(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180582
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】超解像顕微鏡法
(51)【国際特許分類】
G02B 21/00 20060101AFI20221129BHJP
G02B 21/36 20060101ALI20221129BHJP
G02B 21/34 20060101ALI20221129BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20221129BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20221129BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
G02B21/00
G02B21/36
G02B21/34
G02B3/00 A
G01N21/64 E
G01N21/17 A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022155112
(22)【出願日】2022-09-28
(62)【分割の表示】P 2019551292の分割
【原出願日】2018-03-14
(31)【優先権主張番号】1704275.5
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】518160355
【氏名又は名称】ユナイテッド キングダム リサーチ アンド イノベーション
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン,リン
(72)【発明者】
【氏名】マーティン-フェルナンデス,マリサ
(57)【要約】 (修正有)
【解決手段】本発明は、試料に対して超解像顕微鏡法を実行する方法であって、無収差固体浸漬レンズを提供することと、無収差固体浸漬の上にまたはそれに隣接して試料を提供または配置することと、試料を極低温環境に配置することと、超解像顕微鏡法技術を用いて無収差固体浸漬レンズを介して試料を撮像することとを含む方法を提供する。
【効果】試料の超解像画像は典型的にデジタルデータとして生成され得、当該デジタルデータは、そのような画像の画素を表わしており、典型的に乾式対物レンズとともに、試料の光学撮像のために用いられる無収差固体浸漬レンズを含む光学配置の回折限界よりも大きい解像度を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料に対して超解像光学顕微鏡法を実行する方法であって、
平面を有する無収差固体浸漬レンズを提供することと、
前記無収差固体浸漬レンズの前記平面の上にまたは前記平面に隣接して前記試料を配置することと、
前記試料を極低温環境に配置することと、
超解像光学顕微鏡法技術を用いて前記無収差固体浸漬レンズを介して前記試料を撮像して、前記試料の超解像画像を提供することとを備える、方法。
【請求項2】
前記極低温環境は、200ケルビン未満の温度の環境、100ケルビン未満の温度の環境、液体窒素を用いて維持される環境、および窒素蒸気を用いて維持される環境のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料は前記無収差固体浸漬レンズに接触している、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記超解像光学顕微鏡法技術は、単一分子局在化光学顕微鏡法技術である、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記単一分子局在化光学顕微鏡法技術は、
発光体で前記試料をラベリングすることと、
複数の発光の各々を別個に検出することとを備え、各発光は前記発光体のうちの1つからであり、前記発光は、前記試料が前記極低温環境に配置されている間に前記無収差固体浸漬レンズを介して検出器において受光され、前記単一分子局在化光学顕微鏡法技術はさらに、
別個に検出された前記発光から前記試料の前記超解像画像を構築することを備える、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記発光体は、有機染料、蛍光タンパク質および量子ドットなどの蛍光体を備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
各蛍光体は、前記試料の分子に結合する蛍光体分子である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記単一分子局在化光学顕微鏡法技術は、確率的光学再構築顕微鏡法(STORM)技術、光活性化局在性顕微鏡法(PALM)技術、構造化照明顕微鏡法技術、および誘導放出抑制(STED)顕微鏡法技術のうちの1つ以上である、請求項4から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
超解像顕微鏡法技術を用いて前記試料を撮像することは、前記平面において前記無収差固体浸漬レンズの内部の全内部反射を受けるプローブ光を用いて前記試料を照らすことを備える、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記無収差固体浸漬レンズのアレイを提供することと、
各試料を、前記無収差固体浸漬レンズのうちの対応する1つのレンズの平面の上にまたは前記平面に隣接して配置し、前記試料を極低温環境に配置することと、
