(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180543
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】酸性αグルコシダーゼ変異体及びその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20221129BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20221129BHJP
C12N 15/864 20060101ALI20221129BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20221129BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20221129BHJP
C12N 15/67 20060101ALI20221129BHJP
C12N 9/24 20060101ALI20221129BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20221129BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20221129BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20221129BHJP
A61K 38/47 20060101ALI20221129BHJP
A61K 35/407 20150101ALI20221129BHJP
A61K 35/34 20150101ALI20221129BHJP
C12N 15/35 20060101ALN20221129BHJP
C12N 5/077 20100101ALN20221129BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/867 Z
C12N15/864 100Z
C07K19/00
C12N5/10
C12N15/67 Z
C12N9/24
A61P3/00
A61K48/00
A61K35/76
A61K38/47
A61K35/407
A61K35/34
C12N15/35
C12N5/077
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022151296
(22)【出願日】2022-09-22
(62)【分割の表示】P 2019513381の分割
【原出願日】2017-09-12
(31)【優先権主張番号】16306149.2
(32)【優先日】2016-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】503197304
【氏名又は名称】ジェネトン
(71)【出願人】
【識別番号】518059934
【氏名又は名称】ソルボンヌ・ユニヴェルシテ
【氏名又は名称原語表記】SORBONNE UNIVERSITE
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ミンゴッツィ,フェデリコ
(72)【発明者】
【氏名】ロンジッティ,ジュゼッペ
(72)【発明者】
【氏名】コレッラ,パスクアリーナ
(72)【発明者】
【氏名】プッツォ,フランチェスコ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】異種シグナルペプチドに連結されている、酸性αグルコシダーゼ(GAA)変異体及びその使用法を提供する。
【解決手段】シグナルペプチド部分と機能的酸性αグルコシダーゼ(GAA)部分、特に親GAAの切断形に相当するGAA部分とを含む、機能的キメラGAAタンパク質をコードしている核酸分子であって、該シグナルペプチド部分は、特定の配列からなる群より選択されたアミノ酸配列を有する、該核酸分子を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シグナルペプチド部分と機能的GAA部分、特に親GAAの切断形に相当するGAA部分とを含む、機能的キメラGAAタンパク質をコードしている核酸分子であって、該シグナルペプチド部分は、配列番号2~4からなる群より選択されたアミノ酸配列、好ましくは配列番号2を有する、該核酸分子。
【請求項2】
該GAA部分は、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において1~75連続アミノ酸がトランケートされ、該GAA部分は、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において特に6、7、8、9、10、40、41、42、43、44、45、又は46連続アミノ酸がトランケートされ、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において特に8、42、又は43連続アミノ酸がトランケートされている、請求項1記載の核酸分子。
【請求項3】
該GAA部分は、親GAAと比較してそのN末端において8連続アミノ酸がトランケートされている、請求項1~2のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項4】
該親GAAが、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示されるヒトGAAポリペプチドである、請求項1~3のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項5】
インビボにおけるキメラGAAの発現を改善するために及び/又はキメラGAAに対する免疫寛容を改善するために最適化されたヌクレオチド配列、特に配列番号13又は14に示されたヌクレオチド配列である、請求項1~4のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項6】
以下の配列:
【表5】
の組合せから得られたヌクレオチド配列を含む、請求項1~5のいずれか一項記載の核酸分子。
【請求項7】
好ましくはα-1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、トランスサイレチンプロモーター、アルブミンプロモーター、及びチロキシン結合性グロブリン(TBG)プロモーターからなる群より選択された肝特異的プロモーターなどのプロモーターに作動可能に連結させた請求項1~6のいずれか一項記載の核酸分子を含む発現カセットである、該核酸分子を含む核酸構築物であって、該核酸構築物は場合によりさらに、イントロン、特に、ヒトβグロビンb2(すなわちHBB2)イントロン、FIXイントロン、ニワトリβ-グロビンイントロン、及びSV40イントロンからなる群より選択されるイントロンを含み、該イントロンは、場合により改変されたイントロン、例えば、配列番号7の改変されたHBB2イントロン、配列番号9の改変されたFIXイントロン、又は配列番号11の改変されたニワトリβ-グロビンイントロンである、該核酸構築物。
【請求項8】
好ましくは、エンハンサー;イントロン;プロモーター、特に、肝特異的プロモーター;キメラGAAポリペプチドをコードしている核酸配列;及びポリアデニル化シグナルをこの順序で含む、請求項7記載の核酸構築物、該構築物は、好ましくは、ApoE制御領域;HBB2イントロン、特に、改変されたHBB2イントロン;hAATプロモーター;キメラGAAポリペプチドをコードしている核酸配列;及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルをこの順序で含み、該核酸構築物はより特定すると、配列番号20、21、若しくは22のヌクレオチド配列、又は請求項6に示される組合せのいずれか1つから得られたヌクレオチド配列を含む該核酸構築物。
【請求項9】
ウイルスベクター、好ましくはレトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクター、又はAAVベクター、例えば一本鎖若しくは二本鎖の自己相補性AAVベクター、好ましくはAAVに由来するキャプシド、例えばAAV1、AAV2、変異AAV2、AAV3、変異AAV3、AAV3B、変異AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、変異AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、例えばAAVcy10、及びAAVrh10、AAVrh74、AAVdj、AAV-Anc80、AAV-LK03、AAV2i8、及びブタAAV、例えばAAVpo4及びAAVpo6キャプシド、又はキメラキャプシドを有するAAVベクターである、請求項1~8のいずれか一項記載の核酸分子又は核酸構築物を含むベクターであって、該AAVベクターはより特定すると、AAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8キャプシド、特にAAV8、AAV9、又はAAVrh74キャプシド、より特定するとAAV8キャプシドを有する、該ベクター。
【請求項10】
細胞が、特に肝細胞又は筋肉細胞である、請求項1~6のいずれか一項の核酸分子を用いて形質転換された細胞、請求項7~8のいずれか一項の核酸構築物、又は請求項9のベクター。
【請求項11】
シグナルペプチド部分と機能的GAA部分とを含む、キメラGAAポリペプチドであって、該シグナルペプチド部分は、配列番号2~4からなる群より選択され、特にGAA部分は、親GAAポリペプチドの切断形、例えば親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において1~75連続アミノ酸を欠失した、特に親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において6、7、8、9、10、20、27、28、29、30、31、41、42、43、44、45又は45、より特定すると6、7、8、9、10、20、41、42、43、又は44連続アミノ酸を欠失したGAA部分であり、該GAA部分は、特に配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5のヒトGAAタンパク質の切断形である、該キメラGAAポリペプチド。
【請求項12】
該GAA部分は、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において8、29、42、又は43連続アミノ酸がトランケートされ、より特定すると親GAAポリペプチドと比較して、特に配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5のヒトGAAタンパク質と比較して、そのN末端において、8又は42、特に8連続アミノ酸がトランケートされた、請求項11記載のキメラGAAポリペプチド。
【請求項13】
以下の配列:
【表6】
の組合せから得られたアミノ酸配列を含む、請求項11又は12記載のキメラGAAポリペプチド。
【請求項14】
薬学的に許容される担体中に、請求項1~6のいずれか一項の核酸配列、請求項7~8のいずれか一項の核酸構築物、請求項9のベクター、請求項10記載の細胞、又は請求項11~13のいずれか一項記載のキメラポリペプチドを含む、医薬組成物。
【請求項15】
医薬品としての使用のための、請求項1~6のいずれか一項の核酸配列、請求項7~8のいずれか一項の核酸構築物、請求項9のベクター、請求項10記載の細胞、又は請求項11~13のいずれか一項記載のキメラポリペプチド。
【請求項16】
糖原病、例えば糖原病I型、例えばフォン・ギールケ病、糖原病II型、例えばポンペ病、糖原病III型、例えばコーリ病、糖原病IV型、糖原病V型、糖原病VI型、糖原病VII型、糖原病VIII型、及び心臓の致死性先天性糖原病、より特定すると糖原病I型、糖原病II型、又は糖原病III型、さらにより特定すると糖原病II型及び糖原病III型、最も特定すると糖原病II型を処置するための方法に使用するための、請求項1~6のいずれか一項の核酸配列、請求項7~8のいずれか一項の核酸構築物、請求項9のベクター、請求項10記載の細胞、又は請求項11~13のいずれか一項記載のキメラポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性αグルコシダーゼ(GAA)変異体及びその使用に関する。該変異体は、異種シグナルペプチドに連結されている。
【0002】
糖原病(GSD)II型及び酸性マルターゼ欠損症としても知られるポンペ病は、リソソーム酵素の酸性αグルコシダーゼ(GAA)の欠損症によって引き起こされる常染色体劣性代謝性筋疾患である。GAAは、リソソーム内でグリコーゲンをグルコースに加水分解するエキソ-1,4及び1,6-α-グルコシダーゼである。GAAの欠損によりリソソーム内にグリコーゲンが蓄積され、呼吸筋、心筋及び骨格筋への進行的な傷害が引き起こされる。該疾患は、通常は1~2歳までに致命的となる急速に進行する乳児型の経過から、小児及び成人におけるかなりの罹患率及び早期死亡率を引き起こすことにより緩徐に進行する異質な経過まで多岐にわたる。Hirschhorn RR, The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease, 3: 3389-3420 (2001, McGraw-Hill); Van der Ploeg and Reuser, Lancet 372: 1342-1351 (2008)。
【0003】
ポンペ病を処置するためのヒトにおける現在の治療法は、別名酵素補充療法(ERT)と呼ばれる組換えヒトGAAの投与を含む。ERTは、重度の乳児型糖原病II型に対して有効性を実証した。しかしながら、酵素療法の利点は、頻繁な注入の必要性及び組換えhGAAに対する阻害抗体の発生によって制限される(Amalfitano, A., et al. (2001) Genet. In Med. 3:132-138)。さらに、ERTは全身を効果的に修復しない。これはおそらく、末梢静脈から送達後のタンパク質の不十分な体内分布、いくつかの組織からの取り込みがなされないこと、及び高い免疫原性の組合せのためである。
【0004】
ERTの代わりの又は補助としての、糖原病II型を処置するための遺伝子療法アプローチの実現可能性が研究されている(Amalfitano, A., et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:8861-8866, Ding, E., et al. (2002) Mol. Ther. 5:436-446, Fraites, T. J., et al. (2002) Mol. Ther. 5:571-578, Tsujino, S., et al. (1998) Hum. Gene Ther. 9:1609-1616)。しかしながら、遺伝子異常を修復するための筋肉に指向された遺伝子導入は、疾患が全身性であることの限界、及び、導入遺伝子の筋肉における発現が他の組織と比べてより免疫原性が高くなる傾向があるという事実に直面しなければならない。
【0005】
Doerfler et al., 2016は、ヒトコドン最適化GAAをコードしている2つの構築物(一方は、肝特異的プロモーターの制御下にあり、他方は筋肉特異的プロモーターの制御下にある)の組合せ投与を記載している。肝臓特異的プロモーターにより駆動されるGAAの発現が、Gaa-/-マウスモデルにおいてGAAに対する免疫寛容を促進するために使用され、一方、筋肉特異的プロモーターにより駆動されるGAAの発現が、療法のために標的化された組織の部分における治療用タンパク質の発現を提供する。しかしながら、この戦略は、複数の構築物の使用を必要とし、これによりGAAが全身に発現されるわけではないという点で、全く申し分がないわけではない。
【0006】
リソソーム蓄積症の処置を改善するために、過去に、改変されたGAAタンパク質が提案されている。特に、国際公開公報第2004064750号の出願及びSun et al. 2006は、分泌経路へのタンパク質の標的化を増強するための方法として、GAAに作動可能に連結させたシグナルペプチドを含む、キメラGAAポリペプチドを開示している。
【0007】
しかしながら、患者に利用可能な治療法は全く申し分がないわけではなく、改善されたGAAポリペプチド及びGAAの生成は依然として当技術分野において必要である。特に、GAAによる長期の処置効力、高いレベルのGAA生成、生成されたGAAポリペプチドに対する改善された免疫寛容、並びにそれを必要とする細胞及び組織によるGAAの取り込みの改善の必要性が依然としてある。さらに、国際公開公報第2004064750号及びSun et al. 2006では、そこに開示されたキメラGAAポリペプチドの組織分布は全く申し分がないわけではない。それ故、関心対象の全ての組織ではなくても大半の組織におけるグリコーゲン蓄積の修復を可能とすることによって、完全に治療するであろうGAAポリペプチドが依然として必要である。
【0008】
発明の要約
本発明は、野生型GAAタンパク質と比較して高いレベルで発現及び分泌され、全身におけるグリコーゲンの病的蓄積の改善された修復を惹起し、これによりGAAに対する免疫寛容を誘導する、GAA変異体に関する。
【0009】
1つの態様によると、本発明は、シグナルペプチド部分と機能的GAA部分とを含む、機能的キメラGAAポリペプチドをコードしている核酸分子を提供する。コードされているキメラGAAポリペプチドでは、GAAポリペプチドの内因性(すなわち天然)シグナルペプチドは、別のタンパク質のシグナルペプチドで置換されている。それ故、核酸分子は、GAAポリペプチドに作動可能に連結された、GAA以外の別のタンパク質に由来するシグナルペプチドを含む、キメラGAAポリペプチドをコードしている。コードされているキメラポリペプチドは機能的GAAタンパク質であり、ここでのGAAの天然シグナルペプチドに対応する(例えば、ヒトGAAをコードしている野生型核酸である配列番号1のヌクレオチド1~81に対応する)アミノ酸配列は、異なるタンパク質のアミノ酸配列によって置換されている。好ましい実施態様では、コードされているシグナルペプチドは、配列番号2~4からなる群より選択されたアミノ酸配列を有する。特定の実施態様では、GAA部分は、親GAAポリペプチドのN末端切断形である。
【0010】
特定の実施態様では、GAA部分は、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において1~75連続アミノ酸を欠失し、ここでの親ポリペプチドは、そのシグナルペプチドの欠けた前駆体形のGAAポリペプチドに相当する。特定の実施態様では、トランケートされた該GAAポリペプチドは、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において少なくとも2、特に少なくとも2、特に少なくとも3、特に少なくとも4、特に少なくとも5、特に少なくとも6、特に少なくとも7、特に少なくとも8連続アミノ酸が欠失している。別の実施態様では、トランケートされた該GAAポリペプチドは、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において最大75、特に最大70、特に最大60、特に最大55、特に最大50、特に最大47、特に最大46、特に最大45、特に最大44、特に最大43連続アミノ酸を欠失している。さらなる特定の実施態様では、トランケートされた該GAAポリペプチドは、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において最大47、特に最大46、特に最大45、特に最大44、特に最大43連続アミノ酸を欠失している。別の特定の実施態様では、トランケートされた該GAAポリペプチドは、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において1~75、特に1~47、特に1~46、特に1~45、特に1~44、特に1~43連続アミノ酸を欠失している。別の実施態様では、トランケートされた該GAAポリペプチドは、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において2~43、特に3~43、特に4~43、特に5~43、特に6~43、特に7~43、特に8~43連続アミノ酸を欠失している。より特定した実施態様では、トランケートされた該GAAポリペプチドは、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において6、7、8、9、10、27、28、29、30、31、40、41、42、43、44、45、46、又は47連続アミノ酸を欠失し、特に親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において7、8、9、28、29、30、41、42、43、又は44、より特定すると8、29、42、又は43連続アミノ酸がトランケートされている。例示的な親GAAポリペプチドは、配列番号5又は配列番号36に示されるヒトGAAポリペプチドによって示される。
