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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180691
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】流路開閉弁及び流路開閉弁装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/20 20060101AFI20221130BHJP
【FI】
F16K7/20
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087305
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】521225513
【氏名又は名称】株式会社イーピーテック
(74)【代理人】
【識別番号】100176164
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 州志
(72)【発明者】
【氏名】和田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】海野 春己
(57)【要約】
【課題】液体又は固形物を含む液体を通過させる配管内を流れる流路の開閉を瞬時に行い、且つ、液体の漏洩を確実に防止することができる流路開閉弁及び該流路開閉弁を用いた流路開閉弁装置を提供する。
【解決手段】本発明の流路開閉弁1は、アマチュア3と、アマチュアを駆動させるための駆動装置2と、アマチュア3の一端に固着され、流路開閉弁の弁部材4として使用される弾性体と、を有し、液体又は固形物を含む液体を通過させる配管5の所望の位置で、アマチュアと弾性体とを液体の流路に対して垂直する方向又は斜めの方向に配置し、アマチュアをそれらの方向に沿って駆動させることにより、流路を閉じる場合には流路内に弾性体を充填させる操作、及び、流路を開ける場合には流路内に充填された弾性体を充填前の元の位置に戻す操作、をそれぞれ繰り返すことによって流路の開閉を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体又は固形物を含む液体を通過させる配管の所望の位置に配置し、前記液体又は固形物を含む液体の流路を開閉するために使用する流路開閉弁であって、
アマチュアと、
前記アマチュアの駆動装置と、
前記アマチュアの一端に固着され、前記流路開閉弁の弁部材として使用される弾性体と、を有し、
前記アマチュアと前記弾性体とを、前記液体又は固形物を含む液体の流路に対して直交する方向又は斜めに交叉する方向に配置し、前記アマチュアをそれらの方向に沿って駆動させることにより、
前記流路を閉じる場合には前記流路内に前記弾性体を充填させる操作、及び、
前記流路を開ける場合には前記流路内に充填された前記弾性体を充填前の元の位置に戻す操作、をそれぞれ繰り返すことによって前記流路の開閉を行うことを特徴とする流路開閉弁。
【請求項2】
前記直交する方向又は斜めに交叉する方向が、前記液体又は固形物を含む液体の流路方向に対して45~135°の角度を有する方向であることを特徴とする請求項1に記載の流路開閉弁。
【請求項3】
前記弾性体は、5~35℃の温度域で15%以下の反発弾性率を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の流路開閉弁。
【請求項4】
前記弾性体は、前記流路側に開口した1つの空孔を有する形状、内部に空洞を有する形状、及び独立した複数の空孔を有する多孔質形状の少なくとも何れかの形状を有するゴム又は樹脂エラストマであることを特徴とする請求項3に記載の流路開閉弁。
【請求項5】
前記アマチュアは、エアーシリンダーを備えるプランジャー、及び電磁式で駆動するソレノイドを備えるプランジャー、のいずれかを有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の流路開閉弁。
【請求項6】
前記アマチュアは、エアーシリンダーを備えるプランジャーを有することを特徴とする請求項5に記載の流路開閉弁。
【請求項7】
前記液体又は固形物を含む液体の流路と、請求項1~6のいずれか一項に記載の流路開閉弁とを有し、
前記液体又は固形物を含む液体の流通路壁において、前記流路開閉弁の弁部材として設けられる弾性体と当接する部分に、前記弾性体の先端部分を挿入し、固定するための未貫通の孔又は穴が形成されたことを特徴とする流路開閉弁装置。
【請求項8】
前記液体又は固形物を含む液体の吸排出用シリンダーと、
前記液体又は固形物を含む液体の流路方向に沿って、請求項1~6のいずれか一項に記載の流路開閉弁を、前記吸排出用シリンダーの上流側及び下流側にそれぞれ設けることを特徴とする流路開閉弁装置。
【請求項9】
前記液体又は固形物を含む液体の流通路壁において、前記流路開閉弁の弁部材として設けられる弾性体と当接する部分に、前記弾性体の先端部分を挿入し、固定するための未貫通の孔又は穴が形成されたことを特徴とする請求項8に記載の流路開閉弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路開閉弁及び流路開閉弁装置に関するもので、特に、液体又は固形物を含む液体を通過させる配管の所望の位置に、前記配管に対して直交する方向又は斜めに交叉する方向に配置し、それらの方向に密閉型の弾性弁を駆動することにより流路の開閉を瞬時に行い、且つ、液体の漏洩を確実に防止することができる流路開閉弁及び流路開閉弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体の流路開閉弁としては、(1)ボール弁、(2)直動式の電磁弁、(3)流路を遮蔽するように配置するゲート弁、(4)シャフトに弁体がバネ式で固定されたバタフライ方式の弁、及び(5)流路にチューブが配置され、チューブの押し潰しの解除と押し潰しによって開閉が行われるピンチバルブ、等の様々な方式のものが知られている。
【0003】
上記に挙げる流路開閉弁の中で汎用的に使用されているのが(2)直動式の電磁弁である。例えば、特許文献1には、プランジャーの周囲に駆動コイルを設け、前記プランジャーに固着した弁体によって流通路を開閉させる電磁弁が記載されている。また、移送する物質が液体ではなく、圧縮空気であるものの、電磁駆動で弁の開閉を行う流路開閉弁が特許文献2に記載されている。特許文献2に記載の流路開閉弁は、開閉すべき流路内に、該流路を開閉するリップを有する軟弾性体からなる開閉弁を設け、この開閉弁のリップを電磁駆動のアマチュアによって押圧することにより流路の開閉を行うために使用される。
【0004】
