(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018034
(43)【公開日】2022-01-26
(54)【発明の名称】揺れ性能相対評価システム及びネットワークセンサー
(51)【国際特許分類】
G01V 1/28 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
G01V1/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】32
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020120975
(22)【出願日】2020-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】594071804
【氏名又は名称】森ビル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591143135
【氏名又は名称】株式会社小堀鐸二研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】矢部 俊男
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 芳隆
(72)【発明者】
【氏名】阿部 雅史
【テーマコード(参考)】
2G105
【Fターム(参考)】
2G105AA03
2G105BB01
2G105DD01
2G105EE02
2G105GG03
2G105MM01
(57)【要約】
【課題】多数の建物の揺れ性能を一括して評価し、その評価結果に基づいて多数の建物の揺れ性能を相対的に評価することができる揺れ性能相対評価システムを提供する。
【解決手段】加速度センサーと、加速度センサーが出力する振動波形に基づく揺れ情報を含むペイロードデータを作成するペイロードデータ作成部と、ペイロードデータ作成部で作成されたペイロードデータを送信する送信部と、ペイロードデータ作成部及び送信部への電力供給源となる電源と、を有し、各建物BL1,BL2,・・・の所定位置に設置される各ネットワークセンサー10と、各ネットワークセンサー10から送信されたペイロードデータを、受信部30を介して受信し、ペイロードデータに含まれる揺れ情報を解析して、各建物BL1,BL2,・・・の揺れ性能相対評価を行う解析部を有する揺れ性能相対評価装置20とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速度センサーと、前記加速度センサーが出力する振動波形に基づく揺れ情報を含むペイロードデータを作成するペイロードデータ作成部と、前記ペイロードデータ作成部で作成された前記ペイロードデータを送信する送信部と、前記ペイロードデータ作成部及び前記送信部への電力供給源となる電源と、を有し、揺れ性能相対評価対象となる複数の建物における各建物の所定位置に設置される各ネットワークセンサーと、
前記各ネットワークセンサーから送信された前記ペイロードデータを、受信部を介して受信し、前記ペイロードデータに含まれる前記揺れ情報を解析して、前記各建物の揺れ性能相対評価を行う解析部を有する揺れ性能相対評価装置と、
を備えることを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項2】
請求項1に記載の揺れ性能相対評価システムにおいて、
前記各ネットワークセンサーは、前記加速度センサーが出力する振動波形から地震が発生したときの初期微動を検出する初期微動検出部をさらに有し、
前記ペイロードデータ作成部は、前記初期微動検出部が前記初期微動を検出した後の前記振動波形に基づく揺れ情報を含むペイロードデータを作成することを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項3】
請求項2に記載の揺れ性能相対評価システムにおいて、
前記初期微動検出部は、前記地震が発生したときの初期微動を検出すると、前記電源からの電力を前記ペイロードデータ作成部に供給して当該ペイロードデータ作成部を起動させることを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の揺れ性能相対評価システムにおいて、
前記各ネットワークセンサーは、GNSS衛星からのGNSS信号を受信するGNSS受信機をさらに有し、
前記ペイロードデータ作成部は、前記揺れ情報に加えて、前記GNSS受信機から得られる時刻情報を含んだペイロードデータを作成することを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の揺れ性能相対評価システムにおいて、
前記受信部は、各ネットワークセンサーと前記揺れ性能相対評価装置との間、又は、前記揺れ性能相対評価装置内に設置されていることを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の揺れ性能相対評価システムにおいて、
前記各ネットワークセンサーは、前記各建物について、建物の頂部、建物の基部、及び、建物の周辺の土地のうち少なくとも1箇所に設置されていることを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項7】
請求項6に記載の建物の揺れ性能評価システムにおいて、
前記送信部と前記受信部との間の通信手段として、LPWA(Low Power Wide Area-network)を用い、
前記ペイロードデータ作成部は、前記揺れ情報として、
前記振動波形を所定のサンプリング周期のクロック信号に同期してA/D変換して、前記クロック信号ごとに所定のビット数で表される振動波形成分情報を求め、当該振動波形成分情報から前記振動波形の特徴を抽出して当該振動波形の特徴を表す揺れ指標を求めるとともに、当該揺れ指標を含んだペイロードデータを作成する機能を有し、
前記解析部は、前記ペイロードデータに含まれている前記揺れ指標を解析して前記各建物の揺れ性能相対評価を行う機能を有することを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項8】
請求項6に記載の揺れ性能評価システムにおいて、
前記送信部と前記受信部との間の通信手段として、電話回線又はインターネットを用い、
前記ペイロードデータ作成部は、前記揺れ情報として、
前記振動波形を所定のサンプリング周期のクロック信号に同期してA/D変換して、前記クロック信号ごとに所定のビット数で表される振動波形成分情報を求め、当該振動波形成分情報を含んだペイロードデータを作成する機能を有し、
前記解析部は、前記ペイロードデータに含まれている前記振動波形成分情報から前記振動波形の特徴を抽出して当該振動波形の特徴を表す揺れ指標を求めて、当該揺れ指標を解析して前記各建物の揺れ性能相対評価を行う機能を有することを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の揺れ性能相対評価システムにおいて、
前記揺れ指標は、震度、最大加速度、最大速度、最大変位及び揺れの継続時間の少なくとも1つを含むことを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項10】
請求項7~9のいずれかに記載の揺れ性能相対評価システムにおいて、
前記揺れ性能相対評価装置は、気象庁からの地震に関する情報を取得する地震情報取得部をさらに有し、前記解析部が前記揺れ性能相対評価を行う際には、気象庁から発せられる震源を含む地震に関する情報を用いることを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項11】
請求項10に記載の揺れ性能相対評価システムにおいて、
前記解析部は、気象庁からの地震に関する情報を受信していない期間は、前記揺れ性能相対評価を行わないことを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の揺れ性能相対評価システムにおいて、
前記解析部は、前記揺れ指標と、前記地震に関する情報に基づいて、前記複数の建物での「平均的な揺れの傾向線」を求め、当該「平均的な揺れの傾向線」と前記各建物に対応して得られた前記揺れ指標とから前記揺れ性能相対評価を行うことを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項13】
請求項12に記載の揺れ性能相対評価システムにおいて、
前記揺れ性能相対評価には、
「建物の周辺の土地と建物の総合的な揺れ性能相対評価」、「建物の周辺の土地の揺れ性能相対評価」及び「建物の揺れ性能相対評価」のうちの少なくとも1つが含まれていることを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項14】
請求項13に記載の揺れ性能相対評価システムにおいて、
前記「建物の周辺の土地と建物の総合的な揺れ性能相対評価」を行う際には、
前記各建物の頂部に設置されている各ネットワークセンサーから送信されてくるペイロードデータに含まれている各建物に対応した揺れ指標を、各建物に対応した「頂部揺れ指標」としたとき、
当該各建物に対応した「頂部揺れ指標」に基づいて、前記地震に関する情報に含まれる震源からの距離に応じた前記複数の建物での「平均的な揺れの傾向線」を求め、当該「平均的な揺れの傾向線」と前記各建物に対応した「頂部揺れ指標」とから前記「建物の周辺の土地と建物の総合的な揺れ性能相対評価」を行うことを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項15】
請求項13に記載の揺れ性能相対評価システムにおいて、
前記「建物の周辺の土地の揺れ性能相対評価」を行う際には、
前記各建物の周辺の土地に設置されている各ネットワークセンサーから送信されてくるペイロードデータ含まれている各建物の周辺の土地に対応した揺れ指標を、各建物の周辺の土地に対応した「土地揺れ指標」としたとき、
当該各建物の周辺の土地に対応した「土地揺れ指標」に基づいて、前記地震に関する情報に含まれる震源からの距離に応じた前記複数の建物での「平均的な揺れの傾向線」を求め、当該「平均的な揺れの傾向線」と前記各建物の周辺の土地に対応した「土地揺れ指標」とから前記「建物の周辺の土地の揺れ性能相対評価」を行うことを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項16】
請求項13に記載の揺れ性能相対評価システムにおいて、
前記「建物の揺れ性能相対評価」を行う際には、
前記各建物の頂部に設置されているネットワークセンサーから送信されてくるペイロードデータに含まれている各建物に対応した揺れ指標を、各建物に対応した「頂部揺れ指標」とし、前記各建物の基部に設置されているネットワークセンサーから送信されてくるペイロードデータに含まれている各建物に対応した揺れ指標を、各建物に対応した「基部揺れ指標」としたとき、
当該各建物に対応した「頂部揺れ指標」と、前記各建物に対応した「基部揺れ指標」との比を各建物における「揺れ指標比」として求め、当該各建物における「揺れ指標比」に基づいて前記複数の建物での「平均的な揺れの傾向線」を求め、当該「平均的な揺れの傾向線」と前記各建物における前記「揺れ指標比」とから前記「建物の揺れ性能相対評価」を行うことを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項17】
請求項12~16のいずれかに記載の揺れ性能相対評価システムにおいて、
前記解析部が前記揺れ性能相対評価を行う際には、前記「平均的な揺れの傾向線」からの乖離の度合いに基づいた偏差値を前記各建物に対応して求め、当該偏差値によって前記揺れ性能相対評価を行うことを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項18】
請求項12~17のいずれかに記載の揺れ性能相対評価システムにおいて、
前記解析部が行う前記揺れ性能相対評価には、前記各建物に対応して行われた揺れ性能相対評価に基づいて、前記複数の建物の中での前記各建物の揺れ性能相対評価の順位付けを行う処理が含まれていることを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項19】
請求項1~18のいずれかに記載の揺れ性能相対評価システムにおいて、
揺れ性能相対評価装置は、前記解析部によって解析された前記揺れ性能相対評価を蓄積する蓄積部をさらに有し、
前記解析部は、前記蓄積部に蓄積された前記揺れ性能相対評価を用いて、前記各建物の経年変化を求めることを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項20】
請求項1~19のいずれかに記載の揺れ性能相対評価システムにおいて、
