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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180718
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】車両の下部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20221130BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20221130BHJP
【FI】
B62D25/20 Z
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087359
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】棗 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】影山 和宏
(72)【発明者】
【氏名】辻 大介
(72)【発明者】
【氏名】高 爽
(72)【発明者】
【氏名】西元 嘉恵
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203AA31
3D203BB04
3D203BB08
3D203BB12
3D203CA25
3D203CA37
3D203DB05
3D235AA02
3D235BB07
3D235CC15
3D235DD35
3D235FF09
3D235FF12
3D235HH26
(57)【要約】
【課題】車両側突時にバッテリユニットが連結部材とサイドシルとの間で挟まれることを抑制し、バッテリユニットの変形を抑制することができる車両の下部構造の提供を目的とする。
【解決手段】車幅方向外側において車両前後方向に延びるサイドシル1と、サイドシル1の車幅方向内側に隣接してフロアパネル8の下方において車幅方向に離間して設けられる第1バッテリユニット21および第2バッテリユニット22と、第1バッテリユニット21と第2バッテリユニット22との間を連結する連結部材60と、を備え、連結部材60は、車幅方向に荷重伝達可能に連結する車幅方向連結部61と、車幅方向連結部61に隣接配置され車幅方向の側突荷重に対して変形切っ掛けとなる複数の変形促進部63,64と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向外側において車両前後方向に延びるサイドシルと、
上記サイドシルの車幅方向内側に隣接してフロアパネルの下方において車幅方向に離間して設けられる第1バッテリユニットおよび第2バッテリユニットと、
上記第1バッテリユニットと上記第2バッテリユニットとの間を連結する連結部材と、を備え、
上記連結部材は、車幅方向に荷重伝達可能に連結する車幅方向連結部と、
上記車幅方向連結部に隣接配置され車幅方向の側突荷重に対して変形切っ掛けとなる複数の変形促進部と、を備えたことを特徴とする
車両の下部構造。
【請求項2】
上記複数の各変形促進部は、それぞれが上記車幅方向連結部を挟んで車幅方向の同一位置で前後方向に並んで設けられる
請求項1に記載の車両の下部構造。
【請求項3】
上記車幅方向連結部は車幅方向に延びる複数の稜線部を備えている
請求項1または2に記載の車両の下部構造。
【請求項4】
上記変形促進部は車両下方に突出して車両前後方向に延びる前後方向ビードにより形成された
請求項1~3の何れか一項に記載の車両の下部構造。
【請求項5】
上記変形促進部の後部に、側突時の車幅方向入力に対して剛性が変化する剛性変化部を備え、上記変形促進部は上記剛性変化部に連結される
請求項1~4の何れか一項に記載の車両の下部構造。
【請求項6】
上記車幅方向連結部後側の後方延出部は車幅方向に延びる切欠き部を備えており、上記変形促進部は上記切欠き部に連結される
請求項1~5の何れか一項に記載の車両の下部構造。
【請求項7】
上記車幅方向連結部の前部に連結される上記変形促進部は、車両後方ほど下方へ突出するスロープ形状に形成された
請求項1~6の何れか一項に記載の車両の下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バッテリユニットを床下に搭載するような車両の下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、バッテリユニットを床下に配置し、フロアパネルの車幅方向左右両側に位置する車体強度部材としてのサイドシルで車両側突時の側突荷重エネルギを吸収するように構成したBEV(battery electric vehicle)構造が知られている。
【0003】
PHEV(plug-in hybrid electric vehicle、プラグイン ハイブリッド)車両の場合、排気管が配置される関係上、フロアトンネル部の車幅方向左右に左右のバッテリユニットを離間して配置する必要がある。
【0004】
このような構造を採用した場合、ポール側突などのように、バッテリユニットの重心位置よりも車両前方に車幅方向内側向きの衝突荷重が入力すると、サイドシルは車両平面視でV字状に変形し、バッテリユニットは重心位置よりも前方の局所的な部位から側突荷重が入力されて、バッテリユニットの前方が車幅方向内側に回動変位する挙動となる。
【0005】
上述のバッテリユニットと、当該バッテリユニット前方のインバータ等の高電圧装置と、を連結する高電圧ケーブルが存在する場合には、上記バッテリユニット前方の車幅方向内側への回動変位時に、高電圧ケーブルが強く引っ張られる懸念があった。
【0006】
このような問題点を解決するために、側突荷重を車幅方向の反対側に伝達する連結部材を設け、この連結部材で左右のバッテリユニット間を車幅方向に連結し、当該連結部材でバッテリユニット間を突っ張ることが考えられる。
