(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180446
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】便座装置
(51)【国際特許分類】
A47K 13/24 20060101AFI20221129BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20221129BHJP
A61B 5/026 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
A47K13/24
A61B5/02 310A
A61B5/026 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022145254
(22)【出願日】2022-09-13
(62)【分割の表示】P 2020182881の分割
【原出願日】2020-10-30
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】諸富 洋
(57)【要約】
【課題】便座に着座した使用者の生体情報を精度よく検知できるとともに、見栄えのよい便座装置を提供する。
【解決手段】使用者が着座する着座部と、前記着座部に対面する底面部と、を有し、樹脂材料で形成された便座と、前記便座の内部に位置して前記着座部に着座した使用者の生体情報を検知する光学式の生体センサと、を備え、前記着座部は、厚肉部と、前記厚肉部よりも薄く形成され裏面側に前記生体センサが配置される薄肉部と、が一体成形されており、前記薄肉部は、前記生体センサから照射される照射光と前記着座部に着座した使用者から反射される反射光とが透過可能な厚さとなっていることを特徴とする便座装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が着座する着座部と、前記着座部に対面する底面部と、を有し、樹脂材料で形成された便座と、
前記便座の内部に位置して前記着座部に着座した使用者の生体情報を検知する光学式の生体センサと、
を備え、
前記着座部は、厚肉部と、前記厚肉部よりも薄く形成され裏面側に前記生体センサが配置される薄肉部と、が一体成形されており、
前記薄肉部は、前記生体センサから照射される照射光と前記着座部に着座した使用者から反射される反射光とが透過可能な厚さとなっていることを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記薄肉部と前記生体センサとの間には、前記便座に固定され前記便座を補強する透明な補強部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の便座装置。
【請求項3】
前記補強部材は、前記生体センサの照射光および反射光から外れた位置で前記便座に固定されていることを特徴とする請求項2に記載の便座装置。
【請求項4】
前記補強部材は、前記厚肉部に固定されていることを特徴とする請求項3に記載の便座装置。
【請求項5】
前記補強部材は、前記薄肉部の裏面との間に隙間が形成されるように固定されていることを特徴とする請求項3または4に記載の便座装置。
【請求項6】
前記生体センサの表面と前記補強部材の裏面との間の寸法は、前記薄肉部の裏面と前記補強部材の表面との間の寸法よりも小さいことを特徴とする請求項5に記載の便座装置。
【請求項7】
前記補強部材と前記着座部との間には、前記便座の内部に水が浸入するのを抑制するシール部材が設けられていることを特徴とする請求項2~6のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項8】
前記補強部材は、前記着座部の裏面に接着されるとともに、前記便座に設けられた嵌合部に嵌合することで前記便座に固定されていることを特徴とする請求項2~7のいずれか1項に記載の便座装置。
【請求項9】
前記薄肉部の最大径は、12mm以下となっていることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の便座装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便座に設けられた脈波センサにより、便座に着座した使用者の脈波を測定可能な便座装置がある(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-39852号公報
