(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180503
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】スパンボンデッド高ロフト不織ウェブを製造する方法
(51)【国際特許分類】
D04H 3/147 20120101AFI20221129BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20221129BHJP
D04H 3/018 20120101ALI20221129BHJP
【FI】
D04H3/147
D04H3/16
D04H3/018
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149206
(22)【出願日】2022-09-20
(62)【分割の表示】P 2020106952の分割
【原出願日】2017-05-18
(31)【優先権主張番号】16170169.3
(32)【優先日】2016-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】516034957
【氏名又は名称】ファイバーテクス・パーソナル・ケア・アクティーゼルスカブ
(71)【出願人】
【識別番号】505313830
【氏名又は名称】ライフェンホイザー・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンデイトゲゼルシャフト・マシイネンファブリーク
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン ライズ モーデン
(72)【発明者】
【氏名】ブロック トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ゾマー セバスチャン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ロフト、柔らかさ、および引張り特性の観点からより満足のいく、けん縮多成分繊維を含むスパンボンデッド高ロフト不織ウェブを製造する方法を提供する。
【解決手段】当該方法は、繊維を連続的に紡ぐ工程と、デフレクタおよび/または空気流により繊維をスピンベルト4に導く工程と、繊維をスピンベルト上に載置する工程と、先行圧密ウェブを形成するために、載置後に1または複数の先行圧密ローラー5、6を用いて繊維を先行圧密する工程とを含む。繊維の第1成分は、PPホモポリマーから構成され、繊維の第2成分は、PP/PEコポリマーから構成される。先行圧密ローラーは、110℃未満の温度および/または5N/mm未満の線形接触力において操作される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PPホモポリマーから構成された第1成分と、PP/PEコポリマーから構成された第2成分とを含む、けん縮多成分繊維を含むスパンボンデッド不織布であって、
20N/50mm・cm3・m2・g-2より大きい特定強度および6・10-2g・cm-3未満の密度を有し、ここで前記特定強度は、(N/50 mm)で示されるTSMDを、(g/cm3)で示される繊維密度及び(g/m2)で示される繊維坪量で割った値で規定される、
スパンボンデッド不織布。
【請求項2】
請求項1に記載のスパンボンデッド不織布の製造方法であって、
多成分繊維を連続的に紡ぐ工程と、デフレクタおよび/または空気流により前記多成分繊維をスピンベルトに導く工程と、前記多成分繊維を前記スピンベルト上に載置する工程と、先行圧密ウェブを形成するために、載置後に1または複数の先行圧密ローラーを用いて前記多成分繊維を先行圧密する工程とを含み、
前記先行圧密ローラーは、91℃以下の温度および5N/mm未満の線形接触力において操作される
スパンボンデッド不織布の製造方法。
【請求項3】
前記先行圧密ローラーは、20℃以上91℃以下の温度において操作される、
請求項2に記載のスパンボンデッド不織布の製造方法。
【請求項4】
前記先行圧密ローラーは、1~4N/mmの線形接触力において操作される、
請求項2に記載のスパンボンデッド不織布の製造方法。
【請求項5】
前記PP/PEコポリマーにおけるエチレン由来反復ユニットの含有量は、0重量%超5重量%以下である、
請求項1に記載のスパンボンデッド不織布。
【請求項6】
前記PP/PEコポリマーは、ランダムコポリマーである、
請求項1に記載のスパンボンデッド不織布。
【請求項7】
前記PPホモポリマーは、アイソタクチックである、
請求項1に記載のスパンボンデッド不織布。
【請求項8】
前記PPホモポリマーおよび前記PP/PEコポリマーのメルトフローレートおよび/または多分散性は、30%未満だけ異なる、
