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  • 特開-二層相化粧料組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180302
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】二層相化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/03 20060101AFI20221129BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20221129BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20221129BHJP
   A61K 8/87 20060101ALI20221129BHJP
   A61K 8/898 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
A61K8/03
A61K8/81
A61K8/73
A61K8/87
A61K8/898
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022069422
(22)【出願日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0066274
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】514112488
【氏名又は名称】エルジー ハウスホールド アンド ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ナキュン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ナム-ソ・ソン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC112
4C083AC532
4C083AC542
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD271
4C083AD351
4C083AD352
4C083BB41
4C083BB44
4C083BB48
4C083CC04
4C083DD05
4C083DD08
4C083EE06
4C083EE07
4C083FF05
(57)【要約】
【課題】本発明は、水相部としての負電荷ポリマー、及び油相部としての正電荷ポリマーを含有する二層相化粧料組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の一実施例によれば、水相部としての負電荷ポリマー、及び油相部としての正電荷ポリマーを含有する二層相化粧料組成物及びその製造方法が提供される。本発明の一実施例によれば、本発明の化粧料組成物は、水相部に負電荷のポリマーを含有し、油相部に正電荷のポリマーを含有するので、振ると生成される一時的かつ静電気的なコアセルベートによりオイル粒子が容易に分散すると共に、消費者が使用する間は十分に分離状態が維持され、剤形の消費が進んでも本来の組成比が変化せず、使用性の向上や品質が維持される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相部としての負電荷ポリマー、及び油相部としての正電荷ポリマーを含有する二層相化粧料組成物。
【請求項2】
前記負電荷ポリマーと前記正電荷ポリマーは、コアセルベートを形成し、二層相分離時間を遅延させることを特徴とする、請求項1に記載の二層相化粧料組成物。
【請求項3】
前記組成物は、二層相分離を3~30分遅延させることを特徴とする、請求項2に記載の二層相化粧料組成物。
【請求項4】
前記負電荷ポリマーと前記正電荷ポリマーは、1:0.1~10の比率で混合されるものである、請求項1に記載の二層相化粧料組成物。
【請求項5】
前記負電荷ポリマーは、ポリメタクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、スルホネートポリマー、カルボキシメチルセルロース、アクリレートコポリマー、カルボキシグアー、アクリレートシリコンコポリマー、カルボマー、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコール、カラギーナンガム、キサンタンガム、セルロースガム、カラヤガム、アカシアガム、アラビアガム、PVM/MAコポリマー、ポリウレタン&アクリレートコポリマー、VA/クロトナートコポリマー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項6】
