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特開2022-180439ウイルス生成ペイロードに対して低い毒性を有する改変EC7細胞
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180439
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】ウイルス生成ペイロードに対して低い毒性を有する改変EC7細胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/02 20060101AFI20221129BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20221129BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221129BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20221129BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20221129BHJP
   C12N 15/861 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
C12N7/02
C12N7/01 ZNA
C12N5/10
C12N15/113 Z
C12N15/12
C12N15/861 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022144073
(22)【出願日】2022-09-09
(62)【分割の表示】P 2020520123の分割
【原出願日】2018-10-09
(31)【優先権主張番号】62/570,508
(32)【優先日】2017-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/633,412
(32)【優先日】2018-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515258402
【氏名又は名称】ナントバイオ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】ニヤーズィー,ケイヴァン
(72)【発明者】
【氏名】タドロス,ワエル
(72)【発明者】
【氏名】シン,アニー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高力価の組換えウイルス、特に治療用タンパク質をコードする1以上の核酸セグメントを有する組換えアデノウイルス5型の組成物及びそれを作製する方法を提供する。
【解決手段】複数の組換え治療用ウイルスを作製する方法であって、CXADRを発現し、且つ組換え宿主細胞内でのウイルスペイロード遺伝子の発現を低減する組換え実体を発現するように遺伝子改変される組換え宿主細胞を提供するステップと;さらに、組換え宿主細胞に、ウイルスペイロード遺伝子をコードする核酸配列を含む組換えウイルスをトランスフェクトするステップと、を含む、方法である。さらなるステップでは、トランスフェクト宿主細胞は、宿主細胞内でのウイルスペイロード遺伝子の発現を低減し、且つ少なくとも所定のウイルス力価をもたらす条件下で培養される。最も典型的には、組換えウイルスは、アデノウイルス、特にE2b欠損アデノウイルス5型である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の組換え治療用ウイルスを作製する方法であって、
組換え宿主細胞内でのウイルスペイロードmRNAの発現を低減するshRNAを生成するように遺伝子改変された前記組換え宿主細胞を提供するステップと;
前記組換え宿主細胞に、前記ウイルスペイロードmRNAをコードする核酸配列を含む組換えウイルスをトランスフェクトするステップと;
前記トランスフェクト宿主細胞を、前記宿主細胞内での前記ウイルスペイロードmRNAの前記発現を低減し、且つ少なくとも所定のウイルス力価をもたらす条件下で培養するステップと、
を含み、ここで前記ウイルスペイロードmRNAが前記shRNAに対する結合部位を3’-UTR内に有する、方法。
【請求項2】
前記宿主細胞が、CHO細胞又はEC7細胞である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記宿主細胞が、組換え核酸からCXADRをさらに発現する、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記宿主細胞が、前記組換え宿主細胞内での前記ウイルスペイロードmRNAの発現を低減する少なくとも第2のshRNAを生成するように遺伝子改変され、ここで前記ウイルスペイロードmRNAが前記第2のshRNAに対する結合部位を3’-UTR内に有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記宿主細胞が、前記組換え宿主細胞内で前記第2のペイロードmRNAの発現を低減する少なくとも第2のshRNAを生成するように遺伝子改変され、ここで前記第2のウイルスペイロードmRNAが前記第2のshRNAに対する結合部位を3’-UTR内に有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記shRNAの生成が、誘導性プロモーターの制御下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記組換えウイルスがアデノウイルスである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記アデノウイルスがE2b欠損アデノウイルスである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ウイルスペイロード遺伝子が、サイトカイン、キメラタンパク質、腫瘍関連抗原、及びネオエピトープの少なくとも1つをコードする、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記所定のウイルス力価が、少なくとも10のウイルス粒子/mlである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記所定のウイルス力価が、異なるウイルスペイロード遺伝子を有する異なる組換えウイルス中で20%以下の変動性を有する期間内に達成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記所定のウイルス力価が、異なるウイルスペイロード遺伝子を有する異なる組換えウイルス中で10%以下の変動性を有する期間内に達成される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
組換えペイロードにおけるmRNAをコードする配列を含み、且つウイルスが投与される患者細胞内で不在であるshRNAに対する少なくとも1つの結合部位を有する3’-UTRセグメントを有する、組換えウイルス。
【請求項14】
前記ウイルスがアデノウイルスである、請求項13に記載の組換えウイルス。
【請求項15】
前記ペイロードが、サイトカイン、キメラタンパク質、腫瘍関連抗原、及びネオエピトープの少なくとも1つである、請求項13~14のいずれか一項に記載の組換えウイルス。
【請求項16】
前記結合部位が、ルシフェラーゼshRNA、lacZ shRNA、又はβラクタマーゼshRNAに対するものである、請求項13~15のいずれか一項に記載の組換えウイルス。