【特許文献2】特開2017-6183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された脈波センサは、便座に着座した使用者の脈波による振動を検知する。しかし、このような脈波センサは、使用者の体動を誤検知する可能性があるので、脈波を精度よく検知できない虞がある。一方、特許文献2に記載された脈波センサは、便座に着座した使用者の血管に反射した反射光を受信して、脈波を計測する。しかし、この脈波センサは、便座の着座部に開口やセンサ窓を設ける必要があるので、便座の見栄えが悪化する虞がある。
【0005】
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、便座に着座した使用者の生体情報を精度よく検知できるとともに、見栄えのよい便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様は、使用者が着座する着座部と、前記着座部に対面する底面部と、を有し、樹脂材料で形成された便座と、前記便座の内部に位置して前記着座部に着座した使用者の生体情報を検知する光学式の生体センサと、を備え、前記着座部は、厚肉部と、前記厚肉部よりも薄く形成され裏面側に前記生体センサが配置される薄肉部と、が一体成形されており、前記薄肉部は、前記生体センサから照射される照射光と前記着座部に着座した使用者から反射される反射光とが透過可能な厚さとなっていることを特徴とする便座装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の態様によれば、便座に着座した使用者の生体情報を精度よく検知できるとともに、見栄えのよい便座装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態にかかる便座装置を備えたトイレ装置を示す斜視図である。
【
図2】生体情報制御の通信系を示すブロック図である。
【
図3】便座に着座した使用者と生体センサとの位置関係を示す側面図である。
【
図5】
図4中の便座、補強部材、生体センサを矢示A-A方向からみた断面図である。
【
図6】
図5中の補強部材と生体センサとを拡大して示す断面図である。
【
図7】
図6中の便座と補強部材とを矢示B-B方向から示す断面図である。
【
図8】便座、断熱材、ヒータ線、生体センサ、補強部材を示す分解斜視図である。
【
図9】
図9(a)~
図9(d)は、便座に取付けられる補強部材の取付態様を簡略して示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態にかかる便座装置を備えたトイレ装置を示す斜視図である。
図1に示すように、トイレ装置2は、便器4と、便座装置10と、を備える。便器4は、いわゆる腰掛け大便器である。便器4は、下方に凹む凹状のボウル部4aを有する。便器4は、ボウル部4aにおいて使用者の尿や便などの排泄物を受ける。便座装置10は、便器4の上部に設置される。便座装置10は、便器4に対して一体的に取付けてもよいし、便器4に対して着脱可能に取付けてもよい。
【0011】
図2は、生体情報制御の通信系を示すブロック図である。
図3は、便座に着座した使用者と生体センサとの位置関係を示す側面図である。
図4は、生体センサの位置関係を示す平面図である。
図5は、
図4中の便座、補強部材、生体センサを矢示A-A方向からみた断面図である。
図6は、
図5中の補強部材と生体センサとを拡大して示す断面図である。
図7は、
図6中の便座と補強部材とを矢示B-B方向から示す断面図である。
図8は、便座、断熱材、ヒータ線、生体センサ、補強部材を示す分解斜視図である。
図1、
図2に示すように、便座装置10は、便座20と、生体センサ42と、を備えている。便座装置10は、その他に本体部12と、便蓋14と、を備えている。便蓋14は、便座装置10に必要に応じて設けられ、省略可能である。便座20と便蓋14とは、本体部12に対して回動可能に軸支されている。
【0012】
なお、本願明細書において、「上方」、「下方」、「前方」、「後方」、「左側方」および「右側方」のそれぞれは、開いた便蓋14に背を向けて便座20に座った使用者から見た方向である。
【0013】
