(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180485
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20221129BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20221129BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20221129BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20221129BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20221129BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20221129BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20221129BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/525
H01M10/0562
H01M10/052
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148140
(22)【出願日】2022-09-16
(62)【分割の表示】P 2022099680の分割
【原出願日】2013-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2012089346
(32)【優先日】2012-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2012125138
(32)【優先日】2012-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】等々力 弘篤
(72)【発明者】
【氏名】湯川 幹央
(72)【発明者】
【氏名】米田 祐美子
(72)【発明者】
【氏名】山梶 正樹
(72)【発明者】
【氏名】附田 莉加
(72)【発明者】
【氏名】池沼 達也
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電極体積当たりの容量が大きい非水系二次電池を提供する。
【解決手段】正極200または負極を有する二次電池であって、前記正極または前記負極は、複数の活物質粒子と、導電助剤と、を含む活物質層202を有し、前記導電助剤は、六角形の炭素骨格を有する第1の炭素材料と、六角形の炭素骨格を有する第2の炭素材料とを含み、前記第1の炭素材料と、前記第2の炭素材料とは、互いに接するように分散し、前記第1の炭素材料は、前記複数の活物質粒子と接している二次電池である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極または負極を有する二次電池であって、
前記正極または前記負極は、複数の活物質粒子と、導電助剤と、を含む活物質層を有し、
前記導電助剤は、六角形の炭素骨格を有する第1の炭素材料と、六角形の炭素骨格を有する第2の炭素材料と、を含み、
前記第1の炭素材料と、前記第2の炭素材料とは、互いに接するように分散し、
前記第1の炭素材料は、前記複数の活物質粒子と接している二次電池。
【請求項2】
正極または負極を有する二次電池であって、
前記正極または前記負極は、複数の活物質粒子と、導電助剤と、を含む活物質層を有し、
前記導電助剤は、六角形の炭素骨格を有する炭素材料を含み、
前記炭素材料は、前記複数の活物質粒子と接し、
充電時の容量は150mAh/g以上である、二次電池。
【請求項3】
正極または負極を有する二次電池であって、
前記正極または前記負極は、複数の活物質粒子と、導電助剤と、を含む活物質層を有し、
前記導電助剤は、六角形の炭素骨格を有する炭素材料を含み、
前記炭素材料は、前記複数の活物質粒子と接し、
前記活物質層の密度は1.6g/cm3より大きく2.6g/cm3以下である、二次電池。
【請求項4】
正極または負極を有する二次電池であって、
前記正極または前記負極は、複数の活物質粒子と、導電助剤と、を含む活物質層を有し、
前記導電助剤は、複数の層を有し、
前記複数の層の各々は、六角形の炭素骨格を有する炭素材料を含み、
前記炭素材料は、前記複数の活物質粒子と接し、
前記複数の層の層間距離は0.34nm以上0.5nm以下である、二次電池。
【請求項5】
正極または負極を有する二次電池であって、
前記正極または前記負極は、複数の活物質粒子と、導電助剤と、を含む活物質層を有し、
前記活物質層は前記複数の活物質粒子が凝集した凝集部を少なくとも一つ有し、
前記導電助剤は、六角形の炭素骨格を有する炭素材料を含み、
前記炭素材料は前記凝集部の一部に沿って位置する、二次電池。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の二次電池であって、
前記負極の活物質層はシリコンを有する、二次電池。
【請求項7】
請求項1乃至請求項5のいずれか一に記載の二次電池であって、
前記負極の活物質層はSiOを有する、二次電池。
【請求項8】
正極を有する二次電池であって、
前記正極は、複数の活物質粒子と、導電助剤と、を含む正極活物質層を有し、
前記正極活物質層はコバルト酸リチウムを有する複数の活物質粒子を有し、
前記導電助剤は、六角形の炭素骨格を有する炭素材料を含み、
前記炭素材料は、前記複数の活物質粒子と接している二次電池。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一に記載の二次電池であって、
固体電解質を有する、二次電池。
【請求項10】
請求項9に記載の二次電池であって、
前記固体電解質は硫化物を有する、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化グラフェン、それを用いた非水系二次電池用正極、及びその製造方法、非
水系二次電池、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話、スマートフォン、電子書籍(電子ブック)、携帯型ゲーム機等の携帯型
電子機器の著しい普及に伴い、その駆動電源である二次電池の小型化・大容量化の要求が
高まっている。携帯型電子機器に用いられる二次電池として、高いエネルギー密度、大容
量といった利点を有するリチウム二次電池に代表される非水系二次電池が広く利用されて
いる。
【0003】
非水系二次電池の中でも高エネルギー密度を有することで広く普及しているリチウム二次
電池は、コバルト酸リチウム(LiCoO2)やリン酸鉄リチウム(LiFePO4)な
どの活物質を含む正極と、リチウムイオンの吸蔵・放出が可能な黒鉛等の炭素材料からな
る負極と、エチレンカーボネートやジエチルカーボネートなどの有機溶媒に、LiBF4
やLiPF6等のリチウム塩からなる電解質を溶解させた非水電解液などにより構成され
る。リチウム二次電池の充放電は、二次電池中のリチウムイオンが非水電解液を介して正
極-負極間を移動し、正極負極の活物質にリチウムイオンが挿入脱離することにより行わ
れる。
【0004】
正極又は負極には、活物質と活物質や活物質と集電体とを結着させるために、結着剤(バ
インダともいう。)を混入する。結着剤は、絶縁性のPVDF(ポリフッ化ビニリデン)
等の高分子有機化合物が一般的であるため電子伝導性が極めて低い。このため、活物質量
に対して結着剤の混入量の割合を増加させると、電極中の活物質量が相対的に低下するた
め、結果として二次電池の放電容量が低下してしまう。
【0005】
そこで、アセチレンブラック(AB)やグラファイト(黒鉛)粒子などの導電助剤を混合
することで活物質間又は活物質-集電体間の電子伝導性を向上させている。これにより電
子伝導性の高い正極活物質の提供を可能としている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、導電助剤として用いられるアセチレンブラックは、平均粒径が数十nmか
ら数百nmの嵩高い粒子であるため、活物質との面接触が難しく点接触となりやすい。こ
のため活物質と導電助剤との接触抵抗は高いものとなる。一方、活物質と導電助剤との接
触点を増やすために導電助剤の量を増加すると、電極中の活物質量の比率が低下して、電
池の放電容量は低下する。
【0008】
また、導電助剤としてグラファイト粒子を用いる際には、コストの問題から天然グラファ
イトを用いることが一般的であるが、その際にはグラファイト粒子中に不純物として含有
している鉄、鉛、銅等が活物質や集電体と反応し、電池の電位低下や容量低下が生じる。
【0009】
さらに、活物質は微粒子化に伴い粒子間の凝集力が強くなるため、結着剤や導電助剤に均
一に分散するように混合することが困難となる。このため活物質粒子が凝集した密な部分
と凝集していない疎な部分とが局所的に発生し、導電助剤の混入がなされていない活物質
粒子の凝集部分においては、活物質粒子が電池の放電容量形成に寄与しない結果となる。
【0010】
そこで、上記課題に鑑み、本発明の一態様では、少量の導電助剤で電子伝導性の高い活物
質層を形成するための導電助剤の原料である酸化グラフェンを提供することを目的の一と
する。また、少量の導電助剤で、充填量が高く高密度化された正極活物質層を含む非水系
二次電池用正極を提供することを目的の一とする。また、該非水系二次電池用正極を用い
ることにより、電極体積当たりの容量が大きい非水系二次電池を提供することを目的の一
とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係る非水系二次電池用正極は、正極活物質層に含まれる導電助剤として
、グラフェンを用いる。
【0012】
グラフェンは、炭素が形成する六角形の骨格を平面状に延ばした結晶構造をもつ炭素材料
である。グラフェンはグラファイト結晶の一原子面を取り出したものであり、電気的、機
械的又は化学的な性質に驚異的な特徴を有することから、グラフェンを利用した高移動度
の電界効果トランジスタや高感度のセンサ、高効率な太陽電池、次世代向けの透明導電膜
など、様々な分野での応用が期待され注目を浴びている。
【0013】
本明細書において、グラフェンは単層のグラフェン、又は2層以上100層以下の多層グ
ラフェンを含むものである。単層グラフェンとは、π結合を有する1原子層の炭素分子の
シートのことをいう。また、酸化グラフェンとは、上記グラフェンが酸化された化合物の
ことをいう。なお、酸化グラフェンを還元してグラフェンを形成する場合、酸化グラフェ
ンに含まれる酸素は全て脱離されずに、一部の酸素はグラフェンに残存する。グラフェン
に酸素が含まれる場合、酸素の割合は、全体の2atomic%以上20atomic%
以下、好ましくは3atomic%以上15atomic%以下である。
【0014】
ここで、グラフェンが多層グラフェンである場合、酸化グラフェンを還元したグラフェン
を有することで、グラフェンの層間距離は0.34nm以上0.5nm以下、好ましくは
0.38nm以上0.42nm以下、さらに好ましくは0.39nm以上0.41nm以
下である。通常のグラファイトは、単層グラフェンの層間距離が0.34nmであり、本
発明の一態様に係る二次電池に用いるグラフェンの方が、その層間距離が長いため、多層
グラフェンの層間におけるキャリアイオンの移動が容易となる。
【0015】
本発明の一態様に係る非水系二次電池用正極は、グラフェンを、正極活物質層中で重なり
合い、複数の正極活物質粒子と接するよう分散させる。別言すると、正極活物質層中に、
グラフェンによる電子伝導のためのネットワークを形成するともいえる。これにより、複
数の正極活物質粒子の結合が維持された状態となり、結果として電子伝導性の高い正極活
物質層を形成することができる。
【0016】
グラフェンを導電助剤として加えた正極活物質層は、以下の方法で作製することができる
。まず分散媒(溶媒ともいう。)にグラフェンを分散させた後、正極活物質を添加して混
練することで混合物を作製する。この混合物に結着剤(バインダともいう。)を添加して
混練することで正極ペーストを作製する。最後に正極ペーストを正極集電体に塗布した後
分散媒を揮発させ、グラフェンを導電助剤として加えた正極活物質層が作製される。
【0017】
しかし、グラフェンを導電助剤に用いて正極活物質層中に電子伝導のネットワークを形成
