(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180592
(43)【公開日】2022-12-06
(54)【発明の名称】制御装置、及び保護装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
B60R 21/0136 20060101AFI20221129BHJP
B60R 21/16 20060101ALI20221129BHJP
【FI】
B60R21/0136 310
B60R21/16
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156403
(22)【出願日】2022-09-29
(62)【分割の表示】P 2019512359の分割
【原出願日】2018-02-09
(31)【優先権主張番号】P 2017078424
(32)【優先日】2017-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】522279737
【氏名又は名称】アライバー ソフトウェア エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】中村 頼子
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡単な構成で、オフセット・斜め衝突を良好に検知し、衝突の度合いに応じたタイミングで乗員の側部又は頭部を保護する保護装置を作動させる保護装置の制御装置、及び保護装置の制御方法を提供する。
【解決手段】制御装置は、ECU(1)、車両長手方向の第1加速度を検出するサテライトセンサ(2,3)、長手方向,幅方向の第2加速度,第3加速度を検出するメインセンサを備える。ECU(1)は第1加速度及び第2加速度により前面衝突のレベルを算出するレベル算出部と、第3加速度を積分して求めたΔVに対して正面衝突に基づく第3加速度のΔVを減衰させるようにオフセット調整を行い、ΔV
offsetを求めるΔV
offset算出部と、前面衝突のレベル及びΔV
offsetに基づいてオフセット・斜め衝突を判定する判定部とを備え、該判定部によりオフセット・斜め衝突と判定した場合に、側部・頭部保護装置(6又は7)を作動させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前部に配置され、該車両の長手方向の第1加速度を検出する第1加速度検出部と、
前記車両の中央部に配置され、該車両の長手方向の第2加速度及び幅方向の第3加速度を検出する第2加速度検出部と、
前記第1加速度検出部及び前記第2加速度検出部が検出した加速度に基づいて前面衝突を判定し、乗員保護装置を作動させる制御部と
を備える乗員保護装置の制御装置において、
前記制御部は、
前記第1加速度検出部及び第2加速度検出部が検出した加速度を積分して速度(ΔV)を求める速度算出部と、
前記第1加速度及び前記第2加速度により、前面衝突のレベルを算出するレベル算出部と、
前記第3加速度を積分して求めたΔVに対して、正面衝突に基づく第3加速度のΔVを減衰させるようにオフセット調整を行い、ΔVoffsetを求めるΔVoffset算出部と、
前記前面衝突のレベル及び前記ΔVoffsetに基づいて、オフセット衝突又は斜め衝突の有無を判定する第1判定部と
を備え、
該第1判定部によりオフセット衝突又は斜め衝突が生じたと判定した場合に、サイドエアバッグ及びカーテンエアバッグを含む、乗員の側部並びに頭部を保護する乗員保護装置を作動させることを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記ΔVoffsetと閾値とを比較して、前記オフセット衝突又は斜め衝突の有無、及び方向を判定することを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記第2加速度に対する前記第3加速度の割合に基づいて、前記オフセット衝突又は斜め衝突の有無、及び方向を判定する第1判定手法、並びに
前記車両の前部の幅方向の両側に前記第1加速度検出部を備える場合に、各第1加速度検出部が検出した前記第1加速度に基づくΔVの差分に基づいて、前記オフセット衝突又は斜め衝突の有無、及び方向を判定する第2判定手法のうちの少なくとも一つにより、前記オフセット衝突又は斜め衝突の有無を判定する第2判定部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2加速度が制御アルゴリズムの開始閾値以上であると判定した時点からの経過時間を計時し、前記経過時間に応じて、前記第1判定部又は第2判定部により前記オフセット衝突又は斜め衝突の有無を判定するための閾値を設定する閾値設定部、又は、前記経過時間に応じて、前記閾値の有効期間を設定する有効期間設定部、のいずれかを備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1加速度、前記第2加速度、及び前記第3加速度のうちの少なくとも一つにローパスフィルタ処理を施す処理部を備えることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記レベル算出部は、前記第1加速度、前記第2加速度、及び前記第3加速度と、これらの加速度を積分して求めたΔVとに基づき、これらの論理積を取って前記前面衝突のレベルを求めることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記第2加速度検出部は、前記車両の中央部に備えられていることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
車両の前部に配置された第1加速度検出部が検出した前記車両の長手方向の第1加速度と、前記車両の中央部に配置された第2加速度検出部が検出した前記長手方向の第2加速度とにより、前面衝突のレベルを判定し、
前記第2加速度検出部が検出した前記車両の幅方向の第3加速度を積分して求めたΔVに対して、正面衝突に基づく第3加速度のΔVを減衰させるようにオフセット調整を行ってΔVoffsetを求め、
