(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180564
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】熱硬化性シート及び硬化シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20221129BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20221129BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20221129BHJP
C08K 3/011 20180101ALI20221129BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221129BHJP
【FI】
C08J5/18 CFC
C08L101/00
C08K3/38
C08K3/011
C08K3/013
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152501
(22)【出願日】2022-09-26
(62)【分割の表示】P 2018085255の分割
【原出願日】2018-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2017090212
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】孫 仁徳
(72)【発明者】
【氏名】足羽 剛児
(72)【発明者】
【氏名】大鷲 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】川原 悠子
(72)【発明者】
【氏名】佐野 誠実
(57)【要約】
【課題】熱伝導性及び耐電圧性の双方を高めることができる熱硬化性シートを提供する。
【解決手段】本発明に係る熱硬化性シートは、熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、複数の窒化ホウ素粒子とを含み、110℃で30分間硬化を進行させて得られる第1の硬化シートにおける窒化ホウ素粒子の配向度S1と、前記第1の硬化シートを195℃及び圧力12MPaで60分間硬化を進行させて得られる第2の硬化シートにおける窒化ホウ素粒子の配向度S2とが、式:1.05×S1≦S2≦3.0×S1の関係を満足する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、複数の窒化ホウ素粒子とを含み、
110℃で30分間硬化を進行させて得られる第1の硬化シートにおける窒化ホウ素粒子の配向度S1と、前記第1の硬化シートを195℃及び圧力12MPaで60分間硬化を進行させて得られる第2の硬化シートにおける窒化ホウ素粒子の配向度S2とが、式:1.05×S1≦S2≦3.0×S1の関係を満足する、熱硬化性シート。
【請求項2】
前記窒化ホウ素粒子が、窒化ホウ素粒子が凝集した凝集体を含む、請求項1に記載の熱硬化性シート。
【請求項3】
前記窒化ホウ素粒子の含有量が、10体積%以上、80体積%以下である、請求項1又は2に記載の熱硬化性シート。
【請求項4】
窒化ホウ素粒子ではない絶縁性フィラーを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の熱硬化性シート。
【請求項5】
前記窒化ホウ素粒子と前記絶縁性フィラーとの合計の含有量が、20体積%以上、80体積%以下である、請求項4に記載の熱硬化性シート。
【請求項6】
前記窒化ホウ素粒子と前記絶縁性フィラーとの合計100体積%中、前記窒化ホウ素粒子の含有量が50体積%以上である、請求項4又は5に記載の熱硬化性シート。
【請求項7】
熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、複数の窒化ホウ素粒子とを含む熱硬化性シートを前硬化させて、第1の硬化シートを得る工程と、
前記第1の硬化シートを後硬化させて、硬化シートを得る工程とを備え、
前記第1の硬化シートにおける窒化ホウ素粒子の配向度S1と、得られる硬化シートにおける窒化ホウ素粒子の配向度S2とが、式:1.05×S1≦S2≦3.0×S1の関係を満足するように前硬化及び後硬化を行う、硬化シートの製造方法。
【請求項8】
前記窒化ホウ素粒子が、窒化ホウ素粒子が凝集した凝集体を含む、請求項7に記載の硬化シートの製造方法。
【請求項9】
前記熱硬化性シートにおける前記窒化ホウ素粒子の含有量が、10体積%以上、80体積%以下である、請求項7又は8に記載の硬化シートの製造方法。
【請求項10】
前記熱硬化性シートが、窒化ホウ素粒子ではない絶縁性フィラーを含む、請求項7~9のいずれか1項に記載の硬化シートの製造方法。
【請求項11】
前記熱硬化性シートにおける前記窒化ホウ素粒子と前記絶縁性フィラーとの合計の含有量が、20体積%以上、80体積%以下である、請求項10に記載の硬化シートの製造方法。
【請求項12】
前記熱硬化性シートにおける前記窒化ホウ素粒子と前記絶縁性フィラーとの合計100体積%中、前記窒化ホウ素粒子の含有量が50体積%以上である、請求項10又は11に記載の硬化シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の窒化ホウ素粒子を含む熱硬化性シートに関する。また、本発明は、上記熱硬化性シートを熱硬化させる硬化シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子又は電気機器の小型化及び高性能化が進行している。これに伴って、電子部品の実装密度が高くなってきており、電子部品から発生する熱を放散させる必要が高まっている。発熱はデバイスや機器の信頼性に直結する問題であり、如何に熱を早く放散させるかが緊急の課題となっている。
【0003】
上記の課題を解決する一つの手法として、パワー半導体デバイスを実装する放熱基板に、アルミナ基板や窒化アルミニウム基板などの熱伝導性の高いセラミック基板が使用されている。しかしながら、これらの基板では、多層化が困難であり、加工性も悪く、コストも非常に高いという課題がある。
【0004】
一方で熱を放散させるために、熱伝導性フィラーを含む熱伝導性組成物が用いられている。下記の特許文献1~3には、熱伝導性フィラーとして用いることができるフィラーが開示されている。
【0005】
下記の特許文献1には、有機マトリックス材料中に、熱伝導性充填剤として窒化ホウ素粉末が分散されている熱伝導性シートが開示されている。上記窒化ホウ素粉末は、粒径50μm以上の二次凝集体粒子を1~20重量%で含む。
【0006】
下記の特許文献2には、マトリックス樹脂中に、3μm以上50μm以下の平均長径を有する鱗片状窒化ホウ素を30体積%以上80体積%以下で含む熱伝導性シートが開示されている。上記熱伝導性シートの厚み方向にX線を照射して得られるX線回折図において、<100>面に対する<002>面の回折ピークの強度比(I<002>/I<100>)は、6以上200以下であってもよい。
【0007】
下記の特許文献3には、ゴム又は樹脂中に、窒化ホウ素が分散されている絶縁放熱シートが開示されている。上記窒化ホウ素は、流動層内で窒化ホウ素を流動させながら、アミノ基を有するシランカップリング剤を特定の量で用いて造粒することによって得られる。上記絶縁放熱シートでは、シート厚さ方向にX線を照射して得られるX線回折図における002回折線の強度I002と100回折線の強度I100との比であるピーク強度比I002/I100が6以上80以下であってもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003-60134号公報