便座装置10の本体部12は、便器4のボウル部4aよりも後方に位置して便器4の上面4bに取付けられる。本体部12の内部には、便座20と便蓋14との開閉作動を制御する開閉ユニット、便座20の温度を制御する便座暖房ユニット、人体局部の洗浄を行う洗浄ユニット、臭気成分を低減する脱臭ユニット、これらの作動を統括的に制御する制御部50、およびトイレ室のリモコン60などと通信するための通信機55が必要に応じて内蔵されている。
【0014】
制御部50は、便座20の内部に設けられた光学式の生体センサ42と接続されている。この生体センサ42は、便座20に着座した使用者Uの血流や脈波などの生体情報による検出値を制御部50に出力する。制御部50は、生体センサ42の検出結果を基に、便座20に着座した使用者Uの脈拍数、脈拍変動、血流量などの測定を行う。
【0015】
そして、制御部50は、脈拍数などの測定値を、通信機55からトイレ装置2を作動させるためのリモコン60および使用者の携帯端末65に送信する。なお、通信機55と、リモコン60および携帯端末65との間は、無線通信で行ってもよいし、有線通信で行ってもよい。そして、便座20に着座した使用者Uは、リモコン60の表示部60aや携帯端末65の表示部65aにより、脈拍数などのバイタルサインを確認することができる。
【0016】
便座20は、外縁が便器4の外形形状に沿って湾曲して形成され、本体部12に回動可能に軸支されている。この便座20は、不透明な樹脂材料(例えば、ポリプロピレン)により形成されている。そして、便座20は、使用者Uが着座する着座部21と、着座部21に対面する底面部25と、を有している。
【0017】
着座部21は、便座20が便器4の上面4bに載置された状態で便座20の上面部となり、使用者Uが着座する部分である。底面部25は、便座20を下げた状態で便器4の上面4bに上下方向で対面する。便座20の内部には、着座部21を保温するヒータ線30と、断熱材32と、生体ユニット40と、が設けられている。ヒータ線30は、着座部21の裏面に設けられ、本体部12内に設けられた便座暖房ユニットにより制御されている。断熱材32は、ヒータ線30および生体ユニット40の下方に位置して、底面部25に設けられている。
【0018】
便座20は、ボウル部4aに貫通する開口部20aを有する。
図4に示すように、この例では、便座20の中央部に開口部20aが形成された、いわゆるO字型の便座20を示している。便座20は、O字型に限ることなく、U字型などでもよい。すなわち、使用状態(使用者Uが着座可能な状態)の便座20を上方から見た形状は、環状またはU字状である。使用者Uは、便座20に座った状態でボウル部4aに排泄を行うことができる。
【0019】
図5、
図6に示すように、着座部21は、厚さ寸法が大きく形成された厚肉部22と、厚肉部22よりも薄く形成された薄肉部23と、を有している。着座部21は、厚肉部22と薄肉部23とが一体成形されている。これにより、着座部21は、表面21aに厚肉部22と薄肉部23との間の継目ができないので、便座20の見栄えが悪くなるのを抑制でき、かつ水が便座20の内部に浸入するのを抑制できる。厚肉部22の裏面22aには、着座部21を保温するヒータ線30が設けられている。また、薄肉部23の裏面23a側には、隣り合うヒータ線30の間に生体ユニット40が配設されている。
【0020】
薄肉部23は、生体センサ42から照射される照射光Lt1と、着座部21に着座した使用者Uから反射される反射光Lt2とが透過可能な厚さTとなっている。
図6に示すように、薄肉部23の厚さTは、生体センサ42の照射光Lt1や反射光Lt2の強度および着座部21の耐久性などにより設定され、例えば0.5mm~1.0mm程度となっている。
【0021】
凹陥部24は、着座部21の裏面側に設けられている。凹陥部24は、厚肉部22の裏面22aから着座部21の表面21aに向けて凹んでいる。この凹陥部24の内部には、生体ユニット40の補強部材44が挿入される。凹陥部24は、底部が着座部21の薄肉部23となっている。そして、凹陥部24は、厚肉部22の裏面22aから薄肉部23の裏面23aに向けて延びる周壁面24aを有している。すなわち、凹陥部24は、周壁面24aと、底面となる薄肉部23の裏面23aと、を有する凹状の窪みとなっている。
【0022】
凹陥部24は、着座部21に複数個(例えば、2個)形成され、着座部21の左右対象位置に形成されている。
図4に示すように、凹陥部24は、便座20に着座した使用者Uの重心位置Gよりも前側に位置している。換言すると、凹陥部24は、便座20の開口部20aの前後方向の長さL1の中央よりも前方に形成されている。また、
