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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180273
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
F16K31/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021148889
(22)【出願日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2021087180
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000101514
【氏名又は名称】アドバンス電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079050
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 憲秋
(74)【代理人】
【識別番号】100201879
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大輝
(72)【発明者】
【氏名】笹尾 起美仁
【テーマコード(参考)】
3H062
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA15
3H062BB33
3H062CC02
3H062CC13
3H062DD01
3H062EE06
3H062HH10
(57)【要約】
【課題】弁体閉鎖時の過剰な圧迫等を回避する機能とともに、機能停止時の流体遮断機能も備えた電動弁を提供する。
【解決手段】弁機構体70の後退移動の際には作動軸80の軸本体81が一方向に軸回転されて弁機構体を後退させて弁体60を弁座25から離隔させ、弁機構体の前進移動の際には軸本体が他方向に軸回転されて弁機構体を前進させて弁体を弁座に近接させて閉鎖させ、軸本体がさらに他方向に軸回転された場合に伝達部材55内を摺動して後退するように構成されており、機能停止の際には、加圧気体の供給停止により停止部材がばね部材Sの付勢力により前進されて弁機構体を押圧して弁体を前進させて弁座を閉鎖し保持する又は弁座の閉弁状態を保持するとともに、開弁時には軸本体が伝達部材内を摺動して停止部材に押圧されて前進する弁機構体とともに作動軸が前進する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁座が形成された弁室と、前記弁室の後部側に配置された作動室と、前記作動室の後部側に配置された電動式駆動機構を有する駆動室とが形成されたハウジングと、
前記弁室にダイアフラムと一体に配置されて前記弁座を開閉する弁体と、
前記弁体が取り付けられる弁機構体と、
前記弁機構体と連結されるとともに前記電動式駆動機構により進退動する作動軸と、
を備えた電動弁であって、
前記作動室には、シリンダ部内に加圧気体を供給するエア供給部が設けられているとともに、前記弁機構体と別部材よりなる停止部材と、前記停止部材を常時弁室方向に付勢するばね部材とが前記シリンダ部内に配置されていて、
前記停止部材は、前記弁機構体に対して当接又は離隔されるように進退可能に前記作動室の前記シリンダ部内に嵌挿されるとともに、前記電動弁の作動時には前記シリンダ部への前記加圧気体の供給により前記ばね部材の付勢力に抗して常時前記駆動室側に付勢保持され、
前記弁機構体は、前記作動室に周方向に回転不能に進退自在に嵌挿されており、
前記作動軸は、前記電動式駆動機構の伝達部材に軸方向に進退可能に挿通されて軸回転されるとともに、前記停止部材を貫通して先端側に前記弁機構体に螺着される螺着部を有する軸本体と、前記軸本体に形成され前記停止部材の係止部に係止されて前記軸本体の前進方向の移動を規制する規制部とを有し、
前記弁機構体の後退移動の際には、前記規制部が前記停止部材に係止された前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して一方向に軸回転されて、前記螺着部を介して前記弁機構体を後退させて前記弁体を前記弁座から離隔させ、
前記弁機構体の前進移動の際には、前記規制部が前記停止部材に係止された前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して他方向に軸回転されて、前記螺着部を介して前記弁機構体を前進させて前記弁体を前記弁座に近接させて閉鎖させ、前記軸本体がさらに他方向に軸回転された場合に、前記軸本体の前記規制部が前記停止部材の前記係止部から離隔されて前記伝達部材内を摺動して後退するように構成されており、
前記電動弁の機能停止の際には、前記加圧気体の供給停止により前記停止部材が前記ばね部材の付勢力により弁室方向へ移動されて、前記弁機構体を前記弁室方向へ押圧して前記弁体を前進させて前記弁座を閉鎖し保持する又は前記弁体による前記弁座の閉弁状態を保持するとともに、前記弁体が前記弁座を開放している際には、前記軸本体が前記伝達部材内を摺動して前記停止部材に押圧されて前進する前記弁機構体とともに前記作動軸が前進するように構成されている
ことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記停止部材の前進時に、停止部材の前面部と前記シリンダ部の前面部との間に前記エア供給部からの加圧気体の導入が可能な間隙部が形成される請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記停止部材と前記弁機構体との間に前記停止部材を付勢する前記ばね部材より付勢力が小さい付勢力で前記弁機構体を常時閉鎖方向に付勢する補助付勢部材が設けられる請求項1又は2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記弁室と前記弁体とが、PFA又はPTFEからなるフッ素樹脂で形成され、
前記弁体に、前記弁室の前記弁座に対して当接又は前記弁座から後退して開閉する架橋PTFEからなるニードル弁部が接合されているとともに、
前記弁座に、閉弁時に前記ニードル弁部と当接する架橋PTFEからなる当接部材が接合されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電動弁。
【請求項5】
前記弁室がPTFEからなり、前記当接部材がPFAからなる弁座側接合部材を介して前記弁座に接合されている請求項4に記載の電動弁。
【請求項6】
前記弁体がPTFEからなり、前記ニードル弁部がPFAからなる弁体側接合部材を介して前記弁座に接合されている請求項4又は5に記載の電動弁。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれか1項に記載の電動弁の製造方法であって、
前記弁室の前記弁座に前記当接部材を載置して、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロックにより前記当接部材を加圧とともに加熱して接合する当接部材接合工程と、
前記弁体に前記ニードル弁部を載置して、前記ヒーティングブロックにより前記ニードル弁部を加圧とともに加熱して接合する弁部接合工程とを有する
ことを特徴とする電動弁の製造方法。
【請求項8】
前記当接部材接合工程が、PFAからなる弁座側接合部材とPTFEからなる弁座又は架橋PTFEからなる当接部材とを拡散接合する弁座側拡散接合工程を有する請求項7に記載の電動弁の製造方法。
【請求項9】
前記弁部接合工程が、PFAからなる弁体側接合部材とPTFEからなる弁体又は架橋PTFEからなるニードル弁部とを拡散接合する弁体側拡散接合工程を有する請求項7又は8に記載の電動弁の製造方法。
【請求項10】
