(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180711
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】アスベスト除去システムおよびアスベスト除去方法
(51)【国際特許分類】
B08B 9/032 20060101AFI20221130BHJP
E04G 23/08 20060101ALI20221130BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20221130BHJP
【FI】
B08B9/032 323
E04G23/08 Z
B08B3/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087347
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】516049272
【氏名又は名称】株式会社マルホウ
(74)【代理人】
【識別番号】100119792
【弁理士】
【氏名又は名称】熊崎 陽一
(72)【発明者】
【氏名】日比 裕己
【テーマコード(参考)】
2E176
3B116
3B201
【Fターム(参考)】
2E176AA14
2E176BB36
3B116AA13
3B116AB54
3B116BB22
3B116BB43
3B116BB44
3B116BB72
3B116BB73
3B201AA13
3B201AB54
3B201BB22
3B201BB43
3B201BB44
3B201BB72
3B201BB73
(57)【要約】
【課題】作業効率が向上し、かつ、費用を低減することができ、さらに、作業者の健康が害されるおそれのないアスベスト除去システムおよびアスベスト除去方法を提供する。
【解決手段】分岐管12の開口部12aに装着された筒状の第1部材31は、筒状の第2部材37に挿入されており、第2部材37には移動部材25が挿通されている。移動部材25の一端には、回転しながら各ノズル21から高圧水を噴射する除去装置20が取り付けられており、第2部材37を軸方向に沿って移動させることにより、除去装置20が高圧水を噴射しながら分岐管12の内部を軸方向に沿って移動し、分岐管12の内壁に含まれるアスベストが除去され、除去されたアスベストは排出口32から排出される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建造物に設けられた本管と、当該本管から分岐した分岐管とを有する排気管の内壁に含まれるアスベストを除去するアスベスト除去システムであって、
前記分岐管の開口部を覆うカバーと、
前記分岐管の内部において前記分岐管の軸方向に移動可能な移動部材と、
前記移動部材に取り付けられており、高圧水を前記分岐管の内壁に噴射し、前記内壁に含まれるアスベストを除去する除去装置と、
前記カバーに連通しており、前記除去装置によって除去された前記アスベストを排出するための排出口と、
を備えていることを特徴とするアスベスト除去システム。
【請求項2】
前記移動部材は、棒状であり、
前記除去装置は、前記移動部材の一端に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のアスベスト除去システム。
【請求項3】
前記カバーは、一端が開口した筒状であり、かつ、前記一端は、前記分岐管の開口部を覆うように形成されており、
前記移動部材は、前記カバーの他端から前記カバーの内部に挿通されており、前記カバーおよび前記分岐管の各軸方向に沿って移動可能であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のアスベスト除去システム。
【請求項4】
前記分岐管の開口部は、
前記建造物の壁面に設けられており、
前記カバーの前記一端には、前記分岐管の開口部を覆った当該カバーの前記一端を前記壁面に固定するためのフランジが形成されていることを特徴とする請求項3に記載のアスベスト除去システム。
【請求項5】
前記フランジと前記壁面との間を密閉する密閉部材を備えていることを特徴とする請求項4に記載のアスベスト除去システム。
【請求項6】
前記カバーは、
前記分岐管の開口部を覆う一端を有する筒状の第1部材と、
前記第1部材を内側に挿入した状態で前記第1部材の軸方向に沿って移動可能な筒状の第2部材と、を備えており、
前記移動部材は、
前記第1部材および前記第2部材に挿通されており、前記第2部材を自身の軸方向に沿って移動させることにより、前記分岐管の内部を前記分岐管の軸方向に沿って移動可能であることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載のアスベスト除去システム。
【請求項7】
前記移動部材は中空に形成されており、かつ、前記カバーに挿通されており、
前記高圧水は、前記移動部材の内部を通じて前記除去装置へ供給されることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のアスベスト除去システム。
【請求項8】
高圧水を前記除去装置へ供給する高圧水供給装置と、
前記排出口から排出されるアスベストおよび水を吸引する吸引装置と、
前記吸引装置により吸引され、前記排出口から排出されるアスベストおよび水からアスベストを濾過する濾過部と、を備えていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のアスベスト除去システム。
【請求項9】
複数階構造の建造物に設けられた本管と、少なくとも2つ以上の階において前記本管から分岐した複数の分岐管とを有する排気管の内壁に含まれるアスベストを除去するアスベスト除去方法であり、
前記分岐管の開口部を覆うカバーと、
前記分岐管の軸方向に移動可能な移動部材と、
前記移動部材に取り付けられており、高圧水を前記分岐管の内壁に噴射し、前記内壁に含まれるアスベストを除去する除去装置と、
前記カバーに連通しており、前記除去装置によって除去された前記アスベストおよび前記除去装置から噴射された水を排出するための排出口と、
前記除去装置へ高圧水を供給する高圧水供給装置と、
前記排出口から排出されるアスベストおよび水を吸引する吸引装置と、
前記吸引装置により吸引され、前記排出口から排出されるアスベストおよび水からアスベストを濾過する濾過部と、を備えたアスベスト除去システムを用いるアスベスト除去方法であって、