【請求項17】
前記ウイルスが投与される前記患者細胞内で不在である第2のshRNAに対する少なくとも第2の結合部位を有する、請求項13~16のいずれか一項に記載の組換えウイルス。
【請求項18】
遺伝子改変細胞に組換えウイルスがトランスフェクトされるとき、前記遺伝子改変細胞内でのウイルスペイロード遺伝子の発現を低減するshRNAをコードする組換え核酸を含み、ここで前記shRNAが前記組換えウイルスによってコードされるmRNA上の結合部位に結合する、遺伝子改変細胞。
【請求項19】
前記組換え核酸が、少なくとも第2のshRNAをコードする、請求項42に記載の遺伝子改変細胞。
【請求項20】
前記遺伝子改変細胞によって発現されるmRNA中に前記shRNAに対する結合部位を有しない、請求項42に記載の遺伝子改変細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、我々の同時係属中の、2017年10月10日に出願された米国仮特許出願第62/570,508号、及び2108年2月21日に出願された米国仮特許出願第62/633,412号のシリアル番号を有する米国仮特許出願(双方とも参照により本明細書中に援用される)に対して優先権を主張する。
【0002】
発明の分野は、癌ワクチン用に用いられる治療用組換えウイルスの作製のために用いられる組換え細胞、特に改変された哺乳動物細胞である。
【背景技術】
【0003】
背景説明は、本発明を理解するのに有用な場合がある情報を含む。それは、本明細書に提供される情報のいずれもが先行技術であるか若しくはここで請求される発明に関連すること、又は具体的若しくは暗黙的に参照されるいずれの出版物も先行技術であることの承認ではない。
【0004】
本明細書中のすべての出版物は、あたかも各個別の出版物又は特許出願が、参照により援用されるように具体的且つ個別に示された場合と同程度まで参照により援用される。援用された参考文献中の用語の定義又は使用が、本明細書に提供されるその用語の定義に対して矛盾する又は反する場合、本明細書に提供されるその用語の定義が適用され、参考文献中のその用語の定義が適用されない。
【0005】
組換え治療用タンパク質用の送達系としてのウイルス、及び哺乳動物細胞内でのタンパク質生成を用いる遺伝子療法は、当該技術分野でますます受容されるようになっている。少なくとも概念的には比較的単純な様々な困難に直面している一方で、課題の大部分はウイルス-宿主相互作用に関連した。
【0006】
例えば、アデノウイルスは、十分に特徴づけられたdsDNAウイルスであり、目的の多数の細胞型への送達用の様々な導入遺伝子を有するアデノウイルス粒子の作製を可能にすることが多い。アデノウイルス5型は、ユーザによって決定されるウイルスを作製するための商業空間内で利用可能な極めて多数のキットとともに、これに関連した最も良く研究されたプラットフォームの1つを表す。この様式で作製されるアデノウイルス5型は、細胞培養、動物、またさらには臨床試験において用いられており、科学及び臨床実践家がこのシステムに精通することがさらに支持される。ウイルスの細胞への侵入は、コクサッキー・アデノウイルス受容体(CXADR)を介して媒介されると考えられる。したがって、CXADRを生成できない細胞又は組織では、かかる細胞内でのアデノウイルス5型技術の使用が限られていることから、幹細胞及び免疫細胞を含む、多数の臨床的に関連する細胞及び組織の形質導入が妨げられる。
【0007】
CXADR(スイスプロット受入番号:P78310)は、I型膜受容体及び免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーである(Science(1997)275;1320-1323)。CXADRは、典型的には大きさが200超のアミノ酸である細胞外ドメインを有し、タイトジャンクションの完全性にとって不可欠な上皮の頂端結合複合体の成分であると考えられる(J Biol Chem(1999)274;10219-10226)。CXADRが宿主細胞内で過剰発現されることで、AD5ウイルス用の通路が得られうる。かかる組換え細胞が、Ad5のトランスフェクションや、おそらくは改善されたタンパク質生成に対して感受性がある一方で、かかる系はやはり様々な欠点を被ることになる。最も注目すべきは、ウイルスが治療的実体として用いられる場合、十分な量の組換えウイルス(例えば、1010~1012のウイルス粒子)の作製は、一定しないことが多く、場合によっては達成することもできない。
【0008】
ウイルス力価における改善は、例えば、一部のアデノ随伴ウイルスについて、米国特許第6548286号明細書、国際公開第98/46728号パンフレット、又は米国特許出願公開第2004/0043490号明細書に報告されたような、アデノ随伴ウイルスのREP及びCAPタンパク質の発現の調節によるものとして先行報告されている。しかし、かかる系は、一般には、アデノ随伴ウイルスのREP及びCAPタンパク質の特異性及びかかるウイルスの生活環に起因して、他のウイルス系に翻訳されることはない。産生細胞内での組換え核酸からのタンパク質生成がCHO細胞内で発現された組換え遺伝子から駆動された場合の別の手法では、米国特許第8273722号明細書に開示の通り、細胞は、組換えタンパク質の発現を抑制するため、合成siRNAの存在下で、またその後、所望される組換えタンパク質の生成を可能にするため、siRNAの不在下で培養された。しかし、かかる系が所望される組換えタンパク質の量を少なくともある程度まで増加させる一方で、高力価の組換えウイルスの作製は、所望されるCHO細胞において検討されなかったばかりか、実現可能でもなかった。
【0009】
したがって、極めて多数の細胞産生系及びウイルスベクターが当該技術分野で公知であるが、高力価の組換えウイルス、特に治療用ウイルスを単純且つ有効な様式で作製するためのシステム及び方法が依然として求められる。
【発明の概要】
【0010】
本発明の主題は、高力価の組換えウイルス、特に治療用タンパク質(例えば、腫瘍関連抗原、腫瘍ネオエピトープ、ポリトープなど)をコードする1以上の核酸セグメントを有する組換えアデノウイルス5型の組成物及びそれを作製する方法を対象とする。
【0011】
本発明の主題の一態様では、発明者は、複数の組換え治療用ウイルスを作製する方法であって、CXADRを(例えば、組換え核酸配列から)発現し、且つ組換え宿主細胞内でのウイルスペイロード遺伝子の発現を低減する組換え実体を発現するように遺伝子改変される組換え宿主細胞(例えば、CHO細胞又はEC7細胞)を提供するステップと;さらに、組換え宿主細胞に、ウイルスペイロード遺伝子をコードする核酸配列(例えば、サイトカイン、キメラタンパク質、腫瘍関連抗原、ネオエピトープなど)を含む組換えウイルスをトランスフェクトするステップと、を含む、方法を考察する。さらなるステップでは、トランスフェクト宿主細胞は、宿主細胞内でのウイルスペイロード遺伝子の発現を低減し、且つ少なくとも所定のウイルス力価をもたらす条件下で培養される。最も典型的には、必然的ではないが、組換えウイルスは、アデノウイルス、特にE2b欠損アデノウイルス5型である。
【0012】
いくつかの態様では、組換え実体がタンパク質(例えば、組換えウイルス上の結合部位に結合する転写抑制因子であって、結合部位がエンハンサー/プロモーター配列、5’UTR配列、IRES配列、又は3’-UTR配列に存在しているもの)である一方で、組換え実体はまた、核酸(例えば、5’UTR配列、IRES配列、又は3’-UTR配列などにおける組換えウイルスのRNA上の結合部位に結合するsiRNA、shRNA、アンチセンスRNA、又はcatRNA)であってもよい。
【0013】
