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  • 特開-吸水処理材及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180686
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】吸水処理材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 1/015 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
A01K1/015 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087295
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】321000026
【氏名又は名称】株式会社大貴
(74)【代理人】
【識別番号】100179327
【弁理士】
【氏名又は名称】大坂 憲正
(72)【発明者】
【氏名】吉永 隼士
【テーマコード(参考)】
2B101
【Fターム(参考)】
2B101AA13
2B101AA20
2B101GB05
2B101GB06
(57)【要約】
【課題】軽量性に優れる吸水処理材、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】吸水処理材1は、液体を吸収する吸水処理材であって、吸水性を有する複数の粒状体10を備えている。各粒状体10の少なくとも一部は、ヘチマからなっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吸収する吸水処理材であって、
吸水性を有する複数の粒状体を備え、
前記各粒状体の少なくとも一部は、ヘチマからなることを特徴とする吸水処理材。
【請求項2】
請求項1に記載の吸水処理材において、
前記各粒状体は、前記ヘチマを主材料とする吸水処理材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸水処理材において、
前記各粒状体に占める前記ヘチマの体積割合は、80%以上である吸水処理材。
【請求項4】
請求項3に記載の吸水処理材において、
前記ヘチマの前記体積割合は、90%以上である吸水処理材。
【請求項5】
請求項4に記載の吸水処理材において、
前記各粒状体は、前記ヘチマのみからなる吸水処理材。
【請求項6】
請求項1乃至4の何れかに記載の吸水処理材において、
前記各粒状体は、粒状の芯部と、前記芯部を覆う被覆部とを有し、
前記芯部の少なくとも一部が、前記ヘチマからなる吸水処理材。
【請求項7】
請求項6に記載の吸水処理材において、
前記被覆部は、接着性材料を含有している吸水処理材。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の吸水処理材において、
前記被覆部は、着色材料を含有している吸水処理材。
【請求項9】
請求項6乃至8の何れかに記載の吸水処理材において、
前記被覆部は、消臭材料又は芳香材料を含有している吸水処理材。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れかに記載の吸水処理材において、
前記各粒状体は、有機物のみからなる吸水処理材。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れかに記載の吸水処理材において、
前記ヘチマは、直方体状をしている吸水処理材。
【請求項12】
液体を吸収する吸水処理材を製造する方法であって、
吸水性を有する複数の粒状体を形成する粒状体形成工程を含み、
前記粒状体形成工程においては、前記各粒状体の少なくとも一部がヘチマからなるように、前記複数の粒状体を形成することを特徴とする吸水処理材の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の吸水処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、造粒をすることなく、前記複数の粒状体を形成する吸水処理材の製造方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の吸水処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、前記各粒状体が前記ヘチマを主材料とするように、前記複数の粒状体を形成する吸水処理材の製造方法。
【請求項15】
請求項12乃至14の何れかに記載の吸水処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、前記各粒状体に占める前記ヘチマの体積割合が80%以上となるように、前記複数の粒状体を形成する吸水処理材の製造方法。
【請求項16】
