(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180674
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】光半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/022 20210101AFI20221130BHJP
【FI】
H01S5/022
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019207967
(22)【出願日】2019-11-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 佳昭
(72)【発明者】
【氏名】笠井 輝明
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AD05
5F173AF72
5F173AK21
5F173AK23
5F173AL04
5F173MA08
5F173MC12
5F173MC13
5F173MD12
5F173MD16
5F173MD17
5F173MD18
5F173MD65
5F173MD84
(57)【要約】 (修正有)
【課題】光半導体素子の光出射部に加わる応力の集中が緩和された光半導体装置を提供する。
【解決手段】光半導体装置100は、金属ロウ材50を介してサブマウント10に実装された半導体レーザアレイ20を備えている。半導体レーザアレイの光出射部はサブマウントの側面から外側に突出しており、光出射部の下面からサブマウントの側面にかけて金属ロウ材からなるフィレット51が形成されている。半導体レーザアレイの表面には、前端面と交差する方向に沿ってそれぞれ延びる複数の凹部41が前端面と平行な方向に互いに間隔をあけて配列された凹凸部40が形成されている。半導体レーザアレイの表面に形成された表面電極38と金属ロウ材とが接合されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サブマウントと前記サブマウントの上面に金属ロウ材を介して実装された光半導体素子とを少なくとも備えた光半導体装置であって、
上面視で、前記光半導体素子の光出射部は前記サブマウントの側面から外側に突出して配置され、
前記サブマウントの側面から前記光出射部の下面にかけて前記金属ロウ材からなるフィレットが形成されており、
前記光半導体素子の表面に、前記光半導体素子の前端面と交差する方向に沿ってそれぞれ延びる複数の凹部が前記前端面と平行な方向に互いに間隔をあけて配列された凹凸部が形成されており、
前記光半導体素子の表面に形成された表面電極と前記金属ロウ材とが接合されていることを特徴とする光半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光半導体装置において、
前記前端面は前記光半導体素子の光出射面であり、
前記凹凸部は前記前端面から前記光出射部を越えて所定の位置まで延びていることを特徴とする光半導体装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光半導体装置において、
前記凹凸部は前記前端面から前記光半導体素子の後端面まで延びていることを特徴とする光半導体装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光半導体装置において、
前記凹部の幅は前記前端面から前記後端面まで一定であることを特徴とする光半導体装置。
【請求項5】
請求項3に記載の光半導体装置において、
前記凹部の幅は前記前端面から前記後端面にかけて狭くなっていることを特徴とする光半導体装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光半導体装置において、
前記光半導体素子は半導体積層体を有しており、
前記半導体積層体の表面に前記前端面と平行な方向に互いに間隔をあけて前記表面電極の一部をなす複数の電極ストライプを形成することで、前記凹凸部が設けられることを特徴とする光半導体装置。
【請求項7】
請求項6に記載の光半導体装置において、
前記電極ストライプの表面には、前記電極ストライプを構成する金属よりも融点が高い金属層が設けられていることを特徴とする光半導体装置。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか1項に記載の光半導体装置において、
前記光半導体素子は半導体積層体を有しており、
前記前端面と平行な方向に互いに間隔をあけて前記半導体積層体の表面に複数の溝部または複数のリッジを形成することで、前記凹凸部が設けられることを特徴とする光半導体装置。
【請求項9】
請求項1~4及び6~8のいずれか1項に記載の光半導体装置において、
前記凹凸部は、その表面に前記表面電極が形成されており、
前記凹凸部における前記凹部の幅が前記凹凸部における凸部の幅よりも狭いことを特徴とする光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光半導体装置に関し、特に、サブマウントとその上面に金属ロウ材を介して実装された光半導体素子とを少なくとも備えた光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体レーザ素子に代表される光半導体素子は、金-スズ系合金(以下、AuSn合金という)等の金属ロウ材を接着材としてサブマウントの上面に接合、実装される。このとき、光半導体素子の光出射部が溶融した金属ロウ材に埋没しないようにするために種々の構造が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、光出射部が設けられた光半導体素子の前端部をサブマウントの側面から外側に突出するように配置する構成が開示されている。また、サブマウントから突き出した光半導体素子の下面からサブマウントの側面にかけて金属ロウ材からなるフィレットを形成し、光半導体素子とサブマウントとの接合を強固にしている。また、フィレットを介して、光出射部から外部に放熱している。
