(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180494
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】局所製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/107 20060101AFI20221129BHJP
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A61Q 19/00 20060101ALI20221129BHJP
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A61K 8/64 20060101ALI20221129BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
A61K9/107
A61K9/06
A61K47/04
A61K47/06
A61K47/10
A61K47/12
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A61K47/44
A61K9/08
A61K45/00
A61K31/4985
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A61K31/573
A61P17/00
A61P17/02
A61P17/04
A61P17/06
A61P17/12
A61P17/14
A61K8/06
A61K8/02
A61K8/25
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/60
A61K8/49
A61K8/84
A61K8/55
A61K8/37
A61K8/86
A61Q19/00
A61K8/92
A61K8/64
A61K8/63
【審査請求】有
【請求項の数】39
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022148794
(22)【出願日】2022-09-20
(62)【分割の表示】P 2020124225の分割
【原出願日】2015-08-27
(31)【優先権主張番号】62/042,600
(32)【優先日】2014-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
2.BRIJ
(71)【出願人】
【識別番号】512212195
【氏名又は名称】アッヴィ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エム・リパリ
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ディー・ゾーチャルスキ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】比較的熱感受性の化粧品及び医薬品有効成分に適する、加熱工程を必要としない局所製剤の製造方法、並びに局所製剤を提供する。
【解決手段】皮膚又は粘膜表面への局所適用製剤の製造方法であって、(1)油相を乳化剤と混合して混合物を形成し、前記混合物を均質になるまで撹拌する工程と;(2)水相を加えて撹拌を続け、プラセボ製剤を形成する工程と;(3)前記プラセボ製剤に固形有効成分を加え、均質になるまで混合する工程を含み;前記固形有効成分を35℃よりも高温に暴露する工程を含まない前記方法とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚又は粘膜表面への局所適用製剤の製造方法であって、
(1)油相を乳化剤と混合して混合物を形成し、前記混合物を均質になるまで撹拌する工程と;
(2)水相を加えて撹拌を続け、プラセボ製剤を形成する工程と;
(3)前記プラセボ製剤に固形有効成分を加え、均質になるまで混合する工程を含み;
前記固形有効成分を35℃よりも高温に暴露する工程を含まない前記方法。
【請求項2】
前記固形有効成分を15~30℃よりも高温に暴露しないか又は15~30℃の温度に暴露する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記乳化剤が増粘剤、安定剤又はその両方と兼用する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程(1)又は工程(2)で独立して増粘剤、安定剤、又は増粘剤と安定剤の両方を添加する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記増粘剤が局所製剤用に加熱を必要としない、又は35℃を超える加熱を必要としない請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記増粘剤が二酸化ケイ素、キサンタンガム、高分子量架橋アクリル酸系ポリマー、ポリビニルアルコール、アガロース、アルギン酸塩、カラギーナン、グアーガム、セルロース誘導体、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びポビドンの1種以上を含む請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記安定剤がラウリルグルコシド、デシルグルコシド、ココアンホ酢酸ナトリウム、ジステアリン酸ポリグリセリル-3メチルグルコース、セテアリルグルコシド、ラウリルカルバミン酸イヌリン、レシチンとその誘導体、精製リン脂質、ポリソルベート80、モノオレイン酸ソルビタン又はその混合物を含む請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記安定剤がモノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(4)ソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(5)ソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシル35ヒマシ油又はその混合物を含む請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記安定剤がポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含む請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記安定剤がポリオキシエチレンヒマシ油誘導体を含む請求項4に記載の方法。
【請求項11】
前記安定剤が局所製剤用に周囲条件下で処理することができる医薬的に許容可能な液体安定剤を含む請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記周囲条件が約15~30℃の温度である請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(2)の前に前記水相に防腐剤を添加する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
工程(1)及び(2)の間で工程(1)の前記混合物に又は工程(2)及び(3)の間で工程(2)の前記水相に浸透促進剤を添加する工程を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記製剤が水中油型エマルション、油中水型エマルション、ローション、クリーム、ジェル又はジェルクリームである請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記油相が前記製剤の約1~30%(w/w)、約10~20%(w/w)又は約15%(w/w)である請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記乳化剤が前記製剤の約1~5%(w/w)又は約3%である請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記防腐剤が前記製剤の約0.001~2%(w/w)、約0.01~1%(w/w)、約0.1~0.5%(w/w)又は約0.2%である請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記浸透促進剤が前記製剤の15%(w/w)未満又は約1~10%である請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記固形有効成分が前記製剤の約0.01~10%(w/w)、約0.05~5%(w/w)、約0.1~1%(w/w)又は約0.5~1%(w/w)である請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記油相が局所製剤用に周囲条件下で処理することができる医薬的に許容可能な油脂を含む請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記油相がタラ肝油、軽質鉱油、重質鉱油、サメ肝油、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、植物油又はその混合物を含み、前記植物油がヒマシ油、コーン油、キャノーラ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油又は大豆油を含む請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記乳化剤が逆相エマルション系によるラウリル硫酸ナトリウム、非イオン性乳化剤又はSEPINEO(TM)P600型水和膨潤性液滴ポリマーを含む請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記逆相エマルション系がアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体/イソヘキサデカン/ポリソルベート80又は商品名SEPINEO(TM)P600のHSDポリマーである請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記防腐剤が安息香酸ナトリウム、安息香酸、ソルビン酸、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、ブロノポール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、チメロサール、プロピオン酸ナトリウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クレゾール、イミダゾリジニル尿素、ジアゾリジニル尿素、フェノール、フェニル水銀塩、ソルビン酸カリウム、プロピレングリコール又はその混合物を含む請求項13に記載の方法。
【請求項26】
前記浸透促進剤がジメチルイソソルビド、ミリスチン酸イソプロピル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチルアルコール、オレイン酸エチル、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ポリエチレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド又はプロピレンカーボネートを含む請求項14に記載の方法。
【請求項27】
前記水相が精製水である請求項1に記載の方法。
【請求項28】
前記固形有効成分が化粧品又は医薬品有効成分である請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記固形有効成分が化合物1、化合物2、シクロスポリンAもしくはベタメタゾンジプロピオン酸エステルであり、又は前記固形有効成分が乾癬、局面型乾癬、爪乾癬、乾癬性関節炎、化膿性汗腺炎、円形/汎発性脱毛症、白斑、AKT関連角化症(老人性疣贅)、掻痒症もしくはアトピー性皮膚炎を治療するために有効である請求項25に記載の方法。
【請求項30】
皮膚又は粘膜表面に適用するための化粧品又は医薬品局所製剤であって、前記局所製剤が、
(1)油脂約1~30%(w/w)と;
(2)乳化剤約1~5%(w/w)と;
(3)浸透促進剤約1~15%(w/w)と;
(4)防腐剤約0.001~2%(w/w)と;
(5)水相約65~90%(w/w)と;
(6)化粧品又は医薬品有効成分約0.01~10%(w/w)を含有する前記製剤。
【請求項31】
前記局所製剤が、
(1)油脂約10~20%(w/w)と;
(2)乳化剤約3%(w/w)と;
(3)浸透促進剤約10%(w/w)と;
(4)防腐剤約0.01~1%(w/w)と;
(5)水相約82%(w/w)と;
(6)化粧品又は医薬品有効成分約0.05~5%(w/w)を含有する請求項30に記載の製剤。
【請求項32】
前記局所製剤が、
(1)防腐剤約0.1~0.5%(w/w)と;
(2)化粧品又は医薬品有効成分約0.1~1%(w/w)を含有する請求項31に記載の製剤。
【請求項33】
水中油型製剤、クリーム、ローション、ジェル又はジェルクリームである請求項30に記載の局所製剤。
【請求項34】
前記粘膜表面が口腔粘膜、膣粘膜表面、眼の粘膜である請求項30に記載の局所製剤。
【請求項35】
前記有効成分が化合物1、化合物2であり、又は前記有効成分が乾癬、局面型乾癬、爪乾癬、乾癬性関節炎、化膿性汗腺炎、円形/汎発性脱毛症、白斑、AKT関連角化症(老人性疣贅)、掻痒症もしくはアトピー性皮膚炎を治療するために有効である請求項30から34のいずれか一項に記載の局所製剤。
【請求項36】
前記有効成分が化合物1である請求項35に記載の局所製剤。
【請求項37】
前記有効成分が化合物2である請求項35に記載の局所製剤。
【請求項38】
皮膚又は粘膜表面病変の治療方法であって、前記病変に請求項30に記載の局所製剤を適用することを含む前記方法。
【請求項39】
前記病変が乾癬、局面型乾癬、爪乾癬、乾癬性関節炎、化膿性汗腺炎、円形/汎発性脱毛症、白斑、AKT関連角化症(老人性疣贅)、掻痒症又はアトピー性皮膚炎に起因する請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
他の送達方法及びシステムに比較して、経皮又は局所薬物送達システムは非侵襲性であり、作用部位における濃度が高く、治療効果が持続し、全身性の副作用が少なく、患者コンプライアンスが良好であり、薬物療法を終了し易い等の多大な利点がある。
【0002】
しかし、局所経路により化粧品又は医薬品組成物を哺乳動物に首尾よく送達できるか否かは、前記化粧品又は医薬品組成物が角質層(SC)と呼ばれる表皮の外側層に浸透する能力にかかっている。角質層はケラチンで満たされた約10~20層の平坦な死んだ細胞(角質細胞)から主に構成される。角質化した細胞の間の領域は遊離脂肪酸、コレステロール及びセラミド等の脂質で埋められ、レンガとモルタル様の構造を形成している。皮膚への拡散は主に角質層、毛嚢及び汗管により左右される。角質層の下には生細胞である表皮層、真皮層、更にその下に皮下組織層があり、これらの層には血管が通っているので、角質層を通り抜けた物質(例えば医薬品有効成分ないしAPI)を体循環系に輸送することができる。
図8参照。哺乳動物では、この構造は化学物質と細菌、真菌及びウイルスを含む生物学的因子に対するバリアとして主に機能する。
【背景技術】
【0003】
化粧品又は医薬品組成物の角質層浸透は主に受動輸送メカニズムにより行われる。受動送達又は拡散は皮膚の外面と内面における薬物の濃度勾配に依存している。拡散速度はこの勾配に比例し、分子のサイズ、疎水性、親水性及び他の物理化学的性質と吸収面の面積により調節される。受動送達システムの例としては、例えばニトログリセリン(狭心症)、スコポラミン(乗り物酔い)、フェンタニル(疼痛管理)、ニコチン(禁煙)、エストロゲン(ホルモン補充療法)、テストステロン(男性性腺機能低下症)、クロニジン(高血圧)及びリドカイン(局所麻酔)の制御送達用経皮パッチが挙げられる。製剤を皮膚に直接適用することもできるし、制御送達法を使用してもよい。これらの薬物の制御送達としては、高分子マトリックス、薬物を貯留するリザーバーを速度制御膜で覆ったもの及び薬物を粘着剤に含有させたシステムの使用が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
局所製剤の製造に伴う1つの問題はクリーム等の大半のこのような製剤が製剤の製造中に加熱工程を必要とするという点であり、従って、特に有効成分が高温で化学的感受性を示す場合、このような製剤に製剤化することができる化粧品又は医薬品有効成分の範囲は潜在的に制限される。従って、製造に加熱工程を必要としない局所製剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の実施形態において、本発明は皮膚又は粘膜表面への局所適用製剤の製造方法を提供し、前記方法は、
(1)油相を乳化剤と混合して混合物を形成し、前記混合物を均質になるまで撹拌する工程と;
(2)水相を加えて撹拌を続け、プラセボ製剤を形成する工程と;
(3)前記プラセボ製剤に固形有効成分を加え、均質になるまで混合する工程を含み;
前記方法は前記固形有効成分を35℃よりも高温に暴露する工程を含まない。
【0006】
第2の実施形態において、本発明は前記固形有効成分を15~30℃よりも高温に暴露しないか又は15~30℃の温度に暴露する本発明の第1の実施形態に記載の方法を提供する。
【0007】
第3の実施形態において、本発明は前記乳化剤が増粘剤、安定剤又はその両方と兼用する上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0008】
第4の実施形態において、本発明は前記方法が工程(1)及び/又は工程(2)で独立して増粘剤、安定剤、又は増粘剤と安定剤の両方を添加する工程を更に含む上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。前記増粘剤及び安定剤は工程(1)及び/又は工程(2)で同時に添加することもできるし、別々に添加することもできる。
【0009】
第5の実施形態において、本発明は前記増粘剤が局所製剤用に加熱を必要としない、又は35℃を超える加熱を必要としない上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0010】
第6の実施形態において、本発明は前記増粘剤が二酸化ケイ素、キサンタンガム、高分子量架橋アクリル酸系ポリマー、ポリビニルアルコール、アガロース、アルギン酸塩、カラギーナン、グアーガム、セルロース誘導体、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース及びポビドンの1種以上を含む上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0011】
