(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180505
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】眼科用薬剤組成物、眼科用キット、及びその医学的応用
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20221129BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20221129BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20221129BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221129BHJP
A61P 27/12 20060101ALI20221129BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20221129BHJP
A61P 25/02 20060101ALI20221129BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20221129BHJP
A61K 31/573 20060101ALI20221129BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20221129BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P27/02
A61P27/06
A61P29/00
A61P27/12
A61P9/10
A61P25/02 101
A61K9/08
A61K31/573
A61K47/34
A61K47/14
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022149278
(22)【出願日】2022-09-20
(62)【分割の表示】P 2020537823の分割
【原出願日】2018-09-20
(31)【優先権主張番号】201710863869.2
(32)【優先日】2017-09-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520098501
【氏名又は名称】シェンヤン シンチ ファーマシューティカル カンパニー, リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SHENYANG XINGQI PHARMACEUTICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, チィアン
(72)【発明者】
【氏名】リウ, ジードン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】注射によって眼内に注入することができ、眼内で医薬品有効成分を長時間ゆっくり放出でき、眼内で分解され得る眼科用薬剤組成物の提供。
【解決手段】眼科用薬剤組成物であって、0.3~1.5重量部の固体基質、0.8~2重量部の液体基質及び1重量部の医薬品有効成分を含み;固体基質は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー、及び数平均分子量が800~10,000のポリエチレングリコールからなる群から選択され;液体基質は、コハク酸ジエチル、酒石酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、三酢酸グリセリン、数平均分子量が70~750のポリエチレングリコール、グリセリン及びプロピレングリコールからなる群から選択される1つ又は複数の混合物であり、好ましくは数平均分子量70~750のポリエチレングリコールであり、より好ましくはポリエチレングリコール400である、眼科用薬剤組成物とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構成成分:
固体基質:0.06~40重量部
液体基質:0.4~55重量部
医薬品有効成分:1重量部
を含む眼科用薬剤組成物であって、
前記固体基質は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー、及び数平均分子量が800~10,000のポリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つであり;
前記液体基質は、第1の液体基質及び/又は第2の液体基質であり;
前記第1の液体基質は、コハク酸ジエチル、酒石酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、及び三酢酸グリセリンからなる群から選択される少なくとも1つであり;
前記液体基質が前記第1の液体基質及び前記第2の液体基質の場合、前記第2の液体基質は、グリセリン、プロピレングリコール、及び数平均分子量が70~750のポリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つであり;
前記液体基質が前記第2の液体基質の場合、前記第2の液体基質は、グリセリン及び/又はプロピレングリコール、又は数平均分子量が70~750のポリエチレングリコールとグリセリン及びプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つとの組合せである、眼科用薬剤組成物。
【請求項2】
以下の項目A~F:
A.以下の構成成分:
固体基質:0.08~30重量部
第1の液体基質:0.8~40重量部
医薬品有効成分:1重量部
を含むこと;
B.以下の構成成分:
固体基質:0.08~14重量部
第1の液体基質:0.8~20重量部
第2の液体基質:0.1~18重量部
医薬品有効成分:1重量部
を含むこと;
C.以下の構成成分:
固体基質:0.8~20重量部
第2の液体基質:0.7~40重量部
医薬品有効成分:1重量部
を含むこと;
D.以下の構成成分:
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー:0.08~26重量部
第1の液体基質:0.8~37重量部
医薬品有効成分:1重量部
を含み;
好ましくは、前記第1の液体基質は、コハク酸ジエチル、酒石酸ジエチル、グルタル酸ジエチル又は三酢酸グリセリンであること;
E.以下の構成成分:
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー:0.08~10重量部
第1の液体基質:0.8~18重量部
数平均分子量が70~750:0.1~16重量部のポリエチレングリコール
医薬品有効成分:1重量部
を含み;
好ましくは、前記第1の液体基質は、コハク酸ジエチル、酒石酸ジエチル、グルタル酸ジエチル又は三酢酸グリセリンであること;
F.以下の構成成分:
固体基質:0.8~15重量部
第2の液体基質:0.7~20重量部
医薬品有効成分:1重量部
を含み;
好ましくは、前記固体基質は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー、又は数平均分子量が800~10,000のポリエチレングリコールであること
のいずれか1つを特徴とする、請求項1に記載の眼科用薬剤組成物。
【請求項3】
前記医薬品有効成分が、抗腫瘍薬、抗炎症薬、免疫抑制剤、血管新生阻害剤、及び緑内障治療薬からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1又は2に記載の眼科用薬剤組成物。
【請求項4】
前記医薬品有効成分が、クロランブシル、メルフマイク、シクロホスファミド、イホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、クロロゾトシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、フルオロウラシル、ミトキサントロン、イリノテカン、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、エトポシド、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、ブレオマイシン、メトトレキサート、ゲムシタビン、カペシタビン、ヒドロキシ尿素、マイトマイシン、ゲフィチニブ、スニチニブ、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、プレドニゾン、酢酸プレドニゾン、フルオシノロン、酢酸フルオシノロン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、プロピオン酸ハロベタゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、シクロスポリン、ラパマイシン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、フジマイシン、ミゾリビン、スルファサラジン、アザチオプリン、メトトレキサート、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ペガプタニブナトリウム、アフリベルセプト、ラタノプロスト、トラボプロスト、ビマトプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト、ピロカルピン、アトロピン、スコポラミン、ベタキソロール、メトプロロール、ブノロール、メチプラノロール、プロプラノロール、チモロール、ベフノロール、アセタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、アプラクロニジン、ブリモニジン、ジピベフリン、グアネチジン、ダピプラゾール、ダサチニブ、及びその薬学的に許容できる塩からなる群から選択され;
