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  • 特開-作業支援システム、作業支援方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180525
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】作業支援システム、作業支援方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20221129BHJP
   E02F 9/26 20060101ALI20221129BHJP
   G06Q 50/08 20120101ALI20221129BHJP
【FI】
E02F9/20 N
E02F9/20 M
E02F9/26 B
G06Q50/08
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150291
(22)【出願日】2022-09-21
(62)【分割の表示】P 2021573161の分割
【原出願日】2021-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2020101416
(32)【優先日】2020-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】春山 加苗
(57)【要約】
【課題】簡易かつ柔軟にマシンガイダンスの機能を導入し、さらには必要に応じてマシンガイダンスの機能をバージョンアップすることができるようにする。
【解決手段】マシンガイダンスの機能によりオペレータの作業を支援する作業支援システム1において、建設機械2の可動部4、5、6に保持されて可動部4、5、6の姿勢情報を取得するセンサ部11A、11B、11Cと、センサ部11A、11B、11Cとのデータ通信によりセンサ部11A、11B、11Cで取得した姿勢情報を収集する制御部12と、制御部12で収集した姿勢情報により施工目標までの可動量を算出する携帯情報端末装置13と、携帯情報端末装置13で算出した施工目標までの可動量を建設機械2のオペレータに通知する通知部14とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マシンガイダンスの機能によりオペレータの作業を支援する油圧ショベルの作業支援システムにおいて、
前記油圧ショベルの本体からバケットに至る可動部に着脱可能に設けられ前記可動部の姿勢情報を取得するセンサ部と、
前記油圧ショベルの本体に設けられ前記本体の姿勢情報を取得するセンサを備え、前記センサ部との無線通信により前記センサ部で取得した前記姿勢情報を収集し前記センサにより取得した前記本体の姿勢情報と共に無線通信により出力する制御部と、
前記制御部が出力した前記姿勢情報により掘削目標までの可動量を算出するアプリケーションソフトウェアを実行する携帯情報端末装置と、
前記携帯情報端末装置で算出した前記掘削目標までの前記可動量を前記油圧ショベルのオペレータに通知する通知部とを備え、
前記センサ部は、少なくともバケットに設けられ、
前記携帯情報端末装置は、ネットワーク上のサーバと通信し前記アプリケーションソフトウェアを前記センサ部の装着構成に合わせてバージョンアップ可能に構成され、
前記切削目標は、施工開始位置を基準とした切削深さであり、
前記可動量は、前記バケットの現在位置から前記切削目標までの偏差であり、
前記携帯情報端末装置は、前記施工開始位置における所定の姿勢にある前記油圧ショベルを基準姿勢としたとき、前記基準姿勢で取得した姿勢情報である基準姿勢情報に対する前記姿勢情報の変量に基づいて、前記バケットの現在位置および前記可動量を算出する、
作業支援システム。
【請求項2】
前記携帯情報端末装置は、前記油圧ショベルによって前記バケットを可動させて仮切削したときの切削深さに基づいて前記切削目標の設定を受け付ける、
請求項1に記載の作業支援システム。
【請求項3】
前記携帯情報端末は、前記制御部の動作を立ち上げ、
前記制御部は、前記センサ部の動作を立ち上げる、
請求項1または請求項2に記載の作業支援システム。
【請求項4】
前記携帯情報端末は、前記通知部を備える、
請求項3に記載の作業支援システム。
【請求項5】
前記通知部は、前記切削目標までの可動量が所定値未満の場合、前記切削目標までの可動量が所定値以上の場合、前記切削目標までの可動量が切削目標を超過した負の値の場合、においてそれぞれ異なる色で通知する、
