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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180690
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】放射線計測装置およびその計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/203 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
G01N23/203
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087303
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 瑞穂
(72)【発明者】
【氏名】岡田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】北岡 雅則
(72)【発明者】
【氏名】上野 克宜
(72)【発明者】
【氏名】上野 雄一郎
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA02
2G001AA10
2G001AA13
2G001BA15
2G001CA02
2G001DA06
2G001DA08
2G001EA03
2G001FA22
2G001KA03
2G001LA20
(57)【要約】
【課題】片側アクセスの放射線計測において、被検体の内部を線源サイズより小さい分解能で三次元可視化する放射線計測装置を提供する。
【解決手段】
被検体の内部状態を分析する放射線計測装置10であって、放射方向が互いに反対方向で同時に発生する一対の第一、第二ガンマ線を放出する対消滅ガンマ線源Sと、第一ガンマ線が被検体Tと反応した散乱ガンマ線を検出する第一の検出器D1と、第二ガンマ線を検出して照射方向を特定する第二の検出器D2と、第一、第二の検出器で同時に検出した信号を抽出する信号処理装置102と、散乱ガンマ線のエネルギー分析を行うエネルギー分析装置103と、散乱ガンマ線から算出した散乱角と、第二の検出器で取得した第二ガンマ線の照射方向の情報と、によって、第一ガンマ線の被検体の散乱位置を限定し、散乱ガンマ線の計数と合わせて、被検体内部の三次元像を演算して再構成する演算装置104とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体となる対象物の内部状態を分析する放射線計測装置であって、
放射方向が互いに反対方向で同時に発生する一対の第一ガンマ線と第二ガンマ線とを放出する対消滅ガンマ線源と、
前記対消滅ガンマ線源との相対座標が既知であり、前記第一ガンマ線が被検体となる対象物と反応をして発生する散乱ガンマ線を検出する第一の検出器と、
前記第二ガンマ線を検出し、該第二ガンマ線の照射方向を特定する第二の検出器と、
前記第一の検出器および前記第二の検出器で同時に検出した信号を抽出する信号処理装置と、
前記散乱ガンマ線のエネルギー分析を行うエネルギー分析装置と、
前記散乱ガンマ線のエネルギー分析値から算出した前記散乱ガンマ線の散乱角と、前記第二の検出器で取得した前記第二ガンマ線の照射方向の情報とによって、前記第一ガンマ線の前記被検体の内部における散乱位置を限定し、前記散乱ガンマ線の測定の計数と合わせて、前記被検体となる対象物の内部の三次元像を演算して再構成する演算装置と、
を備える、
ことを特徴とする放射線計測装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第一の検出器は、前記被検体となる対象物の表面の位置に対して、前記対消滅ガンマ線源と同一の側に配置する、
ことを特徴とする放射線計測装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記対消滅ガンマ線源は、所定の一方向に長く、他方向に短い、一次元的な線状形状である、
ことを特徴とする放射線計測装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記対消滅ガンマ線源は、所定の二次元方向に長く、他方向に短い、二次元的な面状形状である、
ことを特徴とする放射線計測装置。
【請求項5】
請求項1において、
前記対消滅ガンマ線源は、所定の二次元面方向に長くかつ広く、他方向に短い、三次元的な直方体形状である、
ことを特徴とする放射線計測装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記対消滅ガンマ線源は、陽電子放出核種を備える、
ことを特徴とする放射線計測装置。
【請求項7】
請求項1において、
前記第一の検出器は、ガンマ線の検出位置を特定できる構造を有している、
ことを特徴とする放射線計測装置。
【請求項8】
請求項1において、
前記第二の検出器は、ガンマ線の検出位置を特定できる構造を有している、
ことを特徴とする放射線計測装置。
【請求項9】
請求項1において、
前記第二の検出器は、複数の検出素子を備える、
ことを特徴とする放射線計測装置。
【請求項10】
請求項1において、
前記第一の検出器は、複数のガンマ線検出器で構成される、
ことを特徴とする放射線計測装置。
【請求項11】
請求項1において、
前記第一の検出器は、前記対消滅ガンマ線源との相対位置が調整可能であり、前記第一の検出器の検出位置を指定することができる入力手段を有する、
ことを特徴とする放射線計測装置。
【請求項12】
請求項1において、
前記第二の検出器は、前記対消滅ガンマ線源との相対位置が調整可能であり、前記第二の検出器の位置を指定することができる入力手段を有する、
ことを特徴とする放射線計測装置。
【請求項13】
請求項1に記載の放射線計測装置を用いて、被検体となる対象物の内部状態を分析する放射線計測方法であって、
前記放射線計測装置を、前記被検体となる対象物に対して移動して、計測データを収集する、
ことを特徴とする放射線計測方法。
【請求項14】
請求項1に記載の放射線計測装置を用いて、被検体となる対象物の内部状態を分析する放射線計測方法であって、