超解像光学顕微鏡法技術を用いて、隣接するそれぞれの前記無収差固体浸漬レンズを介して各試料を連続的に撮像することとによって、試料のアレイに対して超解像光学顕微鏡法を実行することを備える、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記無収差固体浸漬レンズのアレイは、基板構造と一体形成された、または基板構造に接合された前記無収差固体浸漬レンズを備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記基板構造を含む前記無収差固体浸漬レンズのアレイは、単一の材料片からの機械加工によって形成される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記または各無収差固体浸漬レンズの上のまたは前記レンズに隣接した前記または各試料は、超解像撮像の前にクライオスタット内に装填される、前述の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記または各試料を超解像撮像のために前記極低温環境で維持するために、液体または気体寒剤がクライオスタットに入れられる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記または各試料は、超解像撮像のためにガラス化状態で維持される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
相関撮像の方法であって、
前述の請求項のいずれか1項に記載のステップを実行して前記または各試料の超解像光学画像を提供するステップと、
前記または各試料に対して電子顕微鏡法またはX線顕微鏡法を実行して前記または各試料のさらなる画像を提供するステップと、
各試料の前記超解像光学画像と前記さらなる画像とを相関付けて前記試料の相関画像を提供するステップとを備える、方法。
【請求項17】
前記電子顕微鏡法またはX線顕微鏡法は前記超解像光学撮像の後に実行される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記電子顕微鏡法またはX線顕微鏡法技術は、透過型電子顕微鏡法(TEM)、走査型電子顕微鏡法(SEM)、および軟X線顕微鏡法のうちの1つである、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
試料に対して超解像光学顕微鏡法を実行するための装置であって、
平面を有する無収差固体浸漬レンズと、
前記無収差固体浸漬レンズの平面の上のまたは前記平面に隣接した試料と、
前記試料が配置される極低温環境と、
前記試料の超解像光学画像を提供するように配置された超解像光学顕微鏡とを備える、装置。
【請求項20】
前記超解像光学顕微鏡は、前記平面において前記無収差固体浸漬レンズの内部の全内部反射を用いて前記試料を照らして撮像するように配置される、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
極低温超解像光学顕微鏡法で用いる無収差固体浸漬レンズのアレイであって、前記アレイは、基板と一体形成された、または基板に接合された複数の無収差固体浸漬レンズを備える、アレイ。
【請求項22】
前記基板の平面は、前記無収差固体浸漬レンズの各々の光学平面を提供する、請求項21に記載のアレイ。
【請求項23】
各無収差固体浸漬レンズの前記平面の上にまたは前記平面に隣接して別個の試料が提供される、請求項21または22に記載の無収差固体浸漬レンズのアレイを備える、請求項
19または20に記載の装置。
【請求項24】
複数の試料に対して超解像光学顕微鏡法を実行する際に用いるクライオスタットであって、前記クライオスタットは、請求項21から23のいずれか1項に記載の無収差固体浸漬レンズのアレイを受けるように配置されたフレームを備え、前記無収差固体浸漬レンズの前記アレイは前記クライオスタットの床を形成し、前記レンズは外側を向き、前記試料は前記クライオスタットの内部に配置される、クライオスタット。
【請求項25】
請求項21から23のいずれか1項に記載の無収差固体浸漬レンズのアレイと組合された、かつ請求項19または20に記載の装置と組合された、請求項24に記載のクライオスタット。
【請求項26】
前記または各試料はガラス化された試料である、請求項19から25のいずれか1項に記載の装置。
【請求項27】
前記極低温環境は、200ケルビン未満の温度の環境、100ケルビン未満の温度の環境、液体窒素を用いて維持される環境、および窒素蒸気を用いて維持される環境のうちの少なくとも1つである、請求項19から26のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば単一分子局在化技術を用いて試料に対して超解像顕微鏡法を実行するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
導入
従来の顕微鏡法の解像度は光の回折のために制限され、達成可能な空間解像度はアッベ回折限界によって近似的に定まる。したがって、達成可能な空間解像度は対物レンズの開口数などの光学パラメータに依存しており、これは、高屈折率の液体を用いて対物レンズを撮像される試料に光結合させる液浸技術を用いることによるなどのさまざまな方法で高めることができる。
【0003】
光学構成を変更する以外に光学撮像系の空間解像度限界を克服するためのその他のさまざまな技術も先行技術において開発されており、一般に超顕微鏡法の技術と称され得る。そのような技術として、たとえば、発光体を分離し、点広がり関数を用いてそれらの位置を適合させる単一分子局在化技術がある。
【0004】
そのような超解像顕微鏡法技術は、たとえばガラス化した生物試料を正確に撮像できるように、極低温で実行することが望ましい場合が多い。したがって本発明は先行技術のこれらのおよび他の局面に対処する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の概要