【0007】
しかしながら、上記連結部材の剛性が高すぎる場合には、側突荷重入力側のバッテリユニットが、連結部材とサイドシルとの間に挟まれて、バッテリユニットが変形するという新たな問題点が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2020-11640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、車両側突時にバッテリユニットが連結部材とサイドシルとの間で挟まれることを抑制し、バッテリユニットの変形を抑制することができる車両の下部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明による車両の下部構造は、車幅方向外側において車両前後方向に延びるサイドシルと、上記サイドシルの車幅方向内側に隣接してフロアパネルの下方において車幅方向に離間して設けられる第1バッテリユニットおよび第2バッテリユニットと、上記第1バッテリユニットと上記第2バッテリユニットとの間を連結する連結部材と、を備え、上記連結部材は、車幅方向に荷重伝達可能に連結する車幅方向連結部と、上記車幅方向連結部に隣接配置され車幅方向の側突荷重に対して変形切っ掛けとなる複数の変形促進部と、を備えたものである。
上述の変形切っ掛けとなる変形促進部は、ビードにより形成してもよい。
【0011】
上記構成によれば、車両側突時に、連結部材の車幅方向連結部が車幅方向反対側へ側突荷重を伝達しつつ、複数の変形促進部が変形切っ掛けとなって車幅方向連結部を曲げ変形させて、側突エネルギを吸収でき、バッテリユニットの変形を抑制することができる。
【0012】
また、変形促進部が複数設けられていることで、車幅方向連結部が側突時に車幅方向の複数箇所で変形する。この結果、バッテリユニットが上下方向に相対変位しても、連結部材が突っ張ることなく、バッテリユニットへの荷重入力低減を図ることができる。
要するに、車両側突時にバッテリユニットが連結部材とサイドシルとの間で挟まれることを抑制し、バッテリユニットの変形を抑制することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記複数の各変形促進部は、それぞれが上記車幅方向連結部を挟んで車幅方向の同一位置で前後方向に並んで設けられるものである。
上記構成によれば、上述の変形促進部に効果的に応力を集中させて、車幅方向連結部を確実に曲げ変形させて、側突エネルギを吸収することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記車幅方向連結部は車幅方向に延びる複数の稜線部を備えているものである。
上記構成によれば、上述の稜線部は側突荷重を伝達する経路であるから、この稜線部を折ることで、側突エネルギの吸収量の向上を図ることができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記変形促進部は車両下方に突出して車両前後方向に延びる前後方向ビードにより形成されたものである。
上記構成によれば、変形促進部を前後方向ビードにて形成することで、簡単な構成でありながら、前後方向ビードが変形切っ掛けとなって、側突エネルギを吸収するという効果を得ることができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記変形促進部の後部に、側突時の車幅方向入力に対して剛性が変化する剛性変化部を備え、上記変形促進部は上記剛性変化部に連結されるものである。
上記構成によれば、変形促進部の後部が上記剛性変化部に連結されているので、車幅方向の側突荷重入力に対して変形促進部が剛性変化部に連結された部位、つまり、剛性変化点に応力が集中しやすくなり、この剛性変化点が効果的に変形切っ掛けとして作用する。
【0017】
この発明の一実施態様においては、上記車幅方向連結部後側の後方延出部は車幅方向に延びる切欠き部を備えており、上記変形促進部は上記切欠き部に連結されるものである。
【0018】
上記構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、連結部材が折れ変形する場合、切欠き部が存在しない場合には、後方延出部のさらに後方の部分をも共に折る必要があり、折る時のエネルギ量が大となるが、上記切欠き部の存在により折る時に大きいエネルギ量を要することなく、簡単に折ることができる。この結果、連結部材の折れ挙動を阻害することなく、連結部材の突っ張りを抑制することができる。
【0019】
この発明の一実施態様においては、上記車幅方向連結部の前部に連結される上記変形促進部は、車両後方ほど下方へ突出するスロープ形状に形成されたものである。
【0020】
上記構成によれば、変形促進部により車幅方向連結部の曲げ変形を図りつつ、空力性能の向上を図ることができる。
詳しくは、変形促進部の前端側部に付着した床下走行風を、上記変形促進部のスロープ形状に沿って、車両後方かつ、下方に誘導し、床下走行風が連結部材上側の空間部に流入することを抑制するので、空力性能の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、車両側突時にバッテリユニットが連結部材とサイドシルとの間で挟まれることを抑制し、バッテリユニットの変形を抑制することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の車両の下部構造を備えた車両要部の底面図
図2図1の構造を車両下方から見た状態で示す斜視図
図3図1のA-A線矢視断面図
図4図1のB-B線矢視断面図
図5】連結部材の底面図
図6】連結部材の底面斜視図
図7図6とは異なる角度で示す連結部材の底面斜視図
図8図5のD-D線矢視断面図
図9】実施例の車両の下部構造における側突時の状態を示す底面図
図10図9の要部の縦断面図