前記弁部接合工程は、PFA又はPTFEからなるブロック体に架橋PTFEからなるブロック体を載置して、前記ヒーティングブロックにより前記架橋PTFEからなるブロック体を加圧とともに加熱して接合した後に、前記PFA又はPTFEからなるブロック体を切削加工により弁体に形成するとともに、前記架橋PTFEからなるブロック体を切削加工によりニードル弁部に形成する切削工程を有する請求項7ないし9のいずれか1項に記載の電動弁の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステッピングモータによって作動される電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体製造における大規模集積化、加工の微細化が進み、2023年には配線ピッチ3nmの半導体デバイスが量産される計画がある。このように微細な配線幅の半導体製造では、その製造工程内における流体の流通経路での微細なゴミ(パーティクル)の混入が、製品の歩留まりに大きな影響を与える。歩留まりを維持するためには、パーティクルを配線ピッチの半分以下のサイズとして流体の清浄度を維持しながら流通させることが要求される。
【0003】
この種の半導体製造の流路構造では、ポンプ等の流体の供給源に接続された流路に、流体圧力を調節する調圧弁、流体の流量を調節する流量調節弁、流体を遮断又は通過可能とする開閉弁等が適宜に配置される。半導体製造に配置される流量調節弁では、ステッピングモータ等の電動式駆動機構により作動される電動弁が好適に使用される。電動弁は、電気制御による操作であることから、装置の維持管理の自由度が大きく、流量変化等の制御を容易に行うことができる利点がある。しかしながら、一般的な電動弁では、弁体の閉鎖時に弁座が過剰に圧迫されることがあり、電動弁の耐久性やパーティクルの発生等の問題を生ずるおそれがあった。
【0004】
そこで、弁体が連結された弁機構体がばね部材により常時閉鎖方向へ付勢されるとともに、弁機構体に螺着された作動軸を電動式駆動機構により回転させることによって弁機構体を介して弁体を進退させ、弁体の前進時にばね部材の付勢力とともに弁機構体を前進させて弁座を閉鎖した際に、作動軸がさらに回転されることによって作動軸が後退するように構成された電動弁が提案されている(特許文献1参照)。この電動弁では、弁座の閉鎖(閉弁)後に作動軸が後退することにより、閉弁後の電動式駆動機構による作動が弁機構体に伝達されないため、弁体が弁座に押し込まれず、弁座に対する過剰な圧迫等が回避されてパーティクルの発生等の問題を解消することができる。
【0005】
ところで、この種の流路構造において流体が遮断される場合、通常の作動時には流量調節弁(電動弁)の閉鎖により流体が遮断されるが、停電等により動力が停止したり、緊急停止ボタンを作動させたりした場合には開閉弁の閉鎖により流体が遮断される。従来の流路構造にあっては、配管内に流量調節弁等の他に緊急停止用の開閉弁を個別に配置する必要があり、コストの増大や装置の大型化等の問題が生じて改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実登3227404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、前記の点に鑑みなされたものであり、弁体閉鎖時の過剰な圧迫等を回避する機能とともに、機能停止時の流体遮断機能も備えた電動弁を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、請求項1の発明は、弁座が形成された弁室と、前記弁室の後部側に配置された作動室と、前記作動室の後部側に配置された電動式駆動機構を有する駆動室とが形成されたハウジングと、前記弁室にダイアフラムと一体に配置されて前記弁座を開閉する弁体と、前記弁体が取り付けられる弁機構体と、前記弁機構体と連結されるとともに前記電動式駆動機構により進退動する作動軸と、を備えた電動弁であって、前記作動室には、シリンダ部内に加圧気体を供給するエア供給部が設けられているとともに、前記弁機構体と別部材よりなる停止部材と、前記停止部材を常時弁室方向に付勢するばね部材とが前記シリンダ部内に配置されていて、前記停止部材は、前記弁機構体に対して当接又は離隔されるように進退可能に前記作動室の前記シリンダ部内に嵌挿されるとともに、前記電動弁の作動時には前記シリンダ部への前記加圧気体の供給により前記ばね部材の付勢力に抗して常時前記駆動室側に付勢保持され、前記弁機構体は、前記作動室に周方向に回転不能に進退自在に嵌挿されており、前記作動軸は、前記電動式駆動機構の伝達部材に軸方向に進退可能に挿通されて軸回転されるとともに、前記停止部材を貫通して先端側に前記弁機構体に螺着される螺着部を有する軸本体と、前記軸本体に形成され前記停止部材の係止部に係止されて前記軸本体の前進方向の移動を規制する規制部とを有し、前記弁機構体の後退移動の際には、前記規制部が前記停止部材に係止された前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して一方向に軸回転されて、前記螺着部を介して前記弁機構体を後退させて前記弁体を前記弁座から離隔させ、前記弁機構体の前進移動の際には、前記規制部が前記停止部材に係止された前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して他方向に軸回転されて、前記螺着部を介して前記弁機構体を前進させて前記弁体を前記弁座に近接させて閉鎖させ、前記軸本体がさらに他方向に軸回転された場合に、前記軸本体の前記規制部が前記停止部材の前記係止部から離隔されて前記伝達部材内を摺動して後退するように構成されており、前記電動弁の機能停止の際には、前記加圧気体の供給停止により前記停止部材が前記ばね部材の付勢力により弁室方向へ移動されて、前記弁機構体を前記弁室方向へ押圧して前記弁体を前進させて前記弁座を閉鎖し保持する又は前記弁体による前記弁座の閉弁状態を保持するとともに、前記弁体が前記弁座を開放している際には、前記軸本体が前記伝達部材内を摺動して前記停止部材に押圧されて前進する前記弁機構体とともに前記作動軸が前進するように構成されていることを特徴とする電動弁に係る。
【0009】
請求項2の発明は、前記停止部材の前進時に、停止部材の前面部と前記シリンダ部の前面部との間に前記エア供給部からの加圧気体の導入が可能な間隙部が形成される請求項1に記載の電動弁に係る。
【0010】
請求項3の発明は、前記停止部材と前記弁機構体との間に前記停止部材を付勢する前記ばね部材より付勢力が小さい付勢力で前記弁機構体を常時閉鎖方向に付勢する補助付勢部材が設けられる請求項1又は2に記載の電動弁に係る。
【0011】
請求項4の発明は、前記弁室と前記弁体とが、PFA又はPTFEからなるフッ素樹脂で形成され、前記弁体に、前記弁室の前記弁座に対して当接又は前記弁座から後退して開閉する架橋PTFEからなるニードル弁部が接合されているとともに、前記弁座に、閉弁時に前記ニードル弁部と当接する架橋PTFEからなる当接部材が接合されている請求項1ないし3のいずれか1項に記載の電動弁に係る。
【0012】
請求項5の発明は、前記弁室がPTFEからなり、前記当接部材がPFAからなる弁座側接合部材を介して前記弁座に接合されている請求項4に記載の電動弁に係る。
【0013】
請求項6の発明は、前記弁体がPTFEからなり、前記ニードル弁部がPFAからなる弁体側接合部材を介して前記弁座に接合されている請求項4又は5に記載の電動弁に係る。
【0014】
請求項7の発明は、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の電動弁の製造方法であって、前記弁室の前記弁座に前記当接部材を載置して、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロックにより前記当接部材を加圧とともに加熱して接合する当接部材接合工程と、前記弁体に前記ニードル弁部を載置して、前記ヒーティングブロックにより前記ニードル弁部を加圧とともに加熱して接合する弁部接合工程とを有することを特徴とする電動弁の製造方法に係る。
【0015】