請求項1に記載のスパンボンデッド不織布。
【請求項9】
前記PPホモポリマーおよび前記PP/PEコポリマーの融点は、10℃以上だけ異なる、
請求項1に記載のスパンボンデッド不織布。
【請求項10】
前記多成分繊維は複合繊維であり、および/または、並列構造を有する、
請求項1に記載のスパンボンデッド不織布。
【請求項11】
前記第1成分の前記第2成分に対する重量比は、40/60~80/20である、
請求項1に記載のスパンボンデッド不織布。
【請求項12】
少なくとも1つがエンボス加工された1または複数のカレンダーロールを用いて、および/または、熱風接着を用いて、前記先行圧密ウェブを接着する工程をさらに含む、
請求項2に記載のスパンボンデッド不織布の製造方法。
【請求項13】
前記カレンダーロールは、120~145℃の温度で操作される、および/または、ホットエアスルー接着に用いられる空気は、120~145℃の温度を有する、
請求項12に記載のスパンボンデッド不織布の製造方法。
【請求項14】
前記先行圧密ローラーは、40~90℃の温度において操作される、
請求項2に記載のスパンボンデッド不織布の製造方法。
【請求項15】
前記先行圧密ローラーは、55~75℃の温度において操作される、
請求項2に記載のスパンボンデッド不織布の製造方法。
【請求項16】
前記先行圧密ローラーは、1~2.5N/mmの線形接触力において操作される、
請求項2に記載のスパンボンデッド不織布の製造方法。
【請求項17】
前記PPホモポリマーおよび前記PP/PEコポリマーのメルトフローレートおよび/または多分散性は、20%未満だけ異なる、
請求項1に記載のスパンボンデッド不織布。
【請求項18】
前記PPホモポリマーおよび前記PP/PEコポリマーの融点は、20℃以下だけ異なる、
請求項1に記載のスパンボンデッド不織布。
【請求項19】
前記第1成分の前記第2成分に対する重量比は、40/60~60/40である、
請求項1に記載のスパンボンデッド不織布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、けん縮多成分繊維を含むスパンボンデッド高ロフト不織ウェブを製造する方法に関する。本発明はさらに、当該方法により得られる不織ウェブに関する。
【背景技術】
【0002】
高ロフトスパンボンデッド層は、おむつや生理用ナプキン等の衛生製品に必要な高度な柔らかさを有する不織布の提供に寄与する場合がある。けん縮繊維を基礎とするスパンボンデッド高ロフト層を備える不織布が、当該技術分野において知られている。
【0003】
高ロフトスパンボンデッド布地が、米国特許第6,454,989号明細書に記載されている。異なるメルトフローレートを有する2つの成分を備える多成分繊維を用いると、繊維の縮れが得られる。別の高ロフトスパンボンデッド布地が、欧州特許第2 343 406号明細書に記載されている。類似のメルトフローレートおよび融点を有するが、重量平均分子量分布に対するZ平均の比が異なる2つの成分を備える多成分繊維を用いると、繊維の縮れが得られる。また、別のスパンボンデッド高ロフト布地が、欧州特許第1 369 518号明細書に記載されている。一方の成分がホモポリマーであり、もう一方の成分がコポリマーである多成分繊維を用いると、繊維の縮れが得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術を用いた不織布は、ロフト、柔らかさ、および引張り特性の観点から十分満足のいくものではなかった。本発明の目的は、これらの特性の観点からより満足のいく高ロフトスパンボンデッド布地を取得する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記背景に対して、本発明は、けん縮多成分繊維を含むスパンボンデッド高ロフト不織ウェブを製造する方法に関する。当該方法は、繊維を連続的に紡ぐ工程と、デフレクタおよび/または空気流により繊維をスピンベルトに導く工程と、繊維をスピンベルト上に載置する工程と、先行圧密ウェブを形成するために、載置後に1または複数の先行圧密ローラーを用いて繊維を先行圧密する工程とを含む。繊維の第1成分は、PPホモポリマーから構成され、繊維の第2成分は、PP/PEコポリマーから構成される。先行圧密ローラーは、110℃未満の温度および/または5N/mm未満の線形接触力において操作される。
【0006】
PPホモポリマーおよびPP/PEコポリマーはともに、熱可塑性である。一実施形態において、PPホモポリマーおよびPP/PEコポリマーはそれぞれ、第1および第2成分にそれぞれ含有される唯一のポリマーである。第1および第2の成分はそれぞれ、PPホモポリマーおよびPP/PEコポリマーそれぞれから構成されてもよく、必要に応じ、非ポリマー添加物から構成されてもよい。