するためには、まずグラフェンが分散媒に均一に分散されなければならない。分散媒への
分散性が直接正極活物質層へのグラフェンの分散性に依存するためであり、グラフェンの
分散性が低い場合には、グラフェンが正極活物質層内で凝集し、局在することで該ネット
ワークの形成に至らない。従って、導電助剤に用いるグラフェンの分散媒への分散性は、
正極活物質層の電子伝導性を高めるための極めて重要なファクタであるといえる。
【0018】
そこで本願発明者らは、導電助剤としてグラフェンを活物質及び結着剤とともに分散媒に
入れて作製した正極活物質層を確認したところ、分散性が十分でなく、結果として正極活
物質層内に電子伝導のためのネットワークが形成できていないことを見いだした。さらに
導電助剤としてグラフェンに替えて、酸化グラフェンを還元したグラフェン(以下、RG
O(Reduced Graphene Oxideの略記)という。)を分散媒に入れ
て作製した正極活物質層においても同様の結果であった。
【0019】
一方で、本願発明者らは、導電助剤として酸化グラフェン(GO(Graphene O
xideの略記)ともいう。)を活物質及び結着剤とともに分散媒に入れて正極ペースト
を作製した後、分散された酸化グラフェンを加熱処理により還元してグラフェンとした正
極活物質層においては、活物質層内に電子伝導のネットワークが形成され、優れた電子伝
導性を示すことを見いだした。
【0020】
以上のことから、導電助剤の原料としてグラフェン又はRGOを分散させた正極活物質層
ではこれらの分散性が低いのに対し、酸化グラフェンを加えて正極ペースト化した後に還
元したグラフェンは分散性が高いことが分かった。
【0021】
このようなグラフェン又はRGOと、酸化グラフェンを用いた正極ペーストの形成後に還
元して形成したグラフェンとの活物質層中での分散性の差は、分散媒への分散性の差とし
て、以下のように説明することができる。
【0022】
図1(A)に、分散媒として代表的なNMP(N-メチルピロリドン、1-メチル-2-
ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドンなどともいう。)の構造式を示す。NMP10
0は5員環の構造を有する化合物であり、極性溶媒の一つである。
図1(A)に、示すよ
うにNMP中の酸素がマイナス(-)側に、酸素と二重結合する炭素がプラス(+)側に
電気的に偏っている。このような極性を有する希釈溶媒の中にグラフェン、RGO又は酸
化グラフェンを添加する。
【0023】
グラフェンは、既述したように、六角形の骨格を平面状に延ばした炭素の結晶構造体であ
り、構造体中に官能基は実質的に含まれない。また、RGOは、当初有していた官能基を
熱処理によって還元したものであり、構造体中の官能基の割合は10wt%程度と低い。
従って、
図1(B)に示すように、グラフェン又はRGO101の表面は極性を持たない
ために、疎水性を示す。このため、分散媒であるNMP100とグラフェン又はRGO1
01との相互作用は極めて小さく、むしろグラフェン又はRGO101どうしの相互作用
によりグラフェン又はRGO101は凝集すると考えられる(
図1(C)参照)。
【0024】
一方、酸化グラフェン102は、エポキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキ
シル基等の官能基を有する極性物質である。酸化グラフェン102は官能基中の酸素がマ
イナスに帯電するため、極性溶媒中において異なる酸化グラフェンどうしで凝集しにくい
一方で、極性溶媒であるNMP100との相互作用が大きい(
図2(A)参照)。従って
、
図2(B)に示すように、酸化グラフェン102が有するエポキシ基等の官能基が極性
溶媒と相互作用するため、酸化グラフェンどうしの凝集が阻害され、結果として分散媒中
に酸化グラフェン102が均一に分散すると考えられる(
図2(B)参照)。
【0025】
以上のことから、グラフェンを導電助剤として用い、正極活物質層中に高い電子伝導性を
有するネットワークを構築するためには、正極ペーストの作製時において、分散媒に分散
性の高い酸化グラフェンを用いることが非常に効果的である。分散媒内の酸化グラフェン
の分散性は、エポキシ基等の酸素を有する官能基の多寡(別の表現をするならば、酸化グ
ラフェンの酸化度ともいえる。)に依存すると考えられる。
【0026】
このため、本発明の一態様は、非水系二次電池用正極に用いる導電助剤の原料として用い
られる酸化グラフェンであって、炭素に対する酸素の重量比が0.405以上である酸化
グラフェンである。
【0027】
ここで、炭素に対する酸素の重量比とは、酸化度を示す指標であり、酸化グラフェンの構
成元素のうち炭素と酸素の重量を、炭素を基準とした比率としてみたものである。なお、
酸化グラフェンを構成する元素の重量は、例えばX線光電子分光法(XPS:X-ray
Photoelectron Spectroscopy)で測定することができる。
【0028】
酸化グラフェンの炭素に対する酸素の重量比が0.405以上であるということは、極性
溶媒中で酸化グラフェンが高い分散性を有するために、エポキシ基、カルボニル基、カル
ボキシル基、ヒドロキシル基等の官能基が十分に結合した極性物質となっていることを意
味する。
【0029】
よって、炭素に対する酸素の重量比が0.405以上である酸化グラフェンを、正極活物
質及び結着剤とともに分散媒に分散させて混練し、正極集電体上に塗布して加熱すること
により、分散性が高く電子伝導のネットワークを有するグラフェンを含んだ非水系二次電
池用正極を形成することができる。
【0030】
酸化グラフェンは、一辺の長さが50nm以上100μm以下、好ましくは800nm以
上20μm以下であると好ましい。
【0031】
また、本発明の一態様は、複数の粒状の正極活物質と、複数のグラフェンを含む導電助剤
と、結着剤と、を含む正極活物質層を正極集電体上に有し、グラフェンは、粒状の正極活
物質の平均粒径よりも大きく、グラフェンは、正極活物質層中において、隣接する他のグ
ラフェンの一以上と互いに面接触する程度に分散し、グラフェンは、粒状の正極活物質の
表面の一部を包むように面接触している非水系二次電池用正極である。
【0032】
既に述べたように、酸化グラフェンは酸素を含む官能基を有する構造体であるため、NM
P等の極性溶媒中において酸化グラフェンどうしが凝集することなく、均一に分散する。
分散した酸化グラフェンは複数の粒状の正極活物質と均一に混ざり合う。このため分散媒
の揮発と該酸化グラフェンの還元処理とにより、酸化グラフェンから形成されたグラフェ
ンは、他のグラフェンと面接触する程度に正極活物質層中に分散される。グラフェンはシ
ート状であり、互いに部分的な面接触により電気的な接続を果たしているため、各グラフ
ェンを一つの集合として捉えると、電子伝導のネットワークが形成されていると考えられ
る。またグラフェンどうしの接続が面接触であるため、接触抵抗を低く抑えることができ
、電子伝導性の高いネットワークを構築する。
【0033】
一方、それぞれのグラフェンは一辺の長さが50nm以上100μm以下、好ましくは8
00nm以上20μm以下のシートであり、粒状の正極活物質の平均粒径よりも大きいた
め、一枚のシート状のグラフェンが複数の粒状の正極活物質と接続することができる。特
にグラフェンがシート状であるため、粒状の正極活物質の表面を覆うように面接触するこ
とができる。このため、導電助剤の量を増加させることなく、粒状の正極活物質とグラフ
ェンとの接触抵抗を低減することができる。
【0034】
なお、粒状の正極活物質としては、リン酸鉄リチウム等のキャリアイオンの挿入脱離が可
能な材料を用いることができる。
【0035】
また、本発明の一態様は、複数の粒状の正極活物質と、複数のグラフェンを含む導電助剤
と、結着剤と、を含む正極活物質層を正極集電体上に有し、正極活物質層に含まれる炭素
の結合状態は、C=C結合の割合が35%以上であり、かつ、C-O結合の割合が5%以
上20%以下である非水系二次電池用正極である。
【0036】
また、本発明の一態様は、炭素に対する酸素の重量比が0.405以上である酸化グラフ
ェンを分散媒に分散させ、酸化グラフェンを分散させた分散媒に、正極活物質を添加して
混練することで混合物を作製し、混合物に結着剤を添加して混練することで正極ペースト
を作製し、正極ペーストを正極集電体に塗布し、塗布した正極ペーストに含まれる分散媒
を揮発させた後又は揮発させると同時に、酸化グラフェンを還元して、グラフェンを含む
正極活物質層を前記正極集電体上に形成する非水系二次電池用正極の製造方法である。
【0037】
上記酸化グラフェン及びグラフェンは、一辺の長さが50nm以上100μm以下、好ま
しくは800nm以上20μm以下であると好ましい。
【0038】
上記製造方法において、正極ペーストは還元雰囲気又は減圧下において乾燥させる。これ
により、正極ペーストに含まれる分散媒を揮発させ、正極ペーストに含まれる酸化グラフ
ェンを還元させることができる。
【0039】
また、上記製造方法において、混合物に結着剤を添加して混練する際に、さらに分散媒を
添加することで、正極ペーストの粘度を調整することができる。
【0040】
正極活物質は、炭素に対する酸素の重量比が0.405以上である酸化グラフェンが分散
された分散媒中に添加する。これを混練することでグラフェンの分散性の高い正極活物質
層を形成する。酸化グラフェンは、正極活物質、導電助剤及び結着剤の混合物である正極
ペーストの総重量に対して、少なくとも2wt%(重量パーセント)の割合で含まれてい
ればよい。一方、正極ペーストを集電体に塗布し、還元した後のグラフェンは、正極活物
質層の総重量に対して、少なくとも1wt%の割合で含まれていればよい。これは、酸化
グラフェンの還元により、グラフェンの重量がほぼ半減するためである。
【0041】
具体的には、正極ペーストの段階で、正極ペーストの総量に対して、酸化グラフェンを2
wt%以上10wt%以下添加し、正極活物質を85wt%以上93wt%以下添加し、
結着剤を1wt%以上5wt%以下添加することが好ましい。また、正極ペーストを集電
体に塗布して酸化グラフェンを還元した正極活物質層の段階では、正極活物質層の総量に
対して、グラフェンを1wt%以上5wt%以下添加し、正極活物質を90wt%以上9
4wt%以下添加し、結着剤を1wt%以上5wt%以下添加することが好ましい。
【0042】
正極ペーストを正極集電体に塗布した後、還元雰囲気又は減圧下で乾燥させることにより
、酸化グラフェンに含まれる酸素を脱離させることで、グラフェンを含む正極活物質層を
形成することができる。なお、酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱離されず、一部の
酸素はグラフェンに残存していてもよい。
【0043】
グラフェンに酸素が含まれる場合、酸素の割合は、全体の2atomic%以上20at
omic%以下、好ましくは3atomic%以上15atomic%以下である。酸素
の割合が低い程、グラフェンの導電性を高めることができ、結果として電子伝導性の高い
ネットワークを形成することができる。また、酸素の割合を高める程、グラフェンにおい
て、イオンの通路となる間隙をより多く形成することができる。
【0044】
以上のように製造された正極と、負極と、電解液と、セパレータとを用いることにより、
非水系二次電池を製造することができる。
【発明の効果】
【0045】
少量の導電助剤で電子伝導性の高い活物質層を形成するための導電助剤の原料である酸化
グラフェンを提供することができる。
【0046】
また、該酸化グラフェンを導電助剤の原料に用いることで、少量の導電助剤で高い電子伝
導性を有する正極活物質層を含む非水系二次電池用正極を提供することができる。また、
少量の導電助剤で、充填量が高く高密度化された正極活物質層を含む非水系二次電池用正
極を提供することができる。
【0047】
また、該非水系二次電池用正極を用いることにより、電極体積当たりの容量が大きい非水
系二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図6】電気泳動法及び電気化学還元法を説明する図。
【
図14】導電助剤の原料に酸化グラフェンを用いた正極活物質層のSEM像。
【
図15】導電助剤の原料に酸化グラフェンを用いた正極活物質層のSEM像。
【
図16】導電助剤の原料に酸化グラフェンを用いた正極活物質層のSEM像。
【
