(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180692
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】生体情報処理システム、生体情報処理装置、生体情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 80/00 20180101AFI20221130BHJP
G16H 20/10 20180101ALI20221130BHJP
G08B 25/04 20060101ALI20221130BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
G16H80/00
G16H20/10
G08B25/04 K
A61B5/00 102C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087307
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 博則
(72)【発明者】
【氏名】金光 陽子
【テーマコード(参考)】
4C117
5C087
5L099
【Fターム(参考)】
4C117XB11
4C117XE13
4C117XE15
4C117XE28
4C117XE43
4C117XG03
4C117XG05
4C117XH02
4C117XH16
4C117XJ13
4C117XJ18
4C117XJ45
4C117XL01
4C117XQ07
4C117XQ20
5C087AA02
5C087AA10
5C087AA25
5C087AA37
5C087BB18
5C087DD03
5C087FF01
5C087FF02
5C087FF04
5C087GG06
5C087GG08
5C087GG28
5C087GG36
5L099AA04
5L099AA15
5L099AA22
5L099AA25
(57)【要約】
【課題】遠隔医療に係るシステムにおいて、現在の治療方法が適切か否かを早期に決定することができるとともに、医療従事者および患者の作業負荷を低減することが可能な技術を提供する。
【解決手段】患者の生体情報に係る計測値を取得する計測値取得手段と、前記計測値と予め設定される改善目標基準とを比較する比較手段と、前記計測値が前記改善目標基準を達成していない場合に、少なくとも前記患者の服薬頻度の情報を含む服薬情報を取得する服薬情報取得手段と、前記患者の前記計測値の第一所定期間ごとの変化を示す計測値変遷情報及び前記服薬情報を一覧可能な、薬効確認支援画像を生成する薬効確認支援画像生成手段と、前記計測値が前記改善目標基準を達成していない場合に、警告情報を生成する警告情報生成手段と、少なくとも前記薬効確認支援画像を出力する出力手段と、を有する、生体情報処理システム。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の生体情報に係る計測値を取得する計測値取得手段と、
前記計測値と予め設定される改善目標基準とを比較する比較手段と、
前記計測値が前記改善目標基準を達成していない場合に、少なくとも前記患者の服薬頻度の情報を含む服薬情報を取得する服薬情報取得手段と、
前記患者の前記計測値の第一所定期間ごとの変化を示す計測値変遷情報及び前記服薬情報を一覧可能な、薬効確認支援画像を生成する薬効確認支援画像生成手段と、
前記計測値が前記改善目標基準を達成していない場合に、その旨の警告情報を生成する警告情報生成手段と、
前記警告情報を出力する第一出力手段と、
前記薬効確認支援画像を出力する第二出力手段と、
を有する、生体情報処理システム。
【請求項2】
前記比較手段は、前記第一所定期間における前記計測値の平均値と前記改善目標基準とを比較し、
前記服薬情報取得手段は、前記平均値が前記改善目標基準を達成していない場合に、前記第一所定期間における前記患者の服薬頻度の情報を含む服薬情報を取得する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の生体情報処理システム。
【請求項3】
前記生体情報は血圧に係る情報であって、
前記計測値取得手段は、1回の計測ごとに、前記計測値として収縮期血圧値と拡張期血圧値を取得し、
前記比較手段によって比較の対象となる前記改善目標基準は、前記収縮期血圧値と前記拡張期血圧値のそれぞれに対して設定されており、
前記服薬情報取得手段は、前記収縮期血圧値と前記拡張期血圧値のいずれかが、それぞれに対して設けられた前記改善目標基準を達成していない場合に、前記服薬情報を取得し、
前記警告情報生成手段は、前記収縮期血圧値と前記拡張期血圧値のいずれかが、それぞれに対して設けられた前記改善目標基準を達成していない場合に、前記警告情報を生成する、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の生体情報処理システム。
【請求項4】
前記計測値取得手段は、1回の計測ごとに、前記血圧が計測された時間帯を特定可能な時間帯情報をさらに取得し、
前記計測値変遷情報は、前記収縮期血圧値及び前記拡張期血圧値の前記第一所定期間ごとの変化を前記時間帯別に示す、
ことを特徴とする、請求項3に記載の生体情報処理システム。
【請求項5】
前記計測値が前記改善目標基準を達成していない場合に、少なくとも前記患者の服薬頻度に係る情報の入力を前記患者に求める自動問診処理を実行する、患者側情報処理端末をさらに有しており、
前記服薬情報取得手段は、前記患者側情報処理端末において実行される自動問診処理を介して前記患者から入力される前記服薬情報を取得する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の生体情報処理システム。
【請求項6】