前記排出口を有する前記カバーを複数用意し、
前記少なくとも2つ以上の階に設けられた各分岐管のうち、少なくとも2つ以上の分岐管のそれぞれに前記カバーを装着する装着工程と、
前記アスベスト除去システムにより、前記カバーが装着された分岐管の内壁に含まれているアスベストを除去するとともに、その除去されたアスベストおよび前記除去装置から噴射された水を前記吸引装置によって前記排出口から吸引し、その吸引されたアスベストおよび水からアスベストを前記濾過部によって濾過する除去工程と、を有し、
前記装着工程により前記カバーが装着された各分岐管に対して前記除去工程を順番に実行することを特徴とするアスベスト除去方法。
【請求項10】
前記装着工程により前記カバーが装着された各分岐管に対して前記除去工程を、前記カバーが装着された分岐管を有する階のうち、最も上の階から順番に実行することを特徴とする請求項9に記載のアスベスト除去方法。
【請求項11】
前記装着工程または前記除去工程を行う前に、前記本管の内壁に含まれるアスベストを前記除去装置によって除去することを特徴とする請求項9または請求項10記載のアスベスト除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物に設けられた排気管の内壁に含まれるアスベストを除去するアスベスト除去システムおよびアスベスト除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示すように、鉄筋コンクリート製のビル(例えば、学校)などの建造物90の壁には、排気管10が埋設されている。排気管10は、上下方向に延びる本管11と、建造物90の各階において本管11から横方向に分岐した複数の分岐管12とを有する。各分岐管12は、各階の部屋に設けられた暖房器具(図示せず)に接続されており、暖房器具から排出される排ガスは、分岐管12から本管11を通じて屋外へ排気される。本管11および各分岐管の内壁にはアスベストが含まれている。
従来は、本管11の内壁を切削する装置をワイヤに吊り下げ、その装置を本管11の内部で昇降させることにより、本管11の内壁に含まれているアスベストを除去している。また、ワイヤに吊り下げて用いる上記の装置は、分岐管12では使用することができないため、斫り機やコア抜き機などで分岐管12の内壁を削り取っていた。また、分岐管12が埋設されている壁を斫ることにより、分岐管12を壁ごと取り除いていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述した従来のアスベスト除去方法は、本管11および分岐管12の各内壁から除去されたアスベストが、分岐管12から漏れ出るため、分岐管12の周囲を養生した中で作業を行い、作業者は防護服を着用しなければならないので、作業効率が悪いし、費用が高くなるという問題がある。
また、作業者は、隔離養生された閉鎖空間の中で防護衣および全面型防塵マスクを着用した状態で作業を行うため、汗だくになり、過酷を極める。さらに、防塵マスクを着用していてもアスベストを吸引するおそれがある。
つまり、前述した従来のアスベスト除去方法は、作業者の健康を害するおそれが高いという問題もある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した諸問題を解決するために鋭意研究の結果創出されたものであり、作業効率が向上し、かつ、費用を低減することができ、さらに、作業者の健康が害されるおそれのないアスベスト除去システムおよびアスベスト除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(第1の発明)
前述した目的を達成するため、本願の第1の発明に係るアスベスト除去システムは、
建造物(90)に設けられた本管(11)と、当該本管(11)から分岐した分岐管(12)とを有する排気管(10)の内壁に含まれるアスベストを除去するアスベスト除去システム(1:
図1)であって、
分岐管(12)の開口部を覆うカバー(30)と、
分岐管(12)の内部において分岐管(12)の軸方向に移動可能な移動部材(25)と、
移動部材(25)に取り付けられており、高圧水を分岐管(12)の内壁に噴射し、内壁に含まれるアスベストを除去する除去装置(20)と、
カバー(30)に連通しており、除去装置(20)によって除去されたアスベストを排出するための排出口(32)と、
を備えていることを特徴とする。
【0007】
本願の第1の発明によれば、分岐管の開口部をカバーで覆い、移動部材に取り付けられた除去装置を分岐管の軸方向に移動させ、除去装置から高圧水を噴射することにより、分岐管の内壁に含まれるアスベストを除去し、その除去したアスベストをカバーの排出口から排出することができるため、除去されたアスベストを作業者が吸引して健康を害するおそれがない。
また、本願の第1の発明によれば、分岐管の周囲を養生する必要がないし、作業者が防護衣および全面型防塵マスクを着用する必要がないため、作業効率を向上させることができ、かつ、費用を低減することができる。
【0008】
(第2の発明)
前述した目的を達成するため、本願の第2の発明は、前述した第1の発明に係るアスベスト除去システム(1)において、
移動部材(25)は、棒状であり、
除去装置(20)は、移動部材(25)の一端に取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
本願の第2の発明によれば、棒状の移動部材の一端に除去装置を取り付けることができるため、移動部材を分岐管の内部において軸方向に沿って移動させ易いので、作業効率をより一層高めることができる。
【0010】
(第3の発明)
前述した目的を達成するため、本願の第3の発明は、前述した第1または第2の発明に係るアスベスト除去システム(1)において、
カバー(30)は、一端が開口した筒状であり、かつ、一端は、分岐管(12)の開口部を覆うように形成されており、
移動部材(25)は、カバー(30)の他端からカバー(30)の内部に挿通されており、カバー(30)および分岐管(12)の各軸方向に沿って移動可能であることを特徴とする。
【0011】
本願の第3の発明によれば、移動部材は、カバーの他端からカバーの内部に挿通されており、カバーおよび分岐管の各軸方向に沿って移動可能であるため、カバーの外から移動部材を操作することにより、分岐管の内壁に含まれるアスベストを除去することができるので、作業者が除去されたアスベストを吸引するおそれがない。
