(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180333
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】リアルタイムでの局所的伝播速度の計算
(51)【国際特許分類】
A61B 5/367 20210101AFI20221129BHJP
【FI】
A61B5/367
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022083634
(22)【出願日】2022-05-23
(31)【優先権主張番号】63/192,221
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/192,231
(32)【優先日】2021-05-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/672,780
(32)【優先日】2022-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511099630
【氏名又は名称】バイオセンス・ウエブスター・(イスラエル)・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Biosense Webster (Israel), Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】レオニード・ザイデス
(72)【発明者】
【氏名】エラド・ナカル
(72)【発明者】
【氏名】エリヤフ・ラブナ
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヴ・ベナロヤ
(72)【発明者】
【氏名】ファディ・マサルウィ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン・ヤーニットスキー
(72)【発明者】
【氏名】リオール・ザール
(72)【発明者】
【氏名】リオール・グリーンバウム
【テーマコード(参考)】
4C127
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127FF07
4C127GG05
4C127HH13
(57)【要約】
【課題】心臓マッピングを行うこと。
【解決手段】方法は、心臓の解剖学的表面上の複数の電極によって獲得されたそれぞれの信号に基づいて、電極のそれぞれの位置におけるそれぞれの局所興奮時間(LAT)を計算することを含む。この方法は、LATに基づいて、これらの位置における電気伝播のそれぞれの方向を計算することを更に含む。この方法は、電極のうちの隣接するもののペアを、ペアの各々について、ペアを結合するベクトルが、所定の閾値整列度内で、ペアに属する電極のうちの1つの位置における電気伝播の方向と整列されるように選択することを更に含む。この方法は、電極のペアによって測定されたそれぞれのバイポーラ電圧を解剖学的表面のデジタルモデルと関連付けることを更に含む。他の実施形態も、記載されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
電気的インターフェースと、
プロセッサであって、
前記電気的インターフェースを介して、心臓の解剖学的表面上の複数の電極によって獲得されたそれぞれの信号を受信し、
前記信号に基づいて、前記電極のそれぞれの位置におけるそれぞれの局所興奮時間(LAT)を計算し、
前記LATに基づいて、前記位置における電気伝播のそれぞれの方向を計算し、
前記電極のうちの隣接する電極のペアを、前記ペアの各々について、前記ペアを結合するベクトルが、所定の閾値整列度内で、前記ペアに属する前記電極のうちの1つの前記位置における電気伝播の方向と整列されるように選択し、
前記電極のペアによって測定されたそれぞれのバイポーラ電圧を、前記解剖学的表面のデジタルモデルと関連付ける、
ように構成されている、プロセッサと、
を含む、システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記電極のうちの各第1の電極の前記位置における前記LATを、
前記位置に対するLATの複数の候補セットを取得することであって、前記第1の電極に隣接する、前記電極のうちの各第2の電極について、
関数への入力として、(i)前記第1の電極と基準電極との間のユニポーラ電圧を表すユニポーラ電圧信号、及び(ii)前記第1の電極と前記第2の電極との間のバイポーラ電圧を表すバイポーラ電圧信号を提供することと、
前記関数からの出力として、前記候補セットのそれぞれ1つを受信することと、
によって取得することと、
前記候補セットから、前記LATを選定することと、
によって計算するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
心臓の解剖学的表面上の複数の電極によって獲得されたそれぞれの信号に基づいて、前記電極のそれぞれの位置におけるそれぞれの局所興奮時間(LAT)を計算することと、
前記LATに基づいて、前記位置における電気伝播のそれぞれの方向を計算することと、
前記電極のうちの隣接する電極のペアを、前記ペアの各々について、前記ペアを結合するベクトルが、所定の閾値整列度内で、前記ペアに属する前記電極のうちの1つの前記位置における電気伝播の方向と整列されるように選択することと、
前記電極のペアによって測定されたそれぞれのバイポーラ電圧を、前記解剖学的表面のデジタルモデルと関連付けることと、
を含む方法。
【請求項4】
前記LATを計算することは、前記電極のうちの各第1の電極の前記位置における前記LATを、
前記位置に対するLATの複数の候補セットを取得することであって、前記第1の電極に隣接する、前記電極のうちの各第2の電極について、
関数への入力として、(i)前記第1の電極と基準電極との間のユニポーラ電圧を表すユニポーラ電圧信号、及び(ii)前記第1の電極と前記第2の電極との間のバイポーラ電圧を表すバイポーラ電圧信号を提供することと、
前記関数からの出力として、前記候補セットのそれぞれ1つを受信することと、
によって取得することと、
前記候補セットから、前記LATを選定することと、
によって計算することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
プログラム命令が格納されている有形の非一時的なコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータソフトウェア製品であって、前記命令は、プロセッサによって読み取られると、前記プロセッサに、
心臓の解剖学的表面上の複数の電極によって獲得されたそれぞれの信号を受信させ、
前記信号に基づいて、前記電極のそれぞれの位置におけるそれぞれの局所興奮時間(LAT)を計算させ、
前記LATに基づいて、前記位置における電気伝播のそれぞれの方向を計算させ、
前記電極のうちの隣接する電極のペアを、前記ペアの各々について、前記ペアを結合するベクトルが、所定の閾値整列度内で、前記ペアに属する前記電極のうちの1つの前記位置における電気伝播の方向と整列されるように選択させ、
前記電極のペアによって測定されたそれぞれのバイポーラ電圧を前記解剖学的表面のデジタルモデルと関連付けさせる、
コンピュータソフトウェア製品。
【請求項6】
前記命令は、前記プロセッサに、前記電極のうちの各第1の電極の前記位置における前記LATを、
前記位置に対するLATの複数の候補セットを取得することであって、前記第1の電極に隣接する、前記電極のうちの各第2の電極について、
関数への入力として、(i)前記第1の電極と基準電極との間のユニポーラ電圧を表すユニポーラ電圧信号、及び(ii)前記第1の電極と前記第2の電極との間のバイポーラ電圧を表すバイポーラ電圧信号を提供することと、
前記関数からの出力として、前記候補セットのそれぞれ1つを受信することと、
によって取得することと、
前記候補セットから前記LATを選定することと、
によって計算させる、請求項5に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【請求項7】
システムであって、
ディスプレイと、
プロセッサであって、
心臓の解剖学的表面上の、体内プローブに属する複数の電極によって獲得されたそれぞれの信号に基づいて、前記電極のそれぞれの位置におけるそれぞれの局所興奮時間(LAT)を計算し、
前記LATに基づいて、前記位置における電気伝播のそれぞれの方向及び速度を計算し、
前記電極がそれぞれ前記位置にある間に、前記ディスプレイ上に前記プローブのアイコンを表示し、
前記電気伝播の方向にそれぞれ配向され、前記速度に応じて変化する少なくとも1つの特性を有するそれぞれのマーカーを、前記電極に対応する前記アイコンの部分に配置する、
ように構成されている、プロセッサと、
を含むシステム。
【請求項8】
前記プロセッサは、前記電極のうちの各第1の電極の前記位置における前記LATを、
前記位置に対するLATの複数の候補セットを取得することであって、前記第1の電極に隣接する、前記電極のうちの各第2の電極について、
関数への入力として、(i)前記第1の電極と基準電極との間のユニポーラ電圧を表すユニポーラ電圧信号、及び(ii)前記第1の電極と前記第2の電極との間のバイポーラ電圧を表すバイポーラ電圧信号を提供することと、
前記関数からの出力として、前記候補セットのそれぞれ1つを受信することと、
によって取得することと、
前記候補セットから前記LATを選定することと、
によって計算するように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記特性は、前記マーカーが、
第1の範囲に属する速度のものについて、第1の形状及び第1の厚さを有し、
前記第1の範囲よりも低い第2の範囲に属する速度のものについて、前記第1の形状及び第2の厚さを有し、
前記第2の範囲よりも低い第3の範囲に属する速度のものについて、第2の形状を有する、
ことを理由に、前記速度に応じて変化する、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記マーカーは、前記LATに応じて変化する少なくとも1つの他の特性を有する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記マーカーは、前記LATに基づいて、カラースケールに従って着色される、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
心臓の解剖学的表面上の、体内プローブに属する複数の電極によって獲得されたそれぞれの信号に基づいて、前記電極のそれぞれの位置におけるそれぞれの局所興奮時間(LAT)を計算することと、
前記LATに基づいて、前記位置における電気伝播のそれぞれの方向及び速度を計算することと、
前記電極がそれぞれ前記位置にある間に、前記プローブのアイコンを表示することと、
前記電気伝播の方向にそれぞれ配向され、前記速度に応じて変化する少なくとも1つの特性を有するそれぞれのマーカーを、前記電極に対応する前記アイコンの部分に配置することと、
を含む方法。
【請求項13】
前記LATを計算することは、前記電極のうちの各第1の電極の前記位置における前記LATを、
前記位置に対するLATの複数の候補セットを取得することであって、前記第1の電極に隣接する、前記電極のうちの各第2の電極について、
関数への入力として、(i)前記第1の電極と基準電極との間のユニポーラ電圧を表すユニポーラ電圧信号、及び(ii)前記第1の電極と前記第2の電極との間のバイポーラ電圧を表すバイポーラ電圧信号を提供することと、
前記関数からの出力として、前記候補セットのそれぞれ1つを受信することと、
によって取得することと、
前記候補セットから前記LATを選定することと、
によって計算することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記特性は、前記マーカーが、
第1の範囲に属する速度のものについて、第1の形状及び第1の厚さを有し、
前記第1の範囲よりも低い第2の範囲に属する速度のものについて、前記第1の形状及び第2の厚さを有し、
前記第2の範囲よりも低い第3の範囲に属する速度のものについて、第2の形状を有する、
ことを理由に、前記速度に応じて変化する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記マーカーは、前記LATに応じて変化する少なくとも1つの他の特性を有する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記マーカーは、前記LATに基づいて、カラースケールに従って着色される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
プログラム命令が格納されている有形の非一時的なコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータソフトウェア製品であって、前記命令は、プロセッサによって読み取られると、前記プロセッサに、