【0011】
別の特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、インビボにおけるキメラGAAの発現を改善するために及び/又はキメラGAAに対する免疫寛容を改善するために最適化されたヌクレオチド配列である。
【0012】
特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、以下の表1、表1’、又は表1’’、特に表1’又は表1’’に示される部分を含むキメラGAAポリペプチドをコードしている。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
例えば、このような核酸分子は、表2、表2’、又は表2’’に示される以下の組合せの結果であり得る。
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
さらに別の態様では、本発明は、プロモーター、イントロン、ポリアデニル化シグナル及び/又はエンハンサー(例えばシス調節モジュール、すなわちCRM)などの1つ以上の調節配列に作動可能に連結させた本発明の核酸分子を含む、核酸構築物に関する。特定の実施態様では、該プロモーターは、好ましくはα-1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、トランスサイレチンプロモーター、アルブミンプロモーター、及びチロキシン結合性グロブリン(TBG)プロモーターからなる群より選択された肝特異的プロモーターである。別の特定の実施態様では、該プロモーターは筋肉特異的プロモーター、例えばSpc5-12、MCK及びデスミンプロモーターである。別の実施態様では、該プロモーターは、偏在性プロモーター、例えばCMV、CAG及びPGKプロモーターである。該核酸構築物はさらに場合により、イントロン、特にヒトβグロビンb2(すなわちHBB2)イントロン、FIXイントロン、ニワトリβ-グロビンイントロン、及びSV40イントロンからなる群より選択されたイントロンを含み、ここでの該イントロンは、場合により改変されたイントロン、例えば配列番号7の改変されたHBB2イントロン、配列番号9の改変されたFIXイントロン、又は配列番号11の改変されたニワトリβ-グロビンイントロンである。
【0021】
別の特定の実施態様では、該核酸構築物は、エンハンサー;イントロン;プロモーター、特に肝特異的プロモーター;キメラGAAポリペプチドをコードしている核酸配列;及びポリアデニル化シグナルを好ましくはこの順序で含み、該構築物は、ApoE制御領域;HBB2イントロン、特に改変されたHBB2イントロン;hAATプロモーター;キメラGAAポリペプチドをコードしている核酸配列;及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを好ましくはこの順序で含む。具体的な実施態様では、該核酸構築物は、表2、表2’、又は表2’’、特に表2’又は2’’に示される配列の組合せからなる群より選択されたヌクレオチド配列、より特定すると配列番号17(配列番号26と配列番号32の融合物に相当する)、18(配列番号27と配列番号32の融合物に相当する)、又は19(配列番号28と配列番号32の融合物に相当する)のヌクレオチド配列を含む。
【0022】
別の態様によると、本発明は、本発明に記載の核酸分子又は核酸構築物を含むベクターに関する。特定の実施態様では、該ベクターは、ウイルスベクター、好ましくはレトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクター、又はAAVベクターである。
【0023】
別の実施態様によると、該ウイルスベクターは、一本鎖又は二本鎖の自己相補性AAVベクター、好ましくはAAVに由来するキャプシド、例えばAAV1、AAV2、変異AAV2、AAV3、変異AAV3、AAV3B、変異AAV3B、AAV4、AAV5、AAV6、変異AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、例えばAAVcy10、及びAAVrh10、AAVrh74、AAVdj、AAV-Anc80、AAV-LK03、AAV2i8、及びブタAAV、例えばAAVpo4及びAAVpo6キャプシドを有するAAVベクター、又はキメラキャプシドを有するAAVベクターである。
【0024】
さらなる特定の実施態様によると、該AAVベクターは、AAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8キャプシド、特にAAV8、AAV9、又はAAVrh74キャプシド、より特定するとAAV8キャプシドを有する。
【0025】
別の態様では、本発明は、本発明の核酸分子、核酸構築物、又はベクターを用いて形質転換された細胞に関する。特定の実施態様では、該細胞は肝細胞又は筋肉細胞である。
【0026】
別の態様によると、本発明は、シグナルペプチド部分と機能的GAA部分とを含むキメラGAAポリペプチドに関する。シグナルペプチド部分は、配列番号2~4、好ましくは配列番号2からなる群より選択される。さらに、GAA部分は、親GAAポリペプチドの切断形、例えば親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において1~75連続アミノ酸がトランケートされた、特に親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において6、7、8、9、10、20、41、42、43、又は44連続アミノ酸がトランケートされた、例えば親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において8又は42連続アミノ酸がトランケートされたGAA部分であり得、ここでのGAA部分は、特に配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5のヒトGAAタンパク質の切断形である。特定の実施態様では、GAA部分は、親GAAポリペプチド(より特定すると、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5の親GAAポリペプチド)と比較してそのN末端において8連続アミノ酸がトランケートされている。本発明の特定の実施態様では、本発明のキメラGAAポリペプチドは、表1、表1’、又は表1’’、特に表1’又は表1’’に示されるアミノ酸配列の組合せからなる群より選択される。親GAAポリペプチドの切断形を含むキメラGAAポリペプチドのさらなる特定の実施態様は、以下の詳細な説明に開示されている。
【0027】
別の態様では、本発明は、薬学的に許容される担体に、本明細書に開示された核酸配列、核酸構築物、ベクター、細胞、又はキメラポリペプチドを含む、医薬組成物に関する。
【0028】
本発明の別の態様は、医薬品としての使用のための、本発明の核酸配列、核酸構築物、ベクター、細胞、又はキメラポリペプチドに関する。
【0029】
さらに別の態様では、本発明は、糖原病を処置するための方法に使用するための、本発明の核酸配列、核酸構築物、ベクター、細胞、又はキメラポリペプチドに関する。特定の実施態様では、糖原病は、糖原病I型、糖原病II型、糖原病III型、糖原病IV型、糖原病V型、糖原病VI型、糖原病VII型、糖原病VIII型、又は心臓の致死性先天性糖原病である。より特定の実施態様では、糖原病は、糖原病I型、糖原病II型、及び糖原病III型からなる群より選択され、より特定すると糖原病II型及び糖原病III型からなる群より選択される。さらにより特定の実施態様では、糖原病は糖原病II型である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】シグナルペプチドは、インビトロ及びインビボにおいて様々な程度でhGAAの分泌を増強する。パネルA。ヒト肝癌細胞(Huh7)を、対照プラスミド(GFP)、肝特異的プロモーターの転写制御下にある野生型hGAAを発現しているプラスミド(sp1として記載)、又は合成起源若しくは他の高度に分泌されるタンパク質に由来するシグナルペプチド1~8(sp2(sp1~8))に融合させた配列の最適化されたhGAA(hGAAco)を発現しているプラスミドを用いてリポフェクタミン(商標)によってトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、培養培地中のhGAAの活性を、蛍光発生酵素アッセイによって測定し、4-メチルウンベリフェロンの標準曲線に対するGAA活性を評価した。ヒストグラムプロットは、3回の異なる実験から導かれた分泌されたhGAAのレベルの平均値±標準誤差を示す。統計分析は分散分析によって実施された(偽トランスフェクト細胞に対して
*=p<0.05)。パネルB。ヒストグラムプロットは、PBS(PBS)、又はヒトα-1-アンチトリプシンプロモーターの転写制御下にありシグナルペプチド1~3及び7~8(sp1~3、7~8)と融合させた配列の最適化されたhGAA(hGAAco)を発現している1×10
12vg/kgのAAV8ベクターの注射から1カ月後の、3か月齢のC57Bl6Jマウス(1群あたりn=5匹のマウス)の血清中のhGAA活性の平均値±標準誤差を示す。血清中のhGAAの活性は、蛍光発生酵素アッセイによって定量され、組換えhGAAタンパク質の標準曲線に対するGAA活性を評価した。統計分析は分散分析によって実施された(
*=PBS注射に対してp<0.05、§=sp2に対してp<0.05)。
【
図2】sp7シグナルペプチドは、循環中のhGAAのレベルを増加させ、ポンペ病マウスモデルにおける呼吸障害を救出する。4か月齢の野生型マウス(WT)及びGAA
-/-マウス(1群あたりn=6~9匹のマウス)に、PBS、又はヒトα-1-アンチトリプシンプロモーターの転写制御下にありシグナルペプチド1、2、7及び8(sp1、2、7、8)と融合させた配列の最適化されたhGAA(hGAAco)を発現している2×10
12vg/kgのAAV8ベクターを静脈内注射した。パネルA。ヒストグラムプロットは、ベクターの注射から3カ月後の血中において蛍光発生アッセイによって測定されたhGAA活性を示す。統計分析は分散分析によって実施された(
*=示されているようにp<0.05、§=sp1処置マウスに対してp<0.05)。パネルB。上記のように処置され6カ月間経過観察されたマウスにおいて測定されたカプランマイヤー生存曲線。統計分析はログランク検定によって実施された(
*=p<0.05)。パネルC。呼吸機能評価。ヒストグラムは、示されたベクターを用いての処置から3カ月後(灰色の棒グラフ)及び6カ月後(黒色の棒グラフ)に測定された一回呼吸量(ミリリットル、ml)を示す。統計分析は分散分析によって実施され、ヒストグラムには、sp1で処置されたGAA-/-動物に対して得られたp値が報告されている(
*=p<0.05)。
【
図3】四頭筋におけるグリコーゲン含量の生化学的修復。4か月齢のGAA
-/-マウスに、PBS、又はヒトα-1-アンチトリプシンプロモーターの転写制御下にありシグナルペプチド1、7及び8(sp1、7、8)と融合させた配列の最適化されたhGAA(hGAAco)を発現している2×10
12vg/kgのAAV8ベクターを静脈内注射した。パネルA。四頭筋における蛍光発生アッセイによって測定されたhGAA活性。パネルB。ヒストグラムには、四頭筋において測定されたグリコーゲンの酵素消化後に放出されたグルコースとして表現されるグリコーゲン含量が示されている。統計分析は、分散分析によって実施された(
*=PBSの注射されたGAA-/-マウスに対してp<0.05)。
【
図4】心臓、横隔膜、及び四頭筋におけるグリコーゲン含量の生化学的修復。4か月齢の野生型マウス(WT)及びGAA
-/-マウス(1群あたりn=4~5匹のマウス)に、PBS、又はヒトα-1-アンチトリプシンプロモーターの転写制御下にありシグナルペプチド1、7及び8(sp1、7、8)と融合させた配列の最適化されたhGAA(hGAAco)を発現している6×10
11vg/kgのAAV8ベクターを静脈内注射した。パネルA。ヒストグラムプロットは、ベクターの注射から3カ月後に血中において蛍光発生アッセイによって測定されたhGAA活性を示す。統計分析は分散分析によって実施され、ヒストグラムには、PBSで処置されたGAA-/-動物に対して得られたp値が報告されている(
*=p<0.05)。パネルB~D。ヒストグラムプロットは、心臓(パネルB)、横隔膜(パネルC)及び四頭筋(パネルD)において測定されたグリコーゲンの酵素消化後に放出されたグルコースとして表現されるグリコーゲン含量を示す。統計分析は分散分析によって実施された(
*=PBSの注射されたGAA-/マウスに対してp<0.05、§=sp1で処置されたマウスに対してp<0.05)。
【
図5】高度に分泌されるhGAAは、ポンペ病マウスモデルにおいて導入遺伝子に対して指向される体液性応答を減少させる。4か月齢のGAA-/-マウスに、PBS、又はヒトα-1-アンチトリプシンプロモーターの転写制御下にあり、Δ8hGAAをコードし、シグナルペプチド1(co)、シグナルペプチド2(sp2-Δ8-co)、シグナルペプチド7(sp7-Δ8-co)又はシグナルペプチド8(sp8-Δ8-co)に融合させた、最適化された配列を含む、2つの異なる用量(5×10
11又は2×10
12vg/kg)のAAV8ベクターを静脈内注射した。注射から1カ月後、血清を、ELISAによって抗hGAA抗体の存在について分析した。定量は、標準物質として精製されたマウスIgGを使用して実施された。統計分析はダネット事後検定と分散分析によって実施された(
*=p<0.01)。
【
図6】AAV8-hAAT-sp7-Δ8-hGAAco1の注射により、非ヒト霊長類において血中へのhGAAの効果的な分泌、及び筋肉への取り込みがなされる。2匹のカニクイザルに0日目に、2×10
12vg/kgのAAV8-hAAT-sp7-Δ8-hGAAco1を注射した。パネルA。ベクターの投与の12日前及び30日後に得られた2匹のサルに由来する血清に対して実施されたhGAAのウェスタンブロット。左には試料と平行して泳動させた分子量マーカー(st)のバンド位置が示されている。パネルB。ベクターの注射から3カ月後、サルを屠殺し、hGAA取り込みの生化学的評価のために組織を収集した。hGAAのウェスタンブロットを、二頭筋及び横隔膜から得られた組織抽出物に対して実施した。抗チューブリン抗体を、ローディング対照として使用した。左には、試料と並行して泳動させた分子量マーカーのバンド位置が示されている。
【
図7】異種sp7又はsp8シグナルペプチドと組み合わせたGAA変異体をコードしているプラスミドを用いてトランスフェクトされた細胞の培地中において上昇したGAA活性。天然GAAsp1シグナルペプチドと組み合わせた天然GAA(co)をコードしているか又は異種sp7若しくはsp8シグナルペプチドと組み合わせた天然GAAを含む操作されたGAA(sp7-co又はsp8-co)をコードしている最適化された配列を含む、プラスミドのトランスフェクションから48時間後のHuH7細胞の培地(パネルA)及び溶解液(パネルB)中において測定されたGAA活性。eGFPをコードしているプラスミドを、陰性対照として使用した。統計分析は、チューキー事後検定と一元配置分散分析によって実施された。データは、2回の独立した実験の平均値±標準偏差である。
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
****p<0.0001。
【
図8】hGAAを発現しているベクターを注射されたGDE-/-動物の肝臓におけるグリコーゲン含量の生化学的修復。3か月齢の野生型マウス(WT)又はGDE-/-マウスに、PBS、又はヒトα-1-アンチトリプシンプロモーターの転写制御下にあり、シグナルペプチド7に融合させたコドンの最適化されたhGAAを発現しているAAV8ベクター(AAV8-hAAT-sp7-Δ8-hGAAco1)を1×10
11又は1×10
12vg/マウスの用量で静脈内注射した。ヒストグラムプロットは、肝臓において測定されたグリコーゲンの酵素消化後に放出されたグルコースとして表現されるグリコーゲン含量を示す。統計分析は分散分析によって実施された(
*=PBSの注射されたGDE-/-マウスに対してp<0.05、§=PBSの注射されたWT動物に対してp<0.05)。
【
図9】様々なGAA変異体をコードしているプラスミドを用いてトランスフェクトされた細胞の培地中のGAA活性。天然GAAsp1シグナルペプチドと組み合わせた天然GAA(co)をコードしているか、又は異種sp7シグナルペプチドと組み合わせた天然GAAを含む操作されたGAA(sp7-co)をコードしている最適化された配列を含む、プラスミドのトランスフェクションから24時間後(パネルA)及び48時間後(パネルB)のHuH7細胞の培地中のGAA活性を測定した。sp7シグナルペプチドの後のGAAコード配列における様々な欠失の効果を評価した(sp7-Δ8-co、sp7-Δ29-co、sp7-Δ42-co、sp7-Δ43-co、sp7-Δ47-co、sp7-Δ62-co)。eGFPをコードしているプラスミドを陰性対照として使用した。統計分析は、チューキー事後検定と一元配置分散分析によって実施された。棒グラフにおけるハッシュ印(#)は、coに対する統計学的有意差を示し;タウ記号(τ)はsp7-Δ8-co、sp7-Δ29-co、sp7-Δ42-co、sp7-Δ43-coに対する統計学的有意差を示す。データは、2回の独立した実験の平均値±標準偏差である。異なる記号が使用される場合を除いて、
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
****p<0.0001。
【
図10】様々なGAA変異体の細胞内GAA活性。天然GAAsp1シグナルペプチドと組み合わせた天然GAA(co)をコードしているか、又は異種sp7シグナルペプチドと組み合わせた天然GAAを含む操作されたGAA(sp7-co)をコードしている最適化された配列を含む、プラスミドのトランスフェクションから48時間後のHuH7細胞の溶解液中のGAA活性を測定した。シグナルペプチドの後のGAAコード配列における様々な欠失の効果を評価した(sp7-Δ8-co、sp7-Δ29-co、sp7-Δ42-co、sp7-Δ43-co、sp7-Δ47-co、sp7-Δ62-co)。eGFPをコードしているプラスミドを陰性対照として使用した。統計分析は、チューキー事後検定と一元配置分散分析によって実施された。タウ記号(τ)はsp7-co、sp7-Δ8-co、sp7-Δ29-co、sp7-Δ42-co、sp7-Δ43-coに対する統計学的有意差を示す。データは、2回の独立した実験の平均値±標準偏差である。異なる記号が使用される場合を除いて、
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
****p<0.0001。
【
図11】sp6又はsp8シグナルペプチドと組み合わせたΔ8欠失を使用して、細胞培地中において上昇したGAA活性。天然GAAsp1シグナルペプチドと組み合わせた天然GAA(co)をコードしているか、又は異種sp6若しくはsp8シグナルペプチドと組み合わせた天然GAAを含む操作されたGAA(sp6-co又はsp8-co)をコードしている最適化された配列を含むプラスミドのトランスフェクションから48時間後のHuH7細胞の培地(パネルA)及び溶解液(パネルB)中のGAA活性を測定した。シグナルペプチドの後のGAAコード配列における8アミノ酸の欠失の効果を評価する(sp6-Δ8-co、又はsp8-Δ8-co)。eGFPをコードしているプラスミドを陰性対照として使用した。統計分析は、チューキー事後検定と一元配置分散分析によって実施された。棒グラフにおけるアステリスクは、coに対する統計学的有意差を示す。データは、2回の独立した実験の平均値±標準偏差である。異なる記号が使用される場合を除いて、
*p<0.05、
**p<0.01、
***p<0.001、
****p<0.0001。
【0031】
発明の詳細な説明
