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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180716
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】車両の下部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20221130BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20221130BHJP
【FI】
B62D25/20 E ZHV
B60K1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087357
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】春貝地 慎太朗
(72)【発明者】
【氏名】坂上 大介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 聖
(72)【発明者】
【氏名】辻 大介
(72)【発明者】
【氏名】高 爽
(72)【発明者】
【氏名】西元 嘉恵
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203AA33
3D203BB04
3D203BB08
3D203BB12
3D203BB20
3D203BB24
3D203CA25
3D203CA33
3D203CA35
3D203CA37
3D203CA62
3D203CB09
3D203CB19
3D203DA07
3D203DA20
3D203DB05
3D235AA02
3D235BB07
3D235CC15
3D235DD02
3D235DD35
3D235EE63
3D235EE64
3D235FF06
3D235FF09
3D235FF24
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH26
(57)【要約】
【課題】側突時に、バッテリユニットの回転挙動を抑制することで、高電圧ケーブルの長さを長くすることなく、高電圧ケーブルに過大な張力が加わることを抑制すること。
【解決手段】車体フロア4の下方に設けられるバッテリユニット20Lと、バッテリユニット20Lより車幅方向外側において前後方向に延びる骨格部材11と、バッテリユニット20Lの前部から前方に延びる高電圧ケーブル14と、バッテリユニット20Lの後部を骨格部材11に固定する固定部材30と、を備え、第1バッテリユニット20Lの重心位置よりも前方位置に車幅方向内向きの衝突荷重が入力された際に、固定部材30が破断する構成とした。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フロアを構成するフロアパネルの下方に設けられるバッテリユニットと、
前記バッテリユニットより車幅方向外側において前後方向に延びる骨格部材と、
前記バッテリユニットの前部から前方に延びる高電圧ケーブルと、
前記バッテリユニットの後部を前記骨格部材に固定する固定部材と、を備え、
前記固定部材は、前記バッテリユニットの重心位置よりも前方位置に車幅方向内向きの衝突荷重が入力された際、破断可能に構成されることを特徴とする
車両の下部構造。
【請求項2】
前記骨格部材は、前記フロアパネルより車幅方向外側において前後方向に延びるサイドシルである
請求項1に記載の車両の下部構造。
【請求項3】
前記フロアパネルより車幅方向外側において前後方向に延びるサイドシルと、
前記サイドシルに対して車幅方向内側において隣接して前後方向に延びるフロアフレームおよびリヤサイドフレームと、を備え、
前記フロアフレームは、前記リヤサイドフレームより前方に設けられ、前記フロアフレームの後部と前記リヤサイドフレームの前部とが互いに接合されており、
前記骨格部材は、前記フロアフレームと前記リヤサイドフレームとのうち、少なくとも1つである
請求項1に記載の車両の下部構造。
【請求項4】
前記固定部材は、車体締結部と、前後に離間する第1及び第2のバッテリ締結部と、前記第1バッテリ締結部と前記第2バッテリ締結部との間に形成された穴部を有する
請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載の車両の下部構造。
【請求項5】
前記第1バッテリ締結部は、前記第2バッテリ締結部より前方に位置し、
前記車体締結部と前記第1バッテリ締結部との前後方向長さは、前記車体締結部と前記第2バッテリ締結部との前後方向長さより長い
請求項4に記載の車両の下部構造。
【請求項6】
前記第2バッテリ締結部は、前記第1バッテリ締結部より下方に位置する
請求項5に記載の車両の下部構造。
【請求項7】
前記第1バッテリ締結部の前記車体締結部側近傍に強度低下部を有する
請求項4乃至請求項6のうちいずれか1項に記載の車両の下部構造。
【請求項8】
前記強度低下部は、前記車体締結部と前記第1バッテリ締結部とを最短で結ぶ荷重伝達経路のうち最も経路幅が小さく、又は/及び肉厚が薄く形成された部位である
請求項7に記載の車両の下部構造。
【請求項9】
前記固定部材には、前記荷重伝達経路の経路幅方向の少なくとも一方の縁部に沿って該荷重伝達経路に対して曲げ形成されたフランジ部が備えられ、
前記強度低下部の近傍に、前記フランジ部における、前記第1バッテリ締結部側の端部が位置する
請求項8に記載の車両の下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、この発明は、バッテリユニットを床下に搭載するような車両の下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、バッテリユニットを車両床下に配置し、フロアパネルの車幅方向左右両側に位置する車体強度部材としてのサイドシルで車両側突時の側突荷重エネルギーを吸収するように構成したBEV(battery electric vehicle)構造が知られている。
【0003】
BEV構造の車両の中でもPHEV(plug-in hybrid electric vehicle、プラグインハイブリッド)車両の場合、車両の前部に搭載されたエンジンを発電用又は駆動用として利用する。このため、PHEV車両においては、エンジンから車両床下において前後方向に延びるフロアトンネルに沿って車両後方へ延びる排気管が配置される関係上、フロアトンネルを隔てて車幅方向の左右各側にバッテリユニットを互いに離間して配置する必要がある。
【0004】
このような構造を採用した場合、ポール側突などのように、バッテリユニットの重心位置よりも車両前方に車幅方向内向きの衝突荷重が入力すると、サイドシルは車両平面視でV字状に変形し、バッテリユニットは重心位置よりも前方の局所的な部位から側突荷重が入力されて、バッテリユニットの前方が車幅方向内側に回動変位する挙動となる。