心臓の解剖学的表面上の、体内プローブに属する複数の電極によって獲得されたそれぞれの信号に基づいて、前記電極のそれぞれの位置におけるそれぞれの局所興奮時間(LAT)を計算させ、
前記LATに基づいて、前記位置における電気伝播のそれぞれの方向及び速度を計算させ、
前記電極がそれぞれ前記位置にある間に、前記プローブのアイコンを表示させ、
前記電気伝播の方向にそれぞれ配向され、前記速度に応じて変化する少なくとも1つの特性を有するそれぞれのマーカーを、前記電極に対応する前記アイコンの部分に配置させる、
コンピュータソフトウェア製品。
【請求項18】
前記命令は、前記プロセッサに、前記電極のうちの各第1の電極の前記位置における前記LATを、
前記位置に対するLATの複数の候補セットを取得することであって、前記第1の電極に隣接する、前記電極のうちの各第2の電極について、
関数への入力として、(i)前記第1の電極と基準電極との間のユニポーラ電圧を表すユニポーラ電圧信号、及び(ii)前記第1の電極と前記第2の電極との間のバイポーラ電圧を表すバイポーラ電圧信号を提供することと、
前記関数からの出力として、前記候補セットのそれぞれ1つを受信することと、
によって取得することと、
前記候補セットから前記LATを選定することと、
によって計算させる、請求項17に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【請求項19】
前記特性は、前記マーカーが、
第1の範囲に属する速度のものについて、第1の形状及び第1の厚さを有し、
前記第1の範囲よりも低い第2の範囲に属する速度のものについて、前記第1の形状及び第2の厚さを有し、
前記第2の範囲よりも低い第3の範囲に属する速度のものについて、第2の形状を有する、
ことを理由に、前記速度に応じて変化する、請求項17に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【請求項20】
前記マーカーは、前記LATに応じて変化する少なくとも1つの他の特性を有する、請求項19に記載のコンピュータソフトウェア製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、2021年5月24日出願の「Computing local propagation velocities for cardiac maps」と題する米国仮出願第63/192,221号、及びその開示が参照により本明細書に組み込まれる、2021年5月24日出願の「Computing local propagation velocities in real-time」と題する米国仮出願第63/192,231号の利益を主張するものである。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、心臓マッピングの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
心臓組織の任意の部分における局所興奮時間(LAT)は、(i)任意の心周期中に組織が電気興奮状態になる時間と、(ii)同じ周期中の基準時間との差である。基準時間は、例えば、身体表面心電図(ECG)記録のQRS群の一点に設定され得る。
【0004】
米国特許出願公開第2015/0196770号は、除細動ショックを送達するための手段と、患者の現在の心臓活動パラメータを連続的に収集するための手段と、少なくとも2つの層を有するニューラルネットワークを含むニューロン分析を用いた評価手段と、を含むアクティブ医療デバイスについて記載したものである。このニューラルネットワークは、不整脈発生因子のクラスに対応する別個のサブグループに分割されたそれぞれのパラメータを受け取る上流の3つのサブネットワークと、それら3つのサブネットワークに結合され、心室性不整脈のリスクの指標を出力することが可能な下流の出力ニューロンと、を含む。リスクの指標を所与の閾値と比較して、閾値と交差した場合、デバイスの少なくとも1つの機能を有効化又は無効化する。
【0005】
米国特許出願公開第2010/0268059号は、患者の心臓の静脈網内の様々な位置に配置されたカテーテルを介して獲得された心臓情報にアクセスすることであって、この心臓情報は、位置情報と、電気的情報と、機械的情報とを含む、アクセスすることと、局所電気的活性化時間を解剖学的位置にマッピングして電気活性化時間マップを生成することと、局所機械的活性化時間を解剖学的位置にマッピングして機械的活性化時間マップを生成することと、局所電気的活性化時間を対応する局所機械的活性化時間から減算することによって、電気機械的遅延マップを生成することと、少なくとも電気機械的遅延マップをディスプレイにレンダリングすることと、を含む方法について記載している。
【0006】
Cantwell、Chris D.らの「Techniques for automated local activation time annotation and conduction velocity estimation in cardiac mapping」(Computer in biology and medicine 65(2015):229~242)は、局所興奮時間を特定し、伝導方向及び速度を計算するように設計されたアルゴリズムについて概説している。
【0007】
Roney、Caroline H.らの「An automated algorithm for determining conduction velocity,wavefront direction and origin of focal cardiac arrhythmias using a multipolar catheter」(2014 36th Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society,IEEE、2014)は、任意の配列の電極を用いて多極カテーテルデータから伝導速度を特定する一方で、波面の方向及び震源域の位置の推定を行う自動アルゴリズムについて記載している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
以下の本開示の実施例の詳細な説明を図面と併せ読むことで、本開示のより完全な理解が得られるであろう。
【
図1】本開示のいくつかの例による、電気解剖学的マッピングのためのシステムの概略図である。
【
図2】本開示のいくつかの例による、伝播速度を計算し、表示するためのアルゴリズムのフロー図である。
【
図3】本開示のいくつかの例による、伝播速度計算の概略図である。
【
図4】本開示のいくつかの例による、
図2に示された選択ステップのフロー図である。
【
図5】本開示のいくつかの例による、デジタルモデルの表面の概略図である。
【
図6】本開示のいくつかの例による、
図2に示された選択ステップの一例のフロー図である。
【
図7】本開示のいくつかの例による、
図6に示された補間ステップのフロー図である。
【
図8】本開示のいくつかの例による、
図7に示されたクラスタ化ステップのフロー図である。
【
図9A】本開示のいくつかの例による、表示されたモデルの概略図である。
【
図9B】本開示のいくつかの例による、表示されたモデルの概略図である。
【
図10】本開示のいくつかの例による、反復凝縮アルゴリズムのフロー図である。
【
図11】本開示のいくつかの例による、プローブ及び解剖学的表面の概略図である。
【
図12】本開示のいくつかの例による、伝播速度のリアルタイムの視覚的表示の概略図である。
【
図13】本開示のいくつかの例による、バイポーラ電圧を選択するための方法の概略図である。
【
図14】本開示のいくつかの例による、バイポーラ電圧を選択するための方法の概略図である。
【
図15】本開示のいくつかの例による、バイポーラ電圧測定のための電極のペアを選択するためのアルゴリズムのフロー図である。
【
図16】本開示のいくつかの例による、電極の各位置におけるそれぞれのLATを計算するためのアルゴリズムのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
概論
電気解剖学的マッピング中、心臓の表面に沿って、遠位端に複数の電極を備える体内プローブが移動される。電極によってその表面から獲得された生体電気信号に基づいて、表面上の様々な位置におけるLATなど、表面の様々な電気的特性が推定される。(1つ以上の獲得された信号に基づいてLATを推定するプロセスは、以下、LATの「測定」とも呼ばれる。)
【0010】
本開示の例は、LATに基づいて、小さな空間分解能で伝播速度を正確に計算するためのアルゴリズムを提供する。本開示の例は、適切な診断及び治療を容易にするように、伝播速度を医師に視覚的に示すための技術を更に提供する。
【0011】
特に、速度が計算される表面上の各「サンプリング位置」について、コンピュータプロセッサは、それぞれのLATが測定された近くにある「測定位置」の好適なセットを選択する。有利には、このセットは、電気的に不活性な組織によってサンプリング位置から分離された、いかなる測定位置も除外する。その後、セット内の測定位置(また、LATがサンプリング位置において測定された場合は、サンプリング位置自体)の各々について、それぞれの4次元ベクトルが構築される。各ベクトルは、測定位置において測定されたLATから導出されたLAT値と共に、測定位置の位置座標から導出された3つの位置値を含む。
【0012】
その後、プロセッサは、ベクトルに対して4×4の共分散行列の主成分分析(Principal Component Analysis、PCA)を実行し、そのPCAに基づいてサンプリング位置における伝播速度を計算する。例えば、プロセッサは、共分散行列の主成分を3つの位置次元に射影することによって、伝播の方向を計算し得る。次いで、プロセッサは、セット内の測定位置を、サンプリング位置を通過し、伝播方向に配向された線へと射影し得る。次に、プロセッサは、射影と対応するLATとの間の関係に近似する回帰関数を計算し得る。最後に、プロセッサは、この関数の勾配として速度の大きさ(すなわち、伝播の速度)を推定し得る。
【0013】
いくつかの例では、伝播速度は、それぞれの測定位置において多数のLATを測定するように心臓表面を横切ってプローブが移動される、心臓表面の完全なマッピングに続いて計算される。具体的には、完全なマッピングに続いて、プロセッサは、表面のモデルを構築するが、モデルの表面上のそれぞれの測定点は測定位置に対応する。次に、プロセッサは、モデル表面上で、解剖学的表面上のそれぞれのサンプリング位置に対応する複数のサンプリング点を指定する。次いで、プロセッサは、測定位置の好適なセットに基づいて、各サンプリング位置における伝播速度を計算する。
【0014】
そのような例では、伝播速度を計算することに続いて、プロセッサは、典型的には、伝播速度の1つ以上の特性を示すマーカーが重ねられた状態でモデルを表示する。例えば、各サンプリング点に、プロセッサは、サンプリング点における伝播速度の方向に配向されたマーカーを配置し得る。伝播速度の大きさが所定の閾値を下回るサンプリング点は、医師が緩徐伝導の領域を容易に特定し得るように、他のサンプリング点とは異なるようにマークされてもよい。
【0015】
(本明細書におけるそのような例の説明では、モデルの表面上の点についての言及は、その点に対応する解剖学的表面上の位置についての言及に置き換えられてもよく、逆もまた同様であることに留意されたい。例えば、特定の測定位置において測定されたLATは、その測定位置に対応するモデル表面上の測定点と関連付けられているということができる。同様に、解剖学的表面上の位置の(x,y,z)位置座標は、この位置に対応するモデル表面上の点の位置座標と呼ばれ得る。)
【0016】
代替的にあるいは追加的に、伝播速度は、マッピング手順中にリアルタイムで計算され得る。特に、LAT測定の各ラウンド(典型的には心周期ごとに1回行われる)後、プロセッサは、測定位置(すなわち、電極の位置)の全体にわたって反復し得る。各測定位置について、プロセッサは、近接する測定位置の好適なセットを特定することができる。次いで、プロセッサは、測定位置のそれぞれのベクトルを構築し、対応する共分散行列のPCAを実行し、そのPCAに基づいて伝播速度を計算することができる。
【0017】
そのような例では、典型的には、プロセッサは、伝播速度の1つ以上の特性を示すマーカーが重ねられた状態で、電極を備えるプローブの遠位端のアイコンの表示を繰り返しリフレッシュする。例えば、各電極に、プロセッサは、電極における伝播速度の方向に配向されたマーカーを配置し得る。非リアルタイム表示の場合と同様に、マーカーの特性は、伝播速度の関数として変化し得る。
【0018】
電気解剖学的マッピングを実行するときの別の課題は、バイポーラ電圧を測定するために使用される電極のペアが局所的な伝播方向に対して互いに垂直に配向されている場合に、測定されたバイポーラ電圧が心臓表面上の電気的に不活性な組織を誤って示し得ることである。
【0019】
