ねじ部26aに螺合可能になっており、左ねじ機構を構成している。
【0044】
ジョイントスリーブ4aには、ジョイントスリーブ4aの螺着部と鋼管膨張型ロックボルト2aの被螺着部との螺着の螺入方向への押圧によって外部と液密に封止する環状シール材42aが設置されており、第2実施形態では、ジョイントスリーブ4aの雄ねじ部48aの根元に、螺入された鋼管膨張型ロックボルト2aの雌ねじ部26aの後端部で押圧される環状シール材42aが外嵌されるように設けられている。環状シール材42aには、螺入される鋼管膨張型ロックボルト2aの雌ねじ部26aの後端部が押圧されるように当接し、この当接による液密封止で加圧注水時に雌ねじ部26aと雄ねじ部48aとの螺合部分から外部に漏水することが防止される。
【0045】
ジョイントスリーブ4aの後部には、第1実施形態のジョイントスリーブ4と同様に、中空ロックボルト3のロープ雄ねじ部32と螺合可能なロープ雌ねじ部43が形成されている。ジョイントスリーブ4aの螺着部に相当する雄ねじ部48aの後側には、注水管5の前部が着脱自在に接続可能な接続部として、ロープ雌ねじ部43よりも小径の接続部に相当する雌ねじ部44aが形成され、雌ねじ部44aはジョイントスリーブ4の軸方向において環状シール材42aのすぐ後ろに位置して設けられ、雄ねじ部48aの中空部481aと連通している。雌ねじ部44aには、第1実施形態と同様の注水管5の雄ねじ部51が螺着される。尚、注水管5の雄ねじ部51と接続部に相当する雌ねじ部44aも左ねじ機構を構成しており、ロックボルト構造体1aで螺着される全ての螺着機構は左ねじ機構になっている。
【0046】
ジョイントスリーブ4aのロープ雌ねじ部43と接続部に相当する雌ねじ部44aとの間には第1実施形態と同様の穴部45が設けられており、又、ジョイントスリーブ4aの接続部に相当する雌ねじ部44aよりも後側の周壁46には、穴部45とジョイントスリーブ4の外部とを連通するように第1実施形態と同様の吐出孔47が設けられている。
【0047】
第2実施形態のロックボルト構造体1aが地山100に打設される前の段階では、第1実施形態と同様、鋼管膨張型ロックボルト2aを有しない状態で、中空ロックボルト3と、ジョイントスリーブ4aと、注水管5が一体化された注水構造体を構成しておくと好適である(図11(a)、(b)、図7参照)。この注水構造体では、ロープ雌ねじ部43へのロープ雄ねじ部32の螺着によりジョイントスリーブ4aの後部に中空ロックボルト3の前部が固定されていると共に、中空ロックボルト3の内部に軸方向に沿って挿入された注水管5の雄ねじ部51がジョイントスリーブ4aの接続部に相当する雌ねじ部44aに着脱自在に螺合して接続される。
【0048】
そして、第2実施形態のロックボルト構造体1を地山100に打設して地山補強構造を構築する際には、地山100に斜め上向き等の所要方向に形成した穿孔101に、非膨張状態の鋼管膨張型ロックボルト2を挿入し、中空ロックボルト3と、ジョイントスリーブ4aと、注水管5が一体化された注水構造体を用い、この注水構造体のジョイントスリーブ4aの螺着部に相当する雄ねじ部48aを鋼管膨張型ロックボルト2aの被螺着部に相当する雌ねじ部26aに螺着して、鋼管膨張型ロックボルト2を穿孔101の孔奥に移動する(図7(b)、図11(a)、(b)参照)。
【0049】
この際、ジョイントスリーブ4aの雄ねじ部48aを鋼管膨張型ロックボルト2aの雌ねじ部26aに螺入することにより、ジョイントスリーブ4aの環状シール材42aが鋼管膨張型ロックボルト2aの雌ねじ部26aの後端部に螺入方向に押圧され、雌ねじ部26aと雄ねじ部48aとの螺合部分から外部に水漏れしないように液密で封止される。この封止状態で、注水管5と、雄ねじ部48aの中空部481aと、雌ねじ部26aの注水穴261aと、鋼管膨張型ロックボルト2の内部とが連通される。