第7の実施形態において、本発明は前記安定剤がラウリルグルコシド、デシルグルコシド、ココアンホ酢酸ナトリウム、ジステアリン酸ポリグリセリル-3メチルグルコース、セテアリルグルコシド、ラウリルカルバミン酸イヌリン、レシチンとその誘導体、精製リン脂質、ポリソルベート80、モノオレイン酸ソルビタン又はその混合物を含む上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0012】
第8の実施形態において、本発明は前記安定剤がモノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(4)ソルビタン、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(5)ソルビタン、トリオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、ポリオキシル35ヒマシ油及びその混合物を含む上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0013】
第9の実施形態において、本発明は前記安定剤がポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含む上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0014】
第10番目の実施形態において、本発明は前記安定剤がポリオキシエチレンヒマシ油誘導体を含む上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0015】
第11番目の実施形態において、本発明は前記安定剤が局所製剤用に周囲条件下(例えば15~30℃)で処理することができる医薬的に許容可能な液体安定剤を含む上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0016】
第12番目の実施形態において、本発明は前記方法が工程(1)の後に防腐剤を添加する工程を更に含む上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。例えば、工程(1)の後で工程(2)における前記水相の添加の直前、添加後又は添加と同時に均質な混合物に前記防腐剤を添加することができる。工程(2)の前に前記水相に前記防腐剤を添加してもよい(即ち工程(2)で使用する前記水相は防腐剤を含有する)。あるいは、前記方法は工程(2)で使用する前記水相に防腐剤を添加する工程を更に含んでいてもよい。
【0017】
第13番目の実施形態において、本発明は前記方法が工程(1)及び(2)の間で工程(1)の前記混合物に又は工程(2)及び(3)の間で工程(2)の前記水相に浸透促進剤を添加する工程を更に含む上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。あるいは、工程(2)で使用する前記水相は浸透促進剤を含有する。
【0018】
第14番目の実施形態において、本発明は前記方法が工程(2)の間に周期的に液滴径を測定する工程を更に含む上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0019】
第15番目の実施形態において、本発明は前記製剤が水中油型エマルション又は油中水型エマルションである上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0020】
第16番目の実施形態において、本発明は前記製剤がローション、クリーム、ジェル又はジェルクリームである上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0021】
第17番目の実施形態において、本発明は前記油相が前記製剤の約1~30%(w/w)、約10~20%(w/w)又は約15%(w/w)である上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0022】
第18番目の実施形態において、本発明は前記乳化剤が前記製剤の約1~5%(w/w)又は約3%である上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0023】
第19番目の実施形態において、本発明は前記防腐剤が前記製剤の約0.001~2%(w/w)、約0.01~1%(w/w)、約0.1~0.5%(w/w)又は約0.2%である上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0024】
第20番目の実施形態において、本発明は前記浸透促進剤が前記製剤の15%(w/w)未満又は約1~10%である上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0025】
第21番目の実施形態において、本発明は前記固形有効成分が前記製剤の約0.01~10%(w/w)、約0.05~5%(w/w)、約0.1~1%(w/w)又は約0.5~1%(w/w)である上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0026】
第22番目の実施形態において、本発明は前記油相が局所製剤用に周囲条件下で処理することができる医薬的に許容可能な油脂を含む上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0027】
第23番目の実施形態において、本発明は前記油相がタラ肝油、軽質鉱油、重質鉱油、サメ肝油、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、植物油又はその混合物を含む上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0028】
第24番目の実施形態において、本発明は前記植物油がヒマシ油、コーン油、キャノーラ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油又は大豆油を含む上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0029】
第25番目の実施形態において、本発明は前記乳化剤がラウリル硫酸ナトリウム又は非イオン性乳化剤を含む上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0030】
第26番目の実施形態において、本発明は前記乳化剤が逆相エマルション系によるSEPINEO(TM)P600型水和膨潤性液滴ポリマーを含む上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0031】
第27番目の実施形態において、本発明は前記乳化剤が逆相エマルション系であり、アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体/イソヘキサデカン/ポリソルベート80又は商品名SEPINEO(TM)P600のHSDポリマーから構成される上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0032】
第28番目の実施形態において、本発明は前記防腐剤が安息香酸ナトリウム、安息香酸、ソルビン酸、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、ブロノポール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、チメロサール、プロピオン酸ナトリウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クレゾール、イミダゾリジニル尿素、ジアゾリジニル尿素、フェノール、フェニル水銀塩、ソルビン酸カリウム、プロピレングリコール又はその混合物を含む上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0033】
第29番目の実施形態において、本発明は前記防腐剤がイミダゾリジニル尿素を含む上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0034】
第30番目の実施形態において、本発明は前記浸透促進剤がジメチルイソソルビド、ミリスチン酸イソプロピル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチルアルコール、オレイン酸エチル、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ポリエチレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド又はプロピレンカーボネートを含む上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0035】
第31番目の実施形態において、本発明は前記水相が精製水である上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0036】
第32番目の実施形態において、本発明は前記固形有効成分が化粧品又は医薬品有効成分である上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0037】
第33番目の実施形態において、本発明は前記固形有効成分を局所適用可能な何らかの薬剤とすることができる上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。例えば、前記固形有効成分はスコポラミン(乗り物酔い)、フェンタニル(疼痛管理)、ニコチン(禁煙)、エストロゲン(ホルモン補充療法)、テストステロン(男性性腺機能低下症)、クロニジン(高血圧)及びリドカイン(局所麻酔)とすることができ、又は化合物1(N-((1S,3R,4S)-3-エチル-4-(6H-ピロロ[2,3-e][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a]ピラジン-1-イル)シクロペンチル)シクロプロパンスルホンアミド)、化合物2((3S,4R)-3-エチル-4-(3H-イミダゾール[1,2-a]ピロロ[2,3-e]ピラジン-8-イル)-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピロリジン-1-カルボキサミド)、シクロスポリンAもしくはベタメタゾンジプロピオン酸エステルとすることができ、又は前記固形有効成分は乾癬、局面型乾癬、爪乾癬、乾癬性関節炎、化膿性汗腺炎、円形/汎発性脱毛症、白斑、AKT関連角化症(老人性疣贅)、掻痒症もしくはアトピー性皮膚炎を治療するために有効である。
【0038】
【0039】
第34番目の実施形態において、本発明は前記方法が工程(1)又は工程(2)の後に固形有効成分を加えて均質になるまで混合する工程を更に含む上記実施形態のいずれかに記載の方法を提供する。
【0040】
第35番目の実施形態において、本発明は皮膚又は粘膜表面に適用するための化粧品又は医薬品局所製剤を提供し、前記局所製剤は、
(1)油脂(例えば鉱油)約1~30%(w/w)(例えば約10~20%又は約15%)と;
(2)SEPINEO(TM)P600型水和膨潤性液滴(HSD)ポリマーとすることができる乳化剤約1~5%(w/w)と;
(3)浸透促進剤約1~15%(w/w)と;
(4)防腐剤約0.001~2%(w/w)と;
(5)水相約65~90%(w/w)と;
(6)化粧品又は医薬品有効成分約0.01~10%(w/w)を含有する。
【0041】
第36番目の実施形態において、本発明は皮膚又は粘膜表面に適用するための化粧品又は医薬品局所製剤を提供し、前記局所製剤は、
(1)油脂約10~20%(w/w)と;
(2)SEPINEO(TM)P600型水和膨潤性液滴(HSD)ポリマー(例えばアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体/イソヘキサデカン/ポリソルベート80又は商品名SEPINEO(TM)P600のHSDポリマー)とすることができる乳化剤約1~5%(w/w)と;
(3)浸透促進剤約1~15%(w/w)と;
(4)防腐剤約0.001~2%(w/w)と;
(5)水相約65~90%(w/w)と;
(6)化粧品又は医薬品有効成分約0.01~10%(w/w)を含有する。
【0042】
第37番目の実施形態において、本発明は皮膚又は粘膜表面に適用するための化粧品又は医薬品局所製剤を提供し、前記局所製剤は、
(1)鉱油約10~20%(w/w)と;
(2)SEPINEO(TM)P600型水和膨潤性液滴(HSD)ポリマー(例えばアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体/イソヘキサデカン/ポリソルベート80又は商品名SEPINEO(TM)P600のHSDポリマー)約1~5%(w/w)と;
(3)浸透促進剤約1~15%(w/w)と;
(4)防腐剤約0.001~2%(w/w)と;
(5)水相約65~90%(w/w)と;
(6)化粧品又は医薬品有効成分約0.01~10%(w/w)を含有する。
【0043】
第38番目の実施形態において、本発明は皮膚又は粘膜表面に適用するための化粧品又は医薬品局所製剤を提供し、前記局所製剤は、
(1)鉱油約10~20%(w/w)と;
(2)SEPINEO(TM)P600型水和膨潤性液滴(HSD)ポリマー(例えばアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体/イソヘキサデカン/ポリソルベート80又は商品名SEPINEO(TM)P600のHSDポリマー)約3%(w/w)と;
(3)浸透促進剤約1~15%(w/w)と;
(4)防腐剤約0.001~2%(w/w)と;
(5)水相約65~90%(w/w)と;
(6)化粧品又は医薬品有効成分約0.01~10%(w/w)を含有する。
【0044】
第39番目の実施形態において、本発明は化粧品又は医薬品局所製剤を提供し、前記局所製剤は、
(1)油脂約10~20%(w/w)と;
(2)乳化剤約3%(w/w)と;
(3)浸透促進剤約10%(w/w)と;
(4)防腐剤約0.01~1%(w/w)(例えば約0.01~1%、約0.1~0.5%又は約0.2%)と;
(5)水相約82%(w/w)と;
(6)化粧品又は医薬品有効成分約0.05~5%(w/w)(例えば約0.05~5%、約0.1~1%又は約0.5~1%)を含有する。
【0045】
第40番目の実施形態において、本発明は前記局所製剤が、
(1)油脂約15%(w/w)と;
(2)乳化剤約3%(w/w)と;
(3)浸透促進剤約10%(w/w)と;
(4)防腐剤約0.1~0.5%(w/w)と;
(5)水相約82%(w/w)と;
(6)化粧品又は医薬品有効成分約0.1~1%(w/w)を含有する本発明の第39番目の実施形態に記載の化粧品又は医薬品局所製剤を提供する。
【0046】
第41番目の実施形態において、本発明は前記局所製剤が、
(1)油脂約15%(w/w)と;
(2)乳化剤約3%(w/w)と;
(3)浸透促進剤約10%(w/w)と;
(4)防腐剤約0.01~1%(w/w)と;
(5)水相約82%(w/w)と;
(6)化粧品又は医薬品有効成分約0.5~1%(w/w)を含有する本発明の第35番目の実施形態に記載の化粧品又は医薬品局所製剤を提供する。
【0047】
第42番目の実施形態において、本発明は前記局所製剤が、
(1)油脂約15%(w/w)と;
(2)乳化剤約3%(w/w)と;
(3)浸透促進剤約10%(w/w)と;
(4)防腐剤約0.1~0.5%(w/w)と;
(5)水相約82%(w/w)と;
(6)化粧品又は医薬品有効成分約0.5~1%(w/w)を含有する本発明の第35番目の実施形態に記載の化粧品又は医薬品局所製剤を提供する。
【0048】
第43番目の実施形態において、本発明は前記局所製剤が、
(1)油脂約15%(w/w)と;
(2)乳化剤約3%(w/w)と;
(3)浸透促進剤約10%(w/w)と;
(4)防腐剤約0.2%(w/w)と;
(5)水相約82%(w/w)と;
(6)化粧品又は医薬品有効成分約0.1~1%(w/w)を含有する本発明の第35番目の実施形態に記載の化粧品又は医薬品局所製剤を提供する。
【0049】
第44番目の実施形態において、本発明は前記局所製剤が、
(1)油脂約15%(w/w)と;
(2)乳化剤約3%(w/w)と;
(3)浸透促進剤約10%(w/w)と;
(4)防腐剤約0.2%(w/w)と;
(5)水相約82%(w/w)と;
(6)化粧品又は医薬品有効成分約0.05~5%(w/w)を含有する本発明の第35番目の実施形態に記載の化粧品又は医薬品局所製剤を提供する。
【0050】
第45番目の実施形態において、本発明は前記局所製剤が、
(1)防腐剤約0.1~0.5%(w/w)と;
(2)化粧品又は医薬品有効成分約0.1~1%(w/w)を含有する本発明の上記実施形態のいずれかに記載の局所製剤を提供する。
【0051】
第46番目の実施形態において、本発明は前記局所製剤が水中油型製剤である本発明の上記実施形態のいずれかに記載の局所製剤を提供する。
【0052】
第47番目の実施形態において、本発明は前記局所製剤がクリーム、ローション、ジェル又はジェルクリームである本発明の上記実施形態のいずれかに記載の局所製剤を提供する。
【0053】
第48番目の実施形態において、本発明は前記粘膜表面が口腔粘膜、膣粘膜表面、眼の粘膜である本発明の上記実施形態のいずれかに記載の局所製剤を提供する。
【0054】
第49番目の実施形態において、本発明は前記有効成分が化合物1、化合物2であるか、又は前記有効成分が乾癬、局面型乾癬、爪乾癬、乾癬性関節炎、化膿性汗腺炎、円形/汎発性脱毛症、白斑、AKT関連角化症(老人性疣贅)、掻痒症もしくはアトピー性皮膚炎を治療するために有効である本発明の上記実施形態のいずれかに記載の局所製剤を提供する。
【0055】
第50番目の実施形態において、本発明は前記有効成分が化合物1である本発明の上記実施形態のいずれかに記載の局所製剤を提供する。
【0056】
第51番目の実施形態において、本発明は前記有効成分が化合物2である本発明の上記実施形態のいずれかに記載の局所製剤を提供する。
【0057】
第52番目の実施形態において、本発明は本発明の方法を使用して製造された化粧品又は医薬品局所製剤を提供する。
【0058】
第53番目の実施形態において、本発明は皮膚又は粘膜表面病変の治療方法を提供し、前記方法は前記病変に本発明の局所製剤を適用することを含む。
【0059】
第54番目の実施形態において、本発明は前記病変が乾癬、局面型乾癬、爪乾癬、乾癬性関節炎、化膿性汗腺炎、円形/汎発性脱毛症、白斑、AKT関連角化症(老人性疣贅)、掻痒症又はアトピー性皮膚炎に起因する本発明の第50番目の実施形態に記載の方法を提供する。
【0060】
第55番目の実施形態において、本発明は皮膚又は粘膜表面病変の治療用医薬の製造における上記実施形態のいずれかに記載の局所製剤の使用を提供する。特定の実施形態において、前記病変は乾癬、局面型乾癬、爪乾癬、乾癬性関節炎、化膿性汗腺炎、円形/汎発性脱毛症、白斑、AKT関連角化症(老人性疣贅)、掻痒症又はアトピー性皮膚炎に起因する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】種々の浸透促進剤(PE)、水及びレセプター液(2%BSAを添加したPBS,pH7.4)に対する代表的なAPI(即ち化合物1)の溶解度を示す。DMI:ジメチルイソソルビド;IPM:ミリスチン酸イソプロピル;TC HP:TRANSCUTOL(TM)HP。