この課題に対処するために、本開示の例は、前述のリアルタイム計算を使用して、局所的な伝播方向と最も緊密に整列されている電極のペアを選定する。選定された電極のペア間のバイポーラ電圧は、心臓表面のモデルと関連付けられるが、他のバイポーラ電圧は、モデルから省略される。
【0020】
本開示の例は、多数のバイポーラ電圧に基づいて、強化されたLAT計算を更に提供する。
【0021】
システムの説明
最初に、本開示のいくつかの例による、電気解剖学的マッピングのためのシステム20の概略図である
図1を参照する。
【0022】
図1では、心室の心内膜表面などの被験者22の心臓24の一部分の解剖学的表面に沿って、プローブ26の遠位端を移動させている医師30が示されている。プローブ26の遠位端は、表面に沿って移動されているが、システム20に属するプロセッサ32は、プローブの遠位端にある電極28を使用して、表面上の様々な測定位置におけるそれぞれの局所興奮時間(LAT)を測定する。特に、電極28が測定位置で電位図信号を獲得すると、プロセッサは、これらの信号を処理してLATを計算する。典型的には、電位図信号は、両方のユニポーラ信号、すなわち、電極と共通基準電極との間の信号と、バイポーラ電圧、すなわち隣接する電極のペアの間の電圧とを含む。
【0023】
(典型的には、周期性不整脈の発生中にマッピングが実行される場合、LATを計算することは、2つのステップを含む。第一に、背景技術において上述したように、標準的なLAT計算が実行される。その後、LATの絶対値がp*CLよりも大きい場合(CLは周期性不整脈の各周期の長さであり、p≧0.5が医師によって指定される)、LATの絶対値がp*CL未満となるように、CLをLATに加算する、又はCLをLATから減算する。)
【0024】
いくつかの例では、プローブ26の遠位端は、複数の平行なスプライン29を含み、各スプライン29は、電極の線形配列を備える。代替的に、電極のグリッドが、バルーン、拡張可能なプリント回路基板(PCB)、又はプローブの遠位端にある任意の他の適切な構造上に配列され得る。
【0025】
典型的には、プロセッサは、ポート又はソケットなどの電気的インターフェース34を備えるコンソール40内に収容される。プローブは、電気的インターフェース34を介してコンソール40に接続され、それにより、電極によって獲得された電位図信号は、電気的インターフェース34を介してプロセッサによって受信される。典型的には、信号は、ワイヤに沿って、アナログ形式でプローブを介して搬送され、コンソールは、プロセッサ32による処理のために信号をデジタル形式に変換するように構成されたアナログデジタル(A/D)変換回路を更に備える。
【0026】
マッピング手順中、プロセッサは、プローブの遠位端の位置を追跡する。追跡と電極から受信された電位図信号とに基づいて、プロセッサは、本明細書では「マップ」とも呼ばれる、心臓のこの部分のデジタルモデル38を構築することができる。プロセッサは更に、任意の好適なタイプの揮発性メモリ若しくは不揮発性メモリを備えるメモリ33にモデルを記憶すること、及び/又はモデル38をディスプレイ36上に表示することができる。
【0027】
いくつかの例では、前述の追跡を容易にするために、プローブの遠位端は、1つ以上の電磁センサを備える。発生した磁場の存在下では、これらのセンサは、(例えば、電気的インターフェース34を介して)プロセッサに、センサのそれぞれの位置を示す信号を出力する。そのような位置追跡技術は、例えば、参照によってそれぞれの開示が本明細書に組み込まれる、Ben-Haimの米国特許第5,391,199号、同第5,443,489号、及び同第6,788,967号、Ben-Haimらの米国特許第6,690,963号、Ackerらの米国特許第5,558,091号、並びにGovarの米国特許第6,177,792号に開示されている。
【0028】
他の例では、インピーダンスは、電極28(及び/又はプローブの遠位端にある他の電極)と、被験者22の身体に結合された電極パッチとの間で測定される。インピーダンス測定に基づいて、プロセッサは、電極の位置を確認する。典型的には、そのような例では、プロセッサは、例えば、それぞれの開示が参照により本明細書に組み込まれる、Govariらの米国特許第7,536,218号、及びBar-Talらの米国特許第8,456,182号に記載されているように、事前に電磁センサを使用して較正された位置マップを利用する。
【0029】
更に他の例では、電極パッチ間に電流が流れる。電極28において測定された電圧に基づいて、プロセッサは、電極の位置を確認する。そのような技術は、例えば、それぞれの開示が参照により本明細書に組み込まれる、Wittkampfへの米国特許第5,983,126号、Swansonへの米国特許第6,456,864号、及びNardellaへの米国特許第5,944,022号に記載されている。
【0030】
システム20は、キーボード、マウス、又はディスプレイ36に属するタッチスクリーンなどの1つ以上の入力デバイスを更に備え得る。医師30は、入力デバイスを使用して、以下に記載される様々な閾値のうちのいずれかなどの任意の好適な入力を入力することができる。
【0031】
概して、プロセッサ32は、単一のプロセッサとして、又は協働的にネットワーク化若しくはクラスタ化されたプロセッサのセットとして具現化され得る。プロセッサ32のいくつかの機能は、例えば、1つ以上の固定機能若しくは汎用集積回路、特定用途向け集積回路(ASIC)、及び/又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を使用して、ハードウェアにのみ実装されてもよい。代替的に、この機能は、少なくとも部分的にソフトウェアで実装されてもよい。例えば、プロセッサ32は、例えば、中央処理装置(CPU)及び/又はグラフィック処理ユニット(GPU)を備える、プログラムされたプロセッサとして具現化され得る。ソフトウェアプログラムを含むプログラムコード、及び/又はデータは、CPU及び/又はGPUによる実行並びに処理のためにRAMにアップロードしてもよい。プログラムコード及び/又はデータは、例えば、ネットワークを介して、電子形態でプロセッサにダウンロード可能である。代替的に又は追加的に、プログラムコード及び/又はデータは、磁気記憶装置、光学的記憶装置、又は電子的記憶装置などの非一時的有形媒体上に提供及び/又は記憶され得る。このようなプログラムコード及び/又はデータは、プロセッサに提供されると、本明細書に記載されているタスクを行うように構成された機械又は専用コンピュータを作り出す。
【0032】
伝播速度の計算
次に、本発明のいくつかの例による、伝播速度を計算し、表示するためのアルゴリズム53のフロー図である
図2を参照する。プロセッサ32(
図1)は、電位図信号が獲得されている間に、あるいはその獲得に続いて、アルゴリズム53をリアルタイムで実行することができる。
【0033】
アルゴリズム53は、プロセッサが、心臓24の解剖学的表面上の異なるそれぞれの測定位置において複数のLATを取得する(
図1)、LAT取得ステップ55から始まる。例えば、プロセッサは、
図1を参照して上述されたように、LATを計算することによって、あるいは、マッピングの後にアルゴリズムを実行するときに、メモリ33(
図1)から、若しくはフラッシュドライブなどの外部記憶デバイスからLATを読み取ることによって、LATを取得することができる。
【0034】
LATを取得することに続いて、プロセッサは、評価ステップ57において、少なくとも1つのサンプリング位置について、伝播速度の計算を試行すべきかどうかを評価する。「はい」の場合、プロセッサは、選択ステップ59において、LATが計算に使用され得る測定位置のサブセットと共に、速度計算のためのサンプリング位置を選択する。(選択ステップ59について、
図4を参照して以下に更に説明する。)次に、サブセットサイズ評価ステップ63において、プロセッサは、測定位置のサブセットが、計算するのに十分に大きいかどうか、すなわち、サブセットが閾値数の測定位置を含むかどうかを評価する。
【0035】
測定位置のサブセットが十分に大きいという条件で、プロセッサは、測定位置のサブセットに対応するベクトルのセットを構築する。ベクトルの各々は、サブセット内の異なるそれぞれの測定位置について、測定位置のそれぞれの位置座標から導出された3つの位置値、及び測定位置において測定されたLATから導出されたLAT値を含む。(したがって、ベクトルの各々は、4次元である。)代替的に、サブセットが十分に大きくない場合、プロセッサは評価ステップ57に戻る。
【0036】
典型的には、ベクトルのセットを構築するために、プロセッサは最初に、スケーリング係数計算ステップ65において、測定位置のサブセット全体にわたるLATの分散に基づいて、スケーリング係数を計算する。続いて、サブセット内の測定位置の各々について、プロセッサは、スケーリング係数によって、測定位置の位置座標又は測定位置におけるLATのいずれかをスケーリングし、スケーリングされたパラメータから測定位置に対応するベクトルを構築する。(測定位置の各々について、同じパラメータがスケーリングされる。)
【0037】
例えば、プロセッサは最初に、LATスケーリングステップ67において、スケーリング係数によってLATをスケーリングすることができる。続いて、プロセッサは、ベクトル構築ステップ69において、位置座標及びスケーリングされたLATからベクトルを構築することができる。例えば、任意の特定の測定位置について、プロセッサは、ベクトル[x0 y0 z0 s*L0]を構築することができ、(x0,y0,z0)は、測定位置の位置座標であり、L0は測定位置におけるLATであり、sはスケーリング係数である。
【0038】
LATがスケーリングされる例では、スケーリング係数は、典型的には、測定位置のサブセット全体にわたる標的LAT分散
【0039】
【0040】
【数2】
との比であり、この比は、典型的には1より大きい。位置座標が代わりにスケーリングされる例では、スケーリング係数は、典型的には、
【0041】
【数3】
であり、この比は、典型的には1未満である。
【0042】
いくつかの例では、目標LAT分散は、
図3を参照して以下に記載される所定の距離D0の所定の(増加)関数に従って計算される。例えば、目標LAT分散は、c
*D0
2に等しくてもよく、式中、cは、例えば、5~10の定数である。他の例では、測定位置のサブセットの空間的分散は、x軸、y軸、及びz軸の3つに対して計算され、目標LAT分散は、最大の空間的分散の倍数として計算される。
【0043】
ベクトルのセットを構築することに続いて、プロセッサは、ベクトルのセットの4×4の共分散行列の主成分分析(PCA)に基づいて、選択されたサンプリング位置における電気伝播の方向を計算する。例えば、プロセッサは、共分散行列の第1の主成分(4次元ベクトル)を位置座標のそれぞれの次元へと射影することができる(したがって、3次元ベクトルをもたらす)。
【0044】
実例として、以下の表1は、実験データから構築された8つのベクトルのセットを示す。(この特定の例では、LATは、6倍にスケールアップされた。)
【0045】
【0046】
以下の表2は、このベクトルのセットの共分散行列を示す。
【0047】
【0048】
この行列の第1の主成分は、[-0.138 -1.165*10-16 -0.016 -0.990]であり、XYZ空間上への第1の主成分の射影は[-0.138 -1.165*10-16 -0.016]であり、これは、単位方向ベクトルとして表現すると、[0.993 8.406*10-160.119]である。
【0049】
伝播方向の計算に続いて、プロセッサは、速度計算ステップ73において、選択されたサンプリング位置における伝播速度を計算する。(速度計算ステップ73について、
図3を参照して以下に説明する。)プロセッサは次いで、評価ステップ57に戻る。
【0050】
評価ステップ57において、更に計算されるべき速度がないことを確認することに加えて、プロセッサは、表示ステップ75において、
図9A~
図9B及び
図12を参照して以下で更に説明するように、ディスプレイ36(
図1)上に速度を示す。
【0051】
代替例では、プロセッサは、速度を計算せずに、電気伝播の方向を計算し、速度を示さずに、ディスプレイ上に方向を示す。
【0052】
次に、アルゴリズム53のいくつかの例に関する更なる詳細について、本開示のいくつかの例による伝播速度計算の概略図である
図3を参照する。
【0053】
図3は、解剖学的表面42上の複数の測定位置44をしている。LAT取得ステップ55を実行することによって、測定位置44におけるLATを取得することに続いて、プロセッサは、上述したアルゴリズム53の後続のステップを実行する。したがって、例えば、選択ステップ59を実行する際に、プロセッサは、最初に解剖学的表面42上のサンプリング位置45を選択することができる。(
図5を参照して以下で更に説明するように、サンプリング位置45は、測定位置44のうちの1つと必ずしも一致しない。)続いて、プロセッサは、