請求項15に記載の吸水処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、前記ヘチマの前記体積割合が90%以上となるように、前記複数の粒状体を形成する吸水処理材の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の吸水処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、前記各粒状体が前記ヘチマのみからなるように、前記複数の粒状体を形成する吸水処理材の製造方法。
【請求項18】
請求項12乃至16の何れかに記載の吸水処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程は、粒状の複数の芯部を形成する芯部形成工程と、前記各芯部を覆うように被覆部を形成する被覆部形成工程とを含み、
前記芯部形成工程においては、前記各芯部の少なくとも一部が前記ヘチマからなるように、前記複数の芯部を形成する吸水処理材の製造方法。
【請求項19】
請求項18に記載の吸水処理材の製造方法において、
前記被覆部形成工程においては、接着性材料を含有する前記被覆部を形成する吸水処理材の製造方法。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の吸水処理材の製造方法において、
前記被覆部形成工程においては、着色材料を含有する前記被覆部を形成する吸水処理材の製造方法。
【請求項21】
請求項18乃至20の何れかに記載の吸水処理材の製造方法において、
前記被覆部形成工程においては、消臭材料又は芳香材料を含有する前記被覆部を形成する吸水処理材の製造方法。
【請求項22】
請求項12乃至21の何れかに記載の吸水処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、前記各粒状体が有機物のみからなるように、前記複数の粒状体を形成する吸水処理材の製造方法。
【請求項23】
請求項12乃至22の何れかに記載の吸水処理材の製造方法において、
前記粒状体形成工程においては、前記各粒状体の少なくとも一部が直方体状の前記ヘチマからなるように、前記複数の粒状体を形成する吸水処理材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吸収する吸水処理材、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の吸水処理材としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。同文献に記載された吸水処理材は、人又は動物の排泄物の処理に用いられる排泄物処理材であって、吸水性を有する複数の粒状体を備えている。これらの粒状体は、まとめて1つの包装袋に収容された状態で出荷される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-158253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、1つの包装袋には、比較的大容量(5~10リットル程度)の粒状体が収容されるのが一般的である。そのため、従来の吸水処理材は、相当の重量を有しており、ユーザにとって運搬等の負担が大きいという問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、軽量性に優れる吸水処理材、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による吸水処理材は、液体を吸収する吸水処理材であって、吸水性を有する複数の粒状体を備え、上記各粒状体の少なくとも一部は、ヘチマからなることを特徴とする。
【0007】
この吸水処理材においては、少なくとも一部がヘチマからなる粒状体が設けられている。ヘチマは、網目状の繊維組織からなるため、非常に小さな嵩密度を有する材料である。このため、ヘチマを用いることにより、粒状体の嵩密度も小さくすることができる。
【0008】
また、本発明による吸水処理材の製造方法は、液体を吸収する吸水処理材を製造する方法であって、吸水性を有する複数の粒状体を形成する粒状体形成工程を含み、上記粒状体形成工程においては、上記各粒状体の少なくとも一部がヘチマからなるように、上記複数の粒状体を形成することを特徴とする。
【0009】
この製造方法においては、少なくとも一部がヘチマからなる粒状体が形成される。ヘチマは、網目状の繊維組織からなるため、非常に小さな嵩密度を有する材料である。このため、ヘチマを用いることにより、粒状体の嵩密度も小さくすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軽量性に優れる吸水処理材、及びその製造方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明による吸水処理材の一実施形態を示す模式図である。