【0005】
上述のバッテリユニットと、当該バッテリユニット前方のインバータ等の高電圧装置と、を連結する高電圧ケーブルが存在する場合には、前記バッテリユニット前方の車幅方向内側への回動変位時に、高電圧ケーブルが強く引っ張られる懸念があった。
【0006】
このような懸念を回避するためには、高電圧ケーブルの長さを充分長く設定することが考えられるが、高電圧ケーブルを長くすると、その分、電気抵抗が大きくなるという新たな問題が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-11640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、側突時に、バッテリユニットの回転挙動を抑制することで、高電圧ケーブルの長さを長くすることなく、高電圧ケーブルに過大な張力が加わることを抑制することができる車両の下部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の車両の下部構造は、車体フロアを構成するフロアパネルの下方に設けられるバッテリユニットと、該バッテリユニットより車幅方向外側において前後方向に延びる骨格部材と、前記バッテリユニットの前部から前方に延びる高電圧ケーブルと、前記バッテリユニットの後部を前記骨格部材に固定する固定部材と、を備え、前記固定部材は、前記バッテリユニットの重心位置よりも前方位置に車幅方向内向きの衝突荷重が入力された際、破断可能に構成されることを特徴とする。
【0010】
前記構成によれば、バッテリユニットの前記前方位置に車幅方向内向きの衝突荷重、すなわち側突荷重が入力された際、骨格部材が車幅方向内側に曲げ変形しバッテリユニット前部を車幅方向内側に押し込む挙動が生じるが、固定部材が破断するため、骨格部材の変形に追随してバッテリユニットの前部が車幅方向内側へ大きく変位するような回転挙動を抑制することができる。
【0011】
従って、側突時に、バッテリユニットの上述した回転挙動に伴って、前方へ延びる高電圧ケーブルに過大な張力が加わることを抑制することができ、ひいては、高電圧ケーブルを実長に対して過度に長尺に形成する必要がないため、高電圧ケーブルの電気抵抗が大きくなることを抑制できる。
【0012】
この発明の態様として、前記骨格部材は、前記フロアパネルより車幅方向外側において前後方向に延びるサイドシルである。
【0013】
前記構成によれば、側突時に、サイドシルが車幅方向内側に曲げ変形した際においても、サイドシルに固定された固定部材が破断するため、バッテリユニットがサイドシルの変形に追随して変位するような上述した回転挙動を抑制することができる。
【0014】
この発明の態様として、前記フロアパネルより車幅方向外側において前後方向に延びるサイドシルと、前記サイドシルに対して車幅方向内側において隣接して前後方向に延びるフロアフレームおよびリヤサイドフレームと、を備え、前記フロアフレームは、前記リヤサイドフレームより前方に設けられ、前記フロアフレームの後部と前記リヤサイドフレームの前部とが互いに接合されており、前記骨格部材は、前記フロアフレームと前記リヤサイドフレームとのうち、少なくとも1つである。
【0015】
前記構成によれば、側突時に、サイドシルが車幅方向内側に曲げ変形した際においても、前記フロアフレームと前記リヤサイドフレームとのうち、少なくとも一方に固定された固定部材が破断するため、バッテリユニットがサイドシルの変形に追随して変位するような上述した回転挙動を抑制することができる。
【0016】
この発明の態様として、前記固定部材は、車体締結部と、前後に離間する第1及び第2のバッテリ締結部と、前記第1バッテリ締結部と前記第2バッテリ締結部との間に形成された穴部を有する構成としてもよい。
【0017】
前記構成によれば、車体締結部からバッテリ側へ伝達される荷重伝達経路を、第1バッテリ締結部と第2バッテリ締結部との間に有する穴部を隔てて各側へ分けることができるため、側突時に、車体から固定部材へ車体締結部を介して入力された荷重を、第1及び第2バッテリ締結部の近傍に集中させることができる。
従って、側突時に、第1バッテリ締結部近傍と第2バッテリ締結部近傍とを確実に破断させることができる。
【0018】
この発明の態様として、前記第1バッテリ締結部は、前記第2バッテリ締結部より前方に位置し、前記車体締結部と前記第1バッテリ締結部との前後方向長さは、前記車体締結部と前記第2バッテリ締結部との前後方向長さより長い構成としてもよい。
【0019】
前記構成によれば、前記車体締結部と前記第1バッテリ締結部との前後方向長さ(モーメント長)は、前記車体締結部と前記第2バッテリ締結部との前後方向長さ(モーメント長)より長いため、側突時に、第2バッテリ締結部近傍よりも第1バッテリ締結部近傍にモーメント荷重を集中させることができる。
【0020】
従って、第1バッテリ締結部近傍と第2バッテリ締結部近傍とをこの順に段階的に破断させることができ、結果的に、第1バッテリ締結部近傍と第2バッテリ締結部近傍との双方を確実に破断させることができる。
【0021】
この発明の態様として、前記第2バッテリ締結部は、前記第1バッテリ締結部より下方に位置する構成としてもよい。
【0022】
前記構成によれば、側突時に固定部材を破断させたい所望の破断ラインは、第1バッテリ締結部と第2バッテリ締結部との各車体締結部側近傍を直線状に結ぶラインであるが、上述したように、第2バッテリ締結部が第1バッテリ締結部より下方に位置することで、固定部材は、破断ラインよりも車体締結部側の位置に締結部を設けない構成とすることができる。このため、後側ブラケットは、側突時に前記車体締結部から入力された応力が、破断ラインよりも車体締結部側に位置する締結部に分散することがなく、第1バッテリ締結部に応力を集中させることができる。
【0023】
この発明の態様として、前記第1バッテリ締結部の前記車体締結部側近傍に強度低下部を有する構成としてもよい。
【0024】
前記構成によれば、前記車体締結部から前記第1バッテリ締結部への側突荷重伝達経路上であって、前記第1バッテリ締結部の近傍に強度低下部を有することで、側突時に前記第1バッテリ締結部の近傍を確実に破断させることができるとともに破断する部位をコントロールすることができる。
【0025】
この発明の態様として、前記強度低下部は、前記車体締結部と前記第1バッテリ締結部とを最短で結ぶ荷重伝達経路のうち最も経路幅が小さく、又は/及び肉厚が薄く形成された部位である。
【0026】
前記構成によれば、側突時に前記第1バッテリ締結部の近傍を確実かつ容易に破断させることができるとともに破断する部位を容易にコントロールすることができる。
【0027】
この発明の態様として、前記固定部材には、前記荷重伝達経路の経路幅方向の少なくとも一方の縁部に沿って該荷重伝達経路に対して曲げ形成されたフランジ部が備えられ、前記強度低下部の近傍に、前記フランジ部における、前記第1バッテリ締結部側の端部が位置する構成としてもよい。
【0028】