前記服薬情報には、服薬によって前記患者に生じた副作用の有無及び種類についての情報が含まれ、
前記自動問診処理は、服薬によって前記患者に生じた副作用の有無及び種類についての情報の入力をさらに求める、
ことを特徴とする、請求項5に記載の生体情報処理システム。
【請求項7】
第二所定期間における前記計測値及び前記服薬情報に基づいて、該第二所定期間の前記患者における治療のための取り組みの評価に係る情報を含む行動評価情報を生成する行動評価情報生成手段をさらに有しており、
前記患者側情報処理端末は、前記行動評価情報を出力する、
ことを特徴とする、請求項5又は6に記載の生体情報処理システム。
【請求項8】
第二所定期間における前記計測値及び前記服薬情報に基づいて、該第二所定期間の前記患者における治療のための取り組みの評価に係る情報を含む行動評価情報を生成する行動評価情報生成手段と、
前記行動評価情報が出力される患者側情報処理端末と、をさらに有する、
ことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の生体情報処理システム。
【請求項9】
前記計測値が前記改善目標基準を達成していない場合に、前記患者に対して推奨される治療方針に係る推奨治療情報を生成する推奨治療情報生成手段をさらに有しており、
前記第二出力手段には、前記推奨治療情報がさらに出力される、
ことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の生体情報処理システム。
【請求項10】
前記薬効確認支援画像には、前記計測値と前記改善目標基準との差分値の情報が含まれる、
ことを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の生体情報処理システム。
【請求項11】
前記計測値に基づいて、前記患者を受け持つ医療従事者が留意すべき事項に係る注釈情報を生成する注釈情報生成手段をさらに有し、
前記第二出力手段には、前記注釈情報がさらに出力される、
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の生体情報処理システム。
【請求項12】
前記改善目標基準は、前記患者に対して処方された薬剤を前記患者が用法・用量に従って前記第一所定期間服薬した場合に想定される変化後の前記生体情報の値である、
ことを特徴とする請求項1から11のいずれか一項に記載の生体情報処理システム。
【請求項13】
前記計測値取得手段と、前記比較手段と、前記服薬情報取得手段と、前記薬効確認支援画像生成手段と、前記警告情報生成手段と、を有しており、請求項1から12のいずれか一項に記載の生体情報処理システムの少なくとも一部を構成する、生体情報処理装置。
【請求項14】
患者の生体情報に係る計測値を取得する計測値取得ステップと、
前記計測値と予め設定される改善目標基準とを比較する比較ステップと、
前記計測値が前記改善目標基準を達成していない場合に、少なくとも前記患者の服薬頻度の情報を含む服薬情報を取得する服薬情報取得ステップと、
前記患者の前記計測値の第一所定期間ごとの変化を示す計測値変遷情報及び前記服薬情報を一覧可能な、薬効確認支援画像を生成する薬効確認支援画像生成ステップと、
前記計測値が前記改善目標基準を達成していない場合に、その旨の警告情報を生成する警告情報生成ステップと、
前記警告情報を出力する第一出力ステップと
前記薬効確認支援画像を出力する第二出力ステップと、
を有する、生体情報処理方法。
【請求項15】
コンピュータを請求項13の生体情報処理装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルスケア関連の技術分野に属し生体情報処理システム、生体情報処理装置、生体情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、遠隔医療に関するニーズが高まっており、その一環として、患者が自宅で計測した血糖値や血圧値等の生体情報をデータベースに送信し、医療従事者があらかじめ設定した目標値の範囲外であることを警告したり、計測結果を見ながら、医療従事者がビデオ通話で状況を確認し指導したり、医師が投薬変更を検討するような監視システムが提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
しかしながら、このような従来のシステムにおいては、生体情報の計測値の状況と目標値の関係がどのような場合であっても、医療従事者が検討を行うためにデータが多くなればなるほど、医療従事者の業務負荷が増加するという問題がある。
【0004】
また、治療方針により異なる、期待(想定)される変化(改善効果)と計測値との乖離を評価していないために、そもそも現在採用されている治療方針が適切で、今後も継続するべきなのか否かが不明であるという問題がある。
【0005】
また、従来のシステムにおいても、服薬のような患者が治療のために行うべき取り組み(以下、目標行動ともいう)の遵守度をモニタリングしているが、当該遵守度と治療効果との関係が評価されていないため、改善効果が見られない(或いは想定通りにいかない)場合に、治療方針が不適切なのか、目標行動の遵守度が低いのか区別がつかないという問題がある。
【0006】
さらに、患者が行うべき目標行動の遵守度のモニタリングにおいては、患者側において、食事、服薬、運動、生体情報の計測などの日々の生活イベントごとにシステムへの入力が必要となり、患者の負担は極めて大きなものとなる。このため、患者が必ずしもモニタリングに全面的に協力するとは限らず、正確なモニタリングが行えない虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/235909号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のような問題に鑑みて、本発明は、遠隔医療に係るシステムにおいて、医療従事者および患者の作業負荷を低減することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明は以下の構成を採用する。即ち、
