IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ライトウエイ株式会社の特許一覧

特開2022-180693重防食鋼材の補修方法および重防食補修鋼材
<>
  • 特開-重防食鋼材の補修方法および重防食補修鋼材 図1
  • 特開-重防食鋼材の補修方法および重防食補修鋼材 図2
  • 特開-重防食鋼材の補修方法および重防食補修鋼材 図3
  • 特開-重防食鋼材の補修方法および重防食補修鋼材 図4
  • 特開-重防食鋼材の補修方法および重防食補修鋼材 図5
  • 特開-重防食鋼材の補修方法および重防食補修鋼材 図6
  • 特開-重防食鋼材の補修方法および重防食補修鋼材 図7
  • 特開-重防食鋼材の補修方法および重防食補修鋼材 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180693
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】重防食鋼材の補修方法および重防食補修鋼材
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20221130BHJP
   B32B 15/18 20060101ALI20221130BHJP
   C23F 11/00 20060101ALI20221130BHJP
   C23C 26/00 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
E04G23/02 A
B32B15/18
C23F11/00 G
C23C26/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087309
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】520352193
【氏名又は名称】ライトウエイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】辻 正和
(72)【発明者】
【氏名】辻 勝功
【テーマコード(参考)】
2E176
4F100
4K044
4K062
【Fターム(参考)】
2E176AA07
2E176BB04
2E176BB29
2E176BB36
4F100AB03A
4F100AK01D
4F100AK03C
4F100AK51D
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10D
4F100DG12C
4F100DG15C
4F100DH01D
4F100DH02D
4F100EH61D
4F100JB02B
4F100JB07D
4F100YY00C
4K044AA16
4K044BA21
4K044BB04
4K044BC02
4K044CA27
4K044CA53
4K062AA05
(57)【要約】
【課題】防食性能が劣化したあるいは劣化するおそれのある重防食鋼材を効率的に補修可能で、重防食鋼材の防食耐久性を効果的に延ばすことが可能な補修方法を提供する。
【解決手段】重防食鋼材の補修方法は、重防食鋼材の素地鋼材を露出させる第1工程と、露出された前記素地鋼材の表面を清浄化する第2工程と、清浄化された前記素地鋼材の表面に防錆剤層を形成する第3工程と、前記防錆剤層の表面を織布または不織布の樹脂シートで被覆する第4工程と、前記樹脂シートの表面に防水樹脂層を形成する第5工程とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重防食鋼材の補修方法であって、
前記重防食鋼材の素地鋼材を露出させる第1工程と、
露出された前記素地鋼材の表面を清浄化する第2工程と、
清浄化された前記素地鋼材の表面に防錆剤層を形成する第3工程と、
前記防錆剤層の表面を織布または不織布の樹脂シートで被覆する第4工程と、
前記樹脂シートの表面に防水樹脂層を形成する第5工程と、
を有することを特徴とする重防食鋼材の補修方法。
【請求項2】
前記防水樹脂層がポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、繊維強化プラスチックのいずれかからなる層である請求項1記載の重防食鋼材の補修方法。
【請求項3】
前記樹脂シートがポリオレフィン系織布シートまたはポリオレフィン系不織布シートである請求項1又は2に記載の重防食鋼材の補修方法。
【請求項4】
前記樹脂シートの厚みが0.2mm以上0.6mm以下の範囲である請求項1~3のいずれかに記載の重防食鋼材の補修方法。