前記構成によれば、前記荷重伝達経路において、第1バッテリ締結部近傍とそれ以外の部分とで剛性差がつくため、側突時に第1バッテリ締結部近傍を確実に破断させることができる。
【0029】
また、通常走行時におけるバッテリからの振動入力に対する耐久性(剛性)を高めることができる。
従って、側突時における第1バッテリ締結部近傍の確実な破断と、通常走行時におけるバッテリからの振動入力に対する耐久性との両立を図ることができる。
【0030】
なお、前記経路幅方向とは、側面視、締結部間を結ぶ荷重伝達経路に直交する方向を示す。
【発明の効果】
【0031】
前記構成によれば、側突時に、バッテリユニットの回転挙動を抑制することで、高電圧ケーブルの長さを長くすることなく、高電圧ケーブルに過大な張力が加わることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本実施形態の車両の下部構造を示す底面図
図2】本実施形態の車両の下部構造を車両左方かつ下方から視た斜視図
図3】本実施形態の後側ブラケットおよびその周辺を下方かつ車幅方向外側から視た斜視図
図4】本実施形態の後側ブラケットおよびその周辺の要部を車幅方向外側から視た側面図
図5】本実施形態の後側ブラケットを車両後方かつ車幅方向外側から視た斜視図
図6図1の領域Xを示す拡大図
図7】側突時における、本実施形態の後側ブラケットの挙動の変遷をシミュレーション解析した結果を図3に対応して示す斜視図
図8】本実施形態の車両の下部構造における側突時の状態を示す底面図
図9】比較例の車両の下部構造を示す底面図
図10】比較例の車両の下部構造における側突時の状態を示す底面図
【発明を実施するための形態】
【0033】
この発明の一実施形態として、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)に適用した本実施形態の車両1の下部構造について、以下図面と共に説明する。
また、図中において、矢印Fは車両1前方向を、矢印Rは車両1右方向を、矢印Lは車両1左方向を、矢印Uは車両上方向を、夫々示している。
【0034】
図1図2に示すように、本実施形態の車両1は、車体2と、車体2の床下に配設されたバッテリユニット20等を備えて構成されている。
なお、車体2における、車室の前方には、適宜、発電用又は駆動用として利用されるエンジンやモータ(いずれも図示省略)などで構成されるパワーユニット(図示省略)が収容されるパワーユニットルームを有している。
【0035】
図1図2に示すように、車体2における車室の下部には、車体フロアを構成するフロアパネル4が配設されている。
【0036】
フロアパネル4には、フロントフロアパネル5とリヤフロアパネル6とを備え、フロントフロアパネル5とリヤフロアパネル6とは、不図示のキックアップ部を介して前後各側に互いに連接されている。
【0037】
フロントフロアパネル5は、車幅方向中央部にて上方(車室)に膨出し、かつ車両1前後方向に延設されたトンネル部7(「フロアトンネル7」とも称する)が一体または一体的に形成されている。
このトンネル部7は、車体剛性の中心となるもので、フロアパネル4の略全長に亘って前後方向に形成されている。
【0038】
図1図2に示すように、トンネル部7の左右の両下縁に沿ってフロアパネル4下方に車体2前後方向に延びる左右のトンネルサイドメンバ8が設けられている。トンネルサイドメンバ8と上述したフロアパネル4との間には、車両1前後方向に延びる閉断面8sがそれぞれ形成されている。
【0039】
また、同図に示すように、上述したフロアパネル4の幅方向の両外側(左右両側)には、前後方向に延びるサイドシル9を接続している。サイドシル9は、サイドシルインナ9a(図1参照)とサイドシルアウタ9bとを接合してフロアパネル4の前後方向の略全長に亘って延びる閉断面9sを有する骨格部材である。
【0040】
フロアパネル4の下方で、該フロアパネル4の側端とトンネル部7との間、詳しくは、サイドシルインナ9aとトンネルサイドメンバ8との間には、下方に突出して前後方向に延びる左右の骨格部材としてのフロアフレーム10が設けられている。フロアフレーム10とフロアパネル4との間には、前後方向に延びる閉断面10sが形成されている。
【0041】
フロアフレーム10の後部10rは、サイドシル9に対して車幅方向の内側で隣接するとともに、サイドシル9と略平行に前後方向に延びている。
リヤフロアパネル6は、上述したように、フロントフロアパネル5よりも後方に配設されている。リヤフロアパネル6の車幅方向の両外側には、車両1の前後方向に延びるリヤサイドフレーム11が配設されている。リヤサイドフレーム11の前部11fは、フロントフロアパネル5の後部の車幅方向外側に至るまで前方に延びている。すなわち、リヤサイドフレーム11の前部11fは、サイドシル9の後部に対して車幅方向の内側で隣接するとともに、サイドシル9と略平行に前後方向に延びている。そして、リヤサイドフレーム11の前端は、フロアフレーム10の後端に接合されている。
【0042】
フロアフレーム10の前部10fは、前方程車幅方向内側に位置するように傾斜して直線状に延びており、図示省略するが、車体2における車室前方に有するパワーユニットルームの両サイドにおいて前後方向に延びる骨格部材としてのフロントサイドフレームの後端に前端が接合されている。
【0043】
また、図2に示すように、サイドシル9の前後方向の中間位置には、該中間位置から上方に延びるセンターピラー12(車体2左側のみ図示)が設けられている。センターピラー12は、センターピラーアウター12aとセンターピラーインナー(図示省略)とを備え、上下方向に延びる閉断面12sが形成された骨格部材である。
【0044】
また、車体2における車室よりも前方に搭載されたエンジン(図示省略)に設けられた排気ポート(図示省略)には、排気マニホールド(図示省略)を介して排気装置60(図1参照)が接続されている。排気装置60は、フロアパネル4の下端よりも下方位置において車両1前後方向に連続して配設されている。
【0045】
図1に示すように、排気装置60は、触媒ユニット、サイレンサ、テールパイプ等の各種排気系部材61を備えるとともに、各種排気系部材61の間に配置され、前後方向に隣り合う排気系部材61を接続する排気管62を備えている。
なお、図中符号61aは、排気系部材61の中でも触媒ユニットを示している。また、図2においては、排気装置60の図示を省略している。
【0046】
これら各要素からなる排気装置60は、フロアパネル4の下端よりも下方位置において車両1前後方向に連続して配設されている。
具体的に、図1に示すように、排気装置60は、前後方向における、フロントフロアパネル5の前部およびリヤフロアパネル6の後部において、トンネル部7よりも車幅方向外側の一方側(当例では右側)に迂回するように配索されている。一方、排気装置60は、前後方向における、フロントフロアパネル5の後部において、トンネル部7の直下に配索されている。
【0047】