図5に示すように、凹陥部24は、少なくとも一部が着座部21の左右方向の幅寸法L2の中央線C-Cよりも便座20の開口部20a側に形成されている。
【0023】
凹陥部24は、後述する補強部材44の突出部46に対応した形状となっている。
図7に示すように、この例では、凹陥部24が平面視で円形状に形成されている。換言すると、凹陥部24の底部を形成する薄肉部23は、平面視で円形状に形成されている。
【0024】
図6、
図7に示すように、薄肉部23(凹陥部24)の最大径Dは、生体センサ42が便座20に着座した使用者Uの生体情報を検知できる範囲で可及的に小さく形成されている。すなわち、最大径Dは、生体センサ42の照射光Lt1と反射光Lt2との光線が薄肉部23を通過できるような径方向寸法に設定されている。
【0025】
薄肉部23の最大径Dは、例えば12mm以下(好ましくは、8mm以下)となっている。薄肉部23の最大径Dをこのように小さく設定することで、便座20の剛性が低下するのを抑制できる。また、仮に薄肉部23が破損したとしても、使用者Uが凹陥部24内に指などを入れることを抑制できる。
【0026】
図5、
図6に示すように、凹陥部24の内部には、補強部材44の突出部46が挿入されている。凹陥部24は、厚肉部22の裏面22aから薄肉部23の裏面23aまでの深さ寸法E1が、補強部材44の突出部46の突出寸法E2よりも大きくなっている。これにより、補強部材44を着座部21に取付けるときには、補強部材44を厚肉部22の裏面22aに接触させることができる。
【0027】
生体ユニット40は、便座20の内部に位置して、着座部21を構成する薄肉部23の裏面23a側に配設されている。生体ユニット40は、便座20の左右方向に離間して2個設けられている。そして、生体ユニット40は、便座20に着座した使用者Uの生体情報を検知する生体センサ42と、生体センサ42が取付けられるとともに、便座20を補強する補強部材44と、を有している。
【0028】
生体センサ42は、薄肉部23の裏面23a側に配設されている。すなわち、生体センサ42は、便座20が閉じた状態で、薄肉部23の下方に位置している。生体センサ42は、後述する補強部材44に取付けられている。
【0029】
生体センサ42は、可視光やレーザを用いて便座20に着座した使用者Uの血流を検知する光学式の生体センサとなっている。また、生体センサ42は、使用者Uの大腿部U1に向けて照射した照射光Lt1を使用者Uの血流に反射させて、その反射光Lt2を検知する反射型のセンサとなっている。この例では、生体センサ42は、赤外線を用いて血管内を流れる赤血球の流量変化を検知可能なレーザ式の血流センサを用いている。
【0030】
血流センサからなる生体センサ42は、赤外線による照射光Lt1を照射する照射部42aと、血管を流れる赤血球の散乱光(反射光)を受信する受信部42bと、を有している。この生体センサ42は、血管を流れる赤血球によるドップラシフトを生じた周波数を検知する。
【0031】
図6に示すように、生体センサ42は、生体センサ42の表面42cと補強部材44の裏面44aとの間に隙間S1が形成されるように、補強部材44に取付けられる。この隙間S1の寸法S1aは、生体センサ42と補強部材44との製造公差を考慮して設定されている。隙間S1の寸法S1aは、後述する補強部材44の表面46aと薄肉部23の裏面23aとの間の隙間S2の寸法S2aよりも小さくなっている(S1a<S2a)。これにより、生体センサ42の照射光Lt1および反射光Lt2の減衰を抑制できる。
【0032】
図5に示すように、生体センサ42は、照射部42aから補強部材44の突出部46と薄肉部23とを介して使用者Uの大腿部U1内の血管に向けて赤外線による照射光Lt1を照射する。そして、生体センサ42は、使用者Uから反射した反射光Lt2を受信部42bで受信する。これにより、生体センサ42は、便座20に着座した使用者Uの生体情報を非侵襲的に検知することができる。そして、生体センサ42は、検知した検知信号を制御部50に送信する。
【0033】
補強部材44は、着座部21の薄肉部23と生体センサ42との間に設けられている。補強部材44は、例えば透明な樹脂材料からなり、便座20に固定されている。補強部材44は、薄肉部23を形成したことにより剛性が低下した便座20を補強する。また、補強部材44には、生体センサ42が取付けられている。そして、補強部材44は、生体センサ42が取付けられるケース部45と、ケース部45から凹陥部24に向けて突出する突出部46と、を有している。