前記各ネットワークセンサーは、当該各ネットワークセンサーの現在の状態を示すアライブ情報を作成するための割込み信号を発生する割込み信号発生部をさらに有し、
当該割込み信号発生部は、前記割込み信号を所定時間ごとに前記ペイロードデータ作成部に与えることを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項21】
請求項20に記載の揺れ性能相対評価システムにおいて、
前記ペイロードデータ作成部は、前記割込み信号が与えられるごとに、前記ネットワークセンサーの状態を表す情報を含むアライブ情報を作成することを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項22】
請求項20又は21に記載の揺れ性能相対評価システムにおいて、
前記アライブ情報は、128ビット以内のペイロードデータとして構成されていることを特徴とする揺れ性能相対評価システム。
【請求項23】
加速度センサーと、
前記加速度センサーが出力する振動波形に基づく揺れ情報を含むペイロードデータを作成するペイロードデータ作成部と、
前記ペイロードデータ作成部で作成された前記ペイロードデータを送信する送信部と、前記ペイロードデータ作成部及び前記送信部への電力供給源となる電源と、
を有することを特徴とするネットワークセンサー。
【請求項24】
請求項23に記載のネットワークセンサーにおいて、
前記加速度センサーが出力する振動波形から地震が発生したときの初期微動を検出する初期微動検出部をさらに有し、
前記ペイロードデータ作成部は、前記初期微動検出部が前記初期微動を検出した後の前記振動波形に基づく揺れ情報を含むペイロードデータを作成することを特徴とするネットワークセンサー。
【請求項25】
請求項24に記載のネットワークセンサーにおいて、
前記初期微動検出部は、前記地震が発生したときの初期微動を検出すると、前記電源からの電力を前記ペイロードデータ作成部に供給して当該ペイロードデータ作成部を起動させることを特徴とするネットワークセンサー。
【請求項26】
請求項23~25のいずれかに記載のネットワークセンサーにおいて、
GNSS衛星からのGNSS信号を受信するGNSS受信機をさらに有し、
前記ペイロードデータ作成部は、前記揺れ情報に加えて、前記GNSS受信機から得られる時刻情報を含んだペイロードデータを作成することを特徴とするネットワークセンサー。
【請求項27】
請求項23~26のいずれかに記載のネットワークセンサーにおいて、
前記ペイロードデータ作成部は、前記揺れ情報として、
前記振動波形を所定のサンプリング周期のクロック信号に同期してA/D変換して、前記クロック信号ごとに所定のビット数で表される振動波形成分情報を求め、当該振動波形成分情報から前記振動波形の特徴を抽出して当該振動波形の特徴を表す揺れ指標を求めるとともに、当該揺れ指標を含んだペイロードデータを作成する機能を有することを特徴とするネットワークセンサー。
【請求項28】
請求項23~27のいずれかに記載のネットワークセンサーにおいて、
前記ネットワークセンサーの現在の状況を示すアライブ情報を作成するための割込み信号を発生する割込み信号発生部をさらに有し、
当該割込み信号発生部は、前記割込み信号を所定時間ごとに前記ペイロードデータ作成部に与えることを特徴とするネットワークセンサー。
【請求項29】
請求項28に記載のネットワークセンサーにおいて、
前記ペイロードデータ作成部は、前記割込み信号が与えられるごとに、当該ネットワークセンサーの状態を表す情報を含むアライブ情報を作成することを特徴とするネットワークセンサー。
【請求項30】
請求項28又は29に記載のネットワークセンサーにおいて、
前記アライブ情報は、128ビット以内のペイロードデータとして構成されていることを特徴とするネットワークセンサー。
【請求項31】
請求項23~30のいずれかに記載のネットワークセンサーにおいて、
前記ネットワークセンサーは、請求項1~22のいずれかに記載の揺れ性能相対評価システムに用いるネットワークセンサーであることを特徴とするネットワークセンサー。
【請求項32】
加速度センサーと、
前記加速度センサーが出力する振動波形に基づく揺れ情報を含むペイロードデータを作成するペイロードデータ作成部と、
前記ペイロードデータ作成部で作成された前記ペイロードデータを送信する送信部と、
前記加速度センサーが出力する振動波形から地震が発生したときの初期微動を検出する初期微動検出部と、
前記ネットワークセンサーの現在の状況を示すアライブ情報を作成するための割込み信号を所定時間ごとに発生する割込み信号発生部とを有し、
前記ペイロードデータ作成部は、
前記初期微動検出部が前記初期微動を検出したとき、前記揺れ情報を含むペイロードデータを作成し、
前記割込み信号発生部が割込み信号を発生したとき、前記アライブ情報をアライブペイロードデータとして作成することを特徴とするネットワークセンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺れ性能相対評価システム及びネットワークセンサーに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の揺れ性能を評価する揺れ性能評価システムは種々提案されている(例えば、特許文献1参照。)。なお、特許文献1においては、建物健全度評価システムとしているため、建物健全度評価システム900として説明する。ここで、「揺れ性能」というのは、例えば、建物の場合には建物の揺れやすさ又は揺れにくさに関する性能を意味するものとする。
【0003】
図14は、特許文献1に記載されている建物健全度評価システム900を説明するために示す図である。特許文献1に記載されている建物健全度評価システム900は、
図14に示すように、建物BLの各層(最上層、中間層、最下層)に設けられた加速度計測部(加速度センサーS1,S2,S3)、判定処理部920、データベース930、情報通知部940を有する。判定処理部920は、固有周期検出部921、応答度導出部922、変形度導出部923、塑性化度導出部924、情報通知制御部925、健全度評価部926を有している。
【0004】
このように構成されている建物健全度評価システム900は、建物BLに設けられた加速度計測部(加速度センサーS1,S2,S3)により計測された計測データに基づいて応答度導出部922により導出された入力地震動に対する応答度と、変形度導出部923により導出された変形度と、塑性化度導出部924により導出された塑性化度とに基づいて、建物BLの健全度を判定する。この判定結果は、情報通知制御部925によって、情報通知部940に送信され、健全度評価部926により判定された判定結果が図示されていない表示画面に表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されている建物健全度評価システム900は、ある1つの建物についての揺れ性能(建物健全度)を評価して、その評価結果を表示するシステムである。このため、多数のビルディングなどの建物を一括して揺れ性能評価(建物健全度評価)し、その評価結果に基づいて多数の建物の揺れ性能(建物健全度)を相対的に評価することはできない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、多数の建物の揺れ性能を一括して評価し、その評価結果に基づいて多数の建物の揺れ性能を相対的に評価することができる揺れ性能相対評価システムを提供することを目的とする。また、そのような揺れ性能相対評価システムのネットワークセンサーとして好適に用いることができるネットワークセンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明の揺れ性能相対評価システムは、加速度センサーと、前記加速度センサーが出力する振動波形に基づく揺れ情報を含むペイロードデータを作成するペイロードデータ作成部と、前記ペイロードデータ作成部で作成された前記ペイロードデータを送信する送信部と、前記ペイロードデータ作成部及び前記送信部への電力供給源となる電源と、を有し、揺れ性能相対評価対象となる複数の建物における各建物の所定位置に設置される各ネットワークセンサーと、前記各ネットワークセンサーから送信された前記ペイロードデータを、受信部を介して受信し、前記ペイロードデータに含まれる前記揺れ情報を解析して、前記各建物の揺れ性能相対評価を行う解析部を有する揺れ性能相対評価装置と、を備えることを特徴とする。
【0009】
[2]本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、前記各ネットワークセンサーは、前記加速度センサーが出力する振動波形から地震が発生したときの初期微動を検出する初期微動検出部をさらに有し、前記ペイロードデータ作成部は、前記初期微動検出部が前記初期微動を検出した後の前記振動波形に基づく揺れ情報を含むペイロードデータを作成することが好ましい。
【0010】
[3]本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、前記初期微動検出部は、前記地震が発生したときの初期微動を検出すると、前記電源からの電力を前記ペイロードデータ作成部に供給して当該ペイロードデータ作成部を起動させることが好ましい。
【0011】
[4]本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、前記各ネットワークセンサーは、GNSS衛星からのGNSS信号を受信するGNSS受信機をさらに有し、前記ペイロードデータ作成部は、前記揺れ情報に加えて、前記GNSS受信機から得られる時刻情報を含んだペイロードデータを作成することが好ましい。
【0012】
[5]本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、前記受信部は、各ネットワークセンサーと前記揺れ性能相対評価装置との間、又は、前記揺れ性能相対評価装置内に設置されていることが好ましい。
【0013】
[6]本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、前記各ネットワークセンサーは、前記各建物について、建物の頂部、建物の基部、及び、建物の周辺の土地のうち少なくとも1箇所に設置されていることが好ましい。
【0014】
[7]本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、前記送信部と前記受信部との間の通信手段として、LPWA(Low Power Wide Area-network)を用い、前記ペイロードデータ作成部は、前記揺れ情報として、前記振動波形を所定のサンプリング周期のクロック信号に同期してA/D変換して、前記クロック信号ごとに所定のビット数で表される振動波形成分情報を求め、当該振動波形成分情報から前記振動波形の特徴を抽出して当該振動波形の特徴を表す揺れ指標を求めるとともに、当該揺れ指標を含んだペイロードデータを作成する機能を有し、前記解析部は、前記ペイロードデータに含まれている前記揺れ指標を解析して前記各建物の揺れ性能相対評価を行う機能を有することが好ましい。
【0015】
[8]本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、前記送信部と前記受信部との間の通信手段として、電話回線又はインターネットを用い、前記ペイロードデータ作成部は、前記揺れ情報として、前記振動波形を所定のサンプリング周期のクロック信号に同期してA/D変換して、前記クロック信号ごとに所定のビット数で表される振動波形成分情報を求め、当該振動波形成分情報を含んだペイロードデータを作成する機能を有し、
前記解析部は、前記ペイロードデータに含まれている前記振動波形成分情報から前記振動波形の特徴を抽出して当該振動波形の特徴を表す揺れ指標を求めて、当該揺れ指標を解析して前記各建物の揺れ性能相対評価を行う機能を有することが好ましい。
【0016】
[9]本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、前記揺れ指標は、震度、最大加速度、最大速度、最大変位及び揺れの継続時間の少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0017】
[10]本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、前記揺れ性能相対評価装置は、気象庁からの地震に関する情報を取得する地震情報取得部をさらに有し、前記解析部が前記揺れ性能相対評価を行う際には、気象庁から発せられる震源を含む地震に関する情報を用いることが好ましい。
【0018】
[11]本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、前記解析部は、気象庁からの地震に関する情報を受信していない期間は、前記揺れ性能相対評価を行わないことが好ましい。
