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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180285
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】マットレス
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/07 20060101AFI20221129BHJP
   A47C 27/045 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
A47C27/07
A47C27/045
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022002137
(22)【出願日】2022-01-11
(62)【分割の表示】P 2021086955の分割
【原出願日】2021-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】500560129
【氏名又は名称】株式会社ニトリホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】久世 庄吾
(72)【発明者】
【氏名】今井 康一
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊道
【テーマコード(参考)】
3B096
【Fターム(参考)】
3B096AD02
(57)【要約】
【課題】マットレスにおいて、一枚の布から裁断することなく複数のポケット空間を形成しつつ、複数のポケット空間を開口させることが容易なミシン目を当該布に付与する。
【解決手段】上下方向に対して垂直な平面内で直交する第1方向及び第2方向に沿って配置された複数のポケットコイルを有するマットレスであって、個々のポケットコイルを形成するコイルスプリングと、複数のコイルスプリングを収容する複数のポケット空間であって、第1方向に並ぶ複数のポケット空間を、1枚で形成する第1布と、を備え、1枚の第1布は、第2方向で複数のポケット空間の両側に、第1方向に連続するミシン目を有する、マットレスが開示される。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に対して垂直な平面内で直交する第1方向及び第2方向に沿って配置された複数のポケットコイルを有するマットレスであって、
個々のポケットコイルを形成するコイルスプリングと、
複数の前記コイルスプリングを収容する複数のポケット空間であって、前記第1方向に並ぶ複数のポケット空間を、1枚で形成する第1布と、を備え、
1枚の前記第1布は、前記第2方向で複数の前記ポケット空間の両側に、前記第1方向に連続するミシン目を有する、マットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マットレスに関する。
【背景技術】
【0002】
ポケット空間を形成する袋状体にコイルスプリングを収容することでポケットコイルを実現するマットレスが知られている。この種のマットレスにおいて、コイルスプリングごとに別々に用意された袋状体同士の側部を接着し、袋状体のそれぞれの胴回り方向にミシン目を設けるとともに、袋状体の上面は表装ユニットの下面に接着剤によって接着する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、表装ユニットを上方に引っ張ることにより袋状体のミシン目が破断して袋状体のそれぞれの上面の全てが開口することで、コイルスプリングを容易に取り出すことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-95785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような従来技術では、一枚の布を裁断して、コイルスプリングごとに別々に袋状体を形成する必要があるので、製造コストが高くなるという問題がある。また、個々に袋状体を形成することから、複数個を配列する際の誤組み付けが生じやすい。かかる誤組付けに起因して一部の袋状体のミシン目で破断が生じなくなると、全体に影響し、所望の態様ですべてのミシン目を同時に破断することができないおそれがある。
【0005】
他方、一枚の布から裁断することなく複数のポケット空間を形成する場合、個々に袋状体を形成する場合の上述した問題点の一部を解消できうる反面、複数のポケット空間同士が布で連続していることから、複数のポケット空間を容易に開口させることができるミシン目を形成することが難しくなる。
【0006】
