(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180459
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】新規な1-OCTEN-3-OLを生産する形質組換え酵母及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/81 20060101AFI20221129BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20221129BHJP
C12P 7/04 20060101ALI20221129BHJP
C12N 15/53 20060101ALN20221129BHJP
C12Q 1/686 20180101ALN20221129BHJP
C12N 9/04 20060101ALN20221129BHJP
C12N 15/29 20060101ALN20221129BHJP
【FI】
C12N15/81 Z
C12N1/19 ZNA
C12P7/04
C12N15/53
C12Q1/686 Z
C12N9/04
C12N15/29
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146720
(22)【出願日】2022-09-15
(62)【分割の表示】P 2020544646の分割
【原出願日】2019-02-21
(31)【優先権主張番号】10-2018-0020608
(32)【優先日】2018-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0019496
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】520314283
【氏名又は名称】キョンサンブク-ド
【氏名又は名称原語表記】KYONGSANGBUK-DO
【住所又は居所原語表記】455, Docheong-daero, Pungcheon-myeon, Andong-si, Gyeongsangbuk-do 36759 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】520314294
【氏名又は名称】キュンプク ナショナル ユニヴァーシティ インダストリー-アカデミック コオペレイション ファウンデイション
【氏名又は名称原語表記】KYUNGPOOK NATIONAL UNIVERSITY INDUSTRY-ACADEMIC COOPERATION FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】80, Daehak-ro, Buk-gu, Daegu 41566 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】チョン ウジェ
(72)【発明者】
【氏名】イ グァンソン
(72)【発明者】
【氏名】キム サンウン
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョングク
(72)【発明者】
【氏名】イ ナンヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョン ミンジ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】1-OCTEN-3-OLを生産する形質組換え酵母及びその製造方法を提供する。
【解決手段】リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)をコーディングする、複数の特定の配列のうちで選択される、何れか一つの塩基配列と、ヒドロペルオキシドリアーゼ(HydroperoxideLyase)をコーディングする特定の配列を含む、再組合ベクターに形質組換えされた、1-OCTEN-3-OL生産用形質組換え酵母と、該組換え酵母を用いた、1-OCTEN-3-OLの製造方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)をコーディングする配列リスト9、10、11のうちで選択される何れか一つの塩基配列とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)をコーディングする配列リスト12の塩基配列を含む再組合ベクターに形質組換えされた1-OCTEN-3-OL生産用形質組換え酵母。
【請求項2】
松茸のTotal RNAを分離してcDNA合成する段階と、前記合成されたcDNAからリポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)遺伝子とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子をPCR増幅する段階と、
前記増幅された各リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)遺伝子とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子をベクターに遺伝子クローニングする段階と、
前記クローニングされた各リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)遺伝子とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子を各酵母発現ベクター(Yeast expression vector)に遺伝子クローニングする段階と、
前記酵母発現ベクター(Yeast expression vector)を酵母に形質組換えして培養して1-OCTEN-3-OLの生合成を確認する段階と、を含む1-OCTEN-3-OL生産用形質組換え酵母の製造方法。
【請求項3】
前記酵母発現ベクター(Yeast expression vector)は、pYES3/CT vectorまたは、pYES2/CT vectorのうちで選択されるvectorであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記pYES3/CT vectorとpYES2/CT vectorを1:1の割合で使用することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記酵母の培養はSC medium培地で0.01乃至100mMのリノール酸(linoleic acid)を利用して15乃至45℃で、12乃至48時間の間に培養することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記酵母はサッカロミセスセレビシエ(S.cerevisiae)であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
請求項1の1-OCTEN-3-OL生産用形質組換え酵母を培地で培養して1-OCTEN-3-OLを生合成する段階と、前記生合成された1-OCTEN-3-OLを収得する段階と、を含む1-OCTEN-3-OLの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は1-OCTEN-3-OLを生産する形質組換え酵母及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は1683年レーウェンフック(Leeuwenhoek)によって発見されたし、子嚢菌類に属する代表的な酵母である。酵母は酵母自体が安っぽい脂肪及びタンパク質源で餌に使用される。ビタミンB群を豊かに含んで、またビタミンDを含むこともあり医薬品工業にも使用されている。酵母を初めて観察したことは顕微鏡の発明者レーウェンフック(Anton van Leeuwenhoek)であり、1680年にはビール酵母が発見された。しかし、酵母醗酵の生物学的意義が知られたことは1861年であったし、パスツール(Louis Pasteur)は葡萄酒醗酵が酵母によって生じるという事実を最初に糾明した。