極低温で超解像顕微鏡法技術の解像度をさらに向上させることは、湿式浸漬対物レンズを用いる困難さのためにさらに困難になることがわかっている。というのも、通常の顕微鏡法の湿式浸漬に用いられる流体はそのような低温に適していないためである。したがって本発明は、極低温で超解像顕微鏡法において固体浸漬レンズを用いることを提案する。有利には、この目的のために無収差固体浸漬レンズを用いることによって、湿式対物浸漬流体を用いる困難さを伴わずに、選択された超解像顕微鏡法技術を用いて得られる解像度をさらに高めることができる。
【0006】
本発明は、たとえば単一分子局在化顕微鏡法技術などの超解像技術に適用可能である。提案する固体浸漬レンズは、対物-固体浸漬レンズ系の開口数を高めることによって、顕微鏡法技術の利用可能な解像度を向上させる。
【0007】
極低温での単一分子局在化顕微鏡法技術またはその他の超解像光学顕微鏡法技術と無収差固体浸漬レンズとをこのように組合せることによって、数十ナノメートルの画像解像度を極低温状態で達成することができ、したがって、相関撮像動作において同様の解像度で同じ試料の電子顕微鏡法画像と組合せるのに好適な画像解像度が提供される。これら2つの技術同士の間のこのような相関撮像は、ガラス化技術を用いてほぼ天然状態に保存されている生物試料を撮像する際に特に有利であり得る。
【0008】
本発明はさらに、そのようなレンズのアレイを利用して上述の無収差固体浸漬レンズを用いて高スループット撮像を提供し、そのようなアレイは、必要であれば、相関撮像処理の超解像ステージおよび電子顕微鏡ステージの双方で用いられる。
【0009】
したがって本発明は、試料に対して超解像顕微鏡法を実行する方法であって、無収差固体浸漬レンズを提供することと、無収差固体浸漬の上にまたはそれに隣接して試料を提供または配置することと、試料を極低温環境に配置することと、超解像顕微鏡法技術を用いて無収差固体浸漬レンズを介して試料を撮像することとを含む方法を提供する。このように、試料の超解像画像は典型的にデジタルデータとして生成され得、当該デジタルデータは、そのような画像の画素を表わしており、典型的に乾式対物レンズとともに、試料の光学撮像のために用いられる無収差固体浸漬レンズを含む光学配置の回折限界よりも大きい解像度を有する。試料は特に、固体浸漬レンズの平面状の切頭面に配置され得る。切頭面はその他の場合は、典型的に精密なジオメトリを有する反対の球面によって規定される。
【0010】
典型的に、試料は、無収差固体浸漬レンズの平面上に接触して配置されることになる。
極低温環境は、たとえば200ケルビン未満の温度、もしくは100ケルビン未満の温度などの1つ以上の温度の範囲もしくは限界によって規定されてもよいし、または、たとえば試料に近接もしくは接触している液体窒素もしくは窒素蒸気などの寒剤を用いて当該環境が作成および維持される方法によって規定されてもよい。無収差固体浸漬レンズは、試料および無収差固体浸漬レンズが極低温環境を維持するためにクライオスタットまたは他の配置に関してどのように配置および装着されるかに依存して、部分的にまたは完全に極低温環境内にあってもよい。
【0011】
本発明を実現するためにさまざまな超解像顕微鏡法技術が用いられ得るが、特に単一分子局在化顕微鏡法技術であってもよい。そのような技術は、たとえば、蛍光体などの発光体で試料をラベリングすることと、発光体からの複数の発光の各々を別個に検出することとを含んでもよく、発光は、試料が極低温環境に配置されている間に無収差固体浸漬レンズを介して検出器において受光され、上記技術はさらに、検出された発光から試料の超解像画像を構築することを含んでもよい。たとえば、試料の画像内に検出された各発光は、顕微鏡配置の回折限界によって定まる精度よりも高い精度まで発光体の位置を求めるために、点広がり関数に適合されてもよい。典型的に試料の多数の画像が経時的に撮像されて十分な密度の検出発光が蓄積される。
【0012】
そのような方法では、各蛍光体は典型的に、試料調製中に試料の分子に結合する蛍光体分子である。細胞および細胞小器官などの生物試料とともに用いられ得る典型的な蛍光体としてAlexa FluorまたはAtto染料がある。
【0013】
特に、単一分子局在化顕微鏡法技術は、先行技術では一般にSTORM技術と称される確率的光学再構築顕微鏡法技術であってもよい。
【0014】
超解像光学顕微鏡法技術を用いて試料を撮像することは、平面において無収差固体浸漬レンズの内部の全内部反射を受けるプローブ光を用いて試料を照らすことを含んでもよい。このように、撮像される試料の部分は、平面に対する深さが数十ナノメートルに、たとえば100nmに限定されてもよい。
【0015】
本発明の方法は、無収差固体浸漬レンズのアレイを単一ユニットとして扱うことができるように提供することによって、試料のアレイに対してそのような超解像顕微鏡法を実行することを含んでもよい。典型的に、アレイは、たとえばレンズおよび基板の両方を含む単一の材料片からのミリングもしくは鋳造によってまたは当該単一の材料片として、平面基板などの基板と一体形成された無収差固体浸漬レンズを含むことになるが、レンズは好適なサブレンズ部品を好適な平面基板に接合または結合することによって形成されてもよい。
【0016】
本発明は次に、各試料を、無収差固体浸漬レンズのうちの対応する1つのレンズの平面
の上にまたは平面に隣接して配置または装着し、このように装着された試料を極低温環境に配置することと、超解像顕微鏡法技術を用いて、隣接するそれぞれの無収差固体浸漬レンズを用いて複数の試料の各々を撮像することとによって実現されてもよい。典型的に、複数の試料の各々は連続的に撮像されることになるが、配置によっては同時並列撮像が可能な場合もある。
【0017】
個々の無収差固体浸漬レンズを用いるか、アレイ内のそのようなレンズを用いるかに係わらず、当該または各無収差固体浸漬レンズの上のまたは当該レンズに隣接した当該または各試料は、超解像撮像の前にクライオスタット内に装填されてもよい。次に、当該または各試料を超解像撮像のために極低温環境で維持するために、寒剤がクライオスタットに入れられてもよい。当該または各試料は、たとえば、生物試料が以下に記載するような相関電子顕微鏡法または軟X線技術を用いて撮像された場所またはさらには撮像予定の場所などでそのような試料の撮像の改善をもたらすために、超解像撮像用にガラス化されてもよいし、またはガラス化状態で維持されてもよい。