フロアパネル4の下方には、排気装置60の長手方向(排気経路)に沿ってインシュレータ65,66,67が配設されている。インシュレータ65,66,67は、排気装置60の長手方向の直交断面が下方へ向けて開口するように上方へ凸状に形成されている。そして、インシュレータ65,66,67は、排気装置60の熱害が周辺に及ぶことを防止すべく、該排気装置60を内部に収容している。
【0048】
インシュレータ65,66,67は、前部インシュレータ65、中間部インシュレータ66および後部インシュレータ67が設けられている。これらインシュレータ65,66,67は、互いに分割形成され、前後方向に連続するように連結された状態で車体2に取り付けられている。
【0049】
図1図2に示すように、バッテリユニット20は、フロントフロアパネル5の後部の下側に配設されている。
但し、本実施形態の車両1のように、電気エネルギーを商用のコンセントから直接充電可能なプラグインハイブリッド車(PHEV)においては、バッテリが大型かつ大容量となるため、これに対応すべくバッテリユニット20は、フロアパネル4の下側において、トンネル部7を隔てて左右各側に互いに離間して配設されている。
ここで、左右各側のバッテリユニット20のうち、左側のバッテリユニット20Lを「第1バッテリユニット20L」とも称するとともに、右側のバッテリユニット20を「第2バッテリユニット20R」とも称する。
なお、第1バッテリユニット20Lと第2バッテリユニット20Rとは、トンネル部7を隔てて左右各側に互いに離間しているが、互いに電気的に接続されている(図示省略)。
【0050】
図1図2に示すように、第1、第2のバッテリユニット20L,20Rは、何れもバッテリモジュール21(電池モジュール)と、該バッテリモジュール21を収容する電池ケースとしてのバッテリケース22とを有するバッテリパックとして構成される。車両1は、エンジンの駆動に加えてバッテリケース22に収容されたバッテリモジュール21に蓄えられた電気エネルギーを使って走行する。
【0051】
バッテリモジュール21は、図示省略するが上下方向および前後方向に延びる平板形状に形成された複数のバッテリセルを車幅方向に積層した状態で構成される。バッテリセルとしては、例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池といった二次電池がある。
【0052】
バッテリケース22は、バッテリモジュール21を下側から支持するトレイ221と、バッテリモジュール21を上方から覆う蓋222(車両1左側のみ図示)とで箱形状に形成されている。トレイ221の平面視外周縁には、フランジ部221aが形成され、バッテリモジュール21を内部に収容した状態でフランジ部221aが蓋222の平面視外周縁に締結されている。
【0053】
また、図1図2に示すように、第1、第2のバッテリユニット20L,20Rは、左右夫々に対応するフロアフレーム10の後部10rおよびリヤサイドフレーム11の前部11fよりも車幅方向内側かつ、トンネル部7よりも車幅方向外側に配設されている。
【0054】
また、第1、第2のバッテリユニット20L,20Rは、何れもバッテリケース22が周辺に配設された複数の後述する骨格部材にブラケット15,30等を介してボルト等を用いて複数個所に亘って締結固定されている。
【0055】
具体的には、第1、第2のバッテリユニット20L,20Rは、車幅方向内側においては、図示省略するが、何れも車幅方向内側で隣接する骨格部材としてのトンネル部7にブラケット(図示省略)を介して固定されている。
【0056】
一方、第1、第2のバッテリユニット20L,20Rは、車幅方向外側においては、何れも車幅方向外側で隣接する骨格部材としてのフロアフレーム10の後部10rに、中間ブラケット15を介して固定されるとともに、リヤサイドフレーム11の前部11fに後側ブラケット30L,30Rを介して固定されている。上述した中間ブラケット15と後側ブラケット30L,30Rの具体的構造については後述する。
【0057】
また、上述した中間部インシュレータ66は、トンネル部7の下方において、第1、第2のバッテリユニット20L,20Rの間に位置している。そして、図1図2に示すように、上述の中間部インシュレータ66より下方かつ、第1、第2のバッテリユニット20L,20Rの間には、これら第1、第2のバッテリユニット20L,20Rを互いに連結する連結メンバ24が配設されている。
【0058】
詳しくは、連結メンバ24は、下方に開口する中間部インシュレータ66を下方から塞ぐように車幅方向に延びており、第1バッテリユニット20Lの底面の車幅方向内側と、第2バッテリユニット20Rの底面の車幅方向内側との間を車幅方向に連結する。
【0059】
フロアパネル4の前部の下方、すなわち、第1バッテリユニット20Lの前方には、高電圧装置としてのインバータ13を備えている。
インバータ13は、バッテリユニット20が介装される直流回路の電力とモータが介装される交流回路の電力とを相互に変換する変換器である。
【0060】
インバータ13は、車幅方向の一方側(当例においては車両1左側)において、フロアフレーム10の前部とトンネルサイドメンバ8の前部との間に配置され、これらフロアフレーム10の前部10fとトンネルサイドメンバ8の前部とに取り付け固定されている。
【0061】
第1バッテリユニット20Lとインバータ13とは、高電圧ケーブル14(高電圧ハーネス)を介して互いに連結されている。本実施形態において、高電圧ケーブル14は、前側プラグ14fがインバータ13の後部に接続されるとともに、後側プラグ14rが第1バッテリユニット20Lの前部(詳しくは、第1バッテリユニット20Lの重心位置よりも前部)に接続され、これら第1バッテリユニット20Lの前部とインバータ13の後部との間において略前後方向に延びている。
【0062】
これにより、モータ(図示省略)が駆動時には、第1、第2のバッテリユニット20L,20R側からモータ側へと交流の駆動電力が、モータの発電時には、モータ側から第1、第2のバッテリユニット20L,20R側へと直流の充電電力が、夫々高電圧ケーブル14を介して供給される。
【0063】
なお、図示省略するが本実施形態においては、フロアパネル4の下面におけるバッテリユニット20の前方は、アンダーカバーによって覆われている。不図示のアンダーカバーは、フロアパネル4の前部の下側であって、インシュレータ65に対して車幅方向の一方側の領域と他方側の領域との夫々に設けられている。これら一対のアンダーカバーは、何れもバッテリユニット20の下面およびインシュレータ65の下端と略面一となる高さに配置され、バッテリユニット20の下面およびインシュレータ65の下端に対して、これらに隣接する部分が接合されている(図示省略)。
【0064】
また、図1図2に示すように、上述した中間ブラケット15は、左右一対を備えており、何れも前後方向における、センターピラー12(図2参照)に相当する位置(サイドシル9の前後方向の略中間位置)かつ、第1、第2のバッテリユニット20L,20Rの夫々に対応する車幅方向外側に設けられている。中間ブラケット15は、前後方向の直交断面視で上下方向に延びるバッテリ側取付片151と、バッテリ側取付片151の下部から車幅方向外側へ延びる車体側取付け片152とで略L字形状に形成されている。