そこで、本開示は、マットレスにおいて、一枚の布から裁断することなく複数のポケット空間を形成しつつ、複数のポケット空間を開口させることが容易なミシン目を当該布に付与することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの側面では、上下方向に対して垂直な平面内で直交する第1方向及び第2方向に沿って配置された複数のポケットコイルを有するマットレスであって、
個々のポケットコイルを形成するコイルスプリングと、
複数の前記コイルスプリングを収容する複数のポケット空間であって、前記第1方向に並ぶ複数のポケット空間を、1枚で形成する第1布と、を備え、
1枚の前記第1布は、前記第2方向で複数の前記ポケット空間の両側に、前記第1方向に連続するミシン目を有する、マットレスが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、マットレスにおいて、一枚の布から裁断することなく複数のポケット空間を形成しつつ、複数のポケット空間を開口させることが容易なミシン目を当該布に付与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】マットレスの使用状態を示す斜視図である。
図2】マットレスの断面構造の説明図であり、マットレスの断面構造の概略図である。
図2A】他の実施例によるマットレスの断面構造の概略図である。
図3】スプリングコイル層におけるコイルスプリングの配列態様を上面視で模式的に示す図である。
図4】コイルスプリングのそれぞれが収容されるポケット空間を形成する不織布の説明図である。
図5】一の列の複数のコイルスプリングに対してのそれぞれが収容されるポケット空間を形成する不織布の平面図である。
図6】不織布からポケット空間を形成する方法の説明図である。
図7】一の列の複数のポケット空間のうちの、3つのポケット空間を抜き出してY方向に視た側面図である。
図8】一の列の複数のポケット空間のうちの、3つのポケット空間を抜き出してX方向に視た側面図である。
図9図7のラインA―Aに沿った概略的な断面図である。
図10図7のラインB-Bに沿った概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら各実施例について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率はあくまでも一例であり、これに限定されるものではなく、また、図面内の形状等は、説明の都合上、部分的に誇張している場合がある。本明細書において、不織布のような布に関する一枚とは、製品状態での一枚であり、層間が一体化されている限り多層構造も含む概念である。
【0011】
図1は、マットレス20の使用状態を示す斜視図である。図1には、右手座標系でX,Y,Z軸が定義されている。以下の説明において、上下方向(Z方向)は、マットレス20の使用状態を基準とする。マットレス20は、寝具であり、ベッドフレーム7上に載置されて使用される。また、マットレス20は、上下を変更可能となりうるが、マットレス20の上側及び下側については、特に言及しない限り、図1に示す状態を基準とする。なお、上下変更可能でないマットレスの場合(例えば図2Aのマットレス20A参照)、ユーザに上側が明確になるよう、ロゴ等がマットレスの側部に付されてよい。
【0012】
図2は、マットレス20の断面構造の説明図であり、マットレス20の断面構造の概略図である。図3は、スプリングコイル層223におけるコイルスプリング223a、223bの配列態様を上面視で模式的に示す図である。図3には、図1と同様のX方向(第1方向の一例)とY方向(第2方向の一例)が定義されており、ここでは、マットレス20の長手方向がX方向に対応する。
【0013】
図2に示す例では、マットレス20は、キルティング部21(以下、区別のため、「上側キルティング部21」とも称する)と、詰め物部22と、キルティング部23(以下、区別のため、「下側キルティング部23」とも称する)とからなる。
【0014】
上側キルティング部21は、上側から、表面生地211と、人工綿212と、ソフトウレタン213と、不織布214とからなる。なお、上側キルティング部21の構成は、これに限られず、他の材料が追加されてもよいし、一部の材料が省略されてもよい。
【0015】
表面生地211は、例えば抗菌・防臭・防ダニ機能を有するニット生地であってよい。表面生地211は、好ましくは、密度が180g/m以上である。表面生地211は、例えば厚みが1mmであってよい。
【0016】
人工綿212は、例えば密度が約140g/mであってよい。また、人工綿212は、例えば厚みが10mmであってよい。
【0017】
ソフトウレタン213は、例えば密度がD28であってよい。また、ソフトウレタン213は、例えば厚みが15mmであってよい。
【0018】