【
図2A】フランツセルにおいて種々の浸透促進剤の10%水溶液の存在下でTUFFRYN(R)膜を透過する1%(w/w)化合物1の輸送を示す。DMI:ジメチルイソソルビド;IPM:ミリスチン酸イソプロピル;TC:TRANSCUTOL(TM)。
【
図2B】フランツセルにおいて種々の浸透促進剤の10%水溶液の存在下でTUFFRYN(R)膜を透過する0.1%(w/w)化合物1の輸送を示す。DMI:ジメチルイソソルビド;IPM:ミリスチン酸イソプロピル;TC:TRANSCUTOL(TM)。
【
図3A】浸透促進剤の不在下で種々の合成膜を透過する1%(w/w)化合物1の輸送を示す。正方形データ点:TRANSWELL(R)ポリカーボネート膜;三角形データ点:TRANSWELL(R)ポリエステル膜;菱形データ点:フランツセルTUFFRYN(R)膜。
【
図3B】浸透促進剤の不在下で種々の合成膜を透過する0.1%(w/w)化合物1の輸送を示す。正方形データ点:TRANSWELL(R)ポリカーボネート膜;三角形データ点:TRANSWELL(R)ポリエステル膜;菱形データ点:フランツセルTUFFRYN(R)膜。
【
図4】浸透促進剤の不在下で種々の合成膜を透過する化合物1の流速を示す。
【
図5A】浸透促進剤として10%(w/w)TRANSCUTOL(TM)HPの存在下で種々の合成膜を透過する1%(w/w)化合物1の輸送を示す。正方形データ点はTRANSWELL(R)ポリカーボネート膜を表し、三角形データ点はTRANSWELL(R)ポリエステル膜を表し、菱形データ点はフランツセルTuffryn(R)膜を表す。
【
図5B】浸透促進剤として10%(w/w)TRANSCUTOL(TM)HPの存在下で種々の合成膜を透過する0.1%(w/w)化合物1の輸送を示す。正方形データ点はTRANSWELL(R)ポリカーボネート膜を表し、三角形データ点はTRANSWELL(R)ポリエステル膜を表し、菱形データ点はフランツセルTuffryn(R)膜を表す。
【
図5C】浸透促進剤として10%(w/w)TRANSCUTOL(TM)HPの存在下で種々の合成膜を透過する化合物1の流速を示す。
【
図6A】浸透促進剤として10%(w/w)DMI水溶液の存在下で種々の合成膜を透過する1%(w/w)化合物1の輸送を示す。正方形データ点はTRANSWELL(R)ポリカーボネート膜を表し、三角形データ点はTRANSWELL(R)ポリエステル膜を表し、菱形データ点はフランツセルTUFFRYN(R)膜を表す。
【
図6B】浸透促進剤として10%(w/w)DMI水溶液の存在下で種々の合成膜を透過する0.1%(w/w)化合物1の輸送を示す。正方形データ点はTRANSWELL(R)ポリカーボネート膜を表し、三角形データ点はTRANSWELL(R)ポリエステル膜を表し、菱形データ点はフランツセルTUFFRYN(R)膜を表す。
【
図6C】浸透促進剤として10%(w/w)DMI水溶液の存在下で種々の合成膜を透過する化合物1の流速を示す。
【
図7A】浸透促進剤として10%(w/w)IPM水溶液の存在下で種々の合成膜を透過する1%(w/w)化合物1の輸送を示す。正方形データ点はTRANSWELL(R)ポリカーボネート膜を表し、三角形データ点はTRANSWELL(R)ポリエステル膜を表し、菱形データ点はフランツセルTUFFRYN(R)膜を表す。
【
図7B】浸透促進剤として10%(w/w)IPMの存在下で種々の合成膜を透過する0.1%(w/w)化合物1の輸送を示す。正方形データ点はTRANSWELL(R)ポリカーボネート膜を表し、三角形データ点はTRANSWELL(R)ポリエステル膜を表し、菱形データ点はフランツセルTUFFRYN(R)膜を表す。
【
図7C】浸透促進剤として10%(w/w)IPM水溶液の存在下で種々の合成膜を透過する化合物1の流速を示す。
【
図8】皮膚構造の模式図を示し、表皮、真皮及び皮下組織を含む種々の層を示す。
【
図9A】177.8mgの化合物1をラットに局所投与後の血漿中PKデータを示す。
【
図9B】177.8mgの化合物2をラットに局所投与後の血漿中PKデータを示す。製剤Bには浸透促進剤として10%(w/w)TRANSCUTOL(TM)HPを添加している(製剤Aには不添加)。
【
図10】FITCチャレンジの1時間前にシクロスポリンA(CsA0.01%、0.1%及び1%)局所製剤を適用した場合の耳介皮膚厚み減少効果を示す。
【
図11A】耳介皮膚厚みモデルにおける薬物動態(PK)データを示し、全身全血中CsA濃度と局所耳介皮膚中濃度を含む。
【
図11B】観測された効果が用量依存的であることを示す。
【
図12】FITCチャレンジの1時間後にCsA(1%)局所製剤を適用した場合の耳介皮膚厚み減少効果%を示す。
【
図13】FITCチャレンジの6時間後にCsA(0.1%及び1%)局所製剤を適用した場合の耳介皮膚厚み減少効果%を示す。
【
図14】FITCチャレンジの1時間前にBMS DPP(0.005%、0.01%、0.1%及び1%)局所製剤を適用した場合の耳介皮膚厚み減少効果%を示す。
【
図15】耳介皮膚厚みモデルにおける薬物動態(PK)データを示し、BMS DPPの局所耳介皮膚中濃度を含む。
【
図16】FITCチャレンジの4時間後にBMS DPP(0.01%、0.1%及び1%)局所製剤を適用した場合の耳介皮膚厚み減少効果%を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
1.概説
クリーム、ジェル及び軟膏を含む局所製剤は乾癬、乾癬性関節炎、アトピー性皮膚炎、脱毛症又は白斑等の種々の皮膚疾患又は病態の患者に対するオプショナルな治療法であり得る。所望の治療効果を達成するためには、APIを皮膚に浸透させて作用部位の濃度を局所的に高めることができる適切な局所製剤を開発することが必要である。APIをその製剤から放出させるには、API結晶性、粒度、溶解度及び製剤組成を含む複数のパラメーターが影響すると思われる。有効成分を最大限まで局所製剤に製剤化できるようにするためには、局所製剤の製剤化方法として加熱工程を必要としない方法(例えば有効成分を35℃よりも高温に暴露する如何なる加熱工程も必要としない方法)を開発することが必要であると思われる。
【0063】
従って、本発明の1態様は皮膚又は粘膜表面への局所適用製剤の製造方法を提供し、前記方法は、(1)油相を乳化剤と混合して混合物を形成し、前記混合物を均質になるまで撹拌する工程と;(2)水相を加えて撹拌を続け、プラセボ製剤を形成する工程と;(3)前記プラセボ製剤に固形有効成分(sAI)を加え、均質になるまで混合する工程を含み;前記方法は前記sAIを35℃よりも高温に暴露する工程を含まず、例えば前記sAIを約15~30℃の温度に暴露し、又は前記sAIを約25℃の温度に暴露する。所定の実施形態において、前記水相は精製水である。
【0064】
前記乳化剤は医薬的に許容可能な界面活性剤であり、低分子でもオリゴマーでもポリマーでもよい。前記界面活性剤は非イオン性でもカチオン性でもアニオン性でもよい。前記界面活性剤は天然由来でも合成由来でもよい。
【0065】
本発明では多数の乳化剤を使用することができる。所定の実施形態において、前記乳化剤はラウリル硫酸ナトリウム又は非イオン性乳化剤(例えばステアリン酸グリセリル及び/又はステアリン酸PEG100)を含むことができる。
【0066】
他の代表的な乳化剤としては限定されないが、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド)、アラビアガム、コレステロール、トラガカント、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えばセトマクロゴール1000等のマクロゴールエーテル)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば市販のTween類)、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、ドデシル硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース及びケイ酸アルミニウムマグネシウムが挙げられる。これらの表面改質剤の大半は公知医薬品添加剤であり、Handbook of Pharmaceutical Excipients,American Pharmaceutical Association及びPharmaceutical Society of Great Britain共編,Pharmaceutical Press,1986に詳細に記載されている。
【0067】
界面活性剤の他の例としては、チロキサポール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロック共重合体であるポロキサマー(例えばPluronic F68、F77及びF108)、ポロキサミン(例えばプロピレンオキシドとエチレンオキシドをエチレンジアミンに順次添加することにより得られ、BASF社から市販されている四官能性ブロック共重合体であるTetronic 908(別称Poloxamine 908))、レシチン、ナトリウムスルホコハク酸のジアルキルエステル(例えばAmerican Cyanamid社から市販されているナトリウムスルホコハク酸のジオクチルエステルであるAerosol OT)、DuPont社から市販されているラウリル硫酸ナトリウムであるDuponol P、Rohm and Haas社から市販されているアルキルアリールポリエーテルスルホン酸塩であるTriton X-200、Croda社から市販されているポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルであるTween(R)20及びTween(R)80、Croda社から市販されているステアリン酸スクロースとジステアリン酸スクロースの混合物であるCrodesta F-110、Croda社から市販されているCrodesta SL-40が挙げられ、更にC18H37CH2(CON(CH3)CH2(CHOH)4CH2OH)2であるSA9OHCO、デカノイル-N-メチルグルカミド、n-デシル-β-D-グルコピラノシド、n-デシル-β-D-マルトピラノシド、n-ドデシル-β-D-グルコピラノシド、n-ドデシル-β-D-マルトシド、ヘプタノイル-N-メチルグルカミド、n-ヘプチル-β-D-グルコピラノシド、n-ヘプチル-β-D-チオグルコシド、n-ヘキシル-β-D-グルコピラノシド、ノナノイル-N-メチルグルカミド、n-ノニル-β-D-グルコピラノシド、オクタノイル-N-メチルグルカミド、n-オクチル-β-D-グルコピラノシド、オクチル-β-D-チオグルコピラノシド等が挙げられる。
【0068】
所定の実施形態において、前記乳化剤は増粘剤、安定剤又はその両方と兼用してもよい。従って、1実施形態において、前記乳化剤は逆相エマルション系によるSEPINEO(TM)P600型水和膨潤性液滴(HSD)ポリマー(例えばアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体/イソヘキサデカン/ポリソルベート80又は商品名SEPINEO(TM)P600のHSDポリマー)を含むことができる。
【0069】
他の実施形態において、前記方法は工程(1)又は工程(2)で増粘剤及び/又は安定剤を添加する工程を更に含むことができる。即ち、選択する増粘剤/安定剤の種類に応じて、前記増粘剤/安定剤を油相に添加してもよいし、水相に添加してもよい。
【0070】
特定の実施形態において、前記増粘剤は局所製剤用に加熱する必要がなく、又は少なくとも約35℃(例えば約15~30℃の温度又は約25℃の温度)よりも高温に加熱する必要がない。
【0071】
別の特定の実施形態において、前記増粘剤は二酸化ケイ素(例えば商品名AEROSIL(R)の二酸化ケイ素)、キサンタンガム、高分子量架橋アクリル酸系ポリマー、ポリビニルアルコール、アガロース、アルギン酸塩、カラギーナン、グアーガム、セルロース誘導体、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、コポビドン及びポビドンの1種以上を含む。
【0072】
所定の特定の実施形態において、前記増粘剤は高分子量架橋アクリル酸系ポリマー及び/又はセルロース誘導体(例えばメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロース)を含む。代表的な高分子量架橋アクリル酸系ポリマーとしては、カルボマー又はポリアクリレート(例えば商品名CARBOPOL(R)のポリアクリレート)が挙げられる。
【0073】
安定剤については、所定の実施形態において、前記安定剤はPlantacare 1200 UP(例えばBASF社のラウリルグルコシド)、Plantacare 2000 UP(例えばBASF社のデシルグルコシド)、Miranol Ultra 32(例えばBeiersdorf社のココアンホ酢酸ナトリウム)、Tego Care 450(例えばGoldschmidt社のジステアリン酸ポリグリセリル-3メチルグルコース)、Tego Care CG 90(例えばGoldschmidt社のセテアリルグルコシド)、Inutec SP1(例えばOrafti社のラウリルカルバミン酸イヌリン)、レシチンとその誘導体、精製リン脂質、Tween(R)80(ポリソルベート80ないしモノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン)又はその混合物を含むことができる。
【0074】
所定の実施形態において、前記安定剤は化粧品グレード添加剤とすることができる。他の実施形態において、前記安定剤は医薬品グレード添加剤とすることができる。
【0075】
所定の実施形態において、前記安定剤はモノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(例えば商品名TWEEN(R)80等の前記化合物)、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(例えば商品名TWEEN(R)20等の前記化合物)、モノラウリン酸ポリオキシエチレン(4)ソルビタン(例えば商品名TWEEN(R)21等の前記化合物)、モノパルミチン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(例えば商品名TWEEN(R)40等の前記化合物)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(5)ソルビタン(例えば商品名TWEEN(R)81等の前記化合物)、トリオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(例えば商品名TWEEN(R)85等の前記化合物)、モノラウリン酸ソルビタン(例えば商品名SPAN(R)20等の前記化合物)、モノオレイン酸ソルビタン(例えば商品名SPAN(R)80等の前記化合物)、トリオレイン酸ソルビタン(例えば商品名SPAN(R)85等の前記化合物)、ポリオキシル35ヒマシ油(例えば商品名KOLLIPHOR(R)EL等の前記化合物)及びその混合物を含む。
【0076】
所定の実施形態において、前記安定剤はポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルを含む。
【0077】
所定の実施形態において、前記安定剤はポリオキシエチレンヒマシ油誘導体を含む。
【0078】
所定の実施形態において、前記安定剤は局所製剤用に35℃以下の温度又は周囲条件下(例えば約15~30℃の温度又は約25℃の温度)で処理することができる医薬的に許容可能な液体又は固体安定剤を含む。
【0079】
所定の実施形態において、前記方法は更に工程(2)の前に前記水相に防腐剤を添加する工程を含む。本発明で使用することができる多数の防腐剤としては(限定されないが)、安息香酸ナトリウム、安息香酸、ソルビン酸、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、ブロノポール、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、チメロサール、プロピオン酸ナトリウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クレゾール、イミダゾリジニル尿素、ジアゾリジニル尿素、フェノール、フェニル水銀塩、ソルビン酸カリウム、プロピレングリコール又はその混合物が挙げられる。特定の実施形態において、前記防腐剤はイミダゾリジニル尿素を含む。
【0080】
所定の実施形態において、前記方法は工程(1)及び(2)の間で工程(1)の前記混合物に又は工程(2)及び(3)の間で工程(2)の前記水相に浸透促進剤を添加する工程を更に含み、どちらに添加するかは薬物溶解度及び/又は選択する浸透促進剤にある程度依存する。例えば、前記浸透促進剤はジメチルイソソルビド、ミリスチン酸イソプロピル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(例えば商品名TRANSCUTOL(R)HPのジエチレングリコールモノエチルエーテル)、エチルアルコール、オレイン酸エチル、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ポリエチレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド又はプロピレンカーボネートを含むことができる。
【0081】
所定の実施形態において、前記方法は工程(2)の間に周期的に液滴径を測定する工程を更に含む。工程(2)における撹拌は平均液滴径及び/又は液滴径分布にある程度依存することができ、予め定められた液滴径又は液滴径分布に基づいて終了又は延長することができる。液滴径は光学顕微鏡等の当分野で認められているいずれかの方法及び計器を使用して測定することができる。所定の実施形態において、前記液滴径は1分毎、2分毎、3分毎、4分毎、5分毎、6分毎、7分毎、8分毎、9分毎、10分毎、12分毎、13分毎、14分毎、15分毎、16分毎、17分毎、18分毎、19分毎、20分毎、25分毎、30分毎等に測定することができる。
【0082】
所定の実施形態において、前記製剤は水中油型エマルション又は油中水型エマルションである。例えば、SEPINEO(TM)P600系ジェルクリームは通常では水中油型となる。一方、乳化剤/及び乳化剤ブレンド(安定剤)の種類に応じて水中油型になる場合と油中水型になる場合がある。
【0083】
所定の実施形態において、前記製剤はローション、クリーム、ジェル又はジェルクリームである。他の実施形態において、前記製剤は軟膏;好ましくはクリーム、乳液又はポマードの形態のエマルション;散剤、含浸パッド又は貼付剤(例えばパッチ剤)、溶液剤、ジェル、スプレー、ローション、懸濁剤、石鹸及びシャンプーの形態である。更にミクロスフェアもしくはナノスフェアの懸濁液の形態でもよいし、脂質もしくはポリマーベシクルの形態でもよいし、ポリマーパッチの形態でもよいし、及び/又は制御放出を可能にするハイドロジェルの形態でもよい。これらの組成物は無水形態でも、水性形態でも、エマルション形態でもよい。