【0003】
松茸の主要香り成分中の一つであるマツタケオール(matsutakeol)で知られたオクテノール(1-OCTEN-3-OL)は生合成過程でリポキシゲナーゼ(lipoxygenase)とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)酵素が関与するものとして知られている。オクテノール(1-OCTEN-3-OL)は1-OCTENから来由される2次アルコールであり、(R)-(-)-1-OCTEN-3-OLと(S)-(+)-1-OCTEN3-OLの二つの鏡像異性質体の形態で存在する。(R)-(-)-1-OCTEN-3-OLは果物香と松茸特有の良い香がするが(S)-(+)-1-OCTEN-3-OLはかび臭いかびにおい、雑草におい、人為的なにおいを帯びる。よって、(R)-(-)-1-OCTEN-3-OLが松茸の主要香り成分と知られている。
【0004】
基質である松茸のリノール酸(linoleic acid)は子実体内で(S)-1-ヒドロペルオキシ(hydroperoxy)-(8E、12Z)-8、12-オクタデカジエン酸(octadecadiENOic acid)(10-HPODE)で酸化され、この過程でリポキシゲナーゼが関与する。そして、10-HPODEは再び(R)-(-)-1-OCTEN-3-OLと10-Oxo-trans-8-decENOic acid(ODA)を生合成するのに使用されるが、この過程に関与する酵素がヒドロペルオキシドライエースで知られている。
【0005】
今まで化学合成方法ではない松茸のリポキシゲナーゼとヒドロペルオキシドライエースの遺伝子をプラスミドベクターを利用して酵母サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)で発現させた結果オクテノール(1-OCTEN-3-OL)が生合成されたことを確認するオクテノールの生合成方法に関する研究は不十分である。松茸は特に、アジアで選好度が非常に高い食用きのこであるので、オクテノール(1-OCTEN-3-OL)を生合成する形質組換え酵母は松茸香りを利用した食品開発など関連産業に肯定的な効果があるものとして予想される。
【0006】
従来公知されるか、または共用されたオクテノール(1-OCTEN-3-OL)の製造方法は大韓民国公開特許第10-2013-0100141号に開示されている。ここでは、オクテノールを6-メチル-5-ヘプテン-2-オン(MH)を6-メチル-2-ヘプタノン(MHA)に水素化して、続いてこれをアセチレンと反応させて3、7-デ-メチル-1-オックティン-3-オル(DMOI)を形成した後DMOIを3、7-デ-メチル-1-オックテン-3-オル(DMOE)で水素化させて合成する化学的製造方法を開示しているだけである。また、大韓民国登録特許第10-1446315号及び第10-1455204号には松茸から由来したオクテノールの生合成に関与する各リポキシゲナーゼとヒドロペルオキシドライエースの遺伝子を開示しているだけである。
【0007】
このような背景下に、本発明者らは酵母を利用したオクテノール(1-OCTEN-3-OL)の製造方法を開発するために鋭意研究することで本出願を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本出願の目的は、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)をコーディングする塩基配列とヒドロペルオキシド(Hydroperoxide)をコーディングする塩基配列を含む再組合ベクターに形質組換えされた1-OCTEN-3-OL生産用形質組換え酵母を提供することである。
【0009】
本出願の他の目的は、1-OCTEN-3-OL生産用形質組換え酵母の製造方法を提供することである。
【0010】
本出願の他の目的は、1-OCTEN-3-OLの製造方法を提供することである。
【0011】
本出願の他の目的及び利点は、添付した請求範囲及び図面と共に下記の詳細な説明によってより明確になるであろう。本明細書に記載しない内容は本発明の技術分野または類似分野で熟練された者なら充分に認識して類推することができるものであるのでその説明を略する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、本出願内容に対して具体的に説明すれば次のようである。一方、本出願で開示した一実施様態の説明及び実施形態は共通された事項に対して他の様態の説明及び実施形態にも適用されることができる。また、本出願で開示された多様な要素らのすべての組合が本出願の範疇に属する。併せて、下記記述された具体的な敍述によって本出願の範疇が制限されると見ることができない。
【0013】
本出願の目的を達成するために、本出願はリポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)をコーディングする塩基配列とヒドロペルオキシド(Hydroperoxide)をコーディングする塩基配列を含む再組合ベクターに形質組換えされた1-OCTEN-3-OL生産用形質組換え酵母を提供する。
【0014】
本出願の一様態によれば、松茸のTotal RNAを分離してcDNA合成する段階と、前記合成されたcDNAからリポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)遺伝子とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子をPCR増幅する段階と、前記増幅された各リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)遺伝子とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子をベクターに遺伝子クローニングする段階と、前記クローニングされた各リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)遺伝子とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子を各酵母発現ベクター(Yeast expression vector)に遺伝子クローニングする段階と、前記酵母発現ベクター(Yeast expression vector)を酵母に形質組換えして培養して1-OCTEN-3-OLの生合成を確認する段階を含む1-OCTEN-3-OL生産用形質組換え酵母の製造方法を提供する。
【0015】
