(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180331
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】解剖学的マップの以前の解剖学的マップへの自動位置合わせ
(51)【国際特許分類】
A61B 34/20 20160101AFI20221129BHJP
A61B 18/12 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
A61B34/20
A61B18/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022083623
(22)【出願日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】17/328,043
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】イタイ・ドロン
(72)【発明者】
【氏名】ファディ・マサルワ
(72)【発明者】
【氏名】アサフ・コーエン
(72)【発明者】
【氏名】ナタン・シャロン・カッツ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK35
4C160KK70
(57)【要約】
【課題】解剖学的心臓マップを位置合わせすること。
【解決手段】方法は、患者の器官の体積の第1の中心軸ツリーグラフを、第1の時間で取得された体積の第1の電子化解剖学的マップにおいて計算することを含む。患者の器官の体積の第2の中心軸ツリーグラフが、第1の時間とは異なる第2の時間で取得された体積の第2の電子化解剖学的マップにおいて計算される。第1のツリーグラフと第2のツリーグラフとの間の偏差が検出及び推定される。推定偏差を使用して、第1の中心軸ツリーグラフ及び第2の中心軸ツリーグラフが互いに位置合わせされる。位置合わせされた第1のツリーグラフ及び第2のツリーグラフを使用して、第1の電子化解剖学的マップ及び第2の電子化解剖学的マップが組み合わされる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
解剖学的マップを以前の解剖学的マップに自動位置合わせするためのシステムであって、
プロセッサであって、
患者の器官の体積の第1の中心軸ツリーグラフを、第1の時間で取得された前記体積の第1の電子化解剖学的マップにおいて計算することと、
前記患者の前記器官の体積の第2の中心軸ツリーグラフを、前記第1の時間とは異なる第2の時間で取得された前記体積の第2の電子化解剖学的マップにおいて計算することと、
前記第1のツリーグラフと前記第2のツリーグラフとの間の偏差を検出及び推定することと、
前記推定された偏差を使用して、前記第1の中心軸ツリーグラフ及び前記第2の中心軸ツリーグラフを互いに位置合わせすることと、
前記位置合わせされた第1のツリーグラフ及び第2のツリーグラフを使用して、前記第1の電子化解剖学的マップ及び前記第2の電子化解剖学的マップを組み合わせることと、を行うように構成されている、プロセッサと、
前記組み合わされた第1の電子化解剖学的マップ及び第2の電子化解剖学的マップをユーザに表示するように構成されているモニタと、を備える、システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記第1の電子化解剖学的マップと前記第2の電子化解剖学的マップとの間の1つ又は2つ以上のランドマークの動きを識別することによって前記偏差を検出するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ランドマークが、冠状静脈洞カテーテル及び身体表面パッチの一方又は両方を備える、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記プロセッサが、前記第1の中心軸ツリーグラフ及び前記第2の中心軸ツリーグラフの対応する縁点間の不連続性を検出することによって前記偏差を検出するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサが、前記第1のツリーグラフと前記第2のツリーグラフとの間の変位を検出及び推定することによって、前記偏差を検出及び推定するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の電子化解剖学的マップ及び前記第2の電子化解剖学的マップを組み合わせる際に、前記プロセッサが、前記体積の連続解剖学的マップを生成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記プロセッサが、