【0004】
また、特許文献2には、接着層である金属ロウ材の材質を光半導体素子の光出射部とそれ以外の部分とで変更する構成が開示されている。光出射部側に設けられた金属ロウ材の融点をそれ以外の部分よりも高くすることで、光半導体素子とサブマウントとの接合時に、光出射部側で金属ロウ材が濡れ拡がって光出射面を覆うのを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-318475号公報
【特許文献2】特開2017-191899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光半導体素子の動作時には、光出射部での発熱量が最も大きくなる。また、光半導体素子の光出力が大きいと、光出射部での発熱量もそれに応じて大きくなる。
【0007】
しかし、特許文献2に開示された従来の構成では、光出射部側の接合層が溶融しにくく、光半導体素子とサブマウントとの接合不良あるいは未接合が生じるおそれがあった。このようなことが生じると、光出射部からサブマウントを介して熱が放散されにくくなり、光半導体素子の特性が変化したり、動作寿命が低下したりするおそれがあった。また、特許文献2の実施例に記載されるように、前端部側の接着層であるAuSn合金において、Auの組成比がSnとの共晶組成比を越える場合、その融点は大幅に高くなる。このため、光半導体素子とサブマウントとの接合温度が高くなる。その結果、光半導体素子に残留する歪が増大し、動作寿命が低下するおそれがあった。
【0008】
また、特許文献1に開示される従来の構成では、光半導体素子とサブマウントとの接合時に金属ロウ材が冷却、凝固される過程において、フィレットの端部から加わる引っ張り応力が光出射部の一部に集中し、光半導体素子にクラック等を生じさせて破壊に至らしめるおそれがあった。
【0009】
しかし、特許文献1には、このような応力集中による光半導体素子の破壊やその防止策等について何ら開示されていない。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたもので、その目的は、フィレットから光半導体素子の光出射部に加わる応力の集中が緩和された光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明に係る光半導体装置は、サブマウントと前記サブマウントの上面に金属ロウ材を介して実装された光半導体素子とを少なくとも備えた光半導体装置であって、上面視で、前記光半導体素子の光出射部は前記サブマウントの側面から外側に突出して配置され、前記サブマウントの側面から前記光出射部の下面にかけて前記金属ロウ材からなるフィレットが形成されており、前記光半導体素子の表面に、前記光半導体素子の前端面と交差する方向に沿ってそれぞれ延びる複数の凹部が前記前端面と平行な方向に互いに間隔をあけて配列された凹凸部が形成されており、前記光半導体素子の表面に形成された表面電極と前記金属ロウ材とが接合されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、フィレットを介して、光出射部からサブマウントや外部雰囲気に効率良く放熱できる。また、フィレットから加わる引っ張り応力が光出射部の一部に集中して、光半導体素子が破壊されるのを抑制できる。また、光半導体素子の動作寿命が低下するのを抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光半導体装置によれば、光半導体素子の破壊や動作寿命の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態1に係る光半導体装置を前側から見た模式図である。
【
図2】光半導体装置の光出射部近傍の断面模式図である。
【
図5】光半導体装置の製造方法を説明する断面模式図である。
【
図6A】比較のための光半導体装置における応力集中の状態を示した図である。
【
図6B】実施形態1に係る光半導体装置における応力集中の状態を示した図である。
【
図7】変形例1に係る半導体光共振器の断面模式図である。
【
図8】変形例1に係る表面電極の形成方法を説明する断面模式図である。
【
図9】変形例2に係る半導体光共振器の断面模式図である。
【
図10】変形例3に係る凹凸部の平面模式図である。
【
図11A】実施形態2に係る凹凸部の平面模式図である。
【
図12A】実施形態2に係る凹凸部の断面模式図である。
【
図12B】比較のための凹凸部の断面模式図である。
【
図12C】比較のための別の凹凸部の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0016】
(実施形態1)
[光半導体装置の構成]
図1は、本実施形態に係る光半導体装置を前側から見た模式図を、
図2は、光半導体装置の光出射部近傍の断面模式図を、
図3は、半導体光共振器の断面模式図をそれぞれ示す。
図4Aは、凹凸部の平面模式図を、
図4Bは、
図4AのIVB-IVB線での断面模式図を、
図4Cは、
図4AのIVC-IVC線での断面模式図をそれぞれ示す。
【0017】
なお、説明の便宜上、
