IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マツダ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両の下部構造 図1
  • 特開-車両の下部構造 図2
  • 特開-車両の下部構造 図3
  • 特開-車両の下部構造 図4
  • 特開-車両の下部構造 図5
  • 特開-車両の下部構造 図6
  • 特開-車両の下部構造 図7
  • 特開-車両の下部構造 図8
  • 特開-車両の下部構造 図9
  • 特開-車両の下部構造 図10
  • 特開-車両の下部構造 図11
  • 特開-車両の下部構造 図12
  • 特開-車両の下部構造 図13
  • 特開-車両の下部構造 図14
  • 特開-車両の下部構造 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022180719
(43)【公開日】2022-12-07
(54)【発明の名称】車両の下部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20221130BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20221130BHJP
【FI】
B62D25/20 Z
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021087360
(22)【出願日】2021-05-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】棗 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】影山 和宏
(72)【発明者】
【氏名】溝兼 通矢
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203AA31
3D203BB04
3D203BB08
3D203BB12
3D203CA25
3D203CA37
3D203DB05
3D235AA02
3D235BB07
3D235CC15
3D235DD35
3D235FF09
3D235FF12
3D235HH26
(57)【要約】
【課題】車両側突時に、バッテリユニットが連結部材とサイドシルとの間に挟まれて変形することを抑制し、かつ、床下走行風がバッテリユニット間に入り込むのを抑制する車両の下部構造を提供する。
【解決手段】車幅方向外側において車両前後方向に延びるサイドシル1と、サイドシル1の車幅方向内側に隣接してフロアパネル8の下方において車幅方向に離間して設けられる第1バッテリユニット21および第2バッテリユニット22と、第1バッテリユニット21と第2バッテリユニット22との間を連結する連結部材60と、を備え、連結部材60は、車幅方向に延びて車両下方に突出する縦壁部62と、縦壁部62の後方において後方ほど車両下方に傾斜するスロープ部64と、を備え、スロープ部64の下端は縦壁部62の下端よりも車両下方に位置するように構成されたことを特徴とする。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向外側において車両前後方向に延びるサイドシルと、
上記サイドシルの車幅方向内側に隣接してフロアパネルの下方において車幅方向に離間して設けられる第1バッテリユニットおよび第2バッテリユニットと、
上記第1バッテリユニットと上記第2バッテリユニットとの間を連結する連結部材と、を備え、
上記連結部材は、車幅方向に延びて車両下方に突出する縦壁部と、
該縦壁部の後方において後方ほど車両下方に傾斜するスロープ部と、を備え、
上記スロープ部の下端は上記縦壁部の下端よりも車両下方に位置するように構成されたことを特徴とする
車両の下部構造。
【請求項2】
上記第1バッテリユニットと上記第2バッテリユニットとの間に位置して、これら各バッテリユニットの底部間から上方に突出する突出部材を設け、
上記スロープ部後端の車幅方向外側端部は、上記突出部材の上下方向に延びる側壁の下端位置と同じ位置、または、車幅方向外側位置に位置する
請求項1に記載の車両の下部構造。
【請求項3】
上記縦壁部の前部には、車両後方ほど車両下方に傾斜する第1傾斜部を備えた
請求項1または2に記載の車両の下部構造。
【請求項4】
上記第1傾斜部と車幅方向の同一位置において、当該第1傾斜部の後方には、車幅方向に延びる切欠き部が設けられる
請求項3に記載の車両の下部構造。
【請求項5】
上記連結部材の車両前方には、車両下面部を覆うアンダカバーを備えており、
該アンダカバーの後端には、後方ほど車両下方に傾斜する第2傾斜部を設け、
上記第2傾斜部に対して車両後方に位置する上記第1傾斜部の前端は、上記連結部材の前端より後方に位置し、
上記第1傾斜部の前端と、上記連結部材の前端との間に、上記アンダカバーで剥離した剥離風を上記第1傾斜部にガイドするガイド部が形成された
請求項3または4に記載の車両の下部構造。
【請求項6】
上記スロープ部と当該スロープ部の車幅方向外側に隣接する平面部との間に稜線部を形成し、
該稜線部は車両後方ほど車幅方向外側に向かうように形成された
請求項1~5の何れか一項に記載の車両の下部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、バッテリユニットを床下に搭載するような車両の下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示されているように、車両走行時に、フロアトンネル部の内部に床下走行風が流入することを抑制し、空力性能の向上を図ることを目的としてトンネルメンバを設けたものが知られている。
【0003】
このトンネルメンバは、前壁と後壁と底壁とを有して、フロアトンネル部の下端部を車幅方向に連結するもので、トンネルメンバの上記前壁が床下走行風に対して縦壁となり、フロアトンネル部の内部に入り込もうとする床下走行風を車両下方に誘導することで、空力性能が向上するものである。
【0004】
一方、PHEV(plug-in hybrid electric vehicle、プラグイン ハイブリッド)車両の場合、排気管が配置される関係上、フロアトンネル部の車幅方向左右に左右のバッテリユニットを離間して配置する必要がある。
【0005】
この場合、左右の各バッテリユニット下部において上記トンネルメンバと同様に、車幅方向に延びる前壁をもった連結部材を設けることで、左右のバッテリユニット間に生じる床下走行風の剥離が可能となる。
【0006】