【0065】
そして、中間ブラケット15は、バッテリ側取付片151がバッテリケース22の車幅方向外側の側面にボルト等により締結固定されるとともに、車体側取付け片152がフロアフレーム10の後部10rにボルト等により締結固定されている。
【0066】
また、上述した後側ブラケット30L,30Rは、左右各側に備えており、何れもバッテリケース22を、該バッテリケース22の後部(詳しくは、バッテリケース22の重心位置よりも後方)かつ車幅方向外側の側面において、車体2(リヤサイドフレーム11の前部11fの下面部)に固定するブラケットであり、鋼板等をプレス成形等により曲げ加工することで形成されている。
【0067】
左右一対の後側ブラケット30L,30Rのうち、車両左側の後側ブラケット30Lは、第1バッテリユニット20Lの後部を車幅方向外側から車体2(リヤサイドフレーム11の前部11fの下面部)に固定するブラケットであり、本発明の固定部材に対応する。
【0068】
この後側ブラケット30Lは、第1バッテリユニット20Lの重心位置よりも前方位置(例えば、前後方向におけるセンターピラー12に相当する位置)に車両1左側から車幅方向内向きの衝突荷重が入力された際(つまり、車両1左側からの側突時に)、破断可能に構成されている。
【0069】
一方、左右一対の後側ブラケット30L,30Rのうち、車両右側の後側ブラケット30Rは、通常走行時における第2バッテリユニット20Rからの振動入力に対する耐久性(剛性)を優先して車両左側の後側ブラケット30Lよりも頑強に形成されている。
【0070】
以下、車両左側の後側ブラケット30Lの構成について説明する。
図3図5に示すように、後側ブラケット30Lは、車幅方向に延びる車幅外方延出片31と、車幅外方延出片31の車幅方向内端から下方へ延びる下方延出片32とで一体に形成されている。車幅外方延出片31と下方延出片32とのコーナー部に位置する屈曲部36は、後側ブラケット30Lの前後方向の略全長に亘って形成されている。
【0071】
車幅外方延出片31は、前部に前側フランジ部33が、前後方向の中間部に車体側取付け部34が、後部に後側フランジ部35が夫々設けられ、前後方向に連続して形成されている。前側フランジ部33、車体側取付け部34、後側フランジ部35は、何れも車幅方向外側へ延びて下方延出片32に対して庇状に形成されている。車体側取付け部34は、前側フランジ部33および後側フランジ部35よりも車幅方向外側へ突出して形成されている。
【0072】
前側フランジ部33は、車体側取付け部34の前端から屈曲部36に沿って前方程下方へ位置するように傾斜して直線状に延びている。一方、後側フランジ部35は、車体側取付け部34の後端から屈曲部36に沿って後方へ延びている。
【0073】
車体側取付け部34の前側部位には、ピンP(図3図4参照)を挿通可能に上下方向に貫通するピン挿通孔341が形成され、車体側取付け部34の後側部位には、ボルトB34(同図参照)を挿通可能に上下方向に貫通するボルト挿通孔342が形成されている。
【0074】
これにより、後側ブラケット30Lは、車体側取付け部34のピン挿通孔341においてピンPを用いて車体2(リヤサイドフレーム11の前部11fの下面)に位置決めされる。さらに、後側ブラケット30Lは、このような位置決め状態で車体側取付け部34のボルト挿通孔342においてボルトB34等を用いて車体2(同下面)に対して締結固定される。すなわち、車体側取付け部34のボルト挿通孔342に挿通されるボルトB34は、車体2に対して締結する車体締結部B34として形成される。
【0075】
後側ブラケット30Lにおける下方延出片32は、前後方向の前部から中間部にかけてバッテリ側取付片41が形成されるとともに、後部に後方延出片47が形成され、これらバッテリ側取付片41および後方延出片47は、前後方向に亘って連続して形成されている。バッテリ側取付片41、後方延出片47は、何れも車幅外方延出片31の車幅方向内端から屈曲部36を介して鉛直下方へ延びているが、バッテリ側取付片41は、後方延出片47よりも下方へ突出形成されている。
【0076】
上述した後方延出片47は、バッテリ側取付片41の基部(すなわち、後述する上縁辺41uと後縁辺41rとの結合部分)から車両1後方へ車両側面視で略水平に延びている。後方延出片47は、後部(先端部)が前部(基部)に対して若干車幅方向内側へ向くように前後方向の中間部に屈曲部46を有して形成されている。後方延出片47の後部には、ハーネス(図示省略)取り付け用の貫通穴48が形成されている。
【0077】
図3図5に示すように、バッテリ側取付片41は、該バッテリ側取付片41の上縁において、前方程下方へ位置するように車両側面視で傾斜して略直線状に延びる上縁辺41uと、バッテリ側取付片41の後縁において、前方程下方へ位置するように車両側面視で上縁辺41uよりも急勾配で傾斜して直線状に延びる後縁辺41rと、上縁辺41uの前下端から鉛直下方へ直線状に延びる前縁辺41fと、後縁辺41rの前下端と前縁辺41fの下端とを繋ぐように前後方向に直線状に延びる下縁辺41dと、を備えて一体に形成されている。なお、前縁辺41fの下端と後縁辺41rの前下端とは、略同じ高さに位置するため、下縁辺41dは、前後方向に水平に延びている。
【0078】
換言すると、バッテリ側取付片41の側面視中央部には、車幅方向(板厚方向)に貫通する穴部41hが形成されている。穴部41hは、バッテリ側取付片41の外周に位置する上縁辺41u、後縁辺41r、前縁辺41fおよび下縁辺41dによって画成されている。
【0079】
上述したバッテリ側取付片41には、ボルトB42,B43,B44を挿通可能に車幅方向(板厚方向)に貫通する複数(当例では3つ)のボルト挿通孔42,43,44が形成されている。
【0080】
本実施形態において、ボルト挿通孔42は、バッテリ側取付片41の前縁辺41fの上部に形成され、ボルト挿通孔43は、バッテリ側取付片41の後縁辺41rの下端部(後縁辺41rと下縁辺41dとのコーナー部)に形成され、ボルト挿通孔44は、バッテリ側取付片41の前縁辺41fの下端部(前縁辺41fと下縁辺41dとのコーナー部)に形成され、夫々第1ボルト挿通孔42、第2ボルト挿通孔43、第3ボルト挿通孔44に設定する。
【0081】
そして、上述した後側ブラケット30Lは、図3図4に示すように、バッテリ側取付片41の各ボルト挿通孔42,43,44においてボルトB42,B43,B44等を用いてバッテリケース22の車幅方向外側の側面に締結固定される。すなわち、第1ボルト挿通孔42に挿通されるボルトB42は、バッテリケース22に対して締結する第1バッテリ締結部B42として形成される。同様に、第2ボルト挿通孔43に挿通されるボルトB43は、バッテリケース22に対して締結する第2バッテリ締結部B43として形成され、第3ボルト挿通孔44に挿通されるボルトB44は、バッテリケース22に対して締結する第3バッテリ締結部B44として形成される。
