(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180542
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】ブロー成形方法及びブロー成形装置
(51)【国際特許分類】
B29C 49/18 20060101AFI20221129BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20221129BHJP
B29C 49/78 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B29C49/18
B29C49/06
B29C49/78
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022151238
(22)【出願日】2022-09-22
(62)【分割の表示】P 2019545150の分割
【原出願日】2018-09-28
(31)【優先権主張番号】P 2017190850
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017208543
(32)【優先日】2017-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】大池 俊輝
(72)【発明者】
【氏名】竹花 大三郎
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 保夫
(57)【要約】 (修正有)
【課題】中空容器の各部の偏肉度合を改善することができるブロー成形方法及びブロー成形装置を提供する。
【解決手段】樹脂製のプリフォーム10に一次ブローを施して中間成形品30を形成し、更に中間成形品30に最終ブローを施して最終成形品である中空容器を形成するブロー成形方法であって、一次ブロー及び最終ブローを実施する少なくとも一方のステップが、ブローにより対象物であるプリフォーム10又は一次成形品20a~20cを延伸させるステップと、ブローした空気の排気により対象物である一次成形品20a~20cの延伸させた各部を収縮させるステップと、を所定時間内に連続して繰り返す薄肉化ステップを含んでいる構成とする、ブロー成形方法である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のプリフォームに一次ブローを施して中間成形品を形成し、更に前記中間成形品に最終ブローを施して最終成形品を形成するブロー成形方法であって、
前記一次ブロー及び前記最終ブローを実施する少なくとも一方のステップが、ブローにより対象物を延伸させるステップと、ブローした空気の排気により前記対象物の延伸させた各部を収縮させるステップと、を所定時間内に連続して繰り返す薄肉化ステップを含んでいる
ことを特徴とするブロー成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載のブロー成形方法であって、
前記薄肉化ステップは、
ブローにより前記対象物の各部を延伸させる第1ステップと、
前記第1ステップで前記対象物内に導入した気体を排気させ、前記対象物の延伸させた各部を収縮させる第2ステップと、
前記第2ステップ後のブローにより前記対象物の各部を延伸させる第3ステップと、
前記第3ステップで前記対象物内に導入した気体を排気させ、前記対象物の延伸させた各部を収縮させる第4ステップと、を少なくとも含む
ことを特徴とするブロー成形方法。
【請求項3】
請求項2に記載のブロー成形方法であって、
前記第1ステップ、前記第2ステップ、前記第3ステップ及び前記第4ステップを行う時間は、それぞれ2秒以内である
ことを特徴とするブロー成形方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のブロー成形方法であって、
前記第2ステップを、前記第4ステップよりも短時間で行う
ことを特徴とするブロー成形方法。
【請求項5】
請求項2~4の何れか一項に記載のブロー成形方法であって、
前記一次ブローを実施するステップが前記薄肉化ステップを含み、
前記第1ステップでは、前記対象物である前記プリフォーム内の底部を延伸ロッドで押圧しながら各部を延伸させる
ことを特徴とするブロー成形方法。
【請求項6】
請求項5に記載のブロー成形方法であって、
前記薄肉化ステップでは、
前記第1ステップでのブロー以降、前記延伸ロッドを前記対象物内の底部に当接させた状態を維持する
ことを特徴とするブロー成形方法。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載のブロー成形方法であって、
前記一次ブローを実施するステップでは、射出成形後の前記プリフォームに残存する熱量を利用して前記中間成形品を形成する
ことを特徴とするブロー成形方法。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載のブロー成形方法であって、
前記一次ブローは熱処理ブローであり、当該一次ブローを実施することで前記中間成形品の樹脂の結晶化を促進させる
ことを特徴とするブロー成形方法。
【請求項9】
ブロー成形型内で樹脂製のプリフォームに一次ブローを施すことで中間成形品を成形し、更に最終ブロー成形型内で前記中間成形品に最終ブローを施す成形手段を具備するブロー成形装置であって、
前記成形手段は、前記一次ブロー及び前記最終ブローの少なくとも一方を実施する際に、ブローによる対象物の各部の延伸と、ブローした気体の排気による前記対象物の延伸させた各部の収縮と、を所定時間内に連続して繰り返す
ことを特徴とするブロー成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロー成形方法及びブロー成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性の樹脂材料で形成される中空容器(ボトル)は、軽量性や耐久性に優れて取り扱いが容易であり、それでいて所期の美観も確保しやすいため、広く社会で活用されている。この種の中空容器の一例としては、飲料等の液体を充填可能なPETボトルが挙げられる。
【0003】