図1,2において、半導体レーザアレイ20の構造を一部省略して図示している。また、なお、以降に示す図面において、光半導体装置100及び各部の構造は模式図として例示的に示している。従って、各図において、各部の形状、位置、配置関係、寸法は実際の関係とは異なるものである。
【0018】
また、以降の説明において、半導体光共振器30の共振器方向を前後方向と、凹部41または溝部36aの配列方向を左右方向と、前後方向及び左右方向とそれぞれ直交する方向を上下方向とそれぞれ呼ぶことがある。また、前後方向において、光出射面が設けられた側を前と、その反対側を後とそれぞれ呼ぶことがある。上下方向において、半導体光共振器30が設けられた側を上と、サブマウント10が設けられた側を下とそれぞれ呼ぶことがある。なお、
図3では、表面電極38が設けられた側を上側と、裏面電極37が設けられた側を下側としている。
【0019】
図1に示すように、光半導体装置100は、半導体レーザアレイ20とサブマウント10と金属ロウ材50とを有しており、サブマウント10の上面に金属ロウ材50を介して半導体レーザアレイ20が接合、実装された構造となっている。また、
図2に示すように、半導体レーザアレイ20の前側は、上面視で、サブマウント10の側面から外側に突出して配置されている。半導体レーザアレイ20の前端面21aは、レーザ光が出射される光出射面であり、サブマウント10の側面から外側に突出した部分は、半導体レーザアレイ20の光出射部21に相当する。サブマウント10の側面から光出射部21の下面にかけて金属ロウ材50からなるフィレット51が形成されている。
【0020】
半導体レーザアレイ20は、
図3に示す単位発光部毎の半導体光共振器30が左右方向に沿って所定の間隔をあけて複数配列された端面放射型の光半導体素子である。なお、本実施形態の半導体レーザアレイ20は、一つの単位発光部としての半導体光共振器30が42個集積された構造となっている所謂レーザダイオードバー(LDバー)である。半導体レーザアレイ20に含まれる半導体光共振器30の個数は適宜変更されうる。
【0021】
図3に示すように、半導体光共振器30は、基板31の表面に第1クラッド層32と活性層33と第2クラッド層34と電流狭窄層35とコンタクト層36とがこの順で積層された半導体積層体30Aが形成されてなる。基板31及び半導体積層体30Aの各層は化合物半導体材料からなる。また、半導体積層体30Aの表面であるコンタクト層36の表面には表面電極38が形成されており、基板31の裏面には裏面電極37が形成されている。コンタクト層36は表面電極38と、基板31の裏面は裏面電極37とそれぞれオーミック接触している。
【0022】
表面電極38と裏面電極37との間にしきい値以上の電圧が印加されると、コンタクト層36とこれに接した第2クラッド層34を介して活性層33に電流が注入され、注入された電流は電流狭窄層35によって活性層と平行な方向に閉じ込められる。
【0023】
注入された電流によって、活性層33の発光部で活性層33のエネルギー障壁に応じた波長の光が発生する。発生した光は、第1クラッド層32及び第2クラッド層34により活性層33に光学的に閉じ込められる。また、半導体光共振器30の前端面21aと後端面22には互いに反射率の異なる誘電体膜が積層された誘電反射層(図示せず)が形成されており、半導体光共振器30はレーザ光の共振器を構成している。後端面22側よりも反射率が低い前端面21a側からレーザ光が出射される。
【0024】
図1及び
図4A~4Cに示すように、コンタクト層36には、前端面21aから後端面22まで前後方向にそれぞれ延びる複数の溝部36aが左右方向に互いに間隔をあけて複数形成されている。さらに、コンタクト層36の表面に表面電極38が形成されて、半導体レーザアレイ20の表面に溝部36aに対応する複数の凹部41と互いに隣り合う凹部41に挟まれた複数の凸部42とを有する凹凸部40が形成されている。凹凸部41は、半導体レーザアレイ20の表面のほぼ全体にわたって形成されている。
【0025】
なお、本実施形態において、コンタクト層36の厚さは1μmで、溝部36aの深さは0.5μmである。また、表面電極38の厚さは0.5μmである。
【0026】
また、半導体レーザアレイ20の左右方向の幅は10mm程度であり、前後方向の長さは4mm程度である。1つの半導体光共振器30における左右方向の幅は225μmで、表面電極38の左右方向の幅は185μmである。溝部36aの左右方向の幅は5μmで、この値は、半導体レーザアレイ20の前端面21aから後端面22まで一定である。また、互いに隣り合う溝部36aの間隔は3μmであり、前端面21aから後端面22まで一定である。コンタクト層36の表面に前述の厚さの表面電極38が形成されることで、凹凸部40の凹部41の左右方向の幅W1は4μmとなり、凸部42の左右方向の幅W3も4μmとなる。つまり、W1=W3である。1つの半導体光共振器30あたりで最大20ペアの凹凸構造を含むことになる。
【0027】
なお、本願明細書において、「一定」とは、部材の加工公差を含んで一定という意味であり、厳密な意味で一定と言うことを意味するものではない。
【0028】
図3に示すように、表面電極38は、密着層38aと拡散防止層38bと導電接着層38cとがこの順で積層された3層構造となっている。密着層38aはTi(チタン)からなり、コンタクト層36と表面電極38との密着性を確保するために設けられる。拡散防止層38bはPt(白金)からなり、導電接着層38cや金属ロウ材50を構成する金属が半導体光共振器30の内部に拡散するのを防止するために設けられる。導電接着層38cは、半田接合性に対応した金属層で形成するようにAuまたはAuSn合金からなり、後で述べるように、サブマウント10に設けられた金属ロウ材50との接着層となる。また、密着層38a及び拡散防止層38bはそれぞれ導電金属からなるが、金等と比べて抵抗率が高い。導電接着層38cをAuまたはAuSn合金とすることで、表面電極38の電気抵抗を低減することができる。