好ましくは、前記医薬品有効成分が、デキサメタゾン、ラタノプロスト、ダサチニブ、トリアムシノロン、及びその薬学的に許容できる塩からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1又は2に記載の眼科用薬剤組成物。
【請求項5】
眼科用薬剤調製物、好ましくは眼科用薬剤注射剤調製物である、請求項1又は2に記載の眼科用薬剤組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の眼科用薬剤組成物を調製するための方法であって、以下:
(1)前記固体基質と前記液体基質を混合して混合物質を得るステップ;
(2)ステップ(1)で得られた前記混合物質と前記医薬品有効成分を混合するステップ
を含み、
好ましくは、ステップ(1)において、前記混合が、20℃~100℃の温度で行われる、方法。
【請求項7】
固体基質、液体基質、及び医薬品有効成分を含む眼科用キットであって、
前記固体基質は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー、及び数平均分子量が800~10,000のポリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つであり;
前記液体基質は、第1の液体基質及び/又は第2の液体基質であり;
前記第1の液体基質は、コハク酸ジエチル、酒石酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、及び三酢酸グリセリンからなる群から選択される少なくとも1つであり;
前記液体基質が前記第1の液体基質及び前記第2の液体基質の場合、前記第2の液体基質は、グリセリン、プロピレングリコール及び数平均分子量が70~750のポリエチレングリコールから選択される少なくとも1つであり;
前記液体基質が前記第2の液体基質の場合、前記第2の液体基質は、グリセリン及び/又はプロピレングリコール、又は数平均分子量が70~750のポリエチレングリコールとグリセリン及びプロピレングリコールから選択される少なくとも1つとの混合物である、眼科用キット。
【請求項8】
以下の項目i~iii:
i.前記眼科用キットは、注射器をさらに含むこと;
ii.前記眼科用キットは、眼科用注射キットであること;
iii.前記医薬品有効成分は、抗腫瘍薬、抗炎症薬、免疫抑制剤、血管新生阻害剤、及び緑内障治療薬からなる群から選択される少なくとも1つであり;
好ましくは、前記医薬品有効成分は、クロランブシル、メルフマイク、シクロホスファミド、イホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、クロロゾトシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、フルオロウラシル、ミトキサントロン、イリノテカン、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、エトポシド、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、ブレオマイシン、メトトレキサート、ゲムシタビン、カペシタビン、ヒドロキシ尿素、マイトマイシン、ゲフィチニブ、スニチニブ、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、プレドニゾン、酢酸プレドニゾン、フルオシノロン、酢酸フルオシノロン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、プロピオン酸ハロベタゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、シクロスポリン、ラパマイシン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、フジマイシン、ミゾリビン、スルファサラジン、アザチオプリン、メトトレキサート、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ペガプタニブナトリウム、アフリベルセプト、ラタノプロスト、トラボプロスト、ビマトプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト、ピロカルピン、アトロピン、スコポラミン、ベタキソロール、メトプロロール、ブノロール、メチプラノロール、プロプラノロール、チモロール、ベフノロール、アセタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、アプラクロニジン、ブリモニジン、ジピベフリン、グアネチジン、ダピプラゾール、ダサチニブ、及びその薬学的に許容できる塩からなる群から選択される少なくとも1つであり;
より好ましくは、前記医薬品有効成分は、デキサメタゾン、ラタノプロスト、ダサチニブ、トリアムシノロン、及びその薬学的に許容できる塩からなる群から選択される少なくとも1つであること
のうちの1つ又は複数を特徴とする、請求項7に記載の眼科用キット。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の眼科用薬剤組成物又は請求項7若しくは8に記載の眼科用キットを含む眼科用徐放医薬品であって、
好ましくは、眼科用注射のための徐放医薬品である、眼科用徐放医薬品。
【請求項10】
眼疾患の予防及び/又は治療のための医薬品の製造における請求項1~5のいずれか一項に記載の眼科用薬剤組成物、請求項7若しくは8に記載の眼科用キット、又は請求項9に記載の眼科用徐放医薬品の使用であって、
好ましくは、前記眼疾患が、白内障術後炎症、緑内障、ブドウ膜炎、網膜静脈閉塞、網膜動脈閉塞、糖尿病性網膜症、網膜静脈炎、増殖性硝子体網膜症、脈絡新血管新生、類嚢胞黄斑浮腫、加齢性黄斑変性、硝子体黄斑癒着、黄斑円孔、視神経炎、視神経乳頭浮腫、視神経髄膜腫、視神経膠腫、網膜芽腫及び脈絡膜芽腫からなる群から選択される少なくとも1つである、使用。
【請求項11】
眼疾患を予防及び/又は治療するための方法であって、請求項1~5のいずれか一項に記載の眼科用薬剤組成物又は請求項9に記載の眼科用徐放医薬品を眼に注入するステップを含み;
好ましくは、前記眼疾患が、白内障術後炎症、緑内障、ブドウ膜炎、網膜静脈閉塞、網膜動脈閉塞、糖尿病性網膜症、網膜静脈炎、増殖性硝子体網膜症、脈絡新血管新生、類嚢胞黄斑浮腫、加齢性黄斑変性、硝子体黄斑癒着、黄斑円孔、視神経炎、視神経乳頭浮腫、視神経髄膜腫、視神経膠腫、網膜芽腫及び脈絡膜芽腫からなる群から選択される少なくとも1つであり;
好ましくは、前記注入が後眼部に行われる、方法。
【請求項12】
好ましくは、白内障術後炎症、緑内障、ブドウ膜炎、網膜静脈閉塞、網膜動脈閉塞、糖尿病性網膜症、網膜静脈炎、増殖性硝子体網膜症、脈絡新血管新生、類嚢胞黄斑浮腫、加齢性黄斑変性、硝子体黄斑癒着、黄斑円孔、視神経炎、視神経乳頭浮腫、視神経髄膜腫、視神経膠腫、網膜芽腫及び脈絡膜芽腫からなる群から選択される少なくとも1つである、眼疾患の予防及び/又は治療に使用するための請求項1~5のいずれか一項に記載の眼科用薬剤組成物、請求項7若しくは8に記載の眼科用キット、又は請求項9に記載の眼科用徐放医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医学の分野に属し、特に眼科用薬剤組成物に関し、また眼科用キット及びその医学的応用に関する。
【背景技術】
【0002】
解剖学的に、眼球には2つの部分、前眼部及び後眼部が含まれ、前眼部は、約1/3を占め、角膜、瞳孔、虹彩、房水、毛様体及び水晶体から構成されており、一方、後眼部は、約2/3を占め、硝子体、網膜、黄斑、視神経、脈絡膜及び強膜から構成されている。眼球のどの部分の異常も眼疾患を引き起こす可能性があり、視力障害の主な原因は、眼疾患、例えば網膜静脈炎、糖尿病性網膜症、増殖性硝子体網膜症、脈絡新血管新生、加齢性黄斑変性、類嚢胞黄斑浮腫、硝子体黄斑癒着、黄斑円孔である。現在、眼の表面投与及び全身投与は、依然として後眼部の疾患の治療のための主な投与方法である。しかしながら、涙液バリア、角膜バリア、及び結膜バリアの存在によって、眼の表面投与は、後眼部に到達することが困難であり;その上、血液房水及び血液網膜バリアの影響により、全身投与は、後眼部に到達する薬物の量が治療的必要性を満たすように大量及び複数回の投与が必要とされる。この状況に基づいて、後眼部に到達する薬物の量を増やすためには、眼周囲注射及び硝子体内注射が徐々に採用され;しかしながら、ほとんどの薬物は、硝子体内での半減期が短く、治療要件を満たすために硝子体内の薬物の量を維持するために複数回の注射が必要とされ、それは患者に痛みを生じさせ、患者のコンプライアンスを低下させ、眼内感染のリスクを高める。
【0003】
複数回の注射によって引き起こされる問題を解決するため、後眼部の疾患を治療するために徐放インプラントが臨床的に使用されている。徐放インプラントは、材料によって非生分解性及び生分解性タイプに分類される。例えば、サイトメガロウィルス網膜炎の治療のためにオーストラリアの会社pSividaによって開発され、1996年にFDAによって承認されたガンシクロビルインプラント、Vitrasertは、非生分解性材料のポリビニルアルコール及びエチレン-酢酸ビニルコポリマーを放出制御材料として使用する。2005年には、主に非感染性ブドウ膜炎の治療のために同じ会社によって開発されたフルオシノニドインプラント、Retisertは、FDAによって承認された。Retisertは、非生分解性材料のポリビニルアルコール及びシリコーン油を放出制御材料として使用する。非生分解性徐放インプラントは分解されないので、二次手術によって除去する必要がある。この問題を解決するために、生分解性インプラントが開発されている。一般に使用される生分解性徐放材料には、ヒプロメロース、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマーが含まれ、市場における代表的な製品は、Allergan社のSurodex及びOzurdexであり、前者は、デキサメタゾンインプラントを調製するための材料としてポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー及びヒプロメロースを使用し、白内障手術後の抗炎症の治療のためにデキサメタゾンを7~10日間継続的に放出でき、一方後者は、黄斑浮腫及びブドウ膜炎の治療のためにデキサメタゾンインプラントを調製する材料としてポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマーを使用する。しかしながら、非生分解性インプラントと生分解性インプラントの両方は、現在、手術又は特別な薬物送達デバイスによって眼内に埋め込む必要がある(例えば、Ozurdexは、特別な注射デバイスを備えている)。操作は、より複雑であり、患者に何らかの痛みをもたらす。