前記正電荷ポリマーは、アミノプロピルジメチコン及びアモジメチコンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項7】
前記負電荷ポリマーは、化粧料組成物の総重量に対して0.01~0.1重量部含まれる、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項8】
前記正電荷ポリマーは、化粧料組成物の総重量に対して0.01~0.1重量部含まれる、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項9】
前記化粧料組成物は、pH調整剤、変色防止剤、色素、香料、防腐剤及び鎮静剤からなる群から選択されるいずれか1つ又は2つ以上の混合物をさらに含む、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項10】
前記化粧料組成物は、柔軟化粧水、栄養化粧水、保湿剤、スプレー及びエッセンスからなる群から選択されるいずれか1つの剤形に形成される、請求項1に記載の化粧料組成物。
【請求項11】
負電荷ポリマーを含有する水相部を作製するステップと、
正電荷ポリマーを含有する油相部を作製するステップと、
前記水相部に油相部を混合するステップとを含む、二層相化粧料組成物の製造方法。
【請求項12】
負電荷ポリマーを含有する水相部と、正電荷ポリマーを含有する油相部とを含む、化粧料組成物の二層相分離遅延用組成物。
【請求項13】
負電荷ポリマーを含有する水相部を作製するステップと、
正電荷ポリマーを含有する油相部を作製するステップと、
前記水相部に油相部を混合するステップとを含む、化粧料組成物の二層相分離遅延方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水相部としての負電荷ポリマー、及び油相部としてのカチオンポリマーを含有し、混合しやすさが向上した二層相化粧料組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日毎に損失する皮膚の水分と油分を補充するために、化粧料は、水分を供給する水相層と、油分を供給する油相層とから構成されている。従来、化粧料は界面活性剤などを用いて水相層と油相層を混合して製造するのが一般的であったが、近年、界面活性剤に対する否定的な認識と機能性向上という目的のため、他の形状の化粧料が提示されている。
【0003】
そのうち、二層相化粧料は、物理的な力で振って水相層と油相層を一時的に均一な分散相にする化粧料である。液状化粧料のさっぱり感を維持しつつ、オイルを多量に含有しているので保湿感を向上させることができる。近年、最小限の成分でシンプルながらも機能に忠実で、外観が差別化された興味をそそる製品に対する市場の関心が高まっており、有効成分を肉眼で直に見ることのできる二層相構造の製品が多数発売されている。
【0004】
しかし、二層相構造の化粧品を均一に分散させるためには、大きな力や長時間の混合を要するという不便があるだけでなく、一時的な分散相は、分離が速く、使用利便性に劣る。また、使用回数が増えると、残量が減るにつれて最初の二層相の組成比が変化するという問題がある。
【0005】
そのために、界面活性剤や増粘剤を用いて二層相構造の化粧料における使用性や分離時間を調節しようと試みられている。しかし、界面活性剤を用いる場合は、油化のために強いエネルギーで混合する必要があり、使用後に十分に放置しても二層相に戻らなかったり、油相と水相間の境界が明確に分離されないという問題があった。また、増粘剤を用いる場合は、増粘剤の量が増えるほどさっぱりした使用感が低下し、従来の二層相構造の化粧料の利点が半減するという欠点があった。
【0006】
こうした背景の下、本発明者らは、水相部に負電荷ポリマーを含有させ、油相部に正電荷ポリマーを含有させると、振ると生成される一時的かつ静電気的なコアセルベートによりオイル粒子が容易に分散すると共に、消費者が使用する間は十分に分離状態が維持され、剤形の消費が進んでも本来の組成比が変化せず、使用性の向上や品質が維持されることを確認し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水相部としての負電荷ポリマー、及び油相部としての正電荷ポリマーを含有する二層相化粧料組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、前記二層相化粧料組成物の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、負電荷ポリマーを含有する水相部と、正電荷ポリマーを含有する油相部とを含む化粧料組成物の二層相分離遅延用組成物を提供することを目的とする。