図17】導電助剤の原料にRGOを用いた正極活物質層のSEM像。
【
図18】導電助剤の原料にグラフェンを用いた正極活物質層のSEM像。
【
図20】導電助剤の原料に酸化グラフェンを用いた正極活物質層のSEM像。
【
図21】導電助剤の原料に酸化グラフェンを用いた正極活物質層のSEM像。
【
図22】導電助剤の原料に酸化グラフェンを用いた正極活物質層のSEM像。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。ただし、実施の形態は多くの異
なる態様で実施することが可能であり、趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態
及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は
、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0050】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、膜の厚さ又は領域は、明瞭化
のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されるもので
はない。
【0051】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る非水系二次電池用正極について、
図3及び
図1
9を参照して説明する。
図3(A)に正極の斜視図を、
図3(B)に正極活物質層の平面
図を、
図3(C)及び
図19に、正極活物質層の縦断面図を示す。
【0052】
図3(A)は、正極200の斜視図である。
図3(A)では正極200を矩形のシート形
状で示しているが、正極200の形状はこれに限らず、任意の形状を適宜選択することが
できる。正極200は、正極ペーストを正極集電体201上に塗布した後、還元雰囲気又
は減圧下で乾燥させることで、正極活物質層202を形成することにより作製される。図
3(A)においては、正極活物質層202は正極集電体201の一方の面にのみ形成して
いるが、正極活物質層202は正極集電体201の両面に形成してもよい。また、正極活
物質層202は正極集電体201の全面に形成する必要はなく、正極タブと接続するため
の領域等、非塗布領域を適宜設ける。
【0053】
正極集電体201には、ステンレス、金、白金、亜鉛、鉄、銅、アルミニウム、チタン等
の金属、及びこれらの合金など、導電性の高く、リチウム等のキャリアイオンと合金化し
ない材料を用いることができる。また、シリコン、チタン、ネオジム、スカンジウム、モ
リブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を用いることがで
きる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成してもよい。シリ
コンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、チタン、ハフニ
ウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、コバルト、
ニッケル等がある。正極集電体201は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメ
タル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。正極集電体201は
、厚みが10μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
【0054】
図3(B)及び
図3(C)は、正極活物質層202の上面及び縦断面をそれぞれ示した模
式図である。正極活物質層202は、粒状の正極活物質203と、導電助剤としてのグラ
フェン204と、結着剤(バインダともいう。図示せず)と、を含む。
【0055】
正極活物質203は、原料化合物を所定の比率で混合し焼成した焼成物を、適当な手段に
より粉砕、造粒及び分級した、平均粒径や粒径分布を有する二次粒子からなる粒状の正極
活物質である。このため、
図3(B)及び
図3(C)においては、正極活物質203を模
式的に球で示しているが、この形状に限られるものではない。
【0056】
正極活物質203としては、リチウムイオンの挿入及び脱離が可能な材料を用いることが
でき、例えば、オリビン型の結晶構造、層状岩塩型の結晶構造、又はスピネル型の結晶構
造を有するリチウム含有複合酸化物等が挙げられる。
【0057】
オリビン型構造のリチウム含有複合酸化物としては、例えば、一般式LiMPO4(Mは
、Fe(II)、Mn(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上)で表される複合
酸化物が挙げられる。一般式LiMPO4の代表例としては、LiFePO4、LiNi
PO4、LiCoPO4、LiMnPO4、LiFeaNibPO4、LiFeaCob
PO4、LiFeaMnbPO4、LiNiaCobPO4、LiNiaMnbPO4(
a+bは1以下、0<a<1、0<b<1)、LiFecNidCoePO4、LiFe
cNidMnePO4、LiNicCodMnePO4(c+d+eは1以下、0<c<
1、0<d<1、0<e<1)、LiFefNigCohMniPO4(f+g+h+i
は1以下、0<f<1、0<g<1、0<h<1、0<i<1)等が挙げられる。
【0058】
特にLiFePO4は、安全性、安定性、高容量密度、高電位、初期酸化(充電)時に引
き抜けるリチウムイオンの存在等、正極活物質に求められる事項をバランスよく満たして
いるため、好ましい。
【0059】
層状岩塩型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物としては、例えば、コバルト酸リ
チウム(LiCoO2)、LiNiO2、LiMnO2、Li2MnO3、LiNi0.
8Co0.2O2等のNiCo系(一般式は、LiNixCo1-xO2(0<x<1)
)、LiNi0.5Mn0.5O2等のNiMn系(一般式は、LiNixMn1-xO
2(0<x<1))、LiNi1/3Mn1/3Co1/3O2等のNiMnCo系(N
MCともいう。一般式は、LiNixMnyCo1-x-yO2(x>0、y>0、x+
y<1))が挙げられる。さらに、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)O2、
Li2MnO3-LiMO2(M=Co、Ni、Mn)等も挙げられる。
【0060】
特に、LiCoO2は、容量が大きい、LiNiO2に比べて大気中で安定である、Li
NiO2に比べて熱的に安定である等の利点があるため、好ましい。
【0061】
スピネル型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物としては、例えば、LiMn2O
4、Li1+xMn2-xO4、Li(MnAl)2O4、LiMn1.5Ni0.5O
4等が挙げられる。
【0062】
LiMn2O4等のマンガンを含むスピネル型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化
物に、少量のニッケル酸リチウム(LiNiO2やLiNi1-xMO2(M=Co、A
l等))を混合すると、マンガンの溶出を抑制する、電解液の分解を抑制する等の利点が
あり好ましい。
【0063】
また、正極活物質として、一般式Li(2-j)MSiO4(Mは、Fe(II)、Mn
(II)、Co(II)、Ni(II)の一以上、0≦j≦2)で表される複合酸化物を
用いることができる。一般式Li(2-j)MSiO4の代表例としては、Li(2-j
)FeSiO4、Li(2-j)NiSiO4、Li(2-j)CoSiO4、Li(2
-j)MnSiO4、Li(2-j)FekNilSiO4、Li(2-j)FekCo
lSiO4、Li(2-j)FekMnlSiO4、Li(2-j)NikColSiO
4、Li(2-j)NikMnlSiO4(k+lは1以下、0<k<1、0<l<1)
、Li(2-j)FemNinCoqSiO4、Li(2-j)FemNinMnqSi
O4、Li(2-j)NimConMnqSiO4(m+n+qは1以下、0<m<1、
0<n<1、0<q<1)、Li(2-j)FerNisCotMnuSiO4(r+s
+t+uは1以下、0<r<1、0<s<1、0<t<1、0<u<1)等が挙げられる
。
【0064】
また、正極活物質として、AxM2(XO4)3(A=Li、Na、Mg、M=Fe、M
n、Ti、V、Nb、Al、X=S、P、Mo、W、As、Si)の一般式で表されるナ
シコン型化合物を用いることができる。ナシコン型化合物としては、Fe2(MnO4)
3、Fe2(SO4)3、Li3Fe2(PO4)3等が挙げられる。また、正極活物質
として、Li2MPO4F、Li2MP2O7、Li5MO4(M=Fe、Mn)の一般
式で表される化合物、NaF3、FeF3等のペロブスカイト型フッ化物、TiS2、M
oS2等の金属カルコゲナイド(硫化物、セレン化物、テルル化物)、LiMVO4等の
逆スピネル型の結晶構造を有するリチウム含有複合酸化物、バナジウム酸化物系(V2O
5、V6O13、LiV3O8等)、マンガン酸化物系、有機硫黄系等の材料を用いるこ
とができる。
【0065】
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属
イオン、ベリリウムイオン、またはマグネシウムイオンの場合、正極活物質として、上記
リチウム化合物及びリチウム含有複合酸化物において、リチウムの代わりに、アルカリ金
属(例えば、ナトリウムやカリウム等)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、スト
ロンチウム、バリウム等)、ベリリウム、またはマグネシウムを用いてもよい。
【0066】
また、導電助剤として正極活物質層202に添加するグラフェン204は、炭素に対する
酸素の重量比が0.405以上である酸化グラフェンに還元処理を行うことによって、形
成される。
【0067】
炭素に対する酸素の重量比が0.405以上である酸化グラフェンは、Hummers法
と呼ばれる酸化法を用いて作製することができる。
【0068】
Hummers法は、グラファイト粉末に、過マンガン酸カリウムの硫酸溶液、過酸化水
素水等を加えて酸化反応させて酸化グラファイトを含む分散液を作製する。酸化グラファ
イトは、グラファイトの炭素の酸化により、エポキシ基、カルボニル基、カルボキシル基
、ヒドロキシル基等の官能基が結合する。このため、複数のグラフェンの層間距離がグラ
ファイトと比較して長くなり、層間の分離による薄片化が容易となる。次に、酸化グラフ
ァイトを含む分散液に、超音波振動を加えることで、層間距離が長い酸化グラファイトを
劈開し、酸化グラフェンを分離するとともに、酸化グラフェンを含む分散液を作製するこ
とができる。そして、酸化グラフェンを含む分散液から溶媒を取り除くことで、粉末状の
酸化グラフェンを得ることができる。
【0069】
ここで、炭素に対する酸素の重量比が0.405以上である酸化グラフェンは、過マンガ
ン酸カリウム等の酸化剤の量を適宜調整することで形成することができる。すなわち、グ
ラファイト粉末に対して酸化剤の量を増加させることで、酸化グラフェンの酸化度(炭素
に対する酸素の重量比)を高めることができる。従って、製造する酸化グラフェンの量に
合わせて、原料となるグラファイト粉末に対する酸化剤の量を決定すればよい。
【0070】
なお、酸化グラフェンの作製は過マンガン酸カリウムの硫酸溶液を用いたHummers
法に限られず、例えば硝酸、塩素酸カリウム、硝酸ナトリウム等を使用するHummer
s法、又はHummers法以外の酸化グラフェンの作製方法を適宜用いてもよい。
【0071】
また、酸化グラファイトの薄片化は、超音波振動の付加の他、マイクロ波やラジオ波、又
は熱プラズマの照射や、物理的応力の付加により行ってもよい。
【0072】
作製した酸化グラフェンは、エポキシ基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル
基等を有する。酸化グラフェンはNMPに代表される極性溶媒の中においては、官能基中
の酸素がマイナスに帯電するため、NMPと相互作用する一方で異なる酸化グラフェンど
うしとは反発し、凝集しにくい。このため、極性溶媒中においては、酸化グラフェンが均