このような中空容器は、通常、いわゆるブロー成形法によって成形される。ブロー成形法には、代表的に、射出成形したプリフォームに残存する熱量を該プリフォームに保持させ、ブロー適温となったプリフォームにブローを施して延伸させるホットパリソン式と、射出成形した後に室温まで冷却させたプリフォームを別途準備し、それをブロー適温まで加熱した上でプリフォームにブローを施して延伸させるコールドパリソン式と、がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、中空容器の耐熱性の向上を目的としたブロー成形方法も様々提案されている。例えば、樹脂製のプリフォームを一次ブロー成形品にブロー成形する工程と、一次ブロー成形品を加熱された金型内に保持して熱処理する工程と、金型から取り出されて収縮した中間成形品を金型外で熱処理する工程と、金型外で熱処理された中間成形品を最終ブロー成形型内で最終成形品にブロー成形する工程と、を有する手法がある(特許文献2参照)。上記のような金型外で熱処理する工程を省略した手法も存在する(特許文献3参照)。特許文献2や特許文献3に係る発明では、熱処理により樹脂の結晶化を促進させ、これにより耐熱性の向上を図ることを試みている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-107391号公報
【特許文献2】特許第3760045号公報
【特許文献3】特許第3907494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述のホットパリソン方式やコールドパリソン方式のブロー成形方法では、プリフォームの肉厚に応じて各部(肩部、胴部及び底部等)の延伸されやすさが異なる。このため、何れの方式であっても、最終成形品である中空容器において肉厚のばらつきが生じてしまう虞がある。肉厚のばらつきは、例えば、中空容器の取り扱い性、剛性度、落下耐性、トップロード耐性といった中空容器の各種性能の低下を招き、さらに中空容器の美観や品質、商品価値を損ねる要因ともなり得る。このため、中空容器の肉厚は、できるだけ均一化することが望まれている。特に、ホットパリソン方式のブロー成形方法では、プ
リフォームの肉厚が同じでも射出成形に由来する偏温が生ずるため、肉厚が均一化された(整った)中空容器の成形は一層困難になる。
【0007】
また特許文献2,3に係る発明のように、熱処理により樹脂の結晶化を促進させることで耐熱容器を形成する場合、中間成形品の各部に偏った肉厚分布が形成されていると、それに伴い、各部の温度分布のばらつきも大きくなる。その結果、肉厚の整った耐熱容器の製造が難しくなる。さらに、耐熱容器の肉厚が均一になっていない(整っていない)と、高温(例えば、約85~95℃)の内容物を充填した際に肉厚の薄い部分と厚い部分とで変形量の差が顕著になりやすく、容器全体として歪みが生じやすい。特にホットパリソン方式のブロー成形方法では、プリフォームに射出成形由来の偏温が生ずるため、中間成形品の各部の偏肉度合(肉厚分布の偏り)は一層大きくなり易い。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、中空容器の各部の偏肉度合を改善することができるブロー成形方法及びブロー成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の一つの態様は、樹脂製のプリフォームに一次ブローを施して中間成形品を形成し、更に前記中間成形品に最終ブローを施して最終成形品を形成するブロー成形方法であって、前記一次ブロー及び前記最終ブローを実施する少なくとも一方のステップが、ブローにより対象物を延伸させるステップと、ブローした空気の排気により前記対象物の延伸させた各部を収縮させるステップと、を所定時間内に連続して繰り返す薄肉化ステップを含んでいることを特徴とするブロー成形方法にある。
【0010】
ここで、前記薄肉化ステップは、ブローにより前記対象物の各部を延伸させる第1ステップと、前記第1ステップで前記対象物内に導入した気体を排気させ、前記対象物の延伸させた各部を収縮させる第2ステップと、前記第2ステップ後のブローにより前記対象物の各部を延伸させる第3ステップと、前記第3ステップで前記対象物内に導入した気体を排気させ、前記対象物の延伸させた各部を収縮させる第4ステップと、を少なくとも含むことが好ましい。
【0011】
さらに前記第1ステップ、前記第2ステップ、前記第3ステップ及び前記第4ステップを行う時間は、それぞれ2秒以内であることが好ましい。また前記第2ステップを、前記第4ステップよりも短時間で行うことが好ましい。
【0012】
また前記一次ブローを実施するステップが前記薄肉化ステップを含む場合、前記第1ステップでは、前記対象物である前記プリフォーム内の底部を延伸ロッドで押圧しながら各部を延伸させることが好ましい。
【0013】
また前記薄肉化ステップでは、前記第1ステップでのブロー以降、前記延伸ロッドを前記対象物内の底部に当接させた状態を維持することが好ましい。
【0014】
また前記一次ブローを実施するステップでは、射出成形後の前記プリフォームに残存する熱量を利用して前記中間成形品を形成することが好ましい。
【0015】
また前記一次ブローは熱処理ブローであり、当該一次ブローを実施することで前記中間成形品の樹脂の結晶化を促進させることが好ましい。
【0016】
また本発明の他の態様は、ブロー成形型内で樹脂製のプリフォームに一次ブローを施すことで中間成形品を成形し、更に最終ブロー成形型内で前記中間成形品に最終ブローを施す成形手段を具備するブロー成形装置であって、前記成形手段は、前記一次ブロー及び前
記最終ブローの少なくとも一方を実施する際に、ブローによる対象物の各部の延伸と、ブローした気体の排気による前記対象物の延伸させた各部の収縮と、を所定時間内に連続して繰り返すことを特徴とするブロー成形装置にある。
【発明の効果】
【0017】
本発明のブロー成形方法によれば、各部の偏肉度合を改善でき、特に底部の薄肉化を図った中空容器を提供することができる。
【0018】
また、本発明のブロー成形装置によれば、各部の偏肉度合を改善でき、特に底部の薄肉化の改善を図った中空容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態1に係るブロー成形方法を説明する図。
【
図2】実施形態1に係るブロー成形方法の薄肉化ステップ(Stp)を説明する図。
【
図3】実施形態1に係るブロー成形装置の概略構成を示す図。
【
図4】実施形態1に係るブロー成形方法及びブロー成形装置を説明する図。