【0010】
さらに、本発明は、前記化粧料組成物の二層相分離遅延方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施例によれば、水相部としての負電荷ポリマー、及び油相部としての正電荷ポリマーを含有する二層相化粧料組成物が提供される。
【0012】
本発明の一実施例によれば、前記負電荷ポリマーと前記正電荷ポリマーは、コアセルベートを形成し、二層相分離時間を遅延させることを特徴とする二層相化粧料組成物が提供される。
【0013】
本発明の一実施例によれば、前記化粧料組成物は、二層相分離を3~30分遅延させることを特徴とする二層相化粧料組成物が提供される。
【0014】
本発明の一実施例によれば、前記負電荷ポリマーと前記正電荷ポリマーは、1:0.1~10の比率で混合されるものである二層相化粧料組成物が提供される。
【0015】
本発明の一実施例によれば、前記負電荷ポリマーは、ポリメタクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、スルホネートポリマー、カルボキシメチルセルロース、アクリレートコポリマー、カルボキシグアー、アクリレートシリコンコポリマー、カルボマー、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコール、カラギーナンガム、キサンタンガム、セルロースガム、カラヤガム、アカシアガム、アラビアガム、PVM/MAコポリマー、ポリウレタン&アクリレートコポリマー、VA/クロトナートコポリマー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種である化粧料組成物が提供される。
【0016】
本発明の一実施例によれば、前記正電荷ポリマーは、アミノプロピルジメチコン及びアモジメチコンからなる群から選択される少なくとも1種である化粧料組成物が提供される。
【0017】
本発明の一実施例によれば、前記負電荷ポリマーは、化粧料組成物の総重量に対して0.01~0.1重量部含まれる化粧料組成物が提供される。
【0018】
本発明の一実施例によれば、前記正電荷ポリマーは、化粧料組成物の総重量に対して0.01~0.1重量部含まれる化粧料組成物が提供される。
【0019】
本発明の一実施例によれば、前記化粧料組成物は、pH調整剤、変色防止剤、色素、香料、防腐剤及び鎮静剤からなる群から選択されるいずれか1つ又は2つ以上の混合物をさらに含む化粧料組成物が提供される。
【0020】
本発明の一実施例によれば、柔軟化粧水、栄養化粧水、保湿剤、スプレー及びエッセンスからなる群から選択されるいずれか1つの剤形に形成される化粧料組成物が提供される。
【0021】
本発明の一実施例によれば、負電荷ポリマーを含有する水相部を作製するステップと、正電荷ポリマーを含有する油相部を作製するステップと、前記水相部に油相部を混合するステップとを含む、二層相化粧料組成物の製造方法が提供される。
【0022】
本発明の一実施例によれば、負電荷ポリマーを含有する水相部と、正電荷ポリマーを含有する油相部とを含む、化粧料組成物の二層相分離遅延用組成物が提供される。
【0023】
本発明の一実施例によれば、負電荷ポリマーを含有する水相部を作製するステップと、正電荷ポリマーを含有する油相部を作製するステップと、前記水相部に油相部を混合するステップとを含む、化粧料組成物の二層相分離遅延方法が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一実施例によれば、本発明の化粧料組成物は、水相部に負電荷ポリマーを含有し、油相部に正電荷ポリマーを含有するので、振ると生成される一時的かつ静電気的なコアセルベートによりオイル粒子が容易に分散すると共に、消費者が使用する間は十分に分離状態が維持され、剤形の消費が進んでも本来の組成比が変化せず、使用性の向上や品質が維持される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施例において使用回数による二層相組成の変化を確認した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、これらを具体的に説明する。なお、本発明で開示される各説明及び実施形態はそれぞれ他の説明及び実施形態にも適用される。すなわち、本発明で開示される様々な要素のあらゆる組み合わせが本発明に含まれる。また、以下の具体的な記述に本発明が限定されるものではない。