【請求項5】
前記防水樹脂層をスプレー塗布により形成する請求項1~4のいずれかに記載の重防食鋼材の補修方法。
【請求項6】
素地鋼材と、
前記素地鋼材の表面に形成された防錆剤層と、
前記防錆層を被覆する織布または不織布の樹脂シートと、
前記樹脂シートの表面に形成された防水樹脂層と、
を有することを特徴とする重防食補修鋼材。
【請求項7】
前記防水樹脂層がポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、繊維強化プラスチックのいずれかからなる層である請求項6記載の重防食補修鋼材。
【請求項8】
前記樹脂シートがポリオレフィン系織布シートまたはポリオレフィン系不織布シートである請求項6又は7に記載の重防食補修鋼材。
【請求項9】
前記樹脂シートの厚みが0.2mm以上0.6mm以下の範囲である請求項6~8のいずれかに記載の重防食補修鋼材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重防食鋼材の補修方法および重防食補修鋼材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
港湾や沿岸部、近海部に構築される構造物には、塩害による腐食を防ぐ目的で重防食が施された鋼材(重防食鋼材)が通常用いられる。このような重防食鋼材としては、例えば、素地鋼材の表面にクロメート処理層、ウレタンプライマー層、ウレタン樹脂層が積層形成されたものなどこれまでから種々提案されている(例えば特許文献1など)。
【0003】
ところが、港湾施設の代表的な期待耐用年数が50年であるところ、既存の重防食鋼材の多くは約20年ほどの防食耐久寿命しか有しないことが明らかになってきた。
【0004】
一方で、既存構造物に使用されている重防食鋼材を塗り替え補修するにあたっては、補修現場での作業空間や足場の制約などから、重防食鋼材を当初と同じ構成に補修することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-90678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、港湾施設等に用いられている防食性能が劣化したあるいは劣化するおそれのある重防食鋼材を効率的に補修可能で、重防食鋼材の防食耐久性を効果的に延ばすことが可能な補修方法を提供することをその目的とするものである。
【0007】
また本発明の他の目的は、優れた防食耐久性を有する重防食補修鋼材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成する本発明に係る重防食鋼材の補修方法は、前記重防食鋼材の素地鋼材を露出させる第1工程と、露出された前記素地鋼材の表面を清浄化する第2工程と、清浄化された前記素地鋼材の表面に防錆剤層を形成する第3工程と、前記防錆剤層の表面を織布または不織布の樹脂シートで被覆する第4工程と、前記樹脂シートの表面に防水樹脂層を形成する第5工程とを有することを特徴とする。
【0009】
前記構成の重防食鋼材の補修方法において、前記防水樹脂層がポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、繊維強化プラスチックのいずれかからなる層であるのが好ましい。
【0010】
また前記構成の重防食鋼材の補修方法において、前記樹脂シートはポリオレフィン系織布シートまたはポリオレフィン系不織布シートであるのが好ましい。
【0011】
また前記構成の重防食鋼材の補修方法において、前記樹脂シートの厚みは0.2mm以上0.6mm以下の範囲であるのが好ましい。
【0012】
また前記構成の重防食鋼材の補修方法において、前記防水樹脂層をスプレー塗布により形成するのが好ましい。
【0013】
また本発明によれば、素地鋼材と、前記素地鋼材の表面に形成された防錆剤層と、前記防錆層を被覆する織布または不織布の樹脂シートと、前記樹脂シートの表面に形成された防水樹脂層とを有することを特徴とする重防食補修鋼材が提供される。
【0014】
前記構成の重防食補修鋼材において、前記防水樹脂層がポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、繊維強化プラスチックのいずれかからなる層であるのが好ましい。
【0015】
また前記構成の重防食補修鋼材において、前記樹脂シートはポリオレフィン系織布シートまたはポリオレフィン系不織布シートであるのが好ましい。
【0016】
