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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180528
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/34 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
B32B27/34
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022150621
(22)【出願日】2022-09-21
(62)【分割の表示】P 2021538820の分割
【原出願日】2020-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2019227383
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003160
【氏名又は名称】東洋紡株式会社
(72)【発明者】
【氏名】成澤 春彦
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 直樹
(72)【発明者】
【氏名】涌井 洋行
(72)【発明者】
【氏名】米虫 治美
(57)【要約】      (修正有)
【課題】保管後においても、保護フィルムからポリイミドフィルムが安定して剥離するとともに、ポリイミドフィルムの接着性低下や可塑化、白化を生じない積層体を提供する。
【解決手段】溶媒抽出低分子量成分が0.03~3.0質量%となる保護フィルムを用いて、保護フィルム中の溶媒抽出低分子量成分のポリイミドフィルム表面に対する荷重下保管後における接触移行量を0.5~50mg/平方mに抑えることにより課題を達成する積層体を得る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イエローインデックスが10以下、全光線透過率が85%以上、MD方向およびTD方向の両方のCTEが-5ppm/℃~+55ppm/℃であるポリイミドフィルム(表面活性化処理されたものを除く)と、前記ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に貼り合された保護フィルムとを含む積層体であって、前記積層体から剥がした前記保護フィルムに含まれる溶媒抽出低分子量成分が0.03~3.0質量%であり、
前記保護フィルムは、基材フィルムおよび粘着剤層を有しており、
前記基材フィルムは、ポリエステル系フィルムであり、
前記粘着剤層は、シリコーン系粘着剤またはアクリル系粘着剤であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記積層体を100g/平方cmの荷重下において40℃で7日間保管した後に、前記積層体から剥がした前記ポリイミドフィルムに含まれる溶媒抽出低分子量成分が0.5~50mg/平方mであることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記積層体から前記保護フィルムを剥離する際の90度剥離法による初期剥離強度が、0.06N/cm以上、0.25N/cm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記積層体を100g/平方cmの荷重下において40℃で7日間保管した後に、積層体から前記保護フィルムを剥離する際の90度剥離法による剥離強度が、0.06N/cm以上、0.25N/cm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【請求項5】
前記ポリイミドフィルムのMD方向およびTD方向の両方の引張弾性率が3GPa以上、20GPa以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護フィルムとポリイミドフィルムからなる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子、MEMS素子、ディスプレイ素子など機能素子の軽量化、小型・薄型化、フレキシビリティ化を目的として、ポリイミドフィルム上にこれらの素子を形成する技術開発が活発に行われている。すなわち、情報通信機器(放送機器、移動体無線、携帯通信機器等)、レーダーや高速情報処理装置などといった電子部品の基材の材料としては、従来、耐熱性を有し且つ情報通信機器の信号帯域の高周波数化(GHz帯に達する)にも対応し得るセラミックが用いられているが、セラミックはフレキシブルではなく薄型化もしにくいので、適用可能な分野が限定されるという欠点があったため、最近はポリイミドフィルムが基板として用いられている。
【0003】
このような半導体素子、MEMS素子、ディスプレイ素子などの機能素子をポリイミドフィルム表面に形成するにあたっては、ポリイミドフィルムの特性であるフレキシビリティを利用した、いわゆるロール・ツー・ロールプロセスにて加工することが期待されている。ロール・ツー・ロールプロセスにて使用されるポリイミドフィルムは、溶媒に溶解させたポリイミド等の高分子を含むワニスを支持基材上に塗布して製膜し、支持基材から剥離した後、乾燥により溶媒を除去することによって、連続的に製造することができる。
【0004】
ロール・ツー・ロールプロセスにて使用される場合、金属ガイドロールとの接触やフィルム装填ハンドリング時に引っ掻き傷や摩耗傷、皺などが入るため、製膜されたポリイミドフィルムの表面には、適宜、剥離可能な保護フィルムが積層され、フィルム表面の保護が図られている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4-359585号公報
【特許文献2】特開2007-169458号公報
【特許文献3】特許第6538259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
保護フィルムを積層しフィルム表面の保護が図られたポリイミドフィルム積層体は、その表面に半導体素子、MEMS素子、ディスプレイ素子などの機能素子を形成するにあたっては、事前に保護フィルムとポリイミドフィルムの積層体から保護フィルムを剥離する必要がある。この時に連続的に保護フィルムを剥離する際に剥離が不均一になることがあり、ポリイミドフィルムに傷や皺などが入り、外観不良や機能素子形成性、加工不良の原因となる。
【0007】
また、保護フィルムとポリイミドフィルムの積層体は、保護フィルムを貼り合わせてから後加工までに保管されるが、保管後に保護フィルムからのポリイミドフィルムの剥離が不安定になることがあり、さらに、ポリイミドフィルムの接着性が低下し、可塑化や白化することがある。このようなポリイミドフィルムの接着性の低下、可塑化や白化はディスプレイ素子などの用途には欠陥となる。
【0008】
保護フィルムには、フィルム基材及び粘着剤層中に原料由来のモノマーやオリゴマーとして低分子量成分を含有する。また、必要に応じて添加された、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、離型剤、難燃剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤などの低分子量成分を含有する。
【0009】
このような保護フィルムの剥離の不均一性や、保管後のポリイミドフィルムの剥離不安定、接着性低下、白化は、保護フィルム中のこれらの低分子量成分がポリイミドフィルムと接触することにより、保護フィルムの内部から接触面に析出し、さらに、ポリイミドフィルム側に徐々に移行することが主な原因であり、保護フィルム中の抽出低分子量成分の成分量と接触移行量を制御することが課題であった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、かかる課題を解決できることを見出し本発明に到達した。すなわち本発明は、以下の[1]~[6]の構成を有するものである。