【0019】
[12]本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、前記解析部は、前記揺れ指標と、前記地震に関する情報に基づいて、前記複数の建物での「平均的な揺れの傾向線」を求め、当該「平均的な揺れの傾向線」と前記各建物に対応して得られた前記揺れ指標とから前記揺れ性能相対評価を行うことが好ましい。
【0020】
[13]本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、前記揺れ性能相対評価には、「建物の周辺の土地と建物の総合的な揺れ性能相対評価」、「建物の周辺の土地の揺れ性能相対評価」及び「建物の揺れ性能相対評価」のうちの少なくとも1つが含まれていることが好ましい。
【0021】
[14]本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、前記「建物の周辺の土地と建物の総合的な揺れ性能相対評価」を行う際には、前記各建物の頂部に設置されている各ネットワークセンサーから送信されてくるペイロードデータに含まれている各建物に対応した揺れ指標を、各建物に対応した「頂部揺れ指標」としたとき、当該各建物に対応した「頂部揺れ指標」に基づいて、前記地震に関する情報に含まれる震源からの距離に応じた前記複数の建物での「平均的な揺れの傾向線」を求め、当該「平均的な揺れの傾向線」と前記各建物に対応した「頂部揺れ指標」とから前記「建物の周辺の土地と建物の総合的な揺れ性能相対評価」を行うことが好ましい。
【0022】
[15]本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、前記「建物の周辺の土地の揺れ性能相対評価」を行う際には、前記各建物の周辺の土地に設置されている各ネットワークセンサーから送信されてくるペイロードデータ含まれている各建物の周辺の土地に対応した揺れ指標を、各建物の周辺の土地に対応した「土地揺れ指標」としたとき、当該各建物の周辺の土地に対応した「土地揺れ指標」に基づいて、前記地震に関する情報に含まれる震源からの距離に応じた前記複数の建物での「平均的な揺れの傾向線」を求め、当該「平均的な揺れの傾向線」と前記各建物の周辺の土地に対応した「土地揺れ指標」とから前記「建物の周辺の土地の揺れ性能相対評価」を行うことが好ましい。
【0023】
[16]本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、前記「建物の揺れ性能相対評価」を行う際には、前記各建物の頂部に設置されているネットワークセンサーから送信されてくるペイロードデータに含まれている各建物に対応した揺れ指標を、各建物に対応した「頂部揺れ指標」とし、前記各建物の基部に設置されているネットワークセンサーから送信されてくるペイロードデータに含まれている各建物に対応した揺れ指標を、各建物に対応した「基部揺れ指標」としたとき、当該各建物に対応した「頂部揺れ指標」と、前記各建物に対応した「基部揺れ指標」との比を各建物における「揺れ指標比」として求め、当該各建物における「揺れ指標比」に基づいて前記複数の建物での「平均的な揺れの傾向線」を求め、当該「平均的な揺れの傾向線」と前記各建物における前記「揺れ指標比」とから前記「建物の揺れ性能相対評価」を行うことが好ましい。
【0024】
[17]本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、前記解析部が前記揺れ性能相対評価を行う際には、前記「平均的な揺れの傾向線」からの乖離の度合いに基づいた偏差値を前記各建物に対応して求め、当該偏差値によって前記揺れ性能相対評価を行うことが好ましい。
【0025】
[18]本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、前記解析部が行う前記揺れ性能相対評価には、前記各建物に対応して行われた揺れ性能相対評価に基づいて、前記複数の建物の中での前記各建物の揺れ性能相対評価の順位付けを行う処理が含まれていることが好ましい。
【0026】
[19]本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、揺れ性能相対評価装置は、前記解析部によって解析された前記揺れ性能相対評価を蓄積する蓄積部をさらに有し、前記解析部は、前記蓄積部に蓄積された前記揺れ性能相対評価を用いて、前記各建物の経年変化を求めることが好ましい。
【0027】
[20]本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、前記各ネットワークセンサーは、当該各ネットワークセンサーの現在の状態を示すアライブ情報を作成するための割込み信号を発生する割込み信号発生部をさらに有し、当該割込み信号発生部は、前記割込み信号を所定時間ごとに前記ペイロードデータ作成部に与えることが好ましい。
【0028】
[21]本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、前記ペイロードデータ作成部は、前記割込み信号が与えられるごとに、前記ネットワークセンサーの状態を表す情報を含むアライブ情報を作成することが好ましい。
【0029】
[22]本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、前記アライブ情報は、128ビット以内のペイロードデータとして構成されていることが好ましい。
【0030】
[23]本発明のネットワークセンサーは、加速度センサーと、前記加速度センサーが出力する振動波形に基づく揺れ情報を含むペイロードデータを作成するペイロードデータ作成部と、前記ペイロードデータ作成部で作成された前記ペイロードデータを送信する送信部と、前記ペイロードデータ作成部及び前記送信部への電力供給源となる電源と、を有することを特徴とする。
【0031】
[24]本発明のネットワークセンサーにおいては、前記加速度センサーが出力する振動波形から地震が発生したときの初期微動を検出する初期微動検出部をさらに有し、前記ペイロードデータ作成部は、前記初期微動検出部が前記初期微動を検出した後の前記振動波形に基づく揺れ情報を含むペイロードデータを作成することが好ましい。
【0032】
[25]本発明のネットワークセンサーにおいては、前記初期微動検出部は、前記地震が発生したときの初期微動を検出すると、前記電源からの電力を前記ペイロードデータ作成部に供給して当該ペイロードデータ作成部を起動させることが好ましい。
【0033】
[26]本発明のネットワークセンサーにおいては、GNSS衛星からのGNSS信号を受信するGNSS受信機をさらに有し、前記ペイロードデータ作成部は、前記揺れ情報に加えて、前記GNSS受信機から得られる時刻情報を含んだペイロードデータを作成することが好ましい。
【0034】
[27]本発明のネットワークセンサーにおいては、前記ペイロードデータ作成部は、前記揺れ情報として、前記振動波形を所定のサンプリング周期のクロック信号に同期してA/D変換して、前記クロック信号ごとに所定のビット数で表される振動波形成分情報を求め、当該振動波形成分情報から前記振動波形の特徴を抽出して当該振動波形の特徴を表す揺れ指標を求めるとともに、当該揺れ指標を含んだペイロードデータを作成する機能を有することが好ましい。
【0035】
[28]本発明のネットワークセンサーにおいては、前記ネットワークセンサーの現在の状況を示すアライブ情報を作成するための割込み信号を発生する割込み信号発生部をさらに有し、当該割込み信号発生部は、前記割込み信号を所定時間ごとに前記ペイロードデータ作成部に与えることが好ましい。
【0036】
[29]本発明のネットワークセンサーにおいては、前記ペイロードデータ作成部は、前記割込み信号が与えられるごとに、当該ネットワークセンサーの識別情報、当該ネットワークセンサーの状態を表す情報を含むアライブ情報を作成することが好ましい。
【0037】
[30]本発明のネットワークセンサーにおいては、前記アライブ情報は、128ビット以内のペイロードデータとして構成されていることが好ましい。
【0038】
[31]本発明のネットワークセンサーにおいては、前記ネットワークセンサーは、本発明の揺れ性能相対評価システムに用いるネットワークセンサーであることが好ましい。
【0039】
[32]本発明のネットワークセンサーは、加速度センサーと、前記加速度センサーが出力する振動波形に基づく揺れ情報を含むペイロードデータを作成するペイロードデータ作成部と、前記ペイロードデータ作成部で作成された前記ペイロードデータを送信する送信部と、前記加速度センサーが出力する振動波形から地震が発生したときの初期微動を検出する初期微動検出部と、前記ネットワークセンサーの現在の状況を示すアライブ情報を作成するための割込み信号を所定時間ごとに発生する割込み信号発生部とを有し、前記ペイロードデータ作成部は、前記初期微動検出部が前記初期微動を検出したとき、前記揺れ情報を含むペイロードデータを作成し、前記割込み信号発生部が割込み信号を発生したとき、前記アライブ情報をアライブペイロードデータとして作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0040】
本発明の揺れ性能相対評価システムにおいては、各建物に設置されているネットワークセンサー側では、加速度センサーが出力する振動波形に基づく揺れ情報を含むペイロードデータを作成して、当該ペイロードデータを送信し、揺れ性能相対評価装置側では、各建物に設置されている各ネットワークセンサーから送信されてきたペイロードデータを受信し、受信したペイロードデータに含まれる揺れ情報を解析して、各建物の揺れ性能相対評価を行うようにしている。これにより、本発明の揺れ性能相対評価システムによれば、多数の建物を一括して揺れ性能評価を行って、多数の建物の揺れ性能を相対的に評価することができる。
【0041】
また、本発明のネットワークセンサー(上記[23]~[31]のいずれかに記載のネットワークセンサー)においては、当該ネットワークセンサーを揺れ性能相対評価対象となる各建物側に設置することによって、加速度センサーが出力する振動波形に基づく揺れ情報を含むペイロードデータを作成して、当該ペイロードデータを送信するようにしている。これにより、本発明のネットワークセンサーによれば、揺れ性能相対評価装置側での揺れ性能評価に必要な情報を送信可能となり、本発明の揺れ性能相対評価システムのネットワークセンサーとして好適に用いることが可能となる。
【0042】
また、本発明のネットワークセンサー(上記[32]に記載のネットワークセンサー)によれば、初期微動検出部が初期微動を検出したとき、揺れ情報を含むペイロードデータを作成することから、地震があったときには揺れ情報を確実にかつ低消費電力で作成・送信可能となり、また、割込み信号発生部が割込み信号を所定時間ごとに発生したとき、アライブ情報をアライブペイロードデータとして作成することから、ネットワークセンサーを用いるシステム(例えば本発明の揺れ性能相対評価システム。)の安定性・信頼性を高めることが可能となる。
【0043】
すなわち、本発明のネットワークセンサー(上記[32]に記載のネットワークセンサー)において、地震が長期間発生しないときは初期微動が検出されないことから、長期間にわたってネットワークセンサーからペイロードデータが送信されないことになる。一方、例えばネットワークセンサーで電池切れが起こったときにも長期間にわたってネットワークセンサーからペイロードデータが送信されないことになり、両者を区別することができないといった事態が発生する。しかしながら、本発明のネットワークセンサー(上記[32]に記載のネットワークセンサー)によれば、所定時間ごとにアクティブペイロードデータが作成され送信されることから、上記両者を区別できるようになり、上記事態の発生を防止することができる。この観点からいえば、本発明のネットワークセンサー(上記[32]に記載のネットワークセンサー)は、電源としてバッテリーを備えるネットワークセンサーである場合に特に好適なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】実施形態1に係る揺れ性能相対評価システム1を模式的に示す図である。
【
図2】実施形態1に係るネットワークセンサー10の構成を示す図である。
【
図3】ネットワークセンサー10の各部の動作を説明するためのタイムチャートである。
【
図4】実施形態1に係る揺れ性能相対評価システム1のペイロードデータ作成部140において作成されるペイロードデータPD1の一例を模式的に示す図である。
【
図5】ネットワークセンサー10の動作アルゴリズムを示すフローチャートである。
【
図6】アライブペイロードデータAPDの一例を模式的に示す図である。
【
図7】地震が発生した場合に解析部としてのサーバー210が行う揺れ性能相対評価について説明するためのフローチャートである。
【