【0027】
また、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、通常の実験のみを用いて本発明に記載された本発明の特定の態様の多くの等価物を認識し、確認することができるであろう。さらに、その等価物も本発明に含まれるものと理解されるべきである。
【0028】
本発明の一実施例による化粧料組成物は、水相部に負電荷ポリマーを少量含有させ、油相部に正電荷ポリマーを少量含有させると、前記ポリマーがコアセルベートを形成し、再び二層相に分離することを遅延させ、複数回使用しても同等の品質を維持することが確認されたことに基づくものである。
【0029】
以下、本発明の一実施例による化粧料組成物についてより詳細に説明する。
【0030】
本発明における「水相部」とは、親水性が強く、親水層が形成された分離層を意味し、負電荷ポリマーを含有するものである。前記負電荷ポリマーは、マイナスの電気的性質を有するポリマーであり、本発明の目的上、アニオン性ポリマー又はアニオンポリマーと混用される。
【0031】
例えば、前記負電荷ポリマーとしては、ポリメタクリル酸、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸、スルホネートポリマー、カルボキシメチルセルロース、アクリレートコポリマー、カルボキシグアー、アクリレートシリコンコポリマー、カルボマー、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコール、カラギーナンガム、キサンタンガム、セルロースガム、カラヤガム、アカシアガム、アラビアガム、PVM/MAコポリマー、ポリウレタン&アクリレートコポリマー、VA/クロトナートコポリマー及びそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種を用いることができ、具体的にはカルボマー又はキサンタンガムを用いることができるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
前記負電荷ポリマーは、化粧料組成物の総重量に対して0.001~1重量部、具体的には0.01~0.1重量部含まれるものであるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
本発明における「油相部」とは、疎水性又は親油性が強く、親油層が形成された分離層を意味し、具体的には、正電荷ポリマーを含有するものである。前記正電荷ポリマーは、プラスの電気的性質を有するポリマーであり、本発明の目的上、カチオン性ポリマー又はカチオンポリマーと混用される。
【0034】
例えば、前記正電荷ポリマーは、負電荷ポリマーと一時的なコアセルベートを形成することができるものであればいかなるものでもよく、具体的には、アミノプロピルジメチコン又はアモジメチコンの少なくとも1種が含まれ、より具体的には、アモジメチコンであるが、これらに限定されるものではない。
【0035】
前記正電荷ポリマーは、化粧料組成物の総重量に対して0.001~1重量部、具体的には0.01~0.1重量部含まれるものであるが、これらに限定されるものではない。
【0036】
本発明の化粧料組成物は、水相部としての負電荷ポリマー、及び油相部としての正電荷ポリマーを含有し、前記負電荷ポリマーと前記正電荷ポリマーが一時的かつ静電気的なコアセルベートを形成し、化粧料組成物の二層相分離時間を遅延させることを特徴とするものであってもよい。
【0037】
本発明における「コアセルベート」とは、コロイド状の高分子化合物が連続相に沈殿せず、分散した不連続相を形成するものを意味し、本発明においては、負電荷ポリマーと正電荷ポリマーが一時的かつ静電気的に結合するものを意味する。
【0038】
本発明の一実施例による化粧料組成物は、コアセルベーションを形成するポリマー以外の増粘剤を実質的に含まないものであってもよい。前記「増粘剤を実質的に含まない」とは、本発明による組成物が増粘剤を含むとしても、水相及び油相の粘度が100cps以下となり、二層相分離の遅延に影響を及ぼさない程度に微量含むことを意味する。
【0039】
本発明の一実施例による化粧料組成物は、界面活性剤を実質的に含まないものであってもよい。前記「界面活性剤を実質的に含まない」とは、本発明による組成物が界面活性剤を含むとしても、水相及び油相の粘度が100cps以下となり、二層相分離の遅延に影響を及ぼさない程度に微量含むことを意味する。
【0040】
