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特開2022-180307セルロース系樹脂およびそれを用いた光学フィルム
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  • 特開-セルロース系樹脂およびそれを用いた光学フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180307
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】セルロース系樹脂およびそれを用いた光学フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08B 11/02 20060101AFI20221129BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20221129BHJP
   C08L 1/08 20060101ALI20221129BHJP
   C08L 33/00 20060101ALI20221129BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20221129BHJP
   C08B 3/18 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
C08B11/02
G02B5/30
C08L1/08
C08L33/00
C08J5/18 CEP
C08B3/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022074177
(22)【出願日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2021087252
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正泰
(72)【発明者】
【氏名】小峯 拓也
(72)【発明者】
【氏名】坂下 竜一
【テーマコード(参考)】
2H149
4C090
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB06
2H149AB12
2H149AB13
2H149DA02
2H149DA12
2H149DA16
2H149EA02
2H149FA02Y
2H149FA12Z
2H149FD05
2H149FD07
2H149FD09
2H149FD12
4C090AA08
4C090BA26
4C090BA28
4C090BB52
4C090BB92
4C090BB94
4F071AA09
4F071AA31X
4F071AA33X
4F071AA37X
4F071AA44X
4F071AA81
4F071AC02A
4F071AC10A
4F071AE19A
4F071AF01
4F071AF10
4F071AF30Y
4F071AF35Y
4F071AG20
4F071AG28
4F071AG34
4F071AH12
4F071AH19
4F071BA02
4F071BB02
4F071BB07
4F071BC01
4J002AB01W
4J002AB03W
4J002BB21X
4J002BG02X
4J002BJ00X
4J002GP00
(57)【要約】
【課題】 位相差特性および波長分散特性に優れた樹脂組成物を用いたフィルムであって、高温高湿下において白化のない光学フィルムを提供する。
【解決手段】 塩の含有量が0.03%以下であるセルロ-ス系樹脂。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩の含有量が0.03%以下であるセルロ-ス系樹脂。
【請求項2】
下記式(1)で示される構成単位を有する請求項1に記載のセルロース系樹脂。
【化1】
(式中、R、R、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~12の炭化水素基もしくはアシル基を示す。)
【請求項3】
請求項1または2に記載のセルロース系樹脂を50~99重量%と、
下記式(2)で示されるケイ皮酸エステル残基単位、下記式(3)で示されるフマル酸エステル残基単位、下記式(4)で示される残基単位からなる群の少なくとも1種の残基単位を有する負の複屈折性を示すエステル系樹脂を1~50重量%含む組成物。
【化2】
(式中、Rは水素原子または炭素数1~12のアルキル基を示す。R~Rはそれぞれ独立して水素原子、ニトロ基、ブロモ基、ヨード基、シアノ基、クロロ基、スルホン酸基、カルボン酸基、フルオロ基、フェニル基、チオール基、アミド基、アミノ基、水酸基、炭素数1~12のアルコキシ基、または炭素数1~12のアルキル基からなる群の1種を示す。Yは水素原子、ニトロ基、ブロモ基、ヨード基、シアノ基、クロロ基、スルホン酸基、カルボン酸基、フルオロ基、チオール基からなる群の1種を示す。)
【化3】
(式中、R10、11はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~12のアルキル基を示す。)
【化4】
(式中、R12はヘテロ原子として窒素原子もしくは酸素原子を1つ以上含む5員環複素環残基または6員環複素環残基(前記5員環複素環残基および前記6員環複素環残基は他の環状構造と縮合環構造を形成してもよい)を示す。)
【請求項4】
請求項1に記載のセルロース系樹脂を含む光学フィルム。
【請求項5】
請求項3に記載の組成物を含む光学フィルム。
【請求項6】
65℃相対湿度90%環境下500時間後におけるヘーズの増加率が1.0%以下であり、かつ、全光線透過率の低下が2%未満である請求項4又は5に記載の光学フィルム。
【請求項7】
下記式(A)で示される位相差(Re)が30~300nmで、下記式(B)で示されるNz係数が0.3~1.3であり、かつ、450nmにおける位相差と550nmにおける位相差の比Re(450)/Re(550)が0.60<Re(450)/Re(550)<1.05である請求項4または5に記載の光学フィルム。
Re=(ny-nx)×d (A)
Nz=(ny-nz)/(ny-nx) (B)
(式中、nxはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を示し、nyはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を示し、nzはフィルム面外の屈折率を示し、dはフィルム厚みを示す。)
【請求項8】
請求項4または5に記載の光学フィルムを備えた偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース系樹脂およびそれを用いた光学フィルムに関するものである。より詳しくは、位相差特性および波長分散特性並びに耐湿熱性に優れた液晶ディスプレイおよび有機EL用の光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々のディスプレイにおいて、表示性能や耐久性に対する要求がより高くなり、応答速度の向上や、表示画像に対して斜め方向から観察した場合のコントラストやカラーバランスといった視野角をより広範囲で補償することが課題となっている。これらの課題を解決すべく、VA(Vertical Alignment)方式、OCB(Optical Compensated Bend)方式、またはIPS(In-Plane Swiching)方式の表示素子が開発され、それぞれの液晶方式に応じた、様々な位相差位相差発現性を有する光学補償フィルム材料が要求されている。
【0003】
従来の光学フィルムとしては、セルロース系樹脂、ポリカーボネートや環状ポリオレフィンなどの延伸フィルムが用いられている。特にセルロースアシレートなどのセルロース系樹脂からなる延伸フィルムは、その透明性、強靭性、プロセス上必要である透湿性や低い波長分散性から、液晶表示装置向けの光学補償フィルムとして広く利用されている。
【0004】
しかしながら、セルロ-ス系樹脂からなる光学フィルムはいくつかの課題がある。例えば、セルロ-ス系樹脂フィルムは延伸条件を調整することで各種ディスプレイにあわせた位相差値を持つ光学補償フィルムに加工されるが、セルロ-ス系樹脂フィルムの一軸または二軸延伸により得られるフィルムの三次元屈折率は、ny≧nx>nzであり、それ以外の3次元屈折率、例えば、ny>nz>nxや、ny=nz>nxなどの3次元屈折率を有する光学補償フィルムを製造するためには、フィルムの片面または両面に熱収縮性フィルムを接着し、その積層体を加熱延伸処理して、高分子フィルムの厚み方向に収縮力をかけるなど特殊な延伸方法が必要であり屈折率(位相差値)の制御も困難である(例えば、特許文献1~3参照)。ここでnxはフィルム面内の進相軸方向(最も屈折率の小さい方向)の屈折率、nyはフィルム面内の遅相軸方向(最も屈折率の大きい方向)の屈折率、nzはフィルム面外(厚み方向)の屈折率を示す。
【0005】
また、セルロ-ス系樹脂フィルムは一般に溶剤キャスト法により製造されるが、キャスト法により成膜したセルロ-ス系樹脂フィルムはフィルム厚み方向に40nm程度の面外位相差(Rth)を有するため、IPSモ-ドの液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどではカラ-シフトが起こるなどの問題がある。ここで面外位相差(Rth)は以下の式で示される位相差値である。
【0006】
Rth=[(nx+ny)/2-nz]×d
(式中、nxはフィルム面内の進相軸方向の屈折率、nyはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率、nzはフィルム面外の屈折率を示し、dはフィルム厚みを示す。)
また、フマル酸エステル系樹脂からなる位相差フィルム(光学補償フィルム)が提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【0007】
また、フマル酸エステル系樹脂からなる延伸フィルムの3次元屈折率は、nz>ny>nxであり、上記3次元屈折率を示す光学フィルムを得るためには他の光学フィルム等との積層等が必要である。
【0008】
そこで、上記3次元屈折率を示す光学補償フィルムとして、樹脂組成物およびそれを用いた光学フィルムが提案されている(例えば、特許文献5~特許文献7参照)。
【0009】
ここで、一般に光学フィルムは反射型液晶表示装置、タッチパネルや有機ELの反射防止層としても用いられるものであり、該用途では、特に長波長域ほど位相差が大きい光学補償フィルム(以下、「逆波長分散フィルム」という)が求められる。例えば、有機EL用円偏光板の光学フィルムとして逆波長分散フィルムが用いられる場合、位相差は測定波長λの1/4程度が好ましく、450nmにおける位相差と550nmにおける位相差の比Re(450)/Re(550)は0.81に近いことが好ましい。そして、表示装置の薄型化を鑑みた場合、使用される逆波長分散フィルムも薄いことが求められる。上記のような要求特性に対し、種々の光学フィルムが開発されている。
【0010】
上記3次元屈折率を示し、かつ、逆波長分散フィルムとして用いられる位相差フィルム(光学補償フィルム)としてセルロース系樹脂およびフマル酸エステル重合体を含有する位相差フィルムが提案されている(例えば、特許文献8参照)。しかしながら、特許文献8に記載の位相差フィルムは、得られるフィルムの高温高湿環境に対する耐久性に課題を有し、より高温高湿下において安定性の高い光学フィルムが求められている。
【0011】
また、セルロース系樹脂はパルプやコットンリンターを原料に製造されており、原料由来のセルロース繊維や製造過程での不純物等がフィルムの透明性等の品質に影響を与えることが知られている(例えば、特許文献9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許2818983号公報
【特許文献2】特開平5-297223号公報
【特許文献3】特開平5-323120号公報
【特許文献4】特開2008-64817号公報
【特許文献5】特開2013-28741号公報
【特許文献6】特開2014-125609号公報
【特許文献7】特開2014-125610号公報
【特許文献8】特開2015-157928号公報