【0029】
裏面電極37は、密着層37aと拡散防止層37bと導電層37cとがこの順で積層された3層構造である。密着層37aはTi(チタン)からなり、拡散防止層37bはPt(白金)からなり、導電層37cはAuワイヤとの接続性に対応した金属層とするようにAuからなる。
【0030】
サブマウント10は、導電性材料からなる板状の部材であり、その材質は、例えば、銅タングステン合金(CuW)である。
【0031】
金属ロウ材50は、AuSn合金からなり、所定の形状にパターニングされて、サブマウント10の上面に設けられている。
【0032】
[光半導体装置の製造方法]
図5は、光半導体装置の製造方法を説明する断面模式図を示す。なお、説明の便宜上、
図5において、光半導体装置100の製造方法のうちの一部のみを図示している。また、半導体レーザアレイ20のうち1つの半導体光共振器30のみを図示し、電流狭窄層35とコンタクト層36以外の半導体層及び裏面電極37の図示を省略する。
【0033】
まず、コンタクト層36まで形成された半導体レーザアレイ20を準備し、図示しないマスクパターンを用いて、コンタクト層36をその厚さの半分までエッチングする((a)図)。
【0034】
エッチングによりコンタクト層36に溝部36aを形成する場合、エッチング量のばらつきにより電流狭窄層35がエッチングされないようにする必要がある。本実施形態では、この加工マージンを考慮して、厚さ1μmのコンタクト層36の内部で溝部36aが完全に留まるように、溝部36aの深さをコンタクト層36の厚さの半分の0.5μmとしている。また、この時点で、溝部36aの左右方向の幅は、5μm、互いに隣り合う溝部36aの間隔は3μmとしている。
【0035】
溝部36aが形成されたコンタクト層36の表面にチタン、白金、AuSn合金をこの順に成膜し、さらに所要のパターニングを行って表面電極38を形成する((b)図)。表面電極38の厚さが0.5μmであるため、この時点で、凹部41の左右方向の幅及び凸部42の左右方向の幅はともに4μmとなる。
【0036】
上面に金属ロウ材50が設けられたサブマウント10を準備する。金属ロウ材50は、予め所定の形状にパターニングされている。
【0037】
表面電極38を下にして、半導体レーザアレイ20を金属ロウ材50の上に配置する。半導体レーザアレイ20を金属ロウ材50に向けて押圧しながらサブマウント10と半導体レーザアレイ20とを加熱し、表面電極38と金属ロウ材50とを接合する((c)図)。
【0038】
[効果等]
以上説明したように、本実施形態に係る光半導体装置100は、サブマウント10とサブマウント10の上面に金属ロウ材50を介して実装された半導体レーザアレイ20(光半導体素子)とを少なくとも備えている。
【0039】
上面視で、半導体レーザアレイ20の光出射部21はサブマウント10の側面から外側に突出して配置されている。サブマウント10の側面から光出射部21の下面にかけて金属ロウ材50からなるフィレット51が形成されている。
【0040】
半導体レーザアレイ20の表面には、光出射面である前端面21aと交差する前後方向に沿ってそれぞれ延びる複数の凹部41が前端面21aと平行な左右方向に互いに間隔をあけて配列された凹凸部40が形成されている。
【0041】
半導体レーザアレイ20の表面に形成された表面電極38と金属ロウ材50とが接合されている。
【0042】
本実施形態によれば、半導体レーザアレイ20の光出射部21をサブマウント10の側面から外側に突出させるとともに、光出射部21の下面にフィレット51を形成している。このことにより、光出射部21からサブマウント10や外部雰囲気に効率良く放熱できる。
【0043】
また、半導体レーザアレイ20の表面に凹凸部40を形成することにより、フィレット51から加わる引っ張り応力が半導体レーザアレイ20の光出射部21の一部に集中するのを抑制することができる。このことについて、
図6A,6Bを用いてさらに説明する。
【0044】
図6Aは、比較のための光半導体装置における応力集中の状態を、
図6Bは、本実施形態に係る光半導体装置における応力集中の状態をそれぞれ示す。
【0045】
図6Aに示す半導体レーザアレイ20は、コンタクト層36に溝部36aが形成されておらず、結果として凹凸部40が設けられていない点を除いては、
図1~4に示す半導体レーザアレイ20と同じ構造を有している。
【0046】
半導体レーザアレイ20とサブマウント10とが接合される過程において、金属ロウ材50は一度、溶融、軟化した後に冷却されて凝固する。この冷却凝固過程で、
図6Aに示すように、半導体レーザアレイ20の光出射部21のうち、フィレット51の端部が位置する部分において、引っ張り応力が集中し、半導体レーザアレイ20を構成する半導体材料にせん断応力として作用する。このせん断応力が半導体材料の破壊点を超える場合には、半導体レーザアレイ20の光出射面である前端面21aにクラックが生じて、半導体レーザアレイ20が破壊されるに到る。つまり、半導体レーザアレイ20の初期不良が増加し、また、動作寿命が低下するおそれがあった。また、せん断応力が前述の破壊点を超えない場合でも、半導体レーザアレイ20には大きな歪が発生し、例えば、レーザ光の光軸が所定の位置からずれるおそれがあった。
【0047】
一方、本実施形態の光半導体装置100によれば、
図6Bに示すように、各凹部41の側面近傍に引っ張り応力が集中する。このため、フィレット51と接する光出射部21全体で見ると、均等に引っ張り応力が加わることとなる。したがって、