また、流路開閉弁は、液体の移送だけでなく、液体と固形物との混合物を移送するときにも流路開閉用として使用される。例えば、医薬品、化粧品、食品、染料等の分野で使用される混合体、セメント製造の混合材料、金属鉱山の浮遊選鉱排液、及び電気電子材料となる増粘剤、結着剤、電極活性剤、接着剤などの固体が溶解又は分散されるペースト状の材料等の混合物である。それ以外にも、食品の消化プロセス解明のためのin vitro胃消化シミュレーター等で食品モデル用混合物の移送の場合にも適用される(例えば、日本食品工学会誌、第20巻、第40号、PP.A-7-A-11を参照)。
【0005】
液体と固形物との混合物を移送するための配管の流路開閉弁としては、例えば、上記(3)のゲート弁が特許文献3に提案されている。このゲート弁は、流路と直交の方向に進退せしめることにより流路の開閉を行う密閉型のものである。
【0006】
また、流路開閉弁として上記(1)~(5)の方式以外にも、別方式の弁構造が特許文献4に提案されている。特許文献4の図5に記載された弁は、挿通孔内に設けられており、該挿通孔内を通して外部から液通路を開閉可能とするために使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭48-21220号公報
【特許文献2】特開昭63-190981号公報
【特許文献3】実開昭59-137463号公報
【特許文献4】特開2013-76454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
液体又は液体と固形物との混合物の移送するための配管途中に流路開閉弁を使用する場合、移送量の厳密な管理を行うためには弁開閉を瞬時に行うとともに、液体が開閉弁から漏洩するのを確実に防止する必要がある。また、液体と固形物との混合物を移送する場合には、混合物に含まれる固形物の通過性を阻害しないという観点から、流路方向の変更を伴わないで弁の設置を行うことが求められる。さらに、混合物の組成変動を避けるため、液体単独の場合と同様に、弁開閉を瞬時に行うだけでなく、混合物が開閉弁から漏洩するのを確実に防止する必要がある。
【0009】
しかしながら、上記(1)ボール弁は、弁開閉が完了するまでに数秒かかるため弁開閉を瞬時に行うことが困難である。さらに、液体と固形物との混合物を移送する場合、ボール弁を閉じた後に弁の周囲端部には固形物が残着した状態となりやすく、混合物の漏洩を避けることが難しかった。
【0010】
上記(2)直動式の電磁弁として例示した特許文献1に記載の電磁弁は、弁の瞬時開閉が可能であるものの、流入口と流出口との間に弁座を有する流通路において、前記弁座が設けられた側に位置する流入口側の開口部が狭いため、高粘度の液体又は液体と固形物との混合物を移送する場合にそれらの通過性に問題がある。加えて、この部分は密閉性を十分に確保することが難しいため、前記混合物の流れの瞬時開閉を実現することが困難であった。また、特許文献2に記載の流路開閉弁は、弁部材(弁体)内にリップが形成されている等の複雑な構造を有する。さらに、圧縮空気の開閉を目的とするために使用されるものであり、液体と固形物との混合物の流路開閉弁としてリップが形成された弁をそのまま適用することはできない。
【0011】
上記(3)のゲート式弁として例示した特許文献3に記載された弁は構造がやや複雑である。また、弁の設置を配管の両側から行うため、弁設置のときに煩雑な作業を伴うだけでなく、細配管又は狭い配管スペースの場合への適用にも技術上の制約があった。
【0012】
また、上記(4)バタフライ方式の弁及び(5)ピンチバルブ弁は、弁構造の点から瞬時開閉を行うことが難しく、加えて、移送物の漏洩を確実に防止することができない。
【0013】
さらに、特許文献4に記載の弁は、液流路が段違いになっている液封ブッシュに適用されるものであり、液通路の末端部分を塞ぐという機構によって液の通過を封止する弁構造である。そのため、液流路の途中に開閉弁を設置するときには、特許文献4に記載の弁構造をそのまま適用することはできない。
【0014】
本発明は、上記した従来の問題点に鑑みてなされたものであって、液体又は固形物を含む液体を通過させる配管内を流れる流路の開閉を瞬時に行い、且つ、液体の漏洩を確実に防止することができるだけでなく、配管途中に設置がより簡便にできる流路開閉弁及び流路開閉弁装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、液体又は固形物を含む液体の流路に対して直交する方向又は斜めに交叉する方向に配置し、弁部材(弁体)として弾性体を有する流路開閉弁をアマチュア駆動により瞬時に駆動することができ、合わせて液体又は固形物が含まれる液体の漏洩を確実に防止できる構造を有する流路開閉弁及び流路開閉弁装置により上記の課題を解決できることを見出して本発明に到った。
【0016】
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
[1]本発明は、液体又は固形物を含む液体を通過させる配管の所望の位置に配置し、前記液体又は固形物を含む液体の流路を開閉するために使用する流路開閉弁であって、アマチュアと、前記アマチュアの駆動装置と、前記アマチュアの一端に固着され、前記流路開閉弁の弁部材として使用される弾性体と、を有し、前記アマチュアと前記弾性体とを、前記液体又は固形物を含む液体の流路に対して直交する方向又は斜めに交叉する方向に配置し、前記アマチュアをそれらの方向に沿って駆動させることにより、前記流路を閉じる場合には前記流路内に前記弾性体を充填させる操作、及び、前記流路を開ける場合には前記流路内に充填された前記弾性体を充填前の元の位置に戻す操作、をそれぞれ繰り返すことによって前記流路の開閉を行うことを特徴とする流路開閉弁を提供する。
[2]本発明は、前記直交する方向又は斜めに交叉する方向が、前記液体又は固形物を含む液体の流路方向に対して45~135°の角度を有する方向であることを特徴とする前記[1]に記載の流路開閉弁を提供する。
[3]本発明は、前記弾性体が、5~35℃の温度域で15%以下の反発弾性率を有することを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の流路開閉弁を提供する。
[4]本発明は、前記弾性体が、前記流路側に開口した1つの空孔を有する形状、内部に空洞を有する形状、及び独立した複数の空孔を有する多孔質形状の少なくとも何れかの形状を有するゴム又は樹脂エラストマであることを特徴とする前記[3]に記載の流路開閉弁を提供する。
[5]本発明は、前記アマチュアが、エアーシリンダーを備えるプランジャー、及び電磁式で駆動するソレノイドを備えるプランジャー、のいずれかを有することを特徴とする前記[1]~[4]のいずれかに記載の流路開閉弁を提供する。