本発明は、キメラGAAポリペプチドをコードしている核酸分子に関する。このキメラGAAポリペプチドは、シグナルペプチド部分と機能的GAA部分とを含み、ここでのシグナルペプチド部分は、配列番号2~4からなる群より選択される。本発明者らは驚くべきことに、GAAタンパク質へのこれらのシグナルペプチドの1つの融合が、その免疫原性を低減させつつ、GAAの分泌を大きく改善することを示した。
【0032】
リソソームの酸性αグルコシダーゼすなわち「GAA」(E.C.3.2.1.20)(1,4-α-D-グルカングルコヒドロラーゼ)は、オリゴ糖のα-1,4結合及びα-1,6結合の両方を加水分解することによりグルコースを遊離する、エキソ-1,4-α-D-グルコシダーゼである。GAAの欠損症により、ポンペ病とも呼ばれる糖原病II型(GSDII)が起こる(この用語は正式には乳児期発症型の疾患を指す)。それはグリコーゲンの完全分解を触媒し、分岐点では緩徐である。第17番染色体上の28kbのヒト酸性αグルコシダーゼ遺伝子は3.6kbのmRNAをコードし、これは952アミノ酸ポリペプチドを生成する(Hoefsloot et al., (1988) EMBO J. 7: 1697; Martiniuk et al., (1990) DNA and Cell Biology 9: 85)。該酵素は、小胞体において同時翻訳的なN結合グリコシル化を受ける。それは110kDaの前駆体形として合成され、十分なグリコシル化修飾、リン酸化によって、及びタンパク質分解プロセシングによって約90kDaのエンドソーム内の中間体を通して最終的なリソソーム内の76及び67kDa形へと成熟する(Hoefsloot, (1988) EMBO J. 7: 1697; Hoefsloot et al., (1990) Biochem. J. 272: 485; Wisselaar et al., (1993) J. Biol. Chem. 268: 2223; Hermans et al., (1993) Biochem. J. 289: 681)。
【0033】
糖原病II型患者における酸性αグルコシダーゼ欠損症は、リソソーム内のグリコーゲンの大量の蓄積を引き起こし、細胞機能を破壊する(Hirschhorn, R. and Reuser, A. J. (2001), in The Metabolic and Molecular Basis for Inherited Disease, (eds, Scriver, C. R. et al.) pages 3389-3419 (McGraw-Hill, New York)。最も頻度の高い乳児型では、患者は、進行的な筋肉の変性及び心筋症を示し、2歳になる前に死亡する。若年発症型及び成人発症型においては重度な衰弱が存在する。
【0034】
さらに、他の糖原病を有する患者は、最適化された形態のGAAの投与から恩恵を受け得る。例えば、GAAの投与が、糖原病III型(GSD III)患者由来の初代筋芽細胞におけるグリコーゲンを減少させることが示されている(Sun et al. (2013) Mol Genet Metab 108(2): 145;国際公開公報第2010/005565号)。
【0035】
本明細書において使用する「GAA」又は「GAAポリペプチド」という用語は、成熟した(約76又は約67kDa)及び前駆体の(例えば約110kDa)GAA、特に前駆体形のGAA、並びに、GAAの機能的誘導体である、すなわち、GAAの生物学的機能を保持している(すなわち、天然GAAタンパク質の少なくとも1つの生物学的活性を有する、例えば、上記に定義されているようにグリコーゲンを加水分解することができる)改変された又は突然変異した(挿入(群)、欠失(群)及び/又は置換(群)によって)GAAタンパク質又はその断片、及びGAA変異体(例えば、Kunita et al., (1997) Biochemica et Biophysica Acta 1362: 269によって記載されているようなGAA II;GAA多型及びSNPは、Hirschhorn, R. and Reuser, A. J. (2001) In The Metabolic and Molecular Basis for Inherited Disease(Scriver, C. R. , Beaudet, A. L., Sly, W. S. & Valle, D. Eds., pp. 3389- 3419. McGraw-Hill, New York,pages 3403-3405参照)によって記載されている)を包含する。当技術分野において公知である任意のGAAコード配列を使用し得、例えば、配列番号1;GenBankアクセッション番号NM_00152及びHoefsloot et al., (1988) EMBO J. 7: 1697及びVan Hove et al., (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93: 65(ヒト)、GenBankアクセッション番号NM_008064(マウス)、並びにKunita et al., (1997) Biochemica et Biophysica Acta 1362: 269(ウズラ)を参照されたい。
【0036】
本発明の脈絡において、「GAAの前駆体形」は、その天然シグナルペプチドを含むGAAポリペプチド形である。例えば、配列番号12及び配列番号37の配列は、ヒトGAA(hGAA)変異体の前駆体形である。配列番号12及び配列番号37の中のアミノ酸残基1~27は、hGAAポリペプチドのシグナルペプチドに相当する。
【0037】
本発明の脈絡において、本発明のトランケートされたGAAポリペプチドは、親GAAポリペプチドに由来する。本発明によると、「親GAAポリペプチド」は、上記に定義されているような機能的な前駆体のGAA配列であり得るが、そのシグナルペプチドを欠いている。例えば、野生型ヒトGAAポリペプチドに言及すると、完全な野生型GAAポリペプチド(すなわち前駆体形のGAA)は配列番号12又は配列番号37に示され、シグナルペプチド(配列番号12又は配列番号37のアミノ酸1~27に相当する)を有し、一方、これらの野生型ヒトGAAポリペプチドの切断形の基盤としての役目を果たす親GAAポリペプチドは、配列番号5及び配列番号36に示され、シグナルペプチドを全く有さない。この例では、配列番号12のアミノ酸28~952、及び配列番号37のアミノ酸28~952に相当する後部は、親GAAポリペプチドと称される。
【0038】
GAAポリペプチドのコード配列は、トリ及び哺乳動物種をはじめとする任意の入手源から得ることができる。本明細書において使用する「トリ」という用語は、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、シチメンチョウ、及びキジを含むがこれらに限定されない。本明細書において使用する「哺乳動物」という用語は、ヒト、サル、及び他の非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ類などを含むがこれらに限定されない。本発明の実施態様では、本発明の核酸は、ヒト、マウス、又はウズラ、特にヒトのGAAポリペプチドをコードする。さらなる特定の実施態様では、本発明の核酸分子によってコードされるGAAポリペプチドは、配列番号5又は配列番号36に示されるアミノ酸配列を含み、これはそのシグナルペプチドを含まないhGAAに相当する(注目すべきは、hGAAの天然シグナルペプチドは、配列番号12又は配列番号37におけるアミノ酸1~27に相当し、これはその天然シグナルペプチドを含むhGAAに相当する)
【0039】
本発明の別の実施態様では、本発明の核酸分子は、配列番号37の野生型hGAAをコードしている配列である、配列番号1に示される配列のヌクレオチド82~2859に対して少なくとも75%(例えば少なくとも77%)、少なくとも80%又は少なくとも82%(例えば少なくとも83%)の同一率を有する(配列番号1のヌクレオチド1~81は、hGAAの天然シグナルペプチドをコードしている部分である)。
【0040】
本発明の核酸分子のGAA部分は好ましくは、インビボにおける導入遺伝子の発現に最適化されている配列である、配列番号13又は14のヌクレオチド配列に対して少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも92%の同一率、特に少なくとも95%の同一率を有する。
【0041】
さらに、本発明の核酸分子によってコードされるキメラGAAタンパク質のシグナルペプチド部分は、結果として得られる配列が機能的シグナルペプチド、すなわち、GAAタンパク質の分泌を可能とするシグナルペプチドに対応する限り、配列番号2~4に示される配列と比較して、1~5、特に1~4、特に1~3、より特定すると1~2、特に1つのアミノ酸の欠失(群)、挿入(群)、又は置換(群)を含んでいてもよい。特定の実施態様では、シグナルペプチド部分の配列は、配列番号2~4からなる群より選択された配列からなる。
【0042】
「同一な」という用語及びその派生語は、2つの核酸分子間の配列同一性を指す。2つの比較される両方の配列における位置が、同じ塩基によって占められている場合、例えば、2つのそれぞれのDNA分子における位置がアデニンによって占められている場合、該分子はその位置において同一である。2つの配列間の同一率は、2つの配列によって共有される一致している位置の数を、比較される位置の数で割り、これに100を乗じた関数である。例えば、2つの配列における10中6個の位置が一致する場合、2つの配列は60%同一である。一般的に、最大同一率が得られるように2つの配列をアラインさせて比較される。BLAST又はFASTAなどの、当業者には公知である様々なバイオインフォマティクスツールを使用して、核酸配列をアラインさせることができる。
【0043】
特定の実施態様では、本発明の核酸分子のGAA部分は、配列番号13又は配列番号14に示される配列を含む。
【0044】
本発明の核酸分子は、機能的GAAポリペプチドをコードし、すなわち、それは発現されると野生型GAAタンパク質の機能を有する、ヒトGAAポリペプチドをコードしている。上記に定義されているように、野生型GAAの機能は、オリゴ糖及び多糖、より特定するとグリコーゲンのα-1,4結合及びα-1,6結合の両方を加水分解することによりグルコースを遊離することである。本発明の核酸によってコードされる機能的GAAポリペプチドは、配列番号1、配列番号13、又は配列番号14の核酸配列によってコードされる野生型GAAポリペプチド(すなわち配列番号5のアミノ酸配列を有するGAAポリペプチド)と比較して、グリコーゲンに対して少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%、又は少なくとも100%の加水分解活性を有し得る。本発明の核酸によってコードされるGAAタンパク質の活性は、配列番号1、配列番号13、又は配列番号14の核酸配列によってコードされる野生型GAAポリペプチド(すなわち配列番号5のアミノ酸配列を有するGAAポリペプチド)の活性に対して、100%を超えることさえあり得、例えば110%、120%、130%、140%を超え、又はさらには150%を超えることさえあり得る。
【0045】
当業者は、本発明に記載の核酸が機能的GAAタンパク質を発現するかどうかを容易に決定することができる。適切な方法は、当業者には明らかであろう。例えば、1つの適切なインビトロでの方法は、プラスミド又はウイルスベクターなどのベクターに核酸を挿入する工程、293T細胞又はHeLa細胞などの宿主細胞又はHuh7などの他の細胞をベクターを用いてトランスフェクト又は形質導入する工程、及びGAA活性についてアッセイする工程を含む。あるいは、適切なインビボでの方法は、核酸を含有しているベクターをポンペ病又は別の糖原病のマウスモデルに形質導入する工程、並びにマウスの血漿中の機能的GAA及び組織中のGAAの存在についてアッセイする工程を含む。適切な方法は、以下の実験部においてより詳細に記載されている。
【0046】
本発明者らは、上記の核酸分子が、インビトロ及びインビボの両方において、野生型GAA cDNAと比較して驚くべき程に高いレベルの機能的GAAタンパク質の発現を引き起こすことを発見した。さらに、本発明者らによってこれもまた示されているように、本発明の核酸分子を発現している肝細胞及び筋肉細胞から生成されたキメラGAAポリペプチドは、導入遺伝子に対する体液性免疫応答を全く誘発しない。このことは、この核酸分子を使用することにより高いレベルのGAAポリペプチドを生成し得、免疫抑制剤による処置に頼ることを回避する、低用量の免疫抑制剤による処置を可能とする、及びそれを必要とする被験者への本発明の核酸分子の反復投与を可能とするなどの治療利点を提供することを意味する。それ故、本発明の核酸分子は、GAAの発現及び/又は活性が欠損している状況、あるいは高い発現レベルのGAAが糖原病などの疾患を寛解することができる状況において、特に関心が持たれる。特に、糖原病は、糖原病I型(フォン・ギールケ病)、糖原病II型(ポンペ病)、糖原病III型(コーリ病)、糖原病IV型、糖原病V型、糖原病VI型、糖原病VII型、糖原病VIII型、又は心臓の致死性先天性糖原病であり得る。より特定すると、糖原病は、糖原病I型、糖原病II型及び糖原病III型からなる群より選択され、さらにより特定すると糖原病II型及び糖原病III型からなる群より選択される。さらにより特定した実施態様では、糖原病は糖原病II型である。特に、本発明の核酸分子は、GAA欠損容態、又はグリコーゲンの蓄積を伴う他の容態、例えば糖原病I型(フォン・ギールケ病)、糖原病II型(ポンペ病)、糖原病III型(コーリ病)、糖原病IV型、糖原病V型、糖原病VI型、糖原病VII型、糖原病VIII型、及び心臓の致死性先天性糖原病、より特定すると糖原病I型、糖原病II型又は糖原病III型、さらにより特定すると糖原病II型及び糖原病III型を処置するための遺伝子療法において有用であり得る。さらにより特定の実施態様では、本発明の核酸分子は、糖原病II型を処置するための遺伝子療法において有用であり得る。
【0047】
機能的GAAをコードしている本発明の核酸分子の配列は、インビボにおけるGAAポリペプチドの発現のために最適化されている。配列の最適化は、コドン最適化、GC含量の増加、CpGアイランドの数の低減、代替オープンリーディングフレーム(ARF)の数の低減、並びにスプライスドナー部位及びスプライスアクセプター部位の数の低減をはじめとする、核酸配列における多くの変化を含み得る。遺伝子コードの縮重のために、異なる核酸分子が同じタンパク質をコードし得る。また、様々な生物の遺伝子コードは、他のアミノ酸よりも同じアミノ酸をコードするいくつかのコドンの1つを使用することに偏ることが多いことも周知である。コドンの最適化を通して、所与の細胞状況に存在するコドンバイアスを利用した変化をヌクレオチド配列に導入し、これにより、結果として得られたコドンの最適化されたヌクレオチド配列は、このような所与の細胞状況において、コドンの最適化されていない配列と比較して比較的高いレベルで発現される可能性がより高くなる。本発明の好ましい実施態様では、トランケートされたGAAをコードしているこのような配列の最適化されたヌクレオチド配列は、例えばヒトに特異的なコドン使用頻度バイアスを利用することによってコドンが最適化されることにより、同じトランケートされたGAAタンパク質をコードしているコドンの最適化されていないヌクレオチド配列と比較して、ヒト細胞におけるその発現が改善されている。
【0048】
表3は、本発明者らによって実施された配列最適化についての関連するパラメーターの説明を提供する。
【0049】
【0050】
特定の実施態様では、最適化されたGAAコード配列は、配列番号1の野生型hGAAコード配列のヌクレオチド82~2859と比較して、コドンが最適化されている、並びに/あるいは、増加したGC含量を有する、並びに/あるいは代替オープンリーディングフレームの数が減少している、並びに/あるいはスプライスドナー部位及び/又はスプライスアクセプター部位の数が減少している。例えば、本発明の核酸配列では、野生型GAA配列の配列と比較して、GAA配列内のGC含量が少なくとも2、3、4、5、又は10%増加している。特定の実施態様では、本発明の核酸配列では、野生型GAAヌクレオチド配列の配列と比較して、GAA配列内のGC含量は2、3、4、又はより特定すると5%若しくは10%(特に5%)増加している。特定の実施態様では、機能的GAAポリペプチドをコードしている本発明の核酸配列は、配列番号1に示される配列のヌクレオチド82~2859に対して「実質的に同一」である、すなわち、約70%同一、より好ましくは約80%同一、さらにより好ましくは約90%同一、さらにより好ましくは約95%同一、さらにより好ましくは約97%、98%、又はさらには99%同一である。上記のように、GC含量及び/又はARFの数に加えて、配列の最適化はまた、配列内のCpGアイランドの数の低減並びに/あるいはスプライスドナー部位及びアクセプター部位の数の低減も含み得る。勿論、当業者には周知であるように、配列の最適化は、これら全てのパラメーター間のバランスであり、このことは、上記の少なくとも1つのパラメーターが改善されていれば、他のパラメーターの1つ以上が改善されていなくても、最適化された配列により、インビボにおける導入遺伝子の改善、例えば改善された発現及び/又は導入遺伝子に対する免疫応答の低減などがもたらされる限り、配列は最適化されたと考えられ得ることを意味する。
【0051】
さらに、ヒト細胞のコドン使用頻度に対する、機能的GAAをコードしているヌクレオチド配列の適応性は、コドン適応指標(codon adaptation index)(CAI)として表現され得る。コドン適応指標は本明細書において、高度に発現されているヒト遺伝子のコドン使用頻度に対する、遺伝子のコドン使用頻度の相対的適応性の尺度として定義される。各コドンの相対的適応性(w)は、同じアミノ酸に対する最も豊富なコドンの使用頻度に対する、各コドンの使用頻度の比である。CAIは、これらの相対的な適応値の幾何学的平均値として定義される。非同義コドン及び終止コドン(遺伝子コードに依存)は除外される。CAI値の範囲は0~1であり、より高い数値は、最も豊富なコドンの比率がより高いことを示す(Sharp and Li, 1987, Nucleic Acids Research 15: 1281-1295参照; Kim et al, Gene. 1997, 199:293-301; zur Megede et al, Journal of Virology, 2000, 74: 2628-2635も参照)。好ましくは、GAAをコードしている核酸分子は、少なくとも0.75(特に0.77)、0.8、0.85、0.90、0.92、又は0.94のCAIを有する。
【0052】
1つの実施態様では、本発明の核酸分子は、配列番号13又は配列番号14のヌクレオチド配列によってコードされるタンパク質に対して、0~50、0~30、0~20、0~15、0~10、又は0~5個のアミノ酸変化を有するタンパク質をコードしている。さらに、本発明の核酸によってコードされるGAAタンパク質は、当技術分野において公知である機能的GAAタンパク質の変異体であり得、ここでの本発明の核酸分子は、当技術分野において公知であるGAAタンパク質に対して0~50、0~30、0~20、0~15、0~10、又は0~5個のアミノ酸変化を有するタンパク質をコードしている。機能的変異体を設計するための基盤としての役目を果たし得る、当技術分野において公知であるこのようなGAAタンパク質は特に、UniprotへのGAAの登録に見られ得る(アクセッション番号P10253;GenBank CAA68763.1に対応;配列番号37)。さらなる特定の実施態様では、本発明の核酸配列のGAA部分は、変異GAAポリペプチド、又は本明細書において定義されているようなこのようなペプチドの機能的変異体、例えば、Genbankアクセッション番号AAA52506.1(配列番号38)、EAW89583.1(配列番号39)及びABI53718.1(配列番号40)として同定されたポリペプチドからなる群より選択されたものをコードしている。他の変異GAAポリペプチドとしては、国際公開公報第2012/145644号、国際公開公報第00/34451号及び米国特許第6,858,425号に記載のものが挙げられる。特定の実施態様では、親GAAポリペプチドは、配列番号12又は配列番号37に示されるアミノ酸配列から得られる。
【0053】