【0018】
したがって本発明はさらに、相関撮像の方法であって、上述のステップを実行して当該または各試料の超解像光学画像を提供するステップと、当該または各試料に対して電子顕微鏡法またはX線顕微鏡法を実行して当該または各試料の電子顕微鏡法またはX線画像を提供するステップと、各試料の超解像光学画像と電子顕微鏡法画像とを組合せるまたは整列させるまたは相関付けることによって試料の1つまたは複数の相関画像を提供するステップとを含む方法を提供する。
【0019】
電子顕微鏡法は典型的に超解像光学撮像の後に実行され得るが、代わりにその前に実行されてもよい。電子顕微鏡法技術は、透過型電子顕微鏡法(TEM)または走査型電子顕微鏡法(SEM)などの多くの利用可能な技術のうちの1つであってもよい。軟X線顕微鏡法技術を用いて相関光学画像およびX線画像を生成してもよい。当該または各試料は、電子またはX線顕微鏡法のためにガラス化状態で維持されてもよい。
【0020】
本発明はさらに、本明細書に記載の方法に対応および関連する装置、たとえば試料に対して超解像顕微鏡法を実行するための装置であって、平面状の切頭面を有する無収差固体浸漬レンズと、平面の上にまたは平面に隣接して配置された試料と、試料が配置される極低温環境と、試料の超解像画像を提供するように配置された超解像光学顕微鏡とを含む装置を提供する。
【0021】
本発明はさらに、極低温超解像顕微鏡法で用いる無収差固体浸漬レンズのアレイであって、基板と一体形成されたまたは基板に接合された複数の無収差固体浸漬レンズを含むアレイを提供する。典型的に、基板の平面は、試料が配置される予定の無収差固体浸漬レンズの各々の光学平面を提供してもよく、各無収差固体浸漬レンズの平面の上にまたは平面に隣接して別個の試料が提供されてもよい。
【0022】
本発明はさらに、複数の試料に対して超解像顕微鏡法を実行する際に用いるクライオスタットであって、上述のように、基板上に配置されたまたは基板と一体形成された無収差固体浸漬レンズのアレイを受けるように配置されたフレームを含み、無収差固体浸漬レンズのアレイがクライオスタットの床を形成するように構成されたクライオスタットを提供する。そして、典型的に、各レンズの球面はクライオスタットから外側にまたは下方に向くかまたは突出し、試料はクライオスタットの内部に配置される。次にクライオスタットに液体窒素などの寒剤が流されて、試料が顕微鏡法プロセスのために必要な極低温環境に維持され得る。
【0023】
添付の図面を参照して、本発明の実施形態を一例としてのみ以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】極低温環境に配置された試料に対して超解像顕微鏡法を実行するための装置の概略図である。
【
図2A】
図1の配置で用いる無収差固体浸漬レンズのアレイを示す図である。
【
図2B】
図1の配置で用いる無収差固体浸漬レンズのアレイを示す図である。
【
図3】
図1の配置で用いる無収差固体浸漬レンズのアレイを受けるためのクライオスタットを示す図である。
【
図4】
図1の光学配置がどのように提供され得るかをより詳細に示す図である。
【
図5】上述の無収差固体浸漬レンズおよび対物レンズを整列させるための光学配置を示す図である。
【
図6】相関撮像のための方法のフローチャートを提供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
実施形態の詳細な説明
以下に
図1を参照して、極低温環境12で試料10に対して超解像光学顕微鏡法を実行するための装置が示されている。試料10は、無収差固体浸漬レンズ14(ASIL)の平面に隣接してまたは接触して配置される。1つ以上の光源16を用いてプローブ光が形成される。プローブ光は典型的にプローブ光光学部品18を用いて調整または制御されてから、たとえばビームスプリッタ22によって対物レンズ20に送られる。対物レンズ20は、プローブ光を試料に送達するために、かつ試料から画像光を収集してCCDまたはCCDカメラなどの1つ以上の撮像素子24に送るために、ASIL14に向けられている。ASILを介した試料10から1つ以上の撮像素子24までの画像光の経路は、ビームスプリッタ22および画像光光学部品26を介してもよい。
【0026】
少なくとも試料10が極低温環境内に含まれているが、以下により詳細に記載するように、ASIL14の一部またはすべてが都合よく極低温環境内に含まれていてもよい。極低温環境は、試料が200ケルビン未満、100ケルビン未満の温度であるようなものであってもよいし、あるいは、液体窒素または別の寒剤、たとえば試料10および/またはASIL14に近接または接触しているそのような寒剤などを用いて維持されることによって規定されてもよい。
【0027】
試料10は、たとえば、1つ以上の細胞、細胞小器官、または薄膜などの、生物材料もしくはその他の材料からなるまたは当該材料を含む薄い試料または膜であってもよい。あるいは、試料は、たとえば量子ドットを含む検査される無機材料の塊などの、生物材料または非生物材料で形成された素子などの厚い試料素子の表面領域によって提供されてもよい。試料は
図1に示されるようにASILに接触していてもよいし、またはASILの表面から僅かに、典型的に100nm離れていてもよい。
【0028】
図1の配置を用いて、極低温環境12で試料10に対して超解像顕微鏡法が実行される。超解像顕微鏡法を用いて、使用する光学配置の回折限界を超える試料の画像解像度が達成される。たとえば
図1の配置では、超解像顕微鏡法を用いて、対物レンズ20およびASIL14を含む配置の回折限界を超える。
【0029】