さらに、所定のウイルス力価が少なくとも10又は10のウイルス粒子/mlであり、且つ/又は所定のウイルス力価が、異なるウイルスペイロード遺伝子を有する異なる組換えウイルス中で20%以下、より好ましくは10%以下の変動性を有する期間内に達成されると考えられる。
【0014】
本発明の主題の別の態様では、発明者は、複数の組換え治療用ウイルスを作製する方法であって、宿主細胞内でのウイルスペイロード遺伝子の発現を低減する実体を発現する宿主細胞を提供するステップと;さらに、宿主細胞に、ウイルスペイロード遺伝子をコードする核酸配列を含み、且つ実体に結合する配列をさらに含む、又は実体に対する結合部位を組換えウイルスのRNA上に有する配列をコードする、組換えウイルスをトランスフェクトするステップと、を含む、方法を考察する。さらなるステップでは、トランスフェクト宿主細胞は、宿主細胞内でのウイルスペイロード遺伝子の発現を低減し、且つ少なくとも所定のウイルス力価をもたらす条件下で培養される。最も典型的には、必然的ではないが、組換えウイルスは、アデノウイルス、特にE2b欠損アデノウイルス5型であり、且つ宿主細胞は、CHO細胞又はEC7細胞(アデノウイルスポリメラーゼを発現するHEK293細胞)であり、それはCXADRを、任意選択的には組換え核酸配列から発現してもよい。
【0015】
望ましい場合、宿主細胞は、実体を組換え核酸から発現する、又は実体は、宿主細胞に対してナイーブである実体(例えば、タンパク質又はRNA)である。同様に、組換えウイルス中の配列が組換えウイルスに対してナイーブである必要がないと考えられる。
【0016】
本発明の主題のさらなる態様では、発明者はまた、複数の組換え治療用ウイルスを作製する方法であって、宿主細胞内でのウイルスペイロード遺伝子の発現を低減する実体を条件的に発現するように遺伝子改変された宿主細胞を提供するステップと;宿主細胞に、ウイルスペイロード遺伝子をコードする核酸配列を含み、且つ宿主細胞内での実体の条件的発現を誘発するシグナル伝達配列をコードする配列をさらに含む組換えウイルスをトランスフェクトする別のステップと、を含む、方法を考察する。さらに別のステップでは、トランスフェクト宿主細胞は、宿主細胞内でのウイルスペイロード遺伝子の発現を低減し、且つ少なくとも所定のウイルス力価をもたらす条件下で培養される。
【0017】
前記の通り、宿主細胞がCXADRを任意選択的には組換え核酸から発現してもよく、且つ実体がDNA若しくはRNA結合タンパク質、又はRNAであると考えられる。さらに、条件的発現を誘発するシグナル伝達配列が転写因子をコードすると考えられる。
【0018】
本発明の主題のさらに別の態様では、発明者は、複数の組換え治療用ウイルスを作製する方法であって、宿主細胞内でのウイルスペイロード遺伝子の発現を低減するコリプレッサーの第1部分を発現するように遺伝子改変された宿主細胞を提供するステップと;宿主細胞に、ウイルスペイロード遺伝子をコードする核酸配列を含み、且つコリプレッサーの第2部分をさらに含む組換えウイルスをトランスフェクトする別のステップと、を含み、ここでウイルスペイロード遺伝子をコードする核酸配列がコリプレッサーの制御下にある、方法を考察する。さらに別のステップでは、トランスフェクト宿主細胞は、宿主細胞内でのウイルスペイロード遺伝子の発現を低減し、且つ少なくとも所定のウイルス力価をもたらす条件下で培養される。
【0019】
加えて、発明者はまた、複数の組換え治療用ウイルスを作製する方法であって、任意選択的には、ウイルスによる感染時、インターフェロンγの発現を欠落させるように設計された宿主細胞を提供するステップと;宿主細胞に、ウイルスペイロード遺伝子をコードする核酸配列を含む組換えウイルスをトランスフェクトするさらなるステップと、を含み、ここでウイルスペイロード遺伝子をコードする核酸配列がインターフェロン制御因子の制御下にある(例えば、IFN刺激応答エレメントを介する)、方法を考察する。さらに別のステップでは、トランスフェクト宿主細胞は、少なくとも所定のウイルス力価をもたらす条件下で培養される。
【0020】
結果的に、発明者はまた、組換えウイルスがトランスフェクトされた宿主細胞内でウイルスペイロード遺伝子の発現を低減する、組換えウイルスのRNA上の結合部位に結合する実体をコードする組換え核酸を含む遺伝子改変細胞を考察する。
【0021】
考察された遺伝子改変細胞はまた、組換えウイルスがトランスフェクトされた宿主細胞内でウイルスペイロード遺伝子の発現を低減する実体をコードする、組換えウイルスによってコードされるタンパク質又は核酸の制御下にある組換え核酸を含んでもよい。
【0022】
同様に、考察された遺伝子改変細胞は、細胞にペイロードをコードする核酸を含む組換えウイルスがトランスフェクトされるとき、細胞内でウイルスペイロード遺伝子の発現を低減するコリプレッサーの第1部分をコードする組換え核酸を含んでもよい。
【0023】
加えて、発明者は、ウイルスによる感染時、インターフェロンγの発現を欠落させるように改変された遺伝子改変細胞をさらに考察する。
【0024】
本発明の主題の様々な対象、特徴、態様及び利点は、添付の図面(数字などが成分などを表す)とともに、好ましい実施形態の以下の詳細な説明からより明白なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の主題に従う第1の例示的な発現系を表す。
図2】本発明の主題に従う第2の例示的な発現系を表す。
図3】本発明の主題に従う第3の例示的な発現系を表す。
図4】本発明の主題に従う第4の例示的な発現系を表す。
図5】本発明の主題に従う第5の例示的な発現系を表す。
図6】本発明の主題に従う第6の例示的な発現系を表す。
図7】組換えウイルス中の組換えペイロードの発現の抑制のための例示的なオプションを表す。
図8】核局在化λリプレッサーを作製するための宿主細胞の例示的な遺伝子改変を表す。
図9】λリプレッサーに結合可能なオペレーター配列を含む組換えウイルスの例示的な遺伝子改変を表す。
図10】λリプレッサーに結合可能なオペレーター配列を有する組換えウイルスのさらなる例示的な遺伝子改変を表す。
図11】λリプレッサーに結合可能なオペレーター配列を有する組換えウイルスからのレポーター遺伝子の発現の抑制のための例示的結果を表す。
図12】shRNAに対する結合配列がλリプレッサーに結合可能なオペレーター配列を含む、組換えウイルスの例示的な遺伝子改変を表す。
図13図12の発現系を用いての例示的結果を表す。
図14図12の発現系を用いてのさらなる例示的結果を表す。
図15】転写を抑制するため、プロモーターの下流にIE86応答性シス抑制配列(crs)を有する例示的な構築物を表す。
図16】ウイルス作製に用いられるEC7宿主細胞内でのIE86及びその変異体の発現を図示するゲルにおける例示的結果を表す。
図17】EC7宿主細胞内での組換えIE86及びその変異体を用いてのプロモーターの下流にIE86応答性シス抑制配列(crs)を有するベクター構築物からのGFPの発現を図示するゲルにおける例示的結果を表す。
図18】EC7宿主細胞内での組換えIE86及びその変異体を用いるGFP発現の抑制についての例示的結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の主題は、組換えウイルス治療薬を作製するため、特に高力価の組換えAd5ウイルスを、自らの組換えペイロード(例えば、腫瘍関連抗原、ネオエピトープ(ポリトープで配列されてもよい)、免疫制御分子、同時刺激分子など)によって区別される多種多様なウイルスを通じて一貫した性能のエンベロープをもたらす様式で作製するための組換え細胞、系、及び方法を提供する。かかる組換え細胞、系、及び方法は、有利には、典型的には再現可能且つ予測可能な時間枠内で、組換えペイロードと独立して、望ましくは高力価のウイルスの作製を可能にすることになる。別の展望から見ると、考察された組換え細胞、系、及び方法により、組換えペイロードと無関係に、治療用ウイルスの信頼できる作製が可能になり、さらに複数の異なる治療用ウイルスの大規模な並行作製が共通の作製スケジュール及び作製環境下で可能になる。