図6Aに示すように、フィレット51の端部において、半導体レーザアレイ20に引っ張り応力が集中して加わるのを抑制できる。つまり、半導体レーザアレイ20に加わるせん断応力が緩和される。このことにより、半導体レーザアレイ20が破壊されるのを抑制できる。また、半導体レーザアレイ20に大きな歪が発生するのを抑制し、レーザ光の光軸ずれを抑制できる。
【0048】
AuSn合金であるフィレット51の最大凝固収縮率としてAuの凝固収縮率5.1%を代用し、半導体レーザアレイ20の歪変形量に基づいて、フィレット51が凝固収縮によって有する応力総和量を算出すると、2030GPa程度と想定された。
【0049】
本実施形態では、半導体光共振器30のコンタクト層36のほぼ全面に20箇所程度の凹部41を形成しており、各凹部41の側面は1つの半導体光共振器30あたりで40箇所程度設けられる。また、これら側面は左右方向に等間隔で配置される。
【0050】
各凹部41の側面での応力集中効果を利用して、フィレット51に覆われた光出射部21での応力分布を一つの角部当たりで50GPaより小さくなるようにする。このようにすることで、フィレット51の端部に集中する応力を例えば、コンタクト層36を構成する半導体材料の破壊点となる剛性率75.5GPaよりも小さく制御することができ、半導体レーザアレイ20の破壊が抑制される。
【0051】
また、凹部41は半導体レーザアレイ20の前端面21aから後端面22まで延び、凹部41の左右方向の幅は前端面21aから後端面22まで一定である。
【0052】
半導体レーザアレイ20のコンタクト層36に前端面21aと平行な方向である左右方向に所定の間隔をあけて複数の溝部36aを形成することで、凹凸部40が設けられる。
【0053】
本実施形態によれば、コンタクト層36に複数の溝部36aを設け、その上に厚さが一定となるように表面電極38を形成している。このため、表面電極38と金属ロウ材50との接合面積が増加し、接合部の熱抵抗を低減することができる。本実施形態に示す例では、
図6Aに示す場合に比べて、接合面積は113%に増加し、接合部での熱抵抗を12%程度低減することができる。また、熱抵抗は約2.9×10
-3℃/Wとなった。
【0054】
表面電極38と金属ロウ材50との接合部での熱抵抗が低減されるため、半導体レーザアレイ20からサブマウント10への放熱効率を向上することができる。このことにより、フィレット51から光出射部21に加わる引っ張り応力をさらに低減できる。
【0055】
また、放熱効率を向上できるため、サブマウント10の側面からの半導体レーザアレイ20の突き出し長さを短くして、光出射部21の下面に接するフィレット51の面積を小さくできる。
【0056】
フィレット51の面積が縮小されることで、半導体レーザアレイ20に発生する歪みを小さくでき、例えば、レーザ光の光軸ずれを抑制できる。また、フィレット51の端部において、半導体レーザアレイ20が受ける応力も低減され、半導体レーザアレイ20の動作寿命が低下するのを抑制できる。
【0057】
<変形例1>
図7は、本変形例に係る半導体光共振器の断面模式図を示し、
図8は、表面電極の形成方法を説明する断面模式図を示す。なお、
図7,8において、実施形態1と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。また、
図8において、半導体レーザアレイ20のうち1つの半導体光共振器30のみを図示し、電流狭窄層35とコンタクト層36以外の半導体層及び裏面電極37の図示を省略する。また、
図7では、表面電極38が設けられた側を上側と、裏面電極37が設けられた側を下側としている。
【0058】
本変形例に示す半導体レーザアレイ20は、コンタクト層36の表面に溝部36aを設けずに、表面電極38自体に凹凸部40を設けている点で実施形態1に示す半導体レーザアレイ20と異なる。よって、半導体積層体30Aの積層構造は、実施形態1に示すのと同様である。
【0059】
また、表面電極38に凹凸部40を設けるにあたって、
図8に示すように、コンタクト層36の表面に密着層38aであるチタンと拡散防止層38bである白金とをこの順に形成した後、拡散防止層38bの表面にAuからなる複数の電極ストライプ38dを形成する。
【0060】
この電極ストライプ38dは、半導体レーザアレイ20の前端面21aから後端面22まで延びており、左右方向の幅が3μmである。互いに隣り合う電極ストライプ38dの間隔は5μmであり、電極ストライプ38dの高さは、0.5μmである。
【0061】
さらに、複数の電極ストライプ38dの表面を覆うように第2拡散防止層38eである白金と導電接着層38cである金またはAuSn合金が形成されて表面電極38が完成する。第2拡散防止層38eと導電接着層38cとの厚さの和は0.5μmである。このため、表面電極38が完成した時点で、凹部41の左右方向の幅及び凸部42の左右方向の幅はともに4μmとなる。
【0062】
本変形例に示す構成においても、表面電極38に形成された各凹部41の側面近傍に応力が集中し、フィレット51と接する光出射部21全体で見ると、均等に引っ張り応力が加わることとなり、半導体レーザアレイ20に加わるせん断応力が緩和され、実施形態1に示す構成が奏するのと同様の効果を奏することができる。
【0063】
また、本変形例では、電極ストライプ38dの表面がAuSn合金よりも融点が高い白金で覆われている。白金の融点は1,768℃である。金属ロウ材50と密着導電層38cとの接合温度は500℃よりも低いため、接合時に白金は軟化、変形せず、電極ストライプ38dの形状がほとんど変化しない。このため、表面電極38と金属ロウ材50との接合面積は、各電極ストライプ38dの両側面の面積の和に相当する分だけ増加する。