【0050】
その後、第1実施形態と同様に、注水構造体の注水導入空間に挿入された注水管5から水Wの加圧注水を行い、雌ねじ部26aの注水穴261aを介して鋼管膨張型ロックボルト2aの内部に加圧注水することにより、鋼管膨張型ロックボルト2aを径方向に膨張させ、基体21を略円筒状の膨張状態にして鋼管膨張型ロックボルト2を穿孔101の孔壁102に摩擦定着する。鋼管膨張型ロックボルト2aを膨張させて摩擦定着を完了した後には、注水管5の雄ねじ部51とジョイントスリーブ4aの雌ねじ部44aとの螺合を外して注水管5を取り外し、注水管5を中空ロックボルト3の内部から抜き去る(図7(c)、図11(b)、(c)参照)。なお、取り外した注水管5は再利用する。
【0051】
そして、第1実施形態と同様に、中空ロックボルト3の後端からモルタル、ウレタン或いはシリカレジン等の定着材10を注入し、中空ロックボルト3の内部を定着材10の流路として利用して、ジョイントスリーブ4aの吐出孔47或いは中空ロックボルト3の先端近傍の吐出孔を介して、中空ロックボルト3の外表面及びジョイントスリーブ4aの外表面と穿孔101の孔壁102との間に定着材10を注入して充填し、定着材10を固化させて地山補強構造が構築される(図7(d)、図11(c)参照)。
【0052】
第2実施形態によれば、鋼管膨張型ロックボルト2aの被螺着部を雌ねじ部26a、ジョイントスリーブ4aの螺着部を雄ねじ部48aとすることにより、鋼管膨張型ロックボルト2aとジョイントスリーブ4aを高い強度と安定性でねじ結合することができる。また、ジョイントスリーブ4aの雄ねじ部48aの根元の環状シール材42aを鋼管膨張型ロックボルト2aの雌ねじ部26aの後端部で押圧し、環状シール材42aの液密封止を確実に行うことができる。その他、第1実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができる。
【0053】
〔第3実施形態のロックボルト構造体〕
本発明による第3実施形態のロックボルト構造体1bは、図12図14に示すように、第1実施形態と同一の鋼管膨張型ロックボルト2と、定着材定着用の中空ロックボルト3bと、鋼管膨張型ロックボルト2と中空ロックボルト3bを連結するジョイントスリーブ4bとから構成される。尚、第1実施形態の変形例と同様に、溶接部24に換えて加圧注水に耐え得るキャップで鋼管膨張型ロックボルト2の前端を閉塞してもよい。
【0054】
定着材10で定着される中空ロックボルト3bは、第1実施形態の中空ロックボルト3と基本的構成は同一であり、周壁31、ロープ雄ねじ部32、中空部33とから構成されているが、軸方向に沿って定着材注入パイプ34bが添設され、図示省略する紐或いはワイヤー等で周壁31の外側に取り付けられている。
【0055】
ジョイントスリーブ4bは、軸方向に連通して構成される略筒状であり、前部には螺着部に相当する雌ねじ部41bが形成されている。雌ねじ部41bは鋼管膨張型ロックボルト2の後端の被螺着部に相当する雄ねじ部25に螺合可能になっており、左ねじ機構を構成している。ジョイントスリーブ4bには、ジョイントスリーブ4bの螺着部と鋼管膨張型ロックボルト2の被螺着部との螺着の螺入方向への押圧によって外部と液密に封止する環状シール材42bが設置されており、第3実施形態では、ジョイントスリーブ4bの雌ねじ部41bの根元に、螺入された鋼管膨張型ロックボルト2の雄ねじ部25の後端部で押圧される環状シール材42bが内装されて設けられている。環状シール材42bには、螺入される鋼管膨張型ロックボルト2の雄ねじ部25の後端面が押圧されるように当接し、この当接による液密封止で加圧注水時に雄ねじ部25と雌ねじ部41bとの螺合部分から外部に漏水することが防止される。
【0056】