しかしながら、床下走行風の剥離が可能な程度の上下寸法を有する連結部材を採用すると、車両側突時に、連結部材が突っ張って、側突荷重入力側のバッテリユニットが、連結部材とサイドシルとの間に挟まれて、当該バッテリユニットが変形するという新たな問題点が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016―132399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、この発明は、車両側突時においてバッテリユニットが連結部材とサイドシルとの間に挟まれて変形することを抑制すると共に、床下走行風がバッテリユニット間に入り込むのを抑制することができる車両の下部構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明による車両の下部構造は、車幅方向外側において車両前後方向に延びるサイドシルと、上記サイドシルの車幅方向内側に隣接してフロアパネルの下方において車幅方向に離間して設けられる第1バッテリユニットおよび第2バッテリユニットと、上記第1バッテリユニットと上記第2バッテリユニットとの間を連結する連結部材と、を備え、上記連結部材は、車幅方向に延びて車両下方に突出する縦壁部と、該縦壁部の後方において後方ほど車両下方に傾斜するスロープ部と、を備え、上記スロープ部の下端は上記縦壁部の下端よりも車両下方に位置するように構成されたものである。
【0010】
上記構成によれば、スロープ部の下端が縦壁部の下端よりも低く構成されているため、縦壁部で剥離しきれない床下走行風を、スロープ部により車両下方に誘導して剥離することができる。
【0011】
また、縦壁部を高くしないため、車両側突時に連結部材の曲げ変形を阻害することなく、当該連結部材が側突荷重入力側のバッテリユニットとの間で突っ張る作用を抑制でき、該バッテリユニットが連結部材とサイドシルとの間で挟まれて変形するのを抑制することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記第1バッテリユニットと上記第2バッテリユニットとの間に位置して、これら各バッテリユニットの底部間から上方に突出する突出部材を設け、上記スロープ部後端の車幅方向外側端部は、上記突出部材の上下方向に延びる側壁の下端位置と同じ位置、または、車幅方向外側位置に位置するものである。
上述の突出部材は、排気管の熱を遮熱するトンネルインシュレータであってもよい。
【0013】
上記構成によれば、スロープ部後端の車幅方向外側端部の位置により、当該スロープ部の後端から剥離した剥離風が上述の突出部材の内方へ入り込むのを抑制することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記縦壁部の前部には、車両後方ほど車両下方に傾斜する第1傾斜部を備えたものである。
上記構成によれば、床下走行風を第1傾斜部に沿って車両下方へ誘導し、当該床下走行風を縦壁部下端に流すので、床下走行風が直接縦壁部に当るのに対して、エネルギ損失が少なくなり、床下走行風を車両下方へ案内することができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記第1傾斜部と車幅方向の同一位置において、当該第1傾斜部の後方には、車幅方向に延びる切欠き部が設けられるものである。
上記構成によれば、上述の切欠き部を設けたことで、車両側突時における連結部材の折れ変形を促進することができる。また、床下走行風が上記切欠き部に入らないように当該床下走行風を上述の第1傾斜部にて車両下方に案内するので、切欠き部による床下走行風の乱れを抑制することができる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、上記連結部材の車両前方には、車両下面部を覆うアンダカバーを備えており、該アンダカバーの後端には、後方ほど車両下方に傾斜する第2傾斜部を設け、上記第2傾斜部に対して車両後方に位置する上記第1傾斜部の前端は、上記連結部材の前端より後方に位置し、上記第1傾斜部の前端と、上記連結部材の前端との間に、上記アンダカバーで剥離した剥離風を上記第1傾斜部にガイドするガイド部が形成されたものである。
【0017】
上記構成によれば、アンダカバーで剥離された剥離風を上記ガイド部にて第1傾斜部にガイドし、その後、第1傾斜部にて車両下方へ案内するので、床下走行風が連結部材上側の空間部に流入するのを抑制して、空力性能の向上を図ることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、上記スロープ部と当該スロープ部の車幅方向外側に隣接する平面部との間に稜線部を形成し、該稜線部は車両後方ほど車幅方向外側に向かうように形成されたものである。
【0019】
上記構成によれば、上述の平面部を流れる床下走行風は、上記稜線部に沿って、車幅方向外側へ誘導されて、バッテリユニット側へ流れ、これにより、突出部材の内部に流れ込もうとする床下走行風の流れを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、車両側突時においてバッテリユニットが連結部材とサイドシルとの間に挟まれて変形することを抑制すると共に、床下走行風がバッテリユニット間に入り込むのを抑制することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の車両の下部構造を備えた車両要部の底面図。
図2図1の構造を車両下方から見た状態で示す斜視図。
図3図1のA-A線矢視断面図。
図4図1のB-B線矢視断面図。
図5】連結部材の底面図。
図6】連結部材の底面斜視図。
図7図5のD-D線矢視断面図。
図8図5のE-E線矢視断面図。
図9】アンダカバーを取付けた状態で示す車両の下部構造の要部底面図。
図10】(a)は図9のG―G線矢視断面図、(b)は図10(a)の部分拡大図。
図11】実施例の車両の下部構造における側突時の状態を示す底面図。
図12図11の要部の縦断面図。
図13】比較例の車両の下部構造を示す底面図。
図14】比較例の車両の下部構造における側突時の状態を示す底面図。
図15図14の要部の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
車両側突時においてバッテリユニットが連結部材とサイドシルとの間に挟まれて変形することを抑制すると共に、床下走行風がバッテリユニット間に入り込むのを抑制するという目的を、車幅方向外側において車両前後方向に延びるサイドシルと、上記サイドシルの車幅方向内側に隣接してフロアパネルの下方において車幅方向に離間して設けられる第1バッテリユニットおよび第2バッテリユニットと、上記第1バッテリユニットと上記第2バッテリユニットとの間を連結する連結部材と、を備え、上記連結部材は、車幅方向に延びて車両下方に突出する縦壁部と、該縦壁部の後方において後方ほど車両下方に傾斜するスロープ部と、を備え、上記スロープ部の下端は上記縦壁部の下端よりも車両下方に位置するように構成されるという構造にて実現した。
【実施例0023】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の下部構造を示し、図1は当該車両の下部構造を備えた車両要部の底面図、詳しくは、センタピラーおよびその前後方向周辺と対応する位置の下部構造を示す底面図、図2図1の構造を車両下方から見た状態で示す斜視図、図3図1のA-A線矢視断面図、図4図1のB-B線矢視断面図である。