【特許文献9】特開2002-40244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、フィルムとした際に位相差特性および波長分散特性に優れた樹脂であって、該樹脂をフィルムとすると高温高湿下においても白化のない(耐熱耐湿試験後のヘーズの増加が小さい)光学フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、塩の含有量の少ないセルロース系樹脂をフィルムとすると高温高湿下においても白化を抑制することができ、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、塩の含有量が0.03%以下であるセルロ-ス系樹脂に関するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の樹脂およびそれを用いたフィルムは、高温高湿下においても白化を抑制できることから、偏光板、液晶表示装置、有機EL表示装置等に好適に用いることができ、優れた表示性能および高温高湿下における高い安定性を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】エチルセルロースのフィルム密度と分子量の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の内容について詳細に説明する。
【0019】
本発明のセルロース系樹脂は、塩の含有量が0.03%以下であり、好ましくは0.020%以下、特に好ましくは0.015%以下である。
【0020】
本発明のセルロース系樹脂は、下記式(1)で示される構成単位を有することが好ましい。
【0021】
【化1】
【0022】
(式中、R、R、Rはそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~12の炭化水素基もしくはアシル基を示す。)
本発明のセルロ-ス系樹脂としては、例えば、セルロースエーテル、セルロースエーテルエステル等が挙げられる。そして、本発明のセルロース系樹脂は、これらのセルロ-ス系樹脂を1種であってもよく、2種以上含有する組成物であってもよい。
【0023】
本発明のセルロ-ス系樹脂は、耐湿熱性に優れ、機械特性や製膜時の成形加工性に優れたものとなることから、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した溶出曲線より得られる標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が5×10~3×10であることが好ましく、1×10~2.5×10が特に好ましい。湿熱試験後の白化の分子量依存性について、分子量の増加に伴い密度が低下する傾向があり、分子量増加により低温域での自由体積が増加、凝集力が低下し、これにより高分子量ほど湿熱試験後の白化が促進されると推測している。エチルセルロースのフィルム密度と分子量の関係を図1に示す。
【0024】
本発明のセルロ-ス系樹脂は、後述する負の複屈折性を示すエステル系樹脂との相溶性に優れ、かつ面内位相差Reが大きく、更に延伸加工性に優れるため、セルロースエーテルが好ましい。
【0025】
以下、本発明のセルロ-ス系樹脂として好ましいセルロースエーテルについて説明する。
【0026】
セルロースエーテルは、β-グルコース単位が直鎖状に重合した高分子であり、グルコース単位の2位、3位および6位の水酸基の一部または全部をエーテル化したポリマーである。本発明のセルロースエーテルとしては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース等のアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;ベンジルセルロース、トリチルセルロース等のアラルキルセルロース;シアノエチルセルロース等のシアノアルキルセルロース;カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース等のカルボキシアルキルセルロース;カルボキシメチルメチルセルロース、カルボキシメチルエチルセルロース等のカルボキシアルキルアルキルセルロース;アミノエチルセルロース等のアミノアルキルセルロース等が挙げられる。
【0027】
該セルロースエーテルにおけるセルロースの水酸基の酸素原子を介して置換している置換度(エーテル化度)は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースの水酸基がエーテル化している割合(100%のエーテル化は置換度3)を意味し、溶解性、相溶性、延伸加工性の点から、エ-テル基の全置換度DSは、好ましくは1.5~3.0(1.5≦DS≦3.0)であり、さらに好ましくは1.8~2.8である。
【0028】
本発明のセルロース系樹脂がセルロースエーテルである場合、前記式(1)におけるR~Rは、水素原子または炭素数1~12の炭化水素基である。セルロースエーテルは、溶解性、相溶性の点から、炭素数1~12の炭化水素基を有することが好ましい。炭素数1~12の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デカニル基、ドデカニル基、イソブチル基、t-ブチル基、シクロヘキシル基、フェノニル基、ベンジル基、ナフチル基等を挙げることができる。これらの中でも、溶解性、相溶性の点から、炭素数1~5のアルキル基であるメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基が好ましい。本発明で用いるセルロ-ス系ポリマーのエーテル基は1種類だけでもよいし、2種類以上のエーテル基を有していてもよい。また、エーテル基の他にエステル基を有していてもよい。
【0029】
セルロースエーテルは一般に、木材又はコットンより得たセルロースパルプをアルカリ分解し、アルカリ分解したセルロ-スパルプをエーテル化することで合成される。アルカリとしては、リチウム,カリウム,ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物やアンモニアなどが利用できる。前記アルカリ類は一般に、水溶液として使用される。そして、アルカリ性にされたセルロ-スパルプは、セルロースエーテルの種類に応じて用いられるエーテル化剤と接触されることによりエーテル化されるものである。エーテル化剤としては、例えば、塩化メチル、塩化エチル等のハロゲン化アルキル;ベンジルクロライド、トリチルクロライド等のハロゲン化アラルキル;モノクロロ酢酸、モノクロロプロピオン酸等のハロカルボン酸;エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等のアルキレンオキサイド等が挙げられ、これらのエ-テル化剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0030】
なお、セルロースエーテルは一般にエーテル化反応終了後、粘度調整や中和処理のため塩化水素、臭化水素、塩酸、及び硫酸等で処理される。この反応、中和工程を経たセルロースエーテルは副生成物である塩を多く含むため、反応後に樹脂を水等で洗浄することで樹脂に含有する塩を低減しセルロースエーテルを得る。
【0031】
例えば、エチルセルロースを製造するためのアルカリとして水酸化ナトリウム、エーテル化剤として塩化エチル、粘度調整や中和処理のため塩化水素を用いた場合は副生成物である塩化ナトリウムを含む。
【0032】
本発明のセルロース系樹脂は、β-グルコース単位が直鎖状に重合した高分子であり、グルコース単位の2位、3位および6位の水酸基の一部または全部をアシル基によりエステル化したポリマーであってもよく、例えば、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート等が挙げられる。
【0033】
アシル化度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースの水酸基がエステル化している割合(100%のエステル化は置換度3)を意味し、アシル基の全置換度DSは、好ましくは1.5≦DS≦3.0であり、さらに好ましくは1.8~2.8である。セルロース系樹脂は、炭素数2~12のアシル基を置換基として有することが好ましい。炭素数2~12のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、イソブタノイル基、t-ブチリル基、シクロヘキサンカルボニル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基等を挙げることができる。これらの中でも、炭素数2~5のアシル基であるアセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンチル基が特に好ましい。本発明で用いるセルロース系樹脂に用いられるアシル基は1種類だけでもよいし、2種類以上のアシル基が使用されていてもよい。
【0034】
セルロース系樹脂のアシル化において、アシル化剤としては、酸無水物や酸クロライドを用いた場合、反応溶媒である有機溶媒としては、有機酸、例えば、酢酸、メチレンクロライド等が使用される。触媒としては、アシル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ、アシル化剤が酸クロライド(例えば、プロピオニルクロライド)である場合には、塩基性化合物が好ましく用いられる。最も一般的なセルロースの混合脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロースをアセチル基および他のアシル基に対応する脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等)またはそれらの酸無水物を含む混合有機酸成分でアシル化する方法である。
【0035】
セルロースエステルの製造方法は、一般に、まずセルロース材料であるパルプなどを解砕し、硫酸触媒を含むか含まない酢酸、プロピオン酸、酪酸等の有機酸を添加する前処理工程を経て、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の有機酸、無水酢酸、硫酸触媒を添加してアシル化をする。アシル化反応後、酢酸マグネシウム水溶液などの中和剤を添加し、加水分解させる。その後多量の水、希酢酸水溶液等を添加してセルロースエステルを沈殿、洗浄、乾燥させてセルロースエステルを得る。
【0036】
本発明における塩とは、陰イオンと陽イオンが電気的に結合して中性の有効荷電を有するイオン性物質であれば特に限定はされないが、例えばナトリウム、カリウムおよびセシウム塩等の金属塩;カルシウムおよびマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩;トリエチルアミン、グアニジンおよびN-置換グアニジン塩、アセトアミジンおよびN-置換アセトアミジン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、およびN,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩、イミダゾール塩等の有機アミン塩;塩酸塩、臭化水素塩、硫酸塩、リン酸塩などの無機酸塩;トリフルオロ酢酸塩およびマレイン酸塩等の有機酸塩;メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩およびナフタレンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;アルギニン酸塩、アラニン酸塩、アスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩等のアミノ酸塩;ならびにグルクロン酸塩およびガラクチュロン酸塩などの炭化水素塩が挙げられる。ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩としては、例えば、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、および塩化カリウム;酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、および酢酸カリウム;酪酸ナトリウム、酪酸アンモニウム、および酪酸カリウム;クエン酸ナトリウム、クエン酸アンモニウム、およびクエン酸カリウム;リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウム、およびリン酸カリウム;フッ化ナトリウム、フッ化アンモニウム、およびフッ化カリウム;臭化ナトリウム、臭化アンモニウム、および臭化カリウム;ならびにヨウ化ナトリウム、ヨウ化アンモニウム、およびヨウ化カリウム)等が挙げられる。塩は塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸アンモニウム、酢酸カリウム、酪酸ナトリウムおよび酪酸カリウムからなる群の1種であることが好ましい。これら塩はセルロース系樹脂中に含まれる合計量が所定量以下であれば単独でも2種以上含まれていても良い。