また前記構成の重防食補修鋼材において、前記樹脂シートの厚みは0.2mm以上0.6mm以下の範囲であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る重防食鋼材の補修方法によれば、防食性能が劣化したあるいは劣化するおそれのある重防食鋼材を効率的に補修可能で、重防食鋼材の防食耐久性を効果的に延ばすことが可能となる。
【0018】
また本発明に係る重防食補修鋼材によれば、優れた防食耐久性が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る重防食鋼材の補修方法のフローチャート例である。
図2】重防食補修鋼材の表面構造を示す部分断面概説図である。
図3】重防食補修鋼材の一例を示す断面図である。
図4】重防食補修鋼材の他の例を示す断面図である。
図5】重防食補修鋼材の他の例を示す断面図である。
図6】スプレー塗布装置SPの概説図である。
図7】プレライニング重防食鋼材の表面構造を示す部分断面概説図である。
図8】プレライニング重防食鋼材の他の表面構造を示す部分断面概説図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明に係る重防食鋼材の補修方法(以下、単に「補修方法」と記すことがある。)および重防食鋼補修材について説明するが本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。また、本明細書において「~」はその前後の数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0021】
これまでの重防食鋼材の多くは、工場において素地鋼材の表面がポリエチレンあるいはポリウレタンで被覆されたもの(プレライニング重防食鋼材)である。このようなプレライニング重防食鋼材が港湾や海洋などの構造物の設置現場に運ばれ構造物として組立られていた。
【0022】
ポリエチレンで素地鋼材が被覆されたプレライニング重防食鋼材PS1は、一般に、図7に示すように、素地鋼材1の表面から順に、表面処理層7、接着剤層8、ポリエチレン被覆層9aが積層された構造を有する。またポリウレタンで素地鋼材の表面が被覆されたプレライニング重防食鋼材PS2は、一般に、図8に示すように、素地鋼材1の表面から順に、表面処理層7、ポリウレタン被覆層9bが積層された構造を有する。なお、素地鋼材1の形状は、H形や溝形、管形、矢板、板など従来公知の形状である。
【0023】
このような従来の重防食鋼材を補修する本発明に係る方法及び重防食補修鋼材について図1及び図2に基づいて説明する。図1は本発明に係る補修方法のフローチャートであり、図2は補修された重防食鋼材(重防食補修鋼材)の表面構造を示す部分断面概説図である。
【0024】
図1に示すように本発明の補修方法は第1工程から第5工程を有する。これらの工程について以下順に説明する。なお、本発明に係る補修方法の対象はプレライニング重防食鋼材に限定されるものではなく、補修済みの重防食鋼材に対しても行うことができる。
【0025】
(第1工程)
本発明に係る補修方法の第1工程では重防食鋼材の素地鋼材1を露出させる。つまり重防食鋼材の表面から被覆層を除去する。被覆層を除去する手段としては従来公知の手段を用いることができる。例えば、切削除去などを用いることができる。
【0026】
(第2工程)
第2工程では被覆層が除去されて露出した素地鋼材1の表面を清浄化する。素地鋼材1の表面の清浄化は主として錆の除去である。錆の除去手段に特に限定はなく、従来公知の手段が用いられる。例えば、研磨材を素地鋼材1の表面に向かって高圧噴射するブラスト処理、サンダーやパワーブラシ、ワイヤホイル、ニューマチックハンマーなどの電動工具、あるいはスクレーパーやワイヤブラシなどの手動工具による研磨、酸洗浄などが挙げられる。また表面洗浄後、必要により有機溶剤をしみ込ませた布などで素地鋼材1の表面に付着している油などの汚れが除去される。
【0027】
(第3工程)
第3工程では、清浄化された素地鋼材1の表面に防錆剤が塗布されて防錆剤層2が形成される。表面が清浄化された素地鋼材1の表面は発錆しやすいので、できるだけ早く防錆剤は塗布されるのが望ましい。防錆剤としてはグリースなどが好適に使用される。防錆剤の塗布量は、一般に、300g/m~800g/mの範囲が好ましい。
【0028】
(第4工程)