多種多様な超解像顕微鏡法技術が用いられ得るが、当該技術は典型的に単一分子局在化技術であってもよい。典型的にそのような技術では、撮像素子を用いて試料を何度も連続的に撮像し、試料内の小さいまたは異なる分子のサブセットのみが各画像に表わされる。このように、単一スポットとして見える個々の分子を各画像で別個に識別することができるので、たとえば、予想される点広がり関数の曲線を各分子の検出画像に適合させてから、対応する重心を求めることによって、個々の分子の場所を光学配置の回折限界よりも良
好な位置精度まで特定することができる。この処理を複数のそのような画像について繰返すことによって、解像度がはるかに高い試料の画像を構築することができる。本来、天然状態で時間分解的に撮像可能な分子は、たとえば量子ドットおよび蛍光タンパク質などほんの数種類しかない。大半の試料は、照明時に輝度が変動する蛍光発光体でラベリングされる追加工程を必要とする。
【0030】
いくつかのそのような技術では、試料の個々の分子はたとえば蛍光発光体などの発光体でラベリングされ得、それらの発光体の小さいサブセットのみが各画像で発光しているように当該発光体による間欠的な蛍光イベントを生じさせるように、プローブ光が用いられて制御される。いくつかの特定の実施形態では、超解像顕微鏡法技術は、STORMと称されることが多い確率的光学再構築顕微鏡法技術であってもよい。本発明での使用に好適なそのようなSTORM技術のいくつかの特定の実現例は、Bo Huang et al., Science 319, 810 (2008), "Three-dimensional super-resolution imaging by stochastic optical reconstruction microscopy"およびDoory Kim et al.,PLos ONE 10(4): e0124581, April 2015, "Correlative stochastic optical reconstruction microscopy and electron microscopy"に記載されている。
【0031】
そのような蛍光撮像技術用の試料を調製する際には、その他の蛍光撮像技術におけるのとほぼ同じ態様で試料の染色およびラベリングが実行され得る。たとえばAlexa Fluor 647などの多くのAlexa FluorまたはAtto染料がSTORM撮像に使用可能である。有機染料とは別に、mEOSおよびPAmCherryなどの多くの蛍光タンパク質も好適である。
【0032】
しかし、本発明は、試料を極低温環境に配置することが望ましい場合に画像解像度を向上させるためのさまざまなその他の超解像顕微鏡法技術とともに用いられてもよい。
【0033】
本発明で用いられるような無収差固体浸漬レンズ14は、(
図1に示されるように)r+r/nの厚みを有する実質的に切頭状の球面ボールレンズであることを特徴とし、rはボール半径であり、nはボールレンズの材料の屈折率である。これは、実質的に平面状の切頭面の立場にある半球面固体浸漬レンズとは異なり、半球面の場合はレンズの厚みはrである。試料と実質的に接触している半球面固体浸漬レンズを用いて、対物レンズ20と組合せて開口数を提供することができ、当該開口数は、対物レンズ20単独でnの倍数の開口数を有する。対照的に、対物レンズ20と組合された無収差固体浸漬レンズは、最高で最大値nまでの、対物レンズ20単独でn
2の倍数の開口数を有する開口数を達成する
ことができる。
【0034】
当然のことながら、無収差固体浸漬レンズはそれぞれの光学配置で光学的に用いられる表面によって規定されていればよいので、撮像される試料の遠位の曲面は典型的に実質的に球面であり、撮像される試料の近位の表面は典型的に実質的に平面であるが、無収差固体浸漬レンズの他の部分はボール形状または
図1に示される理想的な切頭球面を必ずしも完成させる必要はない。たとえば
図2Aおよび
図2Bのアレイ構成を参照。
【0035】
また、無収差固体浸漬レンズは半球面固体浸漬レンズよりも広い有効視野を提供することができるが、色収差が多少増加する場合がある。色収差の増加は、さまざまな光波長について対物レンズ20とASIL14との間の間隔を僅かに変化させることによって補償することができる。そのような収差および設計上の考慮事項は、たとえばLin Wang et al., Applied Optics, Vol. 49, No. 31, 6160 - 6169に記載されている。
【0036】
図1の配置におけるASILの使用に起因する開口数の増加は、ASILに用いられる材料の屈折率に直接依存する。したがって、屈折率が2.2の二酸化ジルコニウムなどの高屈折率の材料が用いられ得る。ASILのサイズは、視野および収差効果などの要因同
士の折り合いをつけるように選択され得るが、
図1の配置については球径が約3mmのASILが用いられ得る。材料が二酸化ジルコニウムの場合は、これによってレンズ深さは約2.18mmになる。
【0037】
図1に示されるようにASIL14を用いて極低温環境12で試料10に対して超解像顕微鏡法を実行することによって、光学撮像配置において高開口数を達成することができ、したがって撮像素子24によって検出される特徴の超解像局在化において高精度を達成することができる。高開口数を達成する代替的な方法は、湿式対物レンズおよび試料に接触してこれらの間の光学空間を埋めている高指数浸漬流体塊の本体とともに湿式対物レンズを用いることであろう。しかし、そのような高指数浸漬流体は極低温環境と関連する低温に対する耐性がない。低温は、たとえば、撮像される試料内の標的構造が、超解像撮像処理を成功させるためにガラス化を必要とする細胞小器官またはその他の生物学的構造である場合など、検査される試料の性質によって必要となることが多い。したがって、ASILを用いる本発明は、超解像顕微鏡法を実行する際に、湿式浸漬レンズを用いて利用可能な開口数よりも高い開口数、および極低温に対する耐性の両方を提供する。対照的に、典型的な顕微鏡浸漬オイルは、DIN/ISOによって規定されているように摂氏約23°について標準化されている。特殊用途向け浸漬オイルの中には、摂氏18°、20°または37°での使用に得ることができものもある。