ジョイントスリーブ4bの後部には、第1実施形態と同様に、中空ロックボルト3bのロープ雄ねじ部32と螺合可能なロープ雌ねじ部43bが形成されており、ロープ雌ねじ部43bは左ねじ機構を構成している。
【0057】
また、ジョイントスリーブ4bには、中空ロックボルト3bの前部とジョイントスリーブの後部4bとの螺着の螺入方向への押圧によって外部と液密に封止する別の環状シール材491bが取り付けられており、第3実施形態では、ジョイントスリーブ4bのロープ雌ねじ部43bの先端側に、螺入された中空ロックボルト3bの先端部で押圧される環状シール材491bが内装されて設けられている。中空ロックボルト3bの先端面は環状シール材491bに押圧されるように当接し、この当接による液密封止で加圧注水時にロープ雄ねじ部32とロープ雌ねじ部43bとの螺合部分から外部に漏水することが防止される。尚、第3実施形態のロックボルト構造体1bにおいて螺着される全ての螺着機構も左ねじ機構になっている。
【0058】
環状シール材42bと環状シール材491bとの間には、環状シール材42bの外径と環状シール材491bの外径のいずれよりも小径の穴部492bが設けられ、穴部492bの周縁によって環状シール材42bと環状シール材491bは移動規制されて定置されている。
【0059】
第3実施形態のロックボルト構造体1が地山100に打設される前の段階では、鋼管膨張型ロックボルト2を有しない状態で、定着材注入パイプ34bが添設された中空ロックボルト3bと、ジョイントスリーブ4bが一体化された注水構造体を構成しておくと好適である(図14(a)、(b)参照)。この注水構造体では、ロープ雌ねじ部43bへのロープ雄ねじ部32の螺着によりジョイントスリーブ4bの後部に中空ロックボルト3bの前部が固定されていると共に、中空ロックボルト3bの先端面がジョイントスリーブ4bの環状シール材491bに押圧されるように当接される。更に、定着材注入パイプ34bの先端開口は、ジョイントスリーブ4bの近傍位置で且つジョイントスリーブ4bに達しない位置に配置される。
【0060】
そして、第3実施形態のロックボルト構造体1bを地山100に打設して地山補強構造を構築する際には、第1実施形態と同様に、地山100に斜め上向き等の所要方向に形成した穿孔101に、非膨張状態の鋼管膨張型ロックボルト2を挿入する。そして、定着材注入パイプ34bが添設された中空ロックボルト3bと、ジョイントスリーブ4bとが一体化された注水構造体を用い、この注水構造体のジョイントスリーブ4bの螺着部に相当する雌ねじ部41bを鋼管膨張型ロックボルト2の被螺着部に相当する雄ねじ部25に螺着して、鋼管膨張型ロックボルト2を穿孔101の孔奥に移動する(図7(b)、図14(a)、(b)参照)。
【0061】
この際、ジョイントスリーブ4bの雌ねじ部41bを鋼管膨張型ロックボルト2の雄ねじ部25に螺入することにより、ジョイントスリーブ4bの環状シール材42bが鋼管膨張型ロックボルト2の雄ねじ部25の後端面に螺入方向に押圧され、雄ねじ部25と雌ねじ部41bとの螺合部分から外部に水漏れしないように液密で封止される。この封止状態で、注水導入空間に相当する中空ロックボルト3bの中空部33と、穴部492bと、雄ねじ部25の注水口に相当する中空部251と、鋼管膨張型ロックボルト2の内部とが連通される。
【0062】
その後、注水管を用いずに、注水構造体の中空ロックボルト3bの注水導入空間の中空部33から直接、水Wの加圧注水を行い、雄ねじ部25の注水口に相当する中空部251を介して鋼管膨張型ロックボルト2の内部に加圧注水することにより、鋼管膨張型ロックボルト2を径方向に膨張させ、基体21を略円筒状の膨張状態にして鋼管膨張型ロックボルト2を穿孔101の孔壁102に摩擦定着する。(図14(b)、(c)参照)。尚、第3実施形態では、注水管の挿入及び撤去にかかる作業は不要である。
【0063】