【0004】
現在、投与が簡単で徐放効果がある眼科用薬物が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、注射によって眼内に注入することができる眼科用薬剤組成物を提供する。本発明の眼科用薬剤組成物は、眼内で医薬品有効成分を長時間ゆっくり放出でき、眼内で分解され得る。これに基づいて、本発明はまた、眼科用キット及びその医学的使用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、以下の構成成分:
固体基質:0.06~40重量部(例えば0.08重量部、0.1重量部、0.3重量部、0.5重量部、0.7重量部、0.8重量部、1重量部、1.3重量部、1.6重量部、1.8重量部、2重量部、2.5重量部、3重量部、4重量部、6重量部、8重量部、10重量部、13重量部、15重量部、17重量部、20重量部、22重量部、25重量部、27重量部、30重量部、33重量部、36重量部、38重量部、37重量部)
液体基質:0.4~55重量部(例えば0.8重量部、1重量部、1.5重量部、2重量部、2.3重量部、2.5重量部、2.8重量部、3重量部、3.5重量部、4重量部、4.6重量部、5重量部、7重量部、8重量部、10重量部、12重量部、14重量部、16重量部、20重量部、22重量部、24重量部、26重量部、28重量部、30重量部、34重量部、38重量部、40重量部、45重量部、47重量部)
医薬品有効成分:1重量部
を含む眼科用薬剤組成物であって、
固体基質は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー、及び数平均分子量が800~10,000(例えば、1800~2200、900、1000、1200、1400、1600、2000、2800、3000、5000、7000、8000、9500、9000)のポリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つであり;
液体基質は、第1の液体基質及び/又は第2の液体基質であり;
第1の液体基質は、コハク酸ジエチル、酒石酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、及び三酢酸グリセリンからなる群から選択される少なくとも1つであり;
液体基質が第1の液体基質及び第2の液体基質の場合、第2の液体基質は、グリセリン、プロピレングリコール、及び数平均分子量が70~750(例えば、190~210、300、380~420、570~630、100、200、400、500、600、700)のポリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つであり;
液体基質が第2の液体基質の場合、第2の液体基質は、グリセリン及び/又はプロピレングリコール、又は数平均分子量が70~750(例えば、190~210、300、380~420、570~630、100、200、400、500、600、700)のポリエチレングリコールとグリセリン及びプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つとの組合せである、眼科用薬剤組成物に関する。
【0007】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、第2の液体基質は、グリセリン及び/又はプロピレングリコール、又は数平均分子量が70~750(例えば、190~210、300、380~420、570~630、100、200、400、500、600、700)のポリエチレングリコールとグリセリン及びプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つとの混合物である。
【0008】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、第2の液体基質は、グリセリン及び/又はプロピレングリコールである。
【0009】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、第2の液体基質は、数平均分子量が70~750(例えば、190~210、300、380~420、570~630、100、200、400、500、600、700)のポリエチレングリコールとグリセリン及びプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つとの組合せである。
【0010】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、第2の液体基質は、数平均分子量が70~750(例えば、190~210、300、380~420、570~630、100、200、400、500、600、700)のポリエチレングリコールとグリセリン及びプロピレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つとの混合物である。
【0011】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、第2の液体基質は、数平均分子量が70~750(例えば、190~210、300、380~420、570~630、100、200、400、500、600、700)のポリエチレングリコール及びグリセリンである。
【0012】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、第2の液体基質は、数平均分子量が70~750(例えば、190~210、300、380~420、570~630、100、200、400、500、600、700)のポリエチレングリコール及びプロピレングリコールである。
【0013】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、第2の液体基質は、数平均分子量が70~750(例えば、190~210、300、380~420、570~630、100、200、400、500、600、700)のポリエチレングリコール、グリセリン、及びプロピレングリコールである。
【0014】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、ポリ乳酸は、重量平均分子量が1,000~500,000、例えば、3,000~60,000、6000、8000、9000、10,000、40,000、60,000、80,000、100,000、200,000、300,000、400,000、及び450,000である。
【0015】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、ポリグリコール酸は、重量平均分子量が1,000~600,000、例えば、5000~50,000、3000、4000、6000、8000、10,000、30,000、50,000、100,000、200,000、300,000、及び500,000である。
【0016】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマーは、重量平均分子量が1,000~500,000、例えば、5,000~50,000、3000、4000、6000、8000、9000、10,000、40,000、60,000、80,000、100,000、200,000、300,000、400,000、及び450,000である。
【0017】
本発明では、数平均分子量は、従来の方法、例えば末端基分析法、沸点上昇法、凝固点降下法、蒸気圧浸透法、及び薄膜浸透法などに基づいて測定される。
【0018】
本発明では、重量平均分子量は、従来の方法、例えば光散乱法、ゲルクロマトグラフィー法、超遠心沈降速度法、及び小角X線回折法などに基づいて測定される。
【0019】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態は、以下の項目A~F:
A.以下の構成成分:
固体基質:0.08~30重量部(例えば、0.1重量部、0.3重量部、0.5重量部、0.7重量部、0.8重量部、1重量部、1.3重量部、1.6重量部、1.8重量部、2重量部、2.5重量部、3重量部、4重量部、6重量部、8重量部、10重量部、13重量部、15重量部、17重量部、20重量部、22重量部、25重量部、27重量部)
第1の液体基質:0.8~40重量部(例えば、1重量部、1.5重量部、2重量部、2.3重量部、2.5重量部、2.8重量部、3重量部、3.5重量部、4重量部、4.6重量部、5重量部、7重量部、8重量部、10重量部、12重量部、14重量部、16重量部、20重量部、22重量部、24重量部、26重量部、28重量部、30重量部、34重量部、38重量部)
医薬品有効成分:1重量部
を含むこと;
B.以下の構成成分:
固体基質:0.08~14重量部(例えば、0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.5重量部、0.7重量部、0.8重量部、1重量部、1.3重量部、1.6重量部、1.8重量部、2重量部、2.5重量部、3重量部、4重量部、6重量部、8重量部、10重量部、13重量部)