【
図5】実施形態1に係るブロー成形方法及びブロー成形装置を説明する図。
【
図6】実施形態2に係るブロー成形装置の概略構成を示す図。
【
図7】実施形態2に係るブロー成形方法及びブロー成形装置を説明する図。
【
図8】実施形態3に係るブロー成形装置の概略構成を示す図。
【
図9】ブロー成形により形成される中空容器の一例を示す図。
【
図10】ブロー成形により形成される中空容器の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態について、図面を参照して説明する。以下の実施形態は、本発明の一態様であり、本発明の範囲内で任意に変更可能である。各図や説明中、同一の部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
(実施形態1)
図1及び
図2は、本実施形態に係るブロー成形方法を説明するための図である。
図1は、ブロー成形方法の全体の流れを示す図であり、
図2は、ブロー成形方法に含まれる薄肉化ステップ(Stp)の流れを示す図である。
【0022】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係るブロー成形方法は、樹脂製のプリフォーム10に複数のブローステップを含む一次ブローを施すことで偏肉度合が改善された中間成形品30を成形し、更に中間成形品30に最終ブロー(二次ブロー)を施すことで中空容器40を成形するものである。また詳しくは後述するが、この方法では、射出成形により形成したプリフォーム10から一次成形品20(20a~20c)を経て中間成形品30を形成し、この中間成形品30に最終ブロー(二次ブロー)を施すことで最終成形品である中空容器40を成形する。
【0023】
また、本実施形態に係るブロー成形方法は、射出成形後のプリフォーム10に残存する熱量を利用して、ブロー適温に調整したプリフォーム10にブローを施す、いわゆるホットパリソン式によるものである。ここでのプリフォーム10はポリエチレンテレフタラート(PET)からなるため、各種のブロー温度は、PETの結晶化温度や軟化点等に基づいて適宜調整される。ただし、プリフォーム10を構成する樹脂材料はPETに限定されず、PETを含む又はPETとは異なる他の樹脂材料であってもよい。
【0024】
また中間成形品30は、上述のように一次ブロー(本実施形態では、熱処理ブロー)によって形成される。当然ながら、中間成形品30の成形過程で得られる一次成形品20(
20a~20c)も一次ブローによって形成される。
【0025】
詳しくは、一次ブロー(熱処理ブロー)は、所定のブローステップと、所定の排気ステップと、を所定時間内に連続して複数回繰り返す薄肉化ステップを含んでいる。ブローステップでは、プリフォーム10や一次成形品20等の対象物の各部を延伸させる。排気ステップでは、ブローした気体(例えば、空気)の排気により、つまりブローした気体を対象物である一次成形品20から排出することにより、一次成形品20の延伸した各部を収縮させる。なお、本実施形態で言う各部とは、例えば、一次成形品20の肩部、胴部及び底部等である。
【0026】
一般的にホットパリソン式のブロー成形方法では、プリフォームの各部の延伸されやすさは、各部の肉厚によって決まる。すなわちプリフォームは、相対的に厚肉である部分(胴部等)ほど保有熱が高く延伸されやすい。言い換えれば、プリフォームは、相対的に薄肉である部分(底部等)ほど保有熱が相対的に低く延伸されづらい。このため、例えば、ホットパリソン式のブロー成形方法でプリフォームから中空容器を形成する場合、プリフォームの肉厚部分に対応する中空容器40の部位(胴部等)は比較的肉薄になり易く、プリフォーム薄肉部分に対応する中空容器40の部位(底部等)は比較的肉厚となり易い。
【0027】
しかしながら、上記のような薄肉化ステップを行うことで、繰り返されるブローステップのたびに、そのときの厚肉部分(特に底部)を延伸させることができる。従って、厚肉になりがちな中空容器40の底部を好適に薄肉化することができる。加えて、薄肉化ステップの全体を通じて各部の肉厚をバランスよく延伸させることができる。つまり、このような薄肉化ステップにより、最終成形品である中空容器40の偏肉度合の改善を図ることができる。言い換えれば、中空容器40の肉厚の均一化を図ることができる。
【0028】
本実施形態では、薄肉化ステップは、第1ブローステップ(第1ステップ)と、第1排気ステップ(第2ステップ)と、第2ブローステップ(第3ステップ)と、第2排気ステップ(第4ステップ)と、を少なくとも含んでいる。このように薄肉化ステップでは、ブローステップと、排気ステップとが、所定時間内に交互に実施されることになる。なお、これらのステップは、それぞれ、所定時間(例えば、2秒)以内で連続して実施される。
【0029】
また薄肉化ステップでは、第1ブローステップで形成される一次成形品20(20a)、第1排気ステップで形成される一次成形品20(20b)、第2ブローステップで形成される一次成形品20(20c)を経て、第2排気ステップにて中間成形品30が形成される。
【0030】
ところで、最終成形品である中空容器40は、飲料等の液体を充填可能な容器(いわゆるPETボトル)である。この中空容器40の胴部41には、最終ブローを行うときの最終ブロー成形型の形状に対応して、例えば周方向に亘って凹部42が形成されている(
図1参照)。また、中空容器40は、その底部43に容器内方へ凸状に突出する上底部44が形成されるとともに、その裾野に上底部44を周方向に取り囲む裾野部45(ヒール部)が形成されている(
図2参照)。
【0031】
また、中空容器40と同様に、プリフォーム10から中空容器40を形成する過程で得られる一次成形品20にも、その底部23に成形品の内方へ凸状に突出する上底部24が形成されるとともに、その裾野に上底部24を周方向に取り囲む裾野部(ヒール部)25が形成されている。また中間成形品30にも、その底部33に上底部34及び裾野部(ヒール部)35が形成されている。
【0032】
図3は、本実施形態に係るブロー成形装置100の概略構成を示す図である。