一に分散しやすい。
【0073】
また、酸化グラフェンの一辺の長さ(フレークサイズともいう。)は50nm以上100
μm以下、好ましくは800nm以上20μm以下である。特にフレークサイズが粒状の
正極活物質203の平均粒径よりも小さい場合、複数の正極活物質203との面接触がし
にくくなるとともに、グラフェン相互の接続が難しくなるため、正極活物質層202の電
子伝導性を向上させることが困難となる。
【0074】
図3(B)に示す正極活物質層202の上面図のように、複数の粒状の正極活物質203
は、複数のグラフェン204によって被覆されている。一枚のシート状のグラフェン20
4は、複数の粒状の正極活物質203と接続する。特に、グラフェン204がシート状で
あるため、粒状の正極活物質203の表面の一部を包むように面接触することができる。
正極活物質と点接触するアセチレンブラック等の粒状の導電助剤と異なり、グラフェン2
04は接触抵抗の低い面接触を可能とするものであるから、導電助剤の量を増加させるこ
となく、粒状の正極活物質203とグラフェン204との電子伝導性を向上させるができ
る。
【0075】
また、複数のグラフェン204どうしも面接触している。これはグラフェン204の形成
に、極性溶媒中での分散性が極めて高い酸化グラフェンを用いるためである。均一に分散
した酸化グラフェンを含有する分散媒から溶媒を揮発除去し、酸化グラフェンを還元して
グラフェンとするため、正極活物質層202に残留するグラフェン204は部分的に重な
り合い、互いに面接触する程度に分散していることで電子伝導の経路を形成している。
【0076】
図3(B)に示す正極活物質層202の上面図において、グラフェン204は必ずしも正
極活物質層202の表面でのみ他のグラフェンと重なり合うものではなく、グラフェン2
04の一部は正極活物質層202の内部へ潜りこむ等、三次元的に配置されるように形成
されている。また、グラフェン204は炭素分子の単層又はこれらの積層で構成される極
めて薄い膜(シート)であるため、個々の粒状の正極活物質203の表面をなぞるように
その表面の一部を覆って接触しており、正極活物質203と接していない部分は複数の粒
状の正極活物質203の間で撓み、皺となり、あるいは引き延ばされて張った状態を呈す
る。
【0077】
正極活物質層202の縦断面においては、
図3(C)に示すように、正極活物質層202
の内部において概略均一にシート状のグラフェン204が分散する。
図3(C)において
はグラフェン204を模式的に太線で表しているが、実際には炭素分子の単層又は多層の
厚みを有する薄膜である。正極活物質層202の上面についての説明と同様に、複数のグ
ラフェン204は、複数の粒状の正極活物質203を包むように、あるいは覆うように形
成されているため、互いに面接触している。また、グラフェン204どうしも互いに面接
触することで複数のグラフェン204により電子伝導のネットワークを形成している。図
3(C)をさらに拡大した模式図が
図19である。複数の粒状の正極活物質203の表面
上に張り付くようにグラフェン204が被覆するとともに、グラフェンどうしもまた接触
してネットワークを形成している。
【0078】
図3(B)、
図3(C)及び
図19で示したように、シート状の複数のグラフェン204
は正極活物質層202の内部において三次元的に分散しており、これらが互いに面接触す
ることで、三次元の電子伝導性のネットワークを形成している。また、それぞれのグラフ
ェン204は、複数の粒状の正極活物質203を被覆し面接触している。このため正極活
物質203どうしの結合が維持されている。以上のことから、炭素に対する酸素の重量比
が0.405以上である酸化グラフェンを原料とし、ペーストの形成後に還元したグラフ
ェンを導電助剤として用いることで、高い電子伝導性を有する正極活物質層202を形成
することができる。
【0079】
また、正極活物質203とグラフェン204との接触点を増やすために、導電助剤の添加
量を増加させなくてもよいため、正極活物質203の正極活物質層202における比率を
増加させることができる。これにより、二次電池の放電容量を増加させることができる。
【0080】
粒状の正極活物質203の一次粒子の平均粒径は、500nm以下、好ましくは50nm
以上500nm以下のものを用いるとよい。この粒状の正極活物質203の複数と面接触
するために、グラフェン204は一辺の長さが50nm以上100μm以下、好ましくは
800nm以上20μm以下であると好ましい。
【0081】
また、正極活物質層202に含まれる結着剤(バインダ)には、代表的なポリフッ化ビニ
リデン(PVDF)の他、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルクロラ
イド、エチレンプロピレンジエンポリマー、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリ
ル-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエ
チレン、ニトロセルロース等を用いることができる。
【0082】
以上に示した正極活物質層202は、正極活物質203、導電助剤としてのグラフェン2
04及び結着剤を、正極活物質層202の総量に対して、それぞれ正極活物質203を9
0wt%以上94wt%以下、グラフェンを1wt%以上5wt%以下、結着剤を1wt
%以上5wt%以下の割合で含有することが好ましい。
【0083】
本実施の形態に示すように、粒状の正極活物質203の平均粒径よりも大きいグラフェン
204が、正極活物質層202中において、隣接する他のグラフェン204の一以上と互
いに面接触する程度に分散し、粒状の正極活物質203の表面の一部を包むように面接触
していることで、少量の導電助剤で、充填量が高く高密度化された正極活物質層を含む非
水系二次電池用正極を提供することができる。
【0084】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0085】
(実施の形態2)
次に、上述した正極活物質、導電助剤、結着剤、分散媒を用いて、正極ペーストを作製し
、該正極ペーストを正極集電体201上に塗布して、還元雰囲気又は減圧下で乾燥させる
ことで、正極活物質層202を含む正極200を製造する方法について、
図4を参照して
説明する。
【0086】
まず、分散媒としてNMPを用意し(ステップS11)、NMP中に実施の形態1で説明
した炭素に対する酸素の重量比が0.405以上である酸化グラフェンを分散させる(ス
テップS12)。正極ペーストの総量に対して、酸化グラフェンの量が2wt%未満であ
ると、正極活物質層202が形成された際に導電性が低下する。また、酸化グラフェンの
量が10wt%を超えると、正極活物質の粒径にもよるが、正極ペーストの粘度が高くな
る。また、正極ペーストを正極集電体201に塗布した後の乾燥工程の際に、加熱により
正極ペースト中で対流が生じ、軽くて薄い酸化グラフェンが移動・凝集することで、正極
活物質層202がひび割れたり、正極活物質層202が正極集電体201から剥がれたり
するおそれがある。したがって、酸化グラフェンの量は、正極ペースト(正極活物質、導
電助剤、及び結着剤の総重量)に対して2wt%~10wt%とするとよい。なお、酸化
グラフェンは、後の熱処理工程によって還元されてグラフェンとなり重量がほぼ半減する
ため、正極活物質層202中の重量比は1wt%~5wt%となる。
【0087】
次に、正極活物質として、リン酸鉄リチウムを添加する(ステップS13)。リン酸鉄リ
チウムの一次粒子の平均粒径は、50nm以上500nm以下のものを用いるとよい。添
加するリン酸鉄リチウムの量は、正極ペーストの総量に対して、85wt%以上とすれば
よく、例えば、85wt%以上93wt%以下とすればよい。
【0088】
なお、リン酸鉄リチウムの焼成時にグルコース等の炭水化物を混合して、リン酸鉄リチウ
ムの粒子にカーボンを被覆してもよい。この処理により導電性が高まる。
【0089】
次に、これらの混合物に固練り(高粘度の状態で混練)を行うことで、酸化グラフェン及
びリン酸鉄リチウムの凝集をほどくことができる。また、酸化グラフェンは、官能基を有
するため、極性溶媒中においては、官能基中の酸素がマイナスに帯電するため、異なる酸
化グラフェンどうしで凝集しにくい。また、酸化グラフェンは、リン酸鉄リチウムとの相
互作用が強い。このため、リン酸鉄リチウム中に酸化グラフェンをより均一に分散させる
ことができる。
【0090】
次に、これらの混合物に、結着剤としてPVDFを添加する(ステップS14)。PVD
Fの量は、酸化グラフェン及びリン酸鉄リチウムの量によって設定すればよく、正極ペー
ストに対して、1wt%以上5wt%以下添加すればよい。酸化グラフェンが、複数の正
極活物質粒子と面接触するように均一に分散されている状態で、結着剤を添加することに
より、分散状態を維持したまま、正極活物質と酸化グラフェンとを結着することができる
。また、リン酸鉄リチウムと酸化グラフェンの割合によっては、結着剤を添加しなくても
よいが、結着剤を添加した場合には正極の強度を向上させることができる。
【0091】
次に、これらの混合物に、所定の粘度になるまでNMPを添加し(ステップS15)、混
練することで正極ペーストを作製することができる(ステップS16)。以上の工程で、
正極ペーストを作製することによって、酸化グラフェン、正極活物質、及び結着剤の混練
状態が均一な正極ペーストを作製することができる。
【0092】
次に、正極集電体201上に、正極ペーストを塗布する(ステップS17)。
【0093】
次に、正極集電体201上に塗布された正極ペーストを乾燥させる(ステップS18)。
乾燥工程は、60℃~170℃、1分~10時間加熱することにより、NMPを蒸発させ
ることによって行う。なお、雰囲気は特に限定されない。
【0094】
次に、正極ペーストに対して還元雰囲気または減圧下にて乾燥を行う(ステップS19)
。還元雰囲気又は減圧下とし、温度を130℃~200℃、10時間~30時間加熱する
ことにより、正極ペーストに残ったNMPや水を蒸発させ、酸化グラフェンに含まれる酸
素を脱離させる。これにより、酸化グラフェンをグラフェンとすることができる。なお、
酸化グラフェンに含まれる酸素は全て脱離されず、一部の酸素は、グラフェンに残存して
もよい。
【0095】
以上の工程により、正極活物質203にグラフェン204が均一に分散された正極活物質
層202を含む正極200を作製することができる。なお、乾燥工程の後、正極200に
対して、加圧工程を行っても良い。
【0096】
本実施の形態で説明したように、炭素に対する酸素の重量比が0.405以上である酸化
グラフェンが分散された分散媒に、正極活物質を添加し、混練することで、正極活物質中
に酸化グラフェンを均一に分散することができる。酸化グラフェンが、複数の正極活物質
粒子と接するように分散された状態で、結着剤を添加することで、酸化グラフェンと複数
の正極活物質粒子との接触を阻害することなく、結着剤を均一に分散させることができる
。このようにして作製された正極ペーストを用いることで、正極活物質の充填量が高く、
高密度化された正極活物質層を含む正極を作製することができる。また、該正極を用いて
、電池を作製することで、高容量の非水系二次電池を製造することができる。さらに、結
着剤によって、シート状のグラフェンが、複数の正極活物質と接した状態を維持させるこ
とができるため、正極活物質とグラフェンとの剥離を抑制することができるため、サイク
ル特性の良好な非水系二次電池を製造することができる。
【0097】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0098】
(実施の形態3)
本実施の形態では、非水系二次電池の構造及びその製造方法について、
図5及び
図6を参
照して説明する。
【0099】
図5(A)は、コイン型(単層偏平型)の非水系二次電池の外観図であり、
図5(B)は
、その断面図である。
【0100】
コイン型の二次電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶
302とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている。
正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306