第1の液体基質:0.8~20重量部(例えば、1重量部、1.5重量部、2重量部、2.3重量部、2.5重量部、2.8重量部、3重量部、3.5重量部、4重量部、4.6重量部、5重量部、7重量部、8重量部、10重量部、12重量部、14重量部、16重量部、20重量部)
第2の液体基質:0.1~18重量部(例えば、0.2重量部、0.15重量部、0.25重量部、0.3重量部、0.33重量部、0.37重量部、0.4重量部、1重量部、2重量部、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部、7重量部、8重量部、9重量部、10重量部、12重量部、13重量部、15重量部、16重量部、17重量部、18重量部)
医薬品有効成分:1重量部
を含むこと;
C.以下の構成成分:
固体基質:0.8~20重量部(例えば1重量部、1.2重量部、1.3重量部、1.5重量部、1.6重量部、1.7重量部、1.9重量部、2重量部、2.2重量部、2.5重量部、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部、7重量部、9重量部、1重量部、13重量部、15重量部、17重量部、18重量部、19重量部)
第2の液体基質:0.7~40重量部(例えば、0.9重量部、1重量部、1.1重量部、1.2重量部、1.25重量部、2重量部、3重量部、4重量部、5重量部、7重量部、9重量部、10重量部、13重量部、15重量部、17重量部、18重量部、20重量部、22重量部、24重量部、26重量部、29重量部、30重量部、32重量部重量部、35重量部、36重量部、37重量部、39重量部)
医薬品有効成分:1重量部
を含むこと;
D.以下の構成成分:
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー:0.08~26重量部(例えば、0.1重量部、0.3重量部、0.5重量部、0.7重量部、0.8重量部、1重量部、1.3重量部、1.6重量部、1.8重量部、2重量部、2.5重量部、3重量部、4重量部、6重量部、8重量部、10重量部、13重量部、15重量部、17重量部、20重量部、22重量部、25重量部)
第1の液体基質:0.8~37重量部(例えば、1重量部、1.5重量部、2重量部、2.3重量部、2.5重量部、2.8重量部、3重量部、3.5重量部、4重量部、4.6重量部、5重量部、7重量部、8重量部、10重量部、12重量部、14重量部、16重量部、20重量部、22重量部、24重量部、26重量部、28重量部、30重量部、34重量部)
医薬品有効成分:1重量部
を含み;
好ましくは、第1の液体基質は、コハク酸ジエチル、酒石酸ジエチル、グルタル酸ジエチル又は三酢酸グリセリンであり;
好ましくは、ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー中のポリ乳酸とグリコール酸の質量比は、1:(1~5)、例えば1:2、1:3、1:4であること;
E.以下の構成成分:
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー:0.08~10重量部(例えば、0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.5重量部、0.7重量部、0.8重量部、1重量部、1.3重量部、1.6重量部、1.8重量部、2重量部、2.5重量部、3重量部、4重量部、6重量部、8重量部)
第1の液体基質:0.8~18重量部(例えば、1重量部、1.5重量部、2重量部、2.3重量部、2.5重量部、2.8重量部、3重量部、3.5重量部、4重量部、4.6重量部、5重量部、7重量部、8重量部、10重量部、12重量部、14重量部、16重量部)
数平均分子量が70~750:0.1~16重量部(例えば、0.2重量部、0.15重量部、0.25重量部、0.3重量部、0.33重量部、0.37重量部、0.4重量部、1重量部、2重量部、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部、7重量部、8重量部、9重量部、10重量部、12重量部、13重量部、15重量部)のポリエチレングリコール
医薬品有効成分:1重量部
を含み;
好ましくは、第1の液体基質は、コハク酸ジエチル、酒石酸ジエチル、グルタル酸ジエチル又は三酢酸グリセリンであり;
好ましくは、ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー中のポリ乳酸とグリコール酸の質量比は、1:(1~5)、例えば1:2、1:3、1:4であること;
F.以下の構成成分:
固体基質:0.8~15重量部(例えば1重量部、1.2重量部、1.3重量部、1.5重量部、1.6重量部、1.7重量部、1.9重量部、2重量部、2.2重量部、2.5重量部、3重量部、4重量部、5重量部、6重量部、7重量部、9重量部、1重量部、13重量部)
第2の液体基質:0.7~20重量部(例えば、0.9重量部、1重量部、1.1重量部、1.2重量部、1.25重量部、2重量部、3重量部、4重量部、5重量部、7重量部、9重量部、10重量部、13重量部、15重量部、17重量部、18重量部)
医薬品有効成分:1重量部
を含み;
好ましくは、固体基質は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー、又は数平均分子量が800~10,000(例えば、1800~2200、900、1000、1200、1400、1600、2000、2800、3000、5000、7000、8000、9500、9000)のポリエチレングリコールであること
のいずれか1つを含む。
【0020】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、医薬品有効成分は、抗腫瘍薬、抗炎症薬、免疫抑制剤、血管新生阻害剤、及び緑内障治療薬からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0021】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、医薬品有効成分は、クロランブシル、メルフマイク(melphmike)、シクロホスファミド、イホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、クロロゾトシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、フルオロウラシル、ミトキサントロン、イリノテカン、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、エトポシド、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、ブレオマイシン、メトトレキサート、ゲムシタビン、カペシタビン、ヒドロキシ尿素、マイトマイシン、ゲフィチニブ、スニチニブ、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、プレドニゾン、酢酸プレドニゾン、フルオシノロン、酢酸フルオシノロン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、プロピオン酸ハロベタゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、シクロスポリン、ラパマイシン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、フジマイシン、ミゾリビン、スルファサラジン、アザチオプリン、メトトレキサート、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ペガプタニブナトリウム、アフリベルセプト、ラタノプロスト、トラボプロスト、ビマトプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト、ピロカルピン、アトロピン、スコポラミン、ベタキソロール、メトプロロール、ブノロール、メチプラノロール、プロプラノロール、チモロール、ベフノロール、アセタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、アプラクロニジン、ブリモニジン、ジピベフリン、グアネチジン、ダピプラゾール、ダサチニブ、及びその薬学的に許容できる塩からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0022】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、医薬品有効成分は、デキサメタゾン、ラタノプロスト、ダサチニブ、トリアムシノロン、及びその薬学的に許容できる塩からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0023】
本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、眼科用薬剤組成物は、眼科用薬剤調製物、好ましくは眼科用薬剤注射剤調製物である。
【0024】
本発明では、抗腫瘍薬には、クロランブシル、メロキシカム、シクロホスファミド、イホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、クロロゾトシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、フルオロウラシル、ミトキサントロン、イリノテカン、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、エトポシド、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、ブレオマイシン、メトトレキサート、ゲムシタビン、カペシタビン、ヒドロキシ尿素、マイトマイシン、ゲフィチニブ、スニチニブがあるが、それだけには限定されない。
【0025】