前記第一の検出器および前記第二の検出器を前記対消滅ガンマ線源との相対位置を変更して、計測データを収集する、
ことを特徴とする放射線計測方法。
【請求項15】
被検体となる対象物の内部状態を分析する放射線計測方法であって、
対消滅ガンマ線源とガンマ線を検出する第一の検出器と第二の検出器とを、それぞれ測定ポイントに配置するステップと、
前記対消滅ガンマ線源と前記第一の検出器と第二の検出器との位置をそれぞれ記録するステップと、
前記対消滅ガンマ線源の第一ガンマ線を検体である対象物に照射して生じた散乱ガンマ線を検出するステップと、
対となる前記対消滅ガンマ線源の第二ガンマ線を第二の検出器で検出し、前記第二ガンマ線の照射方向を特定するステップと、
前記第一の検出器と前記第二の検出器で同時に検出された散乱ガンマ線と第二ガンマ線の信号を抽出する信号処理ステップと、
前記散乱ガンマ線のエネルギー分析を行うステップと、
前記散乱ガンマ線のエネルギー分析値から前記散乱ガンマ線の散乱位置を絞り込むステップと、
取得した複数の散乱ガンマ線のエネルギースペクトルのデータから被検体となる対象物の内部三次元像を再構成演算する演算ステップと、
を有することを特徴とする放射線計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線計測装置および放射線計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
橋梁やトンネル、電力ケーブル、鉄道に代表される社会インフラ機器の老朽化が進んでおり、保守点検の重要性が増している。老朽化により生じる欠陥の内、対象物内部に生じる欠陥は、一般に発見すること、および、欠陥サイズ等の性状を把握することが難しいため、検査技術の高度化が求められている。
対象物の内部を検査するには、レーダやX線、ガンマ線など、対象物を透過する電磁波を用いて対象物の密度情報を取得する方法を用いることが一般的である。例えば、放射線透過試験や、X線CT(Computed Tomography)がある。
【0003】
これらの方法は、対象物を線源と検出器で挟み込んで走査する必要があり、大型構造物や片面にしかアクセスできない対象物に適用することは困難である。
また、放射線透過試験のような複雑な走査を用いないものであっても、透過信号は放射線の照射方向(以下、深さ方向)に沿って積分された信号であるため、対象物に生じる欠陥位置を三次元的に決定することは困難である。
【0004】
このような課題に対応する方法として、例えば、特許文献1がある。
特許文献1の[要約]には、「[課題]本発明によれば、γ線発生装置-γ線測定器-測定対象物の順に設置して、測定対象物の3次元物質密度分布が測定可能な反射型断層撮影装置を提供する。[解決手段]測定対象物5の方向に第1のγ線4を出射し、測定対象物5の反対側に第2のγ線3を出射するγ線発生源2と、γ線発生源2から出射した第1のγ線4が透過するとともに測定対象物5において散乱角度θで散乱した散乱γ線7に関する情報を測定する第1の測定部6と、γ線発生源2から出射した第2のγ線3に関する情報を測定する第2の測定部1と、第1の測定部6が測定した物理量と第2の測定部1が測定した物理量とに基づき測定対象物5の物質密度分布を算出する物質密度分布算出部とを備えることを特徴とする。」と記載されおり、反射型断層撮影装置の技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-180816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の特許文献1に記載の反射型断層撮影装置では、片側アクセスによる対象物の内部三次元可視化を可能としている。
しかしながら、前記の方法で可視化をする場合、ガンマ線の照射方向を線源サイズ以下の精度では特定できないため、取得する可視化画像の分解能も、線源サイズ程度が限界である。したがって、使用する線源より小さいサイズの欠陥は検知が難しいという課題(問題)がある。
なお、コリメータ等を使用して線源の有効体積を小さくすれば分解能を向上できるが、一度に照射できる範囲が限定されるため、対象物全体を測定するには装置の走査が必要となって、測定時間が長くなるという課題(問題)がある。
【0007】
本発明は、前記した課題に鑑みて創案されたものであって、片側アクセスの放射線散乱計測において、線源サイズや形状の影響を受けることなく、対象物内部を線源サイズより小さい分解能で三次元可視化することが可能な放射線計測装置および方法を提供することを課題(目的)とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明を以下のように構成した。
すなわち、本発明の放射線計測装置は、被検体となる対象物の内部状態を分析する放射線計測装置であって、放射方向が互いに反対方向で同時に発生する一対の第一ガンマ線と第二ガンマ線とを放出する対消滅ガンマ線源と、前記対消滅ガンマ線源との相対座標が既知であり、前記第一ガンマ線が被検体となる対象物と反応をして発生する散乱ガンマ線を検出する第一の検出器と、前記第二ガンマ線を検出し、該第二ガンマ線の照射方向を特定する第二の検出器と、前記第一の検出器および前記第二の検出器で同時に検出した信号を抽出する信号処理装置と、前記散乱ガンマ線のエネルギー分析を行うエネルギー分析装置と、前記散乱ガンマ線のエネルギー分析値から算出した前記散乱ガンマ線の散乱角と、前記第二の検出器で取得した前記第二ガンマ線の照射方向の情報とによって、前記第一ガンマ線の前記被検体の内部における散乱位置を限定し、前記散乱ガンマ線の測定の計数と合わせて、前記被検体となる対象物の内部の三次元像を演算して再構成する演算装置と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、その他の手段は、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、片側アクセスの放射線散乱計測において、線源サイズや形状の影響を受けることなく、対象物内部を線源サイズより小さい分解能で三次元可視化することが可能な放射線計測装置および方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係る放射線計測装置の構成例と、被検体Tとの関係の一例を示す図である。