[6]本発明は、前記アマチュアが、エアーシリンダーを備えるプランジャーを有することを特徴とする前記[5]に記載の流路開閉弁を提供する。
[7]本発明は、前記液体又は固形物を含む液体の流路と、前記[1]~[6]のいずれかに記載の流路開閉弁とを有し、前記液体又は固形物を含む液体の流通路壁において、前記流路開閉弁の弁部材として設けられる弾性体と当接する部分に、前記弾性体の先端部分を挿入し、固定するための未貫通の孔又は穴が形成されたことを特徴とする流路開閉弁装置を提供する。
[8]本発明は、前記液体又は固形物を含む液体の吸排出用シリンダーと、前記液体又は固形物を含む液体の流路方向に沿って、前記[1]~[6]のいずれかに記載の流路開閉弁を、前記吸排出用シリンダーの上流側及び下流側にそれぞれ設けることを特徴とする流路開閉弁装置を提供する。
[9]本発明は、前記液体又は固形物を含む液体の流通路壁において、前記流路開閉弁の弁部材として設けられる弾性体と当接する部分に、前記弾性体の先端部分を挿入し、固定するための未貫通の孔又は穴が形成されたことを特徴とする前記[8]に記載の流路開閉弁装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の実施形態による流路開閉弁は、弁部材(弁体)として弾性体と一体化されたプランジャー等のアマチュアによって瞬時駆動を行うため、液体又は固形物を含む液体を通過させる配管内を流れる流路の開閉を瞬時に行うことができる。前記流路開閉弁の「閉」状態の際には、押圧駆動によって前記弾性体が対抗する流通路壁に対して確実な密着を図るとともに、前記弾性体の流路方向に位置する端部がやや変形し、前記弾性体端部の一部が前記配管の流通路部分にまで侵入した形で流路が遮断される。それにより液体又は固形物を含む液体の漏洩を確実に防止することができる。加えて、本発明の実施形態による流路開閉弁は構成が比較的簡単であるため、配管途中の必要な箇所に簡便に設置することができる。
【0018】
また、前記流路開閉弁の弁部材として設けられる弾性体として、室温域で15%以下の反発弾性率を有するものを使用することにより、前記弾性体の形状をほぼ維持した状態で押圧によるわずかな変形(膨張)を起こさせることができるため、前記弾性体の膨張による液体の漏洩防止という効果を確実に得ることができる。この効果は前記弾性体の形状及び材質を最適化することによって、より高めることができる。
【0019】
さらに、前記流路開閉弁の弁部材として設けられる弾性体と当接する流通路壁の一部分に、前記弾性体の先端部分を挿入し、固定するための未貫通の孔又は穴を形成した構造を有する流路開閉弁装置を採用することによって、前記弾性体の流通路壁に対する密着性の向上を図れるため、液体又は固形物を含む液体の漏洩を完全に防止することができる。
【0020】
また、本発明の実施形態による流路開閉弁装置は、前記液体又は固形物を含む液体の吸排出用シリンダーの流路方向に沿って、前記吸排出用シリンダーの両側にそれぞれ本発明の実施形態による流路開閉弁を設けることにより新たな機能を付与することができる。例えば、閉じた系内で液体又は固形物を含む液体を何度も循環させて行う必要がある装置や機器に適用が可能である。適用例の一つとして、前述の食品の消化プロセス解明のためのin vitro胃消化シミュレーター等において、胃本体内を模擬した空間に食品モデル用混合物を何度も循環させることにより消化時間による消化挙動を解明するときに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1の実施形態による流路開閉弁の概略構成及び流路開閉操作を示す断面図である。
図2】本発明の第2の実施形態による流路開閉弁の概略構成及び流路開閉操作を示す断面図である。
図3】本発明の第3の実施形態による流路開閉弁の弁部材(弁体)として使用される弾性体の形状例を示す断面図である。
図4】本発明の第4の実施形態においてソレノイドによってアマチュアを電磁駆動させる流路開閉弁の例を示す断面図である。
図5】本発明の第5の実施形態による流路開閉弁装置を示す断面図である。
図6】本発明の第6の実施形態による流路開閉弁装置及びその操作工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の流路開閉弁の概略構成を図1に用いて説明する。図1は、本発明の実施形態による流路開閉弁の概略構成及び流路開閉動作を示す断面図である。
【0023】
図1に示す概略構成によって本発明の流路開閉弁は、(i)弁開閉を瞬時に行うこと、(ii)液通路内に流れる液体又は固形物を含む液体の流路方向を変更しないで弁開閉ができること、(iii)開閉弁を「閉」にした状態で前記開閉弁の周囲端部から液体又は固形物を含む液体が漏洩するのを確実に防止できること、(iv)配管への開閉弁の設置が容易なこと、及び(v)開閉弁として適用性が広く、且つ、汎用性に優れること、の各効果が得られる。
【0024】
まず、流路開閉弁1の弁開閉方式として、駆動装置2によって一直線状の方向(図1において上下の方向)に沿って駆動するプランジャー等のアマチュア3を用いて弁部材(又は弁体ともいう。)4の瞬時駆動を行い、弁部材4を配管5の流通路部分6の流路内に充填させることにより流路を閉じる。この操作により、図1に示す「開」の状態から「閉」の状態に移行する。さらに、「閉」から「開」の状態へ移行させる場合は、アマチュア3を駆動させ、流通路部分6の流路内に充填された弁部材4を充填前の元の位置に戻す。これらの2つの動作を繰り返すことによって流路の開閉を所望のときに任意で行うことができる。それにより、上記(i)の効果を得ることができる。
【0025】
合わせて上記(iii)の効果を得るため、弁部材4の材質として、押圧駆動によって弁部材4が当接する液通路壁7に対して確実な密着を図ることができる弾性体を使用する。この弾性体には、流路方向に位置する弾性体の両端部が押圧によって変形し、やや膨らんだ状態の変形部分8が流通路部分6にまで侵入した形で流路を遮断する機能を持たせる。ここで、前記弾性体はアマチュア3の一端に固着させ一体化することにより、前記アマチュア3の瞬時駆動に伴って、アマチュア3の駆動方向と平行に瞬時移動するための弁体として機能する。
【0026】
本発明においては、上記(i)~(iii)の効果を得るため、流路開閉弁1を流通路部分6の流路に対して直交する方向又は斜めに交叉する方向に配置する。図1には、代表的な例として、流通路部分6の流路に対して直交する方向に配置した流路開閉弁1を示している。それにより流路開閉弁1を配管5の所望の位置に自由に設置することが容易となるため、上記(iv)の効果も得られる。さらに、流路開閉弁1は、低粘度から高粘度の液体又は固形物を含む液体を移送する場合においても、弁部材4と流通路壁7との間で起こりやすい液の漏洩を確実に防止できる。そのため、様々な形態を有する液体の移送時の流路開閉弁として適用することができる。また、配管の配設方向やその角度には制約をあまり受けず、流路開閉弁を設けるときの自由度が高く、汎用性にも優れる。そのため、本発明の流路開閉弁1は、上記(v)の効果が合わせて得られる。