本出願の一具現例で、本出願は各配列番号9、10、11の塩基配列でなされたリポキシゲナーゼ(lipoxygenase)-1、2、3遺伝子と配列番号12の塩基配列でなされたヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)を遺伝子クローニングして含む再組合ベクターを酵母に形質組換えさせて培養して1-OCTEN-3-OLの生合成を確認する段階を含む1-OCTEN-3-OL生産用形質組換え酵母の製造方法を提供する。また、前記塩基配列の相同体が本出願の範囲内に含まれる。具体的に、前記遺伝子相同体は本出願配列番号の塩基配列とそれぞれ70%以上、より望ましくは80%以上、さらにより望ましくは90%以上、一番望ましくは95%以上の配列相同性を有する塩基配列を含むことができる。ポリヌクレオチドに対する“配列相同性の%”は二つの最適に配列された配列と比較領域を比べることで確認され、比較領域でのポリヌクレオチド配列の一部は二つの配列の最適配列に対する参照配列(追加または削除を含まない)に比べて追加または削除(すなわち、ギャップ)を含むことができる。
【0016】
本出願の一様態によれば、本出願は請求項1の1-OCTEN-3-OL生産用形質組換え酵母を培地で培養して1-OCTEN-3-OLを生合成する段階と、前記生合成された1-OCTEN-3-OLを収得する段階を含む1-OCTEN-3-OLの製造方法を提供する。
【0017】
用語“プライマー”は分析を通じて決まった遺伝子の配列相同性結果で70%以上の種間配列相同性を有する核酸部位で18乃至35の長さを有して、センスプライマー及びアンチセンスプライマーがお互いに混成化されないし、前記遺伝子とプライマーが厳格な条件で混成化されるようにプライマー配列を決めるアルゴリズムであることが望ましいが、これに制限されるものではない。
【0018】
用語“PCR(重合酵素連鎖反応)”とは、核酸増幅方法で二重らせんDNAの変性、DNA鋳型へのオリゴヌクレオチドプライマーのアニーリング及びDNA重合酵素によるプライマー延長の繰り返されたサイクル過程を含む(Mullisなど、アメリカ特許第4,683,195号、第4,683,202号及び第4,800,159号と、Saiki et al、1985)。PCRに利用されるオリゴヌクレオチドプライマーはDNAの反対側らせんにアニーリングされるようにデザインされ、プライマーのDNA重合酵素延長生成物は他のプライマーのための鋳型らせんで作用する。PCR増幅過程はDNA配列の指数的増加をもたらして、増幅されたDNA配列長さはオリゴヌクレオチドプライマーの5'-末端によって決まる。
【0019】
用語”ベクター”は細胞内に伝達するDNA断片(ら)、核酸分子を指称する時に使用される。ベクターはDNAを複製させて宿主細胞から独立的に再生産されることができる。用語“伝達体”はよく“ベクター”と互換して使用される。前記ベクターはクローニングベクターで使用されることができるし、クローニングベクターとは、宿主内で安定的に維持されて外部DNA片を挿入しようとする用途を有している。それで、ベクターと外部DNAを制限酵素で処理する時に易しく挿入されるか、または除去することができる特徴を持たなければならない。使用されるクローニングベクターは挿入しようとする遺伝子の特徴、制限酵素の特徴の条件を考慮して適切に選定されが、本出願で望ましくはpGEM easy vectorが使用される。用語“酵母発現ベクター(Yeast expression vector)”はプローモーター遺伝子、解読開示及び終結コドンが除去された目的タンパク質をコーディングする遺伝子及びターミネーターを含んで、プローモーター遺伝子はGAPDH、PGK、ADH、PHO5、GAL1及びGAL10で構成された群から選択される遺伝子であることが望ましいが、これに制限されない。前記酵母発現ベクター(Yeast expression vector)は組合酵母プラスミド(YIp:integrative yeast plasmid)及び染色体外プラスミドベクター(extrachromosomal plasmid vector)がすべて可能である。前記染色体外プラスミドベクターはエピゾーム酵母プラスミド(YEp:episomal yeast plasmid)、複製酵母プラスミド(YRp:replicative yeast plasmid)及び酵母中心体プラスミド(YCp:yeast centromere plasmid)で分けられる。さらにひいては、人為的酵母染色体ら(YACs:artificial yeast chromosomes)も本出願による発現ベクターとして可能である。また、特に望ましい酵母ベクターは、複製原点ori及び抗生物質抵抗性カセット(antibiotic resistance cassette)を含んで大膓菌(E.coli)で増殖されて選択されることができる酵母複製プラスミド(yeast replication plasmid)である。さらにひいては、これらはH.polymorphaからのHARS1のように酵母細胞で染色体と関係なく独立的複製ができるARS配列、そしてURA3またはHLEU2のような代謝性酵母選択マーカー(metabolic yeast selection marker)を有する。本出願では酵母発現ベクター(Yeast expression vector)として多様なvectorが使用されることができ、具体的にpKLAC2 vector、Gateway pYES-DEST52vector、pAO815Pichia Expression vecotr、pYES2/3/CTvectorがあって、望ましくはpYES3/CT vectorまたはpYES2/CT vectorが使用されることができる。各遺伝子を発現させるために使用するvectorの組合は発現させようとする遺伝子、そのタンパク質、そして該当タンパク質の量によって適切に選択してその割合を調節することができる。本出願では具体的に、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1が使用されることができるし、望ましくはpYES3/CT vectorとpYES2/CT vectorを1:1の割合で使用する。
【0020】
本出願の用語“遺伝子クローニング”は、目的遺伝子をプラスミド(plasmid)、ファージ(phage)、コスミド(cosmid)などの自己複製能力を有するベクターに結合して大膓菌、酵母などの多様な宿主に取り入れて増殖させることで、同一な遺伝子集団を大量で作り出す技術を称する。大膓菌におけるクローニング及びサブクローニングは重合酵素連鎖反応(PCR)方法などによって増幅された目的遺伝子をDNAリガーゼ(ligase)を使って複製起点と抗生剤の選択標識を有するベクターに結合して大膓菌や酵母など細胞の中に取り入れた後、抗生剤耐性を調査することでクローニングされた細胞を選別する方法で実施される。
【0021】
本出願の用語“酵母”は、サッカロミセス(Saccharomyces)、スキゾサッカロミセス(Schizosaccharomyces)、スポロボロマイセス(Sporobolomyces)、トルロプシス(Torulopsis)、トリコスポロン(Trichosporon)、ウィカーハミア(Wickerhamia)、アシュビア(Ashbya)、ブラストミセス(Blastomyces)、カンジダ(Candida)、サッカロミケス(Citeromyces)、クレブロテシウム(Crebrothecium)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、デバリオミセス(Debaryomyces)、エンドマイコプシス(Endomycopsis)、ゲオトリクム(Geotrichum)、ハンゼヌラ(Hansenula)、クロエケラ(Kloeckera)、リポマイセス(Lipomyces)、ピキア(Pichia)、ロードスポリジウム(Rhodosporidium)または、ロドトルラ(Rhodotorula)属(genus)に属する酵母であることができるし、より望ましくは、サッカロミセス及びスキゾサッカロミセスに属する酵母であることができるし、一番望ましくは、サッカロミセスセレビシに使用する。遺伝子の発現率及び最終発現される産物の量と効率によって適切な種類の酵母を選択して使用することができる。本出願の形質組換えされた酵母サッカロミセスセレビシエKMG1801、KMG1802、KMG1803は、2018年2月6日付け韓国バイオテクノロジー研究院生物資源センター(KCTC)にそれぞれ寄託番号第KCTC13476BP号、KCTC13477BP号及びKCTC13478BP号で寄託された。