特定の実施態様では、本発明の核酸分子によってコードされるGAAポリペプチドは、機能的GAAであり、切断形が配列同一率に対する基準と考える場合には、実施された切断短縮を場合により考慮しながら、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示されるhGAAタンパク質に対して、少なくとも80%、特に少なくとも85%、90%、95%、より特定すると少なくとも96%、97%、98%、又は99%の配列同一率を有する。特定の実施態様では、本発明の核酸分子によってコードされるGAAタンパク質は、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示された配列を有する。
【0054】
「同一な」という用語及びその派生語は、ポリペプチドに言及する場合、2つの比較されるポリペプチド配列における位置が、同じアミノ酸によって占められている場合(例えば、2つのそれぞれのポリペプチドにおける位置がロイシンによって占められている場合)、該ポリペプチドはその位置において同一である。2つのポリペプチド間の同一率は、2つの配列によって共有される一致している位置の数を、比較される位置の数で割り、これに100を乗じた関数である。例えば、2つのポリペプチドにおける10中6個の位置が一致する場合、2つの配列は60%同一である。一般的に、最大同一率が得られるように2つの配列をアラインさせて比較される。BLAST又はFASTAなどの、当業者には公知である様々なバイオインフォマティクスツールを使用して、核酸配列をアラインさせることができる。
【0055】
「核酸配列」(又は核酸分子)という用語は、本発明に記載のGAAタンパク質をコードしている、一本鎖又は二本鎖の形態のDNA分子又はRNA分子、特にDNAを指す。
【0056】
本発明はまた、配列番号2~4からなる群より選択されたシグナルペプチドを含む、キメラの機能的GAAポリペプチドをコードしている核酸分子にも関する。
【0057】
特に、本発明者らはさらに驚くべきことに、シグナルペプチドの置換により、ヒトα--1-アンチトリプシンのシグナルペプチドに融合させたGAAを含む以前に報告された他のキメラGAAポリペプチドと比較して(hAAT、国際公開公報第2004064750号及びSun et al. 2006に記載のキメラGAAタンパク質)、機能的GAAポリペプチドのより高い発現レベルの生成及びより高い分泌が生じることを示した。本発明の核酸分子では、シグナルペプチド部分は、配列番号2~4からなる群より選択されたアミノ酸配列を有するシグナルペプチド(本明細書では別名「代替シグナルペプチド」と称する)をコードしている配列に相当する。本発明の核酸分子はさらに、機能的GAAポリペプチドに作動可能に連結された代替シグナルペプチドを含むキメラGAAポリペプチドをコードしている最適化された配列であり得る。
【0058】
野生型GAAポリペプチドと比較して、野生型GAAの内因性シグナルペプチドは、外因性シグナルペプチド、すなわち、GAAとは異なるタンパク質に由来するシグナルペプチドを用いて置換されている。GAAタンパク質の残りに融合させた外因性シグナルペプチドは、その天然シグナルペプチドを含む対応するGAAポリペプチドと比較して、結果として得られたキメラGAAポリペプチドの分泌を増加させる。さらに、本発明の特定の実施態様によると、代替シグナルペプチドに対応するヌクレオチド配列は、上記に提供されているような最適化された配列であり得る。
【0059】
本発明において作用可能なシグナルペプチドとしては、イズロネート-2-スルファターゼ由来のアミノ酸1~25(配列番号3)、キモトリプシノーゲンB2由来のアミノ酸1~20(配列番号2)、及びプロテアーゼC1阻害剤由来のアミノ酸1~23(配列番号4)が挙げられる。配列番号2~配列番号4のシグナルペプチドは、その天然シグナルペプチドを含むGAA、又はhAATのシグナルペプチドを含むキメラGAAタンパク質と比較して、インビトロ及びインビボの両方においてキメラGAAタンパク質のより高い分泌を可能とする。
【0060】
細胞から分泌される新規に合成されたGAAの相対的比率は、当技術分野において公知であり実施例に記載されている方法によって慣用的に決定され得る。分泌されたタンパク質は、細胞培養培地、血清、ミルクなどの中の、タンパク質それ自体を直接測定することによって(例えばウェスタンブロットによって)又はタンパク質活性アッセイ(例えば酵素アッセイ)によって検出され得る。
【0061】
当業者はさらに、例えば、制限酵素部位の付加などの核酸構築物の操作の結果として、これらの追加のアミノ酸によりシグナルペプチド又はGAAポリペプチドが非機能的とならない限り、キメラGAAポリペプチドは追加のアミノ酸を含有することができることを理解するだろう。追加のアミノ酸は切断されても、又は、保持することで非機能的なポリペプチドとならない限り、成熟ポリペプチドによって保持されていてもよい。
【0062】
さらに、本明細書に記載のような核酸分子によってコードされるキメラGAAポリペプチドは、機能的な切断形のGAAであるGAA部分を含み得る。「切断形」によって、親GAAポリペプチドのN末端部分から1つ又はいくつかの連続アミノ酸が欠失しているGAAポリペプチドを意味する。それ故、本発明のキメラGAAポリペプチドにおけるGAA部分は、親GAAポリペプチドのN末端切断形であり得る。本発明によると、「親GAAポリペプチド」は、シグナルペプチドを欠いたGAAポリペプチド、例えばシグナルペプチドを欠いた前駆体形のGAA、特に配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示されるhGAAポリペプチドであり、上記に開示されているような変異体のいずれかであり得る。例えば、典型的な野生型ヒトGAAポリペプチドに言及すると、完全な野生型GAAポリペプチドは配列番号12又は配列番号37に示され、これはシグナルペプチドを有し、一方、この野生型ヒトGAAポリペプチドのGAA切断形の基盤としての役目を果たす親GAAポリペプチドは、それぞれ配列番号5又は配列番号36に示され、これはシグナルペプチドを全く有さない。この例では、後者は親GAAポリペプチドと称される。この特定の実施態様の変法では、少なくとも1つのアミノ酸が、親GAAタンパク質のN末端から欠失している。特定の実施態様では、GAA部分は、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端から少なくとも1、特に少なくとも2、特に少なくとも3、特に少なくとも4、特に少なくとも5、特に少なくとも6、特に少なくとも7、特に少なくとも8連続アミノ酸が欠失していてもよい。例えば、GAA部分は、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端から1~75連続アミノ酸、又は75を超える連続アミノ酸が欠失していてもよい。別の実施態様では、該GAA部分は、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において最大75、特に最大70、特に最大60、特に最大55、特に最大50、特に最大47、特に最大46、特に最大45、特に最大44、特に最大43連続アミノ酸を欠失している。さらなる特定の実施態様では、該GAA部分は、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において最大47、特に最大46、特に最大45、特に最大44、特に最大43連続アミノ酸を欠失している。具体的には、トランケートされたGAA部分は、親GAAタンパク質(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAポリペプチドの切断形)と比較して、そのN末端から
【化1】
連続アミノ酸が欠失していてもよい。別の特定の実施態様では、該GAA部分は、親GAAポリペプチドと比較してそのN末端において1~75、特に1~47、特に1~46、特に1~45、特に1~44、特に1~43連続アミノ酸が欠失している。別の実施態様では、該GAA部分は、親GAAポリペプチド(特に配列番号5又は配列番号36、特に列番号5に示される親hGAAポリペプチドの切断形)と比較して、そのN末端において2~43、特に3~43、特に4~43、特に5~43、特に6~43、特に7~43、特に8~43連続アミノ酸が欠失している。代わりの命名法を使用すると、親GAAポリペプチドにおける1アミノ酸の切断短縮から生じたGAAポリペプチドは、Δ1 GAA切断形と称され、N末端から2連続アミノ酸の切断短縮から生じたGAAポリペプチドは、Δ2 GAA切断形と称され、親GAAポリペプチドにおける3連続アミノ酸の切断短縮から生じたGAAポリペプチドは、Δ3 GAA切断形と称されるなどである。特定の実施態様では、本発明のキメラGAAタンパク質は、そのN末端において配列番号2~4からなる群より選択されたシグナルペプチドに融合した、
【化2】
GAA切断形部分(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質の切断形)を含む。
【0063】
特定の実施態様では、本発明のキメラGAAタンパク質は、そのN末端において配列番号2~4からなる群より選択されたシグナルペプチドに融合した、
【化3】
GAA切断形部分(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質の切断形)を含む。
【0064】
特定の実施態様では、本発明のキメラGAAタンパク質は、そのN末端において配列番号2~4からなる群より選択されたシグナルペプチドに融合した、
【化4】
GAA切断形部分(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質の切断形)を含む。
【0065】
特定の実施態様では、本発明のキメラGAAタンパク質は、そのN末端において配列番号2~4からなる群より選択されたシグナルペプチドに融合した、
【化5】
GAA切断形部分(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質の切断形)を含む。
【0066】
特定の実施態様では、本発明のキメラGAAタンパク質は、そのN末端において配列番号2~4からなる群より選択されたシグナルペプチドに融合した、
【化6】
GAA切断形部分(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質の切断形)を含む。
【0067】
特定の実施態様では、本発明のキメラGAAタンパク質は、そのN末端において配列番号2~4からなる群より選択されたシグナルペプチドに融合した、
【化7】
GAA切断形部分(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質の切断形)を含む。
【0068】
特定の実施態様では、本発明のキメラGAAタンパク質は、そのN末端において配列番号2~4からなる群より選択されたシグナルペプチドに融合した、
【化8】
GAA切断形部分(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質の切断形)を含む。
【0069】
特定の実施態様では、本発明のキメラGAAタンパク質は、そのN末端において配列番号2~4からなる群より選択されたシグナルペプチドに融合した、
【化9】
GAA切断形部分(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質の切断形)を含む。
【0070】
特定の実施態様では、本発明のキメラGAAタンパク質は、そのN末端において配列番号2~4からなる群より選択されたシグナルペプチドに融合した、
【化10】
GAA切断形部分(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質の切断形)を含む。
【0071】
特定の実施態様では、本発明のキメラGAAタンパク質は、そのN末端において配列番号2~4からなる群より選択されたシグナルペプチドに融合した、
【化11】
GAA切断形部分(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質の切断形)を含む。
【0072】
特定の実施態様では、本発明のキメラGAAタンパク質は、そのN末端において配列番号2~4からなる群より選択されたシグナルペプチドに融合した、
【化12】
GAA切断形部分(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質の切断形)を含む。
【0073】
特定の実施態様では、本発明のキメラGAAタンパク質は、そのN末端において配列番号2~4からなる群より選択されたシグナルペプチドに融合した、
【化13】
GAA切断形部分(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質の切断形)を含む。
【0074】
特定の実施態様では、本発明のキメラGAAタンパク質は、そのN末端において配列番号2~4からなる群より選択されたシグナルペプチドに融合した、
【化14】
GAA切断形部分(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質の切断形)を含む。
【0075】
特定の実施態様では、本発明のキメラGAAタンパク質は、そのN末端において配列番号2~4からなる群より選択されたシグナルペプチドに融合した、
【化15】
GAA切断形部分(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質の切断形)を含む。
【0076】
特定の実施態様では、キメラGAAタンパク質のGAA部分は、GAA(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)のΔ6、Δ7、Δ8、Δ9、又はΔ10切断形、特にGAA(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)のΔ7、Δ8又はΔ9切断形、特にGAA(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)のΔ8切断形である。
【0077】
特定の実施態様では、キメラGAAタンパク質のGAA部分は、GAA(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)のΔ27、Δ28、Δ29、Δ30又はΔ31切断形、特にGAA(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)のΔ28、Δ29又はΔ30切断形、特にGAA(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)のΔ29切断形である。
【0078】
別の特定の実施態様では、キメラGAAタンパク質のGAA部分は、GAA(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)のΔ40、Δ41、Δ42、Δ43、又はΔ44切断形、特にGAA(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)のΔ41、Δ42、又はΔ43切断形、特にGAA(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)のΔ42切断形である。
【0079】
別の特定の実施態様では、キメラGAAタンパク質のGAA部分は、GAA(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)のΔ41、Δ42、Δ43、Δ44、又はΔ45切断形、特にGAA(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)のΔ42、Δ43、又はΔ44切断形、特にGAA(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)のΔ43切断形である。
【0080】
別の特定の実施態様では、キメラGAAタンパク質のGAA部分は、GAA(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)の
【化16】
切断形である。
【0081】
別の特定の実施態様では、キメラGAAタンパク質のGAA部分は、GAA(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)の
【化17】
切断形である。
【0082】
別の特定の実施態様では、キメラGAAタンパク質のGAA部分は、GAA(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)の
【化18】
切断形である。
【0083】
別の特定の実施態様では、キメラGAAタンパク質のGAA部分は、GAA(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)のΔ8、Δ29、Δ42、Δ43、又はΔ47切断形である。
【0084】
別の特定の実施態様では、キメラGAAタンパク質のGAA部分は、GAA(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)のΔ8、Δ29、Δ42、又はΔ43切断形である。
【0085】
別の特定の実施態様では、キメラGAAタンパク質のGAA部分は、GAA(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)のΔ8又はΔ42切断形である。
【0086】
本発明の特定の実施態様では、本発明のキメラGAAポリペプチドは、機能的な親ヒトGAAポリペプチドに由来するトランケートされたGAA部分を含む。さらなる特定の実施態様では、親hGAAポリペプチドは、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示されるhGAAポリペプチドである。この実施態様の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドにおけるGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化19】
GAA切断形である。さらなる特定の実施態様では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率(例えば80、85、90、95、96、97、98、又は99%の同一率)を有するその機能的変異体の
【化20】
、特にΔ6、Δ7、Δ8、Δ9、Δ10、Δ40、Δ41、Δ42、Δ43、又はΔ44、特にΔ8、Δ29、Δ42、又はΔ43、特にΔ8又はΔ42切断形である。
【0087】
この実施態様の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、さらにより特定すると配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化21】
GAA切断形である。
【0088】
この実施態様の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、さらにより特定すると配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化22】
GAA切断形である。
【0089】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、さらにより特定すると配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化23】
GAA切断形である。
【0090】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、さらにより特定すると配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化24】
GAA切断形である。
【0091】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、さらにより特定すると配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化25】
GAA切断形である。
【0092】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、さらにより特定すると配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化26】
GAA切断形である。
【0093】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、さらにより特定すると配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化27】
