(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180677
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】血糖値測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/1455 20060101AFI20221129BHJP
【FI】
A61B5/1455
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020199720
(22)【出願日】2020-12-01
(31)【優先権主張番号】 JP2020/020545
(32)【優先日】2020-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】横山 貴士
(72)【発明者】
【氏名】今枝 美能留
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038KK10
4C038KL05
4C038KL07
4C038KX01
4C038KY07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】非侵襲で血糖値の測定を行う血糖値測定装置のサイズを小さくし、当該血糖値測定装置のコストを低くし、当該血糖値測定装置に備えられる光源の出力を大きくする。
【解決手段】血糖値測定装置1は、赤外線放射器11,12及び検出器41を備える。赤外線放射器は、放射面を有する。赤外線放射器は、メタマテリアルを備える。赤外線放射器は、赤外線を放射面から熱放射する。赤外線のピーク波長は、メタマテリアルの構造に応じた波長である。検出器は、生体中のグルコースによる赤外線の吸収量を反映する量を検出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射面を有し、メタマテリアルを備え、前記メタマテリアルの構造に応じたピーク波長を有する赤外線を前記放射面から熱放射する赤外線放射器と、
生体中のグルコースによる前記赤外線の吸収量を反映する量を検出する検出器と、
を備える血糖値測定装置。
【請求項2】
前記量は、前記生体に前記赤外線が照射されている間に前記生体から到来する到来赤外線の強度である
請求項1の血糖値測定装置。
【請求項3】
前記量は、前記生体に前記赤外線が照射されている間に前記生体から到来する音響波の強度である
請求項1の血糖値測定装置。
【請求項4】
前記赤外線を集光する光学系
を備える請求項1から3までのいずれかの血糖値測定装置。
【請求項5】
前記光学系は、
焦点と、前記赤外線を反射する反射面と、を有する放物面鏡と、
反射された赤外線を集光するレンズと、
を備え、
前記赤外線放射器は、前記焦点に配置される
請求項4の血糖値測定装置。
【請求項6】
前記放物面鏡は、回転対称軸を有し、
前記放射面は、ふたつ以上の放射面であり、
前記赤外線は、ふたつ以上の赤外線であり、
前記ふたつ以上の放射面は、前記回転対称軸が伸びる方向と垂直をなす方向を向き、互いに異なる方向を向き、
前記赤外線放射器は、前記ふたつ以上の赤外線を前記ふたつ以上の放射面からそれぞれ熱放射する
請求項5の血糖値測定装置。
【請求項7】
前記メタマテリアルは、ふたつ以上のメタマテリアルであり、
前記ふたつ以上のメタマテリアルは、前記ふたつ以上の放射面に沿ってそれぞれ配置され、同じ構造を有し、
前記ふたつ以上の赤外線のピーク波長は、前記ふたつ以上のメタマテリアルの構造に応じた波長であり、同じ波長である
請求項6の血糖値測定装置。
【請求項8】
前記メタマテリアルは、ふたつ以上のメタマテリアルであり、
前記ふたつ以上のメタマテリアルは、前記ふたつ以上の放射面に沿ってそれぞれ配置され、互いに異なる構造を有し、
前記ふたつ以上の赤外線のピーク波長は、それぞれ前記ふたつ以上のメタマテリアルの構造に応じた波長であり、互いに異なる波長である
請求項6の血糖値測定装置。
【請求項9】
前記光学系は、
内面であり前記赤外線を反射する反射面と、前記赤外線及び反射された赤外線を出射させる出射口と、前記反射面に囲まれ前記出射口に至り前記出射口に近づくにつれて小さくなる径を有する管内空間と、を有する導波管
を備え、
前記赤外線放射器は、前記管内空間に配置される
請求項4の血糖値測定装置。
【請求項10】
前記放射面は、前記出射口に向かう方向を向く
請求項9の血糖値測定装置。
【請求項11】
前記放射面は、ふたつ以上の放射面であり、
前記メタマテリアルは、ふたつ以上のメタマテリアルであり、
前記ふたつ以上のメタマテリアルは、前記ふたつ以上の放射面に沿ってそれぞれ配置され、互いに異なる構造を有し、
前記赤外線は、ふたつ以上の赤外線であり、
前記ふたつ以上の赤外線のピーク波長は、それぞれ前記ふたつ以上のメタマテリアルの構造に応じた波長であり、互いに異なる波長であり、
前記赤外線放射器は、前記ふたつ以上の赤外線を前記ふたつ以上の放射面からそれぞれ熱放射する
請求項10の血糖値測定装置。
【請求項12】
前記赤外線放射器を含む複数の赤外線放射器を備え、
前記複数の赤外線放射器は、
複数の放射面をそれぞれ有し、
前記複数の放射面に沿って配置され互いに異なる構造を有する複数のメタマテリアルをそれぞれ備え、
前記複数のメタマテリアルに応じた波長であり互いに異なるピーク波長を有する複数の赤外線を前記複数の放射面からそれぞれ熱放射する
請求項1から11までのいずれかの血糖値測定装置。
【請求項13】
前記複数の赤外線のピーク波長は、グルコースの吸光度が最小となる波長及びグルコースの吸光度が最大となる波長を含む
請求項12の血糖値測定装置。
【請求項14】
前記赤外線放射器は、
前記放射面を有し、前記メタマテリアルを備える熱放射板と、
前記熱放射板を加熱するヒーターと、
を備える
請求項1から13までのいずれかの血糖値測定装置。
【請求項15】
前記放射面は、ふたつの放射面であり、
前記メタマテリアルは、ふたつのメタマテリアルであり、
前記赤外線放射器は、
前記ふたつの放射面をそれぞれ有し、前記ふたつのメタマテリアルをそれぞれ備えるふたつの熱放射板と、
前記ふたつの熱放射板に挟まれるヒーターと、
を備える
請求項1から14までのいずれかの血糖値測定装置。
【請求項16】
前記赤外線の光路を開閉するシャッター
を備える請求項1から15までのいずれかの血糖値測定装置。
【請求項17】
前記量から血糖値を算出する算出器
を備える請求項1から16までのいずれかの血糖値測定装置。
【請求項18】
前記赤外線を屈折させて、照射方向に平行な赤外線にするレンズアレイ
を備える請求項1から17までのいずれかの血糖値測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血糖値測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病の治療が行われる場合は、インシュリン注射が行われる。インシュリン注射が行われる場合は、血糖値の測定が行われる。血糖値の測定は、インシュリン注射のタイミング及び治療の効果を把握するために行われる。
【0003】
血糖値の測定が行われる際には、針の先端が血管内に達するまで針が人体に刺されて血液が採取される。また、採取された血液が検体チップに接触させられる。針、検体チップ等の消耗品は、血糖値の測定が行われるたびに廃棄される。しかし、針の先端が血管内に達するまで針を人体に刺す行為は、侵襲的である。このため、当該行為は、痛み及び感染症に罹患する危険を伴う。また、針、検体チップ等の消耗品を血糖値の測定が行われるたびに廃棄することは、針、検体チップ等の消耗品に大きな費用を費やさなければならないという問題を引き起こす。針、検体チップ等の消耗品に1年間で費やされるコストは、日本国においては、20万円程度に達する。これらの問題は、糖尿病の予防又は血糖値の改善のために血糖値の測定を行うことの障害ともなる。