請求項1に記載の作業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業支援システム、作業支援方法に関し、例えば油圧ショベルに適用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来、マシンガイダンスの機能を組み込んだ建設機械(いわゆるICT建機である)が提供されている。
ここでマシンガイダンスは、トータルステーション(TS:Total Station)、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の計測技術を利用して、施工目標値までの情報をオペレータに提供して建設機械の操作をサポートする技術である。このマシンガイダンスによれば、オペレータの作業を適切に支援して、作業効率、安全性、作業精度を向上することができる。
このようなICT建機に関して、特許文献1には、建設機械の傾き等を精度良く把握できるようにする工夫が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-105160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで建設機械にあっては、簡易かつ柔軟にマシンガイダンスの機能を導入し、さらには必要に応じてマシンガイダンスの機能をバージョンアップできることが望まれる。
しかしながら従来の建設機械においては、簡易かつ柔軟にマシンガイダンスの機能を導入し、さらには必要に応じてマシンガイダンスの機能をバージョンアップすることが困難な問題があった。
【0005】
本発明は以上の点を考慮してなされたものであり、簡易かつ柔軟にマシンガイダンスの機能を導入し、さらには必要に応じてマシンガイダンスの機能をバージョンアップすることができる作業支援システム、作業支援方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
係る課題を解決するため、請求項1の発明は、マシンガイダンスの機能によりオペレータの作業を支援する作業支援システムにおいて、以下の構成とした。
マシンガイダンスの機能によりオペレータの作業を支援する油圧ショベルの作業支援システムにおいて、
前記油圧ショベルの可動部に保持されて前記可動部の姿勢情報を取得するセンサ部と、
前記油圧ショベルの本体に保持されて前記本体の姿勢情報を取得するセンサを備え、前記センサ部との無線通信により前記センサ部で取得した前記姿勢情報を収集し前記センサにより取得した前記本体の姿勢情報と共に無線通信により出力する制御部と、
前記制御部が出力した前記姿勢情報により掘削目標までの可動量を算出する携帯情報端末装置と、
前記携帯情報端末装置で算出した前記掘削目標までの前記可動量を前記油圧ショベルのオペレータに通知する通知部とを備える。
前記可動部は、ブーム、アーム、バケットであり、
前記切削目標は、施工開始位置を基準とした切削深さであり、
前記可動量は、前記バケットの現在位置から前記切削目標までの偏差であり、
前記携帯情報端末装置は、前記施工開始位置における所定の姿勢にある前記油圧ショベルを基準姿勢としたとき、前記基準姿勢で取得した姿勢情報である基準姿勢情報に対する前記姿勢情報の変量に基づいて、前記バケットの現在位置および前記可動量を算出する。
【0007】
請求項1の構成によれば、施工目標までの可動量を携帯情報端末装置で算出することにより、この演算処理に供するソフトウェア及びハードウェアを簡易にバージョンアップすることができる。またこれにより必要に応じてセンサ部を装着し、さらには交換、追加することもできる。これらにより簡易かつ柔軟にマシンガイダンスの機能を導入し、さらには必要に応じてマシンガイダンスの機能をバージョンアップすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡易かつ柔軟にマシンガイダンスの機能を導入し、さらには必要に応じてマシンガイダンスの機能をバージョンアップすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る作業支援システムを示す図である。
図2図1の作業支援システムのブロック図である。
図3】通知部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態に係る作業支援システム1を示す図であり、図2は、ブロック図である。
この作業支援システム1は、建設機械である油圧ショベル2において、マシンガイダンスの機能によりこの油圧ショベル2を操作するオペレータの作業を支援する。
ここで油圧ショベル2は、無限軌道により自走する本体3にブーム4、アーム5、バケット6が順次設けられる。なお作業支援システム1による支援対象は、油圧ショベルに限らず、例えば地盤改良に使用する建設機械等、土木、建築の作業に使用される各種建設機械を広く適用することができる。