【0027】
したがって、本明細書に提供される系及び方法は、組換え治療用ウイルスの高収量での多重産生にとって特に好適となる。かかる利点は、様々な手法を用いて、宿主細胞(ウイルス産生細胞)内での組換えペイロードの発現を低減する、又はさらに全体的に排除することにより達成される。本発明の主題に限定しないが、作製に用いられる宿主細胞が、宿主細胞内での組換えペイロードの発現を低減する、又はさらに全体的に排除するように遺伝子改変されることにより、患者特異的なウイルスペイロードの作製済みの「一般的」治療用ウイルスベクターへの「ドロップイン置換(drop-in replacement)」を可能にすることは一般に好ましい。
【0028】
容易に理解されるであろうが、当該技術分野で公知の治療用ウイルスが極めて多数存在し、それらすべては、本明細書における使用に適すると思われる。例えば、考察された治療用ウイルスは、エンベロープウイルス、例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、又はHSV-1、並びに非エンベロープウイルス、例えばアデノ随伴ウイルス及びアデノウイルス(様々な血清型を有する、ヒト起源又は非ヒト起源であってもよい)を含む。結果として、様々な宿主細胞もまた好適と思われ、また治療用ウイルスの選択は、宿主細胞の選択を少なくともある程度まで決定づけることになる。さらに、宿主細胞がまた、遺伝子改変されることで、通常であれば遺伝子改変を伴わないかかる細胞に適さないようなウイルスの感染及び/又は増殖に適応させてもよいことは理解される必要がある。しかし、特に好ましい治療用ウイルスは、ヒト及び非ヒト(例えば霊長類)起源のアデノウイルスを含む。
【0029】
例えば、本発明の主題の好ましい一態様では、治療用ウイルスは、ペイロードとして、患者及び腫瘍特異的なネオエピトープ配列、腫瘍関連抗原、サイトカイン、スーパーカイン(例えば、ALT803)、キメラタンパク質(例えば、所望される生物学的効果を提供するための標的結合部分及びエフェクター部分としてscFvドメインを有する)、同時刺激分子、チェックポイント阻害剤、及びケモカインの少なくとも1つを含む、複製欠損アデノウイルス5型である。さらに好ましい例では、CHO又はHEK293細胞は、ウイルス増殖用の宿主細胞として用いられる。しかし、CHO及びHEK293細胞は、通常はコクサッキー/アデノウイルス受容体(CXADR)を検出可能な量のレベルで発現しないことから、一般にはアデノウイルス5型により非効率的に形質導入される。したがって、それら(及びCXADRの発現を欠いている他の細胞)が、組換えCXADRを発現するように遺伝子改変されうることは注目されるべきである。さらに、CHO及びHEK293細胞はまた、通常はAd5のE1遺伝子を発現せず、それ故、複製欠損Ad5ウイルスが用いられる場合、トランスでE1タンパク質機能を発現及び提供するようにさらに遺伝子改変されることになる。かかる相補性は、アデノウイルスがE2b遺伝子中にさらなる欠失を有する場合、特に望ましく(例えば、J Virol.1998 Feb;72(2):926-33を参照)、かかるアデノウイルスは特に好ましい。
【0030】
このように改変された宿主細胞は、ウイルス発現ベクターの宿主細胞へのウイルス侵入及び送達における機会を提供することになる。より詳細には、発明者は、CHO細胞がCXADRを発現するように改変されうることで、5型アデノウイルスによるウイルス感染に罹りやすくなることを発見した。当然ながら、発明者はまた、CXADRを発現するCHO細胞(CAR-CHO細胞)に導入された、生物学的カーゴを有するE2b欠損アデノウイルスが、子孫ウイルスの強固な長期的な生成をもたらすことを見出した。この結果は、CAR-CHO細胞が、治療用ウイルス向けのユニバーサルな作製系として役立つことがあり、それらの産生の時間とコストを有意に減少させることを示唆する。この系はまた、商業的生産用の長期連続培養系に適合することが予測される。さらに、本明細書で考察された系及び方法は、中間体の最低限の操作を伴う様々な異なる生物製剤の連続生産にさらに適応されうる。
【0031】
例えば、本発明の主題の一態様では、CXADRをコードするcDNAは、好適な発現プラスミド(例えば、peak8-ピューロマイシンプラスミド)にクローン化可能であり、その遺伝子発現は強力なプロモーター(例えば、EF-1αプロモーター)から駆動される。当然ながら、様々な他のプロモーターエレメント(誘導性又は構成的であってもよい)もまた、本明細書における使用に適すると思われる。導入遺伝子配列は、DNA配列決定により検証され、例えば参照データセット内のCXADRアイソフォーム1に対する公開された配列(NP_001329.1)と整列されうる。次に、発現プラスミドは、当該技術分野で周知であるような標準のトランスフェクションプロトコルを用いて、CHO細胞にトランスフェクトされる。次に、細胞ストックの調製用のトランスフェクト細胞の選択が、ピューロマイシンを用いて実施されうる。同様に、本発明の主題が特定の発現ベクターに限定されず、且つ当然にも細胞内での核酸からの発現のすべての様式が本明細書における使用に適すると思われることは理解される必要がある。例えば、一過性発現が所望される場合、核酸は、RNAとして、又は真核生物の複製配列を有しない環状染色体外DNAとして送達されてもよい。他方、永久発現が所望される場合、又は治療用ウイルスの複数の異なるバッチの大規模生成用の細胞株が必要とされる場合、核酸は、細胞のゲノム中への組込みのために送達されてもよい、又は細胞に(例えば、CRISPR/Cas9技術を用いて)ゲノム編集を施すことで、発現カセットを宿主細胞のゲノムに設置してもよい。
【0032】
同様に、CXADR遺伝子の転写及び翻訳調節が大幅に変化してもよく、且つ好適な調節エレメントの適切な選択が当業者に容易に理解されるであろうことは理解される必要がある。したがって、発現は、構成的に活性なプロモーターから、対応する誘導剤を用いて誘導性プロモーターから、又は選択される組織若しくは培養条件下で活性化されるプロモーターから駆動されてもよい。例えば、発現は、温度感受性プロモーター(例えば、BMC Biotechnol.2011;12;11:51)の制御下又は低酸素及び金属感受性プロモーター(例えば、Gene Ther.2006;13(10):857-68を参照)の制御下で駆動されてもよい。したがって、通常はアデノウイルストランスフェクションに感受性がない、治療用ウイルスの作製に適した細胞が、感染に対して、またそれとともに治療用ウイルスの送達の大規模作製に対して感受性にされうることは理解される必要がある。当然ながら、複製欠損ウイルスが用いられる場合のその酵素の欠如を代償するためのウイルスポリメラーゼの組換え発現(必要な場合)にも同じ考察が適用されることは理解される必要がある。例示的な好ましい組換えアデノウイルス及び細胞とともに、ウイルスポリメラーゼは、他の箇所で説明される。
【0033】