【0007】
一実施形態において、PPホモポリマー、および/または、PP/PEコポリマーのPP成分は、複数のPPベースポリマーの混合物から構成されてもよい。
【0008】
当該繊維は、好ましくは、らせん状けん縮繊維および/またはエンドレスファイバーである。
【0009】
本発明の方法により製造された布地は、マイクロフリース布地のように非常にやわらかな風合いで、且つ、高い引張り特性を有している。PE/PPコポリマーを添加すると、不要な乾燥や綿のような風合いが防止されると考えられている。
【0010】
一実施形態において、先行圧密ローラーは、50~100℃、好ましくは、60~80℃の温度、および/または、1~4N/mm、好ましくは、2~3N/mmの線形接触力において操作される。線形接触力は、1~2.5N/mmであってもよい。温度は、20℃以上110℃未満、40~90℃、または55~75℃であってもよい。
【0011】
一実施形態において、PP/PEコポリマーにおけるエチレン由来反復ユニットの含有量は、1~10重量%であり、好ましくは2~6重量%であり、より好ましくは3~5重量%である。含有量は、0重量%超5重量%以下であってもよい。
【0012】
一実施形態において、PP/PEコポリマーは、ランダムコポリマーである。
【0013】
一実施形態において、PPホモポリマーは、アイソタクチックである。
【0014】
一実施形態において、PPホモポリマーおよびPP/PEコポリマーのメルトフローレートおよび/または多分散性は、30%未満、25%未満、または20%未満だけ異なる。絶対値の観点からは、PPホモポリマーおよび/またはPP/PEコポリマーのメルトフローレート(MFR)は、20~40または25~35の範囲、例えば、約25、30、または35g/10minである。
【0015】
一実施形態において、PPホモポリマーおよびPP/PEコポリマーの融点(TM)は、5℃または10℃以上だけ異なり、および/または、20℃以下だけ異なる。TM差は、5~20℃の範囲であり得る。絶対値の観点からは、例えば、PPホモポリマーは、155~165℃または159~163℃の範囲の融点を示してもよく、PP/PEコポリマーは、140~148℃または142~146℃の範囲の融点を示してよい。融点は、DSCを用いて決定してもよい。
【0016】
一実施形態において、繊維は、1.2~3.0デニールである。
【0017】
一実施形態において、多成分繊維は、複合繊維である。
【0018】
一実施形態において、多成分繊維は、並列構造である。代替の実施形態において、多成分繊維は、(偏心)シースコア構造または三葉構造を有してもよい。
【0019】
一実施形態において、多成分繊維における第1成分の第2成分に対する重量比は、40/60~80/20であり、好ましくは40/60~60/40である。
【0020】
一実施形態において、当該方法は、少なくとも1つがエンボス加工された1または複数のカレンダーロールを用いて、先行圧密ウェブを接着することをさらに含む。一実施形態において、カレンダーロールが採用する接着模様は、10~16%の接着領域、および/または、20~45dots/cm2のドット密度、および/または、0.35~0.55mm2/dotのドットサイズから構成され、できるだけたくさんのけん縮繊維が当該構造から飛び出すことができるよう十分な場所を有している。一実施形態において、カレンダーロールは、120~145℃の温度において操作される。
【0021】
一実施形態において、当該方法は、ホットエアスルー接着により、先行圧密ウェブを接着することをさらに含む。一実施形態において、ホットエアスルー接着に用いられる空気は、120~145℃の温度を有する。
【0022】
一実施形態において、本発明の方法は、ハイブリッド処理を用いる。このハイブリッド処理では、先行圧密された布地は、接着後処理において、少なくとも2つの接着技術により、さらに活性化または接着される。当該接着技術は、熱ロール接着と、IR接着と、エアースルー接着とを組み合わせた方法から構成される。
【0023】
一実施形態において、本発明の方法は、例えば、SMS、SHSSSH、SSSH等のスパンメルト不織布のような積層不織布を形成するための全処理の一部を形成する。
【0024】
当該全処理は、高ロフトスパンボンデッド層を形成する、より進歩的な方法を含んでもよい。高ロフトスパンボンデッド層の各層は、上記の温度および/または線形接触力において操作される先行圧密ローラーを用いて先行圧密される。このような全処理の一実施形態において、すべての層を載置および先行圧密した後、接着するだけでよい。
【0025】