【0024】
また、図5は連結部材の底面図、図6は連結部材の底面斜視図、図7図5のD-D線矢視断面図、図8図5のE-E線矢視断面図、図9はアンダカバーを取付けた状態で示す車両の下部構造の要部底面図、図10(a)は図9のG―G線矢視断面図、図10(b)は図10(a)の部分拡大図である。
【0025】
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印LEは車幅方向の左側外方を示し、矢印RIは車幅方向の右側外方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0026】
図3に示すように、車幅方向の左右の両外側において車両前後方向に延びる車体強度部材としてのサイドシル1を設けている。このサイドシル1はサイドシルアウタ2とサイドシルインナ3とを接合固定して車両の前後方向に延びるサイドシル閉断面4を備えている。この実施例では、センタピラー配設部位においてはサイドシルアウタ2とサイドシルインナ3との間にセンタピラーインナ5を挟持している。
【0027】
サイドシルアウタ2とサイドシルインナ3との間にセンタピラーを挟持する構造に代えて、これら両者2,3間にサイドシルレインフォースメントを挟持する構造を採用してもよい。
【0028】
図2図3に示すように、センタピラー6はセンタピラーインナ5(図3参照)とセンタピラーアウタ7(図2参照)とを接合固定して車両の上下方向に延びるセンタピラー閉断面を備えた車体強度部材であり、このセンタピラー6により、ルーフサイドレールとサイドシル1との間を上下方向に連結している。
【0029】
図3に示すように、左右一対のサイドシル1におけるサイドシルインナ3,3間には、車室の床面を構成するフロアパネル8を設け、このフロアパネル8の車幅方向中央部には車両前後方向に延びるトンネル部9を設けている。このトンネル部9はフロアパネル8と一体形成してもよく、別体のトンネル部9をフロアパネル8に取付ける構造を採用してもよい。
【0030】
図3図4に示すように、車室内へ突出して車両前後方向に延びる上述のトンネル部9の上部左右のコーナ部には、トンネルレインフォースメント10(いわゆる、ハイマウントバックボーンフレーム)を取付けて、このトンネルレインフォースメント10とトンネル部9との間には、車両前後方向に延びるトンネル上部閉断面11を形成し、トンネル部剛性の向上を図っている。
【0031】
図3図4に示すように、上述のトンネル部9の下部左右のコーナ部には、トンネルサイドメンバ12を取付けて、このトンネルサイドメンバ12とトンネル部9との間には、車両前後方向に延びるトンネル下部閉断面13を形成し、トンネル部剛性の向上を図っている。
【0032】
図1図2に示すように、フロアパネル8の左右両サイドで、かつサイドシルインナ3の車幅方向内側には、断面逆ハット形状の床下フロアフレーム14を取付け、上述のフロアパネル8下面と当該床下フロアフレーム14との間には、車両前後方向に延びるフロアフレーム閉断面14a(図3参照)を形成して、フロア剛性の向上を図っている。
上述の床下フロアフレーム14はフロアパネル8前端部からセンタピラー6後方部に対応するフロアパネル8の所定位置まで車両前後方向に延びている。
【0033】
図1図2に示すように、上述の床下フロアフレーム14の後端から図示しないリヤエンドパネルまで車両後方に延びる左右一対のリヤサイドフレーム15を設けている。このリヤサイドフレーム15はリヤシートパン16および荷室フロアの車幅方向両サイドに設けられた車体強度部材であって、リヤサイドフレーム15とリヤフロア(リヤシートパン16、荷室フロア)との間には、車両前後方向に延びるリヤサイドフレーム閉断面が形成されている。
【0034】
ここで、図1に示すように、上述のサイドシル1の後部と、リヤサイドフレーム15の前部と、は車幅方向においてオーバラップするように構成されている。
この実施例では、車両としてPHEV(plug-in hybrid electric vehicle、プラグイン ハイブリッド)車両を例示しており、車両前部に搭載したエンジンから排出させる排気ガスを車両後方に導出するために、上述のトンネル部9を備えている。
【0035】
図3に示すように、上述のサイドシル1の車幅方向内側に隣接し、フロアパネル8の下方には、トンネル部9を隔て、かつ、車幅方向に離間して左右のバッテリユニット21,22、すなわち、第1バッテリユニット21と第2バッテリユニット22と、を設けている。
【0036】
上述の第1および第2の各バッテリユニット21,22は、図3に示すように、複数のバッテリモジュール17から成るバッテリ18と、当該バッテリ18の下部を覆う断面凹形状のバッテリトレイ23と、上記バッテリ18の上部を覆う断面逆凹形状のバッテリカバー24と、を備えている。
【0037】
つまり、上述の第1および第2の各バッテリユニット21,22は、バッテリ18がバッテリトレイ23で支持されると共に、当該バッテリ18はバッテリトレイ23とバッテリカバー24とで囲繞されたバッテリ格納空間25内に配置されている。
また、上述の各バッテリユニット21,22におけるバッテリトレイ23の底面は空力性能を考慮して略平坦に形成されている(図3参照)。
【0038】
図1図2に示すように、第1バッテリユニット21の底部において、その車幅方向内側前部には、コネクタ接続部26が設けられており、第1バッテリユニット21の前方に設けられた高電圧装置としてのインバータ27と、上述のコネクタ接続部26との間を、高電圧ケーブル28で接続するように構成している。
【0039】
上述の高電圧ケーブル28は、その前後両端にインバータ側コネクタ29と、バッテリ側コネクタ30と、を備えており、インバータ側コネクタ29はインバータ27に接続され、バッテリ側コネクタ30はコネクタ接続部26に接続される。上述の高電圧ケーブル28は第1バッテリユニット21の前部からインバータ27に向けて車両前方に延びるように配索されている。
【0040】
上述のインバータ27はバッテリ18の直流電力から交流電力を得る電力変換装置であり、これは、モータ駆動システムの効率を高めることを目的として、車輪を交流モータで駆動するためである。
【0041】
図1に示すように、第1バッテリユニット21と第2バッテリユニット22との少なくとも何れか一方には、車両の電気回路を切換えるリレー部31が固定されている。
この実施例では、車両左側に位置する第1バッテリユニット21の後部に立設したジャンクションボックス32の背面に複数のリレー33,34,35,36を取付け、これらの各リレー33~36により上述のリレー部31を構成している。
【0042】