GAA切断形である。
【0094】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、さらにより特定すると配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化28】
GAA切断形である。
【0095】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、さらにより特定すると配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化29】
GAA切断形である。
【0096】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、さらにより特定すると配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化30】
GAA切断形である。
【0097】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、さらにより特定すると配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化31】
GAA切断形である。
【0098】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、さらにより特定すると配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化32】
GAA切断形である。
【0099】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、さらにより特定すると配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化33】
GAA切断形である。
【0100】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、さらにより特定すると配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化34】
GAA切断形である。
【0101】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、さらにより特定すると配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化35】
GAA切断形である。
【0102】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、さらにより特定すると配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化36】
GAA切断形である。
【0103】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、さらにより特定すると配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化37】
GAA切断形である。
【0104】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、さらにより特定すると配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化38】
GAA切断形である。
【0105】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、さらにより特定すると配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化39】
GAA切断形である。
【0106】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体のΔ6、Δ7、Δ8、Δ9、又はΔ10、特にΔ7、Δ8、又はΔ9、より特定するとΔ8切断形である。
【0107】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体のΔ27、Δ28、Δ29、Δ30、又はΔ31、特にΔ28、Δ29、又はΔ30、より特定するとΔ29切断形である。
【0108】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体のΔ40、Δ41、Δ42、Δ43、又はΔ44、特にΔ41、Δ42、又はΔ43、より特定するとΔ42切断形である。
【0109】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体のΔ41、Δ42、Δ43、Δ44、又はΔ45、特にΔ42、Δ43、又はΔ44、より特定するとΔ43切断形である。
【0110】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化40】
、特にΔ7、Δ8、Δ9、Δ28、Δ29、Δ30、Δ41、Δ42、Δ43、又はΔ44、特にΔ8、Δ29、Δ42、又はΔ43切断形である。
【0111】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体のΔ6、Δ7、Δ8、Δ9、Δ10、Δ40、Δ41、Δ42、Δ43、又はΔ44、特にΔ8又はΔ42切断形である。
【0112】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体のΔ8、Δ29、Δ42、Δ43、又はΔ47切断形である。
【0113】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体のΔ8、Δ29、Δ42、又はΔ43切断形である。
【0114】
この実施態様の別の変法では、本発明のキメラGAAポリペプチドのGAA部分は、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号5若しくは配列番号36、特に配列番号5に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体のΔ8又はΔ42切断形である。
【0115】
具体的な実施態様では、本発明のキメラGAAポリペプチドにおけるGAA部分は、配列番号29、配列番号30、配列番号41、配列番号42、又は配列番号43に示される配列からなるアミノ酸配列、特に配列番号29、配列番号30、配列番号41、又は配列番号42に示される配列からなるアミノ酸配列、特に配列番号29又は配列番号30に示される配列からなるアミノ酸配列を有する。
【0116】
本発明はまた、本発明の核酸分子を含む核酸構築物にも関する。核酸構築物は、1つ以上の発現制御配列、及び/又は導入遺伝子の発現を改善する他の配列、及び/又はコードされているタンパク質の分泌を増強する配列、及び/又はコードされているタンパク質の取り込みを増強する配列に作動可能に連結させた、本発明の核酸配列を含む、発現カセットに対応し得る。本明細書において使用する「作動可能に連結された」という用語は、機能的な関係でのポリヌクレオチド配列の連結を指す。核酸は、それが別の核酸配列と機能的な関係に配置されている場合に「作動可能に連結」されている。例えば、プロモーター、又は別の転写調節配列は、それがコード配列の転写に影響を及ぼす場合にコード配列に作動可能に連結されている。このような発現制御配列、例えばプロモーター、エンハンサー(例えばシス調節モジュール(CRM))、イントロン、ポリAシグナルなどは当技術分野において公知である。
【0117】
特に、発現カセットは、プロモーターを含み得る。該プロモーターは、遍在的又は組織特異的プロモーター、特にGAAの発現が望ましい細胞又は組織、例えばGAA欠損患者においてGAAの発現が望ましい細胞又は組織において発現を促進することのできるプロモーターであり得る。特定の実施態様では、該プロモーターは、肝特異的プロモーター、例えばα-1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)(配列番号15)、トランスサイレチンプロモーター、アルブミンプロモーター、チロキシン結合性グロブリン(TBG)プロモーター、LSPプロモーター(甲状腺ホルモン結合性グロブリンプロモーター配列、2コピーのα1-ミクログロブリン/ビクニンエンハンサー配列、及びリーダー配列を含む、34.Ill, C. R., et al. (1997). Optimization of the human factor VIII complementary DNA expression plasmid for gene therapy of hemophilia A. Blood Coag. Fibrinol. 8: S23-S30)などである。他の有用な肝特異的プロモーターも当技術分野において公知であり、例えば、コールドスプリングハーバーラボラトリーの編纂した肝特異的遺伝子プロモーターデータベース(http://rulai.cshl.edu/LSPD/)に列挙されているものなどである。本発明の脈絡における好ましいプロモーターは、hAATプロモーターである。別の実施態様では、該プロモーターは、関心対象のある組織又は細胞(例えば筋肉細胞)及び肝細胞における発現を指令するプロモーターである。例えば、ある程度までは、デスミン、Spc5-12、及びMCKプロモーターなどの筋肉細胞に特異的なプロモーターは、肝細胞への幾分の発現の漏出を呈し得、これは、本発明の核酸から発現されるGAAタンパク質に対する被験者の免疫寛容を誘導するのに有益であり得る。
【0118】
他の組織特異的なプロモーター又は組織特異的ではないプロモーターも本発明の実施に有用であり得る。例えば、発現カセットは、肝特異的プロモーターとは異なるプロモーターである組織特異的プロモーターを含み得る。例えば、該プロモーターは、筋肉特異的プロモーター、例えばデスミンプロモーター(及びデスミンプロモーター変異体、例えば天然又は人工のエンハンサーを含むデスミンプロモーター)、SPc5-12又はMCKプロモーターであり得る。別の実施態様では、該プロモーターは、他の細胞系統に特異的なプロモーター、例えば赤血球系統の細胞に由来するGAAポリペプチドの発現のためのエリスロポエチンプロモーターである。
【0119】
別の実施態様では、該プロモーターは偏在性プロモーターである。代表的な偏在性プロモーターとしては、サイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβアクチン(CAG)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/プロモーター(CMV)、PGKプロモーター、SV40初期プロモーターなどが挙げられる。
【0120】
さらに、該プロモーターはまた、内因性プロモーター、例えばアルブミンプロモーター又はGAAプロモーターであり得る。
【0121】
特定の実施態様では、該プロモーターは、エンハンサー配列、例えばシス調節モジュール(CRM)又は人工エンハンサー配列に結合している。例えば、該プロモーターは、エンハンサー配列、例えばヒトApoE制御領域(又はヒトアポリポタンパク質E/C-I遺伝子座、肝制御領域HCR-1-Genbankアクセッション番号U32510、配列番号16に示される)に結合していてもよい。特定の実施態様では、ApoE配列などのエンハンサー配列は、肝特異的プロモーター、例えば上記に列挙されているプロモーター、特に例えばhAATプロモーターに結合している。本発明の実施に有用な他のCRMとしては、Rincon et al., Mol Ther. 2015 Jan;23(1):43-52, Chuah et al., Mol Ther. 2014 Sep;22(9):1605-13又はNair et al., Blood. 2014 May 15;123(20):3195-9に記載のものが挙げられる。
【0122】
別の特定の実施態様では、核酸構築物は、イントロン、特にプロモーターとGAAコード配列の間に配置されたイントロンを含む。イントロンは、mRNAの安定性及びタンパク質の生成を増加させるために導入され得る。さらなる実施態様では、核酸構築物は、ヒトβグロビンb2(すなわちHBB2)イントロン、凝固因子IX(FIX)イントロン、SV40イントロン、又はニワトリβ-グロビンイントロンを含む。別のさらなる実施態様では、本発明の核酸構築物は、該イントロンに見られる代替オープンリーディングフレーム(ARF)の数を減少させるために又はさらには完全に除去するために設計された改変されたイントロン(特に改変されたHBB2又はFIXイントロン)を含有している。好ましくは、その長さが50bpにわたり、読み枠内に開始コドンと終止コドンを有するARFが除去される。ARFは、イントロンの配列を改変することによって除去されてもよい。例えば、ヌクレオチドの置換、挿入、又は欠失を用いて、好ましくはヌクレオチドの置換によって改変が行なわれ得る。一例として、関心対象のイントロン配列に存在するATG又はGTG開始コドンにおける1つ以上のヌクレオチド、特に1つのヌクレオチドを置換することにより、非開始コドンがもたらされ得る。例えば、ATG又はGTGを、関心対象のイントロンの配列内の、開始コドンではない、CTGによって置換し得る。
【0123】
核酸構築物に使用される古典的なHBB2イントロンを配列番号6に示す。例えば、このHBB2イントロンは、該イントロン内の開始コドン(ATGコドン及びGTGコドン)を排除することによって改変され得る。特定の実施態様では、構築物に含まれる改変されたHBB2イントロンは、配列番号7に示される配列を有する。核酸構築物に使用される古典的なFIXイントロンは、ヒトFIXの第一イントロンから得られ、配列番号8に示されている。FIXイントロンは、該イントロン内の開始コドン(ATGコドン及びGTGコドン)を排除することによって改変され得る。特定の実施態様では、本発明の構築物に含まれる改変されたFIXイントロンは、配列番号9に示される配列を有する。核酸構築物に使用される古典的なニワトリ-βグロビンイントロンは、配列番号10に示される。ニワトリ-βグロビンイントロンは、該イントロン内の開始コドン(ATGコドン及びGTGコドン)を排除することによって改変され得る。特定の実施態様では、本発明の構築物に含まれる改変されたニワトリ-βグロビンイントロンは、配列番号11に示される配列を有する。
【0124】
本発明者らは以前に、国際公開公報第2015/162302号において、このような改変されたイントロン、特に改変されたHBB2イントロン又はFIXイントロンが有益な特性を有し、導入遺伝子の発現を有意に改善させることができることを示した。
【0125】
特定の実施態様では、本発明の核酸構築物は、5’から3’の方向に、場合によりエンハンサーが前に存在するプロモーター、本発明のコード配列(すなわち、最適化された本発明のGAAコード配列、本発明のキメラGAAコード配列、または本発明のキメラかつ最適化されたGAAコード配列)、及びポリアデニル化シグナル(例えば、ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル、SV40ポリアデニル化シグナル、又は別の天然に存在するか若しくは人工のポリアデニル化シグナル)を含む、発現カセットである。特定の実施態様では、本発明の核酸構築物は、5’から3’の方向に、場合によりエンハンサー(例えばApoE制御領域)が前に存在するプロモーター、イントロン(特に上記に定義されているようなイントロン)、本発明のコード配列、及びポリアデニル化シグナルを含む、発現カセットである。さらなる特定の実施態様では、本発明の核酸構築物は、5’から3’の方向に、ApoE制御領域などのエンハンサー、プロモーター、イントロン(特に上記に定義されているようなイントロン)、本発明のコード配列、及びポリアデニル化シグナルを含む、発現カセットである。本発明のさらなる特定の実施態様では、発現カセットは、5’から3’の方向に、ApoE制御領域、hAAT肝特異的プロモーター、HBB2イントロン(特に上記に定義されているような改変されたHBB2イントロン)、本発明のコード配列、及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを含み、例えば配列番号20~配列番号22のいずれか1つに示される核酸構築物であり、これは配列番号2~4に示されるシグナルペプチドコード配列のそれぞれと組み合わせた配列番号13の配列の最適化されたGAA核酸分子を含む。他の実施態様では、発現カセットは、上記の表2、表2’、又は表2’’、特に表2’又は表2’’に示される配列の組合せの1つから得られたコード配列を含有している。
【0126】
特定の実施態様では、発現カセットは、ApoE制御領域、hAAT肝特異的プロモーター、コドン最適化HBB2イントロン、本発明のコード配列、及びウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを含む。
【0127】
本発明の核酸構築物の設計の際に、当業者は、該構築物を細胞又は器官に送達するために使用されるベクターのサイズ限界を配慮することに気を付けるだろう。特に、当業者は、AAVベクターの主な限界はその積載能であり、これはAAV血清型によって異なり得るが、ほぼ親ウイルスゲノムのサイズが限界であると考えられている。例えば、5kbが、AAV8キャプシドにパッケージングされると通常考えられている最大のサイズである。(Wu Z. et al., Mol Ther., 2010, 18(1): 80-86; Lai Y. et al., Mol Ther., 2010, 18(1): 75-79; Wang Y. et al., Hum Gene Ther Methods, 2012, 23(4): 225-33)。したがって、当業者は、本発明の実施の際に、AAV5’-及び3’-ITRをコードしている配列を含む、結果として得られる核酸配列が、装備されるAAVベクターの積載能の好ましくは110%を超えないように、特に好ましくは5.5kbを超えないように、本発明の核酸構築物の成分を選択するように気を付けるだろう。
【0128】
本発明はまた、本明細書に開示されているような核酸分子又は構築物を含むベクターにも関する。特に、本発明のベクターは、タンパク質の発現に、好ましくは遺伝子療法に使用するのに適したベクターである。1つの実施態様では、該ベクターはプラスミドベクターである。別の実施態様では、該ベクターは、本発明の核酸分子、特に本発明のGAAポリペプチドをコードしているメッセンジャーRNAを含有している、ナノ粒子である。別の実施態様では、該ベクターは、活動亢進スリーピングビューティ(SB100X)トランスポゾン系(Mates et al. 2009)などの、標的細胞のゲノム内への本発明の核酸分子又は構築物の組み込みを可能とする、トランスポゾンに基づいた系である。別の実施態様では、該ベクターは、肝組織又は肝細胞、筋肉細胞、CNS細胞(例えば脳細胞)、又は造血幹細胞、例えば赤血球系統の細胞(例えば赤血球)などの関心対象の任意の細胞を標的化する、遺伝子療法に適したウイルスベクターである。この場合、本発明の核酸構築物は、当技術分野において周知であるような、効果的なウイルスベクターを生成するのに適した配列も含有している。特定の実施態様では、該ウイルスベクターは、組込み用ウイルスから得られる。特に、該ウイルスベクターは、レトロウイルス又はレンチウイルスから誘導され得る。さらなる特定の実施態様では、該ウイルスベクターはAAVベクター、例えば肝組織又は肝細胞を形質導入するのに適したAAVベクター、より特定するとAAV-1、-2及びAAV-2変異体(例えば、Ling et al., 2016 Jul 18, Hum Gene Ther Methods[印刷物に先駆けてオンラインで出版された論文]に開示された、Y44+500+730F+T491Vの変化を有する操作されたキャプシドを含む、四重変異のキャプシドの最適化されたAAV-2)、AAV-3及びAAV-3変異体(例えば、Vercauteren et al., 2016, Mol. Ther. Vol. 24(6), p. 1042に開示された、2つのアミノ酸変化、S663V+T492Vを有する操作されたAAV3キャプシドを含むAAV3-ST変異体)、AAV-3B及びAAV-3B変異体、AAV-4、-5、-6、及びAAV-6変異体(例えば、Rosario et al., 2016, Mol Ther Methods Clin Dev. 3, p.16026に開示された、三重変異AAV6キャプシドY731F/Y705F/T492V形を含むAAV6変異体)、AAV-7、-8、-9、-10、例えばAAV-cy10及び-rh10、-rh74、-dj、Anc80、LK03、AAV2i8、ブタAAV血清型、例えばAAVpo4及びAAVpo6などのベクター又はレトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクター及びα-レトロウイルスである。当技術分野において公知であるように、使用するのに考えられる具体的なウイルスベクターに応じて、追加の適切な配列が、機能的なウイルスベクターを得るために本発明の核酸構築物に挿入されるだろう。適切な配列としては、AAVベクター用のAAV ITR、又はレンチウイルスベクター用のLTRが挙げられる。したがって、本発明はまた、それぞれの側においてITR又はLTRによってフランキングされた、上記のような発現カセットにも関する。