図6を参照して以下で更に説明するように、測定位置44のうちの、サンプリング位置45から所定の距離D0内にあるものを特定し、次いで、特定された測定位置から測定位置のサブセットを選択することができる。例えば、
図3の例によれば、プロセッサは、サンプリング位置45から距離D0内にある測定位置のうち、測定位置44d及び44eを選択せずに、測定位置44a、44b、及び44cを選択する。
【0054】
図5~
図10を参照して以下で更に説明するように、アルゴリズム53がリアルタイムで実行されない場合、D0は、典型的には6mm~12mmである。
図11~
図12を参照して以下で更に説明するように、アルゴリズム53がリアルタイムで実行される場合、D0は、典型的には、5mm~7mmなど、4mm~8mmである。より一般的には、D0は、測定位置の密度の関数であり得る。
【0055】
(
図3では2次元に見えるが、解剖学的表面42は3次元であることに留意されたい。したがって、典型的には、プロセッサは、表面に沿った距離を計算するために測地線距離測定を使用する。)
いくつかの例では、プロセッサが続いて、サブセットサイズ評価ステップ63において、サブセットが小さすぎることを確認した場合、プロセッサは、毎回選択を繰り返して、距離D0を1回以上(所定の最大回数まで)増加させることができる。
【0056】
サブセットが十分に大きいことを確認すると、プロセッサは、上述のように伝播方向を計算する。続いて、プロセッサは、速度計算ステップ73において伝播速度を計算する。
【0057】
いくつかの例では、伝播速度を計算するために、プロセッサは、最初に、測定位置のサブセットを仮想線47へと射影するが、仮想線47は、サンプリング位置45を通過し、サンプリング位置における電気伝播の方向に配向されている。次いで、プロセッサは、射影が存在する線47に沿ったそれぞれの距離を計算する。次に、プロセッサは、サブセット内の異なるそれぞれの測定位置について、(i)測定位置の射影が存在する線に沿った距離、及び(ii)測定位置におけるLAT、を各々が含む点49のグループを定義する。続いて、プロセッサは、点49に(あるいは、サンプリング位置45において測定された、又は、
図5を参照して以下で説明されるようにサンプリング位置45に対して補間されたLAT付近の点49のサブセットに)回帰関数51を適合し、次いで、関数51の勾配として電気伝播速度を計算する。
【0058】
例えば、関数51は線であってもよく、電気伝播速度はその線の勾配として計算されてもよい。代替的に、関数は、2次以上の多項式、スプライン関数、又は任意の他の好適な種類の関数であり得る。そのような例では、速度は、サンプリング位置45において測定された、又はサンプリング位置45に対して補間されたLATにおける関数の勾配として計算され得る。代替的に、プロセッサは、任意の他の好適な方式で電気伝播速度を計算し得る。例えば、プロセッサは、点49の2×2の共分散行列を計算し、次いで、この行列の第1の主成分に基づいて電気伝播速度を計算し得る。代替的に、プロセッサは、サンプリング位置45の一方の側の第1のグループ、及びサンプリング位置45の他方の側の第2のグループの2つのグループに射影を分割し得る。(したがって、
図3の例によれば、第1のグループは、測定位置44a及び44bの射影を含むが、第2のグループは、測定位置44cの射影を含む。)続いて、プロセッサは、各グループのそれぞれの重心を計算することができ、各重心は、グループ内の射影の平均位置である。次いで、2つの重心の間を通る線の勾配として速度を計算し得る。
【0059】
選択ステップ59に関する更なる詳細について、本開示のいくつかの例による、選択ステップ59のフロー図である
図4を同様に参照する。
【0060】
選択ステップ59は、プロセッサがサンプリング位置45を選択する、サンプリング位置選択ステップ60から始まる。続いて、プロセッサは、チェックステップ62において、サンプリング位置から距離D0内の任意の測定位置がまだ処理されていないかどうかをチェックする。「はい」の場合、プロセッサは、測定位置特定ステップ70において、処理のために、これらの測定位置のうちの1つを特定する。続いて、プロセッサは、差計算ステップ74において、測定位置におけるLATとサンプリング位置におけるLATとの間の差を計算する。
【0061】
計算されたLAT差に基づいて、プロセッサは、速度推定ステップ76において、サンプリング位置と測定位置との間の伝播速度を推定する伝播速度推定値を計算する。典型的には、この推定値はLAT差と、サンプリング位置と測定位置との間の距離との商であり、これはプロセッサによってチェックステップ62において計算される。
【0062】
続いて、プロセッサは、チェックステップ78において、伝播速度推定値が所定の速度推定閾値vT1を超えているかどうかをチェックする。「はい」の場合、サブセット増加ステップ80において、測定位置の選択されたサブセットに測定位置を追加する。そうでない場合、サブセットに測定位置を追加しない。(伝播速度推定値がvT1を超えない場合、サンプリング位置と測定位置との間にブロックがあり、それにより、サブセットに測定位置を追加すると、伝播速度の後続の計算が不正確になる可能性がある。)
【0063】
サブセット増加ステップ80に続いて、又は伝播速度推定値がvT1を超えない場合、プロセッサは、チェックステップ62に戻る。距離D0内の全ての測定位置が処理されたことを確認すると、選択ステップ59が終了する。
【0064】
モデルに基づく計算及び表示
次に、本開示のいくつかの例による、デジタルモデル38の表面42’の概略図である
図5を参照する。
【0065】
いくつかの例では、プロセッサは、解剖学的表面42(
図3)上におけるプローブ26(
図1)の遠位端の複数の位置に対応する点群から、典型的には点群のトライアングルテッセレーションを実行することによってモデル38を構築する。測定位置44(
図3)は、モデル38の表面42’上の異なるそれぞれの測定点44’に対応する。(表面42’は、点群の全ての点を必ずしも通過しない「最良の適合」であるので、いくつかの測定点44’は、点群から表面42’へと点を射影することによって計算され得ることに留意されたい。)
【0066】
そのような例では、伝播速度の計算は、モデルの構築後に実行され得る。具体的には、プロセッサは、例えば、表面を均一にサンプリングすることによって、表面42’上で複数のサンプリング点45’を指定することができる。続いて、プロセッサは、アルゴリズム53を実行するときにサンプリング点全体にわたって反復することができる(
図2)。具体的には、アルゴリズム53の評価ステップ57において、プロセッサは、任意のサンプリング点がまだ処理されていないかどうかを評価し得る。「はい」の場合、プロセッサは、以下でモデルに基づく選択ステップ59’と呼ばれる選択ステップ59の例を実行し得る。続いて、測定位置の選択したサブセットが十分に大きい場合、プロセッサは、
図2~3を参照して上述したように、サンプリング点の伝播速度を計算することができる。
【0067】
次に、本開示のいくつかの例による、モデルに基づく選択ステップ59’のフロー図である
図6を更に参照する。
【0068】
モデルに基づく選択ステップ59’は、プロセッサがサンプリング点を選択する、サンプリング点選択ステップ60’から始まる。
【0069】
いくつかの例では、サンプリング点選択ステップ60’に続いて、プロセッサは、チェックステップ71において、選択されたサンプリング点から距離D0内に任意の測定点があるかどうかをチェックする。距離D0内にない場合、モデルに基づく選択ステップ59’が終了する。そうでない場合、プロセッサは、チェックステップ61において、選択されたサンプリング点が測定点44’のうちのいずれかの所定の距離D1内にあるかどうかをチェックする。典型的には、D1は、D0よりもはるかに小さく、例えば、0.5mm以下である。
【0070】
サンプリング点が少なくとも1つの測定点のD1内にある場合、プロセッサは、このサンプリング点が最も近い測定点と一致すると見なす。(言い換えれば、プロセッサは、サンプリング点に対応するサンプリング位置が、LATが取得された最も近い測定位置と一致すると見なす)。したがって、プロセッサは、LAT割り当てステップ58において、最も近い測定点のLATをサンプリング点に割り当てる。
【0071】
代替的に、測定点がサンプリング点のD1内にない場合、プロセッサは、補間ステップ56において、
図7~
図8を参照して以下で更に説明するように、測定点のうちの、チェックステップ71において特定されたものに関連付けられたLATのうちの少なくともいくつかを補間することによって、サンプリング点の補間されたLATを計算し、その補間されたLATをサンプリング点に割り当てる。
【0072】
したがって、例えば、
図5に示すように、第1のサンプリング点45’aは、最も近い測定点44’aのLATを割り当てられ得るが、補間されたLATは、いかなる測定点にも十分に近くない第2のサンプリング点45’bについて計算され得る。
【0073】
サンプリング点にLATを割り当てることに続いて、プロセッサは、測定点特定ステップ70’において、処理のために、未処理の測定点を特定する。続いて、プロセッサは、差計算ステップ74’において、サンプリング点に関連付けられるLATと測定点に関連付けられるLATとの間の差を計算する。計算されたLAT差に基づいて、プロセッサは、速度推定ステップ76’において、測定点とサンプリング点との間の伝播速度を推定する。続いて、プロセッサは、チェックステップ78において、伝播速度推定値が所定の速度推定閾値vT1を超えているかどうかをチェックする。「はい」の場合、サブセット増加ステップ80’において、測定位置の選択されたサブセットに測定点を追加する。そうでない場合、サブセットに測定点を追加しない。
【0074】
サブセット増加ステップ80に続いて、又は伝播速度推定値がvT1を超えない場合、プロセッサは、チェックステップ62’において、距離D0内に未処理の測定点が他にもあるかどうかをチェックする。距離D0内の全ての測定点が処理されたことを確認すると、選択ステップ59’が終了する。
【0075】
いくつかの例では、補間ステップ56において補間されたLATを計算するために、プロセッサは最初に、クラスタの各々について、クラスタの各ペアについて、測定点のペアの間の伝播速度を推定する伝播速度推定値が、vT1とは異なり得る所定の速度推定閾値vT2を超えるように、測定点のうちの、サンプリング点から距離D0内にあるものを1つ以上のクラスタへとクラスタ化する。次いで、プロセッサは、サンプリング点とクラスタとの間のそれぞれの距離に基づいて、クラスタのうちの1つを特定する。次いで、プロセッサは、LATのうちの、特定されたクラスタ内の測定点のうちの少なくともいくつかとそれぞれ関連付けられるLATの加重平均として、サンプリング点の補間されたLATを計算する。
【0076】
これに関して、次に、本開示のいくつかの例による、補間ステップ56のフロー図である
図7を参照する。
【0077】
補間ステップ56は、プロセッサが、上述のように、測定点のうちの、サンプリング点から距離D0内にあるものをクラスタ化する、クラスタ化ステップ84から始まる。クラスタ化ステップ84の例について、
図8を参照して以下に説明する。
【0078】
クラスタ化ステップ84に続いて、第1のクラスタ選択ステップ86において、各クラスタが選択される。選択された各クラスタについて、プロセッサは、距離計算ステップ88において、サンプリング点からクラスタまでの距離を計算する。一般に、この距離の任意の好適な定義が使用され得る。例えば、プロセッサは、この距離を、サンプリング点と、クラスタ内の、そのサンプリング点に最も近いN個の測定点との間の平均距離として計算してもよく、Nは、例えば、2、3、又は4である。
【0079】
続いて、プロセッサは、チェックステップ90において、選択されるべきクラスタが他にもあるかどうかをチェックする。「はい」の場合、プロセッサは、クラスタ選択ステップ86に戻る。そうでない場合、クラスタ特定ステップ92において、プロセッサは、サンプリング点から最小の距離を有するクラスタを特定する。クラスタを特定することに続いて、プロセッサは、加重平均化ステップ94において、サンプリング点に最も近いN測定点など、特定されたクラスタ内の測定点のうちの少なくともいくつかと関連付けられたLATの加重平均として、補間されたLATを計算する。典型的には、各i番目の測定点のLATに対する重みwiは、
【0080】
【数4】
に等しく、式中、d
iは、サンプリング点からのi番目の測定点の距離である。
【0081】
上述のように補間を実行することにより、プロセッサは一般に、補間されたLATが、電気的に不活性な組織によってサンプリング点から分離された測定点に基づくことを控える。
【0082】
次に、本開示のいくつかの例による、クラスタ化ステップ84のフロー図である
図8を参照する。
【0083】
クラスタ化ステップ84を実行するために、プロセッサは、第1の測定点選択ステップ96において、サンプリング点から距離D0内の各測定点を反復的に選択する。