本発明の一実施例による化粧料組成物は、二層相が混合した相を供給する力より大きないかなる剪断力を供給しても、二層相分離遅延時間が3~30分、具体的には3~15分、より具体的には3~10分間以内であることを特徴とする。前記「二層相分離遅延時間」とは、剪断力の供給を終えて静置した直後から、二層相化粧料の境界面が肉眼で明らかに観察されるまでの時間を意味する。
【0041】
本発明の一実施例による化粧料組成物は、二層相化粧料の水相部の粘度が1000cps以下、具体的には100cps以下である二層相化粧料組成物であってもよい。
【0042】
本発明の一実施例による化粧料組成物は、二層相化粧料の油相部の粘度が1000cps以下、具体的には100cps以下である二層相化粧料組成物であってもよい。
【0043】
本発明の一実施例による化粧料組成物は、振ると、すなわち剪断力を供給すると、外相が水相又は油相になる、具体的には水相になる二層相化粧料組成物であってもよい。
【0044】
本発明の一実施例による化粧料組成物は、pH調整剤、変色防止剤、色素、香料、防腐剤、鎮静剤及び機能性成分からなる群から選択されるいずれか1つ又は2つ以上の混合物をさらに含むものであってもよい。
【0045】
また、本発明の一実施例による化粧料組成物は、柔軟化粧水、栄養化粧水、保湿剤、スプレー及びエッセンスからなる群から選択されるいずれか1つの剤形に形成されるものであってもよい。
【0046】
本発明の一実施例による他の態様は、負電荷ポリマーを含有する水相部を作製するステップと、正電荷ポリマーを含有する油相部を作製するステップと、前記水相部に油相部を混合するステップとを含む二層相化粧料組成物の製造方法を提供する。
【0047】
本発明における「負電荷ポリマー」、「水相部」、「正電荷ポリマー」及び「油相部」については前述した通りである。
【0048】
本発明の一実施例によるさらに他の態様は、負電荷ポリマーを含有する水相部と、正電荷ポリマーを含有する油相部とを含む、化粧料組成物の二層相分離遅延用組成物を提供する。
【0049】
本発明の一実施例によるさらに他の態様は、負電荷ポリマーを含有する水相部を作製するステップと、正電荷ポリマーを含有する油相部を作製するステップと、前記水相部に油相部を混合するステップとを含む、化粧料組成物の二層相分離遅延方法を提供する。
【0050】
本発明における「負電荷ポリマー」、「水相部」、「正電荷ポリマー」及び「油相部」については前述した通りである。
【0051】
本発明の具体的な一実施例においては、水相部に負電荷ポリマーを含有させ、油相部に正電荷ポリマーを含有させると、一時的かつ静電気的なコアセルベートを形成することにより、二層相への分離時間が遅延し、オイル粒子が容易に分散すると共に、消費者が使用する間は十分に分離状態が維持され、負電荷ポリマーの種類に応じて遅延時間が異なることが確認された(実験例1)。
【0052】
また、本発明の具体的な他の実施例においては、本発明の化粧料組成物における二層相の分離時間が大幅に増加し、負電荷ポリマーの含有量が増加するにつれて分離時間がさらに増加することが確認された。さらに、前記分離時間遅延は、粘度増加効果によるものではなく、一時的かつ静電気的なコアセルベートの形成によるものであることが確認された(実験例2)。
【0053】
さらに、本発明の具体的なさらに他の実施例においては、本発明の化粧料組成物を最後まで使用しても、二層相の組成比にほとんど差のない、同一品質の化粧料を使用できることが確認された(実験例3)。
【実施例0054】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0055】
実験例1:負電荷ポリマーの種類によるコアセルベート形成及び二層相分離時間
水相ポリマーの各種類においてコアセルベートが形成されるか否かと二層相への分離時間を確認するために、表1に示すように化粧料組成物を製造した。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示すように、A(油相)とB(水相)をそれぞれ混合した。その後、B(水相)にA(油相)を徐々に注入して二層相剤形を製造し、5回振って二層相を均一な分散相にした。分散相が完全に分離される時間を測定した。その結果を表2に示す。
【0058】
【表2】
【0059】
その結果、表2から分かるように、比較例1の化粧料組成物は、電荷を帯びていない架橋型増粘剤を用いるので、二層相に分離されなかった。また、比較例2の化粧料組成物も、電荷を帯びていない増粘剤を含有するので、コアセルベートを形成することができず、すぐに分離されることが確認された。
【0060】
それとは異なり、本発明の実施例1及び2の化粧料組成物は、水相部に負電荷ポリマーであるカルボマー、キサンタンガムをそれぞれ含有するので、それら負電荷ポリマーが油相のアモジメチコン(amodimethicone)とコアセルベートを形成し、二層相分離時間を十分に遅延させることが確認された。