請求項8の発明は、前記当接部材接合工程が、PFAからなる弁座側接合部材とPTFEからなる弁座又は架橋PTFEからなる当接部材とを拡散接合する弁座側拡散接合工程を有する請求項7に記載の電動弁の製造方法に係る。
【0016】
請求項9の発明は、前記弁部接合工程が、PFAからなる弁体側接合部材とPTFEからなる弁体又は架橋PTFEからなるニードル弁部とを拡散接合する弁体側拡散接合工程を有する請求項7又は8に記載の電動弁の製造方法に係る。
【0017】
請求項10の発明は、前記弁部接合工程は、PFA又はPTFEからなるブロック体に架橋PTFEからなるブロック体を載置して、前記ヒーティングブロックにより前記架橋PTFEからなるブロック体を加圧とともに加熱して接合した後に、前記PFA又はPTFEからなるブロック体を切削加工により弁体に形成するとともに、前記架橋PTFEからなるブロック体を切削加工によりニードル弁部に形成する切削工程を有する請求項7ないし9のいずれか1項に記載の電動弁の製造方法に係る。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明に係る電動弁によると、弁座が形成された弁室と、前記弁室の後部側に配置された作動室と、前記作動室の後部側に配置された電動式駆動機構を有する駆動室とが形成されたハウジングと、前記弁室にダイアフラムと一体に配置されて前記弁座を開閉する弁体と、前記弁体が取り付けられる弁機構体と、前記弁機構体と連結されるとともに前記電動式駆動機構により進退動する作動軸と、を備えた電動弁であって、前記作動室には、シリンダ部内に加圧気体を供給するエア供給部が設けられているとともに、前記弁機構体と別部材よりなる停止部材と、前記停止部材を常時弁室方向に付勢するばね部材とが前記シリンダ部内に配置されていて、前記停止部材は、前記弁機構体に対して当接又は離隔されるように進退可能に前記作動室の前記シリンダ部内に嵌挿されるとともに、前記電動弁の作動時には前記シリンダ部への前記加圧気体の供給により前記ばね部材の付勢力に抗して常時前記駆動室側に付勢保持され、前記弁機構体は、前記作動室に周方向に回転不能に進退自在に嵌挿されており、前記作動軸は、前記電動式駆動機構の伝達部材に軸方向に進退可能に挿通されて軸回転されるとともに、前記停止部材を貫通して先端側に前記弁機構体に螺着される螺着部を有する軸本体と、前記軸本体に形成され前記停止部材の係止部に係止されて前記軸本体の前進方向の移動を規制する規制部とを有し、前記弁機構体の後退移動の際には、前記規制部が前記停止部材に係止された前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して一方向に軸回転されて、前記螺着部を介して前記弁機構体を後退させて前記弁体を前記弁座から離隔させ、前記弁機構体の前進移動の際には、前記規制部が前記停止部材に係止された前記軸本体が前記電動式駆動機構により前記伝達部材を介して他方向に軸回転されて、前記螺着部を介して前記弁機構体を前進させて前記弁体を前記弁座に近接させて閉鎖させ、前記軸本体がさらに他方向に軸回転された場合に、前記軸本体の前記規制部が前記停止部材の前記係止部から離隔されて前記伝達部材内を摺動して後退するように構成されており、前記電動弁の機能停止の際には、前記加圧気体の供給停止により前記停止部材が前記ばね部材の付勢力により弁室方向へ移動されて、前記弁機構体を前記弁室方向へ押圧して前記弁体を前進させて前記弁座を閉鎖し保持する又は前記弁体による前記弁座の閉弁状態を保持するとともに、前記弁体が前記弁座を開放している際には、前記軸本体が前記伝達部材内を摺動して前記停止部材に押圧されて前進する前記弁機構体とともに前記作動軸が前進するように構成されているため、弁体閉鎖時の過剰な圧迫等を回避する機能とともに動力停止時の流体遮断機能を備えて、単独で流量調節弁と緊急停止用の開閉弁として使用することができ、配管内に流量調節弁と開閉弁とを個別に配置する必要がなくなり、コストの低減や装置の小型化を図ることができる。
【0019】
請求項2の発明に係る電動弁によると、請求項1の発明において、前記停止部材の前進時に、停止部材の前面部と前記シリンダ部の前面部との間に前記エア供給部からの加圧気体の導入が可能な間隙部が形成されるため、機能停止後に容易かつ適切に電動弁を復帰させることが可能となる。
【0020】
請求項3の発明に係る電動弁によると、請求項1又は2の発明において、前記停止部材と前記弁機構体との間に前記停止部材を付勢する前記ばね部材より付勢力が小さい付勢力で前記弁機構体を常時閉鎖方向に付勢する補助付勢部材が設けられるため、閉弁時に弁体のシール力が増加してより確実に閉弁状態を保持することができる。
【0021】
請求項4の発明に係る電動弁によると、請求項1ないし3の発明において、前記弁室と前記弁体とが、PFA又はPTFEからなるフッ素樹脂で形成され、前記弁体に、前記弁室の前記弁座に対して当接又は前記弁座から後退して開閉する架橋PTFEからなるニードル弁部が接合されているとともに、前記弁座に、閉弁時に前記ニードル弁部と当接する架橋PTFEからなる当接部材が接合されているため、弁部と弁座の接触時のパーティクルの発生を効果的に抑制することができる。
【0022】
請求項5の発明に係る電動弁によると、請求項4の発明において、前記弁室がPTFEからなり、前記当接部材がPFAからなる弁座側接合部材を介して前記弁座に接合されているため、PTFEからなる弁座に架橋PTFEからなる当接部材を容易に接合させることができる。
【0023】
請求項6の発明に係る電動弁によると、請求項4又は5の発明において、前記弁体がPTFEからなり、前記ニードル弁部がPFAからなる弁体側接合部材を介して前記弁座に接合されているため、PTFEからなる弁体に架橋PTFEからなるニードル弁部を容易に接合させることができる。
【0024】
請求項7の発明に係る電動弁の製造方法によると、請求項4ないし6のいずれか1項に記載の電動弁の製造方法であって、前記弁室の前記弁座に前記当接部材を載置して、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロックにより前記当接部材を加圧とともに加熱して接合する当接部材接合工程と、前記弁体に前記ニードル弁部を載置して、前記ヒーティングブロックにより前記ニードル弁部を加圧とともに加熱して接合する弁部接合工程とを有するため、PFA又はPTFEからなる弁座と架橋PTFEからなる当接部材、及びPFA又はPTFEからなる弁体と架橋PTFEからなるニードル弁部を、高分子の絡みによる摩擦接合の強度を超える溶融接合に近い強固な接合強度で接合することができる。
【0025】
請求項8の発明に係る電動弁によると、請求項7の発明において、前記当接部材接合工程が、PFAからなる弁座側接合部材とPTFEからなる弁座又は架橋PTFEからなる当接部材とを拡散接合する弁座側拡散接合工程を有するため、PTFEの弁座と架橋PTFEの当接部材とを容易に接合させることができる。
【0026】
請求項9の発明に係る電動弁によると、請求項7又は8の発明において、前記弁部接合工程が、PFAからなる弁体側接合部材とPTFEからなる弁体又は架橋PTFEからなるニードル弁部とを拡散接合する弁体側拡散接合工程を有するため、PTFEの弁体と架橋PTFEのニードル弁部とを容易に接合させることができる。
【0027】
請求項10の発明に係る電動弁によると、請求項7ないし9の発明において、前記弁部接合工程は、PFA又はPTFEからなるブロック体に架橋PTFEからなるブロック体を載置して、前記ヒーティングブロックにより前記架橋PTFEからなるブロック体を加圧とともに加熱して接合した後に、前記PFA又はPTFEからなるブロック体を切削加工により弁体に形成するとともに、前記架橋PTFEからなるブロック体を切削加工によりニードル弁部に形成する切削工程を有するため、弁体にニードル弁部を容易かつ確実に接合することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の一実施形態に係る電動弁の全開時の縦断面図である。
図2図1の電動弁の弁機構体移動時の縦断面図である。
図3図1の電動弁の閉弁時の縦断面図である。
