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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180448
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】イヌ化抗体
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20221129BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221129BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20221129BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221129BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221129BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20221129BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C07K16/28
A61K39/395 U
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P37/04
C12P21/08
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022145331
(22)【出願日】2022-09-13
(62)【分割の表示】P 2019194872の分割
【原出願日】2014-12-19
(31)【優先権主張番号】61/918,946
(32)【優先日】2013-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/918,847
(32)【優先日】2013-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/030,812
(32)【優先日】2014-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510000976
【氏名又は名称】インターベット インターナショナル ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】モージー,モハマド
(72)【発明者】
【氏名】ジヤーン,ユエンジユヨン
(72)【発明者】
【氏名】ターピー,イアン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特定の性質を有するイヌプログラム死受容体1(イヌPD-1)に高い結合親和性を有するイヌ化抗体を提供する。
【解決手段】イヌ化抗体または当該イヌ化抗体の抗原結合断片であって、当該イヌ化抗体の重鎖は、(i)244位にP、(ii)271位にA、(iii)303位にA、(iv)304位にG、(v)305位にT、(vi)333位にA、及び(vii)335位にPを含む、特定の配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含有し、当該イヌ化抗体は、イヌPD-1に特異的に結合し、(i)244位にP、(ii)271位にA、(iii)303位にA、(iv)304位にG、(v)305位にT、(vi)333位にA、及び(vii)335位にPを含む、前記特定の配列を有するイヌ化抗体の重鎖は除かれる、イヌ化抗体または当該イヌ化抗体の抗原結合断片である。さらに、イヌの癌の処置における前記イヌ化抗体の使用を開示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:130および配列番号:132から成る群より選択されるアミノ酸配列を含
有するイヌ結晶性フラグメント領域(cFc領域)であって、1から7個のアミノ酸残基
がP4、D31、N63、G64、T65、A93およびP95から成る群より選択され
る指示位置で置換されている、イヌ結晶性フラグメント領域(cFc領域)。
【請求項2】
置換されている前記1から7個のアミノ酸残基の置換が、P4A、D31A、N63A
、G64A、T65A、A93GおよびP95Aから成る群より選択される、請求項1に
記載のFc領域。
【請求項3】
請求項1または2に記載のcFc領域を含有するイヌ化抗体。
【請求項4】
前記イヌ化抗体がイヌプログラム死受容体1(イヌPD-1)に特異的に結合する、請
求項3に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項5】
前記cFc領域が、配列番号:109、配列番号:110、配列番号:111および配
列番号:112から成る群より選択されるアミノ酸配列を含むヒンジ領域をさらに含有す
る、請求項4に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項6】
配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29および配列番号:30から成る群よ
り選択されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域1(VH CDR1);配列番号:
31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34および配列番号:35から成る
群より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域2(VH CDR2);ならび
に配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38および配列番号:146から成る群
より選択されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域3(VH CDR3)をさらに含
有する、請求項4または5に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項7】
配列番号:13、配列番号:14および配列番号:15から成る群より選択されるアミ
ノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(VL CDR1);配列番号:16、配列番号:
17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20および配列番号:21から成る
群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域2(VL CDR2);ならび
に配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25および配列番号:
26から成る群より選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域3(VL CDR
3)をさらに含有する、請求項4、5または6に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合フ
ラグメント。
【請求項8】
配列番号:40、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:46、配列番号:48
、配列番号:50、配列番号:52、配列番号:54、配列番号:56、配列番号:58
、配列番号:60、配列番号:62、配列番号:64および配列番号:66から成る群よ
り選択されるアミノ酸配列を含有する、請求項3に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合
フラグメントであって、前記イヌ化抗体が、cFc領域の指示位置で配列番号:130ま
たは配列番号:132のP4、D31、N63、G64、T65、A93およびP95か
ら成る群より選択される7個のアミノ酸残基の少なくとも1個が異なるアミノ酸残基によ
って置換されている配列番号:130または配列番号:132のアミノ酸配列を含むcF
c領域を含有する、請求項3に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項9】
配列番号:72、配列番号:78、配列番号:84、配列番号:90、配列番号:96
、配列番号:102および配列番号:108から成る群より選択されるアミノ酸配列を含
むイヌ軽鎖をさらに含有する、請求項8に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合フラグメ
ント。
【請求項10】
ヒンジ領域を有するイヌ結晶性フラグメント領域(cFc領域)であって、前記cFc
領域およびヒンジ領域が、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10および配列番号
:12から成る群より選択されるアミノ酸配列を含有する、イヌ結晶性フラグメント領域
(cFc領域)。
【請求項11】
請求項10に記載のcFc領域およびヒンジ領域を含有するイヌ化抗体。
【請求項12】
前記イヌ化抗体がイヌプログラム死受容体1(イヌPD-1)に特異的に結合する、請
求項11に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項13】
配列番号:68、配列番号:70、配列番号:74、配列番号:76、配列番号:80
、配列番号:82、配列番号:86、配列番号:88、配列番号:92、配列番号:94
、配列番号:98、配列番号:100、配列番号:104および配列番号:106から成
る群より選択されるアミノ酸配列を含有する、請求項12に記載の単離されたイヌ化抗体
またはその抗原結合フラグメント。
【請求項14】
配列番号:72、配列番号:78、配列番号:84、配列番号:90、配列番号:96
、配列番号:102および配列番号:108から成る群より選択されるアミノ酸配列を含
むイヌ軽鎖をさらに含有する、請求項13に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合フラグ
メント。
【請求項15】
以下の特性:
(i)1×10-5Mから1×10-12Mの解離定数(Kd)でイヌPD-1に結合
する;
(ii)1×10-1-1から1×10-1-1のオン速度(kon)で
イヌPD-1に結合する;
(iii)1×10-3-1から1×10-8-1のオフ速度(koff)でイヌ
PD-1に結合する;
(iv)腫瘍または病原体に対する抗原特異的記憶応答を刺激する;
(v)インビボで抗体応答を刺激する;および
(vi)動物被験体における免疫応答を刺激する
のうちの1、2、3、4、5または全部を示す、請求項4、5、6、7、8、9、10、
11、12、13、または14に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項16】
イヌプログラム死受容体1(イヌPD-1)に特異的に結合する単離された哺乳動物抗
体およびその抗原結合フラグメントであって、イヌPD-1に結合する場合、前記抗体が
配列番号:144内の少なくとも1個のアミノ酸残基に結合し、前記抗体およびその抗原
結合フラグメントがイヌPD-1に結合し、およびイヌPD-1のイヌプログラム死リガ
ンド1(PD-L1)への結合をブロックする、単離されたイヌ化抗体およびその抗原結
合フラグメント。
【請求項17】
請求項4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15に記載のイ
ヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントであって、イヌPD-1に結合する場合、前記
抗体が配列番号:144内の少なくとも1個のアミノ酸残基に結合し、前記抗体およびそ
の抗原結合フラグメントが、イヌPD-1に結合し、およびイヌPD-1のイヌプログラ
ム死リガンド1(PD-L1)への結合をブロックする、イヌ化抗体またはその抗原結合
フラグメント。
【請求項18】
前記抗体が、配列番号:138、配列番号:139、配列番号:140、配列番号:1
41、配列番号:142、配列番号:143および配列番号:145から成る群より選択
される1またはそれ以上のアミノ酸配列内の少なくとも1個のアミノ酸残基に結合する、
請求項16または17に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項19】
前記抗体が、配列番号:145内の少なくとも1個のアミノ酸残基に結合する、請求項
16、17または18に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項20】
前記抗体が、配列番号:114のR62、R69、R72、R75およびR90から成
る群より選択される1個またはそれ以上のアミノ酸残基に結合する、請求項16、17、
18または19に記載のイヌ化抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項21】
請求項4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、
18、19、または20に記載の1またはそれ以上のイヌ化抗体と、イヌPD-1との結
合に関して交差競合するモノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントであって、
前記抗体およびその抗原結合フラグメントが、イヌPD-1に結合し、およびイヌPD-
1のPD-L1への結合をブロックする、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項22】
請求項4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、
18、19、20または21に記載のイヌ化抗体の重鎖または軽鎖をコードする核酸。
【請求項23】
配列番号:13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、2
4、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37
、38および146から成る群より選択される1またはそれ以上のアミノ酸配列をコード
する、請求項22に記載の核酸。
【請求項24】
請求項23または24に記載の単離された核酸を含有する発現ベクター。
【請求項25】
請求項24に記載の1またはそれ以上の発現ベクターを含有する宿主細胞。
【請求項26】
請求項4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、
18、19、20または21に記載の抗体または抗原結合フラグメントおよび医薬的に許
容される担体または希釈剤を含有する医薬組成物。
【請求項27】
免疫細胞の活性を増大させる方法であって、それを必要とする被験体に、請求項26に
記載の医薬組成物の治療有効量を投与することを含む方法。
【請求項28】
前記方法が、
a.癌を処置する;
b.感染もしくは感染性疾患を処置する;または
c.ワクチンアジュバントとして働く
ために使用される、請求項27に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年7月30日出願の米国特許仮出願第62/030,812号、2
013年12月20日出願の米国特許仮出願第61/918,847号および2014年
12月20日出願の米国特許仮出願第61/918,946号の優先権を主張するもので
あり、これらすべての内容が全体として参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、特定の性質を有するイヌ化抗体に関する。本発明はまた、特定の配列を有し
、およびイヌPD-1に高い結合親和性を有する、イヌPD-1に対するイヌ化抗体に関
する。本発明はさらに、癌の処置を含む、イヌの処置における本発明の抗体の使用に関す
る。
【背景技術】
【0003】
イヌ抗体(免疫グロブリンGまたはIgGとも称される)は、約150Kdの大きな四
量体タンパク質である。各々のIgGタンパク質は、それぞれ約25Kdの2本の同一の
軽鎖およびそれぞれ約50Kdの2本の同一の重鎖から成る。イヌIgGの4つの公知の
IgG重鎖サブクラスが存在し、それらはIgGA、IgGB、IgGCおよびIgGD
と称される。2種類の軽鎖:κ鎖およびλ鎖が存在する。κ軽鎖およびλ軽鎖の各々は、
1つの可変ドメイン(VL)および1つの定常ドメイン(CL)から成る。2本の重鎖の
各々は、1つの可変ドメイン(VH)ならびにCH-1、CH-2およびCH-3と称さ
れる3つの定常ドメインから成る。CH-1ドメインは、「ヒンジ」または選択的に「ヒ
ンジ領域」と称されるアミノ酸配列によってCH-2ドメインに連結されている。ヒトで
は、IgGは、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4と称される4つのサブクラ
スの1つに存在する。IgGのサブクラスは主としてヒンジ領域の配列によって決定され
、ヒンジ領域の配列はIgGの4つのサブクラスの間で異なる。2本の重鎖はジスルフィ
ド結合によって互いに連結され、各々の重鎖は同じくジスルフィド結合を介して軽鎖の1
つに連結されている。
【0004】
酵素のパパインでのIgG抗体の消化はヒンジ領域で抗体分子を切断し、3つのフラグ
メントの形成をもたらす。これらのフラグメントのうち2つは同一であり、各々は、重鎖
のVHおよびCH1ドメインと結合された軽鎖から成る。これらのフラグメントは「Fa
b」フラグメントと呼ばれ、抗体の抗原結合部位を含有する。パパインでの消化から生じ
る3番目のフラグメントは「Fc」と呼ばれ、ジスルフィド結合によって結び付けられた
2本の重鎖の残りの部分を含有する。したがってFcは、2本の重鎖の各々のCH2およ
びCH3ドメインから成る二量体を含有する。Fabは、抗体がその同種エピトープに結
合することを可能にし、一方Fcは、抗体が免疫エフェクター機能、例えば抗体依存性細
胞傷害(ADCC)、抗体依存性食作用(ADCP)および補体依存性細胞傷害(CDC
)を媒介することを可能にする。
【0005】
IgG抗体は、そのFc部分がFcγ受容体として知られるタンパク質のファミリーに
結合することを通してADCCおよびADCPなどのエフェクター機能を媒介することは
当分野で周知であるが、CDCは、補体の第一成分、C1qへのFcの結合を通して媒介
される。異なるIgGサブクラスはこれらのエフェクター機能を媒介する能力が異なるこ
とも当分野で周知である。例えば、ヒトIgG1は強力なADCCおよびCDCを示し、
IgG4は弱いADCCおよびCDCを示すかまたはADCCおよびCDCを全く示さな
い。加えて、いずれのIgGサブクラスがエフェクター機能を示すかまたは欠如している
かを同定するための方法は当分野で周知である。
【0006】
治療目的でのモノクローナル抗体の使用に基づくアプローチは、所望の治療応答を達成
するための目的にかなった抗体または抗体フラグメントの設計を必要とする。例えば、癌
のための一部の治療アプローチは、治療用抗体が増強されたエフェクター機能を有するこ
とを必要とし、また別のアプローチは、エフェクター機能が有意に低いまたはエフェクタ
ー機能が完全に除去されていることを必要とする。エフェクター機能の増強または除去は
、Fcγ受容体および補体の第一成分への結合を増強または低減するために抗体のFc部
分に1またはそれ以上のアミノ酸突然変異(置換)を導入することを通して達成され得る
。抗体のエフェクター機能を改変するために抗体分子に導入され得るアミノ酸置換を述べ
た、先行技術の数多くの報告がある。例えばShields et al.,[J.of
Biol.Chem.,276(9):6591-6604(2001)]は、アスパ
ラギンのアラニンへの(N297A)置換を開示しており、これは非グリコシル化抗体を
もたらし、いくつかのFcγ受容体への抗体結合を有意に低減させた。加えて、Shie
lds et al.,は、アスパラギン酸のアラニンへの(D265A)置換もFcγ
受容体への抗体の結合を有意に低減させることを開示した。N297AおよびD265A
置換の各々はCDCも有意に低下させることが示された。抗体におけるエフェクター機能
を低減または除去する潜在的な置換を同定する他の同様の報告が存在する[例えばSaz
insky et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.,105:2016
7-20172(2008)、Alegre et al.,Transplantat
ion,57:1537-1543(1994)、Hutchins et al.,P
roc.Nat.Acad.Sci.92:11980-11984(1994)、Mc
Earchem et al.,Blood,109:1185-1192(2007)
]。
【0007】
主として活性化TおよびB細胞上で発現される免疫阻害性受容体である、プログラム死
受容体1(PD-1)とも称されるプログラム細胞死受容体1は、CD28およびCTL
A-4に関連する免疫グロブリンスーパーファミリーの成員である。PD-1および同様
のファミリー成員は、そのリガンドに結合する細胞外Ig可変型(V型)ドメインおよび
シグナル伝達分子に結合する細胞質尾部を含有するI型膜貫通糖タンパク質である。PD
-1の細胞質尾部は2つのチロシンベースのシグナル伝達モチーフ、ITIM(免疫受容
体チロシンベース阻害モチーフ)およびITSM(免疫受容体チロシンベーススイッチモ
チーフ)を含有する。
【0008】
PD-1は、プログラム死リガンド1(PD-L1)とも称されるプログラム細胞死リ
ガンド1および/またはプログラム死リガンド2(PD-L2)とも称されるプログラム
細胞死リガンド2に結合した場合、T細胞応答を減弱させる。これらのリガンドのいずれ
かのPD-1への結合は抗原受容体シグナル伝達を負に調節する。PD-L1のPD-1
への結合をブロックすることは、免疫系による腫瘍細胞のクリアランスを助けつつ、腫瘍
特異的CD8T細胞免疫を増強する。マウスPD-1の三次元構造ならびにヒトPD-
L1とマウスPD-1の共結晶構造が報告されている[Zhang et al.,Im
munity 20:337-347(2004);Lin et al.,Proc.
Natl.Acad.Sci.USA 105:3011-3016(2008)]。
【0009】
PD-L1およびPD-L2は、公知のシグナル伝達モチーフを有さない短い細胞質領
域と共に細胞外領域内にIgV様ドメインおよびIgC様ドメインの両方を含むI型膜貫
通リガンドである。PD-L1およびPD-L2はどちらも、構成的に発現されるかまた
は非造血組織ならびに種々の腫瘍型を含む様々な細胞型において誘導され得る。PD-L
1はB細胞、T細胞、骨髄性細胞および樹状細胞(DC)上で発現されるだけでなく、末
梢細胞、例えば微小血管内皮細胞および非リンパ系器官、例えば心臓または肺でも発現さ
れる。これに対し、PD-L2はマクロファージおよびDC上でのみ認められる。PD-
1リガンドの発現パターンは、PD-1が末梢性免疫寛容を維持するうえで役割を果たし
、さらに末梢における自己反応性T細胞およびB細胞応答を調節するのに役立ち得ること
を示唆する。
【0010】
いずれの場合も、PD-1が、おそらく免疫回避を媒介することにより、少なくとも特
定のヒト癌において非常に重要な役割を果たすことは今や極めて明らかである。したがっ
て、PD-L1は多くのマウスおよびヒト腫瘍で発現されることが示されており、PD-
L1陰性腫瘍細胞株の大部分ではIFN-γによって誘導され得る[Iwai et a
l., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99:12293-12
297(2002);Strome et al.,Cancer Res.,63:6
501-6505(2003)]。さらに、リンパ球に浸潤する腫瘍でのPD-1の発現
および/または腫瘍細胞でのPD-L1の発現は、多数の原発性ヒト腫瘍生検において同
定されている。そのような腫瘍組織としては、肺、肝臓、卵巣、子宮頸、皮膚、結腸、神
経膠腫、膀胱、乳房、腎臓、食道、胃、口腔扁平上皮細胞、尿路上皮細胞および膵臓の癌
ならびに頭頸部の腫瘍が含まれる[Brown et al.,J.Immunol.1
70:1257-1266(2003);Dong et al.,Nat.Med.8
:793-800(2002);Wintterle et al.,Cancer R
es.63:7462-7467(2003);Strome et al.,Canc
er Res.,63:6501-6505(2003);Thompson et a
l.,Cancer Res.66:3381-5(2006);Thompson e
t al.,Clin.Cancer Res.13:1757-1761(2007)
;Nomi et al.,Clin.Cancer Res.13:2151-215
7.(2007)]。より顕著には、腫瘍細胞でのPDリガンドの発現は複数の腫瘍型に
わたってヒト癌患者の予後不良と相関している[Okazaki and Honjo,
Int.Immunol.19:813-824(2007)において総説されている]
【0011】
さらに、Nomi et al.[Clin.Cancer Res.13:2151
-2157.(2007)]は、PD-1またはPD-L1に対する抗体を投与すること
を介して、侵襲性膵癌のマウスモデルにおいてPD-L1のPD-1への結合をブロック
することの治療効果を明らかにした。これらの抗体は、腫瘍反応性CD8T細胞の腫瘍
への浸潤を有効に促進し、IFN-γ、グランザイムBおよびパーフォリンを含む抗腫瘍
エフェクターの上方調節を生じさせた。同様に、PD-L1およびPD-1の結合をブロ
ックする抗体の使用は、マウス扁平上皮癌のモデルにおいて腫瘍増殖を有意に阻害した[
Tsushima et al.,Oral Oncol.42:268-274(20
06)]。
【0012】
他の研究において、PD-L1でのマウス肥満細胞腫株のトランスフェクションは、腫
瘍特異的CTLクローンと共培養した場合、腫瘍細胞の溶解の減少をもたらした。抗PD
-L1モノクローナル抗体を添加した場合、溶解が回復した[Iwai et al.,
Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99:12293-12297(
2002)]。インビボでは、PD-1/PD-L1相互作用をブロックすることは、マ
ウス腫瘍モデルにおいて養子T細胞移入療法の効果を増大させることが示された[Str
ome et al.,Cancer Res.63:6501-6505(2003)
]。癌処置におけるPD-1の役割についてのさらなる証拠は、PD-1ノックアウトマ
ウスで実施された実験によってもたらされ、この実験では、PD-L1を発現する骨髄腫
細胞は野生型動物においてのみ増殖し(腫瘍増殖および関連する動物死を生じさせる)、
PD-1欠損マウスでは増殖しなかった[Iwai Y.et al.,Proc.Na