ここで、上述のリレー33はマイナス側急速充電リレーであり、また、リレー34はプラス側急速充電リレーであり、さらに、リレー35はマイナス側普通充電リレーであり、さらにまたリレー36はプラス側普通充電リレーであるが、各リレー33~36の種類は、これに限定されるものではない。
【0043】
次に、図1図4を参照して、バッテリユニット21,22の支持構造について説明する。
重量物である上述の第1バッテリユニット21および第2バッテリユニット22の車幅方向外側は、図1図3に示す中間固定部材37と後部固定部材38とで車体に固定されている。
また、上述の第1バッテリユニット21および第2バッテリユニット22の車幅方向内側は、後述する吊下げ部材43(図4参照)にて車体に吊下げ支持されている。
【0044】
図1図3に示すように、上述の中間固定部材37は各バッテリユニット21,22の車両前後方向中間部を車体に固定するもので、図1図3に示すように、該中間固定部材37はバッテリ側取付け部37aと車体側取付け部37bとを有している。
【0045】
上述の中間固定部材37のバッテリ側取付け部37aは、複数のボルト等の締結部材39を用いて、各バッテリユニット21,22のバッテリトレイ23の側面に締結固定されている(図1図2参照)。また、車体側取付け部37bは、複数のボルト、ナット等の締結部材40を用いて、車体フレームである床下フロアフレーム14の下面に締結固定されている(図3参照)。
【0046】
上述の中間固定部材37は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の押出し成形品により形成されており、バッテリ側取付け部37aは中実構造に形成され、車体側取付け部37bは中空構造に形成されている。
【0047】
また、上述の中空構造の車体側取付け部37bの上面部を、床下フロアフレーム14に締結する関係上、中空構造の車体側取付け部37bの下面部には、締結部材40を挿通させるための複数の開口部37cが形成されている(図1図2参照)。
【0048】
この実施例では、上述の締結部材40としてボルト、ナットを用いており、ナットは予め床下フロアフレーム14の底面部の上面に溶接固定されており、車体側取付け部37bの開口部37cから挿入したボルトを、上述のナットに螺合することで、車体側取付け部37bを床下フロアフレーム14に取付けるように構成している。
さらに、上述の中間固定部材37は、車両側突時において側突荷重を吸収するエネルギ吸収部材を兼ねるものである。
【0049】
一方で、上述の後部固定部材38は、各バッテリユニット21,22の車両前後方向の後部を車体に固定するもので、図1図2に示すように、該後部固定部材38はバッテリ側取付け部38aと車体側取付け部38bとを有している。
【0050】
図1図2に示すように、後部固定部材38のバッテリ側取付け部38aは、複数のボルト等の締結部材41を用いて、各バッテリユニット21,22におけるバッテリトレイ23の後部側面に締結固定されている。また、車体側取付け部38bは、ボルト、ナット等の締結部材42を用いて、車体フレームであるリヤサイドフレーム15の下面に締結固定されている。
【0051】
この実施例においては、後部固定部材38の車体側取付け部38bを、単一の締結部材42を用いてリヤサイドフレーム15下面に固定する構造を例示したが、当該車体側取付け部38bは複数の締結部材42,42を用いて車体フレームとしてのリヤサイドフレーム15に固定する構造を採用してもよい。
重量物である上述の第1バッテリユニット21および第2バッテリユニット22の車幅方向内側は、図4に示す吊下げ部材43で車体に吊下げ支持されている。
【0052】
図4図1のB-B線矢視断面図で、図1のB-B線位置はセンタピラー6の前側に対応し、図1のC-C線位置はセンタピラー6の後側に対応する。また、図4ではB-B線位置における構造のみを示しているが、C-C線位置においても、B-B線位置と同様に、各バッテリユニット21,22が吊下げ部材43で車体に吊下げ支持されているので、C-C線矢視断面図は図示省略している。
【0053】
図4に示すように、第1バッテリユニット21、第2バッテリユニット22を車体に吊下げ支持する左右の吊下げ部材43,43は、何れも吊下げ部材43下部のバッテリ側取付け部43aと吊下げ部材43上部の車体側取付け部43bとを有している。
【0054】
図4に示すように、各バッテリユニット21,22において、バッテリトレイ23の車幅方向内側から上方に延びる側壁部23aの上端にはフランジ部23bを一体形成しており、バッテリカバー24の車幅方向内側から下方に延びる側壁部24aの下端にもフランジ部24bを一体形成している。
【0055】
これらの各フランジ部24b,23bを上下方向に当接し、さらにその上部に吊下げ部材43下部のバッテリ側取付け部43aを上載した状態で、締結部材としての長尺のボルト44とナット45とを用いて、これら三者43a,24b,23bを一体的に締結固定している。つまり、ボルト44、ナット45(締結部材)により上記三者43a,24b,23bを共締め固定している。
【0056】
図4に示すように、吊下げ部材43によるバッテリ吊下げ位置の上部に対応して、トンネル部9の上部下面とトンネル部9の側部内面とに跨がってブラケット46を溶接固定している。
そして、吊下げ部材43上部の車体側取付け部43bを、ボルト47、ナット48等の締結部材を用いて上記ブラケット46の取付け座面に締結固定している。
【0057】
この実施例では、上述のナット48をブラケット46における取付け座面の上面に予め溶接固定し、吊下げ部材43上部の車体側取付け部43bを介してボルト47を上述のナット48に締結固定することで、車体側取付け部43bをブラケット46の取付け座面に締結したものである。
【0058】
これにより、各バッテリユニット21,22の車幅方向内側は、車両前後方向中間部において前後に離間した複数箇所が吊下げ部材43を介して車体強度部材であるトンネル部9に吊下げ支持されたものである。
【0059】
次に、図1図4図8を参照してインシュレータの配設構造について説明する。
図1図4に示すように、車両下部にはエキゾーストパイプにて形成された排気通路を覆う前部インシュレータ51、中間部インシュレータ52、後部インシュレータ53が設けられている。これらの各インシュレータ51,52,53はそれぞれに分割形成されたものを、車両前後方向に連続するように車体に取付けたものである。
【0060】
図1図4に示すように、中間部インシュレータ52(いわゆるトンネルインシュレータ)はトンネル部9の下方において第1バッテリユニット21と第2バッテリユニット22との間に位置している。前部インシュレータ51は中間部インシュレータ52よりも車両前側で、かつトンネル部9から車幅方向右側にオフセットした位置に位置している。後部インシュレータ53は中間部インシュレータ52よりも車両後側で、かつ車幅方向の中央部に位置している。
【0061】
図4図8に示すように、上述の中間部インシュレータ52は、第1バッテリユニット21と第2バッテリユニット22との間に位置して、これら各バッテリユニット21,22のバッテリトレイ23底部間から上方に突出する突出部材である。