により形成される。また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設け
られた負極活物質層309により形成される。正極活物質層306と負極活物質層309
との間には、セパレータ310と、電解質(図示せず)とを有する。
【0101】
正極304は、実施の形態1及び実施の形態2に示す正極200を用いることができる。
【0102】
負極307は、負極集電体308上に、CVD法、スパッタリング法、または塗布法によ
り、負極活物質層309を形成することで、形成される。
【0103】
負極集電体308には、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン等の金属、及びアルミニウ
ム-ニッケル合金、アルミニウム-銅合金など、導電性の高い材料を用いることができる
。負極集電体308は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチングメタル状、エキスパ
ンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。負極集電体308は、厚みが10μm
以上30μm以下のものを用いるとよい。
【0104】
負極活物質としては、リチウムの溶解・析出、又はリチウムイオンの挿入・脱離が可能な
材料を用いることができ、例えば、リチウム金属、炭素系材料、合金系材料等が挙げられ
る。
【0105】
リチウム金属は、酸化還元電位が低く(標準水素電極に対して-3.045V)、重量及
び体積当たりの比容量が大きい(それぞれ3860mAh/g、2062mAh/cm3
)ため、好ましい。
【0106】
炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハー
ドカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等が挙げられる。
【0107】
黒鉛としては、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ
系人造黒鉛等の人造黒鉛や、球状化天然黒鉛等の天然黒鉛が挙げられる。
【0108】
黒鉛はリチウムイオンが黒鉛に挿入したとき(リチウム-黒鉛層間化合物の生成時)にリ
チウム金属と同程度に卑な電位を示す(0.1~0.3V vs.Li/Li+)。これ
により、リチウムイオン電池は高い作動電圧を示すことができる。さらに、黒鉛は、単位
体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が小さい、安価である、リチウム金属に比べて
安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
【0109】
負極活物質として、リチウム金属との合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うこと
が可能な合金系材料も用いることができる。例えば、Al、Si、Ge、Sn、Pb、S
b、Bi、Ag、Zn、Cd、In、Ga等のうち少なくとも一つを含む材料が挙げられ
る。このような元素は炭素に対して容量が大きく、特にシリコンは理論容量が4200m
Ah/gと飛躍的に高い。このため、負極活物質にシリコンを用いることが好ましい。こ
のような元素を用いた合金系材料としては、例えば、SiO、Mg2Si、Mg2Ge、
SnO、SnO2、Mg2Sn、SnS2、V2Sn3、FeSn2、CoSn2、Ni
3Sn2、Cu6Sn5、Ag3Sn、Ag3Sb、Ni2MnSb、CeSb3、La
Sn3、La3Co2Sn7、CoSb3、InSb、SbSn等が挙げられる。
【0110】
また、負極活物質として、二酸化チタン(TiO2)、リチウムチタン酸化物(Li4T
i5O12)、リチウム-黒鉛層間化合物(LixC6)、五酸化ニオブ(Nb2O5)
、酸化タングステン(WO2)、酸化モリブデン(MoO2)等の酸化物を用いることが
できる。
【0111】
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、Li3N型構造をもつ
Li3-xMxN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.6
Co0.4N3は大きな充放電容量(900mAh/g)を示し好ましい。
【0112】
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため、
正極活物質としてリチウムイオンを含まないV2O5、Cr3O8等の材料と組み合わせ
ることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合でも
、あらかじめリチウムイオンを脱離させることでリチウムと遷移金属の複窒化物を用いる
ことができる。
【0113】
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例えば
、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウム
と合金化反応を行わない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反
応が生じる材料としては、さらに、Fe2O3、CuO、Cu2O、RuO2、Cr2O
3等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn3N2、Cu3N、G
e3N4等の窒化物、NiP2、FeP2、CoP3等のリン化物、FeF3、BiF3
等のフッ化物でも起こる。なお、上記フッ化物の電位は高いため、正極活物質として用い
てもよい。
【0114】
塗布法を用いて負極活物質層309を形成する場合は、負極活物質に、導電助剤や結着剤
を添加して、負極ペーストを作製し、負極集電体308上に塗布して乾燥させればよい。
【0115】
また、負極活物質として、シリコンを用いて負極活物質層309を形成する場合は、負極
活物質層309の表面に、グラフェンを形成することが好ましい。シリコンは、充放電サ
イクルにおけるキャリアイオンの吸蔵・放出に伴う体積の変化が大きいため、負極集電体
308と負極活物質層309との密着性が低下し、充放電により電池特性が劣化してしま
う。そこで、シリコンを含む負極活物質層309の表面にグラフェンを形成することによ
り、充放電サイクルにおいて、シリコンの体積が変化したとしても、負極集電体308と
負極活物質層309との密着性の低下を抑制することができ、電池特性の劣化が低減され
るため好ましい。
【0116】
負極活物質層309表面に形成するグラフェンは、正極の作製方法と同様に、酸化グラフ
ェンを還元することによって形成することができる。該酸化グラフェンは、実施の形態1
で説明した酸化グラフェンを用いることができる。
【0117】
負極活物質層309に、電気泳動法を用いて酸化グラフェンを形成する方法について、図
6(A)を参照して説明する。
【0118】
図6(A)は電気泳動法を説明するための断面図である。容器401には、実施の形態1
で説明した分散媒に酸化グラフェンを分散させた分散液(以下、酸化グラフェン分散液4
02という。)が入っている。また、酸化グラフェン分散液402中に被形成物403を
設けて、これを陽極とする。また、酸化グラフェン分散液402中に陰極となる導電体4
04を設ける。なお、被形成物403は、負極集電体308及びその上に形成された負極
活物質層309とする。また、導電体404は、導電性を有する材料、例えば、金属材料
又は合金材料とすればよい。
【0119】
陽極と陰極の間に適切な電圧を加えることで、被形成物403の表面、すなわち、負極活
物質層309の表面に酸化グラフェンの層が形成される。これは、酸化グラフェンは、上
記したように極性溶媒中において負に帯電するため、電圧を加えることで負に帯電した酸
化グラフェンは陽極に引き寄せられ、被形成物403に付着するからである。酸化グラフ
ェンの負の帯電は、酸化グラフェンが有するヒドロキシル基、カルボキシル基等の置換基
から水素イオンが離脱していることに由来し、物体と当該置換基とが結合することで中性
化する。なお、加える電圧は一定でなくてもよい。また、陽極と陰極の間を流れる電荷量
を測定することで、物体に付着した酸化グラフェンの層の厚さを見積もることができる。
【0120】
陽極と陰極の間に加える電圧は、0.5V乃至2.0Vの範囲とすると良い。より好まし
くは、0.8V乃至1.5Vである。例えば陽極と陰極の間に加える電圧を1Vとすると
、被形成物と酸化グラフェンの層との間に陽極酸化の原理により生じうる酸化膜が、形成
されにくい。
【0121】
必要な厚さの酸化グラフェンが得られたら、被形成物403を酸化グラフェン分散液40
2から引き上げ、乾燥させる。
【0122】
電気泳動法による酸化グラフェンの電着において、酸化グラフェンで既に覆われている部
分にさらに酸化グラフェンが積層することは少ない。これは、酸化グラフェンの導電率が
十分に低いためである。一方、まだ酸化グラフェンに覆われていない部分には、酸化グラ
フェンが優先的に積層される。このため、被形成物403の表面に形成される酸化グラフ
ェンの厚さは実用的に均一な厚さになる。
【0123】
電気泳動を行う時間(電圧を加える時間)は、被形成物403の表面が酸化グラフェンに
覆われるのにかかる時間より長時間行えばよく、例えば、0.5分以上30分以下、好ま
しくは5分以上20分以下とすればよい。
【0124】
電気泳動法を用いると、イオン化した酸化グラフェンを電気的に活物質まで移動させるこ
とができるため、負極活物質層309の表面に凹凸を有していても、酸化グラフェンを均
一に設けることが可能である。
【0125】
次に、還元処理を行い、形成された酸化グラフェンから酸素の一部を脱離させる。還元処
理としてはグラフェンを用いた実施の形態1で説明した、加熱による還元処理等を行って
も良いが、ここでは電気化学的な還元処理(以下、電気化学還元という。)について説明
する。
【0126】
酸化グラフェンの電気化学還元は、加熱処理による還元とは異なり、電気エネルギーを用
いた還元である。
図6(B)に示すように負極活物質層309上に設けた酸化グラフェン
を有する負極を導電体407として用いて閉回路を構成し、この導電体407に当該酸化
グラフェンの還元反応が生じる電位、又は当該酸化グラフェンが還元される電位を供給し
、当該酸化グラフェンをグラフェンに還元する。なお、本明細書では、酸化グラフェンの
還元反応が生じる電位、又は当該酸化グラフェンが還元される電位を還元電位という。
【0127】
図6(B)を用いて酸化グラフェンの還元方法を具体的に記述する。容器405に電解液
406を満たし、そこに酸化グラフェンを有する導電体407と、対極408とを挿入し
、浸漬させる。次に、酸化グラフェンを有する導電体407を作用極とし、他に少なくと
も対極408及び電解液406を用いて電気化学セル(開回路)を組み、当該導電体40
7(作用極)の電位に酸化グラフェンの還元電位を供給し、当該酸化グラフェンをグラフ
ェンに還元する。なお、供給する還元電位は、対極408を基準にした場合の還元電位、
又は電気化学セルに参照極を設けて、当該参照極を基準にした場合の還元電位とする。例
えば、対極408及び参照極をリチウム金属とする場合、供給する還元電位はリチウム金
属の酸化還元電位を基準とした還元電位(vs.Li/Li
+)となる。本工程によって
、電気化学セル(閉回路)には、酸化グラフェンが還元される際に還元電流が流れる。そ
のため、酸化グラフェンの還元を確認するには、当該還元電流を連続的に確認すればよく
、還元電流が一定値を下回った状態(還元電流に対応するピークが消失した状態)を、酸
化グラフェンが還元された状態(還元反応が終了した状態)とすればよい。
【0128】
また、当該導電体407の電位を制御する際は、酸化グラフェンの還元電位以下に固定す
るだけではなく、酸化グラフェンの還元電位を含んで掃引してもよく、さらに当該掃引は
、サイクリックボルタンメトリのように周期的に繰り返してもよい。また、当該導電体4
07の電位の掃引速度に限定はない。なお、当該導電体407の電位の掃引を行う場合は
、高電位側から低電位側に掃引してもよいし、低電位側から高電位側に掃引してもよい。
【0129】
酸化グラフェンの還元電位は、その酸化グラフェンの構成(官能基の有無など)、及び電
位制御の仕方(掃引速度など)によって値が多少異なるが、約2.0V(vs.Li/L