tl.Acad.Sci.U.S.A.99:12293-12297(2002)]。
ごく最近、PD-1に対する抗体(ヒトPD-1に対するヒト化マウスモノクローナル抗
体を含む)が、ヒトでの癌療法において少なくとも初期の成功を示した[例えば米国特許
第8,354,509号、米国特許第8,008,449号および米国特許第7,595
,048号参照]。
【0013】
抗PD-1抗体はまた、慢性ウイルス感染においても有用であり得る。急性ウイルス感
染後に生成された記憶CD8T細胞は高度に機能性であり、防御免疫の重要な成分を構
成する。これに対し、慢性感染はしばしばウイルス特異的T細胞応答の様々な程度の機能
障害(疲弊)を特徴とし、この欠陥が、宿主が残存する病原体を除去できないことの主た
る理由である。機能性エフェクターT細胞は感染の初期段階で最初に生成されるが、慢性
感染の過程でそれらは徐々に機能を喪失する。Barber et al.[Natur
e 439:682-687(2006)]は、LCMVの研究室株に感染させたマウス
が、血液および他の組織中で高レベルのウイルスを生じさせる慢性感染を発症することを
示した。これらのマウスは、最初は堅固なT細胞応答を発現したが、T細胞の疲弊後最終
的には感染に屈した。Barber et al.は、慢性感染マウスにおけるエフェク
ターT細胞の数および機能の低下を、PD-1とPD-L1との間の相互作用をブロック
する抗体を注射することによって逆転させ得ることを見出した。
【0014】
本明細書中のいかなる参考文献の引用も、そのような参考文献が本出願の「先行技術」
として使用可能であることの承認と解釈されるべきではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第8,354,509号明細書
【特許文献2】米国特許第8,008,449号明細書
【特許文献3】米国特許第7,595,048号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Shields et al.,[J.of Biol.Chem.,276(9):6591-6604(2001)
【非特許文献2】Sazinsky et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.,105:20167-20172(2008)
【非特許文献3】Alegre et al.,Transplantation,57:1537-1543(1994)
【非特許文献4】Hutchins et al.,Proc.Nat.Acad.Sci.92:11980-11984(1994)
【非特許文献5】McEarchem et al.,Blood,109:1185-1192(2007)
【非特許文献6】Zhang et al.,Immunity 20:337-347(2004)
【非特許文献7】Lin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105:3011-3016(2008)
【非特許文献8】Iwai et al., Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.99:12293-12297(2002)
【非特許文献9】Strome et al.,Cancer Res.,63:6501-6505(2003)
【非特許文献10】Brown et al.,J.Immunol.170:1257-1266(2003)
【非特許文献11】Dong et al.,Nat.Med.8:793-800(2002)
【非特許文献12】Wintterle et al.,Cancer Res.63:7462-7467(2003)
【非特許文献13】Thompson et al.,Cancer Res.66:3381-5(2006)
【非特許文献14】Thompson et al.,Clin.Cancer Res.13:1757-1761(2007)
【非特許文献15】Nomi et al.,Clin.Cancer Res.13:2151-2157.(2007)
【非特許文献16】Okazaki and Honjo,Int.Immunol.19:813-824(2007)
【非特許文献17】Tsushima et al.,Oral Oncol.42:268-274(2006)
【非特許文献18】Barber et al.,Nature 439:682-687(2006)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、抗体のイヌ結晶性フラグメント領域(cFc領域)が1またはそれ以上のエ
フェクター機能を増大させる、減少させるまたは除去するように遺伝的に修飾されている
、抗体のcFc領域を提供する。本発明の1つの態様では、遺伝的に修飾されたcFcは
1またはそれ以上のエフェクター機能を減少させるまたは除去する。本発明の別の態様で
は、遺伝的に修飾されたcFcは1またはそれ以上のエフェクター機能を増大させる。
【0018】
ある実施形態では、遺伝的に修飾されたcFc領域は、遺伝的に修飾されたイヌIgG
B Fc領域である。別のそのような実施形態では、遺伝的に修飾されたcFc領域は、
遺伝的に修飾されたイヌIgGC Fc領域である。特定の実施形態では、エフェクター
機能は抗体依存性細胞傷害(ADCC)であり、これが増大、減少または除去されている
。別の実施形態では、エフェクター機能は補体依存性細胞傷害(CDC)であり、これが
増大、減少または除去されている。さらに別の実施形態では、cFc領域は、ADCCお
よびCDCの両方を増大させる、減少させるまたは除去するように遺伝的に修飾されてい
る。
【0019】
本発明はさらに、遺伝的に修飾されたcFc領域を含有するイヌフレームおよび/また
は完全長重鎖を提供する。したがって、本発明は、完全長重鎖が本発明の遺伝的に修飾さ
れたcFc領域を含有する、抗体の完全長重鎖を提供する。そのような完全長重鎖はまた
、対応するイヌ軽鎖(κまたはλ鎖)と結合して完全な抗体を形成することもできる。こ
の種の特定の実施形態では、生じる抗体は特定のイヌ抗原に特異的に結合する。あるその
ような実施形態では、イヌ抗原はイヌPD-1である。さらに他の実施形態では、イヌ抗
原はイヌPD-L1である。さらに他の実施形態では、イヌ抗原はIL-4受容体のα鎖
である。さらに他の実施形態では、イヌ抗原は、イヌ胸腺間質性リンパ球新生因子タンパ
ク質(cTSLP)である[例えば、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる
、米国特許第7,718,772号参照]。
【0020】
ある実施形態では、遺伝的に修飾されたcFc領域は、以下のアミノ酸残基:P4、D
31、N63、G64、T65、A93またはP95の1個から7個が指示されている位
置で別のアミノ酸残基によって置き換えられている配列番号:130(または配列番号:
132)のアミノ酸配列を含有する。P4、D31、N63、G64、T65、A93お
よび/またはP95を置換するアミノ酸は、以下の表1に列挙する、その他の19個の標
準的な天然に存在するアミノ酸の1つから個別に選択される。本発明はさらに、そのよう
な遺伝的に修飾されたcFc領域のアミノ酸配列と90%、95%、98%または99%
同一であるアミノ酸配列を含有し、ならびに以下のアミノ酸残基、すなわちP4、D31
、N63、G64、T65、A93またはP95の1個またはそれ以上が置換された配列
番号:130(または配列番号:132)のアミノ酸配列を含有する遺伝的に修飾された
cFc領域としてADCCおよび/またはCDCの少なくとも50%、75%、90%、
95%またはそれ以上の増大、減少または除去を保持する、遺伝的に修飾されたcFc領
域の変異体を提供する。
【0021】
他の実施形態では、以下のアミノ酸残基:P4、D31、N63、G64、T65、A
93またはP95の2個から5個が指示されている位置で別のアミノ酸残基によって置き
換えられている。この種の特定の実施形態では、遺伝的に修飾されたcFc領域は、以下
の置換:P4A、D31A、N63A、A93GおよびP95Aを有する配列番号:13
0または配列番号:132のアミノ酸配列を含有する。関連実施形態では、遺伝的に修飾
されたcFc領域は、以下の置換:P4A、D31A、N63AおよびP95Aを有する
配列番号:130または配列番号:132のアミノ酸配列を含有する。他の実施形態では
、遺伝的に修飾されたcFc領域は、D31およびN63における置換を有する配列番号
:130または配列番号:132のアミノ酸配列を含有する。この種の特定の実施形態で
は、31位のアスパラギン酸残基はグルタミン酸残基、アスパラギン残基またはアラニン
残基で置換され、63位のアスパラギン残基はグルタミン残基、ヒスチジン残基またはア
ラニン残基で置換されている。この種のより特定の実施形態では、遺伝的に修飾されたc
Fc領域は、以下の置換:D31AおよびN63Aを有する配列番号:130または配列
番号:132のアミノ酸配列を含有する。特定の実施形態では、遺伝的に修飾されたcF
c領域は、配列番号:129または配列番号:131のヌクレオチド配列によってコード
され、前記ヌクレオチド配列は、それらがコードするアミノ酸配列に対応するヌクレオチ
ド変化を含有する。
【0022】
別の実施形態では、遺伝的に修飾されたcFc領域は、A93に置換を有する配列番号
:130または配列番号:132のアミノ酸配列を含有する。この種の特定の実施形態で
は、置換はA93Gである。関連実施形態では、置換はA93Sである。以下の実施例4
で示すように、A93Gの置換は、CDC活性を増大させることを示す、補体C1q結合
の増強をもたらす。
【0023】
関連実施形態では、遺伝的に修飾されたcFc領域は、配列番号:109のアミノ酸配
列を含むヒンジ領域をさらに含有する。他の実施形態では、遺伝的に修飾されたFc領域
は、配列番号:110のアミノ酸配列を含むヒンジ領域をさらに含有する。さらに他の実
施形態では、遺伝的に修飾されたFc領域は、配列番号:111のアミノ酸配列を含むヒ
ンジ領域をさらに含有する。さらに他の実施形態では、遺伝的に修飾されたFc領域は、
配列番号:112のアミノ酸配列を含む遺伝的に修飾されたヒンジ領域をさらに含有する
【0024】
選択的な実施形態では、本発明は、イヌIgGD抗体由来の遺伝的に修飾されたヒンジ
領域、イヌIgGA抗体由来のヒンジ領域、イヌIgGB抗体由来のヒンジ領域、または
イヌIgGC抗体由来のヒンジ領域を有するイヌIgGD Fc領域を提供する。さらに
、本発明は、抗体の完全長重鎖が、イヌIgGD抗体由来の遺伝的に修飾されたヒンジ領
域、イヌIgGA抗体由来のヒンジ領域、イヌIgGB抗体由来のヒンジ領域、またはイ
ヌIgGC抗体由来のヒンジ領域を有する本発明のイヌIgGD Fc領域を含有する、
抗体の完全長重鎖を提供する。そのような完全長重鎖はまた、対応するイヌ軽鎖(κまた
はλ鎖)と結合して完全な抗体を形成することもできる。
【0025】
したがって、本発明は、イヌIgGD抗体由来の遺伝的に修飾されたヒンジ領域をさら
に含有するイヌIgGD Fc領域を提供する。この種の特定の実施形態では、イヌIg
GD Fc領域および遺伝的に修飾されたヒンジ領域は、10位にプロリン残基(P10
)を含む、配列番号:6のアミノ酸配列または配列番号:6のアミノ酸配列と90%、9
5%、98%もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含有する。より特定の実施形態で
は、イヌIgGD Fc領域および遺伝的に修飾されたヒンジ領域は、配列番号:5のヌ
クレオチド配列によってコードされる。他の実施形態では、イヌIgGD Fc領域は、
イヌIgGA抗体由来のヒンジ領域をさらに含有する。この種の特定の実施形態では、イ
ヌIgGD Fc領域およびヒンジ領域は、配列番号:8のアミノ酸配列または配列番号
:8のアミノ酸配列と90%、95%、98%もしくは99%同一であるアミノ酸配列を
含有する。より特定の実施形態では、イヌIgGD Fc領域およびヒンジ領域は、配列
番号:7のヌクレオチド配列によってコードされる。さらに他の実施形態では、イヌIg
GD Fc領域は、イヌIgGB抗体由来のヒンジ領域をさらに含有する。この種の特定
の実施形態では、イヌIgGD Fc領域およびヒンジ領域は、配列番号:10のアミノ
酸または配列番号:10のアミノ酸配列と90%、95%、98%もしくは99%同一で
あるアミノ酸配列を含有する。より特定の実施形態では、イヌIgGD Fc領域および
ヒンジ領域は、配列番号:9のヌクレオチド配列によってコードされる。さらに他の実施
形態では、イヌIgGD Fc領域は、イヌIgGC抗体由来のヒンジ領域をさらに含有
する。この種の特定の実施形態では、イヌIgGD Fc領域およびヒンジ領域は、配列
番号:12のアミノ酸配列または配列番号:12のアミノ酸配列と90%、95%、98
%もしくは99%同一であるアミノ酸配列を含有する。より特定の実施形態では、イヌI
gGD Fc領域およびヒンジ領域は、配列番号:11のヌクレオチド配列によってコー
ドされる。本発明はさらに、これらのイヌIgGD Fc領域およびヒンジ領域を含有す
るイヌ化抗体を提供する。特定の実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメ
ントは、イヌプログラム死受容体1(イヌPD-1)に特異的に結合する。
【0026】
本発明は、それゆえ、イヌPD-1に特異性を有するおよび/またはイヌPD-1に高
い結合親和性を有するイヌ化抗イヌPD-1抗体を提供する。特定の実施形態では、イヌ
化抗イヌPD-1抗体はまた、イヌPD-1のイヌPD-L1への結合をブロックする能
力も備える。具体的な実施形態では、イヌ化抗イヌPD-1抗体は、イヌPD-1に高い
結合親和性を有し、ならびにイヌPD-1のイヌPD-L2への結合もブロックする能力
を備える。イヌPD-1に特異的に結合するイヌ化抗体またはその抗原結合フラグメント
は、本発明のイヌIgG重鎖およびイヌκまたはλ軽鎖を含有し得る。特定の実施形態で
は、イヌ化抗イヌPD-1抗体は、イヌ化マウス抗イヌPD-1抗体である。本発明はま
た、癌および/または感染に起因する疾患などの疾患の処置におけるそのようなイヌ化抗
体の使用に関する。
【0027】
特定の実施形態では、イヌ化抗イヌPD-1抗体は、本発明の遺伝的に修飾されたcF
c領域を含有する。選択的な実施形態では、イヌ化抗イヌPD-1抗体は、イヌIgGD
抗体由来の遺伝的に修飾されたヒンジ領域、イヌIgGA抗体由来のヒンジ領域、イヌI
gGB抗体由来のヒンジ領域、またはイヌIgGC抗体由来のヒンジ領域を有するイヌI
gGD Fc領域を含有する。本発明はさらに、マウス抗イヌPD-1抗体から得たCD
R、すなわち3つの軽鎖CDR:CDR軽鎖1(CDRL1)、CDR軽鎖2(CDRL
2)およびCDR軽鎖3(CDRL3)ならびに3つの重鎖CDR:CDR重鎖1(CD
RH1)、CDR重鎖2(CDRH2)およびCDR重鎖3(CDRH3)と組み合わせ
て本発明のイヌフレームを含有するそのようなイヌ化抗イヌPD-1抗体を提供する。
【0028】
特定の実施形態では、イヌ化マウス抗イヌPD-1抗体は、本発明のIgGBまたはI
gGCの遺伝的に修飾されたcFc領域あるいはイヌIgGD Fc領域を、マウス抗イ
ヌPD-1抗体から得たCDRと組み合わせたイヌIgGD抗体由来の遺伝的に修飾され
たヒンジ領域、イヌIgGA抗体由来のヒンジ領域、イヌIgGB抗体由来のヒンジ領域
、またはイヌIgGC抗体由来のヒンジ領域と共に含有する。さらに、本発明は、本明細
書で詳述する特異的CDRを有するイヌ化マウス抗イヌPD-1抗体を提供するだけでな
く、さらにそれらのCDRの保存的に修飾された変異体ならびに同じ正準構造を有する(
例えば共有する)変異体を含有するイヌ化マウス抗イヌPD-1抗体も提供する。
【0029】
したがって特定の実施形態では、イヌ化抗イヌPD-1抗体は、相補性決定領域(CD
R)が、重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3に関してそれぞれH1-1、H2-1
およびH3-6の正準構造を有する、すなわち重鎖のCDR1が正準構造クラス1を有し
、重鎖のCDR2が正準構造クラス1を有し、および重鎖のCDR3が正準構造クラス6
を有するCDRをさらに含有する。さらにより特定の実施形態では、対応する軽鎖につい
てのCDRは、軽鎖のCDR1、CDR2およびCDR3に関してそれぞれL1-3、L
2-1およびL3-1の正準構造を有する。他の実施形態では、イヌ化抗イヌPD-1抗
体は、相補性決定領域(CDR)が、重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3に関して
それぞれH1-1、H2-1およびH3-11の正準構造を有するCDRをさらに含有す
る。この種のさらにより特定の実施形態では、対応する軽鎖についてのCDRは、軽鎖の
CDR1、CDR2およびCDR3に関してそれぞれL1-2A、L2-1およびL3-
1の正準構造を有する。さらに他の実施形態では、イヌ化抗イヌPD-1抗体は、相補性
決定領域(CDR)が、重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3に関してそれぞれH1
-1、H2-2AおよびH3-11の正準構造を有するCDRをさらに含有する。この種
のさらにより特定の実施形態では、対応する軽鎖についてのCDRは、軽鎖のCDR1、
CDR2およびCDR3に関してそれぞれL1-2A、L2-1およびL3-1の正準構
造を有する。さらに他の実施形態では、イヌ化抗イヌPD-1抗体は、相補性決定領域(
CDR)が、重鎖のCDR1、CDR2およびCDR3に関してそれぞれH1-1、H2
-2AおよびH3-13の正準構造を有するCDRをさらに含有する。この種のさらによ
り特定の実施形態では、対応する軽鎖についてのCDRは、軽鎖のCDR1、CDR2お
よびCDR3に関してそれぞれL1-4、L2-1およびL3-1の正準構造を有する。
【0030】
より特定の実施形態では、本発明のイヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配
列番号:27、配列番号:28、配列番号:29または配列番号:30のアミノ酸配列を
有する重鎖相補性決定領域1(VH CDR1)の1つまたはそれ以上を含む。別の実施
形態では、重鎖相補性決定領域2(VH CDR2)は、配列番号:31、配列番号:3
2、配列番号:33、配列番号:34または配列番号:35のアミノ酸配列を含む。さら
に別の実施形態では、重鎖相補性決定領域3(VH CDR3)は、配列番号:36、配
列番号:37、配列番号:38または配列番号:146のアミノ酸配列を含む。この種の
特定の実施形態では、イヌ化抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号:27、配列
番号:28、配列番号:29または配列番号:30のアミノ酸配列を含むVH CDR1
および配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列番号:34または配列番
号:35のアミノ酸配列を含むVH CDR2の両方を含有する。別のそのような実施形
態では、イヌ化抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号:27、配列番号:28、
配列番号:29または配列番号:30のアミノ酸配列を含むVH CDR1および配列番
号:36、配列番号:37、配列番号:38または配列番号:146のアミノ酸配列を含
むVH CDR3の両方を含有する。さらに別のそのような実施形態では、イヌ化抗体ま
たは抗原結合フラグメントは、配列番号:31、配列番号:32、配列番号:33、配列
番号:34または配列番号:35のアミノ酸配列を含むVH CDR2および配列番号:
36、配列番号:37、配列番号:38または配列番号:146のアミノ酸配列を含むV
H CDR3の両方を含有する。さらに別のそのような実施形態では、イヌ化抗体または
抗原結合フラグメントは、配列番号:27、配列番号:28、配列番号:29または配列
番号:30のアミノ酸配列を含むVH CDR1、配列番号:31、配列番号:32、配
列番号:33、配列番号:34または配列番号:35のアミノ酸配列を含むVH CDR
2および配列番号:36、配列番号:37、配列番号:38または配列番号:146のア
ミノ酸配列を含むVH CDR3を含有する。
【0031】
特定の実施形態では、イヌ化抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号:13、配
列番号:14または配列番号:15のアミノ酸配列を含む軽鎖相補性決定領域1(VL
CDR1)も含有する。関連実施形態では、軽鎖相補性決定領域2(VL CDR2)は
、配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20
または配列番号:21のアミノ酸配列を含む。さらに別の実施形態では、軽鎖相補性決定
領域3(VL CDR3)は、配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列
番号:25または配列番号:26のアミノ酸配列を含む。この種の特定の実施形態では、
イヌ化抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号:13、配列番号:14または配列
番号:15のアミノ酸配列を含むVL CDR1および配列番号:16、配列番号:17
、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20または配列番号:21のアミノ酸配
列を含むVL CDR2の両方を含有する。
【0032】
別のそのような実施形態では、イヌ化抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号:
13、配列番号:14または配列番号:15のアミノ酸配列を含むVL CDR1および
配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番号:25または配列番号:2
6のアミノ酸配列を含むVL CDR3の両方を含有する。さらに別のそのような実施形
態では、イヌ化抗体または抗原結合フラグメントは、配列番号:16、配列番号:17、
配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20または配列番号:21のアミノ酸配列
を含むVL CDR2および配列番号:22、配列番号:23、配列番号:24、配列番
号:25または配列番号:26のアミノ酸配列を含むVL CDR3の両方を含有する。
さらに別のそのような実施形態では、イヌ化抗体または抗原結合フラグメントは、配列番
号:13、配列番号:14または配列番号:15のアミノ酸配列を含むVL CDR1、
配列番号:16、配列番号:17、配列番号:18、配列番号:19、配列番号:20ま
たは配列番号:21のアミノ酸配列を含むVL CDR2および配列番号:22、配列番
号:23、配列番号:24、配列番号:25または配列番号:26のアミノ酸配列を含む
VL CDR3を含有する。
【0033】
本発明はさらに、配列番号:40のアミノ酸配列または配列番号:40のアミノ酸配列
と90%、95%、98%もしくは99%同一であるアミノ酸配列、配列番号:42のア
ミノ酸配列または配列番号:42のアミノ酸配列と90%、95%、98%もしくは99
%同一であるアミノ酸配列、配列番号:44のアミノ酸配列または配列番号:44のアミ
ノ酸配列と90%、95%、98%もしくは99%同一であるアミノ酸配列、配列番号:
46のアミノ酸配列または配列番号:46のアミノ酸配列と90%、95%、98%もし
くは99%同一であるアミノ酸配列、配列番号:48のアミノ酸配列または配列番号:4
8のアミノ酸配列と90%、95%、98%もしくは99%同一であるアミノ酸配列、配
列番号:50のアミノ酸配列または配列番号:50のアミノ酸配列と90%、95%、9
8%もしくは99%同一であるアミノ酸配列、配列番号:52のアミノ酸配列または配列
番号:52のアミノ酸配列と90%、95%、98%もしくは99%同一であるアミノ酸
配列、配列番号:54のアミノ酸配列または配列番号:54のアミノ酸配列と90%、9
5%、98%もしくは99%同一であるアミノ酸配列、配列番号:56のアミノ酸配列ま
たは配列番号:56のアミノ酸配列と90%、95%、98%もしくは99%同一である
アミノ酸配列、配列番号:58のアミノ酸配列または配列番号:58のアミノ酸配列と9
0%、95%、98%もしくは99%同一であるアミノ酸配列、配列番号:60のアミノ
酸配列または配列番号:60のアミノ酸配列と90%、95%、98%もしくは99%同
一であるアミノ酸配列、配列番号:62のアミノ酸配列または配列番号:62のアミノ酸
配列と90%、95%、98%もしくは99%同一であるアミノ酸配列、配列番号:64
のアミノ酸配列または配列番号:64のアミノ酸配列と90%、95%、98%もしくは
99%同一であるアミノ酸配列、配列番号:66のアミノ酸配列または配列番号:66の
アミノ酸配列と90%、95%、98%もしくは99%同一であるアミノ酸配列、または
これらのイヌ化抗体の抗原結合フラグメントを含有するイヌ化抗体を提供する。
【0034】
特定の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)239位にP、A、GまたはS、(ii)
266位にA、GまたはS、(iii)298位にA、GまたはS、(iv)299位に
G、PまたはA、(v)300位にT、A、GまたはS、(vi)328位にA、Gまた
はS、および(vii)330位にP、A、GまたはSを含む、配列番号:40、52、
56または64(または配列番号:40、52、56もしくは64と90%、95%、9
8%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を含有する。他の実施形態では、抗体の重鎖は
、(i)237位にP、A、GまたはS、(ii)264位にA、GまたはS、(iii
)296位にA、GまたはS、(iv)297位にG、PまたはA、(v)298位にT
、A、GまたはS、(vi)326位にA、GまたはS、および(vii)328位にP
、A、GまたはSを含む、配列番号:42、54、58または66(または配列番号:4
2、54、58もしくは66と90%、95%、98%もしくは99%同一)のアミノ酸
配列を含有する。さらに他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)244位にP、A、G
またはS、(ii)271位にA、GまたはS、(iii)303位にA、GまたはS、
(iv)304位にG、PまたはA、(v)305位にT、A、GまたはS、(vi)3
33位にA、GまたはS、および(vii)335位にP、A、GまたはSを含む、配列
番号:44、50または60(または配列番号:44、50もしくは60と90%、95
%、98%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を含有する。さらに他の実施形態では、