図8】「土地と建物の総合評価」を説明するための図である。
【
図10】「建物の評価」を説明するための図である。
【
図11】「土地+建物の総合評価」、「建物の評価」及び「土地の評価」を行う際の揺れ指標(例えば最大速度)の取得について説明するために示す図である。
【
図12】実施形態2に係る揺れ性能相対評価システム2を模式的に示す図である。
【
図13】実施形態2に係る揺れ性能相対評価システム2のネットワークセンサー10におけるペイロードデータ作成部140において作成されるペイロードデータPD2の一例を示す図である。
【
図14】特許文献1に記載されている建物健全度評価システム900を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の実施形態について説明する。
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る揺れ性能相対評価システム1を模式的に示す図である。実施形態1に係る揺れ性能相対評価システム1は、
図1に示すように、建物BL1,BL2,・・・の所定位置に設置されているネットワークセンサーNS1、NS2,・・・と、ネットワークセンサーNS1、NS2,・・・から送信された各建物の「揺れ情報」を、受信部30を介して受信し、受信した揺れ情報を解析して建物BL1,BL2,・・・の揺れ性能相対評価を行う解析部(サーバー)110を有する揺れ性能相対評価装置20とを備える。なお、ネットワークセンサーNS1、NS2,・・・及び揺れ性能相対評価装置20については詳細を後述する。
【0046】
なお、
図1においては、建物BL1,BL2,・・・は2棟のみが示されているが、実施形態1に係る揺れ性能相対評価システム1においては、数十、数百といった多数の建物が存在する場合を想定している。また、「揺れ情報」というのは、実施形態1に係る揺れ性能相対評価システム1においては、地震による振動波形の特徴を表す「揺れ指標」を指しており、当該「揺れ指標」につては詳細を後述する。
【0047】
ネットワークセンサーNS1、NS2,・・・は、実施形態1に係る揺れ性能相対評価システム1においては、建物BL1,BL2,・・・において、建物BL1,BL2,・・・の頂部、建物BL1,BL2,・・・の基部、建物BL1,BL2,・・・の周辺の土地(地表面)の3箇所に設置されている。ここで、建物BL1,BL2,・・・の頂部に設置されているネットワークセンサーを頂部ネットワークセンサーNS1a,NS2a,・・・とし、建物BL1,BL2,・・・の基部に設置されているネットワークセンサーを基部ネットワークセンサーNS1b,NS2b,・・・とし、建物の周辺の土地(地表面)に設置されているネットワークセンサーを地表面ネットワークセンサーNS1c,NS2c,・・・として説明する。なお、「建物の周辺の土地」というのは、各建物の所定位置に含まれるものとする。
【0048】
なお、建物BL1,BL2,・・・において3箇所ずつ設置されるネットワークセンサーNS1a,NS2a,・・・、NS1b,NS2b,・・・、NS1c,NS2c,・・・は、基本的には同じ構成となっている。このため、以下の説明において、建物BL1,BL2,・・・や当該建物BL1,BL2,・・・における設置個所を特定することなく、全体のネットワークセンサーを指す場合には、この明細書においては便宜的に「ネットワークセンサー10」として説明する。また、建物BL1,BL2,・・・を「各建物」と略記して説明する場合もある。
【0049】
図2は、実施形態1に係る揺れ性能相対評価システム1に用いられるネットワークセンサー10の構成を示す図である。ネットワークセンサー10は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)半導体で構成される加速度センサー110と、
図1に示すGNSS(Global Navigation Satellite System)衛星40からの電波を受信するGNSS受信機120と、加速度センサー110が出力する振動波形から地震が発生したときの初期微動を検出する初期微動検出部130と、初期微動検出部130が初期微動を検出した後の振動波形に基づく揺れ情報及びGNSS受信機120から得られる時刻情報を含むペイロードデータを作成するペイロードデータ作成部140と、当該ペイロードデータ作成部140で作成されたペイロードデータを送信する送信部150と、加速度センサー110、GNSS受信機120、初期微動検出部130、ペイロードデータ作成部140及び送信部150への電力供給源となる電源としてのバッテリー160と、を有している。
【0050】
ここで、GNSSは、例えばカーナビで良く使われている技術であり、地球の周囲を飛び回っている複数の人工衛星からの電波を受信することにより、受信点の位置情報を知る技術である。なお、一般には「GPS」という言葉を使われる場合も多く、本発明ではGNSSをGPSと同じ意味で用いる。
【0051】
加速度センサー110は、上述したようにMEMS半導体で構成される加速度センサーが用いられており、ネットワークセンサー10が設置されている場所において、微弱な加速度の変化を3軸(Ax,Ay,Az)の振動波形として、高感度かつ低ノイズで検出可能である。なお、地震による加速度は、3軸(Ax,Ay,Az)で検出されるが、
図2においては図が煩雑になることを防ぐために、3軸(Ax,Ay,Az)を1本の線で示している。
【0052】
GNSS受信機120は、地球を周回する複数のGNSS衛星40(
図1参照。)からの電波を受信し、ネットワークセンサー10が設置されている場所の緯度情報及び経度情報を算出して、ペイロードデータ作成部140のCPU145に送る。また、GNSS受信機120は、1秒毎のパルス(1PPS)及び協定世界時(UTC:Coordinated Universal Time)をCPU145に供給する。GNSS受信機120から供給される時刻情報は誤差1μ秒以下の精度である。
【0053】
初期微動検出部130は、ローパスフィルター(LPF)131、エンベロープ検出回路(ENV)132、コンパレーター133、ウエイクアップ回路(WakeUp)134を有し、地震が発生したときの初期微動を検出すると、バッテリー160からの電力をペイロードデータ作成部140に供給して当該ペイロードデータ作成部140を起動させる。ここで、ローパスフィルター131は、加速度センサー110が捕えた初期微動の加速度信号を通過させてノイズを取り除くことにより、さらに低ノイズ化する機能を有する。また、エンベロープ検出回路(ENV)132、コンパレーター133、ウエイクアップ回路(WakeUp)134などについては後述する。
【0054】
ペイロードデータ作成部140は、A/D変換器141、クリスタル発振器142、分周器143、カウンター144、CPU145、不揮発メモリ146を有している。このペイロードデータ作成部140の動作などについては後述する。
【0055】
バッテリー160は、前述したように、加速度センサー110、GNSS受信機120、初期微動検出部130、ペイロードデータ作成部140及び送信部150への電力供給源となるものである。なお、加速度センサー110及び初期微動検出部130には、常時、電力が供給されている。このため、初期微動検出部130は、常時、加速度センサー110からの出力を取得可能な状態となっている。このように、加速度センサー110及び初期微動検出部130には、常時、電力が供給されているが、MEMS半導体で構成される加速度センサー110は、安価、小型、軽量、低消費電力であり、また、初期微動検出部130は、低消費電力かつ高感度で地震による初期微動を検出し、初期微動を検出しない場合は、そのまま低消費電力の状態が維持される。このため、加速度センサー110及び初期微動検出部130に対して、常時、電力を供給していても、低消費電力の状態が維持される。
【0056】
また、ネットワークセンサー10は、当該ネットワークセンサー10のアライブ情報(ネットワークセンサー10の現在の状態を示す情報)を作成するための割込み信号を発生する割込み信号発生部170をさらに有している。当該割込み信号発生部170は、極めて消費電力の少ない極低消費電力型のタイマー171と、タイマー171を駆動する電池(例えばコイン電池)172を有しており、地震発生の有無に関係なく、例えば、数年間といった長期間に渡って所定時間ごとに割込み信号をペイロードデータ作成部140に与え、当該割込み信号によってCPU145を起動させる。これによって、CPU145は、長期間に渡って、所定時間ごと(例えば6時間ごと)にアライブ情報を作成する。このアライブ情報については後述する。
【0057】
図3は、ネットワークセンサー10の各部の動作を説明するためのタイムチャートである。初期微動検出部130のエンベロープ検出回路132は、加速度センサー110から出力される3軸の出力(振動波形)を加えて一つの振動波形として(
図3(A)参照。)、下記(1)式によりエンベロープを検出してエンベロープ波形を出力する(
図3(B)参照。)。なお、
図3(A)及び
図3(B)はそれぞれぞれの波形を模式的に示している。
【0058】
Env(n)=Sqrt{Ax(n)・Ax(n)+Ay(n)・Ay(n)+Az(n)・Az(n)} ・・・(1)
なお、(1)式において、nはサンプル番号、Sqrt{}は平方根をあらわす。
【0059】
初期微動検出部130のコンパレーター133は、エンベロープ検出回路132から出力されたエンベロープ波形が所定のレベルTHを超えたことを検出すると、論理‘1’を出力する(
図3(C)参照。)。
【0060】
初期微動検出部130のウエイクアップ回路134は、コンパレーター133が論理‘1’を出力した場合は、初期微動(P波)を検出した可能性があることから、バッテリー160からの電力をペイロードデータ作成部140に供給(PowerON)して(
図3(D)参照。)、ペイロードデータ作成部140を起動させる。
【0061】
具体的には、初期微動検出部130は、バッテリー160からの電力をペイロードデータ作成部140のCPU145に与え、低消費電力のスリープ状態にあったCPU145を起動させる。CPU145が起動することによって、ペイロードデータ作成部140のCPU145以外の各構成要素が起動するとともに、GNSS受信機120及び送信部150も起動する。これにより、GNSS受信機120、ペイロードデータ作成部140及び送信部150が動作可能状態となる。ウエイクアップ回路134は、CPU145からリセットパルス(
図3(I)参照。)が発せられるまでの間、「PowerON」の状態に保持する。
【0062】
なお、GNSS受信機120及び送信部150は、常時、バッテリー160からの電力の供給を受けていてもよく、これらGNSS受信機120及び送信部150は、常時、動作可能状態となっていてもよい。
【0063】
続いて、ペイロードデータ作成部140の動作について説明する。クリスタル発振器(XO)142は、水晶振動子による発振器であって、実施形態1に係る揺れ性能相対評価システム1においては、10MHzの発振を行う。分周器143は、クリスタル発振器142の周波数を1万分の1に分周することにより、1KHzのクロック信号としてA/D変換器141及びカウンター(Count)144に供給する。
【0064】
カウンター144は、ウエイクアップ回路134によって「PowerON」の状態(
図3(D)参照。)、すなわち、初期微動(P波)が検出された後(コンパレーター133の出力が‘1’となった後)において、分周器143で得られる1KHzのクロック信号を順次カウントし(
図3(F)参照。)、カウント値CNTをCPU145に与える。すなわち、コンパレーター133の出力が‘1’となったタイミングT1で初期微動(P波)が検出されて、ペイロードデータ作成部140が動作を開始した瞬間にカウンター144はカウント値CNT=0とされ(
図3(F)参照。)、このタイミングT1から分周器143で得られる1KHzのクロック信号を順次カウントする。
【0065】
A/D変換器141は、分周器143からの1KHzのクロック信号をサンプリング周期として、当該1KHzのクロック信号に同期して加速度センサー110からの3軸(Ax,Ay、Az)の振動波形をデジタル信号に変換する。これにより、加速度センサー110からの3軸(Ax,Ay、Az)の振動波形は、クロック信号ごとに所定のビット数(16ビットとする。)で表される振動波形成分情報として作成される。
【0066】
そして、地震による振動が収束すると、カウンター144によるカウント値CNTはN1となる(
図3(F)参照。)。ここで、地震が収束したか否かは、エンベロープ検出回路132の出力が所定のレベルTHを下回ったとき(
図3(C)参照。)を地震による振動が収束したと判定できる。また、地震が収束したか否かは、加速度センサー110から得られる加速度信号の絶対レベルが所定時間、低レベルの状態を保持しているか否かをCPU145が監視することによっても判定することができる。