不織布214は、例えば密度が約40g/mであってよい。また、不織布214は、例えば厚みが0.25mmであってよい。
【0019】
詰め物部22は、上側から、不織布220と、ソフトウレタン221と、不織布222(第2布の一例)と、スプリングコイル層223と、不織布224(第2布の一例)と、ソフトウレタン225と、不織布226とからなる。
【0020】
不織布220は、例えば密度が約40g/mであってよい。また、不織布220は、例えば厚みが0.25mmであってよい。
【0021】
ソフトウレタン221は、例えば密度がD21であってよい。また、ソフトウレタン221は、例えば厚みが20mmであってよい。ソフトウレタン221は、上側が凹凸状に形成されてもよい。これにより、体圧分散値が向上する。
【0022】
不織布222は、例えば密度が約80g/mであってよい。また、不織布222は、例えば厚みが0.25mmであってよい。
【0023】
スプリングコイル層223は、ポケットコイルをそれぞれ形成する複数のコイルスプリング223a、223bが平行配列形態で配列される。コイルスプリング223a、223bの各列は、マットレス20の長手方向(X方向)に延在し、マットレス20の短手方向(Y方向)で互いに接する。各列におけるコイルスプリング223a、223bの数は、同じであってよい。なお、変形例では、複数のコイルスプリング223aが交互配列形態で配列されてもよい。
【0024】
本実施例では、一例として、図3に示すように、短手方向(Y方向)の上から順に第1列から第7列としたとき、第3列から第5列は、複数のコイルスプリング223aにより構成され、他の列は、複数のコイルスプリング223bにより構成される。このようにして、2種類のコイルスプリング223a、223bを利用することで、寝心地を効果的に高めることができる。ただし、変形例では、1種類又は3種類上のコイルスプリングが利用されてもよい。
【0025】
スプリングコイル層223を形成するコイルスプリング223aは、線径(鋼線径)が1.8mmであり、コイル径が62mmである。また、スプリングコイル層223を形成するコイルスプリング223aは、巻き数が5巻であり、コイル高さが自由長で170mmであり、ポケット時は100mmである。各コイルスプリング223aは、例えば提灯型であってよい。
【0026】
また、スプリングコイル層223を形成するコイルスプリング223bは、線径(鋼線径)が2.2mmであり、コイル径が62mmである。また、スプリングコイル層223を形成するコイルスプリング223bは、巻き数が5.5巻であり、コイル高さが自由長で140mmであり、ポケット時は100mmである。各コイルスプリング223bは、例えば提灯型であってよい。
【0027】
不織布224は、例えば密度が約80g/mであってよい。また、不織布224は、例えば厚みが0.25mmであってよい。
【0028】
ソフトウレタン225は、例えば密度がD21であってよい。また、ソフトウレタン225は、例えば厚みが15mmであってよい。
【0029】
不織布226は、例えば密度が約40g/mであってよい。また、不織布226は、例えば厚みが0.25mmであってよい。
【0030】
下側キルティング部23は、上側から、不織布231と、ソフトウレタン232と、人工綿233と、表面生地234とからなる。なお、下側キルティング部23の構成は、これに限られず、他の材料が追加されてもよいし、一部の材料が省略されてもよい。
【0031】
不織布231は、例えば密度が約40g/mであってよい。また、不織布231は、例えば厚みが0.25mmであってよい。
【0032】
ソフトウレタン232は、例えば密度がD28であってよい。また、ソフトウレタン232は、例えば厚みが15mmであってよい。
【0033】
人工綿233は、例えば密度が約140g/mであってよい。また、人工綿233は、例えば厚みが10mmであってよい。
【0034】
表面生地234は、例えば抗菌・防臭・防ダニ機能を有するニット生地であってよい。表面生地234は、好ましくは、密度が180g/m以上である。表面生地234は、例えば厚みが1mmであってよい。
【0035】
なお、図2では、特定の構成のマットレス20が示されているが、スプリングコイル層223を有し、かつ、スプリングコイル層223が後述する構成を有する限り、任意である。例えば、図2Aに示すような構成のマットレス20Aであってもよい。この場合、ソフトウレタン232に代えてニードルパンチ232A等が利用されている。このようなマットレス20Aの場合、上下変更可能でない使用態様(すなわち、常にZ方向正側が上側となる使用態様)に好適である。
【0036】
次に、図4以降を参照して、スプリングコイル層223の詳細を説明する。なお、以下では、代表として、コイルスプリング223aに係る列の構成について説明するが、コイルスプリング223bに係る列についても実質的に同様である。