図2】本発明の放射線計測方法を説明するための概念図であり、散乱ガンマ線GR3の散乱位置の一例を示す図である。
図3A】本発明の放射線計測方法を説明するための概念図であり、散乱ガンマ線GR3の散乱角θが変化した場合の状況の一例を示す図である。
図3B】本発明の放射線計測方法を説明するための概念図であり、散乱ガンマ線GR3の散乱角θが変化した場合のエネルギースペクトルの例を示す図である。
図4】放射線計測装置における第二の検出器の異なる検出素子を選択して、複数の積算データを取得する方法の一例を示す図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る放射線計測装置の構成例と、被検体Tとの関係の一例を示す図である。
図6】最終的に取得した被検体Tの内部像の出力例と、放射線計測の出力形式の例を示す図である。
図7】本実施形態における放射線計測装置の内部可視化手順のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下においては「実施形態」と表記する)を、適宜、図面を参照して説明する。
ただし、本発明は以下の実施形態・変形例に限らず、例えば複数の実施形態・変形例を組み合わせたり、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で任意に変形したりできる。
また、本明細書において、同じ部材には同じ符号を付し、重複する説明は省略する。図示の内容は、図示の都合上、本発明の趣旨を損なわない範囲で実際の構成から変更することがある。
【0013】
≪第1実施形態≫
本発明の第1実施形態に係る放射線計測装置10の構成について、図1図2図3A図3Bを参照して説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る放射線計測装置10の構成例と、被検体Tとの関係の一例を示す図である。
なお、以下の説明は、主として放射線計測装置についての説明であるが、放射線計測装置の放射線計測方法の説明も兼ねるものとする。
【0014】
図1において、放射線計測装置10は、第一の検出器D1、第二の検出器D2、対消滅ガンマ線源(線源)S、信号処理装置102、エネルギー分析装置103、演算装置(再構成演算装置)104、表示装置105を備えて構成される。
また、放射線計測装置10は、被検体Tと対向した位置に配置される。
なお、第一の検出器D1は、放射線検出器であり、ガンマ線検出器(散乱ガンマ線検出器)である。
また、第二の検出器D2は、放射線検出器であり、ガンマ線検出器である。
【0015】
対消滅ガンマ線源Sは、放射性同位体を有しており、陽電子放出核種を備えている。例えば、陽電子放出核種であるNa-22、F-18、68-Ge/68-Gaなどの放射性同位体を備えている。
対消滅ガンマ線源Sは、陽電子放出核種を備えているため、陽電子を放出する。
放出された陽電子は、即、近傍にある電子と反応して、消滅し、互いに方向が180°異なり、運動量(エネルギー)が同じ、一対のガンマ線が発生する。
つまり、対消滅ガンマ線源Sは、運動量(エネルギー)が同じ、一対のガンマ線GR1(第一ガンマ線)とガンマ線GR2(第二ガンマ線)を、同時かつ互いに反対方向に放出する。
図1においては、対消滅ガンマ線源Sから反対方向にガンマ線GR1(第一ガンマ線)とガンマ線GR2(第二ガンマ線)とが、同時に、互いに180°反対方向に放出されている様子が示されている。
【0016】
なお、図1において、対消滅ガンマ線源Sから発生したガンマ線GR1とガンマ線GR2において、ガンマ線GR1が被検体Tに到達し、ガンマ線GR2が第二の検出器D2の所定の検出器(検出素子D2A)に到達する範囲を、斑点状の領域1001として示している。
実際には、対消滅ガンマ線源Sからは、様々な方向にガンマ線が放出されるが、図1における斑点状で示した領域1001以外の方向に進むガンマ線は、第一の検出器D1や第二の検出器D2における検出素子D2Aに検出される対象外となるので、被検体T(対象物)の内部構造を探索することには役にたたない。そのため、以下においては、領域1001に図示される範囲のガンマ線GR1、ガンマ線GR2に限定して説明する。
【0017】
また、対消滅ガンマ線源Sは、図1において、紙面視で長方形(線状、面状)の形状をしており、様々な方向(所定の方向)にガンマ線を発生するガンマ線源となっている。
なお、対消滅ガンマ線源Sを「紙面視で長方形(線状、面状)の形状」と表記したが、近くで見れば、「長方形」であり、遠くで見れば「線状」である。また、厚みを考慮すれば、「直方体」とも表記できる。
なお、対消滅ガンマ線源Sを紙面視で長方形(線状、面状、直方体)と表記したように、対消滅ガンマ線源Sから放出されるガンマ線(GR1,GR2)の線源サイズ(対消滅ガンマ線源S)が従来のガンマ線の線源サイズよりも大きい形状となっている。
【0018】
対消滅ガンマ線源Sは、この大きな形状によって、より多くの対のガンマ線を発生することができる。
また、対消滅ガンマ線源Sと第二の検出器D2との相対位置が既知であるとする。
また、図1において、第二の検出器D2は、複数の検出素子を備えており、複数の検出素子でガンマ線を検出する。検出素子D2Aは、複数の検出素子のなかの一つである。
【0019】
図1において、例えば、対消滅ガンマ線源SのP点で、一対のガンマ線GR1とガンマ線GR2が発生したとする。ガンマ線GR2は、第二の検出器D2の選択された、もしくは着目(注目)された検出素子D2Aで検出される。
また、ガンマ線GR1は、被検体Tに照射され、被検体Tの中の例えばQ点における電子と散乱する反応をして、エネルギーを失い(コンプトン散乱)、散乱ガンマ線GR3を放出する。
【0020】
なお、被検体Tとしての対象物は、コンクリートや金属などのインフラ構造物であり、内部には割れや剥離、減肉などの欠陥101が生じていることがある。
被検体Tの内部の割れや、剥離、減肉などの欠陥101においては、電子密度が異なることがあり、散乱ガンマ線GR3の発生に影響を与えることがある。
散乱ガンマ線GR3の発生の仕方は、ガンマ線GR1が被検体TのQ点における電子との散乱状況によるので、様々な方向とエネルギーを有する可能性があるが、図1においては、第一の検出器D1の方向に散乱した場合の状況を示している。
【0021】