図4図1の電動弁の閉弁時に作動軸が後退した状態の縦断面図である。
図5図1のA-A概略断面図である。
図6】作動軸の後部側と電動式駆動機構の伝達部材の構造を表した概略分解斜視図である。
図7】作動軸の後部側と電動式駆動機構の伝達部材との構造を表した概略横断面図である。
図8】全開時の電動弁作動中及び機能停止中における弁機構体近傍の拡大断面図である。
図9】閉弁時の電動弁作動中及び機能停止中における弁機構体近傍の拡大断面図である。
図10】閉弁時に作動軸が後退した状態の電動弁作動中及び動力停止中における弁機構体近傍の拡大断面図である。
図11】弁機構体移動時に電動弁の動力が停止した場合の弁機構体近傍の拡大断面図である。
図12】機能停止時の停止部材の前面部側近傍の拡大断面図である。
図13】補助付勢部材が設けられた構造の閉弁時の状態を表した拡大断面図である。
図14図13の構造の機能停止時の状態を表した拡大断面図である。
図15】テーパーシール部が形成されたニードル弁部を有する電動弁の全開時の弁室の拡大断面図である。
図16】テーパーシール部が形成されたニードル弁部を有する電動弁の閉弁時の弁室の拡大断面図である。
図17】フラットシール部が形成されたニードル弁部を有する電動弁の全開時の弁室の拡大断面図である。
図18】フラットシール部が形成されたニードル弁部を有する電動弁の閉弁時の弁室の拡大断面図である。
図19】接合装置により弁座に当接部材を接合させる工程を表した要部概略断面図である。
図20】弁座に弁座側接合部材を介して当接部材を接合させる工程を表した要部概略断面図である。
図21】弁体にニードル弁部を接合させる工程を表した要部概略断面図である。
図22】弁体に弁体側接合部材を介してニードル弁部を接合させる工程を表した要部概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1~4に示す本発明の一実施形態に係る電動弁10は、主に半導体製造工場や半導体製造装置等の流体管路に配設される流量調節弁であって、流体の流量の調節や遮断を行うように構成される。この電動弁10は、ハウジング11と、弁体60と、弁機構体70と、作動軸80とを備える。
【0030】
電動弁10では、流体と接触するハウジング11、弁体60等の各部が耐食性及び耐薬品性の高い材料で構成される。例えば、PTFE、PFA、PVDF等のフッ素樹脂である。フッ素樹脂は、切削等により所望する形状に容易に加工することができる。また、この電動弁10では、純水、アンモニア水、フッ酸、過酸化水素水、塩酸、オゾン水、水素水、酸素水、界面活性剤等の薬液、水素、酸素等のガス等の被制御流体が流通される。
【0031】
ハウジング11は、弁座25が形成された弁室20と、弁室20の後部側に配置された作動室30と、作動室30の後部側に配置された電動式駆動機構51を有する駆動室50とが形成される。図において、符号15はハウジングの後部側に配置されて作動軸80の進退動を検知するセンサー部、21は弁室20の一側に接続された被制御流体の流入部、22は弁座25を介して弁室20の他側に接続された被制御流体の流出部である。
【0032】
作動室30には、加圧気体を供給するエア供給部35が設けられているとともに、後述する弁機構体70と別部材よりなる停止部材40と、停止部材40を常時弁室20方向に付勢するばね部材Sとが配置されている。図において、符号31は作動室30内に形成されたシリンダ部、32はシリンダ部31の前側(弁室20側)において後述する弁機構体70を進退可能に保持する弁機構体保持ブロック、33はシリンダ部31の前面部に相当する弁機構体保持ブロック32の後端面である。
【0033】
エア供給部35は、作動室30のシリンダ部31内に加圧気体を供給する部位であり、公知の電空レギュレータ等の調圧装置(図示せず)に接続される。このエア供給部35では、シリンダ部31の前面側(弁機構体保持ブロック32の後端面33側)に加圧気体の供給孔36が形成され、当該電動弁10の作動中は常時加圧気体の供給が行われる。また、エア供給部35からの加圧気体は、閉弁時に後述の弁機構体70を閉鎖方向に付勢する加圧手段としても作用する。
【0034】
停止部材40は、弁機構体70に対して当接又は離隔されるように進退可能に作動室30のシリンダ部31内に嵌挿されるとともに、当該電動弁10の作動時には作動室30への加圧気体の供給によりばね部材Sの付勢力に抗して常時駆動室50側に付勢保持される。図において、符号41は停止部材40内に凹状に形成されてばね部材Sに押圧される前側ばね受け部、42は停止部材40の前面部、45は後述する作動軸80のための係止部、46は係止部45に配置されたスラストベアリング等の軸受部材である。
【0035】
ばね部材Sは、停止部材40と後述の電動式駆動機構51との間に配置されて、停止部材40を常時弁室20方向に付勢する弾性部材である。ばね部材Sは、停止部材40を付勢する弾性部材であれば特に限定されないが、簡素な構成で安価な公知のコイルばねが好適である。
【0036】
電動式駆動機構51は、適宜の演算装置(図示せず)の制御により進退量を調節して後述の作動軸80を進退動させる部材である。電動式駆動機構51としては、作動軸80の進退量を精度良く再現できるものであれば特に限定されず、例えば、ステッピングモータ、サーボモータ、超音波モータ等が好適に用いられる。電動式駆動機構51に関して、52はロータ、53は配線部、54はフロントブランケット、55はロータ52により後述の作動軸80を軸回転させる伝達部材である。なお、電動式駆動機構51のフロントブランケット54は、作動室30のシリンダ部31の後面部であるとともにばね部材Sの後側ばね受け部に相当する。
【0037】
弁体60は、弁室20にダイアフラム65と一体に配置されて弁座25を開閉する部材である。この弁体60は、進退することにより弁座25に対して着座又は弁座25から後退して弁座25を開閉する弁部61を有する。弁部61の形状は、弁座25の開閉を確実に行うことが可能であれば特に限定されない。図示の弁部61は、フラット形状のシール部62を有する。ダイアフラム65は、薄肉の可動膜からなり、弁室20内を流通する被制御流体の作動室30側への浸入を防止する。
【0038】
弁機構体70は、作動室30に周方向に回転不能に同軸的に進退自在に嵌挿されて弁体60が取り付けられる部材である。この弁機構体70は、図5に示すように、作動室30の弁機構体保持ブロック32に公知のスプライン嵌合構造により嵌挿される。また、弁機構体70は、その後部にらせん状のねじ溝が形成されたねじ穴部71を有する。実施形態の弁機構体70では、後端部72に複数の突起部75が設けられている。
【0039】
作動軸80は、弁機構体70と連結されるとともに電動式駆動機構51により進退動する部材であって、軸本体81と、規制部85とを有する。軸本体81は、円柱状の棒状体からなり、停止部材40を貫通するとともに先端側に弁機構体70のねじ穴部71に螺着される螺着部82を有する。
【0040】
この軸本体81は、後部に形成された板状部84が電動式駆動機構51の伝達部材55に軸方向に進退可能に挿通されて軸回転されて、伝達部材55の回転により軸回転される。ここで、伝達部材55は、軸本体81を軸方向に進退可能かつ軸回転可能な構造であれば特に限定されない。実施例の伝達部材55は、図6,7に示すように、軸本体81の板状部84が摺動可能に嵌挿される断面視四角形状の貫通孔56を有し、電動式駆動機構51のロータ52とともに回転する略円筒形状の部材からなる。伝達部材55では、断面視四角形状の貫通孔56と軸本体81の板状部84とが回転方向で係合しているため、電動式駆動機構51により軸回転することによって板状部84を介して軸本体81が軸回転される。また、貫通孔56と軸本体81の板状部84とが軸方向で摺動可能であるため、軸本体81が伝達部材55に対して進退可能となる。なお、図7において、伝達部材55の外周面形状は適宜であるため省略した。
【0041】