好適なウイルス発現ベクターに関しては、極めて多数のウイルス発現ベクターが適切であると考察される。しかし、上記の通り、ウイルス発現ベクターがアデノウイルス発現ベクターであることが特に好ましく、特にそれからE1、E2b、及びE3遺伝子が欠失されていた(例えば、J.Virol.1998;Vol.72(2):p926-933)。注目すべきことに、発明者らは、特に組換えウイルスの治療量での作製が所望される場合、上記のような組換え細胞内でのウイルスペイロードの効率的なタンパク質発現が高力価のウイルス粒子の作製に干渉することがあることを認めている。例えば、少なくともいくつかの実験では、いくつかの組換えペイロードの場合、10未満のウイルス粒子/ml、又はさらに10未満のウイルス粒子/ml、又はさらに10未満のウイルス粒子/mlのウイルス力価が認められた(又は全体として有意なウイルス力価を全く生成できなかった)一方で、他の組換えペイロードの場合、同じウイルス系が、10超のウイルス粒子/ml、又は10超のウイルス粒子/ml(及びより高い)のウイルス力価を生成した。さらに、複数の異なる患者における複数の異なるウイルス製剤が調製された場合、ウイルス粒子の所望量(例えば、1011の全ウイルス粒子)を達成するのに、製剤間で有意な時間遅延が認められたが、それは異なる製剤間での同時性を必要とするような多数の治療用ウイルスの作製スキームを妨げることになる。
【0034】
発明者らは、かかる高力価ウイルスの作製上の問題が、ウイルスペイロードのタイプ及び/又は長さと無関係に、ウイルスペイロードのタンパク質生成と治療量のウイルスを作製するための全収量及び/又は時間との干渉を低減する又はさらに排除するため、宿主細胞及びウイルスゲノムの少なくとも1つを改変することにより克服可能であることをここで発見している。最も典型的には、宿主細胞は、ウイルス核酸上にコードされる遺伝子の転写及び/又は翻訳及び/又はmRNA安定性と直接的又は間接的に干渉する実体を生成するため、改変されうる。かかる手法は、少なくともいくつかの実施形態などの場合(実体が異なるウイルスに共通する配列を標的にする場合)、特に望ましく、宿主細胞の単一バッチは、ウイルスを再設計する必要のない多種多様な組換え治療用ウイルスのためのウイルス作製プラットフォームとして役立ちうる。他方、宿主細胞及びウイルスベクターの双方は、遺伝子転写及び/又は翻訳阻害及び/又はmRNA安定性がそれらの(特定の)組み合わせに対して排他的であることに寄与してもよい。さらに他の例では、宿主細胞は、ペイロード遺伝子を発現するのに必要とされる転写因子が欠如するように遺伝子改変されてもよい。最も好ましくは、組換えウイルスは、組換えペイロードの発現の抑制が、専ら宿主細胞内で生じるが、患者細胞内で生じないように設計されることになる。
【0035】
例えば、図1中で概略的に図示される通り、宿主細胞は、ウイルスベクター上に存在する、ウイルスペイロードの発現に直接的に干渉する実体をコードする遺伝子(例えば、ネオエピトープ、同時刺激分子、チェックポイント阻害剤、サイトカインなど、治療に用いられる組換え遺伝子)を含むように選択及び/又は遺伝子改変されてもよい。宿主細胞内で(特に宿主ゲノム中で)コードされる他の好適な実体の中で、特に考察された実体は、選択されるタンパク質及びRNAを含む。例えば、実体がタンパク質である場合、タンパク質は、ウイルスペイロードの転写を制御するウイルスベクター上の結合部位に結合してもよい、又はタンパク質は、ペイロードをコードするRNAの翻訳開始部位又はリボソーム結合部位又はIRESに結合してもよい。同様に、タンパク質はまた、ペイロード配列に先行する配列の転写開始部位に結合してもよい。いくつかの実施形態では、実体は、ペイロード遺伝子によってコードされるペプチドに対する相互作用タンパク質でありえ、且つ実体とペプチドとの間の相互作用により、ペプチドの分解又は不活化が誘導される。別の例では、実体が核酸である場合、特に好ましい核酸は、ペイロードをコードするmRNAに結合することで、下記により詳細にさらに示される通り、ペイロードのmRNAの翻訳を阻止し且つ/又は不安定化する、siRNA、shRNA、アンチセンスRNA、及び/又はcatRNAを含む。当然ながら、実体はまた、(例えば、トランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーションなどの様々な方法を介して)宿主細胞に外部的に供給されてもよい。
【0036】
結合部位がペイロードをコードするmRNA上で利用可能でない場合、阻害は、結合配列を、好ましくは、図2に例示的に図示される通り、ペイロードのコード領域の直ぐ上流(例えば、5’-UTR領域内、又は翻訳開始領域内)である、ペイロードをコードするmRNAに設計することにより間接的に実施されてもよい。しかし、代替的態様では、実体に対する結合部位はまた、IRES若しくは2A部位又はその近傍、及び/又はmRNAの3’-UTR内に存在してもよい。前記の通り、好適な実体は、核酸及びタンパク質を含むことになる。かかる手法は、例えば、(以下により詳細にさらに示される通り、宿主細胞ゲノムから転写されてもよい、又は宿主細胞内にトランスフェクトされてもよい)siRNA又はshRNAを用いて、RNA不安定化を介して翻訳の阻害を達成するのに適した状況下で目的的に選択され、設置されてもよいようなウイルスベクター上の標的配列として特に有利であってもよい。
【0037】
本発明の主題のさらに別の例示的態様では、図3に概略的に示される通り、ウイルスベクターは、宿主細胞ゲノム上の遺伝子(又は宿主細胞内の組換え核酸)の発現を誘導し、次いで(図1及び2に表される通り)直接的又は間接的にウイルスペイロードの転写及び/又は翻訳及び/又はmRNA安定性を阻害又は低減することになる、上記のような実体の生成をもたらす、調節タンパク質(例えば転写因子)をコードしてもよい。したがって、かかる例では、実体の発現が、組換えウイルス核酸の存在に対して条件的であることは理解される必要がある。宿主細胞が、図1及び2の系では潜在的にありうるような阻害系の干渉を受けずにかなりの密度まで増殖されうることから、かかる条件的発現は、特に有利であると考えられる。同様に、図4は、宿主細胞とウイルス核酸との間でのさらに別の協同的手法を概略的に図示し、ここでコリプレッサーの一部分は、宿主細胞のゲノム(又は細胞内の他の組換え核酸)によってコードされる一方で、他の部分は、組換えウイルス核酸上でコードされる。したがって、かかる系では、ペイロードの発現の阻害は、やはり宿主細胞内での調節遺伝子の存在に対して条件的である。
【0038】
図5は、組換えウイルス核酸におけるペイロードの発現が宿主細胞内に不在又は消失状態である因子の存在に対して条件的であるようなさらに別の系を概略的に図示する。図5の例では、宿主細胞は、ウイルス感染に応答してインターフェロンγを産生しないように、(例えば、標的化欠失、部位特異的突然変異誘発、ゲノム編集などを介して)遺伝子改変され、且つウイルスの核酸は、ペイロードが専らインターフェロンγの存在下で発現され、それはペイロード上流のIFN刺激応答エレメントの使用により達成可能であるように設計される。他方、図6に概略的に図示される通り、宿主細胞は、宿主細胞の細胞プロセスに干渉しないが、ウイルスベクターから生成される組換えRNAの翻訳を抑制するshRNAを生成するように遺伝子改変される。かかるshRNAは、改変された宿主細胞ゲノムから、又は宿主細胞内の組換えプラスミドから提供されてもよい。
【0039】