図3に示すように、ブロー成形装置100は、プリフォーム10、一次成形品20、中間成形品30及び中空容器40を順次間欠的に回転させて次工程に搬送するタイプの装置(間欠回転搬送式)であり、射出装置110が接続される射出成形部120、温調部130、ブロー成形部(中間成形部:一次ブロー成形部)140、最終成形部(二次ブロー成形部)150及び取出部160の5つのステーションを機台上に備えている。これらの5つのステーションの上方には図示しない回転盤(移送盤)が回転可能に設けられ、回転盤は成形品を保持し搬送するためのネック型(後述)を支持している。このうちブロー成形部(中間成形部)140を中心に、上記の薄肉化ステップが行われる。なお、ブロー成形部140と最終成形部150は機台にスライド可能に設置されており、回転盤に支持されたネック型に対して交互に移動させられる。
【0033】
図4及び
図5は、ブロー成形装置100の構成や動作、及び本実施形態に係るブロー成形方法を説明するための図である。
図4は、ブロー成形方法の全体の流れに対応した図であり、
図5は、ブロー成形方法に含まれる薄肉化ステップ(Stp)に対応した図である。
【0034】
射出成形部120は、射出装置110から射出されるPETによってプリフォームを射出成形する(
図4(a))。射出成形部120は、射出装置110に接続される射出成形型121を備えている。射出成形型121は、プリフォーム10の胴部の外面を規定する射出キャビティ型122と、プリフォーム10の内面を規定するコア型123と、を備えている。射出成形型121の上部には、成形品であるプリフォーム10のネック部の外壁面を規定する水平方向に開閉可能な割型からなるネック型124が設けられている。
【0035】
この射出成形部120では、原料であるPETを、射出キャビティ型122の底部中央に設けられたゲート125を介して射出キャビティ型122内に充填することで、プリフォーム10が形成される。射出成形されたプリフォーム10は、ネック型124に保持された状態で温調部130に搬送される。
【0036】
温調部130では、ブロー成形部(中間成形部)140におけるブロー成形前に、プリフォーム10の温度を調整する(温調工程:
図4(b))。温調部130は、例えばプリフォーム10を収容する温調ポット131を備えており、この温調ポット131により、射出成形後にプリフォーム10に残存する熱量を利用しながら、PETの延伸適正温度(例えば80~90℃程度)になるように温度調整を行う。所定の延伸適温に調整(加熱)されたプリフォーム10は、その後、ブロー成形部140に搬送される。
【0037】
ブロー成形部140は、その後の最終成形部150とともに、本実施形態に係る成形手段を構成する。ブロー成形部140は、一次ブロー(本実施形態では、熱処理ブロー)を行うための部分であり、プリフォーム10から一次成形品20を経て、中間成形品30を成形する(
図4(c)及び(d))。ブロー成形部140は、ブロー成形型141を備えており、ブロー成形型141は、開閉可能な一対のブロー成形割型142と、延伸ロッド143と、ブロー底型144と、を備えている。なお、本実施形態では、一次ブローとして熱処理ブローを行っているが、一次ブローは熱処理を伴わないブローであってもよい。
【0038】
延伸ロッド143は、プリフォーム10の口部12に嵌入されるブローコア145を通して縦軸方向(上下方向)に移動可能とされている。また、ブロー成形部140は、ブローコア145を介して空気(加圧気体)を供給する供給部(図示は省略)を備えている。
【0039】
ブロー成形部140では、一次ブロー型(熱処理ブロー型)であるブロー成形型141内に配置されたプリフォーム10の底部を延伸ロッド143により容器内方から押圧することで、プリフォーム10を縦軸方向に延伸させる。これとともに、供給部から空気を供
給して、PETの結晶化以上の温度(例えば180℃~200℃程度)に加熱されたブロー成形型141及びブロー底型144の内壁面に接触するまでプリフォーム10を径方向に延伸させる。
【0040】
これにより、中空容器40よりもサイズが大きい一次成形品20(20a)を成形する(第1ブローステップ:
図5(a))。このような第1ブローステップでは、PETの残留応力を緩和でき、その結晶化密度を向上させることができる。
【0041】
上記の通り、プリフォーム10の肉厚等に応じて各部の延伸されやすさが異なる。すなわち、プリフォーム10は、肉厚である部分ほど熱保有量が大きく、第1ブローステップにて延伸されやすい。このため、第1ブローステップによるプリフォーム10の延伸は、胴部が先行し、底部の延伸は遅れがちとなる。すなわち、第1ブローステップにおいては、プリフォーム10の胴部は比較的大きく延伸されるものの底部の延伸量は比較的少ない。したがって、第1ブローステップで形成される一次成形品20aは、胴部に比べて底部23が比較的厚肉となる。
【0042】
また本実施形態では、最終成形品である中空容器40の裾野部45から上底部44までの高さは、一次成形品20aの裾野部25から上底部24までの高さよりも低くなっている。つまり、一次成形品20aの方が、中空容器40よりも上げ底に形成されている。その結果、一次成形品20aの底部23(特に、上底部24)は一回のブロー処理(第1ブローステップ)のみでは延伸しきらず、胴部に比べて肉厚となり易い。
【0043】
またブロー成形部140は、第1ブローステップ後に、ブローコア145を介して、第1ブローステップでブローした空気を排気させ、一次成形品20aの延伸した各部を収縮させる(第1排気ステップ:
図5(b))。なお、排気は、ブローコア145上部の図示しない排気弁を開弁することで行うことができる。
【0044】
このときの収縮の程度は比較的大きく、一次成形品20aにおいて上底部24を周方向に取り囲む裾野部25が口部22側に引き上げられる量は、上底部24の延伸ロッド143が当接する部分が口部22側に引き上げられる量よりも大きくなる。これと同時に、裾野部25以外の各部も収縮する。これらの結果、一次成形品20aよりもサイズの小さい一次成形品20bが得られる(
図5(b))。また、この際、肉厚で熱保有量が大きい上底部24の樹脂が裾野部25の方向に引っ張られる形になる。そのため、上底部24において、延伸ロッド143が接触している中央領域と延伸ロッド143が接触していない周辺領域との肉厚差は小さくなる。なお、第1ブローステップにより高延伸された一次成形品20aの裾野部25や胴部の保有熱量は、上底部24よりも相対的に低くなる。
【0045】
ブロー成形部140は、第1排気ステップにかかる排気後に、引き続き一次成形品20bへの熱処理を施しながら、一次成形品20bの口部22よりブローコア145を介し、供給部から空気を供給する。これにより一次成形品20bの各部が延伸されて一次成形品20cが形成される(第2ブローステップ:
図5(c))。このとき、底部23(上底部24)が特に延伸される。底部23(上底部24)は、上記の第1ブローステップで延伸度合いが低く相対的に厚肉に維持されており、第2ブローステップの段階で他の部分よりも熱保有量が大きいからである。
【0046】
第2ブローステップによれば、ブロー成形型141内で底部23がさらに延伸し、これにより底部23の薄肉化が図られる。一次成形品20cの底部23の厚さd2は、一次成形品20aにおける底部23の厚さd1よりも薄くなる。
【0047】
なお、一次成形品20aの底部23の厚さd1および一次成形品20cの底部23の厚さd2は、延伸ロッド143と接触した上底部24の中央領域と裾野部25との間に位置し、延伸ロッド143と非接触である上底部24の外周領域の厚さを示している。また、底部23ほどではないにしろ底部23以外の各部(肩部や胴部等)も2回延伸されることで、各部の肉厚がバランスのとれた一次成形品20cが形成される。加えて、上記の第1ブローステップとともに、第2ブローステップによってもPETの残留応力が緩和され、その結晶化密度を向上させることができるので、最終的に得られる中空容器40の耐熱性の向上を図ることができる。
【0048】
ブロー成形部140は、第2ブローステップ後に、ブローコア145を介して第2ブローステップでブローした空気を排気させ、一次成形品20cの延伸した各部を収縮させる(第2排気ステップ:
図5(d))。これにより、中空容器40よりもサイズが小さい中間成形品30が形成される。また、中間成形品30は、一次成形品20bよりも若干大きいサイズに形成される。
【0049】
なお、第1ブローステップの後のステップ、つまり、第1排気ステップ、第2ブローステップ及び第2排気ステップにおいて、ブロー成形部140は、延伸ロッド143を縦軸方向へ押し下げた位置の状態に保持させておく。これにより、延伸ロッド143が一次成形品20の底部23及び中間成形品30の底部33の内壁面に当接した状態が維持される。よって、一次成形品20をブロー成形又は収縮させた際に、一次成形品20の中心軸に対する底部23の軸ずれ及び中間成形品30の中心軸に対する底部33の軸ずれを確実に防止できる。
【0050】
図5(d)では、中間成形品30(延伸ロッド143)の中心線L1と、凸状に突出する上底部34の中心線L2と、が略一致して表されている。両者の軸ずれを防止できることで、中空容器40の偏肉度合の改善をより図りやすくなる。
【0051】
薄肉化ステップにおいてブロー及び排気が連続して繰り返され、一次成形品20の厚肉である部分が薄肉化されて全体の偏肉度合が改善されていくにつれ、一次成形品20の各部の熱保有量も小さくなっていき、ブローや排気に応じた一次成形品20の延伸や収縮の程度が小さくなる。例えば、上記の第2ブローステップにおいて特に底部23の薄肉化が図られているため、第2排気ステップでの底部23の収縮度合いは、第1排気ステップでのそれよりも小さくなる。
【0052】
第2排気ステップにより得られる中間成形品30は、次の最終ブロー成形型151内に保持できるよう、中空容器40よりサイズが小さいことが必要である。それでいて、中間成形品30は、最終成形品である中空容器40のサイズに近いことが好ましい。これによれば、最終ブロー(二次ブロー)時に中間成形品30の延伸の程度を小さく抑えることができ、最終ブローにより成形された中空容器40に残留し得る応力を小さくすることができる。その結果、例えば、熱による変形を好適に抑制できる中空容器40となる。
【0053】
以上の通り、ブロー成形部140を中心に行われる薄肉化ステップを経て、プリフォーム10は最終成形品である中空容器40よりも若干小さい中間成形品30となる。中間成形品30は、ネック型124に保持された状態で最終成形部150に搬送される。
【0054】
最終成形部150は、先のブロー成形部140とともに、本実施形態に係る成形手段の一部を構成する。最終成形部150では、中間成形品30をブロー成形することにより中空容器40を成形する(最終成形工程:
図4(e))。最終成形部150は、最終ブロー成形型151を備えており、最終ブロー成形型151は、開閉可能な最終ブロー成形割型152と、最終ブロー底型153と、を備えている。
【0055】
最終ブロー成形割型152は、中空容器40の外形形状に沿った内壁面を有している。この内壁面には、中空容器40の凹部42に対応する位置に内側に突出する凸部154が設けられており、また、最終成形部150は、ブローコア型を介して空気(加圧気体)を供給する供給部を備えている。
【0056】
そして、最終ブロー成形型151内に配置された中間成形品30の内部に、供給部からブローコアを介して空気を供給し、所定温度(例えば100℃~120℃程度)に加熱された最終ブロー成形割型152の内壁面に接触するまで中間成形品30を縦軸方向及び径方向延伸され、その後、ブローエアの循環により冷却される。これにより中空容器40が成形される。中空容器40は、その後、取出部160に搬送され、取出部160から装置外に取り出される。
【0057】
以上説明したブロー成形方法及びブロー成形装置100によれば、ブロー成形部140における薄肉化ステップで、ブローステップと排気ステップとを所定時間内に連続して繰り返す。第1ブローステップでは、プリフォーム10の胴部を主に延伸させるため、一次成形品20aの底部23は、胴部に比べて厚肉のまま維持される。次の第1排気ステップでの収縮後も一次成形品20bの底部23が厚肉のまま維持される。これにより、次の第2ブローステップで、相対的に厚肉で熱保有量が大きい底部23が好適に延伸されて薄肉化され、一次成形品20cの底部23の肉厚が比較的均一化される。
【0058】
また、第2ブローステップにより、底部23ほどではないにしろ底部23以外の各部も再度延伸されることで、一次成形品20cは各部の肉厚のバランスがとれたものとなる。厚肉である部分が薄肉化されて全体の偏肉度合が改善されるにつれ、一次成形品20cの各部の熱保有量も小さくなるので、次の第2排気ステップに伴う一次成形品20cの大きな収縮も回避される。
【0059】