【0012】
(第4の発明)
前述した目的を達成するため、本願の第4の発明は、前述した第3の発明に係るアスベスト除去システム(1)において、
分岐管(12)の開口部は、
建造物(90)の壁面(91:
図1)に設けられており、
カバー(30)の一端には、分岐管(12)の開口部を覆った当該カバー(30)の一端を壁面(91)に固定するためのフランジ(33:
図2)が形成されていることを特徴とする。
【0013】
本願の第4の発明によれば、カバーの一端には、分岐管の開口部を覆った当該カバーの一端を壁面に固定するためのフランジが形成されているため、カバーの壁面に対する取り付け強度を高めることができるので、作業中にカバーが壁面から外れてアスベストが漏れるおそれがなくなる。
【0014】
(第5の発明)
前述した目的を達成するため、本願の第5の発明は、前述した第4の発明に係るアスベスト除去システム(1)において、
フランジ(33)と壁面(91)との間を密閉する密閉部材(34,35)を備えていることを特徴とする。
【0015】
本願の第5の発明によれば、フランジと壁面との間を密閉することができるため、作業中にフランジと壁面との隙間からアスベストが漏れないようにすることができるので、作業の安全性を高めることができる。
【0016】
(第6の発明)
前述した目的を達成するため、本願の第6の発明は、前述した第3ないし第5の発明のいずれか1つに係るアスベスト除去システム(1)において、
カバー(30)は、
分岐管(12)の開口部を覆う一端を有する筒状の第1部材(31)と、
第1部材(31)を内側に挿入した状態で第1部材(31)の軸方向に沿って移動可能な筒状の第2部材(37)と、を備えており、
移動部材(25)は、
第1部材(31)および第2部材(37)に挿通されており、第2部材(37)を自身の軸方向に沿って移動させることにより、分岐管(12)の内部を分岐管(12)の軸方向に沿って移動可能であることを特徴とする。
【0017】
本願の第6の発明によれば、移動部材はカバーを構成する第1部材および第2部材に挿通されており、第2部材を自身の軸方向に沿って移動させることにより、移動部材を分岐管の内部において分岐管の軸方向に沿って移動させることができる。
つまり、第2部材を自身の軸方向に沿って移動させることにより、除去装置を分岐管の内部において分岐管の軸方向に沿って移動させることができるため、アスベストを効率良く除去することができる。
【0018】
(第7の発明)
前述した目的を達成するため、本願の第7の発明は、前述した第1ないし第6の発明のいずれか1つに係るアスベスト除去システム(1)において、
移動部材(25)は中空に形成されており、かつ、カバー(30)に挿通されており、
高圧水は、移動部材(25)の内部を通じて除去装置(20)へ供給されることを特徴とする。
【0019】
本願の第7の発明によれば、高圧水は、中空の移動部材の内部を通じて除去装置へ供給することができるため、高圧水を供給するための供給ホースを移動部材の外部に設ける必要が無く、構造を簡単にすることができるので作業性を高めることができる。
【0020】
(第8の発明)
前述した目的を達成するため、本願の第8の発明は、前述した第1ないし第7の発明のいずれか1つに係るアスベスト除去システム(1:
図3)において、
高圧水を除去装置(20)へ供給する高圧水供給装置(200)と、
排出口(32)から排出されるアスベストおよび水を吸引する吸引装置(81)と、
吸引装置(81)により吸引され、排出口(32)から排出されるアスベストおよび水からアスベストを濾過する濾過部(400,500)と、を備えていることを特徴とする。
【0021】
本願の第8の発明によれば、排出口から排出されるアスベストおよび水を吸引する吸引装置と、吸引装置により吸引されたアスベストおよび水からアスベストを濾過する濾過部とを備えているため、濾過されたアスベストを処理することができる。
【0022】
(第9の発明)
前述した目的を達成するため、本願の第9の発明は、
複数階構造の建造物(90)に設けられた本管(11)と、少なくとも2つ以上の階において本管(11)から分岐した複数の分岐管(12)とを有する排気管(10)の内壁に含まれるアスベストを除去するアスベスト除去方法であり、
分岐管(12)の開口部を覆うカバー(30)と、
分岐管(12)の軸方向に移動可能な移動部材(25)と、
移動部材(25)に取り付けられており、高圧水を分岐管(12)の内壁に噴射し、内壁(12)に含まれるアスベストを除去する除去装置(20)と、
カバー(30)に連通しており、除去装置(20)によって除去されたアスベストおよび除去装置(20)から噴射された水を排出するための排出口(32)と、
除去装置(20)へ高圧水を供給する高圧水供給装置(200)と、
排出口(32)から排出されるアスベストおよび水を吸引する吸引装置(81)と、
吸引装置(81)により吸引され、排出口(32)から排出されるアスベストおよび水からアスベストを濾過する濾過部(400,500)と、を備えたアスベスト除去システム(1:
図3)を用いるアスベスト除去方法であって、
排出口(32)を有するカバー(30)を複数用意し、
少なくとも2つ以上の階に設けられた各分岐管(12)のうち、少なくとも2つ以上の分岐管(12)のそれぞれにカバー(30)を装着する装着工程(工程2:
図4)と、
アスベスト除去システム(1)により、カバー(30)が装着された分岐管(12)の内壁に含まれるアスベストを除去するとともに、その除去されたアスベストおよび除去装置(20)から噴射された水を吸引装置(81)によって排出口(32)から吸引し、その吸引されたアスベストおよび水からアスベストを濾過部(400,500)によって濾過する除去工程(工程5,工程6:
図4)と、を有し、
装着工程(工程2)によりカバー(30)が装着された各分岐管(12)に対して除去工程(工程5,工程6)を順番に実行することを特徴とする。
【0023】
本願の第9の発明によれば、少なくとも2つ以上の分岐管のそれぞれにカバーを事前に装着しておき、各分岐管の内壁に含まれるアスベストを除去する作業を各分岐管に対して順番に行うことができるため、カバーの装着作業とアスベストの除去作業とを分岐管毎に行う方法よりも、作業効率を高めることができる。
【0024】
(第10の発明)