さらに、阻害に関連する配列が(ナイーブな又は遺伝子工学を介して)宿主ゲノム内に存在する配列に限定される必要はないばかりか、ペイロードを有する組換えウイルスがアデノウイルスである場合、細胞に同時感染する組換えプラスミド又はアデノ随伴ウイルス上の配列により提供されてもよいことは理解される必要がある。結果的に、宿主細胞は、組換えウイルスがトランスフェクトされた宿主細胞内でのウイルスペイロード遺伝子の発現を低減する実体をコードする組換え核酸を含む遺伝子改変細胞であってもよく、ここで実体は組換えウイルスのRNA上の結合部位に結合する。同様に、考察された細胞はまた、組換えウイルスがトランスフェクトされた宿主細胞内でのウイルスペイロード遺伝子の発現を低減する実体をコードする組換え核酸を含むように設計されてもよく、ここで組換え核酸は、組換えウイルスによってコードされるタンパク質又は核酸の制御下にある。さらに考察された態様では、遺伝子改変細胞はまた、ペイロードをコードする核酸を含む組換えウイルスが細胞にトランスフェクトされるとき、細胞内でのウイルスペイロード遺伝子の発現を低減するコリプレッサーの第1部分をコードする組換え核酸を含んでもよい、又はウイルスによる感染時、インターフェロンγの発現を欠落させるように改変されてもよい。
【0040】
組換えウイルスのペイロードの発現を抑制する様式と無関係に、好適な系が、ペイロードの内容及び/又はサイズと無関係に、所定量の治療用ウイルス粒子に達するのに要求される収率及び/又は生成時間の観点で有意に改善された均一性をもたらすことになると考えられる。例えば、所定の目標力価又は総量のウイルス粒子(例えば、その目標力価で少なくとも10のウイルス粒子/ml、又はその目標総量で少なくとも1011のウイルス粒子)に達するために異なるウイルス製剤間で要求される時間の変動性は、20%以下、より好ましくは15%以下、又は10%以下、又は5%以下であると考えられる。同様に、所定の生成時間(例えば、6時間後、又は8時間後、又は12時間後、又は18時間後、又は24時間後、又は36時間後など)でのウイルス粒子の力価又は総数は、典型的には、20%以下、より好ましくは15%以下、又は10%以下、又は5%以下、変動することになる。
【0041】
したがって、考察された系及び方法は、複数の異なるウイルス製剤が、例えば、ウイルスストック又は細胞ストック添加、培地添加、冷却、遠心分離又は濾過、パッケージングなどの協調的プロセシングステップを必要とする多重又は同時プロセスにおいて調製される場合のウイルス作製環境下で特に有利となる。
【0042】
いくつかの実施形態では、本発明の特定の実施形態を説明し、請求するために用いられる、成分、特性、例えば濃度、反応条件などの量を表す数は、場合によっては用語「約」によって修飾されていると理解されるべきである。したがって、いくつかの実施形態では、本明細書及び貼付の特許請求の範囲に示される数値パラメータは、特定の実施形態によって得られるように究明された所望される特性に応じて変動しうる近似である。いくつかの実施形態では、数値パラメータは、報告された有意な数字の数に照らして、また通常のラウンディング技術を適用することにより解釈されるべきである。本発明のいくつかの実施形態の幅広い範囲を示す数値範囲及びパラメータが近似であるにもかかわらず、具体例の中に示される数値は、実行可能である程度に正確に報告される。本発明のいくつかの実施形態中に提示される数値は、それら各々の試験測定において見出される標準偏差から必然的に得られる特定のエラーを含んでもよい。
【実施例0043】
図7は、mRNAの翻訳が、例えばTRiP系を用いて抑制されうる(例えば、NATURE COMMUNICATIONS|8:14834|DOI:10.1038/ncomms14834を参照)、又は下記により詳述される通り、mRNAの安定性が低下されうる、又はさらに下記により詳述される通り、ペイロードをコードするDNAセグメントの転写が低下若しくは遮断される、組換えウイルス中の組換えペイロードの発現を抑制するための例示的オプションを表す。
【0044】
例えば、転写を抑制するための1つの例示的手法では、発明者は、図8の上パネル中に概略的に図示される通り、λリプレッサー及び対応するオペレーター配列を目的の遺伝子と組み合わせて用いた。ここで、組換え核酸は、二量体λリプレッサーが結合される対象の2つのオペレーター(リプレッサー結合)配列部分O1及びO2を有する。一旦リプレッサーが結合されると、プロモーターPからの転写は、取り消された破線矢印によって示される通り、抑制される。オペレーター/リプレッサーが細菌内で作動可能であることから、真核生物系における使用は、典型的にはλリプレッサーの核内への導入を可能にするような核位置配列を必要とする。本実施例では、核位置配列は、図8(ここでNLSは核位置配列であり、GS12は柔軟性リンカーであり、且つλrepはλリプレッサーである)の2つの下部スケッチに概略的に示される通り、λリプレッサーにおけるORFの上流又は下流いずれかの介在する柔軟性リンカー(ここではGSリンカー)とともにインフレームでコードされた。融合タンパク質の発現は、容易に理解されるであろうが、様々なプロモーターから駆動されうる。本実施例では、eF1αプロモーターを利用し、且つλリプレッサーをEC7細胞内の発現ベクターから発現させた。
【0045】
目的の遺伝子(ここではGFP)の制御は、オペレーター配列エレメントO1及びO2を(+1で示す)転写開始の直ぐ上流に配置することにより実現し、それはまた、図9に例示的に示す通り、転写開始の上流にTATAボックス及び転写開始の下流にコザック配列とそれに続く開始コドンATGを含んだ。ここで、正の制御配列は、オペレーター配列エレメントO1及びO2を有さず、CMVプロモーター、TATAボックス、転写開始部位、コザック配列、及び開始コドンを含んだ。次に、オペレーター配列エレメントO1及びO2の配置を、2つの位置において、CMVプロモーター配列の末端と転写開始との間へのO1及びO2の(TATAボックスをまたいでの)挿入により、又はCMVプロモーター配列の末端部分の(TATAボックスをまたいでの)置換により試験した。図10は、オペレーター配列エレメントO1及びO2の代替的配置をさらに表すとともに、5’-及び3’-非翻訳配列をさらに示し、ここでCDSは目的遺伝子のコード配列を表す。
【0046】
図11は、発現プラスミドから発現されるリーディング(NLS-LR)又はトレーリング(LR-NLS)核位置配列とともにλリプレッサーを発現したトランスフェクトEC7宿主細胞における例示的結果を表す。組換えEC7細胞には、(a)GFP遺伝子不在、(b)オペレーター配列エレメントを伴わないGFP遺伝子、(c)図9に示すようなCMVプロモーター配列の末端部分を置換するオペレーター配列エレメントを伴うGFP遺伝子、及び(d)図9に示すようなCMVプロモーター配列後に挿入するオペレーター配列エレメントを伴うGFP遺伝子、を保有する第2の組換え発現プラスミドもトランスフェクトした。図11から容易にわかるように、オペレーター配列エレメントの挿入により、制御に対する発現低下が等しい規模でもたらされる。特に、EC7細胞がλリプレッサーも発現したとき、転写は実質的に完全に抑止された。したがって、転写制御が、λオペレーター配列エレメントを、核位置配列を含むλリプレッサーと併用することで有効に実行可能であることは注目されるべきである
【0047】
転写を抑制するための別の例示的手法では、発明者は、ウイルスベクター又は他の発現構築物中に見出される配列に結合するように設計されたshRNAをコードする産生細胞内の構築物とともに遺伝子組換え細胞を作製することにより、図12に概略的に示すような系を試験した。図12の右部分は、指示通りにshRNAをもたらすコード領域を有するゲノムDNAを示す一方で、図12の左部分は、3’-UTR内にshRNAに対する1以上の結合部位を有する目的遺伝子を含むアデノウイルス発現系の一部を表す。例えば、好適なshRNAは、ルシフェラーゼ遺伝子、βラクタマーゼ遺伝子、及び/又はlacZ遺伝子から得ることができ、且つ発現系は、ルシフェラーゼ、LacZ、及び/又はβ-ラクタマーゼからの配列を各々有する3’UTRとともに目的遺伝子(例えばGFP)をコードするウイルス(例えばAdV)又はプラスミドDNAでありうる。
【0048】