3つ又は4つ以上のそれぞれの解剖学的マップにおいて計算された3つ又は4つ以上のツリーグラフ間の2つ又は3つ以上の偏差を推定することと、
前記推定された偏差を使用して、前記3つ又は4つ以上のツリーグラフを互いに位置合わせすることと、
前記位置合わせされたツリーグラフを使用して、前記3つ又は4つ以上の解剖学的マップを組み合わせることと、を行うようにさらに構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1の電子化解剖学的マップ及び前記第2の電子化解剖学的マップを組み合わせる際に、前記プロセッサは、少なくとも前記第1の解剖学的マップ内の第1のアブレーション位置及び前記第2の解剖学的マップ内の第2のアブレーション位置を組み合わせるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
解剖学的マップを以前の解剖学的マップに自動位置合わせするための方法であって、
患者の器官の体積の第1の中心軸ツリーグラフを、第1の時間で取得された前記体積の第1の電子化解剖学的マップにおいて計算することと、
前記患者の前記器官の体積の第2の中心軸ツリーグラフを、前記第1の時間とは異なる第2の時間で取得された前記体積の第2の電子化解剖学的マップにおいて計算することと、
前記第1のツリーグラフと前記第2のツリーグラフとの間の偏差を検出及び推定することと、
前記推定された偏差を使用して、前記第1の中心軸ツリーグラフ及び前記第2の中心軸ツリーグラフを互いに位置合わせすることと、
前記位置合わせされた第1のツリーグラフ及び第2のツリーグラフを使用して、前記第1の電子化解剖学的マップ及び前記第2の電子化解剖学的マップを組み合わせることと、を含む、方法。
【請求項10】
前記偏差を検出することが、前記第1の電子化解剖学的マップと前記第2の電子化解剖学的マップとの間の1つ又は2つ以上のランドマークの動きを識別することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ランドマークが、冠状静脈洞カテーテル及び身体表面パッチの一方又は両方を備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記偏差を検出することが、前記第1の中心軸ツリーグラフ及び前記第2の中心軸ツリーグラフの対応する縁点間の不連続性を検出することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記偏差を検出及び推定することが、前記第1のツリーグラフと前記第2のツリーグラフとの間の変位を検出及び推定することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の電子化解剖学的マップ及び前記第2の電子化解剖学的マップを組み合わせることが、前記体積の連続解剖学的マップを生成することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
3つ又は4つ以上のそれぞれの解剖学的マップにおいて計算された3つ又は4つ以上のツリーグラフ間の2つ又は3つ以上の偏差を推定することと、
前記推定された偏差を使用して、前記3つ又は4つ以上のツリーグラフを互いに位置合わせすることと、
前記位置合わせされたツリーグラフを使用して、前記3つ又は4つ以上の解剖学的マップを組み合わせることと、を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記組み合わされた解剖学的マップをユーザに提示することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の電子化解剖学的マップ及び前記第2の電子化解剖学的マップを組み合わせることが、少なくとも前記第1の解剖学的マップ内の第1のアブレーション位置及び前記第2の解剖学的マップ内の第2のアブレーション位置を組み合わせることを含む、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、心臓マッピングに関し、具体的には解剖学的心臓マップの位置合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