【0038】
乾式対物レンズ20は、ASIL14を収容できるように十分長い作動距離を有するべきである。典型的な作動配置では、好適なレンズは50X Mitutoyo Plan Apo Infinity Corrected Long WD Objective(NA0.55、作動距離13mm)であってもよい。
【0039】
レイリー基準に従って、対物レンズ20とASIL14との組合せの光学分割は
【0040】
【0041】
である。
ここで、λは収集した画像光の波長であり、nはASIL材料の屈折率であり、NAは乾式対物レンズの開口数である。なお、n2とNAとの積は最大値nの影響を受ける。
【0042】
次に、以下の局在化精度
【0043】
【0044】
を用いて、画像内の別個の分子の検出に基づく超解像技術の分解能を評価することができる。
【0045】
ここで、Nは各単一分子から収集した光子数である。したがって、そのような超解像技術の局在化精度は
【0046】
【0047】
として表わされ得る。
一例として、光波長が500nmであり、光子数が控えめに見積もって1000であると仮定すると、典型的な作業配置の局在化精度は15nmとなる。
【0048】
図1の装置および関連方法を用いて、たとえば無収差固体浸漬レンズのアレイ30を提供し、各試料を無収差固体浸漬レンズのうちの異なる1つのレンズの平面に隣接してまたは接触して配置することによって、多数の試料が効率的に撮像され得る。無収差固体浸漬レンズのそのようなアレイ30は
図2Aの断面図および
図2Bの平面図に示されている。アレイの無収差固体浸漬レンズ14の各々は、たとえば単一の材料片からのダイヤモンドミリングによって、または無収差固体浸漬レンズ部品を基板32に別個に接合してレンズのアレイを形成することによって、そのような基板と一体形成されてもよい。
【0049】
図1の装置には平行移動機構34がさらに設けられてもよい。平行移動機構34は、各無収差固体浸漬レンズを対物レンズ20に対して所定位置に動かして複数の試料の各々を連続的に撮像して超解像顕微鏡法技術を実行するために、無収差固体浸漬レンズのアレイを対物レンズ20に対して横方向に平行移動させるように配置される。
【0050】
図2Aおよび
図2Bに示されるような無収差固体浸漬レンズのアレイ30に用いられ得る好適な構成および寸法は、各レンズの中心間隔が約3.5mmである無収差固体浸漬レンズ14の正方形または六角形アレイを用いることである。これらの図では、アレイは、直径約25mmの円形基板の上にまたは当該基板の一部として配置された、矩形アレイ内の21個のそのような無収差固体浸漬レンズから形成されており、当該基板の厚みは約0.7mmであり、これはアレイの各無収差固体浸漬レンズの厚みに寄与する。
【0051】
無収差固体浸漬レンズのアレイ30および試料を本発明の方法および装置とともに用いる利点は、無収差固体浸漬レンズと試料との各組合せを極低温環境内に別個に装填する必要なしに多数の試料を撮像できることである。ASIL同士の間の距離が既知であるため、迅速に顕微鏡の視野の位置を正確に変更するのに都合がよい。したがって高スループット撮像を達成することができる。
【0052】
本発明に係る方法および装置での使用には、超解像顕微鏡法技術によって撮像される1つ以上の試料に必要な極低温環境を提供するために、1つ以上の別個の無収差固体浸漬レンズ、またはそのようなレンズの1つ以上のアレイ30をクライオスタット50内に装填することができる。
【0053】
図3は、クライオスタット50が、この場合は無収差固体浸漬レンズ14のアレイ30がクライオスタット50内に装填された状態でどのように構築され得るかの例を示す。この目的で、クライオスタット50はフレーム52を含み、フレーム52自体がベース54、本体56および蓋58を含む。ベース54には開口55が設けられており、これを通って試料(図示されていないが、典型的に各無収差固体浸漬レンズの平面に配置される)を無収差固体浸漬レンズを介して撮像することができる。本体56はクライオスタット50の側壁を提供するようにベース54に取付けられており、レンズアレイは、本体部によって提供される側壁内に着座するように、かつベースと本体との間の接合部に位置する封止リング60に接して着座するように、クライオスタット内に装填される。封止リング60は、たとえば、本体56の内面よりもやや小さいベースの開口55によって形成される肩部に接して配置され得る。
【0054】
この構造または同様の構造を用いて、レンズアレイ30は寒剤を保持するためにクライオスタットのベースを形成する。寒剤は、レンズアレイ30の上にとどまるかまたは試料に接触するためにレンズアレイ30の上を流れることができる。
図3では液体窒素などの寒剤が入口通路62を用いてクライオスタットに入れられ、出口通路64を通って出るこ
とができる。これらの入口および出口通路はさまざまな方法で設けられ得るが、
図3ではフレーム52の蓋58を貫通する管によって設けられている。このように液体窒素を用いることによって、約77ケルビン以下の典型的な試料温度を提供することができる。
【0055】
使用時、たとえば窒素蒸気を用いて77ケルビンまで冷却することなどによって、まずレンズアレイ30が必要に応じて好適に準備され、次にレンズアレイの平面に試料が塗布される。次にベースを形成するためにレンズアレイがクライオスタット内に装填され、次に蓋58がボルト締めされるかまたはその他の方法で固定されてフレーム52が閉じられる。次に、レンズアレイ30がすでに装填されたクライオスタットおよび試料が、
図1のまたは後述の光学部品などの光学部品に対して所定位置に装填され得、必要な超解像顕微鏡法技術を実行するために寒剤供給が入口および出口通路62,64に接続される。多数の試料がクライオスタット内にすでに装填されており、無収差固体浸漬レンズに対して必要な位置にすでに配置されているため、多数の試料をより急速にかつ容易に撮像することができる。
【0056】