図8で「MP1」と呼ばれる選択された各測定点について、プロセッサは、チェックステップ98において、任意のクラスタが存在し、まだ選択されていないかどうかをチェックする。存在しない場合、プロセッサは、クラスタ初期化ステップ112において、MP1でクラスタを初期化する。そうでない場合、プロセッサは、第2のクラスタ選択ステップ100で、まだ選択されていない次のクラスタを選択する。
【0084】
クラスタを選択することに続いて、プロセッサは、第2の測定点選択ステップ102において、クラスタ内の、
図8で「MP2」と呼ばれる測定点のうちの1つを選択する。次に、別の速度推定ステップ104において、プロセッサは、MP1とMP2との間の伝播速度を推定する伝播速度推定値を計算する。プロセッサは次いで、チェックステップ106において、伝播速度推定値が閾値v
T2を超えているかどうかをチェックする。超えない場合、プロセッサは、チェックステップ98に戻る。そうでない場合、プロセッサは、チェックステップ108において、クラスタ内の任意の測定点がまだ選択されていないかどうかをチェックする。まだ選択されていない少なくとも1つの測定点が存在する場合、プロセッサは、第2の測定点選択ステップ102に戻り、次の測定点MP2を選択する。そうでない場合、プロセッサは、クラスタ成長ステップ110において、クラスタにMP1を追加する。
【0085】
クラスタ成長ステップ110又はクラスタ初期化ステップ112に続いて、プロセッサは、チェックステップ114において、サンプリング点から距離D0内の任意の測定点がまだ選択されていないかどうかをチェックする。「はい」の場合、プロセッサは、第1の測定点選択ステップ96に戻り、次の測定点MP1を選択する。そうでない場合、クラスタ化ステップ84が終了する。
【0086】
次に、本開示のいくつかの例による、表示されたモデルの概略図である
図9Aを参照する。
【0087】
伝播速度を計算することに続いて、プロセッサは、それぞれのマーカー116が、サンプリング点45’においてモデルの上に重なり、電気伝播の方向に配向された状態で、モデル38(特に、モデル表面42’)をそれぞれ表示する。(より良好な視認性のために、各マーカー116は、例えば、モデル表面42’に平行な方向に、そのサンプリング点からわずかにオフセットされ得る。)各マーカー116は、
図9Aに示される矢頭形状又は完全な矢印形状などの任意の好適な形状を有し得る。任意選択的に、
図9Aに示される円などの追加のマーカーにより、モデル表面42’上にサンプリング点の位置をマークしてもよい。
【0088】
電気伝播の方向を示すようにマーカー116を配向することに加えて、プロセッサは、電気伝播速度に従って、マーカーの色、形状、長さ、又は厚さなどの少なくとも1つの他の特性を変化させ得る。例えば、その特性は、所定の速度閾値vT3を超えない(又は以下に記載されるように、信頼度の閾値測定値ではvT3を超えない)各速度の第1の値に、そそうでない場合には,第2の値に設定され得る。特定の例として、速度がvT3を超えない各サンプリング点には、より太いマーカー116aが配置され得るが、他のサンプリング点には、より細いマーカー116bが配置され得る。したがって、より太いマーカー116aは、医師にとって関心があり得る解剖学的表面上の緩徐伝導の領域を示す。
【0089】
いくつかの例では、速度閾値vT3を超えない各速度について、信頼度が計算される。信頼度が所定の信頼閾値を超える場合、マーカー特性は、第1の値に設定され、そうでない場合、特性は、第2の値に設定される。信頼度は、例えば、(i)速度が速度閾値を超えない近接するサンプリング点の数と、(ii)近接するサンプリング点の総数との比として定義され得る。サンプリング点S1の近接するサンプリング点S2は、例えば、S1とS2との間の伝播速度推定値がvT1を超えるという条件で、S1からの所定の距離内にある任意のサンプリング点として定義され得る。
【0090】
いくつかの例では、モデルは、解剖学的表面の他の特性を更に示すように表示される。例えば、モデル表面42’は、解剖学的表面上のLATを示すように着色され得る。
【0091】
いくつかの例では、電気伝播の方向を視覚的に示す前に、プロセッサは、電気伝播の方向を平滑化する。例えば、プロセッサは、ラプラシアン平滑化を実行することができ、それにより、平滑化の各i番目の反復中に、各サンプリング点における単位伝播方向ベクトルV[i]は、α
*V[i-1]+(1-α)
*V
A[i],として計算され、式中、V
Aは、サンプリング点の近接点の平均単位伝播方向ベクトルである。(上述のように、近接点は、2つの点の間の伝播速度推定値がv
T1を超えるという条件で、サンプリング点からの所定の距離内にある任意の他のサンプリング点であってよい。)
図9Aは、その近接点とほぼ同じ方向に再配向されたマーカーのうちの1つを示すことによって、そのような平滑化操作の例示的な結果を示している。
【0092】
次に、本開示のいくつかの例による、表示されたモデルの別の概略図である
図9Bを参照する。
【0093】
いくつかの例では、電気伝播の方向を平滑化することに代わって、あるいはそれに加えて、プロセッサは、マーカーが重ねられた状態でモデルを表示する前に、サンプリング点が1つ以上の平均伝播経路120にほぼ追従するように、サンプリング点を凝縮する。したがって、プロセッサは、医師による、表示されたモデルの解釈を容易にする。
【0094】
典型的には、凝縮は、反復アルゴリズムを実行することによって実行される。アルゴリズムの各反復中、プロセッサは、電気伝播の方向を再計算し、次いで、電気伝播の方向に応じて、サンプリング点を互いに向かってシフトさせる。
【0095】
これに関して、次に、本開示のいくつかの例による、そのような1つの反復凝縮アルゴリズムステップ121のフロー図であるここで
図10を参照する。
【0096】
アルゴリズム121の各反復の開始時に、プロセッサは、再計算ステップ128において伝播方向を再計算する。典型的には、このステップにおいて、伝播速度の計算は、サンプリング点の近接点が測定点のサブセットに置き換わっている状態で、
図2を参照して上述したように実行される。例えば、各サンプリング点について、プロセッサは、(i)サンプリング点及びその近接点のそれぞれのベクトルを構築し、(ii)対応する4×4の共分散行列のPCAを実行し、(iii)PCAに基づいて、例えば共分散行列の第1の主成分を位置座標のそれぞれの次元に射影することによって、伝播方向を計算することができる。
【0097】
続いて、プロセッサは、チェックステップ123において、選択されるべきサンプリング点が他にもあるかどうかをチェックする。「はい」の場合、プロセッサは、サンプリング点選択ステップ125において、次のサンプリング点を選択する。次に、プロセッサは、平均位置計算ステップ122において、サンプリング点の近隣の点の平均位置を計算する。これらの点は、選択されたサンプリング点の近接点と共に、選択されたサンプリング点を含む。
図9Aを参照して上述したように、近接点は、2つのサンプリング点の間の伝播速度推定値が速度推定閾値v
T1を超えるという条件で、選択されたサンプリング点からの所定の距離内にある任意の他のサンプリング点として定義されてもよい。
【0098】
平均位置計算ステップ122に続いて、プロセッサは、射影計算ステップ124において、サンプリング点において伝播方向に配向され、平均位置を通過する線への、サンプリング点の射影を計算する。次いで、プロセッサは、点移動ステップ126において、サンプリング点を射影に向かって移動させる。例えば、アルゴリズムの各i番目の反復中、プロセッサは、サンプリング点の新しい位置P[i]をα*P[i-1]+(1-α)*PP[i]として計算することができ、式中、PPは、サンプリング点の射影である。サンプリング点を移動させることに続いて、プロセッサは、チェックステップ123に戻る。
【0099】
チェックステップ123において、全てのサンプリング点が、この反復中に選択されたことを確認すると、プロセッサは、評価ステップ130において、別の反復を実行するかどうかを評価する。「はい」の場合、プロセッサは、アルゴリズムの次の反復を実行する。そうでない場合、アルゴリズムの実行が終了する。
【0100】
一般に、評価ステップ130は、任意の好適な基準に基づき得る。例えば、プロセッサは、この反復中に、サンプリング点のいずれもが、所定の閾値距離を超えて移動していない場合、又は所定の最大反復数が実行された場合、アルゴリズムの実行を終了し得る。
【0101】
リアルタイム計算及び表示
次に、本開示のいくつかの例による、プローブ26及び解剖学的表面42の概略図である
図11を参照する。
【0102】
図1~
図2を参照して上述したように、測定位置44におけるLATは、プローブ26に属する電極28によって獲得された信号に基づいて、プロセッサによって計算される。いくつかの例では、プロセッサは、測定位置44のうちの少なくともいくつかにおいてリアルタイムで、すなわち電極が測定位置にある間に、それぞれの伝播速度(又は少なくとも伝播方向)を更に計算する。(言い換えれば、リアルタイムでは、プロセッサは、測定位置44のうちの少なくともいくつかをサンプリング位置45として取り扱い、したがって、解剖学的表面のデジタルモデルを使用せずに、これらの測定位置における伝播速度を計算する。)例えば、伝播速度は、心周期ごとに1回計算され得る。このリアルタイム計算は、
図2~
図4を参照して上述したように、上述のモデルに基づく計算に代わって、あるいはそれに加えて実行され得る。
【0103】
次に、本開示のいくつかの例による、伝播速度のリアルタイム視覚指示の概略図である
図12を参照する。
【0104】
伝播速度の各リアルタイム計算に続いて、プロセッサは速度を示す。典型的には、電気伝播の方向を示すために、プロセッサは、プローブのアイコン26’を表示し、電気伝播の方向に配向されたそれぞれのマーカー117を、電極のうちの、方向を計算されたサンプリング位置に位置する、ものに対応するアイコンの部分28’に配置する。(簡単にするために、マーカー117は、少数の電極についてのみ
図12に示されている。)いくつかの例では、電気伝播の方向を示す前に、プロセッサは、
図9Aを参照して上述したように、その方向を平滑化する。
【0105】
典型的には、プロセッサは、電気伝播速度に従って、マーカーの少なくとも1つの特性(例えば、色、形状、長さ、又は厚さ)を変化させる。例えば、マーカーは、(i)第1の範囲(例えば、vよりも大きい速度の場合)に属する速度のもの(例えば、速度がv
T3よりも大きいもの)について、第1の形状及び第1の厚さ、(ii)第1の範囲よりも低い第2の範囲に属する速度のもの(例えば、v
T3未満であるが、下限閾値v
T4よりも大きいもの)について、第1の形状及び第2の厚さ、並びに(iii)第2の範囲よりも小さい第3の範囲に属する速度のもの(例えば、v
T4未満の速度のもの)について、第2の形状を有し得る。
図12は、(i)第1のマーカー117aが、正常な伝播速度を示す、より長くかつより細い矢印を含み、(ii)第2のマーカー117bが、より遅い伝播速度を示すより短くかつより太い矢印を含み、(iii)第3のマーカー117cが、電気的に不活性な組織を示す円を含む、そのような例を示す。(典型的には、誤ったマーキングを回避するために、電気的に不活性な組織は、関連する電極が組織に接触していることが知られている場合にのみマークされる。)
【0106】
任意選択的に、マーカーの別の特性は、LATに応じて変更され得る。例えば、マーカーは、LATに基づいて、カラースケールに従って着色され得る。
【0107】
図12に示すように、プローブのアイコンは、マッピングされている解剖学的表面の画像42”の上に重ねられ得る。代替的に、アイコンは、モデルの表面上に重ねられてもよい。いくつかの例では、アイコン及びマーカーの表示は、心周期中のプローブの動きを考慮するために、心周期当たり複数回リフレッシュされる。
【0108】
バイポーラ電圧の最適な選択
次に、本開示のいくつかの例による、バイポーラ電圧測定用の電極のペアを選択するための方法の概略図である
図13を参照する。
【0109】
いくつかの例では、電極28の位置における電気伝播のそれぞれの方向を計算することに続いて、プロセッサは、電極のうちの隣接するもののペア139を、各ペア139について、ペアを互いに結合するベクトル140が、所定の閾値整列度度内で、ペアに属する電極のうちの1つの位置における電気伝播の方向と整列されるように選択する。(したがって、ペア選択は、伝播速度ではなく、伝播方向に基づく。)電極のペアを選択することに続いて、プロセッサは、電極のペアによって測定されたそれぞれのバイポーラ電圧をモデル38に関連付ける(
図1)。したがって、有利には、関連性がより低いバイポーラ電圧は、モデルから省略される。
【0110】
図13に示すような電極の矩形グリッドでは、同じ行の隣接する(又は「近接する」)電極間の距離が、隣接する行間の距離と同じであり、閾値整列度は一般に45°である。電極の各々(典型的には、コーナ電極のうちの1つ)について、プロセッサは、この電極を同じ行内の隣接する電極とペアリングするかどうか、この電極を隣接する行内の隣接する電極とペアリングするかどうか、又は電極を全くペアリングしないかどうかを決定する。特に、潜在的にペアリング可能な隣接電極の各々について、プロセッサは、電極から隣接電極(又はその逆)を指すベクトル140と、伝播方向に配向された別のベクトル118との間の角度θを計算する。θ(又は|180°-θ|)が閾値角度未満である場合、隣接電極は、その電極とペアリングされる。