本発明では、抗炎症薬には、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、プレドニゾン、酢酸プレドニゾン、フルオシノロン、酢酸フルオシノロン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、プロピオン酸ハロベタゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾンがあるが、それだけには限定されない。
【0026】
本発明では、免疫抑制剤には、シクロスポリン、ラパマイシン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、フジマイシン、ミゾリビン、スルファサラジン、アザチオプリン、メトトレキサートがあるが、それだけには限定されない。
【0027】
本発明では、血管新生阻害剤には、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ペガプタニブナトリウム、及びアフリベルセプトがあるが、それだけには限定されない、
本発明では、緑内障治療薬には、ラタノプロスト、トラボプロスト、ビマトプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト、ピロカルピン、アトロピン、スコポラミン、ベタキソロール、メトプロロール、ブノロール、メチプラノロール、プロプラノロール、チモロール、ベフノロール、アセタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、アプラクロニジン、ブリモニジン、ジピベフリン、グアネチジン、ダピプラゾールがあるが、それだけには限定されない。
【0028】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様に基づく眼科用薬剤組成物を調製するための方法であって、以下:
(1)固体基質と液体基質を混合して混合物質を得るステップ;
(2)ステップ(1)で得られた混合物質と医薬品有効成分を混合するステップ
を含む方法に関する。
【0029】
本発明の第2の態様のいくつかの実施形態では、ステップ(1)において、混合は、20℃~100℃、例えば30℃、4℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃の温度で行われる。
【0030】
本発明の第2の態様のいくつかの実施形態では、固体基質と液体基質は、(0.06~40):(0.4~55)、好ましくは(0.08~30):(0.8~40)、より好ましくは(0.1~20):(1~30)の質量比で混合される。
【0031】
本発明の第2の態様のいくつかの実施形態では、固体基質と医薬品有効成分の質量比は、(0.06~40):1、好ましくは(0.08~30):1、より好ましくは(0.1~20):1である。
【0032】
本発明の第3の態様は:固体基質、液体基質、及び医薬品有効成分を含む眼科用キットであって、
固体基質は、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー、及び数平均分子量が800~10,000(例えば、1800~2200、900、1000、1200、1400、1600、2000、2800、3000、5000、7000、8000、9500、9000)のポリエチレングリコールからなる群から選択される少なくとも1つであり;
液体基質は、第1の液体基質及び/又は第2の液体基質であり;
第1の液体基質は、コハク酸ジエチル、酒石酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、及び三酢酸グリセリンからなる群から選択される少なくとも1つであり;
液体基質が第1の液体基質及び第2の液体基質の場合、第2の液体基質は、グリセリン、プロピレングリコール及び数平均分子量が70~750(例えば、190~210、300、380~420、570~630、100、200、400、500、600、700)のポリエチレングリコールから選択される少なくとも1つであり;
液体基質が第2の液体基質の場合、第2の液体基質は、グリセリン及び/又はプロピレングリコール、又は数平均分子量が70~750(例えば、190~210、300、380~420、570~630、100、200、400、500、600、700)のポリエチレングリコールとグリセリン及びプロピレングリコールから選択される少なくとも1つとの混合物である、眼科用キットに関する。
【0033】
本発明の第3の態様のいくつかの実施形態では、眼科用キットは、以下の項目i~iii:
i.眼科用キットは、注射器(医療用注射器など)をさらに含むこと;
ii.眼科用キットは、眼科用注射キットであること;
iii.医薬品有効成分は、抗腫瘍薬、抗炎症薬、免疫抑制剤、血管新生阻害剤、及び緑内障治療薬からなる群から選択される少なくとも1つであり;
好ましくは、医薬品有効成分は、クロランブシル、メルフマイク、シクロホスファミド、イホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、クロロゾトシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、フルオロウラシル、ミトキサントロン、イリノテカン、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、エトポシド、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、ブレオマイシン、メトトレキサート、ゲムシタビン、カペシタビン、ヒドロキシ尿素、マイトマイシン、ゲフィチニブ、スニチニブ、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、プレドニゾン、酢酸プレドニゾン、フルオシノロン、酢酸フルオシノロン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、プロピオン酸ハロベタゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、シクロスポリン、ラパマイシン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、フジマイシン、ミゾリビン、スルファサラジン、アザチオプリン、メトトレキサート、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ペガプタニブナトリウム、アフリベルセプト、ラタノプロスト、トラボプロスト、ビマトプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト、ピロカルピン、アトロピン、スコポラミン、ベタキソロール、メトプロロール、ブノロール、メチプラノロール、プロプラノロール、チモロール、ベフノロール、アセタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、アプラクロニジン、ブリモニジン、ジピベフリン、グアネチジン、ダピプラゾール、ダサチニブ、及びその薬学的に許容できる塩からなる群から選択される少なくとも1つであり;
より好ましくは、医薬品有効成分は、デキサメタゾン、ラタノプロスト、ダサチニブ、トリアムシノロン、及びその薬学的に許容できる塩からなる群から選択される少なくとも1つであること
のうちの1つ又は複数を特徴とする。
【0034】
本発明の第4の態様は、眼科用徐放医薬品であって、本発明の第1の態様に基づく眼科用薬剤組成物又は本発明の第3の態様に基づく眼科用キットを含み;
好ましくは、眼科用徐放医薬品は、眼科用注射のための徐放医薬品である
眼科用徐放医薬品に関する。
【0035】
本発明の第5の態様は、眼疾患の予防及び/又は治療のための医薬品の製造における本発明の第1の態様に基づく眼科用薬剤組成物、本発明の第3の態様に基づく眼科用キット、又は本発明の第4の態様に基づく眼科用徐放医薬品の使用に関する。
【0036】
本発明の第5の態様のいくつかの実施形態では、眼疾患は、後眼部の疾患である。
【0037】
本発明の第5の態様のいくつかの実施形態では、眼疾患は、白内障術後炎症、緑内障、ブドウ膜炎、網膜静脈閉塞、網膜動脈閉塞、糖尿病性網膜症、網膜静脈炎、増殖性硝子体網膜症、脈絡新血管新生、類嚢胞黄斑浮腫、加齢性黄斑変性、硝子体黄斑癒着、黄斑円孔、視神経炎、視神経乳頭浮腫、視神経髄膜腫、視神経膠腫、網膜芽腫及び脈絡膜芽腫からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0038】
本発明の第6の態様は、眼疾患を予防及び/又は治療するための方法であって、本発明の第1の態様に基づく眼科用薬剤組成物又は本発明の第4の態様に基づく眼科用徐放医薬品を眼に注入するステップを含む方法に関する。
【0039】
本発明の第6の態様のいくつかの実施形態では、眼疾患は、後眼部の疾患である。
【0040】
本発明の第6の態様のいくつかの実施形態では、眼疾患は、白内障術後炎症、緑内障、ブドウ膜炎、網膜静脈閉塞、網膜動脈閉塞、糖尿病性網膜症、網膜静脈炎、増殖性硝子体網膜症、脈絡新血管新生、類嚢胞黄斑浮腫、加齢性黄斑変性、硝子体黄斑癒着、黄斑円孔、視神経炎、視神経乳頭浮腫、視神経髄膜腫、視神経膠腫、網膜芽腫及び脈絡膜芽腫からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0041】
本発明の第6の態様のいくつかの実施形態では、注入は後眼部に行われる。
【0042】
本発明はまた、眼疾患の予防及び/又は治療に使用するための本発明の第1の態様に基づく眼科用薬剤組成物、第3の態様に基づく眼科用キット、又は第4の態様に基づく眼科用徐放医薬品に関し;
好ましくは、眼疾患は、後眼部の疾患であり;
好ましくは、眼疾患は、白内障術後炎症、緑内障、ブドウ膜炎、網膜静脈閉塞、網膜動脈閉塞、糖尿病性網膜症、網膜静脈炎、増殖性硝子体網膜症、脈絡新血管新生、類嚢胞黄斑浮腫、加齢性黄斑変性、硝子体黄斑癒着、黄斑円孔、視神経炎、視神経乳頭浮腫、視神経髄膜腫、視神経膠腫、網膜芽腫及び脈絡膜芽腫からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0043】
