(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180415
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】積層体、硬化性樹脂組成物、積層体の製造方法、接合電極を有する基板の製造方法、半導体装置及び撮像装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/768 20060101AFI20221129BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20221129BHJP
C08G 77/04 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
H01L21/90 S
H01L27/146 F
C08G77/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022140717
(22)【出願日】2022-09-05
(62)【分割の表示】P 2021552191の分割
【原出願日】2021-06-18
(31)【優先権主張番号】P 2020107273
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】塩島 太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 憲一朗
(72)【発明者】
【氏名】出口 英寛
(72)【発明者】
【氏名】石澤 英亮
(72)【発明者】
【氏名】畠井 宗宏
(72)【発明者】
【氏名】七里 徳重
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い電気的接続信頼性を有する積層体、該積層体に用いられる硬化性樹脂組成物、該積層体の製造方法、該積層体の製造に用いる接合電極を有する基板の製造方法並びに該積層体を有する半導体装置及び撮像装置を提供する。
【解決手段】積層体は、電極3を有する第1の基板1と、有機膜4と、電極3を有する第2の基板2とをこの順に有し、第1の基板1が有する電極3と第2の基板2が有する電極3とが、有機膜4を貫通する貫通孔5を介して電気的に接続する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を有する第1の基板と、有機膜と、電極を有する第2の基板とをこの順に有し、前記第1の基板が有する電極と前記第2の基板が有する電極とが、前記有機膜を貫通する貫通孔を介して電気的に接続されている積層体。
【請求項2】
前記有機膜は、400℃、4時間の熱処理後の重量減少率が5%以下である、請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記有機膜は、ナノインデンターにより測定した表面の硬度が5GPa以下である、請求項1又は2記載の積層体。
【請求項4】
前記有機膜は、硬化性樹脂組成物の硬化物である、請求項1~3のいずれか1つに記載の積層体。
【請求項5】
前記有機膜は、有機ケイ素化合物を含有する、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記有機ケイ素化合物は、下記一般式(1)で表される構造を有する、請求項5記載の積層体。
【化1】
ここで、R
0、R
1及びR
2はそれぞれ独立して直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族基、芳香族基又は水素を表す。前記脂肪族基及び前記芳香族基は置換基を有していても有していなくてもよい。m、nはそれぞれ1以上の整数を表す。
【請求項7】
前記有機ケイ素化合物は、芳香環構造を有する、請求項5又は6記載の積層体。
【請求項8】
前記有機膜は、硬化反応を促進する触媒を含有する、請求項1~7のいずれか1つに記載の積層体。
【請求項9】
前記第1の基板と、前記第2の基板との間に厚み1nm以上1μm以下の無機層を有する、請求項1~8のいずれか1つに記載の積層体。
【請求項10】
前記貫通孔の表面にバリアメタル層を有する、請求項1~9のいずれか1つに記載の積層体。
【請求項11】
電極を有する第1の基板と、有機膜と、電極を有する第2の基板とをこの順に有し、前記第1の基板が有する電極と第2の基板が有する電極とが、前記有機膜を貫通する貫通孔を介して電気的に接続された積層体の前記有機膜の形成に用いられる硬化性樹脂組成物。
【請求項12】
前記硬化性樹脂組成物は、その硬化物の25℃における引張弾性率が1GPa以下である、請求項11に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項13】
反応性部位を有する有機ケイ素化合物を含有する、請求項11又は12記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項14】
前記反応性部位を有する有機ケイ素化合物は、下記一般式(1)で表される構造を有する、請求項13記載の硬化性樹脂組成物。
【化2】
ここで、R
0、R
1及びR
2はそれぞれ独立して直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族基、芳香族基又は水素を表す。前記脂肪族基及び前記芳香族基は置換基を有していても有していなくてもよい。m、nはそれぞれ1以上の整数を表す。
【請求項15】
前記有機ケイ素化合物は、芳香環構造を有する、請求項13又は14記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項16】
前記反応性部位を有する有機ケイ素化合物の含有量が、硬化性樹脂組成物中の樹脂固形分量100重量部中に90重量部以上98重量部以下である、請求項13~15のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項17】
硬化反応を促進する触媒を含有する、請求項11~16のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項18】
前記反応性部位を有する有機ケイ素化合物の反応性部位と反応可能な多官能架橋剤を含有する請求項13~17のいずれか1つに記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項19】
電極を有する第1の基板の電極が形成された面上に有機膜を形成する工程と、