また、軸本体81の後端部には、ハウジング11の後部側に配置されたセンサー部15に検知される被検知部83が設けられており、電動式駆動機構51を貫通してハウジング11の後部側に突出されて、被検知部83がセンサー部15に到達可能に構成されている。ハウジング11の後部側に配置されたセンサー部15により、電動式駆動機構51から後部側へ突出した作動軸80の被検知部83を検知可能とすることにより、軸本体81の進退動が検知しやすくなる。また、センサー部15が電動式駆動機構51の後側のスペースを利用して配置されるため、省スペース化が実現できて電動弁の大型化が回避され、フットプリントを小さくすることができる。
【0042】
規制部85は、軸本体81に形成され、停止部材40の係止部45に係止されて軸本体81の前進方向の移動を規制する部位である。実施例の規制部85は、軸本体81に突設された円盤状の部材であり、軸受部材46を介して停止部材40の係止部45に載置される。
【0043】
次に、本発明の電動弁10の平常時の作動について説明する。なお、平常時の作動では、エア供給部35から作動室30のシリンダ部31内へ常時加圧気体が供給されて、ばね部材Sの付勢力に抗して停止部材40が常時駆動室50側、すなわちシリンダ部31の後面部に相当する電動式駆動機構51のフロントブランケット54側に付勢保持されている。
【0044】
電動弁10の作動時において、図1,8(a)に示す弁機構体70の後退移動の際、つまり開弁時(弁座25の開放時)では、まず電動式駆動機構51により伝達部材55を介して軸本体81が一方向(締め付け方向)に軸回転される。この時、作動軸80は、規制部85が軸受部材46を介して停止部材40の係止部45に載置されて、作動軸80の前進方向への移動が規制されている。そこで、軸本体81が締め付け方向に軸回転することにより、回転動が螺着部82を介して弁機構体70に伝達されて弁機構体70が作動軸80に沿って後退方向へ移動される。したがって、弁機構体70が駆動室50方向へ移動されて、弁機構体70に取り付けられた弁体60が弁座25から離隔されて開弁状態とされる。特に、図示のように後退した弁機構体70の後部(突起部75)が停止部材40の前面部42に当接した場合は、弁機構体70の後退量が最大となり、弁座25が全開とされる。
【0045】
続いて弁機構体70の前進移動の際は、図2に示すように、電動式駆動機構51により伝達部材55を介して軸本体81が他方向(緩め方向)に軸回転される。軸本体81が緩め方向に軸回転することにより、回転動が螺着部82を介して弁機構体70に伝達されて、弁機構体70がエア供給部35からの加圧気体の付勢力とともに作動軸80に沿って前進方向へ移動される。したがって、弁機構体70が停止部材40から離隔されて弁室20方向へ移動され、弁体60が弁座25に近接される。そして、弁機構体70が継続して前進することにより、図3,9(a)に示すように、弁体60が弁座25に当接されて閉弁(閉鎖)状態となる。
【0046】
上記のように弁体60が前進して閉弁された際には、電動式駆動機構51の回転駆動が継続されていることから、軸本体81はさらに緩め方向に軸回転される。この時、弁体60が弁座25に当接されているため、弁機構体70はそれ以上前進しない。一方、軸本体81は伝達部材55内を軸方向に摺動可能であることから、図4,10(a)に示すように、緩め方向に軸回転する軸本体81が、規制部85が停止部材40の係止部45から離隔されて伝達部材55内を摺動して後退する。
【0047】
閉弁後に弁機構体70が前進せずに作動軸80自身が後退するということは、閉弁後の電動式駆動機構51からの回転動が弁機構体70に伝達されない(作動軸80の後退動として逃がされる)ことで、弁体60が閉鎖時に弁座25に押し込まれず、閉鎖時における弁座25との衝突や過大な摩擦等が回避ないし緩和されることを意味する。そのため、これらの衝突や摩擦等に伴う問題の発生を一挙に解決することができる。
【0048】
また、閉弁後の開弁に際して、作動軸80が弁機構体70に対して通常時より緩められて後退した状態となっていることから、弁体60を弁座25に対して全閉する力ないし弁座25の全閉シール力等の押し込む力を維持するためのモータの励磁を維持する必要がない。したがって、これに伴う問題、すなわち、消費電流の問題のみならずモータの発熱による被制御流体の温度上昇に関連する種々の問題を一挙に解消することができる。さらに、開弁方向の移動、つまり作動軸80の締め付け方向への回転動は、負荷の無い状態からスタートできるので、微小な流量の開弁制御や流量ゼロからの立ち上げなどのランプ制御が可能となる。また、本発明の電動弁10では、マイクロステップ駆動方式で電動式駆動機構51のステッピングモータを駆動させた場合に、弁体60の進退動をより精密に制御して弁座25の開度を微調整することができる。
【0049】
次に、本発明の電動弁10の機能停止の際の作動について説明する。ここで、機能停止とは、電動弁10の作動中に停電等による電力停止や緊急停止ボタン(図示せず)の操作による緊急停止等の非常事態において、エア供給部35からの加圧気体の供給が停止された状態である。実施形態の電動弁10では、非常事態の発生により、まず加圧気体の供給が停止され、次いで電力停止等により電動弁10の動力が停止される。動力停止により電動式駆動機構51の作動が停止されることから、作動軸80は軸回転せず、弁機構体70が作動軸80に沿って進退動されない。なお、機能停止の手順はこれに限定されず、非常事態に際して加圧気体の供給停止と電動式駆動機構51の作動停止が行われればよい。
【0050】
本発明の電動弁10は、上記機能停止の際には、エア供給部35からの加圧気体の供給停止により停止部材40がばね部材Sの付勢力により弁室20方向へ移動されて、弁機構体70を弁室20方向へ押圧して弁体60を前進させて弁座25を閉鎖し保持する又は弁体60による弁座25の閉弁状態を保持するとともに、弁体60が弁座25を開放している際には、軸本体81が伝達部材55内を摺動して停止部材40に押圧されて前進する弁機構体70とともに前進するように構成される。そこで、電動弁10の作動時の状態に応じた機能停止時の作動をより具体的に述べる。
【0051】
まず図1,8(a)に示す弁座25の全開時に機能が停止された場合、エア供給部35からの加圧気体の供給停止により、停止部材40がばね部材Sの付勢力によって弁室20方向へ移動される。この時、停止部材40の前側に弁機構体70の後部(突起部75)が当接されていることから、停止部材40は弁室20方向への移動(前進)に伴って弁機構体70を弁室20方向へ押圧する。ここで、弁機構体70は作動が停止された作動軸80に連結されているが、作動軸80の軸本体81が伝達部材55内を軸方向に摺動可能であることから、停止部材40に押圧されることによって作動軸80とともに弁室20方向へ移動(前進)される。
【0052】
このように、弁座25の全開時に機能が停止されると、ばね部材Sの付勢力によって前進する停止部材40が弁機構体70を押圧して前進させるため、図8(b)に示すように弁機構体70を介して弁体60が前進されて、弁座25が閉鎖(閉弁)される。そして、停止部材40は、ばね部材Sにより常時弁室20方向へ付勢されているため、当該機能停止中は、ばね部材Sの付勢力によって閉弁状態が保持される。
【0053】
図2に示す弁座25の全開ではない開放時、すなわち弁機構体70の移動時(前進移動時又は後退移動時)に機能が停止された場合、まず弁機構体70は、停止部材40から離隔され、かつ、弁体60が弁座25に当接されない位置で移動が停止される。一方、停止部材40は、図11(a)に示すように、ばね部材Sの付勢力によって弁室20方向へ移動される。この時、作動軸80が弁機構体70とともに停止していることから、停止部材40の係止部45は規制部85から離隔される。そして、停止している弁機構体70の後端部72に前進する停止部材40が当接されると、その前進に伴って弁機構体70が弁室20方向へ押圧される。
【0054】
停止部材40に押圧された弁機構体70は、図11(b)に示すように、停止部材40の移動に伴って前進される。その際、弁機構体70に連結された作動軸80は、軸本体81が伝達部材55内を軸方向に摺動可能であるため、弁機構体70とともに前進される。そして、弁機構体70を介して前進した弁体60により弁座25が閉鎖(閉弁)され、当該機能停止中はばね部材Sの付勢力によって閉弁状態が保持される。