【0084】
所定の実施形態において、前記油相は前記製剤の約1~30%(w/w)、約10~20%(w/w)又は約15%(w/w)である。
【0085】
所定の実施形態において、前記乳化剤は前記製剤の約1~5%(w/w)又は約3%である。
【0086】
所定の実施形態において、前記防腐剤が存在する場合には、前記製剤の約0.001~2%(w/w)である。
【0087】
所定の実施形態において、前記防腐剤が存在する場合には、前記製剤の約0.01~1%(w/w)である。
【0088】
所定の実施形態において、前記防腐剤が存在する場合には、前記製剤の約0.1~0.5%(w/w)である。
【0089】
所定の実施形態において、前記防腐剤が存在する場合には、前記製剤の約0.2%である。
【0090】
所定の実施形態において、前記浸透促進剤が存在する場合には、前記製剤の15%(w/w)未満である。
【0091】
所定の実施形態において、前記浸透促進剤が存在する場合には、前記製剤の約1~10%である。
【0092】
所定の実施形態において、前記sAIは前記製剤の約0.01~10%(w/w)、約0.05~5%(w/w)、約0.1~1%(w/w)又は約0.5~1%(w/w)である。特定の実施形態において、前記sAIは前記製剤の約0.5~1%(w/w)である。
【0093】
所定の実施形態において、前記油相は局所製剤用に35℃以下の温度又は周囲条件下(例えば約15~30℃の温度又は約25℃の温度)で処理することができる医薬的に許容可能な油脂を含む。前記油相はタラ肝油、軽質鉱油、重質鉱油、サメ肝油、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、植物油又はこれらの混合物を含むことができる。前記植物油は例えばヒマシ油、コーン油、キャノーラ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油又は大豆油を含むことができる。
【0094】
所定の実施形態において、前記油相はトリアセチン、ジアセチン、トコフェロール又は鉱油等の生体適合性の油脂を含む。使用可能なその他の生体適合性の油脂としては、(その開示内容全体を本願に援用する)米国特許第5,633,226号に列挙されている油脂が挙げられ、CAPTEX(TM)200、WHITEPSOL(TM)H-15及びMYVACET(TM)9-45K、水添カカオ脂、ヤシ油、ニレ種子油、パーム油、綿実油、大豆油、パセリ種子油、マスタード種子油、アマニ油、キリ油、グレープフルーツ種子油、月桂樹油、ナタネ油、コーン油、月見草油、トウモロコシ油、オリーブ油、パーシック油、ケシ油、サフラワー油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ油、オレイン酸エチルエステル油、シキミ油、ユーカリ油、バラ油、アーモンド油、ラッカセイ油、ヒマシ油、鉱油、ピーナッツ油、植物油及び誘導体、スクロースポリエステル、シリコーン油並びにパラフィン油が挙げられる。
【0095】
所定の実施形態において、前記sAIは化粧品又は医薬品有効成分である。sAIの例としては、化合物1、化合物2並びにいずれも本発明の局所製剤でAPIとして使用することができるWO2009/152133及びWO2011/068881(本願に援用)に開示されているようなJAKファミリーキナーゼのいずれかの他の低分子阻害剤等の化合物、シクロスポリンA又はベタメタゾンジプロピオン酸エステルが挙げられる。
【0096】
所定の実施形態において、前記sAIは皮膚又は粘膜疾患又は病態を治療するために有効であり、限定されないが、乾癬、局面型乾癬、爪乾癬、乾癬性関節炎、化膿性汗腺炎、円形/汎発性脱毛症、白斑、AKT関連角化症(老人性疣贅)、掻痒症及びアトピー性皮膚炎が挙げられる。
【0097】
所定の実施形態において、前記sAIはニトログリセリン(狭心症)、スコポラミン(乗り物酔い)、フェンタニル(疼痛管理)、ニコチン(禁煙)、エストロゲン(ホルモン補充療法)、テストステロン(男性性腺機能低下症)、クロニジン(高血圧)及びリドカイン(局所麻酔)である。
【0098】
所定の実施形態において、前記sAIは局所座瘡薬(例えばサリチル酸、トレチノイン、過酸化ベンゾイル、エリスロマイシン、過酸化ベンゾイル/硫黄、過酸化ベンゾイル/ヒドロコルチゾン、クリンダマイシン、過酸化ベンゾイル/クリンダマイシン、アゼライン酸、過酸化ベンゾイル/エリスロマイシン、アダパレン、クリンダマイシン/トレチノイン、ダプソン、過酸化ベンゾイル/サリチル酸、アダパレン/過酸化ベンゾイル、クリンダマイシン/トレチノイン、レゾルシノール/硫黄、スルホサリチル酸メクロサイクリン、過酸化ベンゾイル/ヒアルロン酸ナトリウム又はその組合せ)、局所麻酔薬(例えば塩化ベンザルコニウム/リドカイン、リドカイン、リドカイン/プリロカイン、ベンゾカイン、プラモキシン、テトラカイン、リドカイン/プリロカイン、ジブカイン、ヒドロコルチゾン/リドカイン、フェノール、カラミン/プラモキシン、塩化ベンザルコニウム/リドカイン、ペンタフルオロプロパン/テトラフルオロエタン、リドカイン/メントール、リドカイン/テトラカイン、アロエベラ/コラーゲン/リドカイン、カプサイシン/リドカイン/メントール、ヒドロコルチゾン/リドカイン/サイリウム又はその組合せ)、局所抗感染症薬(例えばマラチオン、イベルメクチン、スピノサド、銀、シネカテキンス、ドコサノール、酢酸、イミキモド、ペルメトリン、ピペロニルブトキシド/ピレトリン、アロエ多糖体/ヨードキノール、クロロキシン、クロタミトン、ニトロフラゾン、カデキソマー・ヨウ素、ベンジルアルコール/酢酸亜鉛、ベンジルアルコール又はその組合せ)、局所酒さ治療薬(例えばメトロニダゾール、アゼライン酸、ブリモニジン又はその組合せ)、局所抗生物質(例えばスルファセタミドナトリウム/硫黄、バシトラシン/ポリミキシンb、エリスロマイシン、スルファセタミドナトリウム、銀スルファジアジン、レタパムリン、ムピロシン、バシトラシン/ネオマイシン/ポリミキシンb、バシトラシン/ポリミキシンb、ネオマイシン/ポリミキシンb/プラモキシン、バシトラシン、スルファセタミドナトリウム/尿素、ネオマイシン/ポリミキシンb、スルファセタミドナトリウム/硫黄/尿素、スルファセタミドナトリウム/尿素、マフェニド、テトラサイクリン又はその組合せ)、局所抗真菌薬(例えばトルナフタート、安息香酸/サリチル酸、ウンデシレン酸、ケトコナゾール、ナフチフィン、ナイスタチン、ミコナゾール、ミコナゾール/酸化亜鉛、エコナゾール、シクロピロクス、オキシコナゾール、セルタコナゾール、エフィナコナゾール、テルビナフィン、タバボロール、クロトリマゾール、スルコナゾール、サリチル酸/チオ硫酸ナトリウム、アムホテリシンb、クロロキシレノール/ウンデシレン酸、ハロプロジン、クリオキノール、ルリコナゾール、ブテナフィン、ケトコナゾール/ピリチオン亜鉛又はその組合せ)、局所抗ヒスタミン薬(例えばカラミン/ジフェンヒドラミン、ジフェンヒドラミン、ドキセピン又はその組合せ)、局所抗新生物薬(例えばフルオロウラシル、インゲノール、イミキモド、メクロレタミン又はその組合せ)、局所抗乾癬薬(例えばタザロテン、ベタメタゾン/カルシポトリエン、カルシポトリエン、カルシトリオール、アントラリン、メトキサレン、レゾルシノール又はその組合せ)、局所抗ウイルス薬(例えばアシクロビル、ペンシクロビル又はその組合せ)、局所収斂薬(例えばタンパク質をその表面から沈殿させることにより皮膚細胞又は粘膜を収縮又は縮小させる薬剤)、局所創傷清拭剤(例えばパパイン/尿素、ペルーバルサム油/ヒマシ油/トリプシン、銅クロロフィリン錯体/パパイン/尿素、コラーゲナーゼ又はその組合せ)、局所脱色剤(例えばフルオシノロン/ハイドロキノン/トレチノイン、ハイドロキノン、モノベンゾン又はその組合せ)、局所エモリエント剤(例えばエモリエント剤、尿素、乳酸アンモニウム、サリチル酸/尿素、ビタミンA、D及びE、乳酸アンモニウム/プラモキシン、ビタミンA及びD、乳酸アンモニウム/尿素、サリチル酸/尿素、アロエベラ、ラノリン又はその組合せ)、局所角質溶解薬(例えばサリチル酸、ポドフィロックス、ポドフィルム樹脂、トリクロロ酢酸又はその組合せ)、局所非ステロイド性抗炎症薬(例えばジクロフェナク)、局所光化学治療薬(例えばアミノレブリン酸、アミノレブリン酸メチル、メトキサレン又はその組合せ)、局所発赤薬(例えばサリチル酸メチル、サリチル酸トロラミン、メントール、樟脳/メントール、カプサイシン/メントール/サリチル酸メチル、メントール/サリチル酸メチル、樟脳又はその組合せ)、局所ステロイド薬(例えばトリアムシノロン、フルオシノロン、デソニド、ベタメタゾン、ハルシノニド、ヒドロコルチゾン、ジフロラゾン、クロベタゾール、デソキシメタゾン、モメタゾン、クロベタゾール、フルチカゾン、フルオシノニド、クロコルトロン、フルランドレノリド、ハロベタゾール、アルクロメタゾン、ジフロラゾン、ヒドロコルチゾン/サリチル酸/硫黄、アムシノニド、メチルプレドニゾロン、乳酸アンモニウム/モメタゾン、乳酸アンモニウム/ハロベタゾール又はその組合せ)、局所ステロイド薬と抗感染症薬の併用(例えばナイスタチン/トリアムシノロン、ベタメタゾン/クロトリマゾール、クリオキノール/ヒドロコルチゾン、アロエベラ/ヒドロコルチゾン/ヨードキノール、ヒドロコルチゾン/ネオマイシン/ポリミキシンb、バシトラシン/ヒドロコルチゾン/ネオマイシン/ポリミキシンb、ヒドロコルチゾン/ヨードキノール、アシクロビル/ヒドロコルチゾン、フルオシノロン/ネオマイシン、ヒドロコルチゾン/ケトコナゾール又はその組合せ)又はその他の局所薬(例えばメントール/酸化亜鉛、塩化アルミニウム六水和物、ピリチオン亜鉛、酸化亜鉛、ジフェンヒドラミン/ヒドロコルチゾン、ヒアルロン酸ナトリウム、ビマトプロスト、サリチル酸/硫黄、コールタール、エフロルニチン、塩化アルミニウム六水和物、カプサイシン、硫化セレン、ピメクロリムス、ミノキシジル、タクロリムス、ベントクアタム、アラントイン/樟脳/フェノール、コールタール/サリチル酸/硫黄、カラミン、ホルムアルデヒド、サリチル酸/硫黄、硫黄、乳酸、アリトレチノイン、デクスパンテノール、ベカプレルミン、メキノール/トレチノイン、ベキサロテン、ペルーバルサム油/ヒマシ油、コールタール/サリチル酸又はその組合せ)である。
【0099】
所定の実施形態において、前記浸透促進剤はジメチルイソソルビド、ミリスチン酸イソプロピル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(例えば商品名TRANSCUTOL(R)HPのジエチレングリコールモノエチルエーテル)、エチルアルコール、オレイン酸エチル、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ポリエチレングリコール、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド又はプロピレンカーボネートを含む。
【0100】
所定の実施形態において、前記方法は工程(1)又は工程(2)の後にsAIを加えて均質になるまで混合する工程を更に含む。
【0101】
所定の実施形態において、前記方法は更に1種以上の不活性添加物又はその組合せを添加する工程を含み、限定されないが、湿潤剤、肌理改善剤、水分調節剤、pH調節剤、浸透圧調節剤、UVA及びUVB遮断剤、並びに酸化防止剤が挙げられる。例えば、前記酸化防止剤はα-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソールもしくはブチル化ヒドロキシトルエン、スーパーオキシドジスムターゼ、ユビキノール又は所定の金属キレート剤とすることができる。当業者は、予想される添加によって本発明に固有の有利な性質が悪影響を受けないように又は実質的に悪影響を受けないように、これらの組成物に場合により添加する化合物を選択することができよう。
【0102】
特定の実施形態において、前記方法は(1)第1の反応器で軽質鉱油約15%(w/w)を含有する油相をSEPINIO P600,HSDポリマー約3%(w/w)を含有する乳化剤と混合して混合物を形成し、前記混合物を均質になるまで撹拌する工程と;(2)イミダゾリジニル尿素を含む防腐剤約0.2%(w/w)と、TRANSCUTOL(R)HPを含む浸透促進剤約10%(w/w)と、精製水約71.8%(w/w)を第2の反応器で混合することにより調製した水相を加えて撹拌を続け、プラセボ製剤を形成する工程と;(3)前記プラセボ製剤に固形有効成分(sAI)例えば約1%(w/w)を加え、均質になるまで混合する工程を含み;前記方法は前記sAIを35℃よりも高温に暴露する工程を含まず、例えば全操作を室温付近で実施する。
【0103】
所定の実施形態では、工程(2)で前記水相と工程(1)の前記均質混合物の混合を10L反応器で250rpmにて実施する。場合により、得られた水中油型エマルションを周期的、例えば12分毎等にサンプリングし、光学顕微鏡により液滴径を検査する。
【0104】
本発明の関連態様は本発明の皮膚又は粘膜表面への局所適用局所製剤を更に製造するために使用することができるプラセボ製剤の製造方法を提供し、前記方法は(1)油相を乳化剤と混合して混合物を形成し、前記混合物を均質になるまで撹拌する工程と;(2)水相を加えて撹拌を続け、前記プラセボ製剤を形成する工程を含む。前記プラセボ製剤を固形有効成分と混合して発明の局所製剤を形成することができ、前記固形有効成分を35℃よりも高温に暴露する必要がない。
【0105】
本発明の別の態様は皮膚又は粘膜表面に適用するための化粧品又は医薬品局所製剤を提供し、前記局所製剤は(1)油脂(例えば鉱油)約1~30%(w/w)(例えば約10~20%又は約15%)と;(2)乳化剤(例えば逆相エマルション系によるSEPINEO(TM)P600型水和膨潤性液滴(HSD)ポリマー(例えばアクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリン酸ナトリウム共重合体/イソヘキサデカン/ポリソルベート80又は商品名SEPINEO(TM)P600のHSDポリマー))約1~5%(w/w)(例えば3%)と;(3)浸透促進剤(例えばジエチレングリコールモノエチルエーテル又はTRANSCUTOL(R)HP)約1~15%(w/w)(例えば10%)と;(4)防腐剤(例えばイミダゾリジニル尿素)約0.001~2%(w/w)(例えば約0.01~1%、約0.1~0.5%又は約0.2%)と;(5)水相(例えば精製水)約65~90%(w/w)(例えば82%)と;(6)化粧品又は医薬品有効成分約0.01~10%(w/w)(例えば約0.05~5%、約0.1~1%又は約0.5~1%)を含有する。
【0106】
所定の実施形態において、前記局所製剤は水中油型製剤である。
【0107】
所定の実施形態において、前記局所製剤はクリーム、ローション、ジェル又はジェルクリームである。
【0108】
所定の実施形態において、前記粘膜表面は口腔粘膜、膣粘膜表面、眼の粘膜又は鼻の粘膜である。
【0109】
所定の実施形態において、前記局所製剤は(1)油脂(例えば鉱油)約15%(w/w)と;(2)乳化剤(例えばSEPINEO(TM)P 600)約3%(w/w)と;(3)浸透促進剤(例えばジエチレングリコールモノエチルエーテル又はTRANSCUTOL(R)P(純度>99.7%)もしくはHP(純度>99.9%))約10%(w/w)と;(4)防腐剤(例えばイミダゾリジニル尿素)約0.2%(w/w)と;(5)精製水約82%(w/w)と;(6)化粧品又は医薬品有効成分約0.5~1%(w/w)を含有する。特定の実施形態としては、実施例1~4等の実施例に開示する実施形態又は(例えばこれらの実施例でプラセボ製剤に1種以上のAPIを加えることにより)これらの実施例に基づいて誘導することができる実施形態も挙げられる。
【0110】
所定の実施形態において、前記局所製剤の有効成分は化合物1、化合物2並びにWO2009/152133及びWO2011/068881に開示されているようなJAKファミリーキナーゼのいずれかの他の低分子阻害剤、シクロスポリンA又はベタメタゾンジプロピオン酸エステルであり、いずれも本発明の局所製剤でAPIとして使用することができ、あるいは前記有効成分は(限定されないが)、乾癬、局面型乾癬、爪乾癬、乾癬性関節炎、化膿性汗腺炎、円形/汎発性脱毛症、白斑、AKT関連角化症(老人性疣贅)、掻痒症又はアトピー性皮膚炎等の皮膚又は粘膜疾患又は病態を治療するために有効である。
【0111】
所定の実施形態において、前記化粧品又は医薬品局所製剤は更に1種以上の不活性添加物又はその組合せを含有しており、限定されないが、湿潤剤、肌理改善剤、水分調節剤、pH調節剤、浸透圧調節剤、UVA及びUVB遮断剤、並びに酸化防止剤が挙げられる。例えば、前記酸化防止剤はα-トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソールもしくはブチル化ヒドロキシトルエン、スーパーオキシドジスムターゼ、ユビキノール又は所定の金属キレート剤とすることができる。
【0112】
関連態様において、本発明は本願に記載するような本発明の方法のいずれかを使用して製造された化粧品又は医薬品局所製剤を提供する。
【0113】
別の関連態様において、本発明は本発明の方法に従って本発明の化粧品又は医薬品局所製剤を製造するために有用なプラセボ製剤を提供し、前記プラセボ製剤は医薬品又は化粧品有効成分を含有していない点を除いて本発明の化粧品又は医薬品局所製剤と実質的に同一である。本願で上記及び下記に記載する化粧品又は医薬品局所製剤の種々の実施形態から前記有効成分を除いたものも本願の一部とする。
【0114】
本発明の別の態様は疾患又は病態に付随する皮膚又は粘膜表面病変の治療方法を提供し、前記方法は本発明の局所製剤のいずれか1種を前記病変に適用することを含む。
【0115】
所定の実施形態において、前記病変は乾癬、局面型乾癬、爪乾癬、乾癬性関節炎、化膿性汗腺炎、円形/汎発性脱毛症、白斑、AKT関連角化症(老人性疣贅)、掻痒症又はアトピー性皮膚炎に起因又は付随する。
【0116】
以上、本発明を概説し、以下に本発明の特定の態様及び実施形態を更に詳細に記載するが、当然のことながら、特に禁止又は否定しない限り、本発明の如何なる特定の態様及び実施形態を本発明の他の如何なる特定の態様及び実施形態と組合せてもよい。
【0117】
2.HSDポリマー
商品名SEPINEO(TM)P600のHSDポリマーは乳化剤、増粘剤及び安定剤を兼用する多機能物質であるという点で本発明の局所薬物製剤に適している。製造業者によると、これは逆相エマルション系による水和膨潤性液滴(HSD)ポリマーであり、予め中和された不連続ポリマー相が外側の連続油相の内側に均一に分配されている。逆相界面活性剤は水/油界面に集まり、油相中に広がる。水の存在下でSEPINEO(TM)P600型HSDポリマーは転相し、瞬時にポリマー網目構造が構築され、数秒で安定したジェルを形成する。従って、油相の種類(例えば極性油、非極性油、植物油、シリコーン油、エステル)に関係なく、多くの油相を乳化・安定化することが可能であり、従来の乳化剤を添加する必要がない。
【0118】
所定の実施形態において、得られるジェルクリームは安定しており、外観が均質であり、触感と皮膚への伸びが非常によい。