前記有機膜に貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔を導電性材料で充填する工程と、
前記基板の導電性材料を充填した側の表面を研磨して接合電極を形成する工程と、
前記接合電極が形成された前記第1の基板及び前記接合電極が形成された第2の基板を、前記接合電極同士が接合するように貼り合わせる工程とを有する、積層体の製造方法。
【請求項20】
電極を有する基板の電極が形成された面上に有機膜を形成する工程と、
前記有機膜に貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔を導電性材料で充填する工程と、
前記基板の表面を研磨して接合電極を形成する工程とを有する、接合電極を有する基板の製造方法。
【請求項21】
請求項1~10のいずれか1つに記載の積層体を有する半導体装置。
【請求項22】
請求項1~10のいずれか1つに記載の積層体を有する撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い電気的接続信頼性を有する積層体、該積層体に用いられる硬化性樹脂組成物、該積層体の製造方法、該積層体の製造に用いる接合電極を有する基板の製造方法及び該積層体を有する半導体装置及び撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の高性能化に伴い、複数の半導体チップを積層させる三次元化が進行している。このような複数の半導体チップが積層した積層体の製造では、まず、2枚の電極が形成された基板の電極面にダマシン法により、銅からなる接合電極が絶縁膜で囲まれた接合面を形成する。その後、接合面の接合電極同士が対向するように2枚の基板を重ね、熱処理を施すことにより積層体が製造される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記積層体の製造では、電極の接合の際に400℃、4時間という高温処理が行われるため、上記接合面の形成に用いられる絶縁膜には高い耐熱性が要求される。そのため、従来の積層体では、絶縁体としてSiNやSiO2といった絶縁性の無機材料が用いられている。しかしながら、無機材料からなる絶縁膜は基板に反りが発生しやすく、基板に反りが発生すると積層体としたときに電極の接続位置がズレたり、電極が割れたりしてしまうことから、積層体の接続信頼性が低くなることがある。また、近年は半導体装置の高性能化が進み、基板が大型化、薄化してきていることから、基板の反りがより発生しやすくなってきている。
【0005】
本発明は、高い電気的接続信頼性を有する積層体、該積層体に用いられる硬化性樹脂組成物、該積層体の製造方法、該積層体の製造に用いる接合電極を有する基板の製造方法及び該積層体を有する半導体装置及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電極を有する第1の基板と、有機膜と、電極を有する第2の基板とをこの順に有し、前記第1の基板が有する電極と前記第2の基板が有する電極とが、前記有機膜を貫通する貫通孔を介して電気的に接続されている積層体である。以下、本発明を詳述する。
【0007】
本発明の積層体は、電極を有する第1の基板と、有機膜と、電極を有する第2の基板とをこの順に有し、上記第1の基板が有する電極(第1の電極)と第2の基板が有する電極(第2の電極)とが、上記有機膜を貫通する貫通孔を介して電気的に接続されている。
第1の電極と第2の電極との間に設けられた有機膜が絶縁層として働くことによって、電流の短絡を抑えることができる。従来の絶縁層はSiNやSiO2といった固い無機材料を用いていたため、絶縁層の形成時や積層体の形成時に反りが発生した場合、これを応力緩和で解消することができず、その結果、電極のズレや割れが起こりやすくなっていた。本発明では、無機材料よりも柔軟性の高い有機膜を絶縁層として用いることで、高い電気的接続信頼性を発揮することができる。特に、基板又は積層体に反りが発生した場合であっても反りを解消することができるため、反りが発生しやすい薄い基板を積層させた場合であっても電極のズレや割れが少なく高い電気的接続信頼性を有する積層体とすることができる。また、従来の絶縁層は、蒸着によって形成していたため、形成に時間がかかっていたが、本発明の積層体の有機膜は、例えば硬化性樹脂の塗布、硬化によって形成できるため、生産効率を高めることができる。
なおここで、電気的に接続されているとは、上記貫通孔に充填された導電性材料等によって第1の基板の電極及び第2の基板の電極が接続されている状態のことを指す。
【0008】
上記第1の基板及び第2の基板は、特に限定されず、素子、配線及び電極が形成された回路基板を用いることができる。例えば、画素部(画素領域)が設けられたセンサ回路基板、固体撮像装置の動作に係る各種信号処理を実行するロジック回路等の周辺回路部が搭載された回路基板などを用いることができる。
【0009】
上記第1の基板及び第2の基板が有する電極の材料及び上記導電性材料は特に限定されず、金、銅、アルミニウム等の従来公知の電極材料を用いることができる。
【0010】
上記有機膜は、有機化合物を素材として含む層である限り、特に制限されないが、樹脂を素材として含む層であることが好ましい。上記有機膜は、本発明の効果が著しく損なわれない限りにおいて、上記樹脂素材以外の成分が含まれていてもよい。その場合、有機膜中の樹脂素材の含有量は、例えば好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上、更に好ましくは99重量%以上であり、通常100重量%未満である。
上記樹脂素材としては、後述する有機ケイ素化合物、ポリシロキサン樹脂等を用いることができる。
【0011】
上記有機膜は、400℃、4時間の熱処理後の重量減少率が5%以下であることが好ましい。
有機膜の熱処理後の重量減少率が上記範囲であることで、基板をより確実に接合できるとともに、電極接合の際に分解した有機膜に起因する界面での気泡、クラックの発生や界面での剥離をより抑えることができる。上記重量減少率は、3%以下であることがより好ましく、1%以下であることが更に好ましい。上記重量減少率の下限は特に限定されず、0%に近いほど良いものであるが、製造技術上0.5%程度が限度である。
上記400℃、4時間の熱処理後の重量減少率は、有機膜の組成、有機膜を構成する樹脂素材の種類、有機膜を製造する際の硬化条件等により調整することができる。