【0062】
この中間部インシュレータ52は、左側の側壁52aと、右側の側壁52bと、各側壁52a,52bの上部相互間を車幅方向に連結する上壁52cと、各側壁52a,52bの下端から車幅方向外側に延びる左右のフランジ部52d,52eと、を一体形成したものである。
【0063】
また、上述の各側壁52a,52bは、左右のフランジ部52d,52eの車幅方向内端部から車両上方に延びている。すなわち、これら各側壁52a,52bは上壁52cと左右の各フランジ部52d,52eとを連結すべく上下方向に延びている。
【0064】
図1図4に示すように、上述の中間部インシュレータ52より下方において、第1バッテリユニット21と第2バッテリユニット22との間を車幅方向に連結する連結部材60を設けている。
【0065】
詳しくは、上述の連結部材60は、第1バッテリユニット21のバッテリトレイ23における底壁の車幅方向内側と、第2バッテリユニット22のバッテリトレイ23における底壁の車幅方向内側との間を、車幅方向に連結するものである(図4参照)。
【0066】
次に、図9を参照して、アンダカバーの配設構造について説明する。
図1はアンダカバー54,55,56を取外した状態で示す車両の下部構造を示す底面図、図9はアンダカバー54,55,56を取付けた状態で示す車両の下部構造の要部底面図である。図1図9との対比からも明らかなように、上述の連結部材60の車両前方には、車両下面部を覆う前側アンダカバー54が設けられている。
【0067】
また、上述の連結部材60の車幅方向左方には、第1バッテリユニット21下面部を含む車両の下面部を覆う左側アンダカバー55が設けられている。この左側アンダカバー55の車幅方向内端部は、上述の連結部材60の車幅方向左側の一部(詳しくは、後述する各連結部70,71)とオーバラップしている。
【0068】
さらに、上述の連結部材60の車幅方向右方には、第2バッテリユニット22下面部を含む車両の下面部を覆う右側アンダカバー56が設けられている。この右側アンダカバー56の車幅方向内端部は、上述の連結部材60の車幅方向右側の一部(詳しくは、後述する右側前部連結部72,73)とオーバラップしている。
図9に示すように、上述の連結部材60はその車幅方向左側の一部と車幅方向右側の一部とを除く車幅方向中間部が車両下方に露出した状態になっている。
【0069】
次に、連結部材60とその周辺構造について詳述する。
図5に示すように、上述の連結部材60は、板状のベース部材60Bからプレス加工により、車幅方向連結部61の縦壁部62、斜め方向連結部63、スロープ部64、切欠き部65、ガイド部66、平面部67、複数の第1傾斜部68,69、複数の稜線部X1,X2の各要素を一体形成したものである。
【0070】
すなわち、上述の連結部材60は、車幅方向連結部61の縦壁部62と、斜め方向連結部63と、スロープ部64と、切欠き部65と、ガイド部66と、平面部67と、複数の第1傾斜部68,69と、複数の稜線部X1,X2と、を備えている。
【0071】
図1図5に示すように、上述の車幅方向連結部61は、第1バッテリユニット21の前部から第2バッテリユニット22の前部へ車幅方向に側突荷重を伝達可能とすべくこれら各要素21,22の前部相互間を車幅方向に連結している。上述の車幅方向連結部61は、この実施例においては、後述する左側前部連結部70を介して第1バッテリユニット21の重心位置よりも車両前方に連結される。
【0072】
図5のD―D線矢視断面を図7に示すように、上述の車幅方向連結部61は下方に突出するビードにより形成されており、このビード(車幅方向連結部61)は複数の稜線部X3,X4,X5,X6を有しており、これら複数の稜線部X3~X6のうちの前側の2つの稜線部X3,X4間に、上述の縦壁部62が形成されている。この縦壁部62は、図5図7に示すように、車幅方向に延びて車両下方に突出している。
【0073】
図1図5に示すように、上述の斜め方向連結部63は、第2バッテリユニット22と、第1バッテリユニット21の後部と、を連結している。この実施例においては、上述の斜め方向連結部63は、第2バッテリユニット22の前部と、第1バッテリユニット21の後部と、を斜め方向に連結している。
【0074】
図5図6に示すように、車幅方向連結部61の第1バッテリユニット21側の前方延出部61aと、後方延出部61bとの車幅方向左端部に位置する左側前部連結部70は、車両前後方向に離間して複数設けられる固定部材としての複数のボルトB1,B2により、第1バッテリユニット21の前部に連結されている。
【0075】
詳しくは、上述の左側前部連結部70は、複数のボルトB1,B2を用いて第1バッテリユニット21の前部におけるバッテリトレイ23の底壁に固定されている。さらに詳しくは、該左側前部連結部70は第1バッテリユニット21の重心位置よりも車両前方に連結固定されている。
【0076】
図5図6に示すように、斜め方向連結部63の第1バッテリユニット21側の後部連結部としての左側後部連結部71は、車両前後方向に離間して複数設けられる固定部材としての複数のボルトB3,B4,B5により第1バッテリユニット21の後部に連結されている。
【0077】
詳しくは、上述の左側後部連結部71は上記左側前部連結部70に対して車両前後方向の後方に位置すると共に、この左側後部連結部71は複数のボルトB3,B4,B5を用いて第1バッテリユニット21の後部におけるバッテリトレイ23の底壁に固定されている。
【0078】
図5図6に示すように、車幅方向連結部61の第2バッテリユニット22側の側方延出部61cの車幅方向右端部に位置する右側前部連結部72は、車両前後方向に離間して複数設けられる固定部材としての複数のボルトB6,B7,B8により第2バッテリユニット22の前部に連結されている。
【0079】
詳しくは、上述の右側前部連結部72は、複数のボルトB6,B7,B8を用いて、第2バッテリユニット22の前部におけるバッテリトレイ23の底壁に固定されている。
【0080】
ここで、上述の右側前部連結部72は、この実施例においては、斜め方向連結部63の第2バッテリユニット22側の前部連結部としての右側前部連結部73を兼ねている。
上述のスロープ部64は、縦壁部62の車両後方において後方ほど車両下方に傾斜する所謂前高後低形状に形成されている(図7参照)。
【0081】
図7に示すように、連結部材60の車両前後方向の長さ、つまり全長をL2とするとき、上述のスロープ部64は連結部材60の後端60aから連結部材60の前方中間部に向けて長さL2の約40%の前後方向の長さL1の範囲に形成されている。
【0082】
しかも、図7に示すように、スロープ部64の下端(連結部材60の後端60a参照)は上述の縦壁部62の下端よりも車両下方に位置するように構成されている。すなわち、同図に示すように、スロープ部64の下端と縦壁部62の下端との間には、高低差△Hを有するものである。換言すれば、スロープ部64の下端は、縦壁部62の下端より高低差△Hだけ下方に位置する。
【0083】
このように、上記スロープ部64の下端を縦壁部62の下端に対して高低差△Hだけ低く構成することで、縦壁部62で剥離しきれない床下走行風を、スロープ部64により車両下方に誘導して剥離するように構成している。
【0084】
また、上述の縦壁部62の車両上下方向の高さを高くしないため、車両側突時に当該縦壁部62が連結部材60の曲げ変形を阻害しない。これにより、該連結部材60が側突荷重入力側のバッテリユニット(この実施例では、第1バッテリユニット21)との間で突っ張る作用を抑制し、当該バッテリユニットが連結部材60とサイドシル1との間で挟まれて変形するのを抑制すべく構成している。
【0085】
ところで、図8に示すように、上述のスロープ部64後端右側の車幅方向外側端部64aは、突出部材としての中間部インシュレータ52の上下方向に延びる右側の側壁52bの下端52gにおける車幅方向位置と同じ位置、または、車幅方向外側位置に位置している。この実施例では、スロープ部64後端右側の車幅方向外側端部64aは、中間部インシュレータ52における側壁52bの下端52g位置に対して車幅方向右外側に位置している。
【0086】
上述のスロープ部64後端の車幅方向外側端部64aの位置により、当該スロープ部64の後端から剥離した剥離風が上述の中間部インシュレータ52の内方へ入り込むのを抑制すべく構成している。
【0087】
図5図6に示すように、上述の複数の第1傾斜部68,69は、車幅方向連結部61の前壁としての縦壁部62の前部に一体形成されたもので、同図に示すように、上述の複数の第1傾斜部68,69は車両後方ほど車両下方に傾斜するように形成されている。
【0088】
この実施例においては、縦壁部62の前部に設けられた車両側面視で略直角三角形状の変形促進部であるビード68B,69Bの三角形の斜辺により上述の第1傾斜部68,69が形成されており、これら各ビード68B,69Bは車幅方向に離間して複数設けられている。
【0089】
これにより、床下走行風を複数の第1傾斜部68,69に沿って車両下方へ誘導し、当該床下走行風を縦壁部62下端に流すので、床下走行風が直接縦壁部62に当るのに対して、エネルギ損失が少なくなり、床下走行風を車両下方へ案内するように構成している。
【0090】
また、車幅方向に離間して複数のビード68B,69Bを設けることで、ポール側突のような車両側突時に、連結部材60の車幅方向連結部61が車幅方向反対側へ側突荷重を伝達しつつ、複数のビード68B,69Bが変形切っ掛けとなって、車幅方向連結部61を曲げ変形させて、側突エネルギを吸収し、バッテリユニットの変形を抑制するように構成している。
【0091】
さらに、上記変形促進部としてのビード68B,69Bが複数設けられていることで、車幅方向連結部61が車両側突時に車幅方向の複数箇所で変形し、これにより、バッテリユニットが上下方向に相対変位しても、連結部材60が突っ張ることなく、バッテリユニットへの荷重入力低減を図るように構成している。
【0092】
すなわち、車両側突時に、バッテリユニットが連結部材60とサイドシル1との間、詳しくは、連結部材60と床下フロアフレーム14との間で挟まれることを抑制し、バッテリユニットの変形を抑制すべく構成したものである。
【0093】
図5図6に示すように、この実施例においては第1傾斜部68,69(換言すれば、ビード68B,69B)が車幅方向に離間して2つ設けられており、相対的に車幅方向左側に位置する一方の第1傾斜部68と車幅方向の同一位置において、当該第1傾斜部68の後方としての後方延出部61bの直後部には、車幅方向に延びる切欠き部65が設けられている。
上述の切欠き部65を設けることで、車両側突時における連結部材60の折れ変形を促進するように構成している。
【0094】
上述の切欠き部65は、図5に示すように、連結部材60の車幅方向左外方が開放すると共に、一方のビード68Bの車幅方向右端対応位置で終焉し当該部位で閉塞するように形成されている。
【0095】
車両側突時において、上述の連結部材60が折れ変形する場合、上記切欠き部65が存在しない場合には、後方延出部61bのさらに後方の部分をも共に折る必要があり、折る時のエネルギ量が大となるが、上記切欠き部65の存在により折る時に大きいエネルギ量を要することなく、簡単に折ることができる。これにより、連結部材60の折れ挙動を阻害することなく、連結部材60の突っ張りを抑制するように構成している。
【0096】
しかも、床下走行風が上述の切欠き部65に入らないように、当該床下走行風を上述の第1傾斜部68にて車両下方に案内することで、切欠き部65による床下走行風の乱れを抑制するように構成したものである。
【0097】
図5図6に示すように、上述のスロープ部64と当該スロープ部64の車幅方向左外側に隣接する平面部67との間には、上述の複数の稜線部X1,X2が形成されている。これらの各稜線部X1,X2は車幅方向連結部61を構成する下凸構造のビードにおける後壁61dからスロープ部64の起点部64b(図7参照)にかけては互いに車両前後方向に平行に延びている。
【0098】
また、上述の複数の稜線部X1,X2は上記起点部64bから連結部材60の後端60aにかけては車両後方ほど車幅方向外側に向かうように形成されると共に、複数の稜線部X1,X2の離間距離が車両後方ほど漸増するように形成されている。
これにより、複数の稜線部X1,X2間、並びに、スロープ部64は車両後方ほど車幅方向の左外側に向かう末広がり形状を有するように形成されている。
【0099】
上述の稜線部X1,X2を車両後方ほど車幅方向外側に向かうように形成することで、上記平面部67を流れる床下走行風が、稜線部X1,X2間の壁部XWに沿って車幅方向外側へ誘導されて、第1バッテリユニット21側に流れ、以て突出部材である中間部インシュレータ52の内部に流れ込もうとする床下走行風の流れを抑制するように構成している。
【0100】
図9図10に示すように、連結部材60の車両前方に位置する前側アンダカバー54の後端には、車両後方ほど車両下方に傾斜する第2傾斜部54aが設けられている。図10(a)に示すように、この実施例では、前側アンダカバー54の主面部と第2傾斜部54aとの成す角度が約15度となるように、第2傾斜部54aは前高後低状に傾斜しているが、上記角度の数値に限定されるものではない。
【0101】
図10(b)に示すように、第2傾斜部54aに対して車両後方に位置する第1傾斜部68,69の前端68a,69aは、上述の連結部材60の前端60fよりも距離△Lだけ車両後方に位置している。
【0102】
そして、図10(a)(b)に示すように、上述の第1傾斜部68,69の前端68a,69aと、連結部材60の前端60fとの間には、前側アンダカバー54の第2傾斜部54aで剥離された剥離風を上記第1傾斜部68,69にガイドするガイド部66が形成されている。このガイド部66の車両前後方向の長さは上記距離△Lに相当する。
【0103】