【0055】
図3,9(a)に示す弁座25の閉鎖時(閉弁時)に機能が停止された場合、まず弁機構体70は、弁体60が弁座25に当接されて閉鎖する位置で停止される。一方、停止部材40は、図9(b)に示すように、ばね部材Sの付勢力によって弁室20方向へ移動されて、弁機構体70の後部(突起部75)に当接される。これにより、弁座25を閉鎖する位置で弁機構体70がばね部材Sに付勢された停止部材40によって押圧保持され、当該機能停止中はばね部材Sの付勢力によって閉弁状態が保持される。なお、作動軸80は弁座25の閉鎖位置で停止する弁機構体70とともに停止していることから、作動軸80は移動せずに停止部材40のみが前進される。
【0056】
図4,10(a)に示す閉弁後に作動軸80が後退した際に機能が停止された場合、前記閉弁時と同様に、まず弁機構体70が弁体60により弁座25を閉鎖する位置で停止される。そして、図10(b)に示すように、停止部材40も同様にばね部材Sの付勢力によって弁室20方向へ移動されて、弁機構体70の後端部72とともに弁機構体保持ブロック32の後端面33に当接される。これにより、弁座25を閉鎖する位置で弁機構体70がばね部材Sに付勢された停止部材40によって押圧保持され、当該機能停止中はばね部材Sの付勢力によって閉弁状態が保持される。
【0057】
また、停止部材40が前進時では、図12に示すように、停止部材40の前面部42とシリンダ部31の前面部(弁機構体保持ブロック32の後端面33)との間にエア供給部35からの加圧気体の導入が可能な間隙部Gが形成されることが好ましい。この間隙部Gにより、機能停止後に復帰させる際に、エア供給部35からの加圧気体が停止部材40の前面部42とシリンダ部31の前面部との間に効率よく導入されて、加圧気体による付勢力が停止部材40の前面部42に作用しやすくなる。そのため、機能停止後に容易かつ適切に電動弁10を復帰させることが可能となる。
【0058】
図12(a)は、弁機構体70の後端部72に複数の突起部75が形成されて、閉弁時に突起部75が弁機構体保持ブロック32の後端面33からシリンダ部31内へ突出する構造である。図12(b)は、閉弁時の弁機構体70の後端部72が弁機構体保持ブロック32の後端面33からシリンダ部31内へ突出する構造である。これらの構造では、弁機構体70の後部をシリンダ部31内へ突出させて、前進した停止部材40の前面部42とシリンダ部31の前面部とを隔離させるように構成される。
【0059】
図12(c)は、停止部材40の前面部42に突出部43を形成し、突出部43が弁機構体70の後端部72に当接される構造である。この構造では、停止部材40と弁機構体70の後端部72との当接位置が停止部材40の前面部42より前側となるため、閉弁時の弁機構体70の後部が弁機構体保持ブロック32の後端面33より前側であっても停止部材40の前面部42とシリンダ部31の前面部とを隔離させることができる。
【0060】
停止部材40の前進時にシリンダ部31の前面部側に間隙部Gを形成する構造は、上記の例に限定されず、例えば突起部を停止部材側や停止部材と弁機構体の双方に設ける等、適宜に構成することができる。
【0061】
以上図示し説明したように、本発明の電動弁10では、作動時にエア供給部35からの加圧気体の供給により、停止部材40をばね部材Sの付勢力に抗して常時駆動室50側に付勢保持して平常通りに弁機構体70の作動を可能としており、機能停止時には加圧気体の供給停止により、ばね部材Sの付勢力によって停止部材40を前進させて、その移動に伴って弁機構体70を押圧して前進させて閉弁し、閉弁を保持するように構成される。そのため、機能停止時に適切に流体を遮断することができる。
【0062】
また、平常時の作動では、閉弁後に弁機構体70を前進させずに作動軸80が後退するように構成されるため、閉弁後の電動式駆動機構51からの回転動が弁機構体70に伝達されなくなり、弁体閉鎖時の過剰な圧迫等を適切に回避することができる。したがって、本発明の電動弁10では、単独で流量調節弁と緊急停止用の開閉弁として機能させることが可能となって、配管内に流量調節弁と開閉弁とを個別に配置する必要がなくなり、コストの低減や装置の小型化を図ることができる。
【0063】
さらに、エア供給部35からの加圧気体が停止部材40の付勢保持とともに、閉弁時の弁機構体70を閉鎖方向へ付勢する。この際、弁機構体70の後端面が加圧気体の受圧面となる。これにより、一の付勢手段(加圧気体)で電動弁10作動中の弁体60の開閉操作と機能停止時の停止部材40の作動を適切に実施させることが可能である。
【0064】
なお、本発明の電動弁は、前述の実施例のみに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において構成の一部を適宜に変更して実施することができる。例えば、前述の実施例では、弁機構体がエア供給部からの加圧気体により常時閉鎖方向に付勢される構成としたが、図13,14に示すように、停止部材40と弁機構体70との間に弁機構体70を常時閉鎖方向に付勢する補助付勢部材S1を設けてもよい。補助付勢部材S1は、停止部材40を付勢するばね部材Sより付勢力が小さいばね部材からなる。図において、符号73は弁機構体70の後端部72に補助付勢部材S1が収容可能に形成された補助付勢部材収容部である。
【0065】
図13に示す閉弁時では、前進した弁機構体70が、エア供給部35からの加圧気体と補助付勢部材S1とにより弁室20方向(閉鎖方向)に付勢されている。そのため、弁体60のシール力が増加してより確実に閉弁状態を保持することができる。また、図14に示す機能停止時では、補助付勢部材S1の付勢力がばね部材Sの付勢力より小さいことから、停止部材40が補助付勢部材S1に妨げられることなく、ばね部材Sの付勢力によって前進される。その際、補助付勢部材S1は、停止部材40により押圧されて補助付勢部材収容部に収容されるため、停止部材40が弁機構体70を適切に押圧することができる。なお図示しないが、補助付勢部材収容部は停止部材側に形成してもよい。
【0066】
また、本発明の電動弁では、ハウジングや弁体等の各部が適宜のフッ素樹脂で構成されるが、例えば、弁室と弁体とをPFA又はPTFEからなるフッ素樹脂で形成し、図15~18に示す電動弁10A,10B(各図は弁室の拡大断面図)のように、弁体60aに弁座25に対して当接又は弁座25から後退して開閉する架橋PTFEからなるニードル弁部63を接合するとともに、弁座25に閉弁時にニードル弁部63と当接する架橋PTFEからなる当接部材26を接合してもよい。
【0067】
架橋PTFEは、分子同士が架橋反応して構成されたPTFEであり、例えば放射線架橋等の適宜の架橋方法により作成される。架橋PTFEは、PTFEに対して1000倍以上の耐摩耗性を有し、荷重による変形が生じにくく耐変性に優れる。特に、常温や高温のいずれでもPTFEより耐変性に優れている。また、架橋PTFEは、切削、溶接、及び貼り付け等の加工性、耐薬品性、非粘着性、電気特性、耐腐食性、清浄度等がPFAやPTFEと同等である。
【0068】
図15~18に示す例では、互いに接触する弁座25の当接部材26とニードル弁部63とが耐摩耗性に優れた架橋PTFEで構成される。半導体製造等の高い清浄度が求められる分野では、弁部もしくは弁座(当接部材)の一方を架橋PTFEとしても、他方のフッ素樹脂(PTFEやPFA)を削ってしまってパーティクルの発生を抑制する効果が十分に得られない。そこで、弁座25の当接部材26とニードル弁部63の双方を架橋PTFEとすることによって、弁部と弁座(当接部材)の接触時のパーティクルの発生を効果的に抑制することができる。
【0069】
図15,16に示す電動弁10Aは、流出部22のオリフィス径が大径に形成され、弁座25の当接部材26に当接するテーパーシール部64aが形成されたニードル弁部63aを有する。図示の実施例のニードル弁部63aでは、テーパーシール部64aが流出部22のオリフィス径未満の径の位置から傾斜角度が緩やかな角度に変化するように形成される。また、当接部材26は、オリフィス径が大径の流出部22に対応した環状に形成される。