【0004】
血糖値の測定を低侵襲で行うことも検討されている。血糖値の測定が低侵襲で行われる場合は、針の先端が皮膚内に達するまで針が人体に刺されて間質液が採取される。針の先端は、血管内に達しなくてもよい。また、採取された間質液がパッチに取り入れられる。また、取り入れられた間質液中のグルコース濃度が測定される。針、パッチ等の消耗品は、約2週間で交換される。しかし、針の先端が皮膚内に達するまで針を人体に刺す行為も、感染症に罹患する危険を伴う。また、針、パッチ等の消耗品を約2週間で交換することは、針、パッチ等の消耗品費用を費やさなければならないという問題を引き起こす。これらの問題は、糖尿病の予防又は血糖値の改善のために血糖値の測定を行うことの障害ともなる。
【0005】
このため、血糖値の測定を非侵襲で行うことも検討されている。血糖値の測定が非侵襲で行われる場合は、赤外線が人体に照射される。また、赤外線が人体に照射されている間に人体から到来する赤外線の強度が検出される。また、間質液中のグルコースによる赤外線の吸収量から間質液中のグルコース濃度が算出される。血糖値の測定が非侵襲で行われた場合は、痛み及び感染症に罹患する危険を解消することができる。また、消耗品に費やされる費用をなくすことができる。このため、血糖値の測定を非侵襲で行うことができるようになった場合は、糖尿病の予防又は血糖値の改善のために血糖値の測定を行うこともできるようになる。
【0006】
特許文献1は、血糖計を開示する。血糖計においては、中赤外光のレーザー光が、被験者の生体上皮に対して照射される。また、レーザー光の拡散反射光が、光検出器で検出される。また、グルコースによる吸収から間質液中のグルコース濃度が測定される。レーザー光を発振する光源は、QスイッチNd:YAGレーザ等及び光パラメトリック発振器(OPO)を備える(段落0021-0023)。
【0007】
特許文献2は、測定装置を開示する。測定装置においては、フーリエ変換赤外分光(FTIR)装置から出力される赤外光が、サンプルの赤外光吸収スペクトルに相当する減衰を受ける。また、減衰を受けた光が、検出器で検出される。また、グルコースの吸光スペクトルを用いて血糖値が測定される(段落0022-0023)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-199080号公報
【特許文献2】特開2019-37752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
非侵襲で血糖値の測定を行う血糖値測定装置は、サイズが大きい、コストが高い、光源の出力を大きくすることが困難であり測定の精度を高くすることが困難である等の問題を有する。
【0010】
例えば、特許文献1に開示された血糖計においては、QスイッチNd:YAGレーザ等のエネルギー効率が低いため、QスイッチNd:YAGレーザ等に電力を供給する電源のサイズが大きくなり、QスイッチNd:YAGレーザ等を冷却するための冷却系が必要になり冷却機構が必要になる。このため、当該血糖計は、サイズが大きい、コストが高い、光源の出力を大きくすることが困難である等の問題を有する。
【0011】
また、特許文献2に開示された測定装置においては、FTIR装置のサイズが大きく、FTIR装置のエネルギー効率が低く、FTIR装置のコストが高い。このため、当該測定装置は、サイズが大きい、コストが高い、光源の出力を大きくすることが困難である等の問題を有する。
【0012】
本発明は、これらの問題に鑑みてなされた。本発明は、非侵襲で血糖値の測定を行う血糖値測定装置のサイズを小さくし、当該血糖値測定装置のコストを低くし、当該血糖値測定装置に備えられる光源の出力を大きくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、血糖値測定装置に関する。
【0014】
血糖値測定装置は、赤外線放射器及び検出器を備える。
【0015】
赤外線放射器は、放射面を有する。赤外線放射器は、メタマテリアルを備える。赤外線放射器は、赤外線を放射面から熱放射する。赤外線のピーク波長は、メタマテリアルの構造に応じた波長である。
【0016】
検出器は、生体中のグルコースによる赤外線の吸収量を反映する量を検出する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、冷却系を必要とせず高いエネルギー効率を有する赤外線放射器により熱放射された赤外線を用いてグルコースによる赤外線の吸収量が特定される。これにより、非侵襲で血糖値の測定を行う血糖測定装置のサイズを小さくすることができる。また、当該血糖値測定装置のコストを低くすることができる。また、当該血糖値測定装置に備えられる光源の出力を大きくすることができる。
【0018】
この発明の目的、特徴、局面及び利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】第1実施形態の血糖値測定装置を模式的に図示する断面図である。
【
図2】第1実施形態の血糖値測定装置に備えられる赤外線放射器を模式的に図示する断面図である。
【
図3】グルコースの吸光度スペクトル、並びに第1実施形態、第2実施形態及び第5実施形態の血糖値測定装置に備えられる赤外線放射器により熱放射される赤外線の放射強度スペクトルの例を示すグラフである。
【
図4】第1実施形態から第5実施形態までの血糖値測定装置に備えらえる熱放射板を模式的に図示する斜視図である。
【
図5】第1実施形態の血糖値測定装置に備えらえる赤外線放射器により熱放射される赤外線の放射エネルギースペクトル、及び通常の赤外線ヒーターにより熱放射される赤外線の放射エネルギースペクトルの例を示すグラフである。
【
図6】第2実施形態の血糖値測定装置を模式的に図示する断面図である。
【
図7】第2実施形態の血糖値測定装置に備えられる赤外線放射器を模式的に図示する断面図である。
【
図8】第3実施形態の血糖値測定装置を模式的に図示する断面図である。
【
図9】第3実施形態の血糖値測定装置に備えられる赤外線放射器を模式的に図示する断面図である。
【
図10】グルコースの吸光度スペクトル、並びに第3実施形態及び第4実施形態の血糖値測定装置に備えられる赤外線放射器により熱放射される赤外線の放射強度スペクトルの例を示すグラフである。
【
図11】第4実施形態の血糖値測定装置を模式的に図示する断面図である。
【
図12】第4実施形態の血糖値測定装置に備えられる赤外線放射器を模式的に図示する断面図である。
【
図13】第4実施形態の血糖値測定装置に備えられる赤外線放射器を模式的に図示する平面図である。
【
図14】第5実施形態の血糖値測定装置を模式的に図示する断面図である。
【
図15】第5実施形態の血糖値測定装置に備えられる赤外線放射器を模式的に図示する断面図である。
【
図16】第5実施形態の血糖値測定装置に備えられる赤外線放射器を模式的に図示する平面図である。
【
図17】第6実施形態の血糖値測定装置を模式的に図示する断面図である。
【
図18】赤外線放射器11から生体LBに向かう赤外線の光路の途中に赤外線透過フィルタFTを配置する様子を示す模式図である。
【
図19】
図18に示した場合における、フィルタFTの配置による赤外線の放射スペクトルの変化を示す図である。
【
図20】一般的な赤外線ヒータHTから出射される赤外線の光路の途中に
図18と同じフィルタFTを配置する様子を示す模式図である。
【
図21】
図20に示した場合における、フィルタFTの配置による放射スペクトルの変化を示す図である。
【
図22】第1実施形態から第6実施形態までの血糖値測定装置に備えられる熱放射板の別例を模式的に図示する斜視図である。
【
図23】第1実施形態から第6実施形態までの血糖値測定装置に備えられる熱放射板の別例を模式的に図示する斜視図である。