[1]イエローインデックスが10以下、波長400nmにおける光線透過率が70%以上、全光線透過率が85%以上、MD方向およびTD方向の両方のCTEが-5ppm/℃~+55ppm/℃であるポリイミドフィルムと、前記ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に貼り合された保護フィルムとを含む積層体であって、前記積層体から剥がした前記保護フィルムに含まれる溶媒抽出低分子量成分が0.03~3.0質量%であることを特徴とする積層体。
[2] 前記積層体を100g/平方cmの荷重下において40℃で7日間保管した後に、前記積層体から剥がした前記ポリイミドフィルムに含まれる溶媒抽出低分子量成分が0.5~50mg/平方mであることを特徴とする[1]に記載の積層体。
[3] 前記積層体から前記保護フィルムを剥離する際の90度剥離法による初期剥離強度が、0.06N/cm以上、0.25N/cm以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載の積層体。
[4] 前記積層体を100g/平方cmの荷重下において40℃で7日間保管した後に、積層体から前記保護フィルムを剥離する際の90度剥離法による剥離強度が、0.06N/cm以上、0.25N/cm以下であることを特徴とする[1]~[3]のいずれかに記載の積層体。
[5] 前記ポリイミドフィルムのMD方向およびTD方向の両方の引張弾性率が3GPa以上、20GPa以下であることを特徴とする[1]~[4]のいずれかに記載の積層体。
[6] 前記保護フィルムが重縮合系樹脂フィルムと粘着剤からなる、[1]~[5]のいずれかに記載の積層体。
なお、ここにMD方向とはフィルムの流れ方向であり、TD方向とはフィルムの幅方向である。
【発明の効果】
【0011】
本発明による積層体を用いることで、ポリイミドフィルムを剥離する際に剥離が均一となり、ポリイミドフィルムに傷や皺などが生じ難く、また、積層体を長期間保管した後にも低剥離強度かつ、その均一性を維持し、ポリイミドフィルムの白化や接着性低下を生じ難い。そのため良好な外観や機能素子形成性、加工性を有し、その表面に半導体素子、MEMS素子、ディスプレイ素子などの機能素子を形成するに適した積層体を提供することが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態の積層体について説明する。本発明の積層体はポリイミドフィルムと、前記ポリイミドフィルムの少なくとも一方の面に貼り合された保護フィルムとを含む積層体であって、本発明の積層体を構成するポリイミドフィルムは、主鎖にイミド結合を有する高分子のフィルムであり、好ましくはポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリアミドフィルムであり、より好ましくはポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルムであり、更に好ましくはポリイミドフィルムである。
【0013】
一般的に、ポリイミドフィルムは、溶媒中でジアミン類とテトラカルボン酸類を反応させて得られるポリアミド酸(ポリイミド前駆体)溶液を、ポリイミドフィルム作製用支持体に塗布、乾燥してグリーンフィルム(「前駆体フィルム」または「ポリアミド酸フィルム」或いは「ポリアミック酸フィルム」ともいう)となし、さらにポリイミドフィルム作製用支持体上で、若しくは該支持体から剥がした状態でグリーンフィルムを高温熱処理して脱水閉環反応を行わせることで得られる。また、別の方法として、溶媒中でジアミン類とテトラカルボン酸類との脱水閉環反応により得られるポリイミド溶液をポリイミドフィルム作製用支持体に塗布、乾燥して1~50質量%の溶媒を含むポリイミドフィルムとなし、さらにポリイミドフィルム作製用支持体上で、若しくは該支持体から剥がした状態で1~50質量%の溶媒を含むポリイミドフィルムを高温処理して乾燥させることでも得られる。
【0014】
また、一般的に、ポリアミドイミドフィルムは、溶媒中でジイソシアネート類とトリカルボン類とを反応させて得られるポリアミドイミド溶液を、ポリアミドイミドフィルム作製用支持体に塗布、乾燥して1~50質量%の溶媒を含むポリアミドイミドフィルムとなし、さらにポリアミドイミド作製用支持体上で、若しくは該支持体から剥がした状態で1~50質量%の溶媒を含むポリアミドイミドフィルムを高温処理して乾燥させることで得られる。
【0015】
また、一般的に、ポリアミドフィルムは、溶媒中でジアミン類とジカルボン酸類とを反応させて得られるポリアミド溶液をポリアミドフィルム作製用支持体に塗布、乾燥して1~50質量%の溶媒を含むポリアミドフィルムとなし、さらにポリアミド作製用支持体上で、若しくは該支持体から剥がした状態で1~50質量%の溶媒を含むポリアミドフィルムを高温処理して乾燥させることで得られる。
【0016】
前記テトラカルボン酸類、トリカルボン酸類、ジカルボン酸類としては、ポリイミド合成、ポリアミドイミド合成、ポリアミド合成に通常用いられる芳香族テトラカルボン酸類(その酸無水物を含む)、脂肪族テトラカルボン酸類(その酸無水物を含む)、脂環式テトラカルボン酸類(その酸無水物を含む)、芳香族トリカルボン酸類(その酸無水物を含む)、脂肪族トリカルボン酸類(その酸無水物を含む)、脂環式トリカルボン酸類(その酸無水物を含む)、芳香族ジカルボン類、脂肪族ジカルボン酸類、脂環式ジカルボン酸類等を用いることができる。中でも、芳香族テトラカルボン酸無水物類、脂環式テトラカルボン酸無水物類が好ましく、耐熱性の観点からは芳香族テトラカルボン酸無水物類がより好ましく、光透過性の観点からは脂環式テトラカルボン酸類がより好ましい。テトラカルボン酸類が酸無水物である場合、分子内に無水物構造は1個であってもよいし2個であってもよいが、好ましくは2個の無水物構造を有するもの(二無水物)がよい。テトラカルボン酸類、トリカルボン酸類、ジカルボン酸類は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0017】
本発明における無色透明性の高いポリイミドを得るための芳香族テトラカルボン酸類としては、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸、4,4’-オキシジフタル酸、ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-5-カルボン酸)1,4-フェニレン、ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-5-イル)ベンゼン-1,4-ジカルボキシレート、4,4’-[4,4’-(3-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-1,1-ジイル)ビス(ベンゼン-1,4-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1,2-ジカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4,4’-[(3-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-1,1-ジイル)ビス(トルエン-2,5-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1,2-ジカルボン酸、4,4’-[(3-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-1,1-ジイル)ビス(1,4-キシレン-2,5-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1,2-ジカルボン酸、4,4’-[4,4’-(3-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-1,1-ジイル)ビス(4-イソプロピル―トルエン-2,5-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1,2-ジカルボン酸、4,4’-[4,4’-(3-オキソ-1,3-ジヒドロ-2-ベンゾフラン-1,1-ジイル)ビス(ナフタレン-1,4-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1,2-ジカルボン酸、4,4’-[4,4’-(3H-2,1-ベンズオキサチオール-1,1-ジオキシド-3,3-ジイル)ビス(ベンゼン-1,4-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1,2-ジカルボン酸、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、4,4’-[(3H-2,1-ベンズオキサチオール-1,1-ジオキシド-3,3-ジイル)ビス(トルエン-2,5-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1,2-ジカルボン酸、4,4’-[(3H-2,1-ベンズオキサチオール-1,1-ジオキシド-3,3-ジイル)ビス(1,4-キシレン-2,5-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1,2-ジカルボン酸、4,4’-[4,4’-(3H-2,1-ベンズオキサチオール-1,1-ジオキシド-3,3-ジイル)ビス(4-イソプロピル―トルエン-2,5-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1,2-ジカルボン酸、4,4’-[4,4’-(3H-2,1-ベンズオキサチオール-1,1-ジオキシド-3,3-ジイル)ビス(ナフタレン-1,4-ジイルオキシ)]ジベンゼン-1,2-ジカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、ピロメリット酸、4,4’-[スピロ(キサンテン-9,9’-フルオレン)-2,6-ジイルビス(オキシカルボニル)]ジベンゼン-1,2-ジカルボン酸、4,4’-[スピロ(キサンテン-9,9’-フルオレン)-3,6-ジイルビス(オキシカルボニル)]ジベンゼン-1,2-ジカルボン酸、などのテトラカルボン酸及びこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも、2個の酸無水物構造を有する二無水物が好適であり、特に、4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物が好ましい。なお、芳香族テトラカルボン酸類は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。芳香族テトラカルボン酸類は、耐熱性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、なおさらに好ましくは80質量%以上である。
【0018】
脂環式テトラカルボン酸類としては、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸、3-(カルボキシメチル)シクロペンタン-1,2,4-トリカルボン酸、1,2,3,4-シクロヘキサンテトラカルボン酸、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸、ビシクロ[2,2、1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、ビシクロ[2,2,2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、ビシクロ[2,2,2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、テトラデカヒドロアントラセン-2,3,6,7-テトラカルボン酸、テトラデカヒドロ-1,4:5,8:9,10-トリメタノアントラセン-2,3,6,7-テトラカルボン酸、デカヒドロナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸、デカヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸、デカヒドロ-1,4-エタノ-5,8-メタノナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸(別名「ノルボルナン-2-スピロ-2’-シクロペンタノン-5’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸」)、メチルノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-(メチルノルボルナン)-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロヘキサノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸(別名「ノルボルナン-2-スピロ-2’-シクロヘキサノン-6’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸」)、メチルノルボルナン-2-スピロ-α-シクロヘキサノン-α’-スピロ-2’’-(メチルノルボルナン)-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロプロパノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロブタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロヘプタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロオクタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロノナノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロウンデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロドデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロトリデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロテトラデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタデカノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-(メチルシクロペンタノン)-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-(メチルシクロヘキサノン)-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン-5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、などのテトラカルボン酸及びこれらの酸無水物が挙げられる。これらの中でも、2個の酸無水物構造を有する二無水物が好適であり、特に、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が好ましく、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物がより好ましく、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物がさらに好ましい。なお、これらは単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。脂環式テトラカルボン酸類は、透明性を重視する場合には、例えば、全テトラカルボン酸類の50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、なおさらに好ましくは80質量%以上である。
【0019】
トリカルボン酸類としては、トリメリット酸、1,2,5-ナフタレントリカルボン酸、ジフェニルエーテル-3,3’,4’-トリカルボン酸、ジフェニルスルホン-3,3’,4’-トリカルボン酸などの芳香族トリカルボン酸、或いはヘキサヒドロトリメリット酸などの上記芳香族トリカルボン酸の水素添加物、エチレングリコールビストリメリテート、プロピレングリコールビストリメリテート、1,4-ブタンジオールビストリメリテート、ポリエチレングリコールビストリメリテートなどのアルキレングリコールビストリメリテート、及びこれらの一無水物、エステル化物が挙げられる。これらの中でも、1個の酸無水物構造を有する一無水物が好適であり、特に、トリメリット酸無水物、ヘキサヒドロトリメリット酸無水物が好ましい。尚、これらは単独で使用してもよいし複数を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