【0011】
作業支援システム1は、センサ部11A、11B、11C、制御部12、携帯情報端末装置13、通知部14を備える。
ここでセンサ部11A、11B、11Cは、油圧ショベル2の可動部であるブーム4、アーム5、バケット6にそれぞれ設けられ、姿勢情報を取得して制御部12に出力する。ここで姿勢情報は、各可動部の姿勢を検出可能な情報であり、この実施形態では3次元の加速度、角速度情報が適用される。
【0012】
これにより図2に示すように、センサ部11A、11B、11Cは、この3次元の加速度、角速度情報を取得可能な3次元のセンサ21がそれぞれ設けられる。またバッテリ22、コントローラ23、データ通信部24が設けられ、バッテリ22の電力により動作して、コントローラ23の制御によりセンサ21で姿勢情報を取得し、データ通信部24により無線通信で制御部12に送出する。このようにバッテリ22の電力により動作して無線通信により姿勢情報を送出することにより、センサ部11A、11B、11Cは、電源供給用、データ通信用のケーブルをわざわざ設けることなく、所望する取り付け箇所に簡易に設置することができ、これにより作業支援システム1は、簡易に既存の工作機械にマシンガイダンスの機能を導入したり、さらにはマシンガイダンスの機能を向上したりすることができる。
【0013】
より具体的に、センサ21には、IMU(INERTIAL MEASUREMENT UNIT)センサが適用され、データ通信部24における無線通信には、BLUETOOTH(登録商標)が適用される。なおセンサ21には、姿勢を検出可能な種々の構成を広く適用することができる。またセンサ部11A、11B、11Cは、姿勢を十分に検出可能な種々の部位に取り付けることができ、実用上十分な場合には、バケット6にのみ取り付けるようにしてもよい。また無線通信においても、データ通信可能な種々の構成を広く適用することができる。
【0014】
制御部12は、この油圧ショベル2の本体に設けられ、センサ部11A、11B、11Cとのデータ通信によりセンサ部11A、11B、11Cで取得した姿勢情報を収集して携帯情報端末装置13に出力する。
ここで制御部12(図2)は、センサ部11A、11B、11Cと同様のセンサ31を備え、コントローラ33、データ通信部34を備える。制御部12は、携帯情報端末装置13からの指示により動作を立ち上げ、コントローラ33の制御によりセンサ部11A、11B、11Cの動作を立ち上げる。またセンサ部11A、11B、11Cで取得した姿勢情報を収集し、センサ31で姿勢情報を取得してセンサ部11A、11B、11Cで取得した姿勢情報と共にデータ通信部34を介して携帯情報端末装置13に出力する。またデータ通信部34を介して携帯情報端末装置13から出力される通知情報を取得して通知部14に出力する。
なお制御部12は、実用上十分な場合には、センサ31を省略してもよい。
【0015】
携帯情報端末装置13は、いわゆるスマートフォンやタブレット端末であり、この作業支援システム1に係るアプリケーションソフトウェアの実行により、制御部12を介して得られるセンサ部11A、11B、11Cによる姿勢情報、センサ31で取得される姿勢情報により、油圧ショベル2における施工目標までの可動量を算出する。
【0016】
より具体的に、携帯情報端末装置13は、制御部12との無線通信によるデータ通信機能、ネットワーク上へのサーバとのデータ通信機能を有するデータ通信部43を備える。携帯情報端末装置13は、このデータ通信部43により制御部12から姿勢情報を取得し、さらには通知部14への通知情報を制御部12に出力する。またさらにこのデータ通信部43により作業支援システム1の構築、バージョンアップに係るアプリケーションソフトウェアをダウンロードする。
【0017】
携帯情報端末装置13は、データ通信部43で取得したアプリケーションソフトウェアを不揮発メモリ等による記憶部42に記録して保持する。またオペレータの操作によりこの記憶部42に保持した作業支援システム1のアプリケーションソフトウェアを中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)等による演算処理部41で実行する。
これにより演算処理部41は、基準姿勢(例えばバケット6を施工開始時の地表に載置した姿勢)で取得される姿勢情報により本体3の傾きを検出する。またこの基準姿勢からの各姿勢情報の変化により各可動部の姿勢の変化(可動量)を算出してバケット6の現在位置を算出する。