【0037】
図4は、コイルスプリング223aのそれぞれが収容されるポケット空間S1を形成する不織布250(第1布の一例)の説明図である。
【0038】
不織布250は、図4に示すように、ロール状に巻回された形態を取ることができ、巻出される際に、ミシン目形成刃400(図4では一つだけ図示)によりミシン目252が形成される。ミシン目252は、図4に示すように、2本平行に形成される。
【0039】
図5は、一の列の複数のコイルスプリング223a(図3では、11個のコイルスプリング223a)に対して、それぞれが収容されるポケット空間S1を形成する不織布250の平面図である。図5には、ポケット空間S1を形成する前の展開状態の不織布250が示されている。図5において、一点鎖線L1は、不織布250のY方向の中心線を表し、上下端のハッチング部は、後述する溶着部258に対応する。図6は、不織布250からポケット空間S1を形成する方法の説明図である。図7は、一の列の複数のポケット空間S1のうちの、3つのポケット空間S1を抜き出してY方向に視た側面図である。図7では、説明用に、不織布250により形成されるポケット空間S1内のコイルスプリング223aを透視で模式的に示している。図7(以下の図8及び図9も同様)では、各溶着部256、258や接着剤80から84がハッチングで模式的に示されている。図8は、Y方向で隣り合う3つの列のポケット空間S1を抜き出してX方向に視た側面図である。図8でも、説明用に、不織布250により形成されるポケット空間S1内のコイルスプリング223aを透視で模式的に示している。図7及び図8には、ポケット空間S1の上側と下側の不織布222、224も併せて示されている。図9は、図7のラインA―Aに沿った概略的な断面図であり、図10は、図7のラインB-Bに沿った概略的な断面図である。なお、図7のラインB-Bは、説明用に、ミシン目252からわずかにずらして図示しているが、ミシン目252に沿ったラインである。
【0040】
不織布250は、図4に示すように、ミシン目252をX方向に平行に2本を有する。不織布250の展開状態において、Y方向でのミシン目252間の距離は、コイルスプリング223aの外径よりも大きい。
【0041】
各列のコイルスプリング組立体(溶着部256、258により一体化された不織布250とコイルスプリング223aからなる組立体)を形成する際、図6に模式的に示すように、一の列を構成するすべてのコイルスプリング223aは、一枚の不織布250におけるミシン目252間の表面に対して、コイル中心軸が垂直となる向きでセットされる。このとき、各コイルスプリング223aは、各コイルスプリング223aのコイル中心軸を結んだ線分(図6の一点鎖線L2参照)が、2本のミシン目252間の略中心(Y方向の中心)となるように、一枚の不織布250に対して位置付けられる。
【0042】
このように不織布250及び複数のコイルスプリング223aがセットされた状態から、不織布250のY方向両端部同士を重ね合わせる態様で不織布250を折り返すことで、複数のコイルスプリング223aが不織布250により包み込まれる。この際、X方向に連続する2本のミシン目252は、複数のコイルスプリング223aのY方向両側に位置することになる。
【0043】
そして、不織布250のY方向両端部同士が溶着されることで、溶着部258が形成される。すなわち、一の列に係る不織布250は、一の列に係るポケット空間S1のそれぞれのY方向一方側の側部に、端部同士を接合する溶着部258(第2溶着部の一例)を有する。また、X方向で隣り合う各コイルスプリング223aに係るポケット空間S1を仕切る態様で、溶着部256(第1溶着部の一例)が形成される。図6に示す例では、溶着部256は、不織布250における溶着部256として溶着される箇所が、256-1から256-3で示されている。この場合、対の箇所256-1同士が溶着されることで、一の溶着部256が形成され、対の箇所256-2同士が溶着されることで、他の一の溶着部256が形成され、対の箇所256-3同士が溶着されることで、更なる他の一の溶着部256が形成される。
【0044】
このようにして形成される各列のコイルスプリング組立体(溶着部256、258により一体化された不織布250とコイルスプリング223aからなる組立体)は、図8に示すように、Y方向側部同士が接着剤80により接合される。また、各列のコイルスプリング組立体は、図7及び図8に示すように、XY平面内に延在する上側の不織布222に接着剤82により接合されるとともに、XY平面内に延在する下側の不織布224に接着剤84により接合される。なお、不織布222は、一のマットレス20におけるすべてのコイルスプリング223a、223bに対して共通であり、各列のポケット空間S1を形成する不織布250に接着(固着)される。このような不織布222を設けることで、各ポケット空間S1の間に、マットレス20の表面に対して垂直な方向の局所的な荷重(外部荷重)が付加された場合でも、局所的な沈み込み(各ポケット空間S1の間へのめり込み)を防止できる。これは、不織布224についても同様である。