前記前面衝突のレベル、及び前記ΔVoffsetに基づいて、オフセット衝突又は斜め衝突の有無を判定し、
オフセット衝突又は斜め衝突が生じたと判定した場合に、サイドエアバッグ及びカーテンエアバッグを含む、乗員の側部並びに頭部を保護する乗員保護装置を作動させることを特徴とする保護装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット衝突又は斜め衝突が生じた場合に車両の乗員を保護する保護装置の作動を制御する制御装置、及び保護装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、乗員を衝突の際の衝撃から保護するためにエアバッグ、シートベルトのプリテンショナ等の保護装置が設けられている。車両が衝突したとき、例えば車両の中央部に配置された制御装置に加速度センサから入力された検出信号に基づいて、制御装置は保護装置を作動させるか否かを判定する。メインセンサとしての加速度センサは、前記制御装置に内蔵されているが、車両の衝突をいち早く検出して適切に乗員保護を行うために車両前部のクラッシュゾーン等にもサテライトセンサとしての加速度センサが設けられていることが多い。
【0003】
例えば特許文献1には、車両の両側部にサテライトセンサを備えており、側突(側面衝突)が生じた場合に、サテライトセンサにより検出された車両の前後方向のX加速度、及び幅方向のY加速度に基づいて、車両の天井部に設けられたカーテンエアバッグ(以下、CABという)の展開が必要であるか否かを判定するように構成された側突判定装置の発明が開示されている。
【0004】
前面衝突のうち、例えば車両の前後方向に平行な中心線(軸心)に対して、他の車両又は障害物の衝突方向に平行な軸心がずれていない状態で衝突する、若しくは、車両前面の略全幅が前記他の車両又は障害物に衝突するような、衝突時に車両に回転成分がほとんど含まれないものをフルラップ(フルオーバーラップ)前面衝突(正面衝突)という。この場合、前方から膨出する保護装置としてのフロントエアバック(以下、FABという)により乗員が保護される。
前面衝突には、他に、車両前面の一部(車両前方右側又は車両前方左側)が衝突するオフセット(スモールオーバーラップ)衝突、及び車両が斜めに角度が付いた状態で前方から車両が衝突する斜め衝突(オブリーク衝突)がある。オフセット衝突及び斜め衝突の場合、車両の側部に設けられたサイドエアバッグ(以下、SABという)により乗員の側部が保護され、又は、前記CABにより乗員の頭部が保護される。即ち、SAB及びCABは上述の側面衝突以外にも使用される場合がある。
【0005】
オフセット衝突及び斜め衝突も前面衝突の一種であり、例えば特許文献2の乗員保護装置の制御装置においては、加速度センサが検出したX加速度に基づき求めたΔVに対する、Y加速度に基づき求めたΔVの割合により、オフセット衝突又は斜め衝突の方向を判定
するように構成されている。
しかし、X加速度及びY加速度夫々を積分して各ΔVを求め、前記方向を判定するので判定方法が煩雑であり、また、衝突速度によってはオフセット衝突又は斜め衝突と、正面衝突とを判別できない場合がある。従って、乗員を保護するために適切な保護装置が選択されない虞がある。
【0006】
また、左右のサテライトセンサ夫々が検出したX加速度を積分して求められたΔVの差分により、オフセット衝突又は斜め衝突の方向を判定するように構成されているものもあるが、サテライトセンサが故障した場合、オフセット衝突又は斜め衝突、正面衝突を判別できなくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-235833号公報
【特許文献2】米国特許第8073596号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、簡単な構成で、側面衝突及び正面衝突を除外した状態で、オフセット衝突又は斜め衝突を良好に検知し、衝突の度合いに応じたタイミングで乗員の側部又は頭部を保護する適切な保護装置を作動させることができる保護装置の制御装置、及び保護装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る制御装置は、車両の前部に配置され、該車両の長手方向の第1加速度を検出する第1加速度検出部と、前記車両の中央部に配置され、該車両の長手方向の第2加速度及び幅方向の第3加速度を検出する第2加速度検出部と、前記第1加速度検出部及び前記第2加速度検出部が検出した加速度に基づいて前面衝突を判定し、乗員保護装置を作動させる制御部とを備える乗員保護装置の制御装置において、前記制御部は、前記第1加速度検出部及び第2加速度検出部が検出した加速度を積分して速度(ΔV)を求める速度算出部と、前記第1加速度及び前記第2加速度により、前面衝突のレベルを算出するレベル算出部と、前記第3加速度を積分して求めたΔVに対して、正面衝突に基づく第3加速度のΔVを減衰させるようにオフセット調整を行い、ΔVoffsetを求めるΔVoffset算出部と、前記前面衝突のレベル及び前記ΔVoffsetに基づいて、オフセット衝突又は斜め衝突の有無を判定する第1判定部とを備え、該第1判定部によりオフセット衝突又は斜め衝突が生じたと判定した場合に、サイドエアバッグ及びカーテンエアバッグを含む、乗員の側部又は頭部を保護する乗員保護装置を作動させることを特徴とする。
【0010】
斯かる構成とすることにより、第2加速度等により前面衝突のレベルを求め、前面衝突の乗員保護装置の作動判定レベル以上であること等を確認した上で、オフセット衝突又は斜め衝突を判別するため、側面衝突が除外された状態で、良好にオフセット衝突又は斜め衝突を検知することができる。
高速の正面衝突が生じた場合に、衝突後の衝撃による回転で、第3加速度のΔVが大きくなることがあるが、本発明においては、正面衝突に基づく第3加速度のΔVの増加を防ぐように、第3加速度にオフセット処理(バイアス)を施してΔVを減衰させるので、良好にオフセット衝突又は斜め衝突を検知することが可能である。即ち、ΔVoffsetに基づいてオフセット衝突又は斜め衝突の有無を判定するので、サイドエアバッグ及びカーテンエアバッグの展開を必要としない、正面衝突を除外することができる。