【特許文献2】特開2011-142129号公報
【特許文献3】特開2013-220971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1~3に記載のような従来の窒化ホウ素粒子を含む組成物では、熱伝導性をある程度高めることができる。
【0010】
しかし、特許文献1~3に記載のような従来の窒化ホウ素粒子を含む組成物では、熱伝導性をある程度高めることができたとしても、耐電圧性が十分に高くならないことがある。
【0011】
従来の窒化ホウ素粒子を含む組成物では、高い熱伝導性と高い耐電圧性とを両立することは困難である。
【0012】
本発明の目的は、熱伝導性及び耐電圧性の双方を高めることができる熱硬化性シートを提供することである。また、本発明の目的は、熱伝導性及び耐電圧性の双方を高めることができる硬化シートの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、高い熱伝導性と高い耐電圧性とを両立するためには、第1の硬化シートにおける窒化ホウ素粒子の配向度S1と、第2の硬化シートにおける窒化ホウ素粒子の配向度S2との比が重要であることを見出し、本発明の完成に至った。上記第1の硬化シートは、110℃で30分間硬化を進行させて得られる。上記第2の硬化シートは、上記第1の硬化シートを195℃及び圧力12MPaで60分間硬化を進行させて得られる。
【0014】
さらに、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、高い熱伝導性と高い耐電圧性とを両立するためには、硬化シートを得る際に、前硬化させた後の窒化ホウ素粒子の配向度S1と、前硬化後に後硬化させた後の窒化ホウ素粒子の配向度S2との比が重要であることを見出し、本発明の完成に至った。
【0015】
本発明の広い局面によれば、熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、複数の窒化ホウ素粒子とを含み、110℃で30分間硬化を進行させて得られる第1の硬化シートにおける窒化ホウ素粒子の配向度S1と、前記第1の硬化シートを195℃及び圧力12MPaで60分間硬化を進行させて得られる第2の硬化シートにおける窒化ホウ素粒子の配向度S2とが、式:1.05×S1≦S2≦3.0×S1の関係を満足する、熱硬化性シートが提供される。
【0016】
また、本発明の広い局面によれば、熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、複数の窒化ホウ素粒子とを含む熱硬化性シートを前硬化させて、第1の硬化シートを得る工程と、前記第1の硬化シートを後硬化させて、硬化シートを得る工程とを備え、前記第1の硬化シートにおける窒化ホウ素粒子の配向度S1と、得られる硬化シートにおける窒化ホウ素粒子の配向度S2とが、式:1.05×S1≦S2≦3.0×S1の関係を満足するように前硬化及び後硬化を行う、硬化シートの製造方法が提供される。
【0017】
本発明のある特定の局面では、前記窒化ホウ素粒子が、窒化ホウ素粒子が凝集した凝集体を含む。
【0018】
本発明のある特定の局面では、前記熱硬化性シートにおける前記窒化ホウ素粒子の含有量が、10体積%以上、80体積%以下である。
【0019】
本発明のある特定の局面では、前記熱硬化性シートが、窒化ホウ素粒子ではない絶縁性フィラーを含む。
【0020】
本発明のある特定の局面では、前記熱硬化性シートにおける前記窒化ホウ素粒子と前記絶縁性フィラーとの合計の含有量が、20体積%以上、80体積%以下である。
【0021】
本発明のある特定の局面では、前記熱硬化性シートにおける前記窒化ホウ素粒子と前記絶縁性フィラーとの合計100体積%中、前記窒化ホウ素粒子の含有量が50体積%以上である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る熱硬化性シートは、熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、複数の窒化ホウ素粒子とを含む。本発明では、110℃で30分間硬化を進行させて得られる第1の硬化シートにおける窒化ホウ素粒子の配向度S1と、上記第1の硬化シートを195℃及び圧力12MPaで60分間硬化を進行させて得られる第2の硬化シートにおける窒化ホウ素粒子の配向度S2とが、式:1.05×S1≦S2≦3.0×S1の関係を満足する。本発明に係る熱硬化性シートでは、上記の構成が備えられているので、熱伝導性及び耐電圧性の双方を高めることができる。
【0023】
本発明に係る硬化シートの製造方法は、熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、複数の窒化ホウ素粒子とを含む熱硬化性シートを前硬化させて、第1の硬化シートを得る工程を備える。本発明に係る硬化シートの製造方法は、上記第1の硬化シートを後硬化させて、硬化シートを得る工程を備える。本発明に係る硬化シートの製造方法では、上記第1の硬化シートにおける窒化ホウ素粒子の配向度S1と、得られる硬化シートにおける窒化ホウ素粒子の配向度S2とが、式:1.05×S1≦S2≦3.0×S1の関係を満足するように前硬化及び後硬化を行う。本発明に係る硬化シートの製造方法では、上記の構成が備えられているので、熱伝導性及び耐電圧性の双方を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係る熱硬化性シートの硬化物を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0026】
本発明に係る熱硬化性シート、及び、本発明に係る硬化シートの製造方法において用いられる熱硬化性シートは、(A)熱硬化性化合物と、(B)熱硬化剤と、複数の(C)窒化ホウ素粒子とを含む。上記熱硬化性シートは、熱伝導シートとして用いることができる。上記複数の窒化ホウ素粒子は、窒化ホウ素粒子が凝集した凝集体((C1)窒化ホウ素粒子の凝集体、又は、(C1)凝集体ともいう)を含んでいてもよい。
【0027】
本発明に係る熱硬化性シートにおいて、110℃で30分間硬化を進行させて得られる第1の硬化シートは、例えばBステージシートと呼ぶことができる。本発明に係る熱硬化性シートにおいて、上記第1の硬化シートを195℃及び圧力12MPaで60分間硬化を進行させて得られる第2の硬化シートは、例えばCステージシートと呼ぶことができる。
【0028】
本発明に係る硬化シートの製造方法において、前硬化させて得られる第1の硬化シートは、例えばBステージシートと呼ぶことができる。本発明に係る硬化シートの製造方法において、上記第1の硬化シートを後硬化させて得られる硬化シート(第2の硬化シート)は、例えばCステージシートと呼ぶことができる。
【0029】
本発明に係る熱硬化性シートでは、110℃で30分間硬化を進行させて得られる第1の硬化シートにおける窒化ホウ素粒子の配向度S1と、上記第1の硬化シートを195℃及び圧力12MPaで60分間硬化を進行させて得られる第2の硬化シートにおける窒化ホウ素粒子の配向度S2とが、下記式(1)の関係を満足する。
【0030】
本発明に係る硬化シートの製造方法では、前硬化させた第1の硬化シートにおける窒化ホウ素粒子の配向度S1と、上記第1の硬化シートを後硬化させた硬化シート(第2の硬化シート)における窒化ホウ素粒子の配向度S2とが、下記式(1)の関係を満足するように前硬化及び後硬化を行う。
【0031】