【0034】
ケース部45は、ボックス状に形成され、内部に生体センサ42が取付けられる。
図5、
図6に示すように、ケース部45は、薄肉部23(凹陥部24)の最大径Dよりも大きく、厚肉部22の裏面22aに固着された並列するヒータ線30の間の寸法よりも小さく形成されている。
【0035】
補強部材44は、ケース部45が生体センサ42の照射光Lt1および反射光Lt2から外れた位置で便座20に固定されている。具体的には、補強部材44は、粘着性および防水性を有するシール部材48により、ケース部45の表面45aが厚肉部22の裏面22aに接着されている。シール部材48は、例えば防水性を有する両面テープや接着剤となっている。生体センサ42の照射光Lt1および反射光Lt2は、着座部21の薄肉部23を透過するようになっており、厚肉部22には干渉しない。従って、照射光Lt1および反射光Lt2が厚肉部22に設けられたシール部材48により減衰されるのを抑制できる。
【0036】
また、シール部材48は、補強部材44と着座部21との間に位置している。具体的には、シール部材48は、凹陥部24の周囲を取り囲むように、ケース部45の表面45aを厚肉部22の裏面22aに接着している。これにより、仮に薄肉部23が破損して凹陥部24内に水が浸入しても、シール部材48により凹陥部24から便座20の内部に水が浸入するのを抑制できる。すなわち、シール部材48は、補強部材44を着座部21に固着する固着機能と、便座20の内部に水が浸入するのを抑制する防水機能と、を有している。
【0037】
突出部46は、ケース部45の表面45aから薄肉部23に向けて突出している。突出部46は、補強部材44が着座部21に固定された状態で、凹陥部24の内部に位置している。突出部46は、透明になっており、生体センサ42の照射光Lt1および反射光Lt2が透過する。補強部材44は、突出部46を凹陥部24内に挿入することで簡単に位置決めがなされる。
【0038】
また、突出部46は、着座部21の薄肉部23を補強する。具体的には、突出部46は、例えば便座20に着座した使用者Uの体重により着座部21が撓んだ場合に、薄肉部23の裏面23aや凹陥部24の周壁面24aに接触する。また、ケース部45は、凹陥部24の周囲で厚肉部22に接触している。これにより、補強部材44は、薄肉部23の周囲の撓みを抑制する。
【0039】
図6に示すように、突出部46の高さ寸法E2は、凹陥部24の深さ寸法E1よりも小さくなっている(E2<E1)。これにより、補強部材44は、突出部46の表面46aと薄肉部23の裏面23aとの間に隙間S2が形成されるように着座部21に固定される。この隙間S2の寸法S2aは、着座部21や補強部材44の製造公差を考慮して設定されている。
【0040】
これにより、補強部材44は、突出部46を凹陥部24内に挿入したときに、突出部46の表面46aが薄肉部23の裏面23aに接触する前に、ケース部45の表面45aを厚肉部22の裏面22aに接触させることができる。従って、補強部材44は、シール部材48により厚肉部22の裏面22aに確実に固定させることができる。
【0041】
本実施形態による便座装置10は、上述の如き構成を有するもので、次に便座装置10に設けられた生体センサ42による生体情報の検知について説明する。
【0042】
生体センサ42は、例えば電源から電力が供給されている場合に、常に検知可能なON状態となっている。なお、これに限らず、生体センサ42は、トイレ装置2に近づく使用者Uを検知する人体検知センサや、便座20に着座した使用者Uを検知する着座センサ(いずれも図示せず)が使用者Uを検知したときにON状態となってもよい。
【0043】
図3に示すように、使用者Uが便座20に着座した場合には、重心位置Gの下方である臀部付近が圧迫される。例えば、生体センサ42がこの位置で使用者Uの生体情報を検知した場合には、圧迫された臀部内の血流を検知することになるので、生体情報を正確に検知できない虞がある。
【0044】
そこで、
図3、
図4に示すように、生体センサ42は、便座20に着座した使用者Uの重心位置Gよりも前方に配設され、圧迫が小さい使用者Uの大腿部U1内の血流を検知している。すなわち、生体センサ42は、便座20に着座した使用者Uの大腿部U1の下方に位置するように便座20内に設けられている。これにより、生体センサ42は、使用者Uの生体情報を精度よく検知することができる。
【0045】