【0129】
ウイルスベクターの利点は、この開示の以下の部分において考察されている。ウイルスベクターが、本発明の核酸分子又は構築物を送達するのに好ましく、例えば、レトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクター、又は非病原性パルボウイルス、より好ましくはAAVベクターがある。ヒトパルボウイルスアデノ随伴ウイルス(AAV)は、感染した細胞のゲノムに組み込むことにより潜伏感染を確立することのできる、天然では複製欠損であるディペンドウイルスである。最後の特性は、哺乳動物ウイルスの中では独特なようである。なぜなら、組込みが、第19番染色体(19q13.3-qter)上に位置するAAVS1と呼ばれるヒトゲノム内の特定の部位で起こるからである。
【0130】
それ故、AAVベクターは、ヒト遺伝子療法のためのベクター候補としてかなりの関心を集めた。ウイルスの好ましい特性には、あらゆるヒト疾患を伴わないこと、分裂中の細胞及び分裂していない細胞の両方に感染することができること、及び様々な組織に由来する多種多様な細胞株に感染することができることがある。
【0131】
ヒト又は非ヒト霊長類(NHP)から単離され十分に特徴付けられたAAVの血清型の中で、ヒト血清型2は、遺伝子導入用ベクターとして開発された最初のAAVである。他の現在使用されているAAV血清型としては、AAV-1、AAV-2変異体(例えば、Ling et al., 2016 Jul 18, Hum Gene Ther Methods[印刷物に先駆けてオンラインで出版された論文]に開示された、Y44+500+730F+T491Vの変化を有する操作されたキャプシドを含む、四重変異のキャプシドの最適化されたAAV-2)、AAV-3及びAAV-3変異体(例えば、Vercauteren et al., 2016, Mol. Ther. Vol. 24(6), p. 1042に開示された、2つのアミノ酸変化、S663V+T492Vを有する操作されたAAV3キャプシドを含むAAV3-ST変異体)、AAV-3B及びAAV-3B変異体、AAV-4、-5、-6、及びAAV-6変異体(例えば、Rosario et al., 2016, Mol Ther Methods Clin Dev. 3, p.16026に開示された、三重変異AAV6キャプシドY731F/Y705F/T492V形を含むAAV6変異体)、AAV-7、-8、-9、-10、例えばAAV-cy10及び-rh10、-rh74、-dj、Anc80、LK03、AAV2i8、ブタAAV血清型、例えばAAVpo4及びAAVpo6、並びにチロシン、リジン、及びセリンキャプシド突然変異体のAAV血清型などが挙げられる。さらに、他の非天然の操作された変異体及びキメラAAVも有用であり得る。
【0132】
AAVウイルスを慣用的な分子生物学技術を使用して操作し得、これにより、核酸配列を細胞特異的に送達するために、免疫原性を最小限とするために、安定性及び粒子の寿命を調整するために、効果的な分解のために、核への正確な送達のために、これらの粒子を最適化することが可能となる。
【0133】
ベクターへの構築のための望ましいAAV断片は、キャップタンパク質(vp1、vp2、vp3を含む)及び超可変領域、repタンパク質(rep78、rep68、rep52、及びrep40を含む)及びこれらのタンパク質をコードしている配列を含む。これらの断片は、様々なベクター系及び宿主細胞において容易に利用され得る。
【0134】
Repタンパク質を欠失しているAAV系組換えベクターは、低い効率で宿主のゲノムに組み込み、標的細胞内で数年間におよび持続し得る安定な環状エピソームとして主に存在する。AAV天然血清型を使用する代わりに、天然に存在しないキャプシドタンパク質を有するAAVを含むがこれに限定されない、人工的なAAV血清型を本発明の脈絡において使用し得る。このような人工的なキャプシドは、選択された異なるAAV血清型から、同じAAV血清型の非連続的部分から、AAVではないウイルス入手源から、又はウイルスではない入手源から得ることのできる異種配列と組み合わせた、選択されたAAV配列(例えばvp1キャプシドタンパク質の断片)を使用して、任意の適切な技術によって作製され得る。人工的なAAV血清型は、キメラAAVキャプシド、組換えAAVキャプシド、又は「ヒト化」AAVキャプシドであり得るがこれらに限定されない。
【0135】
したがって、本発明は、本発明の核酸分子又は構築物を含むAAVベクターに関する。本発明の脈絡において、AAVベクターは、関心対象の標的細胞、特に肝癌細胞に形質導入することのできるAAVキャプシドを含む。特定の実施態様によると、AAVベクターは、AAV-1、-2、AAV-2変異体(例えば、Ling et al., 2016 Jul 18, Hum Gene Ther Methods[印刷物に先駆けてオンラインで出版された論文]に開示された、Y44+500+730F+T491Vの変化を有する操作されたキャプシドを含む、四重変異のキャプシドの最適化されたAAV-2)、AAV-3及びAAV-3変異体(例えば、Vercauteren et al., 2016, Mol. Ther. Vol. 24(6), p. 1042に開示された、2つのアミノ酸変化、S663V+T492Vを有する操作されたAAV3キャプシドを含むAAV3-ST変異体)、AAV-3B及びAAV-3B変異体、AAV-4、-5、-6、及びAAV-6変異体(例えば、Rosario et al., 2016, Mol Ther Methods Clin Dev. 3, p.16026に開示された、三重変異AAV6キャプシドY731F/Y705F/T492V形を含むAAV6変異体)、AAV-7、-8、-9、-10、例えばAAV-cy10及び-rh10、-rh74、-dj、Anc80、LK03、AAV2i8、ブタAAV、例えばAAVpo4及びAAVpo6、並びにチロシン、リジン、及びセリンキャプシド突然変異体のAAV血清型などのものである。特定の実施態様では、AAVベクターは、AAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8血清型のものである(すなわち、AAVベクターは、AAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8血清型のキャプシドを有する)。さらなる特定の実施態様では、AAVベクターは偽型ベクターであり、すなわち、そのゲノム及びキャプシドは、異なる血清型のAAVに由来する。例えば、偽型AAVベクターは、そのゲノムが上記の1つのAAV血清型に由来し、そのキャプシドが別の血清型に由来する、ベクターであり得る。例えば、偽型ベクターのゲノムは、AAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8血清型に由来するキャプシドを有し得、そのゲノムは異なる血清型に由来し得る。特定の実施態様では、AAVベクターは、AAV8、AAV9、又はAAVrh74血清型、特にAAV8又はAAV9血清型、より特定するとAAV8血清型のキャプシドを有する。
【0136】
ベクターは、導入遺伝子を筋肉細胞に送達するのに使用するためのものである具体的な実施態様では、AAVベクターは、とりわけ、AAV8、AAV9、及びAAVrh74からなる群より選択され得る。ベクターは、導入遺伝子を肝細胞に送達するのに使用するためのものである別の具体的な実施態様では、AAVベクターは、とりわけ、AAV5、AAV8、AAV9、AAV-LK03、AAV-Anc80及びAAV3Bからなる群より選択され得る。
【0137】
別の実施態様では、キャプシドは改変されたキャプシドである。本発明の脈絡において、「改変されたキャプシド」は、キメラキャプシド、又は1つ以上の野生型AAV VPキャプシドタンパク質に由来する1つ以上の変異VPキャプシドタンパク質を含むキャプシドであり得る。
【0138】
特定の実施態様では、AAVベクターはキメラベクターであり、すなわち、そのキャプシドは、少なくとも2つの異なるAAV血清型に由来するVPキャプシドタンパク質を含むか、又は、少なくとも2つのAAV血清型に由来するVPタンパク質領域若しくはドメインと組み合わせた少なくとも1つのキメラVPタンパク質を含む。肝細胞を形質導入するのに有用なこのようなキメラAAVベクターの例は、Shen et al., Molecular Therapy, 2007及びTenney et al., Virology, 2014に記載されている。例えば、キメラAAVベクターは、AAV8キャプシド配列と、AAV8血清型とは異なるAAV血清型の配列、例えば上記に具体的に記載されているもののいずれかとの組合せから得ることができる。別の実施態様では、AAVベクターのキャプシドは、国際公開公報第2015013313号に記載のものなどの1つ以上の変異VPキャプシドタンパク質、特に、高い肝指向性を示す、RHM4-1、RHM15-1、RHM15-2、RHM15-3/RHM15-5、RHM15-4及びRHM15-6キャプシド変異体を含む。
【0139】
別の実施態様では、改変されたキャプシドはまた、エラープローンPCR及び/又はペプチド挿入(例えばBartel et al., 2011に記載のような)によって挿入されたキャプシド改変に由来し得る。さらに、キャプシド変異体は、チロシン突然変異体などの単一アミノ酸変化を含み得る(例えば、Zhong et al., 2008に記載のような)。
【0140】
さらに、AAVベクターのゲノムは、一本鎖又は自己相補的二本鎖ゲノムのいずれかであり得る(McCarty et al., Gene Therapy, 2003)。自己相補性二本鎖AAVベクターは、AAV末端反復配列の1つから末端解離部位(trs)を欠失させることによって作製される。これらの改変されたベクター(その複製ゲノムは、野生型AAVゲノムの半分の長さである)は、DNA二量体をパッケージングする傾向を有する。好ましい実施態様では、本発明の実施に装備されるAAVベクターは一本鎖ゲノムを有し、さらに好ましくはAAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8キャプシド、特にAAV8、AAV9、又はAAVrh74キャプシド、例えばAAV8又はAAV9キャプシド、より特定するとAAV8キャプシドを含む。
【0141】
特に好ましい実施態様では、本発明は、一本鎖又は二本鎖の自己相補性ゲノム(例えば一本鎖ゲノム)に、本発明の核酸構築物を含む、AAVベクターに関する。1つの実施態様では、AAVベクターは、AAV8、AAV9、AAVrh74又はAAV2i8キャプシド、特にAAV8、AAV9、又はAAVrh74キャプシド、例えばAAV8又はAAV9キャプシド、より特定するとAAV8キャプシドを含む。さらなる特定の実施態様では、該核酸は、プロモーター、特に偏在性プロモーター又は肝特異的プロモーターに作動可能に連結されている。特定の変異体の実施態様によると、該プロモーターは、遍在性プロモーター、例えばサイトメガロウイルスエンハンサー/ニワトリβアクチン(CAG)プロモーター、サイトメガロウイルスエンハンサー/プロモーター(CMV)、PGKプロモーター、及びSV40初期プロモーターである。特定の変異体では、該偏在性プロモーターはCAGプロモーターである。別の変異体によると、該プロモーターは肝特異的プロモーター、例えばα-1アンチトリプシンプロモーター(hAAT)、トランスサイレチンプロモーター、アルブミンプロモーター、及びチロキシン結合性グロブリン(TBG)プロモーターである。特定の変異体では、肝特異的プロモーターは、配列番号15のhAAT肝特異的プロモーターである。さらなる特定の実施態様では、本発明のAAVベクターのゲノムに含まれる核酸構築物はさらに、上記のようなイントロン、例えばプロモーターと、GAAコード配列をコードしている核酸配列(すなわち、本発明の最適化されたGAAコード配列、本発明のキメラGAAコード配列、または本発明のキメラかつ最適化されたGAAコード配列)との間に配置されたイントロンを含む。AAVベクターゲノム内に導入された核酸構築物内に含まれ得る代表的なイントロンとしては、ヒトβグロビンb2(すなわちHBB2)イントロン、FIXイントロン、及びニワトリβ-グロビンイントロンが挙げられるがこれらに限定されない。AAVベクターのゲノム内の該イントロンは、古典的な(すなわち改変されていない)イントロンであっても、又は、該イントロン内の代替オープンリーディングフレーム(ARF)の数を減少させるために若しくはさらには完全に除去するために設計された改変されたイントロンであってもよい。本発明の核酸がAAVベクター内に導入されている、この実施態様の実施に使用され得る、改変されたイントロン及び改変されていないイントロンは、上記に徹底的に記載されている。特定の実施態様では、本発明のAAVベクター、特にAAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8キャプシド、特にAAV8、AAV9、又はAAVrh74キャプシド、例えばAAV8又はAAV9キャプシド、より特定するとAAV8キャプシドを含むAAVベクターは、そのゲノム内に、改変された(すなわち最適化された)イントロン、例えば配列番号7の改変されたHBB2イントロン、配列番号9の改変されたFIXイントロン、及び配列番号11の改変されたニワトリβ-グロビンイントロンを含む。さらなる特定の実施態様では、本発明のベクターは、AAV8、AAV9、AAVrh74、又はAAV2i8キャプシド、特にAAV8、AAV9、又はAAVrh74キャプシド、例えばAAV8又はAAV9キャプシド、より特定するとAAV8キャプシドを含み、5’から3’の方向に、AAV 5’-ITR(例えばAAV2 5’-ITR);ApoE制御領域;hAAT肝特異的プロモーター;HBB2イントロン(特に上記に定義されているような改変されたHBB2イントロン);本発明のGAAコード配列;ウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル;及びAAV 3’-ITR(例えばAAV2 3’-ITR)を含有しているゲノム、例えばAAV 5’-ITR(例えばAAV2 5’-ITR)とAAV 3’-ITR(例えばAAV2 3’-ITR)によってフランキングされている配列番号20、21、又は22に示される核酸(配列番号5の親hGAAに由来するGAAのΔ8切断形をコードしている最適化された配列に対応する、それぞれ配列番号17、18及び19に示される核酸配列を含む)を含むゲノムを含む、AAVベクターである。本発明の実施に有用である他の発現カセットは、上記の表2、表2’、又は表2’’、特に表2’又は表2’’に示される配列の組合せのいずれか1つにおいて、該シグナルペプチド部分とGAA部分とを含む。
【0142】
本発明の特定の実施態様では、本発明の核酸構築物は、上記のような肝特異的プロモーターを含み、該ベクターは、上記のような肝組織又は肝細胞を形質導入することのできるウイルスベクターである。本発明者らは、この実施態様のお蔭で、肝癌細胞において分泌可能な形態のGAAを発現させ、かつタンパク質に対する免疫寛容を誘発するための高度に効果的かつ最適化されたベクターを開発する際に、肝臓の免疫寛容誘発特性及び代謝特性が有利には装備されることを示すデータを以下に提示する。
【0143】
さらに、さらなる特定の実施態様では、本発明は、関心対象の細胞における遺伝子送達及び処置効力を改善するための、2つのベクター、例えば2つのウイルスベクター、特に2つのAAVベクターの組合せを提供する。例えば、2つのベクターは、これらの2つのそれぞれのベクター内に、1つの異なるプロモーターの制御下にある、本発明のGAAタンパク質をコードしている本発明の核酸分子を有し得る。特定の実施態様では、一方のベクターは、肝特異的プロモーターであるプロモーター(例えば上記のようなものの1つ)を含み、他方のベクターは、糖原病の処置のための関心対象の別の組織に特異的であるプロモーター、例えば筋肉特異的プロモーター、例えばデスミンプロモーターを含む。この実施態様の特定の変異体では、このベクターの組合せは、国際公開公報第2015196179号に記載のように作製された、複数の共パッケージングされたAAVベクターに相当する。
【0144】
別の態様では、本発明は、シグナルペプチド部分とGAA部分とを含む、キメラGAAポリペプチドを提供し、ここでの天然GAAシグナルペプチドは、配列番号2~4からなる群より選択されるシグナルペプチドで置換されている。特定の実施態様では、本発明のキメラGAAポリペプチドは、上記のようなGAAの切断形に由来するポリペプチドであり得る。例えば、本発明のキメラGAAタンパク質は、配列番号2~4からなる群より選択されるシグナルペプチドとそのN末端において融合した、
【化41】
GAA切断形部分(特に、配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質の切断形)であり得る。
【0145】
特定の実施態様では、キメラGAAタンパク質のGAA部分は、GAA(特に配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)のΔ6、Δ7、Δ8、Δ9、又はΔ10切断形、特にGAA(特に配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)のΔ7、Δ8、又はΔ9切断形、特にGAA(特に配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)のΔ8切断形である。
【0146】
別の特定の実施態様では、本発明のトランケートされたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体のΔ27、Δ28、Δ29、Δ30、又はΔ31、特にΔ28、Δ29、又はΔ30、より特定するとΔ29切断形である。
【0147】
別の特定の実施態様では、キメラGAAタンパク質のGAA部分は、GAA(特に配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)のΔ40、Δ41、Δ42、Δ43、又はΔ44切断形、特にGAA(特に配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)のΔ41、Δ42、又はΔ43切断形、特にGAA(特に配列番号5又は配列番号36、特に配列番号5に示される親hGAAタンパク質)のΔ42切断形である。
【0148】
この実施態様の別の変法では、本発明のトランケートされたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体のΔ41、Δ42、Δ43、Δ44、又はΔ45、特にΔ42、Δ43、又はΔ44、より特定するとΔ43切断形である。
【0149】
この実施態様の別の変法では、本発明のトランケートされたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化42】
、特に
【化43】
、特にΔ8、Δ29、Δ42、又はΔ43切断形である。
【0150】
この実施態様の別の変法では、本発明のトランケートされたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体の
【化44】
、特にΔ8又はΔ42切断形である。
【0151】
この実施態様の別の変法では、本発明のトランケートされたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体のΔ8、Δ29、Δ42、Δ43、又はΔ47切断形である。
【0152】