演算処理部41は、このようにして姿勢情報からバケット6の現在位置を算出するようにして、例えばバケット6を施工開始時の地表に載置して施工開始位置の設定を受け付ける。さらにこの施工開始位置からバケット6を可動して施工目標まで仮掘削し、施工目標の設定を受け付ける。なおこの施工開始位置、施工目標の設定は、例えば掘削の深さ等の数値により受け付けるようにしてもよく、種々の手法を広く適用することができる。
演算処理部41は、制御部12から順次入力される姿勢情報によりバケット6の現在位置を逐次算出し、施工目標からの偏差(差分値)を算出することにより、施工目標までの可動量を算出する。また制御部12を介して、通知部14によりこの算出した施工目標までの可動量を油圧ショベル2のオペレータに通知する。
演算処理部41は、液晶表示パネル等による表示部44において、施工目標までの可動量算出結果を逐次表示する。なおこの場合、後述する通知部14と同様に表示するようにしてもよい。
【0018】
ここで通知部14は、油圧ショベル2の運転席において、携帯情報端末装置13で算出された施工目標までの可動量をオペレータに通知する構成であり、この実施形態では、図3に示すように、セグメント方式の表示部により構成される。
すなわち通知部14は、矩形形状のセグメントS11~S16、S21~S26を2列L1、L2により縦方向に順次一定間隔で配置して形成される。各列L1、L2の中央のセグメントS13、S14、S23、S24は発光色が緑色により形成され、このセグメントS13、S14、S23、S24より上方のセグメントS11、S12、S21、S22は発光色が黄色により形成され、セグメントS13、S14、S23、S24より下方のセグメントS15、S16、S25、S26は発光色が赤色により形成される。
通知部14は、施工目標までの可動量が一定値以下の場合、中央のセグメントS13、S14、S23、S24を点灯する。また施工目標までの可動量が大きく、バケット6をさらに可動することが必要な場合、可動量に応じてセグメントS11又はS12、S21又はS22を点灯する。また施工目標までの可動量が負の値であり、施工目標を超えてバケット6が可動している場合、施工目標までの超過量に応じてセグメントS15又はS16、S25又はS26を点灯する。
また通知部14は、このセグメントS11~S16、S21~S26の点灯を判断するしきい値の間隔が、左列L1のセグメントS11~S16に比して右列L2のセグメントS21~S26で小さくなるように設定され、これにより左列L1及び右列L2を租調整、微調整に利用できるように構成される。
【0019】
なお通知部14は、数値により可動量を通知するようにしても良く、音声、警報音により通知するようにしてもよい。また携帯情報端末装置13により直接通知部14を駆動するようにしてもよく、携帯情報端末装置13の表示部44により通知部14を兼用するようにしてもよい。
【0020】
以上の構成によれば、施工目標までの可動量を携帯情報端末装置13で算出することにより、この演算処理に供するソフトウェア及びハードウェアを簡易にバージョンアップすることができる。またこれにより必要に応じてセンサ部11A、11B、11Cを装着し、さらには交換、追加することもできる。これらにより簡易かつ柔軟にマシンガイダンスの機能を導入し、さらには必要に応じてマシンガイダンスの機能をバージョンアップすることができる。
またさらに携帯情報端末装置13の通信機能を利用する、記憶部42に保持する等により作業履歴を記録して保存することもでき、業務管理等に活用することができる。また携帯情報端末装置13の機能を利用して姿勢情報を取得したり、現在位置情報、車内外の照度情報等を取得して利用することもでき、一段と利便性を向上することができる。
【0021】
またセンサ部との無線通信によるデータ通信により姿勢情報を収集することにより、センサ部の設置、交換を簡略化することができ、これにより簡易に既存の工作機械にマシンガイダンスの機能を導入したり、さらにはマシンガイダンスの機能を向上したりすることができる。
【0022】
〔他の実施形態〕
以上、本発明の実施に好適な具体的な構成を詳述したが、本発明は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上述の実施形態の構成を種々に変更することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 作業支援システム
2 油圧ショベル
3 本体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
11A、11B、11C センサ部
12 制御部
13 携帯情報端末装置
14 通知部
21、31 センサ
22 バッテリ
23、33 コントローラ
24、34、43 データ通信部
41 演算処理部
42 記憶部
44 表示部
S11~S16、S21~S26 セグメント
図1
図2
図3