具体的には例えば、有機膜の組成を、例えば耐熱性の高い樹脂素材や無機成分を用いること、架橋剤の含有量を増やすこと等により、上記400℃、4時間の熱処理後の重量減少率を減少させることができる。
また、有機膜を構成する樹脂素材の種類を、耐熱性の高い樹脂(例えば分子量の大きい樹脂や、耐熱性の高い主鎖や置換基を有する樹脂、後述する有機ケイ素化合物)にすることや、有機膜を構成する硬化性樹脂組成物の硬化条件を、硬化が十分に進行するような高温としたり、硬化時間を長時間としたりすることで、上記400℃、4時間の熱処理後の重量減少率を減少させることができる。
【0012】
上記有機膜は、ナノインデンターにより測定した表面の硬度が5GPa以下であることが好ましい。
表面の硬度が上記範囲である有機膜は柔軟性が高いため、基板又は積層体に反りがより生じ難くなり、また、反りが発生したとしても反りをより解消しやすくなることから、電極のズレや割れをより抑えることができる。
上記表面硬度は5GPa以下であることがより好ましく、1GPa以下であることが更に好ましい。
上記表面硬度の下限は特に限定されないが、例えば0.1GPa、0.2GPaであり、好ましくは0.3GPaである。
上記有機膜のナノインデンターにより測定した表面硬度は、上記有機膜を構成する樹脂成分の種類や有機膜の組成により調整することができる。具体的には例えば、ガラス転移点の高い剛直な骨格を導入したり、無機充填剤を添加することで上昇させることができ、ガラス転移点の低い剛直な骨格を有する化合物や後述する有機ケイ素化合物を用いたりすることで低下させることができる。
なお、ここでナノインデンターとは、試料の表面に針を刺したときに加えた力と応力との関係から硬度を測定する装置であり、試料の硬度を測定することができる。上記表面の硬度は、例えば、以下の方法で測定することができる。
まず、積層体の側面(積層面)を冷間樹脂で包埋し断面研削装置によって有機膜が露出するまで研削する。その後、ナノインデンター(TI 950 TriboIndenter、シエンタオミクロン社製又はその同等品)を用いて、測定温度23℃、測定変位200nm/秒の速度でサンプルを1000nm押し込み、その後200nm/秒の速度で測定プローブを抜く条件で測定を行うことによって得ることができる。なお、測定プローブはBerkovich型ダイアモンド圧子を用いる。
【0013】
上記有機膜の厚みは特に限定されないが、10μm以上300μm以下であることが好ましい。
有機膜の厚みが上記範囲であることで、絶縁層としての機能をより発揮することができるとともに、電極のズレや割れをより抑えることができる。上記有機膜の厚みは20μm以上であることがより好ましく、30μm以上であることが更に好ましく、200μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることが更に好ましい。
【0014】
上記有機膜は、有機ケイ素化合物を含有することが好ましく、下記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。有機ケイ素化合物を用いることで電極のズレや割れをより抑えることができる。また、有機ケイ素化合物は耐熱性に優れるため、積層体製造時や積層体を用いた電子部品の製造時に行われる高温処理による有機膜の分解をより抑えることができる。なかでも、耐熱性がより向上し、かつ、電極のズレや割れを更に抑えられることから、上記有機ケイ素化合物は更に芳香環構造を有することがより好ましい。
【0015】
【化1】
ここで、R
0、R
1及びR
2はそれぞれ独立して直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族基、芳香族基又は水素を表す。上記脂肪族基及び上記芳香族基は置換基を有していても有していなくてもよい。m、nはそれぞれ1以上の整数を表す。
【0016】
上記一般式(1)中R0はそれぞれ独立して直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族基、芳香族基又は水素を表す。上記脂肪族基及び上記芳香族基は置換基を有していても有していなくてもよい。上記R0はフェニル基、炭素数が1~20のアルキル基又はアリールアルキル基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。R0がフェ二ル基、炭素数が1~20のアルキル基又はアリールアルキル基であることにより、より高い耐熱性を発揮することができる。
【0017】
上記一般式(1)中R1及びR2はそれぞれ独立して直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族基、芳香族基又は水素を表す。上記脂肪族基及び上記芳香族基は置換基を有していても有していなくてもよい。上記R1及びR2はフェニル基、炭素数が1~20のアルキル基又はアリールアルキル基であることが好ましく、フェニル基又はメチル基であることがより好ましい。R1及びR2がフェ二ル基、炭素数が1~20のアルキル基又はアリールアルキル基であることにより、より高い耐熱性を発揮することができる。
【0018】
上記一般式(1)中、m、nはそれぞれ1以上の整数であり、繰り返し単位数を表す。上記mは好ましくは30以上、より好ましくは50以上であり、好ましくは100以下である。上記nは好ましくは1以上、より好ましくは3以上であり、好ましくは8以下である。
【0019】
上記有機膜は硬化性樹脂組成物の硬化物であることが好ましい。
上記有機膜の材料として硬化性樹脂組成物を用いることで、硬化性樹脂組成物を塗布し成膜した後に、硬化させることによって有機膜を形成できるため、従来の無機材料を用いた場合と比べて生産効率を向上させることができる。硬化性樹脂組成物を構成する硬化性樹脂は熱硬化性であっても光硬化性であってもよいが、耐熱性の観点から熱硬化性樹脂であることが好ましい。
【0020】
上記硬化性樹脂組成物は、反応性部位を有する有機ケイ素化合物を含有することが好ましい。
硬化性樹脂組成物の硬化性樹脂として反応性部位を有する有機ケイ素化合物を用いることで、電極のズレや割れをより抑えることができる。また、有機ケイ素化合物は耐熱性に優れるため、積層体や積層体を用いた電子部品の製造時に行われる高温処理による有機膜の分解をより抑えることができる。上記反応性部位としては例えば、水酸基、アルコキシ基等が挙げられる。
【0021】