【0067】
このように、初期微動(P波)が検出された後、地震が収束するまでの間におけるクロック信号のカウント値CNTがN1であるとし、各クロック信号に対応する振動波形成分情報が、この場合、それぞれ16ビットで表されるため、A/D変換器141では、(16×3×N1)ビットでなる振動波形成分情報が作成されることとなる。
【0068】
そして、カウンター144がカウント値N1をカウントした後において、GNSS衛星40からのGNSS信号をGNSS受信機120が受信し、当該GNSS受信機120がそのGNSS信号に基づいて正しい時刻t1を出力したときのタイミングT3(
図3(E)参照。)のカウント値CNTをN2とする(
図3(F)参照。)。CPU145においては、GNSS受信機120から得られた正しい時刻t1と、そのときのカウント値N2とから初期微動(P波)が検出されたタイミングT1の時刻を地震発生時刻t0として高精度に求めることができる。すなわち、地震発生時刻t0は下記(2)式により求めることができる。
【0069】
t0=t1-N2×Δ ・・・(2)
なお、(2)式において、Δ(デルタ)はサンプリング周期であり、ここでは、1000分の1秒(1ミリ秒)である。このようにして、CPU145は、GNSS受信機120から供給された時刻t1に基づいて、地震発生時刻t0を求めることができる。
【0070】
一方、CPU145は、コンパレーター133の出力が‘1’となって初期微動(P波)が検出され後(タイミングT1以降)において、A/D変換器141で得られた振動波形成分情報(クロック信号ごとに16ビットで表される振動波形成分情報)から揺れ指標(後述する。)を求め、求めた揺れ指標に、ネットワークセンサー10の識別情報(ID)、時間情報などを付加し、これらをまとめてペイロードデータPD1を作成する(
図3(G)参照。)。その後、送信部150からペイロードデータPD1を送信する(
図3(H)参照。)。そして、すべての処理が終了すると、タイミングT5においてCPU145はResetパルスを出力する(
図3(I)参照。)。これにより、初期微動検出部130のウエイクアップ回路134が電力供給をオフする(
図3(D)参照。)。
【0071】
ところで、CPU145が求める「揺れ指標」としては、例えば、震度、最大加速度、最大速度、最大変位、揺れの継続時間の情報を例示することができる。但し、揺れ指標としてこれらすべてを採用する必要はない場合もあり、適宜、選択することができるが、ここでは、震度、最大加速度、最大速度、最大変位、揺れの継続時間の情報を揺れ指標として採用するものとする。そして、これらの揺れ指標に、ネットワークセンサー10の識別符号(ID)、地震発生時刻情報(Hour,Min,Sec)及び拡張用のOptionを付加したペイロードデータPD1(
図4参照。)を作成して、当該ペイロードデータPD1、を送信部150から送信する。
【0072】
図4は、実施形態1に係る揺れ性能相対評価システム1のペイロードデータ作成部140において作成されるペイロードデータPD1の一例を模式的に示す図である。ペイロードデータPD1は、
図4に示すように、16ビットの識別符号(ID)が16ビット、地震発生時刻情報(Hour,Min,Sec)がそれぞれ6ビット、揺れ情報としての揺れ指標が72ビット、拡張用のOptionが22ビットの合計128ビットで構成されている。なお、揺れ指標は、8ビットの震度、16ビットの最大加速度、16ビットの最大速度、16ビットの最大変位、16ビットの揺れの継続時間で構成されている。
【0073】
ここで、一度に送信するデータ量が128ビット以下であれば、LPWA(Low Power Wide Area-network)による通信が可能となる。このため、実施形態1に係る揺れ性能相対評価システム1においては、送信部150と受信部(通信基地局)30との間の通信手段は、LPWAを用いることができる。
【0074】
以上説明したように、ペイロードデータ作成部140は、加速度センサー110からの振動波形をサンプリング周期が1KHzのクロック信号に同期してA/D変換して、クロック信号ごとに16ビットで表される振動波形成分情報を求め、求めた振動波形成分情報から振動波形の特徴を抽出して当該振動波形の特徴を表す揺れ指標を求める。そして、当該揺れ指標を含んだペイロードデータ(データ量が128ビット以下のペイロードデータ)PD1を作成する。ネットワークセンサー10の送信部150は、振動波形の特徴を表す揺れ指標を含んだペイロードデータ(データ量が128ビット以下のペイロードデータ)PD1を送信する。
【0075】
図5は、ネットワークセンサー10の動作アルゴリズムを示すフローチャートである。ネットワークセンサー10の動作については、主に
図3を参照して既に説明したため、ここでは、各ステップに沿って簡略化して説明する。
【0076】
まず、ステップSP1において、初期微動検出部130により、低消費電力かつ高感度で初期微動(P波)の検出が繰り返して実行される。P波が検出されない場合(P波レベルがTH未満の場合)は、そのまま低消費電力の状態が維持される。一方、P波が検出された場合(P波レベルがTH以上の場合)は、スリープ状態にあったペイロードデータ作成部140を起動(電源ON)させ(ステップSP2)、ペイロードデータ作成部140が地震による地震加速度(振動波形)を取得する(ステップSP3)。そして、A/D変換を開始するとともにクロック信号をカウントアップして行く(ステップSP4)。ステップSP4の処理は、具体的には、ステップSP3において取得した振動波形を所定のサンプリング周期(ここでは1KHz)のクロック信号に同期してA/D変換して、クロック信号ごとに所定のビット数で表される振動波形成分情報を求めるとともに、クロック信号をカウントアップして行く処理である。
【0077】
その後、地震が収束したか否かを判定する(ステップSP5)。ステップSP5において、地震が収束していないと判定された場合(「NO」の場合)は、地震加速度(振動波形)を取得する処理(ステップSP3)とクロック信号をカウントアップする処理(ステップSP4)とを継続して行い、地震が収束したと判定された場合(「YES」の場合)は、その間のカウント値CNTをN1(CNT=N1)とするとともにA/D変換を終了する(ステップSP6)。
【0078】
そして、さらにクロック信号をカウントアップする(ステップSP7)。その後、GNSS受信機120がGNSS時刻(正しい時刻t1)を取得したか否かを判定し(ステップSP8)、GNSS受信機120がGNSS時刻(正しい時刻t1)を取得していなければ、さらにカウントアップする処理を継続する。その後、GNSS受信機120がGNSS時刻(正しい時刻t1)を取得すると、その間のカウント値CNTをN2(CNT=N2)とする(ステップSP9)。
【0079】
このようにして、正しい時刻t1が得られるまでの間のカウント値CNT(CNT=N2が得られたら、当該カウント値CNT(CNT=N2)と正しい時刻t1とから上述した(2)式により、地震発生時刻t0を計算する(ステップSP10)。その後、CPU145は、揺れ情報としての揺れ指標を算出(作成ともいう。)して、算出した揺れ指標を含んだペイロードデータPD1を作成する(ステップSP11)。なお、実施形態1に係る揺れ性能評価システム1においては、揺れ指標を算出する処理は、振動波形成分情報から揺れ指標(震度、最大加速度、最大速度、最大変位、揺れの継続時間など)を算出する処理である。そして、揺れ指標が含まれているペイロードデータPD1を送信部150から送信し(ステップSP12)、ペイロードデータ作成部140の電源をOFF状態(スリープ状態)とする(ステップSP13)。
【0080】
また、実施形態1に係る揺れ性能相対評価システム1におけるネットワークセンサー10は、上述した揺れ指標を含むペイロードデータPD1を作成して、作成したペイロードデータPD1を送信する処理を行うだけでなく、各ネットワークセンサー10の現在の状態を示すアライブ情報をペイロードデータとして作成して、作成したペイロードデータ(アライブペイロードデータAPDという。)を送信する機能を有している。
【0081】
アライブペイロードデータAPDの作成は、割込み信号発生部170(
図2参照。)から発せられる割込み信号によって行われる。すなわち、割込み信号発生部170から、所定時間ごと(例えば6時間ごと)に割込み信号発生部170がペイロードデータ作成部140のCPU145に与えられると、割込み信号が与えられるごとに、スリープ状態にあったCPU145が起動するとともに、アライブ情報の作成及び送信に必要な各部が起動してアライブ情報の作成及び作成されたアライブ情報が送信される。
【0082】
ここで、アライブ情報には、当該ネットワークセンサー10の識別情報(ID)、当該ネットワークセンサー10の状態を表す情報が含まれている。このアライブ情報は、128ビット以内のペイロードデータ(アライブペイロードデータAPD)として構成される。ここで、ネットワークセンサー10の状態を表す情報としては、バッテリー160の残量を示すバッテリー残量情報及びネットワークセンサー10の姿勢を表す姿勢情報などを例示できる。なお、ネットワークセンサー10の識別情報(ID)は、ペイロードデータとしての形式でなく他のデータ形式としても送信可能であるため、ネットワークセンサー10の識別情報(ID)をアライブペイロードデータAPDに含めることは必須ではない。
【0083】
ところで、ネットワークセンサー10の姿勢は、加速度信号(Ax、Ay,Az)を所定時間(例えば10秒間)積算してから所定定数で割り算することにより得られた各12ビットの平均加速度(Bx,By,Bz)で表すことができる。この平均加速度(Bx,By,Bz)から、加速度センサー110が何等かの外的要因などによって、例えば、横向き又は斜めに傾いたりして加速度センサー110の姿勢が変化したことを検知できる。なお、アライブ情報には、上記各情報の他に、GNSS受信機120から取得した緯度情報及び経度情報が含まれていてもよい。
【0084】
図6は、アライブペイロードデータAPDの一例を模式的に示す図である。
図6に示すアライブペイロードデータAPDにおいて、識別符号(ID)は、ネットワークセンサー10の個体識別番号であって、16ビットで構成される。当該アライブペイロードデータAPDは、識別符号(ID)の他に、5ビットのステータス情報(Status)、24ビットの緯度情報(GNSS)及び24ビットの経度情報(GNSS)、6ビットずつでなるアライブ情報の作成時刻(例えば、平均加速度を求めるために加速度センサー110から加速度信号を取得した時刻(Hour,Min,Sec))、36ビットの平均加速度(Bx,By,Bz)、5ビットの拡張用オプションが
図6に示す順序で並んでおり、合計128ビットで構成されている。
【0085】
なお、
図6に示すアライブペイロードデータAPDにおいて、ステータス情報は1ビットのイベント情報(Event)と、デジタル情報化されたバッテリー残量を例えば16段階で表す4ビットのバッテリー残量情報(BAT)とを有している。
【0086】
イベント情報(Event)は、定常状態の場合は、「0」がセットされ、何らかの異常事態が検出された場合など、非定常の場合は「1」がセットされる。また、GNSS受信機120から得られる緯度情報(GNSS)及び経度情報(GNSS)は、例えば、北緯36.030160度、東経138.155298度といった情報である。緯度情報(GNSS)及び経度情報(GNSS)の小数点以下6桁の情報(上の例では“030160”、“155298”)をBCD(Binary Coded Decimal)で表すことにより、それぞれ24ビットの緯度情報と経度情報に圧縮して、アライブペイロードデータAPDにセットされる。GNSS受信機120から供給される緯度情報及び経度情報の情報により、ネットワークセンサー10の設置位置を知ることができる。
【0087】
ところで、
図4に示したペイロードデータPD1及び
図6に示したアライブペイロードデータAPDを作成するための処理は、ここでは、各建物を特定せず、また、各建物における設置個所(建物の頂部、建物基部、地表面)を特定せずに、全体のネットワークセンサー10の処理として説明したが、実際には、各建物の頂部に設置されている頂部ネットワークセンサーNS1a,NS2a,・・・、基部ネットワークセンサーNS1b,NS2b,・・・、地表面ネットワークセンサーNS1c,NS2c,・・・ごとに、
図4に示したペイロードデータPD1及び
図6に示したアライブペイロードデータAPDを作成するための処理が行われる。
【0088】
このため、ペイロードデータPD1及びアライブペイロードデータAPDは、ネットワークセンサー10ごと、すなわち、頂部ネットワークセンサーNS1a,NS2a,・・・、基部ネットワークセンサーNS1b,NS2b,・・・、地表面ネットワークセンサーNS1c,NS2c,・・・ごとに作成され、作成されたペイロードデータPD1及びアライブペイロードデータAPDは、頂部ネットワークセンサーNS1a,NS2a,・・・、基部ネットワークセンサーNS1b,NS2b,・・・、地表面ネットワークセンサーNS1c,NS2c,・・・の送信部150から送信される。