ここで、上述のガイド部66は前方延出部61aと同じ高さで平板上に延びている。
これにより、前側アンダカバー54の第2傾斜部54aで剥離させた剥離風を上述のガイド部66にて第1傾斜部68,69にガイドし、その後、第1傾斜部68,69により床下走行風を車両下方へ案内する。この結果、当該床下走行風が連結部材60上側の空間部、具体的には、図3に示す中間部インシュレータ52の空洞部内に流入するのを抑制し、これにより、空力性能の向上を図るように構成している。
【0104】
図5図6に示すように、左側後部連結部71を第1バッテリユニット21に連結する固定部材としての複数のボルトB3,B4,B5が車両前後方向に離間して複数設けられている。
【0105】
斜め方向連結部63の第1バッテリユニット21側の連結部である上述の左側後部連結部71において、当該左側後部連結部71のボルトB3,B4,B5の車幅方向内側に隣接して車両前後方向に延びる第2のビード74を設け、特定のボルトB3に対する応力の集中を回避し、応力を各ボルトB3,B4,B5に略均等に分散し、連結部材60の強度信頼性を確保するように構成している。
【0106】
また、図5図6に示すように、右側前部連結部72,73を第2バッテリユニット22に連結する固定部材としての複数のボルトB6,B7,B8も車両前後方向に離間して複数設けられている。
【0107】
上述したように、右側前部連結部72,73は、車幅方向連結部61の第2バッテリユニット22側の連結部と、斜め方向連結部63の第2バッテリユニット22側の連結部と、を兼ねるものである。
【0108】
そして、上述の各ボルトB6,B7,B8の車幅方向内側に隣接して車両前後方向に延びる第3のビード75を設け、特定のボルトB8に対する応力の集中を回避し、応力を各ボルトB6,B7,B8に略均等に分散し、連結部材60の強度信頼性を確保するように構成している。
【0109】
図5図6に示すように、上述の第3のビード75の後端部から車幅方向連結部61の後壁61dに沿って、他方の第1傾斜部69の対応位置まで車幅方向に延びる剛性変化部76を設けている。
【0110】
図7に示すように、この実施例においては、上述の剛性変化部76は上方へ突出するビード(いわゆる上凸構造のビード)により形成されている。車両側突時には上記剛性変化部76の車幅方向左側端部が剛性変化点となり、この剛性変化点に応力が集中しやすくなり、効果的に変形引っ掛けとして作用する。この結果、車両側突時における連結部材60の折れ変形を、上記剛性変化部76にて助長することができる。
【0111】
次に、図10(a)を参照して床下走行風の流れについて説明する。
図10(a)に示すように、前側アンダカバー54の下面を車両前方から車両後方に向けて流れる床下走行風e1は、当該前側アンダカバー54後端の第2傾斜部54aで車両下方に誘導され、当該第2傾斜部54a後端の剥離点にて剥離される。
【0112】
上述の前側アンダカバー54の後端で剥離された剥離風e2は、第1傾斜部68,69前端前方のガイド部66に当接し、当接後の床下走行風e3は第1傾斜部68,69の傾斜に沿って車両下方へ案内され、当該床下走行風e3を縦壁部62下端に流す。
【0113】
上述の縦壁部62で剥離しきれない床下走行風e4は連結部材60の下面に沿って車両前方から車両後方に向けて流れ、スロープ部64により車両下方に誘導された後に、スロープ部64後端の剥離点にて剥離されるものである。
【0114】
一方、図5図6に示すように、スロープ部64の車幅方向外側に隣接する平面部67を流れる床下走行風は、稜線部X1,X2間の壁部XWに沿って、車幅方向外側へ誘導されて、第1バッテリユニット21側へ案内されることになり、これにより、中間部インシュレータ52の内部に流れ込もうとする床下走行風の流れを抑制するものである。
【0115】
図11は本実施例の車両の下部構造における側突時の状態を示す底面図、図12図11の要部の縦断面図、図13は比較例の車両の下部構造を示す底面図、図14は比較例の車両の下部構造における側突時の状態を示す底面図、図15図14の要部の縦断面図である。なお、図13図15において、図1図11図12と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略している。
【0116】
次に、図11図15を参照してポール衝突のような車両の側突時の作用について説明する。
図1に示すノーマル(normal、正常)な状態から図11に示すようにポール等の衝突物80が第1バッテリユニット21の重心位置よりも車両前方において車幅方向内側向きへ衝突して、図11に矢印aで示す側突荷重が入力すると、サイドシル1は車両底面視でV字状に変形する。
【0117】
これにより、第1バッテリユニット21には、その重心位置よりも前方の局所的な部位から側突荷重が入力されて、第1バッテリユニット21の前方が車幅方向内側へ回動変位しようとするが、連結部材60の車幅方向連結部61が車幅方向反対側である第2バッテリユニット22側へ側突荷重を伝達する。
【0118】
上述の連結部材60は縦壁部62を有しているが、この縦壁部62の上下高さを高くしないので、車両側突時に連結部材60の曲げ変形を阻害することなく、車幅方向連結部61を図12に示すように逆ハット形状に曲げ変形させる。この結果、連結部材60が第1バッテリユニット21との間で突っ張る作用を抑制でき、当該第1バッテリユニット21が連結部材60とサイドシル1との間で挟まれて変形するのを抑制することができる。
【0119】
なお、図11において、81は触媒コンバータ、82は触媒コンバータ81よりも上流側の排気管、83は触媒コンバータ81よりも下流側の排気管である。
図1図11図12で示した実施例の構造に対して、図13図15に示す比較例では、第1バッテリユニット21の前部と第2バッテリユニット22の前部とを前側連結部材91で連結すると共に、第1バッテリユニット21の後部と第2バッテリユニット22の後部とを後側連結部材92で連結している。つまり、比較例においては各バッテリユニット21,22の前部相互間および後部相互間を、車両前後方向に離間した別々の連結部材91,92で車幅方向に連結したものである。また、上述の前側連結部材91は、床下走行風の剥離が可能となる程度の高さで車幅方向に延びる前壁91aを備えている。
【0120】
比較例の構造において、図13に示すノーマルな状態から図14に示すようにポール等の衝突物80が第1バッテリユニット21の重心位置よりも車両前方において車幅方向内側向きへ衝突して、図14に矢印aで示す側突荷重が入力すると、サイドシル1は車両底面視でV字状に変形する。
【0121】
これにより、第1バッテリユニット21には、その重心位置よりも前方の局所的な部位から側突荷重が入力されて、第1バッテリユニット21の前方が車幅方向内側に回動変位する挙動となる。この場合、上述の前側連結部材91で第1バッテリユニット21の前部と第2バッテリユニット22の前部とを車幅方向に連結しているので、前側連結部材91を介して側突荷重を車幅方向反対側である第2バッテリユニット22に荷重伝達することができる。