【0022】
例えば、宿主細胞が酵母である場合、前記発現コンストラクトで利用可能なプローモーターはGAL10プローモーター、GAL1プローモーター、ADH1プローモーター、ADH2プローモーター、PHO5プローモーター、GAL1-10プローモーター、TDH3プローモーター、TDH2プローモーター、TDH1プローモーター、PGKプローモーター、PYKプローモーター、ENOプローモーター、T7プローモーター及びTPIプローモーターを含むが、これこに限定されるものではない。プローモーターは遺伝子の発現率及び最終発現される産物の量と発現効率などの条件によって適切に選択して使用することができる。
【0023】
本出願の一具現例による方法で、前記形質組換えされた宿主細胞を培養する方法は当業界に公知された一般的な方法を利用することができるが、これに制限されない。酵母の“形質組換え”は核酸分子またはベクターを当業者に公知された標準方法、望ましくは電気穿孔、化学的形質組換え、原形質融合による形質組換え、または粒子ボムバードゥメントゥ(bombardment)によって細胞内で導入するようにする(参照: Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Edited by: Fred M. Ausubel et al.; Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Third Edition) , J. Sambrook and D. Russell, 2001, Cold Spring Harbor Laboratory Press)。本出願の望ましい具現例によれば、本出願の形質組換え酵母はS.c.EasyComp Transformation kitを利用して実施した。
【0024】
本出願の一具現例で、請求項1の1-OCTEN-3-OL生産用形質組換え酵母を培地で培養して1-OCTEN-3-OLを生合成する段階と、前記生合成された1-OCTEN-3-OLを収得する段階を含む1-OCTEN-3-OLの製造方法に提供される。
【0025】
本出願の酵母の培養は1-OCTEN-3-OLの生合成を確認するためにトリプトファン(Tryptophan)とウラシル(Uracil)が結実されたSC selectable medium(選択可能なミディアム)に形質組換え酵母を接種してオーバーナイト(overnight)前培養した後、遠心分離して酵母を集めてトリプトファン(Tryptophan))とユラシル(Uracil))が結実されたSC induction medium(誘導ミディアム)に接種して、2%Tween-20とリノール酸(linoleic acid)を添加して30℃から20時間の間に培養することができる。本出願で望ましくは基質であるリノール酸(linoleic acid)の濃度は0.01乃至0.1Mが使用されることができるし、さらに望ましくは、0.5乃至100mMの濃度が使用され、一番望ましくは、3mMの濃度が使用される。また、本出願で望ましい培養温度は15℃乃至40℃、さらに望ましくは30℃であり、培養時間は12乃至48時間の間の培養時間が使用され、具体的には18乃至36時間、20乃至26時間、一番望ましくは24時間が使用される。
【発明の効果】
【0026】
本出願は、1-OCTEN-3-OLを生合成する形質組換え酵母を、及びその製造方法を提供して親環境的であり、経済的なオクテノールの大量生産に効果的であり、松茸香りを利用した食品及び香粧開発に寄与することができるすぐれた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本出願の松茸から抽出されたtotal RNAを示す電気泳動写真図である。
【
図2】
図2は本出願のリポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-1遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-2遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-3遺伝子(各Lane1、2、3)とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)(Lane4)遺伝子の増幅を示す電気泳動写真図である。
【
図3】
図3は本出願のリポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-1遺伝子(A)、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-2遺伝子(B)、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-3遺伝子(C)とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子(D)がpGEM
TM easyTvectorプラスミドに挿入された結果を示す電気泳動写真図である。
【
図4】
図4はpYES3/CT及びpYES2/CT酵母発現ベクター(Yeast expression vector)のマップを示す模式図である。
【
図5】
図5はリポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-1遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-2遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-3遺伝子(A)とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子(B)がプラスミドに挿入された結果を示す電気泳動写真図である。
【
図6】
図6(A)はリポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-1遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-2遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-3遺伝子とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子が導入された形質組換え酵母を培養したプレートの写真図である。
図6(B)はリポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-1遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-2遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-3遺伝子とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子が導入された形質組換え酵母のcolonyPCR結果を示す電気泳動写真図である。
【
図7】