【0089】
続いて、揺れ性能相対評価装置20(
図1参照。)について説明する。揺れ性能相対評価装置20は、解析部としてのサーバー210と、サーバー210による解析によって得られた種々の情報(揺れ性能相対評価結果など)を表示する表示端末220と、サーバー210による解析によって得られた種々の情報(揺れ性能相対評価結果など)を蓄積するデータベース230と、気象庁からの地震に関する情報(震源地等地震情報)を取得する地震情報取得部(図示せず。)を有している。なお、地震情報取得部(図示せず。)はサーバー210が地震情報取得部としての機能を有するものであってもよい。
【0090】
このように構成されている揺れ性能相対評価装置20は、ネットワークセンサー10から送信されたペイロードデータPD1(
図4参照。)に含まれる揺れ指標(ここでは、震度、最大加速度、最大速度、最大変位、揺れの継続時間)及び時刻情報を解析部としてのサーバー210で解析して、各建物の揺れ性能相対評価を行うとともに、揺れ性能相対評価結果を表示端末(パーソナルコンピューター及びスマートフォンなどを含む。)120に表示したり、データベース230に書き込んだりする。なお、揺れ性能相対評価については後述する。
【0091】
また、揺れ性能相対評価装置20は、ネットワークセンサー10から送信されたアライブペイロードデータAPD(
図6参照。)に基づいて、ネットワークセンサー10の現在の状態を示す情報(アライブ情報)を取得する。ここでは、取得するアライブ情報としては、識別符号(ID)、バッテリー160の残量、加速度センサー110の姿勢に関する情報としての平均加速度(Bx,By,Bz)、ネットワークセンサー10の緯度情報(GNSS)及び経度情報(GNSS)などを例示できる。なお、取得したアライブ情報は表示端末220で表示させることができる。
【0092】
図7は、地震が発生した場合に解析部(サーバー210)が行う揺れ性能相対評価について説明するためのフローチャートである。なお、
図7に示すフローチャートの右側には、全体の処理の流れに対応した時刻の経過が示されている。また、
図7においては、全体の処理の流れに対応してサーバー210が行う処理の流れについて説明し、揺れ指標に基づく揺れ性能相対評価の仕方などについては後述する。
【0093】
建物BL1に設置されている頂部ネットワークセンサーNS1a、基部ネットワークセンサーNS1b、地表面ネットワークセンサーNS1c、建物BL2に設置されている頂部ネットワークセンサーNS2a、基部ネットワークセンサーNS2b、地表面ネットワークセンサーNS2c、さらに
図7においては図示されていない他の多数の建物にそれぞれ設置されている頂部ネットワークセンサー、基部ネットワークセンサー、地表面ネットワークセンサーから送信されてくる各ペイロードデータPD1を受信部30(
図1参照。)を介してサーバー210が取得する。
【0094】
サーバー210は、取得した各ペイロードデータPD1(
図4参照。)に含まれている揺れ指標に基づいて揺れ性能相対評価を行う。なお、揺れ指標は、前述したように、震度、最大加速度、最大速度、最大変位、揺れの継続時間を例示できるが、ここでは、揺れ指標として最大速度を用いるものとする。
【0095】
ここで、サーバー210が行う揺れ性能相対評価の処理ステップについて
図7を参照して説明する。サーバー210は、取得した各ペイロードデータPD1(
図4参照。)に含まれている揺れ指標から最大速度をそれぞれ取得して(ステップSP21)、取得した揺れ指標(最大速度)に基づく揺れ性能相対評価(順位付けを含む。)を行う(ステップSP22)。なお、揺れ性能相対評価を行う際には、気象庁からの震源等地震情報を取得して行う。
【0096】
ここでは、揺れ性能相対評価として、(ア)建物の周辺の土地と建物の総合的な揺れ性能相対評価(「土地+建物の総合評価」と表記する場合もある。)、(イ) 建物の周辺の土地の揺れ性能相対評価(「土地の評価」と表記する場合もある。)、(ウ) 建物の揺れ性能相対評価(「建物の評価」と表記する場合もある。)を行うものとする。なお、この明細書においては、これら(ア)、(イ)及び(ウ)をまとめて説明する場合には、「揺れ性能相対評価」と呼ぶこととする。
【0097】
そして、「土地+建物の総合評価」、「土地の評価」、「建物の評価」を行ったら、それぞれの揺れ性能相対評価結果(順位付けを含む。)を表示端末220で表示する(ステップSP23)とともに、データベース230に蓄積する(ステップSP24)。その後、揺れ性能相対評価結果(順位付けを含む。)に基づく年総合評価及び経年変化評価を行い(ステップSP25)、これらの評価結果(年総合評価結果及び経年変化評価結果)を表示端末220で表示する(ステップSP26)とともに、データベース230に蓄積する(ステップSP27)。
【0098】
続いて、揺れ性能相対評価の具体例について説明する。ここでは、揺れ指標として最大速度を用いた場合について説明する。サーバー210は、各建物に設置されている各ネットワークセンサー10から送信されてきたペイロードデータPD1に含まれる揺れ指標(最大速度)と、気象庁から得られる地震に関する情報(震源等地震情報)とに基づいて、各建物での平均的な揺れの傾向線を求め、当該各建物での平均的な揺れの傾向線と各建物に対応して得られた揺れ指標(最大速度)とから各建物の揺れ性能相対評価を行う。
【0099】
ここで、各建物に設置されている各ネットワークセンサー10から送信されてきたペイロードデータPD1に含まれる揺れ指標(最大速度)は、各建物の所在地により異なってくる。一般に、地震の揺れの大きさは、震源から遠くなるほど減衰して小さくなることが知られている。震源からの距離に応じて揺れが小さくなることを「距離減衰」と呼ぶ。
【0100】
そこで、揺れ指標(最大速度)を震源からの距離で正規化することで、当該建物の揺れ指標(最大速度)と他の建物の揺れ指標(最大速度)とを相対的に比較することができる。具体的には、揺れ性能相対評価対象となる複数の建物における各建物において、各建物に対応して求められている揺れ指標(最大速度)と各建物の震源からの距離との関係の平均、つまり、震源からの距離に応じて徐々に減衰する所定の距離減衰式を求めて、全建物での平均的な揺れの傾向線を求める。なお、「全建物」というのは、揺れ性能相対評価対象となる複数の建物における各建物(建物BL1,BL2,・・・)を指している。以下、全建物での平均的な揺れの傾向線の「全建物での」省略して「平均的な揺れの傾向線」と略記する場合もある。ここで、「平均的な揺れの傾向線」は、後述する
図8(a)、
図9(a)及び
図10(a)において直線L1,L2,L3で表される。
【0101】
また、「平均的な揺れの傾向線」というのは、震源からの距離が遠くなれば、揺れ指標(最大速度)は、平均的にはこの程度の大きさになる傾向があるということを示すものである。従って、各建物それぞれにおいて得られる揺れ指標(最大速度)が、「平均的な揺れの傾向線」上に存在する値よりも高い値であれば、当該建物は相対的に揺れが大きい(揺れやすい)ということがわかり、揺れ指標(最大速度)が、「平均的な揺れの傾向線」上に存在する値よりも低い値であれば、当該建物は相対的に揺れが小さい(揺れにくい)ということがわかる。
【0102】
但し、「建物の評価」は、ある建物の基部の揺れ指標に対する当該建物の頂部の揺れ指標の倍率(揺れ指標比)によって評価するものであり、建物自体の性能を評価するものである。従って、「平均的な揺れの傾向線」は、震源からの距離に依存しないため、
図10(a)における直線L3で示すように、震源からの距離に依存せず一定となっている。ここで、上記「揺れ指標比」というのは、ペイロードデータから取得される揺れ指標が最大速度である場合には、最大速度比である。すなわち、建物の頂部の揺れ指標(最大速度Vtop)と建物の基部の揺れ指標(最大速度Vbottom)との比(Vtop/Vbottom)である。
【0103】
図8、
図9及び
図10は、揺れ性能相対評価の一例について説明する図である。
図8は「土地+建物の総合評価」を説明するための図であり、
図9は「土地の評価」を説明するための図であり、
図10は「建物の評価」を説明するための図である。なお、
図8の「土地+建物の総合評価」においては、「平均的な揺れの傾向線」は直線L1で表されるため「平均的な揺れの傾向線L1」とし、
図9の「土地の評価」においては、「平均的な揺れの傾向線」は直線L2で表されるため「平均的な揺れの傾向線L2」とし、
図10の「建物の総合評価」においては、「平均的な揺れの傾向線」は直線L3で表されるため「平均的な揺れの傾向線L3」として説明する。
【0104】
また、
図8(a)、
図9(a)及び
図10(a)のうちの
図8(a)及び
図9(a)は各建物において得られた揺れ指標(最大速度)と「平均的な揺れの傾向線L1,L2」との関係を説明するための図であり、
図10(a)は各建物において得られた揺れ指標比(最大速度比)と「平均的な揺れの傾向線L3」との関係を説明するための図である。なお、
図8(a)、
図9(a)及び
図10(a)において、白抜きの○印は各建物に対応するデータを表している。一方、
図8(b)、
図9(b)及び
図10(b)は、
図8(a)、
図9(a)及び
図10(a)に基づいて揺れ性能相対評価を行うことによって得られた揺れ性能相対評価結果(順位付け)の一例を示す図である。
【0105】
図11は、「土地+建物の総合評価」、「土地の評価」及び「建物の評価」を行う際の揺れ指標(例えば最大速度)の取得について説明するために示す図である。なお、
図11においては、建物BL1が例示されているが、他の建物BL2、・・・においても同様である。
【0106】
「土地+建物の総合評価」を行う際には、各建物それぞれの頂部に設置されている頂部ネットワークセンサーNS1a,NS2a,・・・から送信されてきた各ペイロードデータに含まれている各建物に対応した揺れ指標を、各建物に対応した「頂部揺れ指標」としたとき、当該「頂部揺れ指標」として、各建物における最大速度Vtopを取得し、取得した各建物の最大速度Vtopを「土地+建物の総合評価」を行う際の揺れ指標として用いる。
【0107】
また、「土地の評価」を行う際には、各建物それぞれの周辺の土地(地表面)に設置されている地表面ネットワークセンサーNS1c,NS2c,・・・から送信されてきた各ペイロードデータに含まれている各建物の周辺の土地に対応した揺れ指標を、各建物の周辺の土地に対応した「土地揺れ指標」としたとき、当該「土地揺れ指標」として、各建物の周辺の土地における最大速度Vsoilを取得し、取得した各建物の周辺の土地における最大速度Vsoilを「土地の評価」を行う際の揺れ指標として用いる。
【0108】
また、「建物の評価」すなわち建物自体の評価を行う際には、各建物それぞれの頂部に設置されている頂部ネットワークセンサーNS1a,NS2a,・・・から送信されてきた各ペイロードデータに含まれている各建物に対応した揺れ指標を、各建物に対応した「頂部揺れ指標」とし、また、各建物それぞれの基部に設置されている基部ネットワークセンサーNS1b、NS2b,・・・から送信されてきた各ペイロードデータに含まれている各建物に対応した揺れ指標を、各建物に対応した基部揺れ指標としたとき、当該頂部揺れ指標として最大速度Vtopを取得し、基部揺れ指標として最大速度Vbottomを取得する。
【0109】
そして、取得した頂部揺れ指標(最大速度Vtop)と基部揺れ指標(最大速度Vbottom)との比(揺れ指標比)を各建物に対応して求めて、求めた各建物に対応した揺れ指標比を用いて「建物の揺れ性能相対評価」を行う。なお、「揺れ指標比」というのは、前述したように、最大速度比(Vtop/Vbottom)である。
【0110】
ここで、「土地+建物の総合評価」に用いる揺れ指標(最大速度)は、前述したように、震源からの距離に依存する。このため、「平均的な揺れの傾向線L1」は、
図8(a)に示すように、震源からの距離が遠くなるに従って最大速度が小さくなる。このことは「土地の評価」についても同様のことが言える(
図9(a)参照。)。
【0111】
一方、「建物の評価」は、前述したように、当該建物の基部の揺れ指標に対する当該建物の頂部の揺れ指標の倍率によって評価するものであり、建物自体の性能を評価するものであるため、震源からの距離に依存しない。このため、
図10(a)に示すように「平均的な揺れの傾向線L3」は、震源からの距離に依存せず一定となっている。
【0112】
図8、
図9及び
図10に戻って「土地と建物の総合評価(建物の周辺の土地と建物の総合的な揺れ性能相対評価)」、「土地の評価(建物の周辺の土地の揺れ性能相対評価)」及び「建物の評価(建物の揺れ性能相対評価)」の一例について説明する。