図4は、
図1の光学部品が、たとえば
図3と同様のクライオスタット装置を用いて、極低温環境で1つ以上の試料に対して超解像顕微鏡法を実行するためにどのように実現され得るかをより詳細に示す。
図4では、光源16はレーザ160によって提供され、レーザ160は、たとえば試料中の分子をラベリングするのに用いた蛍光体を励起するのに好適な波長で動作する。プローブ光を調整するプローブ光光学部品18は次にビームエキスパンダ装置181を含み、その後にミラーおよびステアリングレンズを含むステアリング装置183が続く。ステアリング装置は、ステアリング装置の平行移動によってダイクロイックビームスプリッタ22上へのプローブ光の入射位置が制御され、したがって対物レンズ20へのプローブ光の入射経路が制御されるように構成される。プローブ光は次に対物レンズを通過して、
図3に示されるようなクライオスタット装置を用いて保持され得る無収差固体浸漬レンズおよび試料に到達する。長移動範囲x-y-z顕微鏡平行移動ステージシステムなどの平行移動機構34を用いてクライオスタット50の位置を制御してもよく、したがって対物レンズ20に対する無収差固体浸漬レンズおよび関連の試料を制御してもよい。
【0057】
対物レンズの中心光軸から径方向に大きくずれて対物レンズ20に入るプローブ光は、対物レンズ20が向けられている無収差固体浸漬レンズに増加した入射角で入射する。この入射角が十分大きければ、プローブ光ビームは無収差固体浸漬レンズを通過して、無収差固体浸漬レンズ内で全内部反射を生じさせるのに十分な入射角でそのレンズの遠位平面に到達する。この場合、無収差固体浸漬レンズの平面上に配置された試料はプローブ光のエバネッセント波によってのみ照らされる。エバネッセント波は、当該平面からのプローブ光の波長の何分の1かのオーダの距離内でのみ大きい出力を有する。このように、プローブ光がレンズの平面から試料内に数十ナノメートルのみ蛍光を励起するように全内部反射構成を用いることができる。対物レンズ20および無収差固体浸漬レンズを通過するプローブ光ビームのジオメトリを微調整して必要な全内部反射または他の照明ジオメトリを達成することは、ステアリング装置183またはプローブ光光学部品18のその他の局面を調整することによって達成することができる。
【0058】
試料からの画像光は、無収差固体浸漬レンズおよび対物レンズ20を通過して、ビームスプリッタ22を通過し、EMCCD(電子増倍型電荷結合素子)カメラなどの撮像素子24に到達する。ビームスプリッタ22と撮像素子24との間のこの経路に沿って、試料をラベリングするために用いられる蛍光体の特定の発光波長を通過させるように選択された発光フィルタ262、および撮像素子に集光する結像レンズ264などの画像光光学部品26が設けられている。
【0059】
対物レンズ20と無収差固体浸漬レンズとの正確な整列は、試料の最良解像度画像を得るために重要である。したがって、無収差固体浸漬レンズ14および対物レンズ20を正確に整列させるための方式を
図5に示す。レーザダイオード200によって生成された平行ビームは、第1のビームエキスパンダ装置202を用いて、無収差固体浸漬レンズ14と対物レンズ20との組合せの後焦点面の全開口に及ぶように拡張される。無収差固体浸漬レンズ14と対物レンズ20との間の距離が正確または理想的であるように調整されると、入射ビームは無収差固体浸漬レンズ14の平坦な遠位面204に反射し、入射光路に沿って伝搬して戻る。この反射はビームスプリッタ206によって分割され、その半分は第2のビームエキスパンダ装置208内に反射する。出力ビームは拡張された平行ビームであり、次に明暗の縞として見える平行の干渉パターンがシアプレート210内に観察され得る。
【0060】
本発明を用いて、上述の極低温超解像顕微鏡法技術を用いて取得された画像データが、同様に極低温環境に配置された1つまたは複数の試料を用いて実行される電子顕微鏡法および/もしくはX線顕微鏡法を用いて取得された画像データと組合されるかまたは相関付けられる、試料の相関撮像または試料のアレイの相関撮像が実現され得る。この目的で、
図6は相関撮像の方法を示すフローチャートである。
【0061】
図6のステップ300において、試料が、たとえば本文書の他の箇所でより詳細に記載したように、無収差固体浸漬レンズの平面に接触してまたは直接隣接して調製される。この調製ステップは複数の試料について繰返されてもよく、各試料は、さまざまな無収差固体浸漬レンズまたは
図2Aに示されるようなアレイなどのレンズアレイの平面に接触してまたは直接隣接して配置される。無収差固体浸漬レンズまたはレンズアレイは次に、調製された試料とともに、
図6のステップ310に示されるように、
図3に示されるようなクライオスタット50内に装填され得る。
【0062】
当該試料または試料のアレイ内の各試料は次に、試料の超解像画像データ360を得るために本文書の他の箇所で説明したような極低温超顕微鏡法技術を受ける。
【0063】
超解像画像データ360が得られると、当該試料または各試料は次に、試料の電子顕微鏡法画像データ370を得るために
図6のステップ330において電子顕微鏡法技術を受ける。便利なことに、超解像顕微鏡法ステップ320で用いられる無収差固体浸漬レンズに接触または隣接するように各試料を調製しているので、無収差固体浸漬レンズは電子顕微鏡法ステップ330の間、試料の支持台として機能し続けることができる。無収差固体浸漬レンズのアレイを用いる場合は、同じレンズのアレイを調製した試料とともに、
図1のような超解像顕微鏡法装置から電子顕微鏡装置に、試料を大きく乱すことなく移すことができる。
図3のようなクライオスタット50を用いて超解像顕微鏡法プロセス時に無収差固体浸漬レンズまたはレンズアレイおよび関連の試料を収容する場合は、レンズまたはレンズアレイは電子顕微鏡装置への移送時および電子顕微鏡装置内での使用時に同じクライオスタット内の所定位置に残ってもよい。
【0064】