抗体の重鎖は、(i)242位にP、A、GまたはS、(ii)269位にA、Gまたは
S、(iii)301位にA、GまたはS、(iv)302位にG、PまたはA、(v)
303位にT、A、GまたはS、(vi)331位にA、GまたはS、および(vii)
333位にP、A、GまたはSを含む、配列番号:46または62(または配列番号:4
6もしくは62と90%、95%、98%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を含有す
る。さらに他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)246位にP、A、GまたはS、(
ii)273位にA、GまたはS、(iii)305位にA、GまたはS、(iv)30
6位にG、PまたはA、(v)307位にT、A、GまたはS、(vi)335位にA、
GまたはS、および(vii)337位にP、A、GまたはSを含む、配列番号:48(
または配列番号:48と90%、95%、98%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を
含有する。
【0035】
さらに他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)239位にP、A、GまたはS、(i
i)266位にA、(iii)298位にA、(iv)299位にG、PまたはA、(v
)300位にT、A、GまたはS、(vi)328位にA、GまたはS、および(vii
)330位にP、A、GまたはSを含む、配列番号:40、52、56または64(また
は配列番号:40、52、56もしくは64と90%、95%、98%もしくは99%同
一)のアミノ酸配列を含有する。他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)237位にP
、A、GまたはS、(ii)264位にA、(iii)296位にA、(iv)297位
にG、PまたはA、(v)298位にT、A、GまたはS、(vi)326位にA、Gま
たはS、および(vii)328位にP、A、GまたはSを含む、配列番号:42、54
、58または66(または配列番号:42、54、58もしくは66と90%、95%、
98%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を含有する。さらに他の実施形態では、抗体
の重鎖は、(i)244位にP、A、GまたはS、(ii)271位にA、(iii)3
03位にA、(iv)304位にG、PまたはA、(v)305位にT、A、GまたはS
、(vi)333位にA、GまたはS、および(vii)335位にP、A、GまたはS
を含む、配列番号:44、50または60(または配列番号:44、50もしくは60と
90%、95%、98%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を含有する。さらに他の実
施形態では、抗体の重鎖は、(i)242位にP、A、GまたはS、(ii)269位に
A、(iii)301位にA、(iv)302位にG、PまたはA、(v)303位にT
、A、GまたはS、(vi)331位にA、GまたはS、および(vii)333位にP
、A、GまたはSを含む、配列番号:46または62(または配列番号:46もしくは6
2と90%、95%、98%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を含有する。さらに他
の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)246位にP、A、GまたはS、(ii)273
位にA、(iii)305位にA、(iv)306位にG、PまたはA、(v)307位
にT、A、GまたはS、(vi)335位にA、GまたはS、および(vii)337位
にP、A、GまたはSを含む、配列番号:48(または配列番号:48と90%、95%
、98%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を含有する。
【0036】
さらに他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)239位にA、(ii)266位にA
、(iii)298位にA、(iv)299位にP、(v)300位にA、(vi)32
8位にG、および(vii)330位にAを含む、配列番号:40、52、56または6
4(または配列番号:40、52、56もしくは64と90%、95%、98%もしくは
99%同一)のアミノ酸配列を含有する。他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)23
7位にA、(ii)264位にA、(iii)296位にA、(iv)297位にP、(
v)298位にA、(vi)326位にG、および(vii)328位にAを含む、配列
番号:42、54、58または66(または配列番号:42、54、58もしくは66と
90%、95%、98%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を含有する。さらに他の実
施形態では、抗体の重鎖は、(i)244位にA、(ii)271位にA、(iii)3
03位にA、(iv)304位にP、(v)305位にA、(vi)333位にG、およ
び(vii)335位にAを含む、配列番号:44、50または60(または配列番号:
44、50もしくは60と90%、95%、98%もしくは99%同一)のアミノ酸配列
を含有する。さらに他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)242位にA、(ii)2
69位にA、(iii)301位にA、(iv)302位にP、(v)303位にA、(
vi)331位にG、および(vii)333位にAを含む、配列番号:46または62
(または配列番号:46もしくは62と90%、95%、98%もしくは99%同一)の
アミノ酸配列を含有する。さらに他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)246位にA
、(ii)273位にA、(iii)305位にA、(iv)306位にP、(v)30
7位にA、(vi)335位にG、および(vii)337位にAを含む、配列番号:4
8(または配列番号:48と90%、95%、98%もしくは99%同一)のアミノ酸配
列を含有する。
【0037】
さらに他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)239位にP、(ii)266位にA
、G、またはS、(iii)298位にA、GまたはS、(iv)299位にG、(v)
300位にT、(vi)328位にA、および(vii)330位にPを含む、配列番号
:40、52、56または64(または配列番号:40、52、56もしくは64と90
%、95%、98%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を含有する。他の実施形態では
、抗体の重鎖は、(i)237位にP、(ii)264位にA、GまたはS、(iii)
296位にA、GまたはS、(iv)297位にG、(v)298位にT、(vi)32
6位にA、および(vii)328位にPを含む、配列番号:42、54、58または6
6(または配列番号:42、54、58もしくは66と90%、95%、98%もしくは
99%同一)のアミノ酸配列を含有する。さらに他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i
)244位にP、(ii)271位にA、GまたはS、(iii)303位にA、Gまた
はS、(iv)304位にG、(v)305位にT、(vi)333位にA、および(v
ii)335位にPを含む、配列番号:44、50または60(または配列番号:44、
50もしくは60と90%、95%、98%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を含有
する。さらに他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)242位にP、(ii)269位
にA、GまたはS、(iii)301位にA、GまたはS、(iv)302位にG、(v
)303位にT、(vi)331位にA、および(vii)333位にPを含む、配列番
号:46または62(または配列番号:46もしくは62と90%、95%、98%もし
くは99%同一)のアミノ酸配列を含有する。さらに他の実施形態では、抗体の重鎖は、
(i)246位にP、(ii)273位にA、GまたはS、(iii)305位にA、G
またはS、(iv)306位にG、(v)307位にT、(vi)335位にA、および
(vii)337位にPを含む、配列番号:48(または配列番号:48と90%、95
%、98%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を含有する。
【0038】
さらに他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)239位にP、(ii)266位にA
、(iii)298位にA、(iv)299位にG、(v)300位にT、(vi)32
8位にA、および(vii)330位にPを含む、配列番号:40、52、56または6
4(または配列番号:40、52、56もしくは64と90%、95%、98%もしくは
99%同一)のアミノ酸配列を含有する。他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)23
7位にP、(ii)264位にA、(iii)296位にA、(iv)297位にG、(
v)298位にT、(vi)326位にA、および(vii)328位にPを含む、配列
番号:42、54、58または66(または配列番号:42、54、58もしくは66と
90%、95%、98%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を含有する。さらに他の実
施形態では、抗体の重鎖は、(i)244位にP、(ii)271位にA、(iii)3
03位にA、(iv)304位にG、(v)305位にT、(vi)333位にA、およ
び(vii)335位にPを含む、配列番号:44、50または60(または配列番号:
44、50もしくは60と90%、95%、98%もしくは99%同一)のアミノ酸配列
を含有する。さらに他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)242位にP、(ii)2
69位にA、(iii)301位にA、(iv)302位にG、(v)303位にT、(
vi)331位にA、および(vii)333位にPを含む、配列番号:46または62
(または配列番号:46もしくは62と90%、95%、98%もしくは99%同一)の
アミノ酸配列を含有する。さらに他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)246位にP
、(ii)273位にA、(iii)305位にA、GまたはS、(iv)306位にG
、(v)307位にT、(vi)335位にA、および(vii)337位にPを含む、
配列番号:48(または配列番号:48と90%、95%、98%もしくは99%同一)
のアミノ酸配列を含有する。
【0039】
他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)239位にP、A、GまたはS、(ii)2
66位にA、GまたはS、(iii)298位にA、GまたはS、(iv)299位にG
、(v)300位にT、(vi)328位にA、GまたはS、および(vii)330位
にP、A、GまたはSを含む、配列番号:40、52、56または64(または配列番号
:40、52、56もしくは64と90%、95%、98%もしくは99%同一)のアミ
ノ酸配列を含有する。他のそのような実施形態では、抗体の重鎖は、(i)237位にP
、A、GまたはS、(ii)264位にA、GまたはS、(iii)296位にA、Gま
たはS、(iv)297位にG、(v)298位にT、(vi)326位にA、Gまたは
S、および(vii)328位にP、A、GまたはSを含む、配列番号:42、54、5
8または66(または配列番号:42、54、58もしくは66と90%、95%、98
%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を含有する。さらに他の実施形態では、抗体の重
鎖は、(i)244位にP、A、GまたはS、(ii)271位にA、GまたはS、(i
ii)303位にA、GまたはS、(iv)304位にG、(v)305位にT、(vi
)333位にA、GまたはS、および(vii)335位にP、A、GまたはSを含む、
配列番号:44、50または60(または配列番号:44、50もしくは60と90%、
95%、98%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を含有する。さらに他の実施形態で
は、抗体の重鎖は、(i)242位にP、A、GまたはS、(ii)269位にA、Gま
たはS、(iii)301位にA、GまたはS、(iv)302位にG、(v)303位
にT、(vi)331位にA、GまたはS、および(vii)333位にP、A、Gまた
はSを含む、配列番号:46または62(または配列番号:46もしくは62と90%、
95%、98%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を含有する。さらに他の実施形態で
は、抗体の重鎖は、(i)246位にP、A、GまたはS、(ii)273位にA、Gま
たはS、(iii)305位にA、GまたはS、(iv)306位にG、(v)307位
にT、(vi)335位にA、GまたはS、および(vii)337位にP、A、Gまた
はSを含む、配列番号:48(または配列番号:48と90%、95%、98%もしくは
99%同一)のアミノ酸配列を含有する。
【0040】
さらに他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)239位にP、A、GまたはS、(i
i)266位にA、(iii)298位にA、(iv)299位にG、(v)300位に
T、(vi)328位にA、GまたはS、および(vii)330位にP、A、Gまたは
Sを含む、配列番号:40、52、56または64(または配列番号:40、52、56
もしくは64と90%、95%、98%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を含有する
。他のそのような実施形態では、抗体の重鎖は、(i)237位にP、A、GまたはS、
(ii)264位にA、(iii)296位にA、(iv)297位にG、(v)298
位にT、(vi)326位にA、GまたはS、および(vii)328位にP、A、Gま
たはSを含む、配列番号:42、54、58または66(または配列番号:42、54、
58もしくは66と90%、95%、98%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を含有
する。さらに他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)244位にP、A、GまたはS、
(ii)271位にA、(iii)303位にA、(iv)304位にG、(v)305
位にT、(vi)333位にA、GまたはS、および(vii)335位にP、A、Gま
たはSを含む、配列番号:44、50または60(または配列番号:44、50もしくは
60と90%、95%、98%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を含有する。さらに
他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)242位にP、A、GまたはS、(ii)26
9位にA、(iii)301位にA、(iv)302位にG、(v)303位にT、(v
i)331位にA、GまたはS、および(vii)333位にP、A、GまたはSを含む
、配列番号:46または62(または配列番号:46もしくは62と90%、95%、9
8%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を含有する。さらに他の実施形態では、抗体の
重鎖は、(i)246位にP、A、GまたはS、(ii)273位にA、(iii)30
5位にA、(iv)306位にG、(v)307位にT、(vi)335位にA、Gまた
はS、および(vii)337位にP、A、GまたはSを含む、配列番号:48(または
配列番号:48と90%、95%、98%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を含有す
る。
【0041】
さらに他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)239位にA、(ii)266位にA
、(iii)298位にA、(iv)299位にG、(v)300位にT、(vi)32
8位にG、および(vii)330位にAを含む、配列番号:40、52、56または6
4(または配列番号:40、52、56もしくは64と90%、95%、98%もしくは
99%同一)のアミノ酸配列を含有する。他のそのような実施形態では、抗体の重鎖は、
(i)237位にA、(ii)264位にA、(iii)296位にA、(iv)297
位にG、(v)298位にT、(vi)326位にG、および(vii)328位にAを
含む、配列番号:42、54、58または66(または配列番号:42、54、58もし
くは66と90%、95%、98%もしくは99%同一)のアミノ酸配列を含有する。さ
らに他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)244位にA、(ii)271位にA、(
iii)303位にA、(iv)304位にG、(v)305位にT、(vi)333位
にG、および(vii)335位にAを含む、配列番号:44、50または60(または
配列番号:44、50もしくは60と90%、95%、98%もしくは99%同一)のア
ミノ酸配列を含有する。さらに他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)242位にA、
(ii)269位にA、(iii)301位にA、(iv)302位にG、(v)303
位にT、(vi)331位にG、および(vii)333位にAを含む、配列番号:46
または62(または配列番号:46もしくは62と90%、95%、98%もしくは99
%同一)のアミノ酸配列を含有する。さらに他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)2
46位にA、(ii)273位にA、(iii)305位にA、(iv)306位にG、
(v)307位にT、(vi)335位にG、および(vii)337位にAを含む、配
列番号:48(または配列番号:48と90%、95%、98%もしくは99%同一)の
アミノ酸配列を含有する。
【0042】
加えて、本発明は、配列番号:72、配列番号:78、配列番号:84、配列番号:9
0、配列番号:96、配列番号:102または配列番号:108のアミノ酸配列を含むイ
ヌ軽鎖をさらに含有するイヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。
【0043】
したがって、本発明はさらに、配列番号:68のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番
号:72のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有するイヌ化抗体またはその抗原結合フラグメン
トを提供する。関連実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列
番号:70のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号:72のアミノ酸配列を含む軽鎖を
含有する。別の実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号
:74のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号:78のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有
する。関連実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:7
6のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号:78のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有する
。さらに別の実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:
80のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号:84のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有す
る。関連実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:82
のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号:84のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有する。
さらに別の実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:8
6のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号:90のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有する
。関連実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:88の
アミノ酸配列を含む重鎖および配列番号:90のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有する。さ
らに別の実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:92
のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号:96のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有する。
関連実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:94のア
ミノ酸配列を含む重鎖および配列番号:96のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有する。さら
に別の実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:98の
アミノ酸配列を含む重鎖および配列番号:102のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有する。
関連実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:100の
アミノ酸配列を含む重鎖および配列番号:102のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有する。
さらに別の実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:1
04のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号:108のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有
する。関連実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:1
06のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号:108のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有
する。
【0044】
本発明はさらに、配列番号:40のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号:72のア
ミノ酸配列を含む軽鎖を含有するイヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する
。関連実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:42の
アミノ酸配列を含む重鎖および配列番号:72のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有する。別
の実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:44のアミ
ノ酸配列を含む重鎖および配列番号:78のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有する。関連実
施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:46のアミノ酸
配列を含む重鎖および配列番号:78のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有する。さらに別の
実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:48のアミノ
酸配列を含む重鎖および配列番号:84のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有する。関連実施
形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:50のアミノ酸配
列を含む重鎖および配列番号:84のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有する。さらに別の実
施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:52のアミノ酸
配列を含む重鎖および配列番号:90のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有する。関連実施形
態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:54のアミノ酸配列