第4工程では、防錆剤層2の表面が織布または不織布の樹脂シート3で被覆される。具体的な被覆方法としては、防錆剤層2の表面に帯状の樹脂シート3が螺旋状に巻き付けられて被覆されるのが好ましい。樹脂シート3が防錆剤層2の表面を被覆することで、防錆剤中の粘性の高い油分が樹脂シート3の空隙に滲入し樹脂シート3が素地鋼材1にしっかりと密着する。また次工程において樹脂シート3の表面に塗布される防水樹脂が樹脂シート3の空隙に入り込み、いわゆるアンカー効果によって防水樹脂層4が樹脂シート3の表面にしっかりと固定される。
【0029】
本発明で使用可能な樹脂シート3としては、例えば、ポリオレフィン系やポリエステル系の織布シートまたは不織布シートなどが挙げられる。これらの中でもポリオレフィン系の織布シートまたは不織布シートが好ましく、より好ましくはポリプロピレン織布シートまたはポリプロピレン不織布シートである。樹脂シート3の厚みは、外表面に防水樹脂層4を安定して形成でき、防水樹脂層4の原料の一部が樹脂シート3を通り抜けるようにする観点から0.2mm~0.6mmの範囲が好ましい。また樹脂シート3がこのような厚みであると柔軟性を有し、素地鋼材1への取り付け作業が容易になる。
【0030】
(第5工程)
第5工程では、樹脂シート3の表面に防水樹脂層4が形成される。防水樹脂層4はポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、繊維強化プラスチックのいずれかからなる層であるのが好ましい。
【0031】
防水樹脂層4がポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂から構成される場合、イソシアネートとポリオールとの2液またはイソシアネートとアミンとの2液をスプレーガンで衝突混合させて樹脂シートの表面に塗布することができ、作業労力の軽減および作業時間の短縮化が可能となる。防水樹脂原料としてイソシアネートとポリオールとの2液を用いてスプレー塗布する場合には、例えば図6に示すスプレー塗布装置SPを用いるのが好ましい。図6に示すスプレー塗布装置SPでは、ドラム缶61とドラム缶62からイソシアネートとポリオールとがそれぞれ装置本体60に供給され、装置本体60において所定圧力に調整されたイソシアネートとポリオールは加熱ホース63を介してスプレーガンGに供給される。そして、スプレーガンGにおいてイソシアネートとポリオールとが混合されて樹脂シート3の表面に噴霧されポリウレタン樹脂層が形成される。例えば、噴霧する際のスプレー塗布装置SPの装置本体60からの吐出圧力は14MPa~24MPa程度で、最高液圧温度は約90℃程度である。このようなスプレー塗布装置SPとしては、例えば、GRACO社製「H-XP3リアクター」が好適に使用される。なお、防水樹脂原料液としてイソシアネートとアミンとの2液を用いれば同様の作業でポリウレア樹脂層が形成される。
【0032】
一方、防水樹脂層4が繊維強化プラスチック(FRP)から構成される場合、ガラス繊維や炭素繊維などの繊維シートにポリエステル樹脂などの樹脂溶液を含浸させたものが、樹脂シート3の表面に貼り付けられることでFRP層が形成される。樹脂溶液を含浸させた繊維シートが樹脂シート3の表面に積層貼着されるほど防水機能は高まる。一般にFRPからなる防水樹脂層4は2層または3層の積層構造とされるのが望ましい。
【0033】
防水樹脂層4の厚みは、防水機能を発揮する限りにおいて特に限定はないが、通常、防水樹脂層4がポリウレタン樹脂またはポリウレア樹脂から構成される場合は1.5mm~5.0mmの範囲が好ましく、より好ましくは2.0mm~4.0mmの範囲である。防水樹脂層4がFRPから構成される場合は1.5mm~5.0mmの範囲が好ましく、より好ましくは2.5mm~3.5mmの範囲である。防水樹脂層4の厚みが薄すぎると防水機能や強度が不足する一方、防水樹脂層4が厚すぎると原料費用が高くなって経済的でない。
【0034】
以上説明した方法で補修した重防食補修鋼材について図3図5に基づき説明する。なお、図3図5は、素地鋼材がH形鋼である場合の長手方向に対して垂直な断面図である。
【0035】
(補修例1)
図3に示す重防食補修鋼材S1は最も単純な補修がなされた重防食補修鋼材である。重防食補修鋼材S1は、錆の除去などが行われ清浄化されたH形鋼1aの表面に、H形鋼1a側から順にグリースなど防錆剤が塗布された防錆剤層2a、不織布樹脂シート3a、ポリウレタン樹脂層(ポリウレア樹脂層)4aが積層形成されている。防錆剤層2aとポリウレタン樹脂層(ポリウレア樹脂層)4aとは非親和性が強いため、通常は、防錆剤層2aにポリウレタン樹脂層(ポリウレア樹脂層)4aを塗布形成することは困難であるところ、不織布樹脂シート3aが介在することでアンカー効果が発揮されて防錆剤層2aとポリウレタン樹脂層(ポリウレア樹脂層)4aとの強固な積層構造がH形鋼1aの表面に形成される。