【0111】
(典型的には、同じ行の単一の隣接電極のみが潜在的にペアリング可能であり、この電極は、ペアが求められる電極の常に左側にあるか、又は常に右側にある。同様に、典型的には、隣接する行内の単一の隣接電極のみが潜在的にペアリング可能であり、隣接する行は、ペアが求められる電極の常に上にあるか、又は常に下にある。したがって、電極の対が複数回、選択されることはない。)
【0112】
したがって、
図13に示される例では、第1の電極28aは、同じ列内の電極28aの下にある隣接電極とペアリングされており、第2の電極28bは、第2の電極28bの右側の列内の隣接電極とペアリングされている。
【0113】
次に、本開示のいくつかの例による、電極の六角配列のための
図13の方法を示している
図14を更に参照する。
【0114】
いくつかの例では、その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願第17/092,627号に記載されているように、電極28は、各電極が最大6つの近接電極から等距離に離間されるように、六角格子で配列される。例えば、スプライン29上の電極の行(
図13)は互い違いにされてもよい。そのような例では、閾値整列度は一般に30°であり、プロセッサは、ペアリングのために最大3つの隣接電極を考慮する。
【0115】
次に、更なる詳細について、本開示のいくつかの例による、バイポーラ電圧測定用の電極のペアを選択するためのアルゴリズム142のフロー図である
図15を参照する。
【0116】
典型的には、アルゴリズム142は、心周期ごとに少なくとも1回、例えば厳密に1回実行される。アルゴリズム142ごとに、電極選択ステップ144において電極の各々(典型的には、コーナ電極のうちの潜在的にペアリング可能な近接電極を有さない1つを除く)が選択される。電極の選択に続いて、潜在的にペアリング可能な近接電極(例えば、選択された電極の右方近接電極又は下方近接電極)が、近接選択ステップ146で選択される。次に、プロセッサは、角度計算ステップ148で、電極のペア(すなわち、選択された電極とその選択された近接電極)の角度θを計算する(
図13~
図14)。
【0117】
θを計算することに続いて、プロセッサは、角度比較ステップ150において、θ(又は|180°-θ|)が閾値角度(例えば、45°又は30°)未満であるかどうかを確認する。「はい」の場合、この電極のペアは、ペア選択ステップ152において、バイポーラ電圧測定用に選択される(すなわち、ペア間のバイポーラ電圧は、モデル38(
図5)との関連付け用に選択される)。そうでない場合、プロセッサは、チェックステップ154において、潜在的にペアリング可能な近接電極がまだ選択されていないかどうかをチェックする。「はい」の場合、プロセッサは、近接選択ステップ146に戻り、次の潜在的にペアリング可能な近接電極を選択する。
【0118】
ペア選択ステップ152を実行するか、又は潜在的にペアリング可能な近接電極が選択されずに残存していることを確認することに続いて、プロセッサは、チェックステップ156で、選択されるべき電極が残存しているかどうかをチェックする。「はい」の場合、プロセッサは、電極選択ステップ144に戻り、次の電極を選択する。そうでない場合、プロセッサは、モデル増加ステップ158において、選択された電極ペアによって測定されたバイポーラ電圧をモデル38と関連付ける(
図5)。例えば、プロセッサは、バイポーラ電圧全体の範囲に及ぶカラースケールに従って、モデルの表面42’を着色してもよい。代替的又は追加的に、表面42’上の点の上でのマウスポインタの移動、又は点上でのマウスのクリックに応じて、プロセッサは、その点におけるバイポーラ電圧が獲得された電極ペアの指示、及び/又はバイポーラ電圧信号自体を表示し得る。
【0119】
強化されたLAT計算
次に、本発明のいくつかの例による、電極の各位置におけるそれぞれのLATを計算するためのアルゴリズム160のフロー図である
図16を参照する。アルゴリズム160は、電気解剖学的マッピング手順中に任意の時点でプロセッサによって実行され得る。
【0120】
導入として、アルゴリズム160は、任意の位置のLATの候補セットを、この位置から獲得されたユニポーラ電圧信号及びバイポーラ電圧信号に基づいて返すように構成された関数を利用することに留意されたい。そのような関数は、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、Houbenらの米国特許第9,380,953号に記載されている。
【0121】
アルゴリズム160の各反復は、プロセッサがプローブに属する電極E1を選択する、電極選択ステップ144から始まる。E1の選択に続いて、プロセッサは、近接選択ステップ162において、E1に近接する(すなわち、E1に隣接する)電極E2を選択する。次いで、プロセッサは、信号入力ステップ164において、前述の関数に2つの信号、すなわち、E1と基準電極との間のユニポーラ電圧を表すユニポーラ電圧信号と、E1とE2との間のバイポーラ電圧を表すバイポーラ電圧信号と、を入力する。続いて、出力受信ステップ166で、プロセッサは、入力に基づいて関数によって計算されたLATの候補セットを、関数からの出力として受信する。例えば、この出力は、候補LATをマーキングする注釈を有するバイポーラ電圧信号を含み得る。
【0122】
続いて、プロセッサは、チェックステップ168において、E1が近近接電極を他にも有するかどうかをチェックする。「はい」の場合、プロセッサは、近接選択ステップ162に戻り、次のE1の近接電極を選択する。そうでない場合、プロセッサは、LAT選択ステップ170において、受信された全ての候補セットからLATを選定する。例えば、プロセッサは、他の候補LATと比較してユニポーラ信号の導関数が最大である候補LATを選択することができる。
【0123】
したがって、例えば、各電極が最大4つの等距離近接電極を有する電極の矩形格子を与えられると、プロセッサは、最大4つの候補セットからのLATを選定することができる。各電極が最大6つの等距離近接電極を有する六角配列を与えられると、プロセッサは、最大6つの候補セットからLATを選定することができる。
【実施例0124】
以下の実施例は、本明細書の教示を組み合わせるか又は適用することができる、様々な非網羅的な方法に関する。以下の実施例は、本出願における又は本出願の後の書類提出における任意の時点で提示され得るいずれの特許請求の範囲の適用範囲も限定することを意図したものではないことを理解されたい。一切の権利放棄を意図するものではない。以下の実施例は、あくまでも例示的な目的で与えられるものに過ぎない。本明細書の様々な教示は、その他の多くの方法で構成及び適用さてもよいことが企図される。また、いくつかの変形例では、以下の実施例において言及されるある特定の特徴を省略してよいことも企図される。したがって、発明者らによって又は発明者らの権利承継人によって、後日そうである旨が明示的に示されない限り、以下に言及される態様又は特徴のいずれも重要なものとしてみなされるべきではない。いずれかの特許請求の範囲が、本出願において、又は以下に言及される特徴以外の更なる特徴を含む本出願に関連する後の書類提出において示される場合、それらの更なる特徴は、特許性に関連するいかなる理由によっても追加されたものとして仮定されるべきではない。
【0125】
(実施例1)
システムは、ディスプレイと、心臓の解剖学的表面上の異なるそれぞれの測定位置において、複数の局所興奮時間(LAT)を取得するように構成されたプロセッサと、を含む。プロセッサは、解剖学的表面上の1つ以上のサンプリング位置における電気伝播のそれぞれの方向を、サンプリング位置のうちの各サンプリング位置について、サンプリング位置に対する測定位置のそれぞれのサブセットを選択することと、ベクトルのセットを構築することであって、ベクトルのうちの少なくともいくつかの各々は、サブセット内の異なるそれぞれの測定位置について、測定位置のそれぞれの位置座標から導出された3つの位置値、及び測定位置においてLATから導出されたLAT値を含む、構築することと、ベクトルのセットの4×4の共分散行列の主成分分析(PCA)に基づいて、サンプリング位置における電気伝播の方向を計算することと、によって計算するように更に構成されている。プロセッサは、ディスプレイ上に、電気伝播の方向を示すように更に構成されている。
【0126】
(実施例2)
プロセッサは、
測定位置のサブセット全体にわたるLATの分散に基づいて、スケーリング係数を計算することと、
サブセット内の各測定位置について、
スケーリング係数によって、測定位置の位置座標及び測定位置におけるLATからなるパラメータの群から選択されるパラメータをスケーリングすることと、
スケーリングされたパラメータから、測定位置に対応するベクトルを構築することと、
によって、ベクトルのセットを構築するように構成されている、実施例1に記載のシステム。
【0127】
(実施例3)
プロセッサは、共分散行列の第1の主成分を位置座標のそれぞれの次元へと射影することによって、サンプリング位置における電気伝播の方向を計算するように構成されている、実施例1又は2に記載のシステム。
【0128】
(実施例4)
プロセッサは、サンプリング位置の各々における電気伝播の速度を、
サンプリング位置を通過し、サンプリング位置における電気伝播の方向に配向された仮想線について、仮想線への測定位置のサブセットのそれぞれの射影が存在する仮想線に沿ったそれぞれの距離を計算することと、
回帰点のグループに適合された回帰関数の勾配として速度を計算することであって、回帰点の各々は、サブセットに属する異なるそれぞれの測定位置について、(i)測定位置の射影が存在する線に沿った距離、及び(ii)測定位置におけるLATを含む、計算することと、
によって計算するように更に構成されている、実施例1~3のいずれか1つに記載のシステム。
【0129】
(実施例5)
プロセッサは、電気伝播の方向を示す前に電気伝播の方向を平滑化するように更に構成されている、実施例1~4のいずれか1つに記載のシステム。
【0130】
(実施例6)
プロセッサは、サンプリング位置に対する測定位置のそれぞれのサブセットを、
測定位置のうちの、サンプリング位置から所定の距離内にあるものを特定することと、
特定された測定位置から測定位置のサブセットを選択することと、
によって選択するように構成されている、実施例1~5のいずれか1つに記載のシステム。
【0131】
(実施例7)
プロセッサは、サブセットを、
サンプリング位置から所定の距離内にある各測定位置について、
サンプリング位置と測定位置との間の伝播速度を推定する伝播速度推定値を計算することと、
この伝播速度が所定の速度推定閾値を超えるという条件で、測定位置を選択することと、
によって選択するように構成されている、実施例6に記載のシステム。
【0132】
(実施例8)
プロセッサは、サンプリング位置の補間されたLATを計算するように更に構成されており、プロセッサは、この補間されたLATに基づいて伝播速度推定値を計算するように構成されている、実施例7に記載のシステム。
【0133】
(実施例9)
所定の速度推定閾値は第1の所定の速度推定閾値であり、伝播速度推定値は、第1の伝播速度推定値であり、
プロセッサは、補間されたLATを、
クラスタの各々について、クラスタ内の測定位置の各ペアについて、測定位置のペア間の伝播速度を推定する第2の伝播速度推定値が、第2の所定の速度推定閾値を超えるように、測定位置のうちの、サンプリング位置から所定の距離内にあるものを、1つ以上のクラスタへとクラスタ化することと、
サンプリング位置とクラスタとの間のそれぞれの距離に基づいて、クラスタのうちの1つを特定することと、
クラスタのうちの特定された1つにおける測定位置のうちの少なくともいくつかにおいて、補間されたLATをLATの加重平均として計算することと、
によって計算するように構成されている、実施例8に記載のシステム。
【0134】
(実施例10)
測定位置は、解剖学的表面を表すデジタルモデル表面上の異なるそれぞれの測定点に対応し、これらの測定点は、LATにそれぞれ関連付けられ、
プロセッサは、デジタルモデル表面上で、複数のサンプリング点を指定するように更に構成されており、
サンプリング位置は、サンプリング点にそれぞれ対応する、
実施例1~9のいずれか1つに記載のシステム。
【0135】
(実施例11)
プロセッサは、それぞれのマーカーがサンプリング点においてモデル表面の上に重なり、電気伝播の方向に配向された状態で、モデル表面を表示することによって、電気伝播の方向をそれぞれ示すように構成されている、実施例10に記載のシステム。
【0136】
(実施例12)
プロセッサは、
サンプリング位置における電気伝播のそれぞれの速度を計算し、