ここで、上述した従来技術(特許文献1)では、便座に着座した使用者の脈波による振動を検知している。しかし、このような脈波センサは、使用者の体動を誤検知する可能性があるので、脈波を精度よく検知できない虞がある。
【0046】
また、例えば上述した従来技術(特許文献2)のように、便座の着座部に開口やセンサ窓を設けた場合には、便座の表面に開口やセンサ窓の継目ができるので、便座の見栄えが悪化する虞がある。また、使用者Uが便座20に着座した場合に、継目が皮膚に接触することにより不快に感じる虞がある。
【0047】
また、特許文献2に記載された脈波センサは、赤色、青色、緑色の可視光を用いて脈波を計測している。このような可視光を用いた場合には、例えば便座20に着座した使用者Uの皮下脂肪が厚いときに、使用者Uの生体情報を精度よく検知できない虞がある。
【0048】
そこで、本実施形態による生体センサ42は、使用者Uの血流に反射させた光を検知する光学式の反射型センサのうち、赤外線を用いたレーザ式の反射型センサを用いている。これにより、生体センサ42は、便座20に着座した使用者Uの体動によるノイズを低減させることができる。
【0049】
さらに、生体センサ42をレーザ式の反射型センサとすることで、便座20に着座した使用者Uの大腿部U1の皮下脂肪の影響を低減させることができる。従って、便座20に着座した使用者Uの生体情報を精度よく測定できる。
【0050】
また、生体センサ42は、着座部21の薄肉部23の下方に位置して、補強部材44に取付けられている。薄肉部23は、生体センサ42の照射光Lt1および反射光Lt2が透過可能な厚さとなっている。着座部21は、薄肉部23と厚肉部22とが一体成形されている。これにより、着座部21は、表面21a側から薄肉部23が視認できないようになっている。すなわち、着座部21の表面21aは、継目のない滑らかな面形状となり、便座20のデザイン性を向上できるとともに、座り心地が悪化するのを抑制できる。
【0051】
また、薄肉部23の下方には、薄肉部23の周囲を補強する補強部材44が設けられている。補強部材44は、平面視で薄肉部23よりも大きく形成されている。また、補強部材44は、突出部46が凹陥部24内に位置することにより、着座部21が撓んだときに突出部46が凹陥部24の周壁面24aや薄肉部23の裏面23aに接触する。これにより、便座20に使用者Uが着座したときに、薄肉部23の周囲の撓みを低減できる。
【0052】
そして、生体センサ42は、検知した検知信号を制御部50に向けて送信する。制御部50は、検知信号から、例えば脈拍数、脈拍変動、血流量などのバイタルサインや、フィットネスレベル、ストレス、体水分量などを測定および解析する。そして、制御部50は、測定値および解析値をリモコン60の表示部60aや携帯端末65の表示部65aに表示させる。なお、制御部50は、測定値や解析値をリモコン60や携帯端末65の他に、病院や介護施設などで管理されるPC端末の表示部に表示させてもよい。制御部50は、複数の使用者Uを識別して、各個人ごとに測定値や解析値を管理してもよい。これにより、使用者Uは、過去から現在に至る自分の健康状態を認識することができる。
【0053】
次に、
図9を参照して、着座部21に対する生体ユニット40の取付態様について説明する。
図9(a)~
図9(d)は、便座に取付けられる補強部材の取付態様を簡略して示す説明図である。
図9(a)は、上述した実施形態による補強部材44の取付態様を簡略して示す説明図である。
図9(b)は、第1変形例による補強部材70の取付態様を簡略して示す説明図である。
図9(c)は、第2変形例による補強部材72の取付態様を簡略して示す説明図である。
図9(d)は、第3変形例による補強部材74の取付態様を簡略して示す説明図である。
【0054】
図9(a)に示すように、シール部材48は、生体センサ42の照射光Lt1や反射光Lt2の光線から外れた位置で補強部材44を着座部21に固着させている。具体的には、シール部材48は、補強部材44を便座20の厚肉部22の裏面22aに固着させている。これにより、生体センサ42の照射光Lt1や反射光Lt2が減衰されるのを抑制できる。
【0055】
また、シール部材48は、防水性を有しており、凹陥部24の周囲を取り囲むように補強部材44と厚肉部22との間に設けられている。これにより、仮に薄肉部23が破損して凹陥部24内に水が浸入したとしても、シール部材48により便座20の内部に水が浸入するのを抑制できる。
【0056】
次に、