器官可視化の位置合わせ方法が、これまで特許文献において提案されている。例えば、米国特許出願公開第2005/0197568号は、介入システムにおける心臓画像データの位置合わせのための方法を記載している。本方法は、取得された3D解剖学的画像に第1の複数の基準点を挿入することと、第1の複数の基準点が挿入された3D解剖学的画像を介入システムにエクスポートすることと、含む。第2の複数の基準点が介入システムを使用してエクスポートされた3D解剖学的画像に挿入され、第1の複数の基準点及び当該第2の複数の基準点が互いに整列されて、エクスポートされた3D解剖学的画像を介入システムで登録するようにする。
【0003】
別の例として、米国特許出願公開第2011/0026794号は、3D画像データを取得することを含む、外科的介入における支援のために、血管構造の2D及び3D画像の変形可能な非剛体位置合わせを実行するための方法を記載している。腹部大動脈は、グラフ切断ベースのセグメント化を使用して3D画像データからセグメント化されて、セグメント化マスクを生成する。中心線は、連続的なトポロジー薄型化プロセスを使用してセグメント化マスクから生成される。3次元グラフは、中心線から生成される。2次元2D画像データが取得される。2D画像データが、距離マップを生成するようにセグメント化される。エネルギー関数が、3Dグラフ及び距離マップに基づいて定義される。エネルギー関数が、3D画像データと2D画像データとの間の非剛体位置合わせを実行するように最小化される。位置合わせが、最適化されてもよい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に記載された本発明の一実施形態は、患者の器官の体積の第1の中心軸ツリーグラフを、第1の時間で取得された体積の第1の電子化解剖学的マップにおいて計算することを含む方法を提供する。患者の器官の体積の第2の中心軸ツリーグラフが、第1の時間とは異なる第2の時間で取得された体積の第2の電子化解剖学的マップにおいて計算される。第1のツリーグラフと第2のツリーグラフとの間の偏差が検出及び推定される。推定偏差を使用して、第1の中心軸ツリーグラフ及び第2の中心軸ツリーグラフが互いに位置合わせされる。位置合わせされた第1のツリーグラフ及び第2のツリーグラフを使用して、第1の電子化解剖学的マップ及び第2の電子化解剖学的マップが組み合わされる。
【0005】
いくつかの実施形態では、偏差を検出することが、第1の電子化解剖学的マップと第2の電子化解剖学的マップとの間の1つ又は2つ以上のランドマークの動きを識別することを含む。
【0006】
いくつかの実施形態では、ランドマークが、冠状静脈洞カテーテル及び身体表面パッチの一方又は両方を備える。
【0007】
一実施形態では、偏差を検出することが、第1の中心軸ツリーグラフ及び第2の中心軸ツリーグラフの対応する縁点間の不連続性を検出することを含む。
【0008】
別の実施形態では、偏差を検出及び推定することが、第1のツリーグラフと第2のツリーグラフとの間の変位を検出及び推定することを含む。
【0009】
いくつかの実施形態では、第1の電子化解剖学的マップ及び第2の電子化解剖学的マップを組み合わせることが、体積の連続解剖学的マップを生成することを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、方法が、3つ又は4つ以上のそれぞれの解剖学的マップにおいて計算された3つ又は4つ以上のツリーグラフ間の2つ又は3つ以上の偏差を推定することをさらに含む。推定された偏差を使用して、3つ又は4つ以上のツリーグラフが互いに位置合わせされる。位置合わせされたツリーグラフを使用して、3つ又は4つ以上の解剖学的マップが組み合わされる。
【0011】
一実施形態では、本方法は、組み合わされた解剖学的マップをユーザに提示することをさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、第1の電子化解剖学的マップ及び第2の電子化解剖学的マップを組み合わせることが、少なくとも第1の解剖学的マップ内の第1のアブレーション位置及び第2の解剖学的マップ内の第2のアブレーション位置を組み合わせることを含む。
【0013】
また、本発明の別の実施形態によれば、プロセッサとモニタとを含むシステムがさらに提供される。プロセッサが、患者の器官の体積の第1の中心軸ツリーグラフを、第1の時間で取得された体積の第1の電子化解剖学的マップにおいて計算することと、患者の器官の体積の第2の中心軸ツリーグラフを、第1の時間とは異なる第2の時間で取得された体積の第2の電子化解剖学的マップにおいて計算することと、第1のツリーグラフと第2のツリーグラフとの間の偏差を検出及び推定することと、推定された偏差を使用して、第1の中心軸ツリーグラフ及び第2の中心軸ツリーグラフを互いに位置合わせすることと、位置合わせされた第1のツリーグラフ及び第2のツリーグラフを使用して、第1の電子化解剖学的マップ及び第2の電子化解剖学的マップを組み合わせることと、を行うように構成されている。モニタが、組み合わされた第1の電子化解剖学的マップ及び第2の電子化解剖学的マップをユーザに表示するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本発明は、以下の「発明を実施するための形態」を図面と併せて考慮することで、より完全に理解されよう。