【
図24】第1実施形態から第6実施形態までの血糖値測定装置に備えられる熱放射板の別例を模式的に図示する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1 第1実施形態
1.1 血糖値測定装置の構成
図1は、第1実施形態の血糖値測定装置を模式的に図示する断面図である。
図2は、第1実施形態の血糖値測定装置に備えられる赤外線放射器を模式的に図示する断面図である。
図3は、グルコースの吸光度スペクトル及び第1実施形態の血糖値測定装置に備えられる赤外線放射器により熱放射される赤外線の放射強度スペクトルの例を示すグラフである。
図3においては、縦軸に吸光度及び放射強度がとられている。また、横軸に波数がとられている。
【0021】
図1に図示される第1実施形態の血糖値測定装置1は、生体LBに照射される赤外線IR1及びIR2の各々がひとつのピーク波長しか有しない波長独立型の血糖値測定装置である。
【0022】
図1に図示されるように、血糖値測定装置1は、赤外線放射器11、赤外線放射器12、光学系21、光学系22、シャッター31、シャッター32、検出器41、制御器51及び算出器61を備える。
【0023】
赤外線放射器11及び12は、赤外線IR1及びIR2をそれぞれ熱放射する。赤外線IR1及びIR2は、ピーク波長λ1及びλ2をそれぞれ有する。ピーク波長λ1及びλ2は、互いに異なる。このため、赤外線IR1及びIR2は、互いに異なるピーク波長を有する。
【0024】
光学系21及び22は、熱放射された赤外線IR1及びIR2をそれぞれ集光する。
【0025】
シャッター31及び32は、熱放射された赤外線IR1及びIR2の光路をそれぞれ開閉する。
【0026】
検出器41は、生体LB中のグルコースによる赤外線IR1及びIR2の吸収量を反映する量Dを検出する。第1実施形態においては、検出器41は、赤外線検出器である。また、検出される量Dは、赤外線IR1及びIR2が生体LBに照射されている間に生体LBから到来する到来赤外線AIRの強度である。赤外線検出器は、フォトダイオードである。赤外線検出器が、フォトダイオード以外の赤外線検出器であってもよい。また、第1実施形態においては、生体LBは、人体である。生体LBが、人体以外の生体であってもよい。
【0027】
第1実施形態においては、赤外線IR1及びIR2は、例えば指又は耳に照射される。また、検出器41は、例えば指又は耳から到来する到来赤外線AIRの強度を検出する。
【0028】
算出器61は、検出された量Dから血糖値を算出する。
【0029】
赤外線IR1及びIR2は、皮膚内に浸透する。このため、検出された量Dからは、皮膚内の間質液中のグルコースの濃度を得ることができる。間質液中のグルコースの濃度は血糖値と相関を有する。このため、検出された量Dからは、血糖値を算出することができる。
【0030】
制御器51は、赤外線放射器11及び12を制御して赤外線放射器11及び12に赤外線IR1及びIR2をそれぞれ熱放射させる。また、制御器51は、シャッター31及び32を制御してシャッター31及び32に赤外線IR1及びIR2の光路をそれぞれ開閉させる。
【0031】
第1実施形態においては、赤外線放射器11及び12は、ふたつの赤外線放射器である。また、赤外線IR1及びIR2は、ふたつの赤外線である。また、光学系21及び22は、ふたつの光学系である。また、シャッター31及び32は、ふたつのシャッターである。しかし、赤外線放射器の数、赤外線の数、光学系の数及びシャッターの数が増減されてもよい。
【0032】
1.2 赤外線のピーク波長
図3に示されるように、赤外線IR1のピーク波長λ1は、グルコースの吸光度が最小となる波長である。赤外線IR1は、校正に用いられる。ピーク波長λ1が、グルコースの吸光度が最小となる波長以外の波長であってもよい。また、赤外線IR2のピーク波長λ2は、グルコースの吸光度が最大となる波長である。赤外線IR2は、測定に用いられる。ピーク波長λ2が、グルコースの吸光度が最大となる波長以外の波長であってもよい。
【0033】
1.3 血糖値測定装置の動作
血糖値測定装置1により血糖値が算出される場合は、制御器51が、シャッター31及び32に赤外線IR1及びIR2の光路を閉じさせる。
【0034】
また、制御器51は、赤外線IR1及びIR2の光路が閉じられた後に、赤外線放射器11及び12に赤外線IR1及びIR2を熱放射することを開始させる。
【0035】
また、制御器51は、赤外線IR1及びIR2が安定した後に、シャッター31に赤外線IR1の光路を開かせる。これにより、赤外線IR1が生体LBに照射される。このとき、赤外線IR1は、光学系21により生体LBの表面に集光される。
【0036】
また、制御器51は、赤外線IR1の光路が開かれてから設定された時間が経過した時に、シャッター31に赤外線IR1の光路を閉じさせる。これにより、赤外線IR1が生体LBに照射されなくなる。
【0037】
検出器41は、赤外線IR1が生体LBに照射されている間に、生体LBから到来する到来赤外線AIRの強度Dを検出する。
【0038】
制御器51は、検出された強度Dに基づいて血糖値測定装置1を校正する。
【0039】
また、制御器51は、血糖値測定装置1が校正された後に、シャッター32に赤外線IR2の光路を開かせる。これにより、赤外線IR2が生体LBに照射される。このとき、赤外線IR2は、光学系22により生体LBの表面に集光される。
【0040】
また、制御器51は、赤外線IR2の光路が開かれてから設定された時間が経過した時に、シャッター32に赤外線IR2の光路を閉じさせる。これにより、赤外線IR2が生体LBに照射されなくなる。
【0041】
また、制御器51は、赤外線IR2の光路が閉じられた後に、赤外線放射器11及び12に赤外線IR1及びIR2を熱放射することを終了させる。
【0042】
検出器41は、赤外線IR2が生体LBに照射されている間に、生体LBから到来する到来赤外線AIRの強度Dを検出する。
【0043】
算出器61は、検出された強度Dから血糖値を算出する。
【0044】
1.4 複数の赤外線放射器の構成の違い
図1に図示されるように、赤外線放射器11及び12は、放射面11R及び12Rをそれぞれ有する。赤外線放射器11及び12は、赤外線IR1及びIR2を放射面11R及び12Rからそれぞれ熱放射する。
【0045】
また、
図1に図示されるように、赤外線放射器11及び12は、メタマテリアル111及び121をそれぞれ備える。メタマテリアル111及び121は、放射面11R及び12Rに沿ってそれぞれ配置される。
【0046】
メタマテリアル111及び121は、互いに異なる構造を有する。ピーク波長λ1及びλ2は、それぞれメタマテリアル111及び121の構造に応じた波長である。このため、ピーク波長λ1及びλ2は、互いに異なる。
【0047】
第1実施形態においては、メタマテリアル111及び121は、それぞれ放射面11R及び12Rと平行をなす方向に周期的に配列される複数のパターン片を備える周期構造である。また、ピーク波長λ1及びλ2は、それぞれ周期構造111及び121のパターンに応じた波長である。
【0048】
第1実施形態においては、放射面11R及び12Rは、二群の放射面である。また、メタマテリアル111及び121は、二群のメタマテリアルである。しかし、放射面の群数及びメタマテリアルの群数が増減されてもよい。
【0049】
1.5 複数の赤外線放射器の各々の構成
図2に図示されるように、赤外線放射器11及び12の各々は、熱放射板71A、熱放射板71B及びヒーター81を備える。
【0050】
ヒーター81は、熱放射板71A及び71Bを加熱して熱放射板71A及び71Bに熱を供給する。
【0051】
熱放射板71A及び71Bは、供給された熱を