【0082】
第1~第3のバッテリ締結部B42,B43,B44は、何れも車体締結部B34の下方に位置する。また、第1バッテリ締結部B42および第3バッテリ締結部B44は、第2バッテリ締結部B43より前方に位置するとともに、第2バッテリ締結部B43および第3バッテリ締結部B44は、第1バッテリ締結部B42より下方に位置する。
【0083】
さらに本実施形態において、第3バッテリ締結部B44は、第1バッテリ締結部B42の直下に位置するとともに、第2バッテリ締結部B43と略同じ高さに位置する。
【0084】
また、図4図6に示すように、第1、第2のバッテリ締結部B42,B43は、車体締結部B34と第1バッテリ締結部B42との前後方向長さL1’(車体締結部B34と第1バッテリ締結部B42との長さL1の前後方向成分の長さL1’)が、車体締結部B34と第2バッテリ締結部B43との前後方向長さL2’(車体締結部B34と第2バッテリ締結部B43との長さL2の前後方向成分の長さL2’)よりも長くなるように夫々設けられている。
【0085】
さらにまた、後側ブラケット30Lのバッテリ側取付片41は、第1バッテリユニット20Lの重心位置よりも前方位置(例えば、前後方向におけるセンターピラー12(図2参照)に相当する位置)に車両1左側から車幅方向内向きの衝突荷重が入力された際(つまり、車両1左側からの側突時に)、破断可能に構成されている。
【0086】
具体的には、図3図5に示すように、第1バッテリ締結部B42における、車体締結部B34側の近傍部位(当例では上縁辺41uと前縁辺41fとのコーナー部(境界部))には、強度低下部としてのくびれ部45が形成されている。
詳しくは、くびれ部45は、第1バッテリ締結部B42における、車体締結部B34側の近傍部位の幅方向の少なくとも一方の縁部(当例では上縁辺41uと前縁辺41fとのコーナー部の前方かつ上方の縁部)が、後方かつ下方へ凹状に形成されている。これにより、くびれ部45は、強度低下部として、周辺部に対して局所的に幅小に形成され、側突時に、優先的に破断するような脆弱な部分(幅小部分)として形成されている。
【0087】
ここで、車両1左側からの側突時に、第1バッテリユニット20Lよりも車幅方向外側(当例では車両1左側)に位置する骨格部材(外側骨格部材)としてのサイドシル9等が車幅方向内側に曲げ変形し、第1バッテリユニット20Lの前部を車幅方向内側に押し込む挙動が生じる。それに伴って第1バッテリユニット20Lの後部は、後側ブラケット30Lを介してリヤサイドフレーム11の前部11fによって車幅方向外側へ引っ張られる。
【0088】
これに起因して後側ブラケット30Lにおける、第1、第2のバッテリ締結部B42、B43の夫々と、車体締結部B34との間には、これらの間を最短で結ぶような荷重伝達経路が構成される。
【0089】
図4に示すように、これら荷重伝達経路のうち、第1バッテリ締結部B42と車体締結部B34との荷重伝達経路を第1荷重伝達経路P1に設定するとともに、第2バッテリ締結部B43と車体締結部B34との荷重伝達経路を第2荷重伝達経路P2に設定する。
すなわち、第1荷重伝達経路P1は、バッテリ側取付片41の上縁辺41uに沿って形成されるとともに、第2荷重伝達経路P2は、バッテリ側取付片41の後縁辺41rに沿って形成される。
【0090】
ここで、バッテリ側取付片41の上縁辺41uに沿って形成される第1荷重伝達経路P1の上縁には、前側フランジ部33が延びている。
【0091】
但し、前側フランジ部33における前下端33a(第1バッテリ締結部B42側の端部)は、くびれ部45の上方かつ後方の縁部に位置する。すなわち、前側フランジ部33は、くびれ部45の上方かつ後方の縁部まで第1荷重伝達経路P1に沿って前方へ延びている。このため、くびれ部45の上方においては、前側フランジ部33が形成されていない。
【0092】
続いて、側突時において、本実施形態の後側ブラケット30Lに、上述したように、車幅方向外側への引張り荷重が入力されることにより、該後側ブラケット30Lが破断する際の挙動について図7を用いて説明する。
図7は、側突時における、本実施形態の後側ブラケット30Lの挙動をシミュレーション解析した結果を図3に対応して示す斜視図であり、図7(a)は側突初期、図7(b)は側突中期、図7(c)は側突後期の夫々について示している。
なお、図7(a)(b)(c)は、側突時における、後側ブラケット30Lの各部の曲げ応力(モーメント荷重)の分布をドットによる濃淡に基づいて示しており、ドットが濃い部分ほど曲げ応力が高くなることを示している。
【0093】
まず、側突時に、後側ブラケット30Lの車体締結部B34には、車幅方向外側への引っ張り荷重が車体2から入力される。換言すると、図6に示すように、第1バッテリ締結部B42には、車幅内側へ引張られる荷重F1が、第2バッテリ締結部B43には、車幅内側へ引張られる荷重F2が、夫々第1バッテリユニット20Lから入力される。
【0094】
具体的には、車体締結部B34から後側ブラケット30Lに入力された荷重は、第1荷重伝達経路P1に沿って第1バッテリ締結部B42まで伝達されるとともに、第2荷重伝達経路P2に沿って第2バッテリ締結部B43まで伝達される。
【0095】
ここで、本実施形態においては、上述したように、車体締結部B34と第1バッテリ締結部B42との前後方向長さL1’(「前方モーメント長L1’」とも称する)は、車体締結部B34と第2バッテリ締結部B43との前後方向長さL2’(「後方モーメント長L2’」とも称する)より長く設定している。
【0096】
このため、側突初期において、後側ブラケット30Lの車体締結部B34に、車幅方向外側への引っ張り荷重が車体2から入力された際には、第1バッテリ締結部B42は、第2バッテリ締結部B43よりも大きなモーメントが作用する。
これにより、側突初期においては、図7(a)に示すように、第2バッテリ締結部B43近傍よりも第1バッテリ締結部B42近傍に応力(モーメント荷重)を集中させることができる。
【0097】
ここで、側突時における後側ブラケット30Lに作用する引張り荷重によって、後側ブラケット30Lは、第1バッテリ締結部B42と第2バッテリ締結部B43とにおける、各車体締結部B34側近傍に応力が集中するため、これらを図4に示すように、直線状に結ぶ破断ラインCLに沿って破断させることができる。
【0098】
そして、本実施形態においては、第2バッテリ締結部B43を第1バッテリ締結部B42よりも下方に位置するように設定することで、破断ラインCLを、図4に示すように、前上後下方向に延びる直線状に設定することができる。
【0099】
一方、図4に示すように、仮に車体締結部B34と第2バッテリ締結部B43との間の所定位置に締結部B’が存在する場合、側突初期において、車体2側(車体締結部B34側)から第2バッテリ締結部B43よりも第1バッテリ締結部B42へと積極的に伝達されるはずの応力が、第1バッテリ締結部B42と第2バッテリ締結部B43以外の締結部B’にも分散することになる。そうすると、第1バッテリ締結部B42に本来伝達されるはずの応力が小さくなり、後側ブラケット30Lを第1バッテリユニット20Lから所望のタイミングで離脱できなくなるおそれがある。