1.05×S1≦S2≦3.0×S1・・・式(1)
【0032】
本発明では、上記の構成が備えられているので、熱伝導性及び耐電圧性の双方を高めることができる。本発明では、高い熱伝導性と高い耐電圧性とを両立することができる。特に、本発明者らにより、上記第1の硬化シートにおける配向度S1と、熱硬化性シートを第1の硬化シートよりも硬化を進行させた上記第2の硬化シートにおける配向度S2とを上述した関係を満足するように制御することにより、高い熱伝導性と高い耐電圧性とを両立することができることが見出された。
【0033】
熱伝導性及び耐電圧性を効果的に高める観点からは、配向度S2は、好ましくは1.07×配向度S1以上、好ましくは2.3×配向度S1以下である。
【0034】
上記配向度S1及び上記配向度S2は、具体的には、以下のようにして測定される。
【0035】
上記第1,第2の硬化シートのX線回折パターンをX線回折装置(リガク社製「SmartLab Multipurpose」)を用いて測定する。CuKα線で45kV、200mAの条件で2θ、20°~60°のスキャン範囲において、0.02°のステップで測定を行う。計数時間は2°/分とする。得られた回折パターンから、26.7°の窒化ホウ素粒子の(002)面に対応した回折ピーク強度I(002)と、41.6°の窒化ホウ素粒子の(100)面に対応した回折ピーク強度I(100)とをそれぞれ算出する。上記第1の硬化シートを用いて算出した回折ピーク強度I(002)の回折ピーク強度I(100)に対する比が配向度S1であり、上記第2の硬化シートを用いて算出した回折ピーク強度I(002)の回折ピーク強度I(100)に対する比が配向度S2である。
【0036】
配向度S1と配向度S2とを上述した関係を満足することが容易であることから、上記第1の硬化シートにおける窒化ホウ素粒子の配向度S1は、好ましくは5以上、好ましくは60以下である。
【0037】
本発明に係る熱硬化性シートにおいて、窒化ホウ素粒子の種類を選択する方法等によって、上記配向度S1及びS2を制御することができる。
【0038】
本発明に係る硬化シートの製造方法において、窒化ホウ素粒子の種類を選択する方法及び硬化時の温度及び圧力を制御する方法等によって、上記配向度S1及びS2を制御することができる。
【0039】
本発明に係る熱硬化性シートの実際の使用時に、前硬化の硬化条件は、110℃で30分間硬化させる条件でなくてもよい。本発明に係る熱硬化性シートの実際の使用時に、後硬化の硬化条件は、195℃及び圧力12MPaで60分間硬化させる条件でなくてもよい。
【0040】
本発明に係る硬化シートの製造方法では、前硬化の硬化条件は、110℃で30分間硬化させる条件でなくてもよい。本発明に係る硬化シートの製造方法では、後硬化の硬化条件は、195℃及び圧力12MPaで60分間硬化させる条件でなくてもよい。
【0041】
上記後硬化時の加熱温度は、好ましくは120℃以上、好ましくは250℃以下である。第1の硬化シートを後硬化させる際に、加熱しながら圧力を付与してもよく、一旦圧力をかけた後に加熱してもよい。また、温度及び圧力の付与方法としては、従来の加熱機能を有するプレス機を用いてもよく、等方的に圧力を付与できる等方加圧装置を用いてもよい。上記後硬化時の圧力は好ましくは1.0MPa以上、より好ましくは2.0MPa以上であり、好ましくは30MPa以下、より好ましくは25MPa以下である。また、圧力をかける際には、真空状態であってもよい。
【0042】
熱伝導性及び耐電圧性の双方を効果的に高める観点からは、(C)窒化ホウ素粒子を構成する窒化ホウ素が、六方晶窒化ホウ素であることが好ましい。
【0043】
本発明の効果により一層優れることから、凝集していない(C)窒化ホウ素粒子、及び(C1)凝集体を構成する(C)窒化ホウ素粒子のそれぞれは、鱗片状の形状を有することが好ましい。凝集していない(C)窒化ホウ素粒子、及び(C1)凝集体を構成する(C)窒化ホウ素粒子のそれぞれにおいて、平均長径の平均厚さに対する比が好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、好ましくは200以下、より好ましくは100以下である。
【0044】
熱伝導性を効果的に高め、圧縮強度を適度な範囲に制御する観点からは、複数の(C)窒化ホウ素粒子(凝集していない(C)窒化ホウ素粒子、及び(C1)凝集体を構成する(C)窒化ホウ素粒子)の平均一次粒子径は好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.5μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。
【0045】
(C)窒化ホウ素粒子の平均一次粒子径は、一次粒子の体積基準での粒子径の平均を意味する。(C)窒化ホウ素粒子の平均一次粒子径は、堀場製作所社製「レーザー回析式粒度分布測定装置」を用いて、測定することができる。
【0046】
(C)窒化ホウ素粒子を高密度に充填し、熱伝導性を効果的に高め、かつボイドの発生を効果的に抑制する観点からは、(C1)窒化ホウ素粒子の凝集体の平均アスペクト比は、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下、更に一層好ましくは1.8以下、特に好ましくは1.6以下、最も好ましくは1.5以下である。
【0047】
アスペクト比は、長径/短径である。平均アスペクト比は、複数の(C1)凝集体のアスペクト比を平均することにより求められる。任意に選択された50個の(C1)凝集体のアスペクト比を平均することが好ましい。
【0048】
樹脂中での分散性、経時安定性及び熱伝導性をより一層高める観点から、(C1)窒化ホウ素粒子の凝集体の平均粒径は好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下である。
【0049】
(C1)窒化ホウ素粒子の凝集体の平均粒径は、粒度分布測定により、体積基準での粒子径を測定することにより求められる。(C1)窒化ホウ素粒子の凝集体の平均粒径は、堀場製作所社製「レーザー回析式粒度分布測定装置」を用いて、測定することができる。任意に選択された50個の(C1)凝集体の粒子径を平均することが好ましい。
【0050】
熱伝導性を効果的に高める観点からは、(C1)窒化ホウ素粒子の凝集体の平均球形度は、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.85以上、更に好ましくは0.9以上である。
【0051】
(C1)窒化ホウ素粒子の凝集体の製造方法としては、噴霧乾燥方法、及び、流動層造粒方法等が挙げられる。噴霧乾燥方法(スプレードライとも呼ばれる)が好ましい。噴霧乾燥法は、スプレー方式によって、二流体ノズル方式、ディスク方式(ロータリ方式とも呼ばれる)、及び超音波ノズル方式などに分類でき、これらのどの方式でも適用できる。
【0052】
圧縮強度及び耐電圧性を効果的に高める観点からは、本発明に係る熱硬化性シートは、(A)熱硬化性化合物と、(B)熱硬化剤と、(C)窒化ホウ素粒子((C1)凝集体を含んでいてもよい)と、(D)窒化ホウ素粒子ではない絶縁性フィラー(単に、(D)絶縁性フィラーと記載することがある)とを含むことが好ましい。
【0053】
(A)~(D)成分を含む組成の採用によって、硬化物の放熱性をかなり高めることができる。例えば、(A)熱硬化性化合物と、(B)熱硬化剤と、(C)窒化ホウ素粒子((C1)凝集体を含んでいてもよい)と、(D)絶縁性フィラーとを併用することで、これらを併用していない場合と比べて、放熱性、圧縮強度及び耐電圧性が効果的に高くなる。本発明では、従来満足することが困難であった高い放熱性と高い圧縮強度と高い耐電圧性との効果を高レベルで達成することができる。