第一の検出器D1は、エネルギー分解能を有するガンマ線検出器である。ガンマ線検出器としての第一の検出器D1は、Ge半導体、CdTe半導体、CdZnTe半導体、Si半導体、Perovskite構造半導体、LaBrシンチレータ、CsBrシンチレータ、LYSOシンチレータ、LSOシンチレータ、GAGGシンチレータ、CsIシンチレータ、NaIシンチレータ、BGOシンチレータ、GSOシンチレータ、GPSシンチレータ、La-GPSシンチレータ、LuAGシンチレータ、およびSrIシンチレータ等を用いることができる。
【0022】
前記したように、第一の検出器D1は、散乱ガンマ線GR3を検出する。また、第二の検出器D2の検出素子D2Aは、ガンマ線GR2を検出する。
この散乱ガンマ線GR3とガンマ線GR2は、対消滅ガンマ線源Sのガンマ線GR1に関連している。すなわち、ガンマ線GR2は、ガンマ線GR1と同時に反対方向に放出された一対のガンマ線であり、散乱ガンマ線GR3は、ガンマ線GR1によって生成されている。
対消滅ガンマ線源Sから、第二の検出器D2の検出素子D2Aまでの距離と、第一の検出器D1までの距離とは、ガンマ線の軌跡の距離において異なるが、ガンマ線は光速で伝達するので、第一の検出器D1と第二の検出器D2の検出時間に換算するとほぼ同時刻の現象であり、同時の検出と見なせる。
【0023】
なお、図1に示すように、第一の検出器D1は、被検体Tとしての対象物のガンマ線GR1を入力する表面の位置に対して、対消滅ガンマ線源Sと同じ側(同一の側)に位置する。また、第一の検出器D1は、対消滅ガンマ線源Sとの相対的な位置関係が調整可能である。また、調整する入力手段を備えている。
また、第二の検出器D2は、対消滅ガンマ線源Sとの相対的な位置関係が調整可能である。また、第二の検出器D2における複数の検出素子(例えば検出素子D2A)の検出器位置を指定することが可能であり、指定する入力手段を備えている。
【0024】
図1において、信号処理装置102は、第一の検出器D1の検出信号と第二の検出器D2の検出信号とを入力している。
信号処理装置102は、第二の検出器D2の検出素子D2Aの検出信号と、第一の検出器D1の検出信号とにおいて、同時に検出した信号を抽出して、信号処理を行う。
【0025】
エネルギー分析装置103は、信号処理装置102の出力信号を入力して、散乱ガンマ線GR3のエネルギー分析を行う。
【0026】
演算装置(再構成演算装置)104は、エネルギー分析装置103の出力信号を入力して、ガンマ線(散乱ガンマ線GR3)のエネルギーから散乱角を演算し、第二の検出器D2(検出素子D2A)で取得したガンマ線照射方向および計数から、対象物(被検体T)の内部像を演算により再構成する。なお、詳細は後記する。
【0027】
表示装置105は、演算装置104の出力信号を入力して、演算装置104で算出した内部可視化像を表示する。表示方法については、例えば、ディスプレイに三次元表示させる。また、メモリあるいはハードディスクといったコンピュータの記録装置にデータとして記録するようにしてもよい。
【0028】
図1において、対消滅ガンマ線源S、第一の検出器D1、第二の検出器D2は、単一の筐体内に格納される等、一揃いの測定部として扱われることが望ましい。
その理由は、対象物(被検体T)の外部および内部構造の画像化のために、対消滅ガンマ線源Sと第一の検出器D1間、および対消滅ガンマ線源Sと第二の検出器D2間の相対座標値を取得する必要があるためである。
さらに、座標値の取得精度は、内部画像化の精度に影響する。そのため、対消滅ガンマ線源S、第一の検出器D1、第二の検出器D2の位置は、筐体内において精密に調整可能とするように構成することが望ましい。
【0029】
<ガンマ線GR1と散乱ガンマ線GR3について>
ガンマ線GR1が被検体Tの中でコンプトン散乱する確率は、被検体Tの中の電子密度に比例することが知られている(クライン-仁科の式)。
したがって、第一の検出器D1で検出した散乱ガンマ線GR3の計数は、散乱位置における被検体Tの構成物質の密度(電子密度に相関)の相対値を反映した値となる。
具体的には、被検体T(対象物)の中の空隙部分(例えば図1の欠陥101)で散乱した散乱ガンマ線GR3の計数は小さく、被検体の構成物質中で散乱した散乱ガンマ線GR3の計数は大きい傾向となる。
ただし、ガンマ線GR1は、対消滅ガンマ線源Sからあらゆる方向に放出されているため、この時点では、散乱ガンマ線GR3の散乱位置は特定できない。
【0030】
<散乱ガンマ線GR3の散乱位置を特定する原理>
次に、散乱ガンマ線GR3の散乱位置を特定する原理について説明する。
ガンマ線GR2は、対消滅ガンマ線源Sにおいて、ガンマ線GR1と同時かつ180°反対方向に放出され、第二の検出器D2(検出素子D2A)で検出される。
第二の検出器D2は、ガンマ線(GR2)の検出位置を特定できる構造およびシステムを有するガンマ線検出器であり、例えば、検出素子をアレイ状に並べた構造を用いることができる。
以下では、この構造を想定して説明する。なお、前記したように、第二の検出器D2と対消滅ガンマ線源Sの間の距離は、内部可視化時の分解能や、撮像可能範囲に影響するため、可動としておくことが望ましい。
【0031】
ガンマ線GR1の照射範囲は、次のように特定される。第二の検出器D2において、ある素子位置でガンマ線GR2が検出されたとき、ガンマ線GR2および対となるガンマ線GR1の照射範囲は、図1に斑点状で示した領域1001に限定できる。
この領域1001は、第二の検出器D2における選択(注目)された検出素子D2Aの位置と、対消滅ガンマ線源Sの両端部とを通る二本の直線で挟まれた範囲である。
【0032】
ガンマ線GR2と、これと対となるガンマ線GR1が被検体Tの中で散乱して生じた散乱ガンマ線GR3とは、ほぼ同時に、それぞれ第二の検出器D2および第一の検出器D1に到達する。
したがって、第一の検出器D1と第二の検出器D2で同時に検出した信号を、信号処理装置102の信号処理によって抽出する(同時計数)ことで、散乱ガンマ線GR3の散乱位置(Q点)を、領域1001に特定することができる。
信号処理装置102における信号処理としては、例えば、第一の検出器D1、あるいは第二の検出器D2(検出素子D2A)のいずれかでガンマ線を検出した時刻を基準として、任意に設定した時間幅Δtの間に、もう一方の検出器でガンマ線を検出した場合に、これらを同時事象と判定する方法がある。