図2】粒状体10を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明による吸水処理材の一実施形態を示す模式図である。吸水処理材1は、処理対象となる液体を吸収する吸水処理材であって、複数の粒状体10を備えている。各粒状体10の粒径は、例えば10mm以上30mm以下である。ここで、粒状体10の粒径は、粒状体10を内包しうる最小の球の直径として定義される。吸水処理材1は、動物又は人の排泄物(主に尿)を吸収する排泄物処理材である。吸水処理材1は、例えば、箱型のトイレに複数の粒状体10が敷設された状態で使用される。
【0014】
各粒状体10は、吸水性を有している。粒状体10が吸水性を有するというには、次の試験により測定される吸水率が40%以上であることが必要である。まず、内径10cm、目開き1mmの篩に50g相当の粒状体10(サンプル)を入れる。篩の下には、空のビーカーを設置する。そして、サンプルに対し、外筒の内径3cm、筒先の内径4mmのシリンジ(テルモ社製60mlシリンジ)を用いて、30mlの水を10秒かけて滴下する。1分間放置した後、ビーカー内の水量を計測する。滴下した水量(30ml)から計測された水量を引いた値の、滴下した水量に対する割合をもって吸水率とする。すなわち、ビーカー内の水量が18ml以下であれば、吸水率が40%以上となるため、粒状体10が吸水性を有するといえる。
【0015】
各粒状体10の少なくとも一部は、ヘチマからなっている。粒状体10を構成するヘチマは、ヘチマの果実が成熟して乾燥したものであり、吸水性を有する網目状の繊維組織からなっている。各粒状体10は、ヘチマを主材料としている。ここで、粒状体10の主材料とは、粒状体10を構成する1又は2以上の材料のうち、当該粒状体10に占める体積割合が最大のものをいう。このとき、ヘチマの細孔及び内部空隙もヘチマの体積に含めて考えるものとする。各粒状体10に占めるヘチマの体積割合は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0016】
図2は、粒状体10を示す模式図である。各粒状体10は、芯部12及び被覆部14を有している。芯部12は、粒状をしている。かかる粒状の形状としては、例えば、直方体(立方体を含む。)、球、円柱、楕円体等が挙げられる。本実施形態において芯部12は、直方体状をしている。芯部12は、液体を吸水及び保水する機能を有する。芯部12の少なくとも一部は、ヘチマからなっている。本実施形態においては、芯部12の全体がヘチマからなっている。すなわち、芯部12は、ヘチマのみからなっている。
【0017】
被覆部14は、芯部12を覆っている。被覆部14は、芯部12の表面の全体を覆っていてもよいし、芯部12の表面の一部のみを覆っていてもよい。被覆部14は、吸水性材料を基材としている。ここで、被覆部14の基材とは、被覆部14を構成する1又は2以上の材料のうち、当該被覆部14に占める重量割合が最大のものをいう。吸水性材料は、有機物であることが好ましい。有機物である吸水性材料としては、例えば、紙類、茶殻、プラスチック類又はオカラを用いることができる。
【0018】
紙類は、パルプを主体とする材料をいう。紙類としては、例えば、通常の紙の他にも、塩ビ壁紙分級物(塩ビ壁紙を分級することにより得られる紙)、フラッフパルプ、製紙スラッジ、パルプスラッジ等が挙げられる。プラスチック類としては、例えば、紙おむつ分級物(紙おむつを分級することにより得られるプラスチック)を用いてもよい。オカラは、乾燥オカラであることが好ましい。
【0019】
被覆部14は、吸水性材料に加えて、接着性材料を含有している。接着性材料としては、例えば、吸水性ポリマー、澱粉、CMC(カルボキシメチルセルロース)、PVA(ポリビニルアルコール)又はデキストリンを用いることができる。被覆部14は、液体を吸収した粒状体10どうしを接着させて固まりにする機能(固まり形成機能)を有している。被覆部14は、ヘチマを含有していない。このように本実施形態においては、粒状体10の一部(芯部12)のみがヘチマからなっている。各粒状体10は、有機物のみからなることが好ましい。すなわち、粒状体10を構成するヘチマ以外の材料も、全て有機物であることが好ましい。
【0020】
被覆部14は、着色材料を含有していてもよい。着色材料としては、一般的な染料又は顔料の他にも、例えばチョーク粉を用いることができる。また、被覆部14は、消臭材料又は芳香材料を含有していてもよい。消臭材料としては、例えば、硫酸銅等の銅化合物、又はカテキン粉末を用いることができる。芳香材料としては、例えば、ユーカリ、ローズマリーその他のハーブの香りを発する天然香料、又はせっけんの香りや花の香りを発する合成香料を用いることができる。
【0021】
続いて、本発明による吸水処理材の製造方法の一実施形態として、吸水処理材1の製造方法の一例を説明する。この製造方法は、粒状体形成工程を含んでいる。