【0045】
本実施例によれば、このように各列に対して1枚の不織布250を利用して、各列のポケット空間S1を形成するので、ポケット空間S1ごとに、不織布250を裁断して形成する必要がなく、生産性が大幅に向上する。
【0046】
また、本実施例によれば、上述したように、一の列に係る不織布250は、Y方向で一の列に係る各ポケット空間S1の両側に、X方向に連続するミシン目252を有する。また、2本のミシン目252は、図10に示すように、実質的に略同じ高さに位置し、上面視で、各コイルスプリング223aを囲繞する態様で、X方向に連続する。
【0047】
これにより、マットレス20の廃棄の際に、不織布222を、スプリングコイル層223から剥がす方向にスプリングコイル層223に対して引っ張ると、不織布222が接着剤82により不織布250に接着されていることから、不織布250のミシン目252に大きな力が加わる。これにより、各列のミシン目252が連続的に破断していく。このようにして、本実施例によれば、各列のポケット空間S1に対して各ポケット空間S1の上側を容易に開口させることができる。
【0048】
また、本実施例によれば、上述したように、不織布250の展開状態において、Y方向でのミシン目252間の距離は、コイルスプリング223aの外径よりも大きい。従って、ポケット空間S1にコイルスプリング223aが収容された状態では、図7及び図8に示すように、ミシン目252は、コイルスプリング223aの最も上側の巻線2231よりも下側、かつ、コイルスプリング223aの最も下側の巻線2232よりも上側であって、コイルスプリング223aの軸方向の中心よりも上側に偏った位置に形成される。例えば、図7に示すように、ポケット空間S1の上面からのミシン目252の距離Δ1は、12-18mmの範囲内であってよい。これにより、不織布222をスプリングコイル層223から剥がす方向に引っ張ることでミシン目252を破断させる際に、不織布250におけるミシン目252よりも上側の部分がコイルスプリング223aに引っかかる可能性が低くなる。なお、不織布222をスプリングコイル層223から剥がす方向に引っ張ることでミシン目252を破断させる際に、不織布250におけるミシン目252よりも上側の部分がコイルスプリング223aに引っかかると、不織布222を引っ張る力の一部がコイルスプリング223aに掛かり、その分だけ、ミシン目252を破断させるのに要する力が大きくなる。これに対して、本実施例によれば、比較的低い力でミシン目252を破断させることができ、各ポケット空間S1の上側を開口させる際の作業性を高めることができる。
【0049】
なお、ミシン目252がコイルスプリング223aの軸方向の中心より下側に位置する場合には、ミシン目252を破断させて、不織布250におけるミシン目252よりも上側の部分を不織布222とともに除去する際にも、不織布250におけるミシン目252よりも上側の部分が、コイルスプリング223aに引っ掛かる可能性がある。このような引っ掛かりは、作業性を悪化させる。この点、本実施例によれば、このような不都合が生じ難く、各ポケット空間S1の上側を開口させる際の作業性を高めることができる。
【0050】
また、本実施例によれば、上述したように、不織布250の展開状態において、Y方向でのミシン目252間の距離が、コイルスプリング223aの外径よりも大きいことから、ポケット空間S1の上側が開口した状態では、コイルスプリング223aを容易にポケット空間S1の上側の開口を介して取り出すことができる。すなわち、コイルスプリング223aを取り出す際の作業性も高めることができる。
【0051】
本実施例では、溶着部256は、好ましくは、図7に示すように、上下方向でミシン目252の手前で終端する態様で、上下方向に沿って形成される。なお、本実施例では、X方向で2つのポケット空間S1間に形成される溶着部256は、上下方向で3つに分断された形態であるが、より多くの数であってもよいし、少ない数であってもよい。また、X方向で2つのポケット空間S1間に形成される溶着部256は、上下方向に連続する態様で形成されてもよい。
【0052】
このようにして、本実施例では、X方向でポケット空間S1を仕切る溶着部256がミシン目252よりも下側に配置されるので、ミシン目252が溶着部256に含まれる場合(すなわち溶着部256を形成するためにミシン目252が溶着される場合)に比べて、ミシン目252を破断させる際の作業性が向上する。すなわち、図10に示すように、Y方向でミシン目252同士が溶着することがなく、ミシン目252を連続的に破断させる際に要する力を適切に低減できる。