さらに、散乱ガンマ線GR3の散乱角を算出することで、散乱位置をさらに特定する。
【0033】
エネルギー分析装置103では、第一の検出器D1で検出した散乱ガンマ線GR3のエネルギー分析を行う。
また、第二の検出器D2で検出したガンマ線GR2に対するエネルギー分析は必須ではないが、エネルギー分析装置103でエネルギー分析をすることによって、所定のエネルギー帯の検出信号のみを同時計数処理に用いる等の処理を実施することが可能となる。
この分析によって、ノイズ事象の低減が期待できるため、ガンマ線GR2に対するエネルギー分析は必要に応じて実施すればよい。
また、前記の事情から、信号処理装置102とエネルギー分析装置103の処理をする順序は、必ずしも図1に示した通りでなくてよい。
【0034】
<散乱ガンマ線GR3の散乱角θについて>
エネルギー分析装置103で取得した、散乱ガンマ線GR3のエネルギー値は、以下の式(1)に示したコンプトン散乱式により散乱角θに換算する。
【0035】
【数1】
【0036】
なお、前記の式(1)において、Eは約511eV、Einはガンマ線GR1のエネルギー値であり、既知である。
また、散乱角θの定義は、次に説明する図2に示したものとする。すなわち、ガンマ線GR1と散乱ガンマ線GR3それぞれの進行方向がなす角を180°から引いた値を散乱角θとする。
【0037】
<散乱ガンマ線GR3の散乱位置>
図2は、本発明の放射線計測方法を説明するための概念図であり、散乱ガンマ線GR3の散乱位置の一例を示す図である。
あるエネルギーEで検出された散乱ガンマ線GR3の散乱位置は、前記の式(1)より散乱角θが求まることから、図2に太線部322で示したような円弧上に限定される。なお、太線部322は、第二の検出器D2の選択(注目)された検出素子位置(検出素子D2A)と第一の検出器D1の配置位置とを通る円周332が、被検体Tと重なる範囲である。
太線部322で示す円弧状の散乱点集合は、第二の検出器D2の検出素子D2Aの素子位置と、第一の検出器D1の配置位置とを通る円周上(円周332)にあり、円周角の定理より、散乱角θが等しい。
この散乱角θおよび第二の検出器D2の検出素子D2Aと第一の検出器D1の相対距離で特徴づけられる円弧上(太線部322)で散乱した複数の散乱ガンマ線GR3は、第一の検出器D1に同じエネルギーで入射する。
【0038】
<散乱ガンマ線GR3の散乱角θが変化した場合>
次に、図3A図3Bを参照して、散乱ガンマ線GR3の散乱角θが変化した場合の状況と、そのときのエネルギースペクトル(積算スペクトル)について説明する。
図3Aは、本発明の放射線計測方法を説明するための概念図であり、散乱ガンマ線GR3の散乱角θが変化した場合の状況の一例を示す図である。
図3Bは、本発明の放射線計測方法を説明するための概念図であり、散乱ガンマ線GR3の散乱角θが変化した場合のエネルギースペクトル(積算スペクトル)の例を示す図である。
【0039】
図3Aにおいて、第二の検出器D2の検出素子D2Aと第一の検出器D1の配置位置とを通る円周332は、図2で示した円周332であり、図3Aにおける太線部322は、図2で示した太線部322に相当する。
図2における第二の検出器D2の検出素子D2Aと第一の検出器D1の配置位置とを通る円周332において、第二の検出器D2の検出素子D2Aと円周332の一点と第一の検出器D1の配置位置とで形成される円周角(散乱角θに相当)は、図3Aにおいて、対象物(被検体T)の反応する箇所によって変化する。
すなわち、図3Aにおける太線部322における円周角は、図2における太線部322における円周角と等しいが、図3Aにおける太線部320,321,323,324の円周角は、太線部322における円周角と異なる値となる。
【0040】
図3Aにおいて、円周330~円周334は、円周角(散乱角θに相当)が不連続に変化した場合の円弧の軌跡を示している。
ただし、対消滅ガンマ線源Sから発生したガンマ線GR1と対象物(被検体T)が反応する範囲に限定されるので、円周330~円周334における太線部320~太線部324の範囲に限定される。円周角が不連続に変化した場合であるので、太線部320~太線部324に限定して表記している。
【0041】
なお、表記上の都合により、円周角(散乱角θに相当)が不連続に変化した場合の例を示しているが、実際には、円周角は連続的に変化する。
また、対象物(被検体T)における太線部320~太線部324で示した箇所において、ガンマ線GR1が衝突し、散乱ガンマ線GR3が発生する。そして、散乱ガンマ線GR3は、第一の検出器D1で検出される。
また、ガンマ線GR2は、第二の検出器D2の検出素子D2Aで検出される。
【0042】
なお、図3Aにおいて、「A」と表記した範囲は太線部320と太線部321の範囲に対応している。「B」と表記した範囲は太線部321と太線部322の範囲に対応している。「C」と表記した範囲は太線部322と太線部323の範囲に対応している。「D」と表記した範囲は太線部323と太線部324の範囲に対応している。
【0043】
図3Bは、第一の検出器D1で検出される散乱ガンマ線GR3のエネルギースペクトル(積算スペクトル)を示す図である。
図3Bにおいて、横軸は、散乱ガンマ線GR3のエネルギーであり、縦軸は、検出される散乱ガンマ線GR3のカウントされる計数である。
図3Bにおいて「A」~「D」と表記した範囲は、図3Aにおける「A」~「D」と表記した範囲に対応している。
図3Bにおいて、「A」と表記した領域は、図3Aにおける「A」に対応しており、図3Aにおける領域Aは、散乱角θが相対的に小さく、第一の検出器D1から距離が遠く、かつ領域の範囲も狭い。
そのため、図3Bにおいて「A」と表記した領域は、エネルギーが相対的に小さく、計数も小さい。
【0044】
また、図3Bにおいて、「C」と表記した領域は、図3Aにおける「C」に対応しており、図3Aにおける領域Cは、散乱角θが相対的に大きく、第一の検出器D1から距離が「A」に比較して近く、かつ領域の範囲も広い。そのため、図3Bにおいて、「A」に比較して、「C」と表記した領域は、エネルギーは大きく、計数も大きい。
【0045】