【0027】
本発明において流路開閉弁1の駆動方法としては、例えば、瞬時駆動性、推力、動作の確実性、及び耐久性の観点から、エアーシリンダーによる駆動及びソレノイドによる電磁駆動のいずれかを用いることができる。本発明においては流路開閉弁1の構成を相対的に簡単にできることからエアーシリンダーによる駆動方式を採用することが実用的である。なお、図1には、駆動装置2の代表的な例としてエアーシリンダーを示している。
【0028】
本発明の実施形態で使用するアマチュア3としては、例えば、金属製又はプラスチック製のプランジャーが使用される。金属材質としては、例えば、アルミ、銅、ステンレス、チタン等が挙げられるが、材料の密度とコスト及び腐食性の点からアルミ又はステンレスが好適である。また、プラスチックの材質としては、強度及び耐久性の点からポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、超高分子量ポリエチレン(UHPE)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)等のエンジニアニアリングプラスチック、又は非晶ポリアリレート(PAR)、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルイミド(PEI)、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)等のスーパーエンジニアリングプラスチックが挙げられる。これらのプラスチックには無機質又は無機質の充填剤が含まれていてもよい。
【0029】
弁部材4として使用する弾性体は、硬すぎても柔らかすぎても本発明の効果を奏することができないため、材料を選択するための物性値として反発弾性率に着目した。本発明で使用する弾性体としては、流通路部分6の流通路壁に対する密着性、アマチュアの押圧駆動時の瞬時変形の容易性、及びアマチュアを元の位置に戻すときの形状復元性の観点から、室温(5~35℃の温度域)で15%以下、好ましくは10%以下の反発弾性率を有するものが実用的である。反発弾性率が15%を超えると、弾性体が硬すぎるため密着性が低下し、流路開閉弁が「閉」の状態でも流通路6内を流れる液体又は固形物を含む液体の漏洩が発生しやすくなる。また、押圧駆動時において変形の瞬時応答性の低下が顕著になる。本発明において反発弾性率の下限値は特に規定されないが、反発弾性率が2%未満になるとアマチュアを元の位置に戻すときの形状復元性が低下するようになるため、2%以上が好ましい。反発弾性率が15%以下、好ましくは2~10%である弾性体としては、衝撃・振動吸収性に優れる制振弾性体として知られている材料の中から前記の範囲内に含まれる反発弾性率を有する材料を選択してもよい。
【0030】
上記弾性体の反発弾性率は、振り子の球面を弾性体の平らな試料に規定の質量・速度で打ち付け、跳ね返りの様子から、振り子の与えるエネルギーとサンプルの反発したエネルギーの比を測定するものであり、日本工業規格(JIS)K 6255に従って測定することができる。
【0031】
上記の範囲の反発弾性率を有する弾性体の材質としては、例えば、ゴム又は樹脂エラストマ等を使用することができる。ゴムとしては、例えば、ブチルゴム、ノルボルネンゴム、シリコーンゴム、ポリヘキセンゴム、シリコーンゴム、軟質ポリウレタン等が挙げられる。また、樹脂エラストマとしては、例えば、スチレンブタジエン系熱可塑性エラストマ、水添加スチレンブタジエン系熱可塑性エラストマ、ポリウレタン系エラストマ等が挙げられる。ゴム又は樹脂エラストマ等の弾性体は、前述した反発弾性率に加えて、使用環境、移送する液体の種類(酸性やアルカリ性の溶液やエンジンオイル等)、及び耐久性の観点から、耐熱性、耐油性、耐水性、耐寒性及び耐オゾン性等の諸特性についても考慮して用途に合った最適なものを選択する。例えば、軟質ポリウレタンゴムは耐油性を有するものの耐酸及びアルカリ性に劣り、他方、ブチルゴム及びシリコーンゴムは耐油性がやや劣るものの耐酸及びアルカリ性を有するため、用途に応じて使い分ける必要がある。
【0032】
弾性体の形状としては、空孔又は気泡等を含まない全体が均質な材料で構成されるブロック体の形状、弾性体内部に空孔又は空洞を有する形状、及び弾性体内部に独立した複数の空孔を有する多孔質形状、の少なくとも何れかの形状を使用することができる。本発明は、強度、押圧駆動時における瞬時変形の容易性、及び変形からの復元性の観点から、弾性体内部に1つの空孔又は空洞を有する形状、及び弾性体内部に独立した複数の空孔を有する多孔質形状、の少なくとも何れかの形状を採用することが実用的である。なお、弾性体の形状については、後述の第3の実施形態で詳細に説明する。
【0033】
弁部材4として使用する弾性体をアマチュア3の一端に固着させる方法としては、例えば、接着剤による接着、加熱溶着、加締め、及び締結治具によるボルト締めなどの少なくともいずれか一つの方法が挙げられる。このとき前記弾性体の形状も固着方法に応じて加工しやすいものに変更することが実用的である。
【0034】
本発明の効果は流路開閉弁1を使用するだけでも十分に得られるが、さらに効果を高めるため、配管5の流通路部分6において流通路壁の一部について形状変更を行ってもよい。その場合は、次に述べる構成を含む流路開閉弁装置が提供される。
【0035】
本発明の実施形態による流路開閉弁装置は、流通路部分6の流路において、流路開閉弁1の弁部材4として設けられる弾性体と当接する液流路壁7に、前記弾性体の先端部分を挿入し、固定するための未貫通の孔又は穴が形成される。この流路開閉弁装置については、後述の第5の実施形態において詳細に説明する
【0036】
また、別の構成を有する本発明の流路開閉弁装置として、流通路部分6の一部に新たに液吸排出用シリンダーを配置し、該液吸排出用シリンダーの両側、すなわち流通路部分6の流路上流側及び流路下流側のそれぞれの位置に流路開閉弁1を設けてもよい。この構成を有する流路開閉弁装置は新たな機能を発現できることから、上述の(v)開閉弁として適用性が広く、且つ、汎用性に優れるという効果を奏する。この流路開閉弁装置については、後述の第6の実施形態において詳細に説明する。
【0037】
本発明の流路開閉弁及び流路開閉弁装置の実施形態を、図面を用いて説明する。
【0038】
<第1の実施形態>