電子顕微鏡装置は、走査型電子顕微鏡(SEM)および透過型電子顕微鏡(TEM)装置などの試料を撮像するための多種多様な電子顕微鏡法を提供し得る。いくつかのこのような技術については、たとえばTEM撮像のために試料を重金属染色するなどの1つまたは複数の試料のさらなる調製が、超解像顕微鏡法ステップ320の前および電子顕微鏡法ステップ330の前に適切であり得る。必要であれば、
図6の超解像顕微鏡法ステージと電子顕微鏡法ステージとを逆にしてもよく、ならびに/または、たとえば、同じもしくは異なる顕微鏡法、超顕微鏡法、および電子顕微鏡法技術のその他の撮像ステージを含むその他の顕微鏡法ステージが用いられてもよい。軟X線顕微鏡法技術などのX線顕微鏡法技術が電子顕微鏡法技術に加えてまたは電子顕微鏡法技術の代わりに用いられてもよい。
【0065】
1つまたは複数の同じ試料の超解像画像データ360および電子顕微鏡法画像データ370が得られると、これらの画像データ対は、試料内の構造的特徴が一致するように、たとえば基準マーカまたは特徴検出アルゴリズムを用いて整列または相関付けられ得る。次にそのような整列を用いて、必要であれば、超解像画像データ360と電子またはX線顕微鏡法画像データ370とを組合せて、組合わされたまたは相関的な試料の画像380が形成され得る。
【0066】
そのような組合わされたまたは相関的な試料の画像380は、別々に考慮される超顕微鏡法画像360または電子もしくはX線顕微鏡法画像のいずれに対しても大きな利点を提供し得る。たとえば、相関的な光および電子またはX線顕微鏡法は、細胞の超微細構造の文脈において特定の生体分子の分子分布および構成のマルチモーダリティ撮像解決策を提供する。
【0067】
本発明の特定の実施形態を説明したが、当業者であれば本発明の範囲から逸脱することなくさまざまな修正および変更がなされ得ることを理解するであろう。たとえば、単一分子局在化顕微鏡法とは別に、構造化照明顕微鏡法および誘導放出抑制(STED)顕微鏡法などの他の既定の超解像顕微鏡法技術を固体浸漬レンズ顕微鏡法と組合せることもできる。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温超解像光学顕微鏡法で用いる無収差固体浸漬レンズのアレイを備え、前記アレイは、基板と一体形成された、または基板に接合された複数の無収差固体浸漬レンズを備える、装置。
【請求項2】
前記基板の平面は、前記無収差固体浸漬レンズの各々の光学平面を提供する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記アレイは、二酸化ジルコニウムにより形成される、請求項1または請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記無収差固体浸漬レンズは、正方形アレイ、六角形アレイ、または矩形アレイのうちの1つにおける基板上に配置される、請求項1から3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記無収差固体浸漬レンズは、ミリングによって、または、単一の材料片からのダイヤモンドミリングによって、または、単一の材料片として成形されることによって、前記基板と一体形成される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
各無収差固体浸漬レンズの前記光学平面の上にまたは前記光学平面に隣接して提供された別個の試料をさらに備え、そのような試料の各々が超解像光学顕微鏡法による撮像のために配置されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
各試料がガラス化された試料である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
複数の試料に対して超解像光学顕微鏡法を実行する際に用いるクライオスタットをさらに備え、前記クライオスタットは、前記無収差固体浸漬レンズの前記アレイを受けるフレームを備え、前記無収差固体浸漬レンズの前記アレイは前記クライオスタットの床を形成し、前記レンズは外側を向き、前記試料は前記クライオスタットの内部に配置される、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記極低温環境は、200ケルビン未満の温度の環境、100ケルビン未満の温度の環境、液体窒素を用いて維持される環境、および窒素蒸気を用いて維持される環境のうちの少なくとも1つである、請求項1から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
無収差固体浸漬レンズのアレイを形成する方法であって、各レンズは光学平面を有し、前記アレイは極低温超解像光学顕微鏡法で使用されるものであり、前記方法は、
基板の平面が前記無収差固体浸漬レンズの各々の前記光学平面を提供するように、複数の無収差固体浸漬レンズを前記基板と一体形成することを備える、方法。
【請求項11】
ミリング、または、単一の材料片からのダイヤモンドミリング、または、単一の材料片としての成形によって、前記アレイを前記基板と一体形成することをさらに備える、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は、
複数の試料に対して超解像光学顕微鏡法を実行する際に用いるクライオスタットのフレームに前記無収差固体浸漬レンズの前記アレイを配置することをさらに備え、前記無収差固体浸漬レンズの前記アレイは前記クライオスタットの床を形成し、前記レンズは外側を向き、前記方法は、さらに、
前記複数の試料を前記クライオスタットの内部に配置することを備え、各試料は、前記無収差固体浸漬レンズのうちの1つの前記光学表面上に配置される、請求項10または請求項11に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【手続補正3】
【補正対象書類名】図面
【補正方法】変更
【補正の内容】
【外国語明細書】