i+)程度である。具体的には、1.6V以上2.4V以下(vs.Li/Li+)の範
囲で上記導電体407の電位を制御すればよい。
【0130】
以上の工程により、導電体407上にグラフェンを形成することができる。電気化学的還
元処理を行った場合、加熱処理によって形成したグラフェンに比べてsp2結合である二
重結合の炭素-炭素結合を有する割合が増大するため、導電性の高いグラフェンを負極活
物質層309上に形成することができる。
【0131】
なお、導電体407上にグラフェンを形成した後、負極活物質層309にグラフェンを介
してリチウムをプレドープしてもよい。リチウムのプレドープ方法としては、スパッタリ
ング法により負極活物質層309表面にリチウム層を形成してもよい。または、負極活物
質層309の表面にリチウム箔を設けることで、負極活物質層309にリチウムをプレド
ープすることができる。
【0132】
セパレータ310は、セルロース(紙)、または空孔が設けられたポリプロピレン、ポリ
エチレン等の絶縁体を用いることができる。
【0133】
電解液は、電解質として、キャリアイオンを有する材料を用いる。電解質の代表例として
は、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiPF6、Li(C2F5SO2)2
N等のリチウム塩がある。
【0134】
なお、キャリアイオンが、リチウムイオン以外のアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属
イオン、ベリリウムイオン、またはマグネシウムイオンの場合、電解質として、上記リチ
ウム塩において、リチウムの代わりに、アルカリ金属(例えば、ナトリウムやカリウム等
)、アルカリ土類金属(例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等)、ベリリウ
ム、またはマグネシウムを用いてもよい。
【0135】
また、電解液の溶媒としては、キャリアイオンの移送が可能な材料を用いる。電解液の溶
媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましい。非プロトン性有機溶媒の代表例としては
、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジ
エチルカーボネート(DEC)、γーブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタ
ン、テトラヒドロフラン等があり、これらの一つまたは複数を用いることができる。また
、電解液の溶媒としてゲル化される高分子材料を用いることで、漏液性等に対する安全性
が高まる。また、非水系二次電池の薄型化及び軽量化が可能である。ゲル化される高分子
材料の代表例としては、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル、ポリエ
チレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、フッ素系ポリマー等がある。また、電解
液の溶媒として、難燃性及び難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つまたは複数
用いることで、二次電池の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、二次電
池の破裂や発火などを防ぐことができる。
【0136】
また、電解液の代わりに、硫化物系や酸化物系等の無機物材料を有する固体電解質や、P
EO(ポリエチレンオキシド)系等の高分子材料を有する固体電解質を用いることができ
る。固体電解質を用いる場合には、セパレータやスペーサの設置が不要となる。また、電
池全体を固体化できるため、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上する。
【0137】
正極缶301、負極缶302には、二次電池の充放電時において電解液などの液体に対し
て耐腐食性を有するニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、当該金属の合金、当該金
属と他の金属との合金(例えば、ステンレスなど)、当該金属の積層、当該金属と前掲し
た合金との積層(例えば、ステンレス\アルミニウムなど)、当該金属と他の金属との積
層(例えば、ニッケル\鉄\ニッケルなど)を用いることができる。正極缶301は正極
304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
【0138】
これら負極307、正極304及びセパレータ310を電解質に含浸させ、
図5(B)に
示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極
缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して
圧着してコイン形の二次電池300を製造する。
【0139】
次に、ラミネート型の二次電池の一例について、
図7を参照して説明する。
【0140】
図7に示すラミネート型の二次電池500は、正極集電体501および正極活物質層50
2を有する正極503と、負極集電体504および負極活物質層505を有する負極50
6と、セパレータ507と、電解液508と、外装体509と、を有する。外装体509
内に設けられた正極503と負極506との間にセパレータ507が設置されている。ま
た、外装体509内は、電解液508で満たされている。
【0141】
図7に示すラミネート型の二次電池500において、正極集電体501および負極集電体
504は、外部との電気的接触を得る端子の役割も兼ねている。そのため、正極集電体5
01および負極集電体504の一部は、外装体509から外側に露出するように配置され
る。
【0142】
ラミネート型の二次電池500において、外装体509には、例えばポリエチレン、ポリ
プロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、ア
ルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該金
属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成樹
脂膜を設けた三層構造のラミネートフィルムを用いることができる。このような三層構造
とすることで、電解液や気体の透過を遮断するとともに、絶縁性を確保し、併せて耐電解
液性を有する。
【0143】
次に、円筒型の二次電池の一例について、
図8を参照して説明する。円筒型の二次電池6
00は
図8(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面及び
底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)6
02とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
【0144】
図8(B)は、円筒型の二次電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池缶
602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲
回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に捲
回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には
、二次電池の充放電時において電解液などの液体に対して耐腐食性を有するニッケル、ア
ルミニウム、チタン等の金属、当該金属の合金、当該金属と他の金属との合金(例えば、
ステンレスなど)、当該金属の積層、当該金属と前掲した合金との積層(例えば、ステン
レス\アルミニウムなど)、当該金属と他の金属との積層(例えば、ニッケル\鉄\ニッ
ケルなど)を用いることができる。電池缶602の内側において、正極、負極及びセパレ
ータが捲回された電池素子は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている
。また、電池素子が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入さ
れている。非水電解液は、コイン形やラミネート型の非水系二次電池と同様のものを用い
ることができる。
【0145】
正極604及び負極606は、上述したコイン形の非水系二次電池の正極及び負極と同様
に製造すればよいが、円筒型の非水系二次電池に用いる正極及び負極は捲回するため、集
電体の両面に活物質を形成する点において異なる。正極604には正極端子(正極集電リ
ード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続され
る。正極端子603及び負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いる
ことができる。正極端子603は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の
底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構612は、PTC素子(Positive T
emperature Coefficient)611を介して正極キャップ601と
電気的に接続されている。安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場
合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、
PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増
大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バ
リウム(BaTiO3)系半導体セラミックス等を用いることができる。
【0146】
なお、本実施の形態では、二次電池として、コイン形、ラミネート型及び円筒型の非水系
二次電池を示したが、その他の封止型非水系二次電池、角型非水系二次電池等様々な形状
の非水系二次電池を用いることができる。また、正極、負極、及びセパレータが複数積層
された構造、正極、負極、及びセパレータが捲回された構造であってもよい。
【0147】
本実施の形態で示す二次電池300、二次電池500、二次電池600の正極には、本発
明の一態様に係る正極が用いられている。そのため、二次電池300、二次電池500、
二次電池600の放電容量を高めることができる。
【0148】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0149】
(実施の形態4)
本発明の一態様に係る非水系二次電池は、電力により駆動する様々な電気機器の電源とし
て用いることができる。
【0150】
本発明の一態様に係る非水系二次電池を用いた電気機器の具体例として、テレビ、モニタ
等の表示装置、照明装置、デスクトップ型あるいはノート型のパーソナルコンピュータ、
ワードプロセッサ、DVD(Digital Versatile Disc)などの記
録媒体に記憶された静止画又は動画を再生する画像再生装置、ポータブルCDプレーヤ、
ラジオ、テープレコーダ、ヘッドホンステレオ、ステレオ、置き時計、壁掛け時計、コー
ドレス電話子機、トランシーバ、携帯無線機、携帯電話、自動車電話、携帯型ゲーム機、
電卓、携帯情報端末、電子手帳、電子書籍、電子翻訳機、音声入力機器、ビデオカメラ、
デジタルスチルカメラ、玩具、電気シェーバ、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯
器、電気洗濯機、電気掃除機、温水器、扇風機、毛髪乾燥機、エアコンディショナ、加湿
器、除湿器などの空調設備、食器洗い器、食器乾燥器、衣類乾燥器、布団乾燥器、電気冷
蔵庫、電気冷凍庫、電気冷凍冷蔵庫、DNA保存用冷凍庫、懐中電灯、チェーンソー等の
電動工具、煙感知器、透析装置等の医療機器などが挙げられる。さらに、誘導灯、信号機
、ベルトコンベア、エレベータ、エスカレータ、産業用ロボット、電力貯蔵システム、電
力の平準化やスマートグリッドのための蓄電装置等の産業機器が挙げられる。また、非水