この速度に従ってマーカーの少なくとも1つの特性を変化させる、
ように更に構成されている、実施例11に記載のシステム。
【0137】
(実施例13)
プロセッサは、マーカーがモデル表面の上に重なった状態でモデル表面を表示する前に、
反復して、
電気伝播の方向を再計算し、
電気伝播の方向に応じて、サンプリング点を互いに向かってシフトさせる、
ように更に構成されている、実施例11又は12に記載のシステム。
【0138】
(実施例14)
プロセッサは、体内プローブに属するそれぞれの電極によって獲得された信号に基づいて、LATを計算することによって、LATを取得するように構成されており、
サンプリング位置は、測定位置のうちの少なくともいくつかを含み、
プロセッサは、電極が測定位置にそれぞれある間に、電気伝播の方向を示すように構成されている、
実施例1~9のいずれか1つに記載のシステム。
【0139】
(実施例15)
プロセッサは、電気伝播の方向を、
プローブのアイコンを表示することと、
電気伝播の方向に配向されたそれぞれのマーカーを、電極のうちの、サンプリング位置に位置するものに対応するアイコンの部分にそれぞれ配置することと、
によって示すように構成されている、実施例14に記載のシステム。
【0140】
(実施例16)
プロセッサは、
サンプリング位置における電気伝播のそれぞれの速度を計算し、
この速度に従ってマーカーの少なくとも1つの特性を変化させる、
ように更に構成されている、実施例15に記載のシステム。
【0141】
(実施例17)
方法は、心臓の解剖学的表面上の異なるそれぞれの測定位置において、複数の局所興奮時間(LAT)を取得することを含む。この方法は、解剖学的表面上の1つ以上のサンプリング位置における電気伝播のそれぞれの方向を、サンプリング位置のうちの各サンプリング位置について、サンプリング位置に対する測定位置のそれぞれのサブセットを選択することと、ベクトルのセットを構築することであって、ベクトルのうちの少なくともいくつかの各々は、サブセット内の異なるそれぞれの測定位置について、測定位置のそれぞれの位置座標から導出された3つの位置値、及び測定位置においてLATから導出されたLAT値を含む、構築することと、ベクトルのセットの4×4の共分散行列の主成分分析(PCA)に基づいて、サンプリング位置における電気伝播の方向を計算することと、によって計算することを更に含む。この方法は、電気伝播の方向をディスプレイ上に示すことを更に含む。
【0142】
(実施例18)
ベクトルのセットを構築することは、
測定位置のサブセット全体にわたるLATの分散に基づいて、スケーリング係数を計算することと、
サブセット内の各測定位置について、
スケーリング係数によって、測定位置の位置座標及び測定位置におけるLATからなるパラメータの群から選択されるパラメータをスケーリングすることと、
スケーリングされたパラメータから、測定位置に対応するベクトルを構築することと、
を含む、実施例17に記載の方法。
【0143】
(実施例19)
サンプリング位置における電気伝播の方向を計算することは、共分散行列の第1の主成分を位置座標のそれぞれの次元へと射影することによって、電気伝播の方向を計算することを含む、実施例17又は18に記載の方法。
【0144】
(実施例20)
サンプリング位置の各々における電気伝播の速度を、
サンプリング位置を通過し、サンプリング位置における電気伝播の方向に配向された仮想線について、仮想線への測定位置のサブセットのそれぞれの射影が存在する仮想線に沿ったそれぞれの距離を計算することと、
回帰点のグループに適合された回帰関数の勾配として速度を計算することであって、回帰点の各々は、サブセットに属する異なるそれぞれの測定位置について、(i)測定位置の射影が存在する線に沿った距離、及び(ii)測定位置におけるLATを含む、計算することと、
によって計算するように更に構成されている、実施例17~19のいずれか1つに記載の方法。
【0145】
(実施例21)
測定位置は、解剖学的表面を表すデジタルモデル表面上の異なるそれぞれの測定点に対応し、これらの測定点は、LATにそれぞれ関連付けられ、
この方法は、デジタルモデル表面上で、複数のサンプリング点を指定することを更に含み、
サンプリング位置は、サンプリング点にそれぞれ対応する、
実施例17~20のいずれか1つに記載の方法。
【0146】
(実施例22)
システム(20)は、電気的インターフェース(34)と、プロセッサ(32)と、を含む。プロセッサ(32)は、電気的インターフェース(34)を介して、心臓(24)の解剖学的表面(42)上の複数の電極(28)によって獲得されたそれぞれの信号を受信するように構成されている。プロセッサ(32)は、これらの信号に基づいて、電極(28)のそれぞれの位置におけるそれぞれの局所興奮時間(LAT)を計算するように更に構成されている。プロセッサ(32)は、LATに基づいて、これらの位置における電気伝播のそれぞれの方向を計算するように更に構成されている。プロセッサ(32)は、電極(28)のうちの隣接するもののペア(139)を、ペア(139)の各々について、ペア(139)を結合するベクトル(140)が、所定の整列閾値度内で、ペア(139)に属する電極(28)のうちの1つの位置における電気伝播の方向と整列されるように選択するように更に構成されている。プロセッサ(32)は、電極(28)のペア(139)によって測定されたそれぞれのバイポーラ電圧を解剖学的表面(42)のデジタルモデル(38)と関連付けるように更に構成されている。
【0147】
(実施例23)
プロセッサ(32)は、電極(28)のうちの各第1の電極の位置におけるLATを、
その位置に対するLATの複数の候補セットを取得することであって、第1の電極に隣接する、電極(28)のうちの各第2の電極について、
関数への入力として、(i)第1の電極と基準電極との間のユニポーラ電圧を表すユニポーラ電圧信号、及び(ii)第1の電極と第2の電極との間のバイポーラ電圧を表すバイポーラ電圧信号を提供することと、
関数からの出力として、候補セットのそれぞれ1つを受信することと、
によって取得することと、
候補セットから、LATを選定することと、
によって、計算するように構成されている、実施例22に記載のシステム(20)。
【0148】
(実施例24)
方法は、心臓(24)の解剖学的表面(42)上の複数の電極(28)によって獲得されたそれぞれの信号に基づいて、電極(28)のそれぞれの位置におけるそれぞれの局所興奮時間(LAT)を計算することを含む。この方法は、LATに基づいて、これらの位置における電気伝播のそれぞれの方向を計算することを更に含む。この方法は、電極(28)のうちの隣接するもののペア(139)を、ペア(139)の各々について、ペアを結合するベクトル(140)が、所定の整列閾値度内で、ペア(139)に属する電極(28)のうちの1つの位置における電気伝播の方向と整列されるように選択することを更に含む。この方法は、電極(28)のペア(139)によって測定されたそれぞれのバイポーラ電圧を解剖学的表面(42)のデジタルモデル(38)と関連付けることを更に含む。
【0149】
(実施例25)
LATを計算することは、電極(28)のうちの各第1の電極の位置におけるLATを、
その位置に対するLATの複数の候補セットを取得することであって、第1の電極に隣接する、電極(28)のうちの各第2の電極について、
関数への入力として、(i)第1の電極と基準電極との間のユニポーラ電圧を表すユニポーラ電圧信号、及び(ii)第1の電極と第2の電極との間のバイポーラ電圧を表すバイポーラ電圧信号を提供することと、
関数からの出力として、候補セットのそれぞれ1つを受信することと、
によって取得することと、
候補セットから、LATを選定することと、
によって計算することを含む、実施例24に記載の方法。
【0150】
(実施例26)
コンピュータソフトウェア製品は、プログラム命令が格納されている有形の非一時的なコンピュータ可読媒体を含む。命令は、プロセッサ(32)によって読み取られると、プロセッサ(32)に、心臓(24)の解剖学的表面(42)上の複数の電極(28)によって獲得されたそれぞれの信号を受信させ、これらの信号に基づいて、電極(28)のそれぞれの位置におけるそれぞれの局所興奮時間(LAT)を計算させ、それらのLATに基づいて、それぞれの位置における電気伝播のそれぞれの方向を計算させ、電極(28)のうちの隣接するもののペア(139)を、ペア(139)の各々について、ペア(139)を結合するベクトル(140)が、所定の整列閾値度内で、ペア(139)に属する電極(28)のうちの1つの位置における電気伝播の方向と整列されるように選択させ、電極(28)のペア(139)によって測定されたそれぞれのバイポーラ電圧を解剖学的表面(42)のデジタルモデル(38)と関連付けさせる。
【0151】
(実施例27)
システム(20)は、ディスプレイ(36)及びプロセッサ(32)を含む。プロセッサ(32)は、心臓(24)の解剖学的表面(42)上の、体内プローブ(26)に属する複数の電極(28)によって獲得されたそれぞれの信号に基づいて、電極(28)のそれぞれの位置におけるそれぞれの局所興奮時間(LAT)を計算するように構成されている。プロセッサ(32)は、LATに基づいて、これら位置における電気伝播のそれぞれの方向及び速度を計算するように更に構成されている。プロセッサは、電極(28)がそれぞれ当該位置にある間に、ディスプレイ(36)上にプローブ(26)のアイコン(26’)を表示するように更に構成されている。プロセッサ(32)は、電気伝播の方向にそれぞれ配向され、速度に応じて変化する少なくとも1つの特性を有するそれぞれのマーカー(117)を、電極(28)に対応するアイコン(26’)の部分に配置するように更に構成されている。
【0152】
(実施例28)
プロセッサ(32)は、電極(28)のうちの各第1の電極の位置におけるLATを、
その位置に対するLATの複数の候補セットを取得することであって、第1の電極に隣接する、電極のうちの各第2の電極について、
関数への入力として、(i)第1の電極と基準電極との間のユニポーラ電圧を表すユニポーラ電圧信号、及び(ii)第1の電極と第2の電極との間のバイポーラ電圧を表すバイポーラ電圧信号を提供することと、
関数からの出力として、候補セットのそれぞれ1つを受信することと、
によって取得することと、
候補セットから、LATを選定することと、
によって計算するように構成されている、実施例27に記載のシステム(20)。
【0153】
(実施例29)
特性は、マーカー(117)が、
第1の範囲に属する速度のものについて、第1の形状及び第1の厚さを有し、
第1の範囲よりも低い第2の範囲に属する速度のものについて、第1の形状及び第2の厚さを有し、
第2の範囲よりも低い第3の範囲に属する速度のものについて、第2の形状を有する、
ことを理由に、速度に応じて変化する、実施例27又は28に記載のシステム(20)。
【0154】
(実施例30)
マーカー(117)は、LATに応じて変化する少なくとも1つの他の特性を有する、実施例29に記載のシステム(20)。
【0155】
(実施例31)
マーカー(117)は、LATに基づいて、カラースケールに従って着色される、実施例30に記載のシステム(20)。
【0156】
(実施例32)
方法は、心臓(24)の解剖学的表面(42)上の、体内プローブ(26)に属する複数の電極(28)によって獲得されたそれぞれの信号に基づいて、電極(28)のそれぞれの位置におけるそれぞれの局所興奮時間(LAT)を計算することを含む。この方法は、LATに基づいて、これらの位置における電気伝播のそれぞれの方向及び速度を計算することを更に含む。この方法は、電極(28)がそれぞれ当該位置にある間に、プローブ(26)のアイコン(26’)を表示することを更に含む。この方法は、電気伝播の方向にそれぞれ配向され、速度に応じて変化する少なくとも1つの特性を有するそれぞれのマーカー(117)を、電極(28)に対応するアイコン(26’)の部分に配置することを更に含む。
【0157】
(実施例33)
LATを計算することは、電極(28)のうちの各第1の電極の位置におけるLATを、
その位置に対するLATの複数の候補セットを取得することであって、第1の電極に隣接する、電極のうちの各第2の電極について、
関数への入力として、(i)第1の電極と基準電極との間のユニポーラ電圧を表すユニポーラ電圧信号、及び(ii)第1の電極と第2の電極との間のバイポーラ電圧を表すバイポーラ電圧信号を提供することと、
関数からの出力として、候補セットのそれぞれ1つを受信することと、
によって取得することと、
候補セットから、LATを選定することと、
によって計算することを含む、実施例32に記載の方法。
【0158】
(実施例34)
特性は、マーカー(117)が、
第1の範囲に属する速度のものについて、第1の形状及び第1の厚さを有し、
第1の範囲よりも低い第2の範囲に属する速度のものについて、第1の形状及び第2の厚さを有し、
第2の範囲よりも低い第3の範囲に属する速度のものについて、第2の形状を有する、
ことを理由に、速度に応じて変化する、実施例32又は33に記載の方法。