本実施形態による流路開閉弁は、図1に示すものと基本的に同じ構成を有する。流路開閉弁1の構成は、駆動装置2、アマチュア3、及び弁部材(弁体)4として、それぞれエアーシリンダー、プラスチック製プランジャー、及び室温(5~35℃)の温度における反発弾性率が2%の水添加スチレンブタジエン系熱可塑性エラストマを使用した。ここで、樹脂エラストマ製の弁部材4は、プラスチック製プランジャーのアマチュア3の一端に接着剤によって一体化した。また、配管5の流通路部分6の流路内には、食品モデル用混合物を模擬する例として微細粒子が混ざった液体(例えば砂と水との混合物)を移送させた。流路開閉弁1は、液通路部分6の流路に対して直交する方向に配置した。
【0039】
図1に示すように、エアーシリンダーの駆動装置2によって一直線状の方向(図1において上下の方向)に沿って駆動するプラスチック製プランジャーのアマチュア3を用いて樹脂エラストマ製の弁部材(弁体)4を押圧駆動させることにより弁部材4を配管5の液通路部分6の流路内に瞬時に充填させる。この操作によって流路を閉じ、「開」の状態から「閉」の状態に移行する。「閉」の状態では、流路方向に位置する樹脂エラストマ弾性体の両端部が押圧によって変形し、やや膨らんだ状態の変形部分8が流通路部分6にまで侵入した形で、前記粒子が混ざった液体の流路が完全に遮断される。
【0040】
さらに、「閉」から「開」の状態へ移行させる場合は、アマチュア3を駆動させ((図1において上方へ駆動)、流通路部分6の流路内に充填された弁部材4を充填前の元の位置に戻す。「開」の状態にするとき、流通路部分6の流路内で前記粒子が混ざった液体が流れるようになり、移送が再開される。これらの2つの操作を所望のときに繰り返すことによって流路の開閉を任意で行うことができる。
【0041】
本実施形態による流路開閉弁1を配管5に設置し、流路開閉弁1を瞬時に閉じて「閉」の状態にした後、前記粒子が混ざった液体の漏洩を調べた結果、流路開閉弁1の下流側では漏洩が見られなかった。したがって、流路開閉弁1は、前記粒子が混ざった液体の流れを瞬時に、且つ、確実に制御できる開閉弁として十分の機能を有することが確認された。
【0042】
<第2の実施形態>
本発明の開閉流路弁を液通路部分の流路に対して斜め方向に配置したときの流路開閉動作を図2によって説明する。
【0043】
図2(a)は、斜め方向に配置された配管10の液通路部分11の流路に対して、流路開閉弁9が鈍角(θが90°を超え、135°以下)で配置されるときの流路開閉状態を示す図である。図2(a)に示す流路開閉弁9は、弁部材12の下方一端部が、上方一端部とは異なり、液通路部分11の配管内部壁に沿って斜め方向に形成されている。また、図2(b)は、斜め方向に配置された配管16の流通路部分17の流路に対して流路開閉弁15が鋭角(θが45°以上90°未満)に配置されるときの流路開閉状態を示す図である。図2(b)に示す流路開閉弁15は、弁部材18の下方一端部が上方一端部に対して並行に形成されている。配管の流通路部分に対する流路開閉弁の設置角度は、「閉」の状態において液体又は固形物を含む液体の漏洩を確実に防止するという観点から、図1に示す直交方向の場合を含めて、45~135°の範囲に設定するのが実用的である。
【0044】
図2(a)に示す実施形態では、プラスチック製プランジャーのアマチュア13を用いて樹脂エラストマの弁部材12を下方へ駆動させ、弁部材12を配管10の流通路部分11の流路内に充填させることにより開閉流路弁9を瞬時に閉じる。この操作によって液体の流路を閉じ、「開」の状態から「閉」の状態に移行させる。「閉」の状態では、流路方向に位置する樹脂エラストマの両端部が押圧によって変形し、やや膨らんだ状態の変形部分14が流通路部分11にまで侵入した形で液体の流路が完全に遮蔽される。この場合、樹脂エラストマ製の弁部材12の下方端部が液通路部分11の流通路壁に沿って斜め方向に形成されているため、アマチュア13の押圧によって樹脂エラストマの両端部がほぼ均等に変形し、両側に変形部分14が形成される。さらに、「閉」から「開」の状態へ移行させる場合は、アマチュア13を駆動させ(図2(a)において上方へ駆動)、流通路部分11の流路内に充填された弁部材12を充填前の元の位置に戻す。
【0045】
図2(b)に示す実施形態においても、プラスチック製プランジャーのアマチュア19を用いて樹脂エラストマ製の弁部材(弁体)18を瞬時に下方へ駆動させ、弁部材18を配管16の流通路部分17の流路内に充填させることにより、流路を「開」の状態から「閉」の状態に移行させる。「閉」の状態では、流路方向に位置する樹脂エラストマの片側端部(下流側端部)だけが押圧によって変形し、やや膨らんだ状態の変形部分20が流通路部分17にまで侵入した形で流路が完全に遮蔽される。他方、樹脂エラストマのもう一方の片側端部(上流側端部)には押圧による変形がほとんど見られず、流通路部分17の片側壁に接触するか、又はわずかな隙間が空いた状態をとる。これは、樹脂エラストマ製の弁部材18の下方一端部が上方一端部に対して並行に形成されているため、アマチュア19の押圧のときに斜めに配置した配管16の内壁に対して樹脂エラストマの変形が両端部で不均一に起こるためにみられる現象の一つである。そのような場合でも、変形部分20によって流路が完全に遮断されるため、液体の漏洩がみられない。さらに、「閉」から「開」の状態へ移行させる場合は、アマチュア19を上方に駆動させ(図2(b)において上方へ駆動)、液通路部分17の流路内に充填された弁部材18を充填前の元の位置に戻す。
【0046】
図2(a)に示す弁部材12の形状は、図2(b)に示す弁部材18と同じであってもよいし、逆に、弁部材18が弁部材12と同じ形状を有してもいてもよい。弁部材12、18による液体の漏洩防止の効果は、流通路部分11、17に対する流路開閉弁9、15の設置角度が流路に対して45~135°の範囲内であれば、どちらの形状であっても確実に得られる。
【0047】
<第3の実施形態>
上記第1及び第2の実施形態においては、使用する弁部材として、空孔又は気泡等を含まない全体が均質な材料で構成されるブロック体の形状を有する弾性体を使用した。本発明で使用する弁部材は、前記ブロック体の他にも、図3の(a)~(c)に示す形状を有する弾性体を使用してもよい。図3において(a)、(b)及び(c)は、流通路部分の流路側に開口した1つの空孔を有する形状、内部に空洞を有する形状、及び内部に独立した複数の空孔を有する多孔質形状、でそれぞれ形成された弾性体の弁部材がアマチュアと一体化された構成で使用される流路開閉弁の例を示す断面図である。
【0048】