上記反応性部位を有する有機ケイ素化合物の含有量は、上記硬化性樹脂組成物中の樹脂固形分量100重量部中に、好ましくは80重量部以上、より好ましくは90重量以上、更に好ましくは95重量部以上である。上記反応性部位を有する有機ケイ素化合物の含有量は、上記硬化性樹脂組成物中の樹脂固形分量100重量部中に、好ましくは100重量部未満、より好ましくは98重量部以下である。
【0022】
上記反応性部位を有する有機ケイ素化合物は、下記一般式(1)で表される構造を有することが好ましい。
このような反応性部位を有する有機ケイ素化合物を用いることで電極のズレや割れをより抑えることができる。なかでも、電極のズレや割れを更に抑えられることから、上記反応性部位を有する有機ケイ素化合物は芳香環構造を有することがより好ましい。
【0023】
【化2】
ここで、R
0、R
1及びR
2はそれぞれ独立して直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族基、芳香族基又は水素を表す。上記脂肪族基及び上記芳香族基は置換基を有していても有していなくてもよい。m、nはそれぞれ1以上の整数を表す。
【0024】
上記一般式(1)中R0はそれぞれ独立して直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族基、芳香族基又は水素を表す。上記脂肪族基及び上記芳香族基は置換基を有していても有していなくてもよい。上記R0はフェニル基、炭素数が1~20のアルキル基又はアリールアルキル基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。R0がフェ二ル基、炭素数が1~20のアルキル基又はアリールアルキル基であることにより、より高い耐熱性を発揮することができる。
【0025】
上記一般式(1)中R1及びR2はそれぞれ独立して直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族基、芳香族基又は水素を表す。上記脂肪族基及び上記芳香族基は置換基を有していても有していなくてもよい。上記R1及びR2はフェニル基、炭素数が1~20のアルキル基又はアリールアルキル基であることが好ましく、フェニル基又はメチル基であることがより好ましい。R1及びR2がフェ二ル基、炭素数が1~20のアルキル基又はアリールアルキル基であることにより、より高い耐熱性を発揮することができる。
【0026】
上記一般式(1)中、m、nはそれぞれ1以上の整数であり、繰り返し単位数を表す。上記mは好ましくは30以上、より好ましくは50以上であり、好ましくは100以下である。上記nは好ましくは1以上、より好ましくは3以上であり、好ましくは8以下である。
【0027】
上記硬化性樹脂組成物は、その硬化物の25℃における引張弾性率が5GPa以下であることが好ましい。引張弾性率が上記範囲であることで、柔軟性がより高まることから、基板及び積層体の反りの発生をより抑えることができ、電極のズレや割れをより抑えることができる。上記引張弾性率は1Gpa以下であることがより好ましく、700MPa以下であることが更に好ましく、500MPa以下であることが更により好ましい。上記引張弾性率の下限は特に限定されないが、基板同士を確実に接続する観点から100MPa以上であることが好ましい。なお、上記引張弾性率は動的粘弾性測定装置(例えば、アイティー計測制御社製、DVA-200等)によって測定することができる。より具体的には、硬化性樹脂組成物が熱硬化性である場合、70℃で30分間加熱後、更に90℃で1時間加熱することで溶剤乾燥し、更に200℃で1時間加熱し硬化性樹脂組成物を硬化させた後に、定速昇温引張モード、昇温速度10℃/分、周波数10Hzの条件で測定する。硬化性樹脂組成物が光硬化性である場合は、70℃で30分間加熱後、更に90℃で1時間加熱することで溶剤乾燥し、405nmのUVを3000mJ/cm2照射して硬化性樹脂組成物を硬化させたのち、熱硬化性の硬化性樹脂組成物と同様の測定条件で測定することができる。
上記25℃における引張弾性率は硬化性樹脂組成物の組成や、硬化性樹脂の種類により調整することができる。
具体的には例えば、ガラス転移点の高い剛直な骨格を導入したり、無機充填剤を添加することで引張弾性率を上昇させることができ、ガラス転移点の低い剛直な骨格を有する化合物や上記有機ケイ素化合物を用いたりすることで、引張弾性率を低下させることができる。
【0028】
上記硬化性樹脂の重量平均分子量は特に限定されないが、5000以上150000以下であることが好ましい。硬化性樹脂の分子量が上記範囲であることで、塗布時の製膜性が上がり、電極のズレや割れをより抑えることができる。上記硬化性樹脂の分子量は10000以上であることがより好ましく、30000以上であることが更に好ましく、100000以下であることがより好ましく、70000以下であることが更に好ましい。
なお、上記硬化性樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)法によりポリスチレン換算分子量として測定される。溶出溶剤をTHFとして、カラムとしては、HR-MB-M6.0×150mm(ウォーターズ社製)又はその同等品を用い、ポリスチレン標準によって算出することができる。
【0029】
上記一般式(1)の構造を有する化合物は、例えば、下記一般式(2)で表される化合物(2)と、下記一般式(3)で表される化合物(3)とを反応させることにより得ることができる。
【0030】
【化3】
上記一般式(2)中、R
0及びR
1は上記一般式(1)におけるR
0及びR
1と同様の官能基を表す。
【0031】
【化4】
上記一般式(3)中、R
2は上記一般式(1)におけるR
2と同様の官能基を表す。上記一般式(3)中、hは自然数を表し、好ましくは3~6、より好ましくは3又は4である。
【0032】
上記一般式(1)の構造を有する化合物は、上記化合物(3)に代えて、R2を有するハロゲン化シロキサン(例えば末端が塩素化されたジメチルシロキサン等)と、上記化合物(2)とを反応させることでも得ることができる。
【0033】
上記化合物(2)は、例えば、下記一般式(4)で表される化合物(4)のような塩と下記一般式(5)で表される化合物(5)とを反応させることにより得ることができる。なお、上記化合物(2)は、Xが水素である化合物(5)を用いて化合物(4)と反応させた後に加水分解することによっても得ることができる。
【0034】
【化5】
上記一般式(4)中、R
0は上記一般式(1)におけるR
0及びR
1と同様の官能基を表す。
【0035】
【化6】
上記一般式(5)中、R
1は、上記一般式(1)におけるR
1と同様の官能基を意味し、Xは水素又は水酸基を意味する。