一実施形態において、当該全処理には、少なくとも1つのメルトブローン層(M)および/または少なくとも1つの標準ロフトスパンボンド層(SS)が含まれる。これらの付加的な層は、本発明の方法により製造された少なくとも1つの高ロフトスパンボンド層(SH)を含む不織ラミネート、好ましくは、SMS型、SHSSSH型、または、SSSH型不織ラミネートを形成する。
【0026】
本明細書において用いられる「標準不織」という用語は、非けん縮であり通常単成分である従来の繊維が原因でロフトが低くなる、他の各スパンボンド不織層を単に示すためのものである。しかし、当該用語はまた、単に定性的なものであり、特定の最大ロフトを意味するものではない。ただし、本発明において、高ロフトスパンボンド層の密度は、標準不織層の密度より低いものとする。
【0027】
一実施形態において、(1または複数の)付加的なメルトブローン層は、SH層の表面の一方または両方に形成し得る。SH層のけん縮繊維が、布地生産時に基板(例えば、スピンベルト)にからむ場合があるので、メルトブローンカバーを適用することにより、剥離性が向上し得る。
【0028】
一実施形態において、布地は、少なくとも1つの標準ロフトスパンボンド層(SS)と、少なくとも1つの高ロフトスパンボンド層(SH)との間に挟まれた、少なくとも1つのメルトブローン層(M)を備える。このようなSMS型ラミネートとしては、SSMSH、SSMMSH、SSSSMSH、SSMSHSH、SSSSMMSH、SSMMSHSH、SSSSMMSHSH等のラミネートが挙げられる。
【0029】
標準ロフトスパンボンド層(SS)は、ラミネートの機械的安定性の向上(例えば、破断および穴開きに対する安定性の向上)に寄与し得る。メルトブローン層(M)は、例えば、衛生製品のいわゆるギャザー(barrier legcuffs)として用いるのに望ましいバリア特性の向上に寄与し得る。
【0030】
この実施形態において、本発明は、「従来」のスパンボンド不織布と、本発明に係るけん縮繊維を含むスパンボンド不織布とを組み合わせることにより、優れたバリア特性と、不織布のソフトで厚手なテキスタイル特性とを組み合わせることを想定している。
【0031】
もちろん、代替の実施形態において、上述の各SMSラミネートにおいては、SS層(または各SS層)(SHMSH等)の代わりに、別のSHを用いてもよい。他方のSH層は、本発明に係る処理により形成される第1SH層と同じであってもよく、または、異なっていてもよい。例えば、他の繊維構造(一方のSH層は並列構造,他方のSH層はシースコア構造)を用いた上で、本発明に係る方法により形成してもよく、または、高ロフトSH層を取得する任意の既知の方法により形成してもよい。これは、特に、高いレベルのマスキングが必要な製品にとって有用である。
【0032】
一実施形態において、本発明の方法が、積層不織布を形成するための全処理の一部を形成する場合、当該積層布地は、少なくとも1つの標準ロフトスパンボンデッド層と、本発明に係る少なくとも1つの高ロフトスパンボンデッド層とを備え得る。形成された布地は、一般的なタイプのSHSSSH(SHSSSSSH、SHSSSHSH、SHSSSSSHSH等の変形型も含む)であってよい。この実施形態において、第1高ロフトスパンボンデッド層(SH)と、別の高ロフトスパンボンデッド層(SH)が後に続く標準スパンボンド(SS)に基づく中心層とを備える、サンドイッチ構造が得られる。これにより、スパンメルトSHMSH構造に対して、メルトブローン(M)中心層を、SS層と取り替えた構造が得られるだろう。本質的に非けん縮の標準スパンボンド不織SSの層を、高ロフトスパンボンデッド布地(SH)の2以上の層の間に挟むように加えることにより、材料の強度および安定性が向上する。同時に、実施形態の外側層は両方とも、高ロフトスパンボンデッド布地(SH)に必要な高い柔らかさを示す。
【0033】
さらに別の実施形態において、形成された布地は、一般的なタイプのSHSS(SSSH、SSSHSH、SSSSSHSH等の変形型も含む)であってよい。この実施形態において、第1標準ロフトスパンボンデッドベース層(SS)と、高ロフトスパンボンデッドトップ層(SH)とを備える、層構造が得られる。また、本質的に非けん縮の標準スパンボンド不織SSの(1または複数の)層を、高ロフトスパンボンデッド布地(SH)の(1または複数の)層に追加することにより、材料の強度および安定性が向上し、その一方、トップ層が所望の高い柔らかさを示す。
【0034】
初めに説明した背景に対して、本発明はさらに、本発明の方法により得られる不織布に関する。当該布地は、20N/50mm・cm3・m2・g-2より大きい特定強度および/または6・10-2g・cm-3未満の密度を有し得る。
【0035】