【0119】
その増粘性/乳化性に加え、商品名SEPINEO(TM)P600のHSDポリマーは更に従来のエマルションを安定化する。所定の実施形態において、商品名SEPINEO(TM)P600のHSDポリマーを安定剤として使用する場合、その濃度は製剤の他の成分の種類に応じて約0.5%~2.0%(w/w)とすることができる。
【0120】
エマルション製剤では、SEPINEO(TM)P600型HSDポリマーを乳化工程の最後に加えてもよいし、工程の最初に加えてもよく、油相に加えてもよいし、水相に加えてもよい。
【0121】
ジェルクリーム製剤では、SEPINEO(TM)P600型HSDポリマーを油相に導入してもよいし、水相に導入してもよい。但し、油相に導入したほうが撹拌工程で必要なエネルギーが少なくて済む傾向がある。
【0122】
ヒドログリコール/ヒドロアルコール/アセトンジェルでは、先ず水性ジェルを調製した後に撹拌下に徐々に溶媒を加えることが推奨される。
【0123】
SEPINEO(TM)P600型HSDポリマーの量は所望の製剤の種類に応じて調整することができる。例えば、ジェルが所望される場合には、必要な増粘力を提供するために5%(w/w)までを使用することができる。同様に、ジェルクリームが所望される場合には、必要な乳化力を提供するために5%(w/w)までを使用することができる。クリーム製剤では、所望の安定化力を提供するために約0.5~2%(w/w)を使用することができる。
【0124】
3.浸透促進剤(PE)
APIの経皮送達における最大の障害は皮膚結合性、皮膚代謝、皮膚毒性及びラグタイムが長い等の通常の問題に加え、皮膚の最外層である角質層(SC)の閉塞性である。
【0125】
経皮吸収を促進するために、薬物誘導体、過飽和系、物理的アプローチ及びSCへの薬物拡散を助長する化学的浸透促進剤(吸収促進剤)の使用を含む種々の方法が開発されている。後者については、その皮膚浸透促進能に基づいて多数の化学物質が使用されており、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコール又は脂肪アルコールエーテル、脂肪エーテル、低級アルコール、グリセロールエステル、多価アルコール、ジオール、アミド(例えばN,N-ジエチル-m-トルアミド)、アミン、テルペン、極性溶媒、ピロリドンとその誘導体、スルホキシド、アゾン(別称ラウロカプラム)、界面活性剤、レシチン、ポリオール、グリコール、第四級アンモニウム化合物、シリコーン、アルカン酸エステル、所定の生物学的製剤、酵素、錯化剤、大環状化合物、溶媒等が挙げられ、いずれも本発明の局所製剤及び方法で潜在的に使用することができる。所定の実施形態において、本発明に有用な浸透促進剤は本発明の局所製剤とその製造方法で使用するために加熱(例えば35℃を超える加熱)を必要としない。
【0126】
本願で使用する「浸透促進」とは化粧品又は医薬品有効成分(即ちAPI)が皮膚を透過する速度を増すようにAPIの皮膚透過性を高めることを意味する。同様に、「浸透促進剤」又は単にPEとは、このような浸透促進を実現する薬剤又は薬剤混合物を意味する。
【0127】
所定の実施形態において、本発明に適したPEは、(1)薬物の皮膚拡散性を高める;(2)SC脂質流動化を生じ、バリア機能を低下させる(可逆的作用);(3)基剤中の薬物の熱力学的活動度を増加及び最適化させる;(4)薬物の分配係数を変化させる;並びに(5)製剤から皮膚の上層中へのAPIの放出を増加するというメカニズムのうちの1種以上によりAPIの皮膚浸透を促進する。
【0128】
所定の実施形態において、本発明に適したPEは以下の特徴、即ち皮膚に対して非毒性、非刺激性、非アレルギー性及び/又は非感作性である;少なくとも十分な浸透作用を発揮するために必要な濃度で薬理的に不活性である;効果が即時的、予測的及び/又は可逆的である;医薬品製剤に配合し易い;化粧品として許容可能であるのうちの1種以上を備える。
【0129】
所定の実施形態では、前記PEを飽和API濃度未満のAPIと併用する。所定の実施形態では、前記PEを飽和濃度以上のAPIと併用する。
【0130】
所定の実施形態において、前記PEは親油性APIと親水性APIの両方の送達を促進するために長鎖脂肪酸等の脂肪酸である。例えば、前記脂肪酸はオレイン酸(シス-9-オクタデセン酸)又はその機能的誘導体とすることができる。所定の実施形態において、前記PEは脂肪酸エステル、脂肪アルコールもしくは脂肪アルコールエーテル、脂肪エーテル、低級アルコール、グリセロールエステル、多価アルコール、ジオール、アミド(例えばN,N-ジエチル-m-トルアミド)、アミン、テルペン、極性溶媒又はその混合物である。
【0131】
所定の実施形態において、前記脂肪酸はアルカン酸、カプリン酸、二塩基酸、エチルオクタデカン酸、ヘキサン酸、乳酸、ラウリン酸、リノエライジン酸、リノール酸、リノレン酸、ネオデカン酸、オレイン酸(シス-9-オクタデセン酸)、パルミチン酸、ペラルゴン酸、プロピオン酸又はバクセン酸である。所定の実施形態において、前記PEはミリスチン酸イソプロピル等のC8-C22脂肪酸の少なくとも1種である。
【0132】
所定の実施形態において、前記脂肪アルコールエーテルはα-モノグリセリルエーテル、EO2-オレイルエーテル、EO5-オレイルエーテル、EO10-オレイルエーテル、又はポリグリセロール及びアルコールのエーテル誘導体(例えば1-O-ドデシル-3-O-メチル-2-O-(2’,3’-ジヒドロキシプロピル)グリセロール)である。
【0133】
所定の実施形態において、前記脂肪酸エステルはモノラウリン酸グリセロール、グリコール酸、ラウロイルグリコール酸、酢酸ブチル、乳酸セチル、N,N-ジメチルアミノ酢酸デシル、N,N-ジメチルアミノイソプロピオン酸デシル、オレイン酸ジエチレングリコール、セバシン酸ジエチル、コハク酸ジエチル、セバシン酸ジイソプロピル、N,N-ジメチルアミノ酢酸ドデシル、(N,N-ジメチルアミノ)酪酸ドデシル、N,N-ジメチルアミノイソプロピオン酸ドデシル、2-(ジメチルアミノ)プロピオン酸ドデシル、EO5-オレイルエステル、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸エチル、グリセロールモノエーテル、モノラウリン酸グリセロール、モノオレイン酸グリセロール、モノリノール酸グリセロール、イソステアリン酸イソプロピル、リノール酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル/脂肪酸モノグリセリド併用、ミリスチン酸イソプロピル/エタノール/L-乳酸(87:10:3)併用、パルミチン酸イソプロピル、酢酸メチル、カプロン酸メチル、ラウリン酸メチル、プロピオン酸メチル、吉草酸メチル、1-モノカプロイルグリセロール、モノグリセリド(中鎖長)、ニコチン酸エステル(ベンジル)、酢酸オクチル、N,N-ジメチルアミノ酢酸オクチル、オレイン酸オレイル、N-アセチルプロリン酸n-ペンチル、モノラウリン酸プロピレングリコール、ジラウリン酸ソルビタン、ジオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリラウリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、スクロースヤシ油脂肪酸エステル混合物、モノラウリン酸スクロース、モノオレイン酸スクロース又はN,N-ジメチルアミノ酢酸テトラデシルである。
【0134】
特定の理論に拘泥する意図はないが、本発明の脂肪酸PEはSC内の細胞間脂質二重層を選択的に擾乱させることにより、APIのSC浸透を促進すると考えられる。
【0135】
所定の実施形態では、特に親油性薬物/APIの場合、飽和脂肪酸よりも不飽和脂肪酸のほうが経皮吸収を促進するのに(例えば5倍、10倍、15倍、20倍又はそれ以上)有効であるという一般的傾向に基づき、脂肪酸異性体の二重結合数とシス/トランス配置を調節することにより、浸透促進効果の差を調節することができる。
【0136】
所定の実施形態において、前記PEは場合により更にプロピレングリコール、エタノール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール及びデクスパンテンの1種以上を含むオレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、アラキドン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、カプリル酸、イソステアリン酸、ミリスチン酸イソプロピル又はミリスチン酸である。所定の実施形態において、前記PEはパルミチン酸であり、前記局所製剤はSC(特にアルキル基含有量の多い領域)へのAPIの浸透を促進するように製剤化される。所定の実施形態において、前記PEはミリスチン酸であり、前記局所製剤は表皮へのAPIの浸透を促進するように製剤化される。所定の実施形態において、前記PEはサリチル酸オクチルであり、前記局所製剤は表皮と真皮内への水溶性又は油溶性APIの浸透を促進するように製剤化される。
【0137】
所定の実施形態において、前記脂肪酸PEは直鎖飽和脂肪酸のように実質的に皮膚刺激のないものである。
【0138】
その他の脂肪酸系PEについては、MX9705070、GR1004995、US2005-020552A1、WO05/060540、CA2,420,895、MX9800545、WO04/054552、NZ537359、WO98/18417、WO96/30020、DE4301783、US4,885,174、US4,983,396、NZ222346、CA1,280,974及びUS4,626,539を参酌されたい。
【0139】
所定の実施形態において、前記PEは多数の親油性化合物及び親水性化合物の経皮浸透パラメーターを増加させるために使用することができるテルペンである。特定の理論に拘泥する意図はないが、テルペンは皮膚のバリア性を変化させるようにSC脂質の細胞間充填に影響を与えると考えられる。
【0140】
所定の実施形態において、前記テルペンはリナロール、シネオール(例えばユーカリプトール)、リモネン(例えばR-(C)-リモネン、d-リモネン)、l-メントール、フォルスコリン、メントン、メントール、テルピネオール、ゲラニオール、ネロリドール、チモール、ピロリドン環誘導体、アルコール系テルペン(例えばバジル油、メチルチャビコール、オイゲノール、リナロール、樟脳、桂皮酸メチル)、丁子油、ショウガ科(Zingiberaceae)ウコン属(Curcuma)に由来する精油ないし揮発油抽出液、ゲルマクロン又はその天然もしくは合成成分である。
【0141】
所定の実施形態では、テルペンを主要PEとして使用し、浸透促進を最適にするために例えば多価アルコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル、テトラグリコール又はその混合物を補助的浸透促進剤として使用する。
【0142】
その他のテルペン系PEについては、WO08/058220、WO05/105059、US2005-244522、WO90/08553及びUS6,723,337を参酌されたい。
【0143】
所定の実施形態において、前記PEは脂肪アルコールないし脂肪族アルコール(例えばオクタノール、ミリスチルアルコール、デカノールないしデシルアルコール、ウンデカノールないしウンデシルアルコール、トリデカノール、n-オクタノール、i-ノナノール、ラウリルアルコール(ドデカノール)、オレイルアルコール、ドデシルアルコール、プロピレングリコール、ネロリドール、リノレニルアルコール、ポリエチレングリコール、C9-C11、C12-C13もしくはC12-C15脂肪アルコール又はその混合物)である。所定の実施形態では、アルコール類に2個までの不飽和結合を加えるとPE効果が一般に増加するが、二重結合を3個導入すると活性が低下するという認識に基づいて前記PEの効果を調節する。所定の実施形態において、前記PEはオレイルアルコール等の脂肪酸の非極性機能的誘導体である。
【0144】
その他の脂肪アルコール系PEについては、US2007-212410、WO07/100757、EP0224981及びUS2007-065494を参酌されたい。
【0145】
所定の実施形態において、前記PEは多数の親水性API及び親油性APIの透過性を促進するために、ピロリドン又はその誘導体(例えばN-メチル-2-ピロリドン(NMP)や2-ピロリドン(2P))である。
【0146】
所定の実施形態において、前記PEはN-シクロヘキシル-2-ピロリドン、1-ブチル-3-ドデシル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1,5-ジメチル-2-ピロリドン、4,4-ジメチル-2-ウンデシル-2-オキサゾリン、1-エチル-2-ピロリドン、1-ヘキシル-4-メチルオキシカルボニル-2-ピロリドン、1-ヘキシル-2-ピロリドン、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジノン、3-ヒドロキシ-N-メチル-2-ピロリジノン、1-イソプロピル-2-ウンデシル-2-イミダゾリン、1-ラウリル-4-メチルオキシカルボニル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ピログルタミン酸エステル又は2-ピロリドン(2-ピロリジノン)である。
【0147】
所定の実施形態では、前記ピロリドン系PEを単独使用するか又はオレイン酸、オレイルアルコール、リノール酸、リノール酸イソプロピル、アゾン、ブタンジオール及び部分メチル化β-シクロデキストリン(PMβCD)から構成される群から選択される少なくとも1種の皮膚浸透促進剤と併用する。
【0148】
その他のピロリドン系PEについては、US5,262,165及びEP0417496を参酌されたい。
【0149】
所定の実施形態において、前記PEは親水性APIと親油性APIの両方の浸透を促進するためにジメチルスルホキシド(DMSO)等のスルホキシドである。
【0150】
特定の理論に拘泥する意図はないが、DMSOは製剤からの薬物分配を促進することによりSCの細胞間構造タンパク質を変性させるという方法又は脂質鎖の規則的構造の破壊により脂質流動性を促進し、SCから脂質構造、脂質タンパク質構造及び核タンパク質構造を溶出させることにより皮膚の物理的構造を変化させるという方法の一方により、有効成分の浸透を促進すると考えられる。DMSOの活性は濃度依存的であり、促進剤濃度が>60%のときに正反応が認められる。
【0151】
その他のDMSO様PEとしては、ジメチルアセトアミド(DMAC)、ジメチルホルムアミド(DMF)、環状スルホキシド、デシルメチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド及び2-ヒドロキシウンデシルメチルスルホキシド等の同様の化学的に類縁の化合物が挙げられる。
【0152】
所定の実施形態では、DMSO様PEをデシルメチルスルホキシド、N-ドデシルピロリドン、デカノール、ドデカノール又は有機酸と併用してもよい。PEとしてのDMSO及び類縁試薬については、WO05/120407、WO93/18752及びUS6,113,921参照。
【0153】
所定の実施形態において、前記PEはアゾン(1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、別称ラウロカプラム)又は1-n-ドデシルアザシクロヘプタン-2-チオン等の誘導体である。アゾンは2種類の強力な浸透促進剤であるピロリドンとデシルメチルスルホキシドのハイブリッドであるとみなされ、親水性APIと疎水性APIのどちらに対しても低濃度で顕著な促進効果を示すことが知られている。特定の理論に拘泥する意図はないが、アゾンはSCの脂質領域との相互作用によりその浸透促進効果を発揮すると考えられる。
【0154】
所定の実施形態において、前記アゾンは非刺激性且つ非アレルギー性である。所定の実施形態において、前記アゾン(例えば約2%)はプロピレングリコール溶液である。所定の実施形態では、アゾンを脂肪酸(例えばオレイン酸)、脂肪酸エステル、サンスクリーン剤エステル、(N,N-ジ置換アミノ)カルボン酸長鎖アルキル、1,3-ジオキサシクロペンタン又は1,3-ジオキサシクロヘキサン等の別のPEと併用する。
【0155】
所定の実施形態において、前記アゾンはN-アシルヘキサヒドロ-2-オキソ-1H-アゼピン、N-アルキルジヒドロ-1,4-オキサゼピン-5,7-ジオン、N-アルキルモルホリン-2,3-ジオン、N-アルキルモルホリン-3,5-ジオン、アザシクロアルカン誘導体(-ケトン、-チオン)、アザシクロアルケノン誘導体、1-[2-(デシルチオ)エチル]アザシクロペンタン-2-オン(HPE-101)、N-(2,2-ジヒドロキシエチル)ドデシルアミン、1-ドデカノイルヘキサヒドロ-1H-アゼピン、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン(アゾン、別称ラウロカプラム)、N-ドデシルジエタノールアミン、N-ドデシルヘキサヒドロ-2-チオ-1H-アゼピン、N-ドデシル-N-(2-メトキシエチル)アセトアミド、N-ドデシル-N-(2-メトキシエチル)イソブチルアミド、N-ドデシルピペリジン-2-チオン、N-ドデシル-2-ピペリジノン、N-ドデシルピロリジン-3,5-ジオン、N-ドデシルピロリジン-2-チオン、N-ドデシル-2-ピロリドン、1-ファルネシルアザシクロヘプタン-2-オン、1-ファルネシルアザシクロペンタン-2-オン、1-ゲラニルアザシクロヘプタン-2-オン、1-ゲラニルアザシクロペンタン-2-オン、ヘキサヒドロ-2-オキソアゼピン-1-酢酸エステル、N-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、1-ラウリルアザシクロヘプタン、2-(1-ノニル)-1,3-ジオキソラン、1-N-オクチルアザシクロペンタン-2-オン、N-(1-オキソドデシル)ヘキサヒドロ-1H-アゼピン、N-(1-オキソドデシル)モルホリン、1-オキソヒドロカルビル置換アザシクロヘキサン、N-(1-オキソテトラデシル)ヘキサヒドロ-2-オキソ-1H-アゼピン又はN-(1-チオドデシル)モルホリンである。
【0156】
PEとしてのアゾン又はその誘導体の使用については、例えばNZ222346、US5,391,548、US4,886,783、MXPA06006041、US4,562,075、EP0095169、US4,405,616及びUS5,270,346参照。
【0157】
所定の実施形態において、前記PEは主に界面吸着により機能して生体膜と相互作用し、化合物の総合的な浸透促進に寄与する表面活性剤ないし界面活性剤である。所定の実施形態において、前記界面活性剤はカチオン性界面活性剤又はアニオン性界面活性剤である。所定の実施形態において、前記界面活性剤は非イオン性界面活性剤である。
【0158】