例示的試験系における結果を図13に示す。ここで発明者は、EC7産生細胞に、3つの異なる異種遺伝子:ルシフェラーゼ、LacZ又はβ-ラクタマーゼの中の1つから得られるshRNA標的部位を含む3’UTRを有するGFP導入遺伝子を一過性にトランスフェクトした。これらの部位を標的にする又は標的にしない(陰性対照)shRNAをコードするDNAをさらに同時トランスフェクトし、これら細胞内のGFP強度を、導入遺伝子発現にアクセスするための方法としてのフローサイトメトリーにより測定した。あらゆる場合に、shRNAのその3’UTRに対する標的化が非標的化shRNAと比べて存在したとき、GFPの発現が有意に下方制御された。同様に、図14は、luc shRNAをコードする配列をトランスフェクトしたEC7産生細胞及び非トランスフェクト対照細胞からの結果を表す。次に、GFPの発現における、同図の上パネル内に示すようなGFP遺伝子及びshRNA結合部位を保有する発現ベクターのトランスフェクションについて監視する。結果から容易にわかるように、GFPにおける特異的な下方制御が、luc shRNAを発現し、且つluc shRNA結合部位とともにGFPをコードする構築物がトランスフェクトされた細胞内に限って認められた。したがって、shRNAが、トランスジェニックカーゴの発現を有効に下方制御しうることは理解される必要がある。
【0049】
したがって、発明者は、宿主細胞が、ゲノムに組み込まれてもよい、又は染色体外単位として維持/提供されてもよい組換えDNAのセグメントから1以上のshRNA種を一過性に、より好ましくは持続的に生成するように遺伝子改変される場合の例示的な系を考察する。これらの種の後のプロセシングにより、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)が相補的標的配列を保有する転写物を分解することをそれらが誘導できる。理解されるであろうが、これらの相補的標的配列をAdV5ゲノムに保有される導入遺伝子の3’UTRに収容することにより、生じる転写物が分解され、それにより生成するであろう遺伝子産物の任意の有毒作用が阻止される。最も好ましくは、shRNAは、産生細胞内の内因性遺伝子を認識しないように選択されることになる。その上、組換え構築物/宿主細胞が、複数の(例えば、少なくとも2つの、又は少なくとも3つの)異なるshRNAを、それらshRNAの各々に対する標的部位を保有する3’UTRとともに発現することで、サイレンシング能力を増強するように作製可能であることがさらに考察される。
【0050】
転写を制御するためのさらに別の手法では、発明者は、組換えIE86(及びその変異体)がEC7産生細胞内で発現されるような系を用いた。ここで、IE86はcrs(シス抑制配列)配列エレメントに特異的に結合し、crs配列エレメントがプロモーター配列の一部である場合、転写が低下又は抑制されうる。図15は、発現対象の遺伝子(ここではGFP)が配置されうる複数のクローニング部位の上流にcrs配列エレメントが後続するCMVプロモーターを伴う例示的なプロモーター配列を表す。IE86による抑制に対して感受性がある組換えDNAを作製するため、細胞はIE86を組換え的に発現する必要がある。図16は、EC7細胞内での発現プラスミド(pEAK8)からのIE86及びその変異体の組換え発現についての例示的結果を表す。容易に理解できるように、すべての組換え形態が、産生細胞内で十分に発現された。そのように生成されたIE86及び変異体形態の機能的影響を試験するため、IE86発現細胞に、GFP遺伝子の発現を制御するようにプロモーター内にcrs配列エレメントを含む発現構築物をさらにトランスフェクトした。図17中の結果から理解できるように、プロモーター内にcrs配列エレメントを含む発現構築物(crs-シャトル-GFP)は、IE86も発現する細胞内でのGFP遺伝子の発現を下方制御した。図18は、グラフ内に示すようなトランスフェクト細胞に対するフローサイトメトリーからの結果についてのグラフを表し:トランスフェクトしないすべての細胞において有意な蛍光が認められなかった一方で、プロモーター内にcrs配列エレメントを含む発現構築物(crs-シャトル-GFP)をトランスフェクトするが、IE86又はその変異体をコードする発現プラスミドをトランスフェクトしない細胞において高蛍光が測定された。プロモーター内にcrs配列エレメントを含む発現構築物(crs-シャトル-GFP)をトランスフェクトし、且つIE86又はその変異体をコードする発現プラスミドをトランスフェクトする細胞の場合に蛍光の低下が認められた。
【0051】
追加的な実施例:潜在膜タンパク質1(LMP1)は、エプスタイン・バーウイルス(EBV)の膜内在性タンパク質であり、免疫能細胞内で、かかる細胞内での発現時、樹状細胞及びマクロファージのCD40模倣物としての活性化を含む様々な変化を引き起こす。同様に、IPS-1(インターフェロンβプロモーター刺激因子1)は、I型インターフェロン及びインターフェロン誘導性遺伝子を誘導することにより樹状細胞を活性化する。したがって、LMP-1とIPS-1の双方は、免疫療法、より具体的には腫瘍関連抗原を発現するDNAワクチンにおける有効な同時刺激分子として提起されている。さらに、ウイルス複製中の宿主細胞内でのLMP-1及び/又はIPS-1の発現は、宿主細胞内でのウイルス生成レベルに影響することがある。
【0052】
実施例1:発明者は、LMP-1、IPS-1、又は融合タンパク質LMP-IPS-1(LMP1及びIPS-1のN末端集合ドメイン)の発現が、優性陰性突然変異体インターフェロン調節転写因子3(例えばIRF3-ΔNなど)を発現するように宿主細胞を遺伝子改変することにより、宿主細胞内で抑制されうることを考察する。本実施例において、ペイロード(LMP-1、IPS-1、LMP-IPS-1、腫瘍関連抗原とのカップリングの存在下又は不在下)をコードする組換え核酸はまた、ペイロード遺伝子に作動可能にカップリングされたIRF3に応答性のプロモーター(例えば、IFN-αプロモーター、IFN-βプロモーターなど)を含む。優性陰性突然変異体IRF3が、ペイロードタンパク質の発現が宿主細胞内で低減又は排除されうるようにペイロード遺伝子の転写を阻害することが考察される。
【0053】
実施例2:発明者は、LMP-1、IPS-1、又は融合タンパク質LMP-IPS-1の発現が、LMP-1、IPS-1、又はそれらコード配列に隣接する5’-若しくは3’-UTRに特異的な制御性/阻害性RNA(例えば、shRNA、siRNA、miRNAなど)を発現するように宿主細胞を遺伝子改変することにより、宿主細胞内で抑制されうることを考察する。制御性/阻害性RNAが、ペイロード遺伝子の転写物を不安定化し、且つ/又はその翻訳を阻害しうることで、ペイロード遺伝子の発現が宿主細胞内で実質的に低減又は排除されうることが考察される。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、制御性/阻害性RNAを構成的に発現するように遺伝子改変されうる。他の実施形態では、宿主細胞は、制御性/阻害性RNAを条件的に生成するように遺伝子改変されうる。例えば、ペイロードはまた、オープンリーディングフレーム内に、エクジソン(昆虫ステロイドホルモン)をコードする核酸断片を、他のペイロード遺伝子(LMP-1、IPS-1、又はLMP-IPS-1)と同じプロモーター下で含んでもよい。宿主細胞は、制御性/阻害性RNAをエクジソン応答性プロモーター下で発現するように遺伝子改変されうる。かかる例では、制御性/阻害性RNAは、LMP-1、IPS-1、又はLMP-IPS-1に特異的なもの、及びエクジソンに特異的な少なくとも1つを含むことで、ペイロード遺伝子が転写され始めたときに限ってペイロードが発現される。したがって、制御性/阻害性RNAの発現は、ペイロードタンパク質の発現に対して条件的であり、且つ制御性/阻害性RNAは、ペイロードの発現が不在の宿主細胞内で不必要に発現されなくてもよい。