【0054】
以下、本発明の他の詳細を説明する。
【0055】
((A)熱硬化性化合物)
(A)熱硬化性化合物としては、スチレン化合物、フェノキシ化合物、オキセタン化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。(A)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0056】
熱伝導性及び耐電圧性の双方を効果的に高める観点からは、(A)熱硬化性化合物は、エポキシ化合物を含むことが好ましい。
【0057】
(A)熱硬化性化合物として、(A1)10000未満の分子量を有する熱硬化性化合物(単に、(A1)熱硬化性化合物と記載することがある)を用いてもよい。(A)熱硬化性化合物として、(A2)10000以上の分子量を有する熱硬化性化合物(単に、(A2)熱硬化性化合物と記載することがある)を用いてもよい。(A)熱硬化性化合物として、(A1)熱硬化性化合物と、(A2)熱硬化性化合物との双方を用いてもよい。
【0058】
熱硬化性シートに含まれる成分のうち、(C)窒化ホウ素粒子及び(D)絶縁性フィラーを除く成分100重量%中、(A)熱硬化性化合物の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上である。熱硬化性シートに含まれる成分のうち、(C)窒化ホウ素粒子及び(D)絶縁性フィラーを除く成分100重量%中、(A)熱硬化性化合物の含有量は好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更に好ましくは70重量%以下、特に好ましくは60重量%以下、最も好ましくは50重量%以下である。(A)熱硬化性化合物の含有量が上記下限以上であると、硬化物の接着性及び耐熱性がより一層高くなる。(A)熱硬化性化合物の含有量が上記上限以下であると、熱硬化性シートの作製時の塗工性が高くなる。
【0059】
熱硬化性シートに含まれる成分のうち、(C)窒化ホウ素粒子及び(D)絶縁性フィラーを除く成分は、熱硬化性シートが(D)絶縁性フィラーを含まない場合には、(C)窒化ホウ素粒子を除く成分であり、熱硬化性シートが(D)絶縁性フィラーを含む場合には、(C)窒化ホウ素粒子及び(D)絶縁性フィラーを除く成分である。
【0060】
(A1)10000未満の分子量を有する熱硬化性化合物:
(A1)熱硬化性化合物としては、環状エーテル基を有する熱硬化性化合物が挙げられる。上記環状エーテル基としては、エポキシ基及びオキセタニル基等が挙げられる。上記環状エーテル基を有する熱硬化性化合物は、エポキシ基又はオキセタニル基を有する熱硬化性化合物であることが好ましい。(A1)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0061】
(A1)熱硬化性化合物は、(A1a)エポキシ基を有する熱硬化性化合物(単に、(A1a)熱硬化性化合物と記載することがある)を含んでいてもよく、(A1b)オキセタニル基を有する熱硬化性化合物(単に、(A1b)熱硬化性化合物と記載することがある)を含んでいてもよい。
【0062】
硬化物の耐熱性及び耐湿性をより一層高める観点からは、(A1)熱硬化性化合物は芳香族骨格を有することが好ましい。
【0063】
上記芳香族骨格としては特に限定されず、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びビスフェノールA型骨格等が挙げられる。硬化物の耐冷熱サイクル特性及び耐熱性をより一層高める観点からは、ビフェニル骨格又はフルオレン骨格が好ましい。
【0064】
(A1a)熱硬化性化合物としては、ビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー、ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシモノマー、ナフタレン骨格を有するエポキシモノマー、アダマンタン骨格を有するエポキシモノマー、フルオレン骨格を有するエポキシモノマー、ビフェニル骨格を有するエポキシモノマー、バイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシモノマー、キサンテン骨格を有するエポキシモノマー、アントラセン骨格を有するエポキシモノマー、及びピレン骨格を有するエポキシモノマー等が挙げられる。これらの水素添加物又は変性物を用いてもよい。(A1a)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0065】
上記ビスフェノール骨格を有するエポキシモノマーとしては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、及びビスフェノールS型のビスフェノール骨格を有するエポキシモノマー等が挙げられる。
【0066】
上記ジシクロペンタジエン骨格を有するエポキシモノマーとしては、ジシクロペンタジエンジオキシド、及びジシクロペンタジエン骨格を有するフェノールノボラックエポキシモノマー等が挙げられる。
【0067】
上記ナフタレン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1-グリシジルナフタレン、2-グリシジルナフタレン、1,2-ジグリシジルナフタレン、1,5-ジグリシジルナフタレン、1,6-ジグリシジルナフタレン、1,7-ジグリシジルナフタレン、2,7-ジグリシジルナフタレン、トリグリシジルナフタレン、及び1,2,5,6-テトラグリシジルナフタレン等が挙げられる。
【0068】
上記アダマンタン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,3-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)アダマンタン、及び2,2-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)アダマンタン等が挙げられる。
【0069】
上記フルオレン骨格を有するエポキシモノマーとしては、9,9-ビス(4-グリシジルオキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-グリシジルオキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-グリシジルオキシ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-グリシジルオキシ-3-ブロモフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-グリシジルオキシ-3-フルオロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-グリシジルオキシ-3-メトキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-グリシジルオキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-グリシジルオキシ-3,5-ジクロロフェニル)フルオレン、及び9,9-ビス(4-グリシジルオキシ-3,5-ジブロモフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0070】
上記ビフェニル骨格を有するエポキシモノマーとしては、4,4’-ジグリシジルビフェニル、及び4,4’-ジグリシジル-3,3’,5,5’-テトラメチルビフェニル等が挙げられる。