このように、ブロー成形方法及びブロー成形装置100によれば、上記の薄肉化ステップを行うので、中間成形品30の偏肉度合を改善できる。そして、この中間成形品30を最終ブローすることによって得られる中空容器40の偏肉度合も改善することができる。特に中空容器40の底部43の高延伸化と薄肉化を図ることができると共に、底部43の肉厚の均一化を図ることができる。また、成形工程での一次ブローとして熱処理ブローを実施することにより樹脂の結晶化を促進でき、得られる中空容器40の耐熱性の向上を図ることができる。
【0060】
本実施形態において、薄肉化ステップで断続的に行われるブロー・排気の各時間は、例えば、それぞれ2秒以内という短時間である。そのため、このようなブローや排気を繰り返すとしても、全体の製造時間が大幅に長くなることもない。ゆえに本実施形態は大量生産にも適しており、近年の中空容器の利用機会の益々の拡大に対し、優れた製造効率や容器品質の確保という期待にも応えることができる。
【0061】
これまで説明した薄肉化ステップにおける第1ブローステップを行う時間は、例えば、0.7秒~0.8秒である。第1ブローステップを行う時間は、プリフォーム10を延伸させる程度や、PET(一次成形品20a)に熱処理を施すのに十分な時間等に基づいて適宜調整可能である。
【0062】
薄肉化ステップにおける第1排気ステップを行う時間は、例えば、0.5秒~0.6秒程度である。第1排気ステップを行う時間は、ブローした空気を排気させるのに要する時間等に基づいて適宜調整可能である。かかる時間は、次の第2ブローステップにおいて一次成形品20bの底部23の薄肉化を好適に図る観点からは、短くされる方が好ましい。目安としては、第1排気ステップを、例えば後の第2排気ステップよりも短時間で行うの
がよい。
【0063】
第2ブローステップを行う時間は、例えば、1.2秒~1.3秒程度である。第2ブローステップを行う時間は、プリフォーム10の各部を延伸させる程度や、PET(一次成形品20b)に熱処理を施すのに十分な時間等に基づいて適宜調整可能である。
【0064】
第2排気ステップを行う時間は、例えば、0.9秒~1.1秒程度である。第2排気ステップを行う時間は、同じ排気ステップでも第1排気ステップよりも長い。第2排気ステップを行う時間が、比較的長く確保されることで、第2排気ステップに伴う収縮の程度をできるだけ小さく抑えることができる。
【0065】
ちなみに、これらのステップを行う時間は、中空容器40や中間成形品30のサイズから逆算して調整できる。上記の通り、一次ブロー成形(薄肉化ステップ)により得られる中間成形品30は、最終成形品である中空容器40のサイズに近いことが好ましい。このため、ブローステップに伴う一次成形品20等の各部の延伸の程度や、排気ステップに伴う一次成形品20の各部の収縮の程度を考慮し、中空容器40のサイズに近い中間成形品30が得られるよう、これらのステップを行う時間を調整する。
【0066】
ブロー成形方法及びブロー成形装置100は、ホットパリソン式を採用している。ホットパリソン式のブロー成形方法では、一次ブロー(熱処理ブロー)を実施する前にプリフォームが温度調整されるが(温調工程)、偏温除去と均温化が優先される場合、プリフォームの底部領域に好適な温度分布を付与できない場合が多く、従来、中空容器の底部の薄肉化が一般に困難とされる場合が多い。これに対し、本実施形態によれば、そのようなホットパリソン式のブロー成形方法を採用しても、中空容器40の底部43の延伸度合を高めて薄肉化でき、偏肉度合の改善を図ることができる。これにより、中空容器40の胴部と底部の肉厚さを低減させて略等しい厚さにすることができ、中空容器40の耐熱性や剛性の向上、軽量化を図ることが可能になる。また、中空容器40の底部43の延伸度合が高められる結果、落下に対する底部43のワレ耐性(落下耐性)も向上できる。
【0067】
本実施形態に係るブロー成形方法及びブロー成形装置100は、ホットパリソン式に限定されず、コールドパリソン式であっても好適に実施可能である。更に、薄肉化ステップは、熱処理ブロー時に限られず、最終ブロー時に実行することもできる。
【0068】
(実施形態2)
本実施形態に係るブロー成形方法及びブロー成形装置は、基本的には実施形態1と同じ構造であるものの、ブロー成形部の構成が異なる。以下、異なる部分を中心に説明する。
【0069】
図6は、本実施形態に係るブロー成形装置100Aの概略構成を示す図である。
図6に示すように、ブロー成形装置100Aは、回転搬送式の装置であり、射出成形部120、温調部130、ブロー成形部170及び取出部160が、搬送機構の周囲に、搬送方向に沿ってそれぞれ配置されている。射出成形部120、温調部130及び取出部160については、実施形態1で説明した通りである。ブロー成形部170は、実施形態1で説明したブロー成形部140及び最終成形部150を兼ねるステーションである。
【0070】
図7は、ブロー成形装置100Aの構成や動作、及び本実施形態に係るブロー成形方法を説明するための図である。なお図中のStpで表される工程は、実施形態1で説明した薄肉化ステップに相当する。
【0071】
ブロー成形部170は、ブロー成形型171を備えている。ブロー成形型171は、開閉可能なブロー成形割型172と、延伸ロッド173と、ブロー底型174と、を備えて
いる。またブロー成形割型172の内壁面には、中空容器40の凹部42に対応する凸部175が設けられている。延伸ロッド173は、プリフォーム10の口部12に嵌入されるブローコア176を通して縦軸方向移動可能とされている。また、ブロー成形部140は、ブローコア176を介して空気(加圧気体)を供給する供給部を備えている。
【0072】
そして、本実施形態に係るブロー成形方法及びブロー成形装置100Aでは、射出成形部120でプリフォーム10を射出成形し、温調部130でプリフォーム10が加熱されると、プリフォーム10は、ブロー成形部170に搬送されて、ブロー成形型171内に配置される。
【0073】
ブロー成形部170では、まず、ブロー成形型171内に配置されたプリフォーム10を延伸ロッド173により縦軸方向に延伸させる(
図7(c))。そして、供給部から供給される空気により、所定温度に設定されたブロー成形型171の内壁面に接触するまで径方向に延伸させる(一次ブロー)。これにより、中空容器40と同一のサイズの一次成形品20を成形する(第1ブローステップ:
図7(c))。なおブロー成形型171(ブロー成形割型172及びブロー底型174)は、PETの結晶化以上の温度(例えば、80℃~100℃程度)に設定されるのが望ましいが、常温(例えば、20℃程度)に設定されていても構わない。