【0113】
[土地+建物の総合評価(建物の周辺の土地と建物の総合的な揺れ性能相対評価)]
「土地+建物の総合評価」について
図8(a)及び
図8(b)を参照して説明する。なお、
図8においては、白抜きの○印の数(建物の数)は、9個のみが示されているが、揺れ性能比相対評価対象となる全建物の数は、実際には、数十、数百といった建物が存在しているものとする。なお、これは、後述する「土地の評価」を説明するための
図9及び「建物の評価」を説明するための
図10においても同様である。
【0114】
図8(a)において、建物BL1に注目すると、当該建物BL1においては、建物BL1における揺れ指標(最大速度)は、「平均的な揺れの傾向線L1」よりも低い値であるものの、「平均的な揺れの傾向線L1」に対する乖離の度合い(揺れにくさ側の乖離の度合い)は非常に小さいものとなっている。このことから、当該建物BL1(土地+建物BL1)の揺れ性能は、平均的な揺れ性能に近ものといえる。
【0115】
また、建物BL2に注目すると、当該建物BL2においては、建物BL2における揺れ指標(最大速度)は、「平均的な揺れの傾向線L1」よりもかなり高い値であり、「平均的な揺れの傾向線L1」に対する乖離の度合い(揺れやすさ側の乖離の度合い)が大きいものとなっている。このことから、当該建物BL2(土地+建物BL2)の揺れ性能は、平均的な揺れ性能に比べて、揺れやすいものといえる。
【0116】
このようにして、各建物から得られる揺れ指標(最大速度)が「平均的な揺れの傾向線L1」に対して、揺れやすさ側又は揺れにくさ側にどの程度乖離しているか(乖離の度合い)を求めることができ、求められた乖離の度合いから当該建物の揺れやすさを知ることができる。そして、求められた乖離の度合いを、「平均的な揺れの傾向線L1」を基準とした偏差値として表すことができる。例えば、「平均的な揺れの傾向線L1」を「偏差値50」とし、乖離の度合いが揺れやすさ側に大きければ、揺れやすいため「例えば偏差値30」、乖離の度合いが揺れにくさ側に大きければ、揺れにくいため「例えば偏差値70」というように表すことができる。
【0117】
各建物において、最大速度の偏差値を求めることにより、
図8(b)に示すように、土地+建物の総合評価(順位付け)を行うことができる。例えば、建物BL1における土地+建物の総合評価結果は、揺れにくさの順位(ランキング)としては、全建物の中で、ほぼ中間のグループに属していることがわかる。なお、
図8(b)における横軸は揺れにくさ(揺れやすさ)を表しており、縦軸は度数(全建物の数)を表している。
【0118】
[土地の評価(建物の周辺の土地の揺れ性能相対評価)]
「土地の評価」について
図9(a)及び
図9(b)を参照して説明する。ここでも、建物BL1の周辺の土地に注目すると、当該建物BL1の周辺の土地においては、建物BL1の周辺の土地(ネットワークセンサーNS1bが設置されている土地)における最大速度は、「平均的な揺れの傾向線L2」よりも低い値であるものの、「平均的な揺れの傾向線L2」に対する乖離の度合い(揺れにくさ側の乖離の度合い)は非常に小さいものとなっている。このことから、当該建物BL1の周辺の土地は、平均的な揺れ性能に近いものといえる。
【0119】
また、建物BL2の周辺の土地に注目すると、当該建物BL2の周辺の土地においては、建物BL2の周辺の土地における揺れ指標(最大速度)は、「平均的な揺れの傾向線L2」よりもかなり高い値であり、「平均的な揺れの傾向線L2」に対する乖離の度合い(揺れやすさ側の乖離の度合い)が大きいものとなっている。このことから、当該建物BL2の周辺の土地は、平均的な揺れ性能に比べて、揺れやすいものといえる。
【0120】
このようにして、各建物の周辺の土地から得られる揺れ指標(最大速度)が「平均的な揺れの傾向線L2」に対して、どの程度乖離しているか(乖離の度合い)を求めることができ、求められた乖離の度合いから当該建物の周辺の土地の揺れやすさを知ることができる。そして、求められた乖離の度合いを、「平均的な揺れの傾向線L2」を基準とした偏差値として表すことができる。例えば、「平均的な揺れの傾向線L2」を「偏差値50」とし、乖離の度合いが揺れやすさ側に大きければ、揺れやすいため「例えば偏差値30」、乖離の度合いが揺れにくさ側に大きければ、揺れにくいため「例えば偏差値70」というように表すことができる。
【0121】
各建物の周辺の土地において、最大速度の偏差値を求めることにより、
図9(b)に示すように、土地の評価(順位付け)を行うことができる。例えば、建物BL1における土地の評価結果は、揺れにくさの順位(ランキング)としては、全建物の中にで、ほぼ中間のグループに属していることがわかる。なお、
図9(b)における横軸は揺れにくさ(揺れやすさ)を表しており、縦軸は度数(全建物の数)を表している。
【0122】
[建物の評価(建物の揺れ性能相対評価)]
「建物の評価」について
図10(a)及び
図10(b)を参照して説明する。ここでも、建物BL1に注目すると、当該建物BL1においては、建物BL1における最大速度比(Vtop/Vbottom)は、「平均的な揺れの傾向線L3」よりも低い値であるものの、「平均的な揺れの傾向線L3」に対する乖離の度合い(揺れにくさ側の乖離の度合い)は非常に小さいものとなっている。このことから、当該建物BL1の揺れ性能は、平均的な揺れ性能に近ものといえる。
【0123】
また、建物BL2に注目すると、当該建物BL2においては、建物BL2における最大速度比(Vtop/Vbottom))は、「平均的な揺れの傾向線L3」よりもかなり高い値であり、「平均的な揺れの傾向線L3」に対する乖離の度合い(揺れやすさ側の乖離の度合い)が大きいものとなっている。このことから、当該建物BL2の揺れ性能は、平均的な揺れ性能に比べて、揺れやすいものといえる。
【0124】
そして、各建物における最大速度比(Vtop/Vbottom)が「平均的な揺れの傾向線L3」に対して、どの程度乖離しているか(乖離の度合い)を、「平均的な揺れの傾向線L3」を基準とした偏差値として表すことができる。例えば、「平均的な揺れの傾向線L3」を「偏差値50」とし、乖離の度合いが揺れやすさ側に大きければ、揺れやすいため「例えば偏差値30」、乖離の度合いが揺れにくさ側に大きければ、揺れにくいため「例えば偏差値70」というように表すことができる。
【0125】
各建物において、最大速度比(Vtop/Vbottom)の偏差値が求められることにより、
図10(b)に示すように、建物の評価(順位付け)を行うことができる。例えば、建物BL1における建物の評価結果は、揺れにくさの順位(ランキング)としては、全建物の中にで、ほぼ中間のグループに属していることがわかる。なお、
図10(b)における横軸は揺れにくさ(揺れやすさ)を表しており、縦軸は度数(全建物の数)を表している。
【0126】
以上説明したように、実施形態1に係る揺れ性能相対評価システム1によれば、各建物の所定位置(頂部、基部及び周辺の土地)に設置されている各ネットワークセンサー10から送信されてきたペイロードデータに基づいて揺れ性能評価を行うことができるとともに、その結果としての揺れ性能相対評価結果(例えば、
図8(b)、
図9(b)及び
図10(b))を得ることができる。このような揺れ性能相対評価結果は、表示端末220で表示することができるとともに、データベース230に蓄積することができる。
【0127】
そして、データベース230に蓄積されている蓄積データ(揺れ性能相対評価結果)を用いて、各建物について、揺れ性能相対評価結果(順位付け)に基づく年総合評価及び経年変化評価を行い、これらの評価結果(年総合評価結果及び経年変化評価結果)を表示端末220で表示するとともに、データベース230に蓄積することができる。なお、経年変化評価を行う処理には、例えば、データベース230に蓄積されている蓄積データ(揺れ性能相対評価結果)を分析して、各建物の揺れ性能相対評価結果の時系列変化を求めるといった処理も含まれている。
【0128】
データベース230に蓄積されている内容は、適宜、表示端末220に表示させることができる。これにより、揺れ性能相対評価対象となる全建物を管理する管理者は、データベース230に蓄積されている蓄積データに基づいて、各建物及び各建物の周辺の土地の揺れ性能を把握することができるとともに、各建物及び各建物の周辺の土地の揺れ性能を格付けすることができる。
【0129】
また、実施形態1に係る揺れ性能評価システム1においては、大きな地震が発生したときのみに揺れ性能相対評価を行うものではなく、日々継続して振動波形を検出し続けて、所定レベル以上(例えば震度2以上)の揺れを検出した場合に、当該揺れに対応する揺れ指標に基づいて揺れ性能相対評価を継続的に行い、その揺れ性能相対評価結果を長期間に渡ってデータベース130に蓄積して行くものである。このため、データベース230に蓄積されている蓄積データは、揺れ性能相対評価を行う際に信頼性の高いものとなる。また、このようにして得られた揺れ性能相対評価結果は、建物の耐震性を評価する際の基礎情報として大いに活用できる。
【0130】
ところで、上述した揺れ性能相対評価を行う際においては、解析部としてのサーバー210は、気象庁からからの地震に関する情報を受信していない期間は、各ネットワークセンサー10からの揺れ情報(この場合、揺れ指標)に関する解析を行わないようにすることが好ましい。例えば、ある建物の近くで、大きな振動を伴う工事などが行われた場合に、地震とは異なる揺れによる振動波形が取得されて、
図4に示すようなペイロードデータPD1が作成されて当該ペイロードデータPD1が送信されてしまう場合がある。このような場合、気象庁からからの地震に関する情報を受信していない期間は、揺れ性能相対評価装置20のサーバー210側では、ペイロードデータPD1に含まれている揺れ指標は、地震による揺れ指標ではないと判断して、解析処理を行ないようにすることができる。
【0131】
一方、ネットワークセンサー10側においても、気象庁からからの地震に関する情報を受信するようにしておけば、気象庁からからの地震に関する情報を受信していない期間は、初期微動が検出されたとしても、
図4に示すようなペイロードデータPD1を作成しないようにすることもできる。また、気象庁からからの地震に関する情報を受信していない期間において、
図4に示すようなペイロードデータPD1が作成されてしまった場合であっても、当該ペイロードデータを送信しないようにすることも可能である。これにより、建物の近くで、大きな振動を伴う工事などによる揺れが発生した場合などのように、地震とは異なる揺れが生じていても、誤ったペイロードデータが作成されてしまったり、誤ったペイロードデータが送信されてしまったりすることを未然に防止できる。
【0132】
ところで、各建物の所定位置に設置されているネットワークセンサー10からは、地震が発生した場合のペイロードデータPD1(例えば
図4参照。)だけでなく、所定時間ごと(例えば6時間ごと)にアライブペイロードデータAPD(例えば
図6参照。)も送信されてくる。揺れ性能相対評価装置20は、アライブペイロードデータAPDを受信した際にも、当該アライブペイロードデータAPDに含まれるアライブ情報(
図6参照。)を表示端末220に表示させることができる。これにより、全建物を管理する管理者は、表示端末に表示されている各ネットワークセンサーの現在の状態(各ネットワークセンサー10の現時点におけるバッテリー残量、当該ネットワークセンサー10の姿勢など)を知ることができる。
【0133】
なお、
図6に示すアライブペイロードデータAPDにおいては、アライブ情報として緯度情報及び経度情報も含まれているが、各ネットワークセンサー10の設置位置を移動しなければ、緯度情報及び経度情報は変化しないため、緯度情報及び経度情報をその都度、送信する必要はないといえる。
【0134】
[実施形態2]
上述した実施形態1に係る揺れ性能相対評価システム1においては、ネットワークセンサー10が送信するペイロードデータに含まれる揺れ情報としては、地震による振動波形の特徴を表す揺れ指標(震度、最大加速度、最大速度、最大変位、揺れの継続時間など)を用いている。
【0135】
すなわち、ネットワークセンサー10のペイロードデータ作成部140は、振動波形を所定のサンプリング周期のクロック信号に同期させてA/D変換して、クロック信号ごとに所定のビット数(16ビット)で表される振動波形成分情報を作成し、当該振動波形成分情報から当該振動波形の特徴を抽出して当該振動波形の特徴を表す揺れ指標を求めている。そして、当該振動波形の特徴を表す揺れ指標(震度、最大加速度、最大速度、最大変位、揺れの継続時間など)を含んだペイロードデータPD1(データ量が128ビット以下のペイロードデータPD1)を作成し、当該ペイロードデータPD1を送信部150から送信するようにしている。
【0136】