を含む重鎖および配列番号:90のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有する。さらに別の実施
形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:56のアミノ酸配
列を含む重鎖および配列番号:96のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有する。関連実施形態
では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:58のアミノ酸配列を
含む重鎖および配列番号:96のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有する。
【0045】
さらに別の実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:
60のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号:102のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有
する。関連実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:6
2のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号:102のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有す
る。さらに別の実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号
:64のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号:108のアミノ酸配列を含む軽鎖を含
有する。関連実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、配列番号:
66のアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号:108のアミノ酸配列を含む軽鎖を含有
する。
【0046】
本発明はさらに、本発明のイヌ化抗体のCDR、cFc領域、ヒンジ領域を有するcF
c領域ならびに重鎖および軽鎖を含む本発明のアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸
を提供する。本発明はさらに、本発明の核酸の1またはそれ以上を含有する発現ベクター
を提供する。本発明はさらに、本発明の1またはそれ以上の発現ベクターを含有する宿主
細胞ならびにそのような宿主細胞を使用して本発明のイヌ化抗体のCDRおよび/または
cFc領域および/またはヒンジ領域を有するcFc領域および/または重鎖および/ま
たは軽鎖を発現するための方法を提供する。本発明はまた、そのようなベクターの不在下
で本発明のイヌ化抗体のCDRおよび/またはcFc領域および/またはヒンジ領域を有
するcFc領域および/または重鎖および/または軽鎖を発現するように遺伝的に操作さ
れている宿主細胞も提供する。特定の実施形態では、本発明のこれらの核酸、発現ベクタ
ー、ポリペプチドまたは宿主細胞は、抗体を作製する方法において有用である。
【0047】
特定の実施形態では、抗体は、組換え抗体またはその抗原結合フラグメントである。関
連実施形態では、可変重鎖ドメインおよび可変軽鎖ドメインは、柔軟なリンカーによって
連結されて一本鎖抗体を形成する。
【0048】
特定の実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントはFabフラグメントである。
【0049】
他の実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントはFab’フラグメントである。
他の実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントは(Fab’)フラグメントであ
る。さらに他の実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントはダイアボディである。
特定の実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントはドメイン抗体である。特定の実
施形態では、抗体または抗原結合フラグメントはラクダ化単一ドメイン抗体である。
【0050】
特定の実施形態では、イヌ化マウス抗イヌPD-1抗体または抗原結合フラグメントは
、処置されるイヌ被験体の免疫応答を増大させる。
【0051】
ある実施形態では、イヌPD-1に結合する場合、イヌ化抗体またはその抗原結合フラ
グメントは、配列番号:138、配列番号:139、配列番号:140、配列番号:14
1、配列番号:142、配列番号:143、配列番号:144および/または配列番号:
145の1またはそれ以上のアミノ酸配列内の少なくとも1個のアミノ酸残基に結合する
【0052】
さらに、本発明は、本明細書で提供される対応する正準構造を有し、および/または配
列番号:144のアミノ酸配列に結合する本発明のCDRの変異体を含有する、イヌPD
-1に対するイヌ化抗体を提供する。この種の特定の実施形態では、イヌ化抗体-イヌP
D-1結合についての解離定数(Kd)は1×10-5Mから1×10-12Mである。
より特定の実施形態では、イヌPD-1に対するイヌ化抗体は、本明細書で提供される対
応する正準構造を有し、および配列番号:145のアミノ酸配列に結合する本発明のCD
Rの変異体を含有する。本発明は、それゆえ、イヌPD-1に特異的に結合するイヌ化抗
体およびその抗原結合フラグメントであって、それらがイヌPD-1に結合する場合、抗
体が配列番号:144内の少なくとも1個のアミノ酸残基に結合する、イヌ化抗体および
その抗原結合フラグメントを包含する。この種の特定の実施形態では、抗体およびその抗
原結合フラグメントは、イヌPD-1に結合し、およびイヌPD-1のイヌプログラム死
リガンド1(PD-L1)への結合をブロックする。
【0053】
したがって、特定の実施形態では、イヌPD-1に結合する場合、イヌ化抗体(1また
はそれ以上の変異体CDR、例えば保存的に修飾された変異体および/または定義された
正準構造クラスを構成する変異体を包含する変異体)は、配列番号:138、配列番号:
139、配列番号:140、配列番号:141、配列番号:142、配列番号:143お
よび/または配列番号:145の1またはそれ以上のアミノ酸配列内の少なくとも1個の
アミノ酸残基に結合する。さらにより特定の実施形態では、イヌPD-1に結合する場合
、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、次のアルギニン残基:配列番号:11
4のR62、R69、R72、R75およびR90の1またはそれ以上のアミノ酸残基に
結合する。具体的な実施形態では、イヌPD-1に結合する場合、イヌ化抗体またはその
抗原結合フラグメントは配列番号:145内の少なくとも1個のアミノ酸残基に結合する
。より具体的な実施形態では、イヌPD-1に結合する場合、抗体またはその抗原結合フ
ラグメントは、次のアルギニン残基:配列番号:114のR62、R69、R72および
75の1またはそれ以上のアミノ酸残基に結合する。さらにより具体的な実施形態では
、イヌPD-1に結合する場合、抗体またはその抗原結合フラグメントは配列番号:11
4のR75に結合する。
【0054】
本発明は、1×10-12Mより低い(例えば1×10-13Mまたはそれ未満)解離
定数(Kd)でイヌPD-1に結合するイヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントをさ
らに提供する。特定の実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、1
×10-5Mから1×10-12Mの解離定数でイヌPD-1に結合する。より特定の実
施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、1×10-7Mから1×1
-11Mの解離定数でイヌPD-1に結合する。さらにより特定の実施形態では、イヌ
化抗体またはその抗原結合フラグメントは、1×10-8Mから1×10-11Mの解離
定数でイヌPD-1に結合する。さらにより特定の実施形態では、イヌ化抗体またはその
抗原結合フラグメントは、1×10-8Mから1×10-10Mの解離定数でイヌPD-
1に結合する。
【0055】
本発明はまた、1×10-1-1を上回るオン速度(kon)でイヌPD-1に
結合するイヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントも提供する。特定の実施形態では、
イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、1×10-1-1から1×10
-1-1のオン速度でイヌPD-1に結合する。より特定の実施形態では、イヌ化抗
体またはその抗原結合フラグメントは、1×10-1-1から1×10-1
-1のオン速度でイヌPD-1に結合する。さらにより特定の実施形態では、イヌ化抗体
またはその抗原結合フラグメントは、1×10-1-1から1×10-1
のオン速度でイヌPD-1に結合する。さらにより特定の実施形態では、イヌ化抗体ま
たはその抗原結合フラグメントは、1×10-1-1から1×10-1-1
のオン速度でイヌPD-1に結合する。
【0056】
本発明はさらに、1×10-7-1より緩やかなオフ速度(koff)でイヌPD-
1に結合するイヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントを提供する。特定の実施形態で
は、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、1×10-3-1から1×10
-1のオフ速度でイヌPD-1に結合する。より特定の実施形態では、イヌ化抗体ま
たはその抗原結合フラグメントは、1×10-4-1から1×10-7-1のオフ速
度でイヌPD-1に結合する。さらにより特定の実施形態では、イヌ化抗体またはその抗
原結合フラグメントは、1×10-5-1から1×10-7-1のオフ速度でイヌP
D-1に結合する。
【0057】
関連実施形態では、イヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントは、腫瘍または病原体
に対する抗原特異的記憶応答を刺激する。特定の実施形態では、イヌ化抗体またはその抗
原結合フラグメントはインビボで抗体応答を刺激する。他の特定の実施形態では、イヌ化
抗体またはその抗原結合フラグメントは、動物被験体における免疫応答を刺激する。より
具体的な実施形態では、動物被験体はイヌである。関連実施形態では、動物被験体はネコ
である。
【0058】
したがって、本発明のイヌ化抗体のいずれもが、1、2、3、4、5またはこれらすべ
ての特性、すなわちイヌPD-1との前記解離定数、イヌPD-1との結合に関する前記
オン速度、イヌ化抗体-イヌPD-1結合複合体から解離するための前記オフ速度、腫瘍
または病原体に対する抗原特異的記憶応答の刺激、インビボでの抗体応答の刺激、および
/または動物被験体における免疫応答の刺激を示すことができる。
【0059】
より特定の実施形態では、本発明のイヌ化抗体およびその抗原結合フラグメントは、イ
ヌPD-1に結合し、およびまたイヌPD-1のPD-L1への結合もブロックする。さ
らにより特定の実施形態では、本発明のイヌ化抗体およびその抗原結合フラグメントは、
イヌPD-1に結合し、イヌPD-1のPD-L1への結合をブロックし、およびまたイ
ヌPD-1のPD-L2への結合もブロックする。
【0060】
本発明はさらに、本発明のイヌ化マウス抗イヌPD-1抗体またはその部分をコードす
る核酸を提供する。関連実施形態では、そのような抗体または抗原結合フラグメントは、
イヌ被験体における癌を処置する薬剤の調製のために使用することができる。あるいはま
たは合わせて、本発明は、診断用途のための本発明の抗体または抗体フラグメントのいず
れかの使用を提供する。さらに付加的な実施形態では、本明細書で開示されるイヌ化抗体
または抗原結合フラグメントのいずれかを含有するキットが提供される。
【0061】
本発明はさらに、医薬的に許容される担体または希釈剤と共に、抗イヌ抗原抗体または
その結合フラグメント(例えば抗イヌPD-1抗体またはその抗原結合フラグメント)を
含有する医薬組成物を包含する。本発明はまた、免疫細胞の活性を増大させる方法であっ
て、それを必要とする被験体(例えばイヌ)に本発明の医薬組成物の治療有効量を投与す
ることを含む方法も提供する。ある実施形態では、この方法は癌の処置のために使用され
る。他の実施形態では、この方法は感染または感染性疾患の処置において使用される。さ
らに他の実施形態では、本発明のイヌ化抗体またはその抗原結合フラグメントはワクチン
アジュバントとして使用される。さらに別の実施形態では、イヌ化抗TSLP抗体は、ア
トピー性皮膚炎を処置するためにイヌに投与される。
【0062】
本発明のこれらや他の態様は、以下の「図面の簡単な説明」および「発明を実施するた
めの形態」を参照することによってより良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1図1は、イヌPD-1の細胞外ドメインに対するイヌ化モノクローナル抗体(mAb)の反応性を、対数mAb(nM)に対するOD650/490の関数として示す。様々なイヌ化mAbをイヌPD-1の細胞外ドメインへのそれらの結合に関してELISAによって試験した。試験した4つのmAbを:2H9 VH4 IgGB/VL3、3B6 VH3 IgGB/VL3、2H9 VH4 IgGB(YZZ1062)/VL3および2H9 VH4 IgGB(YZZ1068)/VL3と称した。
図2図2は、細胞表面に発現されたイヌPD-1に対するイヌ化mAbの反応性を示す。様々なマウスmAbを、CHO細胞上に発現されたイヌPD-1へのそれらの結合に関して、対数mAb(nM)に対するOD450/540の関数としてCELISAによって試験した。試験した6つのmAbを:3B6 VH3/VL4、3B6 VH3/VL1、3B6 VH3/VL3、3B6 VH3/VL2、3B6 VH1/VL1および3B6 m-c Chimeraと称した。
図3図3は、イヌPD-1に対するイヌ化mAbでのリガンド遮断を示す。様々なイヌ化mAbを、CHO細胞上に発現されたPD-1のPD-L1への結合を阻害するそれらの能力に関して、対数mAb(nM)に対するOD450/540の関数として試験した。試験した6つのmAbを:3B6 VH3/VL4、3B6 VH3/VL1、3B6 VH3/VL3、3B6 VH3/VL2、3B6 VH1/VL1および3B6 m-c Chimeraと称した。
図4図4は、イヌPD-1に対するイヌ化mAbによって誘導されるサイトカイン分泌を示す。様々なイヌ化mAbおよびそれらの変異体を、健常イヌ由来のPBMCからのサイトカイン分泌を誘導するそれらの能力に関して試験した。
図5A図5Aは、イヌ化mAbおよびそれらの変異体(1μg/mlから開始する)のFcγRIへの結合を示す。様々なmAbを、FcRIに結合するそれらの能力に関して試験した。抗体を、can 2H9 ADCC(1062)VH4/VL3、can 2H9 ADCC mut1 VH4/VL3、can 2H9 ADCC mut2 VH4/VL3、can 2H9 IgGD VH4/VL3、can 2H9 VH4/VL3およびcan 3B6 VH4/VL4と称する。
図5B図5Bは、イヌ化mAbおよびそれらの変異体(1μg/mlから開始する)のFcγRIへの結合を示す。様々なmAbを、FcRIに結合するそれらの能力に関して試験した。抗体を、can 2H9 ADCC(1059)VH4/VL3、can 2H9 ADCC(1060)VH4/VL3、can 2H9 ADCC(1061)VH4/VL3、can 2H9 IgGB ADCC(1068)VH4/VL3、can 2H9 VH4/VL3およびcan 3B6 VH4/VL4と称する。
図6A図6Aは、イヌ化mAbおよびそれらの変異体(1μg/mlから開始する)のC1Qへの結合を示す。様々なmAbを、C1Qに結合するそれらの能力に関して試験した。抗体を、can 2H9 VH4 IgGB ADCC(1062)/VL3、can 2H9 VH4 IgGB ADCC(mut1)/VL3、can 2H9 VH4 IgGB ADCC(mut2)/VL3、can 2H9 VH4 IgGD/VL3、can 2H9 VH4/VL3およびcan 3B6 VH4/VL4 IgGBと称する。
図6B図6Bは、イヌ化mAbおよびそれらの変異体(1μg/mlから開始する)のC1Qへの結合を示す。様々なmAbを、C1Qに結合するそれらの能力に関して試験した。抗体を、can 2H9 VH4 IgGB ADCC(1059)/VL3、can 2H9 VH4 IgGB ADCC(1060)/VL3、can 2H9 VH4 IgGB ADCC(1061)/VL3、can 2H9 VH4 IgGB ADCC(1068)/VL3、can 2H9 VH4/VL3 IgGBおよびcan 3B6 VH4/VL4 IgGBと称する。
図7A図7Aは、イヌPD-1とイヌ化抗体2G9との間の界面の特徴付けを示す。アミノ酸位置は、シグナル配列を有さないPD-1アミノ酸配列、すなわち配列番号:114に関するものである。測定は、化学架橋、高質量MALDI質量分析法およびnLC-Orbitrap質量分析法によって実施した。
図7B図7Bは、イヌPD-1とイヌ化抗体3B6との間の界面の特徴付けを示す。アミノ酸位置は、シグナル配列を有さないPD-1アミノ酸配列、すなわち配列番号:114に関するものである。測定は、化学架橋、高質量MALDI質量分析法およびnLC-Orbitrap質量分析法によって実施した。
【発明を実施するための形態】
【0064】
略語
本発明の「発明を実施するための形態」および「実施例」全体を通して以下の略語を使
用する:
ADCC 抗体依存性細胞傷害
CDC 補体依存性細胞傷害
CDR Kabatナンバリングシステムを用いてヒト抗体に関して定義され
た、免疫グロブリン可変領域内の相補性決定領域
CHO チャイニーズハムスター卵巣
EC50 50%の効果または結合を生じさせる濃度
ELISA 酵素結合免疫吸着法
FR 抗体フレームワーク領域:CDR領域を除く免疫グロブリン可変領域
HRP ホースラディッシュペルオキシダーゼ
IFN インターフェロン
IC50 50%の阻害を生じさせる濃度
IgG 免疫グロブリンG
Kabat Elvin A.Kabat[Sequences of Prot
eins of Immunological Interest,5th Ed.Pu
blic Health Service,National Institutes
of Health,Bethesda,Md.(1991)]によって開発されたヒト
抗体に関する免疫グロブリンアラインメントおよびナンバリングシステム
mAb モノクローナル抗体(MabまたはMAbとも略す)
MES 2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸
MOA 作用機序
NHS 正常ヒト血清
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
PK 薬物動態
SEB ブドウ球菌エンテロトキシンB
TT 破傷風トキソイド
V領域 異なる抗体の間で配列が可変であるヒトIgG鎖のセグメント。軽鎖
内のKabat残基109および重鎖内のKabat残基113までに及ぶ。
【0065】
VH 免疫グロブリン重鎖可変領域
VK 免疫グロブリンκ軽鎖可変領域
定義
本発明をより容易に理解し得るように、特定の技術および学術用語を以下で明確に定義
する。本書類の別の箇所で明確に定義されない限り、本明細書で使用される他のすべての
技術および学術用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意
味を有する。
【0066】
付属の特許請求の範囲を含む、本明細書で使用される場合、「a、an(1つの)」お
よび「the(その)」などの語の単数形は、文脈上そうでないとする明らかな指示がな
い限り、それらの対応する複数の言及を包含する。
【0067】
細胞または受容体に適用される「活性化」は、文脈上または明白に異なる指示がない限
り、リガンドによる細胞または受容体の活性化または処置を指す。「リガンド」は、天然
および合成リガンド、例えばサイトカイン、サイトカイン変異体、類似体、ムテインおよ
び抗体由来の結合化合物を包含する。「リガンド」はまた、低分子、例えばサイトカイン
のペプチドミメティックおよび抗体のペプチドミメティックも包含する。「活性化」は、
内部機構によってならびに外部または環境因子によって調節される細胞活性化を指すこと
ができる。
【0068】
分子の「活性」は、リガンドまたは受容体への分子の結合、触媒活性、遺伝子発現また
は細胞のシグナル伝達、分化もしくは成熟を刺激する能力、抗原活性、他の分子の活性の
調節等を表し得るもしくは指し得る。分子の「活性」はまた、細胞間相互作用、例えば接
着を調節するもしくは維持するうえでの活性、または細胞の構造、例えば細胞膜もしくは
細胞骨格を維持するうえでの活性も指し得る。「活性」はまた、比活性、例えば[触媒活
性]/[mgタンパク質]または[免疫学的活性]/[mgタンパク質]、生物学的区画
内の濃度等も意味することができる。「活性」は、先天性または適応免疫系の成分の調節
も指し得る。
【0069】
「投与」および「処置」は、動物、例えばイヌ実験被験体、細胞、組織、器官または生
体液に適用される場合、動物、例えばイヌ被験体、細胞、組織、器官または生体液への外
因性医薬、治療薬、診断薬または組成物の接触を指す。細胞の処置は、細胞への試薬の接
触ならびに液体が細胞と接触している場合はその液体への試薬の接触を包含する。「投与
」および「処置」はまた、試薬、診断薬、結合化合物による、または別の細胞による、例
えば細胞の、インビトロおよびエクスビボ処置も意味する。
【0070】
「被験体」という用語は、任意の生物、好ましくは動物、より好ましくは哺乳動物(例
えばイヌ、ネコまたはヒト)、最も好ましくはイヌを包含する。
【0071】
本明細書で使用される場合、「ネコ」という用語は、ネコ科(Felidae)の任意
の成員を指す。この科の成員としては、野生、動物園および家畜成員、例えばネコ亜科(
Felinae)の任意の成員、例えばネコ、ライオン、トラ、ピューマ、ジャガー、ヒ
ョウ、ユキヒョウ、クロヒョウ、北米山岳ライオン、チータ、オオヤマネコ、ボブキャッ
ト、カラカルまたはそれらの任意の交雑種が含まれる。ネコにはまた、家庭ネコ、純血種
および/または雑種コンパニオンネコ、ショーキャット、実験用ネコ、クローンネコなら
びに野生または野良ネコも含まれる。
【0072】
本明細書で使用される場合、アミノ酸配列内の別のアミノ酸残基による「アミノ酸残基
の置換」は、別のアミノ酸残基で「アミノ酸残基を置き換えること」に等しく、アミノ酸
配列内の特定の位置の特定のアミノ酸残基が異なるアミノ酸によって置き換えられている
(または置換されている)ことを意味する。例えば、1つのそのような置換(置き換え)
は、IgGBまたはIgGCアミノ酸配列のFc領域のP4Aと表され、この場合、Ig
GBのFc領域またはIgGCのFc領域のアミノ酸配列のアミノ酸位置4でプロリン残
基がアラニン残基によって置換されている(置き換えられている)。
【0073】
したがって、そのようなアミノ酸置換は、個別に設計することができ、すなわち意図的
に、例えば組換えDNA技術によって、アミノ酸配列内の特定の位置でアラニンをセリン
で置き換えることができる。あるいは、抗体の特定のアミノ酸残基または一連のアミノ酸
残基を、より自然な選択過程を通して、例えば細胞によって産生された抗体がその抗原、
例えばエピトープもしくはその部分を含有するものの所与の領域に結合する結合する能力
に基づいて、および/または抗体が、置換しているCDRと同じ正準構造を保持する特定
のCDRを含有するように、1またはそれ以上のアミノ酸残基によって置き換えることが
できる。そのような置換/置き換えは、「変異体」CDRおよび/または抗体をもたらす
ことができる。
【0074】
「処置する」または「処置すること」は、治療薬、例えば本発明の抗体または抗原結合
フラグメントのいずれかを含有する組成物を、1またはそれ以上の疾患症状を有する、ま
たは治療薬が治療活性を有する疾患を保有することが疑われるイヌ被験体または患者に、
内部にまたは外部から投与することを意味する。
【0075】
典型的には、治療薬は、処置される被験体または集団において、臨床的に測定可能な程
度にそのような(1または複数の)症状の後退を誘導するまたは(1または複数の)症状
の進行を阻止することによって、1またはそれ以上の疾患症状を軽減するおよび/または
改善するのに有効な量で投与される。何らかの特定の疾患症状を軽減するのに有効な治療
薬の量(「治療有効量」とも称される)は、疾患の状態、被験体(例えばイヌ)の年齢お
よび体重、ならびに被験体において所望の応答を引き出す医薬組成物の能力などの因子に
よって異なり得る。疾患症状が軽減または改善されたかどうかは、その症状の重症度また
は進行状態を評価するために獣医(veteranarian)または他の熟達した医療
提供者によって典型的に使用される任意の臨床測定によって評価することができる。本発
明(例えば処置方法または製造の項)の実施形態は、すべての被験体において(1または
複数の)標的疾患症状を軽減するのに有効であるとは限らないかもしれないが、当分野で
公知の任意の統計的検定、例えばスチューデントt検定、カイ二乗検定、マン-ホイット
ニーのU検定、クラスカル-ウォリス検定(H検定)、ヨンキー-タプストラ検定および
ウィルコクソン検定などによって決定される、統計的に有意の数の被験体において(1ま
たは複数の)標的疾患症状を軽減するはずである。
【0076】
「処置」は、ヒト、獣医学(例えばイヌ)または研究用被験体に適用される場合、治療
的処置ならびに研究および診断適用を指す。ヒト、獣医学(例えばイヌ)もしくは研究用
被験体または細胞、組織もしくは器官に適用される「処置」は、イヌまたは他の動物被験
体、細胞、組織、生理学的区画または生理学的流体への本発明のイヌ化抗体または抗原結
合フラグメントの接触を包含する。
【0077】
イヌPD-1は、配列番号:114[その内容全体が参照により本明細書に組み込まれ
る、2013年12月20日出願の米国特許仮出願第61/918,946号]のアミノ
酸配列を含有することが認められている。具体的な実施形態では、イヌPD-1は、配列
番号:113のヌクレオチド配列を含有する核酸によってコードされる。
【0078】
イヌPD-L1は、配列番号:120[2013年12月20日出願の米国特許仮出願
第61/918,946号、前出]のアミノ酸配列を含有することが認められている。具
体的な実施形態では、イヌPD-L1は、配列番号:119を含有するヌクレオチド配列