また、図3Bにおいて、「D」を横軸において越した領域は、図3Aにおける「D」を越して、太線部324を越した範囲に対応している。そのため、第一の検出器D1から距離が近く散乱角θが大きいが、領域の範囲が狭い。そのため、図3Bにおいては、「D」を横軸において越した領域は、エネルギーが大きいが、カウントされる計数は少ない。
【0046】
以上から、図3Aに示したように、被検体Tを前記の円弧で区切った小領域で生じた散乱ガンマ線GR3のエネルギーと計数は、図3Bに示すエネルギースペクトル(積算スペクトル)106となる。
【0047】
演算装置(再構成演算装置)104では、前記のようにして取得したエネルギースペクトル(積算スペクトル)のデータから、元の三次元画像を演算により再構成する。
再構成演算には、被検体Tの異なる部分や、被検体Tを異なる角度などで撮像した積算データが、複数必要となる。
【0048】
<複数の積算データを取得する方法>
図4は、放射線計測装置11における第二の検出器D2の異なる検出素子を選択して、複数の積算データを取得する方法の一例を示す図である。
図4を参照して、複数の積算データを取得する方法について説明する。図4において、図1と異なるのは、第二の検出器D2の選択(注目)された素子位置(検出素子D2B)が移動していることである。
【0049】
図4において、第二の検出器D2の検出素子を選択(配置)した位置が検出素子D2Aと異なる位置の検出素子D2Bを選択(注目)している。この選択(配置)をしたことによって、検出素子D2Bと第一の検出器D1の配置位置と被検体Tの所定の散乱箇所によって形成される散乱角θの円弧は、円周351における太線部341のようになる。
散乱角θの円弧の太線部341となることによって、図4においては、図2図3Aにおける太線部320~太線部324とは異なった被検体Tの散乱箇所の位置が測定の対象となる。
すなわち、図4に示す、第二の検出器D2の検出器の位置を検出素子D2Bとしたことにより、図2図3Aに示した検出素子D2Aの検出では得られなかった新たな被検体Tの散乱情報が得られることを意味している。
【0050】
前記したように、図4においては、検出素子D2Bをガンマ線GR2の検出器として用いている。この検出素子D2Bによって、図1図2図3Aで示した検出素子D2Aとは、異なった被検体Tの散乱箇所の情報が得られる。
したがって、図4においては、第二の検出器D2の複数の検出器における検出素子D2B(図4)、検出素子D2A(図1)以外の他の検出素子(検出器)をガンマ線GR2の検出に用いれば、さらに異なった被検体Tの散乱箇所の情報が得られる。
また、図4において、第二の検出器D2の複数の検出素子を紙面の上方から下方に順に走査して、さらに異なる被検体Tの散乱箇所の情報を取得することが可能であって、多数のデータの取得と、画像の精密化において、有効な方法である。
【0051】
<第1実施形態の補足>
図1図2図3A図4においては、第1実施形態の放射線計測装置10における対消滅ガンマ線源S、第一の検出器D1、第二の検出器D2、ガンマ線GR1と散乱ガンマ線GR3との円周角(散乱角θ)については、簡単化のため、紙面視上において、平面的な説明をした。
しかし、対消滅ガンマ線源S、第一の検出器D1、第二の検出器D2を立体的に構成する方法や、放射線計測装置10を被検体Tとしての対象物に対して、走査するように平行移動をして測定する方法によって、被検体Tとしての対象物の内部を三次元的に探査して、三次元的に可視化することが可能である。
【0052】
<第1実施形態の効果>
片側アクセスの放射線散乱計測において、線源サイズや形状の影響を受けることなく、対象物内部を線源サイズより小さい分解能で三次元可視化することが可能な放射線計測装置および方法を提供することができる。
また、対消滅ガンマ線源S(線源)を放射線計測装置としての分解能よりも大きく設定することが可能であるので、一度に広範囲を測定することができ、装置を走査する手間が省けるため、測定時間が短縮できる効果がある。
【0053】
また、射線計測装置11においては、第二の検出器D2の複数の検出素子を用いることによって、さらに異なった被検体Tの散乱箇所の情報が得られる。
そのため、測定データ数が増加して、再構成画像の精度を向上する効果がある。
【0054】
≪第2実施形態≫
本発明の第2実施形態に係る放射線計測装置12の構成について、図5を参照して説明する。
図5は、本発明の第2実施形態に係る放射線計測装置12の構成例と、被検体Tとの関係の一例を示す図である。なお、以下の説明は、主として放射線計測装置についての説明であるが、放射線計測装置の放射線計測方法の説明も兼ねるものとする。
【0055】
図5において、図2図3A図4と異なるのは、第一の検出器D1Bを新たに設けていることである。
すなわち、第一の検出器として、異なる位置に配置された、第一の検出器D1と、第一の検出器D1Bの2箇所の構成としたことである。
【0056】
前記したように、第一の検出器D1では、図5において、円周371における太線部361を対象にデータを取得することを説明した。
図5においては、新たに設けた第一の検出器D1Bにおいて、円周370における太線部360を対象にデータを取得することができる。
この新たに設けた第一の検出器D1Bによって、さらに異なる被検体Tの散乱箇所の情報を取得することが可能であり、データ数を増加して精度を向上する有効な方法である。
【0057】
<第2実施形態の効果>
本発明の第2実施形態に係る放射線計測装置12においては、第一の検出器を2台の構成としたことによって、さらに異なる被検体Tの散乱箇所の情報を取得することが可能となり、データ数が増加して、再構成画像の精度を向上する効果がある。
【0058】
<複数の撮像データから元の三次元画像を再構成演算>
演算装置(再構成演算装置)104(図1図5)における複数の撮像データから元の三次元画像を再構成する再構成演算には、前記したように、被検体Tの異なる部分や、被検体Tを異なる角度で撮像する等した積算データが複数必要となる。
【0059】
複数の撮像データから三次元画像を再構成演算する手法としては、逆投影法や逐次近似法等の既存の手法を適用することができる。これらの手法は、X線CT(Computed Tomography)、陽電子放射断層撮影(PET:Positron Emission Tomography、単一光子放射断層撮影(SPECT: Single Photon Emission Computed Tomography)、磁気共鳴イメージング(MRI: Magnetic Resonance Imaging)等で実施されている。