そして、前面衝突のレベル及びΔVoffsetに基づいて、衝突の度合いに応じたタイミングで乗員の側部又は頭部を保護する適切な装置を作動させることができる。
【0011】
本発明に係る制御装置は、前記制御部が、前記ΔVoffsetと閾値とを比較して、前記オフセット衝突又は斜め衝突の有無、及び方向を判定することを特徴とする。
【0012】
斯かる構成とすることによって、車両の幅方向の何れの側の側部・頭部保護装置を作動させるかを正確に判定することができる。
そして、衝突の度合いに応じた、より良好なタイミングで、側部・頭部保護装置を作動させることができる。
【0013】
本発明に係る制御装置は、前記制御部が、前記第2加速度に対する前記第3加速度の割合に基づいて、前記オフセット衝突又は斜め衝突の有無、及び方向を判定する第1判定手法、並びに前記車両の前部の幅方向の両側に前記第1加速度検出部を備える場合に、各第1加速度検出部が検出した前記第1加速度に基づくΔVの差分に基づいて、前記オフセット衝突又は斜め衝突の有無、及び方向を判定する第2判定手法のうちの少なくとも一つにより、前記オフセット衝突又は斜め衝突の有無を判定する第2判定部を備えることを特徴とする。
【0014】
斯かる構成とすることにより、ΔVoffsetに基づく判別に、複数の加速度検出部が検出した加速度に基づく判別を組み合せるので、より精度良くオフセット衝突又は斜め衝突の有無の判定、及び衝突方向の検知を行うことが可能となる。
【0015】
第1判定手法においては、正面衝突の場合に第2加速度が大きくなることで第3加速度の割合が小さくなり、オフセット衝突又は斜め衝突の場合に第3加速度の割合が正面衝突時に比べて大きくなることにより衝突形態を判別し、第3加速度の割合が正の値又は負の値になることにより、正の閾値及び負の閾値のいずれを超えたかを判別することで、衝突方向を検知することが可能となる。
【0016】
第2判定手法においては、正面衝突の場合には衝突対象物が正面から車両前部の幅方向に亘って衝突するため、両側の第1加速度検出部のΔVの差分は小さく、オフセット衝突又は斜め衝突の場合には、これらの差分が大きくなることにより衝突形態を判別し、ΔVの差分が正及び負のいずれの値になるかにより、衝突方向を検知することが可能となる。
【0017】
本発明に係る制御装置は、前記制御部が、前記第2加速度が制御アルゴリズムの開始閾値以上であると判定した時点からの経過時間を計時し、前記経過時間に応じて、前記第1判定部又は前記第2判定部により前記オフセット衝突又は斜め衝突の有無を判定するための閾値を設定する閾値設定部、又は、前記経過時間に応じて、前記閾値の有効期間を設定する有効期間設定部、のいずれかを備えることを特徴とする。
【0018】
正面衝突が生じた場合に、衝突後の衝撃による回転でΔVが大きくなることがあるが、本発明においては経過時間に応じて前記閾値を設定し、又は前記閾値の有効期間を設定することで、上述のケースと、オフセット衝突又は斜め衝突とを判別することができる。
【0019】
本発明に係る制御装置は、前記制御部が、前記第1加速度、前記第2加速度、及び前記第3加速度のうちの少なくとも一つにローパスフィルタ処理を施す処理部を備えることを特徴とする。
【0020】
斯かる構成とすることによって、不要な高周波ノイズを除去し、低速の正面衝突及び悪路走行時に生じる高周波の加速度入力を除去するので、オフセット衝突又は斜め衝突の方向判別の精度を向上させることが可能となる。
【0021】
本発明に係る制御装置は、前記レベル算出部が、前記第1加速度、前記第2加速度、及び前記第3加速度と、これらの加速度を積分して求めたΔVとに基づき、これらの論理積を取って前記前面衝突のレベルを求めることを特徴とする。
【0022】
斯かる構成とすることによって、精度良く前面衝突のレベルを求めることができる。
【0023】
本発明に係る制御装置は、前記第2加速度検出部が、前記車両の中央部に備えられていることを特徴とする。
【0024】
加速度検出部が車両の中央部に備えられている場合、車両の挙動をより良好に判断することができ、故障の発生率も少ない。
【0025】
本発明に係る保護装置の制御方法は、車両の前部に配置された第1加速度検出部が検出した前記車両の長手方向の第1加速度と、前記車両の中央部に配置された第2加速度検出部が検出した前記長手方向の第2加速度とにより、前面衝突のレベルを判定し、前記第2加速度検出部が検出した前記車両の幅方向の第3加速度を積分して求めたΔVに対して、正面衝突に基づく第3加速度のΔVを減衰させるようにオフセット調整を行ってΔVoffsetを求め、前記前面衝突のレベル、及び前記ΔVoffsetに基づいて、オフセット衝突又は斜め衝突の有無を判定し、オフセット衝突又は斜め衝突が生じたと判定した場合に、サイドエアバッグ及びカーテンエアバッグを含む、乗員の側部並びに頭部を保護する乗員保護装置を作動させることを特徴とする。
【0026】
斯かる構成により、第2加速度等を用いて前面衝突であることを確認した上で、ΔVoffsetに基づいて、オフセット衝突又は斜め衝突の有無を判定するので、側面衝突が除外された状態で、良好にオフセット衝突又は斜め衝突を検知することができる。
高速の正面衝突が生じた場合に、衝突後の衝撃による回転で、第3加速度のΔVが大きくなることがあるが、本発明においては、正面衝突に基づく第3加速度のΔVの増加を防ぐように、第3加速度にオフセット処理(バイアス)を施してΔVを減衰させるので、サイドエアバッグ及びカーテンエアバッグの展開を必要としない、正面衝突を除外することができる。
そして、前面衝突のレベル及びΔVoffsetに基づいて、衝突の度合いに応じたタイミングで乗員の側部又は頭部を保護する適切な装置を作動させることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、簡単な構成で、側面衝突及び正面衝突を除外した状態で、オフセット衝突又は斜め衝突を良好に検知し、衝突の度合いに応じたタイミングで乗員の側部又は頭部を保護する適切な装置を作動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施の形態に係る制御装置を備える車両を示す模式図である。