【0037】
次に、本発明の一つの態様である樹脂組成物について説明する。
【0038】
本発明は、前記セルロース系樹脂を50~99重量%と、下記式(2)で示されるケイ皮酸エステル残基単位、下記式(3)で示されるフマル酸エステル残基単位、下記式(4)で示される残基単位を有する負の複屈折性を示すエステル系樹脂を1~50重量%含む組成物であり、好ましくは前記セルロース系樹脂を60~90重量%と、下記式(2)で示されるケイ皮酸エステル残基単位、下記式(3)で示されるフマル酸エステル残基単位、下記式(4)で示される残基単位を有する負の複屈折性を示すエステル系樹脂を10~40重量%含む組成物である。
【0039】
【化2】
【0040】
(式中、Rは水素原子または炭素数1~12のアルキル基を示す。R~Rは水素原子、ニトロ基、ブロモ基、ヨード基、シアノ基、クロロ基、スルホン酸基、カルボン酸基、フルオロ基、フェニル基、チオール基、アミド基、アミノ基、水酸基、炭素数1~12のアルキル基または炭素数1~12のアルコキシ基からなる群の1種を示す。Yは水素原子、ニトロ基、ブロモ基、ヨード基、シアノ基、クロロ基、スルホン酸基、カルボン酸基、フルオロ基、チオール基からなる群の1種を示す。)
【0041】
【化3】
【0042】
(式中、R10、11はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~12のアルキル基を示す。)
【0043】
【化4】
【0044】
(式中、R12はヘテロ原子として窒素原子もしくは酸素原子を1つ以上含む5員環複素環残基または6員環複素環残基(前記5員環複素環残基および前記6員環複素環残基は他の環状構造と縮合環構造を形成してもよい)を示す。)
前記エステル系樹脂は、負の複屈折性を示す。これは前記式(2)、前記式(3)、前記式(4)からなる群の1種で示される残基単位を含むことに起因する。
【0045】
ここで、複屈折の正負は以下に示すように定義される。
【0046】
負の複屈折とは延伸方向が進相軸方向となるものであり、正の複屈折とは延伸方向の垂直方向が進相軸方向となるものである。つまり、一軸延伸すると延伸軸と直交する軸方向の屈折率が小さく(進相軸:延伸方向の垂直方向)なるものを正の複屈折を示す樹脂、一軸延伸すると延伸軸方向の屈折率が小さく(進相軸:延伸方向)なるものを負の複屈折を示す樹脂という。そして、エステル系樹脂における負の複屈折性の発現性が大きいことによりフィルムの薄膜化が図れる。
【0047】
式(2)におけるRは、水素原子または炭素数1~12のアルキル基を示す。炭素数1~12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロキル基、n-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0048】
式(2)におけるR~Rはそれぞれ独立して、水素原子、ニトロ基、ブロモ基、ヨード基、シアノ基、クロロ基、スルホン酸基、カルボン酸基、フルオロ基、フェニル基、チオール基、アミノ基、水酸基、炭素数1~12のアルキル基または炭素数1~12のアルコキシ基からなる群の1種を示す。
【0049】
式(2)におけるYとしては、水素原子、ニトロ基、ブロモ基、ヨード基、シアノ基、クロロ基、スルホン酸基、カルボン酸基、フルオロ基、チオール基からなる群の1種を示す。
【0050】
具体的な式(2)で表される残基単位としては、例えば、ケイ皮酸メチル残基、ケイ皮酸エチル残基、ケイ皮酸イソプロピル残基、ケイ皮酸n-プロピル残基、ケイ皮酸n-ブチル残基、ケイ皮酸sec-ブチル残基、ケイ皮酸tert-ブチル残基、ケイ皮酸2-エチルヘキシル残基等のケイ皮酸エステル残基単位;ケイ皮酸残基単位;4-メトキシケイ皮酸メチル残基、4-メトキシケイ皮酸エチル残基、4-メトキシケイ皮酸イソプロピル残基、4-メトキシケイ皮酸n-プロピル残基、4-メトキシケイ皮酸n-ブチル残基、4-メトキシケイ皮酸sec-ブチル残基、4-メトキシケイ皮酸tert-ブチル残基、4-メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、4-エトキシケイ皮酸メチル残基、4-エトキシケイ皮酸エチル残基、4-エトキシケイ皮酸イソプロピル残基、4-エトキシケイ皮酸n-プロピル残基、4-エトキシケイ皮酸n-ブチル残基、4-エトキシケイ皮酸sec-ブチル残基、4-エトキシケイ皮酸tert-ブチル残基、4-エトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、4-イソプロポキシケイ皮酸メチル残基、4-イソプロポキシケイ皮酸エチル残基、4-イソプロポキシケイ皮酸イソプロピル残基、4-イソプロポキシケイ皮酸n-プロピル残基、4-イソプロポキシケイ皮酸n-ブチル残基、4-イソプロポキシケイ皮酸sec-ブチル残基、4-イソプロポキシケイ皮酸tert-ブチル残基、4-イソプロポキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、4-n-プロポキシケイ皮酸メチル残基、4-n-プロポキシケイ皮酸エチル残基、4-n-プロポキシケイ皮酸イソプロピル残基、4-n-プロポキシケイ皮酸n-プロピル残基、4-n-プロポキシケイ皮酸n-ブチル残基、4-n-プロポキシケイ皮酸sec-ブチル残基、4-n-プロポキシケイ皮酸tert-ブチル残基、4-n-プロポキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、4-n-ブトキシケイ皮酸メチル残基、4-n-ブトキシケイ皮酸エチル残基、4-n-ブトキシケイ皮酸イソプロピル残基、4-n-ブトキシケイ皮酸n-プロピル残基、4-n-ブトキシケイ皮酸n-ブチル残基、4-n-ブトキシケイ皮酸sec-ブチル残基、4-n-ブトキシケイ皮酸tert-ブチル残基、4-n-ブトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、4-sec-ブトキシケイ皮酸メチル残基、4-sec-ブトキシケイ皮酸エチル残基、4-sec-ブトキシケイ皮酸イソプロピル残基、4-sec-ブトキシケイ皮酸n-プロピル残基、4-sec-ブトキシケイ皮酸n-ブチル残基、4-sec-ブトキシケイ皮酸sec-ブチル残基、4-sec-ブトキシケイ皮酸tert-ブチル残基、4-sec-ブトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、4-tert-ブトキシケイ皮酸メチル残基、4-tert-ブトキシケイ皮酸エチル残基、4-tert-ブトキシケイ皮酸イソプロピル残基、4-tert-ブトキシケイ皮酸n-プロピル残基、4-tert-ブトキシケイ皮酸n-ブチル残基、4-tert-ブトキシケイ皮酸sec-ブチル残基、4-tert-ブトキシケイ皮酸tert-ブチル残基、4-tert-ブトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基等の4-アルコキシケイ皮酸エステル残基単位;4-アルコキシケイ皮酸残基単位;3-メトキシケイ皮酸メチル残基、3-メトキシケイ皮酸エチル残基、3-メトキシケイ皮酸イソプロピル残基、3-メトキシケイ皮酸n-プロピル残基、3-メトキシケイ皮酸n-ブチル残基、3-メトキシケイ皮酸sec-ブチル残基、3-メトキシケイ皮酸tert-ブチル残基、3-メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、3-エトキシケイ皮酸メチル残基、3-エトキシケイ皮酸エチル残基、3-エトキシケイ皮酸イソプロピル残基、3-エトキシケイ皮酸n-プロピル残基、3-エトキシケイ皮酸n-ブチル残基、3-エトキシケイ皮酸sec-ブチル残基、3-エトキシケイ皮酸tert-ブチル残基、3-エトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、3-イソプロポキシケイ皮酸メチル残基、3-イソプロポキシケイ皮酸エチル残基、3-イソプロポキシケイ皮酸イソプロピル残基、3-イソプロポキシケイ皮酸n-プロピル残基、3-イソプロポキシケイ皮酸n-ブチル残基、3-イソプロポキシケイ皮酸sec-ブチル残基、3-イソプロポキシケイ皮酸tert-ブチル残基、3-イソプロポキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、3-n-プロポキシケイ皮酸メチル残基、3-n-プロポキシケイ皮酸エチル残基、3-n-プロポキシケイ皮酸イソプロピル残基、3-n-プロポキシケイ皮酸n-プロピル残基、3-n-プロポキシケイ皮酸n-ブチル残基、3-n-プロポキシケイ皮酸sec-ブチル残基、3-n-プロポキシケイ皮酸tert-ブチル残基、3-n-プロポキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、3-n-ブトキシケイ皮酸メチル残基、3-n-ブトキシケイ皮酸エチル残基、3-n-ブトキシケイ皮酸イソプロピル残基、3-n-ブトキシケイ皮酸n-プロピル残基、3-n-ブトキシケイ皮酸n-ブチル残基、3-n-ブトキシケイ皮酸sec-ブチル残基、3-n-ブトキシケイ皮酸tert-ブチル残基、3-n-ブトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、3-sec-ブトキシケイ皮酸メチル残基、3-sec-ブトキシケイ皮酸エチル残基、3-sec-ブトキシケイ皮酸イソプロピル残基、3-sec-ブトキシケイ皮酸n-プロピル残基、3-sec-ブトキシケイ皮酸n-ブチル残基、3-sec-ブトキシケイ皮酸sec-ブチル残基、3-sec-ブトキシケイ皮酸tert-ブチル残基、3-sec-ブトキシケイ皮酸3-エチルヘキシル残基、3-tert-ブトキシケイ皮酸メチル残基、3-tert-ブトキシケイ皮酸エチル残基、3-tert-ブトキシケイ皮酸イソプロピル残基、3-tert-ブトキシケイ皮酸n-プロピル残基、3-tert-ブトキシケイ皮酸n-ブチル残基、3-tert-ブトキシケイ皮酸sec-ブチル残基、3-tert-ブトキシケイ皮酸tert-ブチル残基、3-tert-ブトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基等の3-アルコキシケイ皮酸残基エステル単位;3-アルコキシケイ皮酸残基単位;2-メトキシケイ皮酸メチル残基、2-メトキシケイ皮酸エチル残基、2-メトキシケイ皮酸イソプロピル残基、2-メトキシケイ皮酸n-プロピル残基、2-メトキシケイ皮酸n-ブチル残基、2-メトキシケイ皮酸sec-ブチル残基、2-メトキシケイ皮酸tert-ブチル残基、2-メトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、2-エトキシケイ皮酸メチル残基、2-エトキシケイ皮酸エチル残基、2-エトキシケイ皮酸イソプロピル残基、2-エトキシケイ皮酸n-プロピル残基、2-エトキシケイ皮酸n-ブチル残基、2-エトキシケイ皮酸sec-ブチル残基、2-エトキシケイ皮酸tert-ブチル残基、2-エトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、2-イソプロポキシケイ皮酸メチル残基、2-イソプロポキシケイ皮酸エチル残基、2-イソプロポキシケイ皮酸イソプロピル残基、2-イソプロポキシケイ皮酸n-プロピル残基、2-イソプロポキシケイ皮酸n-ブチル残基、2-イソプロポキシケイ皮酸sec-ブチル残基、2-イソプロポキシケイ皮酸tert-ブチル残基、2-イソプロポキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、2-n-プロポキシケイ皮酸メチル残基、