【0100】
このため、本実施形態においては、上述したように、破断ラインCLを、前上後下方向に延びる直線状に設定したうえで、車体締結部B34と第2バッテリ締結部B43との間においては、破断ラインCLよりも車体締結部B34側に締結部B’等の他の締結部を設けない構成とすることで(図4参照)、側突初期において、第1バッテリ締結部B42に応力を集中させることができる。
【0101】
さらに、図3図4に示すように、第1バッテリ締結部B42の車体締結部B34側近傍部位には、上述したように、くびれ部45を有している。このため、第1バッテリ締結部B42の近傍の中でもくびれ部45において応力を集中させることができる(図7(a)中のドットを付したくびれ部45に相当する領域参照)。
【0102】
このため、側突中期においては、図7(b)に示すように、第1バッテリ締結部B42の近傍における、上述したように、応力集中するくびれ部45が破断する。これにより、第2バッテリ締結部B43の近傍に応力が集中するため、側突後期において、図7(c)に示すように、第2バッテリ締結部B43の近傍が破断する。
【0103】
要するに、本実施形態の後側ブラケット30Lは、側突時において、第1バッテリ締結部B42近傍と第2バッテリ締結部B43近傍とを段階的に破断させることで、双方を確実に破断させる構成としている。
【0104】
上述した本実施形態の車両1の下部構造は、図1図2に示すように、車体フロアを構成するフロアパネル4の下方に設けられる第1バッテリユニット20L(バッテリユニット)と、第1バッテリユニット20Lより車幅方向外側において前後方向に延びる後述する骨格部材と、第1バッテリユニット20Lの前部から前方に延びる高電圧ケーブル14と、第1バッテリユニット20Lの後部を骨格部材に固定する固定部材としての後側ブラケット30Lと、を備えている。
【0105】
さらに、本実施形態の車両1の下部構造は、図1図2に示すように、サイドシル9と、サイドシル9に対して車幅方向内側において隣接して前後方向に延びるフロアフレーム10およびリヤサイドフレーム11と、を備え、フロアフレーム10は、リヤサイドフレーム11より前方に設けられ、フロアフレーム10の後端とリヤサイドフレーム11の前部11fとが互いに接合されており、第1バッテリユニット20Lの後部は、後側ブラケット30Lを介して骨格部材としてのリヤサイドフレーム11の前部11fに固定されている。
【0106】
そして、本実施形態の車両1の下部構造は、第1バッテリユニット20Lの重心位置よりも前方位置に車幅方向内向きの衝突荷重が入力された際に、後側ブラケット30Lが破断可能に構成されることを特徴とする。
【0107】
前記構成によれば、側突時に、第1バッテリユニット20Lの回転挙動を抑制できるため、該回転挙動に伴って、該第1バッテリユニット20Lの前部から前方へ延びる高電圧ケーブル14に過大な張力が加わることを抑制することができる。
【0108】
詳述すると、図1に示すノーマル(normal、正常)な状態から図8に示すように、ポール等の衝突物80が車体2に対して、第1バッテリユニット20Lの重心位置よりも車両1前方において、車幅方向外側(当例では車体2左側)から車幅方向内向きに衝突すると、サイドシル9は、車両平面視でV字状に変形する。
【0109】
その際、衝突物80の衝突位置よりも後方に位置するリヤサイドフレーム11の前部11fは、前方程車幅方向内側へ変位しようとするため、該リヤサイドフレーム11の前部11fに固定された後側ブラケット30Lには、リヤサイドフレーム11(車体2)の側から車幅方向外側への引っ張り荷重が入力される。
【0110】
ここで、図9に示すような従来例(比較例)の車両の下部構造100に備えた後側ブラケット300は、通常走行時における第1バッテリユニット20Lからの振動入力に対する耐久性(剛性)を優先して頑強に形成されている。このため、従来の車両の下部構造100は、側突時において、上述したように、車体2側から車幅方向外側への引っ張り荷重が入力されても、第1バッテリユニット20Lとリヤサイドフレーム11の前部11fとは、図10に示すように、後側ブラケット300を介して互いに固定された状態に維持される。
【0111】
そうすると、側突時において、第1バッテリユニット20Lの後部は、前方程車幅方向内側へ傾斜するようなリヤサイドフレーム11の前部11fの変形に追随して車幅方向外側へ変位しようとする。
【0112】
すなわち、図10に示すように、第1バッテリユニット20Lは、衝突物80が車幅方向内向きに衝突することにより、前部が車幅方向内側に押し込まれることで、トンネル部7が車幅方向に圧縮変形するとともに、後部が後側ブラケット30Lを介してリヤサイドフレーム11の前部11fによって車幅方向外側へ引張られることで(図10中の矢印D1参照)、底面視で反時計回りへ回転するような挙動を示す(図10中の矢印D2参照)。その場合、第1バッテリユニット20Lの回転挙動に伴って、該第1バッテリユニット20Lの前部から前方へ延びる高電圧ケーブル14に引張り負荷が加わることが懸念される。
【0113】
これに対して本実施形態の車両1の下部構造は、図8に示すように、車両1左側からの側突時に、後側ブラケット30Lが車体2側から車幅方向外側への引っ張り荷重の入力により破断する構成としている。このため、第1バッテリユニット20Lの後部をリヤサイドフレーム11の前部11f(車体2)から離脱させることができる(図8参照)。
【0114】
よって、側突時に、第1バッテリユニット20Lは、後部が、後側ブラケット30Lを介してサイドシル9等によって車幅方向外側へ引張られることがなく、サイドシル9等の後方部分における、前側程車幅方向内側へ傾斜するような変形に追随することがない。
【0115】
従って、側突時に、前部が後部よりも大きく車幅方向内側へ変位するような第1バッテリユニット20Lの反時計回りの回転挙動を抑制することができ、該回転挙動に伴って、該第1バッテリユニット20Lの前部から前方へ延びる高電圧ケーブル14に引張り負荷が加わることを抑制することができる。
【0116】
ひいては、前方へ延びる高電圧ケーブル14は、側突時に、引張り負荷が加わることを見越して実長に対して余長部分をもたせて過度に長尺に形成する必要がないため、高電圧ケーブル14の電気抵抗が大きくなることを抑制できる。
【0117】
図3図4に示すように、この発明の実施の態様として、後側ブラケット30Lは、車体締結部B34と、車体締結部B34の下方に位置し、前後に離間する第1、第2のバッテリ締結部B42、B43と、第1バッテリ締結部B42と第2バッテリ締結部B43との間に形成された穴部41hを有する構成としている。
【0118】