によってコードされる。
【0079】
「免疫応答」という用語は、例えば、癌細胞、病原体に感染した細胞もしくは組織また
は侵入病原体の哺乳動物身体(例えばイヌ身体)への選択的損傷、その破壊または哺乳動
物身体(例えばイヌ身体)からの除去をもたらす、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆
粒球および前記細胞または肝臓によって産生される可溶性高分子の作用を指す。
【0080】
イヌ化抗イヌ抗原抗体
本明細書で使用される場合、「イヌ」という用語は、特に指示されない限り、すべての
家庭イヌ、イエイヌ(Canis lupus familiaris)またはイヌ科イ
ヌ属(Canis familiaris)を包含する。
【0081】
本明細書で使用される場合、抗体は、イヌ化抗体、例えばイヌPD-1のアミノ酸配列
の一部分を含有するポリペプチドに結合するが、イヌ化抗体、例えばイヌPD-1の配列
のその部分を欠く他のイヌタンパク質には結合しない場合、所与の抗原配列(この場合は
イヌ化抗体、例えばイヌPD-1のアミノ酸配列の一部分)を含有するポリペプチドに特
異的に結合すると言われる。例えば、イヌPD-1を含有するポリペプチドに特異的に結
合する抗体は、FLAG(登録商標)タグ形態のイヌPD-1に結合し得るが、他のFL
AG(登録商標)タグイヌタンパク質には特異的に結合しない。抗体または抗体の抗原結
合部位に由来する結合化合物は、試験される他のいずれのイヌ抗原に対する親和性よりも
少なくとも10倍高い、より好ましくは少なくとも20倍高い、さらにより好ましくは少
なくとも100倍高い、そのイヌ抗原またはその変異体もしくはムテインに対する親和性
を有する場合、そのイヌ抗原またはその変異体もしくはムテインに「特異的に」結合する
【0082】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、所望の生物学的活性を示す任意の
形態の抗体を指す。したがって、これは最も広義に使用され、具体的にはモノクローナル
抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例え
ば二重特異性抗体)、イヌ化抗体、完全イヌ抗体、キメラ抗体およびラクダ化単一ドメイ
ン抗体をカバーするが、これらに限定されない。「親抗体」は、意図される用途のための
抗体の修飾、例えばイヌの治療用抗体としての使用のための抗体のイヌ化に先立つ、抗原
への免疫系の暴露によって得られる抗体である。
【0083】
本明細書で使用される場合、特に指示されない限り、「抗体フラグメント」または「抗
原結合フラグメント」は、抗体の抗原結合フラグメント、すなわち完全長抗体によって結
合される抗原に特異的に結合する能力を保持する抗体フラグメント、例えば1またはそれ
以上のCDR領域を保持するフラグメントを指す。抗原結合フラグメントの例としては、
Fab、Fab’、F(ab’)およびFvフラグメント、ダイアボディ、線状抗体、
一本鎖抗体分子、例えばsc-Fv、ナノボディおよび抗体フラグメントから形成される
多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
「Fabフラグメント」は、1本の軽鎖および1本の重鎖のC1領域および可変領域
から成る。Fab分子の重鎖は、別の重鎖分子とジスルフィド結合を形成することができ
ない。「Fabフラグメント」は抗体のパパイン切断の産物であり得る。
【0085】
「結晶性フラグメント」(「Fc」)領域は、抗体のC2およびC3ドメインを含
む2つの重鎖フラグメント(すなわち2つの同一のポリペプチド)を含有する。これら2
つの重鎖フラグメントは、2またはそれ以上のジスルフィド結合によっておよびC3ド
メインの疎水性相互作用によって結び付けられている。本発明において、4つのイヌIg
G Fcフラグメントの各々についてのアミノ酸配列は、Tang et al.[Ve
t.Immunol.Immunopathol.80:259-270(2001)]
によって決定された、CH1ドメインとCH2ドメインの同定された境界に基づく。
【0086】
「Fab’フラグメント」は、1本の軽鎖ならびにVドメインとC1ドメインおよ
びまた、2つのFab’フラグメントの2本の重鎖間に鎖間ジスルフィド結合が形成され
てF(ab’)分子を形成することができるように、C1ドメインとC2ドメイン
との間の領域も含む1本の重鎖の一部分またはフラグメントを含有する。
【0087】
「F(ab’)フラグメント」は、2本の軽鎖および、2本の重鎖間で鎖間ジスルフ
ィド結合が形成されるように、C1ドメインとC ドメインとの間の定常領域の一部
分を含む2本の重鎖を含有する。F(ab’)フラグメントは、したがって、2本の重
鎖間のジスルフィド結合によって結び付けられている2つのFab’フラグメントから成
る。「F(ab’)フラグメント」は抗体のペプシン切断の産物であり得る。
【0088】
「Fv領域」は、重鎖および軽鎖の両方に由来する可変領域を含有するが、定常領域を
欠く。
【0089】
「一本鎖Fv」または「scFv」抗体という用語は、抗体のVおよびVドメイン
を含有する抗体フラグメントを指し、これらのドメインは1本のポリペプチド鎖内に存在
する。一般にFvポリペプチドは、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成するこ
とを可能にするVドメインとVドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含有
する[Pluckthun,The Pharmacology of Monoclo
nal Antibodies,vol.113 Rosenburg and Moo
re eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-
315(1994);国際公開第88/01649号;ならびに米国特許第4,946,
778号および米国特許第5,260,203号参照]。
【0090】
本明細書で使用される場合、「正準構造」という用語は、抗体の重鎖および軽鎖の超可
変領域の各々が、それらが存在するフレームワーク内で取ることができる局所立体配座を
指す。各々の超可変領域に関して、対応する超可変領域のアミノ酸配列(特に対応するイ
ヌ化マウス抗イヌPD-1可変ドメインに関して以下で提供するような、そのフレームワ
ークのアミノ酸配列の状況内の)から高い精度で予測され得る、少数の正準構造(一般に
1または2、等のような簡単な整数で表される)が存在する。これらの正準構造は、所与
のCDRのアミノ酸配列の修飾がその抗原結合パートナーに結合する能力の保持をもたら
すかまたは喪失をもたらすかに関して決定的であり得る[Chothia and Le
sk,Canonical Structures for the hypervar
iable regions of immunoglobulins,J.Mol.B
iol.196:901-917(1987);Chothia et al.,Con
formation of immunoglobulin hypervaribal
e regions,Nature,34:877-883(1989);およびAl-
Lazikani et al.,Standard Conformations f
or the canonical structures of immunoglo
bulins,J.Mol.Biol.273:927-948(1997)参照]。
【0091】
「ドメイン抗体」は、重鎖の可変領域または軽鎖の可変領域だけを含有する免疫学的に
機能性の免疫グロブリンフラグメントである。一部の場合には、2またはそれ以上のV
領域がペプチドリンカーで共有結合的に連結されて、二価ドメイン抗体を創出する。二価
ドメイン抗体の2つのV領域は、同じまたは異なる抗原を標的とし得る。
【0092】
「二価抗体」は2つの抗原結合部位を含有する。一部の場合には、2つの結合部位は同
じ抗原特異性を有する。しかし、二価抗体は二重特異性であり得る(下記参照)。
【0093】
ある実施形態では、本明細書中のモノクローナル抗体はラクダ化単一ドメイン抗体も包
含する。[例えばMuyldermans et al.,Trends Bioche
m.Sci.26:230(2001);Reichmann et al.,J.Im
munol.Methods 231:25(1999);国際公開第94/04678
号;国際公開第94/25591号;米国特許第6,005,079号参照]。1つの実
施形態では、本発明は、単一ドメイン抗体が形成されるように修飾を有する2つのV
メインを含有する単一ドメイン抗体を提供する。
【0094】
本明細書で使用される場合、「ダイアボディ」という用語は、2つの抗原結合部位を有
する小さな抗体フラグメントを指し、前記フラグメントは、同じポリペプチド鎖内に、軽
鎖可変ドメイン(V)に連結された重鎖可変ドメイン(V)を含有する(V-V
またはV-V)。同じ鎖上の2つのドメインの間で対合を可能とするには短すぎるリ
ンカーを使用することにより、ドメインは別の鎖の相補的ドメインと対合することを余儀
なくされ、2つの抗原結合部位を創出する。[欧州特許第0404097号;国際公開第
93/11161号;およびHolliger et al.,Proc.Natl.A
cad.Sci.USA 90:6444-6448(1993)参照]。改変された抗
体変異体の総説については、[一般にHolliger and Hudson Nat
.Biotechnol.23:1126-1136(2005)参照]。
【0095】
典型的には、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、そのイヌPD-1結合活性
がモルベースで表される場合、その活性の少なくとも10%(親抗体と比較した場合)を
保持する。好ましくは、本発明の抗体または抗原結合フラグメントは、親抗体としてのイ
ヌ化抗体(例えばPD-1)結合親和性の少なくとも20%、50%、70%、80%、
90%、95%または100%またはそれ以上を保持する。また、本発明のイヌ化抗体ま
たは抗原結合フラグメントは、その生物学的活性を実質的に変化させない保存的または非
保存的アミノ酸置換(抗体の「保存的変異体」または「機能保存的変異体」とも称される
)を含有することができることも意図されている。
【0096】
「単離された抗体」は精製状態を指し、そのような状況で分子が他の生物学的分子、例
えば核酸、タンパク質、脂質、炭水化物または他の物質、例えば細胞デブリおよび増殖培
地などを実質的に含まないことを意味する。一般に、「単離された」という用語は、その
ような物質または水、緩衝剤もしくは塩が本明細書で述べる結合化合物の実験的または治
療的使用を実質的に妨げる量で存在しない限り、そのような物質が完全に存在しないこと
または水、緩衝剤もしくは塩が存在しないことを指すことを意図しない。
【0097】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗体」は、第一抗体由来の可変ドメインおよび第
二抗体由来の定常ドメインを有する抗体であって、第一抗体と第二抗体が異なる種に由来
する抗体である。[米国特許第4,816,567号;およびMorrison et
al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855(
1984)]。典型的には、可変ドメインは、げっ歯動物などの実験動物由来の抗体(「
親抗体」)から得られ、定常ドメイン配列は、動物被験体抗体、例えばイヌから得られ、
生じるキメラ抗体がイヌ被験体において親(例えばげっ歯動物)抗体よりも有害な免疫応
答を引き起こす可能性がより低くなるように、前記動物被験体抗体から得られる。
【0098】
本明細書で使用される場合、「イヌ化抗体」という用語は、イヌおよび非イヌ(例えば
マウス)抗体の両方に由来する配列を含有する抗体の形態を指す。一般に、イヌ化抗体は
、超可変ループの全部または実質的に全部が非イヌ免疫グロブリンのものに対応する(例
えば以下で例示するように6つのマウス抗イヌPD-1 CDRを含有する)、少なくと
も1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含有し、ならびにイヌフレーム
の全部または実質的に全部を含有する。
【0099】
「完全イヌ抗体」という用語は、イヌ免疫グロブリンタンパク質配列だけを含有する抗
体を指す。完全イヌ抗体は、マウスにおいて、マウス細胞においてまたはマウス細胞由来
のハイブリドーマにおいて作製された場合、マウス糖鎖を含有し得る。同様に、「マウス
抗体」は、マウス免疫グロブリン配列だけを含有する抗体を指す。あるいは、完全イヌ抗
体は、ラットにおいて、ラット細胞においてまたはラット細胞由来のハイブリドーマにお
いて作製された場合、ラット糖鎖を含有し得る。同様に、「ラット抗体」は、ラット免疫
グロブリン配列だけを含有する抗体を指す。
【0100】
各々の軽鎖/重鎖対の可変領域は抗体結合部位を形成する。したがって、一般に、無傷
抗体は2つの結合部位を有する。二機能性または二重特異性抗体における場合を除き、2
つの結合部位は、一般に、同じである。
【0101】
典型的には、重鎖および軽鎖の両方の可変ドメインは、比較的保存されたフレームワー
ク領域(FR)内に位置する、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる3つの超可変領域
を含有する。CDRは通常フレームワーク領域によって隣接され、特定のエピトープへの
結合を可能にする。一般に、N末端からC末端に向かって、軽鎖および重鎖の可変ドメイ
ンはどちらも、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を
含有する。ヒト抗体の各ドメインへのアミノ酸の割当ては、一般に、Sequences
of Proteins of Immunological Interest,K
abat,et al.;National Institutes of Healt
h,Bethesda,Md.;5th ed.;NIH Publ.No.91-32
42(1991);Kabat,Adv.Prot.Chem.32:1-75(197
8);Kabat,et al.,J.Biol.Chem.252:6609-661
6(1977);Chothia,et al.,J.Mol.Biol.196:90
1-917(1987)またはChothia,et al.,Nature 342:
878-883(1989)]の定義に従う。
【0102】
本明細書で使用される場合、「超可変領域」という用語は、抗原結合に関与する抗体の
アミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」(すなわち軽
鎖可変ドメイン内のCDRL1、CDRL2およびCDRL3ならびに重鎖可変ドメイン
内のCDRH1、CDRH2およびCDRH3)由来のアミノ酸残基を含有する。[配列
によってヒト抗体のCDR領域を定義する、Kabat et al.Sequence
s of Proteins of Immunological Interest,
5th Ed.Public Health Service,National In
stitutes of Health,Bethesda,Md.(1991)参照;
また、構造によって抗体のCDR領域を定義する、Chothia and Lesk,
J.Mol.Biol.196:901-917(1987)も参照のこと]。本明細書
で使用される場合、「フレームワーク」または「FR」残基という用語は、CDR残基と
して本明細書で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基を指す。
【0103】
本明細書で使用される場合、「イヌフレーム」という用語は、本明細書でCDR残基と
して定義される超可変領域残基以外のイヌ抗体の重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を指す。
両方の鎖において、天然イヌCDRのアミノ酸配列は対応する異種CDR(例えばマウス
抗体由来のもの)で置き換えられている。イヌ抗体の重鎖および/または軽鎖は、例えば
、以下で例示するように、イヌ抗体内の異種CDRの立体配座を保存するためおよび/ま
たはFc機能を改変するために、いくつかの異種非CDR残基を含有していてもよい。
【0104】
本明細書で使用される場合、「抗イヌPD-1抗体」は、イヌPD-1に対して(マウ
スまたはウサギなどの哺乳動物において)惹起された抗体であって、イヌPD-1に特異
的に結合する抗体を指す。「イヌPD-1に特異的に結合する」抗体、または「配列番号
:114のアミノ酸配列を含有するポリペプチドに特異的に結合する」抗体は、他の抗原
と比較してイヌPD-1への選択的な結合を示す、例えばイヌPD-1に「特異的に」結
合する抗体である。この結合は、絶対的な結合特異性を必要としない。抗イヌPD-1抗
体は、その結合が試料中のイヌPD-1の存在を決定する場合、またはイヌ試料中の他の
分子の活性を過度に妨げることなく、例えば診断状況における偽陽性もしくは治療状況で
の副作用などの望ましくない結果を生じさせることなくイヌPD-1の活性を変化させる
ことができる場合、イヌPD-1に「特異的」と見なされる。抗イヌPD-1抗体に必要
な特異性の程度は抗体の意図される用途に依存してよく、いずれにせよ意図される目的の
ための使用への適切性によって定義される。
【0105】
したがって本発明は、イヌPD-1に結合する(例えば特異的に)イヌ化抗イヌPD-
1抗体またはその抗原結合フラグメント(単離された形態を含む)およびそのような抗体
またはそのフラグメントの使用を提供する。具体的な実施形態では、イヌPD-1に結合
することおよびイヌPD-1の、そのリガンドの少なくとも1つ、例えばイヌPD-L1
への結合をブロックすることの両方が示されている、マウス抗イヌPD-1抗体由来のマ
ウス抗イヌPD-1 CDRが提供される。本明細書で例示するように、これらのCDR
を本発明の修飾されたイヌフレームに挿入して、イヌ化マウス抗イヌPD-1抗体を作製
することができる。
【0106】
より具体的には、本発明の「イヌ化マウス抗PD-1抗体」は、マウス抗イヌPD-1
抗体由来の3つの重鎖CDRおよび3つの軽鎖CDRをイヌフレームまたは修飾されたイ
ヌフレームと共に含有する抗体を指す。修飾されたイヌフレームは、イヌ化抗体の有効性
をさらに最適化する、例えば、抗体エフェクター機能を増大させる、減少させるまたは除
去する、イヌ抗原、例えばイヌPD-1へのその結合を増大させる、および/またはイヌ
抗原、例えばイヌPD-1のその天然結合パートナー(例えば抗原がイヌPD-1である
場合はイヌPD-L1)への結合をブロックするその能力を増大させる、本明細書で例示
するような1またはそれ以上のアミノ酸変化を含有する。
【0107】
「相同性」は、最適に整列した場合の2つのポリヌクレオチド配列間または2つのポリ
ペプチド配列間の配列類似性を指す。2つの比較配列の両方におけるある位置が同じ塩基
またはアミノ酸モノマーサブユニットによって占有されている場合、例えば2つのDNA
分子の各々におけるある位置がアデニンによって占有されている場合、これらの分子はそ
の位置において相同である。相同性のパーセントは、2つの配列によって共有される相同
な位置の数を、比較した位置の総数で除して、100を乗じたものである。例えば、2つ
の配列を最適に整列した場合に2つの配列中の10の位置のうち6の位置が一致するかま
たは相同である場合、2つの配列は60%相同である。一般に、比較は、最大の相同性パ
ーセントを与えるように2つの配列を整列した場合に行われる。
【0108】
「単離された核酸分子」は、単離されたポリヌクレオチドが自然界で見出されるポリヌ
クレオチドの全部または一部分と結合していない、または自然界では連結されていないポ
リヌクレオチドに連結されている、ゲノム、mRNA、cDNAもしくは合成起源のDN
AまたはRNAまたはそれらの何らかの組合せを意味する。本開示のために、特定のヌク
レオチド配列「を含有する核酸分子」は無傷の染色体を包含しないことが理解されるべき
である。指定された核酸配列「を含有する」単離された核酸分子は、指定配列に加えて、
10個までまたはさらには20個までまたはそれ以上の他のタンパク質またはその部分も
しくはフラグメントについてのコード配列を含有してよく、または列挙される核酸配列の
コード領域の発現を制御する作動可能に連結された調節配列を含有してよく、および/ま
たはベクター配列を含有してもよい。
【0109】
「制御配列」という語句は、特定の宿主生物における作動可能に連結されたコード配列
の発現のために必要なDNA配列を指す。原核生物に適切な制御配列としては、例えばプ
ロモーターが含まれ、オペレーター配列が含まれてもよく、およびリボソーム結合部位が
含まれる。真核細胞は、プロモーター、ポリアデニル化シグナルおよびエンハンサーを使
用することが公知である。
【0110】
核酸は、別の核酸配列と機能的関係に置かれている場合、「作動可能に連結されて」い
る。例えば、プレ配列または分泌リーダーに関するDNAは、それがポリペプチドの分泌
に関与するプレタンパク質として発現される場合、ポリペプチドについてのDNAに作動
可能に連結されている;プロモーターまたはエンハンサーは、それがコード配列の転写に
影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結されている;またはリボソーム結合部位
は、それが翻訳を促進するように位置付けられている場合、コード配列に作動可能に連結
されている。一般に、「作動可能に連結された」は、連結されているDNA配列が隣接し
ていること、および分泌リーダーの場合は、隣接しておりかつ読み取り相内にあることを
意味する。しかし、エンハンサーは隣接している必要はない。連結は、好都合な制限部位
でのライゲーションによって達成される。そのような部位が存在しない場合は、従来の慣
例に従って合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーを使用する。
【0111】
本明細書で使用される場合、「細胞」、「細胞株」および「細胞培養物」という表現は
交換可能に使用され、すべてのそのような指定語は子孫を包含する。したがって、「形質
転換体」および「形質転換細胞」という語は、一次被験体細胞および継代の数を考慮せず
にそれに由来する培養物を包含する。また、意図的なまたは不慮の突然変異に起因して、
必ずしもすべての子孫が正確に同じDNA含量を有さないことも理解される。最初に形質
転換された細胞においてスクリーニングされたのと同じ機能または生物学的活性を有する
突然変異体子孫は包含される。異なる指定語が意図される場合は、文脈から明らかになる
【0112】
本明細書で使用される場合、「生殖細胞系配列」は、再構成されていない免疫グロブリ
ンDNA配列の配列を指す。再構成されていない免疫グロブリン配列の任意の適切な供給
源を使用し得る。ヒト生殖細胞系配列は、例えばアメリカ国立衛生研究所の関節炎および
筋骨格系/皮膚疾患国立研究機構(National Institute of Ar
thritis and Musculoskeletal and Skin Dis
eases of the United States National Inst
itutes of Health)のウエブサイト上のJOINSOLVER(登録商
標)生殖細胞系データベースから入手し得る。マウス生殖細胞系配列は、例えばGiud
icelli et al.[Nucleic Acids Res 33:D256-
D261(2005)]に記載されているように入手し得る。
【0113】
イヌ化抗体の特性
イヌにおいては、A、B、CおよびDと称される4つのIgG重鎖が存在する。これら
の重鎖は、IgGA、IgGB、IgGCおよびIgGDと称される、イヌIgGの4つ
の異なるサブクラスを示す。これら4つの重鎖のDNAおよびアミノ酸配列は、Tang
et al.[Vet.Immunol.Immunopathol.80:259-
270(2001)]によって初めて同定された。これらの重鎖についてのアミノ酸およ
びDNA配列はGenBankデータベースからも入手可能である。例えば、IgGA重
鎖のアミノ酸配列はアクセッション番号AAL35301.1を有し、IgGBはアクセ
ッション番号AAL35302.1を有し、IgGCはアクセッション番号AAL353
03.1を有し、およびIgGDはアクセッション番号(AAL35304.1)を有す
る。イヌ抗体はまた、2種類の軽鎖、κおよびλも含有する。これらの軽鎖のDNAおよ
びアミノ酸配列はGenBankデータベースから入手できる。例えばκ軽鎖のアミノ酸
配列はアクセッション番号ABY 57289.1を有し、λ軽鎖はアクセッション番号
ABY 55569.1を有する。本発明では、4つのイヌIgG Fcフラグメントの
各々についてのアミノ酸配列は、Tang et al.前出によって決定されたCH1
およびCH2ドメインの同定された境界に基づく。
【0114】
治療用モノクローナル抗体の開発は、所望の抗体を生成するための複雑なセットの活動
の調整を必要とする複雑な工程である。これらには、抗体の特異性、親和性、機能的活性
、操作された細胞株における発現レベル、長期的な安定性、エフェクター機能の除去また
は増強ならびに商業的に実行可能な製造および精製方法の開発の最適化が含まれる。本発
明の目的を考慮しておよび免疫系の細胞を活性化する能力を別にして、イヌPD-1に対
するイヌ化またはイヌモノクローナル抗体は、最適には3つの付加的な属性を有する:
1.抗体依存性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)などのエフ
ェクター機能の欠如、
2.インビボでの比較的長い半減期;ならびに
3.プロテインAクロマトグラフィに基づくもののような業界標準技術を用いて大規模
で容易に精製される。
【0115】
天然に存在するイヌIgGサブクラスはいずれも、これらの基準全部は満たさない。例
えば、IgGBはプロテインAを使用して精製することができるが、高レベルのADCC
活性を有する。IgGCもかなりのADCC活性を有する。他方で、IgGAはプロテイ
ンAに弱く結合するが、望ましくないADCC活性を示す。さらに、IgGDはADCC
活性を示さないが、IgGCまたはIgGDのいずれもがプロテインAカラムでは精製す
ることができない。加えて、IgGCは、イヌFcRn受容体に結合しないので、血清半
減期が短い。本発明は、イヌ抗原、例えばイヌPD-1に特異的な修飾されたイヌIgG
抗体を提供することによってこの困難を克服する;そのような抗体はADCCおよびCD
Cなどのエフェクター機能を欠き、比較的長い半減期を示し、業界標準のプロテインAク
ロマトグラフィを用いて容易に精製することができる。
【0116】
これまで、ADCCおよびCDCエフェクター機能の両方を有さず、および加えて、プ
ロテインAクロマトグラフィによって精製することができる遺伝的に修飾されたイヌIg
Gは記述されていなかった。本明細書で開示するように、ヒトおよびマウスIgGのもの
に類似するイヌIgG内の位置での単一置換、例えばN297AまたはD265Aは、対