2-n-プロポキシケイ皮酸エチル残基、2-n-プロポキシケイ皮酸イソプロピル残基、2-n-プロポキシケイ皮酸n-プロピル残基、2-n-プロポキシケイ皮酸n-ブチル残基、2-n-プロポキシケイ皮酸sec-ブチル残基、2-n-プロポキシケイ皮酸tert-ブチル残基、2-n-プロポキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、2-n-ブトキシケイ皮酸メチル残基、2-n-ブトキシケイ皮酸エチル残基、2-n-ブトキシケイ皮酸イソプロピル残基、2-n-ブトキシケイ皮酸n-プロピル残基、2-n-ブトキシケイ皮酸n-ブチル残基、2-n-ブトキシケイ皮酸sec-ブチル残基、2-n-ブトキシケイ皮酸tert-ブチル残基、2-n-ブトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、2-sec-ブトキシケイ皮酸メチル残基、2-sec-ブトキシケイ皮酸エチル残基、2-sec-ブトキシケイ皮酸イソプロピル残基、2-sec-ブトキシケイ皮酸n-プロピル残基、2-sec-ブトキシケイ皮酸n-ブチル残基、2-sec-ブトキシケイ皮酸sec-ブチル残基、2-sec-ブトキシケイ皮酸tert-ブチル残基、2-sec-ブトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、2-tert-ブトキシケイ皮酸メチル残基、2-tert-ブトキシケイ皮酸エチル残基、2-tert-ブトキシケイ皮酸イソプロピル残基、2-tert-ブトキシケイ皮酸n-プロピル残基、2-tert-ブトキシケイ皮酸n-ブチル残基、2-tert-ブトキシケイ皮酸sec-ブチル残基、2-tert-ブトキシケイ皮酸tert-ブチル残基、2-tert-ブトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル残基から選ばれるアルコキシケイ皮酸エステル残基単位等の2-アルコキシケイ皮酸エステル残基単位;2-アルコキシケイ皮酸残基単位;4-メチルケイ皮酸メチル残基、4-メチルケイ皮酸エチル残基、4-メチルケイ皮酸イソプロピル残基、4-メチルケイ皮酸n-プロピル残基、4-メチルシケイ皮酸n-ブチル残基、4-メチルケイ皮酸sec-ブチル残基、4-メチルケイ皮酸tert-ブチル残基、4-メチルケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、4-エチルケイ皮酸メチル残基、4-エチルケイ皮酸エチル残基、4-エチルケイ皮酸イソプロピル残基、4-エチルケイ皮酸n-プロピル残基、4-エチルシケイ皮酸n-ブチル残基、4-エチルケイ皮酸sec-ブチル残基、4-エチルケイ皮酸tert-ブチル残基、4-エチルケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、4-イソプロピルケイ皮酸メチル残基、4-イソプロピルケイ皮酸エチル残基、4-イソプロピルケイ皮酸イソプロピル残基、4-イソプロピルケイ皮酸n-プロピル残基、4-イソプロピルシケイ皮酸n-ブチル残基、4-イソプロピルケイ皮酸sec-ブチル残基、4-イソプロピルケイ皮酸tert-ブチル残基、4-イソプロピルケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、4-n-プロピルケイ皮酸メチル残基、4-n-プロピルケイ皮酸エチル残基、4-n-プロピルケイ皮酸イソプロピル残基、4-n-プロピルケイ皮酸n-プロピル残基、4-n-プロピルシケイ皮酸n-ブチル残基、4-n-プロピルケイ皮酸sec-ブチル残基、4-n-プロピルケイ皮酸tert-ブチル残基、4-n-プロピルケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、4-n-ブチルケイ皮酸メチル残基、4-n-ブチルケイ皮酸エチル残基、4-n-ブチルケイ皮酸イソプロピル残基、4-n-ブチルケイ皮酸n-プロピル残基、4-n-ブチルシケイ皮酸n-ブチル残基、4-n-ブチルケイ皮酸sec-ブチル残基、4-n-ブチルケイ皮酸tert-ブチル残基、4-n-ブチルケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、4-sec-ブチルケイ皮酸メチル残基、4-sec-ブチルケイ皮酸エチル残基、4-sec-ブチルケイ皮酸イソプロピル残基、4-sec-ブチルケイ皮酸n-プロピル残基、4-sec-ブチルシケイ皮酸n-ブチル残基、4-sec-ブチルケイ皮酸sec-ブチル残基、4-sec-ブチルケイ皮酸tert-ブチル残基、4-sec-ブチルケイ皮酸2-エチルヘキシル残基、4-tert-ブチルケイ皮酸メチル残基、4-tert-ブチルケイ皮酸エチル残基、4-tert-ブチルケイ皮酸イソプロピル残基、4-tert-ブチルケイ皮酸n-プロピル残基、4-tert-ブチルシケイ皮酸n-ブチル残基、4-tert-ブチルケイ皮酸sec-ブチル残基、4-tert-ブチルケイ皮酸tert-ブチル残基、4-tert-ブチルケイ皮酸2-エチルヘキシル残基等のアルキルケイ皮酸エステル残基単位;アルキルケイ皮酸残基単位;4-ニトロケイ皮酸メチル残基単位、4-ニトロケイ皮酸エチル残基単位、4-ニトロケイ皮酸イソプロピル残基単位、4-ニトロケイ皮酸n-プロピル残基単位、4-ニトロケ
イ皮酸n-ブチル残基単位、4-ニトロケイ皮酸sec-ブチル残基単位、4-ニトロケイ皮酸tart-ブチル残基単位、4-ニトロケイ皮酸2-エチルヘキシル残基単位等のニトロケイ皮酸エステル残基単位;ニトロケイ皮酸残基単位;4-ブロモケイ皮酸メチル残基単位、4-ブロモケイ皮酸エチル残基単位、4-ブロモケイ皮酸イソプロピル残基単位、4-ブロモケイ皮酸n-プロピル残基単位、4-ブロモケイ皮酸n-ブチル残基単位、4-ブロモケイ皮酸sec-ブチル残基単位、4-ブロモケイ皮酸tart-ブチル残基単位、4-ブロモケイ皮酸2-エチルヘキシル残基単位等のブロモケイ皮酸エステル残基単位;ブロモケイ皮酸残基単位;4-ヨードケイ皮酸メチル残基単位、4-ヨードケイ皮酸エチル残基単位、4-ヨードケイ皮酸イソプロピル残基単位、4-ヨードケイ皮酸n-プロピル残基単位、4-ヨードケイ皮酸n-ブチル残基単位、4-ヨードケイ皮酸sec-ブチル残基単位、4-ヨードケイ皮酸tart-ブチル残基単位、4-ヨードケイ皮酸2-エチルヘキシル残基単位等のヨードケイ皮酸エステル残基単位;ヨードケイ皮酸残基単位;4-シアノケイ皮酸メチル残基単位、4-シアノケイ皮酸エチル残基単位、4-シアノケイ皮酸イソプロピル残基単位、4-シアノケイ皮酸n-プロピル残基単位、4-シアノケイ皮酸n-ブチル残基単位、4-シアノケイ皮酸sec-ブチル残基単位、4-シアノケイ皮酸tart-ブチル残基単位、4-シアノケイ皮酸2-エチルヘキシル残基単位等のシアノケイ皮酸エステル残基単位;シアノケイ皮酸残基単位;4-スルホン酸ケイ皮酸メチル残基単位、4-スルホン酸ケイ皮酸エチル残基単位、4-スルホン酸ケイ皮酸イソプロピル残基単位、4-スルホン酸ケイ皮酸n-プロピル残基単位、4-スルホン酸ケイ皮酸n-ブチル残基単位、4-スルホン酸ケイ皮酸sec-ブチル残基単位、4-スルホン酸ケイ皮酸tart-ブチル残基単位、4-スルホン酸ケイ皮酸2-エチルヘキシル残基単位等のスルホン酸ケイ皮酸エステル残基単位;スルホン酸ケイ皮酸残基単位;4-カルボン酸ケイ皮酸エチル残基単位、4-カルボン酸ケイ皮酸イソプロピル残基単位、4-カルボン酸ケイ皮酸n-プロピル残基単位、4-カルボン酸ケイ皮酸n-ブチル残基単位、4-カルボン酸ケイ皮酸sec-ブチル残基単位、4-カルボン酸ケイ皮酸tart-ブチル残基単位、4-カルボン酸ケイ皮酸2-エチルヘキシル残基単位等のカルボン酸ケイ皮酸エステル残基単位;カルボン酸ケイ皮酸残基単位;4-フェニルケイ皮酸メチル残基単位、4-フェニルケイ皮酸エチル残基単位、4-フェニルケイ皮酸イソプロピル残基単位、4-フェニルケイ皮酸n-プロピル残基単位、4-フェニルケイ皮酸n-ブチル残基単位、4-フェニルケイ皮酸sec-ブチル残基単位、4-フェニルケイ皮酸tart-ブチル残基単位、4-フェニルケイ皮酸2-エチルヘキシル残基単位等のフェニル経ケイ皮酸エステル残基単位;フェニル経ケイ皮酸残基単位;α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸メチル残基単位、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸メチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸メチル残基単位、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸エチル残基単位、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸エチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル残基単位、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸n-プロピル残基単位、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸n-プロピル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸n-プロピル残基単位、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸n-ブチル残基単位、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸n-ブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸n-ブチル残基単位、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル残基単位、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル残基単位、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸t-ブチル残基単位、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸t-ブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸t-ブチル残基単位、α-シアノ-2,4-ジヒドロキシケイ皮酸メチル残基単位等のα-シアノ-ヒドロキシケイ皮酸エステル残基単位;α-シアノ-4-カルボキシケイ皮酸メチル残基単位、α-シアノ-4-カルボキシケイ皮酸エチル残基単位、α-シアノ-2,3-ジカルボキシケイ皮酸メチル残基単位、α-シアノ-2,3-ジカルボキシケイ皮酸エチル残基単位等のα-シアノ-カルボキシケイ皮酸エステル残基単位;α-シアノ-2-カルボキシ-3-ヒドロキシケイ皮酸メチル残基単位、α-シアノ-2-カルボキシ-3-ヒドロキシケイ皮酸エチル残基単位等のα-シアノ-カルボキシ-ヒドロキシケイ皮酸エステル残基単位;ヒドロキシベンジリデンマロン酸ジメチル残基単位、ヒドロキシベンジリデンマロン酸ジエチル残基単位、ヒドロキシベンジリデンマロン酸ジn-プロピル残基単位、ヒドロキシベンジリデンマロン酸ジイソプロピル残基単位等のヒドロキシベンジリデンマロン酸ジエステル残基単位;カルボキシベンジリデンマロン酸ジメチル残基単位、カルボキシベンジリデンマロン酸ジエチル残基単位、カルボキシベンジリデンマロン酸ジn-プロピル残基単位、カルボキシベンジリデンマロン酸ジイソプロピル残基単位等のカルボキシベンジリデンマロン酸ジエステル残基単位が挙げられ、その中でもケイ皮酸エステル残基単位、アルコキシケイ皮酸エステル残基単位、α-シアノ-ヒドロキシケイ皮酸エステル残基単位が好ましく、特に好ましくはα-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸メチル残基単位、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸メチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸メチル残基単位、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸エチル残基単位、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸エチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸エチル残基単位、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸n-プロピル残基単位、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸n-プロピル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸n-プロピル残基単位、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸イソプロピル残基単位、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸イソプロピル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソプロピル残基単位、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸n-ブチル残基単位、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸n-ブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸n-ブチル残基単位、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮イソブチル残基単位、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸イソブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸t-ブチル残基単位、α-シアノ-2-ヒドロキシケイ皮酸t-ブチル残基単位、α-シアノ-3-ヒドロキシケイ皮酸t-ブチル残基単位、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸t-ブチル残基単位、である。
【0051】
エステル系樹脂において、式(2)で表される残基単位は前記例示における残基単位を1種含んでいてもよく、2種以上の複数種含んでもよい。
【0052】
式(3)におけるR10、R11はそれぞれ独立して水素原子または炭素数1~12のアルキル基を示す。炭素数1~12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロキル基、n-プロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0053】
具体的な式(3)で表される残基単位としては、例えば、フマル酸モノメチル残基単位、フマル酸モノエチル残基単位、フマル酸モノ-n-プロピル残基単位、フマル酸モノイソプロピル残基単位、フマル酸モノ-n-ブチル残基単位、フマル酸モノ-sec-ブチル残基単位、フマル酸モノ-tert-ブチル残基単位、フマル酸モノ-2-エチルヘキシル残基単位、フマル酸モノシクロプロピル残基単位、フマル酸モノシクロペンチル残基単位、フマル酸モノシクロヘキシル残基単位等のフマル酸モノエステル残基単位;フマル酸ジメチル残基単位、フマル酸ジエチル残基単位、フマル酸ジ-n-プロピル残基単位、フマル酸ジイソプロピル残基単位、フマル酸ジ-n-ブチル残基単位、フマル酸ジ-sec-ブチル残基単位、フマル酸ジ-tert-ブチル残基単位、フマル酸ジ-2-エチルヘキシル残基単位、フマル酸ジシクロプロピル残基単位、フマル酸ジシクロブチル残基単位、フマル酸ジシクロペンチル残基単位、フマル酸ジシクロヘキシル残基単位、フマル酸ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル)残基単位、フマル酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)等のフマル酸ジエステル残基単位等が挙げられる。
【0054】
これらの中でも、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノイソプロピル、フマル酸モノ-tert-ブチル、フマル酸モノ-n-ブチル、フマル酸モノイソブチル、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ-tert-ブチル、フマル酸ジ-n-ブチル、フマル酸ジイソブチル等が好ましい。
【0055】
エステル系樹脂において、式(3)で表される残基単位は前記例示における残基単位を1種含んでいてもよく、2種以上の複数種含んでもよい。
【0056】
式(4)におけるR12は、ヘテロ原子として窒素原子もしくは酸素原子を1つ以上含む5員環複素環残基または6員環複素環残基(前記5員環複素環残基および前記6員環複素環残基は他の環状構造と縮合環構造を形成してもよい)を示す。
【0057】
具体的な式(4)で表される残基単位としては、例えば、1-ビニルピロール残基単位、2-ビニルピロール残基単位、1-ビニルインドール残基単位、9-ビニルカルバゾール残基単位、2-ビニルキノリン残基単位、4-ビニルキノリン残基単位、N-ビニルフタルイミド残基単位、N-ビニルスクシンイミド残基単位、2-ビニルフラン残基単位、2-ビニルベンゾフラン残基単位、スチレン残基単位、2-ビニルナフタレン残基単位が好ましく、9-ビニルカルバゾール残基単位、N-ビニルフタルイミド残基単位がさらに好ましい。
【0058】
エステル系樹脂は、前記式(2)、(3)および(4)以外に、以下の式(5)で表される残基単位を有していてもよい。
【0059】
【化5】
【0060】
(式中、R13、R14はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1~12の直鎖状アルキル基、炭素数3~12の分岐状アルキル基、または炭素数3~6の環状アルキル基からなる群の1種を示す。)
13、R14における炭素数1~12の直鎖状アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
【0061】
13、R14における炭素数3~12の分岐状アルキル基としては、例えば、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
【0062】
13、R14における炭素数3~6の環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0063】
式(5)におけるR13、R14としては、光の波長450nmにおける面内位相差(Re)と光の波長550nmにおける面内位相差(Re)の比Re(450)/Re(550)が小さくなることから、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、3-ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソへキシル基、ネオへキシル基が好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基がさらに好ましい。
【0064】
式(5)で表される残基単位は、アクリル樹脂残基単位であることが好ましい。式(5)で表されるアクリル樹脂残基単位の具体的な例示として、アクリル酸残基単位、メタクリル酸残基単位、2-エチルアクリル酸残基単位、2-プロピルアクリル酸残基単位、2-イソプロピルアクリル酸残基単位、2-ペンチルアクリル酸残基単位、2-ヘキシルアクリル酸残基単位、アクリル酸メチル残基単位、アクリル酸エチル残基単位、アクリル酸n-プロピル残基単位、アクリル酸イソプロピル残基単位、アクリル酸n-ブチル残基単位、アクリル酸イソブチル残基単位、アクリル酸sec-ブチル残基単位、アクリル酸n-ペンチル残基単位、アクリル酸イソペンチル残基単位、アクリル酸sec-ペンチル残基単位、アクリル酸3-ペンチル残基単位、アクリル酸ネオペンチル残基単位、アクリル酸n-へキシル残基単位、アクリル酸イソへキシル残基単位、アクリル酸ネオへキシル残基単位、メタクリル酸メチル残基単位、メタクリル酸エチル残基単位、メタクリル酸n-プロピル残基単位、メタクリル酸イソプロピル残基単位、メタクリル酸n-ブチル残基単位、メタクリル酸イソブチル残基単位、メタクリル酸sec-ブチル残基単位、メタクリル酸n-ペンチル残基単位、メタクリル酸イソペンチル残基単位、メタクリル酸sec-ペンチル残基単位、メタクリル酸3-ペンチル残基単位、メタクリル酸ネオペンチル残基単位、メタクリル酸n-へキシル残基単位、メタクリル酸イソへキシル残基単位、メタクリル酸ネオへキシル残基単位、2-エチルアクリル酸メチル残基単位、2-エチルアクリル酸エチル残基単位、2-エチルアクリル酸n-プロピル残基単位、2-エチルアクリル酸イソプロピル残基単位、2-エチルアクリル酸n-ブチル残基単位、2-エチルアクリル酸イソブチル残基単位、2-エチルアクリル酸sec-ブチル残基単位等が挙げられる。
【0065】
このなかでも、光の波長450nmにおける面内位相差(Re)と光の波長550nmにおける面内位相差(Re)の比Re(450)/Re(550)が小さくなることから、アクリル酸メチル残基単位、アクリル酸エチル残基単位、アクリル酸n-プロピル残基単位、アクリル酸イソプロピル残基単位、アクリル酸n-ブチル残基単位、アクリル酸イソブチル残基単位、アクリル酸sec-ブチル残基単位、メタクリル酸メチル残基単位、メタクリル酸エチル残基単位、メタクリル酸n-プロピル残基単位、メタクリル酸イソプロピル残基単位、メタクリル酸n-ブチル残基単位、メタクリル酸イソブチル残基単位、メタクリル酸sec-ブチル残基単位、メタクリル酸メチル残基単位、メタクリル酸エチル残基単位、メタクリル酸n-プロピル残基単位、メタクリル酸イソプロピル残基単位、メタクリル酸n-ブチル残基単位、メタクリル酸イソブチル残基単位、メタクリル酸sec-ブチル残基単位が好ましく、アクリル酸メチル残基単位、アクリル酸エチル残基単位、アクリル酸n-プロピル残基単位、アクリル酸イソプロピル残基単位、アクリル酸n-ブチル残基単位、アクリル酸イソブチル残基単位、アクリル酸sec-ブチル残基単位がさらに好ましい。
【0066】
エステル系樹脂において、前記式(2)のケイ皮酸エステル残基単位と前記式(4)を含む場合、前記式(2)のケイ皮酸エステル残基単位に係る単量体成分は、全単量体成分の合計100mol%に対し21mol%以上50mol%以下を含むことが好ましい。式(4)で表される残基単位は全単量体成分の合計100mol%に対し21mol%以上65mol%以下を含むことが好ましい。
【0067】
エステル系樹脂が式(2)及び式(3)の残基単位を含む場合、式(2)に係る単量体成分は、式(2)と式(3)の合計100mol%に対し21mol%以上70mol%以下含むことが好ましく、35mol%以上60mol%以下含むことが好ましい。
【0068】
エステル系樹脂が式(2)、式(4)及び式(5)の残基単位を含む場合、各残基単位成分の含有量は
式(2) 21mol%以上49mol%以下
式(4) 35mol%以上60mol%以下
式(5) 1mol%以上30mol%以下
であることが好ましい。これにより、本発明の樹脂組成物をフィルムとして使用する際の位相差特性がより優れる。
【0069】
ここで、エステル系樹脂の組成比は、H-NMRにより測定することができる。
【0070】
エステル系樹脂は、前記式(2)~(5)以外の単量体残基単位を含有してもよい。そのような単量体残基単位としては、例えば、スチレン残基、α-メチルスチレン残基などのスチレン類残基;アクリル酸残基;アクリル酸エステル残基;メタクリル酸残基;メタクリル酸エステル残基;酢酸ビニル残基、プロピオン酸ビニル残基などのビニルエステル類残基;メチルビニルエ-テル残基、エチルビニルエ-テル残基、ブチルビニルエ-テル残基などのビニルエ-テル残基;N-メチルマレイミド残基、N-シクロヘキシルマレイミド残基、N-フェニルマレイミド残基などのN-置換マレイミド残基;アクリロニトリル残基;メタクリロニトリル残基;エチレン残基、プロピレン残基などのオレフィン類残基等の1種または2種以上を挙げることができる。
【0071】