本発明のさらなる詳細および効果を、図面および以下の実施例を参照して説明する。図面の説明は以下の通り。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、本発明の方法(単一ビーム)を実施するための処理ラインを示す。
【
図2】
図2は、本発明の方法(2つのスパンボンドビームおよび2つのメルトブローンビーム)を実施するための別の処理ラインを示す。
【
図3】
図3は、ホットエアスルー接着用オメガオーブンが補完された
図2の処理ラインを示す。
【
図4】
図4は、並列繊維構造、偏心シースコア繊維構造、および三葉複合繊維構造の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下の用語および略語を、実施例において用いる場合がある。
【0038】
MFR:メルトフローレート(ISO1133に準じて測定され、g/10minの単位で示される値で示され、条件が230℃および2.16Kgである)
MD:縦方向
CD:横方向
デニール:g/9000mフィラメント
材料の厚さの変化は、WSP.120.6(R4) Option Aに準じて測定した。
【0039】
けん縮:通常らせん状にけん縮している繊維
ネックイン:縦方向に特定の引張り/力を加えた場合の横方向への材料の収縮傾向
密度:g/cm3(単位体積あたりの重量)
GSM:平方メートルあたりのグラム数
TM:融点(℃)(ISO11357-3の示差走査熱分析(DSC)法に準じて判定)
GPC:ゲル透過クロマトフラフィー
特定強度:(N/50mm)xcm3xm2/g2の単位の特定強度を得るために、領域重量の単位はグラムであると仮定した。
【0040】
本明細書において用いられ、多分散性指数PDI=Mw/Mn(Mnは数平均分子量、Mwは重量平均分子量)により記載される、分子量平均(Mz、Mw、Mn)の値、分子量分布(MWD)、および、その広さは、以下の式を用いてISO 16014-1:2003、ISO 16014-2:2003、ISO 16014-4:2003、およびASTM D 6474-12に準じてGPCにより決定されたと理解されるものとする。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
一定溶出体積区間ΔViについて、AiおよびMiは、クロマトグラフピークスライス領域およびポリオレフィン分子量(MW)であり、それぞれ溶出体積Viに関連づけられている。Nは、積分の極限間のクロマトグラムから得られるデータポイントの数に等しい。
【0045】
3xAgilent-PLgel Olexisガードカラムおよび1xAgilent-PLgel Olexisガードカラムを備えた、PolymerChar社(バレンシア、スペイン)の赤外線(IR)検出器(IR4もしくはIR5)またはAgilent Technologies社の示差屈折計(RI)のいずれか一方を備えた高温GPC機器を使用した。溶媒および移動相として、250mg/Lの2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールにより安定化させた1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)を使用した。クロマトグラフシステムを、160℃の温度および1mL/minの安定したフローレートで操作した。200μLのサンプル溶液を、分析毎に注入した。Agilent Cirrus software version 3.3またはPolymerChar GPC-IR control softwareのいずれか一方を用いて、データ収集を行った。
【0046】
0.5kg/molから11500kg/molの範囲の19の狭いMWDポリスチレン(PS)スタンダードを使用し、ユニバーサルキャリブレーション(ISO 16014-2:2003に準ずる)を用いて、カラムセットを較正した。PSスタンダードを、室温で数時間にわたり溶解した。マルク-ホウインクの式および下記のマルク-ホウインクの定数を用いて、ポリスチレンピーク分子量をポリオレフィン分子量に変換する。
【0047】
KPS=19x10-3mL/g, aPS=0.655
KPE=39x10-3mL/g, aPE=0.725
KPP=19x10-3mL/g, aPP=0.725
3次多項式の当てはめを用いて、較正データを適合させた。
【0048】
すべてのサンプルを、0.5~1mg/mlの濃度範囲で調製し、160℃で2.5時間にわたり溶解した。
【0049】
図1は、本発明の方法、より具体的には、複合スパンボンド法を実施する処理ラインを示す。処理ラインには、異なるポリマーを処理する、2つの独立した押出機A1およびA2が備え付けられている。これらのポリマーは、別々の経路でコートハンガーに導かれる。コートハンガーの下に、複数のガイドプレートから構成されるダイが取り付けられており、様々なクロス繊維セグメントを得ることができる。