前述した目的を達成するため、本願の第10の発明は、前述した第9の発明に係るアスベスト除去方法において、
装着工程(工程2)によりカバー(30)が装着された各分岐管(12)に対して除去工程(工程5,工程6)を、カバー(30)が装着された分岐管(12)を有する階のうち、最も上の階から順番に実行することを特徴とする。
【0025】
カバーが装着された分岐管を有する階のうち、下の階から上の階へ順番に分岐管のアスベストを除去する方法では、上の階の分岐管から除去されたアスベストが、下の階の分岐管に付着するため、再度、分岐管を清掃する必要になる場合がある。
しかし、本願の第10の発明によれば、カバーが装着された分岐管を有する階のうち、最も上の階から順番に分岐管のアスベストを除去するため、上の階の分岐管から除去されたアスベストが、下の階の分岐管に付着しても、その付着したアスベストは、その分岐管のアスベストを除去するときに同時に除去されるので、再度、分岐管を清掃する必要がなく、作業効率を高めることができる。
【0026】
(第11の発明)
前述した目的を達成するため、本願の第11の発明は、前述した第9または第10の発明に係るアスベスト除去方法において、
装着工程(工程2)または除去工程(工程5,工程6)を行う前に、本管(11)の内壁に含まれるアスベストを除去装置(20)によって除去する(工程3)ことを特徴とする。
【0027】
本願の第11の発明によれば、分岐管のアスベストを除去する前に本管の内壁に含まれるアスベストを除去するため、最も下の階の分岐管のアスベストを除去して吸引するときに、本管から除去されて本管の下部に蓄積されたアスベストを一緒に吸引することができるので、作業効率を高めることができる。
【0028】
なお、上記各括弧内の符号および語句は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0029】
上述したように、本願発明によれば、作業効率が向上し、かつ、費用を低減することができ、さらに、作業者の健康が害されるおそれのないアスベスト除去システムおよびアスベスト除去方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るアスベスト除去システムの一部を示す説明図である。
【
図2】
図1に示すアスベスト除去システムに備えられたカバーが分岐管に装着された状態を示す部分拡大説明図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るアスベスト除去システムの全体を説明図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るアスベスト除去方法の工程図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係るアスベスト除去システムの一部を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
〈第1実施形態〉
[主要構成]
本発明の第1実施形態に係るアスベスト除去システムの主要構成について図を参照しつつ説明する。
図1に示すように、本実施形態に係るアスベスト除去システム1は、分岐管12の開口部12aに装着するカバー30と、カバー30に移動可能に挿通された移動部材25と、移動部材25の一端に取り付けられた除去装置20と、カバー30に設けられた排出口32とを備えている。カバー30は、縦断面が円形で筒状の第1部材31と、縦断面が円形で筒状の第2部材37とを備えている。第2部材37の開口した一端には、第1部材31の他端(図では後端)31aが挿入されている。第2部材37は、第1部材31の軸方向(図中矢印で示す方向、図では前後方向)に移動(スライド)可能になっている。第1部材31の周面には、筒状の排出口32が突出形成されている。この排出口32は、排出ホース52によって貯留槽401(
図3)と接続される。
【0032】
移動部材25は、第2部材37の後端37aから挿通され、さらに、第1部材31の後端31aに挿通されている。移動部材25の他端(図では後端)は、第2部材37の後端37aに固定されている。移動部材25の一端(図では前端)には、アスベストを除去する除去装置20が取り付けられている。移動部材25は、合成樹脂または金属により、中空の棒状(管状)に形成されている。移動部材25としてランスパイプを用いることもできる。除去装置20は、エアモータ(図示省略)が内蔵されたハウジング24と、エアモータによって回転する回転軸26と、この回転軸26に回転中心から半径方向に設けられた複数のノズル21とを備えている。第2部材37を自身の軸方向に沿って移動させると、移動部材25は、第1部材31および分岐管12の各軸方向(図では前後方向)に沿って移動する。除去部材20に設けられた各ノズル21は、回転しながら高圧水を分岐管12の内壁に噴射し、その内壁に含まれているアスベストを除去する。
【0033】
ハウジング24は、縦断面が円形に形成されており、分岐管12の内径よりも小さいが、回転軸26から突出した長さは、回転軸26から突出したノズル21の長さよりも長くなっている。これにより、分岐管12の内部において除去装置20の移動方向が、ぶれた場合であっても、ハウジング24が内壁に接触するが、各ノズル21が内壁に接触しないようにすることができるため、各ノズル21が損傷しないようにすることができる。つまり、ハウジング24は、各ノズル21を保護する役割をしている。なお、ハウジング24の形状は、縦断面が矩形などでも良い。
【0034】
移動部材25は、除去装置20へ高圧水を供給する高圧水供給装置200と、除去装置20のエアモータへ圧縮空気を供給するエアコンプレッサ70と接続されている。
高圧水供給装置200は、作業現場の水道などの給水源300から給水された水を取り入れ、その取り入れた水に高い圧力を印加し、その高圧水を給水ホース64を介して除去装置20へ供給する。また、高圧水供給装置200には、給水源300から取り入れた水を貯留するタンク(図示省略)が備えられている。
【0035】