【0159】
(実施例35)
マーカー(117)は、LATに応じて変化する少なくとも1つの他の特性を有する、実施例34に記載の方法。
【0160】
(実施例36)
マーカー(117)は、LATに基づいて、カラースケールに従って着色される、実施例35に記載の方法。
【0161】
(実施例37)
コンピュータソフトウェア製品は、プログラム命令が格納されている有形の非一時的なコンピュータ可読媒体を含む。命令は、プロセッサ(32)によって読み取られると、プロセッサ(32)に、心臓(24)の解剖学的表面(42)上の、体内プローブ(26)に属する複数の電極(28)によって獲得されたそれぞれの信号に基づいて、電極(28)のそれぞれの位置におけるそれぞれの局所興奮時間(LAT)を計算させる。命令は、更にプロセッサ(32)に、LATに基づいて、これらの位置における電気伝播のそれぞれの方向及び速度を計算させる。命令は、更にプロセッサ(32)に、電極(28)がそれぞれ当該位置にある間に上にプローブ(26)のアイコン(26’)を表示させる。命令は、更にプロセッサ(32)に、電気伝播の方向にそれぞれ配向され、速度に応じて変化する少なくとも1つの特性を有するそれぞれのマーカー(117)を、電極(28)に対応するアイコン(26’)の部分に配置させる。
【0162】
本開示は、本明細書に具体的に示され、上述されたものに限定されない点が、当業者には理解されよう。むしろ、本開示の範囲は、本明細書において上述した様々な特徴の組み合わせ及び部分的組み合わせ、並びに上述の説明を読むことで当業者が想到するであろう、従来技術にはない特徴の変形例及び修正例を含む。参照により本特許出願に組み込まれる文献は、これらの組み込まれた文献において、いずれかの用語が本明細書において明示的又は暗示的になされた定義と矛盾する様式で定義される程度まで、本明細書における定義のみを考慮するものとする点を除き、本出願の不可欠な部分と見なすものとする。
【0163】
〔実施の態様〕
(1) システムであって、
電気的インターフェースと、
プロセッサであって、
前記電気的インターフェースを介して、心臓の解剖学的表面上の複数の電極によって獲得されたそれぞれの信号を受信し、
前記信号に基づいて、前記電極のそれぞれの位置におけるそれぞれの局所興奮時間(LAT)を計算し、
前記LATに基づいて、前記位置における電気伝播のそれぞれの方向を計算し、
前記電極のうちの隣接する電極のペアを、前記ペアの各々について、前記ペアを結合するベクトルが、所定の閾値整列度内で、前記ペアに属する前記電極のうちの1つの前記位置における電気伝播の方向と整列されるように選択し、
前記電極のペアによって測定されたそれぞれのバイポーラ電圧を、前記解剖学的表面のデジタルモデルと関連付ける、
ように構成されている、プロセッサと、
を含む、システム。
(2) 前記プロセッサは、前記電極のうちの各第1の電極の前記位置における前記LATを、
前記位置に対するLATの複数の候補セットを取得することであって、前記第1の電極に隣接する、前記電極のうちの各第2の電極について、
関数への入力として、(i)前記第1の電極と基準電極との間のユニポーラ電圧を表すユニポーラ電圧信号、及び(ii)前記第1の電極と前記第2の電極との間のバイポーラ電圧を表すバイポーラ電圧信号を提供することと、
前記関数からの出力として、前記候補セットのそれぞれ1つを受信することと、
によって取得することと、
前記候補セットから、前記LATを選定することと、
によって計算するように構成されている、実施態様1に記載のシステム。
(3) 心臓の解剖学的表面上の複数の電極によって獲得されたそれぞれの信号に基づいて、前記電極のそれぞれの位置におけるそれぞれの局所興奮時間(LAT)を計算することと、
前記LATに基づいて、前記位置における電気伝播のそれぞれの方向を計算することと、
前記電極のうちの隣接する電極のペアを、前記ペアの各々について、前記ペアを結合するベクトルが、所定の閾値整列度内で、前記ペアに属する前記電極のうちの1つの前記位置における電気伝播の方向と整列されるように選択することと、
前記電極のペアによって測定されたそれぞれのバイポーラ電圧を、前記解剖学的表面のデジタルモデルと関連付けることと、
を含む方法。
(4) 前記LATを計算することは、前記電極のうちの各第1の電極の前記位置における前記LATを、
前記位置に対するLATの複数の候補セットを取得することであって、前記第1の電極に隣接する、前記電極のうちの各第2の電極について、
関数への入力として、(i)前記第1の電極と基準電極との間のユニポーラ電圧を表すユニポーラ電圧信号、及び(ii)前記第1の電極と前記第2の電極との間のバイポーラ電圧を表すバイポーラ電圧信号を提供することと、
前記関数からの出力として、前記候補セットのそれぞれ1つを受信することと、
によって取得することと、
前記候補セットから、前記LATを選定することと、
によって計算することを含む、実施態様3に記載の方法。
(5) プログラム命令が格納されている有形の非一時的なコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータソフトウェア製品であって、前記命令は、プロセッサによって読み取られると、前記プロセッサに、
心臓の解剖学的表面上の複数の電極によって獲得されたそれぞれの信号を受信させ、
前記信号に基づいて、前記電極のそれぞれの位置におけるそれぞれの局所興奮時間(LAT)を計算させ、
前記LATに基づいて、前記位置における電気伝播のそれぞれの方向を計算させ、
前記電極のうちの隣接する電極のペアを、前記ペアの各々について、前記ペアを結合するベクトルが、所定の閾値整列度内で、前記ペアに属する前記電極のうちの1つの前記位置における電気伝播の方向と整列されるように選択させ、
前記電極のペアによって測定されたそれぞれのバイポーラ電圧を前記解剖学的表面のデジタルモデルと関連付けさせる、
コンピュータソフトウェア製品。
【0164】
(6) 前記命令は、前記プロセッサに、前記電極のうちの各第1の電極の前記位置における前記LATを、
前記位置に対するLATの複数の候補セットを取得することであって、前記第1の電極に隣接する、前記電極のうちの各第2の電極について、
関数への入力として、(i)前記第1の電極と基準電極との間のユニポーラ電圧を表すユニポーラ電圧信号、及び(ii)前記第1の電極と前記第2の電極との間のバイポーラ電圧を表すバイポーラ電圧信号を提供することと、
前記関数からの出力として、前記候補セットのそれぞれ1つを受信することと、
によって取得することと、
前記候補セットから前記LATを選定することと、
によって計算させる、実施態様5に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(7) システムであって、
ディスプレイと、
プロセッサであって、
心臓の解剖学的表面上の、体内プローブに属する複数の電極によって獲得されたそれぞれの信号に基づいて、前記電極のそれぞれの位置におけるそれぞれの局所興奮時間(LAT)を計算し、
前記LATに基づいて、前記位置における電気伝播のそれぞれの方向及び速度を計算し、
前記電極がそれぞれ前記位置にある間に、前記ディスプレイ上に前記プローブのアイコンを表示し、
前記電気伝播の方向にそれぞれ配向され、前記速度に応じて変化する少なくとも1つの特性を有するそれぞれのマーカーを、前記電極に対応する前記アイコンの部分に配置する、
ように構成されている、プロセッサと、
を含むシステム。
(8) 前記プロセッサは、前記電極のうちの各第1の電極の前記位置における前記LATを、
前記位置に対するLATの複数の候補セットを取得することであって、前記第1の電極に隣接する、前記電極のうちの各第2の電極について、
関数への入力として、(i)前記第1の電極と基準電極との間のユニポーラ電圧を表すユニポーラ電圧信号、及び(ii)前記第1の電極と前記第2の電極との間のバイポーラ電圧を表すバイポーラ電圧信号を提供することと、
前記関数からの出力として、前記候補セットのそれぞれ1つを受信することと、
によって取得することと、
前記候補セットから前記LATを選定することと、
によって計算するように構成されている、実施態様7に記載のシステム。
(9) 前記特性は、前記マーカーが、
第1の範囲に属する速度のものについて、第1の形状及び第1の厚さを有し、
前記第1の範囲よりも低い第2の範囲に属する速度のものについて、前記第1の形状及び第2の厚さを有し、
前記第2の範囲よりも低い第3の範囲に属する速度のものについて、第2の形状を有する、
ことを理由に、前記速度に応じて変化する、実施態様7に記載のシステム。
(10) 前記マーカーは、前記LATに応じて変化する少なくとも1つの他の特性を有する、実施態様9に記載のシステム。
【0165】
(11) 前記マーカーは、前記LATに基づいて、カラースケールに従って着色される、実施態様10に記載のシステム。
(12) 心臓の解剖学的表面上の、体内プローブに属する複数の電極によって獲得されたそれぞれの信号に基づいて、前記電極のそれぞれの位置におけるそれぞれの局所興奮時間(LAT)を計算することと、
前記LATに基づいて、前記位置における電気伝播のそれぞれの方向及び速度を計算することと、
前記電極がそれぞれ前記位置にある間に、前記プローブのアイコンを表示することと、
前記電気伝播の方向にそれぞれ配向され、前記速度に応じて変化する少なくとも1つの特性を有するそれぞれのマーカーを、前記電極に対応する前記アイコンの部分に配置することと、
を含む方法。
(13) 前記LATを計算することは、前記電極のうちの各第1の電極の前記位置における前記LATを、
前記位置に対するLATの複数の候補セットを取得することであって、前記第1の電極に隣接する、前記電極のうちの各第2の電極について、
関数への入力として、(i)前記第1の電極と基準電極との間のユニポーラ電圧を表すユニポーラ電圧信号、及び(ii)前記第1の電極と前記第2の電極との間のバイポーラ電圧を表すバイポーラ電圧信号を提供することと、
前記関数からの出力として、前記候補セットのそれぞれ1つを受信することと、
によって取得することと、
前記候補セットから前記LATを選定することと、
によって計算することを含む、実施態様12に記載の方法。
(14) 前記特性は、前記マーカーが、
第1の範囲に属する速度のものについて、第1の形状及び第1の厚さを有し、
前記第1の範囲よりも低い第2の範囲に属する速度のものについて、前記第1の形状及び第2の厚さを有し、
前記第2の範囲よりも低い第3の範囲に属する速度のものについて、第2の形状を有する、
ことを理由に、前記速度に応じて変化する、実施態様12に記載の方法。
(15) 前記マーカーは、前記LATに応じて変化する少なくとも1つの他の特性を有する、実施態様14に記載の方法。
【0166】
(16) 前記マーカーは、前記LATに基づいて、カラースケールに従って着色される、実施態様15に記載の方法。
(17) プログラム命令が格納されている有形の非一時的なコンピュータ可読媒体を備えるコンピュータソフトウェア製品であって、前記命令は、プロセッサによって読み取られると、前記プロセッサに、
心臓の解剖学的表面上の、体内プローブに属する複数の電極によって獲得されたそれぞれの信号に基づいて、前記電極のそれぞれの位置におけるそれぞれの局所興奮時間(LAT)を計算させ、
前記LATに基づいて、前記位置における電気伝播のそれぞれの方向及び速度を計算させ、
前記電極がそれぞれ前記位置にある間に、前記プローブのアイコンを表示させ、
前記電気伝播の方向にそれぞれ配向され、前記速度に応じて変化する少なくとも1つの特性を有するそれぞれのマーカーを、前記電極に対応する前記アイコンの部分に配置させる、
コンピュータソフトウェア製品。
(18) 前記命令は、前記プロセッサに、前記電極のうちの各第1の電極の前記位置における前記LATを、
前記位置に対するLATの複数の候補セットを取得することであって、前記第1の電極に隣接する、前記電極のうちの各第2の電極について、
関数への入力として、(i)前記第1の電極と基準電極との間のユニポーラ電圧を表すユニポーラ電圧信号、及び(ii)前記第1の電極と前記第2の電極との間のバイポーラ電圧を表すバイポーラ電圧信号を提供することと、
前記関数からの出力として、前記候補セットのそれぞれ1つを受信することと、
によって取得することと、
前記候補セットから前記LATを選定することと、
によって計算させる、実施態様17に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(19) 前記特性は、前記マーカーが、
第1の範囲に属する速度のものについて、第1の形状及び第1の厚さを有し、
前記第1の範囲よりも低い第2の範囲に属する速度のものについて、前記第1の形状及び第2の厚さを有し、
前記第2の範囲よりも低い第3の範囲に属する速度のものについて、第2の形状を有する、
ことを理由に、前記速度に応じて変化する、実施態様17に記載のコンピュータソフトウェア製品。
(20) 前記マーカーは、前記LATに応じて変化する少なくとも1つの他の特性を有する、実施態様19に記載のコンピュータソフトウェア製品。