系二次電池からの電力を用いて電動機により推進する移動体なども、電気機器の範疇に含
まれるものとする。上記移動体として、例えば、電気自動車(EV)、内燃機関と電動機
を併せ持ったハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、これ
らのタイヤ車輪を無限軌道に変えた装軌車両、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車
、自動二輪車、電動車椅子、ゴルフ用カート、小型又は大型船舶、潜水艦、ヘリコプター
、航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機や惑星探査機、宇宙船などが挙げられる。
【0151】
なお、上記電気機器は、消費電力の殆ど全てを賄うための主電源として、本発明の一態様
に係る非水系二次電池を用いることができる。あるいは、上記電気機器は、上記主電源や
商用電源からの電力の供給が停止した場合に、電気機器への電力の供給を行うことができ
る無停電電源として、本発明の一態様に係る非水系二次電池を用いることができる。ある
いは、上記電気機器は、上記主電源や商用電源からの電気機器への電力の供給と並行して
、電気機器への電力の供給を行うための補助電源として、本発明の一態様に係る非水系二
次電池を用いることができる。
【0152】
図9に、上記電気機器の具体的な構成を示す。
図9において、表示装置700は、本発明
の一態様に係る非水系二次電池704を用いた電気機器の一例である。具体的に、表示装
置700は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体701、表示部702、スピーカ
部703、非水系二次電池704等を有する。本発明の一態様に係る非水系二次電池70
4は、筐体701の内部に設けられている。表示装置700は、商用電源から電力の供給
を受けることもできるし、非水系二次電池704に蓄積された電力を用いることもできる
。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態
様に係る非水系二次電池704を無停電電源として用いることで、表示装置700の利用
が可能となる。
【0153】
表示部702には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発光装
置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Devic
e)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field E
mission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
【0154】
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用など
、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0155】
図9において、据え付け型の照明装置710は、本発明の一態様に係る非水系二次電池7
13を用いた電気機器の一例である。具体的に、照明装置710は、筐体711、光源7
12、非水系二次電池713等を有する。
図9では、非水系二次電池713が、筐体71
1及び光源712が据え付けられた天井714の内部に設けられている場合を例示してい
るが、非水系二次電池713は、筐体711の内部に設けられていても良い。照明装置7
10は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、非水系二次電池713に蓄積
された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受
けられない時でも、本発明の一態様に係る非水系二次電池713を無停電電源として用い
ることで、照明装置710の利用が可能となる。
【0156】
なお、
図9では天井714に設けられた据え付け型の照明装置710を例示しているが、
本発明の一態様に係る非水系二次電池は、天井714以外、例えば側壁715、床716
、窓717等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓上型の照明
装置などに用いることもできる。
【0157】
また、光源712には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることができる
。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発光素
子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
【0158】
図9において、室内機720及び室外機724を有するエアコンディショナは、本発明の
一態様に係る非水系二次電池723を用いた電気機器の一例である。具体的に、室内機7
20は、筐体721、送風口722、非水系二次電池723等を有する。
図9では、非水
系二次電池723が、室内機720に設けられている場合を例示しているが、非水系二次
電池723は室外機724に設けられていても良い。あるいは、室内機720と室外機7
24の両方に、非水系二次電池723が設けられていても良い。エアコンディショナは、
商用電源から電力の供給を受けることもできるし、非水系二次電池723に蓄積された電
力を用いることもできる。特に、室内機720と室外機724の両方に非水系二次電池7
23が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時で
も、本発明の一態様に係る非水系二次電池723を無停電電源として用いることで、エア
コンディショナの利用が可能となる。
【0159】
なお、
図9では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナを例示
しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコンディ
ショナに、本発明の一態様に係る非水系二次電池を用いることもできる。
【0160】
図9において、電気冷凍冷蔵庫730は、本発明の一態様に係る非水系二次電池734を
用いた電気機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫730は、筐体731、冷蔵室
用扉732、冷凍室用扉733、非水系二次電池734等を有する。
図9では、非水系二
次電池734が、筐体731の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫730は、商用電
源から電力の供給を受けることもできるし、非水系二次電池734に蓄積された電力を用
いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時で
も、本発明の一態様に係る非水系二次電池734を無停電電源として用いることで、電気
冷凍冷蔵庫730の利用が可能となる。
【0161】
なお、上述した電気機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電気
機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補助
するための補助電源として、本発明の一態様に係る非水系二次電池を用いることで、電気
機器の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
【0162】
また、電気機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量の
うち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、非水
系二次電池に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを
抑えることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫730の場合、気温が低く、冷蔵室用扉7
32、冷凍室用扉733の開閉が行われない夜間において、非水系二次電池734に電力
を蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉732、冷凍室用扉733の開閉が行わ
れる昼間において、非水系二次電池734を補助電源として用いることで、昼間の電力使
用率を低く抑えることができる。
【0163】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0164】
(実施の形態5)
次に、電気機器の一例である携帯情報端末について、
図10を用いて説明する。
【0165】
図10(A)及び
図10(B)に2つ折り可能なタブレット型端末800を示す。
図10
(A)は、開いた状態であり、タブレット型端末800は、筐体801、表示部802a
、表示部802b、表示モード切り替えスイッチ803、電源スイッチ804、省電力モ
ード切り替えスイッチ805、操作スイッチ807、を有する。
【0166】
表示部802aは、一部をタッチパネルの領域808aとすることができ、表示された操
作キー809にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部802aにお
いては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域がタッチ
パネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部802aの全て
の領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部802aの全面
をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部802bを表示画面として用い
ることができる。
【0167】
また、表示部802bにおいても表示部802aと同様に、表示部802bの一部をタッ
チパネルの領域808bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切り
替えボタン810が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部80
2bにキーボードボタン表示することができる。
【0168】
また、タッチパネルの領域808aとタッチパネルの領域808bに対して同時にタッチ
入力することもできる。
【0169】
また、表示モード切り替えスイッチ803は、縦表示または横表示などの表示の向きを切
り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイ
ッチ805は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光
量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだ
けでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵
させてもよい。
【0170】
また、
図10(A)では表示部802bと表示部802aの表示面積が同じ例を示してい
るが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の品
質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとし
てもよい。
【0171】
図10(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末800は、筐体801、太陽電池
811、充放電制御回路850、バッテリー851、DCDCコンバータ852を有する
。なお、
図10(B)では充放電制御回路850の一例としてバッテリー851、DCD
Cコンバータ852を有する構成について示しており、バッテリー851は、上記実施の
形態で説明した非水系二次電池を有している。
【0172】
なお、タブレット型端末800は2つ折り可能なため、未使用時に筐体801を閉じた状
態にすることができる。従って、表示部802a、表示部802bを保護できるため、耐