この実施態様の別の変法では、本発明のトランケートされたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体のΔ8、Δ29、Δ42、又はΔ43切断形である。
【0153】
この実施態様の別の変法では、本発明のトランケートされたGAAポリペプチドは、hGAAポリペプチド、より特定すると配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示されるhGAAポリペプチド、又は配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に示される配列においてアミノ酸置換を含みかつ配列番号1若しくは配列番号33、特に配列番号1に対して少なくとも80、85、90、95、96、97、98、若しくは99%の同一率を有するその機能的変異体のΔ8又はΔ42切断形である。
【0154】
具体的な実施態様では、本発明のトランケートされたhGAAポリペプチドは、配列番号29、配列番号30、配列番号41、配列番号42、若しくは配列番号43に示される配列からなるアミノ酸配列、又は配列番号29、配列番号30、配列番号41、配列番号42、若しくは配列番号43に示される配列と比較して1~5個、特に1~4個、特に1~3個、より特定すると1~2個、特に1個のアミノ酸置換を含むその機能的変異体を有する。別の具体的な実施態様では、本発明のトランケートされたhGAAポリペプチドは、配列番号29、配列番号30、配列番号41、若しくは配列番号42に示される配列からなるアミノ酸配列、又は配列番号29、配列番号30、配列番号41、若しくは配列番号42に示される配列と比較して1~5個のアミノ酸置換を含むその機能的変異体を有する。具体的な実施態様では、本発明のトランケートされたhGAAポリペプチドは、配列番号29若しくは配列番号30に示される配列からなるアミノ酸配列、又は配列番号29若しくは配列番号30に示される配列と比較して1~5個、特に1~4個、特に1~3個、より特定すると1~2個、特に1個のアミノ酸置換を含むその機能的変異体を有する。
【0155】
特定の実施態様では、キメラGAAポリペプチドは、上記の表1、表1’、若しくは表1’’、特に表1’若しくは表1’’に示される組合せの1つから得られた配列を有するか、又は、得られた配列の組合せに対して少なくとも90%の同一率、特に少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、若しくは少なくとも99%の同一率を有するその機能的誘導体である。
【0156】
本発明はまた、エクスビボにおける遺伝子療法の場合と同様に、本発明の核酸分子又は構築物を用いて形質転換された細胞、例えば肝細胞に関する。本発明の細胞は、それを必要とする被験者、例えばGAA欠損患者に、任意の適切な投与経路によって、例えば該被験者の肝臓又は血流への注射を介して送達され得る。特定の実施態様では、本発明は、本発明の核酸を、肝細胞、特に処置される予定の被験者の肝細胞に導入する工程、及び該核酸が導入されている形質転換された該肝細胞を被験者に投与する工程を含む。有利には、この実施態様は、該細胞からGAAを分泌するのに有用である。特定の実施態様では、肝細胞は、処置される予定の患者に由来する肝細胞であるか、又は、患者へのその後の投与のために、さらにインビトロにおいて形質転換されそして肝細胞へと分化させた肝幹細胞である。
【0157】
本発明はさらに、そのゲノム内に、本発明に記載のGAAタンパク質をコードしている核酸分子又は構築物を含む、トランスジェニック非ヒト動物に関する。特定の実施態様では、動物はマウスである。
【0158】
以下の実施例において具現化された具体的な送達システムとは別に、様々な送達システムが知られており、これを使用して本発明の核酸分子又は構築物を投与することができ、例えば、本発明のコード配列を発現することのできる組換え細胞をリポソーム、マイクロ粒子、マイクロカプセル内に封入、受容体媒介エンドサイトーシス、レトロウイルス若しくは他のベクターの一部としての治療用核酸の構築などがある。
【0159】
1つの実施態様によると、本発明のキメラGAAポリペプチド、核酸分子、核酸構築物、又は細胞を被験者の肝臓に任意の適切な経路によって導入することが望ましくあり得る。さらに、ミニサークル及びトランスポゾンなどの裸DNAを、送達又はレンチウイルスベクターのために使用することができる。さらに、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、メガヌクレアーゼ、TALEN、及びCRISPRなどの遺伝子編集技術を使用して、本発明のコード配列を送達することもできる。
【0160】
本発明はまた、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド、又は細胞を含む、医薬組成物を提供する。このような組成物は、治療有効量の治療薬(本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド又は細胞)及び薬学的に許容される担体を含む。具体的な実施態様では、「薬学的に許容される」という用語は、動物及びヒトへの使用について、米国政府若しくは州政府の規制当局によって認可されているか、又は米国薬局方若しくは欧州薬局方若しくは他の一般的に認められている薬局方に列挙されていることを意味する。「担体」という用語は、希釈剤、補助剤、賦形剤、又はビヒクルを指し、これと共に治療薬が投与される。このような薬学的担体は、無菌液体、例えば水及び油、例えば石油、動物油、植物油、又は合成起源の油、例えばピーナッツ油、大豆油、鉱油、ゴマ油などであり得る。医薬組成物が静脈内投与される場合には水が好ましい担体である。食塩水溶液及び水性デキストロース及びグリセロール溶液も、液体担体として、特に注射液用に使用され得る。適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセロール、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノールなどが挙げられる。
【0161】
所望であれば、該組成物はまた、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝化剤も含有し得る。これらの組成物は、液剤、懸濁剤、乳剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、持続放出製剤などの剤形をとり得る。経口用製剤は、標準的な担体、例えば製薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどを含み得る。適切な薬学的担体の例は、E. W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている。このような組成物は、治療有効量の治療薬、好ましくは精製形の治療薬を、適切な量の担体と一緒に含有することにより、被験者への適切な投与のための剤形を提供するだろう。特定の実施態様では、本発明の核酸、ベクター又は細胞は、リン酸緩衝食塩水を含みかつ0.25%のヒト血清アルブミンの補充された組成物に製剤化される。別の特定の実施態様では、本発明の核酸、ベクター、又は細胞は、乳酸リンゲル液及び非イオン性界面活性剤、例えばプルロニックF68を、全組成物の重量に対して、0.01~0.0001%の最終濃度で、例えば0.001%の濃度で含む組成物に製剤化される。該製剤はさらに、血清アルブミン、特にヒト血清アルブミン、例えば0.25%のヒト血清アルブミンを含み得る。保存又は投与のいずれかのための他の適切な製剤は当技術分野において、特に国際公開公報第2005/118792号又はAllay et al., 2011から公知である。
【0162】
好ましい実施態様では、該組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合した医薬組成物として慣用的な手順に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与用の組成物は、無菌等張緩衝水溶液中の溶液である。必要であれば、該組成物はまた、可溶化剤、及び注射部位における疼痛を和らげるためのリグノカインなどの局所麻酔薬も含み得る。
【0163】
1つの実施態様では、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド又は細胞は、小胞で、特にリポソームで送達され得る。さらに別の実施態様では、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド又は細胞は、放出制御システムで送達され得る。
【0164】
本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド又は細胞の投与法としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、及び経口経路が挙げられるがこれらに限定されない。特定の実施態様では、投与は、静脈内又は筋肉内経路を介する。本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド又は細胞(ベクター化されていようがいまいが)は、任意の簡便な経路によって、例えば注入又はボーラス注射によって、上皮又は粘膜裏打ち(例えば口腔粘膜、直腸粘膜、及び腸管粘膜など)を通した吸収によって投与され得、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与されてもよい。投与は全身性であっても、局所的であってもよい。
【0165】
具体的な実施態様では、本発明の医薬組成物を処置の必要な領域、例えば肝臓に局所的に投与することが望ましくあり得る。これは、例えば、埋込剤を用いることによって成し遂げられ得、該埋込剤は、多孔性、無孔性、又はゲル状材料、例えば膜、例えばシリコンゴム膜、又は繊維である。
【0166】
糖原病の処置に有効であろう本発明の治療薬(すなわち、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド又は細胞)の量は、標準的な臨床的技術によって決定され得る。さらに、インビボ及び/又はインビトロアッセイを場合により使用することにより、至適用量範囲を予測するのを補助し得る。製剤中に使用される予定の正確な用量はまた、投与経路及び疾患の深刻度にも依存し、医師の判断及び各患者の環境に従って決断されるべきである。それを必要とする被験者に投与される、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド又は細胞の用量は、投与経路、処置される具体的な疾患、被験者の年齢、又は治療効果を得るために必要とされる発現レベルを含むがこれらに限定されない、いくつかの因子に基づいて変更されるだろう。当業者は、この分野におけるその知識に基づいて、これらの因子及びその他の因子に基づいて必要とされる用量範囲を容易に決定することができる。被験者にAAVベクターなどのウイルスベクターを投与する工程を含む処置の場合、ベクターの典型的な用量は、体重1kgあたり少なくとも1×108個のベクターゲノム(vg/kg)、例えば少なくとも1×109vg/kg、少なくとも1×1010vg/kg、少なくとも1×1011vg/kg、少なくとも1×1012vg/kg、少なくとも1×1013vg/kg、又は少なくとも1×1014vg/kgである。
【0167】
本発明はまた、治療有効量の本発明の核酸、ベクター、キメラポリペプチド、医薬組成物、又は細胞を、それを必要とする被験者に送達する工程を含む、糖原病を処置するための方法にも関する。
【0168】
本発明はまた、糖原病を処置するための方法にも関し、該方法は、導入遺伝子に対して(すなわち本発明のキメラGAAポリペプチドに対して)全く免疫応答を誘発しないか、又は、導入遺伝子に対して低減された免疫応答を誘発し、治療有効量の本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、医薬組成物、又は細胞を、それを必要とする被験者に送達する工程を含む。本発明はまた、糖原病を処置するための方法にも関し、該方法は、治療有効量の本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、医薬組成物、又は細胞の、それを必要とする被験者への反復投与を含む。この態様では、本発明の核酸分子又は核酸構築物は、肝細胞において機能的であるプロモーターを含み、これにより、それから生成された発現されたキメラGAAポリペプチドに対する免疫寛容が可能となる。同様に、この態様では、この態様において使用される医薬組成物は、肝細胞において機能的であるプロモーターを含む核酸分子又は核酸構築物を含む。肝細胞の送達の場合、該細胞は、処置を必要とする被験者から事前に回収され、その中に本発明の核酸分子又は核酸構築物を導入することによって、それらが本発明のキメラGAAポリペプチドを生成することを可能とするように操作された細胞であり得る。反復投与を含む態様における1つの実施態様によると、該投与は、少なくとも1回以上繰り返され得、さらには週1回、月1回、又は年1回などの周期的計画に従って実施されることが考えられ得る。周期的計画はまた、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10年間毎に1回、又は10年間以上毎に1回の投与も含み得る。別の特定の実施態様では、本発明のウイルスベクターの各投与の投与は、それぞれの連続した投与について異なるウイルスを使用して実施され、これにより、以前に投与されたウイルスベクターに対する起こり得る免疫応答による効力の減少は回避される。例えば、AAV8キャプシドを含むウイルスベクターの1回目の投与に続いて、AAV9キャプシドを含むベクターの投与が行なわれ得、又はさらにはレトロウイルスベクター若しくはレンチウイルスベクターなどのAAVに関連性のないウイルスの投与が行なわれ得る。
【0169】
本発明によると、処置は、治癒効果、寛解効果、又は予防効果を含み得る。したがって、治療処置及び予防処置は、特定の糖原病の症状の寛解、又は特定の糖原病を発症するリスクの予防若しくはさもなくば低減を含む。「予防」という用語は、特定の容態の重症度又は発症を低減させることと考えられ得る。「予防」はまた、容態を有すると事前に診断された患者における特定の容態の再発を予防することも含む。「治療」はまた、既存の容態の重症度を低減させ得る。「処置」という用語は本明細書において、動物、特に哺乳動物、より特定するとヒト被験者に恩恵をもたらし得る任意の処方計画を指すために使用される。
【0170】
本発明はまた、本発明の核酸分子又は核酸構築物を、それを必要とする患者の単離された細胞、例えば単離された造血幹細胞に導入する工程、及び該細胞をそれを必要とする該患者に導入する工程を含む、糖原病の処置のためのエクスビボにおける遺伝子療法に関する。この態様の特定の実施態様では、核酸分子又は構築物は、上記に定義されているようなベクターを用いて細胞に導入される。特定の実施態様では、ベクターは組込み用ウイルスベクターである。さらなる特定の実施態様では、ウイルスベクターはレトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターである。例えば、van Til et al., 2010, Blood, 115(26), p. 5329に開示されているようなレンチウイルスベクターを、本発明の方法における実施に使用し得る。
【0171】
本発明はまた、医薬品としての使用のための、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド、又は細胞にも関する。
【0172】
本発明はまた、GAA遺伝子の突然変異によって引き起こされる疾患を処置するための方法において、特にポンペ病を処置するための方法において使用するための、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド、又は細胞にも関する。本発明はさらに、糖原病I型(フォン・ギールケ病)、糖原病II型(ポンペ病)、糖原病III型(コーリ病)、糖原病IV型、糖原病V型、糖原病VI型、糖原病VII型、糖原病VIII型、及び心臓の致死性先天性糖原病、より特定すると糖原病I型、糖原病II型又は糖原病III型、さらにより特定すると糖原病II型及び糖原病III型、最も特定すると糖原病II型などの糖原病を処置するための方法に使用するための、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド、又は細胞に関する。本発明のキメラGAAポリペプチドは、それを必要とする患者に、酵素補充療法(ERT)に使用するために、例えば、糖原病の1つ、例えば糖原病I型(フォン・ギールケ病)、糖原病II型(ポンペ病)、糖原病III型(コーリ病)、糖原病IV型、糖原病V型、糖原病VI型、糖原病VII型、糖原病VIII型、及び心臓の致死性先天性糖原病、より特定すると糖原病I型、糖原病II型又は糖原病III型、さらにより特定すると糖原病II型及び糖原病III型、最も特定すると糖原病II型の酵素補充療法にも使用するために投与され得る。
【0173】
本発明はさらに、糖原病I型(フォン・ギールケ病)、糖原病II型(ポンペ病)、糖原病III型(コーリ病)、糖原病IV型、糖原病V型、糖原病VI型、糖原病VII型、糖原病VIII型、及び心臓の致死性先天性糖原病、より特定すると糖原病I型、糖原病II型又は糖原病III型、さらにより特定すると糖原病II型及び糖原病III型、最も特定すると糖原病II型などの糖原病の処置に有用な医薬品の製造における、本発明の核酸分子、核酸構築物、ベクター、キメラGAAポリペプチド、又は細胞の使用にも関する。
【0174】
実施例
本発明は、以下の実験実施例及び添付の図面を参照することによりさらに詳述されている。これらの実施例は、説明のためだけに提供され、制限する意図はない。
【0175】
材料及び方法
GAA活性
凍結した組織試料を蒸留水中でホモジナイズした後にGAA活性を測定した。50~100mgの組織を秤量し、ホモジナイズし、次いで、10000×gで20分間遠心分離にかけた。反応を、96ウェルプレートにおいて10μlの上清及び20μlの基質(4MUα-D-グルコシド)を用いて組み立てた。反応混合物を37℃で1時間インキュベートし、次いで、150μlの炭酸ナトリウム緩衝液(pH10.5)の添加によって停止した。標準曲線(0~2500pmol/μlの4MU)を使用して、個々の反応混合物から放出された蛍光4MUを、449nm(発光)及び360nm(励起)でEnSpireアルファプレートリーダー(パーキンエルマー社)を使用して測定した。清澄化した上清のタンパク質濃度をBCA(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)によって定量した。GAA活性を計算するために、放出された4MU濃度を試料のタンパク質濃度で割り、活性をnmol/時間/mg(タンパク質)として報告した。
【0176】
グリコーゲン含量
グリコーゲン含量を、上記のようにして得られた組織ホモジネートのクロコウジカビ(Aspergillus Niger)アミログルコシダーゼによる完全消化後に放出されたグルコースとして間接的に測定した。反応を、96ウェルプレート中で20μlの組織ホモジネート及び55μlの蒸留水を用いて組み立てた。試料を95℃で5分間インキュベートし、次いで4℃で冷却した。25μlのアミログルコシダーゼ(0.1Mの酢酸カリウム(pH5.5)で1:50に希釈)を各試料に加えた。アミログルコシダーゼを含まない対照反応も、各試料について組み立てた。試料の反応液及び対照の反応液の両方を、37℃で90分間インキュベートした。試料を95℃で5分間インキュベートすることによって反応を停止した。放出されたグルコースを、グルコースアッセイキット(シグマアルドリッチ社)を使用して、540nmでEnSpireアルファプレートリーダー(パーキンエルマー社)を使用して吸光度を測定することによって決定した。
【0177】
プレチスモグラフィー
フロースルー(0.5L/分)プレスチモグラフ(EMKAテクノロジーズ社)を使用して、対照マウス及びGaa-/-マウスにおける呼吸パターンを測定した。透明なプレキシガラスチャンバーを、データ収集前に、既知の気流及び圧力シグナルを用いて検量した。シグナルを、IOX2ソフトウェア(EMLAテクノロジーズ社)を使用することによって分析した。以下の変数を測定した:呼吸頻度、一回呼吸量、及び毎分換気量。換気データを5分目の瓶に収集した。5分間かけてチャンバーに順応させた。順応及びデータ取得の両方の最中に、マウスは、正常酸素圧の空気(21%O2、79%N2)を吸っていた。
【0178】