界面活性剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム)、ラウリルグルコシド、ポリソルベート20、ココアミドプロピルベタイン、モノ-9-オクタデセン酸ソルビタンポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)とその誘導体、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムと1-フェニルピペラジンの併用、N-ラウリルサルコシンとSpan20/モノラウリン酸ソルビタンの併用、アスコルビン酸塩、両性カチオン及びアニオン、チオグリコール酸カルシウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、3,5-ジヨードサリチル酸ナトリウム、イオン性界面活性剤(ROONa、ROSO3Na、RNH3Cl)、ラウロイルコリンヨージド、5-メトキシサリチル酸ナトリウム、モノアルキルホスフェート、2-PAMクロリド、4-PAMクロリド(N-メチルピコリニウムクロリドの誘導体)、カルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、Span(R)20、Tween(R)20及びTween(R)80が挙げられる。例えば、US2007-269379及びJP2003607参照(いずれも本願に援用)。
【0159】
所定の実施形態において、前記PEはBrij30、Brij36T、Brij35、Brij52、Brij56、Brij58、Brij72、Brij76、Brij78、Brij92、Brij96、Brij98、臭化セチルトリメチルアンモニウム、Empicol ML26/F、HCO-60界面活性剤、ヒドロキシポリエトキシドデカン、イオン性界面活性剤(ROONa、ROSO3Na、RNH3C1、R=8~16)、ラウロイルサルコシン、非イオン性界面活性剤、ノノキシノール、オクトキシノール、フェニルスルホン酸CA、Pluronic F68、Pluronic F127、Pluronic L62、ポリオレイン酸エステル(非イオン性界面活性剤)、Rewopal(R)HV10、ラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム(ドデシル硫酸ナトリウム)、オレイン酸ナトリウム、ジラウリン酸ソルビタン、ジオレイン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリラウリン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、Span(R)20、Span(R)40、Span(R)85、Synperonic(R)NP、Triton(R)X-100、Tween(R)20、Tween(R)40、Tween(R)60、Tween(R)80及びTween(R)85から構成される群から選択される古典的な界面活性剤である。
【0160】
所定の実施形態において、前記PEはアミド又はアミンである。所定の実施形態において、前記PEは尿素もしくはその誘導体(例えば不飽和環状尿素)、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ブタノールアミン、ジブタノールアミンもしくはトリブタノールアミン;又はヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド及びラウリン酸脂肪酸ジエタノールアミドから構成される群から選択されるアミドの1種以上を含む。
【0161】
所定の実施形態において、前記PEはアセトアミド誘導体、非環状アミド、N-アダマンチルn-アルカンアミド、クロフィブリン酸アミド、N,N-ジドデシルアセトアミド、ジ-2-エチルヘキシルアミン、ジエチルメチルベンズアミド、N,N-ジエチル-m-トルアミド、N,N-ジメチル-m-トルアミド、エトミーンS12[ビス-(2-ヒドロキシエチル)オレイルアミン]、ヘキサメチレンラウラミド、ラウリルアミン(ドデシルアミン)、オクチルアミド又はオレイルアミンである。
【0162】
例えば、US2005-042268及びWO04/026313参照(いずれも本願に援用)。
【0163】
所定の実施形態において、前記PEはレシチンである。例えば、WO01/35927、US6,011,022、TW265027B及びUS6,143,278参照(いずれも本願に援用)。
【0164】
所定の実施形態において、前記PEはポリオール又はグリコールであり、例えばプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、Sefsol(R)318(中鎖グリセリド)、アルキレングリコール、プロピレングリコール、ラウリン酸ジエタノールアミド又はポリエチレングリコールである。所定の実施形態において、前記PEは脂肪酸(例えばオレイン酸やリノール酸等の不飽和脂肪酸)とプロピレングリコールのコンジュゲート(例えばオレイン酸-プロピレングリコールモノコンジュゲートやリノール酸-プロピレングリコールモノコンジュゲート)である。
【0165】
特定の実施形態において、前記PEはGATTEFOSSE SAS(フランス)から商品名TRANSCUTOL(R)のジエチレングリコールモノエチルエーテルとして市販されているもの等のジエチレングリコールモノエチルエーテルであり、場合によりプロピレングリコール、ミリスチルアルコール、不飽和ポリグリコール化グリセリド、グリセリル及びポリエチレングリコールエステル、ラウリン酸プロピレングリコール、メラルーカオイル、プロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ポリエチレングリコール又はその組合せ等の第2のPEを併用する。例えば、WO96/19976、MX9707868、US5,916,587、WO08/012071、WO08/005240及びUS2005-287195参照。
【0166】
所定の実施形態において、前記PEは塩化ベンザルコニウム、ステアラルコニウム、塩化ベヘンアルコニウム、塩化オレアルコニウム、塩化エルカルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化メチルベンゼトニウム、フェノクチド又はその混合物等の第四級アンモニウム化合物である。所定の実施形態では、脂肪酸及びその塩、脂肪アルコール、分岐鎖脂肪族アルコール、脂肪酸アルキルエステル、ソルビトール及びグリセロールの脂肪酸モノエステル、グリコール酸及びラクチル酸との脂肪酸エステル及びその塩、脂肪酸アミド、アルキルピロリドン並びにその混合物から構成される群から選択され、第四級アンモニウム塩と併用した場合に相乗的な皮膚浸透促進効果を提供することができる1種以上の補助促進剤と前記PEを併用する。例えば、US2005-025833及びUS2003-091620参照。
【0167】
所定の実施形態において、前記PEはシリコーンである。所定の実施形態において、前記PEはジメチコン、シクロメチコン、シメチコン及びオリゴジメチルシロキサンから構成される群から選択される。例えばCA2602018参照。
【0168】
所定の実施形態において、前記PEはアルカン酸エステルである。所定の実施形態において、前記PEは(N,N-ジメチルアミノ)酢酸ドデシル等のアルキル-2-(N,N-ジ置換アミノ)アルカン酸エステル又は2-(N,N-ジメチルアミノ)プロピオン酸ドデシル等の(N,N-ジ置換アミノ)アルカノールアルカン酸エステル又はその混合物である。例えば、MXPA01011560及びCA2,442,479参照。
【0169】
所定の実施形態において、前記PEはL-α-アミノ酸、レシチン、リン脂質、サポニン/リン脂質、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム又はタウログリココール酸ナトリウム等の生物由来である。
【0170】
所定の実施形態において、前記PEは酸性ホスファターゼ、クロナーゼ、オルゲラーゼ、パパイン、ホスホリパーゼA2、ホスホリパーゼC又はトリアシルグリセロールヒドロラーゼ等の酵素である。
【0171】
所定の実施形態において、前記PEはβ-もしくはγ-シクロデキストリンとその誘導体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースリポソーム、ナフタレンジアミドジイミド又はナフタレンジエステルジイミド等の錯化剤である。
【0172】
所定の実施形態において、前記PEは大環状ラクトン、ケトン、酸無水物(最適環数16員環)又は不飽和環状尿素等の大環状化合物である。
【0173】
所定の実施形態において、前記PEはアセトアミド及び誘導体、アセトン、n-アルカン(例えば鎖長7~16)、アルカノール、ジオール、短鎖脂肪酸(例えば炭素数6未満)、シクロヘキシル-1,1-ジメチルエタノール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、エタノール、エタノール/d-リモネン併用、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エトキシジグリコール(TRANSCUTOL(R)P又はHP)、グリセロール、グリコール、塩化ラウリル、リモネン、N-メチルホルムアミド、2-フェニルエタノール、3-フェニル-1-プロパノール、3-フェニル-2-プロペン-1-オール、ポリエチレングリコール(MW300~3000)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエステル、ポリプロピレングリコール425、第1級アルコール(例えばトリデカノール)、Procter & Gambleの溶媒系である低分子極性溶媒(1,2-プロパンジオール、ブタンジール、C3-6トリオール又はその混合物や、C16もしくはC18モノ不飽和アルコール、C16もしくはC18分岐鎖飽和アルコール及びその混合物から選択される極性脂質化合物)、プロピレングリコール、スクアレン、トリアセチン、トリクロロエタノール、トリフルオロエタノール、トリメチレングリコール及びキシレンから構成される群から選択される溶媒又は関連化合物である。
【0174】
本発明で使用することができるその他のPEとしては、1-N-ドデシル-2-ピロリドン-5-カルボン酸、オクチサレート、ラウリルアルコール、モノラウリン酸プロピレングリコール、ラウログリコール、ミリスチン酸イソプロピル、トリアセチン、ノナノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、ラウリン酸メチル、モノラウリン酸グリセロール、モノオレイン酸グリセロール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、1-ドデカノール、オレイルアルコール、乳酸、サリチル酸、胆汁酸塩、モノオレイン、1-メントール、2-n-ノニル-1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン及び1,3-ジオキソラン、アルカノール(例えばエタノール)、エステル(例えば酢酸エチル)並びに長鎖(C7-C16)アルカンが挙げられる。例えば、US5,118,676、US5,118,692、CA2,610,708、NZ522532、KR100287626B及びCA2,299,288参照(いずれも本願に援用)。
【0175】
本発明で使用することができるその他のPEとしては、脂肪族チオール、N,N-ジアルキル置換アミノ酢酸アルキル、アニス油、抗コリン薬前投薬、アスカリドール、二相系誘導体、ビサボロール、カルダモン油、1-カルボン、ケノポディウム(70%アスカリドール)、ケノポディウム油、1,8-シネオール(ユーカリプトール)、タラ肝油(脂肪酸抽出物)、4-デシルオキサゾリジン-2-オン、ジシクロヘキシルメチルアミンオキシド、ヘキサデシルリン酸ジエチル、ジエチルヘキサデシルホスホロアミダート、N,N-ジメチルドデシルアミン-N-オキシド、4,4-ジメチル-2-ウンデシル-2-オキサゾリン、N-ドデカノイル-L-アミノ酸メチルエステル、1,3-ジオキサシクロアルカン(SEPA)、ジチオスレイトール、ユーカリプトール(シネオール)、ユーカリ油、オイゲノール、ハーブ抽出物、ラクタムN-酢酸エステル、N-ヒドロキシエチルアセトアミド、2-ヒドロキシ-3-オレオイルオキシ-1-ピログルタミルオキシプロパン、メントール、メントン、モルホリン誘導体、N-オキシド、ネロリドール、オクチル-β-D-(チオ)グルコピラノシド、オキサゾリジノン、ピペラジン誘導体、極性脂質、ポリジメチルシロキサン、ポリ[2-(メチルスルフィニル)エチルアクリレート]、ポリロタキサン、ポリビニルベンジルジメチルアルキルアンモニウムクロリド、ポリ(N-ビニル-N-メチルアセトアミド)、プロドラッグ、生理食塩水(皮膚水和)、ピログルタミン酸ナトリウム、テルペン及びアザシクロ環化合物、ビタミンE(α-トコフェロール)、並びにイランイラン油が挙げられる。
【0176】
Osborne and Henke,Pharmaceutical Technology,pp.58-66,Nov.1997;及びAhad et al.,Expert Opin.Ther.Patents 19(7):969-988,2009参照。
【0177】
なお、本セクション及び本明細書の他のセクションにおいて総称化学名又は一般式ではなく、TRANSCUTOL(R)のような特定の商品名又は商標名を使用して化合物を表す場合には、この化合物を前記商品名又は商標名から連想される特定の供給元又は製造業者に制限するものではない。逆に、化学的性質は同一であるが、別の供給元又は製造業者により供給されるもの(例えばカルビトール、カルビトールセロソルブ、ジオキシトール、ポリソルブDE及びドワノールDE、ドワノール17、エクタソルブDE、ソルボルゾル)を含めた全ての同等のジエチレングリコールモノエチルエーテルないし2-(2-エトキシエトキシ)エタノール化合物を商品名又は商標名で呼称する各製品の意味に具体的に含むものとする。
【0178】
4.治療対象となる疾患又は病態
本発明の局所製剤(例えばジェル、クリーム、ローション、ジェルクリーム)は何らかの皮膚又は粘膜表面疾患又は病態を治療するための1種以上の化粧品又は医薬品有効成分を配合するように製剤化することができる。
【0179】
所定の実施形態において、前記局所製剤の有効成分は(限定されないが)乾癬、局面型乾癬、爪乾癬、乾癬性関節炎、化膿性汗腺炎、円形/汎発性脱毛症、白斑、AKT関連角化症(老人性疣贅)、掻痒症又はアトピー性皮膚炎等の皮膚又は粘膜疾患又は病態を治療するために有効である。
【0180】
「皮膚又は粘膜疾患」又は「皮膚又は粘膜障害」なる用語は本願では同義に使用し、怪我の傷以外の皮膚又は粘膜異常を意味する。所定の実施形態において、患部皮膚又は粘膜表面は炎症状態を誘発している場合がある。
【0181】
従って、1実施形態において、前記皮膚又は粘膜疾患又は障害は炎症性皮膚/粘膜障害であり、前記皮膚/粘膜表面は毛細血管拡張、白血球浸潤、発赤、発熱、痒み及び/又は疼痛を特徴とする。このような障害の例としては、限定されないが、乾癬、局面型乾癬、爪乾癬、乾癬性関節炎、尋常性天疱瘡、強皮症、アトピー性皮膚炎、円形/汎発性脱毛症、サルコイドーシス、結節性紅斑、化膿性汗腺炎、扁平苔癬、スウィート症候群、AKT関連角化症(老人性疣贅)、掻痒症及び白斑が挙げられる。その他の障害としては、慢性光線性皮膚炎(別称光線過敏性皮膚炎/光線性類細網症候群(PD/AR))、水疱性類天疱瘡及び円形脱毛症が挙げられる。
【0182】
特定の実施形態において、前記皮膚、粘膜又は爪障害はTNFα活性が有害に作用する障害であり、障害に罹患している対象におけるTNFαの存在が障害の病態生理の原因であること又は障害の増悪に寄与する因子であることが示されているか又はその疑いのある皮膚、粘膜及び/又は爪障害並びに他の障害(例えば乾癬)が含まれる。従って、このような障害では、TNFα活性の阻害が障害の症状及び/又は進行を緩和すると予想される。特定の皮膚障害の治療において如何なる抗TNFα抗体、抗体部分、抗体ミメティクス及び他のTNFα阻害剤を使用する場合も、前記障害を治療するために有効であることが分かっている別の治療薬と併用して行われる。
【0183】
例えば、本発明の局所製剤は1種以上の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)又は非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)又はステロイド薬又はそのいずれかの組合せを製剤化するために使用することができる。DMARDの好ましい例はヒドロキシクロロキン、レフルノミド、メトトレキサート、非経口金製剤、経口金製剤及びスルファサラジンである。非ステロイド性抗炎症薬(略称NSAIDS)の好ましい例としてはイブプロフェン等の薬物が挙げられる。他の好ましい併用剤はプレドニゾロン等のコルチコステロイドである。
【0184】
その他の薬剤としては、メトトレキサート、6-MP、アザチオプリン、スルファサラジン、メサラジン、オルサラジン、クロロキニン/ヒドロキシクロロキン、ペニシラミン、金チオリンゴ酸塩(筋肉内及び経口)、アザチオプリン、コルヒチン、コルチコステロイド(経口、吸入及び局所注射)、β2アドレナリン受容体作動薬(サルブタモール、テルブタリン、サルメテロール)、キサンチン(テオフィリン、アミノフィリン)、クロモグリク酸塩、ネドクロミル、ケトチフェン、イプラトロピウム及びオキシトロピウム、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、レフルノミド、NSAID(例えばイブプロフェン)、コルチコステロイド(例えばプレドニゾロン)、ホスホジエステラーゼ阻害薬、アデノシン作動薬、抗血栓薬、補体阻害剤、アドレナリン作動薬、TNFαやIL-1等の炎症性サイトカインによるシグナル伝達を妨害する薬剤(例えばIRAK、NIK、IKK、p38又はMAPキナーゼ阻害剤)、IL-1β変換酵素阻害剤、TNFα変換酵素(TACE)阻害剤、T細胞内シグナル伝達阻害剤(例えばキナーゼ阻害剤)、メタロプロテアーゼ阻害剤、スルファサラジン、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、可溶性サイトカイン受容体とその誘導体(例えば可溶性p55又はp75TNF受容体とその誘導体であるp75TNFRIgG(ENBREL(TM))及びp55TNFRIGG(レネルセプト)、sIL-1RI、sIL-1RII、sIL-6R)、抗炎症性サイトカイン(例えばIL-4,IL-10,IL-12,IL-13及びTGFβ)、セレコキシブ、葉酸、ヒドロキシクロロキン硫酸塩、ロフェコキシブ、エタネルセプト、インフリキシマブ、ナプロキセン、バルデコキシブ、スルファサラジン、メチルプレドニゾロン、メロキシカム、メチルプレドニゾロン酢酸エステル、金チオリンゴ酸ナトリウム、アスピリン、トリアムシノロンアセトニド、ナプシル酸プロポキシフェン/アセトアミノフェン、葉酸塩、ナブメトン、ジクロフェナク、ピロキシカム、エトドラク、ジクロフェナクナトリウム、オキサプロジン、オキシコドン塩酸塩、重酒石酸ヒドロコドン/アセトアミノフェン、ジクロフェナクナトリウム/ミソプロストール、フェンタニル、アナキンラ、ヒト組換え抗体、トラマドール塩酸塩、サルサレート、スリンダク、シアノコバラミン/葉酸/ピリドキシン、アセトアミノフェン、アレンドロン酸ナトリウム、プレドニゾロン、モルヒネ硫酸塩、リドカイン塩酸塩、インドメタシン、グルコサミン硫酸塩/コンドロイチン、アミトリプチリン塩酸塩、スルファジアジン、オキシコドン塩酸塩/アセトアミノフェン、オロパタジン塩酸塩、ミソプロストール、ナプロキセンナトリウム、オメプラゾール、シクロホスファミド、リツキシマブ、IL-1 TRAP、MRA、CTLA4-IG、IL-18 BP、抗IL-18、抗IL15、BIRB-796、SCIO-469、VX-702、AMG-548、VX-740、ロフルミラスト、IC-485、PSORIASIS C-801並びにメソプラムが挙げられる。