応するイヌ抗体においてADCCおよびCDCエフェクター機能の両方を完全に除去する
わけではない。例えば、ヒトまたはマウス抗体における置換N297およびD265の各
々は、Fcγ受容体およびC1qへの結合の排除をもたらすが、いずれの置換も単独では
イヌ抗体のC1qへの結合を完全には排除しなかった。その代わりに、以下でさらに開示
するように、IgGBまたはIgGCサブクラスのイヌ抗体においてADCCおよびCD
Cの両方を除去するためには、アスパラギンからアラニンへの置換およびアスパラギン酸
からアラニンへの置換の両方を組み合わせたイヌ抗体のFcにおける二重置換を行う必要
があることが判明した。さらに、全く予想外のことに、ヒト抗体においてエフェクター機
能を低減させることが示されていた1つの置換が、実際には対応するイヌIgGのFcγ
RおよびC1qへの結合の増大を生じさせた。
【0117】
エフェクター機能を欠くイヌIgGBおよびIgGCの変異体を作製するために、修飾
されたイヌIgGBまたは修飾されたイヌIgGC重鎖を生成することができる。これら
のイヌ結晶性フラグメント領域(cFc)の両方に存在する合計7個のアミノ酸残基を、
そのような可能性のある置換のために同定した。これら7個のアミノ酸残基は、イヌIg
GBのFcについては配列番号:130のアミノ酸配列およびイヌIgGCのFcについ
ては配列番号:132のアミノ酸配列の両方に関して:P4、D31、N63、G64、
T65、A93およびP95である。したがって、配列番号:2のアミノ酸配列は、4、
31、63、64、65、93および95の位置に前記アミノ酸残基を有することによっ
て配列番号:130のものと異なり、それらは、7つすべての位置について「X」(また
は3文字コードでは「Xaa」)として配列番号:130のアミノ酸配列においてそれぞ
れプロリン(P)、アスパラギン酸(D)、アスパラギン(N)、グリシン(G)、トレ
オニン(T)、アラニン(A)およびプロリン(P)であり、これら7つのアミノ酸位置
が20個の天然アミノ酸のいずれかであり得ることを示す(以下の表1の縦の列1のリス
ト参照)。同様に、配列番号:4のアミノ酸配列は、7つすべての位置について「X」(
または3文字コードでは「Xaa」)として列挙される4、31、63、64、65、9
3および95の位置に前記アミノ酸残基を有することによって配列番号:132のものと
異なり、これら7つのアミノ酸位置が20個の天然アミノ酸のいずれかであり得ることを
示す。配列番号:2のアミノ酸配列は配列番号:1のヌクレオチド配列によってコードさ
れ、配列番号:4のアミノ酸配列は配列番号:3のヌクレオチド配列によってコードされ
る。
【0118】
1つの実施形態では、cFcは、以下の置換:P4(A、GまたはS)、D31(A、
GまたはS)、N63(A、GまたはS)、G64(AまたはP)、T65(A、Gまた
はS)、A93(GまたはS)およびP95(A、GまたはS)を有する配列番号:13
0のアミノ酸配列を含有し;ここでP4(A、GまたはS)は、4位のプロリン残基がア
ラニン、グリシンまたはセリン残基のいずれかによって置き換えられていることを示し、
同様にG64(PまたはA)は、64位のグリシン残基がプロリンまたはアラニン残基の
いずれかによって置き換えられていることを示す、等である)。特定の実施形態では、c
Fcは、以下の置換:P4A、D31A、N63A、G64P、T65A、A93Gおよ
びP95Aを有する配列番号:130のアミノ酸配列を含有する。
【0119】
関連実施形態では、cFcは、以下のアミノ酸残基:A4、A31、A63、G64、
T65、G93およびA95を有する、Xaaと称される7個のアミノ酸を含有する配列
番号:4のアミノ酸配列、すなわち以下の5つのアミノ酸残基変化:P4A、D31A、
N63A、A93GおよびP95Aを有し、ならびに7個のうち残りの2個のアミノ酸残
基、G64およびT65は配列番号:132のアミノ酸配列から保持されている、配列番
号:132のアミノ酸配列を含有する。
【0120】
配列番号:40、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:46、配列番号:48
、配列番号:50、配列番号:52、配列番号:54、配列番号:56、配列番号:58
、配列番号:60、配列番号:62、配列番号:64および配列番号:66のアミノ酸配
列はすべて、7つのアミノ酸位置に「X」(または3文字コードでは「Xaa」)を含有
し、これら7つのアミノ酸位置が以下の表1の縦の列1に列挙される20個の天然アミノ
酸のいずれかであり得ることを示す。特に配列番号:40、配列番号:42、配列番号:
44、配列番号:46、配列番号:48、配列番号:50、配列番号:52、配列番号:
54、配列番号:56、配列番号:58、配列番号:60、配列番号:62、配列番号:
64および配列番号:66は、それらのそれぞれの配列内に配列番号:2のアミノ酸配列
または配列番号:4のアミノ酸配列のいずれかを含有する。アミノ配列のこれら7つの位
置の1またはそれ以上におけるアミノ酸残基の具体的な例は、上記および下記に記述され
ており、それゆえ、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:40、配列番号:42、配
列番号:44、配列番号:46、配列番号:48、配列番号:50、配列番号:52、配
列番号:54、配列番号:56、配列番号:58、配列番号:60、配列番号:62、配
列番号:64および配列番号:66、ならびにこれらの配列を含有するイヌ化抗体内の個
々のアミノ酸配列の属中に含まれる。
【0121】
以下に示す表10は、cIgGB Fc(配列番号:130および配列番号:2)なら
びにcIgGC Fc(配列番号:132および配列番号:4)の、本明細書で開示する
ように置換することができる7つのアミノ酸位置を、これらのcFcアミノ酸配列、すな
わち配列番号:40、配列番号:42、配列番号:44、配列番号:46、配列番号:4
8、配列番号:50、配列番号:52、配列番号:54、配列番号:56、配列番号:5
8、配列番号:60、配列番号:62、配列番号:64および配列番号:66を含有する
完全長イヌ重鎖のものと具体的に関連付けている。したがって、完全長配列IgGBまた
はIgGCにおける実際の位置を、以下の表10の使用を通して、それが含有するcFc
のものと容易に適合させることができる。
【0122】
特定の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)239位にP、A、GまたはS、(ii)
266位にD、A、GまたはS、(iii)298位にN、A、GまたはS、(iv)2
99位にG、PまたはA、(v)300位にT、A、GまたはS、(vi)328位にA
、GまたはS、および(vii)330位にP、A、GまたはSを含む配列番号:40、
52、56または64のアミノ酸配列を含有する。他の実施形態では、抗体の重鎖は、(
i)237位にP、A、GまたはS、(ii)264位にD、A、GまたはS、(iii
)296位にN、A、GまたはS、(iv)297位にG、PまたはA、(v)298位
にT、A、GまたはS、(vi)326位にA、GまたはS、および(vii)328位
にP、A、GまたはSを含む配列番号:42、54、58または66のアミノ酸配列を含
有する。さらに他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)244位にP、A、GまたはS
、(ii)271位にD、A、GまたはS、(iii)303位にN、A、GまたはS、
(iv)304位にG、PまたはA、(v)305位にT、A、GまたはS、(vi)3
33位にA、GまたはS、および(vii)335位にP、A、GまたはSを含む配列番
号:44、50または60のアミノ酸配列を含有する。さらに他の実施形態では、抗体の
重鎖は、(i)242位にP、A、GまたはS、(ii)269位にD、A、GまたはS
、(iii)301位にN、A、GまたはS、(iv)302位にG、PまたはA、(v
)303位にT、A、GまたはS、(vi)331位にA、GまたはS、および(vii
)333位にP、A、GまたはSを含む配列番号:46または62のアミノ酸配列を含有
する。さらに他の実施形態では、抗体の重鎖は、(i)246位にP、A、GまたはS、
(ii)273位にD、A、GまたはS、(iii)305位にN、A、GまたはS、(
iv)306位にG、PまたはA、(v)307位にT、A、GまたはS、(vi)33
5位にA、GまたはS、および(vii)337位にP、A、GまたはSを含む配列番号
:48のアミノ酸配列を含有する。
【0123】
本発明はまた、天然のIgGDヒンジ領域の代わりにIgGA、IgGBまたはIgG
Cのいずれか由来のヒンジ領域を含有する修飾されたイヌIgGDも提供する。あるいは
、IgGDヒンジ領域を、表5に示すようにセリン残基をプロリン残基で置き換えること
によって遺伝的に修飾することができる。そのような修飾は、fabアーム交換を欠くイ
ヌIgGDをもたらすことができる。修飾されたイヌIgGDは、組換えDNA技術の標
準的な方法を用いて構築することができる[例えばManiatis et al.,M
olecular Cloning,A Laboratory Manual(198
2)]。これらの変異体を構築するために、イヌIgGDのアミノ酸配列をコードする核
酸を、修飾されたIgGDをコードするように修飾することができる。次に修飾された核
酸配列をタンパク質発現のために発現プラスミドにクローニングする。代替ヒンジ領域を
有するイヌIgGD Fcをコードする核酸は、配列番号:8、10および12のアミノ
酸配列をコードする配列番号:7、9および11のヌクレオチド配列によって例示される
。修飾されたIgGDヒンジ領域を有するイヌIgGD Fcをコードする核酸は、配列
番号:6のアミノ酸配列をコードする配列番号:5のヌクレオチド配列を含有する。
【0124】
本発明はさらに、対応する軽鎖とマッチしてイヌ化抗体を作製することができる完全長
イヌ重鎖を提供する。したがって、本発明はさらに、イヌ化マウス抗イヌ抗原抗体(単離
されたイヌ化マウス抗イヌPD-1抗体を含む)および疾患の処置、例えばイヌの癌の処
置における前記抗体またはその抗原結合フラグメントの使用の方法を提供する。
【0125】
さらに、本発明は、イヌPD-1に結合し、およびイヌPD-1のイヌPD-L1への
結合をブロックするイヌ化マウス抗イヌPD-1抗体または抗原結合フラグメントを提供
する。ある実施形態では、イヌ化マウス抗イヌPD-1抗体は、修飾されたイヌIgGB
Fc、修飾されたイヌIgGC Fcまたは本明細書で述べるfabアーム交換を欠く
修飾されたイヌIgGDを含有する。
【0126】
イヌ化抗体、例えばイヌPD-1に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、
本明細書で述べるマウス抗イヌ抗体の相補性決定領域(CDR)の1、2、3、4、5ま
たは6個を含有することができる。1、2、3、4、5または6個のCDRは、以下で提
供されるCDR配列から独立して選択され得る。さらなる実施形態では、イヌPD-1に
結合する抗体またはその抗原結合フラグメントは、マウス軽鎖CDR-1、CDR-2お
よび/またはCDR-3を含むイヌ抗体κ軽鎖ならびにマウス重鎖CDR-1、CDR-
2および/またはCDR-3を含むイヌ抗体重鎖IgGを含有する。したがって、本発明
はさらに、完全長イヌ重鎖を提供し、その後、例えば対応する軽鎖とマッチさせてイヌ化
抗体を作製することができる[マウス抗イヌPD-1のCDRの7つのセットの配列、例
えば1B5、2G9、2H9、3B6、4D12、5G5および7C9が提供される、以
下の表2参照]。
【0127】
他の実施形態では、本発明は、まだ所望の結合特性および機能特性を示す一方で、PD
-1に特異的に結合し、ならびに配列番号:13、14、15、16、17、18、19
、20、21、22、23、24、25および/または26のアミノ酸配列と少なくとも
80%、85%、90%、95%、98%または99%の配列同一性を含む1から6個の
異なるCDRを含有するイヌ抗体κ軽鎖ならびに配列番号:27、28、29、30、3
1、32、33、34、35、36、37、38および/または146のアミノ酸配列と
少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%の配列同一性を含む1
から6個の異なるCDRを含有するイヌ抗体重鎖IgGを有する、抗体またはその抗原結
合フラグメントを提供する。別の実施形態では、本発明の抗体または抗原結合フラグメン
トは、まだ所望の結合特性および機能特性を示す一方で、0、1、2、3、4または5個
の保存的または非保存的アミノ酸置換を有する前述したCDRアミノ酸配列の1またはそ
れ以上を有するκ軽鎖とIgG重鎖配列の組合せから成るイヌフレームを含有する。
【0128】
配列同一性は、2つの配列を最適に整列した場合に2つのポリペプチドのアミノ酸が等
しい位置において同じである程度を指す。本明細書で使用される場合、あるアミノ酸配列
は、2番目のアミノ酸配列に対して、両方の配列のアミノ酸残基が同一である場合100
%「同一」である。したがって、2つのアミノ酸配列のアミノ酸残基の50%が同一であ
る場合、あるアミノ酸配列は2番目のアミノ酸配列に50%「同一」である。配列比較は
、所与のタンパク質、例えば比較されるタンパク質またはポリペプチドの一部分に含まれ
るアミノ酸残基の連続するブロックにわたって実施される。特定の実施形態では、さもな
ければ2つのアミノ酸配列の間の対応性を変化させ得る選択された欠失または挿入を考慮
に入れる。
【0129】
配列類似性は、同一の残基および非同一の生化学的に関連するアミノ酸を包含する。類
似の特性を共有し、交換可能であり得る生化学的に関連するアミノ酸が考察される。
【0130】
「保存的に修飾された変異体」または「保存的置換」は、タンパク質中のアミノ酸の、
類似の性質(例えば電荷、側鎖サイズ、疎水性/親水性、骨格立体配座および剛性等)を
有する他のアミノ酸による置換であって、変化がしばしばタンパク質の生物学的活性を変
化させずに行われ得る置換を指す。当業者は、一般に、ポリペプチドの非必須領域内の1
個のアミノ酸置換は生物学的活性を実質的に改変しないことを認識する。[例えばWat
son et al.,Molecular Biology of the Gene
,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224(4th
Ed.;1987)参照]。加えて、構造的または機能的に類似のアミノ酸の置換は生
物学的活性を破壊する可能性がより低い。例示的な保存的置換をすぐ下の表Iに示す。
【表1】
【0131】
本発明の抗体の機能保存的変異体も本発明によって企図される。「機能保存的変異体」
は、本明細書で使用される場合、1またはそれ以上のアミノ酸残基が所望の特性、例えば
(such an)抗原親和性および/または特異性を改変することなく変化している抗
体またはフラグメントを指す。そのような変異体としては、上記表Iの保存的アミノ酸置
換のような、あるアミノ酸の、類似特性を有するアミノ酸による置換が含まれるが、これ
に限定されない。
【0132】
核酸
本発明はさらに、本明細書で開示されるイヌ化マウス抗イヌPD-1抗体およびその抗
原結合フラグメントの免疫グロブリン鎖をコードする核酸を包含する(以下の「実施例」
参照)。
【0133】
また、BLASTアルゴリズムによって比較を実施した場合、本明細書で提供されるC
DRおよび/またはイヌcFcおよび/または抗体のアミノ酸配列と少なくとも約70%
同一、好ましくは少なくとも約80%同一、より好ましくは少なくとも約90%同一、最
も好ましくは少なくとも約95%同一(例えば95%、96%、97%、98%、99%
、100%)であるアミノ酸配列を含有する免疫グロブリンポリペプチドをコードする核
酸も本発明に包含され、ここで前記アルゴリズムのパラメータは、それぞれの参照配列の
全長にわたってそれぞれの配列間で最大のマッチを与えるように選択される。本発明はさ
らに、BLASTアルゴリズムで比較を実施した場合、参照アミノ酸配列のいずれかと少
なくとも約70%類似、好ましくは少なくとも約80%類似、より好ましくは少なくとも
約90%類似、最も好ましくは少なくとも約95%類似(例えば95%、96%、97%
、98%、99%、100%)するアミノ酸配列を含有する免疫グロブリンポリペプチド
をコードする核酸を提供し、ここで前記アルゴリズムのパラメータは、それぞれの参照配
列の全長にわたってそれぞれの配列間で最大のマッチを与えるように選択される。
【0134】
本明細書で使用される場合、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列の同一性パーセントは、
アラインメントのデフォルトパラメータおよび同一性についてのデフォルトパラメータで
C,MacVector(MacVector,Inc.Cary,NC 27519)
、Vector NTI(Informax,Inc.MD)、Oxford Mole
cular Group PLC(1996)およびClustal Wアルゴリズムを
使用して決定することができる。これらの市販のプログラムはまた、同じまたは類似のデ
フォルトパラメータを使用して配列類似性を決定するためにも使用できる。あるいは、例
えばデフォルトパラメータを用いたGCG(Genetics Computer Gr
oup,Program Manual for the GCG Package,V
ersion 7,Madison,Wisconsin)パイルアッププログラムを使
用して、デフォルトフィルター条件下でのAdvanced Blast検索を用いるこ
とができる。
【0135】
以下の参考文献は、配列解析のためにしばしば使用されるBLASTアルゴリズムに関
する:BLAST ALGORITHMS:Altschul,S.F.,et al.
,J.Mol.Biol.215:403-410(1990);Gish,W.,et
al.,Nature Genet.3:266-272(1993);Madden
,T.L.,et al.,Meth.Enzymol.266:131-141(19
96);Altschul,S.F.,et al.,Nucleic Acids R
es.25:3389-3402(1997);Zhang,J.,et al.,Ge
nome Res.7:649-656(1997);Wootton,J.C.,et
al.,Comput.Chem.17:149-163(1993);Hancoc
k,J.M.et al.,Comput.Appl.Biosci.10:67-70
(1994);ALIGNMENT SCORING SYSTEMS:Dayhoff
,M.O.,et al.,「A model of evolutionary ch
ange in proteins.」in Atlas of Protein Se
quence and Structure,vol.5,suppl.3.M.O.D
ayhoff(ed.),pp.345-352,(1978);Natl.Biome
d.Res.Found.,Washington,DC;Schwartz,R.M.
,et al.,「Matrices for detecting distant
relationships.」in Atlas of Protein Seque
nce and Structure,vol.5,suppl.3.」(1978),
M.O.Dayhoff(ed.),pp.353-358(1978),Natl.B
iomed.Res.Found.,Washington,DC;Altschul,
S.F.,J.Mol.Biol.219:555-565(1991);States
,D.J.,et al.,Methods 3:66-70(1991);Henik
off,S.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:
10915-10919(1992);Altschul,S.F.,et al.,J
.Mol.Evol.36:290-300(1993);ALIGNMENT STA
TISTICS:Karlin,S.,et al.,Proc.Natl.Acad.
Sci.USA 87:2264-2268(1990);Karlin,S.,et
al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877(
1993);Dembo,A.,et al.,Ann.Prob.22:2022-2
039(1994);およびAltschul,S.F.「Evaluating th
e statistical significance of multiple d
istinct local alignments.」in Theoretical
and Computational Methods in Genome Res
earch(S.Suhai,ed.),pp.1-14,Plenum,New Yo
rk(1997)。
【0136】
本発明はまた、本発明の核酸(単離された核酸を含む)を含有する発現ベクターも提供
し、ここで前記核酸は、宿主細胞をベクターでトランスフェクトした場合に宿主細胞によ
って認識される制御配列に作動可能に連結されている。また、本発明の発現ベクターを含
有する宿主細胞ならびに本明細書で開示される抗体またはその抗原結合フラグメントを作
製する方法であって、抗体または抗原結合フラグメントをコードする発現ベクターを保有
する宿主細胞を培地で培養することおよび抗原またはその抗原結合フラグメントを宿主細
胞または培地から単離することを含む方法も提供される。
【0137】
例えば、イヌ化マウス抗イヌPD-1抗体は、当分野で公知の方法によって組換え技術
で作製することができる。本明細書で開示される抗体またはフラグメントの発現のための
宿主として使用可能な哺乳動物細胞株は当分野で周知であり、アメリカ培養細胞系統保存
機関(American Type Culture Collection)(ATC
C)から入手可能な多くの不死化細胞株が含まれる。これらには、中でも特に、チャイニ
ーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NSO、SP2細胞、HeLa細胞、ベビーハムス
ター腎(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えばHep G2
)、A549細胞、3T3細胞、HEK-293細胞および多くの他の細胞株が含まれる
。哺乳動物宿主細胞としては、ヒト、マウス、ラット、イヌ、サル、ブタ、ヤギ、ウシ、
ウマおよびハムスター細胞が含まれる。特に好ましい細胞株は、いずれの細胞株が高発現
レベルを有するかを測定することを通して選択される。使用し得る他の細胞株は、昆虫細
胞、例えばSf9細胞、両生類細胞、細菌細胞、植物細胞および真菌細胞である。重鎖ま
たはその抗原結合部分もしくはフラグメント、軽鎖および/またはその抗原結合フラグメ
ントをコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入する場合、宿主細胞にお
ける抗体の発現または、より好ましくは宿主細胞が増殖する培地中への抗体の分泌を可能
にするのに十分な期間宿主細胞を培養することによって抗体が産生される。
【0138】
抗体は、標準的なタンパク質精製方法を用いて培地から回収することができる。さらに
、産生細胞株からの本発明の抗体(またはそれに由来する他の成分)の発現は、多くの公
知の技術を用いて増強することができる。例えばグルタミンシンテターゼ遺伝子発現系(
GS系)は、特定の条件下で発現を増強するための一般的なアプローチである。GS系は
、欧州特許第0216846号、同第0256055号および同第0323997号なら
びに欧州特許出願第89303964.4号に関連して全体的にまたは部分的に考察され
る。
【0139】
一般に、特定の細胞株またはトランスジェニック動物において産生される糖タンパク質
は、その細胞株またはトランスジェニック動物で産生される糖タンパク質に特徴的なグリ
コシル化パターンを有する。それゆえ、抗体の特定のグリコシル化パターンは、抗体を作
製するのに使用される特定の細胞株またはトランスジェニック動物に依存する。しかし、
本明細書で提供される核酸分子によってコードされるまたは本明細書で提供されるアミノ
酸配列を含有するすべての抗体は、抗体が有し得るグリコシル化パターンに関わりなく、
本発明を構成する。同様に、特定の実施形態では、非フコシル化N-グリカンだけを含む
グリコシル化パターンを有する抗体は、これらの抗体が、典型的にはインビトロおよびイ
ンビボの両方でそれらのフコシル化対応物よりも強力な効果を発揮することが示されてい
るため、好都合であり得る[例えばShinkawa et al.,J.Biol.C
hem.278:3466-3473(2003);米国特許第6,946,292号お
よび同第7,214,775号参照]。
【0140】
本発明はさらに、本明細書で開示されるイヌ化マウス抗イヌPD-1抗体の抗体フラグ
メントを包含する。抗体フラグメントには、例えばペプシンによるIgGの酵素切断によ
って生成し得るF(ab)フラグメントが含まれる。Fabフラグメントは、例えばジ
チオトレイトールまたはメルカプトエチルアミンでのF(ab)の還元によって生成し
得る。Fabフラグメントは、ジスルフィド架橋によってV-CH1鎖に付加されたV
-C鎖である。F(ab)フラグメントは、今度は2つのジスルフィド架橋によっ
て付加された2つのFabフラグメントである。F(ab)分子のFab部分は、その
間にジスルフィド架橋が位置するF領域の一部分を含む。FフラグメントはVまた
はV領域である。
【0141】
1つの実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントは、重鎖定常領域、例えばイヌ
定常領域、例えばIgGA、IgGB、IgGCおよびIgGDイヌ重鎖定常領域または
その変異体を含有する。別の実施形態では、抗体または抗原結合フラグメントは、軽鎖定
常領域、例えばイヌ軽鎖定常領域、例えばλまたはκイヌ軽鎖領域またはその変異体を含
有する。限定ではなく例として、イヌ重鎖定常領域はIgGBに由来することができ、イ
ヌ軽鎖定常領域はκに由来し得る。
【0142】
抗体エンジニアリング
本発明のイヌ化マウス抗イヌPD-1抗体は、以下で詳述するように、例えば抗体の特
性を改善するために、親(すなわちイヌ)モノクローナル抗体のイヌフレーム内に修飾を
含有するように操作することができる。
【0143】
本明細書で論じる交差ブロックイヌ化抗体およびその抗原結合フラグメントは、標準的
な結合アッセイ(例えば以下で例示するようなBIACore(登録商標)、ELISA
、またはフローサイトメトリ)においてIB5、3B6、4D12、7C9、2H9、5
G5および/または2G9のいずれかと交差競合するそれらの能力に基づいて同定するこ
とができる。例えば標準的なELISAアッセイが使用でき、このアッセイでは、組換え
イヌPD-1タンパク質をプレート上に固定化し、抗体の1つを蛍光標識して、標識抗体
の結合を競合除去する非標識抗体の能力を評価する。加えてまたは選択的に、BIACo