第2部材37の他端(図では後端)37aは有底になっており、その他端37aには、カプラ38が着脱可能に取り付けられている。カプラ38は、給水ホース64によって高圧水供給装置200と接続されており、給気ホース71によってエアコンプレッサ70と接続されている。カプラ38は、移動部材25の内部に挿通された給水ホース64aと、カプラ38に接続された給水ホース64とを接続し、かつ、移動部材25の内部に挿通された給気ホース71aと、カプラ38に接続された給気ホース71とを接続する構造を有する。つまり、カプラ38を第2部材37の他端37aに取り付けると、高圧水供給装置200から除去装置20に高圧水が供給可能な状態になり、かつ、エアコンプレッサ70から除去装置20のエアモータに圧縮空気が供給可能な状態になる。第1部材31および第2部材37は、それぞれ合成樹脂または金属により形成されている。
【0036】
図2に示すように、第1部材31の一端(図では前端)は、分岐管12の開口部12aを覆う大きさに形成されており、その一端の周面からは、フランジ33が外方に張出し形成されている。フランジ33は、複数のアンカーボルト36によって建造物90の壁面91に固定される。フランジ33と壁面91との間には、フランジ33と壁面91との間を密閉する密閉部材34,35が介在されている。密閉部材34は、例えば、ゴムなどの合成樹脂によりリング状に形成されたパッキンであり、密閉部材35は、例えば、コーキング剤やシーリング材である。このように、フランジ33と壁面91との間を密閉することにより、除去装置20により除去されたアスベストが、フランジ33と壁面91との隙間から外部に漏れるおそれがない。
【0037】
図3に示すように、本実施形態のアスベスト除去システム1は、貯留槽400と、底板410と、アスベストを濾過するとともに収容する収容体500と、グラウトポンプ700と、濾過装置800と、中和装置900とを備えている。なお、
図1では、1台の除去装置20を示すが、作業効率を高めるために、2台以上の除去装置20を用いる場合がある。
【0038】
[貯留槽]
貯留槽400は直方体の箱状に形成されている。貯留槽400の天板401には、排出口32(
図1)と接続される排出ホース52が隙間無く挿通されている。貯留槽400の底部には、収容体500を載置するための底板410が設けられている。底板410は、枠状に形成されており、その上面は網目状に形成されている。その網目状に形成された上面に収容体500が載置される。また、底板410を形成する各側縁には、通水用の切欠部(図示せず)がそれぞれ切欠き形成されている。相対向する一つの側板404には、収容体500を係止するための係止部材(図示せず)がそれぞれ取り付けられている。図では奥にある側板404のみが図示されており、手前にある側板404は省略されている。
【0039】
また、もう一対の側板403のうち、一方の側板403(図では右端の側板)には、排水ホース701の入口を接続するための排水口408が開口形成されている。排水口408は、収容体500から滲出して貯留槽400に貯留された滲出水を排水するためのものであり、底部に近く、かつ、収容体500が載置されている底板410の上面よりも低い位置に形成されている。天板401は開閉可能に構成されており、貯留槽400に対して収容体500を出し入れすることができるようになっている。貯留槽400を構成する各板は金属製である。使用状態における貯留槽400には、外気と連通する隙間や空間は存在せず、アスベストが外気に漏れないよ構造になっている。本実施形態の貯留槽400は、トラックなどの車両の荷台に載せて作業現場へ運ぶ。
【0040】
[収容体]
収容体500は、排出ホース52の排出方向に配置されている。排出ホース52は、除去装置20により排気管10から除去されたアスベストの他、排気管10の内壁を構成するコンクリートなどの構造材、除去装置20が噴射した水などが混合した泥状の混合水を排出する。収容体500は、排出ホース52から排出される混合水に含まれるアスベストなどの除去物Rを濾過し、その濾過された除去物Rを蓄積しながら収容する形状に形成されている。本実施形態では、収容体500は、上面が開口した直方体の袋状に形成されている。収容体500は、合成樹脂製繊維を編んで形成されている。収容体500の各面には、合成樹脂製繊維の編み目が形成されており、透水性を有する。つまり、その編み目部分から混合水の水分が滲出し、除去物Rが濾過され、蓄積されるように形成されている。このように、排出ホース52から排出される混合水に含まれる除去物Rは、収容体500によって濾過され、収容体500に蓄積され、収容される。
【0041】
収容体500には、吊り上げ用ベルト(図示省略)が取り付けられており、収容体500に蓄積された除去物Rが所定量に達したときに、クレーンまたはフォークリフトなどの吊り上げ装置を使用し、収容体500を吊り上げ用ベルトを使って吊り上げ、貯留槽400の外部へ搬出する。本実施形態では、収容体500として、通称、フレコン(株式会社ナシヨナルマリンプラスチツクの登録商標で、フレキシブルコンテナバッグの略称)と呼ばれるもののうち、ポリプロピレン製またはポリエチレン製の繊維を編んで形成された、透水性に優れるとともに軽量かつ強度が高いものを用いる。貯留槽400および収容体500は、本発明の濾過部の一例である。
【0042】
[吸引装置]
貯留槽400には、貯留槽400の内部の空気を吸引することにより高真空にする吸引装置81が、吸引ホース53を介して接続されている。吸引装置81は、貯留槽400の内部の空気を吸引して貯留槽400の内部を高真空にすることにより、排出ホース52を通じてカバー30および排気管10(
図1)の内部を負圧にするための装置である。このように、貯留槽400の内部が高真空になることにより、排出ホース52を通じてカバー30および排気管10の内部が負圧になり、本管11の底部に蓄積されている除去物Rや分岐管12から除去された除去物Rが、水と共に排出口32から排出ホース52を通じて貯留槽400へ排出される。
【0043】
また、吸引装置81の排気管82には、排気管82から排出される気体中の不純物を濾過する濾過フィルタ83が着脱可能に設けられている。濾過フィルタ83は、少なくともアスベストの粒子を濾過することができる性能を備えている。例えば、濾過フィルタ83としてヘパフィルタを用いることができる。ヘパフィルタは、JISZ8122に規定されており、定格風量で粒径が0.3μmの粒子に対して99.97%以上の粒子捕集率をもち、かつ、初期圧力損失が245Pa以下の性能を持つエアフィルタである。つまり、濾過フィルタ83としてヘパフィルタを用いることにより、0.3μm以下のアスベスト粒子を99.97%以上濾過することができるため、排気管82から大気中に排気されたアスベスト粒子を人が吸い込んで健康を害するおそれがなくなる。例えば、吸引装置81としてバキュームコレクタを用いることができる。