患者の生体情報に係る計測値を取得する計測値取得手段と、
前記計測値と予め設定される改善目標基準とを比較する比較手段と、
前記計測値が前記改善目標基準を達成していない場合に、少なくとも前記患者の服薬頻度の情報を含む服薬情報を取得する服薬情報取得手段と、
前記患者の前記計測値の第一所定期間ごとの変化を示す計測値変遷情報及び前記服薬情
報を一覧可能な、薬効確認支援画像を生成する薬効確認支援画像生成手段と、
前記計測値が前記改善目標基準を達成していない場合に、警告情報を生成する警告情報生成手段と、
前記警告情報を出力する第一出力手段と、
前記薬効確認支援画像を出力する第二出力手段と、
を有する、生体情報処理システム、である。
【0010】
ここで、「第一所定期間」には特に限定は無く、任意の期間に定めることができる。例えば、1週間であってもよいし、1カ月であってもよく、1日、或いは数時間単位であってもよい。また「改善目標基準」についても、汎用的ないわゆる正常値のようなものであってもよいし、患者の状況、処方箋などに応じて都度決定されるような値であってもよい。また、「出力手段」とは例えば液晶ディスプレイなどの表示装置であってもよいし、プリンタなどの印刷装置であってもよい。なお、前記第一出力手段と前記第二出力手段は同一の出力手段であってもよい。即ち、生成された警告情報は、前記薬効確認支援画像を出力する表示装置などに表示されるようにしてもよいし、別途医療従事者が使用する携帯電話などのポータブル機器を介して画像・音声で出力されるようにしてもよい。また、ここでいう警告情報は、いわゆる警報のように即時的に出力されるようなものに限られない。例えば、医師が定常的に確認する電子カルテなどの患者管理に係るシステムにおいて、当該確認時に警告対象であることを示すような情報(マーク表示、警告音など)として出力されるものも含まれる。
【0011】
このような構成であると、生体情報の計測値が予め設定される改善目標基準に達していない場合には、その旨の警告情報が生成され、当該警告は任意の出力手段を介して出力することができる。このため、医療従事者は計測に係る生体情報の計測値が目標に達していない患者がいる場合には、容易にそのことを知ることが可能になる。また、患者の計測データは、所定期間ごとの計測データの変遷を示すデータと患者の服薬頻度に関する情報を一覧可能に含む画像(薬効確認支援画像)として出力可能であるため、医療従事者(特に医師)は当該画像を確認することで、現在の治療方針が適切か否かを速やかに決定することができる。また、患者は目標行動を遵守することによって計測値が改善目標基準を達成していれば、煩わしいシステムへの入力などを別段行う必要はないため、患者側に求める負担は最小限に抑えることができる。
【0012】
また、前記比較手段は、前記第一所定期間における前記計測値の平均値と前記改善目標基準とを比較し、
前記服薬情報取得手段は、前記平均値が前記改善目標基準を達成していない場合に、前記第一所定期間における前記患者の服薬頻度の情報を含む服薬情報を取得するものであってもよい。
【0013】
所定期間(例えば1週間)の間、毎日生体情報を計測すると、所定期間内の生体情報の計測値には当然にバラツキが生じ得るが、これらの計測値の平均値を所定期間における一の計測データとして扱うことで、前記改善目標基準との比較を適切に行うことができる。
【0014】
また、前記生体情報は血圧に係る情報であって、
前記計測値取得手段は、1回の計測ごとに、前記計測値として収縮期血圧値と拡張期血圧値を取得し、
前記比較手段によって比較の対象となる前記改善目標基準は、前記収縮期血圧値と前記拡張期血圧値のそれぞれに対して設定されており、
前記服薬情報取得手段は、前記収縮期血圧値と前記拡張期血圧値のいずれかが、それぞれに対して設けられた前記改善目標を達成していない場合に、前記服薬情報を取得し、
前記警告情報生成手段は、前記収縮期血圧値と前記拡張期血圧値のいずれかが、それぞ
れに対して設けられた前記改善目標を達成していない場合に、前記警告情報を生成する、ものであってもよい。
【0015】
計測対象の生体情報が血圧の場合(例えば高血圧症の患者の場合)、収縮期血圧(systolic blood pressure)と拡張期血圧(diastolic blood pressure)のいずれの血圧値もコントロールする必要があるため、上記のような構成であると好適である。
【0016】
また、前記計測値取得手段は、1回の計測ごとに、前記血圧が計測された時間帯を特定可能な時間帯情報をさらに取得し、
前記計測値変遷情報は、前記収縮期血圧値及び前記拡張期血圧値の前記第一所定期間ごとの変化を前記時間帯別に示すものであってもよい。
【0017】
ここで、時間帯情報は例えば日時を示す時刻データなどであってもよい。血圧の計測の場合、起床後(朝食前)と就寝前の2度の計測が推奨されており、時間帯ごとに計測データを管理できるような上記の構成が好ましい。
【0018】
また、前記生体情報処理システムは、前記計測値が前記改善目標基準を達成していない場合に、少なくとも前記患者の服薬頻度に係る情報の入力を前記患者に求める自動問診処理を実行する、患者側情報処理端末をさらに有しており、
前記服薬情報取得手段は、前記患者側情報処理端末において実行される自動問診処理を介して前記患者から入力される前記服薬情報を取得するものであってもよい。
【0019】
このような構成であると、例えば患者が使用するスマートフォンなどの携帯型情報処理端末のアプリケーションの機能として、いわゆるチャットボットとの問答を介して、患者自身から自覚的な情報を取得することが可能となる。なお、服薬情報の取得手段はどのようなものであってもよく、このような態様に限られない。例えば、患者が薬剤を収容している収容具に薬剤の取り出しを検知するセンサを設けて、センサが取得した情報(薬剤の取り出された量、日時)から、服薬情報を取得するのであってもよい。また、患者が薬剤を購入する薬局のデータベースと連系することで、その販売履歴から、服薬情報を取得するのであってもよい。