図7はリポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-1遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-2遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-3遺伝子とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子の組合が形質組換えされた各酵母の生長曲線を示すグラフである。
【
図8】
図8は(A)基質を添加しないで培養したセル(cell)のライセート(lysates)、(B)基質を添加しないで培養したミディアム(medium)、(C)基質を添加して培養したセル(cell)のライセート(lysates)、(D)基質を添加して培養したミディアム(medium)での1-OCTEN-3-OL生合成を示すグラフである。
【
図9】
図9は形質組換え体酵母で(A)リノール酸(linoleic acid)添加濃度による1-OCTEN-3-OL生合成量と(B)反応温度及び反応時間による1-OCTEN-3-OLの生合成量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本出願による実施例を通じて本出願をより詳しく説明しようとする。ただ本出願の下記実施例は本出願の仕事例示に過ぎない。これら実施例は本出願をより具体的に説明するためのものであり、添付された請求項に提示された本出願の範囲が、これら実施例によって制限されないということは、本出願が属する技術分野で通常の知識を有した者において明白であろう。
【0029】
実施例1:松茸のTotal RNA分離
大韓民国の大邱市隣近の居昌地域で採取した松茸子実体からTotal RNAを分離した。松茸子実体を3乃至5cmの小さな片で切った後、液体窒素を使って乳鉢できれいに摩碎した。摩碎した子実体をTRIZol1mLに完全に溶解させた後クロロホルム(chloroform)を添加したし、15分間遠心分離してRNAを分離した。RNAが含まれた上澄み液を新しいチューブに移して同量のイソプロフィルアルコール(Iso-propyl alcohol)を添加して常温で15分間反応させて10分間12,000rpmで遠心分離してRNAを沈澱させた。次に、上澄み液をとり除いて75%エチルアルコール(ethyl alcohol)を添加して洗滌した後DEPC処理数(DEPC(diethypyrocarbonate)-treated water)を添加してTotal RNAを湧出、分離したし、その結果Total RNA concentrationは992.8ng/μlで確認された(A260/A280=1.886)(
図1、一番目のレーンはDNA markerであり、2~4レーンはTotal RNAを示す)。
【0030】
*実施例2:松茸のcDNA合成
前記実施例1で収得したTotal RNAとAccuscript High Fidelity 1st Strand cDNA Synthesis Kit(Stratagene)を使ってFirst strand cDNAを次の方法で合成した。Total RNA1μl、RNA se-freewater11.7μl、AccuScript RT buffer2μl、Oligo dT primer 1μl、dNTP mixture0.8μlを混合して65℃で5分、次の常温で5分間反応させた後DTT100mM、AccuScript RT 1μl、RNase Block ribonuclease 0.5μlをさらに添加して42℃で1時間反応させた後70℃で15分反応させてcDNAを合成した。
【0031】
実施例3:リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-1、2、3遺伝子とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子のPCR産物製作
前記実施例2で合成、収得したcDNAを鋳型でPrimeSTAR TM HS Polymerase(TaKaRa)を利用して下記のプライマー(primer)(表1)及びPCR条件(表2)を使って遺伝子を増幅させた。SC選択的培地(SC selectable medium)で該当の遺伝子及び制限酵素を使ってPCRを遂行した。
【0032】
【0033】
【0034】
実験結果、電気泳動写真図を通じて各リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-1遺伝子(配列番号9,3159bp)、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-2遺伝子(配列番号10,3333bp)、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-3遺伝子(配列番号11,3855bp)((
図2の各Lane1、2、3)とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)(配列番号12、1,560bp、
図2のLane4)遺伝子の増幅を確認した。
図2の電気泳動写真図の一番目レーンはDNA markerでPlus DNA Ladder Markerが使用された。
【0035】
実施例4:pGEM
TM
easy T vectorを利用した遺伝子クローニング
前記実施例3で収得したリポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-1遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-2遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-3遺伝子とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子のPCR産物を各pGEM TM easy T vector(Promega)にクローニングするためにMighty TA-cloning Reagent Set(TaKaRa)を使ってA-tailing過程を遂行した後、pGEM TM easy T vectorと4℃でオーバーナイト(overnight)してライゲーション(ligation)させた後、ライゲーション(ligation)されたvectorをE.coliDH5α competentcells(TaKaRa)に形質転換した。次に、E.coliはampicillin(100μl/ml)、IPTG(0.1mM)、X-GAL(50μg/ml)を添加したLuriaBroth(LB) medium plateに塗抹して37℃で16乃至18時間の間に培養した後、Higene TM Plasmid Mini Prep Kit(Biofact)を使ってプラスミドを抽出した。抽出したプラスミドに遺伝子が正確に挿入されたかを確認するために電気泳動で遺伝子の大きさを確認した後該当塩基配列シークエンシングを遂行した。
【0036】
実験結果、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-1遺伝子(
図3(A))、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-2遺伝子(
図3(B))、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-3遺伝子(
図3(C))とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子(