【
図1】本発明の例示的な実施形態による、電気解剖学的マッピング及びアブレーションのためのシステムの概略描写図である。
【
図2】本発明の例示的な実施形態による、マップ骨格位置合わせを使用した、左心房の自動的に生成された患者動き補償された解剖学的マップの概略描写ボリュームレンダリングである。
【
図3】本発明の例示的な実施形態による、マップ骨格位置合わせを使用した、
図2の患者動き補償された解剖学的マップを生成する自動的な方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
概論
カテーテルベースの解剖学的マッピング技術は、器官の腔(例えば、体積の表面)の電子化解剖学的マップを作成することができる。そのようなマップは、その後、アブレーションを行う際に使用することができる。例えば、心臓マッピングシステムは、心房細動を治療するために、肺静脈(PV)の小孔のアブレーションの際に使用されるように、左心房(LA)などの心臓腔のマップを生成することができる。
【0016】
しかしながら、肺静脈をマッピング及びアブレーションすることを伴う侵襲的処置中に、患者が動き、マップシフトを引き起こすことがある。マッピング及びアブレーションが継続されてもよいが、早期アブレーションが発生したことを理解するために、新しいマップが前のマップと位置合わせされる必要がある。
【0017】
この問題を克服するために、医師は、最初に、それらのマップをCT又はMRI画像に位置合わせすることがある。この場合、マップシフトがある場合、医師は、新しいマップをCT/MR画像に再位置合わせする可能性があり、その結果、両方のマップが登録される。しかしながら、そのような初期位置合わせは、手動であり、時間がかかり、医師が位置合わせに使用されるポイントをどのくらいうまく識別するかに依存する。
【0018】
以下に記載される本発明のいくつかの実施形態は、手順(マッピング及びアブレーション)が行われているときに心室の骨格を生成するための方法を提供する。これらの実施形態では、プロセッサは、心臓の心室の(例えば、LAの)解剖学的にマッピングされた体積を受信する。LAの場合、プロセッサは、LAの解剖学的マップ上のPV及び心耳開口部領域を自動的に識別する。この目的のために、プロセッサは、解剖学的マップから中心軸グラフ(以下、省略して「骨格」とも呼ばれる)を計算する。体積の中心軸上の点は、断面平面内の2Dにおいて結果として生じる境界上に2つ以上の最も近い点を有する体積の平面断面内の点として定義することができる。元々「トポロジカル骨格」と呼ばれていたものが、生体形状認識のツールとして1967年に導入された。
【0019】
骨格を生成する方法は、2020年9月1日に出願された、「Automatic Identification and Processing of Anatomical Structures in an Anatomical Map」と題する米国特許出願第17/009715号に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。プロセッサは、この方法、又は中心軸グラフ(「骨格」)を生成するための任意の他の好適な方法を使用することができる。
【0020】
このような骨格は、PVがマップから除去されないことにより、例えばマップの色付けの形で電気生理学的(EP)バージョンのマップに現れる電気活動などの混乱を招く可能性のある無関係な電気生理学的(EP)情報を取り除くことによって、その後のPVのアブレーションを実行する医師を支援することができる。アブレーションを行う直前にはまだ無関係であると考えられていたこのEP情報は、医師が(例えば、PV口にカテーテルを配置するのではなく)誤ってそのPVの奥深くにアブレーションカテーテルを配置する原因となることがある。
【0021】
本発明の一実施形態では、典型的には冠状静脈洞カテーテル又は身体表面パッチなどのランドマークのシフトによって識別される患者の動きがある場合、手順は継続され、新しい骨格が生成される。プロセッサは、2つの骨格の終点、例えば、肺静脈の中心を識別し、これらの終点は、動く前のマップ及び動いた後のマップを位置合わせするために使用される。上記のように、開示された技法のいくつかの実施形態は、更新された患者動き補償された(例えば、連続)マップを生成するために、骨格位置合わせを使用して、マップの既存の部分(例えば、患者が動く前の部分)を動いた後に行われたマップ部分と組み合わせる方法を提供する。