図3(a)に示す流路開閉弁21は、流路側に開口する1つの空孔を有する弾性体の弁部材22が、アマチュア23に挿入する締結治具24によってボルト締めによってアマチュア23に一体化されている。弾性体の弁部材22は流路側に開口した空孔25を有するため、弁部材22が当接する流通路壁26に対する密着面積が小さくなる。しかしながら、押圧時に流路方向に位置する弾性体が室温(5~35℃の温度域)で15%以下の反発弾性率を有し、且つ、弾性体の内部には空孔25が存在するため、両者の相乗効果によって、図1に示す弁部材4に比べて両端部の変形が容易になる。それにより、やや膨らんだ状態の変形部分が流通路部分の奥まで侵入するようになる。その形で流路を遮断するため、弁部材22の周囲端部における液漏洩の防止を確実に行うことができる。
【0049】
図3(b)に示す流路開閉弁27は、内部に空洞を有する形状で形成される弾性体の弁部材28が、プラスチック製のアマチュア29に挿入する締結治具30とのボルト締めによってアマチュア29に一体化されている。弁部材28は、例えば、図3(a)と同じように、弾性体の流路側に開口した1つの空孔を形成し、ボルト締めによってプラスチック製のアマチュア29と一体化した後、前記弾性体と同じ材質によって前記空孔の開口部分をカバーすることによって弁部材28の内部に空洞31を形成することができる。また、内部に空洞31を有する形状で形成される弾性体を用いて、プラスチック製のアマチュア29と接着又は加熱溶着を行うことによりアマチュア29と一体化してもよい。その場合、弾性体内部に形成される空洞31の数は1つに減退されず、複数個であってもよい。ここで、空洞31は、押圧による変形の際に図3(a)に示す空孔25と基本的に同じ機能を有するため、弁部材28の周囲において液漏洩を防止することができる。
【0050】
図3(c)に示す流路開閉弁32は、内部に独立した複数の空孔を有する多孔質形状の弾性体からなる弁部材(弁体)33がプラスチック製のアマチュア34との接着又は加熱溶着によってアマチュア34に一体化されている。多孔質形状は、図3(a)に示す空孔25及び図3(b)に示す空洞31と同じように、押圧操作時に弾性体両端部の変形を容易にするという利点を有する。内部に独立した複数の空孔を有する多孔質形状の弾性体としては、例えば、スポンジ形状の弾性体を使用することができる。また、前記スポンジ形状の弾性体は、図3の(a)に示す形状と同じように、アマチュア34に接合した締結治具へのボルト締めによってアマチュア34との一体化をしたものを使用してもよい。ここで、スポンジ形状の弾性体としては、室温(5~35℃の温度域)で10%の反発弾性率を有するものを使用する。
【0051】
図1に示す流路開閉弁1に代えて、図3の(a)~(c)に示す流路開閉弁21、27及び32のいずれかを用いる以外は、図1に示すものと同じ構成と方法で流路開閉弁を配管に設置し、それら流路開閉弁のいずれかを瞬時駆動により閉じて「閉」の状態にした後、前記粒子が混ざった液体の漏洩を調べた。その結果、流路開閉弁21、27又は32の下流側には漏洩が全くみられなかった。したがって、流路開閉弁21、27及び32のいずれも、前記粒子が混ざった液体の流れを瞬時に、且つ、確実に制御できる開閉弁として十分の機能を有することが確認された。
【0052】
<第4の実施形態>
本発明においては、駆動方法として図1に示すエアーシリンダーによる駆動方法に代えて、ソレノイドによる電磁駆動方法を採用してもよい。図4に、ソレノイドによってアマチュアを電磁駆動させる流路開閉弁35を示す。
【0053】
図4に示すように、流路開閉弁35は、プランジャー等のアマチュア36の上部部分の周囲に設けられ、筒状の駆動用コイル37を備えるソレノイド38と、アマチュア36の上端部の穴に嵌通し、他端をケース等の支持台39に固定した圧縮ばね40と、アマチュア36に固着され一体化された弾性体の弁部材41とを有する。駆動用コイル37は、不図示の電圧制御回路に接続されており、電圧に応じてアマチュア37の駆動が行われる。
【0054】
図4に示す「開」の状態ではソレノイド38が非通電であり、配管5の流通路部分6の流路は閉塞されない。ソレノイド38の駆動用コイル37に通電すると電圧に応じた磁力を発生し、アマチュア36が圧縮ばね40の力に抗して下降するため、弁部材41がアマチュア36の押圧によって配管5の流通路部分6の流路内に充填して流路が閉じる。この操作によって、「開」の状態から「閉」の状態に瞬時に移行する。「閉」の状態では、流路方向に位置する弾性体の弁部材41の両端部が押圧によって変形し、やや膨らんだ状態の変形部分42が流通路部分6にまで侵入した形で流路が完全に遮断される。
【0055】
さらに、「閉」から「開」の状態へ移行させる場合は、ソレノイド38の駆動用コイル37を非通電にすれば、アマチュア36が圧縮ばね40の力によって瞬時に充填前の元の位置に戻り、「開」の状態に復帰する。これら両者の操作を繰り返すことによって流路の開閉を所望のときに任意で行うことができる。それにより、弁開閉の瞬時開閉、及び流路開閉弁35を「閉」にした状態で流路開閉弁35の周囲端部から液体又は固形物を含む液体が漏洩するのを確実に防止できることができる。
【0056】
<第5の実施形態>
前述したように、本発明の効果は流路開閉弁1を使用するだけでも十分に得られるが、さらに効果を高めるため、配管5の流通路部分6の流通路壁を部分的に形状変更してもよい。図1に示す流路開閉弁1を使用するともに、流通路部分6の流通路壁を部分的に形状変更した流路開閉弁装置の一例を図5に示す。
【0057】
図5に示す流路開閉弁装置は、配管5の流通路部分6において、流路開閉弁1の弁部材(弁体)4が当接する流通路壁に、弁部材4を構成する弾性体の先端部分を挿入し、それを固定するために形成される未貫通の孔又は穴43を有する。未貫通の孔又は穴43の開口部形状は、弁部材4の断面形状に合わせて形成する。例えば、弁部材4の断面が円形状の場合は、未貫通の孔又は穴43の開口部を円形状とする。未貫通の孔又は穴43の円形開口部の径は、弁部材4の先端部分の挿入性及び固定性の点から、弁部材4の端部が有する円形断面の直径に対して1.0倍を超え、2.0倍未満の比率にするのが実用的である。未貫通の孔又は穴43の円形開口部の径が1.0倍以下の比率であると、弁部材(弁体)4の先端を挿入することが困難になる。また、前記円形開口部の径が2.0倍以上の比率になると、挿入後の弁部材(弁体)4の先端が流路方向に動くようになるため固定性の低下が顕著になる。
【0058】
弁部材4を構成する弾性体は、先端部分が未貫通の孔又は穴43に挿入して固定されるため、流通路壁に対して密着性を高め、流通路部分6の上流側又は下流側からの液体圧に抗する抵抗力が増す。加えて、弁部材4は、流路方向に位置する弾性体の両端部が押圧によって変形し、やや膨らんだ状態の変形部分8が流通路部分6にまで侵入した形で流路が遮断される。本実施形態の流路開閉弁装置は、これら2つの因子による相乗効果により、「閉」状態のときに弁部材4の周囲端部において液体又は固形物を含む液体の漏洩を確実に止めることができる。