【0070】
図17,18に示す電動弁10Bは、流出部22のオリフィス径が小径に形成され、弁座25の当接部材26に当接するフラットシール部64bが形成されたニードル弁部63bを有する。図示の実施例のニードル弁部63bでは、流出部22のオリフィス径と略同径の位置にフラットシール部64bが形成されて、閉弁時には当接部材26の上面側に当接される。また、当接部材26は、オリフィス径が小径の流出部22に対応した環状に形成される。
【0071】
PFAやPTFEと架橋PTFEとの接合は、加圧・加熱接合により行うことができる。また、弁室20がPTFEからなる場合には、図15図18に示すように、架橋PTFEからなる当接部材26は、PFAからなる弁座側接合部材90を介して弁座25に接合されることが好ましい。同様に、弁体60aがPTFEからなる場合には、架橋PTFEからなるニードル弁部63は、PFAからなる弁体側接合部材95を介して弁体60aに接合されることが好ましい。
【0072】
ここで、弁座25と当接部材26とを接合する当接部材接合工程と、弁体60aとニードル弁部63とを接合する弁部接合工程について図19~22を用いて具体的に説明する。図19に示す符号100はこれらの接合工程に用いる接合装置であり、図20~22においては、接合装置100はヒーティンブグロック110を図示して、その他の部位は省している。
【0073】
接合装置100は、当接部材26やニードル弁部63等を加圧とともに直接加熱して弁座25や弁体60aに接合させるヒーティングブロック110を有する。ヒーティングブロック110は、ニクロム線等の発熱体を有し、ヒーターケーブル111から電力が供給されて発熱する抵抗加熱により加熱を行う。また、ヒーティングブロック110の加熱部110a表面は平滑であることが好ましく、実施形態では表面粗さ(算術平均粗さ:Ra)が0.03μmである。このヒーティングブロック110の加熱部110aには、必要に応じてフッ素ガスによる腐食防止のためのDLC(ダイアモンドライクカーボン)コーティングが施される。
【0074】
図において、符号112はヒーティングブロック110が取り付けられる可動ブロック、113はヒーティングブロック110による加圧時に所定の荷重を加えるための溶着圧力調整用ウエイト、114は可動ブロックに連結されてヒーティングブロックを昇降させる空圧シリンダーや電動シリンダー等の昇降手段、115は接合装置100の支柱、116は支柱に支持された固定プレート、117はヒーティングブロック110の加熱部110aの温度を検出する温度センサー、118は可動ブロック112の変異を検出する変位センサーである。
【0075】
当接部材接合工程では、弁室20の弁座25に当接部材26を載置して、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロック110により当接部材26を加圧とともに加熱して接合が行われる。また、弁部接合工程では、弁体60aにニードル弁部63を載置して、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロック110によりニードル弁部63を加圧とともに加熱して接合が行われる。
【0076】
図19に示す例は、PFAからなる弁座25に、架橋PTFEからなる当接部材26を接合する当接部材接合工程を表す。この接合工程では、PFAの弁座25の弁座側当接部25aに、架橋PTFEの当接部材26が設置されて、ヒーティングブロック110が当接部材26に当接される。この時、ヒーティングブロック110に溶着圧力調整用ウエイト113による荷重が加わるため、架橋PTFEの当接部材26は、加圧されながら架橋PTFEの融点以上の温度で加熱されて、軟化又は半融解される。当接部材26側から加圧とともに加熱されることにより、PFAの弁座25は当接部材26との接触界面で伝熱加熱されて、融解される。これにより、架橋PTFEの当接部材26とPFAの弁座25とが、高分子の絡みによる摩擦接合の強度を超える溶融接合に近い強固な接合強度で接合される。
【0077】
なお、弁座25に接合される当接部材26は、弁座25との接合前に切削加工等により環状に加工したり、円状部材として弁座25に接合させた後に切削加工等により環状に加工したりする等、適宜に加工することができる。また、接合後に加工する場合、流出部22のオリフィスが形成される前の弁座25に当接部材26を接合させて、オリフィスの形成とともに当接部材26を環状に加工することも可能である。
【0078】
図20に示す例は、PTFEからなる弁座25に架橋PTFEからなる当接部材26を接合する当接部材接合工程を表し、PFAからなる弁座側接合部材90と弁座25又は当接部材26とを拡散接合する弁座側拡散接合工程を有する。図示の弁座側拡散接合工程では、弁座25の弁座側当接部25aに、PFAからなる弁座側接合部材90を介して当接部材26が設置され、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロック110により架橋PTFEの当接部材26を加圧とともに加熱して、弁座25と弁座側接合部材90と当接部材26とを同時に接合させる。この時、当接部材26は加熱により軟化又は半融解され、PFAからなる弁座側接合部材90及びPTFEからなる弁座25の弁座側当接部25aは、当接部材26側から加圧とともに加熱されることによって、当接部材26と弁座側接合部材90との接触界面、及び弁座側接合部材90と弁座側当接部25aとの接触界面で伝熱加熱されて、融解される。これにより、架橋PTFEの当接部材26と、PFAの弁座側接合部材90と、PTFEの弁座25とが、高分子の絡みによる摩擦接合の強度を超える溶融接合に近い強固な接合強度で接合される。
【0079】
また、図示しないが、弁座側拡散接合工程では、当接部材26と弁座側接合部材90とを接合させた後に、これらを弁座25に接合させてもよい。当接部材26と弁座側接合部材90とを接合する場合、弁座側接合部材90に当接部材26を載置して、ヒーティングブロック110により当接部材26が加圧とともに加熱されて、当接部材26と弁座側接合部材90が接合される。そして、一体となった当接部材26と弁座側接合部材90が弁座25に設置されて、ヒーティングブロック110により当接部材26が加圧とともに加熱されて、当接部材26と弁座側接合部材90と弁座25とが接合される。
【0080】
さらに、弁座側拡散接合工程では、弁座26と弁座側接合部材90とを接合させた後に、当接部材26を接合させてもよい。弁座25と弁座側接合部材90とを接合する場合、弁座25の弁座側当接部25aに弁座側接合部材90を載置して、ヒーティングブロック110により弁座側接合部材90が加圧とともに加熱されて、弁座側接合部材90と弁座25が接合される。そして、弁座25に接合された弁座側接合部材90に当接部材26が設置されて、ヒーティングブロック110により当接部材26が加圧とともに加熱されて、当接部材26と弁座側接合部材90と弁座25とが接合される。
【0081】
このように、PTFEの弁座25に架橋PTFEの当接部材26を接合する場合には、両者の間にPFAの弁座側接合部材90を介在させることが好ましい。これは、PTFEや架橋PTFEの溶融粘度が大きいのに対し、PFAの溶融粘度が小さいことから、PTFEや架橋PTFEの接合面が比較的粗い場合(例えば、算術平均粗さ:Raが0.4μm)でも、PFAがPTFEや架橋PTFEの粗い接合面に対応して溶融して十分な接合強度が得られるためである。したがって、PTFEの弁座25と架橋PTFEの当接部材26との間にPFAの弁座側接合部材90を介在させることによって、PTFEの弁座25と架橋PTFEの当接部材26とを容易に接合させることができる。
【0082】