図1に図示される赤外線IRA及びIRBにそれぞれ変換する。また、熱放射板71A及び71Bは、赤外線IRA及びIRBをそれぞれ熱放射する。
【0052】
図1及び
図2に図示されるように、熱放射板71A及び71Bは、放射面71AR及び71BRをそれぞれ有する。このため、赤外線放射器11及び12の各々は、放射面71AR及び71BRを有する。また、赤外線放射器11及び12の各々は、赤外線IRA及びIRBを放射面71AR及び71BRからそれぞれ熱放射する。赤外線放射器11の放射面71AR及び71BRは、放射面11Rを構成する。赤外線放射器12の放射面71AR及び71BRは、放射面12Rを構成する。赤外線放射器11により放射される赤外線IRA及びIRBは、赤外線IR1を構成する。赤外線放射器12により放射される赤外線IRA及びIRBは、赤外線IR2を構成する。
【0053】
また、
図1及び
図2に図示されるように、熱放射板71A及び71Bは、メタマテリアル71A1及び71B1をそれぞれ備える。このため、赤外線放射器11及び12の各々は、メタマテリアル71A1及び71B1を備える。メタマテリアル71A1及び71B1は、放射面71AR及び71BRに沿ってそれぞれ配置される。赤外線放射器11に備えられるメタマテリアル71A1及び71B1は、メタマテリアル111を構成する。赤外線放射器12に備えられるメタマテリアル71A1及び71B1は、メタマテリアル121を構成する。
【0054】
メタマテリアル71A1及び71B1は、同じ構造を有する。赤外線IRA及びIRBのピーク波長は、それぞれメタマテリアル71A1及び71B1の構造に応じた波長である。このため、赤外線IRA及びIRBのピーク波長は、同じ波長である。
【0055】
第1実施形態においては、メタマテリアル71A1及び71B1は、それぞれ放射面71AR及び71BRと平行をなす方向に周期的に配列される複数のパターン片を備える周期構造である。また、赤外線IRA及びIRBのピーク波長は、それぞれ周期構造71A1及び71B1のパターンに応じた波長である。
【0056】
第1実施形態においては、赤外線放射器11及び12の各々に備えられる熱放射板71A及び71Bは、ふたつの熱放射板である。また、赤外線放射器11及び12の各々により熱放射される赤外線IRA及びIRBは、ふたつの赤外線である。また、赤外線放射器11及び12の各々の放射面71AR及び71BRは、ふたつの放射面である。また、赤外線放射器11及び12の各々に備えられるメタマテリアル71A1及び71B1は、ふたつのメタマテリアルである。また、ヒーター81は、ふたつの熱放射板71A及び71Bに挟まれる。しかし、赤外線放射器11及び12の各々に備えられる熱放射板の数、赤外線放射器11及び12の各々により熱放射される赤外線の数、赤外線放射器11及び12の各々の放射面の数、並びに赤外線放射器11及び12の各々に備えられるメタマテリアルの数が増減されてもよい。
【0057】
1.6 光学系
図1に図示されるように、光学系21及び22は、放物面鏡101及び102をそれぞれ備える。また、光学系21及び22は、レンズ141及び142をそれぞれ備える。
【0058】
図1に図示されるように、放物面鏡101及び102は、焦点101F及び102Fをそれぞれ有する。また、放物面鏡101及び102は、反射面101R及び102Rをそれぞれ有する。また、放物面鏡101及び102は、回転対称軸101S及び102Sをそれぞれ有する。
【0059】
反射面101R及び102Rは、それぞれ放物線を回転対称軸101S及び102Sの周りに回転させることにより形成される回転放物面である。
【0060】
赤外線放射器11及び12は、焦点101F及び102Fにそれぞれ配置される。
【0061】
反射面101R及び102Rは、熱放射された赤外線IR1及びIR2をそれぞれ反射する。赤外線放射器11及び12は焦点101F及び102Fにそれぞれ配置されているため、反射された赤外線IR1及びIR2は、平行光束となる。
【0062】
レンズ141及び142は、反射された赤外線IR1及びIR2をそれぞれ集光する。
【0063】
これらにより、光学系21及び22は、熱放射された赤外線IR1及びIR2をそれぞれ集光することができる。
【0064】
赤外線放射器11の放射面71AR及び71BRは、回転対称軸101Sが伸びる方向と垂直をなす方向を向き、互いに異なる方向を向く。第1実施形態においては、赤外線放射器11の放射面71AR及び71BRは、互いに180°異なる方向を向く。同様に、赤外線放射器12の放射面71AR及び71BRは、回転対称軸102Sが伸びる方向と垂直をなす方向を向き、互いに異なる方向を向く。第1実施形態においては、赤外線放射器12の放射面71AR及び71BRは、互いに180°異なる方向を向く。
【0065】
1.7 熱放射板
図4は、第1実施形態の血糖値測定装置に備えらえる熱放射板を模式的に図示する斜視図である。
【0066】
図4に図示されるように、熱放射板71A及び71Bの各々は、基板151、導電体層152、誘電体層153及び導電体パターン154を備える。
【0067】
導電体層152、誘電体層153及び導電体パターン154は、基板151の一方の主面の上に配置される。誘電体層153は、導電体層152の上に配置される。導電体パターン154は、誘電体層153の上に配置される。
【0068】
導電体パターン154は、複数のパターン片161を備える。複数のパターン片161は、マトリクス状に配列される。複数のパターン片161が、非マトリクス状に配置されてもよい。
【0069】
基板151は、SiO2により構成される。基板151が、SiO2以外の材料により構成されてもよい。導電体層152は、Auにより構成される。導電体層152が、Au以外の材料により構成されてもよい。誘電体層153は、Al2O3により構成される。誘電体層153が、Al2O3以外の材料により構成されてもよい。導電体パターン154は、Auにより構成される。導電体パターン154が、Au以外の材料により構成されてもよい。
【0070】
熱放射板71A及び71Bに備えられる導電体層152、誘電体層153及び導電体パターン154は、メタマテリアル71A1及び71B1をそれぞれ構成する。熱放射板71A及び71Bに備えられる導電体層152、誘電体層153及び導電体パターン154は、それぞれ赤外線IRA及びIRBの波長と同程度の周期を有する表面微細構造である。
【0071】
ヒーター81は、基板151の他方の主面の側から熱放射板71A及び71Bを加熱する。これにより、導電体パターン154が配置される放射面71AR及び71BRから赤外線IRA及びIRBがそれぞれ熱放射される。熱放射される赤外線IRA及びIRBには、導電体パターン154と共振する特定の波長成分が多く含まれる。このため、熱放射される赤外線IRA及びIRBは、導電体パターン154に応じたピーク波長を有する。したがって、熱放射板71A及び71Bは、特定の波長成分を選択的に熱放射する選択放射板として機能する。当該特定の波長成分は、導電体パターン154を変更することにより変更することができる。
【0072】
図5は、第1実施形態の血糖値測定装置に備えらえる赤外線放射器により熱放射される赤外線の放射エネルギースペクトル、及び通常の赤外線ヒーターにより熱放射される赤外線の放射エネルギースペクトルの例を示すグラフである。
図5においては、縦軸に放射エネルギーがとられている。また、横軸に波長がとられている。
【0073】
図5に示されるように、赤外線放射器11及び12により放射される赤外線の放射エネルギースペクトルのピークの幅は、通常の赤外線ヒーターにより熱放射される赤外線の放射エネルギースペクトルのピークの幅より著しく狭くなっている。
【0074】
1.8 効果
血糖値測定装置1は、非侵襲で血糖値を測定することができる。
【0075】