【
図2】実施の形態に係る制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】CPUによる保護装置制御の処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】オフセット・斜め衝突の判定に係るサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】ΔV
y offsetによる判定に係るサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。
【
図7】Y加速度の割合による判定に係るサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】ΔV
FLとΔV
FRとの差分による判定に係るサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】S27の判定のためのマトリクスを示す図である。
【
図10】S28の判定のためのマトリクスを示す図である。
【
図11】高速正面衝突、中速左オフセット衝突、高速左オフセット衝突、高速右オフセット衝突、高速左スモールオーバーラップ衝突、中速左斜め衝突、及び高速左斜め衝突の各テストを行った場合の、衝突開始からの経過時間とΔV
y offsetとの関係を示すグラフである。
【
図12】高速正面衝突、中速左オフセット衝突、高速左オフセット衝突、高速右オフセット衝突、高速左スモールオーバーラップ衝突、中速左斜め衝突、及び高速左斜め衝突の各テストを行った場合の、衝突開始からの経過時間とΔV
y offsetとの関係を示すグラフである。
【
図13】高速正面衝突、中速左オフセット衝突、高速左オフセット衝突、高速右オフセット衝突、高速左スモールオーバーラップ衝突、中速左斜め衝突、及び高速左斜め衝突の各テストを行った場合の、衝突開始からの経過時間とΔV
y offsetとの関係を示すグラフである。
【
図14】高速正面衝突、中速左オフセット衝突、高速左オフセット衝突、高速右オフセット衝突、高速左スモールオーバーラップ衝突、中速左斜め衝突、及び高速左斜め衝突の各テストを行った場合の、衝突開始からの経過時間と、X加速度に対するY加速度の割合との関係を示すグラフである。
【
図15】高速正面衝突、中速左オフセット衝突、高速左オフセット衝突、高速右オフセット衝突、高速左スモールオーバーラップ衝突、中速左斜め衝突、及び高速左斜め衝突の各テストを行った場合の、衝突開始からの経過時間とΔV
FLとΔV
FRとの差分との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、実施の形態に係る制御装置を備える車両100を示す模式図である。以下、車両100の「左側」,「右側」とは、車両の幅方向中央のセンターラインLに対し、「左側」,「右側」を意味する。
車両100は、ECU1、左側のサテライトセンサ2、右側のサテライトセンサ3、左側前方の前部保護装置4、右側前方の前部保護装置5、左側中央部の側部・頭部保護装置6、右側中央部の側部・頭部保護装置7を備える。図示は省略しているが、側部・頭部保護装置6,7は後部座席に対しても設けられている。
【0030】
前部保護装置4,5は、前面衝突の際に展開して、運転席及び助手席の乗員を保護するFAB等である。側部・頭部保護装置6,7は、オフセット衝突、斜め衝突、側面衝突の際に展開して運転席及び助手席の乗員を保護するCAB、SAB、シートベルト用プリテンショナ等である。ECU1は車両100の略中央部に配されており、前部保護装置4,5、及び側部・頭部保護装置6,7はECU1に接続されており、ECU1により作動を制御される。
【0031】
サテライトセンサ2,3は、加速度センサであり、例えばバンパーに取り付けられている。サテライトセンサ2,3は、車両の前後方向のX加速度、及び幅方向のY加速度を検出して電気信号を発生し、ECU1へ電気信号を出力する。なお、サテライトセンサ2,3は無線通信により、加速度をECU1へ出力することにしてもよい。
【0032】
図2は、制御装置101の構成を例示するブロック図である。
制御装置101のECU1は、CPU11、ROM,RAM等を含む記憶部12、加速度センサであるメインセンサ13、入力部14、出力部15、及びタイマ16を有する。
メインセンサ13は、X加速度及びY加速度を検知して電気信号を発生し、CPU11へ出力する。
入力部14には、サテライトセンサ2,3が接続されており、サテライトセンサ2,3が検出した加速度が入力部14に入力される。
出力部15には、前部保護装置4,5、及び側部・頭部保護装置6,7が接続されており、CPU11から前部保護装置4,5、及び側部・頭部保護装置6,7の作動指示信号が側部・頭部保護装置6,7へ出力される。
タイマ16は、CPU11による保護装置の制御アルゴリズムが開始された時点から計時する。
【0033】
記憶部12には、前面衝突が生じたか否かを判定し、
図1に示す障害物によりオフセット衝突又は斜め衝突(以下、オフセット・斜め衝突という)が生じたか否かを判定し、該判定に基づいて側部・頭部保護装置6,7を作動させる保護装置制御プログラム121が格納されている。保護装置制御プログラム121はCD-ROM等の記録媒体に記録されており、CPU11が記録媒体から保護装置制御プログラム121を読み出し、記憶部12に記憶させる。また、通信網に接続されている図示しない外部コンピュータから保護装置制御プログラム121を取得し、記憶部12に記憶させることにしてもよい。
【0034】
CPU11は、ECU1が車両100に搭載され、イグニッションがオンになりECU1に電源が供給された場合、記憶部12に格納された保護装置制御プログラム121に基づいて、保護装置制御処理を、イグニッションがオフになるまでの間行う。