久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末800を提供するこ
とができる。
【0173】
また、この他にも
図10(A)及び
図10(B)に示したタブレット型端末は、様々な情
報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻など
を表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入
力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有するこ
とができる。
【0174】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池811によって、電力をタッチパネル、表
示部、または映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池811は、筐体
801の片面又は両面に設けることができ、バッテリー851の充電を効率的に行う構成
とすることができるため好適である。なおバッテリー851としては、本発明の一態様に
係る非水系二次電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0175】
また、
図10(B)に示す充放電制御回路850の構成、及び動作について
図10(C)
にブロック図を示し説明する。
図10(C)には、太陽電池811、バッテリー851、
DCDCコンバータ852、コンバータ853、スイッチSW1乃至SW3、表示部80
2について示しており、バッテリー851、DCDCコンバータ852、コンバータ85
3、スイッチSW1乃至SW3が、
図10(B)に示す充放電制御回路850に対応する
箇所となる。
【0176】
まず、外光により太陽電池811により発電がされる場合の動作の例について説明する。
太陽電池で発電した電力は、バッテリー851を充電するための電圧となるようDCDC
コンバータ852で昇圧または降圧がなされる。そして、表示部802の動作に太陽電池
811からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ853で表
示部802に必要な電圧に昇圧または降圧をすることとなる。また、表示部802での表
示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバッテリー851の充電を
行う構成とすればよい。
【0177】
なお、太陽電池811については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧
電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段によるバッ
テリー851の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信
して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成と
してもよい。
【0178】
また、上記実施の形態で説明した非水系二次電池を具備していれば、
図10に示した電気
機器に特に限定されないことは言うまでもない。
【0179】
(実施の形態6)
さらに、電気機器の一例である移動体の例について、
図11を用いて説明する。
【0180】
先の実施の形態で説明した非水系二次電池を制御用のバッテリーに用いることができる。
制御用のバッテリーは、プラグイン技術や非接触給電による外部からの電力供給により充
電をすることができる。なお、移動体が鉄道用電気車両の場合、架線や導電軌条からの電
力供給により充電をすることができる。
【0181】
図11(A)及び(B)は、電気自動車の一例を示している。電気自動車860には、バ
ッテリー861が搭載されている。バッテリー861の電力は、制御回路862により出
力が調整されて、駆動装置863に供給される。制御回路862は、図示しないROM、
RAM、CPU等を有する処理装置864によって制御される。
【0182】
駆動装置863は、直流電動機若しくは交流電動機単体、又は電動機と内燃機関と、を組
み合わせて構成される。処理装置864は、電気自動車860の運転者の操作情報(加速
、減速、停止など)や走行時の情報(上り坂や下り坂等の情報、駆動輪にかかる負荷情報
など)の入力情報に基づき、制御回路862に制御信号を出力する。制御回路862は、
処理装置864の制御信号により、バッテリー861から供給される電気エネルギーを調
整して駆動装置863の出力を制御する。交流電動機を搭載している場合は、図示してい
ないが、直流を交流に変換するインバータも内蔵される。
【0183】
バッテリー861は、プラグイン技術による外部からの電力供給により充電することがで
きる。例えば、商用電源から電源プラグを通じてバッテリー861に充電する。充電は、
AC/DCコンバータ等の変換装置を介して、一定の電圧値を有する直流定電圧に変換し
て行うことができる。バッテリー861として、本発明の一態様に係る非水系二次電池を
搭載することで、電池の高容量化などに寄与することができ、利便性を向上させることが
できる。また、バッテリー861の特性の向上により、バッテリー861自体を小型軽量
化できれば、車両の軽量化に寄与するため、燃費を向上させることができる。
【0184】
なお、本発明の一態様の非水系二次電池を具備していれば、上記で示した電子機器に特に
限定されないことは言うまでもない。
【0185】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例0186】
以下、本発明について実施例を用いて具体的に説明する。本実施例では、実施の形態2で
示した方法により、正極を作製した結果について説明する。なお、本発明は以下の実施例
のみに限定されるものではない。
【0187】
酸化グラフェン(ここでは炭素に対する酸素の重量比(又は酸化度。O/Cと表す。)を
0.547とした。)を原料に用いた導電助剤を有する正極を組み込んだセルと、酸化度
が極めて低いと考えられるRGO(Reduced Graphene Oxide)又
はグラフェンを導電助剤として有する正極を組み込んだセルとの充放電特性を比較する。
さらに、従来のアセチレンブラック(AB)を導電助剤として用いた正極を組み込んだセ
ルの充放電特性とも比較する。
【0188】
(酸化グラフェンを原料とした導電助剤を有する正極の作製)
O/C=0.547の酸化グラフェンを用いて正極を作製した。正極は、正極活物質(リ
ン酸鉄リチウム(LiFePO4))粒子、結着剤(ポリフッ化ビリニデン(PVDF)
、呉羽化学社製)、及び導電助剤としての酸化グラフェンを混合して、正極ペーストを作
製し、該正極ペーストを集電体(アルミニウム)に塗布し、乾燥及び還元することで作製
した。作製の際の正極ペーストの配合比(LiFePO4:導電助剤(酸化グラフェン)
:PVDF)は、93:2:5(単位wt%)とした。
【0189】
(RGOを導電助剤とした正極の作製)
RGO(Reduced Graphene Oxide)とは、本明細書において、予
め酸化グラフェンを還元したグラフェンをいい、分散媒に分散させる時点ではすでに還元
されている。従って、還元反応によりエポキシ基等の官能基はほぼ消失していると考えら
れる。RGOは、実施の形態1に記載した方法で作製した酸化グラフェンを、真空中で1
時間保持した後に170℃まで昇温し、10時間保持する加熱処理により還元することで
作製した。RGOは、還元により、表面のエポキシ基等の官能基が10wt%(重量パー
セント)程度まで低減されているものと考えられる。このRGOをNMPに混入し、リン
酸鉄リチウム及びPVDFを加えて正極ペーストを作製した。集電体上に塗工した正極ペ
ーストを加熱し、分散媒を揮発させて集電体上に正極活物質層を有する正極を作製した。
正極活物質層の配合比(LiFePO4:導電助剤(RGO):PVDF)は、94:1
:5とした。
【0190】
(グラフェンを導電助剤とした正極の作製)
グラフェンは、Graphene Supermarket社製のものを用いた。該グラ
フェンは、比表面積600m2/g、フレークサイズ10μm程度、厚み1nm以下であ
り、O/Cが0.02である。上記のRGOと同様に、酸化グラフェンと比べグラフェン
も結合する官能基は極めて少ない。このグラフェンを、上記と同様の方法で170℃10
時間加熱し、正極を作製した。正極は、活物質層の配合比(LiFePO4:導電助剤(
グラフェン):PVDF)が94:1:5のものと、90:5:5の2種類を作製した。
【0191】
(アセチレンブラックを導電助剤とした正極の作製)
アセチレンブラック(AB)は、電気化学工業株式会社製の粉状品を用いた。比表面積6
8m2/g、平均粒径は35nmである。正極活物質層の配合比(LiFePO4:導電
助剤(AB):PVDF)は、80:15:5とした。
【0192】
(電極導電率測定)
酸化グラフェン、配合比1%のグラフェン、配合比5%のグラフェン、及びアセチレンブ
ラックをそれぞれ用いた正極活物質層の導電率を測定した。測定により、以下の表1の結
果が得られた。
【0193】
【0194】
導電率は、酸化グラフェンを用いた導電助剤を含有する正極活物質層が1.3×10-6
S/cmと最も低かった。これに対し、グラフェンやアセチレンブラックは導電率が2桁
以上高い値となった。
【0195】
(充放電特性)
上記した酸化グラフェンを含むペーストを集電体に塗布後に還元したグラフェン、及びR
GO、グラフェン、アセチレンブラック(AB)をそれぞれ導電助剤とした正極をハーフ
セルに組み込み、それぞれのセルの充放電特性をそれぞれ測定した。ここで便宜上、本発
明にかかる酸化グラフェンを原料とした導電助剤を用いたセルをセルDとし、RGOを用
いたセルをセルEとし、1%の配合比のグラフェンを用いたセルをセルFとし、5%の配
合比のグラフェンを用いたセルをセルGとし、ABを用いたセルをセルHとする。充電レ
ートは0.2C(但し、ABを用いた正極のセル(セルH)については0.16C)とし
て測定した。また、放電レートは1C(但し、セルHについては0.82C)として測定
した。
【0196】
測定の結果、RGOを導電助剤としたセルE、及び配合比1%のグラフェンを導電助剤と
したセルFでは、全く充放電ができなかった。
【0197】
これに対し、配合比5%のグラフェンを導電助剤としたセルG、及び従来のアセチレンブ
ラックを導電助剤としたセルHでは、電池特性が確認された。本発明にかかる酸化グラフ
ェンを原料とした導電助剤を用いたセルDと合わせて、充放電特性を
図12に示す。
【0198】
図12は、充放電特性を示す図面であり、横軸に放電容量(mAh/g)を、縦軸に電圧
(V)を示す。太線が、酸化グラフェンを原料とした導電助剤を用いた正極を有するセル
Dの充放電特性を示す曲線である。これに対して細線が、配合比5%のグラフェンを導電
助剤として加えたセルGの充放電特性を示す曲線である。また、破線が、アセチレンブラ
ックを導電助剤としたセルHの充放電特性を示す曲線である。
【0199】
セルDでは、放電曲線901aと充電曲線901bから、良好な充放電特性が得られてい
ることがわかった。
【0200】
一方、グラフェンを導電助剤としたセルGは、放電曲線902aと充電曲線902bにお
いてプラトーな充放電領域が狭く、また放電容量が小さいものとなった。
【0201】
さらに、アセチレンブラックを導電助剤としたセルHは、放電曲線903aと充電曲線9
03bにプラトーな放電領域は確認されず、放電容量が小さいものとなった。
【0202】
以上のように、官能基をほとんど有していないRGOやグラフェンを導電助剤として混入
させた正極を用いた場合には、充放電特性が良好なセルとはならないのに対し、酸化反応
により結合した官能基を有する酸化グラフェンを分散媒に分散させて作製した正極では、
良好な充放電特性を示すセルとなった。このことから、酸化グラフェンを正極ペースト中
に分散させた後に還元してグラフェンとした正極活物質層においては、グラフェンによっ
て電子導電性の高いネットワークが形成されていると考えられる。一方、官能基をほとん
ど有していないRGO又はグラフェンを正極ペースト中に分散させて作製した正極活物質
層は、電子導電性のネットワークが十分に形成されていないと考えられる。従って、官能
基を有する酸化グラフェンを導電助剤の原料とすることが、正極活物質層の高い電子伝導
性を発現させるために重要であることが分かった。