【0064】
つまり、本変形例においても、実施形態1に示すのと同様に、表面電極38と金属ロウ材50との接合面積が増加するため、表面電極38と金属ロウ材50との接合部での熱抵抗が低減できる。また、半導体レーザアレイ20からサブマウント10への放熱効率を向上することができる。このことにより、フィレット51から光出射部21に加わる引っ張り応力をさらに低減できる。
【0065】
また、放熱効率を向上できるため、サブマウント10の側面からの半導体レーザアレイ20の突き出し長さを短くして、光出射部21の下面に接するフィレット51の面積を小さくできる。
【0066】
フィレット51の面積が縮小されることで、半導体レーザアレイ20に発生する歪みを小さくでき、例えば、レーザ光の光軸ずれを抑制できる。また、フィレット51の端部において、半導体レーザアレイ20が受ける応力も低減され、半導体レーザアレイ20の動作寿命が低下するのを抑制できる。
【0067】
<変形例2>
図9は、本変形例に係る半導体光共振器の断面模式図を示す。なお、
図9において、実施形態1と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。また、
図9では、表面電極38が設けられた側を上側と、裏面電極37が設けられた側を下側としている。
【0068】
本変形例の半導体光共振器30は、コンタクト層36が断面視で四角形または台形状に加工された、いわゆるリッジ構造である点で、実施形態1に示す半導体光共振器30と異なる。また、表面電極38に電気的に接続されたリッジ(以下、実リッジ36bという)以外に表面電極38と電気的に絶縁された複数のリッジ(以下、ダミーリッジ36cという)を有している。
【0069】
また、本変形例の半導体光共振器30は、第2クラッド層34とコンタクト層36との間にエッチングストップ層39を有している。エッチングストップ層39は、コンタクト層36をエッチング加工する際に、第2クラッド層34や活性層33が加工されないようにするために設けられている。エッチングストップ層39も化合物半導体材料からなる。本変形例における半導体積層体30Aは、第1クラッド層32と活性層33と第2クラッド層34とコンタクト層36とエッチングストップ層39とを有している。また、表面電極38及び裏面電極37の積層構造は、実施形態1に示すのとそれぞれ同様である。
【0070】
また、本変形例において、電流狭窄層35aは、絶縁膜、例えば、シリコン酸化膜で形成されており、ダミーリッジ36cの表面を覆っている。一方、実リッジ36bでは電流狭窄層35aで覆われていない部分が表面電極38にオーミック接触している。このようにすることで、ダミーリッジ36cと表面電極38とを確実に絶縁できる。また、半導体光共振器30毎に、表面電極38から注入された電流を1つの実リッジ36bに流せるため、発光部を1箇所に限定できる。
【0071】
実リッジ36bとダミーリッジ36cとは、半導体レーザアレイ20の前端面21aから後端面22まで延びており、その左右方向の幅は一定である。また、互いに隣り合うダミーリッジ36cの間隔及び隣り合うダミーリッジ36cと実リッジ36bとの間隔も前端面21aから後端面22まで一定である。表面に電流狭窄層35aが形成されたダミーリッジ36cと実リッジ36bを覆って、表面電極38が形成されることで、半導体レーザアレイ20に凹凸部40が設けられている。また、凹凸部40は、凸部42の左右方向の幅と凹部41の左右方向の幅とが同じになるように形成されている。
【0072】
本変形例によれば、実施形態1に示す構成が奏するのと同様の効果を奏する。つまり、フィレット51から加わる引っ張り応力が半導体レーザアレイ20の光出射部21の一部に集中するのを抑制することができる。このことにより、半導体レーザアレイ20が破壊されるのを抑制できる。また、半導体レーザアレイ20に大きな歪が発生するのを抑制し、レーザ光の光軸ずれを抑制できる。
【0073】
また、表面電極38と金属ロウ材50との接合面積が増加するため、表面電極38と金属ロウ材50との接合部での熱抵抗が低減できる。また、半導体レーザアレイ20からサブマウント10への放熱効率を向上することができる。このことにより、フィレット51から光出射部21に加わる引っ張り応力をさらに低減できる。
【0074】
また、放熱効率を向上できるため、サブマウント10の側面からの半導体レーザアレイ20の突き出し長さを短くして、光出射部21の下面に接するフィレット51の面積を小さくできる。
【0075】
フィレット51の面積が縮小されることで、半導体レーザアレイ20に発生する歪みを小さくでき、例えば、レーザ光の光軸ずれを抑制できる。また、フィレット51の端部において、半導体レーザアレイ20が受ける応力も低減され、半導体レーザアレイ20の動作寿命が低下するのを抑制できる。
【0076】
<変形例3>
図10は、本変形例に係る半導体光共振器30の断面模式図を示す。凹凸部の平面模式図を示す。なお、
図10において、実施形態1と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0077】
本変形例の半導体レーザアレイ20は、凹凸部40が前端面21aから前後方向に延びて半導体レーザアレイ20の中間部分まで形成されている点で、実施形態1に示す半導体レーザアレイ20と異なる。
【0078】
このように、凹凸部40を半導体レーザアレイ20の中間部分まで形成するようにしてもよく、本変形例においても実施形態1に示す構成が奏するのと同様の効果を奏する。つまり、フィレット51から加わる引っ張り応力が半導体レーザアレイ20の光出射部21の一部に集中するのを抑制することができる。このことにより、半導体レーザアレイ20が破壊されるのを抑制できる。また、半導体レーザアレイ20に大きな歪が発生するのを抑制し、レーザ光の光軸ずれを抑制できる。