【0020】
また、前記服薬情報には、服薬によって前記患者に生じた副作用の有無及び種類についての情報が含まれ、前記自動問診処理は、服薬によって前記患者に生じた副作用の有無及び種類についての情報の入力をさらに求めるものであってもよい。患者が用法用量に従って服薬しないことの原因として、副作用の存在があるため、上記のような構成により副作用に係る情報を併せて取得することで、適切な治療方針の検討に役立てることができる。
【0021】
また、前記生体情報処理システムは、第二所定期間における前記計測値及び前記服薬情報に基づいて、該第二所定期間の前記患者における治療のための取り組みの評価に係る情報を含む行動評価情報を生成する行動評価情報生成手段と、前記行動評価情報が出力される患者側情報処理端末と、をさらに有していてもよい。なお、ここでいう「第二所定期間」は前記第一所定期間と同じ期間であってもよいし、異なる期間であってもよい。このような構成によれば、患者は自らの治療のための取り組みに応じたフィードバックを得られるため、治療継続のモチベーション維持をサポートすることができる。
【0022】
また、前記生体情報処理システムは、前記計測値が前記改善目標基準を達成していない場合に、前記患者に対して推奨される治療方針に係る推奨治療情報を生成する推奨治療情報生成手段をさらに有しており、前記第二出力手段には、前記推奨治療情報がさらに出力される、ものであってもよい。このような構成であれば、医師は推奨治療情報を参照しな
がら、治療方針の検討を行うことができ、より速やかな治療方針の決定(変更)を行うことができる。
【0023】
また、前記薬効確認支援画像には、前記計測値と前記改善目標基準との差分値の情報が含まれていてもよい。これによれば、生体情報のコントロール状況がより容易に理解でき、医療従事者はより速やかな判断を行うことができる。
【0024】
また、前記生体情報処理システムは、前記計測値に基づいて、前記患者を受け持つ医療従事者が留意すべき事項に係る注釈情報を生成する注釈情報生成手段をさらに有しており、前記第二出力手段には、前記注釈情報がさらに出力されてもよい。また、そのような注釈情報がある場合に、その旨の警告情報を出力するようにしてもよい。
【0025】
例えば、血圧の計測値について、前記改善目標基準は達成できているものの、薬剤の効果が強すぎるなどの理由から、低血圧の状態になっているような場合には、表面上はコントロール下にあり、問題ないように見えてしまう。このような場合に、低血圧状態である旨など、注意を促す注釈情報を標記する、或いはそのような情報がある旨をアラートすることで、医療従事者は早期に注意(或いは対処)が必要な状態に気づくことができる。なお、注釈情報内容に特に制限はなく、例えば、各種データに基づいて、二次性高血圧の可能性を示唆するような情報であってもよい。
【0026】
また、前記改善目標基準は、前記患者に対して処方された薬剤を前記患者が用法、用量に従って前記第一所定期間服薬した場合に想定される変化後の前記生体情報の値であってもよい。これによれば、所定期間ごとの目標値が現状に応じて決定されることになり、患者のモチベーション維持の助けになる。また、いわゆる正常値などを改善目標基準とすることに比べて、基準を達成できないことが(採用した薬剤などの)治療方針が適切でないことを示唆する可能性が高いため、早期に治療方針の見直しを行うことが可能になる。
【0027】
また、本発明は、前記計測値取得手段と、前記比較手段と、前記服薬情報取得手段と、前記薬効確認支援画像生成手段と、前記警告情報生成手段と、を有しており、前記の生体情報処理システムの少なくとも一部を構成する生体情報処理装置としても捉えることができる。
【0028】
また、本発明は、コンピュータをこのような生体情報処理装置として機能させるためのプログラム、そのようなプログラムを非一時的に記録したコンピュータ読取可能な記録媒体として捉えることもできる。
【0029】
また、本発明は、患者の生体情報に係る計測値を取得する計測値取得ステップと、
前記計測値と予め設定される改善目標基準とを比較する比較ステップと、
前記計測値が前記改善目標基準を達成していない場合に、少なくとも前記患者の服薬頻度の情報を含む服薬情報を取得する服薬情報取得ステップと、
前記患者の前記計測値の第一所定期間ごとの変化を示す計測値変遷情報及び前記服薬情報を一覧可能な、薬効確認支援画像を生成する薬効確認支援画像生成ステップと、
前記計測値が前記改善目標基準を達成していない場合に、警告情報を生成する警告情報生成ステップと、
前記警告情報を出力する第一出力ステップと、
前記薬効確認支援画像を出力する第二出力ステップと、
を有する、生体情報処理方法としても捉えることができる。
【0030】
なお、上記構成及び処理の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、遠隔医療に係るシステムにおいて、現在の治療方法が適切か否かを早期に決定することができるとともに、医療従事者および患者の作業負荷を低減することが可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、実施例に係る生体情報処理システム1の構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、実施例において行われる遠隔医療の流れを模式的に示したフローチャートである。
【
図3】