【0071】
上記バイ(グリシジルオキシフェニル)メタン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,1’-バイ(2,7-グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’-バイ(2,7-グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’-バイ(3,7-グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’-バイ(3,7-グリシジルオキシナフチル)メタン、1,1’-バイ(3,5-グリシジルオキシナフチル)メタン、1,8’-バイ(3,5-グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’-バイ(2,7-グリシジルオキシナフチル)メタン、1,2’-バイ(3,7-グリシジルオキシナフチル)メタン、及び1,2’-バイ(3,5-グリシジルオキシナフチル)メタン等が挙げられる。
【0072】
上記キサンテン骨格を有するエポキシモノマーとしては、1,3,4,5,6,8-ヘキサメチル-2,7-ビス-オキシラニルメトキシ-9-フェニル-9H-キサンテン等が挙げられる。
【0073】
(A1b)熱硬化性化合物の具体例としては、例えば、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4-ベンゼンジカルボン酸ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]エステル、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、及びオキセタン変性フェノールノボラック等が挙げられる。(A1b)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0074】
硬化物の耐熱性をより一層良好にする観点からは、(A1)熱硬化性化合物は、環状エーテル基を2個以上有する熱硬化性化合物を含むことが好ましい。
【0075】
硬化物の耐熱性をより一層良好にする観点からは、(A1)熱硬化性化合物100重量%中、環状エーテル基を2個以上有する熱硬化性化合物の含有量は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上であり、好ましくは100重量%以下である。(A1)熱硬化性化合物100重量%中、環状エーテル基を2個以上有する熱硬化性化合物の含有量は10重量%以上、100重量%以下であってもよい。また、(A1)熱硬化性化合物の全体が、環状エーテル基を2個以上有する熱硬化性化合物であってもよい。
【0076】
(A1)熱硬化性化合物の分子量は、10000未満である。(A1)熱硬化性化合物の分子量は、好ましくは200以上であり、好ましくは1200以下、より好ましくは600以下、更に好ましくは550以下である。(A1)熱硬化性化合物の分子量が上記下限以上であると、硬化物の表面の粘着性が低くなり、硬化性組成物の取扱性がより一層高くなる。(A1)熱硬化性化合物の分子量が上記上限以下であると、硬化物の接着性がより一層高くなる。さらに、硬化物が固くかつ脆くなり難く、硬化物の接着性がより一層高くなる。
【0077】
なお、本明細書において、(A1)熱硬化性化合物における分子量とは、(A1)熱硬化性化合物が重合体ではない場合、及び(A1)熱硬化性化合物の構造式が特定できる場合は、当該構造式から算出できる分子量を意味し、(A1)熱硬化性化合物が重合体である場合は、重量平均分子量を意味する。
【0078】
熱硬化性シートに含まれる成分のうち、(C)窒化ホウ素粒子及び(D)絶縁性フィラーを除く成分100重量%中、(A1)熱硬化性化合物の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上である。熱硬化性シートに含まれる成分のうち、(C)窒化ホウ素粒子及び(D)絶縁性フィラーを除く成分100重量%中、(A1)熱硬化性化合物の含有量は好ましくは90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更に好ましくは70重量%以下、特に好ましくは60重量%以下、最も好ましくは50重量%以下である。(A1)熱硬化性化合物の含有量が上記下限以上であると、硬化物の接着性及び耐熱性がより一層高くなる。(A1)熱硬化性化合物の含有量が上記上限以下であると、熱硬化性シートの作製時の塗工性が高くなる。
【0079】
(A2)10000以上の分子量を有する熱硬化性化合物:
(A2)熱硬化性化合物は、分子量が10000以上である熱硬化性化合物である。(A2)熱硬化性化合物の分子量は10000以上であるので、(A2)熱硬化性化合物は一般にポリマーであり、上記分子量は、一般に重量平均分子量を意味する。
【0080】
硬化物の耐熱性及び耐湿性をより一層高める観点からは、(A2)熱硬化性化合物は、芳香族骨格を有することが好ましい。(A2)熱硬化性化合物がポリマーであり、(A2)熱硬化性化合物が芳香族骨格を有する場合には、(A2)熱硬化性化合物は、芳香族骨格をポリマー全体のいずれかの部分に有していればよく、主鎖骨格内に有していてもよく、側鎖中に有していてもよい。硬化物の耐熱性をより一層高くし、かつ硬化物の耐湿性をより一層高くする観点からは、(A2)熱硬化性化合物は、芳香族骨格を主鎖骨格内に有することが好ましい。(A2)熱硬化性化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0081】
上記芳香族骨格としては特に限定されず、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格及びビスフェノールA型骨格等が挙げられる。ビフェニル骨格又はフルオレン骨格が好ましい。この場合には、硬化物の耐冷熱サイクル特性及び耐熱性がより一層高くなる。
【0082】
(A2)熱硬化性化合物としては特に限定されず、スチレン樹脂、フェノキシ樹脂、オキセタン樹脂、エポキシ樹脂、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂及びポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0083】
硬化物の酸化劣化を抑え、硬化物の耐冷熱サイクル特性及び耐熱性をより一層高め、更に硬化物の吸水率をより一層低くする観点からは、(A2)熱硬化性化合物は、スチレン樹脂、フェノキシ樹脂又はエポキシ樹脂であることが好ましく、フェノキシ樹脂又はエポキシ樹脂であることがより好ましく、フェノキシ樹脂であることが更に好ましい。特に、フェノキシ樹脂又はエポキシ樹脂の使用により、硬化物の耐熱性がより一層高くなる。また、フェノキシ樹脂の使用により、硬化物の弾性率がより一層低くなり、かつ硬化物の耐冷熱サイクル特性がより一層高くなる。なお、(A2)熱硬化性化合物は、エポキシ基などの環状エーテル基を有していなくてもよい。
【0084】
上記スチレン樹脂として、具体的には、スチレン系モノマーの単独重合体、及びスチレン系モノマーとアクリル系モノマーとの共重合体等が使用可能である。スチレン-メタクリル酸グリシジルの構造を有するスチレン重合体が好ましい。
【0085】
上記スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレン、p-クロロスチレン、p-エチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、2,4-ジメチルスチレン及び3,4-ジクロロスチレン等が挙げられる。