図11】比較例の車両の下部構造を示す底面図
図12】比較例の車両の下部構造における側突時の状態を示す底面図
図13図12の要部の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0023】
車両側突時にバッテリユニットが連結部材とサイドシルとの間で挟まれることを抑制し、バッテリユニットの変形を抑制するという目的を、車幅方向外側において車両前後方向に延びるサイドシルと、上記サイドシルの車幅方向内側に隣接してフロアパネルの下方において車幅方向に離間して設けられる第1バッテリユニットおよび第2バッテリユニットと、上記第1バッテリユニットと上記第2バッテリユニットとの間を連結する連結部材と、を備え、上記連結部材は、車幅方向に荷重伝達可能に連結する車幅方向連結部と、上記車幅方向連結部に隣接配置され車幅方向の側突荷重に対して変形切っ掛けとなる複数の変形促進部と、を備えるという構成にて実現した。
【実施例0024】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の下部構造を示し、図1は当該車両の下部構造を備えた車両要部の底面図、詳しくは、センタピラーおよびその前後方向周辺と対応する位置の下部構造を示す底面図、図2図1の構造を車両下方から見た状態で示す斜視図、図3図1のA-A線矢視断面図、図4図1のB-B線矢視断面図である。
【0025】
また、図5は連結部材の底面図、図6は連結部材の底面斜視図、図7図6とは異なる角度で示す連結部材の底面斜視図、図8図5のD-D線矢視断面図である。
【0026】
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印LEは車幅方向の左側外方を示し、矢印RIは車幅方向の右側外方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0027】
図3に示すように、車幅方向の左右の両外側において車両前後方向に延びる車体強度部材としてのサイドシル1を設けている。このサイドシル1はサイドシルアウタ2とサイドシルインナ3とを接合固定して車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面4を備えている。この実施例では、センタピラー配設部位においてはサイドシルアウタ2とサイドシルインナ3との間にセンタピラーインナ5を挟持している。
【0028】
サイドシルアウタ2とサイドシルインナ3との間にセンタピラーを挟持する構造に代えて、これら両者2,3間にサイドシルレインフォースメントを挟持する構造を採用してもよい。
【0029】
図2図3に示すように、センタピラー6はセンタピラーインナ5(図3参照)とセンタピラーアウタ7(図2参照)とを接合固定して車両の上下方向に延びるセンタピラー閉断面を備えた車体強度部材である。
【0030】
図3に示すように、左右一対のサイドシル1におけるサイドシルインナ3,3間には、車室の床面を構成するフロアパネル8を設け、このフロアパネル8の車幅方向中央部にはトンネル部9を設けている。このトンネル部9はフロアパネル8と一体形成してもよく、別体のトンネル部9をフロアパネル8に取付ける構造を採用してもよい。
【0031】
図3図4に示すように、車室内へ突出して車両前後方向に延びるトンネル部9の上部左右のコーナ部には、トンネルレインフォースメント10(いわゆる、ハイマウントバックボーンフレーム)を取付けて、このトンネルレインフォースメント10とトンネル部9との間には、車両前後方向に延びるトンネル上部閉断面11を形成し、トンネル部剛性の向上を図っている。
【0032】
図3図4に示すように、上述のトンネル部9の下部左右のコーナ部には、トンネルサイドメンバ12を取付けて、このトンネルサイドメンバ12とトンネル部9との間には、車両前後方向に延びるトンネル下部閉断面13を形成し、トンネル部剛性の向上を図っている。
【0033】
図1図2に示すように、フロアパネル8の左右両サイドで、かつサイドシルインナ3の車幅方向内側には、断面逆ハット形状の床下フロアフレーム14を取付け、フロアパネル8下面と床下フロアフレーム14との間には、車両前後方向に延びるフロアフレーム閉断面14a(図3参照)を形成して、フロア剛性の向上を図っている。
上述の床下フロアフレーム14はフロアパネル8前端部からセンタピラー6後方部に対応するフロアパネル8の所定位置まで車両前後方向に延びている。
【0034】
図1図2に示すように、上述の床下フロアフレーム14の後端から図示しないリヤエンドパネルまで車両前後方向に延びる左右一対のリヤサイドフレーム15を設けている。このリヤサイドフレーム15はリヤシートパン16および荷室フロアの車幅方向両サイドに設けられた車体強度部材であって、リヤサイドフレーム15とリヤフロア(リヤシートパン16、荷室フロア)との間には、車両前後方向に延びるリヤサイドフレーム閉断面が形成されている。
【0035】
ここで、図1に示すように、上述のサイドシル1の後部と、リヤサイドフレーム15の前部と、は車幅方向においてオーバラップするように構成されている。
この実施例では、車両としてPHEV(plug-in hybrid electric vehicle、プラグイン ハイブリッド)車両を例示しており、車両前部に搭載したエンジンから排出させる排気ガスを車両後方に導出するために、上述のトンネル部9を備えている。
【0036】
図3に示すように、上述のサイドシル1の車幅方向内側に隣接し、フロアパネル8の下方においてトンネル部9を隔てて車幅方向に離間して第1バッテリユニット21と第2バッテリユニット22と、を設けている。
【0037】
上述の第1および第2の各バッテリユニット21,22は、図3に示すように、複数のバッテリモジュール17から成るバッテリ18と、バッテリ18の下部を覆う断面凹形状のバッテリトレイ23と、バッテリ18の上部を覆う断面逆凹形状のバッテリカバー24と、を備えている。