本発明はまた、以下の態様に関する:
1.以下の構成成分:
(1)生体適合性を有する液体基質、
(2)生体適合性を有する固体基質、及び
(3)薬物
からなることを特徴とし、液体基質は、コハク酸ジエチル、酒石酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、三酢酸グリセリン、ポリエチレングリコール、グリセリン、及びプロピレングリコールのうちの1つ又は2つ以上の混合物であり;固体基質は、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、及びポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマーのうちの1つ又は2つ以上の混合物であり;
薬物、液体基質、及び固体基質の重量比は、1:(0.1~45):(0.1~99)である、眼科用徐放薬物送達システム。
【0044】
2.薬物、液体基質、及び固体基質の重量比が1:(1~20):(0.1~10)であることを特徴とする、態様1に基づく眼科用徐放薬物送達システム。
【0045】
3.薬物、液体基質、及び固体基質の重量比が1:(1~5):(0.1~2)であることを特徴とする、態様2に基づく眼科用徐放薬物送達システム。
【0046】
4.(1)の液体基質が、コハク酸ジエチル、酒石酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、三酢酸グリセリン、ポリエチレングリコール、グリセリン及びプロピレングリコールのうちの2つ以上の混合物、又はコハク酸ジエチル、酒石酸ジエチル、グルタル酸ジエチル及び三酢酸グリセリンのうちの1つ若しくは2つ以上の混合物であることを特徴とする、態様1に基づく眼科用徐放薬物送達システム。
【0047】
5.液体基質中のポリエチレングリコールが、PEG-200、PEG-300、PEG-400及びPEG-600のうちの1つ又は2つ以上の混合物であることを特徴とする、態様4に基づく眼科用徐放薬物送達システム。
【0048】
6.液体基質中のポリエチレングリコールがPEG-400であることを特徴とする、態様4に基づく眼科用徐放薬物送達システム。
【0049】
7.(2)の固体基質中のポリエチレングリコールが、PEG-800、PEG-1000、PEG-1500、PEG-2000、PEG-4000、PEG-6000、PEG-8000、PEG-10000及びPEG-20000のうちの1つ又は2つ以上の混合物であることを特徴とする、態様1に基づく眼科用徐放薬物送達システム。
【0050】
8.固体基質がポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマーであることを特徴とする、態様1に基づく眼科用徐放薬物送達システム。
【0051】
9.以下の構成成分:
(1)コハク酸ジエチル、酒石酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、三酢酸グリセリン、ポリエチレングリコール、グリセリン、及びプロピレングリコールのうちの1つ又は2つ以上の混合物である、生体適合性を有する液体基質;
(2)ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー;及び
(3)薬物
からなることを特徴とし、薬物は、抗腫瘍薬、抗炎症薬、免疫抑制剤、血管新生阻害剤、又は緑内障治療薬であり;
薬物、液体基質、及びポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマーの重量比は、1:(1~2):(0.1~2)である、態様1に基づく眼科用徐放薬物送達システム。
【0052】
10.薬物が、抗腫瘍薬、抗炎症薬、免疫抑制剤、血管新生阻害剤、又は緑内障治療薬である、態様1の眼科用徐放薬物送達システム。
【0053】
本発明では、特に指定のない限り、
用語「基質」は、医薬品有効成分と反応せず、医薬品有効成分の役割を果たすことに役立つ物質、例えば、医薬品有効成分の投与、放出、浸透及び吸収に影響を与える物質、医薬品有効成分を形成することが可能な物質などを意味する。
【0054】
用語「液体基質」は、常温で液体の基質を意味する。
【0055】
用語「固体基質」は、常温で固体の基質を意味する。
【0056】
本発明は、以下の有益な効果の少なくとも1つを達成する:
1.本発明の眼科用薬剤組成物は、注射によって眼に注入され、継続的且つゆっくりと医薬品有効成分を眼に放出することができる。
【0057】
2.本発明の眼科用薬剤組成物は、眼内で分解され得る。
【0058】
3.本発明の眼科用薬剤組成物の安定性は良好である。
【0059】
4.本発明の眼科用キットは、使用のためにその場で医薬品を調製するために使用することができ、それによって医薬品の貯蔵寿命が延長される。
【0060】
本明細書に記載される図面は、本発明のさらなる理解をもたらし、本出願の一部を構成するために使用される。本発明の概略例及びその説明は、本発明を説明するために使用され、本発明に対する不適切な制限を与えるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】実験例3の眼科用調製物36のin vitro放出率の概略図を示す。
【
図2】実験例3の眼科用調製物37のin vitro放出率の概略図を示す。
【
図3】実験例3の眼科用調製物38のin vitro放出率の概略図を示す。
【
図4】実験例3の眼科用調製物39のin vitro放出率の概略図を示す。
【
図5】実験例3の眼科用調製物24のin vitro放出率の概略図を示す。
【
図6】実験例7のウサギ眼における眼科用調製物36の硝子体内放出量の概略図を示す。
【
図7】実験例7のウサギ眼における眼科用調製物37の硝子体内放出量の概略図を示す。
【
図8】実験例7のウサギ眼における眼科用調製物38の硝子体内放出量の概略図を示す。
【
図9】実験例7のウサギ眼における眼科用調製物39の硝子体内放出量の概略図を示す。
【
図10】実験例7のウサギ眼における眼科用調製物24の硝子体内放出量の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
下記では、本発明の実施例における技術的解決策が、本発明の実施例における図面を参照して明確且つ完全に説明される。明らかに、説明された実施例は、本発明の実施例の一部に過ぎず、全ての実施例ではない。少なくとも1つの例示的な例についての以下の説明は、実際には単なる例示であり、本発明及びその応用又は使用を限定することを意図してない。本発明の実施例に基づいて、創造的な努力をせずに当業者によって得られる他の全ての実施例は、本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
【実施例0063】
以下の調製例及び比較例で使用される材料は、以下の通りである:
PEG200:数平均分子量が190~210である。
PEG300:数平均分子量が300である。
PEG400:数平均分子量が380~420である。
PEG600:数平均分子量が570~630である。
ポリエチレングリコール2000:数平均分子量が1800~2200である。
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー:重量平均分子量が5000~50,000であり、そのポリ乳酸とグリコール酸の質量比は1:3である。
ポリ乳酸:重量平均分子量が3,000~60,000である。
ポリグリコール酸:重量平均分子量が5000~50,000である。
【0064】
調製例1~17:眼科用調製物1~17の調製
表1の処方に基づいて、ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマーを秤量し、ビーカーに入れ、そこに処方量の液体基質を加え、ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマーが完全に溶解するまで60℃で撹拌し、次いでそこに処方量の薬物を撹拌しながら加え、混合物が均一になるまで継続的に撹拌し、混合物を1mLガラス製注射器に充填し、それぞれ包装体積が200μLであった。121℃で15分間滅菌した後、眼科用調製物1~17が得られた。
【表1】
【0065】
調製例18:眼科用調製物18の調製
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー50gを秤量し、ビーカーに入れ、そこにPEG400 50gを加え、ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマーが完全に溶解するまで60℃で撹拌し、そこにデキサメタゾン20gを撹拌しながら加え、デキサメタゾンと上記溶液が均一に混合されるまで継続的に撹拌して、眼科用調製物18を得た。
【0066】
調製例19:眼科用調製物19の調製
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー25gを秤量し、ビーカーに入れ、そこにPEG200 50gを加え、ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマーが完全に溶解するまで60℃で撹拌し、そこにデキサメタゾン50gを撹拌しながら加え、デキサメタゾンと上記溶液が均一に混合されるまで継続的に撹拌して、眼科用調製物19を得た。
【0067】
調製例20:眼科用調製物20の調製
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー100gを秤量し、ビーカーに入れ、そこにPEG400 1000gを加え、ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマーが完全に溶解するまで60℃で撹拌し、そこにデキサメタゾン50gを撹拌しながら加え、デキサメタゾンと上記溶液が均一に混合されるまで継続的に撹拌して、眼科用調製物20を得た。