【0035】
図3は、車両100の変形例を示す模式図である。
図3の車両100は、
図1の車両100と異なり、サテライトセンサ8を1個有する。サテライトセンサ8はセンターラインL上に設けられている。
【0036】
以下、前面衝突が生じた場合に、制御装置101による保護装置制御処理について説明する。
図4は、CPU11による保護装置制御の処理手順を示すフローチャートである。CPU11は適宜の間隔で、本処理を行う。
CPU11は、サテライトセンサ2,3、及びメインセンサ13から加速度のデータを取得する(S1)。ここで、X加速度及びY加速度は減速度である。
CPU11は、車両100の長手方向のX加速度(例えばメインセンサ13のX加速度)が制御アルゴリズム開始閾値以上であるか否かを判定する(S2)。制御アルゴリズム開始閾値は例えば、予め実験により求められ、記憶部12に記憶されている。
【0037】
CPU11はX加速度が制御アルゴリズム開始閾値以上でないと判定した場合(S2:NO)、処理を終了する。
CPU11は、X加速度が制御アルゴリズム開始閾値以上であると判定した場合(S2:YES)、タイマ16による計時を開始し(S3)、前面衝突レベルの判定値を算出する(S4)。この前面衝突レベルの判定値は、例えばサテライトセンサ2,3から取得したX加速度(第1加速度)、並びにメインセンサ13から取得したX加速度(第2加速度)及びY加速度(第3加速度)と、第1加速度及び第2加速度を積分して得られるX方向のΔV(以下、ΔVx という)、及び第3加速度を積分して得られるY方向のΔV(以下、ΔVy という)とに基づき、これらの論理積を取って求められる。これにより、精度良く前面衝突レベルの判定値を算出することができる。
算出された判定値により、前面衝突レベルが例えば0~7の段階のいずれであるかが求められる。
【0038】
CPU11は、後述するオフセット・斜め衝突の判定を行う(S5)。
CPU11は、求めた前面衝突レベルが前部保護装置4,5の作動判定レベル以上であるか否かを判定する(S6)。第2加速度に基づく前面衝突レベルが前部保護装置4,5の作動判定レベル以上であることを確認した上で、オフセット・斜め衝突を判別するため、側面衝突が除外された状態で、良好にオフセット衝突又は斜め衝突を検知することができる。即ち前記作動判定レベル未満である場合、第3加速度が大きいときであっても、側部・頭部保護装置6,7の作動の有無の判定を行わないようにすることで、側面衝突における側部・頭部保護装置6,7の作動の有無の判定と区別することができる。「前部保護装置4,5の作動判定レベル」の一例として、前記段階の「1」が挙げられる。
【0039】
CPU11は前面衝突レベルが前部保護装置4,5の作動判定レベル以上でないと判定した場合(S6:NO)、処理をS13へ進める。
CPU11は前面衝突レベルが前部保護装置4,5の作動判定レベル以上であると判定した場合(S6:YES)、前部保護装置4,5を作動させる(S7)。
【0040】
CPU11は、前面衝突レベルがオフセット・斜め衝突判定の有効化閾値以上であるか否かを判定する(S8)。これにより、側面衝突がより良好に除外される。「オフセット・斜め衝突判定の有効化閾値」の一例として、前記段階の「2」が挙げられる。
CPU11は前面衝突レベルがオフセット・斜め衝突判定の有効化閾値以上でないと判定した場合(S8:NO)、処理をS13へ進める。
【0041】
CPU11は前面衝突レベルがオフセット・斜め衝突判定の有効化閾値以上であると判定した場合(S8:YES)、オフセット・斜め衝突レベルが左衝突による側部・頭部保護装置6の作動判定レベルであるか否かを判定する(S9)。「左衝突による側部・頭部保護装置6の作動判定レベル」とは、後述するS28の判定レベルが「1」の場合をいう。
CPU11は、オフセット・斜め衝突レベルが左衝突による側部・頭部保護装置6の作動判定レベルであると判定した場合(S9:YES)、側部・頭部保護装置6を作動させる(S10)。
【0042】
CPU11はオフセット・斜め衝突レベルが左衝突による側部・頭部保護装置6の作動判定レベルでないと判定した場合(S9:NO)、オフセット・斜め衝突レベルが右衝突による側部・頭部保護装置7の作動判定レベルであるか否かを判定する(S11)。「右衝突による側部・頭部保護装置6の作動判定レベル」とは、後述するS28の判定レベルが「2」の場合をいう。
【0043】
CPU11はオフセット・斜め衝突レベルが右衝突による側部・頭部保護装置7の作動判定レベルでないと判定した場合(S11:NO)、即ち正面衝突と判定した場合、処理をS13へ進める。
CPU11はオフセット・斜め衝突レベルが右衝突による側部・頭部保護装置7の作動判定レベルであると判定した場合(S11:YES)、側部・頭部保護装置7を作動させ(S12)、処理をS13へ進める。
【0044】
CPU11は、S13において、制御アルゴリズムの終了条件であるか否かを判定する。制御アルゴリズムの終了条件としては、前記X加速度が制御アルゴリズム開始閾値未満になった状態が一定時間継続した場合等が挙げられる。
CPU11は制御アルゴリズムの終了条件でないと判定した場合(S13:NO)、処理をS3へ戻す。
CPU11は制御アルゴリズムの終了条件であると判定した場合(S13:YES)、制御アルゴリズムを終了する。
【0045】
図5は、上述のオフセット・斜め衝突の判定に係るサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。
CPU11は、判定手法有効化3BitテーブルのBit1を有効(Bit1=1)にする(S21)。
CPU11は、後述するΔV
y offsetによる判定を行う(S22)。
【0046】
CPU11は、判定手法有効化3BitテーブルのBit2が1であるか否か、即ちBit2を有効にするか否かを判定する(S23)。Bit2を有効にするか否かは、CPU11が、ユーザの指示を受け付けたか否か、又は取得した加速度データ等により判定する。
CPU11は判定手法有効化3BitテーブルのBit2が1でないと判定した場合(S23:NO)、処理をS25へ進める。