【0038】
つまり、上述の第1および第2の各バッテリユニット21,22は、バッテリ18がバッテリトレイ23で支持されると共に、バッテリ18はバッテリトレイ23とバッテリカバー24とで囲繞されたバッテリ格納空間25内に配置されている。
また、上述の各バッテリユニット21,22におけるバッテリトレイ23の底面は空力性能を考慮して略平坦に形成されている(図3参照)。
【0039】
図1図2に示すように、第1バッテリユニット21の車幅方向内側前部には、コネクタ接続部26が設けられており、第1バッテリユニット21の前方に設けられた高電圧装置としてのインバータ27と、上述のコネクタ接続部26との間を、高電圧ケーブル28で接続するように構成している。
【0040】
上述の高電圧ケーブル28は、その前後両端にインバータ側コネクタ29と、バッテリ側コネクタ30と、を備えており、インバータ側コネクタ29はインバータ27に接続され、バッテリ側コネクタ30はコネクタ接続部26に接続される。上述の高電圧ケーブル28は第1バッテリユニット21の前部から前方に延びるように配索されている。
【0041】
上述のインバータ27はバッテリ18の直流電力から交流電力を得る電力変換装置であり、これは、モータ駆動システムの効率を高めることを目的として、車輪を交流モータで駆動するためである。
【0042】
図1に示すように、第1バッテリユニット21と第2バッテリユニット22との少なくとも何れか一方には、車両の電気回路を切換えるリレー部31が固定されている。
この実施例では、車両左側に位置する第1バッテリユニット21の後部に立設したジャンクションボックス32の背面に複数のリレー33,34,35,36を取付け、これらの各リレー33~36により上述のリレー部31を構成している。
【0043】
リレー33はマイナス側急速充電リレーであり、リレー34はプラス側急速充電リレーであり、リレー35はマイナス側普通充電リレーであり、リレー36はプラス側普通充電リレーであるが、各リレー33~36の種類は、これに限定されるものではない。
【0044】
重量物である第1バッテリユニット21および第2バッテリユニット22の車幅方向外側は、図1図3に示す中間固定部材37と後部固定部材38とで車体に固定されている。
また、上述の第1バッテリユニット21および第2バッテリユニット22の車幅方向内側は、後述する吊下げ部材43(図4参照)にて車体に吊下げ支持されている。
【0045】
図1図3に示すように、上述の中間固定部材37は各バッテリユニット21,22の車両前後方向中間部を車体に固定するもので、図1図3に示すように、該中間固定部材37はバッテリ側取付け部37aと車体側取付け部37bとを有している。
【0046】
中間固定部材37のバッテリ側取付け部37aは、複数のボルト等の締結部材39を用いて、各バッテリユニット21,22のバッテリトレイ23の側面に締結固定されている(図1図2参照)。また、車体側取付け部37bは、複数のボルト、ナット等の締結部材40を用いて、車体フレームである床下フロアフレーム14の下面に締結固定されている(図3参照)。
【0047】
上述の中間固定部材37は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の押出し成形品により形成されており、バッテリ側取付け部37aは中実構造に形成され、車体側取付け部37bは中空構造に形成されている。
【0048】
また、上述の中空構造の車体側取付け部37bの上面部を、床下フロアフレーム14に締結する関係上、中空構造の車体側取付け部37bの下面部には、締結部材40を挿通させるための開口部37cが形成されている。
【0049】
この実施例では、上述の締結部材40としてボルト、ナットを用いており、ナットは予め床下フロアフレーム14の底面部の上面に溶接固定されており、車体側取付け部37bの開口部37cから挿入したボルトを、上述のナットに螺合することで、車体側取付け部37bを床下フロアフレーム14に取付けるように構成している。
さらに、上述の中間固定部材37は、車両側突時において側突荷重を吸収するエネルギ吸収部材を兼ねるものである。
【0050】
一方で、後部固定部材38は、各バッテリユニット21,22の車両前後方向の後部を車体に固定するもので、図1図2に示すように、該後部固定部材38はバッテリ側取付け部38aと車体側取付け部38bとを有している。
【0051】
図1図2に示すように、後部固定部材38のバッテリ側取付け部38aは、複数のボルト等の締結部材41を用いて、各バッテリユニット21,22のバッテリトレイ23の後部側面に締結固定されている。また、車体側取付け部38bは、ボルト、ナット等の締結部材42を用いて、車体フレームであるリヤサイドフレーム15の下面に締結固定されている。
重量物である第1バッテリユニット21および第2バッテリユニット22の車幅方向内側は、図4に示す吊下げ部材43で車体に吊下げ支持されている。
【0052】
図4図1のB-B線矢視断面図で、図1のB-B線位置はセンタピラー6の前側に対応し、図1のC-C線位置はセンタピラー6の後側に対応する。また、図4ではB-B線位置における構造のみを示しているが、C-C線位置においても、B-B線位置と同様に、各バッテリユニット21,22が吊下げ部材43で車体に吊下げ支持されているので、C-C線矢視断面図は図示省略している。
【0053】
図4に示すように第1バッテリユニット21、第2バッテリユニット22を車体に吊下げ支持する左右の吊下げ部材43,43は、何れも部材下部のバッテリ側取付け部43aと部材上部の車体側取付け部43bとを有している。
【0054】
図4に示すように、バッテリトレイ23の車幅方向内側から上方に延びる側壁部23aの上端にはフランジ部23bを一体形成しており、バッテリカバー24の車幅方向内側から下方に延びる側壁部24aの下端にもフランジ部24bを一体形成している。