【0050】
複合繊維の典型的な構造は、シースコア構造である。他の構造としては、2つのポリマー流が並列である場合、
図4に示すように、偏心シースコア配置構造や、三葉構造等がある。
【0051】
押出機A1がホモポリマーを処理し、押出機A2がランダムコポリマーを処理し、ダイが並列構造を有する場合、特定の紡績条件の下、らせん状けん縮繊維が生成される。
【0052】
ダイを出ると、フィラメントは、ユニット1において、調整済み作業用エアにより冷却される。同じ作業用エアを用いて、図面上のストレッチユニット2にフィラメントを引き込み、適切な繊維デニールを取得し、そして、ポリマー鎖を同一方向に配置することにより、繊維内の内部強度を生成する。
【0053】
繊維をスピンベルト4上に載置した後、作業用エアは、真空チャンバ3により吸引される。そして、繊維は、一組のローラー(1つの圧密ローラー5、および、スピンベルトの下に配置された1つの反対側ローラー6)により挟まれ、先行圧密される。
【0054】
合成され先行圧密されたウェブ7は、先行圧密処理を終えた後、どのような力も加えられることなく、ベルト上に置かれ、軽い繊維同士を一体化し、さらなる処理に耐えるようにしている。
【0055】
2つのポリマー(1つの第1ポリマー(通常のPPホモポリマー)と、1つの第2ランダムPP/PEコポリマーとが、並列に組み合わされている)を処理すると、繊維がらせん状の縮れを生成できることがわかった。
【0056】
合成布地7は、よく知られたマイクロフリースの風合いに匹敵する非常にやわらかな風合いを特徴とする。このポリマーの組み合わせにより生成されたけん縮繊維は、非常に均質で安定した縮れレベルを示すので、このような繊維を有する合成布地は、高い引張り特性を示す。
【0057】
一例において、第1ポリマー(A1において用いられるホモポリマー)は、「用語および条件」に記載されるGPCにより測定される4.33~4.93の範囲の狭い分子量分布Mw/Mn(多分散性)と、ISO1133に準じて測定される19~35g/10minの範囲のMFRと、ISO11357-3に準じてDSCを用いて測定される159~161℃のTMとを有する従来級のスパンボンドである。第2ポリマーとしてランダムコポリマーを使用している。このランダムコポリマーは、4.54のMw/Mn(多分散性)値を有し、したがって、A1のポリマーと類似する狭い分子量分布とを有する。ISO1133に準じて測定されるA2におけるポリマーのMFRは、30g/10minの範囲にあり、TMは、ISO11357-3に準じてDSCにより測定すると、144℃である。第2ポリマーは、約4%のC2レベルを有するPP/PEランダムコポリマーであり、ある程度凝集されている。
【0058】
圧密ローラー5および6のパラメータ設定は、布地品質に重大な影響を与える。従来の処理では、圧密ローラーは通常、5N/mmの線形接触力の圧力および110~130℃の範囲の温度で操作される。しかし、このような条件で上述のようにけん縮繊維を処理すると、縮れがプレスされ、布地の厚さおよび柔らかさが、乏しくなる。従って、本発明によれば、ローラー5および6は、従来技術よりも低い温度および線形接触力で操作される。
【0059】
図2および3において、
図1に示すスパンボンドラインを備えるスパンメルト不織布を得るための複合ラインを示す。
図1に示すライン10に加え、当該装置は、メルトブローンライン11および接着装置12をさらに備える。接着装置12は、エンボスカレンダーロール13および反対側ロール14を備え、
図3の場合、ホットエアスルー接着用オメガオーブン15をさらに備える
以下に示す例はすべて、
図1に示すラインを用いる。
【0060】
以下で検討する例においては、表1に示すポリマーを用いた。
【0061】
【0062】
以下で検討する比較例においては、表2に示すポリマーを用いた。
【0063】
【0064】
例1~5:
例1~5におけるスパンボンド処理の一般的な処理条件は、以下のとおりである。
細孔の数は、1メートルあたり約4900個である。
並列ダイ構造を有する。
機室圧力は、3700Paである。
処理エア温度は、約20℃である。
A1およびA2の融解温度は、245から250℃である。
細孔ごとの処理量は、0.53g/hole/minの範囲の範囲である。
タイター範囲は、1.5~2.0デニールである。
圧密ローラー:線形接触力は2.5N/mmであり、温度は70℃である。
カレンダーローラー:ポイント接着エンボスロール上では135℃であり、スムースロール上で125℃であり、線形接触力は60N/mmである。
接着模様:12.1%のオープンドット接着模様であり、ドット直径は0.8mmであり、ドット密度は24dot/cm2であり、彫刻深さは0.75mmである。