また、熱放射板71A及び71Bは、ヒーター81により供給された熱を赤外線IRA及びIRBに変換する。このため、赤外線放射器11及び12は、冷却系を必要としない。なぜならば、赤外線放射器11及び12の温度が高すぎる場合は、単にヒーター81により供給される熱を少なくすればよいからである。
【0076】
また、赤外線放射器11及び12は、高いエネルギー効率を有する。
【0077】
このため、血糖値測定装置1によれば、冷却系を必要とせず高いエネルギー効率を有する赤外線放射器11及び12により熱放射された赤外線IR1及びIR2を用いてグルコースによる赤外線IR1及びIR2の吸収量が特定される。これにより、非侵襲で血糖値の測定を行う血糖値測定装置1のサイズを小さくすることができる。また、当該血糖値測定装置1のコストを低くすることができる。また、当該血糖値測定装置1に備えられる光源の出力を大きくすることができる。
【0078】
赤外線放射器11及び12は、放射面11R及び12Rの面積を広くすることにより熱放射する赤外線IR1及びIR2の放射エネルギーを容易に大きくすることができるという利点を有する。
【0079】
また、赤外線放射器11及び12は、赤外線IR1及びIR2の熱放射の開始及び終了を瞬時に行うことができないという特性を有する。しかし、血糖値測定装置1においては、シャッター31及び32により赤外線IR1及びIR2の光路が開閉されるため、赤外線IR1及びIR2の熱放射の開始及び終了を瞬時に行うことができないにもかかわらず、赤外線IR1及びIR2の生体LBへの照射の開始及び終了を瞬時に行うことができる。この特徴を利用して、生体LBに照射される赤外線IR1及びIR2をパルス状の赤外線とし、パルス状の赤外線に同期して到来赤外線AIRの強度が検出されてもよい。
【0080】
2 第2実施形態
図6は、第2実施形態の血糖値測定装置を模式的に図示する断面図である。
図7は、第2実施形態の血糖値測定装置に備えられる赤外線放射器を模式的に図示する断面図である。
図3は、グルコースの吸光度スペクトル及び第2実施形態の血糖値測定装置に備えられる赤外線放射器により熱放射される赤外線の放射強度スペクトルの例を示すグラフでもある。
図4は、第2実施形態の血糖値測定装置に備えらえる熱放射板を模式的に図示する斜視図でもある。
【0081】
以下では、主に、
図6に図示される第2実施形態の血糖値測定装置2が
図1に図示される第1実施形態の血糖値測定装置1と相違する点が説明される。説明されない点については、血糖値測定装置1において採用される構成と同様の構成が血糖値測定装置2においても採用される。
【0082】
図6に図示される第2実施形態の血糖値測定装置2は、生体LBに照射される赤外線IR1及びIR2の各々がひとつのピーク波長しか有しない波長独立型の血糖値測定装置である。
【0083】
図7に図示されるように、赤外線放射器11及び12の各々は、熱放射板70及びヒーター81を備える。
【0084】
ヒーター81は、熱放射板70を加熱して熱放射板70に熱を供給する。
【0085】
熱放射板70は、供給された熱を
図6に図示される赤外線IRに変換する。また、熱放射板70は、赤外線IRを熱放射する。
【0086】
図6及び
図7に図示されるように、熱放射板70は、放射面70Rを有する。このため、赤外線放射器11及び12の各々は、放射面70Rを有する。また、赤外線放射器11及び12の各々は、赤外線IRを放射面70Rから熱放射する。赤外線放射器11の放射面70Rは、放射面11Rを構成する。赤外線放射器12の放射面70Rは、放射面12Rを構成する。赤外線放射器11により放射される赤外線IRは、赤外線IR1を構成する。赤外線放射器12により放射される赤外線IRは、赤外線IR2を構成する。
【0087】
また、
図6及び
図7に図示されるように、熱放射板70は、メタマテリアル701を備える。このため、赤外線放射器11及び12の各々は、メタマテリアル701を備える。メタマテリアル701は、放射面70Rに沿って配置される。赤外線放射器11に備えられるメタマテリアル701は、メタマテリアル111を構成する。赤外線放射器12に備えられるメタマテリアル701は、メタマテリアル121を構成する。
【0088】
第2実施形態においては、メタマテリアル701は、放射面70と平行をなす方向に周期的に配列される複数のパターン片を備える周期構造である。また、赤外線IRのピーク波長は、周期構造701のパターンに応じた波長である。
【0089】
第2実施形態においては、赤外線放射器11及び12の各々に備えられる熱放射板70は、ひとつの熱放射板である。また、赤外線放射器11及び12の各々により熱放射される赤外線IRは、ひとつの赤外線である。また、赤外線放射器11及び12の各々の放射面70Rは、ひとつの放射面である。また、赤外線放射器11及び12の各々に備えられるメタマテリアル701は、ひとつのメタマテリアルである。しかし、赤外線放射器11及び12の各々に備えられる熱放射板の数、赤外線放射器11及び12の各々により熱放射される赤外線の数、赤外線放射器11及び12の各々の放射面の数、並びに赤外線放射器11及び12の各々に備えられるメタマテリアルの数が増やされてもよい。
【0090】
図6に図示されるように、光学系21及び22は、導波管201及び202をそれぞれ備える。
【0091】
図6に図示されるように、導波管201及び202は、反射面201R及び202Rをそれぞれ有する。また、導波管201及び202は、出射口201E及び202Eをそれぞれ有する。また、導波管201及び202は、管内空間201S及び202Sをそれぞれ有する。
【0092】
反射面201R及び202Rは、それぞれ導波管201及び202の内面である。管内空間201S及び202Sは、反射面201R及び202Rにそれぞれ囲まれる。管内空間201S及び202Sは、出射口201E及び202Eにそれぞれ至る。管内空間201S及び202Sは、出射口201E及び202Eに近づくにつれて小さくなる径をそれぞれ有する。赤外線放射器11及び12は、管内空間201S及び202Sにそれぞれ配置される。放射面11R及び12Rは、出射口201E及び202Eに向かう方向を向く。
【0093】
反射面201R及び202Rは、熱放射された赤外線IR1及びIR2をそれぞれ反射する。
【0094】
出射口201Eは、熱放射された赤外線IR1及び熱放射され反射された赤外線IR1を出射させる。出射口202Eは、熱放射された赤外線IR2及び熱放射され反射された赤外線IR2を出射させる。管内空間201S及び202Sは出射口201E及び202Eに近づくにつれて小さくなる径をそれぞれ有するため、出射する赤外線IR1及びIR2は、集光される。
【0095】
血糖値測定装置2によれば、血糖値測定装置1と同様に、非侵襲で血糖値の測定を行う血糖値測定装置2のサイズを小さくすることができる。また、当該血糖値測定装置2のコストを低くすることができる。また、当該血糖値測定装置2に備えられる光源の出力を大きくすることができる。
【0096】
3 第3実施形態
図8は、第3実施形態の血糖値測定装置を模式的に図示する断面図である。
図9は、第3実施形態の血糖値測定装置に備えられる赤外線放射器を模式的に図示する断面図である。
図10は、グルコースの吸光度スペクトル及び第3実施形態の血糖値測定装置に備えられる赤外線放射器により熱放射される赤外線の放射強度スペクトルの例を示すグラフである。
図10においては、縦軸に吸光度及び放射強度がとられている。また、横軸に波数がとられている。
図4は、第3実施形態の血糖値測定装置に備えらえる熱放射板を模式的に図示する斜視図でもある。
【0097】
以下では、主に、
図8に図示される第3実施形態の血糖値測定装置3が
図1に図示される第1実施形態の血糖値測定装置1と相違する点が説明される。説明されない点については、血糖値測定装置1において採用される構成と同様の構成が血糖値測定装置3においても採用される。
【0098】