【0074】
その後、ブロー成形型171を利用して、実施形態1で説明した第1排気ステップ、第2ブローステップ及び第2排気ステップにより、所定時間内に排気、ブロー及び排気がそれぞれ断続的に行われる。第2排気ステップによる排気によって一次成形品20の各部が収縮し、最終成形品である中空容器40よりも若干小さいサイズの中間成形品30が形成される(
図7(d))。
【0075】
そして、このブロー成形型171内で中間成形品30をさらにブロー成形することで、中空容器40を形成する(
図7(e))。本実施形態では、最終ブロー時、中間成形品30内に延伸ロッド173が挿入された状態を保持しているが、延伸ロッド173を抜き取ることもできる。その後は、実施形態1と同様、中空容器40が取出部160に搬送され、この取出部160から装置外に取り出される。
【0076】
以上説明した本実施形態によれば、実施形態1と同様、偏肉度合を改善でき、特に底部の薄肉化を図ることができる。また、ブロー成形型171やブロー底型174の温度を実施形態1の温度よりも低いが樹脂の結晶化の温度以上に設定すれば、得られる中空容器40の耐熱性の向上を図ることもできる。さらに、中空容器40の底部43の延伸度合が高められる結果、落下に対する底部43のワレ耐性(落下耐性)も向上できる。
【0077】
更に、本実施形態によれば、一つのブロー成形型171内で、一次ブローによる成形(薄肉化ステップによる偏肉度合の改善)と、最終ブローによる成形(中空容器40への最終的な賦形)と、を実施する点で、中空容器40の製造に用いる装置の簡略化を図ることができる。従って、本実施形態は、実施形態1と同様、大量生産にも適しており、近年の中空容器の利用機会の益々の拡大に対し、優れた製造効率や容器品質の確保という期待にも応えることができる。
【0078】
(実施形態3)
本実施形態に係るブロー成形方法及びブロー成形装置は、コールドパリソン式を採用している点が実施形態1と異なる。以下、異なる部分を中心に説明する。
【0079】
図8は、本実施形態に係るブロー成形装置100Bの概略構成を示す図である。
【0080】
本実施形態では、射出成形した後に室温まで冷却させたプリフォームを別途準備し、それをブロー適温までヒータ等で加熱した上でプリフォームにブローを施して延伸させる。従って、本実施形態に係るブロー成形方法では、実施形態1で説明したようなプリフォームを射出成形する工程を実施しない。
【0081】
図8に示すように、本実施形態に係るブロー成形装置100Bは、温調部(加熱部)130と、ブロー成形部140と、最終成形部150と、取出部160と、を備えているが、実施形態1で説明したような射出成形部120を具備していない。
【0082】
温調部(加熱部)130は、プリフォーム10の縦軸方向に所定間隔で配置される複数本の棒状ヒータを備え、別途準備した常温のプリフォームを加熱して、ブロー成形に適した温度に調整する(温調工程/加熱工程)。その後、実施形態1と同様に、ブロー成形部140を中心に薄肉化ステップを行い、最終ブローを経て、最終成形品である中空容器40を得る。
【0083】
以上説明した本実施形態によれば、コールドパリソン式であっても、実施形態1と同様に薄肉化ステップを行うので、中空容器40の偏肉度合を改善でき、特に底部の薄肉化を図ることができる。また、ブロー成形部140での一次ブローとして熱処理ブローを実施することにより樹脂の結晶化を促進でき、得られる中空容器40の耐熱性の向上を図ることもできる。
【0084】
加えて、本実施形態に係るブロー成形装置100Bは、実施形態1と同様、大量生産にも適しており、近年の中空容器の利用機会の益々の拡大に対し、優れた製造効率や容器品質の確保という期待にも応えることができる。
【0085】
(他の実施形態)
以上、本実施形態に係るブロー成形方法及びブロー成形装置の一態様について説明したが、本発明は上記の実施形態1~3の何れかに限定されない。また上記の実施形態1~3は、本発明の範囲内で互いに組み合わせることが可能である。
【0086】
例えば、上述の実施形態に係るブロー成形方法及びブロー成形装置によって形成される中空容器の形状は、特に限定されるものではない。
【0087】
図9及び
図10は、ブロー成形によって形成された中空容器の他の例を示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は底面図であり、(c)は底部の断面図である。上述の実施形態では、中空容器40の胴部41が、減圧吸収パネル部として機能する形状に形成されているが、例えば、
図9、
図10に示すように、中空容器40は、その底部43が減圧吸収パネル部として機能するように形成されていてもよい。なお減圧吸収パネル部とは、他の部分に比べて変形し易い形状に形成されており、高温状態の内容物が充填されて蓋で封止された後に中空容器40が冷却される際、内部の減圧に伴い変形する部分である。なお、
図9、
図10の中空容器40、高温状態の内容物を充填する前の状態、すなわち減圧による変形が生じていない状態である。
【0088】
図9及び
図10に示す中空容器40の底部43は、上底部44及び裾野部(ヒール部)45で構成されており、この上底部44が減圧吸収パネル部として機能する。また上底部44は、傾斜部44aと中間壁部44bと凹状部44cとを備えている。傾斜部44aは、裾野部45の縦壁部45aから連続して中空容器40の外部側(下側)に傾斜して設けられる。中間壁部44bは接地面に対し略平行面で、傾斜部44aの内側と凹状部44cの外側を接続するように設けられる。凹状部44cは、中間壁部44bの内側に連続して設けられ、中空容器40の内部側(上側)に凹状に形成されている。
【0089】
さらに上底部44の外周部の傾斜部44aには、中空容器40の外部側(下側)に突出する複数のリブ46が形成されている。これらのリブ46は、中空容器40の周方向に亘って断続的に複数形成され、さらに、中空容器40の径方向で少なくとも二列以上に配置されている。各リブ46は、平面視において略長円状に形成されている。またリブ46の長さは、中空容器40の径方向の外側に配置されるものほど長くなっている。さらにリブ46の横断面の形状は、中空容器40の外部側(下側)に対して湾曲的に突出した円弧状になっている。勿論、各リブ46の形状は特に限定されるものではない。
【0090】