【0055】
これらの各フランジ部24b,23bを上下方向に当接し、さらにその上部に吊下げ部材43下部のバッテリ側取付け部43aを重ね合わせた状態で、長尺のボルト44とナット45とを用いて、これら三者43a,24b,23bを一体的に締結固定している。つまり、ボルト44、ナット45により上記三者43a,24b,23bを共締め固定している。
【0056】
図4に示すように、吊下げ部材43によるバッテリ吊下げ位置の上部に対応して、トンネル部9の上部下面とトンネル部9の側部内面とに跨がってブラケット46を溶接固定している。
そして、吊下げ部材43上部の車体側取付け部43bを、ボルト47、ナット48等の締結部材を用いて上記ブラケット46の取付け座面に締結固定している。
【0057】
この実施例では、上述のナット48をブラケット46における取付け座面の上面に予め溶接固定し、吊下げ部材43上部の車体側取付け部43bを介してボルト47を上述のナット48に締結固定することで、車体側取付け部43bをブラケット46の取付け座面に締結したものである。
【0058】
これにより、各バッテリユニット21,22の車幅方向内側は、車両前後方向中間部において前後に離間した複数箇所が吊下げ部材43を介して車体強度部材であるトンネル部9に吊下げ支持されたものである。
【0059】
ところで、図1図4に示すように、車両下部にはエキゾーストパイプにて形成された排気通路を覆う前部インシュレータ51、中間部インシュレータ52、後部インシュレータ53が設けられている。これらの各インシュレータ51,52,53はそれぞれに分割形成されたものを、車両前後方向に連続するように車体に取付けたものである。
【0060】
図1図4に示すように、中間部インシュレータ52はトンネル部9の下方において第1バッテリユニット21と第2バッテリユニット22との間に位置している。前部インシュレータ51は中間部インシュレータ52よりも車両前側に位置している。後部インシュレータ53は中間部インシュレータ52よりも車両後側に位置している。
【0061】
図1図4に示すように、上述の中間部インシュレータ52より下方において、第1バッテリユニット21と第2バッテリユニット22との間を車幅方向に連結する連結部材60を設けている。
詳しくは、上述の連結部材60は、第1バッテリユニット21のバッテリトレイ23における底壁の車幅方向内側と、第2バッテリユニット22のバッテリトレイ23における底壁の車幅方向内側との間を、車幅方向に連結するものである(図4参照)。
【0062】
図5に示すように、上述の連結部材60は、板状のベース部材60Bからプレス加工により、車幅方向連結部61、斜め方向連結部62、変形促進部63,64、剛性変化部65、切欠き部66の各要素を一体形成したものである。
すなわち、上記連結部材60は、車幅方向連結部61と、斜め方向連結部62と、複数の変形促進部63,64と、剛性変化部65と、切欠き部66と、を備えている。
【0063】
上述の車幅方向連結部61は、第1バッテリユニット21の前部において当該第1バッテリユニット21の前部から第2バッテリユニット22の前部へ車幅方向に側突荷重を伝達可能とすべく各要素21,22の前部相互間を車幅方向に連結している。
【0064】
また、上述の斜め方向連結部62は、第2バッテリユニット22と第1バッテリユニット21の後部とを連結している。この実施例においては、上述の斜め方向連結部62は、第2バッテリユニット22の前部と第1バッテリユニット21の後部とを斜め方向に連結している。
【0065】
図5図7に示すように、車幅方向連結部61の第1バッテリユニット21側の前方延出部61a、後方延出部61bの車幅方向左端部に位置する左側前部連結部67は、車両前後方向に離間して複数設けられる固定部材としての複数のボルトB1,B2により第1バッテリユニット21の前部に連結されている。詳しくは、上述の左側前部連結部67は、複数のボルトB1,B2を用いて第1バッテリユニット21の前部におけるバッテリトレイ23の底壁に固定されている。
【0066】
図5図7に示すように、斜め方向連結部62の第1バッテリユニット21側の後部連結部としての左側後部連結部68は、車両前後方向に離間して複数設けられる固定部材としての複数のボルトB3,B4,B5により第1バッテリユニット21の後部に連結されている。
【0067】
詳しくは、上述の左側後部連結部68は上記左側前部連結部67に対して車両前後方向の後方に位置すると共に、この左側後部連結部68は複数のボルトB3,B4,B5を用いて第1バッテリユニット21の後部におけるバッテリトレイ23の底壁に固定されている。
【0068】
図5図7に示すように、車幅方向連結部61の第2バッテリユニット22側の側方延出部61cの車幅方向右端部に位置する右側前部連結部69は、車両前後方向に離間して複数設けられる固定部材としての複数のボルトB6,B7,B8により第2バッテリユニット22の前部に連結されている。詳しくは、上述の右側前部連結部69は、複数のボルトB6,B7,B8を用いて第2バッテリユニット22の前部におけるバッテリトレイ23の底壁に固定されている。
ここで、上述の右側前部連結部69は、この実施例においては、斜め方向連結部62の第2バッテリユニット22側の前部連結部としての右側前部連結部70を兼ねている。
【0069】
図5図7に示すように、上記複数の変形促進部63,64は、車幅方向連結部61の前部に隣接配置されて、車幅方向の側突荷重に対して変形切っ掛けとなるもので、この実施例においては、2つの変形促進部63,64が車幅方向に間隔を隔てて設けられている。
【0070】
これにより、ポール側突のような車両側突時に、連結部材60の車幅方向連結部61が車幅方向反対側へ側突荷重を伝達しつつ、複数の変形促進部63,64が変形切っ掛けとなって、車幅方向連結部61を曲げ変形させて、側突エネルギを吸収し、バッテリユニットの変形を抑制するように構成している。
【0071】