そして、定着材注入パイプ34bからモルタル、ウレタン或いはシリカレジン等の定着材10を注入して、中空ロックボルト3bの外表面及びジョイントスリーブ4bの外表面と穿孔101の孔壁102との間に定着材10を注入して充填し、定着材10を固化させて地山補強構造が構築される(図7(d)、図14(c)参照)。中空ロックボルト3bの後端部には、定着材10の注入前或いは注入後にワッシャー103やナット104が取り付けられる。
【0064】
第3実施形態によれば、鋼管膨張型ロックボルト2とジョイントスリーブ4bとの間の隙間を環状シール材42bで液密に封止し、中空ロックボルト3bとジョイントスリーブ4bとの間の隙間を別の環状シール材491bで液密に封止することが可能となり、中空ロックボルト3bの注水導入空間自体を鋼管膨張型ロックボルト2の内部に加圧注水を行う注水路として使用することができる。また、注水管を用いずに加圧注水を行うことが可能になることから、注水管の挿入及び撤去作業を無くし、施工工程を効率化することができる。その他、第1実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができる。
【0065】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態、各例の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記内容や下記の更なる変形例も含まれる。
【0066】
例えば本発明のロックボルト構造体における中空ロックボルトには、ロープねじ状の中空ロックボルト3を用いると好適であるが、内部に軸方向に沿って注水導入空間が設けられ、定着材で定着される適宜の中空ロックボルトを用いることが可能である。
【0067】
また、本発明における中空ロックボルトの前部とジョイントスリーブの後部との固定構造や、ジョイントスリーブと注水管との着脱自在な接続部の構造は、雄ねじと雌ねじの螺合構造とすると好適であるが、一方の鉤状突起を他方の係止溝に係合する鉤構造等の他の固定構造や接続部の構造とすることも可能である。
【0068】
また、注水管を用いて施工される本発明のロックボルト構造体を地山に打設して地山補強構造を構築する際には、第1、第2実施形態のように注水構造体を用いる施工方法で施工すると好適であるが、注水構造体の先端側に予め非膨張状態の鋼管膨張型ロックボルトが取り付けられている構造体を用いて施工する施工方法、或いはロックボルト構造体を地山の穿孔に挿入し、その後に注水管をロックボルト構造体のジョイントスリーブに接続して施工する施工方法を用いることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、ロックボルトを用いて地山補補強する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1、1a、1b…ロックボルト構造体 2、2a…鋼管膨張型ロックボルト 21…基体 22…前端スリーブ 23…後端スリーブ 24…溶接部 25…雄ねじ部 251…中空部 26a…雌ねじ部 261a…注水穴 3、3b…中空ロックボルト 31…周壁 32…ロープ雄ねじ部 33…中空部 34b…定着材注入パイプ 4、4a、4b…ジョイントスリーブ 41、41b…雌ねじ部 42、42a、42b…環状シール材 43、43b…ロープ雌ねじ部 44、44a…雌ねじ部 45…穴部 46…周壁 47…吐出孔 48a…雄ねじ部 481a…中空部 491b…環状シール材 492b…穴部 5…注水管 51…雄ねじ部 10…定着材 100…地山 101…穿孔 102…孔壁 103…ワッシャー 104…ナット T…トンネル W…水
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