【0086】
上記フェノキシ樹脂は、具体的には、例えばエピハロヒドリンと2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂、又は2価のエポキシ化合物と2価のフェノール化合物とを反応させて得られる樹脂である。
【0087】
上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格、ビフェニル骨格、アントラセン骨格、ピレン骨格、キサンテン骨格、アダマンタン骨格又はジシクロペンタジエン骨格を有することが好ましい。上記フェノキシ樹脂は、ビスフェノールA型骨格、ビスフェノールF型骨格、ビスフェノールA/F混合型骨格、ナフタレン骨格、フルオレン骨格又はビフェニル骨格を有することがより好ましく、フルオレン骨格及びビフェニル骨格の内の少なくとも1種の骨格を有することが更に好ましい。これらの好ましい骨格を有するフェノキシ樹脂の使用により、硬化物の耐熱性が更に一層高くなる。
【0088】
上記エポキシ樹脂は、上記フェノキシ樹脂以外のエポキシ樹脂である。上記エポキシ樹脂としては、スチレン骨格含有エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0089】
(A2)熱硬化性化合物の分子量は10000以上である。(A2)熱硬化性化合物の分子量は、好ましくは30000以上、より好ましくは40000以上であり、好ましくは1000000以下、より好ましくは250000以下である。(A2)熱硬化性化合物の分子量が上記下限以上であると、硬化物が熱劣化し難い。(A2)熱硬化性化合物の分子量が上記上限以下であると、(A2)熱硬化性化合物と他の成分との相溶性が高くなる。この結果、硬化物の耐熱性がより一層高くなる。
【0090】
熱硬化性シートに含まれる成分のうち、(C)窒化ホウ素粒子及び(D)絶縁性フィラーを除く成分100重量%中、(A2)熱硬化性化合物の含有量は好ましくは20重量%以上、より好ましくは30重量%以上であり、好ましくは60重量%以下、より好ましくは50重量%以下である。(A2)熱硬化性化合物の含有量が上記下限以上であると、熱硬化性シートの取扱性が良好になる。(A2)熱硬化性化合物の含有量が上記上限以下であると、(C)窒化ホウ素粒子及び(D)絶縁性フィラーの分散が容易になる。
【0091】
((B)熱硬化剤)
(B)熱硬化剤は特に限定されない。(B)熱硬化剤として、(A)熱硬化性化合物を硬化させることができる適宜の熱硬化剤を用いることができる。また、本明細書において、(B)熱硬化剤には、硬化触媒が含まれる。(B)熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0092】
硬化物の耐熱性をより一層高める観点からは、(B)熱硬化剤は、芳香族骨格又は脂環式骨格を有することが好ましい。(B)熱硬化剤は、アミン硬化剤(アミン化合物)、イミダゾール硬化剤、フェノール硬化剤(フェノール化合物)又は酸無水物硬化剤(酸無水物)を含むことが好ましく、アミン硬化剤を含むことがより好ましい。上記酸無水物硬化剤は、芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物を含むか、又は、脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物を含むことが好ましい。
【0093】
上記アミン硬化剤としては、ジシアンジアミド、イミダゾール化合物、ジアミノジフェニルメタン及びジアミノジフェニルスルフォン等が挙げられる。硬化物と熱伝導体及び導電層との接着性をより一層高める観点からは、上記アミン硬化剤は、ジシアンジアミド又はイミダゾール化合物であることがより一層好ましい。硬化性組成物の貯蔵安定性をより一層高める観点からは、(B)熱硬化剤は、融点が180℃以上である硬化剤を含むことが好ましく、融点が180℃以上であるアミン硬化剤を含むことがより好ましい。
【0094】
上記イミダゾール硬化剤としては、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール及び2-フェニル-4-メチル-5-ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0095】
上記フェノール硬化剤としては、フェノールノボラック、o-クレゾールノボラック、p-クレゾールノボラック、t-ブチルフェノールノボラック、ジシクロペンタジエンクレゾール、ポリパラビニルフェノール、ビスフェノールA型ノボラック、キシリレン変性ノボラック、デカリン変性ノボラック、ポリ(ジ-o-ヒドロキシフェニル)メタン、ポリ(ジ-m-ヒドロキシフェニル)メタン、及びポリ(ジ-p-ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。硬化物の柔軟性及び硬化物の難燃性をより一層高める観点からは、メラミン骨格を有するフェノール樹脂、トリアジン骨格を有するフェノール樹脂、又はアリル基を有するフェノール樹脂が好ましい。
【0096】
上記フェノール硬化剤の市販品としては、MEH-8005、MEH-8010及びMEH-8015(以上いずれも明和化成社製)、YLH903(三菱化学社製)、LA-7052、LA-7054、LA-7751、LA-1356及びLA-3018-50P(以上いずれもDIC社製)、並びにPS6313及びPS6492(以上いずれも群栄化学社製)等が挙げられる。
【0097】
上記芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物としては、例えば、スチレン/無水マレイン酸コポリマー、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、ピロメリット酸無水物、トリメリット酸無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、フェニルエチニルフタル酸無水物、グリセロールビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、及びトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0098】
上記芳香族骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物の市販品としては、SMAレジンEF30、SMAレジンEF40、SMAレジンEF60及びSMAレジンEF80(以上いずれもサートマー・ジャパン社製)、ODPA-M及びPEPA(以上いずれもマナック社製)、リカシッドMTA-10、リカシッドMTA-15、リカシッドTMTA、リカシッドTMEG-100、リカシッドTMEG-200、リカシッドTMEG-300、リカシッドTMEG-500、リカシッドTMEG-S、リカシッドTH、リカシッドHT-1A、リカシッドHH、リカシッドMH-700、リカシッドMT-500、リカシッドDSDA及びリカシッドTDA-100(以上いずれも新日本理化社製)、並びにEPICLON B4400、EPICLON B650、及びEPICLON B570(以上いずれもDIC社製)等が挙げられる。
【0099】
上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物は、多脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物もしくは該酸無水物の変性物、又はテルペン系化合物と無水マレイン酸との付加反応により得られる脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物であることが好ましい。これらの硬化剤の使用により、硬化物の柔軟性、並びに硬化物の耐湿性及び接着性がより一層高くなる。