【0036】
上記化合物(4)は、例えば、下記一般式(6)で表される化合物(6)を1価のアルカリ金属水酸化物及び水の存在下、有機溶剤の存在下もしくは不存在下で加水分解、重縮合することにより製造することができる。1価のアルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等を用いることができる。
【化7】
上記一般式(6)中、R
0は上記一般式(1)におけるR
0と同様の官能基を意味する。
【0037】
上記硬化性樹脂組成物は硬化反応を促進する触媒を含有することが好ましい。
硬化性樹脂組成物が触媒を有することで、硬化性樹脂をより完全に硬化させることができ、高温処理による有機膜の分解をより抑えることができる。
上記触媒としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、酢酸第一スズ等の有機スズ化合物、ナフテン酸亜鉛等の金属カルボキシレート、ジルコニア化合物、チタン化合物等が挙げられる。なかでもより硬化性樹脂組成物の硬化を促進できることからジブチルスズジラウレートが好ましい。
上記触媒は、硬化性樹脂組成物が硬化した後も存在する。すなわち、上記有機膜は硬化反応を促進する触媒を含有することが好ましい。
【0038】
上記触媒の含有量は特に限定されないが、上記硬化性樹脂組成物中の硬化性樹脂100重量部に対して0.01重量部以上10重量部以下であることが好ましい。触媒の含有量を上記範囲とすることで、硬化性樹脂組成物の硬化をより促進することができる。上記触媒の含有量は、0.1重量部以上であることがより好ましく、1重量部以上であることが更に好ましく、7重量部以下であることがより好ましく、5重量部以下であることが更に好ましい。
【0039】
上記硬化性樹脂組成物は、上記反応性部位を有する有機ケイ素化合物の反応性部位と反応可能な多官能架橋剤を含有することが好ましい。
上記反応性部位を有する有機ケイ素化合物の重合体間を有機ケイ素化合物の反応性部位と反応可能な多官能架橋剤が架橋することで、硬化物の架橋密度が上昇し、高温中の分解がより抑制される。その結果、高温処理中の分解ガスの発生による空隙の発生や、それによる接続時の電極のズレや電気的接続信頼性の低下をより抑制することができる。上記多官能架橋剤としては、例えば、上記反応性部位がシラノール基である場合は、ジメトキシシラン化合物、トリメトキシシラン化合物、ジエトキシシラン化合物、トリエトキシシラン化合物等のアルコキシシラン化合物等又はテトラメトキシシラン化合物及びテトラエトキシシラン化合物の縮合より得られるシリケートオリゴマー等が挙げられる。なかでも架橋密度の向上と耐熱性向上の観点から、シリケートオリゴマーが好ましい。アルコキシシラン化合物の例としては、ジメトキシジメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等があり、シリケートオリゴマーの例としては、シリケートMS51、MS56、MS57、MS56S(いずれも三菱ケミカル社製)、エチルシリケート40、エチルシリケート48、EMS485(いずれもコルコート社製)等が挙げられる。
【0040】
上記多官能架橋剤の含有量は特に限定されないが、上記硬化性樹脂組成物中の硬化性樹脂100重量部に対して1重量部以上50重量部以下であることが好ましい。多官能架橋剤の含有量を上記範囲とすることで、有機膜の架橋密度を好適な範囲にし、かつ熱処理時の有機膜の硬度を上記の範囲とすることができる。上記多官能架橋剤の含有量は、3重量部以上であることがより好ましく、5重量部以上であることが更に好ましく、30重量部以下であることがより好ましく、20重量部以下であることが更に好ましい。
【0041】
上記硬化性樹脂組成物は必要に応じて粘度調整剤、充填剤、密着付与剤等の他の添加剤を含有していてもよい。
【0042】
本発明の積層体は上記硬化性樹脂組成物を硬化させて上記有機膜とすることで、高い電気的接続信頼性を有する積層体とすることができるものである。
このような、電極を有する第1の基板と、有機膜と、電極を有する第2の基板とをこの順に有し、前記第1の基板が有する電極と第2の基板が有する電極とが、前記有機膜を貫通する貫通孔を介して電気的に接続された積層体の前記有機膜に用いられる硬化性樹脂組成物もまた、本発明の1つである。
【0043】
本発明の積層体は、上記第1の基板と、上記第2の基板との間に厚み1nm以上1μm以下の無機層を有することが好ましい。
第1の基板と、第2の基板との間に無機層を設けることで、絶縁性が高まりより接続信頼性に優れる積層体とすることができる。なお、従来は10~20μm程度の厚みを有する無機材料からなる絶縁層を有しているため、基板及び積層体の反りが解消できず接続信頼性低下の原因となるが、本発明の一形態における無機層は1μm以下という薄い厚みであるため、上記無機層を設けた場合であっても基板及び積層体に発生した反りを解消することができる。
【0044】
上記無機層の材料は特に限定されず、例えば、SiN、SiO2、Al2O3等が挙げられる。なかでも、絶縁性と耐熱性に優れることからSiN、SiO2が好ましい。
【0045】
上記無機層の厚みは、より積層体の接続信頼性を高める観点から5nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることが更に好ましく、500nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることが更に好ましい。
【0046】
本発明の積層体は、上記貫通孔の表面にバリアメタル層を有することが好ましい。
バリアメタル層は貫通孔に充填された導電性材料(例えばCu電極の場合Cu原子)の有機膜中への拡散を防ぐ役割を有する。貫通孔の表面にバリアメタル層を設けることで、貫通孔を埋める導電性材料は電極と接する面以外がバリアメタル層で覆われることになるため、導電性材料の有機膜への拡散による短絡、導通不良をより抑制することができる。上記バリアメタル層の材料は、タンタル、窒化タンタル、窒化チタンなどの公知の材料を用いることができる。
【0047】
上記バリアメタル層の厚みは特に限定されないが、より積層体の接続信頼性を高める観点から1nm以上であることがより好ましく、10nm以上であることが更に好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0048】
ここで、本発明の積層体の一態様を模式的に表した図を
図1に示す。