【0061】
よって、水相部に負電荷ポリマーを含有させ、油相部に正電荷ポリマーを含有させると、一時的かつ静電気的なコアセルベートを形成することにより、二層相への分離時間が遅延し、オイル粒子が容易に分散すると共に、消費者が使用する間は十分に分離状態が維持され、負電荷ポリマーの種類に応じて遅延時間が異なることが分かった。
【0062】
実験例2:正電荷ポリマーの含有量によるコアセルベート形成及び二層相分離時間
油相ポリマーの各含有量においてコアセルベートが形成されるか否かと二層相への分離時間を確認するために、表3に示すように化粧料組成物をそれぞれ製造した。
【0063】
【表3】
【0064】
具体的には、A(油相)とB(水相)をそれぞれ混合し、AとBの粘度をブルックフィールド粘度計LV(Brookfield Viscometer LV)により、4 spindle、30rpm、1minの条件で油相及び水相においてそれぞれ測定した。その結果を表4に示す。なお、上記測定条件において、100cps以下は粘度増加効果がないものとみなす。
【0065】
【表4】
【0066】
次に、B(水相)にA(油相)を徐々に注入して二層相剤形を製造し、5回振って二層相を均一な分散相にした。その後、分散相が完全に分離される時間を測定した。その結果を表5に示す。
【0067】
【表5】
【0068】
その結果、表4から分かるように、比較例及び実施例の油相及び水相の粘度は、全て60cps以下であり、粘度増加効果がないことが確認された。
【0069】
また、表5から分かるように、本発明の化粧料組成物である実施例1、3及び4における二層相の分離時間は、比較例3、4の化粧料に比べて大幅に増加することが確認され、負電荷ポリマーの含有量が増加するにつれて分離時間がさらに増加することが確認された。
【0070】
よって、本発明の二層相化粧料組成物の分離時間遅延は、粘度増加効果によるものではなく、一時的かつ静電気的なコアセルベートの形成によるものであることが分かる。
【0071】
実験例3:使用回数による二層相組成の変化の確認
二層相構造の化粧料組成物においては、分離時間が短い場合、複数回使用すると二層相の組成比が変化するという問題が生じる。
【0072】
これを解決するために、分離時間を遅延させると、複数回使用しても組成比の差を減らすことができる。これを確認するために、コアセルベートの形成により二層相の油相の比率が変化するか否かを表6の組成により確認した。
【0073】
【表6】
【0074】
具体的には、表6に示すようにAとBをそれぞれ混合し、その後二層相剤形を製造した。
【0075】
その後、比較例3及び4並びに実施例1及び3の化粧料組成物を5回振って二層相を均一な分散相にし、次いで分散相の上層を10秒以内に1ml採取し、この過程を16回繰り返してサンプリングした。
【0076】
採取したサンプルを遠心分離機(800rpm,1min)で二層相に完全に分離し、上層である油相の重量を測定し、次の計算式により油相の変化を計算した。その結果を表7に示す。
【0077】
【数1】
【0078】
なお、最初の使用とは、1~3回目のサンプリングを意味し、中間の使用とは、7~9回目のサンプリングを意味し、最後の使用とは、14~16回目のサンプリングを意味する。
【0079】
【表7】
【0080】
その結果、表7から分かるように、比較例3及び4の化粧料組成物は、コアセルベートを形成することができないので、使用するにつれて、油相の量が最初の使用の47.41%、37.78%に減ることが確認された。
【0081】
それに対して、本発明の化粧料組成物である実施例1及び3は、コアセルベートを形成するので、分離時間が遅延し、使用回数が増加しても、油相の量が中間の使用においてそれぞれ最初の使用の93.90%、93.85%、最後の使用においても最初の使用の99.39%、94.69%であり、最初の使用と同等レベルに維持されることが確認された。
【0082】
よって、本発明の化粧料組成物を最後まで使用しても、二層相の組成比にほとんど差のない、同一品質の化粧料を使用できることが分かる。
【0083】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の当業者であれば、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。なお、上記実施例はあくまで例示的なものであり、限定的なものでないことを理解すべきである。本発明には、明細書ではなく請求の範囲の意味及び範囲とその等価概念から導かれるあらゆる変更や変形された形態が含まれるものと解釈すべきである。
図1
【外国語明細書】