図3は、実施例に係るサーバ装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施例に係る医師側端末の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、医師側端末において出力される画面例を説明する第1の図である。
【
図6】
図6は、医師側端末において出力される画面例を説明する第2の図である。
【
図7】
図7は、医師側端末において出力される画面例を説明する第3の図である。
【
図8】
図8は、実施例に係る患者側端末の機能構成を示すブロック図である。
【
図9】
図9Aは、実施例に係る自動問診プログラム実行時の画面例を示す第1の図である。
図9Bは、実施例に係る自動問診プログラム実行時の画面例を示す第2の図である。
【
図10】
図10は、実施例に係る生体情報処理システム内で行われる情報の授受、及び処理の流れを示す図である。
【
図11】
図11は、実施例の変形例に係る生体情報処理システム2の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<実施例1>
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成要素の寸法、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0034】
(システム構成)
図1は、本実施例に係る生体情報システム1の構成を示す概略図である。
図1に示すように、生体情報処理システム1は、サーバ装置100、医師が使用する医師側端末200、患者Pが使用する患者側端末300及び血圧計400を含んで構成され、これらの各構成は通信ネットワークNを介して相互に通信可能となっている。
【0035】
本実施例に係る生体情報システム1は遠隔医療に係るシステムであり、患者が自宅で計測した血圧値を、ネットワークNを介してサーバ装置100に送信し、当該情報を処理して医療従事者に提供することによって、医師が患者の治療を行うことを補助するためのものである。
【0036】
図2は本実施例において行われる遠隔医療の流れを模式的に示したフローチャートである。以下では
図2を用いて、具体的に本実施例において行われる遠隔医療について説明する。即ち、高血圧の確定診断を受けた患者は、医師の処方箋に従って投薬治療を開始し、自宅において自ら継続的に血圧を計測する。生体情報システム1は当該計測値を収集し、所定期間経過後(ここでは1~2週間後)に、予め設定されている目標値を達成しているか否かが判定される(以下、計測値が目標値を達成していることを「コントロールされている」などのようにも表現する)。ここで、計測値が目標値を達成しているとは、例えば、血圧値が所定の閾値未満であることを意味する。そして、計測値がコントロールされている状況であれば、そのまま同じ薬剤の服用が継続され、改めて所定期間(ここでは1カ
月)経過後に、血圧の計測値がコントロールされた状況か否かの判定が行われる。
【0037】
一方、目標値を達成していない場合には、患者が処方箋通りに薬を服用しているか、服用状況の確認が行われる。また、計測値の所定期間ごとの変遷の確認が医師によって行われ、服用状況の情報と併せて、治療方針の決定に用いられる。
【0038】
医師は、計測値の変遷の状況から、投薬に一定の効果が出ていると判断した場合には、引き続き同じ薬の投薬(様子見)を決定する。その場合には、改めて所定期間(ここでは1~2週間)経過後に、血圧の計測値がコントロールされた状況か否かの判定が行われる。
【0039】
また、投薬の効果が見られない場合に、医師は他の疾患の可能性を考慮し、追加の検査や、他の疾患を考慮に入れた治療(処方を含む)の実施を決定する。その場合には、改めて所定期間(ここでは1~2週間)経過後に、血圧の計測値がコントロールされた状況か否かの判定が行われる。
【0040】
また、他の疾患が原因ではなく、副作用による服用の中止など、服用する薬剤の変更で状況の改善が見込まれるような場合には処方内容を変更する。その場合には、改めて所定期間(ここでは1~2週間)経過後に、血圧の計測値がコントロールされた状況か否かの判定が行われる。
【0041】
以上のようなフローが繰り返し行われることで、高血圧患者の遠隔医療が実行されるが、
本実施例に係る生体情報処理システム1は、このようなフローを行うことの支援を行い、医師(医療従事者)及び患者双方の負担を軽減するものである。以下、システムの各構成について詳細に説明する。
【0042】
(サーバ装置)
図3はサーバ装置100の機能構成を示すブロック図である。サーバ装置100は、一般的なサーバコンピュータにより構成され、
図3に示すように、制御部110、通信手段120、記憶手段130を備えている。
【0043】
制御部110はサーバ装置100の制御を司る手段であり、例えばCPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)などのプロセッサによって構成される。また、制御部110は、生体情報管理に係る機能モジュールとして、計測値取得部111、計測値比較部112、服薬情報取得部113、薬効確認支援画像生成部114、警告情報生成部115、自動問診トリガ信号生成部116、行動評価情報生成部117、推奨治療情報生成部118、注釈情報生成部119の各機能部を備えている。これらの各機能部については後に詳しく説明する。
【0044】
通信手段120は、サーバ装置100を通信ネットワークNに接続するための通信手段であり、例えば通信インターフェースボードや、無線通信のための無線通信回路を含んで構成される。
【0045】
記憶手段130は、図示しないが、ROM(Read only memory)、RAM(Random access memory)等の主記憶部と、EPROM、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Device)、リムーバブルメディア等の補助記憶部とが含まれている。補助記憶部には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラムなどが格納されている。そして、該格