re(登録商標)分析を使用して交差競合する抗体の能力を評価することができる。例え
ばIB5、3B6、4D12、7C9、2H9、5G5および/または2G9のイヌPD
-1への結合を阻害する試験抗体の能力は、試験抗体がイヌPD-1への結合に関してI
B5、3B6、4D12、7C9、2H9、5G5および/または2G9と競合すること
ができ、したがって、一部の場合には、IB5、3B6、4D12、7C9、2H9、5
G5および/または2G9と同じイヌPD-1上のエピトープに結合し得ることを明らか
にする。前述したように、本発明の抗イヌPD-1抗体またはフラグメントのいずれかと
同じエピトープに結合する抗体およびフラグメントも、本発明の一部を形成する。
【0144】
医薬組成物および投与
イヌ化マウス抗イヌPD-1抗体またはその抗原結合フラグメントの医薬または滅菌組
成物を調製するために、イヌ化マウス抗イヌPD-1抗体またはその抗原結合フラグメン
トを医薬的に許容される担体または賦形剤と混合することができる。[例えばRemin
gton’s Pharmaceutical SciencesおよびU.S.Pha
rmacopeia:National Formulary,Mack Publis
hing Company,Easton,PA(1984)参照]。
【0145】
治療薬および診断薬の製剤は、例えば凍結乾燥粉末、スラリー、水溶液または懸濁液の
形態で許容される担体、賦形剤または安定剤と混合することによって調製し得る[例えば
Hardman,et al.(2001)Goodman and Gilman’s
The Pharmacological Basis of Therapeuti
cs,McGraw-Hill,New York,NY;Gennaro(2000)
Remington:The Science and Practice of Ph
armacy,Lippincott,Williams,and Wilkins,N
ew York,NY;Avis,et al.(eds.)(1993)Pharma
ceutical Dosage Forms:Parenteral Medicat
ions,Marcel Dekker,NY;Lieberman,et al.(e
ds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Ta
blets,Marcel Dekker,NY;Lieberman,et al.(
eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:D
isperse Systems,Marcel Dekker,NY;Weiner
and Kotkoskie(2000)Excipient Toxicity an
d Safety,Marcel Dekker,Inc.,New York,NY参
照]。1つの実施形態では、本発明の抗PD-1抗体を酢酸ナトリウム溶液pH5~6中
で適切な濃度に希釈し、張度のためにNaClまたはスクロースを添加する。安定性を高
めるためにポリソルベート20またはポリソルベート80などの付加的な作用物質を添加
してもよい。
【0146】
単独でまたは別の作用物質と併用して投与される、抗体組成物の毒性および治療効果は
、例えばLD50(母集団の50%に致死的な用量)およびED50(母集団の50%に
おいて治療的に有効な用量)を決定するために、細胞培養物または実験動物において標準
的な薬学手順によって決定することができる。毒性作用と治療効果の用量比が治療指数(
LD50/ED50)である。特定の態様では、高い治療指数を示す抗体が望ましい。こ
れらの細胞培養アッセイおよび動物試験から得られるデータは、イヌにおける使用のため
の投与量範囲を設定するのに使用できる。そのような化合物の投与量は、好ましくはほと
んどまたは全く毒性を伴わないED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、使用
される剤形および投与経路に依存してこの範囲内で変化させ得る。
【0147】
投与の方法は様々であり得る。適切な投与経路には、経口、直腸、経粘膜、腸、非経口
;筋肉内、皮下、皮内、髄内、髄腔内、直接脳室内、静脈内、腹腔内、鼻内、眼内、吸入
、通気、局所、皮膚、経皮または動脈内経路が含まれる。
【0148】
特定の実施形態では、イヌ化マウス抗イヌPD-1抗体またはその抗原結合フラグメン
トは、注射などの侵襲的経路によって投与することができる。本発明のさらなる実施形態
では、マウス抗イヌPD-1抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたはその医薬組成
物は、静脈内、皮下、筋肉内、動脈内、腫瘍内経路で、または吸入、エアロゾル送達によ
って投与される。非侵襲的経路(例えば経口的に;例えば丸剤、カプセルまたは錠剤中で
)による投与も本発明の範囲内である。
【0149】
本明細書で開示される医薬組成物は注入によっても投与し得る。医薬組成物を投与する
ための(form)周知のインプラントおよびモジュールの例としては:薬剤を制御され
た速度で投与するための移植可能なマイクロ注入ポンプを開示する米国特許第4,487
,603号、薬剤を正確な注入速度で送達するための薬剤注入ポンプを開示する米国特許
第4,447,233号、持続的な薬剤送達のための可変流量の移植可能な注入装置を開
示する米国特許第4,447,224号、多チャンバー区画を有する浸透圧薬物送達シス
テムを開示する米国特許第4,439,196号が含まれる。多くの他のそのようなイン
プラント、送達システムおよびモジュールは当業者に周知である。
【0150】
あるいは、しばしばデポー製剤または持続放出製剤中で、例えば関節炎の関節または免
疫病理学によって特徴付けられる病原体誘発性病変内に抗体を直接注入することによって
、イヌ化マウス抗イヌPD-1抗体を全身的にではなく局所的に投与し得る。さらに、例
えば関節炎の関節または免疫病理学によって特徴付けられる病原体誘発性病変を標的とす
る、標的化薬物送達システム、例えば組織特異的抗体で被覆されたリポソーム中で抗体を
投与し得る。リポソームは罹患組織を標的とし、罹患組織によって選択的に取り込まれる
【0151】
投与レジメンは、治療用抗体の血清または組織代謝回転速度、症状のレベル、治療用抗
体の免疫原性、および生物学的マトリックス中の標的細胞の接近可能性を含む、いくつか
の因子に依存する。好ましくは、投与レジメンは、同時に望ましくない副作用を最小限に
抑えつつ、標的疾患部位において改善を生じさせるのに十分な治療用抗体を送達する。し
たがって、送達される生物学的製剤の量は、一部には特定の治療用抗体および処置される
状態の重症度に依存する。治療用抗体の適切な用量を選択するうえでの指針が入手可能で
ある[例えばWawrzynczak Antibody Therapy,Bios
Scientific Pub.Ltd,Oxfordshire,UK(1996);
Kresina(ed.)Monoclonal Antibodies,Cytoki
nes and Arthritis,Marcel Dekker,New York
,NY(1991);Bach(ed.)Monoclonal Antibodies
and Peptide Therapy in Autoimmune Disea
ses,Marcel Dekker,New York,NY(1993);Baer
t,et al.New Engl.J.Med.348:601-608(2003)
;Milgrom et al.New Engl.J.Med.341:1966-1
973(1999);Slamon et al.New Engl.J.Med.34
4:783-792(2001);Beniaminovitz et al.New
Engl.J.Med.342:613-619(2000);Ghosh et al
.New Engl.J.Med.348:24-32(2003);Lipsky e
t al.New Engl.J.Med.343:1594-1602(2000)参
照]。
【0152】
適切な用量の決定は、例えば処置に影響を及ぼすことが当分野で公知であるまたは影響
を及ぼすと推測されるパラメータまたは因子を使用して、獣医(veteranaria
n)によって行われる。一般に、用量は、最適用量よりいくぶん低い量から開始して、そ
の後負の副作用と比較して所望のまたは最適の効果が達成されるまで少しずつ増量する。
重要な診断尺度には、例えば炎症の症状の尺度または産生される炎症性サイトカインのレ
ベルが含まれる。
【0153】
本明細書で開示される抗体またはその抗原結合フラグメントは、持続注入によって、ま
たは例えば1日1回、週に1~7回、週1回、隔週に1回、月1回、隔月に1回、3か月
に1回、半年に1回、年1回等で投与される用量によって提供され得る。用量は、例えば
静脈内、皮下、局所、経口、経鼻、直腸、筋肉内、大脳内、髄腔内投与または吸入によっ
て提供され得る。1週間の総用量は、一般に少なくとも0.05μg/kg体重、より一
般的には少なくとも0.2μg/kg、0.5μg/kg、1μg/kg、10μg/k
g、100μg/kg、0.25mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、5
.0mg/ml、10mg/kg、25mg/kg、50mg/kgまたはそれ以上であ
る[例えばYang,et al.New Engl.J.Med.349:427-4
34(2003);Herold,et al.New Engl.J.Med.346
:1692-1698(2002);Liu,et al.J.Neurol.Neur
osurg.Psych.67:451-456(1999);Portielji,e
t al.Cancer Immunol.Immunother.52:133-14
4(2003)参照]。用量はまた、被験体の血清中でイヌ化マウス抗イヌPD-1抗体
のあらかじめ定められた標的濃度、例えば0.1、0.3、1、3、10、30、100
、300μg/mlまたはそれ以上を達成するように提供され得る。他の実施形態では、
本発明のイヌ化マウス抗イヌPD-1抗体は週1回、隔週に1回、「4週間に1回」、月
1回、隔月に1回または3か月に1回ベースで、10、20、50、80、100、20
0、500、1000または2500mg/被験体で皮下または静脈内経路によって投与
される。
【0154】
本明細書で使用される場合、「阻害する」または「処置する」または「処置」は、障害
に関連する症状の発現の先送りおよび/またはそのような障害の症状の重症度の軽減を包
含する。これらの用語は、既存の制御されないまたは望ましくない症状を改善すること、
付加的な症状を予防すること、およびそのような症状の基礎となる原因を改善または予防
することをさらに包含する。したがって、これらの用語は、障害、疾患もしくは症状を有
する、またはそのような障害、疾患もしくは症状を発現する潜在的可能性を有する脊椎動
物被験体に有益な結果が与えられていることを意味する。
【0155】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」、「治療有効用量」および「有効量」とい
う用語は、単独でまたは付加的な治療薬と併用して細胞、組織または被験体に投与された
場合、疾患もしくは状態の1もしくはそれ以上の症状またはそのような疾患もしくは状態
の進行の測定可能な改善を生じさせるのに有効な、本発明のイヌ化マウス抗イヌPD-1
抗体またはその抗原結合フラグメントの量を指す。治療有効用量はさらに、症状の少なく
とも部分的な改善、例えば関連する医学的状態の処置、治癒、予防もしくは改善、または
そのような状態の処置、治癒、予防もしくは改善の速度の増大をもたらすのに十分な結合
化合物の量を指す。単独で投与される個々の有効成分に適用される場合、治療有効用量は
その成分単独を指す。組合せに適用される場合、治療有効用量は、併用して、連続的にま
たは同時に投与されるかどうかにかかわらず、治療効果をもたらす有効成分の総計量を指
す。治療薬の有効量は、診断尺度またはパラメータの少なくとも10%、通常は少なくと
も20%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも40%、最も好ま
しくは少なくとも50%の改善をもたらす。有効量はまた、疾患の重症度を評価するのに
主観的尺度を用いる場合は、主観的尺度の改善ももたらすことができる。
【0156】
他の併用療法
先に述べたように、イヌ化マウス抗イヌPD-1抗体もしくはその抗原結合フラグメン
トは、1またはそれ以上の他の治療薬(例えば化学療法剤)と同時投与し得る。抗体を他
の治療薬に連結してもよく(免疫複合体として)または他の治療薬とは別に投与すること
ができる。後者(別々の投与)の場合は、抗体を他の治療薬の前、後もしくは治療薬と同
時に投与することができるかまたは他の公知の療法と同時投与することができる。
【0157】
キット
さらに、PD-1に特異的に結合する、本明細書で論じる抗体または抗原結合フラグメ
ント(例えばイヌ化マウス抗イヌPD-1抗体またはその抗原結合フラグメント)を含む
がこれらに限定されない1またはそれ以上の成分を、本明細書で論じる、医薬的に許容さ
れる担体および/または化学療法剤を含むがこれらに限定されない1またはそれ以上の付
加的な成分と共に含有するキットが提供される。結合組成物および/または化学療法剤は
、純粋な組成物としてまたは医薬的に許容される担体と組み合わせて医薬組成物に製剤す
ることができる。
【0158】
1つの実施形態では、キットは、本発明の結合組成物(例えば、1つの容器中(例えば
滅菌ガラスまたはプラスチックバイアル中)にイヌ化マウス抗イヌPD-1抗体またはそ
の医薬組成物ならびに別の容器中(例えば滅菌ガラスまたはプラスチックバイアル中)に
その医薬組成物および/または化学療法剤を含有する。
【0159】
キットが被験体への非経口投与用の医薬組成物を含む場合、キットは、そのような投与
を実施するための装置も含有することができる。例えばキットは、上記で論じた1または
それ以上の皮下針または他の注射装置を含有し得る。キットはまた、キット中の医薬組成
物および剤形に関する情報を含む添付文書も含有することができる。一般に、そのような
情報は、ペットの飼い主および獣医(veteranarian)が同封されている医薬
組成物および剤形を有効かつ安全に使用するのに役立つ。例えば本発明の組合せに関する
以下の情報が添付文書中で提供され得る:薬物動態、薬力学、臨床試験、効果パラメータ
、適応症および用法、禁忌、警告、使用上の注意、有害反応、過量、適切な用量および投
与、供給方法、適切な保存条件、参考文献、製造者/配給者情報ならびに特許情報。
【0160】
便宜上、本明細書で開示される抗体または特定の結合物質は、キット中で、すなわち診
断または検出アッセイを実施するための指示書と共に所定量の試薬の包装された組合せで
提供され得る。抗体が酵素で標識されている場合、キットは、基質および酵素が必要とす
る補因子(例えば検出可能な発色団または発蛍光団を提供する基質前駆体)を含有する。
加えて、他の添加物、例えば安定剤、緩衝液(例えばブロック緩衝液または溶解緩衝液)
等が含まれてもよい。様々な試薬の相対的な量は、アッセイの感受性を実質的に最適化す
る試薬の溶液中の濃度を提供するように広く異なり得る。特に、試薬は、溶解後に適切な
濃度を有する試薬溶液を提供する賦形剤を含有する、通常は凍結乾燥された、乾燥粉末と
して提供され得る。
【0161】
[実施例]
[実施例1]
イヌPD-1およびPD-L1
イヌPD-1およびPD-L1:
その全体が参照により本明細書に組み込まれる、2013年12月20日出願の米国特
許仮出願第61/918,946号は、配列番号:113のイヌPD-1(cPD-1)
についての完全長ヌクレオチド配列[配列番号:133はシグナル配列を含む];配列番
号:114の対応する翻訳されたアミノ酸配列[配列番号:134はシグナル配列を含む
];イヌPD-1の細胞外ドメイン(ECD)をコードするヌクレオチド配列、配列番号
:115;イヌPD-1のECDのアミノ酸配列、配列番号:116;配列番号:117
の、イヌPD-1 ECDプラスGTリンカーおよびヒトIgG1 Fc遺伝子のFc部
分のヌクレオチド配列;ならびにイヌPD-1 ECDプラスGTリンカーおよびヒトI
gG1 Fc遺伝子のFc部分のアミノ酸配列、配列番号:118[配列番号:137は
シグナル配列を含む]を提供する。
【0162】
米国特許仮出願第61/918,946号はさらに、配列番号:119のイヌPD-L
1(cPD-L1)についての完全長ヌクレオチド配列[配列番号:135はシグナル配
列を含む];配列番号:120の対応する翻訳されたアミノ酸配列[配列番号:136は
シグナル配列を含む];イヌPD-L1の細胞外ドメイン(ECD)をコードするヌクレ
オチド配列、配列番号:121;イヌPD-L1のECDのアミノ酸配列、配列番号:1
22;イヌPD-L1 ECDプラスGTリンカーおよびヒトIgG1 Fc遺伝子のF
c部分のヌクレオチド配列、配列番号:123;ならびにイヌPD-L1 ECDプラス
GTリンカーおよびヒトIgG1 Fc遺伝子のFc部分のアミノ酸配列、配列番号:1
24を提供する。
【0163】
[実施例2]
マウス抗イヌPD-1抗体
抗イヌPD-1モノクローナル抗体の作製:
合計3匹のBalb/cマウスを17日間にわたって複数回免疫した(毎回10μgで
)。免疫する抗原はイヌPD-1 ECD-Fc融合タンパク質であった。免疫後、各々
のマウスから血清を採取し、イヌPD-1 ECD-HISタグタンパク質との反応性に
関して試験した。最も高い血清抗PD-1 ECD-HIS力価を有するマウスの脾細胞
を骨髄腫P3X63Ag8.653細胞株に融合した。融合の約2週間後に、推定上のハ
イブリドーマ細胞からの上清を、PD-1 ECD-HISタグタンパク質に対するそれ
らの反応性に関してELISAによって試験した。ELISAにおいて強い陽性シグナル
を生じるハイブリドーマを限界希釈によってサブクローニングし、イヌPD-1 ECD
-HISタグタンパク質に対する反応性に関して再び試験した。
【0164】
イヌPD-1に対するモノクローナル抗体の反応性の確認:
ハイブリドーマによって分泌される抗体の、イヌPD-1のECDに対する反応性をE
LISAによって確認した。ハイブリドーマ細胞を、CELLineバイオリアクター(
Integra-biosciences)を使用して10~30日間培養した。細胞を
最初に、4mM L-グルタミンおよびGibcoからの10%Ultra Low I
gGウシ胎仔血清(FBS)を添加したDMEM中で維持した。ハイブリドーマ細胞を、
FBS濃度を20%に増加した同じ培地15mL中約2×10細胞/mLの細胞密度で
CELLineバイオリアクターの細胞チャンバーに接種した。外側チャンバーに栄養培
地(4mM L-グルタミンおよび2%標準FBSを添加したDMEM)1Lを満たした
。細胞チャンバー中のハイブリドーマ細胞を3~7日間かけて約2.5×10細胞/m
Lに増殖させた。次に、細胞懸濁液10mLを細胞チャンバーから採取し、新鮮培地と交
換して、細胞を再増殖させ、その後採取した。この手順を必要に応じて反復し、各ハイブ
リドーマクローンから適切な量のmAbを得た。採取した細胞懸濁液を遠心分離し、上清
を0.2ミクロンフィルター膜でろ過した。抗体精製のために、各クローンの上清を、P
rotein G Sepharose 4 Fast flow 5mLカラム(GE
Healthcare)を使用して重力流によって精製した。Tris-EDTA(T
E)緩衝液pH8.0で洗浄した後、0.1Mグリシン緩衝液、pH2.7を使用して結
合抗体を溶出し、次いで1M Tris、pH8.0を使用してpHを中和した。抗体を
濃縮し、Centriprep YM-10、10kDa NMWL遠心分離フィルター
ユニット(Millipore)を使用して緩衝液をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に
交換した。分光測光法を用いて抗体濃度を定量した。
【0165】
精製抗イヌPD-1 mAbを、イヌPD-1のHISタグECDドメインとの反応性
に関してELISAによって次のように試験した:HISタグイヌPD-1 ECDタン
パク質を被覆緩衝液(炭酸塩/重炭酸塩、pH9.0)中で10μg/mLに希釈し、1
00μl/ウェルで96ウェル平底ELISAプレート(NUNC)に分注する。プレー
トを4℃で一晩インキュベートする。その後プレートを、0.05%Tween(登録商
標)20を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBST)で3回洗浄する。次に、ブロッキ
ング緩衝液(PBST中5%脱脂乳)200μlを各ウェルに添加し、プレートを37℃
で60分間インキュベートする。その後プレートをPBSTで3回洗浄する。次に、ブロ
ッキング緩衝液に希釈した試験mAb 100μlを適切なカラムの最初のウェルに添加
する。その後試験mAbを適切なプレート位置に2倍希釈する。プレートを37℃で60
分間インキュベートした後、PBSTでプレートを3回洗浄する。次に、ホースラディッ
シュペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgG(KPL)の1:2,000希釈物100
μl/ウェルをプレートに添加し、その後プレートを37℃で60分間インキュベートす
る。次にプレートをPBSTで3回洗浄し、3,3’,5,5’テトラメチルベンジジン
(TMB)基質(KPLより)100μl/ウェルをプレートに添加する。37℃で5~
20分間、発色反応を発現させた後、650nmで吸光度を測定する。
【0166】
イヌPD-1タンパク質を発現するCHO細胞:
完全長イヌPD-1遺伝子をプラスミドp96793にクローニングした。このプラス
ミドにおいてPD-1タンパク質の発現はhCMVプロモーターによって駆動される。C
HO DXB11細胞(dhfr-)を、10%ウシ胎仔血清を添加したMEM-α(G
ibco)中で維持した。プラスミドp96793によるCHO細胞のトランスフェクシ
ョンを、約6×10細胞を含む75cmフラスコ中でリポフェクタミン(Invit
rogen)を使用したリポソーム媒介性遺伝子送達によって実施した。48時間後、1
0%FBSおよび400μg/mLハイグロマイシンBを添加した、ヌクレオシドを含有
しないMEM-α培地(選択培地)に細胞を継代した。dhfr+のハイグロマイシン耐
性細胞のプールに関して限界希釈クローニングを実施した。クローンを免疫蛍光アッセイ
によってイヌPD-1の発現に関して評価した。簡単に述べると、細胞単層を80%アセ
トンで96ウェルプレートに固定した。次に、固定して乾燥した細胞単層をポリクローナ
ルヤギ抗ヒトPD-1抗体(R&D Systems)と共に1時間インキュベートした
。プレートをPBSで洗浄し、次にフルオレセイン標識ウサギ抗ヤギIgG抗体(KPL
)と共に1時間インキュベートした。プレートをPBSで洗浄した。蛍光を示すクローン
を増殖させ、細胞株を樹立した。
【0167】
CHO細胞上に発現されたイヌPD-1タンパク質に対するマウスmAbの反応性:
CHO細胞上のイヌPD-1とマウス抗イヌPD-1 mAbの反応性を、PD-1を
発現するCHO細胞を使用した細胞ベースのアッセイによって測定した。簡単に述べると
、イヌPD-1を発現するCHO細胞を培地(DMEM/HAM F12、10%FBS
)50μl中で80~100%の集密度まで培養した。次に、様々な濃度の精製mAbを
含有する培地50μlを37℃で1時間添加した。PBS-Tweenで3回洗浄した後
、培地中で1:1000希釈したヤギ抗マウスホースラディッシュペルオキシダーゼ(H
RP)100μlを37℃で1時間添加した。PBS-Tweenでさらに3回洗浄した
後、結合mAbをペルオキシダーゼ(perioxidase)基質(TMB)で視覚化
した。450nmでのペルオキシダーゼ(perioxidase)活性による吸光度の
増加をマイクロプレートリーダーで測定した。
【0168】
マウス抗イヌPD-1抗体の特徴付け:
上記ならびにその全体が参照により本明細書に組み込まれる、2013年12月20日
出願の米国特許仮出願第61/918,946号に詳述されているように、マウス抗イヌ
PD-1抗体を、以下を含む多くのパラメータによって特徴付けた:ELISAによるイ
ヌPD-1のECDとの反応性、CHO細胞の表面に発現されるPD-1との反応性、P
D-1のPD-L1との結合をブロックする能力、ならびに健常イヌおよび癌を有するイ
ヌ由来のPBMC細胞に結合する能力。選択した7つのマウス抗イヌPD-1抗体(それ
ぞれIB5、2G9、2H9、3B6、4D12、5G5および7C9と表す)のCDR
のアミノ酸配列は、以下の表2に示すように実質的な相同性を有していた。
【表2】


【0169】
[実施例3]
イヌ化およびイヌ化抗体の特徴付け
イヌ化抗体を作製するために、イヌIgGの重鎖および軽鎖をコードするDNA配列を
同定する必要があった。イヌ重鎖のヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、NCBI遺伝子
およびタンパク質データベースから入手することができる。イヌIgGの4つの公知のI
gGサブクラス:IgGA、IgGB、IgGCおよびIgGDならびに2種類の軽鎖:
κおよびλが存在する。表7は、非修飾イヌFcフラグメントのアミノ酸およびヌクレオ
チド配列番号を列挙する。
【0170】
いかなる特定のアプローチにも拘束されるものではないが、イヌおよびマウス配列の様
々な内容物を有する抗PD-1モノクローナル抗体の変異体を作製する工程は、以下の一
般的なスキームを含んだ:
i)マウスmAbのVH鎖およびVL鎖のヌクレオチド配列を決定する;
ii)マウスmAbのH鎖およびL鎖CDRを同定する;
iii)イヌIgGの適切なH鎖およびL鎖を同定する;
iv)イヌIgG H鎖およびL鎖のヌクレオチド配列を決定する;
v)内因性イヌH鎖およびL鎖CDRをコードするヌクレオチド配列を、それぞれのマ
ウスCDRをコードするヌクレオチド配列で置き換える。また、一部のイヌフレームワー
ク残基をマウスフレームワーク領域からの選択した残基で置き換えてもよい;
vi)段階(v)からのヌクレオチドを合成し、それを適切な発現プラスミドに挿入す
る;プラスミドを適切な細胞、例えばHEK293細胞にトランスフェクトする;
vii)発現された抗体をHEK293上清から精製する;ならびに
viii)精製した抗体をイヌPD-1への結合に関して試験する。
【0171】
実験のセットを上記段階に従って実施し、これによりイヌおよびマウス配列の様々な内
容物を有する変異体イヌ化抗体のセットが得られた。
【0172】
CHO細胞上に発現されたイヌPD-1タンパク質に対するイヌ化mAbの反応性:
イヌ化抗イヌPD-1 mAbのCHO細胞上のイヌPD-1との反応性を、イヌPD
-1を発現するCHO細胞を使用した細胞ベースのアッセイによって測定した。簡単に述
べると、イヌPD-1を発現するCHO細胞を培地(DMEM/HAM F12、10%
FBS)50μl中で80~100%の集密度に培養した。次に、様々な濃度の精製mA
bを含有する培地50μlを37℃で1時間添加した。PBS-Tweenで3回洗浄し