【0068】
調製例21: 眼科用調製物21の調製
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー100gを秤量し、ビーカーに入れ、そこにPEG300 250gを加え、ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマーが完全に溶解するまで60℃で撹拌し、そこにデキサメタゾン50gを撹拌しながら加え、デキサメタゾンと上記溶液が均一に混合されるまで継続的に撹拌して、眼科用調製物21を得た。
【0069】
調製例22:眼科用調製物22の調製
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー5gを秤量し、ビーカーに入れ、そこにPEG400 5gを加え、ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマーが完全に溶解するまで60℃で撹拌し、そこにデキサメタゾン50gを撹拌しながら加え、デキサメタゾンと上記溶液が均一に混合されるまで継続的に撹拌して、眼科用調製物22を得た。
【0070】
調製例23:眼科用調製物23の調製
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー4950gを秤量し、ビーカーに入れ、そこにPEG600 2250gを加え、ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマーが完全に溶解するまで60℃で撹拌し、そこにデキサメタゾン50gを撹拌しながら加え、デキサメタゾンと上記溶液が均一に混合されるまで継続的に撹拌して、眼科用調製物23を得た。
【0071】
調製例24:眼科用調製物24の調製
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー30gを秤量し、そこにPEG400 40gを加え、そこにトリアムシノロン20gを撹拌しながら加え、均等に撹拌し、1mlガラス製注射器に充填し、それぞれ包装体積が150μLであり、121℃で15分間滅菌して、眼科用調製物24を得た。
【0072】
調製例25:眼科用調製物25の調製
ポリ乳酸25gを秤量し、そこにPEG400 40g及びPEG600 10gを加え、そこにゲフィチニブ50gを撹拌しながら加え、均等に撹拌し、1mlガラス製注射器に充填し、それぞれ包装体積が200μLであり、121℃で15分間滅菌して、眼科用調製物25を得た。
【0073】
調製例26:眼科用調製物26の調製
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー10gを秤量し、そこにPEG400 10gを加え、そこにスニチニブ5gを撹拌しながら加え、均等に撹拌し、0.5ml充填済みガラス製注射器に充填し、それぞれ包装体積が0.15mLであって、眼科用調製物26を得た。
【0074】
調製例27:眼科用調製物27の調製
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー10gを秤量し、そこにグリセリン5g及びPEG600 5gを加え、そこにブロムフェナクナトリウム5gを撹拌しながら加え、均等に撹拌し、1mlガラス製注射器に充填し、それぞれ包装体積が200μLであり、121℃で15分間滅菌して、眼科用調製物27を得た。
【0075】
調製例28:眼科用調製物28の調製
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー20gを秤量し、そこにプロピレングリコール15g及びPEG300 25gを加え、そこにチモロール10gを撹拌しながら加え、均等に撹拌し、1mlガラス製注射器に充填し、それぞれ包装体積が200μLであり、121℃で15分間滅菌して、眼科用調製物28を得た。
【0076】
調製例29:眼科用調製物29の調製
ポリグリコール酸10gを秤量し、そこにPEG400 25gを加え、ポリグリコール酸が完全に溶解するまで65℃で撹拌し、そこにイリノテカン5gを撹拌しながら加え、イリノテカンと上記基質が均一に混合されるまで継続的に撹拌し、1ml充填済みガラス製注射器に自動充填機によって充填し、それぞれ包装体積が0.2mLであって、121℃で15分間滅菌して、眼科用調製物29を得た。
【0077】
調製例30:眼科用調製物30の調製
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー10gを秤量し、そこにグリセリン5g及びPEG600 10gを加え、そこにシロリムス5gを撹拌しながら加え、均等に撹拌し、0.5ml充填済みガラス製注射器に自動充填機によって充填し、それぞれ包装体積が0.15mLであって、121℃で15分間滅菌して、眼科用調製物30を得た。
【0078】
調製例31:眼科用調製物31の調製
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー20gを秤量し、そこに三酢酸グリセリン30gを加え、そこにラタノプロスト1gを撹拌しながら加え、均等に撹拌し、1mlガラス製注射器に充填し、滅菌して、眼科用調製物31を得た。
【0079】
調製例32:眼科用調製物32の調製
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー50gを秤量し、そこに三酢酸グリセリン100gを加え、そこにダサチニブ40gを撹拌しながら加え、均等に撹拌し、1mlガラス製注射器に充填し、滅菌して、眼科用調製物32を得た。
【0080】
調製例33:眼科用調製物33の調製
ポリ乳酸2gを秤量し、そこにPEG400 1gを加え、そこにトリアムシノロン1gを撹拌しながら加え、均等に撹拌し、1mlガラス製注射器に充填し、滅菌して、眼科用調製物33を得た。
【0081】
調製例34:眼科用調製物34の調製
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー4gを秤量し、そこにPEG400 4g、グリセリン0.5g及びプロピレングリコール0.5gを加え、そこにパクリタキセル4gを撹拌しながら加え、均等に撹拌し、1mlガラス製注射器に充填し、滅菌して、眼科用調製物34を得た。
【0082】
調製例35:眼科用調製物35の調製
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー6gを秤量し、そこにPEG400 9gを加え、そこにデキサメタゾン6gを撹拌しながら加え、均等に撹拌し、1mlガラス製注射器に充填し、滅菌して、眼科用調製物35を得た。
【0083】
調製例36~39:眼科用調製物36~39の調製
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー30gを秤量し、そこにPEG400 10gを加え、次いでそこにコハク酸ジエチル30g、酒石酸ジエチル30g、グルタル酸ジエチル30g又は三酢酸グリセリン30gをそれぞれ加え、そこにトリアムシノロン30gを撹拌しながら加え、均等に撹拌し、1mlガラス製注射器に充填し、それぞれ包装体積が150μLであり、121℃で15分間滅菌して、眼科用調製物36~39をそれぞれ得た。
【0084】
調製例40:眼科用調製物40の調製
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー30gを秤量し、そこにPEG400 40gを加え、そこにトリアムシノロン30gを撹拌しながら加え、均等に撹拌し、充填済みガラス製注射器に充填して、眼科用調製物40を得た。
【0085】
調製例41~44:眼科用調製物41~44の調製
ポリ乳酸-co-グリコール酸コポリマー40g、ポリ乳酸40g、ポリグリコール酸40g及びポリエチレングリコール2000 40gをそれぞれ秤量し、そこにPEG400 40gをそれぞれ加え、次いでそこにデキサメタゾン20gを撹拌しながらそれぞれ加え、均等に撹拌し、充填済みガラス製注射器に充填して、眼科用調製物41~44を得た。
【0086】
実験例1:ウサギ眼硝子体又はウサギ眼前房内での眼科用調製物の状態の観察
(1)眼科用調製物1~17及び33~35 50μLを、ウサギ眼硝子体にそれぞれ注入し、ウサギ眼硝子体内での眼科用調製物の状態を観察した。
眼科用調製物1~17は、ウサギ眼硝子体内で分散せずに凝集し、一方、眼科用調製物33~35は、ウサギ眼硝子体内で自動的に球形に凝集したことが分かった。
【0087】
(2)眼科用調製物26及び30 20μLを、ウサギ眼前房にそれぞれ注入し、ウサギ眼前房内での調製物の状態を観察した。
眼科用調製物26及び30は、ウサギ眼前房内で自動的に球形に凝集したことが分かった。
【0088】
実験例2:塩化ナトリウム溶液又はリン酸緩衝液中での眼科用調製物の状態の観察
(1)眼科用調製物18~23及び36~39 50μLを、pH=7.4及び浸透圧=292mOsmol/kgの0.9%塩化ナトリウム溶液を含むビーカー中にそれぞれ注入し、塩化ナトリウム溶液中でのそれぞれの状態を観察した。
眼科用調製物18~23及び36~39は、塩化ナトリウム溶液中で自動的に球形に凝集し、ビーカーの底に堆積したことが分かった。
【0089】
(2)眼科用調製物24~25、27~28、及び31~32 100μLを、pH=7.4及び浸透圧=292mOsmol/kgのリン酸緩衝液(50mmol/Lリン酸二水素カリウムのpHを水酸化ナトリウムで7.4に調整した)を含むビーカー中にそれぞれ注入し、リン酸緩衝液中でのそれぞれの状態を観察した。
眼科用調製物24~25、27~28、及び31~32は、リン酸緩衝液中で自動的に球形に凝集し、ビーカーの底に堆積したことが分かった。
【0090】
実験例3:眼科用調製物のin vitro放出率の検査