【0044】
[グラウトポンプ]
また、貯留槽400には、収容体500から滲出して貯留槽400の底部に貯留された滲出水を貯留槽400から濾過装置800へ排水するグラウトポンプ700が、排水ホース701を介して接続されている。収容体500は、貯留槽400の底板410の上面に載置されているため、貯留槽400に貯留した滲出水の水面WSが底板410の上面よりも高くなると、収容体500が浸水するので、除去物Rの水切りが不十分になる。そして、除去物Rが水分を含むと、収容体500の重量が増加するので、収容体500を吊り上げる際に大きな動力が必要になる。このため、グラウトポンプ700は、貯留槽400における滲出水の水位が底板410の上面よりも低い水位を維持することができるように動作する。
【0045】
一方、貯留槽400の内部は、吸引装置81によって所定の真空圧になるため、貯留槽400に貯留した滲出水を排出するポンプには、その真空圧に打ち勝って滲出水を排出することができる性能が必要になる。
そこで、本願発明者は、様々なポンプを用いて試行錯誤を繰り返した結果、建築現場においてコンクリートやモルタルなどの原料を作業場所へ送り出すためのグラウトポンプが排水装置に適していることを見出した。つまり、グラウトポンプの原料注入側を貯留槽400の排水口408に接続し、原料吐出側を濾過装置800に接続することにより、貯留槽400の内部を目標の真空圧に維持しながら、貯留槽400に貯留した滲出水を濾過装置800へ排水することに成功した。
【0046】
[水処理装置]
濾過装置800および中和装置900から構成される水処理装置は、グラウトポンプ700から排水された滲出水を処理し、環境基準に適合した水に改質するための装置である。排出ホース52から貯留槽400へ排出された混合水は、収容体500により、ある程度の大きさの除去物Rが濾過されるが、収容体500の網目を通過した微細な不純物が、収容体500から滲出した滲出水と混じる。また、コンクリート粒などを含んだ混合水は、pH9以上のアルカリ性であることがあるため、貯留槽400の底部に貯留する滲出水は、自然環境へ排出することができる基準、つまり、環境基準に適合していない場合がある。
【0047】
そこで、濾過装置800は、グラウトポンプ700から排水された滲出水を濾過し、その濾過水を中和装置900へ排出する。本実施形態では、濾過装置800は、100μmメッシュの濾過フィルタを有する濾過容器と、50μmメッシュの濾過フィルタを有す濾過容器と、0.2μmメッシュの濾過フィルタを有する濾過容器とを備える。たとえば、各濾過フィルタとして、ポリプロピレン製糸巻きタイプの不純物濾過フィルタを用いることができる。
グラウトポンプ700から排水された滲出水は、上記の各濾過容器を順次通過し、貯留槽400において濾過できなかった0.2~100μmの不純物が濾過される。つまり、アスベストなどが含まれた混合水を検出限界値以下に濾過することができる。
また、中和処理槽901は、濾過装置800から排水された水を攪拌し、炭酸ガスボンベ902から注入された炭酸ガスによって水を中和する。中和処理槽901は、pH検出器と、pH指示計と、pH記録計(図示省略)とを備える。中和処理槽901は、濾過装置800から排出された水を環境基準のpH5.8~8.6に中和処理した後に自然環境などへ排水する。また、水処理装置の能力は、排水1リットル中に含有されるアスベスト繊維の数が50個以下となる能力である。
【0048】
[アスベスト除去方法]
次に、アスベスト除去方法について
図4を参照しつつ説明する。
(工程1)
アスベスト除去システム1を建造物90の作業現場に用意する。ここでは、第1部材31を各階において必要な数用意する。また、建造物90の屋上において、本願11の先端(
図1では上端)の周囲を養生し、作業空間を作る。また、分岐管12のアスベストを除去する作業を行う床に養生シートを敷くなどの前処理を行う。なお、本実施形態では、アスベストの除去および回収の作業を行う過程において、アスベストが外気に漏れるおそれがないため、法令により定められたレベル3の基準に従って作業を行うことができるが、万が一のことを考えて、カバー30の周囲を囲って養生するなど、レベル1またはレベル2を基準にした準備をしても良い。
【0049】
(工程2)
各階の分岐管12にカバー30の第1部材31を装着する。このとき、前述したように、第1部材31のフランジ33と壁面91との間に密閉部材34,35を介在させた状態で、フランジ33を複数のアンカーボルト36によって壁面91に固定する。また、最も下の階の分岐管12に装着された第1部材31の排出口32に排出ホース52を接続し、次の工程において本管11から除去された除去物Rを排出できる状態にする。また、最も下の階以外の階の各分岐管12に装着された各第1部材31の各開口部12aに蓋をする。これにより、次の工程において本管11から除去されたアスベストが各分岐管12から作業現場に漏れないようにすることができる。工程2は、本発明の装着工程の一例である。
【0050】
(工程3)
本管11のアスベストを除去する。
図1に示すように、給水ホース64および給気ホース71が接続された除去装置20をワイヤ22に吊り下げ、本管11の内部の上端および下端間を昇降できるように準備する。続いて、高圧水供給装置200、エアコンプレッサ70および吸引装置81(
図3)を始動する。そして、各ノズル21から高圧水を噴射させながら除去装置20を本管11の上端から下端まで下降させ、本管11の内壁に含まれているアスベストを除去する。本管11の内壁から除去されたアスベストを含む除去物Rは、本管11の底部に落下し、蓄積される。
【0051】
(工程4)
本管11の内壁を点検し、アスベストが残っている場合は、再度、アスベストを除去するなどの後処理を行う。例えば、照明装置と、カメラと、カメラが撮影した動画を送信する送信装置とを有する点検装置と、送信装置から送信される画像を表示するモニタとを用意する。そして、上記の点検装置をワイヤに吊り下げ、その点検装置を本管11の中で昇降させて本管11の内壁を撮影し、その撮影した画像を上記のモニタに表示し、その表示された画像を見て、アスベストが残っていないか判断する。アスベストが残っていると判断した場合は、再度、工程3を実行し、本管11の内壁に残存しているアスベストを除去する。また、アスベストが残っていないと判断した場合でも、アスベストが残っている可能性を考慮して、アスベストの飛散を抑制する飛散抑制剤を、後処理として本管11の内壁に塗布しておくこともできる。この場合、飛散抑制剤を供給する飛散抑制剤供給装置と除去装置20とを接続し、各ノズル21から飛散抑制剤を本管11の内壁に噴射するように構成することもできる。