た後、培地中で1:1000希釈したヤギ抗イヌホースラディッシュペルオキシダーゼ(
HRP)標識抗体100μlを37℃で1時間添加した。PBS-Tweenでさらに3
回洗浄した後、結合mAbをペルオキシダーゼ基質(TMB)で視覚化した。450nm
でのペルオキシダーゼ活性による吸光度の増加をマイクロプレートリーダーで測定した。
【0173】
イヌPD-1とマウス抗イヌPD-1 mAbおよびイヌ化マウス抗イヌPD-1 m
Abの結合試験:
イヌPD-1抗原の約70共鳴単位(RU)をアミンカップリングによって直接固定化
した。親和性測定を、結合時間300秒、解離時間1200秒ならびに50、100、2
00(×2)、400および800ナノモル(nM)の濃度で無標識表面プラズモン共鳴
ベースの技術(例えばBiacore(登録商標)T200)によって実施した。1:1
結合の適合モデルを使用した。抗原(イヌPD-1)を、アミンカップリングを介してセ
ンサーチップ上に固定化し、以下の表14に示す4つの抗体を、抗原表面を流れる分析物
として使用した。結果は、イヌPD-1抗原についての本発明の抗イヌPD-1抗体の結
合親和性が強力であり、ナノモルおよびさらにはサブナノモルの解離定数(Kd)を有す
ることを明らかにした。さらに、マウス抗イヌPD-1モノクローナル抗体および同じク
ローン由来の対応するイヌ化マウス抗イヌPD-1モノクローナル抗体は、極めて類似の
Kd値を生じた(以下の表14参照)。
【表3】
【0174】
イヌ化抗イヌPD-1 mAbによるリガンド遮断
イヌPD-1(cPD-1)と反応するイヌ化抗体に関して、イヌPD-1を発現する
CHO細胞株に基づく細胞ベースのELISA(CELISA)アッセイを使用した。簡
単に述べると、cPD-1 CHO細胞を4×10細胞/ウェルで96ウェルプレート
に入れ、細胞が95~100%集密になるまで37℃で18~24時間細胞をインキュベ
ートした。細胞培養培地を吸引除去し、プレートをPBS+0.05%Tween(登録
商標)20で3回およびCHO培地で1回洗浄した。30μg/mLから出発して、CH
O培地中でイヌ化抗cPD-1 mAbの3倍段階希釈物を作製し、各抗体希釈物50μ
L/ウェルをプレートに添加した。次にプレートを37℃、5%COで30分間、振と
うしながらインキュベートした。ヒトPD-L1-FcをCHO培地中4μg/mlに添
加し、次に、インキュベートした抗PD-1 mAbを除去または洗浄せずに50μL/
ウェルを37℃、5%COで45分間、振とうしながらインキュベートした。プレート
をPBS+0.05%Tween(登録商標)20で6回洗浄した。CHO培地中の抗ヒ
トFc-HRP(Calbiochem)(1:2500)100μl/ウェルを添加し
、37℃/5%COで30~60分間インキュベートした(抗ヒトFc-HRPはイヌ
Fcに結合しない)。プレートをPBS+0.05%Tween(登録商標)20で5回
洗浄した。TMBマイクロウェル基質100μl/ウェルを添加し、次に室温で10分間
インキュベートした。1.5Mリン酸100μl/ウェルで反応を停止させた。ELIS
AリーダーでA450~A620を測定する。
【0175】
イヌPBMCからのサイトカイン放出:
PBMCを、Ficoll分離を使用して健常イヌおよび癌を有するイヌから得たED
TA血液試料より調製した。細胞を3回洗浄し、96ウェルプレート中の三つ組みのウェ
ルにおいて2.5×10細胞/ウェルの濃度で完全組織培養培地に再懸濁した。細胞を
コンカナバリンA 1μg/mlで活性化した。試験抗体を様々な濃度で添加し、培養物
を96時間インキュベートした。対照には、抗体なしでconAと共に、またはconA
および無関係なアイソタイプがマッチする抗体と共にインキュベートした細胞が含まれた
。96時間の培養後、上清を採取し、市販のイヌIFN-γ ELISAキット(R&D
Systems)を使用してIFN-γ放出に関して検定した[表4参照]。
【0176】
[実施例4]
遺伝的に修飾されたイヌIgG
エフェクター機能を欠くイヌIgGの変異体を作製するために、多数の突然変異体イヌ
IgGB重鎖を作製した。これらの変異体は、重鎖アミノ酸配列のFc部分に以下の単一
または複合置換:P4A、D31A、N63A、G64P、T65A、A93GおよびP
95Aの1つを含有し得る。変異体重鎖(すなわちそのようなアミノ酸置換を含有する)
を発現プラスミドにクローニングし、軽鎖をコードする遺伝子を含有するプラスミドと共
にHEK293細胞にトランスフェクトした。HEK293細胞から発現され、精製され
た無傷抗体を、免疫エフェクター機能の媒介に関するそれらの潜在能を調べるためにFc
γRIおよびC1qへの結合について評価した。表3は、遺伝的に修飾されたイヌ化重鎖
をコードするプラスミド、イヌ化重鎖およびこれらの重鎖内の遺伝的修飾の例を列挙する
。変異体重鎖を、遺伝的に修飾されたmAbにおけるエフェクター機能の評価に使用した
。重鎖のすべてが2H9マウス抗イヌPD-1抗体からのCDRを含有した。
【表4】
【0177】
FcγRI結合:
FcγRIへの結合は、ADCCを媒介する抗体の能力の尺度である。イヌ化抗体に関
してこの特性を評価するために、イヌ化抗体のFcγRIへの結合を測定するアッセイを
以下のように実施した:96ウェルプレートをPD-1 HIS 2.5μg/mLの1
00μl/ウェルで被覆する。2~7℃で一晩インキュベートする。プレートを15分間
室温に平衡化させる。0.05%Tween(登録商標)20(PBST)を含有するリ
ン酸緩衝生理食塩水でプレートを3回洗浄し、次に5%NFDM(脱脂粉乳)200μL
/ウェルを使用してウェルをブロックする。36~38℃で60分間インキュベートする
。PBSTで3回洗浄する。5%NFDM中1μg/mLで出発して抗体の2倍希釈物を
作製する。希釈した抗体100μL/ウェルを添加する。36~38℃で60分間インキ
ュベートする。PBSTで3回洗浄する。1μg/mLに希釈した組換えヒトCD64タ
ンパク質(R&D systems)100μL/ウェルを添加する。36~38℃で6
0分間インキュベートする。PBSTで6回洗浄する。1:3000に希釈したビオチン
化抗CD64抗体(R&D systems)100μL/ウェルを添加する。36~3
8℃で60分間インキュベートする。PBSTで6回洗浄する。1:7500に希釈した
ストレプトアビジン-HRP抗体(R&D systems)100μL/ウェルを添加
する。36~38℃で60分間インキュベートする。PBSTで6回洗浄する。TMB基
質100μL/ウェルを添加する。15~30℃で10分間インキュベートする。ELI
SAプレートリーダーを用いて450~540nmでプレートを読み取る。
【0178】
結果:図5Aは、D31Aの遺伝子修飾を有するcan2H9 ADCC mut-1
VH4/VL3と称するイヌ化mAbまたはN63Aの遺伝子修飾を有するcan2H
9 ADCC mut-2 VH4/VL3と称するmAbが、FcγRIへの結合のほ
ぼ完全な低減を示すことを提示する。他方で、D31AプラスN63Aの複合遺伝子修飾
を含有するcan2H9 ADCC(1062)VH4/VL3と称するmabは、Fc
γRIへの検出可能な結合を欠く。図5Aにおいて、can2H9 IgGD VH4/
VL3はイヌIgGD由来のFcを含有するイヌ化抗体であり、およびcan3B6 V
H4/VL4 IgGBは被覆抗原(PD-1 HIS)に結合しないイヌ化抗体であり
、およびcan2H9 VH4/VL3と称するイヌ化mAbは非修飾IgGB Fcを
含有する抗体である。図5Bは、P4Aの遺伝子修飾を含有するcan2H9 ADCC
(1059)VH4/VL3と称するイヌ化mAbおよびP95Aの遺伝子修飾を含有す
るcan2H9 ADCC(1061)VH4/VL3と称するmAbがFcγRIへの
結合のかなりの低減を示し、一方A93Gの遺伝子修飾を含有するcan2H9 ADC
C(1060)VH4/VL3と称するmAbがFcγRIへの結合のわずかな低減を示
すことを提示する。他方で、5つの遺伝子修飾(D31A、N63A、P4A、A93G
、P95A)を含有するcan2H9 IgGB ADCC(1068)VH4/VL3
と称するmAbは、FcγRIへの結合を完全に欠如している。
【0179】
C1q結合:
補体の第一成分、C1qへの結合は、CDCを媒介する抗体の能力の尺度である。イヌ
化抗体に関してこの特性を評価するために、イヌ化抗体のC1qへの結合を測定するアッ
セイを以下のように実施した:96ウェルプレートをPD-1 HIS 2.5μg/m
Lで被覆する。2~7℃で一晩インキュベートする。15分間室温に平衡化させる。PB
STで3回洗浄する。5%BSAを用いて200μL/ウェルでブロックする。36~3
8℃で60分間インキュベートする。PBSTで3回洗浄する。5%BSA中1μg/m
Lで出発して抗体の2倍希釈物を作製する。希釈した抗体100μL/ウェルを添加する
。36~38℃で60分間インキュベートする。PBSTで6回洗浄する。4μg/mL
に希釈したC1qタンパク質100μL/ウェルを添加する。36~38℃で60分間イ
ンキュベートする。PBSTで6回洗浄する。1:3000に希釈したヤギ抗C1q抗体
100μL/ウェルを添加する。36~38℃で60分間インキュベートする。PBST
で6回洗浄する。1:10000に希釈したロバ抗ヤギHRP抗体100μL/ウェルを
添加する。36~38℃で60分間インキュベートする。PBSTで6回洗浄する。TM
B基質100μL/ウェルを添加する。15~30℃で10分間インキュベートする。4
50~540nmにてELISAプレートリーダーで読み取る。
【0180】
結果:図6Aは、D31Aの遺伝子修飾を有するcan2H9VH4 IgGB AD
CC(mut-1)/VL3と称するイヌ化mAbまたはN63Aの遺伝子修飾を有する
can2H9 VH4 IgGB ADCC(mut-2)/VL3と称するmAbが、
C1qへの結合のかなりの低減を示すことを提示する。他方で、D31AプラスN63A
の複合遺伝子修飾を含有するcan2H9 VH4 IgGB ADCC(1062)/
VL3と称するmAbは、C1qへの検出可能な結合を欠く。
【0181】
図6Aにおいてcan2H9 VH4 IgGD/VL3はイヌIgGD由来のFcを
含有するイヌ化抗体であり、およびcan3B6 VH4/VL4 IgGBは被覆抗原
(PD-1 HIS)に結合しないイヌ化抗体であり、およびcan2H9 VH4/V
L3 IgGBと称するイヌ化mAbは非変異IgGB Fcを含有する抗体である。図
6Bは、P4Aの置換を含有するcan2H9 VH4 IgGB ADCC(1059
)/VL3と称するイヌ化mAbおよびP95Aの置換を含有するcan2H9 VH4
IgGB ADCC(1061)/VL3と称するmAbがC1qへの結合のかなりの
低減を示し、一方A93Gの置換を含有するcan2H9 VH4 IgGB ADCC
(1060)/VL3と称するmAbがC1qへの結合の増強を示すことを提示する。他
方で、5つの置換(D31A、N63A、P4A、A93G、P95A)を含有するca
n2H9 VH4 IgGB ADCC(1068)/VL3と称するmAbは、C1q
への結合を完全に欠如している。図6Bにおいて、can3B6 VH4/VL4 Ig
GBと称するmAbは、被覆抗原(PD-1 HIS)に結合しないイヌ化抗体であり、
can2H9 VH4/VL3 IgGBと称するイヌ化mAbは、非変異IgGB F
cを含有する抗体である。
【表5】


【表6】


【表7】


【表8】


【表9】


【表10】


【表11】


【表12】


【0182】
[実施例5]
抗イヌPD-1抗体のエピトープマッピング
緒言
抗体とそれらの同種タンパク質抗原との相互作用は、標的抗原の特定アミノ酸(エピト
ープ)と抗体の特定アミノ酸(パラトープ)との結合を通して媒介される。エピトープは
、免疫グロブリンによる特異的反応を生じさせる抗原決定基である。エピトープは抗原の
表面の一群のアミノ酸から成る。関心対象のタンパク質は、異なる抗体によって認識され
るいくつかのエピトープを含有し得る。
【0183】
抗体によって認識されるエピトープは、線状または配座エピトープとして分類される。
線状エピトープは、タンパク質中のアミノ酸の一続きの連続配列によって形成され、一方
配座エピトープは一次アミノ酸配列中の不連続な(例えば遠く離れた)アミノ酸から成る
が、三次元タンパク質フォールディング後に一緒になる。
【0184】
エピトープマッピングは、抗体の標的抗原上で抗体によって認識されるアミノ酸配列(
すなわちエピトープ)を同定する工程を指す。標的抗原上でモノクローナル抗体(mAb
)によって認識されるエピトープの同定は重要な適用を有する。例えば、新しい治療薬、
診断薬およびワクチンの開発に役立ち得る。エピトープマッピングはまた、最適化された
治療用mAbの選択にも役立ち、それらの作用機構を解明するのを助けることができる。
エピトープ情報はまた、ユニークな癌エピトープを解明し、ワクチンの防御または病原性
作用を定義することができる。
【0185】
エピトープマッピングは、ポリクローナルまたはモノクローナル抗体を使用して実施す
ることができ、エピトープの推測される性質(すなわち線状対配座)に依存してエピトー
プ同定のためにいくつかの方法が用いられる。線状エピトープをマッピングすることはよ
り直接的であり、比較的実施しやすい。この目的で、線状エピトープマッピングのための
商業サービスはしばしばペプチドスキャニングを用いる。この場合、標的タンパク質の短
いペプチド配列のオーバーラップするセットを化学的に合成し、関心対象の抗体に結合す
るそれらの能力に関して試験する。戦略は迅速で高スループットであり、比較的安価に実
施される。他方で、不連続エピトープのマッピングは技術的により難易度が高く、より専
門的な技術、例えばモノクローナル抗体とその標的タンパク質とのx線共結晶構造解析、
水素-重水素(H/D)交換、および/または酵素消化と組み合わせた質量分析法などを
必要とする。
【0186】
ProImmune(登録商標)MicroArrayを使用したPD-1エピトープ
のマッピング:
抗PD-1 mAbについてのエピトープを形成するアミノ酸を同定するために、15
アミノ酸長であり、10個のアミノ酸がオーバーラップしている合計28個のペプチドを
化学的に合成した。オーバーラップするペプチドのこのライブラリは、完全長イヌPD-
1タンパク質をカバーするように設計された。ペプチド-抗体結合の測定を、抗体試料を
ProArray Ultra(登録商標)ペプチドマイクロアレイに取り付け、次いで
蛍光標識二次抗体と共にインキュベートすることによって実施した。すべてのペプチドを
別々に合成し、その後ProImmune(登録商標)マウスIgG対照と共にProA
rray Ultra(登録商標)スライド表面に結合する。この最適化工程は、ペプチ
ドが、対応するタンパク質領域の特性を密接に模倣し、遊離ペプチド自体の固有の物理化
学的変動を回避して、適合するペプチドとタンパク質の組合せアレイプラットフォームを
生成するように、ペプチドをアレイ上に提示することを確実にする。試験分析物(ペプチ
ド)を別々のスポットでProArray Ultra(登録商標)スライドに分注し、
適切なgalファイルは、生じたアレイ特徴を沈殿した分析物に正確に整列することを可
能にする。mAbの非特異的結合を低減するために有効なブロッキング緩衝液を使用して
ProArray Ultra(登録商標)スライドをブロックした。次にそれらをmA
b試料と共にインキュベートし、次いで特異的蛍光標識二次抗体と共にインキュベートし
た。数回の洗浄段階後、ProArray Ultra(登録商標)アレイを乾燥し、高
分解能蛍光マイクロアレイスキャニングシステムを用いて走査した。蛍光標識ProAr
ray Ultra(登録商標)スライドを走査した後、スキャナーが画像を記録し、こ
れを、走査したマイクロアレイスライド上の各蛍光スポットに関連する蛍光強度のレベル
の解釈および定量化を可能にする、画像解析ソフトウエアを用いて評価した。この実験の
結果は、イヌPD-1ペプチドの一部が評価したmAbの一部によって認識されることを
示した。mAbの同一性およびこれらのmAbによって認識されるアミノ酸配列を表12
に列挙する。この試験は、mAb 2H9が、配列番号:138によって表されるアミノ
酸配列から成るイヌPD-1の細胞外ドメインに位置するエピトープを認識することおよ
びmAb 1A1が、配列番号:138によって表されるアミノ酸配列および配列番号:
139によって表されるアミノ酸配列によって表されるオーバーラップするアミノ酸配列
を含有するエピトープを認識することを指し示す。
【0187】
質量分析法を用いたPD-1エピトープのマッピング:
抗イヌPD-1によって認識される潜在的に不連続なエピトープを同定するために、化
学的架橋および質量分析検出に基づく方法を使用した(CovalX(登録商標)Ins
trument Incorporated)。イヌPD-1のエピトープマッピングへ
のこの技術の適用は、表13に列挙されている指示mAbによって認識されるエピトープ
の少なくとも部分の同定をもたらした。表13からわかるように、mAb 3B6は、配
列番号:140によって表されるアミノ酸配列内のイヌPD-1の細胞外ドメインに位置
するエピトープの少なくとも一部分を認識し、およびmAb 2G9は、配列番号:14
1によって表されるアミノ酸配列内のエピトープの少なくとも一部分を認識する。他方で
、mAb 1E4およびmAb 1B5は、それぞれ配列番号:142によって表される
アミノ酸配列および配列番号:143によって表されるアミノ酸配列内のエピトープの少
なくとも一部分を認識する。
【0188】
図9Aに表示されているように、化学的架橋、高質量MALDI質量分析法およびnL
C-Orbitrap質量分析法によって実施した測定は、イヌ化抗体2G9によって認
識されるイヌPD-1上のエピトープが配列番号:114のR62、R69、R72およ
びR75を含有することを示す。イヌ化抗体3B6によって認識されるイヌPD-1上の
エピトープに関する類似の測定は、配列番号:114のR75およびR90を含有する。
したがって、R75は、イヌPD-1の1またはそれ以上のエピトープにおける特に重要
なアミノ酸残基であると思われる。興味深いことに、これらの分析を実施した後、1A1
のCDRについてのアミノ酸配列は2G9のものと同一であることが認められた。これら
2つの非常に異なる方法によって得られた、2G9が結合するPD-1上の領域と1A1
に関して認められたものとの一致は、この領域が、抗イヌPD-1抗体によって認識され
るPD-1エピトープに含まれるアミノ酸残基を含有することを指し示す(以下の表12
および13参照)。
【0189】
さらに、試験した本発明のブロッキング抗体によって認識されたPD-1のアミノ酸配
列の領域は、イヌPD-1の細胞外ドメイン内にある。認識された領域は以下のペプチド
に含有される(以下の表12および13参照)。
【0190】
NQTDKLAAFQEDRIEPGRDRRFRVM* RLPNGRDFHMSIVAARLNDS(配列番号:144)
このペプチド内に、太字で示すより短いペプチドが存在する。このより短いペプチドは
ProImmune(登録商標)MicroArrayで認識された(表12参照)。
【0191】
DRIEPGRDRRFRVM* RLPNGR(配列番号:145)
注目すべきは、配列番号:114のR62、R69、R72およびR75はすべて、よ
り長いペプチド(配列番号:144)とより短いペプチド(配列番号:145)の両方に
含有され、配列番号:114のR90はより長いペプチド中に存在する。これら5個のア
ルギニン残基は、イヌPD-1の1またはそれ以上のエピトープにおける重要なアミノ酸
残基であると思われる。表6~8に示すように、星印を付したメチオニン残基(*)はト
レオニン残基であるとも報告されている。
【表13】


【表14】
【0192】
本明細書で引用するすべての参考文献は、各々個々の公表文献、データベースエントリ
(例えばGenbank配列またはGeneIDエントリ)、特許出願または特許が、参
照により本明細書に組み込まれることが具体的におよび個別に指示されているかのごとく
同じように参照により本明細書に組み込まれる。参照による組込みのこの声明は、37
C.F.R.§1.57(b)(1)に従って、そのような引用が、該当する参照による
組込みの声明に直接近接していない場合でも、各々が37 C.F.R.§1.57(b
)(2)に従って明確に特定される、ありとあらゆる個々の公表文献、データベースエン
トリ(例えばGenbank配列またはGeneIDエントリ)、特許出願または特許に
関連することが出願人によって意図される。参照による組込みの該当する声明が、存在す
る場合、本明細書内に包含されることは、いかなる意味においても参照による組込みのこ
の一般的な声明を弱めるものではない。本明細書での参考文献の引用は、その参考文献が
関連する先行技術であることの承認とは見なされず、またこれらの公表文献または資料の
内容または日付に関するいかなる承認も構成しない。
【0193】
本発明は、本明細書で述べる特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。
実際に、本明細書で述べるものに加えて本発明の様々な変更が前記説明および添付の図面
から当業者に明らかになる。そのような変更は付属の特許請求の範囲内に含まれることが
意図されている。
【0194】
前記の書面による明細書は、当業者が本発明を実施することを可能にするのに十分であ
ると考えられる。本明細書で示し、説明したものに加えて本発明の様々な変更が前記説明
から当業者に明らかになり、それらは付属の特許請求の範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
【配列表】
2022180448000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヌ化抗体または当該イヌ化抗体の抗原結合断片であって、
当該イヌ化抗体の重鎖は、(i)244位にP、(ii)271位にA、(iii)303位にA、(iv)304位にG、(v)305位にT、(vi)333位にA、および(vii)335位にPを含む、配列番号:44と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含有し、
当該イヌ化抗体は、イヌプログラム死受容体1(イヌPD-1)に特異的に結合し、
(i)244位にP、(ii)271位にA、(iii)303位にA、(iv)304位にG、(v)305位にT、(vi)333位にA、および(vii)335位にPを含む、配列番号:44のアミノ酸配列を有するイヌ化抗体の重鎖は除かれる、イヌ化抗体または当該イヌ化抗体の抗原結合断片。
【請求項2】
イヌ化抗体または当該イヌ化抗体の抗原結合断片であって、
当該イヌ化抗体の重鎖は、(i)242位にP、(ii)269位にA、(iii)301位にA、(iv)302位にG、(v)303位にT、(vi)331位にA、および(vii)333位にPを含む、配列番号:46と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含有し、
当該イヌ化抗体は、イヌプログラム死受容体1(イヌPD-1)に特異的に結合し、
(i)242位にP、(ii)269位にA、(iii)301位にA、(iv)302位にG、(v)303位にT、(vi)331位にA、および(vii)333位にPを含む、配列番号:46のアミノ酸配列を有するイヌ化抗体の重鎖は除かれる、イヌ化抗体または当該イヌ化抗体の抗原結合断片。
【請求項3】
配列番号:78のアミノ酸配列を含むイヌ軽鎖をさらに含有する、請求項1または2に記載のイヌ化抗体。
【請求項4】
イヌ化抗体または当該イヌ化抗体の抗原結合断片であって、
当該イヌ化抗体の重鎖は、(i)239位にP、(ii)266位にA、(iii)298位にA、(iv)299位にG、(v)300位にT、(vi)328位にA、および(vii)330位にPを含む、配列番号:40と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含有し、
当該イヌ化抗体は、イヌプログラム死受容体1(イヌPD-1)に特異的に結合し、
(i)239位にP、(ii)266位にA、(iii)298位にA、(iv)299位にG、(v)300位にT、(vi)328位にA、および(vii)330位にPを含む、配列番号:40のアミノ酸配列を有するイヌ化抗体の重鎖は除かれる、イヌ化抗体または当該イヌ化抗体の抗原結合断片。
【請求項5】
イヌ化抗体または当該イヌ化抗体の抗原結合断片であって、
当該イヌ化抗体の重鎖は、(i)237位にP、(ii)264位にA、(iii)296位にA、(iv)297位にG、(v)298位にT、(vi)326位にA、および(vii)328位にPを含む、配列番号:42と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含有し、
当該イヌ化抗体は、イヌプログラム死受容体1(イヌPD-1)に特異的に結合し、
(i)237位にP、(ii)264位にA、(iii)296位にA、(iv)297位にG、(v)298位にT、(vi)326位にA、および(vii)328位にPを含む、配列番号:42のアミノ酸配列を有するイヌ化抗体の重鎖は除かれる、イヌ化抗体または当該イヌ化抗体の抗原結合断片。
【請求項6】
配列番号:72のアミノ酸配列を含むイヌ軽鎖をさらに含有する、請求項4または5に記載のイヌ化抗体または当該イヌ化抗体の抗原結合断片。
【請求項7】
以下の特性:
(i)1×10-5Mから1×10-12Mの解離定数(Kd)でイヌPD-1に結合する;
(ii)1×10-1-1から1×10-1-1のオン速度(kon)でイヌPD-1に結合する;
(iii)1×10-3-1から1×10-8-1のオフ速度(koff)でイヌPD-1に結合する;
(iv)腫瘍または病原体に対する抗原特異的記憶応答を刺激する;
(v)インビボで抗体応答を刺激する;および
(vi)動物被験体における免疫応答を刺激する
のうちの1、2、3、4、5または全部を示す、請求項1~6のいずれか1項に記載のイヌ化抗体。
【請求項8】
イヌPD-1に結合する際に、前記抗体が、配列番号:138、配列番号:139、配列番号:140、配列番号:141、配列番号:142、配列番号:143、配列番号:144および配列番号:145から成る群より選択される1またはそれ以上の配列内の少なくとも1個のアミノ酸残基に結合し、
前記抗体がイヌPD-1に結合し、イヌPD-1のイヌプログラム死リガンド1(PD-L1)への結合をブロックする、請求項1~7のいずれか1項に記載のイヌ化抗体。
【請求項9】
前記抗体が、配列番号:114のR62、R69、R72、R75およびR90から成る群より選択される1個またはそれ以上のアミノ酸残基に結合する、請求項8に記載のイヌ化抗体。
【請求項10】
請求項3または6に記載のイヌ化抗体の重鎖および軽鎖をコードする核酸の対。
【請求項11】
請求項10に記載の核酸を含有する発現ベクター。
【請求項12】
請求項1~6に記載のイヌ化抗体と、医薬的に許容される担体または希釈剤とを含有する医薬組成物。
【外国語明細書】