ジカルボン酸類としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸、4、4’-オキシジベンゼンカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、或いは1,6-シクロヘキサンジカルボン酸などの上記芳香族ジカルボン酸の水素添加物、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカ二酸、ドデカン二酸、2-メチルコハク酸、及びこれらの酸塩化物或いはエステル化物などが挙げられる。これらの中で芳香族ジカルボン酸及びその水素添加物が好適であり、特に、テレフタル酸、1,6-シクロヘキサンジカルボン酸、4、4’-オキシジベンゼンカルボン酸が好ましい。尚、ジカルボン酸類は単独で使用してもよいし複数を組み合わせて使用してもよい。
【0021】
本発明における無色透明性の高いポリイミドを得るためのジアミン類或いはイソシアネート類としては、特に制限はなく、ポリイミド合成、ポリアミドイミド合成、ポリアミド合成に通常用いられる芳香族ジアミン類、脂肪族ジアミン類、脂環式ジアミン類、芳香族ジイソシアネート類、脂肪族ジイソシアネート類、脂環式ジイソシアネート類等を用いることができる。耐熱性の観点からは、芳香族ジアミン類が好ましく、透明性の観点からは脂環式ジアミンが好ましい。また、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類を用いると、高い耐熱性とともに、高弾性率、低熱収縮性、低線膨張係数を発現させることが可能になる。ジアミン類及びイソシアネート類は、単独で用いてもよいし二種以上を併用してもよい。
【0022】
芳香族ジアミン類としては、例えば、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-アミノベンジルアミン、p-アミノベンジルアミン、4-アミノ-N-(4-アミノフェニル)ベンズアミド、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,2’-トリフルオロメチル-4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-2-[4-(4-アミノフェノキシ)-3-メチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3-メチルフェニル]プロパン、2-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-2-[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-3,5-ジメチルフェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’-ビス[(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’-ビス[3-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[3-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4-{4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-トリフルオロメチルフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-フルオロフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-メチルフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノ-6-シアノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5,5’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4,5’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5-フェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-5’-フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5,5’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4,5’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’-ジアミノ-5-ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’-ジアミノ-5’-ビフェノキシベンゾフェノン、1,3-ビス(3-アミノ-4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-4-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-5-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-5-フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-4-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-4-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-5-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-5-ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル、4,4’-[スピロ(キサンテン-9,9’-フルオレン)-2,6-ジイルビス(オキシカルボニル)]ビスアニリン、4,4’-[スピロ(キサンテン-9,9’-フルオレン)-3,6-ジイルビス(オキシカルボニル)]ビスアニリン、および上記芳香族ジアミンの芳香環上の水素原子の一部もしくは全てが、ハロゲン原子、炭素数1~3のアルキル基またはアルコキシル基、シアノ基、またはアルキル基またはアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1~3のハロゲン化アルキル基またはアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。また、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類としては、特に限定はなく、例えば、5-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6-アミノ-2-(p-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、5-アミノ-2-(m-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、6-アミノ-2-(m-アミノフェニル)ベンゾオキサゾール、2,2’-p-フェニレンビス(5-アミノベンゾオキサゾール)、2,2’-p-フェニレンビス(6-アミノベンゾオキサゾール)、1-(5-アミノベンゾオキサゾロ)-4-(6-アミノベンゾオキサゾロ)ベンゼン、2,6-(4,4’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:5,4-d’]ビスオキサゾール、2,6-(4,4’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:4,5-d’]ビスオキサゾール、2,6-(3,4’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:5,4-d’]ビスオキサゾール、2,6-(3,4’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:4,5-d’]ビスオキサゾール、2,6-(3,3’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:5,4-d’]ビスオキサゾール、2,6-(3,3’-ジアミノジフェニル)ベンゾ[1,2-d:4,5-d’]ビスオキサゾール等が挙げられる。これらの中で、特に、2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4-アミノ-N-(4-アミノフェニル)ベンズアミド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノンが好ましい。尚、芳香族ジアミン類は単独で使用してもよいし複数を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