【0079】
なお、このような効果を奏するためには、凹凸部40は、前端面21aから前後方向に光出射部21を越えて延びていることが好ましい。このようにすることで、半導体レーザアレイ20においてフィレット51に覆われた部分では、確実に応力集中を緩和できる。
【0080】
なお、凹凸部40が半導体レーザアレイ20の表面全体に設けられていないため、実施形態1に示す場合に比べて、表面電極38と金属ロウ材50との接合面積が増加する割合は小さくなる。このため、フィレット51の面積が縮小される割合も実施形態1に示す場合に比べて小さくなる。
【0081】
(実施形態2)
図11は、本実施形態に係る凹凸部の平面模式図を、
図11Bは、
図11AのXIB-XIB線での断面模式図を、
図11Cは、
図11AのXIC-XIC線での断面模式図をそれぞれ示す。なお、
図11A~11Cにおいて、実施形態1と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0082】
本実施形態の半導体レーザアレイ20は、以下の点を除けば、
図1~4に示す半導体レーザアレイ20と同様の構造を有している。
【0083】
本実施形態の半導体レーザアレイ20は、コンタクト層36に形成された凹部41において、互いに隣り合う溝部36aの幅が前端面21aから後端面22にかけて連続的に減少している。その結果、凹凸部40において、凹部41の左右方向の幅が前端面21aから後端面22にかけて連続的に減少しており、前端面21aではW1(=4μm)であるのに対し、後端面22ではW2(W2<W1)となっている。W2は、溝部36aの深さである0.5μm以上でかつ4μm未満である。
【0084】
本実施形態によれば、実施形態1に示す構成が奏するのと同様の効果を奏することができる。つまり、フィレット51から加わる引っ張り応力が半導体レーザアレイ20の光出射部21の一部に集中するのを抑制することができる。このことにより、半導体レーザアレイ20が破壊されるのを抑制できる。また、半導体レーザアレイ20に大きな歪が発生するのを抑制し、レーザ光の光軸ずれを抑制できる。
【0085】
さらに、サブマウント10の側面からの半導体レーザアレイ20の突き出し長さを短くして、光出射部21の下面に接するフィレット51の面積を小さくできる。このことについてさらに説明する。
【0086】
表面電極38と金属ロウ材50とを接合する際に、溶融した金属ロウ材50は、凹部41の内部に溜まるとともに、半導体レーザアレイ20を金属ロウ材50に向けて加圧する力により、凹部41の両端に向けて押し出される。本実施形態に示すように、凹部41の左右方向の幅が前端面21aから後端面22にかけて直線的に減少していると、後端部側で凹部41の中を移動する金属ロウ材50の速度が高くなる。これにより、各凹部41の中では前端部側から後端部側に向けて金属ロウ材50が流れるようになる。
【0087】
その結果、光出射部21の下面に回り込む金属ロウ材50の量が、実施形態1に示す光半導体装置100に比べて少なくなり、光出射面に金属ロウ材50が付着する確率が低くなる。このことにより、光半導体装置100で初期不良が発生するのを抑制でき、光半導体装置100の製造コストを低減できる。
【0088】
また、光出射部21の下面に回り込む金属ロウ材50の量が少なくなるため、フィレット51が光出射部21の下面を覆う面積も縮小される。このことにより、サブマウント10の側面からの半導体レーザアレイ20の突き出し長さを短くできる。また、フィレット51の面積が縮小されることで、半導体レーザアレイ20に発生する歪みを小さくでき、例えば、レーザ光の光軸ずれを抑制できる。また、フィレット51の端部において、半導体レーザアレイ20が受ける応力も低減され、半導体レーザアレイ20の動作寿命が低下するのを抑制できる。
【0089】
(実施形態3)
図12Aは、本実施形態に係る凹凸部の断面模式図を示す。
図12Bは、比較のための凹凸部の断面模式図を、
図12Cは、比較のための別の凹凸部の断面模式図をそれぞれ示す。なお、
図12Bに示す凹凸部40は、実施形態1に示すとの同じ構造である。また、
図12A~12Cにおいて、実施形態1と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。また、説明の便宜上、表面電極38の積層構造は図示を省略する。また、
図12A~12Cにおいて、(a)図は、コンタクト層36に溝部36aを形成した後の断面を、(b)図は、凹凸部40を形成した後の断面をそれぞれ示している。なお、
図12A~
図12Cに示す凹凸部40は、溝部36aが形成されたコンタクト層36の表面に、表面電極38が形成された構造である。
【0090】
図12Aに示す本実施形態の凹凸部40は、溝部36aの幅w1及び隣り合う溝部36aの間隔w3と、凹部41の幅W1と凸部42の幅W3との関係を除けば、
図1,3,4に示す実施形態1の凹凸部40と同様の構造及び寸法関係を有している。
【0091】
本実施形態に示す凹凸部40は、以下の点で実施形態1に示す凹凸部40と異なる。
【0092】
図12Aに示すように、本実施形態では、コンタクト層36に深さが0.5μmの溝部36aを形成するにあたって、コンタクト層36において、溝部36aの幅w1と、隣り合う溝部36aの間隔w3とを同じ値に設定している。なお、本実施形態では、w1=w3=3μmとしているが、特にこれに限定されない。その結果、複数の溝部36aを含むコンタクト層36に厚さが0.5μmの表面電極38を形成した後に、凹凸部40の凹部41の幅W1は凸部42の幅W3よりも狭くなる。つまり、W1<W3の関係が成立し、この場合の凹凸部40における凹部41のピッチ及び凸部42のピッチは6μmとなる。