図3(D))がpGEM
TM easy T vectorプラスミドに正確に挿入されたことを確認した。
【0037】
実施例5:酵母発現ベクター(Yeast expression vector)を利用した遺伝子クローニング
Yeastでの遺伝子発現のためのリポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-1遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-2遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-3遺伝子が挿入されたpGEM vectorを各制限酵素HindIIIとKpnIで37℃で反応させて切断したし、ヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子が挿入されたpGEM vectorを各制限酵素KpnIとEcoRIで37℃で反応させて切断した。切断した遺伝子らはTaKaRa MiniBEST Agarose Gel DNA Extraction Kit(TaKaRa)で精製した後定量した。前記遺伝子を発現させるための微生物モデルとしてSaccharomyces cerevisiae種を選択した後、効率タンパク質発現のためにhostcellに相応しい酵母発現ベクター(Yeast expression vector)であるpYES3ベクター(Invitrogen社)を選択した。本ベクターはpUc ori配列が含まれていてバクテリアで増幅が易しくて、2μorigin配列が含まれていて酵母でも増幅が可能である。また、このベクターには目的遺伝子を切断しない制限酵素席がmultiple cloning siteにおいて、ベクターに遺伝子を正確に挿入することができた。力強いプローモーターであるGAL1プローモーターがあり、T7プローモーターとCYC1配列があって遺伝子の挿入と挿入された配列を遺伝子塩基配列分析で正確に把握することができる。
【0038】
そして、選択表紙マーカーであるTRP1遺伝子配列が存在してベクターが挿入された酵母を易しく選別することができるし、V5 epitopeと6xHis tag配列があって発現されたターゲットタンパク質検出に容易である。種類が異なる二つの遺伝子を共に酵母に形質組換えさせるためにpYES3ベクターと選択表紙マーカーがURA3で他のpYES2ベクターを選択した。pYES2ベクターはpYES3ベクターとその以外の特徴は同じで大きさはおおよそ100bp程度さらに大きい(
図4)。選択表紙マーカーを利用して各遺伝子がすべて挿入された酵母を効率的に選別することができるので、次の方法を利用してクローニングをした。リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-1遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-2遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-3遺伝子はpYES3/CT vector(Invitrogen)と、ヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子はpYES2/CT vector(Invitrogen)と4℃でオーバーナイト(overnight)ライゲーション(ligation)反応をさせてE.coli DH5α competent cell(TaKaRa)に形質組換えしたし、ampicillin(100μl/ml)、IPTG(0.1mM)、X-GAL(50μg/ml)を添加したLuria Broth(LB)medium plateに塗抹して37℃で16乃至18時間の間に培養した。次に、選別されたE.coliからHigene
TM Plasmid Mini Prep Kit(Biofact)を使ってプラスミドを抽出したし、抽出したプラスミドは各遺伝子が正確に挿入されたかを確認するために電気泳動で大きさを確認した後塩基配列シークエンシングを遂行した。実験結果、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-1遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-2遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-3遺伝子とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子がプラスミドに正確に挿入されたことを確認した(
図5)。すなわち、
図5(A)のlaneはm:DNAladder marker、1:pYES3/CT、2:pYES3/CT+リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-1遺伝子、3:pYES3/CT+リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-2遺伝子、4:pYES3/CT+リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-3遺伝子であり、
図5(B)のlaneはm:DNAladdermarker、1:pYES2/CT、2:pYES2/CT+ヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)の電気泳動結果である。
【0039】
実施例6:酵母発現ベクター(Yeast expression vector)sのINVSc1酵母への形質組換え
S.C.EasyComp
TM Transformation Kit(Invitrogen)を使ってサッカロミセスセレビシエ(Saccharomycescerevisiae)competent cellを製造した。そして、前記実施例5で収得したリポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-1遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-2遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-3遺伝子が導入したpYES3/CTvectorとヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)が導入されたpYES2/CT vectorを各1:1の割合で混合した後このベクターらをS.cerevisiae competent cell(INVSc1)に形質転換した。そして、トリプトファン(Tryptophan)とユラシル(Uracil)が結実されたSC medium plate(Synthetic complete medium、0.67%yeast nitrogen base、2%glucose、0.192%yeast synthetic drop-out medium supplements、2% agar)に前記S.cerevisiae competent cell(INVSc1)を塗抹して30℃から2乃至3日間培養した(
図6(A))。前記 SC medium培地はトリプトファン(Tryptophan)とウラシル(Uracil)が結実された最小培地でTRP1遺伝子があるpYES3とURA3遺伝子があるpYES2ベクターがすべて挿入された形質組換え体酵母を効率的に選別してターゲットタンパク質発現に適合であるので使用されたし、使用されたSC medium培地の組成は次の表3のようである。