【0052】
(工程5)
最上階の分岐管12から作業を開始する。分岐管12に装着された第1部材31の排出口32(
図1)に排出ホース52を接続する。第2部材37に挿通された移動部材25の一端に除去装置20を取り付け、その状態で第2部材37の一端を第1部材の他端31aに被せ、第2部材37を分岐管12の方へ移動させ、除去装置20を分岐管12の内部に挿入する。続いて、カプラ38を第2部材37の後端37aに取り付け、高圧水供給装置200、エアコンプレッサ70および吸引装置81(
図3)を始動する。
【0053】
(工程6)
第2部材37を自身の軸方向に沿って移動させることにより、移動部材25を第1部材31および分岐管12の各軸方向に沿って移動させる。これにより、除去装置20を分岐管12の軸方向(
図1では前後方向)に沿って移動させ、除去装置20の回転する各ノズル21から噴射される高圧水により、分岐管12の内壁に含まれているアスベストを除去する。分岐管12の内壁から除去されたアスベストを含む除去物Rは、分岐管12に装着された第1部材31の排出口32から排出ホース52を通じて貯留槽400(
図3)に排出される。工程5および工程6は、本発明の除去工程の一例である。
【0054】
(工程7)
そして、総ての分岐管12の処理を終了したか否かを判断し、総ての分岐管12の処理を終了していないと判断した場合は(No)、次の分岐管12へ移動する。そして、その移動した先の分岐管12に対して工程5および工程6を実行する。ここで、最も下の階の分岐管12のアスベストを除去しながら吸引するとき、先の工程3において、本管11の底部に蓄積された除去物R(
図1)も同時に吸引され、排出口から排出ホース52を通じて貯留槽400に排出される。
【0055】
(工程8)
また、総ての分岐管12の処理を終了したと判断した場合は(Yes)、各分岐管12の内壁を点検し、アスベストが残っている場合は、再度、アスベストを除去するなどの後処理を行う。例えば、照明装置と、カメラと、カメラが撮影した画像を表示するモニタとを用意する。そして、上記の照明装置で分岐管12の内壁を照明し、上記のカメラで内壁を撮影する。そして、モニタに表示された画像を見て、アスベストが残っていないか判断する。アスベストが残っていると判断した場合は、再度、アスベストの除去を行う。また、カメラに代えて、鏡を用いることもできる。また、アスベストが残っていないと判断した場合でも、アスベストが残っている場合を考慮して、アスベストの飛散を抑制する飛散抑制剤を、後処理として分岐管12の内壁に塗布しておくこともできる。この場合、飛散抑制剤を供給する飛散抑制剤供給装置と除去装置20とを接続し、各ノズル21から飛散抑制剤を分岐管12の内壁に噴射するように構成することもできる。
【0056】
[第1実施形態の効果]
(1)上述した第1実施形態のアスベスト除去システム1によれば、分岐管12の開口部12aをカバー30で覆い、移動部材25の一端に取り付けられた除去装置20を分岐管12の軸方向に移動させ、除去装置20から高圧水を噴射することにより、分岐管12の内壁に含まれるアスベストを除去し、その除去したアスベストをカバー30の排出口32から排出することができるため、除去されたアスベストを作業者が吸引して健康を害するおそれがない。
しかも、前述した第1実施形態のアスベスト除去システム1によれば、分岐管12の周囲を養生する必要がなく、かつ、作業者は、レベル1やレベル2のような重装備を身に付ける必要が無いため、作業効率を向上させることができ、かつ、費用を低減することができる。
【0057】
(2)また、前述した第1実施形態のアスベスト除去システム1によれば、棒状の移動部材25の一端に除去装置20を取り付けることができるため、移動部材25を分岐管12の内部において軸方向に沿って移動させ易いので、作業効率をより一層高めることができる。
【0058】
(3)さらに、前述した第1実施形態のアスベスト除去システム1によれば、カバー30の一端には、分岐管12の開口部12aを覆った当該カバー30の一端を壁面91に固定するためのフランジ33が形成されているため、カバー30の壁面91に対する取り付け強度を高めることができるので、作業中にカバー30が壁面91から外れてアスベストが漏れるおそれがなくなる。
【0059】
(4)さらに、前述した第1実施形態のアスベスト除去システム1によれば、フランジ33と壁面91との間に密閉部材34,35を介在させるため、作業中にフランジ33と壁面91との隙間からアスベストが漏れないようにすることができるので、作業の安全性を高めることができる。
【0060】
(5)さらに、前述した第1実施形態のアスベスト除去システム1によれば、移動部材25はカバー30を構成する第1部材31および第2部材37に挿通されており、第2部材37を自身の軸方向に沿って移動させることにより、移動部材25を分岐管12の各軸方向に沿って移動させることができる。
つまり、第2部材37を自身の軸方向に沿って移動させることにより、除去装置20を分岐管12の内部において分岐管12の軸方向に沿って移動させることができるため、アスベストを効率良く除去することができる。
【0061】
(6)さらに、前述した第1実施形態のアスベスト除去システム1によれば、高圧水は、中空の移動部材25の内部を通じて除去装置20へ供給することができるため、高圧水を供給するための供給ホースを移動部材25の外部に設ける必要が無く、構造を簡単にすることができるので、作業性を高めることができる。
【0062】
(7)さらに、前述した第1実施形態のアスベスト除去システム1によれば、排出口32から排出されるアスベストおよび水を吸引する吸引装置81と、吸引装置81により吸引され、排出口32から排出されるアスベストおよび水からアスベストを濾過する貯留槽400および収容体500を備えているため、濾過されたアスベストを処理することができる。
【0063】
(8)また、前述した第1実施形態のアスベスト除去方法によれば、少なくとも2つ以上の分岐管12のそれぞれに第1部材31を事前に装着しておき、各分岐管12の内壁に含まれるアスベストを除去する作業を各分岐管12に対して順番に行うことができるため、第1部材31の装着作業とアスベストの除去作業とを分岐管12ごとに行う方法よりも、作業効率を高めることができる。