【0185】
乾癬とは表皮過形成を伴う皮膚障害を意味する。乾癬の例としては、限定されないが、慢性局面型乾癬、滴状乾癬、インバース乾癬、膿疱性乾癬、尋常性乾癬及び乾癬性紅皮症が挙げられる。乾癬は炎症性腸疾患(IBD)や関節リウマチ(RA)を含む他の炎症性障害を合併している場合もある。
【0186】
乾癬は皮膚の発赤、痒み及び厚く乾燥した銀白色の鱗屑の頻発を特徴とする皮膚炎症(過敏と発赤)として説明される。特に、表皮増殖、皮膚の炎症反応及びリンホカインや炎症性因子等の調節分子の発現の原発性と続発性の変化を伴う病変が形成される。乾癬の皮膚は表皮細胞のターンオーバーの亢進、表皮肥厚、異常角化、表皮への炎症細胞浸潤及び表皮層への多形核白血球とリンパ球の浸潤を形態的特徴とし、その結果、基底細胞周期が加速する。乾癬は爪に発症することが多く、点状陥凹、爪剥離、肥厚及び変色を示す頻度が高い。乾癬は他の炎症性障害(例えば関節リウマチを含む関節炎、炎症性腸疾患(IBD)及びクローン病)を合併していることが多い。乾癬患者の約3分の1は、上記のようにこわばり、関節の腫脹、疼痛及び可動域減少の症状を生じる乾癬性関節炎(PsA)を合併している(Greaves et al.,(1995)N.Eng.J.Med.,332:581)。
【0187】
乾癬の徴候は体幹、肘、膝、頭皮、皮膚のひだ又は指爪に最も多く認められ、最も一般的に治療対象となるが、皮膚のありとあらゆる部分に発症する可能性がある。通常では、新しい皮膚細胞が下層から表面まで上昇するには約1カ月かかる。乾癬ではこの過程に数日間しかかからないため、死滅した皮膚細胞が蓄積し、厚い鱗屑が形成される。乾癬の症状としては、カサカサした斑点や紅斑が皮膚に現れ、その上に銀白色の鱗屑が形成されたり、赤い境界線で区切られ、皮膚から盛り上がった斑点が現れ、ひび割れて痛みを伴うこともあり、これらの斑点は通常では肘、膝、体幹、頭皮及び手に現れ;小膿疱、皮膚のひび割れ及び皮膚発赤を含む皮膚病変を生じ;関節痛を生じ、関節炎(例えば乾癬性関節炎)を合併する場合もある。従って、本発明の局所製剤はこの疾患の1種以上の症状を緩和する。
【0188】
所定の実施形態では、乾癬を治療するために以下の治療薬、即ち局所コルチコステロイド、ビタミンDアナログ、局所レチノイド又はその組合せの1種以上を本発明の局所製剤で使用する。1実施形態では、ヒト、ヒト化、キメラ抗TNFα抗体又はその抗体ミメティクス等の1種以上の抗TNFα生物学的製剤との併用下又はその存在下で前記局所製剤を投与する。
【0189】
同様に乾癬治療に併用することができる他の治療剤としては、KDRの低分子阻害剤(ABT-123)、Tie-2の低分子阻害剤、カルシポトリエン、クロベタゾールプロピオン酸エステル、トリアムシノロンアセトニド、ハロベタゾールプロピオン酸エステル、タザロテン、メトトレキサート、フルオシノニド、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、フルオシノロン、アセトニド、アシトレチン、ベタメタゾン吉草酸エステル、モメタゾンフランカルボン酸エステル、ケトコナゾール、プラモキシン/フルオシノロン、ヒドロコルチゾン吉草酸エステル、フルランドレノリド、尿素、ベタメタゾン、クロベタゾールプロピオン酸エステル/、フルチカゾンプロピオン酸エステル、アジスロマイシン、ヒドロコルチゾン、葉酸、デソニド、コールタール、ジフロラゾン二酢酸エステル、エタネルセプト、葉酸塩、乳酸、メトキサレン、ヒドロコドン/次没食子酸ビスマス/酸化亜鉛/レゾルシノール、メチルプレドニゾロン酢酸エステル、プレドニゾン、サリチル酸、ハルシノニド、アントラリン、ピバル酸クロコルトロン、石炭抽出物、コールタール/サリチル酸、コールタール/サリチル酸/硫黄、デソキシメタゾン、ジアゼパム、ピメクロリムス、フルオシノニド/、鉱油/ヒマシ油/、鉱油/ピーナッツ油、石油/ミリスチン酸イソプロピル、ソラレン、サリチル酸、/トリブロムサラン、チメロサール/ホウ酸、セレコキシブ、インフリキシマブ、アレファセプト、エファリズマブ、タクロリムス、ピメクロリムス、PUVA、UVB及び他の光線療法、並びにスルファサラジンが挙げられる。
【0190】
乾癬性関節炎ないし皮膚に合併した乾癬とは体表に紅斑を生じる一般的な慢性皮膚病態である乾癬に合併した慢性炎症性関節炎を意味する。乾癬をもつ個体20人中約1人が皮膚病態と共に関節炎を発症し、患者の約75%では、乾癬が関節炎に先行する。PsAは軽度から重度の関節炎まで種々に発現し、関節炎は通常では指と脊椎に発症する。脊椎に発症する場合、症状は強直性脊椎炎の症状と同様である。PsAは破壊性関節炎を起こしている場合もある。破壊性関節炎とは過度の骨びらんの結果、著しいびらん性変形を生じ、関節が破壊されることを特徴とする障害を意味する。
【0191】
本発明の局所製剤におけるAPIはいずれも上記のように乾癬を治療するために有効であり、更に乾癬性関節炎とそれに伴う皮膚障害を治療するためにも有効である。
【0192】
乾癬性関節炎の症状を軽減又は抑制するために使用することができ、本発明の局所製剤で製剤化することができる薬剤の他の例としては、メトトレキサート、エタネルセプト、ロフェコキシブ、セレコキシブ、葉酸、スルファサラジン、ナプロキセン、レフルノミド、メチルプレドニゾロン酢酸エステル、インドメタシン、ヒドロキシクロロキン硫酸塩、スリンダク、プレドニゾン、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、インフリキシマブ、メトトレキサート、葉酸塩、トリアムシノロンアセトニド、ジクロフェナク、ジメチルスルホキシド、ピロキシカム、ジクロフェナクナトリウム、ケトプロフェン、メロキシカム、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、ナブメトン、トルメチンナトリウム、カルシポトリエン、シクロスポリン、ジクロフェナクナトリウム/ミソプロストール、フルオシノニド、グルコサミン硫酸塩、金チオリンゴ酸ナトリウム、重酒石酸ヒドロコドン/アセトアミノフェン、イブプロフェン、リセドロン酸ナトリウム、スルファジアジン、チオグアニン、バルデコキシブ、アレファセプト及びエファリズマブが挙げられる。
【0193】
アトピー性皮膚炎(AD、別称湿疹)は皮膚に生じる超過敏反応(アレルギーと類似)であり、慢性炎症を生じ、痒みを伴う鱗状局面を特徴とする。湿疹患者は喘息、花粉症又は湿疹等のアレルギー病態の家族暦をもつことが多い。炎症により皮膚が痒くなり、鱗状になる。慢性的な掻痒と引っ掻きにより皮膚は肥厚し、苔癬化する場合がある。環境刺激物への暴露や、皮膚の乾燥、水分への暴露、温度変化及びストレスにより症状が悪化する場合がある。症状としては、強い痒み、水疱からの滲出と痂皮、水疱周囲の皮膚発赤又は炎症、発疹、乾燥して苔癬化した皮膚領域、引っ掻きにより皮膚が剥けた領域、及び耳漏/出血を生じることが多い。従って、本発明の局所製剤は中等度から重度のADの症状を含むアトピー性皮膚炎の症状の少なくとも1種を緩和する。
【0194】
アトピー性皮膚炎の治療用の本発明の局所製剤はIL-4R拮抗薬、IL-1拮抗薬(例えば米国特許第6,927,044号に記載されているようなIL-1拮抗薬)、IL-6拮抗薬、IL-6R拮抗薬(例えば米国特許第7,582,298号に記載されているような抗IL-6R抗体)、IL-13拮抗薬、TNF拮抗薬、IL-8拮抗薬、IL-9拮抗薬、IL-17拮抗薬、IL-5拮抗薬、IgE拮抗薬、CD48拮抗薬、IL-31拮抗薬(例えば米国特許第7,531,637号に記載されているようなもの)、胸腺間質性リンホポエチン(TSLP)拮抗薬(例えばUS2011/027468に記載されているようなもの)、インターフェロンγ(IFNγ)抗生剤、カルシニューリン阻害剤、局所コルチコステロイド、タクロリムス、ピメクロリムス、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、クロモリンナトリウム、プロテアーゼ阻害剤又はその組合せから選択される1種以上のAPIを配合することができる。所定の実施形態では、前記局所製剤を紫外線(UV)療法等の非薬物療法と併用して対象に投与する。
【0195】
本願で使用する「TCS」ないし「局所コルチコステロイド」なる用語は世界保健機関(World Health Organization)の解剖治療化学分類法(Anatomical Therapeutic Classification System)に従い、ヒドロコルチゾンを基準としたその活性に基づくI群(弱い)、II群(中程度)、III群(強力)及びIV群(非常に強力)の局所コルチコステロイドを意味する。IV群TCS(非常に強力)はヒドロコルチゾンよりも600倍まで強力であり、クロベタゾールプロピオン酸エステルやハルシノニドが含まれる。III群TCS(強力)はヒドロコルチゾンよりも50~100倍強力であり、限定されないが、ベタメタゾン吉草酸エステル、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル、ジフルコルトロン吉草酸エステル、ヒドロコルチゾン17-酪酸エステル、モメタゾンフランカルボン酸エステル及びメチルプレドニゾロンアセポン酸エステルが含まれる。II群TCS(中程度)はヒドロコルチゾンよりも2~25倍強力であり、限定されないが、クロベタゾン酪酸エステルやトリアムシノロンアセトニドが含まれる。I群TCS(弱い)にはヒドロコルチゾンが含まれる。
【0196】
化膿性汗腺炎とは腫れと痛みを伴う炎症病変ないししこりが鼠蹊部に発生し、場合によっては腋窩部と乳房の下にも発生する皮膚障害を意味する。化膿性汗腺炎はアポクリン腺の出口が発汗により塞がれたり、アポクリン腺の発達が不完全なために正常に排出できない場合に生じる。アポクリン腺に閉じ込められた分泌物は発汗を促し、周囲組織に細菌を侵入させ、皮下硬結、炎症及び感染の原因となる。化膿性汗腺炎はアポクリン腺を含む身体領域に限定される。これらの領域は腋窩部、乳輪部、鼠蹊部、会陰部、肛門周囲部及び臍周囲部である。
【0197】
化膿性汗腺炎及び他の皮膚障害の治療剤の非限定的な例としては、殺菌剤及び制汗剤(例えば6.25%塩化アルミニウム六水和物の無水エタノール溶液)、抗炎症又は抗アンドロゲン療法(例えばテトラサイクリン)、病変内トリアムシノロン注入、フィナステリド、抗TNF抗体としてアダリムマブ(HUMIRA(R))、CA2(REMICADE(R))、PSORIASIS P571、TNFR-Igコンストラクト(p75TNFRIgG(ENBREL(TM))及びp55TNFRIgG(LENERCEPT))としての阻害剤及びPDE4阻害剤、コルチコステロイド(例えばブデノシドやデキサメタゾン)、スルファサラジン、5-アミノサリチル酸及びオルサラジン、IL-1等の炎症性サイトカインの合成又は作用を妨害する薬剤(例えばIL-1β変換酵素阻害剤やIL-1ra)、T細胞シグナル伝達阻害剤(例えばチロシンキナーゼ阻害剤)、6-メルカプトプリン、IL-12、メサラミン、プレドニゾン、アザチオプリン、メルカプトプリン、インフリキシマブ、メチルプレドニゾロン琥珀酸ナトリウム、メトトレキサート、葉酸塩、テトラサイクリン塩酸塩、フルオシノニド、メトロニダゾール、チメロサール/ホウ酸、シプロフロキサシン塩酸塩、プロメタジン塩酸塩、ヒドロコルチゾン、バルサラジド二ナトリウム、葉酸、レボフロキサシン、メチルプレドニゾロン、ナタリズマブ並びにインターフェロンγが挙げられる。
【0198】
白斑とは皮膚領域から色素が失われる結果として皮膚の肌理は正常なままで不規則な白色の斑点が生じる皮膚病態を意味する。白斑の特徴的な病変は平坦な脱色素領域として出現する。病変の輪郭ははっきりしているが、不規則である。白斑患者で発症頻度の高い部位としては、顔面、肘と膝、手足及び性器が挙げられる。所定の実施形態において、治療可能な白斑は分節型白斑と非分節型白斑(例えば限局型白斑、粘膜型白斑、汎発型白斑、尋常性白斑及び全身型白斑)を含む。
【0199】
白斑局所製剤の例としては、局所コルチコステロイド(例えばプレドニゾン、メチルプレドニゾロン及びプレドニゾロン)、局所免疫調節薬及びソラレン光線療法、メルカプトプリン、アルキル化剤(例えばシクロホスファミド)、カルシニューリン阻害薬(例えばシクロスポリン、シロリムス及びタクロリムス)、イノシン一リン酸脱水素酵素(IMPDH)阻害薬(例えばミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、アザチオプリン)、各種抗体(例えば抗リンパ球グロブリン(ALG)、抗胸腺細胞グロブリン(ATG)、抗T細胞モノクローナル抗体(OKT3))並びに放射線が挙げられる。
【0200】
更に、全身光線療法(例えば310~315nmのナローバンドUVB光線療法)、ソラレン光化学療法(PUVA:ソラレン(例えば5-メトキシソラレン、8-メトキシソラレン(0.1~0.3%)、トリメチルソラレン)とUVA光の併用)、エキシマレーザー(308nm)療法との併用下又は補助下に前記白斑局所製剤を投与してもよい。場合により、局所タクロリムス(0.03~0.1%)軟膏をエキシマレーザー療法と併用する。顔面の白斑にピメクロリムス(1%)クリームをナローバンドUVB治療と併用してもよい。ビタミンDアナログ(例えばカルシポトリオール、タカルシトール)をナローバンドUVB又はPUVA治療と併用してもよい。
【0201】
更に、眼及び眼の周囲の皮膚(例えば眼瞼)を主患部とする白斑患者を治療するために抗ヒスタミン薬、抗生物質、抗炎症薬、抗ウイルス薬又は緑内障治療薬等の薬物の眼科用製剤との併用下又は補助下に前記白斑局所製剤を投与してもよく、例えば点眼液又は軟膏として眼又は眼の周囲に投与することができる。これらの併用製剤を製造する場合には、前記白斑局所製剤を眼科用抗生物質(例えばスルファセタミド、エリスロマイシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、シプロフロキサシン又はオフロキサシン)、眼科用コルチコステロイド(例えばプレドニゾロン、フルオロメトロン又はデキサメタゾン)、眼科用非ステロイド性抗炎症薬(例えばイブプロフェン、ジクロフェナク、ケトロラク又はフルルビプロフェン)、眼科用抗ヒスタミン薬(例えばリボスチン、パタノール、クロモリン、アロミド又はフェニラミン)、眼科用抗ウイルス薬(例えばトリフルオロチミジン、アデニン、アラビノシド又はイドクスウリジン)、眼科用緑内障治療薬(例えばチモロール、メチプラノロール、カルテオロール、ベタキソロール又はレボブノロール等のβ遮断薬)、眼科用プロスタグランジンアナログ(例えばラタノプロスト)、眼科用コリン作動薬(例えばピロカルピン又はカルバコール)、眼科用α作動薬(例えばブリモニジン又はアイオピジン)、眼科用炭酸脱水酵素阻害薬(例えばドルゾラミド)、及び眼科用アドレナリン作動薬(例えばエピネフリン又はジピベフリン)と併用する。
【0202】
一般に、本願で言及する種々の化粧品及び治療薬/医薬品は各薬物の市販品に添付されている処方情報に明記されているようなそれらの標準又は一般用量に従って使用することができる(2006年版Physician’s Desk Referenceの処方情報も参照)。
【実施例0203】
以下の実施例は例証のみを目的とし、限定的なものではない。以下の実施例に記載する個々の実施形態は本発明の趣旨から逸脱しない範囲において容易に変更することができる。
【0204】
[実施例1]:プラセボ製剤Aの製造
以下の手順を使用して本発明のプラセボ製剤(有効成分不添加)のバッチを製造した。当業者は本発明の趣旨から逸脱しない範囲においてその軽微な変形を容易に予想することができる。製剤の成分は以下の通りである。
【0205】
【表1】
1.10Lジャケット付き反応器を流速約5L/minにて30分間窒素パージする。
2.軽質鉱油,NF1.2Kgを前記10L反応器に加える。
3.0.24KgのSEPINEO(TM)P600を前記10L反応器に加える。均質になるまで撹拌した後、撹拌を停止する。
4.イミド尿素,NF16gを加圧容器に加える。
5.精製水6.544Kgを適切な前記加圧容器に加え、全固形分が溶解するまで撹拌する。
6.前記10L反応器を100rpmで撹拌する。
7.前記加圧容器から前記10L反応器への配管を設置する。注:前記10L反応器の撹拌は停止させた。
8.前記加圧容器の内容物を前記10L反応器に移す。
9.200rpmで前記10L反応器の撹拌を開始する。6分間200rpmで混合し(粒度を検査し)、12分間200rpmで混合し(粒度を検査し)、18分間250rpmで混合する(粒度を検査する)。
10.プラセボ製剤Aと記した広口容器に前記10L反応器の内容物を移す。
【0206】
[実施例2]:プラセボ製剤Bの製造
以下の手順を使用して本発明のプラセボ製剤(有効成分不添加)のバッチを製造した。当業者は本発明の趣旨から逸脱しない範囲においてその軽微な変形を容易に予想することができる。製剤の成分は以下の通りである。
【0207】
【表2】
1.10Lジャケット付き反応器を流速約5L/minにて30分間窒素パージする。
2.軽質鉱油,NF0.75Kgを前記10L反応器に加える。
3.0.15KgのSEPINEO(TM)P600を前記10L反応器に加える。均質になるまで撹拌した後、撹拌を停止する。
4.イミド尿素,NF10gを加圧容器に加える。
5.Transcutol(R)HP,USP/NF,EP0.50Kgを前記加圧容器に加える。
6.精製水3.59Kgを適切な前記加圧容器に加え、固形分が溶解するまで撹拌する。
7.前記加圧容器から前記10L反応器への配管を設置する。注:前記10L反応器の撹拌は停止させる。
8.前記加圧容器の内容物を前記10L反応器に移す。
9.250rpmで前記10L反応器の撹拌を開始する。混合の開始から12分後と25分後にエマルションをサンプリングし、粒度を光学顕微鏡によりモニターする。
10.プラセボ製剤Bと記した広口容器に前記10L反応器の内容物を移す。
【0208】
[実施例3]:4種類の化合物の局所製剤の製造
化合物2及び化合物1の2種類の固体医薬品有効成分(sAPI)をTranscutol(R)HPの添加下又は不添加下で使用して合計4種類の局所製剤を製造した。
・プラセボ製剤Aに化合物2(1%)を配合したもの(Transcutol(R)HP不添加)。
・プラセボ製剤Bに化合物2(1%)を配合したもの(10%Transcutol(R)HP)。
・プラセボ製剤Aに化合物1(1%)を配合したもの(Transcutol(R)HP不添加)。
・プラセボ製剤Bに化合物1(1%)を配合したもの(10%Transcutol(R)HP)。
・プラセボ製剤BにシクロスポリンA(0.1%)を配合したもの(10%Transcutol(R)HP)。