【0122】
しかしながら、図15に示すように、前側連結部材91はその高剛性により車幅方向中間部が一箇所で折れ曲がり、車両正面視でV字状となって、第1バッテリユニット21の上下変位を規制し、図15に示す折曲点91bと、前側連結部材91の第1バッテリユニット21への固定点91cとが突っ張るように作用し、第1バッテリユニット21が前側連結部材91とサイドシル1との間で挟まれ、第1バッテリユニット21が変形するので、好ましくなかった。
【0123】
図13図15で示した比較例の構造に対して、図1図11図12で示すこの実施例においては、縦壁部62の高さを高くしないので、車両側突時に連結部材60の曲げ変形を阻害することなく、連結部材60が第1バッテリユニット21との間で突っ張る作用を抑制でき、側突エネルギを吸収して、第1バッテリユニット21の変形を抑制することができる。
【0124】
このように、上記実施例の車両の下部構造は、車幅方向外側において車両前後方向に延びるサイドシル1と、上記サイドシル1の車幅方向内側に隣接してフロアパネル8の下方において車幅方向に離間して設けられる第1バッテリユニット21および第2バッテリユニット22と、上記第1バッテリユニット21と上記第2バッテリユニット22との間を連結する連結部材60と、を備え、上記連結部材60は、車幅方向に延びて車両下方に突出する縦壁部62と、該縦壁部62の後方において後方ほど車両下方に傾斜するスロープ部64と、を備え、上記スロープ部64の下端は上記縦壁部62の下端よりも車両下方に位置するように構成されたものである(図1図5図6図7参照)。
【0125】
この構成によれば、スロープ部64の下端が縦壁部62の下端よりも低く構成されているため、縦壁部62で剥離しきれない床下走行風を、スロープ部64により車両下方に誘導して剥離することができる。
【0126】
また、縦壁部62を高くしないため、車両側突時に連結部材60の曲げ変形を阻害することなく、当該連結部材60が側突荷重入力側のバッテリユニット(第1バッテリユニット21)との間で突っ張る作用を抑制でき、該バッテリユニット(第1バッテリユニット21)が連結部材60とサイドシル1との間で挟まれて変形するのを抑制することができる。
【0127】
この発明の一実施形態においては、上記第1バッテリユニット21と上記第2バッテリユニット22との間に位置して、これら各バッテリユニット21,22の底部間から上方に突出する突出部材(中間部インシュレータ52)を設け、上記スロープ部64後端の車幅方向外側端部64aは、上記突出部材(中間部インシュレータ52)の上下方向に延びる側壁52bの下端52g位置と同じ位置、または、車幅方向外側位置に位置するものである(図8参照)。
【0128】
この構成によれば、スロープ部64後端の車幅方向外側端部64aの位置により、当該スロープ部64の後端から剥離した剥離風が上述の突出部材(中間部インシュレータ52)の内方へ入り込むのを抑制することができる。
【0129】
この発明の一実施形態においては、上記縦壁部62の前部には、車両後方ほど車両下方に傾斜する第1傾斜部68,69を備えたものである(図6図10参照)。
この構成によれば、床下走行風を第1傾斜部68,69に沿って車両下方へ誘導し、当該床下走行風を縦壁部62下端に流すので、床下走行風が直接縦壁部62に当るのに対して、エネルギ損失が少なくなり、床下走行風を車両下方へ案内することができる。
【0130】
この発明の一実施形態においては、上記第1傾斜部(この実施例では、複数の第1傾斜部68,69のうちの一方の第1傾斜部68)と車幅方向の同一位置において、当該第1傾斜部68の後方には、車幅方向に延びる切欠き部65が設けられるものである(図5図6参照)。
【0131】
この構成によれば、上述の切欠き部65を設けたことで、車両側突時における連結部材60の折れ変形を促進することができる。また、床下走行風が上記切欠き部65に入らないように当該床下走行風を上述の第1傾斜部68にて車両下方に案内するので、切欠き部65による床下走行風の乱れを抑制することができる。
【0132】
この発明の一実施形態においては、上記連結部材60の車両前方には、車両下面部を覆うアンダカバー(前側アンダカバー54)を備えており、該アンダカバー(前側アンダカバー54)の後端には、後方ほど車両下方に傾斜する第2傾斜部54aを設け、上記第2傾斜部54aに対して車両後方に位置する上記第1傾斜部68,69の前端68a,69aは、上記連結部材60の前端60fより後方に位置し、上記第1傾斜部68,69の前端68a,69aと、上記連結部材60の前端60fとの間に、上記アンダカバー(前側アンダカバー54)で剥離した剥離風を上記第1傾斜部68,69にガイドするガイド部66が形成されたものである(図9図10参照)。
【0133】
この構成によれば、アンダカバー(前側アンダカバー54)で剥離された剥離風を上記ガイド部66により第1傾斜部68,69にガイドし、その後、第1傾斜部68,69にて車両下方へ案内するので、床下走行風が連結部材60上側の空間部(中間部インシュレータ52内の空洞部参照)に流入するのを抑制して、空力性能の向上を図ることができる。
【0134】
この発明の一実施形態においては、上記スロープ部64と当該スロープ部64の車幅方向外側に隣接する平面部67との間に稜線部X1,X2を形成し、該稜線部X1,X2は車両後方ほど車幅方向外側に向かうように形成されたものである(図5図6参照)。
【0135】
この構成によれば、上述の平面部67を流れる床下走行風は、上記稜線部X1,X2(詳しくは、稜線部X1,X2間の壁部XW)に沿って、車幅方向外側へ誘導されて、バッテリユニット側(第1バッテリユニット21側)へ流れ、これにより、突出部材(中間部インシュレータ52)の内部に流れ込もうとする床下走行風の流れを抑制することができる。
【0136】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明の突出部材は、実施例の中間部インシュレータ52に対応し、
以下同様に、
アンダカバーは、前側アンダカバー54に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0137】
以上説明したように、本発明は、バッテリユニットを床下に搭載するような車両の下部構造について有用である。
【符号の説明】
【0138】
1…サイドシル
8…フロアパネル
21…第1バッテリユニット
22…第2バッテリユニット
52…中間部インシュレータ(突出部材)
52b…側壁
52g…側壁の下端
54…前側アンダカバー(アンダカバー)
54a…第2傾斜部
60…連結部材
60f…前端
62…縦壁部
64…スロープ部
64a…車幅方向外側端部
65…切欠き部
66…ガイド部
67…平面部
68,69…第1傾斜部
68a,69a…前端
X1,X2…稜線部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15