納されたプログラムを主記憶部の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行を通じて各構成部等が制御されることによって、所定の目的を果たす各機能部を実現することができる。
【0046】
計測値取得部111は、患者Pが血圧計400で計測した計測値を通信ネットワークNを介して取得し、記憶手段130に格納する。計測値比較部112は、取得した計測値(具体的には、一週間などの所定期間毎の計測値の平均値)と、個々の患者P毎に予め設定されている目標値とを比較する。これによって、患者Pの血圧値がコントロールされているか否かが判断される。なお、目標値は例えば記憶手段130に予め格納されるようにすればよい。
【0047】
患者Pの血圧値がコントロールされていない(即ち、目標を達成していない)場合には、自動問診トリガ信号生成部116が、後述するように、患者側端末300での自動問診を実行するための信号を生成する。生成された信号は、通信手段120から発信され、患者側端末300において受信される。また、服薬情報取得部113は、患者側端末300で実行される自動問診によって患者Pの服薬頻度の情報を含む服薬情報を取得する。
【0048】
患者Pの血圧値がコントロールされていない場合には、さらに、警告情報生成部115が、後述するように医師側端末200に出力するための警告情報を生成する。生成された警告情報は、通信手段120から送信され、医師側端末200において受信される。
【0049】
注釈情報生成部119は、取得した計測値に基づいて、患者Pを受け持つ医師が留意すべき事項に係る注釈情報を生成する。具体的には、例えば、一見血圧がコントロールできているように見えるものの、実は薬が効きすぎて低血圧の状態になっているような場合などに、その旨の注釈情報を生成する。
【0050】
薬効確認支援画像生成部114は、取得した計測値の所定期間ごとの変化を示す計測値変遷情報、及び服薬情報を一覧可能な、薬効確認支援画像を生成する。また、薬効確認支援画像には、前記注釈情報も併せて表示されるようになっていてもよい。生成された薬効確認支援画像は、通信ネットワークNを介して医師側端末200に送信される。
【0051】
行動評価情報生成部117は、所定期間における計測値及び服薬情報に基づいて、当該所定期間内の患者Pの目標行動の評価に係る情報を含む行動評価情報を生成する。ここで、目標行動の評価に係る情報とは、例えば、計測値の変遷をグラフ化したものであってもよい。また、計測値のコントロール状況に応じたメッセージ(例えば、目標を達成しているのであれば、その事実及び努力を称え継続した努力を促すような文言)などとすることもできる。生成された行動評価情報は、適切なタイミングで通信手段120から発信され、患者側端末300において受信される。
【0052】
推奨治療情報生成部118は、計測値や服薬情報(さらにはその他の情報)に基づいて、患者Pの病状改善のために推奨される治療方針(処方)が存在する場合には、それを医療従事者にサジェストする情報を生成する。生成された情報は、薬効確認支援画像に含められるのであってもよいし、それとは別途に医師側端末200で出力可能なようになっていてもよい。
【0053】
(医師側端末)
図4は医師側端末200の機能構成を示すブロック図である。医師側端末200は、一般的なコンピュータ、例えば固定設置型のパーソナルコンピュータ、携帯型のノート型パーソナルコンピュータ或いはタブレット型端末などであり、制御部210、入力手段220、出力手段230、記憶手段240、通信手段250を備えている。
【0054】
制御部210は医師側端末200の制御を司る手段であり、例えば、CPUなどによって構成される。また、入力手段220は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カメラ、マイクなど、外部からの情報入力を受け付ける手段である。また、出力手段230は、液晶ディスプレイ、スピーカーなどを含んで構成される。記憶手段240は、サーバ装置と同様に、主記憶部、補助記憶部などを含んで構成され、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、その他、通信ネットワークNを介して取得する各種データが格納される。また、通信手段250は、例えば通信インターフェースボードや、無線通信のための無線通信回路を含んで構成される。
【0055】
なお、図示しないが医師側端末は電子カルテ管理システムにアクセス可能になっていてもよい。このような場合には、電子カルテ管理システムに記憶された患者の電子カルテデータを読み出し、この電子カルテデータをサーバ装置へ送信するようにしてもよいし、また、サーバ装置100から送信される警告情報などを電子カルテデータと連携させるようにしてもよい。このような場合は、医師が電子カルテ管理システムを介して警告情報を確認できるようにすることも可能になる。
【0056】
医師側端末200では、通信ネットワークNを介してサーバ装置100から、警告情報、薬効確認支援画像が取得され、これらの情報は出力手段230に出力される。
図5から
図7に、医師側端末200の出力手段230で表示される画面の一例を示す。
図5は、端末の管理者である医師が受け持つ患者リストを示す画面であり、計測値が目標を達成できていない患者には、その旨の警告情報Ar(ベルのマークと数字の表記)が併せて表示される。
【0057】
図6は、個々の患者Pの薬効確認支援画像を含む管理画面であり、計測値変遷情報Trと服薬情報Meを含む画面となっている。また、
図7は
図6の薬効確認支援画像における計測値変遷情報Trを部分的にクローズアップした画面である。本実施例では、計測値変遷情報Trの部分に、注釈情報Anも併せて表示される態様となっている。