【0040】
【0041】
次に、Colony PCRを遂行して二種類の遺伝子が導入された形質組換え酵母を選別した結果、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-1遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-2遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-3遺伝子とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子が酵母発現ベクター(Yeast expression vector)を通じてINVSc1に形質組換えされたことを確認した(
図6(B))。各リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-1遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-2遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-3遺伝子とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子が1:1の割合で形質組換えされた各酵母KMG1801、KMG1802、KMG 1803は2018年2月6日付けの韓国バイオテクノロジー研究院生物資源センター(KCTC)に各寄託番号第KCTC 13476BP号、KCTC 13477BP号及びKCTC 13478BP号で寄託された。また、それぞれのリポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-1遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-2遺伝子、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-3遺伝子とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子の組合が形質組換えされた酵母の生長を確認するために、該当培養液の5mLは各培養後0、4、8、12、16、20、24、28、32、36時間ごとに酵母の生長曲線は測定のための試料で使用された。測定結果KMG 1801(寄託番号第KCTC 13476BP号、
図7(A))とKMG1802(寄託番号KCTC 13477BP号、
図7(B))が8乃至12時間区間で早く成長し、KMG 1803(寄託番号第KCTC 13478BP号、
図7(C))は28乃至32時間区間で早く成長することを確認することができた。
【0042】
実施例7:リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子が導入した形質組換え酵母で1-OCTEN-3-OL生合成の確認
前記実施例6から収得した各遺伝子の組合が形質組換えされた酵母での1-OCTEN-3-OLの生合成を確認するためにトリプトファン(Tryptophan)とウラシル(Uracil)が結実された SC selectable medium (Synthetic complete medium, 0.67% yeast nitrogen base, 2% raffinose, 0.192% yeast synthetic drop-out medium supplements)に形質組換え酵母を接種してオーバーナイト(overnight)前培養した後、遠心分離して酵母を集めてトリプトファン(Tryptophan))とユラシル(Uracil))が結実された SC induction medium (Synthetic complete medium, 0.67% yeast nitrogen base, 1% raffinose, 2% galactose, 0.192% yeast synthetic drop-out medium supplements)に接種して、2% Tween-20と1.5mMリノール酸(linoleic acid)を添加して30℃で20時間の間に培養した。遠心分離で培養した酵母とミディアム(medium)を分離して酵母にリン酸ナトリウム溶解緩衝額(sodium Phosphate lysis buffer(50mM sodium Phosphate、1mM PMSF、5% glycerol、2% triton X-100;pH6.5)とacid-washed glass beads(0.4-0.6mm size)を添加してbead beaterでlysisした後、遠心分離で菌体をダウンさせて細胞溶解上澄み液を回収した。次に、生成された1-OCTEN-3-OLを確認するためにライセート(lysates)と培養したミディアム(medium)を70℃で35分間SPME(solid phase microextraction)に揮発性成分を抽出して気体クロマトグラフィー-質量分析法(Gas chromatography-mass spectrometry(Aqilent 789OB GC & 5977B MSD))で分析した。気体クロマトグラフィー質量分析のためにDB-WAX(60m×250μm×0.25μm)とheliumcarrier gasを使ったし、コラム(column)の温度は40℃から120℃まで2℃/minの速度で高めたし、120℃から240℃まで20℃/minの速度で高めた。Injectorの温度は250℃にした。
【0043】
実験結果、
図8のように(A)基質を添加しないで培養したcellのライセート(lysates)と(B)基質を添加しないで培養したミディアム(medium)ではpeakが観察されなかったが、(C)基質を添加して培養したcellのライセート(lysates)と(D)基質を添加して培養したミディアム(medium)では38.27minに1-OCTEN-3-OLのピーク(peak)が確認された。
【0044】
一方、それぞれのリポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)遺伝子とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)の組合による1-OCTEN-3-OL生合成に対する結果は表4のようである。表4によれば、松茸子実体で発見された遺伝子リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-1、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-2、リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-3とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)の各組合が導入された酵母ですべて1-OCTEN-3-OLの生合成効果があったし、組合の種類によって生合成の程度は異なることを確認した。また、1-OCTEN-3-OL生合成率(Concentration)はリポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-1を利用した場合が一番高いことが確認された。
【0045】
【0046】
実験例1:基質濃度と反応条件による1-OCTEN-3-OL生合成の最適化