図8に図示される第3実施形態の血糖値測定装置3は、生体LBに照射される赤外線IR1及びIR2の各々が互いに異なるふたつ以上のピーク波長を有する波長混在型の血糖値測定装置である。
【0099】
図8に図示される赤外線IR1は、ピーク波長λ1及びλ2を有する。
図8に図示される赤外線IR2は、ピーク波長λ3及びλ4を有する。ピーク波長λ3及びλ4は、ピーク波長λ1及びλ2と異なる。このため、赤外線IR1及びIR2は、互いに異なるピーク波長を有する。
【0100】
メタマテリアル111及び121は、互いに異なる構造を有する。ピーク波長λ1及びλ2は、メタマテリアル111の構造に応じた波長である。ピーク波長λ3及びλ4は、メタマテリアル121の構造に応じた波長である。このため、ピーク波長λ3及びλ4は、ピーク波長λ1及びλ2と異なる。
【0101】
第3実施形態においては、メタマテリアル111及び121は、それぞれ放射面11R及び12Rと平行をなす方向に周期的に配列される複数のパターン片を備える周期構造である。また、ピーク波長λ1及びλ2は、周期構造111のパターンに応じた波長である。また、ピーク波長λ3及びλ4は、周期構造121のパターンに応じた波長である。
【0102】
赤外線放射器11及び12の各々は、赤外線IRA及びIRBを熱放射する。
【0103】
メタマテリアル71A1及び71B1は、互いに異なる構造を有する。赤外線IRA及びIRBのピーク波長は、それぞれメタマテリアル71A1及び71B1の構造に応じた波長である。このため、赤外線IRA及びIRBのピーク波長は、互いに異なる波長である。
【0104】
第3実施形態においては、メタマテリアル71A1及び71B1は、それぞれ放射面71AR及び71BRと平行をなす方向に周期的に配列される複数のパターン片を備える周期構造である。また、赤外線IRA及びIRBのピーク波長は、それぞれ周期構造71A1及び71B1のパターンに応じた波長である。
【0105】
血糖値測定装置3によれば、血糖値測定装置1と同様に、非侵襲で血糖値の測定を行う血糖値測定装置3のサイズを小さくすることができる。また、当該血糖値測定装置3のコストを低くすることができる。また、当該血糖値測定装置3に備えられる光源の出力を大きくすることができる。
【0106】
4 第4実施形態
図11は、第4実施形態の血糖値測定装置を模式的に図示する断面図である。
図12は、第4実施形態の血糖値測定装置に備えられる赤外線放射器を模式的に図示する断面図である。
図13は、第4実施形態の血糖値測定装置に備えられる赤外線放射器を模式的に図示する平面図である。
図10は、グルコースの吸光度スペクトル及び第4実施形態の血糖値測定装置に備えられる赤外線放射器により熱放射される赤外線の放射強度スペクトルの例を示すグラフでもある。
図4は、第4実施形態の血糖値測定装置に備えらえる熱放射板を模式的に図示する斜視図でもある。
【0107】
以下では、主に、
図11に図示される第4実施形態の血糖値測定装置4が
図6に図示される第2実施形態の血糖値測定装置2と相違する点が説明される。説明されない点については、血糖値測定装置2において採用される構成と同様の構成が血糖値測定装置4においても採用される。
【0108】
図11に図示される第4実施形態の血糖値測定装置4は、生体LBに照射される赤外線IR1及びIR2の各々が互いに異なるふたつ以上のピーク波長を有する波長混在型の血糖値測定装置である。
【0109】
図11に図示される赤外線IR1は、ピーク波長λ1及びλ2を有する。
図11に図示される赤外線IR2は、ピーク波長λ3及びλ4を有する。ピーク波長λ3及びλ4は、ピーク波長λ1及びλ2と異なる。このため、赤外線IR1及びIR2は、互いに異なるピーク波長を有する。
【0110】
メタマテリアル111及び121は、互いに異なる構造を有する。ピーク波長λ1及びλ2は、メタマテリアル111の構造に応じた波長である。ピーク波長λ3及びλ4は、メタマテリアル121の構造に応じた波長である。このため、ピーク波長λ3及びλ4は、ピーク波長λ1及びλ2と異なる。
【0111】
第4実施形態においては、メタマテリアル111及び121は、それぞれ放射面11R及び12Rと平行をなす方向に周期的に配列される複数のパターン片を備える周期構造である。また、ピーク波長λ1及びλ2は、それぞれ周期構造111及び121のパターンに応じた波長である。
【0112】
図12及び
図13に図示されるように、熱放射板70は、放射面71AR及び71BRを有する。このため、赤外線放射器11及び12の各々は、放射面71AR及び71BRを有する。また、赤外線放射器11及び12の各々は、
図11に図示される赤外線IRA及びIRBを放射面71AR及び71BRからそれぞれ熱放射する。赤外線放射器11の放射面71AR及び71BRは、放射面11Rを構成する。赤外線放射器12の放射面71AR及び71BRは、放射面12Rを構成する。赤外線放射器11により熱放射される赤外線IRA及びIRBは、赤外線IR1を構成する。赤外線放射器12により熱放射される赤外線IRA及びIRBは、赤外線IR2を構成する。
【0113】
また、
図12及び
図13に図示されるように、熱放射板70は、メタマテリアル71A1及び71B1をそれぞれ備える。このため、赤外線放射器11及び12の各々は、メタマテリアル71A1及び71B1を備える。メタマテリアル71A1及び71B1は、放射面71AR及び71BRに沿ってそれぞれ配置される。赤外線放射器11に備えられるメタマテリアル71A1及び71B1は、メタマテリアル111を構成する。赤外線放射器12に備えられるメタマテリアル71A1及び71B1は、メタマテリアル121を構成する。
【0114】
メタマテリアル71A1及び71B1は、互いに異なる構造を有する。赤外線IRA及びIRBのピーク波長は、それぞれメタマテリアル71A1及び71B1の構造に応じた波長である。このため、赤外線IRA及びIRBのピーク波長は、互いに異なる波長である。
【0115】
第4実施形態においては、メタマテリアル71A1及び71B1は、それぞれ放射面71AR及び71BRと平行をなす方向に周期的に配列される複数のパターン片を備える周期構造である。また、赤外線IRA及びIRBのピーク波長は、それぞれ周期構造71A1及び71B1のパターンに応じた波長である。
【0116】
血糖値測定装置4によれば、血糖値測定装置1と同様に、非侵襲で血糖値の測定を行う血糖値測定装置4のサイズを小さくすることができる。また、当該血糖値測定装置4のコストを低くすることができる。また、当該血糖値測定装置4に備えられる光源の出力を大きくすることができる。
【0117】
5 第5実施形態
図14は、第5実施形態の血糖値測定装置を模式的に図示する断面図である。
図15は、第5実施形態の血糖値測定装置に備えられる赤外線放射器を模式的に図示する断面図である。
図16は、第5実施形態の血糖値測定装置に備えられる赤外線放射器を模式的に図示する平面図でもある。
図3は、グルコースの吸光度スペクトル及び第5実施形態の血糖値測定装置に備えられる赤外線放射器により熱放射される赤外線の放射強度スペクトルの例を示すグラフでもある。
図4は、第5実施形態の血糖値測定装置に備えらえる熱放射板を模式的に図示する斜視図でもある。
【0118】
以下では、主に、
図14に図示される第5実施形態の血糖値測定装置5が
図1に図示される第1実施形態の血糖値測定装置1と相違する点が説明される。説明されない点については、血糖値測定装置1において採用される構成と同様の構成が血糖値測定装置5においても採用される。
【0119】
図14に図示される第5実施形態の血糖値測定装置5は、生体LBに照射される赤外線IR1及びIR2の各々がひとつのピーク波長しか有しない波長独立型の血糖値測定装置である。
【0120】
図14に図示されるように、第5実施形態の血糖値測定装置5は、赤外線放射器10、シャッター31、シャッター32、検出器41、制御器51及び算出器61を備える。