また、上記変形促進部63,64が複数設けられていることで、車幅方向連結部61が車両側突時に車幅方向の複数箇所で変形し、これにより、バッテリユニットが上下方向に相対変位しても、連結部材60が突っ張ることなく、バッテリユニットへの荷重入力低減を図るように構成している。
すなわち、車両側突時に、バッテリユニットが連結部材60とサイドシル1との間、詳しくは、連結部材60と床下フロアフレーム14との間で挟まれることを抑制し、バッテリユニットの変形を抑制すべく構成したものである。
【0072】
図5図8に示すように、上述の車幅方向連結部61は下方に突出するビード71により形成されており、このビード71は車幅方向に延びる複数の稜線部X1,X2,X3,X4を備えている。
上述の車幅方向に延びる複数の稜線部X1~X4は側突荷重を伝達する経路であるから、車両側突時に、変形促進部63,64を変形切っ掛けとして当該稜線部X1~X4を折ることで、側突エネルギの吸収量の向上を図るように構成している。
【0073】
図5図7に示すように、上述の複数の各変形促進部63,64は、それぞれ上記車幅方向連結部61を挟んで車幅方向の同一位置で車両前後方向に並んで設けられている。
詳しくは、一方の変形促進部63はビード71の前部に位置する前部変形促進部63aと、ビード71の後部に位置する後部変形促進部63bと、を有している。そして、前後の各変形促進部63a,63bが、ビード71を介して車幅方向の同一位置で車両前後方向に並んで設けられている。
【0074】
また、他方の変形促進部64もビード71の前部に位置する前部変形促進部64aと、ビード71の後部に位置する後部変形促進部64bと、を有している。そして、前後の各変形促進部64a,64bが、ビード71を介して車幅方向の同一位置で車両前後方向に並んで設けられている。
【0075】
このように、各変形促進部63,64がビード71にて形成される車幅方向連結部61を隔てて車幅方向の同一位置で車両前後方向に並んで設けられることにより、それぞれの変形促進部63,64に効果的に応力を集中させて、車幅方向連結部61を確実に曲げ変形させて、側突エネルギを吸収するように構成している。
【0076】
図5に示すように、前部変形促進部63aと後部変形促進部63bとを有する一方の変形促進部63、並びに、前部変形促進部64aと後部変形促進部64bとを有する他方の変形促進部64は、それぞれ、車両下方に突出して車両前後方向に延びる前後方向ビード63B,64Bにより形成されている。
【0077】
このように、変形促進部63,64を前後方向ビード63B,64Bにて形成することで、簡単な構成でありながら、前後方向ビード63B,64Bが変形切っ掛けとなって、車幅方向連結部61を曲げ変形させることにより、側突エネルギを吸収すべく構成している。
【0078】
図5に示すように、上述の他方の変形促進部64の後部には、側突時の車幅方向入力に対して剛性が変化する剛性変化部65を備えており、当該他方の変形促進部64は該剛性変化部65に連結されている。
上述の剛性変化部65はビード71の稜線部X4に沿って当該ビード71の車幅方向右端部からビード71の車幅方向中間対応位置の後部変形促進部64bまで車幅方向に延びると共に、図8に示すように上方へ突出した所謂上凸構造のビードにより形成されている。この剛性変化部65は後部変形促進部64bと比較して側突に対する剛性が大きくなるように形成されている。
【0079】
これにより、車幅方向の側突荷重に対して他方の変形促進部64bが剛性変化部65に連結された部位、つまり、剛性変化点に応力が集中しやすくなり、この剛性変化点が効果的に変形切っ掛けとして作用するように構成している。
【0080】
図5に示すように、上述の車幅方向連結部61後側の後方延出部61bは、車幅方向に延びる切欠き部66を備えており、複数の変形促進部63,64のうちの一方の変形促進部63の後部変形促進部63bは上述の切欠き部66に連結されている。
上述の切欠き部66は、図5に示すように、連結部材60の車幅方向左外方が開放すると共に、後部変形促進部63bの車幅方向右端近傍で終焉し当該部位で閉塞するように形成されている。
【0081】
車両側突時において、上述の連結部材60が折れ変形する場合、上記切欠き部66が存在しない場合には、後方延出部61bのさらに後方の部分をも共に折る必要があり、折る時のエネルギ量が大となるが、上記切欠き部66の存在により折る時に大きいエネルギ量を要することなく、簡単に折ることができる。これにより、連結部材60の折れ挙動を阻害することなく、連結部材60の突っ張りを抑制するように構成している。
【0082】
さらに、図6に示すように、上述の車幅方向連結部61の前部に連結される変形促進部63,64、すなわち、当該変形促進部63,64の前部変形促進部63a,64aは、車両後方ほど下方へ突出するスロープ形状に形成されている。
【0083】
詳しくは、上述の前部変形促進部63a,64aは、車両側面視で三角形状に形成されている。三角形の対辺に相当する前部変形促進部63a,64aの上辺部は前方延出部61aと連結されている。三角形の底辺に相当する前部変形促進部63a,64aの後辺部はビード71の前面部と連結されている。三角形の斜辺に相当する前部変形促進部63a,64aの下辺部は、その前端が前方延出部61aに連結され、当該下辺部は車両後方ほど下方へ突出し、下辺部の後端がビード71の前下の稜線部X2近傍に位置するスロープ形状に形成されている。
【0084】
これにより、変形促進部63,64により車幅方向連結部61の曲げ変形を図りつつ、前部変形促進部63a,64aにより、空力性能の向上を図るように構成している。
詳しくは、前部変形促進部63a,64aの前端側部に付着した床下走行風を、上記前部変形促進部63a,64aのスロープ形状に沿って、車両後方かつ、下方に誘導するように構成している。
【0085】