図1に示すように、本発明の積層体は、電極3を有する第1の基板1と第2の基板2が有機膜4を介して接着されており、第1の基板1及び第2の基板2上の電極3は、有機膜4に設けられた貫通孔5に充填された導電性材料を通して電気的に接続された構造となっている。従来の積層体は、絶縁層に当たる有機膜4の部分が固い無機材料であったため、基板や積層体に反りが発生した場合にこれを応力緩和によって解消できず、電極のズレや割れが起きやすくなっていた。本発明は絶縁層に柔軟性を有する有機化合物を用いることで、基板や積層体の反りを解消できるため、電極のズレや割れを抑えることができる。
【0049】
図2に本発明の積層体の一態様を模式的に表した図を示した。
図2の態様では、有機膜4の間に無機層6が設けられており、より絶縁性が高められている。なお、本発明の無機層6は厚みが1nm~1μmとなっており、従来の積層体の絶縁層よりも薄いため、基板や積層体の反りを解消する際の妨げとならない。また、
図2では無機層6が有機膜4の間に設けられているが、第1の基板1及び第2の基板2上に設けられていてもよい。また、
図2では無機層6が、第1の基板1側及び第2の基板2側の有機膜4上にそれぞれ設けられているが、どちらか一方のみに設けられていてもよい。更に、
図2の態様では貫通孔5の表面にバリアメタル層7が設けられている。貫通孔5の表面にバリアメタル層7を形成することで、貫通孔5内に充填される導電性材料が有機膜に4に拡散し難くなるため、短絡や導通不良をより抑えることができる。
【0050】
本発明の積層体を製造する方法としては例えば、電極を有する第1の基板の電極が形成された面上に有機膜を形成する工程と、前記有機膜に貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔を導電性材料で充填する工程と、前記基板の導電性材料を充填した側の表面を研磨して接合電極を形成する工程と、前記接合電極が形成された前記第1の基板及び前記接合電極が形成された第2の基板を、前記接合電極同士が接合するように貼り合わせる工程とを有する製造方法が挙げられる。このような、積層体の製造方法もまた、本発明の1つである。
【0051】
本発明の積層体の製造方法は、まず、電極を有する第1の基板の電極が形成された面上に有機膜を形成する工程を行う。
上記電極を有する第1及び第2の基板及び有機膜は、本発明の積層体の電極を有する第1及び第2の基板及び有機膜と同様のものを用いることができる。
【0052】
上記有機膜を形成する工程は、硬化性樹脂組成物を塗布した後、溶媒乾燥に加えて、硬化性樹脂組成物を硬化させる工程を有することが好ましい。
上記硬化性樹脂組成物は、本発明の硬化性樹脂組成物と同様のものを用いることができる。
上記塗布の方法は特に限定されず、スピンコート法等従来公知の方法を用いることができる。
溶剤乾燥条件は特に限定されないが、残存溶剤を減らし有機膜の耐熱性を向上させる観点から、好ましくは70℃以上、より好ましくは100℃以上、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下の温度で、例えば30分、より好ましくは1時間程度加熱することが好ましい。
硬化条件は特に限定されないが、硬化反応を十分に進行させ、耐熱性をより向上させる観点から、硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂の場合は、好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上、好ましくは400℃以下、より好ましくは300℃以下の温度で、例えば1時間以上、より好ましくは2時間以上程度加熱することが好ましい。加熱時間の上限は特に限定されないが、有機膜の熱分解を抑制する観点から3時間以下であることが好ましい。硬化性樹脂組成物が光硬化性樹脂の場合は、405nmの紫外光を、好ましくは1500mJ/cm2以上、より好ましくは3000mJ/cm2以上照射することが好ましい。
【0053】
本発明の積層体の製造方法は、次いで、上記有機膜に貫通孔を形成する工程を行う。
上記貫通孔はパターニングされていてもよい。上記貫通孔を形成する方法は特に限定されず、CO2レーザー等のレーザー照射やエッチング等によって形成することができる。なお上記貫通孔は基板の電極面上に他の層が形成されている場合、上記他の層も貫通して基板の電極面が露出するように形成される。
【0054】
本発明の積層体の製造方法は、次いで、必要に応じて無機層及び/又はバリアメタル層を形成する工程を行う。
上記無機層及びバリアメタル層は本発明の積層体と同様のものを用いることができる。上記無機層及びバリアメタル層はスパッタリングや蒸着等によって形成することができる。
上記無機層を形成する工程は、上記有機膜を形成する工程の前及び/又は後に行うことが好ましい。上記バリアメタル層の形成は上記貫通孔を形成する工程の後に行うことが好ましい。
【0055】
本発明の積層体の製造方法は、次いで、前記貫通孔を導電性材料で充填する工程を行う。上記導電性材料を充填する方法としてはメッキなどを用いることができる。
上記導電性材料は、本発明の積層体の導電性材料と同様のものを用いることができる。
【0056】
本発明の積層体の製造方法は、次いで、前記基板の導電性材料を充填した側の表面を研磨して接合電極を形成する工程を行う。
研削によって不要な部分に形成された上記導電性材料を除去することで2枚の基板に形成された電極間をつなぐ接合電極が形成される。上記研磨は、有機膜が露出する、又は、上記無機層がある場合は無機層が露出するまで、導電性材料で形成された層を平坦化除去することが好ましい。
上記研磨方法は特に限定されず、例えば化学的機械研磨法などを用いることができる。
【0057】
このような、電極を有する基板の電極が形成された面上に有機膜を形成する工程と、前記有機膜に貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔を導電性材料で充填する工程と、前記基板の表面を研磨して接合電極を形成する工程とを有する、接合電極を有する基板の製造方法もまた、本発明の1つである。
上記接合電極を有する基板は、基板間の接合電極同士が接合するように貼り合わせることで、積層体を形成するための部材である。上記基板、有機膜、硬化性樹脂組成物及びその他の構成及び各工程については、本発明の積層体、硬化性樹脂組成物及び積層体の製造方法に関する説明と同様である。
【0058】
本発明の積層体の製造方法は、次いで、上記接合電極が形成された前記第1の基板及び上記接合電極が形成された第2の基板を、上記接合電極同士が接合するように貼り合わせる工程を行う。