【0065】
結果を、表3に示す。
【0066】
【0067】
上記のように、A1/A2のポリマーの組み合わせが、35/30g/10min、25/30g/10min、および19/30g/10minのMFR範囲で変化するという、合成布地のパラメータの試験結果がみられる。上記のように、すべての組み合わせにおいて縮れが生成され、0.33mmから0.44mmのカリパーが測定される。MD引張り特性はきわめて高く、伸長特性は、許容できる程度に低レベルを維持している。
【0068】
例6~10:
例6~10におけるスパンボンド処理の一般的な処理条件は、以下のとおりである。
細孔の数は、1メートルあたり約4900個である。
並列ダイ構造を有する。
機室圧力は、3700Paである。
処理エア温度は、約20℃である。
A1およびA2の融解温度は、245から250℃である。
細孔ごとの処理量は、0.53g/hole/minの範囲の範囲である。
タイター範囲は、1.5~2.0デニールである。
圧密ローラー:線形接触力は2.5N/mmであり、温度は40℃である。
カレンダーローラー:ポイント接着エンボスロール上では135℃であり、スムースロール上で125℃であり、線形接触力は60N/mmである。
接着模様:12.1%のオープンドット接着模様であり、ドット直径は0.8mmであり、ドット密度は24dot/cm2であり、彫刻深さは0.75mmである。
【0069】
結果を、表4に示す。
【0070】
【0071】
上記例のリストにおいて、A1とA2とのポリマー比を変化させ、他のすべてのパラメータを一定に保つと、圧密ローラーが、すべてのオプションにおいて、2.5N/mmの接触力および約40℃の温度で操作されているという結果がみられる。
【0072】
なお、0.6mmのカリパーが測定される40/60の比のオプションにおいて、最大けん縮レベルがみられるが、示されるように、縦方向に21.4N/50mmおよび横方向に12.7N/50mmの範囲の比較的低い引張り特性が、当該比において得られる。
【0073】
例11~17:
例11~17におけるスパンボンド処理の一般的な処理条件は、以下のとおりである。細孔の数は、1メートルあたり約4900個である。
並列ダイ構造を有する。
機室圧力は、3700Paである。
処理エア温度は、約20℃である。
A1およびA2の融解温度は、245から250℃である。
細孔ごとの処理量は、0.53g/hole/minの範囲の範囲である。
タイター範囲は、1.5~2.0デニールである。
圧密ローラー:線形接触力は2.5N/mmであり、温度の範囲は50℃~110℃である。
カレンダーローラー:ポイント接着エンボスロール上では135℃であり、スムースロール上で125℃であり、線形接触力は60N/mmである。
接着模様:12.1%のオープンドット接着模様であり、ドット直径は0.8mmであり、ドット密度は24dot/cm2であり、彫刻深さは0.75mmである。
【0074】
結果を、表5に示す。
【0075】
【0076】
上記の例11~17において、すべての処理パラメータは、圧密ローラー上の温度を除いて、同じにしている。ローラーは、すべてのオプションにおいて、2.5N/mmの接触力で操作され、温度は、50℃から110℃まで約10℃ずつの増加レベルに設定されている。
【0077】
例18~23:
例18~23におけるスパンボンド処理の一般的な処理条件は、以下のとおりである。細孔の数は、1メートルあたり約4900個である。
並列ダイ構造を有する。
機室圧力は、3700Paである。
処理エア温度は、約20℃である。
A1およびA2の融解温度は、245から250℃である。
細孔ごとの処理量は、0.53g/hole/minの範囲の範囲である。
タイター範囲は、1.5~2.0デニールである。
圧密ローラー:線形接触力は2.5N/mmであり、温度は40℃である。
カレンダーローラー:ポイント接着エンボスロール上では135℃であり、スムースロール上で125℃であり、線形接触力は60N/mmである。
接着模様:12.1%のオープンドット接着模様であり、ドット直径は0.8mmであり、ドット密度は24dot/cm2であり、彫刻深さは0.75mmである。
【0078】
結果を、表6に示す。
【0079】
【0080】
上記の例において、すべての処理パラメータは一定に保たれている。また、けん縮し、圧密され、カレンダー接着されたウェブを、その後、オーブンにおいてエアースルー接着処理により活性化した。ここで、圧密されたウェブを通る空気流は一定に保たれ、オーブン内の空気の温度は120℃から145℃に変更される。
【0081】
1~23に列挙される一般的な観察処理オプション:
様々な組み合わせのポリマー比で処理おこなったが、いかなるネガティブなものも観察されなかった。処理条件は、非常に安定し、オプションからオプションへ滑らかに移行した。紡績的には、繊維カーテンはすべての条件において安定しており、水滴やしずくをまねく繊維破壊は観察されなかった。
【0082】
比較例24~26:
比較例24~26におけるスパンボンド処理の一般的な処理条件は、以下のとおりである。
細孔の数は、1メートルあたり約4900個である。
並列ダイ構造を有する。
機室圧力は、4000Paである。
処理エア温度は、約18℃である。
A1およびA2の融解温度は、245から248℃である。
細孔ごとの処理量は、0.58g/hole/minの範囲の範囲である。
タイター範囲は、1.5~2.0デニールである。
圧密ローラー:線形接触力は2.5N/mmであり、温度の範囲は41~88℃である。カレンダーローラー:ポイント接着エンボスロール上では160℃であり、スムースロール上で145℃であり、線形接触力は60N/mmである。
接着模様:12.1%のオープンドット接着模様であり、ドット直径は0.8mmであり、ドット密度は24dot/cm2であり、彫刻深さは0.75mmである。
【0083】
結果を、表7に示す。
【0084】
【0085】
上記において、けん縮度が強い(of the style aggressibe crimp)既知のPP/PPベースけん縮圧密布地の基準オプションの取得データが示されている。ポリマー比は、A1とA2との間で70/30であり、押出機A2には、50%HP561Rと50%HP552Rとのポリマー混合物(狭い分子量分布をもつもの及び広い分子量分布をもつもの)が供給される。すべての処理パラメータは、圧密ローラーの温度を除いて、一定に保たれている。圧密ローラーは2.5N/50mmの一定線形接触力に保たれるが、温度は、41℃から88℃に変化する。カレンダー温度は、エンボスローラー上で160℃であり、スムースローラー上で145℃である。
【0086】
例27~31および比較例32:
これらの例は、本発明に準じて製造された不織材料の特定の優れた強度を示すのに役立つ。当該例は、表8に要約される。
【0087】
【0088】
比較例32は、基準単成分材料である。当該材料は、顕著に高いカレンダー接着温度(162℃(カレンダーオイル温度)のエンボスローラーおよび145℃(カレンダーオイル温度)のスムースローラー)で処理された。他のすべての例は、135℃(カレンダーオイル温度)のエンボスローラーおよび125℃(カレンダーオイル温度)のスムースローラーで処理された。他のすべての処理設定は、同一である。
【0089】
上記から、取得し得る最大MD引張り力は、50.4N/50mmであることがわかる。これは、けん縮が無い場合に測定され(比較例32)、この結果、特定強度は42.1(N/50mm)xcm3xm2/g2になる。異なるポリマー比により密度が低くなり、けん縮繊維により密度が低くなると、絶対引張り力が減少し、特定強度が減少することがわかる。けん縮/柔らかさ/厚さと特定強度との間の最適条件は、ホモポリマーとコポリマーとのポリマー比が50/50のときであることがわかった。このときの特定強度は33.3(N/50mm)xcm3xm2/g2である。
【0090】
特定強度は、材料の個別密度および坪量を補償する。
【0091】
比較例33~35:
これらの例は、特定強度の高ロフト基準オプションを構成する。当該例は、表9に要約される。
【0092】
【0093】
下記の表10は、例えば、上述の例27~35で得られた特定強度パラメータを比較している。比較例32は、所定の処理条件のもとで実現可能なものの最適条件であるとみなされ、この特定強度を100%と設定する。他の高ロフトオプションの範囲を、下記のように計算することができる。
【0094】
【0095】
本発明の材料は、高い特定強度を有することがわかった。2つの異なるポリマーの比が50/50である例28に示されるように、これが、同時に低密度/高カリパーが優先される場合に、当該表においては最良の評価であることがわかる。明らかに、2つのポリマーの比が50/50である混合物が、けん縮が少ないより単成分な混合物に変わると、特定引張り力は増加し、実際、80/20混合物のオプションは、特定強度の点で、通常の単成分材料に非常に近似している。
【0096】
異なる分子量分布(一方は狭く、他方はより広い)を有する2つのホモポリマーから作られる基本PP/PPけん縮不織布を比較すると、これらのオプションは、当該表においては特定強度の点で比較的劣る。けん縮の程度が中程度および大きいすべてのオプションは、当該表において、50.5と58.2との間にある。ただし、100が単成分材料の最高値である。本発明の材料は、比較してみると、当該表においては80%に迫っている。