【0022】
プロセッサは、骨格位置合わせを使用して、患者動き補償された解剖学的マップを自動的に生成する。この目的のために、一実施形態では、プロセッサは、患者の器官の体積の第1の中心軸ツリーグラフを、第1の時間で取得された体積の第1の電子化解剖学的マップにおいて計算する。次いで、プロセッサは、患者の器官の体積の第2の中心軸ツリーグラフを、第1の時間とは異なる第2の時間で取得された体積の第2の電子化解剖学的マップにおいて計算する。
【0023】
この第2の時間は、患者が同じセッション中に、又は後続のセッション中に動いた後であってもよい。いずれにせよ、プロセッサは、第1のツリーグラフと第2のツリーグラフとの間の偏差を、以下に記載される手段を使用して検出する、及び推定する。
【0024】
推定された偏差を使用して、プロセッサは、第1及び第2の中心軸ツリーグラフを互いに位置合わせし、位置合わせされたツリーグラフを使用して第1及び第2の電子化解剖学的マップを組み合わせる。
【0025】
一実施形態では、プロセッサは、第1の電子化解剖学的マップと第2の電子化解剖学的マップとの間の1つ又は2つ以上のランドマークの動きを識別することによって偏差を検出する。ランドマークは、冠状静脈洞カテーテル及び身体表面パッチのうちの1つ又は2つ以上を含むことができる。
【0026】
別の実施形態では、プロセッサは、第1及び第2の中心軸ツリーグラフの2つの縁点間の予想外の不連続性を検出することによって偏差を検出する。
【0027】
上記の方法は、3つ又は4つ以上のツリーグラフ間の2つ又は3つ以上の変位偏差を推定するために適用されてもよい。位置合わせされたツリーグラフを使用して、プロセッサは、3つ又は4つ以上の解剖学的マップを組み合わせることができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、第1及び第2の電子化解剖学的マップを組み合わせることは、第1及び第2の解剖学的マップからアブレーション位置(例えば、実際のアブレーション病変又は計画された位置)を組み合わせることを含む。この技法により、一実施形態では、動いた後に生成された位置合わせされたマップ上に、動く前に形成されたアブレーション病変を視覚化することが可能となる。このようにして、医師は、患者の動きに関係なく、所望のアブレーションパターンを適用することができる。
【0029】
別の実施形態では、患者の動きは、1つ又は2つ以上の誤ったツリーグラフ縁点(例えば、存在すべきではないが、不連続性により発生するツリーグラフの縁点)を識別することによって、ツリーグラフを構築するプロセッサによって識別される。プロセッサは、それらのそれぞれの縁点間の変位を推定することによって、ツリーグラフの部分間の偏差(例えば、変位による不連続性のサイズ及び方向)をさらに推定する。一般に、偏差は、不均一であってもよく、位置依存変位及び/又は回転及び/又は伸張及び/又は収縮を含む。
【0030】
医療画像を使用した医師の位置合わせ方法とは対照的に、骨格を使用することはそのような画像(又はそのような画像への位置合わせ)を必要としない。追加的に、以下に記載される方法は完全に自動である。
【0031】
典型的には、プロセッサは、プロセッサが、上で概略を述べたプロセッサ関連工程及び機能の各々を実施することを可能にする特定のアルゴリズムを含むソフトウェアにプログラム化されている。
【0032】
開示された位置合わせ技法は、侵襲的処置中に解剖学的マップを分析する際に、医師が必要とする作業を容易にすることができる。したがって、開示された技法は、臨床診断及びその後の治療、例えば、カテーテルアブレーションをより安全かつより効率的にすることができる。
【0033】
システムの説明
図1は、本発明の一実施形態による、電気解剖的マッピング及びアブレーション20のためのシステムの概略描写図である。
【0034】
システム20は、医師30によって台29の上に横になっている患者28の心臓26にナビゲートされる、シャフト22を有するカテーテル21を備える。描写されている例では、医師30は、カテーテルの近位端部及び/又はシース23からの偏向部(deflection)の近くの遠隔操縦器32を使用して、シャフト22の遠位端部を操作しながら、シース23を通してシャフト22を挿入する。差し込み
図25に示されているとおり、バスケット型カテーテル40は、シャフト22の遠位端部に取り付けられている。バスケット型カテーテル40は、折りたたまれた状態でシース23を通して挿入された後、心臓26内部で拡張される。