第1の基板と第2の基板を貼り合わせる方法としては、熱処理によって電極及び接続電極を溶融させて接続する方法等が挙げられる。上記熱処理は通常400℃4時間程度である。
【0059】
本発明の積層体の用途は特に限定されないが、高い電気的接続信頼性を有し、特に薄い基板同士を接合させる場合であっても基板や積層体の反りが抑えられることから、半導体装置、撮像装置を構成する積層体に好適に用いることができる。
このような本発明の積層体を有する半導体装置及び撮像装置もまた、本発明の1つである。
【発明の効果】
【0060】
本発明によれば、高い電気的接続信頼性を有する積層体、該積層体に用いられる硬化性樹脂組成物、該積層体の製造方法、該積層体の製造に用いる接合電極を有する基板の製造方法及び該積層体を有する半導体装置及び撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】本発明の積層体の一態様を模式的に表した図である。
【
図2】本発明の積層体の一態様を模式的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下に実施例を掲げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0063】
(硬化性樹脂の製造)
(1)POSS-Aの製造
還流冷却器、温度計、及び滴下漏斗を取り付けた反応容器に、フェニルトリメトキシシラン(東京化成工業社製 分子量198.29)320g、水酸化ナトリウム8.8g、水6.6g、及び2-プロパノール263mLを加えた。窒素気流下、撹拌しながら加熱を開始した。還流開始から6時間撹拌を継続したのち室温で1晩静置した。そして反応混合物を濾過器に移し、窒素ガスで加圧して濾過した。得られた固体を2-プロピルアルコールで1回洗浄、濾過したのち80℃で減圧乾燥を行うことにより、無色固体(DD-ONa)330gを得た。
【0064】
次に、還流冷却器、温度計、及び滴下漏斗を取り付けた反応容器にシクロペンチルメチルエーテル20g、2-プロパノール2.4g、イオン交換水14g、ジクロロメチルシラン(東京化成工業社製 分子量115.03)7.25gを加え、窒素雰囲気下、室温で攪拌した。続いて滴下ロートに、上記得られた化合物(DD-ONa)8g、シクロペンチルメチルエーテル20gを加え、スラリー状にして30分かけて反応器に滴下し、滴下終了後30分攪拌を継続した。反応後攪拌を停止し、静置して有機層と水層に分けた。得られた有機層は水洗により中性とした後、メンブレンフィルタにてゴミを取り除き、ロータリーエバポレーターを用いて60℃で減圧濃縮して、9.5gの無色固体を得た。この無色固体を酢酸メチル10gで洗浄し、減圧乾燥して無色粉末状の固体(DD(Me)-OH)6.2gを得た。
【0065】
100mLフラスコに冷却管、メカニカルスターラー、ディーンスターク管、オイルバス、温度計保護管を取り付け、フラスコ内部を窒素置換した。DD(Me)-OH5.0g、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)2.5g、RCP-160M(強酸性陽イオン交換樹脂、三菱化学(株)製:含水量23.4mass%)0.5g、脱水トルエン51.0mLをフラスコに入れた。1時間還流を行い、トルエン22.4mLとRCP-160Mに23.4mass%含まれる水0.12gを抜き出した。還流終了後80℃まで冷却し、純水を0.55g加えて80℃で熟成させたところ、5時間で平衡に達した。室温まで冷却後、RCP-160Mをろ別し、得られたろ液を1回水洗した。その後、ろ液の溶媒及び低沸成分を留去して、得られた粗生成物をヘプタンで再沈殿させて精製することで下記式(7)の構造を有し、m2が55、n2が平均4である有機ケイ素化合物(POSS-A、重量平均分子量13万)を得た。
【0066】
【0067】
(2)POSS-Bの製造
オクタメチルシクロテトラシロキサンの投入量を5.0gとした以外はPOSS-Aの製造と同様の方法で上記式(2)の構造を有し、m2が38、n2が平均8である有機ケイ素化合物(POSS-B、重量平均分子量13万)を得た。
【0068】
(3)POSS-Cの製造
オクタメチルシクロテトラシロキサンの投入量を1.5gとした以外はPOSS-Aの製造と同様の方法で上記式(2)の構造を有し、m2が50、n2が平均2である有機ケイ素化合物(POSS-C、重量平均分子量9万)を得た。
【0069】
(4)POSS-Dの製造
フェニルトリメトキシシランを、メチルトリメトキシシラン(東京化成工業社製 分子量136.22)に変更し、投入量を210gとした以外はPOSS-Aの製造と同様の方法で下記式(8)の構造を有し、m2が60、n2が平均4である有機ケイ素化合物(POSS-D、重量平均分子量11万)を得た。
【0070】
【0071】
(5)POSS-E
小西化学工業社製SR-13を用いた。なお、SR-13は、式(1)を満たさないシルセスキオキサン化合物である。
【0072】
(6)POSS-F
小西化学工業社製SR-33を用いた。なお、SR-33は、芳香環基を有する式(1)を満たさないシルセスキオキサンである。
【0073】
(7)PDMS樹脂
PDMS樹脂として信越化学社製のKR-255を用いた。
【0074】
(8)ウエハ1の製造
12inchシリコンウエハ上にプラズマCVDにより、SiO:500nm、SiCN:50nm、SiO:250nmの順に成膜した。フォトマスクを用い、表層の250nmのSiO層をエッチングし、その後バリアメタル層としてTaを50nm、更にその上にTaNを10nm形成し、Cuメッキを行い、CMPにより平坦化し、電極パターンを作製した。電極パターン上に、SiCN層(50nm)、SiO層(500nm)をプラズマCVDにより順に成膜し、電極を有するウエハ1を得た。
(9)ウエハ2の製造
対向する接続電極及びウエハに形成された電極により、貼り合わせた際にデイジーチェーンができるようにパターン加工した以外は、ウエハ1と同様にしてウエハ2を作製した。
【0075】
(実施例1)
得られたPOSS-A100重量部、触媒としてジブチルスズジラウレート0.1重量部、架橋剤としてシリケートMS51(三菱ケミカル社製)1重量部をプロピレングリコールモノエチルアセテートに溶かし樹脂固形分量が50%となるように混合することで硬化性樹脂組成物溶液を得た。