脂環式ジアミン類としては、例えば、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-メチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-エチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-n-プロピルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-イソプロピルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-n-ブチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-イソブチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-sec-ブチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-tert-ブチルシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(2,6-ジメチルシクロヘキシルアミン)、シクロヘキサン-1,4-ジイルジメタンアミン、ビシクロ[2,2,1]ヘプタン-2,5-ジアミン等が挙げられる。これらの中で、特に、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-メチルシクロヘキサンが好ましく、1,4-ジアミノシクロヘキサンがより好ましい。尚、脂環式ジアミン類は単独で使用してもよいし複数を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
ジイソシアネート類としては、例えば、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3,2’-または3,3’-または4,2’-または4,3’-または5,2’-または5,3’-または6,2’-または6,3’-ジメチルジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3,2’-または3,3’-または4,2’-または4,3’-または5,2’-または5,3’-または6,2’-または6,3’-ジエチルジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3,2’-または3,3’-または4,2’-または4,3’-または5,2’-または5,3’-または6,2’-または6,3’-ジメトキシジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-3,3’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-3,4’-ジイソシアネート、ジフェニルエーテル-4,4’ -ジイソシアネート、ベンゾフェノン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルスルホン-4,4’-ジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、ナフタレン-2,6-ジイソシアネート、4,4’-(2,2ビス(4-フェノキシフェニル)プロパン)ジイソシアネート、3,3’-または2,2’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-または2,2’-ジエチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジエトキシビフェニル-4,4’-ジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート類、及びこれらのいずれかを水素添加したジイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート)などが挙げられる。これらの中では、低吸湿性、寸法安定性、価格及び重合性の点からジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、トリレン-2,4-ジイソシアネート、トリレン-2,6-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルビフェニル-4,4’-ジイソシアネートやナフタレン-2,6-ジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネートが好ましい。尚、ジイソシアネート類は単独で使用してもよいし複数を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
本発明におけるポリイミドフィルムの黄色度指数(イエローインデックス)は10以下であり、より好ましくは7以下であり、さらに好ましくは5以下であり、より一層好ましくは3以下である。前記ポリイミドフィルムの黄色度指数の下限は特に制限されないが、フレキシブル電子デバイスとして用いるためには0.1以上であることが好ましく、より好ましくは0.2以上であり、さらに好ましくは0.3以上である。
【0026】
本発明におけるポリイミドフィルムの波長400nmにおける光線透過率は70%以上であり、より好ましくは72%以上であり、さらに好ましくは75%以上であり、より一層好ましくは80%以上である。前記ポリイミドフィルムの波長400nmの光線透過率の上限は特に制限されないが、フレキシブル電子デバイスとして用いるためには99%以下であることが好ましく、より好ましくは98%以下であり、さらに好ましくは97%以下である。
【0027】
本発明におけるポリイミドフィルムの全光線透過率は85%以上であり、より好ましくは86%以上であり、さらに好ましくは87%以上であり、より一層好ましくは88%以上である。前記ポリイミドフィルムの全光線透過率の上限は特に制限されないが、フレキシブル電子デバイスとして用いるためには99%以下であることが好ましく、より好ましくは98%以下であり、さらに好ましくは97%以下である。
【0028】
本発明におけるポリイミドフィルムの30℃から300℃の間の平均のCTEは、好ましくは、-5ppm/℃~+55ppm/℃であり、より好ましくは-5ppm/℃~+45ppm/℃であり、さらに好ましくは-5ppm/℃~+35ppm/℃であり、なおさらに好ましくは-5ppm/℃~+20ppm/℃であり、ことさらに好ましくは1ppm/℃~+10ppm/℃である。CTEが前記範囲であると、一般的な支持体(無機基板)との線膨張係数の差を小さく保つことができ、熱を加えるプロセスに供してもポリイミドフィルムと無機基板とが剥がれることを回避できる。ここにCTEとは温度に対して可逆的な伸縮を表すファクターである。なお、前記ポリイミドフィルムのCTEとは、ポリイミドフィルムの流れ方向(MD方向)のCTE及び幅方向(TD方向)のCTEの平均値を指す。前記ポリイミドフィルムのCTEの測定方法は、実施例に記載の方法による。