図7の注釈情報Anは低血圧の虞を示唆する情報となっている。
【0058】
図6及び
図7に示すように、本実施例における計測値変遷情報Trでは、一週間を所定期間(一まとまりの期間)として、一週間における収縮期血圧(SYS)と拡張期血圧(DIA)、及び心拍数それぞれの平均値(7 days avg home BP & Pulse)が表示されている。より具体的には、朝(起床後)と夜(就寝前)それぞれの時間帯別に、SYSとDIAそれぞれの1週間平均値が表示されている。また、これらの値は数値で記載されるだけでなく、SYSとDIAの間を棒状に埋め、目標値を示す閾値ラインとの関係が視覚的に示されたグラフとしても記載されている。なお、グラフの棒状部分から上下に出ている線は、1週間の計測における計測値のばらつきを示すものであり、上に伸びた線がその週の最高血圧値、下に伸びた線が最低血圧値を示す。また、棒状部分がハッチングで記載されている週は、計測データが少ないため、信頼性のある情報でない旨を示唆している。
【0059】
また、計測値変遷情報Trには前週の数値と比べた場合の変化量(Change from the previous week)、及び、目標値(この例では、SYSが130mmHg、DIAが80mmHg)との乖離を示す値(Difference from the target)もそれぞれ示されている。
【0060】
また、本実施例の服薬情報Meでは、患者Pがその週に服薬した薬剤の種類、服薬の頻度(この例ではAdherenceとして、服用率で表示)、訴えのあった副作用の症状と頻度、などの情報が記載されている。また、薬剤のブランド、剤形、服用量などの処方
内容を示す情報(Prescription)も参照できるようになっている。
【0061】
医師は、このような計測値変遷情報Tr及び服薬情報Meを一覧可能な画面を参照することで、患者Pに対してどのような治療方針を採用するべきなのか、容易かつ速やかに判断することが可能になる。
【0062】
(患者側端末)
図8は患者側端末300の機能構成を示すブロック図である。患者側端末300は、例えばスマートフォンやタブレット端末、腕時計型のウェアラブル端末などの携帯型情報処理端末などであり、制御部310、入力手段320、出力手段330、記憶手段340、通信手段350を備えている。
【0063】
制御部310は患者側端末300の制御を司る手段であり、例えば、CPUなどによって構成される。また、入力手段320は出力手段330と一体となったタッチパネルディスプレイなどを採用することができる。記憶手段340は、他の端末と同様に、主記憶部、補助記憶部などを含んで構成され、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、その他、通信ネットワークNを介して取得する各種データが格納される。また、通信手段250は、例えば無線通信のための無線通信回路などを含んで構成される。
【0064】
制御部310は、生体情報管理に係る機能モジュールとして、自動問診実行部311を備えている。自動問診実行部311は、サーバ装置100から送信された自動問診トリガ信号を受信すると、服薬の頻度、及び副作用の有無及びその種類を自動問診するアプリケーションを実行する。自動問診アプリケーションは例えばチャットボットのような形式を採用することができ、予め患者側端末300の記憶手段340に格納されているのであってもよいし、サーバ装置100においてASP(Application Service Provider)の態様で提供されるのであってもよい。
図9に自動問診プログラム実行時の画面例を示す。
図9Aが服薬に関する問診画面、
図9Bが副作用に関する問診画面をそれぞれ示している。
【0065】
なお、上記のようにして患者Pが自動問診に対して行った回答は、通信手段350からネットワークNを介してサーバ装置100に送信される。また、後述の血圧計400から取得した計測データの他、患者Pが入力する必要な情報を、サーバ装置100へ送信する。
【0066】
また、患者側端末300では、患者Pの治療のための取り組みの結果に応じて、当該取り組み対する評価に係る情報を含む行動評価情報を、サーバ装置100から受信し、当該内容は出力手段330に出力される。
【0067】
(血圧計)
血圧計400は、患者Pが日々の血圧計測に用いるものであり、どのような形態のものであってもよい。例えば、一般的な据え置き型のタイプであってもよいし、携帯型のカフを上腕等に巻き付ける携帯型の物であってもよいし、患者の手首に装着されるウェアラブルタイプのものであってもよい。患者Pの操作により(もしくは、ウェアラブルタイプであれば予め設定したタイミングまたは時間間隔で)、オシロメトリック法により血圧を計測し、その血圧データを例えば無線通信により患者側端末300に無線送信する。血圧計400と患者側端末300との間で使用される通信インタフェースとしては、Bluetooth(登録商標)、赤外線通信等の近距離無線データ通信規格を採用することができる。
【0068】
なお、血圧計400は、通信手段を持たないものであってもよく、その場合には、患者
Pが患者側端末300へ計測データ(血圧値と計測日時を含む)を手入力し、当該情報がサーバ装置100へ送られるようにしてもよい。なお、計測データには心拍数が含まれるようにしてもよい。
【0069】
また、患者側端末300が血圧計400の機能を兼ね備えるものであってもよい。例えば、患者側端末300が患者Pの手首に装着されるウェアラブル端末の場合には、このウェアラブル端末内に血圧計測機能が設けられていれば、血圧計400を兼ねることができる。逆に、例えば据え置き型の血圧計400が情報処理端末としての機能を備え、患者側端末300を兼ねるようにしてもよい。
【0070】