【0035】
一実施形態では、バスケットカテーテル40は、(i)心室表面50から電気生理学信号を取得する心臓26の心室の空間マッピングを行い、(ii)心室表面50に電気的アブレーションエネルギーを印加する、ように構成されている。差し込み
図45は、心臓26の心室内部の、拡大図でのバスケット型カテーテル40を示している。分かるとおり、バスケット型カテーテル40は、バスケット形状を形成するスプライン上に連結されている電極のアレイ48を備える。一実施形態では、アブレーションは、双極性アブレーションモードで、電極48の対の間にアブレーションエネルギーを印加することによって行われる。
【0036】
カテーテル21の近位端部は、コンソール24に接続されている。コンソール24は、プロセッサ41、通常は、カテーテル21に出入りする電気信号を送信及び受信するため、並びにシステム20の他の構成要素を制御するための、好適なフロントエンド及びインターフェース回路38を備えた汎用コンピュータを備える。一実施形態では、モニタ27上に、周囲の解剖学的構造の表面が、例えば、メッシュ
図35のグラフ形式で、医師30に示される。
【0037】
プロセッサ41は、通常、本明細書に記載される機能を実施するようにソフトウェアでプログラムされる。ソフトウェアは、例えばネットワーク上で、コンピュータに電子形態でダウンロードすることができる、あるいは、代替的に又は追加的に、磁気メモリ、光学メモリ、若しくは電子メモリなどの、非一時的実体的媒体上に提供及び/又は記憶することができる。
【0038】
図1の図示の例示的な実施形態は、具体的には心臓マッピングのためのバスケットカテーテルの使用に関するが、他の遠位端アセンブリが使用されてもよく、特に、プロセッサ41は、以下でさらに説明するように、プロセッサ41が開示されたステップを実行することを可能にする、
図3を含む本明細書に開示される専用アルゴリズムを実行する。
【0039】
解剖学的マップ部分の自動位置合わせ
図2は、本発明の一実施形態による、マップ骨格位置合わせを使用した左心房の自動的に生成された患者動き補償された解剖学的マップ40の概略描写ボリュームレンダリングである。
【0040】
分かるように、ユーザの便宜上、表面メッシュマップ40は、(プロセッサ41によって)後方-前方(背面から正面)PA方向に回転され、表示の右側が観察者の右側に対応し、表示の左側が患者の左側にあるようにする。
図2は、自動的に識別された肺静脈(PV)411~412及び414~415をさらに例示する。
【0041】
図示の実施形態では、患者が動く前に、プロセッサ41は、LA表面解剖学的マップ35から「中心軸」骨格部分S 42を計算した。骨格部分42(すなわち、ツリーグラフ)は、5つの主要な分岐(N=5)、すなわち分岐441~445のうちの3つの主要な分岐413~415を含む。すなわち、分岐441~445のうち、分岐443~445は、患者が動き始める前に生成され、これは、骨格として点210が依然として生成されている間に発生した。
【0042】
患者の動きの結果として、骨格の残りの生成(すなわち、部分S”、242)がシフトされる。図示の実施形態では、プロセッサ41は、骨格部分42の終点448、及び開始点450、及び骨格部分242の終点461、及び472などの縁点を識別する。開始点及び終点を使用して、プロセッサ41は、動く前及び動いた後のマップ骨格部分(矢印202によって概略的に見られる)を位置合わせする(すなわち、動き補償された骨格部分S’、142を作成する)。プロセッサは、骨格位置合わせを使用して、患者動き補償された解剖学的マップを自動的に生成する。例えば、プロセッサは、2つの骨格部分の位置合わせによって定義される変換を適用して、動いた後のマップを動く前のマップ部分に互いに位置合わせする。
【0043】
患者が動く前に骨格が完了した別の実施形態では、アルゴリズムは、分岐441及び442の利用可能な古いバージョンなどのより多くの終点を使用することができる。
【0044】
図2に見られるように、病変111は、患者が動く前に(点201で)マッピングされた。動きの結果として、位置111は、計画されたアブレーション位置333に対して変位される。2つのマップ部分の位置合わせを使用して、病変333は位置222にシフトされて、アブレーション病変(111、222)の一貫した経路を形成する。使用中の参照マップに応じて、アブレーション病変の一貫した経路(111のシフト、333)は、位置111を代わりに変位させることによって行われ得る。
図2に示される例示的な概略ボリュームレンダリングは、単に概念を明確にする目的で選択されている。例えば、患者の動きにより複数の骨格部分が発生する(すなわち、3つ又は4つ以上)場合、プロセッサ41は、それらのすべてを位置合わせして、患者動き補償されたマップを生成する。