マウス試験
Gaa-/-マウスを、エキソン6の標的化破壊によって作製し、C57BL/6J/129X1/SvJバックグランドに維持した(Raben N. et al 1998)。0.2mlの容量のベクターを、尾静脈を介して送達した。血清試料を月1回収集して、分泌されたhGAAのレベルをモニタリングした。PBSの注射された罹患動物及び野生型同腹仔のうちの1匹を対照として使用した。
【0179】
抗hGAA抗体の決定
マキシソープ96ウェルプレート(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)を、炭酸緩衝液中のマイオザイム(登録商標)タンパク質を用いて4℃で一晩かけてコーティングした。1μg/mlから開始して7つの2倍希釈液の標準曲線のラット組換えIgG(シグマアルドリッチ社)を、ウェルにコーティングした。遮断後、血漿試料をプレートに加え、37℃で1時間インキュベートした。検出は、ウェルに3,3’、5,5’-テトラメチルベンジジン基質(BDバイオサイエンシーズ社)を加えることによって行なわれ、H2SO4を用いて反応を遮断した後、発色を450nm及び570nm(バックグラウンドを差し引くために)においてEnspireプレートリーダー(パーキンエルマー社)で測定した。
【0180】
非ヒト霊長類の試験
雄のカニクイザルを、ステンレス鋼のケージで飼い、12時間の明暗サイクルに維持した。全てのマカクが、試験開始前に1:5未満の中和抗体力価を示した。2×1012vg/kgの用量のAAV8-hAAT-sp7-Δ8-hGAAco1を、伏在静脈を介して注入した。血液試料を、大腿静脈を介した注射の12日前及び30日後に採取した。全血を、EDTA含有チューブに収集し、遠心分離にかけて血清を分離した。ベクター投与から3カ月後に全てのマカクを安楽死させた。動物をまず、ケタミン/デクスメデトミジンの混合物を用いて麻酔し、次いで、静注ペントバルビタールナトリウムを使用して安楽死させた。組織を直ちに収集し、液体窒素で凍結させた。
【0181】
ウェスタンブロット分析
凍結させた筋肉から完全ホモジネートを得た。抽出物中のタンパク質の濃度を、製造業者の説明書に従って、ピアス社のBCAタンパク質アッセイ(サーモフィッシャーサイエンティフィック社)によって決定した。ウェスタンブロットを、抗hGAA抗体(アブカム社)を用いて実施した。抗チューブリン抗体(シグマアルドリッチ社)をローディング対照として使用した。
【0182】
結果
ポンペ病に対する現在の遺伝子置換療法を改善する努力において、本発明者らは、hGAAの配列の最適化された配列(配列番号13)における野生型シグナルペプチド(ここではsp1として示される)を異なるシグナルペプチド(表4に記載されているsp2~8)と交換することによりhGAA配列を操作し、その分泌を増加させた。
【0183】
【0184】
本発明者らは、シグナルペプチド1~8と融合させたコドンの最適化されたhGAA(hGAAco)を発現しているプラスミドと平行して、GFP又は野生型hGAA(hGAA;配列番号37)を発現しているプラスミドを用いて肝癌細胞(Huh-7)をトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後、増殖培地をhGAAの存在について分析した。注目すべきは、効果的なシグナルペプチドを有する構築物の中のたった4つが、GFPのトランスフェクトされた細胞によって示される陰性対照において観察されたレベルよりも有意に高いhGAAレベルの分泌をもたらした(
図1A)。シグナルペプチドsp2、sp6、sp7、及びsp8を有する、hGAAキメラタンパク質を発現している構築物が、培地中でより高いレベルのhGAAを分泌した(GFPに対してp<0.05)。
【0185】
次いで、本発明者らは、三重トランスフェクション及び塩化セシウムによる精製によって生成されたAAV8ベクターにこれらの構築物をパッケージングし、本発明者らはそれらを野生型C57BL/6Jマウスに注射した。次いで、本発明者らは、インビボにおいてシグナルペプチドsp1、2、3、7及び8(
図1B)が使用されていた構築物間のGAAの血清中レベルを比較した。hGAAcoを発現している1×10
12vg/kgのAAV8ベクターの注射から1カ月後、本発明者らは、PBSの注射されたマウスと比較して有意により高いレベルの循環中のhGAAを観察した。興味深いことに、循環中のhGAAレベルは、sp2、7、及び8と融合させたhGAAcoを発現しているベクターを用いて処置されたマウスにおいて有意により高かった。驚くべきことに、インビボにおいてsp2構築物を用いて達成された分泌レベルは、sp7及びsp8により操作されたhGAAを用いて測定されたものより有意に低かった(
図1B)。要するに、これらのデータは、肝臓において効果的に分泌されているタンパク質に由来するシグナルペプチドを用いての野生型シグナルペプチドの置換が、インビボにおける循環中のhGAAレベルを増加させるための効果的な戦略であることを示す。さらに、インビボにおいてsp7及びsp8シグナルペプチドを用いて得られた意外な結果は、全てのシグナルペプチドがインビボにおいて同等に効果的であるわけではなく、シグナルペプチドsp7及びsp8が、インビボにおいてsp1及びsp2と比較して優れた分泌効力を駆動することを示す。
【0186】
次いで、そうした所見は、疾患動物モデルであるGAA-/-マウスにおいて確認された。このマウスモデルは、様々な臓器におけるグリコーゲン蓄積と共に、筋肉における酵素の残留活性を全く示さず、その結果、筋肉強度の障害及び寿命の短縮がもたらされる。
【0187】
GAA-/-マウスにおけるポンペ病表現型の救出における様々なベクターの有効性を比較するために、本発明者らは、2×10
12vg/kgのhGAAcoを発現しているベクター、並びにシグナルペプチドsp2、7及び8と融合させた操作されたバージョンの注射の長期効果を経過観察した。注射から3カ月後、本発明者らは、非常に効果的なシグナルペプチドsp2、7及び8を有するhGAAcoを発現しているAAV8を注射した後に有意に増加した循環中のhGAAを観察した(
図2A)。注目すべきは、sp7シグナルペプチドと融合させたhGAAcoは、他の2つの構築物で観察されたものより有意により高いhGAAの循環中レベルをもたらした。この実験における長期経過観察により、本発明者らはGAA-/-マウスの生存期間を推測することが可能となった。マウスに、4か月齢の時に注射し、次いで、6カ月間経過観察した。この期間中にPBSの注射された群では10匹中8匹のGAA-/-マウスが死滅し、一方、hGAAcoを発現している構築物で処置されたGAA-/-動物及び野生型動物においては僅か45匹中1匹の死滅が報告された。この所見の統計学的有意性(
図2B)は、全てのhGAAco発現ベクターを用いての処置が、分泌レベルとは独立して、GAA-/-マウスで観察された致命的表現型を救出することを示す。このマウスモデルにおいて報告された別の表現型は、低下した呼吸機能である。特に、減少した一回呼吸量が報告され(DeRuisseau et al PNAS 2008)、該減少は、神経系におけるグリコーゲンの蓄積に起因することが実証されている。神経系におけるグリコーゲンレベルの救出は、hGAAが血液脳関門を通過できるかに依存し、他のリソソーム蓄積症では(Polito et al Hum. Mol. Genet. 2010, Cho et al Orph. J. of Rare Dis. 2015)、これは該タンパク質の循環レベルに直接依存することが実証されている。それ故、本発明者らは、GAA-/-マウスの一回呼吸量に対する、長期の高い循環レベルのhGAAの効果を評価した。注射から3カ月後、GAA-/-マウスは、有意ではないが(p=0.104)減少した一回呼吸量を示し、一方、sp7で処置されたマウスはWTマウスにおいて観察されたものと非常に類似した一回呼吸量を示した(p=0.974)(
図2C、左)。注射から6カ月後、2匹のGAA-/-マウスのみが生存し、それらはあまり重度ではない呼吸表現型を有しているようである。ここでも、sp7 hGAAcoで処置されたマウスは、WT動物において観察されたものと類似した一回呼吸量を示した(p=0.969)(
図2C、右)。重要なことには、sp1及びsp7 hGAAcoで処置されたマウスにおいて測定された一回呼吸量の間の統計学的有意差(p=0.041)が注記され、sp7-GAAで処置されたマウスにおいてより顕著な改善が示された。要するに、これらのデータは、sp7シグナルペプチドと融合させたhGAAcoを発現しているAAV8を用いての肝臓への形質導入により、GAA-/-マウスにおいて血中での優れたhGAAレベルと同時に呼吸機能の完全な表現型の修復がなされることを示す。
【0188】
次いで、本発明者らは、循環中の高いレベルのhGAAが、骨格筋におけるグリコーゲン蓄積を救出するかどうかを確認した。本発明者らは、上記のように注射されたマウスの四頭筋におけるhGAA活性を測定した。hGAAを発現しているベクターの注射により、四頭筋におけるhGAA活性は、WT動物において観察されたのと同等なレベルへと上昇した(
図3A)。四頭筋におけるグリコーゲンの測定は、GAA-/-マウスが、WT動物と比べて約20倍多くのグリコーゲンを蓄積することを示す(p=3.5×10
-6)。この蓄積は、hGAA発現ベクターを用いての処置によって元に戻り(GAA-/-に対してp<0.05)、sp7を用いると野生型動物のレベルと区別できない最も低いグリコーゲンレベルを示した(WTに対してp=0.898)(
図3B)。
【0189】
効果的なシグナルペプチドとhGAAの融合物がその分泌を改善し、インビボにおいて疾患の表現型の修復を増加させることを確認するために、本発明者らは、GAA-/-マウスに低用量のベクターを注射し、本発明者らは表現型の生化学的修復を評価した。シグナルペプチド1、7及び8と融合させたhGAAcoを発現している6×10
11vg/kgのベクターの注射から3カ月後、本発明者らは循環中のhGAAを測定した。とりわけ、sp7及び8により、PBSで処置されたマウスと比較して血清中で検出可能な分泌されたhGAAの3倍増加がもたらされた(
図4A)。本発明者らはさらに、処置動物及び対照に由来する組織の生化学的分析を実施することによって、hGAAcoを発現しているAAV8ベクターの治療効果を調べた。本発明者らは、上記のように処置されたGAA-/-マウスの心臓、横隔膜、及び四頭筋におけるグリコーゲン含量を評価した。注目すべきは、本発明者らは、hGAAco発現ベクターを用いての処置後に組織中に高いレベルのhGAAを観察し(データは示されていない)、これは、考察された全ての組織におけるグリコーゲン含量の有意な減少と相関していた(
図4B~D)。特に、心臓(
図4B)における、非常に効果的なシグナルペプチドsp7及び8を有するベクターを用いての処置後に測定されたグリコーゲンレベルは、罹患していない野生型動物において観察されたものと区別できなかった(それぞれ、野生型に対してp=0.983及び0.996)。重要なことには、sp7ベクター及びsp8ベクターの両方を用いての処置後に観察されたレベルは、PBSの注射された又は野生型hGAAco発現ベクター(sp1と記載)を用いて処置されたGAA-/-動物と比較して有意に減少していた。
【0190】
本発明者らは、本発明者らのベクターを用いての肝臓への形質導入が、導入遺伝子に対する体液性応答を誘発するかどうかを試験した。マウスに、肝特異的プロモーターの転写制御下にある、天然sp1シグナルペプチドを有するhGAAco1(co)、又はsp2、sp7、若しくはsp8と融合させたΔ8-hGAAco1を発現しているAAV8ベクターを静脈内注射した。結果を
図5に提示する。構成性プロモーターの転写制御下にあるΔ8-hGAAco1を発現しているAAVを筋肉内注射されたGaa-/-は、非常に高いレベルの全IgG(約150μg/mL)を示し、一方、一般的に肝臓において同じタンパク質を発現しているベクターは、より低いレベルの体液性応答を示した。興味深いことに、sp1 hGAAco1(co)発現ベクターを注射されたマウスは、両方の用量において検出可能なレベルの抗体を示し、一方、操作された高度に分泌されるベクターを注射されたマウスは、検出不可能なIgGレベルを示した。これらのデータは、肝臓における導入遺伝子の発現が、末梢性寛容の誘発に必要であることを示し、また、それらは、効果的なシグナルペプチドとの融合によって達成されるhGAAの高い循環レベルが、タンパク質それ自体に対する体液性応答の低減を誘発するという見通しも提供する。
【0191】
マウス試験において選択された最善の挙動を示すベクターを、2匹の非ヒト霊長類(NHP、カニクイザル属)に注射することにより、本発明者らのベクターの分泌の有効性及び筋肉への取り込みを確認した。本発明者らは、2匹のサルに2×10
12vg/kgのAAV8-hAAT-sp7-Δ8-hGAAco1を注射した。注射の1カ月後、本発明者らは、特異的な抗hGAA抗体を使用してウェスタンブロットによって2匹の動物の血清中のhGAAレベルを測定した。本発明者らは、2匹のサルにおいてhGAAのサイズと適合したサイズを有する明瞭なバンドを観察した。このバンドは、ベクターの注射から12日前に得られた血清試料中には存在せず、したがって、本発明者らの検出法の特異性が確認された(
図6A)。注射の3カ月後、本発明者らは動物を屠殺し、本発明者らは組織を入手し、肝臓から血流中に分泌されたhGAAが筋肉によって効果的に取り込まれたかどうかを確認した。本発明者らは、2匹のサルの二頭筋及び横隔膜から得られた完全溶解液に対して、hGAAに特異的な抗体を使用してウェスタンブロットを実施した。興味深いことに、本発明者らは、2番の動物に明瞭なバンドを観察することができ、これはまた、血流中においても最も高いhGAAレベルを示した(
図6B)。また、1番の動物において本発明者らは、分析された両方の筋肉においてhGAAのものと一致する分子量を有するかすかなバンドを観察することができた。これらのデータは、AAV8-hAAT-sp7-Δ8-hGAAco1ベクターが、非ヒト霊長類の肝臓を効果的に形質導入することを示す。それらはまた、血流中に分泌されたタンパク質が、筋肉に効果的に取り込まれ、この取り込みは、血中において測定されたhGAAのレベルと相関することを実証する。
【0192】
本発明者らはさらに、様々なGAAバージョン(全てのコドンが最適化されている)(1:天然sp1 GAAシグナルペプチドを含む天然GAA(co)、2.異種sp7又はsp8シグナルペプチドを含有している操作されたGAA(sp7-co又はsp8-co))を用いてトランスフェクトされたHuH7細胞の培地及び溶解液中のGAA活性の分析を実施した。分析は、天然GAA(co)と比較して操作されたバージョンを用いてトランスフェクトされた細胞の培地中に有意により高いGAA活性を示した(
図7)。興味深いことに、その代わりに細胞内GAA活性は、操作されたバージョンと比較して天然GAA(co)を使用した場合には有意により高く、このことは、天然GAAは細胞内に主に保持されていることを示す。
【0193】
本発明者らはまた、GSD IIIマウスモデルにおけるマウス試験において選択された最善な挙動を示すベクター(AAV8-hAAT-sp7-Δ8-hGAAco1)の効果を決定した。本発明者らはグリコーゲン枝切り酵素(GDE)のノックアウトマウスモデルを開発した。このモデルは、糖原病III型(GSDIII)に罹患したヒトにおいて観察される疾患の表現型を再現する。特に、GDE活性を完全に欠失したGDE-/-マウスは筋肉強度の障害を有し、様々な組織にグリコーゲンを蓄積している。興味深いことには、それらはまた、肝臓にもグリコーゲンを蓄積し、これはヒトにも見られる。ここで本発明者らは、肝臓におけるsp7-Δ8-hGAAの過剰発現がGDE-/-マウスにおいて観察されたグリコーゲン蓄積を救出するかどうかを試験した。本発明者らは、GDE-/-マウスに1×10
11又は1×10
12vg/マウスのAAV8-hAAT-sp7-Δ8-hGAAco1を注射した。対照として、本発明者らは平行して、野生型(WT)及びGDE-/-マウスにPBSを注射した。ベクターの投与から3カ月後、マウスを屠殺し、肝臓におけるグリコーゲンレベルを定量した。結果を
図8に報告する。すでに報告されているように(Pagliarani et al及び本発明者らのモデル)、GDE-/-マウスは肝臓において有意なグリコーゲン蓄積の増加を示し(p=1.3×10
-7)、野生型動物と比較して5倍のグリコーゲンを有する。驚くべきことには、1×10
11及び1×1×10
12vg/マウスのAAV8-hAAT-sp7-Δ8-hGAAco1ベクターによる処置は、グリコーゲン含量の統計学的に有意な減少を誘発した(それぞれ、p=4.5×10
-5及び1.4×10
-6)。重要なことには、特に最も高い用量で、AAV8-hAAT-sp7-Δ8-hGAAco1ベクターを注射されたマウスの肝臓において測定されたグリコーゲンレベルは、野生型動物において測定されたものと区別できなかった(1×10
11の用量コホートではp=0.053、1×10
12の用量コホートでは0.244)。
【0194】
本発明者らは、様々なGAAバージョン(全てのコドンが最適化されている)(1:天然sp1 GAAシグナルペプチドを含む天然GAA(co)、2.異種sp7シグナルペプチドを含有している操作されたGAA(sp7-co)、及び3.異種sp7シグナルペプチドを含有し、その後、様々な数のアミノ酸を欠失させた操作されたGAA(sp7-Δ8-co、sp7-Δ29-co、sp7-Δ42-co、sp7-Δ43-co、sp7-Δ47-co、及びsp7-Δ62-co、ここで配列番号5の8個、29個、42個、47個、及び62個の最初のN末端アミノ酸がそれぞれ欠失している))を用いてトランスフェクトされたHuH7細胞の培地及び溶解液中のGAA活性の分析を実施した。分析は、操作された欠失していないGAA(sp7-co)及び天然GAA(co)の両方と比較して、Δ8、Δ29、Δ42及びΔ43 GAAバージョンを用いてトランスフェクトされた細胞の培地中に有意により高いGAA活性を示した(
図9)。その代わりに有意により低いGAA活性が、他の操作されたGAAバージョン[欠失あり(sp7-Δ8-co、sp7-Δ29-co、sp7-Δ42-co、sp7-Δ43-co及び欠失なし(sp7-co))と比較して、Δ47及びΔ62GAAバージョンを用いてトランスフェクトされた細胞の培地中において観察された。興味深いことには、(
図10)細胞内GAA活性は、生産的な欠失(sp7-Δ8-co、sp7-Δ29-co、sp7-Δ42-co、sp7-Δ43-co)と欠失なしのバージョン(sp7-co)との間で差がなく、このことは、それらは全て細胞内で効果的に生成されプロセシングされることを示す。その代わりに細胞内GAA活性は、sp7-Δ47-co及びsp7-Δ62-coバージョンにおいて非常に低く、他の全ての操作されたバージョン[欠失あり(sp7-Δ8-co、sp7-Δ29-co、sp7-Δ42-co、sp7-Δ43-co)及び欠失なし(sp7-co)]と比較して有意により低いことを示す。
【0195】
本発明者らはまた、様々なGAAバージョン(全てのコドンが最適化されている)(1:天然sp1 GAAシグナルペプチドを含む天然GAA(co)、2.異種sp6又はsp8シグナルペプチドを含有している操作されたGAA(sp6-co、sp8-co)、及び3.異種sp6又はsp8シグナルペプチドを含有し、その後、8アミノ酸を欠失させた、操作されたGAA(sp6-Δ8-co、sp8-Δ8-co))を用いてトランスフェクトされたHuH7細胞の培地及び溶解液中のGAA活性の分析を実施した。分析は、i.それらのそれぞれの操作された欠失していないGAAバージョン(sp6-co又はsp8-co);及びii.天然GAA(co)と比較して、Δ8バージョンを用いてトランスフェクトされた細胞の培地中において有意により高いGAA活性を示した(
図11)。興味深いことに、細胞内GAA活性は、全ての操作されたGAAバージョン(欠失あり及び欠失なしの両方)間で差はなく、このことは、それらは細胞内で効果的に生成されプロセシングされることを示す(細胞溶解液のパネル)。その代わりに細胞内GAA活性は、操作されたバージョンと比較して天然GAA(co)を使用した場合に有意により高く、このことは、天然GAAが主に細胞内に保持されていることを示す。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2022-10-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載される発明。
【外国語明細書】