【0029】
本発明におけるポリイミドフィルムの厚さは3μm以上が好ましく、より好ましくは11μm以上であり、さらに好ましくは24μm以上であり、より一層好ましくは45μm以上である。前記ポリイミドフィルムの厚さの上限は特に制限されないが、フレキシブル電子デバイスとして用いるためには250μm以下であることが好ましく、より好ましくは150μm以下であり、さらに好ましくは90μm以下である。
【0030】
本発明の線膨張係数を示す無色透明性の高いポリイミドフィルムは、ポリイミドフィルムの成膜過程において、延伸を行うことで実現することができる。かかる延伸操作は、ポリイミド溶液をポリイミドフィルム作製用支持体に塗布、乾燥して1~50質量%の溶媒を含むポリイミドフィルムとなし、さらにポリイミドフィルム作製用支持体上で、もしくは該支持体から剥がした状態で1~50質量%の溶媒を含むポリイミドフィルムを高温処理して乾燥させる過程において、MD方向に1.5倍から4.0倍に、TD方向に1.4倍から3.0倍に延伸することによって実現できる。この際にポリイミドフィルム作製用支持体に未延伸の熱可塑性高分子フィルムを用い、熱可塑性高分子フィルムとポリイミドフィルムを同時に延伸した後に熱可塑性高分子フィルムから延伸後のポリイミドフィルムを剥離することにより、特にMD方向の延伸時にポリイミドフィルムに入る傷を防止することができ、より高品位な無色透明性の高いポリイミドフィルムを得ることができる。
【0031】
本発明の積層体は、上記ポリイミドフィルムに貼合された保護フィルムを含む。保護フィルムは、ポリイミドフィルムの一方の面のみに貼り合わされていてもよく、両面に貼り合わされてもよい。ポリイミドフィルムに貼り合わされる保護フィルムは、通常、ポリイミドフィルムの表面を一時的に保護するためのフィルムであり、ポリイミドフィルムの表面を保護できる剥離可能なフィルムである限り特に限定されないが、フィルム強度、寸法安定性の点から、好ましくはポリエステル、ポリ乳酸、ポリアミドなどの重縮合系樹脂フィルムからなる群から選択される。また、低吸湿性の点から、さらに好ましくはポリエステル系樹脂フィルムからなる群から選択される。ポリイミドフィルムの両面に保護フィルムが貼り合わされている場合、各面の保護フィルムは互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0032】
本発明における保護フィルムは、ポリイミドフィルムと貼り合わせる面に粘着層を有していてもよく、粘着層を構成する粘着剤は貼り付け性と剥離性を有する限り限定されないが、粘着剤の種類としては、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤(天然ゴム系粘着剤又は合成ゴム系粘着剤)、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤が挙げられる。2種以上の粘着剤を併用しても良く、粘着剤には、例えば、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、着色剤を添加できる。中でも、シリコーン系粘着剤およびアクリル系粘着剤が溶媒抽出低分子量成分量および接触移行量の点から好ましい。
【0033】
粘着剤層は、例えば、粘着剤をフィルム基材上に塗布し、加熱又は紫外線照射により架橋反応させて形成できる。また例えば、粘着剤を離型紙又はその他のフィルム上に塗布し、加熱又は紫外線照射により架橋反応させて粘着剤層を形成し、この粘着剤層をフィルム基材の片面又は両面に貼り合せることもできる。粘着剤の塗布には、例えば、ロールコーター、ダイコーター、リップコーター等の塗布装置を使用できる。塗布後に加熱する場合は、加熱による架橋反応と共に粘着剤組成物中の溶剤も除去できる。
【0034】
本発明における保護フィルムの厚さは保護性能と寸法安定性の点から、10μm以上が好ましく、より好ましくは20m以上である。前記保護フィルムの厚さの上限は特に制限されないが、積層体をロール状に巻いて保管する場合の保管のし易さから、200μm以下であることが好ましく、より好ましくは150μm以下である。
本発明の積層体、あるいは保護フィルム、ポリイミドフィルム、積層体から剥離した保護フィルム、積層体から剥離したポリイミドフィルムに、後に述べるソックスレー抽出操作を行うと、積層体に含有されていた低分子量成分を抽出できる。本発明ではこのようにして抽出される成分を溶媒抽出低分子量成分と呼ぶ。
【0035】
本発明における保護フィルムには、フィルム基材層及び粘着層中に原料由来のモノマーやオリゴマーとなる低分子量成分を含有する。また、必要に応じて添加された、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、離型剤、難燃剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤などの低分子量成分をさらに含有する。溶媒抽出低分子量成分は、主にはこのような低分子量成分の内、ソックスレー抽出操作により溶出してくる成分である。
本発明では、積層体から剥がした後の保護フィルムに含まれる溶媒抽出低分子量成分が0.03~3.0質量%である。さらに、本発明における積層体から剥がした後の保護フィルムに含まれる溶媒抽出低分子量成分は0.06~1.5質量%の範囲が好ましく、0.1~0.8質量%の範囲がなお好ましい。
溶媒抽出低分子量成分がこの範囲であれば、保護フィルムからポリイミドフィルムへの過度の溶媒抽出低分子量成分の移行が抑制され、長期、高温下での保管後も、剥離強度が大きく変化することなく、易剥離なレベルの剥離強度が均一に維持され、またポリイミドフィルムの白化やガラス転移温度の低下などの物性上の問題を生じることなく、さらに後工程におけるポリイミドフィルムと他素材との接着性を阻害すること無く、良好な状態が維持される。
【0036】
本発明では、積層体を100g/平方cmの荷重下において40℃で7日間保管した後に、積層体から剥離した前記ポリイミドフィルムに含まれる溶媒抽出低分子量成分が0.5~50mg/平方mであることが好ましい。かかる溶媒抽出低分子量成分は0.7~20mg/平方mであることがさらに好ましく、1.0~10mg/平方mであることがなお好ましい。
本発明では、この積層体を100g/平方cmの荷重下において40℃で7日間保管した後に、積層体から剥離した前記ポリイミドフィルムに含まれる溶媒抽出低分子量成分を接触移行量とも呼ぶ。
保護フィルム中の溶媒抽出低分子量成分は、保護フィルムとポリイミドフィルムとが接触することで、経過時間に応じてポリイミドフィルム表面に移行する。かかる溶媒抽出低分子量成分の移行は、ポリイミドフィルの白化やガラス転移温度の低下などの物性上の問題を引き起こし、また後工程において他素材と接着することが求められる場合に接着性を阻害するなどの問題を引き起こすことがある。接触移行量を所定の範囲に抑えることによりこのような問題を解消することができる。
【0037】
本発明の積層体は、積層体から前記保護フィルムを剥離する際の前記保護フィルムとの90度初期剥離強度が、0.06N/cm以上、0.25N/cm以下であることが好ましい。90度初期剥離強度をこの範囲に収めることにより、保管時や機能素子形成工程における保護フィルムの意図しない剥離を防ぎ、また剥離強度が高すぎることによる剥離の困難さや不均一な剥離を抑制することができ、ポリイミドフィルム側に傷や皺などが入る外観不良や機能素子形成性、加工不良などを未然に防止することができる。
【0038】
本発明の積層体では、積層体を100g/平方cmの荷重下において40℃で7日間保管した後に、積層体から前記保護フィルムを剥離する際の90度剥離法による剥離強度が、0.06N/cm以上、0.25N/cm以下であることが好ましい。90度初期剥離強度をこの範囲に収めることにより、保管時や機能素子形成工程における保護フィルムの意図しない剥離を防ぎ、また剥離強度が高すぎることによる剥離の困難さや不均一な剥離を抑制することができ、ポリイミドフィルム側に傷や皺などが入る外観不良や機能素子形成性、加工不良などを未然に防止することができる。
90度剥離強度の測定方法は、実施例に記載の方法による。
【0039】