【0022】
粒状体形成工程は、複数の粒状体10を形成する工程である。この工程は、芯部形成工程、及び被覆部形成工程を含んでいる。芯部形成工程は、複数の芯部12を形成する工程である。この工程においては、上述のヘチマを粒状(本実施形態においては直方体状)に切断することにより、芯部12を形成する。
【0023】
被覆部形成工程は、各芯部12を覆うように被覆部14を形成する工程である。この工程においては、コーティング装置等を用いて、各芯部12の表面に粉体状の被覆材料(被覆部14を構成する材料)を付着させることにより、被覆部14を形成する。被覆材料の付着は、例えば、散布又は噴霧により行うことができる。被覆材料が芯部12の表面に付着しやすいように、被覆材料の付着に先立って芯部12の表面を水で濡らしてもよい。これにより、複数の粒状体10からなる吸水処理材1が得られる。このように粒状体形成工程においては、押出造粒等の造粒をすることなく、複数の粒状体10が形成される。
【0024】
本実施形態の効果を説明する。本実施形態においては、少なくとも一部がヘチマからなる粒状体10が形成される。ヘチマは、網目状の繊維組織からなるため、非常に小さな嵩密度を有する材料である。このため、ヘチマを用いることにより、粒状体10の嵩密度も小さくすることができる。したがって、軽量性に優れる吸水処理材1、及びその製造方法が実現されている。
【0025】
各粒状体10は、ヘチマを主材料としている。このように嵩密度の小さいヘチマを主材料とすることは、粒状体10全体の嵩密度を小さくするのに特に効果的である。ただし、各粒状体10がヘチマを主材料とすることは、必須でない。
【0026】
粒状体10全体の嵩密度を小さくするには、各粒状体10に占めるヘチマの体積割合が大きいほうが有利である。かかる観点から、当該体積割合は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【0027】
各粒状体10を構成するヘチマは、直方体状をしている。この場合、当該ヘチマが他の形状(球、円柱、楕円体等)をしている場合に比して、芯部形成工程におけるヘチマの切断を容易に行うことができる。また、切断の際に無駄な部分が生じにくいため、1本のヘチマ果実から多数のヘチマ片(芯部12)を効率よく取得することができる。
【0028】
粒状体形成工程においては、造粒をすることなく、複数の粒状体10を形成している。このため、造粒工程も造粒装置も不要である。このことは、吸水処理材1の製造工程の簡略化及び製造コストの削減に資する。
【0029】
各粒状体10は、芯部12及び被覆部14からなる複層構造(二層構造)を有している。これにより、芯部12及び被覆部14に別々の機能を担わせることができる。例えば、本実施形態の場合、吸水・保水機能を主に芯部12に担わせ、固まり形成機能を被覆部14に担わせている。
【0030】
被覆部14は、接着性材料を含有している。これにより、被覆部14に固まり形成機能を付与することができる。ただし、被覆部14に接着性材料を含有させることは、必須でない。
【0031】
被覆部14が着色材料を含有する場合、使用前の粒状体10に所望の色彩を与えたり、使用後の粒状体10を所望の色彩に変化させたりすることが可能となる。このことは、粒状体10ひいては吸水処理材1の美観の向上に資する。
【0032】
被覆部14が消臭材料又は芳香材料を含有する場合、液体(排泄物)を吸収した粒状体10から発生した悪臭を緩和することができる。
【0033】
各粒状体10が有機物のみからなる場合、焼却処分に適した粒状体10を得ることができる。この場合、使用済みの粒状体10を可燃ゴミとして捨てることができるため、ユーザにとっての利便性が向上する。
【0034】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。上記実施形態においては、粒状体10が、芯部12及び被覆部14からなる複層構造を有する場合を例示した。しかし、被覆部14を設けることは必須でない。すなわち、各粒状体10は、芯部12のみからなる単層構造を有していてもよい。
【0035】
上記実施形態においては、各芯部12の全体がヘチマからなる場合を例示した。しかし、各芯部12の一部のみがヘチマからなっていてもよい。
【0036】
上記実施形態においては、各粒状体10の一部のみがヘチマからなる場合を例示した。しかし、各粒状体10の全体がヘチマからなっていてもよい。すなわち、各粒状体10は、ヘチマのみからなっていてもよい。その場合、粒状体10全体の嵩密度を小さくするのに特に有利である。
【0037】
上記実施形態においては、吸水処理材1が排泄物処理材である場合を例示した。しかし、吸水処理材1は、嘔吐物を吸収する嘔吐物処理材、又は生ゴミ(生ゴミに含まれる水分)を吸収する生ゴミ処理材であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 吸水処理材
10 粒状体
12 芯部
14 被覆部
図1
図2