これに対して、実施形態2に係る揺れ性能相対評価システム2においては、振動波形の特徴を表す揺れ指標を作成する前段階のデータ、すなわち、クロック信号ごとに所定のビット数(16ビット)で表される振動波形成分情報を揺れ情報として含んだペイロードデータを送信部150から送信するようにしている。
【0137】
すなわち、実施形態2に係る揺れ性能相対評価システム2においては、ネットワークセンサー10のペイロードデータ作成部140は、地震波形を所定のサンプリング周期(1KHz)のクロック信号に同期させてA/D変換して、クロック信号ごとに16ビットで表される振動波形成分情報を作成し、当該クロック信号ごとに16ビットで表される振動波形成分情報を含んだペイロードデータ(ペイロードデータPD2とする。)を作成する。そして、ネットワークセンサー10の送信部150からは、クロック信号ごとに16ビット数で表される振動波形成分情報を含んだペイロードデータPD2を送信するようにしている。
【0138】
図12は、実施形態2に係る揺れ性能相対評価システム2を模式的に示す図である。
図13は、実施形態2に係る揺れ性能相対評価システム2のネットワークセンサー10におけるペイロードデータ作成部140において作成されるペイロードデータPD2の一例を示す図である。
【0139】
実施形態2に係る揺れ性能相対評価システム2におけるネットワークセンサー10の構成などは、実施形態1に係る揺れ性能相対評価システム1の説明において用いた
図2を用いることができる。また、ネットワークセンサー10の動作などは、
図3及び
図5を用いることができる。このため、実施形態2に係る揺れ性能相対評価システム2のネットワークセンサー10の構成及び動作を説明する際には、必要に応じて
図2、
図3及び
図5を用いるものとする。
【0140】
なお、
図5に示すフローチャートにおけるステップSP1~SP10までの処理は、実施形態1に係る揺れ性能相対評価システム1において説明した処理と基本的には同様であるが、実施形態2に係る揺れ性能相対評価システム2においては、ペイロードデータ作成(ステップSP11)が実施形態1に係る揺れ性能相対評価システム1と異なる。
【0141】
すなわち、実施形態1に係る揺れ性能相対評価システム1におけるステップSP11の処理は、揺れ情報として「振動波形の特徴を表す揺れ指標(震度、最大加速度、最大速度、最大変位、揺れの継続時間など)」を含んだペイロードデータPD1(
図4参照。)を作成する処理であったが、実施形態2に係る揺れ性能相対評価システム2においては、揺れ情報として「クロック信号ごとに16ビットで表される振動波形成分情報」を含んだペイロードデータPD2を作成する処理である。
【0142】
そして、クロック信号ごとに16ビットで表される振動波形成分情報が含まれているペイロードデータPD2を送信部150から送信し(ステップSP12)、ペイロードデータ作成部140の電源をOFF状態(スリープ状態)とする(ステップSP13)。
【0143】
実施形態2に係る揺れ性能相対評価システム2のネットワークセンサー10(
図2参照。)におけるペイロードデータ作成部140において作成されるペイロードデータPD2は、
図13に示すように、識別符号(ID)が24ビット、ステータス情報(Status)が8ビット、緯度情報及び経度情報がそれぞれ24ビット、地震発生時刻t0に関する情報が48ビット、カウンター244のカウント値(CNT=N1)が16ビット、揺れ情報(振動波形成分情報(Ax,Ay,Az))が16ビット×3×N1の合計(18+N1×2×3)バイトのデータ量を有するものとなっている。
【0144】
なお、ステータス情報はOption(4ビット)、バッテリー残量を16段階で表すBAT情報(4ビット)で構成される。また、地震発生時刻t0に関する情報は、年(Year)、月(Month)、日(Day),時(Hour)、分(Min)、ミリ秒(msec)を有し、合計48ビットの情報で表されている。
【0145】
このように、実施形態2に係る揺れ性能相対評価システム2においては、ネットワークセンサー10(
図2参照。)のペイロードデータ作成部140(
図2参照。)において作成されるペイロードデータPD2は、データ量が128ビットを超えるため、送信部150と受信部30との間の通信手段としては、電話回線又はインターネットを用いる。ここで、電話回線には、有線の電話回線だけではなく、LTE(Long Term Evolution)、5G,6Gなどの携帯電話回線も含まれる。なお、携帯電話回線を用いる場合には、実施形態2に係る揺れ性能相対評価システム2においては、受信部30は、
図12に示すように、各建物(建物BL1,BL2、・・)に近い位置に存在する携帯電話通信用の通信基地を用いることができる。
【0146】
一方、揺れ性能相対評価装置20の解析部としてのサーバー210は、ネットワークセンサー10から送信されてきたペイロードデータPD2に含まれる振動波形成分情報を取得して、取得した振動波形成分情報から揺れ指標(震度、最大加速度、最大速度、最大変位、揺れの継続時間など)を作成するための処理を行う。
【0147】
このように、実施形態2に係る揺れ性能相対評価システム2においては、揺れ性能相対評価装置20のサーバー210側において、ネットワークセンサー10から送信されてきたペイロードデータPD2(
図13参照。)に含まれている振動波形成分情報(Ax,Ay,Az)から揺れ指標(震度、最大加速度、最大速度、最大変位、揺れの継続時間など)を作成する処理を行う。
【0148】
このようにして、揺れ性能相対評価装置20のサーバー210側で揺れ指標(震度、最大加速度、最大速度、最大変位、揺れの継続時間など)を算出すれば、当該揺れ指標に基づいた揺れ性能相対評価(「土地+建物の総合評価」、「土地の評価」及び「建物の評価」)は、実施形態1に係る揺れ性能相対評価システム1において、
図7~
図11を参照して説明した揺れ性能相対評価と同様に実施できる。従って、実施形態2に係る揺れ性能相対評価システム2においては、揺れ指標に基づいた揺れ性能相対評価についての説明は省略する。
【0149】
実施形態2に係る揺れ性能相対評価システム2においても、実施形態1に係る揺れ性能相対評価システム1と同様に、揺れ性能相対評価対象となる全建物を管理する管理者は、データベース230に蓄積されている揺れ性能相対評価に関するデータに基づいて、揺れ性能相対評価対象となる全建物の揺れ性能を把握することができるとともに、各建物の揺れ性能を相対的に評価することができる。
【0150】
また、実施形態2に係る揺れ性能相対評価システム2においても、実施形態1に係る揺れ性能相対評価システム1と同様に、各ネットワークセンサー10からは、例えば
図6に示すようなアライブペイロードデータAPD(
図6参照。)を所定時間ごと(例えば6時間ごと)に送信する機能を有している。これにより、全建物を管理する管理者は、表示端末に表示されている各ネットワークセンサーのNSの現在の状態(各ネットワークセンサー10の現時点におけるバッテリー残量、当該ネットワークセンサー10の姿勢など)を知ることができる。
【0151】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能となるものである。たとえば、下記に示すような変形実施も可能である。
【0152】
(1)上記各実施形態においては、各ネットワークセンサー10は、電力供給源としての電源は、バッテリー160を用いた場合を例示したが、バッテリーであることに限られるものではなく、例えば、100ボルトのAC電源であってもよい。また、外部のAC電源からのAC電流をネットワークセンサーの各部に適した電圧のDC電流に変換する変換回路からなる電源であってもよい。
【0153】
(2)上記各実施形態においては、各ネットワークセンサー10にはGNSS受信機120を設けた場合を例示したが、各ネットワークセンサー10にGNSS受信機120を設けることは必須ではない。
【0154】
(3)上記各実施形態においては、
図2に示すような構成の初期微動検出部130により、地震の初期微動を検出してネットワークセンサー10を動作させる場合を例示したが、必ずしも初期微動検出部を設ける必要はなく、例えば、加速度センサー110から出力される振動波形を各ネットワークセンサー10に継続的に入力させて、ネットワークセンサー10に入力された振動波形をA/D変換器141で継続的にA/D変換するようにしてもよく、また、A/D変換器141において、振動波形が所定レベルTH以上となったことを判定して、所定レベルTH以上となった後の振動波形をA/D変換するようにしてもよい。
【0155】
(4)上記各実施形態においては、各ネットワークセンサー10から送信するアライブペイロードデータAPD(
図6参照。)には、当該ネットワークセンサー10の位置情報(緯度情報及び経度情報)が含まれている場合を例示したが、ネットワークセンサー10の位置情報(緯度情報及び経度情報)は、揺れ性能相対評価装置20側に予め登録しておけば、当該ネットワークセンサーの設置位置に変更がない限り、その都度、送信する必要はないともいえる。
【0156】
(5)上記各実施形態においては、揺れ指標としては、震度、最大加速度、最大速度、最大変位、揺れの継続時間のうちの最大速度を採用した場合を例示したが、最大速度以外の揺れ指標(震度、最大加速度、最大変位、揺れの継続時間など)を採用してもよい。また、震度、最大加速度、最大速度、最大変位、揺れの継続時間などのうちの複数の揺れ指標を採用することもできる。この場合は、採用した複数の揺れ指標において、各揺れ指標が「平均的な揺れの傾向線」に対する乖離の度合いを求め、求められた各指標における乖離の度合いを偏差値として算出し、算出した偏差値を重み付け平均して、偏差値を重み付け平均した結果に基づいて揺れ性能相対性評価を行うということも可能である。さらに、揺れ指標としては、上述の最大速度、震度、最大加速度、最大変位、揺れの継続時間などの指標だけでなく、例えば、SI(Spectral Intensity)値、減衰定数、振動周期、スペクトル情報などを用いることもできる。
【0157】
(6)上記各実施形態においては、ネットワークセンサーは、各建物において、建物の頂部、建物の基部及び建物の周辺の土地(地表面)の3箇所に設置する場合を例示したが、必ずしも3箇所であることに限られるものではなく、これら3箇所のうちの1箇所であってもよい。
【0158】
(7)上記実施形態においては、受信部30は
図1に示すように、屋外に設置されている通信基地局などを例示したが、受信部30はサーバー210が設置されている建物内に存在していてもよい。また、屋外に設置されている場合であっても、揺れ性能相対評価対象となる建物が、広範囲に渡って存在する場合などにおいては、それぞれの地域ごとに設置されている複数の受信部(通信基地局)であってもよい。
【0159】
(8)上記実施形態において、データベース230に蓄積するデータは、揺れ性能相対評価結果だけではなく、各建物において得られた建物ごとの揺れ指標として、例えば、震度、最大加速度(gal)、最大速度(cm/sec)、最大変位(cm)、揺れの継続時間(sec)などを、日時情報(年月日分秒)及び各建物の識別情報(例えば建物名)に対応付けて蓄積することもできる。また、これらの揺れ指標は、表示端末120に随時表示させることもできる。これにより、揺れ性能相対評価対象となる全建物を管理する管理者は、データベース230に蓄積されている揺れ指標に基づいて、各建物及び各建物の周辺の土地の揺れ性能を個々の建物ごとに把握することができる。
【0160】
(9)上記実施形態において、ネットワークセンサー10は、実施形態1,2の揺れ性能相対評価システム1,2のネットワークセンサーとして用いるものであったが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明のネットワークセンサーは、種々の使用目的に用いることができる。例えば、個別の建物の揺れ性能の評価や、地震の解析(地震の震度の解析、地震の発生頻度の解析、地震の振動波形の解析)など、本発明の揺れ性能相対評価システムとは違った使用目的に用いることもできる。
【符号の説明】
【0161】
1,2・・・揺れ性能相対評価システム、10(NS1,NS2,・・・)・・・ネットワークセンサー、20・・・揺れ性能相対評価装置、30・・受信部、40・・・GNSS衛星、110・・・加速度センサー、120・・・GNSS受信機、130・・・初期微動検出部、140・・・ペイロードデータ作成部、150・・・送信部、160・・・バッテリー、170・・・割込み信号発生部、210・・・サーバー(解析部)、220・・・表示端末、230・・・データベース(蓄積部)、BL1,BL2、・・・建物(各建物)、L1,L2,L3・・・平均的な揺れの傾向線、NS1a、NS2a,・・・頂部ネットワークセンサー、NS1b、NS2b,・・・基部ネットワークセンサー、NS1c、NS2c,・・・地表面ネットワークセンサー、PD1,PD2・・・ペイロードデータ、APD・・・アライブペイロードデータ