仮に、連結部材60とその上側の中間部インシュレータ52(図3図4参照)との間の空洞に床下走行風が流入すると、空力のエネルギ損失(いわゆるエネルギロス)が発生するが、上記スロープ形状により床下走行風を空洞内に流入しないように成して、空力性能の向上を図るように構成したものである。
【0086】
図5に示すように、左側後部連結部68を第1バッテリユニット21に連結する固定部材としての複数のボルトB3,B4,B5は車両前後方向に離間して複数設けられている。
斜め方向連結部62の第1バッテリユニット21側の連結部である上述の左側後部連結部68において、当該左側後部連結部68のボルトB3,B4,B5の車幅方向内側に隣接して車両前後方向に延びる第2のビード72を設け、特定のボルトB3に対する応力の集中を回避し、応力を各ボルトB3,B4,B5に分散し、連結部材60の強度信頼性を確保するように構成している。
【0087】
また、図5に示すように、右側前部連結部69,70を第2バッテリユニット22に連結する固定部材としての複数のボルトB6,B7,B8も車両前後方向に離間して複数設けられている。
上述の右側前部連結部69,70は、車幅方向連結部61の第2バッテリユニット22側の連結部と、斜め方向連結部62の第2バッテリユニット22側の連結部と、を兼ねるものである。
【0088】
そして、上述の各ボルトB6,B7,B8の車幅方向内側に隣接して車両前後方向に延びる第3のビード73を設け、特定のボルトB8に対する応力の集中を回避し、応力を各ボルトB6,B7,B8に分散し、連結部材60の強度信頼性を確保するように構成している。
【0089】
図9は、本実施例の車両の下部構造における側突時の状態を示す底面図、図10図9の要部の縦断面図、図11は比較例の車両の下部構造を示す底面図、図12は比較例の車両の下部構造における側突時の状態を示す底面図、図13図12の要部の縦断面図である。なお、図11図13において、図1図9図10と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略している。
【0090】
図1に示すノーマル(normal、正常)な状態から図9に示すようにポール等の衝突物80が第1バッテリユニット21の重心位置よりも車両前方において車幅方向内側向きへ衝突して、図9に矢印aで示す側突荷重が入力すると、サイドシル1は車両平面視でV字状に変形する。
【0091】
これにより、第1バッテリユニット21には、その重心位置よりも前方の局所的な部位から側突荷重が入力されて、第1バッテリユニット21の前方が車幅方向内側へ回動変位しようとするが、連結部材60の車幅方向連結部61が車幅方向反対側である第2バッテリユニット22側へ側突荷重を伝達しつつ、複数の変形促進部63,64が変形切っ掛けとなって、車幅方向連結部61を図10に示すように逆ハット形状に曲げ変形させて、側突エネルギを吸収し、第1バッテリユニット21の変形を抑制する。
【0092】
また、変形促進部63,64が複数設けられているので、車幅方向連結部61は側突時に車幅方向の複数箇所で変形する。この結果、第1バッテリユニット21が上下方向に相対変位しても、連結部材60が突っ張ることなく、当該第1バッテリユニット21への荷重入力低減を図ることができる。
すなわち、車両側突時において、第1バッテリユニット21が連結部材60とサイドシル1との間で挟まれることを抑制し、第1バッテリユニット21の変形を抑制することができるものである。
【0093】
なお、図9において、81は触媒コンバータ、82は触媒コンバータ81よりも上流側の排気管、83は触媒コンバータ81よりも下流側の排気管である。
図1図9図10で示した実施例の構造に対して、図11図13に示す比較例では、第1バッテリユニット21の前部と第2バッテリユニット22の前部とを前側連結部材91で連結すると共に、第1バッテリユニット21の後部と第2バッテリユニット22の後部とを後側連結部材92で連結している。つまり、比較例においては各バッテリユニット21,22の前部相互間および後部相互間を、車両前後方向に離間した別々の連結部材91,92で車幅方向に連結したものである。
【0094】
比較例の構造において、図11に示すノーマルな状態から図12に示すようにポール等の衝突物80が第1バッテリユニット21の重心位置よりも車両前方において車幅方向内側向きへ衝突して、図12に矢印aで示す側突荷重が入力すると、サイドシル1は車両平面視でV字状に変形する。
【0095】
これにより、第1バッテリユニット21には、その重心位置よりも前方の局所的な部位から側突荷重が入力されて、第1バッテリユニット21の前方が車幅方向内側に回動変位する挙動となる。この場合、上述の前側連結部材91で第1バッテリユニット21の前部と第2バッテリユニット22の前部とを車幅方向に連結しているので、前側連結部材91を介して側突荷重を車幅方向反対側である第2バッテリユニット22に荷重伝達することができる。
【0096】
しかしながら、図13に示すように、前側連結部材91はその高剛性により車幅方向中間部が一箇所で折れ曲がり、車両正面視でV字状となって、第1バッテリユニット21の上下変位を規制し、図13に示す折曲点91aと、前側連結部材91の第1バッテリユニット21への固定点91bとが突っ張るように作用し、第1バッテリユニット21が前側連結部材91とサイドシル1との間で挟まれ、第1バッテリユニット21が変形するので、好ましくなかった。
【0097】
図11図13で示した比較例の構造に対して、図1図9図10で示すこの実施例においては、複数の変形促進部63,64が変形切っ掛けとなって車幅方向連結部61を曲げ変形させて、側突エネルギを吸収し、第1バッテリユニット21の変形を抑制することができるものである。
【0098】