【0121】
検出器41は、生体LB中のグルコースによる赤外線IR1及びIR2の吸収量を反映する量Dを検出する。第5実施形態においては、検出器41は、音響波検出器である。また、検出される量Dは、赤外線IR1及びIR2が生体LBに照射されている間に生体LBから到来する音響波AWの強度である。音響波検出器は、マイクロフォンである。音響波検出器が、マイクロフォン以外の音響波検出器であってもよい。音響波AWは、赤外線IR1及びIR2をグルコースが吸収した際に光音響効果により発生する音響波である。
【0122】
図14、
図15及び
図16に図示されるように、赤外線放射器10は、複数の放射面11R及び12Rを有する。赤外線放射器10は、赤外線IR1及びIR2を放射面11R及び12Rからそれぞれ熱放射する。放射面11R及び12Rは、同じ方向を向く。
【0123】
図14、
図15及び
図16に図示されるように、赤外線放射器10は、メタマテリアル111及び121を備える。メタマテリアル111及び121は、放射面11R及び12Rに沿ってそれぞれ配置される。
【0124】
メタマテリアル111及び121は、互いに異なる構造を有する。ピーク波長λ1及びλ2は、それぞれメタマテリアル111及び121の構造に応じた波長である。このため、ピーク波長λ1及びλ2は、互いに異なる。このため、赤外線IR1及びIR2は、互いに異なるピーク波長を有する。
【0125】
第5実施形態においては、メタマテリアル111及び121は、それぞれ放射面11R及び12Rと平行をなす方向に周期的に配列される複数のパターン片を備える周期構造である。また、ピーク波長λ1及びλ2は、それぞれ周期構造111及び121のパターンに応じた波長である。
【0126】
図15に図示されるように、赤外線放射器10は、熱放射板70及びヒーター81を備える。
【0127】
図16に図示されるように、熱放射板70は、放射面11R及び12Rを有する。
【0128】
血糖値測定装置5によれば、血糖値測定装置1と同様に、非侵襲で血糖値の測定を行う血糖値測定装置5のサイズを小さくすることができる。また、当該血糖値測定装置5のコストを低くすることができる。また、当該血糖値測定装置5に備えられる光源の出力を大きくすることができる。
【0129】
また、血糖値測定装置5によれば、広い範囲から到来する音響波AWの強度を容易に検出することができる。このため、赤外線IR1及びIR2を集光する必要がなく、赤外線IR1及びIR2を集光する光学系を省略することができる。
【0130】
6 第6実施形態
図17は、第6実施形態の血糖値測定装置を模式的に図示する断面図である。以下では、主に、
図17に示した第6実施形態の血糖値測定装置6に備わる光学系21が他の実施形態の血糖値測定装置に備わる光学系21(および22)と相違する点を説明する。
【0131】
図17に示すように、第6実施形態の血糖値測定装置6は、放射面11Rに沿ってメタマテリアル111を備える赤外線放射器11と、光学系21と、シャッター31と、検出器41と、制御器51と、算出器61と、到来赤外線集光レンズ241と、冷風源311とを、少なくとも備える。
【0132】
ただし、
図17には、血糖値測定装置6が赤外線放射器11、光学系21、およびシャッター31を一組のみ備える構成を示しているが、これは説明および図示の簡単のためである。実際の血糖値測定装置6は、ピーク波長が相異なる2通りの赤外線を選択的に出射可能な構成を有する。係る場合において、血糖値測定装置6は、波長独立型であっても波長混在型であってもよい。
【0133】
例えば、血糖値測定装置6は、第1実施形態の血糖値測定装置1のように複数の赤外線放射器と光学系との組を備える構成、具体的には、
図17に示した赤外線放射器11および光学系21と同様の構成を有しつつも、メタマテリアルの構成を違えることで出射される赤外線の波長が赤外線放射器11とは異なる他の赤外線放射器および光学系をセットでさらに備える構成を取り得る。係る場合、
図1などに示した構成同様、それぞれの光学系に応じたシャッターも設けられる。
【0134】
あるいは、血糖値測定装置6は、
図17に示すように単一の赤外線放射器11および光学系21を有しつつも、
図14に示した第5実施形態の血糖値測定装置5と同様に、赤外線放射器11が同じ方向を向いた複数の放射面を有してなり、相異なる赤外線をそれぞれの放射面から熱放射する構成をも取り得る。係る場合、
図14に示した構成と同様、それぞれの放射面に応じて2つのシャッターが設けられる。
【0135】
赤外線放射器11は、メタマテリアル111を備える放射面11Rが、赤外線放射器11から生体LBに向かう方向(以下、照射方向)に対して垂直になるように、配置されてなる。
【0136】
光学系21は、レンズアレイ91と、レンズ141とを備える。レンズアレイ91およびレンズ141は、赤外線放射器11の放射面11Rと平行に配置されてなる。
【0137】
レンズアレイ91は、入射面側が平坦になっている一方、出射面側にそれぞれが凸レンズとして機能する多数の凸部を有してなる。レンズアレイ91は、拡散放射光源である赤外線放射器11から種々の方向に出射される赤外線IRαを屈折させて、照射方向に平行な赤外線IRβとする。レンズ141は、赤外線IRβを集光する。レンズ141によって集光された赤外線IRγが、生体に照射される。
【0138】
血糖値測定装置6は、さらに、冷風源311を備える。冷風源311は、レンズ141に対し冷風CAを送るために備わる。係る冷風CAによりレンズ141を冷却することで、赤外線IRβを集光する際のレンズ141の温度上昇が抑制される。なお、冷風源311はあくまでレンズ141を冷却してその温度を室温程度に保つことができるものであればよい。それゆえ、血糖値測定装置6においても、赤外線放射器11を冷却するための冷却系を必要としない点は他の実施形態の血糖値測定装置と同様である。
【0139】
血糖値測定装置6においては、上述の構成が採用されることで、第1および第3実施形態の放物面極101(および102)や第2および第4実施形態の導波管201(および202)を採用せずとも、生体LBに照射される赤外線の集光効率が高められてなる。
図17においては、それら放物面鏡や導波管としての機能を有さない単なる筐体301に赤外線放射器11および光学系21を収容した構成が、例示されている。
【0140】
なお、血糖値測定装置6が相異なる赤外線放射器と光学系との組をさらに備える場合は、そちらについても
図17に示したものと同様の構成が採用される。
【0141】
また、血糖値測定装置6と同様にレンズ141(および142)を備える第1および第3実施形態の血糖値測定装置1および3に、冷風源311を設けるようにしてもよい。
【0142】
また、血糖値測定装置6は、第1ないし第4実施形態と同様に、赤外線検出器である検出器41を備える。検出器41は、生体LB中のグルコースによる赤外線IR1及びIR2の吸収量を反映する量Dを検出する。
【0143】
ただし、血糖値測定装置6は、検出器41の手前(生体LBと検出器41との間)に到来赤外線集光レンズ241を備えており、係る到来赤外線集光レンズ241にて集光された赤外線が検出器41にて検出される。これにより、検出感度が高められてなる。
【0144】
なお、
図17においては生体LBにて反射された赤外光を検出するようになっているが、これはあくまで例示であり、第1ないし第4実施形態と同様の位置に検出器41が配置される態様であってもよい。
【0145】
本実施形態においても、第1ないし第5実施形態と同様に、非侵襲で血糖値の測定を行う血糖値測定装置のサイズを小さくすることができる。また、血糖値測定装置のコストを低くすることができる。また、血糖値測定装置に備える光源の出力を大きくすることができる。
【0146】
7 フィルタの使用