基質の濃度と反応条件による形質組換え酵母の1-OCTEN-3-OL生合成量を確認するためにトリプトファン(Tryptophan))とユラシル(Uracil))が結実されたSC selectable medium(Synthetic complete medium、0.67% yeast nitrogen base、2% raffinose、0.192% yeast synthetic drop-out medium supplements)にリポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)-1とヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)が形質組換えされた酵母を接種してオーバーナイト(overnight)前培養した後、遠心分離で酵母を集めてトリプトファン(Tryptophan)とウラシル(Uracil)が結実されたSC induction medium(Synthetic complete medium、0.67%yeast nitrogen base、1%raffinose、2%Galactose、0.192%yeast synthetic drop-out mediums upplements)に接種して、2%Tween-20と適切な濃度のリノール酸(linoleic acid)(0~0.1M)添加して30℃から20時間の間に培養した。また、反応条件による形質組換え酵母で1-OCTEN-3-OL生合成量を確認するために前培養した酵母をトリプトファン(Tryptophan))とユラシル(Uracil))が結実されたSC induction medium(Synthetic complete medium、0.67%yeast nitrogen base、1%raffinose、2%Galactose、0.192%yeast synthetic drop-out medium supplements)に接種して、2% Tween-20と3mMリノール酸(linoleic acid)を添加して15℃と30℃で各12、24、36、48時間の間に培養した。遠心分離で培養した酵母を集めてリン酸ナトリウム溶解緩衝額(sodium Phosphate lysis buffer(50mM sodium Phosphate、1mMPMSF、5%glycerol、2% tritonX-100と、pH6.5))とacid-washed glass beads(0.4-0.6mm size)を添加してbead beaterでlysisした後、遠心分離で菌体をダウンさせて細胞用して上澄み液を回収したし、0.1gのNaCl(タンパク質沈澱のためである)を添加して同量のジエチルエーテル(diethylether)で香り物質を抽出して気体クロマトグラフィー-質量分析法(Gas chromatography-mass spectrometry(Aqilent 789OB GC & 5977B MSD))で分析した。気体クロマトグラフィー質量分析のためにDB-WAX(60m×250μm×0.25μm)とhelium carrier gasを使ったし、columnの温度は40℃から120℃まで2℃/minの速度で高めたし、120℃から240℃まで20℃/minの速度で高めた。Injectorの温度は250℃にした。生合成された1-OCTEN-3-OLの濃度は1-OCTEN-3-OLstandard(Sigma)と比較分析した。実験結果、(A)リノール酸(linoleic acid)添加濃度が3mMである時1-OCTEN-3-OL生合成量はおおよそ0.48mg/Lで一番高かったし、(B)24時間の間に30℃での1-OCTEN-3-OLの生合成量はおおよそ0.35mg/Lで一番高かった(
図9)。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本出願は1-OCTEN-3-OLを生産する形質組換え酵母及びその製造方法に関するものであり、松茸香を利用した香粧産業及び食品開発産業上有用な発明であることである。
【0048】
寄託機関名:韓国バイオテクノロジー研究院
受託番号:KCTC 13476BP
受託日付け:20180206
寄託機関名:韓国バイオテクノロジー研究院
受託番号:KCTC 13477BP
受託日付け:20180206
寄託機関名:韓国バイオテクノロジー研究院
受託番号:KCTC 13478BP
受託日付け:20180206
【0049】
【0050】
【0051】
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)をコーディングする配列番号9、10及び11の何れか一つのヌクレオチド配列と、ヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)をコーディングする配列番号12のヌクレオチド配列と、を含む再組合ベクターに形質組換えされた1-OCTEN-3-OL生産用形質組換え酵母。
【請求項2】
松茸のTotal RNAを分離してcDNAを合成する段階と、
前記合成されたcDNAから、配列番号9、10及び11の何れか一つのヌクレオチド配列を含むリポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)遺伝子と、配列番号12のヌクレオチド配列を含むヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子と、をPCR増幅する段階と、
前記増幅されたリポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)遺伝子及びヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子のそれぞれをベクターに遺伝子クローニングする段階と、
前記クローニングされたリポキシゲナーゼ(Lipoxygenase)遺伝子及びヒドロペルオキシドリアーゼ(Hydroperoxide lyase)遺伝子のそれぞれを各酵母発現ベクター(Yeast expression vector)に遺伝子クローニングする段階と、
前記酵母発現ベクター(Yeast expression vector)を酵母に形質組換えして培養して1-OCTEN-3-OLを製造する段階と、
を含む1-OCTEN-3-OL生産用形質組換え酵母の製造方法。
【請求項3】
前記酵母発現ベクター(Yeast expression vector)は、pYES3/CT vector及びpYES2/CT vectorのうちで選択されるvectorであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記pYES3/CT vector及びpYES2/CT vectorを1:1の割合で使用することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記酵母の培養はSC medium培地で0.01乃至100mMのリノール酸(linoleic acid)を利用して15乃至45℃で、12乃至48時間の間に培養することを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記酵母はサッカロミセスセレビシエ(S.cerevisiae)であることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項7】
請求項1の1-OCTEN-3-OL生産用形質組換え酵母を培地で培養して1-OCTEN-3-OLを生合成する段階と、前記生合成された1-OCTEN-3-OLを収得する段階と、を含む1-OCTEN-3-OLの製造方法。