なお、血圧計400の計測方式は、心拍の一拍ごとに計測する方式や、脈波伝播時間により血圧変動を推定して当該変動をトリガとしてスポット的に血圧を計測するトリガ計測方式であってもよい。
【0071】
(システム内の情報処理の流れ)
次に、上記のような構成を有する本実施例に係る生体情報システム1で行われる情報処理の流れを説明する。
図10は、生体情報システム1内で行われる情報の授受、及び処理の流れを示す図である。
図10に示すように、先ず、患者Pが血圧計400で自身の血圧を計測する(S101)。当該計測データは都度、或いは所定期間(例えば1週間)分まとめて、患者側端末300を介してサーバ装置100に送られる(S102)。
【0072】
サーバ装置100では、受け取った計測データが記憶手段130に格納されるとともに、当該情報に基づいて、患者Pの血圧がコントロールされているかを、所定の目標値と比較することによって確認する(S103)。なお、ここでは収縮期血圧と拡張期血圧とで別の目標値が設定されており、収縮期血圧と拡張期血圧の所定期間ごとの平均値がそれぞれ対応する目標値を達成しているか否かが判断される。そして、血圧コントロールされていない(即ち、収縮期血圧と拡張期血圧のいずれかが目標値を上回っている)場合には、患者側端末300に対して、服薬頻度などを問い合わせる自動問診を開始するトリガ信号が送信される(S104)。
【0073】
自動問診のトリガ信号を受診した患者側端末300では、自動問診プログラムが実行され、患者Pによって服薬頻度を含む服薬情報が入力される(S105)。そして、当該服薬情報がサーバ装置100に送信される(S106)。サーバ装置100では、血圧値の変遷に係る情報と患者Pの服薬頻度に係る情報を含む薬効確認支援画像を生成するとともに(S107)、患者Pの血圧がコントロールされていない状態である旨の警告情報を医師側端末200に送信する。
【0074】
医師側端末200では、警告情報を受信すると当該警告情報が出力される(S109)。具体的には、出力手段230としてのディスプレイ画面に、上述のように
図5に示すようなマークが表示されるようにしてもよいし、それ以外のアラート画面を表示するようにしてもよいし、音声による出力を行ってもよい。なお、警告情報は医師側端末200とは別に医師が使用する携帯電話などの他のデバイスで出力するようにしてもよい。
【0075】
医師が警告のあった患者Pの薬効確認支援画像を参照するために、医師側端末200から薬効確認支援画像を表示するためのリクエスト情報をサーバ装置100に送信する(S110)。そして、リクエストを受けたサーバ装置100は、薬効確認支援画像を医師側端末200に提供し(S111)、医師側端末200の出力手段230に、薬効確認支援画像が表示される(S112)。ここで、薬効確認支援画像は、データが医師側端末200に送信され、医師側端末200の記憶手段240に保存されるのであってもよいし、ASPの態様で提供され、画像データの保存は不可となっていてもよい。なお、薬効確認支
援画像の内容は上述の通りである。
【0076】
以上、説明したような本実施例に係る生体情報システム1によれば、血圧のコントロール不良である患者がいる場合には、警告情報を受信することで医師は速やかにその事実を認識するとともに、提供される薬効確認支援画像を用いて検討を行うことで、効率的に当該患者の治療方針を決定(変更)することができる。具体的には、血圧値の経時的なデータが所定期間ごとに表示されるとともに、その所定期間内における患者の服薬に関する情報も一目で参照できるため、コントロール不良者であっても治療の効果が出始めているのか、処方を変更したほうが良いのか、或いは他の疾患を疑うべきなのか、等が容易に判断できるようになる。
【0077】
また、患者にとっても、血圧計測の他は、血圧がコントロールできていない場合に自動問診に応答する以外の面倒な入力作業が発生しないため、システムを利用する煩雑さを最低限に抑えることができる。さらに、服薬などの目標行動に対して、適宜行動評価情報が配信されるため、治療継続のモチベーション維持を支援することができる。
【0078】
<変形例>
上記実施例の説明は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な形態には限定されない。本発明は、その技術的思想の範囲内で種々の変形及び組み合わせが可能である。例えば、上記の実施例では、医師側端末200、患者側端末300をそれぞれ一つずつの構成で説明を行ったが、
図11に示すように、本発明は、複数の医師側端末200a~200n、及び/又は複数の患者側端末300a~300nを備える生体情報処理システム2として適用することも、当然に可能である。
【0079】
また、服薬情報を取得する手段としても、チャットボットによる自動問診プログラムに限られない。例えば、患者Pが服用する薬剤の収容具に薬剤の取り出しを検知するセンサを設け、当該センサが検知した薬剤の取り出しに係る情報(服薬頻度、服薬量など)に基づいて、服薬情報を得るのであっても構わない。また、患者Pが利用する薬局のシステムと連携を行うことで、販売された薬剤の情報、販売の時期の情報などから、服薬情報を得るようにしてもよい。
【0080】
また、上記実施例では、高血圧患者の遠隔治療の例として、処理する生体情報が血圧値(及び心拍数)の場合を説明したが、例えば、糖尿病患者の血糖値などのように、他の疾患、生体情報を対象として本発明を適用することができるのは当然である。
【符号の説明】
【0081】
1、2・・・生体情報管理システム
100・・・サーバ装置
110、210、310・・・制御部
120、240、340・・・記憶手段
130、250、350・・・通信手段
200・・・医師側端末
220、320・・・入力手段
230、330・・・出力手段
300・・・患者側端末
400・・・血圧計
P・・・患者
N・・・通信ネットワーク
Ar・・・警告情報
Tr・・・計測値変遷情報
Me・・・服薬情報
An・・・注釈情報