また、再構成の演算の過程で、被検体T中におけるガンマ線強度の減衰や、被検体や検出器に到達するまでのガンマ線強度の減衰、ドップラー広がり等の効果を考慮に入れることで、より精度の高い画像化が可能となる。
【0060】
<被検体Tの内部像の出力例>
次に、被検体Tの内部像の出力例について説明する。
図6は、最終的に取得した被検体Tの内部像の出力例を示す図である。
図6において、表示装置105を用いて、被検体Tの深さ方向の画像例を被検体の断層像(107A,107B,107C,107D)として示している。
また、被検体の断層像107Bにおいては、被検体中の欠陥像108(図1の欠陥101に対応)として断面を示している。なお、被検体の断層像107Cにおいても、深さの異なる欠陥像の一部が表記されている。
【0061】
図6において、例えば、深さを数値で指定し、その深さにおける被検体Tの二次元断面像をコントラスト図によって画面上に表示する方法がある。
また、視点を変更可能にし、任意の二次元断面像を表示する方法もある。
【0062】
以上のようにして、被検体Tの内部の三次元可視化が可能となり、被検体T内の欠陥の存在と、その位置を計測することができる。このようにして、片側アクセスの放射線散乱計測において、線源サイズによる分解能低下を引き起こすことなく、対象物内部を三次元的に可視化することが可能となる。
【0063】
<放射線計測装置の内部可視化手順のフローチャート>
次に、図7のフローチャートを用いて、本実施例における放射線計測装置の内部可視化手順について説明する。
図7は、本実施形態における放射線計測装置の内部可視化手順のフローチャートを示す図である。
【0064】
《ステップS11》
フローチャートを「開始」して、ステップS11では、対消滅ガンマ線源(放射線源)Sと第一の検出器D1(検出器)および第二の検出器D2(検出器)を測定ポイントに配置する。なお、「ステップ」とは「工程」を意味する。
そして、ステップS12に進む。
【0065】
《ステップS12》
ステップS12では、前記の放射線源(対消滅ガンマ線源S)と二つの検出器(第一の検出器D1、第二の検出器D2)の位置を記録する。
そして、ステップS13aとステップS13bに進む。
【0066】
《ステップS13a、ステップS13b》
ステップS13aとステップS13bは、概ね同時に実施される。
ステップS13aでは、第一の検出器D1で対象物(被検体T)からの散乱ガンマ線GR3を検出する。
ステップS13bでは、第二の検出器D2で、第一の検出器D1と対になるガンマ線GR2を検出する。
ステップS13aとステップS13bの後で、ステップS14に進む。
【0067】
《ステップS14》
ステップS14では、信号処理によって、第一の検出器D1および第二の検出器D2で同時に検出された信号を抽出する。
なお、このステップS14は、ステップS13aおよびステップS13bと同時並行で実行してもよい。
また、このステップS14は、一定時間、ステップS13aおよびステップS13bを実行した後に実行し、再度、ステップS13aおよびステップS13bの実行に戻る、つまり処理を繰り返す形としてもよい。
ステップS14の後にステップS15に進む。
【0068】
《ステップS15》
ステップS15では、散乱ガンマ線GR3のエネルギーを分析し、コンプトン散乱式より散乱角度(散乱角)θを算出し、第二の検出器D2より取得した照射範囲の情報と共に、散乱ガンマ線GR3の散乱位置を絞り込む。
この工程によって、被検体T中のある領域内の積分値としての、散乱ガンマ線GR3のエネルギースペクトル(積算スペクトル)が取得できる。
【0069】
《ステップS16》
ステップS16では、画像再構成に必要な前記のエネルギースペクトルを作成するスペクトルデータ数が揃っているか(データ数は十分か?)を評価する。
評価の結果、十分にデータ数が揃っていない場合(No)は、ステップS11に戻る。そして、放射線源(対消滅ガンマ線源S)や第一の検出器D1、第二の検出器D2の位置を変更し、スペクトルデータを追加取得する。
また、放射線計測装置(10,11,12)自体を移動して、対象物(被検体T)との相対位置を変更する方法をとってもよい。
また、十分なスペクトルデータ数が揃っている場合(Yes)は、次のステップS17に進む。
【0070】
《ステップS17》
ステップS17において画像再構成演算を実施し、内部可視化像を取得する。
そして、ステップS18に進む。
【0071】
《ステップS18》
ステップS18において、画像再構成の演算結果を表示する。また、記録する。
そして、以上のフローを「完了」する。
【0072】
<第1実施形態~第2実施形態の総括>
以上、本発明の第1実施形態~第2実施形態で説明したようにして、被検体Tの内部の三次元可視化が可能となり、被検体T(対象物)内の欠陥の存在と、その位置を計測することができる。
また、片側アクセスの放射線散乱計測において、比較的に大きな形状の対消滅ガンマ線源を線源として用いることによって、線源サイズによる分解能低下を引き起こすことなく、被検体Tである対象物内部を三次元的に高分解能で可視化することが可能となる。
また、本発明の第1実施形態~第2実施形態による方法では、ガンマ線の検出タイミングを測定しているため、ノイズ散乱線の低減が期待できる。
また、ノイズ散乱線の低減が期待できるので、線源や検出器周囲の遮蔽量を減らすことができる。
そのため、放射線計測装置の軽量化および可搬性が向上する。また、例えば、原子力施設内等の高放射線環境下での測定が可能となる。
【0073】
≪その他の実施形態≫
なお、本発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものでなく、さらに様々な変形例が含まれる。例えば、前記の実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために、詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成の一部で置き換えることが可能であり、さらに、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成の一部または全部を追加・削除・置換をすることも可能である。