図9(b)に示す第1変形例のように、補強部材70が嵌合される嵌合部80を便座20にさらに設けてもよい。すなわち、補強部材70は、着座部21の裏面22aに接着されるとともに、便座20に設けられた嵌合部80に嵌合することで、便座20に固定されている。
【0057】
補強部材70は、シール部材48により着座部21に固着される。これにより、補強部材70が嵌合部80内で移動する(ずれる)のを抑制できる。その結果、生体センサ42の照射光Lt1および反射光Lt2の光線が揺れ動かずに安定するので、生体センサ42の検知精度に影響が及ぶのを抑制できる。そして、嵌合部80は、着座部21の厚肉部22から下方(底面部25)に向けて延び、補強部材70を下方から支持している。これにより、嵌合部80は、仮に補強部材70が着座部21から剥がれたとしても、補強部材70(生体ユニット)が落下するのを抑制できる。
【0058】
次に、
図9(c)に示す第2変形例のように、補強部材72は、ねじ82を用いて着座部21の厚肉部22に締結固定されてもよい。また、
図9(d)に示す第3変形例のように、補強部材74は、ピン84を用いて着座部21の厚肉部22に熱カシメにより溶着固定されてもよい。第2変形例および第3変形例では、ねじ82やピン84に加えて、粘着性を有するシール部材48により補強部材72、74を着座部21に固定している。しかし、第2変形例および第3変形例では、シール部材48は必要に応じて設けられていればよく、またシール部材48に換えて防水機能のみを有するシール部材(例えば、Oリング)が設けられていてもよい。
【0059】
上述した実施形態では、左右方向に離間して2個の生体ユニット40を着座部21に設けた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば生体ユニット40は、1個でもよいし、3個以上設けてもよい。
【0060】
また、上述した実施形態では、生体センサ42は、補強部材44に取付けられた場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば生体センサを便座の着座部や底面部に取付けてもよい。
【0061】
また、上述した実施形態では、補強部材44を厚肉部22に固定した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば補強部材は、生体センサの照射光や反射光の光線から外れた位置で、凹陥部24の周壁面24aや薄肉部23の裏面23aに固定されてもよい。
【0062】
また、上述した実施形態では、シール部材48が固着機能と防水機能との両方を有する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば防水機能のみを有するシール部材と、両面テープや接着剤などの接着部材とが別に設けられていてもよい。例えば、シール部材としてのOリングが突出部46と凹陥部24の周壁面24aとの間に設けられ、補強部材は他の箇所で着座部に固着されてもよい。
【0063】
また、上述した実施形態では、薄肉部23が円形状とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば薄肉部は、四角形状など任意の形状でもよい。補強部材44の突出部46についても同様である。
【0064】
以上説明した実施形態に基づく便座装置として、例えば以下に述べる態様のものが考えられる。
【0065】
第1の態様は、使用者が着座する着座部と、前記着座部に対面する底面部と、を有し、樹脂材料で形成された便座と、前記便座の内部に位置して前記着座部に着座した使用者の生体情報を検知する光学式の生体センサと、を備え、前記着座部は、厚肉部と、前記厚肉部よりも薄く形成され裏面側に前記生体センサが配置される薄肉部と、が一体成形されており、前記薄肉部は、前記生体センサから照射される照射光と前記着座部に着座した使用者から反射される反射光とが透過可能な厚さとなっていることを特徴とする便座装置である。
【0066】
第1の態様によれば、便座の表面に生体センサの照射光や反射光が通過する開口やセンサ窓を設ける必要がないため、デザイン性を悪化するのを抑制できるとともに、便座に着座した使用者の生体情報を検知できる。
【0067】
第2の態様は、第1の態様において、前記薄肉部と前記生体センサとの間には、前記便座に固定され前記便座を補強する透明な補強部材が設けられていることを特徴とする便座装置である。
【0068】