エステル系樹脂は、特に機械特性に優れ、製膜時の成形加工性に優れたものとなることから、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)により測定した溶出曲線より得られる標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が3×10~5×10のものであることが好ましく、5×10~1×10であることがさらに好ましい。
【0072】
エステル系樹脂の製造方法としては、該樹脂が得られる限りにおいて如何なる方法により製造してもよく、ラジカル重合を行うことにより製造することができる。
【0073】
ラジカル重合の方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、沈殿重合法、乳化重合法等のいずれもが採用可能である。
【0074】
本発明のセルロース系樹脂は、発明の主旨を超えない範囲で、その他ポリマ-、界面活性剤、高分子電解質、導電性錯体、顔料、染料、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、滑剤等を含有していてもよい。
【0075】
本発明のセルロース系樹脂は、熱安定性を向上させるために酸化防止剤を含有していても良い。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダ-ドフェノ-ル系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、ビタミンE系酸化防止剤、その他酸化防止剤が挙げられ、これら酸化防止剤はそれぞれ単独でもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0076】
本発明のセルロース系樹脂は、耐候性を高めるためヒンダ-ドアミン系光安定剤や紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾ-ル、ベンゾフェノン、トリアジン、ベンゾエ-ト系吸収剤等が挙げられる。
【0077】
本発明において、セルロース系樹脂と、式(2)で示されるケイ皮酸エステル残基単位、式(3)で示されるフマル酸エステル残基単位、式(4)で示される残基単位からなる群の少なくとも1種の残基単位を有する負の複屈折性を示すエステル系樹脂を含む組成物の製造方法として、セルロース系樹脂と前記エステル系樹脂をブレンドすることにより製造することができ、該ブレンドの方法としては、溶融ブレンド、溶液ブレンド等の方法を用いることができる。溶融ブレンド法とは、加熱により樹脂を溶融させて混練することにより製造する方法である。溶液ブレンド法とは樹脂を溶剤に溶解しブレンドする方法である。溶液ブレンドに用いる溶剤としては、樹脂等を溶解できる溶剤であればいかなる溶剤であっても構わないが、製膜工程にて、残溶剤が残りにくい様、溶剤の沸点は200℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましい。
【0078】
該溶剤としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、オルソジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類;フェノール、バラクロロフエノールなどのフェノール類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メトキシベンゼン、メシチレン、1,2-ジメトキシベンゼンなどの芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドンなどのケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;t-ブチルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、2-メチル-2,4-ペンタンジオールのようなアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドのようなアミド系溶媒;アセトニトリル、ブチロニトリルのようなニトリル系溶媒;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル系溶媒;二硫化炭素、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブなどを単独または混合した溶媒が挙げられる。
【0079】
本発明の一つの態様である光学フィルムについて説明する。
【0080】
本発明の光学フィルムは、前記セルロース系樹脂を含む。前記セルロース系樹脂と、前記負の位相差を示すエステル系樹脂の組成物であることが好ましい。
【0081】
本発明のセルロース系樹脂を用いたフィルムの製造方法としては、如何なる方法を用いてもよいが、溶液キャスト法により製造することが好ましい。ここで、溶液キャスト法とは、樹脂溶液(一般にはド-プと称する。)を支持基材上に流延した後、加熱することにより溶媒を蒸発させてフィルムを得る方法である。塗工方法は特に制限されず、通常の方法を採用できる。例えば、Tダイ法、ドクターブレード法、バーコーター法、スロットダイ法、リップコーター法、リバースグラビアコート法、マイクログラビア法、スピンコート法、刷毛塗り法、ロールコート法、フレキソ印刷法などがあげられる。また、用いられる支持基材としては、特に制限はないが、例えばポリエステルやポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン、トリアセチルセルロースやポリビニルアルコール、ポリイミドやポリアリレート、ポリスルホンやポリエーテルスルホン、エポキシ系樹脂等からなる高分子基材、ガラス板や石英基板などのガラス基材、アルミやステンレスやフェロタイプ等の金属基材、セラミックス基板などの無機基材等が挙げられる。上記基材として好ましくは、高分子基材または金属基材である。
【0082】
本発明のセルロース系樹脂を用いた光学フィルムを製造する際の樹脂溶液の粘度は、各成分の分子量、濃度、溶媒の種類で調整可能である。樹脂溶液の粘度としては特に制限はないが、フィルム塗工性をより容易にするため、好ましくは100~30000cps、さらに好ましくは300~20000cpsである。
【0083】
塗工溶液の乾燥工程における、乾燥方法は特に制限されず、通常の加熱手段を採用できる。例えば、熱風器、加熱ロール、遠赤外線ヒーター等があげられる。
【0084】
本発明のセルロース系樹脂を用いたフィルムの製造方法では、乾燥温度が1段のみの条件でも構わないし、外観保持や乾燥時間短縮のため、1段階目に低温で乾燥し、2段階目以降に高温で乾燥するような多段階乾燥でも構わない。
【0085】
本発明においてセルロース系樹脂、負の複屈折性を示すエステル系樹脂の濃度は、溶解、製膜が可能な限り特に限定されない。セルロース系樹脂、負の複屈折性を示すエステル系樹脂の溶解を実施する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように実施してもよく、また予め低濃度溶液として作製した後に濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予めセルロース系樹脂及び負の複屈折性を示すエステル系樹脂の高濃度の樹脂溶液とした後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度の樹脂溶液としてもよい。
【0086】
本発明の樹脂を用いた光学フィルムの製造方法は、位相差を発現する方法として特に制約はないが、セルロース系樹脂の分子鎖を効果的に配向させ高い位相差を発現させるため、一軸延伸またはアンバランス二軸延伸することが好ましい。延伸する方法としては、ロール延伸による縦一軸延伸法やテンター延伸による横一軸延伸法や斜め延伸法、これらの組み合わせによるアンバランス逐次二軸延伸法やアンバランス同時二軸延伸法等を用いることができる。
【0087】
延伸する前の未延伸フィルムの厚みは、延伸処理のし易さおよび光学部材の薄膜化への適合性の観点から、5~200μmが好ましく、10~150μmがさらに好ましく、20~120μmが特に好ましい。
【0088】
また、延伸後の光学フィルムの厚みは、画像表示装置の薄型化のため、5~100μmが好ましく、5~60μmがさらに好ましい。
【0089】
延伸の温度は特に制限はないが、良好な位相差特性が得られることから、好ましくは50~200℃、さらに好ましくは100~200℃である。一軸延伸の延伸倍率は特に制限はないが、良好な位相差特性が得られることから、1.05~4.0倍が好ましく、1.1~3.5倍がさらに好ましい。アンバランス二軸延伸の延伸倍率は特に制限はないが、光学特性に優れることから長さ方向には1.05~4.0倍が好ましく、1.1~3.5倍がさらに好ましい。延伸温度、延伸倍率等により位相差を制御することができる。
【0090】
本発明の樹脂を用いた光学フィルムにおいては、セルロース樹脂の含有率、含有するセルロース樹脂の総置換度、置換基の2位、3位、及び6位の置換度分布、並びに延伸条件によって位相差を調整することができる。
【0091】
本発明の樹脂を用いた光学フィルムの位相差特性は、目的とする光学フィルムにより異なるものであり、例えば円偏光板位相差フィルム用途では一般に、下記式(A)で示される位相差(Re)が好ましくは30~300nm、さらに好ましくは100~300nm、特に好ましくは120~280nmであって、下記式(B)で示されるNz係数が好ましくは0.3~1.3、さらに好ましくは0.4~0.8であるもの、すなわち下記式(C)で示される位相差(Rth)が好ましくは-60~240nm、さらに好ましくは-30~90nmであるもの等が挙げられる。このときの位相差特性は全自動複屈折計(王子計測機器株式会社製、商品名KOBRA-21ADH)を用い、測定波長589nmの条件で測定されるものである。
【0092】
これらは、従来のセルロ-ス系樹脂からなる光学フィルムでは発現が困難な位相差特性を有している。
【0093】
Re=(ny-nx)×d (A)
Nz=(ny-nz)/(ny-nx) (B)
Rth=[(nx+ny)/2-nz]×d (C)
(式中、nxはフィルム面内の進相軸方向の屈折率を示し、nyはフィルム面内の遅相軸方向の屈折率を示し、nzはフィルム面外の屈折率を示し、dはフィルム厚みを示す。)
本発明の光学フィルムの波長分散特性としては、色ずれ抑制のため、好ましくは0.60<Re(450)/Re(550)<1.05であり、さらに好ましくは0.70<Re(450)/Re(550)<1.02であり、特に好ましくは0.75<Re(450)/Re(550)<1.00である。
【0094】
本発明のセルロ-ス系樹脂を使用した場合、単独では、低波長分散の光学フィルムを提供することができる。このフィルムに、延伸方向に対して負の複屈折性を示すエステル系樹脂をブレンドした樹脂組成物は、一般的に逆波長分散性を示す光学フィルムを提供することができるものである。
【0095】
これらの位相差特性および波長分散特性を同時に満足することは、一般にセルロ-ス系樹脂を用いた光学フィルムでは発現が困難であるが、本発明に係る光学フィルムはこれらの特性を同時に満足するものである。
【0096】
本発明の樹脂を用いた光学フィルムは、画像表示装置の光量低下を避けるため、フィルムにしたときの透過率が好ましくは87%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0097】
本発明の樹脂を用いた光学フィルムは、ヘーズが好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。前記範囲にヘーズを制御することにより、位相差フィルムとして表示装置に組み込んだ際に高コントラストの画像が得られる。
【0098】
本発明の樹脂を用いた光学フィルムは、高温高湿度の環境における画面表示装置の光量低下をさけ、高コントラストの画像を維持するため、65℃相対湿度90%環境下500時間後におけるヘーズが1.5%以下であり、透過率が87%以上であることが好ましく、さらに好ましくはヘーズが1.0%以下で、透過率が90%以上である。
【0099】
本発明の光学フィルムは、65℃相対湿度90%環境下500時間後におけるヘーズの増加率が1.0%以下であり、かつ、全光線透過率の低下が2%未満であることが好ましい。
【0100】