CPU11は判定手法有効化3BitテーブルのBit2が1であると判定した場合(S23:YES)、後述するY加速度の割合による判定を行う(S24)。
【0047】
CPU11は、判定手法有効化3BitテーブルのBit3が1であるか否かを判定する(S25)。
CPU11は判定手法有効化3BitテーブルのBit3が1でないと判定した場合(S25:NO)、処理をS27へ進める。
図3の車両100のように、サテライトセンサを1個のみ有する場合、Bit3=0であり、S26は省略される。
CPU11は判定手法有効化3BitテーブルのBit3が1であると判定した場合(S25:YES)、後述するΔV
FLとΔV
FRとの差分による判定を行う(S26)。
【0048】
CPU11は、S26の判定により得られたL/R Overlap Levelと、S22の判定により得られたΔVy offset Levelとのマトリクスによる判定を行う(S27)。
CPU11は、S27の判定結果と、S24の判定により得られたY/X Ratio Level とのマトリクスによる判定を行う(S28)。
CPU11は、S28の判定結果を、リターンする。
【0049】
ΔVoffsetに基づく判別に、複数の加速度検出部が検出した加速度に基づく判別を組み合せるので、精度良くオフセット・斜め衝突の有無の判定、及び衝突方向の検知を行うことができる。
【0050】
図6は、上述のΔV
y offsetによる判定に係るサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。
CPU11は、Y加速度(第3加速度)をメインセンサ13から取得し、取得したY加速度データにローパスフィルタ処理を施す(S41)。ローパスフィルタ処理を施すことにより、不要な高周波ノイズ入力を除去し、又、低速の正面衝突及び悪路走行時に生じる高周波の加速度入力を除去することができる。このローパスフィルタ処理はハード的に実現することにしてもよい。
【0051】
CPU11は、所定のタイミングでY加速度を加算(積分)してY方向のΔVy を算出する(S42)。
以下、CPU11は、算出したΔVy につき、前面衝突時のΔVy が出来る限り0に収束するようにオフセット処理を行う。
CPU11は、ΔVy が+オフセット値以上であるか否かを判定する(S43)。
CPU11はΔVy が+オフセット値以上であると判定した場合(S43:YES)、ΔVy からオフセット値を減算する(S44)。
CPU11はΔVy が+オフセット値以上でないと判定した場合(S43:NO)、ΔVy が-オフセット値未満であるか否かを判定する(S45)。
CPU11はΔVy が-オフセット値未満であると判定した場合(S45:YES)、ΔVy にオフセット値を加算する(S46)。
CPU11はΔVy が-オフセット値未満でないと判定した場合(S45:NO)、ΔVy を0に置き換える(S47)。
【0052】
高速の正面衝突が生じた場合に、衝突後の衝撃による回転で、ΔVy が大きくなることがあるが、正面衝突に基づくΔVyの増加を防ぐように、Y加速度にオフセット処理(バイアス)を施してΔVy を減衰させるので、良好にオフセット・斜め衝突を検知することができる。即ち、ΔVoffsetに基づいてオフセット・斜め衝突の有無を判定するので、SAB及びCABの展開を必要としない、正面衝突を除外することができる。
【0053】
CPU11は、S44,46,47の算出値をΔVy offsetへ代入する(S48)。
CPU11は閾値を算出する(S49)。CPU11は、制御アルゴリズムの開始後、タイマ16により計時した時間tを取得する。例えば実験により時間tに対する閾値の関数が予め記憶部12に記憶してあり、CPU11は該関数に基づいて閾値を算出する。
また、CPU11は、閾値の有効期間を設定することにしてもよい。
正面衝突が生じた場合に、衝突後の衝撃による回転でΔVy が大きくなることがあるが、経過時間に応じて閾値を設定することで、又は閾値の有効期間を設定することで、上述のケースと、オフセット・斜め衝突とを判別することができる。
なお、閾値は一定値を用いることにしてもよいが、上述したように経過時間に応じて閾値を設定し、又は閾値の有効期間を設定する方が好ましい。
【0054】
CPU11は、ΔVy offsetが正の閾値以上であるか否かを判定する(S50)。
CPU11はΔVy offsetが正の閾値以上であると判定した場合(S50:YES)、左側衝突と判定して、ΔVy offset Levelを「1」とし(S51)、リターンする。
CPU11はΔVy offsetが正の閾値以上でないと判定した場合(S50:NO)、ΔVy offsetが負の閾値以下であるか否かを判定する(S52)。
CPU11はΔVy offsetが負の閾値以下であると判定した場合(S52:YES)、右側衝突と判定して、ΔVy offset Levelを「2」とし(S53)、リターンする。
CPU11はΔVy offsetが負の閾値以下でないと判定した場合(S52:NO)、正面衝突と判定して、ΔVy offset Levelを「0」とし(S54)、リターンする。
【0055】
図7は、上述のY加速度の割合による判定に係るサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。
CPU11は、X加速度及びY加速度をメインセンサ13から取得する(S61)。取得した加速度データにローパスフィルタ処理を施すことにしてもよい。
CPU11は、下限値加速度を設定する(S62)。X加速度に対するY加速度の割合を求めるが、X加速度が0である場合、前記割合を算出することができない。そこで、X加速度が0の場合に、分母とする下限値加速度を求めておく。
【0056】
CPU11は、Y加速度の割合を下記式により算出する(S63)。
Y加速度の割合=Y加速度/MAX(X加速度,下限値加速度)
即ち、Y加速度を、X加速度及び下限値加速度のうちの大きい方の値で除する。
【0057】