【0093】
一方、
図12Bに示すように、コンタクト層36において、隣り合う溝部36aの間隔w3(=3μm)よりも溝部36aの幅w1(=5μm)を広く取ると、最終的に、凹凸部40の凹部41の幅W1は凸部42の幅W3とが同じ値、この場合は4μmとなる。よって、凹凸部40における凹部41のピッチ及び凸部42のピッチは8μmとなる。
【0094】
前述したとおり、コンタクト層36に溝部36aを形成するにあたって、マスクパターン(図示せず)を用いたエッチング処理を行う。このマスクパターンに覆われた部分、つまり、隣り合う溝部36aの間の部分(凸部)が、表面電極38の形成後に凹凸部40の凸部42となる。また、凸部42と隣り合うマスクパターンの間の部分(凹部)が、表面電極38の形成後に凹凸部40の凹部41となる。
【0095】
一方、加工プロセスの制約により、マスクパターンの幅や隣り合うマスクパターンの間隔は、それぞれ定められた下限値を有し、多くの場合は、これらの下限値はほぼ同じ値である。
【0096】
よって、
図12Aに示すように、コンタクト層36において、隣り合う溝部36aの間隔w3と溝部36aの幅w1とが同じ値となるように、コンタクト層36に溝部36aを形成することで、
図12Aと
図12Bとで同じ面積の凹凸部40が形成されるとした場合、
図12Aでは、同じ面積の凹凸部40に形成される凹部41及び凸部42の密度を、
図12Bに示すよりも高められる。本実施形態では、
図12Bに示す場合よりも、当該密度を1.3倍に高められる。なお、
図12A~
図12Cに示す構造に限らず、光半導体装置100において、凹凸部40は、その表面に表面電極38が形成されている。言い替えると、コンタクト層36の表面に、表面電極38が形成された構造である。凹凸部40における凹部41の幅W1が凹凸部40における凸部42の幅W3よりも狭いことが好ましい。これにより、半導体レーザアレイ20のコンタクト層36の表面に、表面電極38が形成された凹凸部40が金属ロウ材50を介してサブマウント10に接続される。具体的には、半導体レーザアレイ20の光出射部21の下面に形成された凹凸部40とサブマウント10の側面にかけて金属ロウ材50によるフィレット51が形成されて接合される。
【0097】
このことにより、さらに、フィレット51から加わる引っ張り応力が凹凸部40の各凹部41の側面に分散して、半導体レーザアレイ20の光出射部21への応力集中を実施形態1に示す構成よりも抑制することができる。
【0098】
なお、
図12Cに示すように、コンタクト層36において、溝部36aの幅w1を
図12Bに示すよりも広くして6μmとすると、凹凸部40における凹部41の幅W1は5μmとなり、凸部42の幅W3は4μmとなる。この場合、
図12Bと
図12Cとで同じ面積の凹凸部40が形成されるとした場合、
図12Cでは、同じ面積の凹凸部40に形成される凹部41及び凸部42の密度は、
図12Bに示す場合の0.9倍となる。したがって、
図12Cでは、半導体レーザアレイ20の光出射部21への応力集中を抑制する効果が
図12Aや
図12Bに示す場合よりも弱まることは言うまでもない。
【0099】
(その他の実施形態)
各実施形態や変形例に示した各構成要素を組み合わせて新たな実施形態とすることもできる。例えば、変形例1に示す電極ストライプ38dの間隔を
図11Aに示すように変更してもよい。この場合も、実施形態2に示す構成が奏するのと同様の効果を奏することができる。
【0100】
また、実施形態3に示す凹部41の幅W1と凸部42の幅W3との大小関係(W1<W3)を変形例1~3に示す構成に適用してもよい。このようにすることで、実施形態3に示すのと同様に、各変形例に示す構成において、半導体レーザアレイ20の光出射部21への応力集中をさらに抑制することができる。
【0101】
また、実施形態1,2において、光半導体素子が半導体レーザアレイ20である例を示したが、単一の光共振器を有する半導体レーザ素子であってもよい。
【0102】
サブマウント10は所定の熱伝導性を有していればよく、導電基板であってもよいし、絶縁基板であってもよい。
【0103】
また、裏面電極37の形状は、
図3,7,9に示したように、平坦でなくてもよく、例えば、導電層37cがパターニングされていてもよい。また、拡散防止層37bの表面にAuバンプを複数形成して導電層37cとしてもよい。
【0104】
また、半導体レーザアレイ20に凹凸部40を設けない状態で光出射部21にフィレット51から加わる応力の分布がわかっていれば、その分布に基づいて応力集中を打ち消すように左右方向で凹凸部40のピッチを変化させるようにしてもよい。応力分布は、実際に光半導体装置100を形成した後に実験的に確認することができる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明の光半導体装置は、フィレットから光半導体素子の光出射部に加わる応力の集中を緩和でき、加工用途等で使用される高出力レーザ光源に適用する上で有用である。
【符号の説明】
【0106】
10 サブマウント
20 半導体レーザアレイ(光半導体素子)
21 光出射部
21a 前端面(光出射面)
22 後端面
30 半導体光共振器
30A 半導体積層体
31 基板
32 第1クラッド層
33 活性層
34 第2クラッド層
35,35a 電流狭窄層
36 コンタクト層
36a 溝部
36b 実リッジ
36c ダミーリッジ
37 裏面電極
38 表面電極
38d 電極ストライプ
40 凹凸部
41 凹部
42 凸部
50 金属ロウ材
51 フィレット
100 光半導体装置