【0045】
図3は、本発明の実施形態による、マップ骨格位置合わせを使用した、
図2の患者動き補償された解剖学的マップ40を生成する自動的な方法を概略的に示すフローチャートである。提示された実施形態によるアルゴリズムは、プロセッサ41が患者が動く前に作成された解剖学的マップ40の一部分を受信する、前マップ部分受信ステップ78で始まるプロセスを実行する。図示されるケースでは、それは左心房のマップ部分である。
【0046】
次に、骨格部分生成ステップ80では、プロセッサは、マップの事前部分の骨格42を生成する。
【0047】
モーション識別ステップ82では、プロセッサ41は、患者が動いたイベントに対応する骨格42上の開放端点448を識別する。プロセッサは、冠状静脈洞カテーテル及び身体表面パッチのうちの少なくとも1つのランドマークを使用して患者の動きを識別することができる。別の実施形態では、患者の動きは、(例えば、不連続性により)そうであるべきではないツリーグラフの2つの縁点(448、450)を識別することによってツリーグラフを構成するプロセッサによって識別される。
【0048】
動いた後のマップ部分受信ステップ84では、プロセッサ41は、患者が動いた後に作成された解剖学的マップ40の一部分を受信する。骨格部分生成ステップ86では、プロセッサは、マップの動いた後の部分の骨格242を生成する。
【0049】
プロセッサは、骨格位置合わせステップ88で、動いた後の部分骨格と以前の部分骨格を位置合わせする(すなわち、動き補償された骨格部分S’、142を作成する)。例えば、プロセッサは、エンドポイント448及び開始点450を使用し、並びにエンドポイント461及び472を使用して、位置合わせを実行する。
【0050】
最後に、位置合わせを使用して、プロセッサは、動く前及び動いた後のマップ部分を組み合わせて、患者動き補償された(例えば、アーチファクトなし)マップ40を生成する。
【0051】
図3に示されている例示的なフローチャートは、単に概念を分かりやすくする目的で選択されたものである。任意選択の実施形態において、例えば、患者動き補償されたマップから切り離されると識別されるPVのLAへの開口部を動き補償されたマップの医療画像と自動的に位置合わせするために、様々な追加のステップが実行されてもよい。
【0052】
本明細書に記載されている実施形態は、主に心臓用途に対処しているが、本明細書で説明される方法及びシステムはまた、他の用途に使用することができる。例えば、開示された方法は耳鼻咽喉マップを位置合わせするように利用されてもよい。
【0053】
したがって、上述の実施形態は、例として引用したものであり、本発明は、上記に具体的に示し、かつ説明したものに限定されないことが理解されよう。むしろ、本発明の範囲は、上記の明細書に記載される様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせの両方、並びに前述の説明を読むことで当業者に想到されるであろう、先行技術において開示されていないそれらの変形例及び修正例を含むものである。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれた文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義される程度まで、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な部分と見なすものとする。
【0054】
〔実施の態様〕
(1) 解剖学的マップを以前の解剖学的マップに自動位置合わせするための方法であって、
患者の器官の体積の第1の中心軸ツリーグラフを、第1の時間で取得された前記体積の第1の電子化解剖学的マップにおいて計算することと、
前記患者の前記器官の体積の第2の中心軸ツリーグラフを、前記第1の時間とは異なる第2の時間で取得された前記体積の第2の電子化解剖学的マップにおいて計算することと、
前記第1のツリーグラフと前記第2のツリーグラフとの間の偏差を検出及び推定することと、
前記推定された偏差を使用して、前記第1の中心軸ツリーグラフ及び前記第2の中心軸ツリーグラフを互いに位置合わせすることと、
前記位置合わせされた第1のツリーグラフ及び第2のツリーグラフを使用して、前記第1の電子化解剖学的マップ及び前記第2の電子化解剖学的マップを組み合わせることと、を含む、方法。