【0064】
(9)第1部材31が装着された分岐管12を有する階のうち、下の階から上の階へ順番に分岐管のアスベストを除去する方法では、上の階の分岐管12から除去されたアスベストが、下の階の分岐管12に付着するため、再度、分岐管12を清掃する必要になる場合がある。
しかし、前述した第1実施形態のアスベスト除去方法によれば、第1部材31が装着された分岐管12を有する階のうち、最も上の階から順番に分岐管12のアスベストを除去するため、上の階の分岐管12から除去されたアスベストが、下の階の分岐管12に付着しても、その付着したアスベストは、その分岐管12のアスベストを除去するときに同時に除去されるので、再度、分岐管12を清掃する必要がなく、作業効率を高めることができる。
【0065】
(10)さらに、前述した第1実施形態のアスベスト除去方法によれば、分岐管12のアスベストを除去する前に本管11の内壁に含まれるアスベストを除去するため、最も下の階の分岐管12のアスベストを除去して吸引するときに、本管11から除去されて本管11の下部に蓄積されたアスベストを一緒に吸引することができるので、作業効率を高めることができる。
【0066】
(11)上述したように、前述した第1実施形態のアスベスト除去システム1およびアスベスト除去方法によれば、作業効率が向上し、かつ、費用を低減することができ、さらに、作業者の健康が害されるおそれのないアスベスト除去システムおよびアスベスト除去方法を提供することができる。
【0067】
〈第2実施形態〉
次に、本発明の第2実施形態に係るアスベスト除去システムについて
図5を参照しつつ説明する。なお、前述した第1実施形態に係るアスベスト除去システムと同一の構成については同一の符号を用い、その説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態に係るアスベスト除去システム1は、第2部材37(
図1)を備えていないことを特徴としている。第1部材31は、第1実施形態における第1部材(
図1)よりも、軸方向の長さ(図では前後の長さ)が短く、かつ、他端(図では前端)31aが有底である。その他端31aには、移動部材25が移動可能に挿通されており、移動部材25は、矢印で示すように、第1部材31および分岐管12の各軸方向(図では前後方向)に沿って移動可能になっている。
【0068】
作業者は、移動部材25の他端を持ち、第1部材31の軸方向に沿って移動させることにより、除去装置20を分岐管12の内部において分岐管12の軸方向に沿って移動させ、除去装置20の各ノズル21から噴射される高圧水により、分岐管12の内壁に含まれるアスベストを除去する。このとき、ハウジング24を案内部材として用い、ハウジング24の下面が分岐管12の内壁の下面に接触した状態で除去装置20を移動させれば、除去装置20を容易に移動させることができるため、移動部材25を支持する作業者の負担を軽減することができる。
【0069】
[第2実施形態の効果]
上述した第2実施形態のアスベスト除去システム1によれば、移動部材25は、第1部材31の他端31aから第1部材31の内部に挿通されており、第1部材31および分岐管12の各軸方向に沿って移動可能であるため、第1部材31の外から移動部材25を操作することにより、分岐管12の内壁に含まれるアスベストを除去することができるので、作業者が除去されたアスベストを吸引するおそれがない。また、重複して記載しないが、上述した第2実施形態のアスベスト除去システム1は、前述した第1実施形態と同じ効果を奏することができる。
【0070】
〈他の実施形態〉
(1)カバー30の形状は、縦断面が円形で筒状以外でも良く、例えば、縦断面が楕円、三角形または多角形の筒状でも良い。
(2)透光性を有する合成樹脂により、第1部材31および第2部材37の少なくとも一方を形成し、分岐管12の内部に挿入された除去装置20の位置およびアスベストの除去状態を外部から視認できるように構成することもできる。また、第1部材31および第2部材37の一部に、透光性の材料により、窓を形成することもできる。
【0071】
(3)第1部材31の外周面または第2部材37の内周面にコロや球体などの転動体を設け、第2部材37を軸方向に沿って容易に移動させることができるように構成することもできる。
(4)第1部材31の外周面に軸方向に沿って目盛りを付け、第2部材37の移動量、つまり、除去装置20の位置が分かるように構成することもできる。
【0072】
(5)移動部材25は、棒状の他、板状でも良い。また、移動部材25は、合成樹脂により形成された剛性の高いチューブやホースでも良い。
。
(6)アスベストを除去する前に、アスベストの飛散を抑制する飛散抑制剤を本管11および分岐管12の内壁に塗布しておき、アスベストを除去するときにアスベストの飛散を抑制することもできる。
【0073】
(7)また、前処理として、排出ホース52によって飛散抑制剤を吸引し、飛散抑制剤を排出ホース52の内面にコーティングしておくコーティング工程を加えることもできる。このコーティング工程を加えれば、アスベストの吸引を行った後に排出ホース52を外した際に、排出ホース52の内部に残っていたアスベストが排出ホース52の開口部から外部に漏れ難いようにすることができるため、作業現場にいる者がアスベストを吸引して健康を害するおそれがない。
(8)また、前処理として、貯留槽400の内壁に飛散抑制剤をコーティングしておくコーティング工程を加えることもできる。このコーティング工程を加えれば、収容体500を取り出すために、貯留槽400の天板401を開けた場合に、貯留槽400の内壁に付着していたアスベストが外部に漏れ難いようにすることができるため、作業現場にいる者がアスベストを吸引して健康を害するおそれがない。
【符号の説明】
【0074】
1 アスベスト除去システム
10 排気管
11 本管
12 分岐管
12a 開口部
20 除去装置
21 ノズル
25 移動部材
30 カバー
31 第1部材
31a 他端
32 排出口
33 フランジ
34,35 密閉部材
36 アンカーボルト
37 第2部材
37a 他端
81 吸引装置
90 建造物
91 壁面
200 高圧水供給装置
400 貯留槽
500 収容体
700 グラウトポンプ
800 濾過装置
900 中和装置