【0059】
この効果は、図5に示す弁部材4に代えて、図3(a)に示す弁部材22と同じ形状を有する弾性体の弁部材がアマチュア3と一体化される場合であっても同じように得られる。これは、未貫通の孔又は穴43に挿入された弁部材の周辺端部が、流通路壁に当接する部分だけでなく、未貫通の孔又は穴43の内壁全体でも拘束されることにより固定力が増すためである。
【0060】
<第6の実施形態>
本発明の流路開閉弁装置は、新たな機能を付加するため、図1に示す流路開閉弁1を、液体吸排用シリンダーと組み合わせて使用してもよい。その構成と構造を図6に断面図で示す。
【0061】
図6に示す流路開閉弁装置は、液体又は固形物を含む液体の吸排出用シリンダー44と、液体又は固形物を含む液体の流路方向に沿って、吸排出用シリンダー44の上流側及び下流側にそれぞれ設ける流路開閉弁45の2台(45a、45b)を有する。図6に示す流路開閉弁45a、45bとしては、例として図3(a)に示すものと同じ構成と形状を有し、エアーシリンダーで駆動する流路開閉弁を使用する。液体の吸排出用シリンダー44は、流路開閉弁45a、45bの少なくともどちらか一方によって流通路部分6の流路を閉の状態にした後、流通路部分6内に残留する液体又は固形物を含む液体の吸上げ又は排出を行うために使用する装置であり、例えば、電動で駆動させることができる。本実施形態の流路開閉弁装置の操作工程を、図6の(a)~(d)に示す断面図によって説明する。
【0062】
図6(a)は、流通路部分6を閉じる前の「開」の状態を示す断面図である。この状態では流路開閉弁45a、45bの2台とも駆動していない。このとき、必要に応じて、流通路6の上流側から初期状態の液体又は固形物を含む液体を供給してもよい。
【0063】
まず、流路開閉弁45aによって流通路部分6の上流側流路の1か所が閉じられた後、流通路部分6の下流側に滞留する液体又は固形物を含む液体を吸排出用シリンダー44によって吸い上げる(図6(b))。このとき、流通路6の下流側が、所定の容積を有する容器等と繋がっている場合は、その容器等に収納される液体又は固形物を含む液体も合わせて所定の量を吸い上げる。次に、流路開閉弁45bを駆動し下降させて流通路部分6の下流側流路を閉じる(図6(c))。このとき、流路開閉弁45aと45bとの間に液体又は固形物を含む液体が残留してする場合は、それらを吸い上げる操作を行ってもよい。
【0064】
引き続き、吸排出用シリンダー44によって吸い上げた液体又は固形物を含む液体を流通路6の下流側流路に排出する場合は、図6(d)に示すように、流路開閉弁45bを駆動し上昇させて流通路部分6の下流側流路の1か所を「開」の状態にした後、吸排出用シリンダー44によって流通路6の下流側に排出させる。この工程によって、流通路部分6の下流側で繋がっている前記容器内に液体又は固形物を含む液体の供給を行う。必要に応じて、前記容器内では、供給された液体又は固形物を含む液体を用いて、前回と同じ又は新たな処理や操作を再度行う。この操作は、何度でも繰り返して行うことができる。
【0065】
何らかの処理や操作が行われた後の液体又は固形物を含む液体は、流路開閉弁45aを駆動し上昇させることにより流通路6の上流側流路を「開」の状態にした状態で上流側から流出させて外部へ取り出すことができる。別の液体又は固形物を含む液体を再度供給して同じ処理又は操作を行う場合は、図6の(a)~(d)に示す工程を繰り返しもよい。また、何らかの処理や操作が行われた後の液体又は固形物を含む液体に、別の液体又は固形物を含む液体を新たに供給する場合は、図6(c)の工程の後、流路開閉弁45aを駆動し上昇させることにより流通路6の上流側流路を「開」の状態にした状態で、上流側から供給する。前記の別の液体又は固形物を含む液体は、必要に応じて、吸排出用シリンダー44によって吸い上げた後、図6(d)に示すように、流路開閉弁45aを下降し、45bを上昇させて、それぞれ「閉」及び「開」の状態にしてから下流側に排出してもよい。別の液体又は固形物を含む液体の供給量は、流路開閉弁45a、45bの開閉操作を、吸排出用シリンダー44によって液体の適量を吸排出する操作と組合せることによって調整することができる。
【0066】
図6に示す流路開閉弁装置は、配管5の流通路部分6において、流路開閉弁45の弁部材が当接する流通路壁に、前記弁部材を構成する弾性体の先端部分を挿入し、それを固定するための未貫通の孔又は穴を設けてもよい。前記未貫通の孔又は穴は、図5に示すものと同じ形状で流通路部分6の流通路壁に形成される。それにより、「閉」状態のときに弁部材の周囲端部において液体又は固形物を含む液体の漏洩を防止するという効果を高めることができる。
【0067】
本実施形態による流路開閉弁装置は、前述したように、食品の消化プロセス解明のためのin vitro胃消化シミュレーター等において、胃本体内を模擬した空間に食品モデル用混合物を何度も循環させることにより消化時間に伴って起こる消化挙動を解明するときに利用することができる。また、様々な化学反応や食品加工において、閉じた系内で液体又は固形物を含む液体を何度も循環させて反応や加工を行う必要があるとき、それらのための装置や機器に付帯させる流路開閉弁装置としても適用が可能である。
【0068】
以上のように、本発明の実施形態による流路開閉弁は、液体又は固形物を含む液体を通過させる配管内を流れる流路の開閉を瞬時に行うとともに、「閉」の状態において液体又は固形物を含む液体の漏洩を確実に防止することができる。加えて、構成が比較的簡単であるため、配管途中の必要な箇所に簡便に設置することができる。
【0069】
また、前記流路開閉弁の弁部材として設けられる弾性体と当接する流通路壁の一部分に、前記弾性体の先端部分を挿入し、固定するための未貫通の孔又は穴を形成した構造を有する流路開閉弁装置を採用することによっても、前記弾性体の流通路壁に対する密着性の向上が図られるため、液体又は固形物を含む液体の漏洩を完全に防止することができる。
【0070】
さらに、本発明の実施形態による流路開閉弁装置は、前記液体又は固形物を含む液体の吸排出用シリンダーを新たに設け、前記吸排出用シリンダーの流路方向に沿って、前記吸排出用シリンダーの両側にそれぞれ本発明の実施形態による流路開閉弁を配置することによって新たな機能を付与することができる。
【符号の説明】
【0071】
1,9,15,21,27,32,35,45・・・流路開閉弁
2・・・駆動装置(エアーシリンダー)
3,13,19,23,29,34,36・・・アマチュア
4,12,18,22,28,33,41・・・弁部材(弁体)
5,10,16・・・配管
6,11,17・・・流通路部分
7,26・・・弁部材が当接する流通路壁
8,14,20,42・・・変形部分