【0036】
(補修例2)
図3に示す補修例1ではH形鋼1aの表面形状に沿って各層を形成したが、一般に、H形鋼1aの凹部11を不織布樹脂シート3aで巻き付け被覆することや凹部11の底面の長手方向に垂直な方向の両角部にポリウレタン樹脂層(ポリウレア樹脂層)4aを均一に効率的に塗布形成することは難しい。
【0037】
そこで、図4に示す重防食補修鋼材S2では、H形鋼1aの凹部11の断面形状と略同一の断面形状の充填部材FMがH形鋼1aの凹部11に充填され、H形鋼1aが断面四角形状の柱状体とされて、不織布樹脂シート3aの巻き付け被覆やポリウレタン樹脂層(ポリウレア樹脂層)4aの塗布形成が容易になるようにした。以下、具体的に説明する。
【0038】
まず、H形鋼1aの表面にグリースなどの防錆剤が塗布され防錆剤層2aが形成される。次に、防錆剤層2aの表面に、ワセリンが含浸された紙テープ5aが巻き付けられる。このワセリン含浸紙テープ5aによってH形鋼1aの防錆および遮空湿が高められる。その後、H形鋼1aの凹部11に断面四角形の充填部材FMが挿入される。H形鋼1aの凹部11への充填部材FMの挿入によって、H形鋼1aの凹部11が形成された面と充填部材FMの外部露出面とが略同一平面となる結果、H形鋼1aの断面形状が四角形状となる。なお、充填部材FMは軽量であることが望ましいことから充填部材FMとして発泡スチロールが好適に使用される。
【0039】
次いで、ワセリン含浸紙テープ5aの表面および充填部材FMの外部露出面に不織布樹脂シート3aが螺旋状に巻き付けられる。前述のように、充填部材FMが凹部11に充填されてH形鋼1aは断面四角形状の柱状体となっているので、不織布樹脂シート3aの巻き付け被覆が容易に行えるようになる。
【0040】
その後、補修例1と同様に、不織布樹脂シート3aの表面にポリウレタン樹脂層(ポリウレア樹脂層)4aが形成される。この工程においても、充填部材FMが凹部11に充填されてH形鋼1aが断面四角形状の柱状体となっているので、ポリウレタン樹脂層(ポリウレア樹脂層)4aがスプレー塗布によって均一に且つ容易に形成される。
【0041】
(補修例3)
図5に示す重防食補修鋼材S3は防水樹脂層としてFRP層4bを用いたものである。H形鋼1aの表面にグリースなどの防錆剤が塗布され防錆剤層2aが形成される。次に、防錆剤層2aの表面に、ワセリン含浸紙テープ5aが巻き付けられる。このワセリン含浸紙テープ5aによって防錆および遮空湿が高められる。その後、H形鋼1aの凹部11に断面四角形の充填部材FMが挿入される。H形鋼1aの凹部11への充填部材FMの挿入によって、H形鋼1aの凹部11が形成された面と充填部材FMの外部露出面とが略同一平面となる結果、H形鋼1aが断面四角形状の柱状体とさる。
【0042】
次いで、ワセリン含浸紙テープ5aの表面および充填部材FMの外部露出面にワセリン含浸紙テープ5bが巻き付けられる。前述のように、充填部材FMが凹部11に充填されたH形鋼1aは断面四角形状の柱状体となるので、ワセリン含浸紙テープ5bの巻き付けが容易に行えるようになる。そして、ワセリン含浸紙テープ5bの表面に不織布樹脂シート3aが螺旋状に巻き付けられる。その後、不織布樹脂シート3aの表面にFRP層4bが形成される。FRP層4bはガラス繊維や炭素繊維などの繊維シートにポリエステル樹脂などの樹脂溶液を含浸させたものが、不織布樹脂シート3aの表面に貼り付けることで形成されている。重防食補修鋼材S3では繊維シートは3層に積層形成されている。これにより高い防水機能が発揮される。
【0043】
(その他)
以上説明した重防食補修鋼材はH形鋼であったがこれに限定される物ではなく、素地鋼材は溝形や管形、矢板、板など従来公知のものであってよい。また、素地鋼材の表面に形成される各層の間にプライマー層などを必要により形成しても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の補修方法によれば、防食性が劣化したあるいは劣化するおそれのある重防食鋼材を効率的に補修可能で、重防食鋼材の防食耐久性を効果的に延ばすことが可能となる。
【符号の説明】
【0045】
1 素地鋼材
1a H形鋼
2 防錆剤層
2a 防錆剤層
3 樹脂シート
3a 不織布樹脂シート
4 防水樹脂層
4a ポリウレタン樹脂層(ポリウレア樹脂層)
4b FRP層
5a,5b ワセリン含浸紙テープ
11 凹部
FM 充填部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8