【0100】
上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物としては、メチルナジック酸無水物、ジシクロペンタジエン骨格を有する酸無水物又は該酸無水物の変性物等も挙げられる。
【0101】
上記脂環式骨格を有する酸無水物、該酸無水物の水添加物又は該酸無水物の変性物の市販品としては、リカシッドHNA及びリカシッドHNA-100(以上いずれも新日本理化社製)、並びにエピキュアYH306、エピキュアYH307、エピキュアYH308H及びエピキュアYH309(以上いずれも三菱化学社製)等が挙げられる。
【0102】
(B)熱硬化剤は、メチルナジック酸無水物又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸であることも好ましい。メチルナジック酸無水物又はトリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸の使用により、硬化物の耐水性が高くなる。
【0103】
熱硬化性シートに含まれる成分のうち、(C)窒化ホウ素粒子及び(D)絶縁性フィラーを除く成分100重量%中、(B)熱硬化剤の含有量は好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上であり、好ましくは40重量%以下、より好ましくは25重量%以下である。(B)熱硬化剤の含有量が上記下限以上であると、熱硬化性シートを充分に硬化させることが容易である。(B)熱硬化剤の含有量が上記上限以下であると、硬化に関与しない余剰な(B)熱硬化剤が発生し難くなる。このため、硬化物の耐熱性及び接着性がより一層高くなる。
【0104】
((C)窒化ホウ素粒子)
放熱性及び圧縮強度を効果的に高める観点からは、(C)窒化ホウ素粒子の平均粒径の、(D)絶縁性フィラーの平均粒径に対する比は、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.2以上であり、好ましくは200以下、より好ましくは10以下である。
【0105】
熱硬化性シート100体積%中、及び硬化物100体積%中、(C)窒化ホウ素粒子の含有量は好ましくは10体積%以上、より好ましくは30体積%以上であり、好ましくは80体積%以下、より好ましくは75体積%以下である。(C)窒化ホウ素粒子の含有量が上記下限以上であると、放熱性及び圧縮強度が効果的に高くなる。(C)窒化ホウ素粒子の含有量が上記上限以下であると、熱硬化性シートを充分に硬化させることが容易である。(C)窒化ホウ素粒子の含有量が上記上限以下であると、硬化物による熱伝導率及び接着性がより一層高くなる。
【0106】
熱硬化性シート中、(C)窒化ホウ素粒子の全体100体積%中、(C1)窒化ホウ素粒子の凝集体の含有量は好ましくは20体積%以上、より好ましくは50体積%以上、更に好ましくは60体積%以上、特に好ましくは70体積%以上、最も好ましくは80体積%以上であり、好ましくは100体積%以下である。(C1)凝集体の含有量が上記下限以上であると、放熱性及び圧縮強度が効果的に高くなる。
【0107】
熱硬化性シート100体積%中、及び硬化物100体積%中、(C)窒化ホウ素粒子と(D)絶縁性フィラーとの合計の含有量は、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、更に好ましくは30体積%以上であり、好ましくは80体積%以下、より好ましくは75体積%以下である。(C)窒化ホウ素粒子と(D)絶縁性フィラーとの合計の含有量が上記下限以上であると、放熱性及び圧縮強度が効果的に高くなる。(C)窒化ホウ素粒子と(D)絶縁性フィラーとの合計の含有量が上記上限以下であると、熱硬化性シートを充分に硬化させることが容易である。(C)窒化ホウ素粒子と(D)絶縁性フィラーとの合計の含有量が上記上限以下であると、硬化物による熱伝導率及び接着性がより一層高くなる。
【0108】
放熱性及び圧縮強度を効果的に高める観点からは、熱硬化性シート中での(C)窒化ホウ素粒子と(D)絶縁性フィラーとの合計100体積%中、(C)窒化ホウ素粒子の含有量は、好ましくは10体積%以上、より好ましくは20体積%以上、更に好ましくは50体積%以上であり、好ましくは100体積%以下である。熱硬化性シート中での(C)窒化ホウ素粒子と(D)絶縁性フィラーとの合計100体積%中、(C)窒化ホウ素粒子の含有量は、100体積%未満であってもよく、99体積%以下であってもよい。
【0109】
((D)窒化ホウ素粒子ではない絶縁性フィラー)
(D)絶縁性フィラーは絶縁性を有する。(D)絶縁性フィラーは、有機フィラーであってもよく、無機フィラーであってもよい。放熱性を効果的に高める観点からは、(D)絶縁性フィラーは、無機フィラーであることが好ましい。放熱性を効果的に高める観点から、(D)絶縁性フィラーは、10W/m・K以上の熱伝導率を有することが好ましい。(D)絶縁性フィラーは、粒子の凝集体ではないことが好ましい。(D)絶縁性フィラーは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なお、絶縁性とは、フィラーの体積抵抗率が106Ω・cm以上であることを意味する。
【0110】
硬化物の放熱性をより一層高める観点からは、(D)絶縁性フィラーの熱伝導率は好ましくは10W/m・K以上、より好ましくは15W/m・K以上、更に好ましくは20W/m・K以上である。(D)絶縁性フィラーの熱伝導率の上限は特に限定されない。熱伝導率が300W/m・K程度である無機フィラーは広く知られており、また熱伝導率が200W/m・K程度である無機フィラーは容易に入手できる。
【0111】
(D)絶縁性フィラーの材質は特に限定されない。(D)絶縁性フィラーの材質は、アルミナ、合成マグネサイト、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛、酸化マグネシウム又はダイヤモンドであることが好ましく、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化亜鉛又は酸化マグネシウムであることがより好ましい。これらの好ましい絶縁性フィラーの使用により、硬化物の放熱性がより一層高くなる。
【0112】
(D)絶縁性フィラーは、球状粒子、又はアスペクト比が2を超える非凝集粒であることが好ましい。これら絶縁性フィラーの使用により、硬化物の放熱性がより一層高くなる。球状粒子のアスペクト比は、2以下である。
【0113】
(D)絶縁性フィラーの材質の新モース硬度は、好ましくは12以下、より好ましくは9以下である。(D)絶縁性フィラーの材質の新モース硬度が9以下であると、硬化物の加工性がより一層高くなる。
【0114】
硬化物の加工性をより一層高める観点からは、(D)絶縁性フィラーの材質は、合成マグネサイト、結晶シリカ、酸化亜鉛、又は酸化マグネシウムであることが好ましい。これらの無機フィラーの材質の新モース硬度は9以下である。
【0115】
放熱性を効果的に高める観点からは、(D)絶縁性フィラーの平均粒径は、好ましくは1μm以上、好ましくは100μm以下である。平均粒径が上記下限以上であると、(D)絶縁性フィラーを高密度で容易に充填できる。平均粒径が上記上限以下であると、硬化物の耐電圧性がより一層高くなる。
【0116】