眼科用調製物24及び眼科用調製物36~39 50μLを取り、放出媒体200mL(0.01%塩化ベンザルコニウムを含有する塩化ナトリウム溶液、pH=7.4、浸透圧=292mOsmol/kg)を含むビーカー中にそれぞれ注入した。ビーカーをガス浴発振器内に置き、温度を37±0.5℃に制御し、放出媒体10mLを異なる時間に取り、同量の放出媒体を補充した。放出媒体を、0.22μmの微多孔フィルター膜に通してろ過し、放出媒体中のトリアムシノロン含有量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって決定した。
【0091】
クロマトグラフ条件:Ultimate、XB-C18カラム(4.6×250mm、5μm);移動相:メタノール-水(52.5:47.5、v/v);検出波長:240nm;カラム温度:30℃;流量:1.0mL・min-1;注入体積:20μL。
【0092】
以下の式に基づいて薬物の累積放出量Rn%を計算した。結果を
図1~5に示す。
【数1】
式中、V
0は、放出媒体体積であり、C
nは、n番目のサンプリングにおける薬物濃度であり、Vは、サンプリング体積であり、M
tは、全薬物濃度である。
【0093】
図1~5の放出結果を比較すると、液体基質としてコハク酸ジエチル、酒石酸ジエチル、グルタル酸ジエチル、又は三酢酸グリセリンと一緒にPEG400を使用した場合、眼科用調製物の徐放速度は低減し、単回投与の徐放効果が約1年持続し得ることが分かった。
【0094】
in vitro放出試験のために眼科用調製物31~32を使用した場合、単回投与の徐放効果は、200日持続することが可能であった。
【0095】
実験例4:ウサギ眼前房内に注入された後の眼科用調製物の外観変化の観察
眼科用調製物31~32、36~39及び40 25μLを、ウサギ眼前房内にそれぞれ注入し、ウサギ眼内での調製物の変化を手持ち細隙灯で一日おきに観察した。
【0096】
結果は以下のことを示した:
注入後、眼科用調製物31~32は、凝集して球状の乳白色固体粒子になり、前房の下部に徐々に沈殿した。時間の延長と共に、固体粒子の体積は徐々に減少した。80~85日目には、固体粒子は完全に消失した。
【0097】
注入後、眼科用調製物36~39は、凝集して球状の乳白色固体粒子になり、前房の下部に徐々に沈殿した。時間の延長と共に、固体粒子の体積は徐々に減少した。100日目には、固体粒子は完全に消失した。
【0098】
注入後、眼科用調製物40は、凝集して球状の乳白色固体粒子になり、前房の下部に徐々に沈殿した。時間の延長と共に、固体粒子の体積は徐々に減少し、92~97日目には、固体粒子は完全に消失した。
【0099】
これらの観察結果は、上記方法によって調製した眼科用調製物は、有効成分を継続的に放出するために生体内でゆっくりと分解され得ることを示した。
【0100】
実験例5:ウサギ眼硝子体内に注入された後の眼科用調製物の外観変化の観察
眼科用調製物31~32、36~39及び40 25μLを、ウサギ眼硝子体内にそれぞれ注入し、ウサギ眼内での調製物の変化を手持ち細隙灯で一日おきに観察した。
【0101】
結果は以下のことを示した:
注入後、眼科用調製物31~32は、凝集して球状の乳白色固体粒子になり、及び注入部位に残った。時間の延長と共に、固体粒子の体積は徐々に減少した。180日目には、固体粒子は完全に消失した。
【0102】
注入後、眼科用調製物36~39は、凝集して球状の乳白色固体粒子になり、注入部位に残った。時間の延長と共に、固体粒子の体積は徐々に減少した。300日目には、固体粒子は完全に消失した。
【0103】
注入後、眼科用調製物40は、凝集して球状の乳白色固体粒子になり、注入部位に残った。時間の延長と共に、固体粒子の体積は徐々に減少し、73~75日目の期間中に固体粒子は完全に消失した。
【0104】
これらの観察結果は、本発明の眼科用調製物は、有効成分を継続的に放出するために生体内でゆっくりと分解され得ることを示した。
【0105】
実験例6:ウサギ眼テノン嚢に注入された後の眼科用調製物の外観変化の観察
眼科用調製物31~32、36~39及び40 100μLを、60匹のウサギの右眼のテノン嚢内にそれぞれ注入した。5匹の動物を犠牲にし、毎月解剖し、テノン嚢での調製物の状態を観察した。
【0106】
結果は以下のことを示した:
眼科用調製物31~32の注入後、ウサギ眼のテノン嚢内の調製物の体積は、時間が経つにつれて徐々に減少し;8カ月目に解剖した5匹のウサギのうち、2匹のウサギのテノン嚢内の調製物は完全に消失し;9カ月目に解剖した5匹のウサギのうち、3匹のウサギのテノン嚢内の調製物は完全に消失し、他の2匹のウサギのテノン嚢に極少量の調製物が残っていた。
【0107】
眼科用調製物36~39の注入後、ウサギ眼のテノン嚢内の調製物の体積は、時間が経つにつれて徐々に減少し;8カ月目に解剖した5匹のウサギのうち、0匹のウサギのテノン嚢内の調製物が完全に消失し;9カ月目に解剖した5匹のウサギのうち、2匹のウサギのテノン嚢内の調製物は完全に消失し、他の3匹のウサギのテノン嚢に極少量の調製物が残っていた。
【0108】
眼科用調製物40の注入後、ウサギ眼のテノン嚢内の調製物の体積は、時間が経つにつれて徐々に減少し;8カ月目に解剖した5匹のウサギのうち、1匹のウサギのテノン嚢内の調製物が完全に消失し;9カ月目に解剖した5匹のウサギのうち、4匹のウサギのテノン嚢内の調製物は完全に消失し、他の1匹のウサギのテノン嚢に極少量の調製物が残っていた。
【0109】
実験例7:単回注入後のウサギ眼硝子体内での眼科用調製物の放出挙動の観察
(1)48匹のニュージーランドウサギを取り、1グループ当たりウサギ4匹の無作為なグループに分けた。各グループのウサギの右眼に眼科用調製物36~39 50μLをそれぞれ注入し、1つのグループの動物を、注入後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12カ月目にそれぞれ殺し、未放出の調製物を硝子体から除去した。調製物中のトリアムシノロン含有量は、HPLC法によって決定し、累積放出量を計算した。結果を
図6~9に示した。
【0110】
(2)36匹のニュージーランドウサギを取り、1グループ当たりウサギ6匹の無作為なグループに分けた。各グループのウサギの右眼に眼科用調製物24 50μLを注入し、1つのグループの動物を、注入後1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12カ月目にそれぞれ殺し、未放出の調製物を硝子体から除去した。調製物中のトリアムシノロン含有量は、HPLC法によって決定し、累積放出量を計算した。結果を
図10に示した。
【0111】
図6~10に基づいて、ウサギ眼硝子体内での本発明の眼科用調製物の徐放時間は12カ月ほどの長さであったが、ウサギ眼硝子体での眼科用調製物24の徐放時間は、6カ月だけであったことが見られた。
【0112】
したがって、本発明の眼科用調製物は、硝子体内での徐放時間を大幅に延長し、薬効を長時間維持することができる。
【0113】
最後に、上記の実施例は、本発明の技術的解決策を例示するためだけに使用され、それらに限定されないことに留意されたい。本発明は、好ましい実施例を参照して詳細に説明されてきたが、本発明の特定の実施形態は、本発明の技術的な解決策の精神から逸脱することなく、依然として変更することができ、又はそのいくつかの技術的特徴は、同等の技術的特徴に置き換えることができ、これら全ての変更は、発明によって保護されるべき技術的解決策の範囲に含まれるべきであることを当業者は理解すべきである。
前記医薬品有効成分が、クロランブシル、メルフマイク、シクロホスファミド、イホスファミド、カルムスチン、ロムスチン、セムスチン、クロロゾトシン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、フルオロウラシル、ミトキサントロン、イリノテカン、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、エトポシド、テニポシド、パクリタキセル、ドセタキセル、ブレオマイシン、メトトレキサート、ゲムシタビン、カペシタビン、ヒドロキシ尿素、マイトマイシン、ゲフィチニブ、スニチニブ、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、プレドニゾン、酢酸プレドニゾン、フルオシノロン、酢酸フルオシノロン、トリアムシノロン、メチルプレドニゾロン、アセポン酸メチルプレドニゾロン、プロピオン酸ハロベタゾール、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、シクロスポリン、ラパマイシン、タクロリムス、ミコフェノール酸モフェチル、フジマイシン、ミゾリビン、スルファサラジン、アザチオプリン、メトトレキサート、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ペガプタニブナトリウム、アフリベルセプト、ラタノプロスト、トラボプロスト、ビマトプロスト、ビマトプロスト、タフルプロスト、ピロカルピン、アトロピン、スコポラミン、ベタキソロール、メトプロロール、ブノロール、メチプラノロール、プロプラノロール、チモロール、ベフノロール、アセタゾラミド、ドルゾラミド、ブリンゾラミド、アプラクロニジン、ブリモニジン、ジピベフリン、グアネチジン、ダピプラゾール、ダサチニブ、及びその薬学的に許容できる塩からなる群から選択され;
好ましくは、前記医薬品有効成分が、デキサメタゾン、ラタノプロスト、ダサチニブ、トリアムシノロン、及びその薬学的に許容できる塩からなる群から選択される少なくとも1つであり、
より好ましくは、前記医薬品有効成分がトリアムシノロンである、請求項1に記載の眼科用薬剤組成物。
好ましくは、白内障術後炎症、緑内障、ブドウ膜炎、網膜静脈閉塞、網膜動脈閉塞、糖尿病性網膜症、網膜静脈炎、増殖性硝子体網膜症、脈絡新血管新生、類嚢胞黄斑浮腫、加齢性黄斑変性、硝子体黄斑癒着、黄斑円孔、視神経炎、視神経乳頭浮腫、視神経髄膜腫、視神経膠腫、網膜芽腫及び脈絡膜芽腫からなる群から選択される少なくとも1つである、眼疾患の予防及び/又は治療に使用するための請求項1~4のいずれか一項に記載の眼科用薬剤組成物、請求項6若しくは7に記載の眼科用キット、又は請求項8に記載の眼科用徐放医薬品。