このように中空容器40の底部43に、減圧吸収パネル部として機能する上底部44を設けると共に、上底部44の傾斜部44aに複数のリブ46を設けることで、上底部44の美的外観の低下を抑制することができる。
【0091】
ここで、一般的に、中空容器の各部の肉厚を高精度に調整することは難しい。例えば、上底部の肉厚を均一にするのは難しい。このため、上底部の傾斜部にリブが設けられていない従来の中空容器では、内部の減圧に伴い上底部が変形する際、上底部は、変形しやすい部分と変形し難い部分との境に筋が発生し、また、上底部の全体が凹凸状になってしまう虞がある。それに伴い、中空容器の美的外観が著しく悪くなり、商品価値が低下してしまう虞がある。
【0092】
しかしながら、上述のように中空容器40の傾斜部44aに複数のリブ46を設けることで、上記筋の発生を抑制することができ、また筋が発生しても複数のリブ46の間に形成されるため見えづらくなる。またリブ46の装飾効果により、減圧吸収パネル部として機能する上底部44全体の凹凸状態も識別しづらくなる。
【0093】
よって、減圧吸収後の上底部44の表面の美的外観の低下、つまり中空容器40の商品価値の低下を抑制でき、それに伴い、消費者の購買意欲の低下も抑制することができる。
【0094】
また上述の実施形態では、一次ブロー時に薄肉化ステップを行う態様について説明したが、最終ブロー(二次ブロー)時に薄肉化ステップを行うことも可能である。最終ブロー時に薄肉化ステップを行う場合、熱処理されて高温の中間成形品に対して薄肉化ステップを行うこととなる。これによっても、底部の薄肉化を図ることができ、各部の偏肉度合の改善を図ることができる。また一次ブロー時及び最終ブロー時の両方で、薄肉化ステップを行うこともできる。
【0095】
さらに、上述の実施形態では、プリフォーム10を構成する樹脂材料がPETであり、また、最終成形品である中空容器がいわゆるPETボトルである例を説明したが、樹脂材料はPETに制限されない。選択される樹脂材料(例えばポリエチレン(PP)やポリエチレン(PE))に応じて、薄肉化ステップの温度や時間等を調整することが可能である。
【0096】
上記の実施形態では、第1ブローステップ、第1排気ステップ、第2ブローステップ及び第2排気ステップからなる薄肉化ステップを説明したが、薄肉化ステップは、これ以降に更なるブローステップや排気ステップを含んでいてもよい。第2排気ステップ以降のブローステップ(例えば、第3ブローステップ(第5ステップ)、第4排気ステップ(第7ステップ)・・・)は、第1ブローステップや第2ブローステップと同様の要領で行うことができ、第2排気ステップ以降の排気ステップ(例えば、第3排気ステップ(第6ステップ)、第4排気ステップ(第8ステップ)・・・)は、第1排気ステップや第2排気ステップと同様の要領で行うことができる。
【0097】
また、実施形態1と実施形態2の装置は、間欠回転搬送式の代わりに、中間成形品及び中空容器を直線ライン上に順次搬送するリニア搬送式の構成であってもよい。
【0098】
以上、本発明によれば、中空容器の各部の偏肉度合の改善を図ることができるブロー成形方法及びブロー成形装置を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、ブロー成形方法及びブロー成形装置に関する産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0100】
10 プリフォーム、12 口部、20 一次成形品、22 口部、23 底部、24 上底部、25 裾野部(ヒール部)、30 中間成形品、 33 底部、 34 上底部、35 裾野部(ヒール部)、40 中空容器、41 胴部、42 凹部、43 底部、44 上底部、44a 傾斜部、44b 中間壁部、44c 凹状部、45 裾野部(ヒール部)、46 リブ、100 ブロー成形装置、100A ブロー成形装置、100B ブロー成形装置、110 射出装置、120 射出成形部、121 射出成形型、122 射出キャビティ型、123 コア型、124 ネック型、125 ゲート、130 温調部、131 温調ポット、140 ブロー成形部(中間成形部)、141 ブロー成形型、142 ブロー成形割型、143 延伸ロッド、 144 ブロー底型、145 ブローコア、150 最終成形部、151 最終ブロー成形型、152 最終ブロー成形割型、153 最終ブロー底型、154 凸部、160 取出部、170 ブロー成形部、 171 ブロー成形型、172 ブロー成形割型、173 延伸ロッド、174 ブロー底型、175 凸部、176 ブローコア
【手続補正書】
【提出日】2022-10-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料によって形成されている中空容器であって、
内部空間を区画する胴部と、
前記内部空間に高温状態の内容物が充填された後に封止された前記中空容器が冷却される際に前記内部空間に生じる減圧に伴い変形可能な底部を備えており、
前記底部は、
上方に突出する上底部と、
前記上底部と前記胴部の間に位置し、接地面を有する裾野部と、
を含んでおり、
前記裾野部は、前記接地面から上方に延びる縦壁部を有しており、
前記上底部は、
凹状部と、
前記凹状部と前記縦壁部の間に位置する傾斜部と、
前記凹状部と前記傾斜部の間に位置する中間壁部と、
を含んでおり、
前記減圧に伴う変形が生じていない状態において、
前記傾斜部は、前記縦壁部の上端から前記中間壁部へ向かって下方に傾斜しており、
前記中間壁部は、前記接地面と略平行に延びており、
前記凹状部は、上方へ凹んでおり、
前記中空容器の周方向に沿って延びる複数のリブが前記傾斜部に形成されている、
中空容器。
【請求項2】
前記複数のリブは、前記中空容器の径方向に沿って並ぶように形成されており、
前記径方向における外側に位置する前記複数のリブの一つの前記周方向に沿う長さ寸法は、前記径方向における内側に位置する前記複数のリブの一つの前記周方向に沿う長さ寸法よりも長い、
請求項1に記載の中空容器。
【請求項3】
前記複数のリブは、下方に向かって突出している、
請求項1または2に記載の中空容器。
【請求項4】
前記中空容器の周方向に沿って延びる凹部が前記胴部に形成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の中空容器。
【請求項5】
前記樹脂材料は、ポリエチレンテレフタレートである、
請求項1から4のいずれか一項に記載の中空容器。