本発明の樹脂を用いた光学フィルムは、必要に応じて他樹脂を含むフィルムと積層することができる。他樹脂としては、例えば、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート、ポリカーボネート、環状ポリオレフィン、マレイミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリイミド等が挙げられる。また、液晶層やハードコート層、ガスバリア層、屈折率を制御した層(低反射層)を積層することも可能である。
【0101】
本発明の光学フィルムは偏光板の部材、すなわち光学フィルムを備えた偏光板として好適に用いることができる。
【0102】
本発明の樹脂を用いた光学フィルムは、液晶表示装置用、有機EL表示装置用等の用途に用いられる偏光板、光学補償フィルムにおいて、好適に用いられる。また、該偏光板は画像表示装置として好適に用いられる。該光学補償フィルムは、優れた耐湿熱性、位相差特性および波長分散特性を有することを特徴とする。
【実施例0103】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0104】
なお、実施例により示す諸物性は、以下の方法により測定した。
<分子量の測定>
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー製、カラムGMHHR-H)を用い、安定剤含有テトラヒドロフランを溶媒として、40℃で測定し、標準ポリスチレン換算から算出して求めた。
<塩化物含有量の測定>
エチルセルロース中の塩化物の定量法は、日本薬局方に規定されて
いる。
【0105】
日本薬局方を参考に、電位差滴定装置(HIRANUMA製、COM-1600)を用いて電位差滴定し、塩化物含有量を求めた。ブランク溶液として70%濃硝酸:50ppm塩化ナトリウム水溶液=1:4(体積比)の10体積%エタノール溶液、サンプル溶液として70%濃硝酸:50ppm塩化ナトリウム水溶液=1:4(体積比)の5体積%エタノール溶液(サンプル溶液と同量の70%濃硝酸:50ppm塩化ナトリウム水溶液=1:4(体積比)含有)にエチルセルロースを溶解し、エチルセルロース濃度1.0重量%に調整した溶液を用いた。サンプル溶液およびブランク溶液に0.02mol/L硝酸銀溶液(F=1.000)を滴定し、塩化物を全て塩化ナトリウムとし、下記式(6)から算出した。
【0106】
塩化ナトリウム含有量(%)=[(サンプル溶液滴定量(mL)-ブランク溶液滴定量(mL))
×0.02×58.45×0.10]/サンプル重量(g) 式(6)
<酢酸物、酪酸物含有量の測定>
酢酸ナトリウムの定量法は、日本薬局方およびJIS K 8371に規定されており、JIS K 8371(2006年版)に、準拠して測定した。
【0107】
電位差滴定装置(HIRANUMA製、COM-1600)を用いて電位差滴定し、酢酸物含有量を求めた。ブランク溶液として50mL酢酸、サンプル溶液として50mL酢酸にセルロースシレートを溶解し、セルロースアシレート濃度1.0重量%に調整した溶液を用いた。サンプル溶液およびブランク溶液に0.1mol/L過塩素酸―酢酸溶液(F=1.000)を滴定し、酢酸物を全て酢酸ナトリウムとし、下記式(7)から算出した。セルロースアセテートブチレートについては、酢酸物または酪酸物を酢酸ナトリウムと酪酸ナトリウムとし、下記式(8)から算出した。
【0108】
酢酸ナトリウム含有量(%)=[(サンプル溶液滴定量(mL)-ブランク溶液滴定量(mL))
×82.03×1.00×0.10]/(サンプル重量(g)×10) 式(7)
酢酸ナトリウムおよび酪酸ナトリウム含有量(%)=[(サンプル溶液滴定量(mL)-ブランク溶液滴定量(mL))×99.53×1.00×0.10]/(サンプル重量(g)×10) 式(8)
<位相差特性の測定>
試料傾斜型自動複屈折計(王子計測機器製、商品名:KOBRA-WR)を用いて波長589nmの光を用いて位相差フィルムの位相差特性を測定した。
<全光線透過率およびヘーズの測定>
作成したフィルムの全光線透過率およびヘーズは、ヘーズメーター(日本電色工業製、商品名:NDH5000、光源:白色LED(5V3W、波長域380nmから780nm、全光線透過率およびヘーズ値はこの範囲の総和値))を使用し、全光線透過率の測定はJIS K 7361-1(1997版)に、ヘーズの測定はJIS-K 7136(2000年版)に、それぞれ準拠して測定した。
<耐熱耐湿試験>
恒温恒湿器(ヤマト科学株式会社製、商品名:IG400)を用いて65℃相対湿度90%の高温高湿環境下とし、500時間後の全光線透過率、ヘーズを調べる(以下、「耐湿熱試験」という)ことで耐湿熱性の測定をした。
【0109】
合成例1(負の複屈折性を示すエステル系樹脂(1)(フマル酸ジイソプロピル/フマル酸モノエチル系樹脂)の合成)
容量75mLのガラスアンプルにフマル酸ジイソプロピル42g、フマル酸モノエチル7.7gおよび重合開始剤であるtert-ブチルパーオキシピバレート0.66gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを55℃の恒温槽に入れ、24時間保持することによりラジカル重合をした。重合反応終了後、アンプルから重合物を取出し、テトラヒドロフラン200gで溶解させた。このポリマー溶液を4Lのヘキサン中に滴下して析出させた後、80℃で10時間真空乾燥することにより、負の複屈折性を示すエステル系樹脂(1)27gを得た(収率54%)。得られた負の複屈折性を示すエステル系樹脂(1)の重量平均分子量は95,000、フマル酸ジイソプロピル残基単位82モル%、フマル酸モノエチル残基単位18モル%であった。
【0110】
合成例2(負の複屈折性を示すエステル系樹脂(2)(9-ビニルカルバゾール/α―シアノ-4-ヒドロキシ-ケイ皮酸イソブチル/アクリル酸イソブチル)の合成)
容量50mLのガラスアンプルに9-ビニルカルバゾール5.0g(0.020モル)、α-シアノ-4-ヒドロキシ-ケイ皮酸イソブチル3.2g(0.013モル)、アクリル酸イソブチル1.7g(0.013モル)、重合開始剤である2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン0.093g(0.00022モル)およびエチルセロソルブ24.6gを入れ、窒素置換と抜圧を繰り返したのち減圧状態で熔封した。このアンプルを47℃の恒温槽に入れ、24時間保持することによりラジカル重合を行った。重合反応終了後、アンプルから重合物を取り出し、テトラヒドロフラン41gを加え、このポリマー溶液を330gのメタノール/水混合溶剤(重量比80/20)中に滴下して析出させ、ろ過した後、ろ過物を45gのメタノール/水混合溶剤(重量比90/10)で5回洗浄、ろ過した。得られた樹脂を80℃で10時間真空乾燥することにより、負の複屈折性を示すエステル系樹脂(2)9.2gを得た(収率:94%)。得られた負の複屈折性を示すエステル系樹脂(2)の重量平均分子量は230,000であり、残基単位の比率は、9-ビニルカルバゾール残基単位50モル%、α-シアノ-4-ヒドロキシ-ケイ皮酸イソブチル残基単位25モル%、アクリル酸イソブチル残基単位25モル%であった。
【0111】
実施例1
セルロース系樹脂としてエチルセルロース(ダウ・ケミカル社製 エトセル スタンダード(ETHOCEL standard)100、分子量Mn=58,000、分子量Mw=181,000、Mw/Mn=3.1、全置換度DS=2.51、塩化ナトリウム含有量0.082重量%)50.0gを電気伝導率0.01mS/mのイオン交換水250gで5回洗浄後、60℃にて重量減少のなくなるまで真空乾燥し、塩化ナトリウム含有量を測定したところ、塩化ナトリウム含有量は0.013重量%であった。得られた樹脂40.0gをトルエン/酢酸エチル=8/2(重量比)溶液に溶解して12重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度40℃の後155℃にて2段乾燥した後、幅150mmのフィルムを得た。
【0112】
得られたフィルムを50mm角に切り出した後、150℃で2.0倍に一軸延伸し(延伸後の厚み30μm)、フィルムを得た。
【0113】
得られたフィルムの位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に示す。得られたフィルムは光線透過率93%、ヘーズ0.2%、耐湿熱試験後の光線透過率は93%、ヘーズは0.4%であり、全光線透過率の低下は0%、ヘーズ増加は0.2%であった。
【0114】
得られたフィルムの光線透過率は高く、ヘーズは低く、耐湿熱性の高いものであった。
【0115】
【表1】
【0116】
実施例2
セルロース系樹脂としてエチルセルロース(ダウ・ケミカル社製 エトセル スタンダード(ETHOCEL standard)300、分子量Mn=87,000、分子量Mw=269,000、Mw/Mn=3.1、全置換度DS=2.52、塩化ナトリウム含有量0.054重量%)50.0gを電気伝導率0.01mS/mのイオン交換水250gで5回洗浄後、60℃にて重量減少のなくなるまで真空乾燥し、塩化ナトリウム含有量を測定したところ、塩化ナトリウム含有量は0.015重量%であった。得られた樹脂40.0gをトルエン/酢酸エチル=8/2(重量比)溶液に溶解して12重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度40℃の後155℃にて2段乾燥した後、幅150mmのフィルムを得た。
【0117】
得られたフィルムを50mm角に切り出した後、150℃で2.0倍に一軸延伸し(延伸後の厚み30μm)、フィルムを得た。
【0118】
得られた光学補償フィルムの位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に示す。得られたフィルムは光線透過率93%、ヘーズ0.3%、耐湿熱試験後の光線透過率は92%、ヘーズは0.6%であり、全光線透過率の低下は1%、ヘーズ増加は0.3%であった。
【0119】
得られたフィルムの光線透過率は高く、ヘーズは低く、耐湿熱性の高いものであった。
【0120】
実施例3
セルロース系樹脂として、実施例1同様に洗浄処理したエチルセルロース(ダウ・ケミカル社製 エトセル スタンダード(ETHOCEL standard)100、分子量Mn=58,000、分子量Mw=181,000、Mw/Mn=3.1、全置換度DS=2.51、塩化ナトリウム含有量0.013重量%)24.00gと、合成例1により得られた負の複屈折性を示すエステル系樹脂(1)16.00gとをトルエン/酢酸エチル=8/2(重量比)溶液に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度40℃の後155℃にて2段乾燥した後、幅150mmのフィルム(樹脂組成物)を得た(セルロース系樹脂:60.00重量%、負の複屈折性を示すエステル系樹脂:40.00重量%)。
【0121】
得られたフィルムを50mm角に切り出した後、140℃で2.0倍に一軸延伸し(延伸後の厚み30μm)、フィルムを得た。
【0122】
得られたフィルムの光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性、耐湿熱性を測定した。その結果を表1に示す。得られたフィルムは光線透過率93%、ヘーズ0.3%、耐湿熱試験後の光線透過率は93%、ヘーズは0.4%であり、全光線透過率の低下は0%、ヘーズ増加は0.1%であった。
【0123】
得られたフィルムの光線透過率は高く、ヘーズは低く、耐湿熱性の高いものであった。
【0124】
実施例4
セルロース系樹脂として、実施例1同様に洗浄処理したエチルセルロース(ダウ・ケミカル社製 エトセル スタンダード(ETHOCEL standard)100、分子量Mn=58,000、分子量Mw=181,000、Mw/Mn=3.1、全置換度DS=2.51、塩化ナトリウム含有量0.013重量%)31.20gと合成例2により得られた負の複屈折性を示すエステル系樹脂(2)8.80gとをトルエン/酢酸エチル=8/2(重量比)溶液に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度40℃の後155℃にて2段乾燥した後、幅150mmのフィルム(樹脂組成物)を得た(セルロース系樹脂:78.0重量%、負の複屈折性を示すエステル系樹脂:22.0重量%)。