上記「平均粒径」とは、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定した体積平均での粒度分布測定結果から求められる平均粒径である。
【0117】
熱硬化性シート100体積%中、及び硬化物100体積%中、(D)絶縁性フィラーの含有量は好ましくは5体積%以上、より好ましくは10体積%以上であり、好ましくは75体積%以下、より好ましくは65体積%以下である。(D)絶縁性フィラーの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、硬化物の放熱性及び圧縮強度が効果的に高くなる。
【0118】
(他の成分)
上記熱硬化性シートは、上述した成分の他に、分散剤、キレート剤、酸化防止剤等の熱硬化性組成物及び熱硬化性シートに一般に用いられる他の成分を含んでいてもよい。
【0119】
(熱硬化性シート及び硬化物の他の詳細)
熱硬化性シートを硬化させることにより硬化物を得ることができる。この硬化物は、熱硬化性シートの硬化物であり、熱硬化性シートにより形成されている。
【0120】
図1は、本発明の一実施形態に係る熱硬化性シートの硬化物を模式的に示す断面図である。なお、
図1では、図示の便宜上、実際の大きさ及び厚みとは異なっている。
【0121】
図1に示す硬化物1は、硬化物部11と、窒化ホウ素粒子の凝集体12と、絶縁性フィラー13とを含む。絶縁性フィラー13は、窒化ホウ素粒子の凝集体ではない。
図1では、窒化ホウ素粒子の凝集体12には、左上から右下に延びる斜線が付されている。
図1では、絶縁性フィラー13には、右上から左下に延びる斜線が付されている。
図1では、窒化ホウ素粒子の凝集体12は略図で示されている。
【0122】
硬化物部11は、熱硬化性化合物及び熱硬化剤を含む熱硬化性成分が硬化した部分であり、熱硬化性成分を硬化させることにより得られる。
【0123】
上記熱硬化性シート及び上記硬化物は、放熱性及び圧縮強度などが高いことが求められる様々な用途に用いることができる。上記硬化物は、例えば、電子機器において、発熱部品と放熱部品との間に配置されて用いられる。
【0124】
以下、本発明の具体的な実施例を挙げることにより、本発明を明らかにする。本発明は以下の実施例に限定されない。
【0125】
(実施例1)
熱硬化性シートの作製:
平均粒径25μmの窒化ホウ素粒子の凝集体(モメンティブ社製「PTX25」)と、エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン社製「E1256」)と、硬化剤(新日本理化社製「MH-700」)と、分散剤(ビックケミージャパン社製「Disperbyk-2070」)とを用意した。
【0126】
上記窒化ホウ素粒子の凝集体50重量部と、上記エポキシ樹脂47重量部と、上記硬化剤1.25重量部と、上記分散剤1.75重量部とを混合し、樹脂組成物を得た。
【0127】
次に、上記樹脂組成物を離型PETシート(厚み50μm)上に、厚み100μmになるように塗工し、90℃のオーブン内で10分乾燥して、熱硬化性シートを得た。
【0128】
熱硬化性シートを110℃で30分間加熱することで仮硬化させて、第1の硬化シートを得た。X線回折分析により測定した第1の硬化シート中の窒化ホウ素粒子の配向度は35.1であった。
【0129】
次に、上記仮硬化した熱硬化性シートの両面を、銅箔とアルミニウム板とでそれぞれ挟み、温度195℃、圧力12MPaの条件で60分間真空プレスすることにより、第2の硬化シートを作製した。X線回折分析により測定した第2の硬化シート中の窒化ホウ素粒子の配向度は85であった。
【0130】
(実施例2)
真空プレス時の圧力を3MPaへ変更したこと以外は、実施例1と同様にして、第2の硬化シートを作製した。X線回折分析により測定した第2の硬化シート中の窒化ホウ素粒子の配向度は38であった。
【0131】
(実施例3)
窒化ホウ素粒子の凝集体の作製:
窒化ホウ素粒子(MBN-010T、三井化学社製)100gと、ポリビニールアルコール5gと、エタノール390gとを混合し、超音波で30分間分散処理することにより、噴霧用スラリーを調製した。
【0132】
次に、得られた噴霧用スラリーを超音波ノズルがセットされた噴霧乾燥装置(B-290、ビュッヒ社製)を用いて、90℃で噴霧乾燥することで、平均粒径30μmの球形の凝集粒を得た。
【0133】
得られた凝集粒を窒素雰囲気中において、1000℃で2時間焼成した後、更に1500℃で2時間焼成を行った。この焼成プロセスによって、PVBが除去された球形の窒化ホウ素粒子の凝集体を得た。
【0134】
熱硬化性シートの作製:
平均粒径25μmの窒化ホウ素粒子の凝集体(PTX25、モメンティブ社製)の代わりに、得られた窒化ホウ素粒子の凝集体を用いたこと以外は実施例1と同様にして、熱硬化性シート、第1の硬化シート及び第2の硬化シートを作製した。
【0135】
X線回折分析により測定した第1の硬化シート中の窒化ホウ素粒子の配向度は6.5であった。X線回折分析により測定した第2の硬化シート中の窒化ホウ素粒子の配向度は8.9であった。
【0136】
(実施例4)
上記窒化ホウ素粒子の凝集体50重量部の代わりに、窒化ホウ素粒子の凝集体(モメンティブ社製「PTX25」)45重量部と、酸化アルミニウム(マイクロン社製「AX10-75」)5重量部とを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、熱硬化性シート、第1の硬化シート及び第2の硬化シートを作製した。
【0137】
X線回折分析により測定した第1の硬化シート中の窒化ホウ素粒子の配向度は35.1であった。X線回折分析により測定した第2の硬化シート中の窒化ホウ素粒子の配向度は72であった。
【0138】
(比較例1)
真空プレス時の圧力を1MPaへ変更したこと以外は、実施例1と同様にして、第2の硬化シートを作製した。X線回折分析により測定した第2の硬化シート中の窒化ホウ素粒子の配向度は36であった。
【0139】
(評価)
<配向度S1及び配向度S2の測定>
上記第1,第2の硬化シートのX線回折パターンをX線回折装置(リガク社製「SmartLab Multipurpose」)を用いて測定した。得られた回折パターンから、窒化ホウ素粒子の(002)面に対応した回折ピーク強度I(002)と、窒化ホウ素粒子の(100)面に対応した回折ピーク強度I(100)とをそれぞれ算出した。上記第1の硬化シートを用いて算出した回折ピーク強度I(002)の回折ピーク強度I(100)に対する比を配向度S1とし、上記第2の硬化シートを用いて算出した回折ピーク強度I(002)の回折ピーク強度I(100)に対する比を配向度S2とした。
【0140】
<熱伝導率の測定>
熱伝導率の測定は、得られた熱硬化性シートを1cm角にカットした後に、両面にカーボンブラックをスプレーした測定サンプルを用いて、レーザーフラッシュ法により行った。表1における熱伝導率は、比較例1の値を1.00とした相対値である。
【0141】
<絶縁破壊電圧(耐電圧性)>
得られた熱硬化性シートを100mm×100mmの大きさに切り出して、テストサンプルを得た。得られたテストサンプルを120℃のオーブン内で1時間、更に200℃のオーブン内で1時間硬化させ、硬化物シートを得た。耐電圧試験器(EXTECH Electronics社製「MODEL7473」)を用いて、硬化物シート間に1kV/秒の速度で電圧が上昇するように、交流電圧を印加した。硬化物シートが破壊された電圧を絶縁破壊電圧とした。
【0142】
結果を下記の表1に示す。
【0143】
【符号の説明】
【0144】
1…硬化物
11…硬化物部(熱硬化性成分の硬化した部分)
12…窒化ホウ素粒子の凝集体
13…絶縁性フィラー