次いで、ウエハ1の電極が形成された面に得られた硬化性樹脂組成物溶液をスピンコーターにより塗工し、70℃で30分間加熱後90℃1時間加熱することで溶剤乾燥し、更に200℃1時間加熱することで、ウエハ1の電極面上に厚み20μmの有機膜を形成した。その後、500nmのSiN層をプラズマCVDにより成膜した。次いで、フォトマスクを用い、SiN層及び有機膜と、ウエハ1の電極面上に存在するSiO500nm及びSiCN50nmをエッチングすることで、ウエハ1の電極上に貫通孔を形成した。この時、エッチングするビア径を、20μmとし、隣接するビアとのピッチを40μmとした。その後、バリアメタル層としてTaを50nm、更にその上にTaNを10nm形成し、次いでCuメッキをすることによって導電性材料を貫通孔に充填した。次いで、ウエハ1のCuメッキを施した側の面(ウエハ1の有機膜を積層した側の面)を研削することで不要なバリア層及び導電性材料を除去し、接続電極を形成した。
一方で、対向する電極にてデイジーチェーンができるようにパターン加工した以外は、ウエハ1と同様にしてウエハ2にも有機膜及び接続電極を形成した。
その後、ウエハ1及びウエハ2をH2プラズマ洗浄後、真空中で2枚の基板を接続電極同士が重なるように貼り合わせ、400℃4時間の加熱処理を行うことで積層体を得た。
【0076】
(実施例2~8)
硬化性樹脂の種類と触媒の有無を表1に記載の通りとした以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
(実施例9)
架橋剤としてシリケートMS51(三菱ケミカル社製)の含有量を3.2重量部とした以外は、実施例5と同様にして積層体を得た。
(実施例10)
架橋剤としてシリケートMS51(三菱ケミカル社製)の含有量を16重量部とした以外は、実施例5と同様にして積層体を得た。
(実施例11)
架橋剤としてシリケートMS51(三菱ケミカル社製)の含有量を32重量部とした以外は、実施例5と同様にして積層体を得た。
(実施例12)
有機膜形成後に、500nmのSiN層を形成しなかったこと以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0077】
(比較例1)
ウエハ1の電極が形成された面にプラズマCVDを施すことにより厚み20μmのSi3N4からなる無機層を形成した。上記無機層を有機膜の代わりとした以外は実施例1と同様の方法で積層体を得た。なお、プラズマCVDの詳しい条件は以下のとおりである。
原料ガス:SiH4ガス及び窒素ガス
流量:SiH4ガス10sccm、窒素ガス200sccm
RFパワー:10W(周波数2.45GHz)
チャンバー内温度:100℃
チャンバー内圧力:0.9Torr
【0078】
(比較例2)
原料ガスとしてSiH4ガス及び酸素ガスを用い、プラズマCVDのターゲットをSiO2に変更して厚み20μmのSiO2からなる無機層を形成した以外は比較例1と同様にして積層体を得た。
【0079】
(重量減少の測定)
上記方法により有機膜及び無機層の単層体をそれぞれ作製した。得られた単層体について示差熱熱重量同時測定装置(TG-DTA;STA7200、日立ハイテクサイエンス社製)を用いて、窒素フロー(50mL/min)下、10℃/minの昇温速度で25℃から400℃まで加熱し、400℃で4時間保持したときの重量減少率を測定した。結果を表1に示した。
【0080】
(表面硬度の測定)
得られた積層体の側面を冷間樹脂に包埋し研削し、側面に有機膜又は無機層を露出させた。次いで、ナノインデンター(TI 950 TriboIndenter、シエンタオミクロン社製)を用いて、測定変位200nm/秒の速度でサンプルを1000nm押し込み、その後200nm/秒の速度で測定プローブを抜く条件で測定を行うことによって有機膜又は無機層のインデントカーブを得た。なお、測定プローブとしては、Berkovich型ダイアモンド圧子を用いた。得られたインデントカーブからISO14577に基づき表面のナノインデンテーション硬さを算出することで、表面硬度を測定した。圧子形状にかかわる定数εは、ε=0.75とした。結果を表1に示した。
【0081】
(引張弾性率の評価)
上記方法により有機膜及び無機層の単層体をそれぞれ作製した。得られた単層体について、動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御社製、DVA-200)によって、定速昇温引張モード、昇温速度10℃/分、周波数10Hzの条件で引張弾性率を測定した。
【0082】
<評価>
実施例及び比較例で得られた積層体について、以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0083】
(接続信頼性の評価)
実施例及び比較例で得られた積層体のウエハ中心部、ウエハ中心から5cm、10cmの位置にある電極について電流の導通を確認し、下記基準にて初期の接続信頼性を評価した。なお、各位置の電極は10×10個の電極からなるデイジーチェーンである。
○:すべての位置についてウエハ貼り合わせ後、導通している場合
×:ウエハ貼り合わせ後、導通不良個所がある場合
【0084】
次いで、積層体を-40℃にて30分放置し、次に125℃に昇温して30分放置する操作を1セットとして、100セット又は300セット実施(信頼性試験)した後に上記初期接続信頼性と同様の評価を行い、信頼性試験後の接続信頼性を評価した。
◎:300セット後に、すべての位置について、導通している場合
○:100セット後にすべての位置について導通するが、300セット後に導通不良個所がある場合
×:100セット後に、導通不良個所がある場合
【0085】
(接着信頼性の評価)
超音波映像装置にて、ウエハ中心部、ウエハ中心から5cm、10cmの位置に配置された電極部の剥離面積を測定した。得られた剥離面積を基に、以下の基準で接着信頼性を評価した。なお、評価は上記信頼性試験前(初期)と信頼性試験(100セット)後の積層体についてそれぞれ行った。
◎:剥離面積が5%未満
○:剥離面積が5%以上30%未満
×:剥離面積が30%以上
【0086】
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、高い電気的接続信頼性を有する積層体、該積層体に用いられる硬化性樹脂組成物、該積層体の製造方法、該積層体の製造に用いる接合電極を有する基板の製造方法及び該積層体を有する半導体装置及び撮像装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 第1の基板
2 第2の基板
3 電極
4 有機膜
5 貫通孔
6 無機層
7 バリアメタル層