【0125】
得られたフィルムを50mm角に切り出した後、157℃で2.0倍に一軸延伸し(延伸後の厚み30μm)、フィルムを得た。
【0126】
得られたフィルムの光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性、耐湿熱性を測定した。その結果を表1に示す。得られたフィルムは光線透過率93%、ヘーズ0.3%、耐湿熱試験後の光線透過率は93%、ヘーズは0.5%であり、全光線透過率の低下は0%、ヘーズ増加は0.2%であった。
【0127】
得られたフィルムの光線透過率は高く、ヘーズは低く、耐湿熱性の高いものであった。
【0128】
実施例5
セルロース系樹脂として実施例2同様に洗浄処理したエチルセルロース(ダウ・ケミカル社製 エトセル スタンダード(ETHOCEL standard)300、分子量Mn=87,000、分子量Mw=269,000、Mw/Mn=3.1、全置換度DS=2.52、塩化ナトリウム含有量0.015重量%)31.20gと合成例2により得られた負の複屈折性を示すエステル系樹脂(2)8.80gとをトルエン/酢酸エチル=8/2(重量比)溶液に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度40℃の後155℃にて2段乾燥した後、幅150mmのフィルム(樹脂組成物)を得た(セルロース系樹脂:78.0重量%、負の複屈折性を示すエステル系樹脂:22.0重量%)。
【0129】
得られたフィルムを50mm角に切り出した後、157℃で2.0倍に一軸延伸し(延伸後の厚み30μm)、フィルムを得た。
【0130】
得られたフィルムの光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性、耐湿熱性を測定した。その結果を表1に示す。得られたフィルムは光線透過率93%、ヘーズ0.3%、耐湿熱試験後の光線透過率は92%、ヘーズは0.6%であり、全光線透過率の低下は1%、ヘーズ増加は0.3%であった。
【0131】
得られたフィルムの光線透過率は高く、ヘーズは低く、耐湿熱性の高いものであった。
【0132】
実施例6
セルロース系樹脂としてセルロースアセテートブチレート(シグマアルドリッチ社製 、分子量Mn=27,000、分子量Mw=73,000、Mw/Mn=2.7、アセチル置換度DSacetyl=1.05、ブチル置換度DSbutyl=1.74、酢酸ナトリウムおよび酪酸ナトリウム含有量0.042重量%)50.0gを電気伝導率0.01mS/mのイオン交換水250gで5回洗浄後、60℃にて重量減少のなくなるまで真空乾燥し、酢酸ナトリウム含有量を測定したところ、酢酸ナトリウムおよび酪酸ナトリウム含有量は0.013重量%であった。得られた樹脂40.0gをトルエン/メタノール=8/2(重量比)溶液に溶解して30重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度40℃の後130℃にて2段乾燥した後、幅150mmのフィルムを得た。
【0133】
得られたフィルムを50mm角に切り出した後、130℃で1.5倍に一軸延伸し(延伸後の厚み30μm)、フィルムを得た。
【0134】
得られたフィルムの位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表1に示す。得られたフィルムは光線透過率93%、ヘーズ0.3%、耐湿熱試験後の光線透過率は93%、ヘーズは0.4%であり、全光線透過率の低下は0%、ヘーズ増加は0.1%であった。
【0135】
得られたフィルムの光線透過率は高く、ヘーズは低く、耐湿熱性の高いものであった。
【0136】
実施例7
セルロース系樹脂として、実施例7同様に洗浄処理したセルロースアセテートブチレート(シグマアルドリッチ社製、分子量Mn=27,000、分子量Mw=73,000、Mw/Mn=2.7、アセチル置換度DSacetyl=1.05、ブチル置換度DSbutyl=1.74、酢酸ナトリウムおよび酪酸ナトリウム含有量0.013重量%)36gと合成例2により得られた負の複屈折性を示すエステル系樹脂(2)4.00gと2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン0.4gとをトルエン/メタノール=8/2(重量比)溶液に溶解して32重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度40℃の後130℃にて2段乾燥した後、幅150mmのフィルム(樹脂組成物)を得た(セルロース系樹脂:89.1重量%、負の複屈折性を示すエステル系樹脂:9.9重量%、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン1.0重量%)。
【0137】
得られたフィルムを50mm角に切り出した後、130℃で1.5倍に一軸延伸し(延伸後の厚み30μm)、フィルムを得た。
【0138】
得られたフィルムの光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性、耐湿熱性を測定した。その結果を表1に示す。得られたフィルムは光線透過率92%、ヘーズ0.7%、耐湿熱試験後の光線透過率は92%、ヘーズは0.9%であり、全光線透過率の低下は0%、ヘーズ増加は0.2%であった。
【0139】
得られたフィルムの光線透過率は高く、ヘーズは低く、耐湿熱性の高いものであった。
【0140】
比較例1
セルロース系樹脂として実施例1で用いたエチルセルロース(ダウ・ケミカル社製 エトセル スタンダード(ETHOCEL standard)100、分子量Mn=58,000、分子量Mw=181,000、Mw/Mn=3.1、全置換度DS=2.51、塩化ナトリウム含有量0.082重量%)をイオン交換水で洗浄せず、樹脂40.0gをトルエン/酢酸エチル=8/2(重量比)溶液に溶解して12重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度40℃の後155℃にて2段乾燥した後、幅150mmのフィルムを得た。
【0141】
得られたフィルムを50mm角に切り出した後、150℃で2.0倍に一軸延伸し(延伸後の厚み30μm)、フィルムを得た。
【0142】
得られたフィルムの位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表2に示す。得られたフィルムは光線透過率93%、ヘーズ0.3%、耐湿熱試験後の光線透過率は89%、ヘーズは3.5%であり、全光線透過率の低下は4%、ヘーズ増加は3.2%であった。
【0143】
得られたフィルムの光線透過率は低く、ヘーズは高く、耐湿熱性の低いものであった。
【0144】
【表2】
【0145】
比較例2
セルロース系樹脂として実施例2で用いたエチルセルロース(ダウ・ケミカル社製 エトセル スタンダード(ETHOCEL standard)300、分子量Mn=87,000、分子量Mw=269,000、Mw/Mn=3.1、全置換度DS=2.52、塩化ナトリウム含有量0.054重量%)40.0gをイオン交換水で洗浄せず、トルエン/酢酸エチル=8/2(重量比)溶液に溶解して12重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度40℃の後155℃にて2段乾燥した後、幅150mmのフィルムを得た。
【0146】
得られたフィルムを50mm角に切り出した後、150℃で2.0倍に一軸延伸し(延伸後の厚み30μm)、フィルムを得た。
【0147】
得られたフィルムの位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表2に示す。得られたフィルムは光線透過率93%、ヘーズ0.3%、耐湿熱試験後の光線透過率は91%、ヘーズは1.7%であり、全光線透過率の低下は2%、ヘーズ増加は1.4%であった。
【0148】
得られたフィルムの光線透過率は低く、ヘーズは高く、耐湿熱性の低いものであった。
【0149】
比較例3
セルロース系樹脂として比較例1で用いたエチルセルロース(ダウ・ケミカル社製 エトセル スタンダード(ETHOCEL standard)100、分子量Mn=58,000、分子量Mw=181,000、Mw/Mn=3.1、全置換度DS=2.51、塩化ナトリウム含有量0.082重量%)28.00gと、合成例1により得られた負の複屈折性を示すエステル系樹脂(1)12.00gとをトルエン/酢酸エチル=8/2(重量比)溶液に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度40℃の後155℃にて2段乾燥した後、幅150mmのフィルム(樹脂組成物)を得た(セルロース系樹脂:70.00重量%、負の複屈折性を示すエステル系樹脂:30.00重量%)。
【0150】
得られたフィルムを50mm角に切り出した後、140℃で2.0倍に一軸延伸し(延伸後の厚み30μm)、フィルムを得た。
【0151】
得られたフィルムの光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性、耐湿熱性を測定した。その結果を表2に示す。得られたフィルムは光線透過率93%、ヘーズ0.4%、耐湿熱試験後の光線透過率は91%、ヘーズは1.6%であり、全光線透過率の低下は2%、ヘーズ増加は1.2%であった。
【0152】
得られたフィルムの光線透過率は低く、ヘーズは高く、耐湿熱性の低いものであった。
【0153】
比較例4
セルロース系樹脂として実施例2で用いたエチルセルロース(ダウ・ケミカル社製 エトセル スタンダード(ETHOCEL standard)300、分子量Mn=87,000、分子量Mw=269,000、Mw/Mn=3.1、全置換度DS=2.52、塩化ナトリウム含有量0.054重量%)31.20gと合成例2により得られた負の複屈折性を示すエステル系樹脂(2)8.80gとをトルエン/酢酸エチル=8/2(重量比)溶液に溶解して15重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度40℃の後155℃にて2段乾燥した後、幅150mmのフィルム(樹脂組成物)を得た(セルロース系樹脂:78.0重量%、負の複屈折性を示すエステル系樹脂:22.0重量%)。
【0154】
得られたフィルムを50mm角に切り出した後、157℃で2.0倍に一軸延伸し(延伸後の厚み30μm)、フィルムを得た。
【0155】
得られたフィルムの光線透過率、ヘーズ、位相差特性、波長分散特性、耐湿熱性を測定した。その結果を表2に示す。得られたフィルムは光線透過率93%、ヘーズ0.4%、耐湿熱試験後の光線透過率は91%、ヘーズは1.6%であり、全光線透過率の低下は2%、ヘーズ増加は1.2%であった。
【0156】
得られたフィルムの光線透過率は低く、ヘーズは高く、耐湿熱性の低いものであった。
【0157】
比較例5
セルロース系樹脂として実施例6で用いたセルロースアセテートブチレート(シグマアルドリッチ社製 、分子量Mn=27,000、分子量Mw=73,000、Mw/Mn=2.7、アセチル置換度DSacetyl=1.05、ブチル置換度DSbutyl=1.74、酢酸ナトリウムおよび酪酸ナトリウム含有量0.042重量%)40.0gをイオン交換水で洗浄せず、トルエン/メタノール=8/2(重量比)溶液に溶解して30重量%の樹脂溶液とし、コーターによりポリエチレンテレフタレートフィルム上に流涎し、乾燥温度40℃の後130℃にて2段乾燥した後、幅150mmのフィルムを得た。
【0158】
得られたフィルムを50mm角に切り出した後、130℃で1.5倍に一軸延伸し(延伸後の厚み30μm)、フィルムを得た。
【0159】
得られたフィルムの位相差特性、波長分散特性を測定した。その結果を表2に示す。得られたフィルムは光線透過率93%、ヘーズ0.3%、耐湿熱試験後の光線透過率は91%、ヘーズは2.0%であり、全光線透過率の低下は2%、ヘーズ増加は1.7%であった。
【0160】
得られたフィルムの光線透過率は低く、ヘーズは高く、耐湿熱性の低いものであった。
【0161】
本発明の実施例1~7で得られるセルロース系樹脂又は該樹脂と負の複屈折率を示すエステル系樹脂を含む組成物を含むフィルムは、耐熱耐湿試験後のヘーズの増加が小さく(白化抑制)、光線透過率の低下が小さく、耐湿熱性が高いことから、光学フィルム、特に光学補償フィルムに好適である。
図1