第2の態様によれば、生体センサの照射光や反射光が透過する薄肉部は、便座に着座した使用者の体重により撓みやすく、剛性が低下した部分となっている。そこで、薄肉部に透明な補強部材を設けることで、薄肉部やその周囲の強度と耐久性を確保できる。
【0069】
第3の態様は、第2の態様において、前記補強部材は、前記生体センサの照射光および反射光から外れた位置で前記便座に固定されていることを特徴とする便座装置である。
【0070】
第3の態様によれば、照射光や反射光の光線が通過する領域に固定部(例えば、両面テープや接着剤など)を設けると、固定部によって光が吸収されて減衰するため、生体情報の検知性能が低下する虞がある。そこで、補強部材は、照射光や反射光が通過しない領域に固定部を設けたので、生体センサの検知性能が低下するのを抑制できる。
【0071】
第4の態様は、第3の態様において、前記補強部材は、前記厚肉部に固定されていることを特徴とする便座装置である。
【0072】
第4の態様によれば、補強部材を厚肉部に固定しているので、薄肉部の大きさを照射光や反射光が透過するための最小面積で形成できる。従って、便座の剛性が低下するのを抑制できるとともに、補強部材を厚肉部に強固に固定しつつ、補強部材により便座の強度をより高めることができる。
【0073】
第5の態様は、第3または第4の態様において、前記補強部材は、前記薄肉部の裏面との間に隙間が形成されるように固定されていることを特徴とする便座装置である。
【0074】
第5の態様によれば、便座や補強部材の寸法誤差があっても、補強部材を固定するときに、薄肉部の裏面と補強部材の表面とが先当たりして補強部材の固定が弱くなるのを抑制できる。
【0075】
第6の態様は、第5の態様において、前記生体センサの表面と前記補強部材の裏面との間の寸法は、前記薄肉部の裏面と前記補強部材の表面との間の寸法よりも小さいことを特徴とする便座装置である。
【0076】
第6の態様によれば、生体センサの表面と補強部材の裏面との間の寸法を小さくすることで、生体センサの照射光および反射光の減衰を抑制できる。
【0077】
第7の態様は、第2~第6の態様のいずれか1つの態様において、前記補強部材と前記着座部との間には、前記便座の内部に水が浸入するのを抑制するシール部材が設けられていることを特徴とする便座装置である。
【0078】
第7の態様によれば、仮に薄肉部が破損したとしても、シール部材により水が便座の内部に侵入することを抑制できる。
【0079】
第8の態様は、第2~第7の態様のいずれか1つの態様において、前記補強部材は、前記着座部の裏面に接着されるとともに、前記便座に設けられた嵌合部に嵌合することで前記便座に固定されていることを特徴とする便座装置である。
【0080】
第8の態様によれば、補強部材は、着座部に接着されることにより正確に位置決めすることができる。これにより生体センサの検知を安定させることができる。また、便座の撓みなどにより、仮に補強部材がはがれた場合でも、嵌合部により補強部材が落下することを抑制できる。
【0081】
第9の態様は、第1~第8の態様のいずれか1つの態様において、前記薄肉部の最大径は、12mm以下となっていることを特徴とする便座装置である。
【0082】
第9の態様によれば、薄肉部の最大径を小さくしているので、便座の剛性が低下するのを抑制できる。また、仮に薄肉部が破損した場合でも、使用者が便座の内部に指を入れるのを抑制できる。
【0083】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便座装置10などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置、設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0084】
2 トイレ装置
4 便器
4a ボウル部
4b 上面
10 便座装置
12 本体部
14 便蓋
20 便座
20a 開口部
21 着座部
21a 表面
22 厚肉部
22a 裏面
23 薄肉部
23a 裏面
24 凹陥部
24a 周壁面
25 底面部
30 ヒータ線
32 断熱材
40 生体ユニット
42 生体センサ
42a 照射部
42b 受信部
42c 表面
44,70,72,74 補強部材
44a 裏面
45 ケース部
45a 表面
46 突出部
46a 表面
48 シール部材
50 制御部
55 通信機
60 リモコン
60a 表示部
65 携帯端末
65a 表示部
80 嵌合部
82 ねじ
84 ピン
Lt1 照射光
Lt2 反射光
U 使用者
U1 大腿部