以上詳述したように、上記実施例の車両の下部構造は、車幅方向外側において車両前後方向に延びるサイドシル1と、上記サイドシル1の車幅方向内側に隣接してフロアパネル8の下方において車幅方向に離間して設けられる第1バッテリユニット21および第2バッテリユニット22と、上記第1バッテリユニット21と上記第2バッテリユニット22との間を連結する連結部材60と、を備え、上記連結部材60は、車幅方向に荷重伝達可能に連結する車幅方向連結部61と、上記車幅方向連結部61に隣接配置され車幅方向の側突荷重に対して変形切っ掛けとなる複数の変形促進部63,64と、を備えたものである(図1図5参照)。
【0099】
この構成によれば、車両側突時に、連結部材60の車幅方向連結部61が車幅方向反対側へ側突荷重を伝達しつつ、複数の変形促進部63,64が変形切っ掛けとなって車幅方向連結部61を曲げ変形(図10参照)させて、側突エネルギを吸収でき、バッテリユニット(この実施例では第1バッテリユニット21)の変形を抑制することができる。
【0100】
また、変形促進部63,64が複数設けられていることで、車幅方向連結部61が側突時に車幅方向の複数箇所で変形する。この結果、バッテリユニット(第1バッテリユニット21)が上下方向に相対変位しても、連結部材60が突っ張ることなく、バッテリユニット(第1バッテリユニット21)への荷重入力低減を図ることができる。
【0101】
要するに、車両側突時にバッテリユニット(第1バッテリユニット21)が連結部材60とサイドシル1との間で挟まれることを抑制し、バッテリユニット(第1バッテリユニット21)の変形を抑制することができる。
【0102】
この発明の一実施形態においては、上記複数の各変形促進部63,64は、それぞれが上記車幅方向連結部61を挟んで車幅方向の同一位置で前後方向に並んで設けられるものである(図5参照)。
この構成によれば、上述の変形促進部63,64に効果的に応力を集中させて、車幅方向連結部61を確実に曲げ変形させて、側突エネルギを吸収することができる。
【0103】
この発明の一実施形態においては、上記車幅方向連結部61は車幅方向に延びる複数の稜線部X1~X4を備えているものである(図5図8参照)。
この構成によれば、上述の稜線部X1~X4は側突荷重を伝達する経路であるから、この稜線部X1~X4を折ることで、側突エネルギの吸収量の向上を図ることができる。
【0104】
この発明の一実施形態においては、上記変形促進部63,64は車両下方に突出して車両前後方向に延びる前後方向ビード63B,64Bにより形成されたものである(図5参照)。
この構成によれば、変形促進部63,64を前後方向ビード63B,64Bにて形成することで、簡単な構成でありながら、前後方向ビード63B,64Bが変形切っ掛けとなって、側突エネルギを吸収するという効果を得ることができる。
【0105】
この発明の一実施形態においては、上記変形促進部64の後部に、側突時の車幅方向入力に対して剛性が変化する剛性変化部65を備え、上記変形促進部64は上記剛性変化部65に連結されるものである(図5参照)。
この構成によれば、変形促進部64の後部が上記剛性変化部65に連結されているので、車幅方向の側突荷重入力に対して変形促進部64が剛性変化部65に連結された部位、つまり、剛性変化点に応力が集中しやすくなり、この剛性変化点が効果的に変形切っ掛けとして作用する。
【0106】
この発明の一実施形態においては、上記車幅方向連結部61後側の後方延出部61bは車幅方向に延びる切欠き部66を備えており、上記変形促進部63は上記切欠き部66に連結されるものである(図5参照)。
【0107】
この構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、連結部材60が折れ変形する場合、切欠き部66が存在しない場合には、後方延出部61bのさらに後方の部分をも共に折る必要があり、折る時のエネルギ量が大となるが、上記切欠き部66の存在により折る時に大きいエネルギ量を要することなく、簡単に折ることができる。この結果、連結部材60の折れ挙動を阻害することなく、連結部材60の突っ張りを抑制することができる。
【0108】
この発明の一実施形態においては、上記車幅方向連結部61の前部に連結される上記変形促進部(前部変形促進部63a,64a)は、車両後方ほど下方へ突出するスロープ形状に形成されたものである(図6参照)。
【0109】
この構成によれば、変形促進部63,64により車幅方向連結部61の曲げ変形を図りつつ、前部変形促進部63a,64aにより空力性能の向上を図ることができる。
詳しくは、変形促進部63,64の前端側部に付着した床下走行風を、上記前部変形促進部63a,64aのスロープ形状に沿って、車両後方かつ、下方に誘導し、床下走行風が連結部材60上側の空間部(図3図4参照)に流入することを抑制するので、空力性能の向上を図ることができる。
【0110】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の切欠き部66に連結される変形促進部は、実施例の複数の変形促進部63,64のうちの一方の変形促進部63に対応し、
以下同様に、
剛性変化部65に連結される変形促進部は、複数の変形促進部63,64のうちの他方の変形促進部64に対応し、
車幅方向連結部61の前部に連結される変形促進部は、前部変形促進部63a,64aに対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0111】
以上説明したように、本発明は、バッテリユニットを床下に搭載するような車両の下部構造について有用である。
【符号の説明】
【0112】
1…サイドシル
8…フロアパネル
21…第1バッテリユニット
22…第2バッテリユニット
60…連結部材
61…車幅方向連結部
61b…後方延出部
63,64…変形促進部
63a,64a…前部変形促進部
63B,64B…前後方向ビード
65…剛性変化部
66…切欠き部
X1,X2,X3,X4…稜線部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13