CPU11は閾値を算出する(S64)。CPU11は、制御アルゴリズムの開始後、タイマ16により計時した時間tを取得する。例えば時間tに対する閾値の関数が予め記憶部12に記憶してあり、CPU11は該関数に基づいて閾値を算出する。
また、CPU11は、閾値の有効期間を設定することにしてもよい。
なお、閾値は一定値を用いることにしてもよいが、上述したように経過時間に応じて閾値を設定し、又は閾値の有効期間を設定する方が好ましい。
【0058】
CPU11は算出したY加速度の割合が正の閾値以上であるか否かを判定する(S65)。
CPU11はY加速度の割合が正の閾値以上であると判定した場合(S65:YES)、左側衝突と判定して、Y/X Ratio Levelを「1」とし(S66)、リターンする。
CPU11はY加速度の割合が正の閾値以上でないと判定した場合(S65:NO)、Y加速度の割合が負の閾値以下であるか否かを判定する(S67)。
CPU11はY加速度の割合が負の閾値以下であると判定した場合(S67:YES)、右側衝突と判定して、Y/X Ratio Levelを「2」とし(S68)、リターンする。
CPU11はY加速度の割合が負の閾値以下でないと判定した場合(S67:NO)、正面衝突と判定して、Y/X Ratio Levelを「0」とし(S69)、リターンする。
【0059】
正面衝突の場合にX加速度が大きくなることでY加速度の割合が小さくなり、オフセット・斜め衝突の場合にY加速度の割合が正面衝突時に比べて大きくなることにより、衝突形態を判別する。Y加速度の割合が正の値又は負の値になることにより、正の閾値及び負の閾値のいずれを超えたかを判別することで、衝突方向を検知することができる。
【0060】
図8は、上述のΔV
FLとΔV
FRとの差分による判定に係るサブルーチンの処理手順を示すフローチャートである。
CPU11は、
図1の車両100のようにサテライトセンサ2,3を有するとき、左側のサテライトセンサ2のX加速度、及び右側のサテライトセンサ3のX加速度を取得する(S71)。取得した加速度データにローパスフィルタ処理を施すことにしてもよい。
CPU11は、サテライトセンサ2のX加速度に基づきΔV
FLを算出し、サテライトセンサ3のX加速度に基づきΔV
FRを算出する(S72)。
CPU11は、ΔV
FLとΔV
FRとの差分を算出する(S73)。
【0061】
CPU11は閾値を算出する(S74)。CPU11は、制御アルゴリズムの開始後、タイマ16により計時した時間tを取得する。例えば時間tに対する閾値の関数が予め記憶部12に記憶してあり、CPU11は該関数に基づいて閾値を算出する。
また、CPU11は、閾値の有効期間を設定することにしてもよい。
なお、閾値は一定値を用いることにしてもよいが、上述したように経過時間に応じて閾値を設定し、又は閾値の有効期間を設定する方が好ましい。
【0062】
CPU11は算出した差分が正の閾値以上であるか否かを判定する(S75)。
CPU11は差分が正の閾値以上であると判定した場合(S75:YES)、左側衝突と判定して、L/R Overlap Levelを「1」とし(S76)、リターンする。
CPU11は差分が正の閾値以上でないと判定した場合(S75:NO)、差分が負の閾値以下であるか否かを判定する(S77)。
CPU11は差分が負の閾値以下であると判定した場合(S77:YES)、右側衝突と判定して、L/R Overlap Levelを「2」とし(S78)、リターンする。
CPU11は差分が負の閾値以下でないと判定した場合(S77:NO)、正面衝突と判定して、L/R Overlap Levelを「0」とし(S79)、リターンする。
【0063】
正面衝突の場合には衝突対象物が正面から車両前部の幅方向に亘って衝突するため、両側のサテライトセンサ2,3のΔVFLとΔVFRとの差分は小さく、オフセット・斜め衝突の場合には、前記差分が大きくなることにより、衝突形態を判別し、前記差分が正及び負のいずれの値になるかにより、衝突方向を検知することができる。
【0064】
図9に、上述のS27の判定のためのマトリクスを示す。このマトリクスにおいては、行方向の項目がS22に基づくΔV
y offset Levelであり、列方向の項目がS26に基づくL/R Overlap Levelである。判定ロジックを使用しない場合は、Level「0」に数値を定義する。
CPU11は、このマトリクスに基づいて判定を行う。
【0065】
図10に、上述のS28の判定のためのマトリクスを示す。このマトリクスにおいては、行方向の項目がS27の判定結果であり、列方向の項目がS24に基づくY/X Ratio Levelである。
CPU11は、このマトリクスに基づいて判定を行う。
なお、判定の組み合わせは、上述した場合には限定されない。また、サテライトセンサ2,3より、ECU1に内蔵されたメインセンサ13の方が故障等のリスクが少なく、検出データがより確実であり、車両の挙動をより良好に判断することができるので、L/R Overlap Level求めないことにしてもよい。
【0066】
以上のように、本実施の形態においては、第2加速度等により前面衝突用の前部保護装置4,5の作動判定レベルであることを確認した上で、オフセット・斜め衝突を判別するため、側面衝突が除外された状態で、良好にオフセット・斜め衝突を検知することができる。
そして、上述したように、ΔVy offsetに基づいてオフセット・斜め衝突の有無を判定するので、正面衝突を除外することができる。
前面衝突のレベル及びΔVoffsetを閾値と比較して判定することで、衝突の度合いに応じたタイミングで、側部・頭部保護装置6,7のうちの適切な装置を作動させることができる。
そして、本実施の形態においては、サテライトセンサ8のみを有する場合においても、良好にオフセット・斜め衝突を検知し、オフセット・斜め衝突の度合いに基づいて、側部・頭部保護装置6,7のうちの適切な装置を良好なタイミングで作動させることができる。
【実施例0067】
以下、実施の形態に係る車両100を用いて衝突テストを行った場合の保護装置の作動制御について説明する。
【0068】