(2) 前記偏差を検出することが、前記第1の電子化解剖学的マップと前記第2の電子化解剖学的マップとの間の1つ又は2つ以上のランドマークの動きを識別することを含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 前記ランドマークが、冠状静脈洞カテーテル及び身体表面パッチの一方又は両方を備える、実施態様2に記載の方法。
(4) 前記偏差を検出することが、前記第1の中心軸ツリーグラフ及び前記第2の中心軸ツリーグラフの対応する縁点間の不連続性を検出することを含む、実施態様1に記載の方法。
(5) 前記偏差を検出及び推定することが、前記第1のツリーグラフと前記第2のツリーグラフとの間の変位を検出及び推定することを含む、実施態様1に記載の方法。
【0055】
(6) 前記第1の電子化解剖学的マップ及び前記第2の電子化解剖学的マップを組み合わせることが、前記体積の連続解剖学的マップを生成することを含む、実施態様1に記載の方法。
(7) 3つ又は4つ以上のそれぞれの解剖学的マップにおいて計算された3つ又は4つ以上のツリーグラフ間の2つ又は3つ以上の偏差を推定することと、
前記推定された偏差を使用して、前記3つ又は4つ以上のツリーグラフを互いに位置合わせすることと、
前記位置合わせされたツリーグラフを使用して、前記3つ又は4つ以上の解剖学的マップを組み合わせることと、を含む、実施態様1に記載の方法。
(8) 前記組み合わされた解剖学的マップをユーザに提示することを含む、実施態様1に記載の方法。
(9) 前記第1の電子化解剖学的マップ及び前記第2の電子化解剖学的マップを組み合わせることが、少なくとも前記第1の解剖学的マップ内の第1のアブレーション位置及び前記第2の解剖学的マップ内の第2のアブレーション位置を組み合わせることを含む、実施態様1に記載の方法。
(10) 解剖学的マップを以前の解剖学的マップに自動位置合わせするためのシステムであって、
プロセッサであって、
患者の器官の体積の第1の中心軸ツリーグラフを、第1の時間で取得された前記体積の第1の電子化解剖学的マップにおいて計算することと、
前記患者の前記器官の体積の第2の中心軸ツリーグラフを、前記第1の時間とは異なる第2の時間で取得された前記体積の第2の電子化解剖学的マップにおいて計算することと、
前記第1のツリーグラフと前記第2のツリーグラフとの間の偏差を検出及び推定することと、
前記推定された偏差を使用して、前記第1の中心軸ツリーグラフ及び前記第2の中心軸ツリーグラフを互いに位置合わせすることと、
前記位置合わせされた第1のツリーグラフ及び第2のツリーグラフを使用して、前記第1の電子化解剖学的マップ及び前記第2の電子化解剖学的マップを組み合わせることと、を行うように構成されている、プロセッサと、
前記組み合わされた第1の電子化解剖学的マップ及び第2の電子化解剖学的マップをユーザに表示するように構成されているモニタと、を備える、システム。
【0056】
(11) 前記プロセッサは、前記第1の電子化解剖学的マップと前記第2の電子化解剖学的マップとの間の1つ又は2つ以上のランドマークの動きを識別することによって前記偏差を検出するように構成されている、実施態様10に記載のシステム。
(12) 前記ランドマークが、冠状静脈洞カテーテル及び身体表面パッチの一方又は両方を備える、実施態様11に記載のシステム。
(13) 前記プロセッサが、前記第1の中心軸ツリーグラフ及び前記第2の中心軸ツリーグラフの対応する縁点間の不連続性を検出することによって前記偏差を検出するように構成されている、実施態様10に記載のシステム。
(14) 前記プロセッサが、前記第1のツリーグラフと前記第2のツリーグラフとの間の変位を検出及び推定することによって、前記偏差を検出及び推定するように構成されている、実施態様10に記載のシステム。
(15) 前記第1の電子化解剖学的マップ及び前記第2の電子化解剖学的マップを組み合わせる際に、前記プロセッサが、前記体積の連続解剖学的マップを生成するように構成されている、実施態様10に記載のシステム。
【0057】
(16) 前記プロセッサが、
3つ又は4つ以上のそれぞれの解剖学的マップにおいて計算された3つ又は4つ以上のツリーグラフ間の2つ又は3つ以上の偏差を推定することと、
前記推定された偏差を使用して、前記3つ又は4つ以上のツリーグラフを互いに位置合わせすることと、
前記位置合わせされたツリーグラフを使用して、前記3つ又は4つ以上の解剖学的マップを組み合わせることと、を行うようにさらに構成されている、実施態様10に記載のシステム。
(17) 前記第1の電子化解剖学的マップ及び前記第2の電子化解剖学的マップを組み合わせる際に、前記プロセッサは、少なくとも前記第1の解剖学的マップ内の第1のアブレーション位置及び前記第2の解剖学的マップ内の第2のアブレーション位置を組み合わせるように構成されている、実施態様10に記載のシステム。
【外国語明細書】