【0053】
また、本実施例では、ミシン目252は、図8に模式的に示すように、不織布250のY方向端部同士を接合する溶着部258よりも上側に位置する。これにより、ミシン目252が溶着部258に含まれる場合(すなわち溶着部258を形成するためにミシン目252が溶着される場合)に比べて、ミシン目252を破断させる際の作業性が向上する。すなわち、破断させる際に要する力を適切に低減できる。
【0054】
なお、図4以降では、X方向に並ぶポケット空間S1の列ごとに一枚の不織布250を利用しているが、Y方向に並ぶポケット空間S1の列ごとに一枚の不織布250を利用してもよい。なお、かかる構成は、図4以降の説明において、X方向及びY方向を、Y方向及びX方向とそれぞれ読み替えた構成である。この場合も実質的に同じ効果が得られる。
【0055】
以上、各実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0056】
例えば、上述した実施例では、ミシン目252は、コイルスプリング223a、223bの上下方向の中心に対して上側に偏った位置に形成されているが、これに代えて又は加えて、ミシン目252は、コイルスプリング223a、223bの上下方向の中心に対して下側に偏った位置に、形成されてもよい。この場合、逆側から(すなわち、下側の不織布224をスプリングコイル層223から剥がす方向に)引っ張ってミシン目を破断させやすい構成を実現できる。例えば、マットレス20が上下変更可能である場合、ミシン目252が、コイルスプリング223a、223bの上下方向の中心に対して上側に偏った位置と、コイルスプリング223a、223bの上下方向の中心に対して下側に偏った位置とにそれぞれ形成されていれば、ユーザはマットレス20の上下方向を意識することなく、不織布222又は不織布224を引っ張って上側又は下側のミシン目を破断させることができる。
【0057】
以上の実施例に関して、以下の付記を更に開示する。
【0058】
[付記1]
上下方向に対して垂直な平面内で直交する第1方向及び第2方向に沿って配置された複数のポケットコイルを有するマットレスであって、
個々のポケットコイルを形成するコイルスプリングと、
複数の前記コイルスプリングを収容する複数のポケット空間であって、前記第1方向に並ぶ複数のポケット空間を、1枚で形成する第1布と、を備え、
1枚の前記第1布は、前記第2方向で複数の前記ポケット空間の両側に、前記第1方向に連続するミシン目を有する、マットレス。
【0059】
[付記2]
1枚の前記第1布は、前記第1方向に並ぶ複数の前記ポケット空間のそれぞれを仕切る第1溶着部を有し、
前記第1溶着部は、上下方向で前記ミシン目の手前で終端する態様で、上下方向に沿って形成される、付記1に記載のマットレス。
【0060】
[付記3]
前記第1布は、前記第1方向に並ぶ複数の前記ポケット空間が、前記第2方向に隣り合う態様で複数の列を形成するように、列ごとに1枚ずつ用いられ、
前記複数の列に係る複数の前記第1布に固着される1枚の第2布であって、前記複数の列に係る複数の前記ポケット空間の上側又は下側で、前記第1方向及び前記第2方向により形成される平面内に延在する第2布を更に備える、付記1又は2に記載のマットレス。
【0061】
[付記4]
一の列に係る前記第1布は、前記一の列に係る複数の前記ポケット空間のそれぞれの前記第2方向一方側の側部に、該第1布の端部同士を接合する第2溶着部を有し、
前記ミシン目は、前記第2溶着部よりも上側又は下側に位置する、付記3に記載のマットレス。
【0062】
[付記5]
前記ミシン目は、前記コイルスプリングの最も上側の巻線よりも下側、かつ、前記コイルスプリングの最も下側の巻線よりも上側であって、前記コイルスプリングの軸方向の中心よりも上側又は下側に偏った位置に形成される、付記1~4のうちのいずれか1項に記載のマットレス。
【符号の説明】
【0063】
7 ベッドフレーム
20、20A マットレス
21 上側キルティング部
22 詰め物部
23 下側キルティング部
80 接着剤
82 接着剤
84 接着剤
211 表面生地
212 人工綿
213 ソフトウレタン
214 不織布
220 不織布
221 ソフトウレタン
222 不織布
223 スプリングコイル層
223a コイルスプリング
223b コイルスプリング
224 不織布
225 ソフトウレタン
226 不織布
231 不織布
232 ソフトウレタン
233 人工綿
234 表面生地
250 不織布
252 ミシン目
256 溶着部
258 溶着部
400 ミシン目形成刃
2231 巻線
2232 巻線
図1
図2
図2A
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10