前記構成によれば、車体締結部B34から第1バッテリユニット20L側へ伝達される荷重伝達経路P1,P2(図4参照)を、第1バッテリ締結部B42と第2バッテリ締結部B43との間に有する穴部41hを隔てて各側へ分けることができる。このため、側突時に、車体2から車体締結部B34を介して後側ブラケット30Lへ入力された荷重が、第1バッテリ締結部B42と第2バッテリ締結部B43との間において分散することがなく、これらバッテリ締結部B42,B43の近傍に集中させることができる。
【0119】
また、穴部41hは、第1、第2のバッテリ締結部B42,B43の近傍の強度の低下に寄与するため、側突時に、第1バッテリ締結部B42と第2バッテリ締結部B43との間部分が突っ張ることで、第1、第2のバッテリ締結部B42,B43の近傍の破断が阻害されることがない。
【0120】
従って、側突時に、第1バッテリ締結部B42近傍と第2バッテリ締結部B43近傍とを確実に破断させることができる。
【0121】
図4に示すように、この発明の実施の態様として、第1バッテリ締結部B42は、第2バッテリ締結部B43より前方に位置し、車体締結部B34と第1バッテリ締結部B42との前後方向長さL1’は、車体締結部B34と第2バッテリ締結部B43との前後方向長さL2’より長い構成としている。
すなわち、本実施形態においては、前方モーメント長L1’は、後方モーメント長L2’より長く設定している。
【0122】
ところで、側突時においては、後側ブラケット30Lが車体2により車幅方向外側へ引っ張られるため、第1バッテリ締結部B42には、車幅方向内側への引張り荷重F1が作用するとともに、第2バッテリ締結部B43には、車幅方向内側への引張り荷重F2が作用する(図6参照)。
【0123】
このため、前記構成によれば、側突時に、第2バッテリ締結部B43近傍よりも第1バッテリ締結部B42近傍にモーメント荷重を集中させることができるため、第1バッテリ締結部B42近傍と第2バッテリ締結部B43近傍とをこの順に段階的に破断させることができる。
従って、側突時に第1バッテリ締結部B42近傍と第2バッテリ締結部B43近傍との双方を確実に破断させることができる。
【0124】
図3図4に示すように、この発明の実施の態様として、第2バッテリ締結部B43は、第1バッテリ締結部B42より下方に位置する構成としている。
【0125】
前記構成によれば、図4に示すように、側突時に、後側ブラケット30Lに作用する引張り荷重による、後側ブラケット30Lの所望の破断ラインCLは、第1バッテリ締結部B42と第2バッテリ締結部B43との各車体締結部B34側近傍を前上後下方向に結ぶ直線ラインに設定することができる。
【0126】
すなわち、上述したように、第2バッテリ締結部B43は、第1バッテリ締結部B42より下方に位置することで、後側ブラケット30Lは、車体締結部B34と第2バッテリ締結部B43との間、すなわち、破断ラインCLよりも車体締結部B34側の位置に、締結部B’を設けない構成とすることで(図4参照)、側突時において、応力が締結部B’に分散することがなく、第1バッテリ締結部B42に応力を集中させることができる。
【0127】
図3図5に示すように、この発明の実施の態様として、第1バッテリ締結部B42の車体締結部B34側近傍に、車体締結部B34と第1バッテリ締結部B42とを最短で結ぶ第1荷重伝達経路P1(荷重伝達経路)(図4参照)のうち最も経路幅が小さく形成された強度低下部としてのくびれ部45を有する。
【0128】
前記構成によれば、側突時に、第1バッテリ締結部B42の近傍を確実かつ容易に破断させることができるとともに破断する部位を容易にコントロールすることができる。
【0129】
図3図5に示すように、この発明の実施の態様として、後側ブラケット30Lには、第1荷重伝達経路P1の経路幅方向(側面視で第1荷重伝達経路P1に直交する方向)の上縁(少なくとも一方の縁部)に沿って該第1荷重伝達経路P1に対して曲げ形成された前側フランジ部33(フランジ部)が備えられ、くびれ部45の近傍に、前側フランジ部33における前下端33a(第1バッテリ締結部B42側の端部)が位置する構成としている。
【0130】
前記構成によれば、第1荷重伝達経路P1において、第1バッテリ締結部B42近傍とそれ以外の部分とで剛性差がつくため、側突時に、第1バッテリ締結部B42近傍を確実に破断させることができる。
【0131】
また、通常走行時における第1バッテリユニット20Lからの振動入力に対する耐久性(剛性)を高めることができる。
従って、側突時における第1バッテリ締結部B42近傍の確実な破断と、通常走行時における第1バッテリユニット20Lからの振動入力に対する耐久性との両立を図ることができる。
【0132】
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではなく様々な実施形態で形成することができる。
例えば、本発明の骨格部材は、バッテリユニット20の後部を、後側ブラケット30Lを介して取り付け可能な骨格部材であれば、上述した実施形態のように、リヤサイドフレーム11に限らず、例えば、サイドシル9およびフロアフレーム10のうち少なくとも1つとしてもよい。
【0133】
また、本発明の強度低下部は、上述した実施形態のように、くびれ部45として形成するに限らず、第1荷重伝達経路P1のうち最も肉厚が薄く形成された部位、穴部(貫通穴或いは非貫通穴)が設けられた部位、或いは、これらのうち少なくとも2つを組み合わせて形成された構成を採用することができる。
【0134】
また、上述した実施形態においては、車両1左側の第1バッテリユニット20Lに高電圧装置としてのインバータ13を備えたが、これに限定せず、車両1右側の第2バッテリユニット20Rに備えてもよい。その場合、本発明の固定部材(後側ブラケット30L)は、車両右側に備えることができる。
【0135】
また、本発明は、モータとエンジンを備えた車両であれば、本実施形態の車両1のように、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)において適用するに限定せず、例えば、ハイブリッド自動車(HV)、或いは航続距離拡張機能(レンジエクステンダー)付き電気自動車(REEV)等他の車両に適用してもよい。
【符号の説明】
【0136】
1…車両
4…フロアパネル
9…サイドシル
10…フロアフレーム
10r…フロアフレームの後部
11…リヤサイドフレーム(骨格部材)
11f…リヤサイドフレームの前部
14…高電圧ケーブル
20L…第1バッテリユニット(バッテリユニット)
23…前側フランジ部(フランジ部)
30L…後側ブラケット(固定部材)
33a…前下端(第1バッテリ締結部側の端部)
45…くびれ部(強度低下部)
B34…車体締結部
B42…第1バッテリ締結部
B43…第2バッテリ締結部
41h…穴部
L1’…車体締結部と第1バッテリ締結部との前後方向長さ
L2’…車体締結部と第2バッテリ締結部との前後方向長さ
P1…第1荷重伝達経路(車体締結部と第1バッテリ締結部とを最短で結ぶ荷重伝達経路)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10