なお、PTFEの弁座に架橋PTFEの当接部材を直に接合することも可能である。この場合、PTFEや架橋PTFEの接合面が粗いと十分な接合強度を得ることが困難となることから、接合面の算術平均粗さ(Ra)を0.1μm未満とすることが好ましい。これにより、溶融粘度が大きいPTFEと架橋PTFEとを適切に接合させることができる。
【0083】
図21に示す例は、PFAからなる弁体60aに架橋PTFEからなるニードル弁部63を接合する弁部接合工程を表す。この弁部接合工程は、弁体60aの成形前のPFAからなるブロック体B1と、ニードル弁部63の成形前の架橋PTFEからなるブロック体B2とを接合させた後に、ブロック体B1を切削加工により弁体60aに形成するとともに、ブロック体B2を切削加工によりニードル弁部63に形成する切削工程を行うことが好ましい。
【0084】
図21に示す弁部接合工程では、弁体60aとなるPFAのブロック体B1に、ニードル弁部63となる架橋PTFEのブロック体B2が載置され、架橋PTFEのブロック体B2が抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロック110により加圧とともに加熱される。この時、架橋PTFEのブロック体B2は加熱により軟化又は半融解され、PFAのブロック体B1は架橋PTFEのブロック体B2側から加圧とともに加熱されることによって、架橋PTFEのブロック体B2との接触界面で伝熱加熱されて、融解される。これにより、PFAのブロック体B1と架橋PTFEのブロック体B2とが、高分子の絡みによる摩擦接合の強度を超える溶融接合に近い強固な接合強度で接合される。
【0085】
PFAのブロック体B1と架橋PTFEのブロック体B2の接合後、切削加工によりブロック体B1が切削されて弁体60aが形成されるとともに、切削加工によりブロック体B2が切削されてニードル弁部63が形成される。このように、弁体60aの成形前のブロック体B1と、ニードル弁部63の成形前のブロック体B2とを接合した後に、切削工程によってブロック体B1を弁体60a、ブロック体B2をニードル弁部63にそれぞれ形成することにより、弁体60aにニードル弁部63を容易かつ確実に接合することができる。
【0086】
図22に示す例は、PTFEからなる弁体60aに架橋PTFEからなるニードル弁部63を接合する工程を表し、PFAからなる弁体側接合部材95とPTFEからなる弁体60a又は架橋PTFEからなるニードル弁部63とを拡散接合する弁体側拡散接合工程を有する。図示の弁体側拡散接合工程では、弁体60aとなるPTFEのブロック体B3に、PFAからなる弁体側接合部材95を介してニードル弁部63となる架橋PTFEのブロック体B2が載置され、抵抗加熱で直接加熱されるヒーティングブロック110により架橋PTFEのブロック体B2を加圧とともに加熱して、PTFEのブロック体B3とPFAの弁体側接合部材95と架橋PTFEのブロック体B2とを同時に接合させる。この時、架橋PTFEのブロック体B2は加熱により軟化又は半融解され、PFAの弁体側接合部材95及びPTFEの弁体60aは、架橋PTFEのブロックB2側から加圧とともに加熱されることによって、架橋PTFEのブロックB2と弁体側接合部材95との接触界面、及び弁体側接合部材95とPTFEのブロック体B3との接触界面で伝熱加熱されて、融解される。これにより、架橋PTFEのブロック体B2と、PFAの弁体側接合部材95と、PTFEのブロック体B3とが、高分子の絡みによる摩擦接合の強度を超える溶融接合に近い強固な接合強度で接合される。
【0087】
また、図示しないが、弁体側拡散接合工程では、架橋PTFEのブロック体B2と弁体側接合部材95とを接合させた後に、これらをPTFEのブロック体B3に接合させてもよい。ブロック体B2と弁体側接合部材95とを接合する場合、弁体側接合部材95にブロック体B2を載置して、ヒーティングブロック110によりブロック体B2が加圧とともに加熱されて、弁体側接合部材95とブロック体B2とが接合される。そして、一体となったブロック体B2と弁体側接合部材95がブロック体B3に設置されて、ヒーティングブロック110によりブロック体B2が加圧とともに加熱されて、ブロック体B2と弁体側接合部材95とブロック体B3とが接合される。
【0088】
さらに、弁体側拡散接合工程では、PTFEのブロック体B3と弁体側接合部材95とを接合させた後に、架橋PTFEのブロック体B2を接合させてもよい。ブロック体B3と弁体側接合部材95とを接合する場合、ブロック体B3に弁体側接合部材95を載置して、ヒーティングブロック110により弁座側接合部材90が加圧とともに加熱されて、弁体側接合部材95とブロック体B3が接合される。そして、ブロック体B3に接合された弁体側接合部材95に架橋PTFEのブロック体B2が設置されて、ヒーティングブロック110によりブロック体B2が加圧とともに加熱されて、ブロック体B2と弁体側接合部材95とブロック体B3とが接合される。
【0089】
PTFEのブロック体B3と弁体側接合部材95を介して架橋PTFEのブロック体B2が接合された後、切削加工によりブロック体B3が切削されて弁体60aが形成されるとともに、切削加工によりブロック体B2及び弁体側接合部材95が切削されて弁体側接合部材95が介在されたニードル弁部63が形成される。これにより、弁体60aに弁体側接合部材95を介してニードル弁部63を容易かつ確実に接合することができる。
【0090】
このように、PTFEの弁体60aに架橋PTFEのニードル弁部63を接合する場合には、両者の間にPFAの弁体側接合部材95を介在させることが好ましい。これは、PTFEの弁座25と架橋PTFEの当接部材26とを接合する場合と同様に、PTFEや架橋PTFEの接合面が比較的粗い場合(例えば、算術平均粗さ:Raが0.4μm)でも、PFAを介在させることによって十分な接合強度が得られるためである。したがって、弁体側接合部材95の介在により、PTFEの弁体60aと架橋PTFEのニードル弁部63とを容易に接合させることができる。なお、PTFEの弁体に架橋PTFEのニードル弁部を直に接合することも、PTFEの弁座に架橋PTFEの当接部材を直に接合する場合と同様に可能である。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上の通り、本発明の電動弁は、弁体閉鎖時の過剰な圧迫等を回避する機能とともに、機能停止時の流体遮断機能を備えて、単独で流量調節弁と緊急停止用の開閉弁とを兼用させることができる。そのため、半導体製造等に使用される電動弁の代替品として有望である。
【符号の説明】
【0092】
10,10A,10B 電動弁
11 ハウジング
15 センサー部
20 弁室
21 流入部
22 流出部
25 弁座
25a 弁座側当接部
26 当接部材
30 作動室
31 シリンダ部
32 弁機構体保持ブロック
33 弁機構体保持ブロックの後端面
35 エア供給部
40 停止部材
41 前側ばね受け部
42 停止部材の前面部
43 停止部材の突出部
45 係止部
46 軸受部材
50 駆動室
51 電動式駆動機構
52 電動式駆動機構のロータ
53 電動式駆動機構の配線部
54 電動式駆動機構のフロントブランケット
55 電動式駆動機構の伝達部材
56 伝達部材の貫通孔
60,60a 弁体
61 弁部
62 シール部
63,63a,63b ニードル弁部
64a テーパーシール部
64b フラットシール部
65 ダイアフラム
70 弁機構体
71 ねじ穴部
72 弁機構体の後端部
73 補助付勢部材収容部
75 突起部
80 作動軸
81 軸本体
82 螺着部
83 被検知部
84 板状部
85 規制部
90 弁座側接合部材
95 弁体側接合部材
100 接合装置
110 ヒーティングブロック
110a ヒーティングブロックの加熱部
111 ヒーターケーブル
112 可動ブロック
113 溶着圧力調整用ウエイト
114 昇降手段
115 支柱
116 固定プレート
117 温度センサー
118 変位センサー
B1,B2,B3 ブロック体
G 間隙部
S ばね部材
S1 補助付勢部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22