以下に、その他の実施形態や変形例について、さらに説明する。
【0074】
《対消滅ガンマ線源Sの形状》
図1においては、対消滅ガンマ線源Sは、長方形(線状、面状、直方体)の形状をしており、長方形(線状、面状、直方体)の所定の方向において、ガンマ線源となっていると説明した。このガンマ線源の形状については、様々な特徴がある形状として表記できる。
例えば、次のように表記した特徴のいずれかを有している。
<1> ガンマ線源は、任意の一次元方向に長く、他方向に短い一次元的形状である。
<2> ガンマ線源は、任意の二次元面方向に長く、他方向に短い二次元的形状である。
<3> ガンマ線源は、一方向に長く、他方向に短い線状形状である。
<4> ガンマ線源は、一方向に短く、他方向に長い面状形状である。
【0075】
あるいは、また次のように表記した特徴のいずれかを有している。
<a> ガンマ線源は、所定の一方向に長く、他方向に短い、一次元的な線状形状である。
<b> ガンマ線源は、所定の二次元面方向に長く、他方向に短い、二次元的な面状形状である。
<c> ガンマ線源は、所定の二次元方向に長くかつ広く、他方向に短い、三次元的な直方体形状である。
【0076】
また、対消滅ガンマ線源Sの形状については、前記のように、線状(長方形、直方体)の例を図示、説明したが、その形状は線状や面状等、点線源とみなせないものでよい。
例えば、曲線状等の任意の一次元形状、面状、曲面を有する等の任意の二次元形状等でもよい。また、複数の部分に分割されていてもよい。
【0077】
《対消滅ガンマ線源Sの周囲のガンマ線遮蔽機能》
対消滅ガンマ線源Sの周囲には、鉛やタングステンなどのガンマ線遮蔽機能を有する構造体を配置してもよい。
このガンマ線遮蔽機能を有する構造体を配置することにより、ガンマ線の照射範囲が限定される。そのため、ガンマ線が周辺構造に当たって生じるノイズ散乱線の量を低減でき、内部可視化の精度が向上する。
【0078】
また、対消滅ガンマ線源Sにおいて、複数の対消滅が偶発的同時(所定の時間幅Δt内)に起きる可能性もありうる。この場合には、一方の対消滅によって発生するガンマ線GR1が検体Tで散乱ガンマ線GR3を発生し、この散乱ガンマ線GR3が第一の検出器D1に到達すると共に、他方の対消滅によって発生するガンマ線GR1が直接、第一の検出器D1に到達する可能性もある。
この他方の対消滅によって発生するガンマ線GR1が直接、第一の検出器D1に到達するものについては、エネルギーも異なり、第一の検出器D1で検出するガンマ線の波高値で直達ガンマ線か散乱ガンマ線を判別できるので、このような直達ガンマ線を取り除くことはできる。しかしながらノイズの一因とはなりうる。
そのため、対消滅ガンマ線源Sと第一の検出器D1との間に、ガンマ線遮蔽機能を有する構造体を配置することも有効である。
【0079】
《第一の検出器D1を3個以上とする方法》
図5に示した第3実施形態においては、第一の検出器(D1,D1B)を2台とした場合を示したが、3台以上で構成してもよい。
第一検出器が異なる位置で、台数が多いほど、異なる被検体Tの散乱箇所の情報が取得できて、より精度の高い被検体Tの情報が得られる。
【0080】
《第一の検出器D1における検出器の位置指定について》
図1においては、第二の検出器D2は、複数の検出素子(例えば検出素子D2A:図1)を備えており、所定の入力手段によって、複数の検出素子の中から検出器としての検出素子位置を指定することが可能であることを説明した。
しかし、この複数の検出素子の中から検出器としての検出素子位置を指定する機能構成は、第二の検出器D2に限定されない。
図1においては、図示していないが、第一の検出器D1も複数の検出器または検出素子を有して、所定の入力手段によって、複数の検出器(検出素子)の中から検出器位置(検出素子位置)を指定することも可能な構成を備えることが可能である。
【0081】
例えば、第二の検出器D2と同様に、ガンマ線の検出位置を特定できる構造およびシステムを有するガンマ線検出器で構成してもよい。
例えば、第二の検出器D2と同様に、複数の検出素子(検出器)をアレイ状に並べた構造を用いることができる。
そして、複数の検出素子(検出器)の検出器位置(検出素子位置)を指定することが可能である入力手段を備える構成とする。
【0082】
《第一の検出器D1、第一の検出器D2を移動する方法》
図2に示した第1実施形態においては、第一の検出器D1、および第二の検出器D2を所定の位置に配置していたが、第一の検出器D1および第二の検出器D2を可動にして、対消滅ガンマ線源Sとの相対位置を可動とする方法等がある。
また、第一の検出器D1、第二の検出器D2、対消滅ガンマ線源Sを備える放射線計測装置を被検体Tとなる対象物に対して移動する方法もある。
【0083】
《第二の検出器D2における複数の検出素子(検出器)の構成について》
図1においては、第二の検出器D2を複数の検出素子(検出器)で構成し、紙面視で縦方向に一列に並べ、それらの一つ、例えば検出素子D2Aを選択して、検出器として用いる例を示した。しかし、複数の検出素子を一列に構成することに限定されない。
例えば、複数の検出素子を縦方向と横方向に二次元のアレイ状に構成してもよい。
【0084】
《複数の方法を組み合わせる方法》
また、前記した第1実施形態、第2実施形態で説明した方法や、前記の第一の検出器D1、第二の検出器D2を可動にする方法を、組み合わせる方法もある。
【符号の説明】
【0085】
D1,D1B 第一の検出器、ガンマ線検出器(散乱ガンマ線検出器)、放射線検出器
D2 第二の検出器、ガンマ線検出器、放射線検出器
D2A,D2B 検出素子、第二の検出素子
GR1 ガンマ線、第一ガンマ線
GR2 ガンマ線、第二ガンマ線
GR3 散乱ガンマ線
S 対消滅ガンマ線源、放射線源、線源
T 被検体、対象物
10,11,12 放射線計測装置
101 欠陥
102 信号処理装置
103 エネルギー分析装置
104 演算装置、再構成演算装置
105 表示装置
106 エネルギースペクトル(積算スペクトル)
107A,107B,107C,107D 被検体の断層像
108 被検体中の欠陥像
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7