本発明のポリイミドフィルムの引張弾性率は、3GPa以上が好ましく、より好ましくは4GPa以上であり、さらに好ましくは5GPa以上である。前記引張弾性率が、3GPa以上であると、保護フィルムから剥離する際の前記ポリイミドフィルムの伸び変形が少なく、取り扱い性に優れる。前記引張弾性率は、20GPa以下が好ましく、より好ましくは12GPa以下であり、さらに好ましくは10GPa以下である。前記引張弾性率が、20GPa以下であると、前記ポリイミドフィルムをフレキシブルなフィルムとして使用できる。なお、前記ポリイミドフィルムの引張弾性率とは、ポリイミドフィルムの流れ方向(MD方向)の引張弾性率及び幅方向(TD方向)の引張弾性率の平均値を指す。前記ポリイミドフィルムの引張弾性率の測定方法は、実施例に記載の方法による。
【実施例0040】
以下、本発明に関し実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
なお実施例、比較例における各測定値は、特に断りのない限り以下の方法で測定した。
【0042】
<高分子の還元粘度>
高分子濃度が0.2g/dlとなるようにN-メチル-2-ピロリドン(又は、N,N-ジメチルアセトアミド)に溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。(ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がN,N-ジメチルアセトアミドの場合は、N,N-ジメチルアセトアミドを使用してポリマーを溶解し、測定した。)
【0043】
<ポリイミドフィルムの厚さ>
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン1245D)を用いて測定した。
【0044】
<黄色度指数(イエローインデックス、YI)>
カラーメーター(ZE6000、日本電色社製)およびC2光源を使用して、ASTM D1925に準じてポリイミドフィルムの三刺激値XYZ値を測定し、下記式により黄色度指数(YI)を算出した。尚、同様の測定を3回行い、その算術平均値を採用した。
YI=100×(1.28X-1.06Z)/Y
【0045】
<400nm光線透過率>
積層体から剥離したポリイミドフィルについて、分光光度計(日立製作所製「U-2001」)を用いて波長400nmにおける光線透過率を測定し、得られた値をランベルト・ベールの法則に従うものとして20μmの厚みに換算し、得られた値をポリイミドフィルムの400nm光線透過率とした。尚、同様の測定を3回行い、その算術平均値を採用した。
【0046】
<全光線透過率(TT)>
積層体から剥離したポリイミドフィルについて、HAZEMETER(NDH5000、日本電色社製)を用いてポリイミドフィルムの全光線透過率(TT)を測定した。光源としてはD65ランプを使用した。尚、同様の測定を3回行い、その算術平均値を採用した。
【0047】
<線膨張係数(CTE)>
積層体から剥離したポリイミドフィルについて、ポリイミドフィルムの流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)において、下記条件にて伸縮率を測定し、30℃~45℃、45℃~60℃のように15℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を300℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出した。
機器名 : MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ : 20mm
試料幅 : 2mm
昇温開始温度 : 25℃
昇温終了温度 : 400℃
昇温速度 : 5℃/min
雰囲気 : アルゴン
【0048】
<保護フィルム中の溶媒抽出低分子量成分の定量>
積層体から剥離した保護フィルムを幅5mm、長さ20mmに裁断し、約1,000mgを精秤し、抽出溶媒としてクロロホルム100gを用い、抽出時間10時間の条件で、ソックスレー抽出を行った。成分量は抽出乾燥後の保護フィルムを精秤して、下記式から溶媒抽出低分子量成分量(質量%)を求めた。
保護フィルム中の溶媒抽出低分子量成分量(質量%)={抽出前質量(mg)-抽出後質量(mg)}/抽出前質量(mg)×100
さらに、上記で得られた抽出溶液を用いて、高速液体クロマトグラフィーにより成分分割した各成分のピーク位置、ピーク面積とマススペクトル分析(装置:日立製M-1200H)による各成分の分子量を求めた。
【0049】
<接触移行量>
幅100mm、長さ100mmに裁断した積層体を20枚重ね合わせて、100g/平方cmとなるように荷重をかけ、40℃で7日間保管した。保管後の積層体からポリイミドフィルムを剥離し、剥離したポリイミドフィルムを幅5mm、長さ20mmに裁断し約1,000mgを精秤し、抽出溶媒としてクロロホルム100gを用い、抽出時間10時間の条件で、ソックスレー抽出を行った。得られた抽出溶液を用いて、高速液体クロマトグラフィーにより成分分割した各成分のピークを得て、前述の「保護フィルム中の溶媒抽出低分子量成分の量および分子量」測定結果からと、あらかじめ求めた検量線から、保護フィルム中に含まれていたと考えられる各成分のピーク位置に該当するピークの面積を求め、面積比から各成分の質量に換算し、各成分の質量の合計を接触移行量とし、ポリイミドフィルム1平方mあたりのmg量に換算した。
【0050】
<初期剥離強度>
ポリイミドフィルムと保護フィルムを貼り合わせて積層体を得たのちに、1日経過した積層体を用いて、90度剥離法により初期剥離強度を以下の方法で求めた。
積層体の幅方向の中央部、左右の端部、端部と中央のさらに中間部から幅100mm、長さ100mmに切り出した積層体を、さらに25mm×100mmの長方形4本に裁断し試料とした。
今田製作所製の90度剥離治具「GT-40」の試料台に積層体の保護フィルム側を両面粘着テープで接着し、積層体(ポリイミドフィルム)から保護フィルムを90度の角度で引き剥がす際の剥離力を島津製作所製の引張試験機「オートグラフAG-IS」により測定した。
測定装置 : 島津製作所社製 オートグラフAG-IS
測定治具 : 今田製作所 剥離治具 GT-40
測定温度 : 室温(25℃)
剥離速度 : 100mm/min
雰囲気 : 大気
測定サンプル幅 : 25mm
【0051】
<100g/平方cmの荷重下において40℃で7日間保管した後の剥離強度>
幅100mm、長さ100mmに裁断した積層体を20枚重ね合わせて、100g/平方cmとなるように荷重をかけ、40℃で7日間保管した。保管後の積層体を25mm×100mmの長方形4本に裁断し、各長方形の長手方向について、初期剥離強度と同様に積層体から保護フィルムを剥離する際の剥離強度を測定し合計4点についての平均値を求めた。
【0052】
<ポリイミドフィルムの引張弾性率>
ポリイミドフィルムの流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。試験片は、幅方向中央部分から切り出した。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(R)、機種名AG-5000A)を用い、温度25℃、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率を測定した。
【0053】
〔ポリアミド酸溶液Aの調製〕
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、反応容器に窒素雰囲気下、176.5g(0.900 mol)の1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物(CBDA)、31.0g(0.100mol)の4,4’-オキシジフタル酸(ODPA)、160.1g(0.500 mol)の2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)、113.6g(0.500mol)の4-アミノ-N-(4-アミノフェニル)ベンズアミド(DABAN)、2000gのN,N-ジメチルアセトアミドを仕込んで溶解させた後、室温で24時間攪拌した。その後、1000gのN,N-ジメチルアセトアミドで希釈し、還元粘度4.50dl/gのポリアミド酸溶液Aを得た。
【0054】
〔ポリイミド溶液Bの調製〕