・プラセボ製剤BにシクロスポリンA(1%)を配合したもの(10%Transcutol(R)HP)。
・プラセボ製剤Bにメタメタゾンジプロピオン酸エステル(0.01%)を配合したもの(10%Transcutol(R)HP)。
・プラセボ製剤Bにメタメタゾンジプロピオン酸エステル(0.1%)を配合したもの(10%Transcutol(R)HP)。
・プラセボ製剤Bにメタメタゾンジプロピオン酸エステル(1%)を配合したもの(10%Transcutol(R)HP)。
【0209】
各製剤に以下の一般手順を使用した。
1.sAPI 150mgを計量し、混合用プレートのすりガラス面に載せる。
2.実施例1又は2に従って製造したプラセボ製剤(Transcutol(R)HPを添加したもの又は添加しないもの)14.85gを予め計量する。
3.同一体積量のプラセボをsAPIの上に載せ、粒度を最小にするように留意し、金属製スパチュラでsAPIを混ぜ合わせる。
4.粒子が十分に小さくなったら、追加量のプラセボを加え、よく混ぜる/すり潰す。
5.予め混合した量をスライドのすりガラス面からスライドの平滑ガラス面に移す。
6.sAPIを配合したクリームと残りのプラセボクリーム製剤を混合し、よくブレンドし、材料を室温保存用バイアルに移す。
【0210】
化合物1及び化合物2はいずれもJAKファミリーキナーゼの低分子阻害剤である。それらの構造は、本発明の局所製剤でAPIとして各々使用することができる多数の他の同様の化合物と共にWO2011/068881及びWO2011/068881に開示されている。
【0211】
ベタメタゾンジプロピオン酸エステル(BMS DPP)は抗炎症能と免疫抑制能をもつ「超高強度」コルチコステロイドである。その正確な作用機序は不明であるが、皮膚炎、湿疹及び乾癬等の炎症性皮膚病態を治療するために使用されている。
【0212】
シクロスポリンA(別称シクロスポリン,M.W.約1202)は拒絶反応を予防するために臓器移植で広く使用されている免疫抑制薬である。T細胞の活性と増殖を妨害することにより免疫系の活性を低下させると考えられている。シクロスポリンは骨髄移植における移植片対宿主(GVH)病の予防・治療用として、また、腎臓、心臓及び肝臓移植の拒絶反応の予防用としてFDAにより承認されている。また、米国では関節リウマチと乾癬の治療用として、ドライアイの治療用眼科用乳剤として、更にアデノウイルス角結膜炎後の持続性貨幣状角膜炎の治療薬としても承認されている。これらの適応症に加え、シクロスポリンは重症アトピー性皮膚炎、木村病、壊疽性膿皮症、慢性自己免疫性蕁麻疹、急性全身肥満細胞症でも使用されており、頻度は低いが、特に重症例の関節リウマチと関連疾患でも使用されている。シクロスポリンはステロイド薬投与に反応しない急性重症潰瘍性大腸炎患者の治療を補うためにも使用されており、非感染性病因の後部又は中間部ぶどう膜炎の治療薬としても使用されている。獣医学症例、特に免疫介在性溶血性貧血の極端な症例で処方される場合もある。
【0213】
[実施例4]:化合物1及び化合物2の局所製剤の試験
本実施例は薬物配合量、溶解度、製剤組成及び浸透促進剤(PE)の存在を含む種々のパラメーターを最適化することにより本発明の局所製剤で所望の薬理学的効果を達成できることを実証する。種々のインビトロ放出方法を使用し、動物皮膚又は人工膜を透過するAPIの流速をモニターすることにより製剤を評価した。
【0214】
具体的には、APIの濃度と浸透促進剤の有無を変化させ、インビトロ流速をインビボ暴露量と比較し、種々の合成膜と無毛マウス皮膚を使用してインビトロ技術を評価・比較することにより、API流速に及ぼす種々のパラメーターの影響を評価した。
【0215】
API輸送に及ぼす製剤変数の影響を理解するためにはエクスビボ流速試験で無毛マウス皮膚(及びヒトの死体の皮膚)を使用すると適切である。しかし、ヒトに適用するのに適した製剤を見出すと共に動物資源の使用を最小限にするためには、皮膚浸透に似せるように多数の市販の人工膜を使用することができる。本実施例では、局所製剤のインビボ性能の予測を助長するために、フランツセルアセンブリとTRANSWELL(R)プレートを含む多数のインビトロ拡散技術でこのような膜を使用した。本実施例に示すデータは製剤開発の手引きともなり、インビボ性能の洞察も与える。
【0216】
実質的に実施例1の方法に従ってプラセボジェルクリーム製剤を調製した。要約すると、適当な撹拌翼を備えた反応器をN2パージし、軽質鉱油と商品名SEPINEO(TM)P600の水和膨潤性液滴(HSD)ポリマーを加えることによりバルクプラセボ製剤を調製し、均質になるまで混合した。イミド尿素を精製水に溶解させ、混合物を軽質鉱油と商品名SEPINEO(TM)P600の水和膨潤性液滴(HSD)ポリマーのブレンドに加えた。混合物を均質になるまで撹拌した。こうして調製したプラセボ製剤は軽質鉱油約15%(w/w)、商品名SEPINEO(TM)P600の水和膨潤性液滴(HSD)ポリマー3%(w/w)、イミド尿素0.2%を含有しており、残余(約81.8%(w/w))は精製水である。
【0217】
APIと種々のPE(例えば商品名TRANSCUTOL(R)HPのPE)を上記プラセボ製剤に手動で添加することにより有効成分入り製剤を調製した。乳鉢・乳棒又は軟膏板・軟膏ヘラを使用して研和することによりAPIとPEを本発明のプラセボジェルクリーム製剤に配合した。
【0218】
APIの最終濃度を変え、PEを添加する場合にはその種類を変えて合計8種類の製剤を製造した。下表参照。
【0219】
【0220】
上記の各種製剤の光学顕微鏡試験(データは示さず)によると、Transcutol(R)HPの含有量が多いほど多量の化合物1が安定化される。従って、TRANSCUTOL HP(TM)を添加して飽和溶液を維持すると、インビトロ流速が増加し、その結果、皮膚暴露量が増加すると予想される。
【0221】
フランツセル及びTRANSWELL(R)プレートと、Tuffryn(R)、ポリカーボネート又はポリエステル膜と、無毛マウス皮膚を使用して拡散アッセイを実施した。HPLCを利用してインビトロ試料を分析した。
【0222】
具体的には、フランツセルでのインビトロ放出試験では、縦型拡散セルにレセプター液(2%BSAを添加したリン酸緩衝液)を満たした。次に、設置時とサンプリング時を除いてレセプター液を撹拌した。温度は32.5±2.0℃に保つ。次に人工膜をセルの上にセットし、更にドーセジウエハー、評価対象製剤及びガラス密閉キャップをセットした。製剤透過性試験を3回実施した。プログラムした種々の間隔で試料を採取し、サンプリングはシステムによる自動プロセスとした。セルの上部からサンプリングすると同時にセルの下部に新鮮なレセプター液を補充した。試料毎に計器に記録された時点で全ウェルを順次サンプリングした。
【0223】
TRANSWELL(R)プレートでのインビトロ放出試験では、2区画ウェルシステムを使用し、内側ウェルに膜をセットして製剤区画とし、外側ウェルにレセプター液(2%BSAを添加したリン酸緩衝液)を満たした。次に、温度制御式振盪恒温器でTRANSWELL(R)プレートを撹拌した。予め設定された間隔で試料をピペットで手動抽出した。サンプリング後毎に新鮮なレセプター液をレセプターウェルに加え、容量減少分を補充した。システムパラメーターを下表に示す。
【0224】
【0225】
一般に、流速は単位時間当たりに既知表面積の膜に拡散する溶質の量を求めることにより計算される。この数値の計算方法としては多くの方法がある。本実施例では既知体積のレセプター液における溶質濃度を測定し、実験の時間経過を通して拡散した合計量を計算した。従って、次のように計算した。
【0226】
【数1】
Q=合計拡散量(μg)
A=膜面積(cm
2)
t=時間(hr)。
【0227】
結果を
図1~7Cに示す。データから明らかなように、PEを添加したインビトロ飽和システムは不飽和/低添加量製剤よりも流速が大きく、飽和システムにおけるPE選択は輸送に実質的に影響を与えないようであった。また、合成膜組成はインビトロ拡散に著しく影響を与えることが分かった。一方、製剤による流速の相対的な序列は一定であった。化合物1をフランツセルアセンブリで使用すると、インビトロ拡散とインビボPKデータの直接相関が得られるようである。
【0228】
48時間まで振盪してAPI(即ち化合物1)を溶媒で平衡化し、0.45μmフィルターで濾過した後、HPLCにより分析することにより溶解度測定を行った。評価した溶媒は、水、PBS(pH7.4)、2%BSAを添加したPBS(pH7.4)、商品名TRANSCUTOL(R)HPのPEの10%水溶液、10%DMI水溶液、及び10%IPM水溶液である。結果を
図1に示す。
【0229】
皮膚(局所送達)及び血漿(全身送達)へのインビボAPI送達に及ぼす浸透促進剤の効果を評価するために、ラットの背中の剃毛した4cm
2の皮膚領域に本発明の局所製剤177.8mg(1%化合物1のジェルクリーム177.8μL又は化合物1を約1.778mg)を適用した。局所適用後約24時間の間に血漿中PKデータを得た。
図9A及び下表の結果参照。
【0230】
【0231】
【0232】
上記データはPEを添加すると、皮膚中及び血漿中のどちらのAPI濃度も増加したことを明白に示す。
【0233】
化合物2をAPIとして使用した局所製剤について同一の実験を繰返した。結果を下表に示す。
図9Bも参照。
【0234】
上記実験手順の変形も容易に予想できる。例えば、真皮及び/又は皮下組織層には多数の血管が通っており、リンパ排液が盛んであるという事実を考慮し、無毛マウス皮膚又はヒト皮膚を使用した実験では実験前にこれらの層を分離してもよい。更に、局所送達されたAPIの種々の皮膚層への浸透を評価するために、各ヒト皮膚層におけるAPI濃度を定量してもよい。このようなヒト/動物皮膚試料におけるAPI濃度は種々の計器を使用して分析することができる。最後に、製剤へのAPI配合量を減らすと共にPEと濃度を変えることにより、製剤をより良好に層状化できると思われる。
【0235】
【0236】
【0237】
[実施例5]:FITC誘発性接触過敏症(CHS)に対するシクロスポリンA(CsA)局所クリーム製剤の予防的局所投与
接触過敏症(CHS)は低分子化学物質であるハプテンに対する免疫反応である。感作相中に、真皮樹状細胞(DC)やランゲルハンス細胞はハプテンペプチドコンジュゲートを取込んでプロセシングし、排液リンパ節まで移動してナイーブT細胞に抗原(Ag)を提示し、Ag特異的メモリーT細胞の形成をもたらす。続いて前記化学物質と接触する結果としてメモリーT細胞が活性化され、炎症細胞がアレルゲン暴露部位に動員される。この誘発反応は皮膚炎症として発現され、臨床的文脈ではこれをアレルギー性接触皮膚炎と呼ぶ。低分子化学物質であるハプテンの1種としてFITCが挙げられる。FITC誘発性CHSは主にTh2細胞の活性化に関係があると考えられている。FITCで感作したマウスの皮膚にFITCをチャレンジすると、FITC特異的T細胞が皮膚に動員され、IL-4を含むTh2サイトカインを産生すると考えられている。
【0238】
本実験はFITCを皮膚表面に適用する前に本発明の製剤が比較的大きいシクロスポリンA(CsA)分子(MW1202)を予防薬として効率的に経皮送達できることを立証する。
【0239】
被験製剤:
実施例3に従って種々の濃度(0.01%、0.1%及び1%w/w)のシクロスポリンA局所クリーム製剤を調製した。
【0240】
実験プロトコール
要約すると、0日目に実験動物の耳介にFITCを感作投与した。6日目に、FITCチャレンジの1時間前に先ず投与群動物(0.01%、0.1%及び1%投与群)の耳介に本発明の製剤を局所投与した。具体的には、FITCを皮膚表面に適用する前に各実験動物の耳介付近全体に合計20μL(内耳10μL及び外耳10μL)の局所製剤を擦り込んだ。製剤にCsAを配合しない点以外は同様にしてプラセボ群動物にも投与した。ナイーブ群動物には実験中に何も投与しなかった。7日目にFITCチャレンジの約24時間後に全動物の耳介の厚み(mm)を測定した。
【0241】
試験結果
FITCチャレンジの1時間前にCsA(0.01%、0.1%及び1%)局所製剤を予防的に適用する試験を2回別々に実施した。試験1では、FITCチャレンジの1時間前にCsA(0.01%、0.1%及び1%)を予防的に適用した処、耳介皮膚厚みは用量依存的に減少し、効果は夫々19%、32%及び58%であった。試験2でも同様に、FITCチャレンジの1時間前にCsA(0.01%、0.1%及び1%)を予防的に適用した処、耳介皮膚厚みは用量依存的に減少し、効果は夫々20%、37%及び75%であった。従って、試験1及び試験2からのデータの統合後では、FITCチャレンジの1時間前にCsA(0.01%、0.1%及び1%)を予防的に適用すると、耳介皮膚厚みは減少し、効果は夫々19%、34%及び67%となった。
図10は2回の試験からのデータを統合した結果を示す。
【0242】
特に、統計解析によると、CsAは試験した最低用量(0.01%)でも有効であり、FITCチャレンジの約1時間前に0.01%CsAを予防的に投与した動物は耳介皮膚厚み増加の抑制は少ないが、対照動物に比較して統計的に有意(p<0.001)である。試験した最高用量(1%)では、対照動物の耳介皮膚厚み増加の約50%が抑制された。
図10参照。
【0243】
3群の投与群(0.01%、0.1%及び1%)でプラセボ群と比較して薬物動態(PK)解析を実施した。使用した局所製剤の濃度差が100倍であるにも拘わらず、CsAの全血中濃度は3群の投与群間でさほど変わらないことが判明した(例えば0.01%群と1%群では約2~3倍増加)。他方、CsAの全耳介皮膚中濃度は1%投与群の20,812ng/mLに対して0.01%投与群では約776ng/mLであった(27倍増加)。
図11A参照。データによると、本発明の製剤は局所送達に有効であるのみならず、中枢循環系へのAPIの「漏出」を最小限に抑えられると思われる。更にデータによると、本発明の製剤は用量依存的に治療効力を達成するようにAPIを局所送達すると思われる。
図11Bの用量と効力の線形関係参照。
【0244】
[実施例6]:FITC誘発性接触過敏症(CHS)に対するシクロスポリンA(CsA)局所クリーム製剤の局所投与
本実験はCsA等の大きい分子がより十分に皮膚に浸透するためには皮膚バリアを不完全にさせる必要があるか否か、換言するならば、(例えばFITCの皮膚表面適用により)先ず皮膚を撹乱させた後に製剤を適用すればCsA等の比較的大きい分子を使用した局所投与でより有効な皮膚バリア浸透を実現できるか否かという問題を検討するように計画した。
【0245】
実験構成は6日目のFITCチャレンジと局所投与の順次を逆にした(即ち、6日目に局所投与の1時間前にFITCチャレンジを実施した)以外は本質的に実施例5と同一である。結果を
図12に示すが、試験した用量(1%)では、対照の耳介皮膚厚み増加の約57%が抑制され、この結果はFITCチャレンジ前に同一(1%)の局所製剤を適用した結果と同等であった。
【0246】
このFITCチャレンジから1時間後の投与時点ではCD4+T細胞が組織に浸潤又は移動して治療効果を証明するには早過ぎるか否かを更に検討するために、FITCチャレンジから1時間後の投与時点を追跡実験では6時間後に延ばした。
【0247】
図13に示す結果によると、(1)FITCチャレンジから6時間後にCsA(0.1%及び1%)を適用すると、耳介皮膚厚みは夫々35%及び44%減少し、(2)FITCチャレンジから1時間後又は6時間後に1%CsAを適用すると、耳介厚み減少は夫々57%及び44%であり、さほど変わらなかった。
【0248】
[実施例7]:FITC誘発性接触過敏症(CHS)に対するベタメタゾンジプロピオン酸エステル(BMS DPP)局所クリーム製剤の予防的局所投与
実施例5と同様に、本実施例はFITC誘発性CHSを予防処置するために本発明の製剤でBMS DPPを使用できることを実証する。
【0249】
実施例3に従って種々の濃度(0.005%、0.01%、0.1%及び1%w/w)でベタメタゾンジプロピオン酸エステル(BMS DPP)局所クリーム製剤を調製した。(CsAの代わりに)BMS DPPを配合した本発明の製剤を使用した以外は実施例5で使用した実験プロトコールと本質的に同一の実験プロトコールを使用した。
【0250】
FITCチャレンジの1時間前にBMS DPP(0.005%、0.01%、0.1%及び1%)局所製剤を適用する試験を2回実施した。試験1では、FITCチャレンジの1時間前にBMS DPP(0.01%、0.1%及び1%)を適用した処、耳介皮膚厚みは夫々77%、93%及び95%減少した。試験2では、FITCチャレンジの1時間前にBMS DPP(0.005%、0.01%及び0.1%)を適用した処、耳介皮膚厚みは夫々61%、73%及び93%減少した。1回目の試験では0.1%でも1%でもFITCにより誘発した耳介皮膚厚みは有効に抑制されたので、2回目の試験では同一濃度を繰返すのではなく、更に低濃度の0.005%局所製剤を使用した。試験1及び試験2からのデータの統合後では、FITCチャレンジの1時間前にBMS DPP(0.005%、0.01%、0.1%及び1%)を適用すると、耳介皮膚厚みは減少し、効果は夫々61%、75%、93%及び95%となった。結果を
図14に示す。
【0251】
PK試験データを
図15に示す。なお、BMS DPPは血漿中で不安定であるため、BMS DPPの全血中濃度を測定することはできない。
【0252】
[実施例8]:FITC誘発性接触過敏症(CHS)に対するベタメタゾンジプロピオン酸エステル(BMS DPP)局所クリーム製剤の局所投与
同様に、実施例6と同一の実験を実施し、初期FITCチャレンジ後BMS DPP投与までに4時間経過してもまだ有効であるか否かを試験した。実験構成は6日目のBMS DPP投与をFITCチャレンジの6時間後とした以外は、実施例7と本質的に同一であり、結果を
図16に示す。
【0253】
この場合も、FITCチャレンジから4時間後にBMS DPP局所製剤を適用する試験を2回行った。試験1では、FITCチャレンジから4時間後にBMS DPP(0.1%及び1%)を適用した処、耳介皮膚厚みは夫々95%及び96%減少した。試験2では、FITCチャレンジから4時間後にBMS DPP(0.01%及び0.1%)を適用した処、耳介皮膚厚みは夫々92%及び96%減少した。1回目の試験では0.1%でも1%でもFITCにより誘発した耳介皮膚厚みは事実上抑制されたので、2回目の試験では同一濃度を繰返すのではなく、更に低濃度の0.01%局所製剤を使用した。2回目の試験によると、FITCチャレンジから4時間後に適用した場合、0.01%でもBMS DPPはFITCにより誘発した耳介皮膚厚みを有効に抑制することが判明した。試験1及び試験2からのデータの統合後では、FITCチャレンジから4時間後に本発明の製剤でBMS DPP(0.01%、0.1%及び1%)を適用すると、耳介皮膚厚みは減少し、効果は夫々92%、95%及び96%となった。
【0254】
本願に引用又は言及する各特許、特許出願、刊行物、教科書及び論文/報告はその内容全体を特に本願に援用する。
【0255】
以上、種々の特定の具体的な実施形態により本発明を説明したが、当業者に自明の通り、発明の趣旨から逸脱しない範囲において種々の変形、代用、省略及び変更が可能である。