図18は、赤外線放射器11から生体LBに向かう赤外線の光路の途中に赤外線透過フィルタ(以下、単にフィルタとも称する)FTを配置する様子を示す模式図である。
図19は、
図18に示した場合における、フィルタFTの配置による赤外線の放射スペクトル(放射エネルギーの波長依存性)の変化を示す図である。例えば、第6実施形態の血糖値測定装置6の場合であれば、レンズアレイ91とシャッタ31との間の任意の箇所に設けることができる。
【0147】
一般に、物質に赤外線を照射し、当該物質における赤外線の吸収度合いに応じた量を測定する場合、照射される赤外線の波長(ピーク波長)が物質の吸収波長と対応し、かつ、当該赤外線のプロファイルにおけるピーク半値幅が小さい方が、測定感度が向上する。
【0148】
係る点を鑑み、第1ないし第6実施形態のいずれの光学系にも、フィルタFTを配置するようにしてもよい。係る場合、フィルタFTとしては、生体LBにおける吸収波長に該当するある中心波長λaを含むごく狭い波長範囲の赤外線のみを透過させるものを用いるものとする。
【0149】
いま、
図18に示すように、赤外線放射器11から出射された赤外線IRx0がフィルタFTに入射し、該フィルタFTを透過した成分が赤外線IRx1として改めてフィルタFTから出射されるとする。そして、
図19に示すように、フィルタ入射前の赤外線IRx0の放射スペクトルSPx0においては、中心波長λaで最大強度Ix0であり、ピーク半値幅がWx0であるとする。一方、赤外線IRx1の放射スペクトルSPx1においては、同じ中心波長λaで最大強度Ix1(<Ix0)であり、ピーク半値幅がWx1(<Wx0)であるとする。
【0150】
係る場合、生体LBに照射される赤外光の半値幅がフィルタFTを設けない場合に比して小さくなるので、より優れた感度にて測定を行うことが出来る。
【0151】
例えば、赤外線放射器11(および12)が8μm~10μmの範囲に中心波長λaを有し、半値幅が1μm程度である赤外線を出射可能である場合であれば、透過率が70%でフィルタFTを透過した赤外線の半値幅が500nm程度になるフィルタFTを用いるのが好ましい。係る場合、比較的強度を確保しつつ、半値幅が低減された赤外光を生体LBに照射することが可能となる。
【0152】
なお、フィルタFTにおいてはエネルギー吸収に伴う昇温が生じ得る。それゆえ、好ましくは、フィルタFTは冷却しつつ使用される。フィルタFTにおいて吸収されたエネルギーが熱に変化すると、フィルタFT自体から熱輻射が生じ、他の波長の赤外線が発生してしまうため、好ましくないからである。
【0153】
ただし、赤外線放射器11から出射される赤外線IRx0の放射スペクトルSPx0における波長範囲はあらかじめ比較的限定されているので、フィルタFTにおけるエネルギー吸収は比較的少ないといえる。それゆえ、昇温を抑制するべくフィルタFTを冷却する必要がある場合でも、その機構は簡素化することができる。例えば、第6実施形態の血糖値測定装置6のように、血糖値測定装置が冷風源を備える場合には、係る冷風源からの冷風にてフィルタFTをも冷却することも可能である。なお、光学系21におけるフィルタFTの配置位置は、それぞれの実施形態において好適な位置であればよい。
【0154】
一方、
図20は、比較のために示す、一般的な赤外線ヒータHTから出射される赤外線の光路の途中に
図18と同じフィルタFTを配置する様子を示す模式図である。また、
図21は、
図20に示した場合における、フィルタFTの配置による放射スペクトルの変化を示す図である。
【0155】
図20においては、一般的な赤外線ヒータHTから出射された赤外線IRy0がフィルタFTに入射し、該フィルタFTを透過した成分が赤外線IRy1として改めてフィルタFTから出射される場合を示している。一般的な赤外線ヒータHTからの赤外線の出射態様は黒体放射に類似する。それゆえ、
図21に示すように、フィルタ入射前の赤外線IRy0の放射スペクトルSPy0は、黒体放射のスペクトルに類似しており、最大強度Iy0を与える波長は波長λaとは異なっているものとする。一方、赤外線IRy1の放射スペクトルSPy1においては、中心波長λaで最大強度Iy1(<Iy0)であるとする。係る放射スペクトルSPy1は、
図19の放射スペクトルSPx1とほぼ同じであるとする。
【0156】
図19と
図21を比較すると、一般的な赤外線ヒータHTから出射された赤外線IRy0がフィルタに入射する後者の方がフィルタFTにおけるエネルギー吸収量が多くなる。それゆえ、この場合、フィルタFTを十分に冷却することが必須であるため、冷却機構の簡素化は難しい。
【0157】
以上のように、赤外線の放射源として赤外線放射器11(および12)を採用した第1ないし第6実施形態に係る血糖値測定装置1ないし6においては、赤外線放射器11(および12)から生体LBに向かう赤外線の光路の途中に赤外線透過フィルタFTを付加した構成を採用することが可能である。係るフィルタFTの付加により、検出感度の向上が見込まれる。一方で、赤外線を吸収するフィルタFTの冷却機構は簡素なもので足りる。
【0158】
8 熱放射板の別例
図22から
図24までは、第1実施形態から第6実施形態までの血糖値測定装置に備えられる熱放射板の別例を模式的に図示する斜視図である。
【0159】
熱放射板71A、71B及び70の各々が、
図4に図示される熱放射板以外の熱放射板であってもよい。例えば、熱放射板71A、71B及び70の各々が、
図22、
図23又は
図24に図示される熱放射板であってもよい。
【0160】
図22に図示される熱放射板71A、71B及び70の各々は、導電体層801を備える。導電体層801には、複数のマイクロキャビティ802が形成される。複数のマイクロキャビティ802は、マトリクス状に配列される。熱放射板71A、71B及び70に備えられる導電体層801は、メタマテリアル71A1、71B1及び701をそれぞれ構成する。
【0161】
図23に図示される熱放射板71A、71B及び70の各々は、導電体層811、誘電体層812及び導電体パターン813を備える。誘電体層812は、導電体層811の上に配置される。導電体パターン813は、誘電体層812の上に配置される。導電体パターン813は、複数のスプリットリング814を備える。複数のスプリットリング814は、マトリクス状に配列される。熱放射板71A、71B及び70に備えられる導電体層811、誘電体層812及び導電体パターン813は、メタマテリアル71A1、71B1及び701をそれぞれ構成する。
【0162】
図24に図示される熱放射板71A、71B及び70の各々は、W層821、SiO
2層822、Ge層823、SiO
2層824、Ge層825、SiO
2層826及びGe層827を備える。W層821、SiO
2層822、Ge層823、SiO
2層824、Ge層825、SiO
2層826及びGe層827は、記載された順序で下から上に積層される。熱放射板71A、71B及び70に備えられるW層821、SiO
2層822、Ge層823、SiO
2層824、Ge層825、SiO
2層826及びGe層827は、メタマテリアル71A1、71B1及び701をそれぞれ構成する。
【0163】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0164】
1、2、3、4、5、6 血糖値測定装置
10、11、12 赤外線放射器
21、22 光学系
31、32 シャッター
41 検出器
51 制御器
61 算出器
70、71A、71B 熱放射板
81 ヒーター
91 レンズアレイ
101、102 放物面鏡
111、121、71A1、71B1、701 メタマテリアル
141、142 レンズ
201、202 導波管
311 冷風源
LB 生体
IR1、IR2、IR、IRA、IRB 赤外線
AIR 到来赤外線
AW 音響波
CA 冷風
FT (赤外線透過)フィルタ