24,30・・・締結治具
25・・・空孔
31・・・空洞
37・・・駆動用コイル
38・・・ソレノイド
39・・・支持台
40・・・圧縮ばね
43・・・未貫通の孔又は穴
44・・・液体の吸排出用シリンダー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-09-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体又は固形物を含む液体を通過させる配管の所望の位置に配置し、前記液体又は固形物を含む液体の流路を開閉するために使用する流路開閉弁であって、
アマチュアと、
前記アマチュアの駆動装置と、
前記アマチュアの一端に固着され前記流路開閉弁の弁部材として使用され、前記液体又は固形物を含む液体の流路に対して直交する方向又は斜めに交叉する方向に沿って断面の外法寸法が同じ長さに保たれた弾性体と、を有し、
前記アマチュアと前記弾性体とを、前記直交する方向又は斜めに交叉する方向に配置し、前記アマチュアをそれらの方向に沿って駆動させ、前記弾性体の先端部分を前記配管の液流路壁に対して面状に押圧することにより、
前記流路を閉じる場合には前記流路内に前記弾性体を充填させる操作、及び、
前記流路を開ける場合には前記流路内に充填された前記弾性体を充填前の元の位置に戻す操作、をそれぞれ繰り返すことによって前記流路の開閉を行うことを特徴とする流路開閉弁。
【請求項2】
前記直交の方向又は斜めに交叉する方向が、前記液体又は固形物を含む液体の流路方向に対して45~135°の角度を有する方向であることを特徴とする請求項1に記載の流路開閉弁。
【請求項3】
前記弾性体は、5~35℃の温度域で15%以下の反発弾性率を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の流路開閉弁。
【請求項4】
前記弾性体は、前記流路側に開口した1つの空孔を有する形状、内部に空洞を有する形状、及び独立した複数の空孔を有する多孔質形状の少なくとも何れかの形状を有するゴム又は樹脂エラストマであることを特徴とする請求項3に記載の流路開閉弁。
【請求項5】
前記アマチュアは、エアーシリンダーを備えるプランジャー、及び電磁式で駆動するソレノイドを備えるプランジャー、のいずれかを有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の流路開閉弁。
【請求項6】
前記アマチュアは、エアーシリンダーを備えるプランジャーを有することを特徴とする請求項5に記載の流路開閉弁。
【請求項7】
前記液体又は固形物を含む液体の流路と、請求項1~6のいずれか一項に記載の流路開閉弁とを有し、
前記液体又は固形物を含む液体の流通路壁において、前記流路開閉弁の弁部材として設けられる前記弾性体の先端部分と当接する部分に、前記弾性体の先端部分を挿入し、固定するための未貫通の孔又は穴が形成されたことを特徴とする流路開閉弁装置。
【請求項8】
前記液体又は固形物を含む液体の吸排出用シリンダーと、
前記液体又は固形物を含む液体の流路方向に沿って、請求項1~6のいずれか一項に記載の流路開閉弁を、前記吸排出用シリンダーの上流側及び下流側にそれぞれ設けることを特徴とする流路開閉弁装置。
【請求項9】
前記液体又は固形物を含む液体の流通路壁において、前記流路開閉弁の弁部材として設けられる前記弾性体の先端部分と当接する部分に、前記弾性体の先端部分を挿入し、固定するための未貫通の孔又は穴が形成されたことを特徴とする請求項8に記載の流路開閉弁装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
すなわち、本発明の構成は以下の通りである。
[1]本発明は、液体又は固形物を含む液体を通過させる配管の所望の位置に配置し、前記液体又は固形物を含む液体の流路を開閉するために使用する流路開閉弁であって、アマチュアと、前記アマチュアの駆動装置と、前記アマチュアの一端に固着され前記流路開閉弁の弁部材として使用され、前記液体又は固形物を含む液体の流路に対して直交する方向又は斜めに交叉する方向に沿って断面の外法寸法が同じ長さに保たれた弾性体と、を有し、前記アマチュアと前記弾性体とを、前記直交する方向又は斜めに交叉する方向に配置し、前記アマチュアをそれらの方向に沿って駆動させ、前記弾性体の先端部分を前記配管の液流路壁に対して面状に押圧することにより、前記流路を閉じる場合には前記流路内に前記弾性体を充填させる操作、及び、前記流路を開ける場合には前記流路内に充填された前記弾性体を充填前の元の位置に戻す操作、をそれぞれ繰り返すことによって前記流路の開閉を行うことを特徴とする流路開閉弁を提供する。
[2]本発明は、前記直交の方向又は斜めに交叉する方向が、前記液体又は固形物を含む液体の流路方向に対して45~135°の角度を有する方向であることを特徴とする前記[1]に記載の流路開閉弁を提供する。
[3]本発明は、前記弾性体が、5~35℃の温度域で15%以下の反発弾性率を有することを特徴とする前記[1]又は[2]に記載の流路開閉弁を提供する。
[4]本発明は、前記弾性体が、前記流路側に開口した1つの空孔を有する形状、内部に空洞を有する形状、及び独立した複数の空孔を有する多孔質形状の少なくとも何れかの形状を有するゴム又は樹脂エラストマであることを特徴とする前記[3]に記載の流路開閉弁を提供する。
[5]本発明は、前記アマチュアが、エアーシリンダーを備えるプランジャー、及び電磁式で駆動するソレノイドを備えるプランジャー、のいずれかを有することを特徴とする前記[1]~[4]のいずれかに記載の流路開閉弁を提供する。
[6]本発明は、前記アマチュアが、エアーシリンダーを備えるプランジャーを有することを特徴とする前記[5]に記載の流路開閉弁を提供する。
[7]本発明は、前記液体又は固形物を含む液体の流路と、前記[1]~[6]のいずれかに記載の流路開閉弁とを有し、前記液体又は固形物を含む液体の流通路壁において、前記流路開閉弁の弁部材として設けられる前記弾性体の先端部分と当接する部分に、前記弾性体の先端部分を挿入し、固定するための未貫通の孔又は穴が形成されたことを特徴とする流路開閉弁装置を提供する。
[8]本発明は、前記液体又は固形物を含む液体の吸排出用シリンダーと、前記液体又は固形物を含む液体の流路方向に沿って、前記[1]~[6]のいずれかに記載の流路開閉弁を、前記吸排出用シリンダーの上流側及び下流側にそれぞれ設けることを特徴とする流路開閉弁装置を提供する。
[9]本発明は、前記液体又は固形物を含む液体の流通路壁において、前記流路開閉弁の弁部材として設けられる前記弾性体の先端部分と当接する部分に、前記弾性体の先端部分を挿入し、固定するための未貫通の孔又は穴が形成されたことを特徴とする前記[8]に記載の流路開閉弁装置を提供する。
[発明の効果]