【0054】
実施例3:発明者は、IPS-1又は融合タンパク質LMP-IPS-1の発現が、ペイロードを不活性化又は破壊する結合分子を発現するように宿主細胞を遺伝子改変することで、宿主細胞に対するペイロードに起因する任意の毒性の低下若しくは排除、及び/又はペイロードの任意の機能の減弱を可能にすることにより、宿主細胞内で抑制されうることを考察する。例えば、宿主細胞は、IPS-1を特異的に切断する、C型肝炎NS3-4aプロテアーゼを発現しうる。いくつかの実施形態では、宿主細胞は、C型肝炎NS3-4aプロテアーゼを構成的に発現するように遺伝子改変されうる。他の実施形態では、宿主細胞は、C型肝炎NS3-4aプロテアーゼを条件的に生成するように遺伝子改変されうる。例えば、宿主細胞は、IPS-1シグナル伝達の下流の転写因子に応答するIRF3プロモーター下でC型肝炎NS3-4aプロテアーゼを発現するように遺伝子改変されうる。かかる例では、C型肝炎NS3-4aプロテアーゼは、ペイロード遺伝子が転写及び発現を開始することで、IPS-1シグナル伝達経路を開始するときに限って発現される。したがって、C型肝炎NS3-4aプロテアーゼの発現は、ペイロードタンパク質の発現に対して条件的であり、C型肝炎NS3-4aプロテアーゼは、ペイロードの発現が不在の宿主細胞内で不必要に発現されなくてもよい。
【0055】
実施例4:発明者は、IPS-1又は融合タンパク質LMP-IPS-1の発現が、IPS-1又は融合タンパク質のmRNA転写物に結合することで、mRNAの分解をもたらすことになる1以上のshRNA分子を発現するように宿主細胞を遺伝子改変することにより、宿主細胞内で抑制されうることを考察する。そのため、発明者は、トランスジェニックカーゴの発現が、産生細胞(例えば、EC7細胞、CHO細胞など)により安定的に生成される短いヘアピンRNA(shRNA)により抑制されることで、妨げのないウイルス増幅を可能にするような試験系を作製した。
【0056】
本明細書中の説明において、また後続する特許請求の範囲の全体を通じて用いられる通り、「a」、「an」及び「the」の意味は、文脈上特に明示されない限り、複数の参照物を含む。さらに、本明細書中の説明において用いられる通り、「in」の意味は、文脈上特に明示されない限り、「in」及び「on」を含む。
【0057】
本明細書で用いられるとき、また文脈上特に断りのない限り、用語「~にカップリングされる」は、直接的カップリング(互いにカップリングされた2つのエレメントが互いに接触する場合)と間接的カップリング(少なくとも1つの追加的エレメントが2つのエレメント間に位置する場合)の双方を含むように意図される。したがって、用語「~にカップリングされる(coupled to)」及び「~とカップリングされる(coupled with)」は同義的に用いられる。
【0058】
本明細書中の値の範囲の列挙は、単にその範囲に属する別々の各値を個別に参照する簡略化方法として役立つことが意図される。本明細書中で別段の指示がない限り、各個別の値は、あたかもそれが本明細書中で個別に列挙されるように明細書中に組み込まれる。本明細書に記載のすべての方法は、本明細書中で別段の指示がない限り、又は文脈上特に明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施されうる。ありとあらゆる例の使用、又は本明細書中の特定の実施形態に関連して提供される例示的な用語(例えば、「など(such as)」)は、あくまで本発明をより十分に明らかにすることが意図され、特に請求される本発明の範囲に対して限定を設けることがない。明細書中の用語は、本発明の実施にとって不可欠である任意の非請求要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0059】
本明細書中の本発明の概念から逸脱しない限り、既に説明されている修飾以外の多くのさらなる修飾が可能であることは、当業者にとって明白であるべきである。したがって、本発明の主題は、添付の特許請求の範囲の範囲内を除き、制限されるべきではない。さらに、明細書と特許請求の範囲の双方を解釈する際、すべての用語は、文脈に一致する最も広義の可能な様式で解釈されるべきである。特に、用語「含む(comprise)」及び「含む(comprising)」は、要素、成分、又はステップを非排他的様式で参照するものとして解釈されるべきであり、参照される要素、成分、又はステップが、存在してもよい、又は利用されてもよい、又は明示的に参照されない他の要素、成分、若しくはステップと組み合わされてもよいことが示される。本明細書が請求するものが、A、B、C....及びNからなる群から選択されるものの少なくとも1つを指す場合、本文は、A+Nでない、又はB+Nなどの群から1つの要素のみを必要とするものとして解釈されるべきである。
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【手続補正書】
【提出日】2022-09-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の組換え治療用アデノウイルスを作製する方法であって、
第一の複数のEC7細胞に組換えアデノウイルスのゲノムをトランスフェクトするステップであって、前記第一の複数のEC7細胞はそれぞれ、その核内にλリプレッサーを含み、かつ前記組換えアデノウイルスのゲノムはカーゴをコードする配列およびカーゴをコードする配列と作動可能に結合されたλオペレーター配列を含むステップと;
前記第一の複数のEC7細胞を、少なくとも10 のウイルス粒子/mlの第一のウイルス力価をもたらすまで培養するステップと
第二の複数のEC7細胞に組換えアデノウイルスのゲノムをトランスフェクトするステップであって、前記第二の複数のEC7細胞はそれぞれ、その核内にλリプレッサーを含むステップと;
前記第二の複数のEC7細胞を、少なくとも10 のウイルス粒子/mlの第二のウイルス力価をもたらすまで培養するステップと、
を含み、ここで前記第一の複数のEC7細胞を少なくとも10 のウイルス粒子/mlのウイルス力価へ培養するために必要な時間および前記第二の複数のEC7細胞を少なくとも10 のウイルス粒子/mlのウイルス力価へ培養するために必要な時間の差が20%以内である、方法。
【請求項2】
前記第一および第二の複数のEC7細胞が、組換え核酸からCXADRをさらに発現する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記組換えアデノウイルスがE2b欠損アデノウイルスである、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記組換えアデノウイルスのゲノムが、サイトカイン、キメラタンパク質、腫瘍関連抗原、及びネオエピトープの少なくとも1つをコードする、ウイルスペイロード遺伝子をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第一および第二のウイルス力価が、少なくとも10のウイルス粒子/mlである、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第一および第二のウイルス力価が、第一および第二のEC7細胞の間で10%以下の変動性を有する期間内に達成される、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【外国語明細書】