図11は、高速正面衝突、中速左オフセット衝突、高速左オフセット衝突、高速右オフセット衝突、高速左スモールオーバーラップ衝突、中速左斜め衝突、及び高速左斜め衝突の各テストを行った場合の、経過時間とΔV
y offsetとの関係を示すグラフである。横軸は経過時間(ms)、縦軸はΔV
y offset(km/h)である。スモールオーバーラップ衝突とは、オフセット衝突のうち、フロント部分の運転席側1/4が他の車両等の障害物に当たる衝突のことをいう。
【0069】
図11においては、Y加速度にローパスフィルタ処理を施すことにより、75Hzの周波数の加速度入力が除去されている。オフセット加速度は0.9216Gであり、閾値は3.6km/hに設定されている。
閾値が3.6km/hに設定されているので、高速正面衝突が除外される。中速左オフセット衝突の場合、閾値未満であり、衝突の度合いが小さいため、オフセット・斜め衝突と判定されず、側部・頭部保護装置6が作動されない。高速左オフセット衝突、高速スモールオーバーラップ衝突、中速左斜め衝突、高速左斜め衝突の場合、ΔV
y が閾値を超えたタイミングでオフセット・斜め衝突と判定され、側部・頭部保護装置6が作動される。高速右オフセット衝突の場合、ΔV
y が閾値を超えたタイミングでオフセット・斜め衝突と判定され、側部・頭部保護装置7が作動される。
【0070】
図12は、高速正面衝突、中速左オフセット衝突、高速左オフセット衝突、高速右オフセット衝突、高速左スモールオーバーラップ衝突、中速左斜め衝突、及び高速左斜め衝突の各テストを行った場合の、経過時間とΔV
y offsetとの関係を示すグラフである。横軸は経過時間(ms)、縦軸はΔV
y offset(km/h)である。
図11においては、閾値は一定であったが、
図12においては、制御アルゴリズム開始から80ms後に、閾値が無効化され、即ち閾値の有効期間が設けられている。従って、正面衝突後に、車両が大きく横に逸れたために、所定時間経過後に、ΔV
y が大きくなる場合を除外することができ、予期せず、オフセット・斜め衝突と判定されて側部・頭部保護装置6,7が作動することが避けられる。また、中速左オフセット衝突の場合、閾値未満であり、衝突の度合いが小さいため、オフセット・斜め衝突と判定されず、側部・頭部保護装置6が作動されない。
【0071】
図13は、高速正面衝突、中速左オフセット衝突、高速左オフセット衝突、高速右オフセット衝突、高速左スモールオーバーラップ衝突、中速左斜め衝突、及び高速左斜め衝突の各テストを行った場合の、経過時間とΔV
y offsetとの関係を示すグラフである。横軸は経過時間(ms)、縦軸はΔV
y offset(km/h)である。
図13においては、閾値は経過時間に応じて変化するように設定されている。
図13においては、ΔV
y offsetが7km/hまで上昇しているものがあるが、これは衝突後の衝撃により車両が回転したことに起因する。この場合、閾値を時間によって変化させることで、上述の原因によりΔV
y offsetが上昇した場合に側部・頭部保護装置6,7が作動されるのを回避することができ、側部・頭部保護装置6,7の作動の判定を良好に行うことができる。また、中速左オフセット衝突の場合、閾値未満であり、オフセット衝突であるが衝突の度合いが小さいため、オフセット・斜め衝突と判定されず、側部・頭部保護装置6が作動されない。
【0072】
図14は、高速正面衝突、中速左オフセット衝突、高速左オフセット衝突、高速右オフセット衝突、高速左スモールオーバーラップ衝突、中速左斜め衝突、及び高速左斜め衝突の各テストを行った場合の、経過時間と、X加速度に対するY加速度の割合との関係を示すグラフである。横軸は経過時間(ms)、縦軸はY加速度の占める割合(%)である。
高速スモールオーバーラップ衝突、中速左斜め衝突、及び高速左斜め衝突の場合、Y加速度の割合が閾値を超えたタイミングでオフセット・斜め衝突と判定され、側部・頭部保護装置6が作動される。高速右オフセット衝突の場合、Y加速度の割合が閾値を超えたタイミングでオフセット・斜め衝突と判定され、側部・頭部保護装置7が作動される。高速左オフセット衝突の場合、閾値を超えず、オフセット・斜め衝突と判定されないので、上述の保護装置制御処理の他のステップと組み合わせて、オフセット・斜め衝突を判定する必要がある。
【0073】
図15は、高速正面衝突、中速左オフセット衝突、高速左オフセット衝突、高速右オフセット衝突、高速左スモールオーバーラップ衝突、中速左斜め衝突、及び高速左斜め衝突の各テストを行った場合の、経過時間と、ΔV
FLとΔV
FRとの差分との関係を示すグラフである。横軸は経過時間(ms)、縦軸はΔV
FLとΔV
FRとの差分(%)である。
高速左オフセット衝突、高速右オフセット衝突、高速スモールオーバーラップ衝突、中速左斜め衝突、及び高速左斜め衝突の場合、オフセット・斜め衝突と判定され、側部・頭部保護装置6又は7が作動されるが、サテライトセンサが故障した場合、判定することができなくなる。
本実施の形態においては、必ずΔV
y offsetを求めて行う判定と組み合わせるので、上述の問題は生じない。
【0074】
以上より、本実施の形態においては、側面衝突及び正面衝突が除外された状態で、良好にオフセット・斜め衝突を検知し、オフセット・斜め衝突の度合いに基づいて、適切なタイミングで適切な方の側部・頭部保護装置を作動させることができることが確認された。
【0075】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。即ち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0076】
例えば、メインセンサ13はECU1に内蔵される場合には限定されない。
また、CPU11による保護装置制御処理の処理手順を示すフローチャートのステップの順序は
図4に示した順序には限定されない。S5のオフセット・斜め衝突の判定処理と、S6の前面衝突レベルが前部保護装置4,5の作動判定レベル以上であるか否かの判定処理とを並行してもよい。また、S6により前面衝突レベルが前部保護装置4,5の作動判定レベル以上であると判定した場合に、オフセット・斜め衝突の判定処理を行うことにしてもよい。