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、反応容器に窒素雰囲気下、461gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)と64.0g(0.200mol)の2,2’-ジトリフルオロメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(TFMB)を入れて攪拌し、TFMBをDMAC中に溶解させた。次いで、反応容器内を攪拌しながら、窒素気流下で、89.737g(0.202mol)の4,4’-(2,2-ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)を10分程度かけて投入し、そのまま温度が20~40℃の温度範囲となるように調整しながら6時間攪拌を続けて重合反応を行い、粘稠なポリアミド酸溶液を得た。
次に、得られたポリアミド酸溶液に410gのDMACを加えて希釈した後、イミド化促進剤として25.83gのイソキノリンを加えて、ポリアミド酸溶液を攪拌しながら30~40℃の温度範囲に保ち、そこにイミド化剤として、122.5g(1.20モル)の無水酢酸を約10分間かけてゆっくりと滴下しながら投入し、その後更に液温を30~40℃に保って12時間攪拌を続けて化学イミド化反応を行って、ポリイミド溶液を得た。
次に、得られたイミド化剤およびイミド化促進剤を含むポリイミド溶液1000gを、攪拌装置と攪拌翼を備えた反応容器に移し変え、120rpmの速度で攪拌しながら15~25℃の温度に保ち、そこに1500gのメタノールを10g/分の速度で滴下させた。約800gのメタノールを投入したところでポリイミド溶液の濁りが確認され、粉体状のポリイミドの析出が確認された。引き続き1500g全量のメタノールを投入し、ポリイミドの析出を完了させた。続いて、反応容器の内容物を、吸引濾過装置により濾別し、更に1000gのメタノールを用いて洗浄・濾別した。その後、濾別したポリイミド粉体50gを局所排気装置のついた乾燥機を用いて、50℃で24時間乾燥させ、更に260℃で2時間乾燥させて、残りの揮発成分を除去して、ポリイミド粉体を得た。得られたポリイミド粉体の還元粘度は5.40dl/gであった。次に、得られたポリイミド粉体40gを300gのDMACに溶解させて、ポリイミド溶液Bを得た。
【0055】
〔ポリイミド溶液Cの調整〕
窒素導入管、ディーン・スターク管及び還流管、温度計、攪拌棒を備えた反応容器に、窒素ガスを導入しながら、120.5g(0.485mol)の4,4’-ジアミノジフェニルスルホン(4,4’-DDS)、51.6g(0.208mol)の3,3’-ジアミノジフェニルスルホン(3,3’-DDS)、500gのガンマブチロラクトン(GBL)を加えた。続いて217.1g(0.700mol)の4,4’-オキシジフタル酸無二水物(ODPA)、223gのGBL、260gのトルエンを室温で加えた後、内温160℃まで昇温し、160℃で1時間加熱還流を行い、イミド化を行った。イミド化完了後、180℃まで昇温し、トルエンを抜き出しながら反応を続けた。12時間反応後、オイルバスを外して室温に戻し、固形分が20質量%濃度となるようにGBLを加え還元粘度2.50dl/gのポリイミド溶液Cを得た。
【0056】
〔ポリイミドフィルムの作製例1〕
ポリアミド酸溶液Aを、ダイコーターを用いて、ポリイミドフィルム作製支持体である鏡面仕上げしたステンレススチール製の無端連続ベルト上に塗布し(塗工幅1240mm)、90~115℃にて10分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して両端をカットし、グリーンフィルムを得た。
得られたグリーンフィルムをピンテンターによって、最終ピンシート間隔が1140mmとなるように搬送し、1段目170℃で2分間、2段目230℃で2分間、3段目350℃で6分間として熱処理を施し、その後、2分間で室温にまで冷却し、フィルムの両端部の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、表1に示すポリイミドフィルム1Aを得た。以下同様にポリアミド酸溶液Aをポリイミド溶液Bに変え、また支持体への塗布厚さを変えて、表1に示すポリイミドフィルム1Bを得た。
【0057】
〔ポリイミドフィルムの作製例2〕
ポリアミド酸溶液Aを、ポリイミドフィルム作製支持体であるところの、領域表面粗さ(Sa)が1nm、最大突起高さ(Sp)が7nm、山頂点密度(Spd)が20/平方μm以下であり、表面にコート層を有しないポリエステルフイルムにコンマコーターを用いて、塗布し(塗工幅1240mm)、90~115℃にて10分間乾燥した。乾燥後に自己支持性となったポリイミドフィルム(溶媒を10質量%含む)を支持体から剥離して両端をカットし、グリーンフィルムを得た。 得られたグリーンフィルムをピンテンターによって、最終ピンシート間隔が1140mmとなるように搬送し、1段目170℃で2分間、2段目230℃で2分間、3段目350℃で6分間として熱処理を施し、溶媒を除去した。その後、2分間で室温にまで冷却し、フィルムの両端部の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、表1に示すポリイミドフィルム2Aを得た。以下同様にポリアミド酸溶液Aをポリイミド溶液Cに変え、また支持体への塗布厚さを変えて、表1に示すポリイミドフィルム2Cを得た。
【0058】
〔ポリイミドフィルムの作製例3〕
ポリイミド溶液Bを、ポリイミドフィルム作製支持体であるところの、領域表面粗さ(Sa)が3nm、最大突起高さ(Sp)が12nm、山頂点密度(Spd)が25/平方μm以下である未延伸ポリプロピレンフイルムにコンマコーターを用いて、塗布し(塗工幅450mm)、85~105℃にて30分間乾燥して、支持体とポリイミドフィルム(溶剤約8%質量を含む)の二層フィルムを得た。次いで、この二層フィルムを、二層同時にロールの周速度差を利用してMD方向に2.8倍に延伸した。なお、周速度差のあるロールとロールの間では二層フィルムのポリイミドフィルム側の面にロールが接触しないように配置した。MD方向への延伸の後に、クリップテンターにて二層フィルムの両端を把持し、最終ピンシート間隔が1140mm、すなわちTD方向に2.5倍延伸となるように150℃で熱処理しながら搬送し、その後に二層フィルムの支持体からポリイミドフィルムを剥離し、さらに350℃3分間の熱処理を行うことにより溶媒を除去した。その後、2分間で室温にまで冷却し、フィルムの両端部の平面性が悪い部分をスリッターにて切り落とし、ロール状に巻き上げ、表1に示すポリイミドフィルム3Bを得た。以下同様にポリイミド溶液Bをポリイミド溶液Cに変え、また支持体への塗布厚さを変えて、表1に示すポリイミドフィルム3Cを得た。
【0059】
実施例1
<積層体の作製>
作製例1で得たポリイミドフィルム1A全面に、保護フィルム(リンテック(株)社製CLEAR-PET50-06-50)の粘着面が向くように重ね合わせて、シリコンゴムローラーを装備したロールラミネータにセットした。使用したラミネータは、MCK社製の有効ロール幅1350mmのラミネータであり、貼合条件は、エアー元圧力:0.5MPa、ラミネート速度:50mm/秒、ロール温度:22℃、環境温度22℃、湿度55%RHであった。得られた積層体の評価結果を表3に示す。
【0060】
実施例2~6
以下同様に表1に示すポリイミドフィルムと表2に示す保護フィルムを用いて積層体を作製し、積層体の特性および積層体から剥離した保護フィルム、積層体から剥離したポリイミドフィルムの各特性を評価した。結果を表3と表4に示す。
【0061】
比較例1~4
以下同様に表1に示すポリイミドフィルムと表2に示す保護フィルムを用いて積層体を作製し、積層体の特性を評価した。結果を表3に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上述べてきたように、本発明の積層体は、製造直後だけでなく、長期間に渡って保管された後にも、安定してムラがない剥離強度を維持することができ、ポリイミドフィルムの接着性低下や可塑化、白化がないために、半導体素子、MEMS素子、ディスプレイ素子などの機能素子を長期に製造するのに有用である。